理樹「絶対おかしいよ」 (9)

裏庭

理樹「はぁ……はぁ…!!」

来ヶ谷「む…誰かと思えば理樹君か。血相を変えてどうした?今は確か数学の授業中だろ?」

理樹「そんな事どうでもいいよ…!それより賢い来ヶ谷さんだからこそ相談したいことがあるんだ!」

来ヶ谷「………クマが出来ている。寝ていないのか?」

理樹「それも今話すような事じゃないよ。僕が今から言うような事は価値観を全てひっくり返すような____というかもう僕の方はひっくり返ってるんだけど____とにかく全てにおいて最優先事項となるようなことなんだ」

来ヶ谷「君がそこまで慌てふためいて言うなら私も真剣に聴かざるをえないな。よろしい、そこの椅子に腰掛けたまえ」

理樹「ありがとう」

来ヶ谷「……じゃあ話をしてもらおうか。話によるが出来る限りのアドバイスをさせてもらおう」

理樹「うん。じゃあ早速だけどさ……ここって幻じゃないのかな?」

来ヶ谷「…………ほう。興味深いな」


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来ヶ谷「そう思った根拠を聞かせてくれないか?」

理樹「根拠?根拠……ははっ!そんなのいくらでもあるよ!でもその様子だと来ヶ谷さんは気付いてないんだよね…じゃあ仕方ない。一から説明してあげるよ」

理樹「今いる世界がおかしいと思った理由。それは君達だ」

理樹「僕が小さい頃、親を亡くしたことを?」

来ヶ谷「ああ。知ってるよ」

理樹「思えばその時から『この夢』を見ているのかもしれないな。だってさ、おかしいとは思わない?今でこそ克服している病気を高校まで抱えてきて一度も僕がいじめられた事がないだなんて!親がいないのも合わさって格好のターゲットになったはずなのに」

来ヶ谷「それは君が恭介氏達に守られていたからでは?」

理樹「そうさ。そこが重要なんだ!本当は僕に恭介や真人のような幼馴染なんて存在しなかったんじゃないかな?」

来ヶ谷「君が妄想で作り出したとでも言いたいのか?」

理樹「流石『賢い』設定の来ヶ谷さん。僕の言いたいことをズバリ当ててくれる」

来ヶ谷「なるほど。やっと君の考えていることが分かった。君は自分の周りの人間は全員………」

理樹「そう。僕にとってはあまりにも都合が良すぎる。ならそう考えるほうが自然じゃないかな?」

来ヶ谷「幸せが信じられないのか」

理樹「信じられたらどれ程気が楽だろう!でも現実はそう甘くはない。きっと今頃本当の僕は事故の所為で精神を病み、病院で医者によく眠れる薬を胃袋に詰められ、牢屋のような個室の中で寝ているに違いない」

来ヶ谷「今日の理樹君は妄想が激しいな」

理樹「じゃあさ。とある男の子が酷い事故から10年経ってさ、こんな雲ひとつない青空で君のような美少女と論議を交わしているのと、精神病院で縮こまっているのとじゃどっちの方が現実味がある?」

来ヶ谷「私にとっては今こうして前者を体験しているからそちらしか考えられないな」

理樹「残念!僕はもう一つの方が理にかなっていると思うね!」

来ヶ谷「君は中学生が哲学を齧った時に考えそうな妄想をしているな。まあ安心しろ。ここはちゃんと現実だよ」

理樹「それも無意識の僕が僕に暗示を解かせないための台詞かな?残念ながら僕は気付いてしまったからそう簡単には屈しないよ」

理樹「だってよく考えると絶対おかしいよ」

理樹「出来過ぎてるんだ何もかも。ちょうど絶望していた幼少期にヒーローのような人物が現れた。それらの5人はありえない程良い人で誰も彼も個性的で友人とするならこれ以上にないってくらいの人ばかりだ」

理樹「高校に入ってからだってリトルバスターズなる変な集団を作っても都合よく綺麗でこれまた性格のいい人間ばかりが入っている!これもあまりに現実味がない!現に来ヶ谷さんみたいにおっぱいがでかくて姉御肌な人間がいるなんて!」

来ヶ谷「それは褒められているのかな?」

理樹「それだけじゃない。恭介は漫画に出てくるようなスーパーマンで彼が性格の悪い人間に屈した所なんて一度も見たことがないよ!」

理樹「それどころか周りの人間だってそうさ。リトルバスターズなんていう魅力的な人しかいないようなグループになんで誰も入ろうとしない?百歩譲っても謙吾や恭介、鈴に来ヶ谷さんと言った学校の人気者が集まる集団なんて我も我もと手が挙がるはずだ!!」

来ヶ谷「そもそもリトルバスターズ自体知名度はあまりないと思っていたんだけどな。それに人気者だからと言って友達になりたいかどうかはまた別の話さ」

理樹「じゃあ仮にそこまでは現実でもあり得るとしよう!じゃあ、あのバスの事故は!?あんなの非現実の極みじゃない!」

来ヶ谷「実際あったものは仕方がない。アレは集団催眠の一種だろう」

理樹「そんなこと言ってたらなんでもありだよ!」

来ヶ谷「君こそ世界の全てを知っているわけでもないのによくおかしいと言えるな?」

理樹「だ、だって現実じゃないもん!」

理樹「それにほら……えと……そう、二木さんや笹瀬川さん!」

理樹「風紀委員長があんなに美人で風紀委員らしい厳しい性格だなんて!」

来ヶ谷「逆だろ?厳しいから風紀委員長に抜擢されたんだ。顔の方は知らんが」

理樹「笹瀬川さんなんて語尾が『ですわ』だよ!バカじゃないの!?」

来ヶ谷「近くに本人がいなくてよかったな」

理樹「あとは屋上とか!屋上が解放されてるなんて!」

来ヶ谷「言っておくがされてないからな。一応不法侵入だ」

理樹「あとは……ほら……僕がこうして幸せなこととか……」

来ヶ谷「いけないのか?」

理樹「いけないよ…!だって……グス…僕はなんの変哲もない男じゃないか!それなのに人に告白されたことも……いや、あれは恭介の差し金か…」

来ヶ谷「君は可愛いし誰より優しく根性もある。充分魅力的じゃないか。ほら、このハンカチで涙を拭け」

理樹「………あと…あと……毎日が楽し過ぎる……し…嫌なこともあんまり……」

来ヶ谷「いいことだ」

理樹「そんなのってアリなの?」

来ヶ谷「君は幸せを恐れている様だな。そんなに何もないことが怖いのか?」

理樹「うん……」

来ヶ谷「そんな野暮なことは心配するな。君はたまたま自分の成し遂げたことも合わせて幸運に恵まれたんだ。これ以上にないくらい不幸な状況にいる人間もいればこれ以上にないくらい幸運な状況にいる人間もまたそこにいる」

来ヶ谷「だからマイナスが当たり前と考えるな。信じられないほどの幸運を本当に信じられないなんて馬鹿馬鹿しいにも程がある」

理樹「この世界を信じてもいいのかな」

来ヶ谷「いいに決まってる。ほら、安心したらだんだん眠くなって来たんじゃないか?さっさと宇宙の真理なんて忘れて今は眠れ。お姉さんが見守っておいてやろう。これまでの恥ずかしい言葉は全部忘れてやる」

理樹「うん…………おやすみ………」

ゴトッ…

来ヶ谷「……理樹君の携帯か。一体何を見て………ははあ、なるほど」







プルルルルル

来ヶ谷「もしもし?」

恭介「来ヶ谷か!すまないが理樹を知らねえか!?具合が悪いってんで部屋に置いてきたんだが昼休みに様子を見に行ったら消えてて……!!」

来ヶ谷「それならもう解決したよ」

恭介「なに…見つけたのか!?」

来ヶ谷「ああ。何てことはない。理樹君はちとばかし人生に絶望した人間のブログを見て恐怖に駆られていたらしい。深夜に見たんで特有の高揚感と共に変な妄想に取り付かれたんだろう……でももうそれも大丈夫だ」

恭介「そ、そうか……じゃあ任せていいな?」

来ヶ谷「うむ。ではもう切るよ。起こしてしまってはせっかくの寝顔がもったいない」

ピッ…….

理樹「スゥ……」

理樹「ううん………」

理樹(何だろう。とてつもなく長い夢を見ていた気がする……)

来ヶ谷「お目覚めかな?」

理樹(顔を上げると来ヶ谷さんがこっちを見ていた。そうだ。そう言えばさっき来ヶ谷さんになにか馬鹿なことを訴えかけていたな)

理樹「……ごめん。やっと醒めたよ」

来ヶ谷「ふふ…私に感謝する事だな。ここで食い止めなかったらいずれ君は他の人間のところにも行っていただろう」

理樹(頬杖をして僕の事をじっと見つめる来ヶ谷さん。目のやりどころに困るなぁ)

理樹「こんなに幸せなら今僕がみんなに手当たり次第に抱きついても許されるかな?」

来ヶ谷「第三者にバレない自信があるならやってみる価値はあるだろうな」

理樹「……………今日は疲れたな」

来ヶ谷「だろうな。それじゃ今日はお腹いっぱい食べて寝るといい」

理樹(そう言われてみると確かにお腹が空いてきた)

理樹「そうするよ!」

理樹(とりあえず今はこの幸せを噛み締めよう。たとえ本当に妄想だったとしてもここにいる僕は間違いなく幸せなんだから。夢も最後まで覚めなかったら現実さ!)






終わり

深夜のノリで書いたから明日にはこれ見て悶絶するかもしれないな
まとめようとする物好きがいない事を信じてお休みなさい

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