鷹富士茄子「お花見に行きましょう♪」 (22)
前回:三好紗南「三人で過ごす年末」
三好紗南「三人で過ごす年末」 - SSまとめ速報
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§4月のある日 事務所§
P「しかし何だな、最近はあったかくて過ごしやすいな」
茄子「あら。プロデューサーったら、おじいちゃんみたいですよ~。でも本当にいい天気……こんな日はお花見にでも行きたくなりますね」
P「花見か。仕事がはかどるなって言おうとしたんだけど、もうそんな時期なんだな」
紗南「じゃあさ、あたし達もお花見しない? もうすぐオフだったよね」
茄子「プロデューサー、いつもお忙しそうですから……たまに息抜きしたって、罰は当たりませんよ」
P「うん……悪くないな。行くか」
紗南「行こう!」
§そういうことになった§
P「で、場所なんだけど……目立つといけないし、観光地とかはダメだよな。そういう仕事を取ってくれば行けたんだが」
紗南「もう、また仕事の話してる……Pさんの息抜きでもあるんだから、近くの落ち着けるところにしようよ」
茄子「うちの事務所って、敷地内に桜並木がありましたよね。そこはどうでしょうか~」
P「えっ、そんなんでいいのか? いや、二人がいいなら俺は構わないけど」
紗南「そういうのがいいの。ね、茄子さん」
茄子「はい♪ 私たちでお弁当を作りますから、楽しみにしててくださいね」
P「悪いな。飲み物とブルーシートは俺が持っていくよ」
§花見前日 事務所のエントランス§
紗南「おまたせ!」
茄子「紗南ちゃん、お疲れさまです~。それじゃあ、買い出しに行きましょうか」
紗南「献立は決めてあるの?」
茄子「そうねえ……とりあえずはおにぎりと卵焼き、それに唐揚げぐらいかな。紗南ちゃん、何かいいアイデアあります?」
紗南「うーん、副菜っていうの? 野菜のおかずもあると嬉しいよね。春だし……そうだ、タケノコとか菜の花とかはどう?」
茄子「うんうん、春を感じる素敵なお弁当になりそうですね~。せっかくだから、両方とも採用しちゃいましょう♪」
紗南「タケノコは煮物に、菜の花はお浸しにしたらおいしいよ! まあ、お母さんの受け売りだけど」
茄子「紗南ちゃんのお母さんか~。お料理上手なんでしょうね」
紗南「まあね。寮のご飯もおいしいけど、お母さんほどじゃないかな! みんな喜ぶと思うし、茄子さんも食べにおいでよ!」
茄子「まあ……いいんですか? ふふっ、楽しみです♪」
紗南「あっ、スーパーが見えてきたね。タケノコと菜の花、置いてればいいんだけど」
茄子「きっと大丈夫ですよ~」
紗南「茄子さんの言ったとおり、すぐ見つかったね。無事に買えてよかった~」
茄子「明日が楽しみですね。あとは、鶏肉の下ごしらえだけ済ませちゃいましょうか」
紗南「やっぱり、できるだけ漬けた方がいいのかな?」
茄子「あんまり漬けすぎると、しょっぱくなりますけどね~。朝一で取り出せばちょうどいいんじゃないかしら」
紗南「漬けすぎもダメかー。ちょうどいい加減があるんだね」
茄子「うちの場合は、ね。プロデューサーの口にも合えばいいんですけど……」
紗南「そういえば、Pさんの味の好み、訊くの忘れてたね。でも……あたし達が『おいしい!』って思う味付けにした方が、結局は上手にできるんじゃないかな」
茄子「私達の好みでいいの?」
紗南「ゲームだとね、いろんな武器とかアイテムを使い分けることも大事なんだけど……ひとつの戦法を極めるのもそれと同じくらい大事だって、あたしは思うんだ」
茄子「付け焼き刃は危ないってことですね。今回は、変えるにしてもどう変えればいいか分からないから、なおさら……」
紗南「まあ、ゲームの話だけどね。Pさんも一晩漬けたやつが好きかもしれないし……って、茄子さん?」
茄子「私、目が覚めました。確かに私が上手に作れるのは、私がおいしいって思う唐揚げ。誰に何と言われようと、私は私の好きな唐揚げを作ります!」
紗南「か、茄子さんがこんなに燃えてるところ、初めて見たかも……これはあたしも負けてられないね。茄子さん、明日は頑張ろうね!」
茄子「おーっ!」
§花見当日 事務所のキッチンスペース§
紗南「で……」
茄子「できました~!」
紗南「二人で作ると、やっぱりはかどるね。茄子さんに手伝ってもらって正解だったよ!」
茄子「どういたしまして♪ 私も楽しかったです~」
紗南「まだちょっと早いけど、会場の様子でも見に行ってみる?」
茄子「そうですね……プロデューサーがもう来ているかもしれませんし」
紗南「ゆっくりでいいって伝えておいたんだけど、Pさんのことだからね~」
§桜並木§
P「みんな『8時ぐらいに集合しよう』ってなってたんですけど、なぜか俺の集合時間だけお昼だったんですよ……ふんっ!」ばさっ
P「考えてみると、二人よりも入りが遅いパターンは殆どなかったな……なんだか新鮮だ。準備っつってもシート敷くだけだから、もう終わったしな」
P「……ちょっとだけ、早く来すぎたか」
茄子「プロデューサー! おはようございます~」
P「おお、早かったな」
紗南「『早かったな』はこっちのセリフだよ~。お弁当作りが長引くかもだから、ゆっくり来てって言ったのに」
P「でも、二人だってもう来てるじゃないか」
紗南「そ、それは……茄子さんが手伝ってくれて、予想より速くできたけどさ」
茄子「頑張っちゃいました♪」
P「だろ? そんなことだと思ったんだよ」
紗南「お見通しかー。今日ぐらいは先に来て、Pさんを待ってるつもりだったのにな」
P「はは、悪いな。まあ俺も今来たところだし、そんなに気にするなって」
茄子「無事に合流できて何よりですね~。じゃあ、人数も揃いましたし……といっても、お腹はまだ空いてないでしょうか」
P「そうだな、飲み物から開けよう。いろいろ買ってあるから、好きなのを選んでくれ」
P「行き渡ったな。では、今日という良き日を祝して……乾杯!」
「「かんぱーい!」」
紗南「いやー、Pさんじゃないけど、今日はいいお天気だね」
茄子「本当に……桜もちょうど見ごろで、素晴らしいです」
紗南「そうだねえ……」
P「…………」
茄子「プロデューサー?」
P「ん、ああ……いまこの場面を切り取ったら、いい絵になりそうだと思ったんだ。来年はきっと桜の時期の仕事を……って、これじゃ二人に心配されるわけだな」
紗南「Pさんってば、いつもそんな調子だからさ。でも、あたし達のために頑張ってくれてるんだよね」
P「まあ、仕事だからっていうのもあるけど、それ以上に俺がやりたいからやってるんだよ。二人のことを考えるのは楽しいしな」
茄子「ふふっ、プロデューサーならそう言うと思いました。それなら……今回のことも、私達がお花見したかったから企画しただけなんですよ。な~んて♪」
P「……分かった、降参だ。今日は細かいこと抜きで、気軽に楽しませてもらうよ」
紗南「うん、それがいいよ! それでさ……そろそろお弁当にしない?」
P「おお、もういい時間だな。実はゆうべから待ち遠しかったんだよ」
茄子「私も作りながら、食べるのが楽しみでした♪ それでは、手を合わせて……」
「「「いただきます」」」
P「おにぎりってさ、そのまま握るとけっこう熱くないか?」
紗南「だよね! お母さんはいつも平気な顔だったから、簡単だと思ったんだけどなー。今回は具を混ぜこむ時にちょっと冷ましたりして、なんとか握ったよ」
P「うちもそうだったな。『母は強し』ってやつか……次は唐揚げを貰おうかな」
茄子「……!」
P「茄子さんから力強い眼差しを感じるんだけど……」
紗南「あー、うん……気にしないで食べてあげて」
P「お、おう」
茄子「どうですか……?」
P「ん、うまいな! 下味もよく効いてる」
茄子「ほっ」
紗南「よかったね、茄子さん」
茄子「はい! 大袈裟かもしれませんけど、自分を信じて正解でした~」
P「……?」
§唐揚げ問題のあと§
P「おっ、菜の花か。俺これ好きなんだよ」
茄子「紗南ちゃん、お手柄ですね♪」
紗南「別にあたしは、自分が食べたくて選んだだけだから……」
P「二人でしっかり拾ってくるなァ。それ、今後の定番ネタにしないでくれよ」
紗南「あははっ。でもホントにおいしいよね。ちょっと苦味があるけど、それがまたさっぱりするっていうか」
§食後§
P「ふう、すっかりご馳走になっちゃったな。二人とも、どうもありがとう」
茄子「お粗末さまでした。量もちょうどよかったみたいですね」
紗南「どういたしまして~。Pさん、今日はどうだった? いい息抜きになったかな」
P「ああ、おかげさまで。気の置けないみんなと食べるとおいしいし、それに楽しいな。実家にいた頃を思い出したよ」
紗南「じゃあ、今回のミッションは――」
茄子「無事、達成ですっ!」
紗南「やったね! あたしも正直楽しかったし、またこうやって集まりたいな」
P「そうだな。じゃあ、次回は俺が考えてみるよ……それでこの後だけど、洗い物と片付けは任せてくれ。今日は何もしてないから、このぐらいはな」
茄子「では、お願いしますね~。紗南ちゃんはもう寮に戻ります?」
紗南「ゲームセンターに寄ってからって言いたいけど、なんだか力が抜けちゃったね……帰ろっか。Pさん、またね!」
§寮§
紗南「茄子さんの卵焼きもおいしかったなー。あたし気に入っちゃったかも……よかったらまた作ってくれない?」
茄子「紗南ちゃんが食べたいなら、いつでもいいですよ~。今度は私がお手伝いしてもらおうかしら」
紗南「もちろん! へへっ、楽しみだね!」
鷹富士茄子「お花見に行きましょう♪」 終わり
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