志保「なんだか、パーティ終わりににアヤちゃんに『深夜を楽しみにしとけよ。ちょっとだけうらやましぜ』っていわれた意味がわかりました。すっごく今楽しいです」

モバP「アヤも二十歳の誕生日終わりに酒を飲みに誘ったからな。ここが定休だったから居酒屋にだが」

志保「あれからお酒大好きになったのか、この前楓さんのところにおいしいお酒について質問しに行ったとルンルン気分で話してましたね」

モバP「確かにアヤは酒豪の気があるな。楓さん早苗さん友紀の飲み仲間に加わりそうだ」

志保「アヤちゃんは大切な仲間ですけど、ちょっとだけ嫉妬しちゃいます」

モバP「あまり長々話しててもあれだな。マスター、例のセットを頼む」

マスター「お熱いね、お二人さん。はいよ」

志保「コーヒーパウンドのチョコケーキとパッション系のミックスジュースですね。ありがとうございます」

モバP「さすが志保だな。見た目とにおいだけでケーキ中身を判断できるのはうちだと志保とかな子ぐらいだぞ」

志保「褒められているのかどうかわからないなぁ。デリカシーがないのはモバPさんの数少ない欠点です」

モバP「でもな、昨日まで子供だから仕方ないんだが飲み物のほうは不正解だ。これはカクテルだぞ。まあこれはノンアルコールなんだが。二十歳の記念だ。酒を飲んでも罰はあたらんだろ」

オーナー「中身はオレンジとパインとレモンのシェークだからお嬢さんの嗅覚は正確ですよ」

志保「お酒を飲んだら甘い気分にひたれますよね」

モバP「ああ、飲みすぎなければ百薬の長だ」

志保「じゃあケーキをいただきますね。ちょっぴりビターなスイーツでとてもおいしいです。大人の味ってこういうのを言うんですね」

モバP「満足してくれてなによりだ」

志保「カクテルのほうも柑橘系の甘い酸味が効いていて何杯でも飲みたくなっちゃいます」

モバP「アルコール中毒にならない程度に頼むよ」

志保「りょ～かいで～す」

モバP「これノンアルコールカクテルなんだけどな……。ところで志保。カクテルはきっちり飲んだな」

志保「どうしたんですか～。モバPさん」

モバP「今日俺は志保にシンデレラの魔法をかけた。永遠に解けない魔法を君にかけるよ」

志保「モバPさ～ん、まだお酒は飲んでないはずですけど酔ってますか～」

モバP「ノンアルコールって説明はちゃんと覚えてるのね」

マスター「ああ、このカクテルはシンデレラっていう名前なんだよ」

モバP「いやいや、その説明は俺にさせてくださいよ。ついでにテキーラ１杯くれ」

マスター「はいよ」

志保「なんでシンデレラってお酒を頼んでくれたんですか」

モバP「本当はしらふで伝えるべきなんだがな、ちょっと恥ずかしいけどいうぞ」

モバP「志保。お前のプロデューサーでよかった。三重で寄った喫茶店で初めてウェートレス姿で接客する姿の志保にティンときた。一目ぼれした」

モバP「俺の注文であるトップアイドルに対して、パーフェクトなアイドルになるって返されたときはうるっとしたよ」

モバP「アイドルになってからも、ひたすら長時間レッスンさせたり、アイドルなのに仕事がないから兼業でレストランのバイトを入れてもらったり、あまりアイドル活動させられなかったのについてきてくれた」

モバP「アイドル活動で着るメイド服や和メイド、私服や吸血鬼のコスプレだって似合ってた。プロデューサーって1番のファンっていうけど本当に見るのが楽しみだったよ」

モバP「もちろん魅力的なのは服だけじゃない。笑顔もプロポーションも、志保が奏でる歌も、志保が踊る姿も見る人を幸せにしたよ」

モバP「そして志保は当然、外見だけのアイドルじゃない。誰よりも他人を甘い気分にさせることを考えられるアイドルだ。その優しい甘さのとりこに

モバP「仕事でも、プライベートでも、そんなたくさんの魅力を甘い香りとともに振りまいていたよ」

モバP「そんな志保の魅力には当然ほかのアイドルも気が付いていて、ユニットを組んでいるフランメ・ルージュを筆頭に実際今日はたくさんのアイドルに誕生日を祝ってもらっただろ」

モバP「昔のバイト仲間やクラスメイト、家族からも誕生日おめでとうのメールやプレゼントが届いてる」

モバP「贔屓目にもまだまだトップアイドルに届いたとは言えないかもしれない。それでも皆に愛されるアイドルには着実に近づいていると自負してる」

モバP「でもな、まだ俺には野心があるんだ。志保のCDが欲しい。星光の舞台で踊ってほしい。選挙で名前を呼ばれたい。アイドルの志保といえば北沢じゃくて槙原にしたい」

モバP「いずれは愛梨とトップアイドルコンビを組んで欲しい。トップアイドルのために目指したい目標はまだまだ多い。俺は欲張りなんだ」

モバP「俺を魔法使いと呼ぶのは傲慢かもしれんが、シンデレラのカクテルでこういった目標に少しでも近づければなと思ったんだよ。要は願掛けだ」

モバP「そんな強欲な俺だけど、甘いアイドル目指してついてきてくれるか」

志保「オーダー承りました。甘～いアイドル志保をたくさんの方にお届けしますね。お任せください」

モバP「マスター。カルーアミルク二つ。志保、これは甘い酒だ。もしよかったら飲んでくれ」

志保「ありがとうございます」

モバP「どうだ、体に合うか」

志保「とても甘くておいしいで～す。そしてなんだか体が熱くなってきました～」

モバP「お前は愛梨か。まあもともと雰囲気に酔ってる節があったし、酒を飲むと体が熱くなる人もいるからしゃーないか」

志保「ますた～。もういっぱいあま～いのみものくださ～い」

モバP「あかん、完全に酔ってる。本当は志保も俺も明日休みだし、朝までここで飲み明かすつもりだったが、そういうわけにもいかないか。電車はまだあるかな」

マスター「終電ならとっくに過ぎたぞ。タクシーなら呼んであげるから少し待っててくれ」

志保「こんなよったわたしといっしょにりょうにかえるんですか～。もばPさんりょうかんにどやされますよ～」

モバP「だからって俺の家に行くわけにもいかないだろ」

志保「でも、私は朝まで寮に戻りたくないな」