三好紗南「三人で過ごす年末」 (30)
#1 紗南「もうすぐ茄子さんの誕生日だね」
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§12月のある日 事務所§
紗南「いつものお礼に、プレゼントをあげようかなって思うんだけど……茄子さんはあんまりゲームやらないからさ」
P「一緒に遊べるやつなら喜んで付き合ってくれそうだけど、今回はゲーム以外にするのか」
紗南「うん。それでね、Pさんは何か考えてる?」
P「そうだな、俺は……本かな」
紗南「へえー、どんな本?」
P「雪国が舞台の短編集なんだけど……風景の描写はすんごく寒そうなのに、そこで暮らす人々の心っていうのかな。お話はなんだか暖かい雰囲気で、挿絵も味があって、俺のお気に入りなんだ」
紗南「心暖まるって感じだね。そういうのもいいねえ……」
P「だろ? 茄子さんにも、ほっこりしてもらえたらと思ってな」
紗南「Pさんがその路線なら、あたしは……あっ! 手袋なんてどうかな!」
P「お、いいんじゃないか。確かに、茄子さんが手袋してるところは見たことがないな」
紗南「でしょー? へへ、今はやっぱりタッチパネル対応のやつだよね。色はどんなのがいいかな……」
P「まとまったみたいで何よりだ。あとは買いに行くだけだな」
紗南「うん! ありがと、Pさん!」
茄子「ただいま戻りました~。あら、なにかお話でもされてたんですか?」
紗南「今ね、茄子さんの誕生日プレゼントは何がいいかなって、Pさんに相談してたんだ!」
P「特に秘密にはしないのか……ああ、二人で考えたんだ。ちょうど何にするか決まったところだよな」
茄子「ふふっ、何をプレゼントしてもらえるんでしょう? とっても楽しみです~」
紗南「ね、Pさん! そろそろお茶にしない? あたしお菓子出してくるね!」
P「そうだな。寒かっただろうし、お茶は俺が淹れるよ。茄子さんは座っててくれ」
茄子「じゃあ、お言葉に甘えますね~。……どんなプレゼントかは、やっぱり訊いちゃいけないんでしょうか?」
紗南「それはまだ秘密ー!」
#1 終わり
#2 P「事務所の大掃除をしよう」
§またある日 事務所§
紗南「と……唐突だね、Pさん。急に立ち上がってさ……」
茄子「大掃除ですか。もう、そんな時期なんですね~」
P「本当なら寒くなる前に済ませたかったんだけど、今年は紗南に手作りライブの仕事が来てたからな」
紗南「楽しかったけど、確かにちょっと忙しかったよね。予定にないことばっかりだったし」
茄子「きょうも寒いは寒いですけど、幸いお掃除日和って感じですね。どこから始めましょうか」
P「書類の整理はまたちひろさんとやっておくから、きょうは床の掃き掃除と窓拭きを頼む」
紗南「そうと決まれば、思いきって窓を開け……あっ、思ったより寒くないかも」
P「よし、今のうちだ!」
茄子「かかれー♪」
§掃除終了§
P「け、けっこう疲れたな……ソファやら机やらを運んだからか、それとも体力が落ちただけか……」
紗南「Pさん、腹減り倍加のスキルは消しとかないとダメだよ……でも、なんとか日のあるうちに終わったね」
茄子「日ごろ、気がついたところを綺麗にしておいたおかげですね~。 目につかないような場所は、さすが一年分の汚れという感じでしたけど……」
P「今年も色んなことがあったし、だからこその汚れだな。レッスンに、仕事に……ここって人が来ない日はないからな」
紗南「そういえばさ、あたしが今あんまり疲れてないのはレッスンのおかげだと思うんだ。アイドルになってから、体力がついてきた気がする!」
茄子「アイドルのレッスンは、なんと大掃除にも役立つんですよ。プロデューサーもいかがですか?」
P「茄子さんまで……でも、そうだな。体力づくりのこと、もっと真剣に考えていくべきかもしれない。とりあえずこの後は、肉でも食べに行くか! 使った筋肉を修復しないとな!」
紗南「えっ、本当? あたしも食べたいな! ほら、茄子さんも!」
茄子「ええ、たくさん食べて来年も頑張りましょう。プロデューサー、途中でバテたりしないでくださいね♪」
#2 終わり
#3 茄子「紗南ちゃんと冬休みの宿題」
§さらにある日 事務所§
茄子「おはようございます~」
紗南「茄子さん。おはよー……」
茄子「紗南ちゃん、それはもしかして……冬休みの宿題ってやつかな? 事務所に持ち込むなんて、珍しいですね~」
紗南「それがさあ……冬休みって短いから、こういう宿題は集中してさっさと終わらせないと休みを楽しめないでしょ? あたし、ゲーム三昧の予定を入れちゃったからさ……今のうちに、と思って……」
P「まったく、紗南らしい動機だよな。早めの行動は素晴らしいが、朝イチで来てずっとやってるんだよ。そろそろ休憩して、回復(ヒール)を入れてもいいんじゃないか」
紗南「あ、あたしはご褒美があれば戦えるから……それにね、今回の宿題ってそこまで難しいのはなくって、質より量って感じなんだ」
茄子「紗南ちゃんに言わせれば、『授業は聴くもの』なのよね。真面目なゲーマーアイドルって、とっても素敵だと思います。目標に向かって一生懸命なところも、ね♪」
紗南「そ、そうかな。ありがと……そうだ、頑張るといえばさ、Pさんにとっての『ご褒美』って、いったい何なの? Pさんこそ、あんまり休んでないみたいだし……プロデューサーのお仕事って、大変じゃない?」
P「急なパスもあったもんだな。まあ芸能界だし、休みが未定なのは仕方ないよ。俺にとっての『ご褒美』か……これはやっぱり、アイドルの成長を近くで見られることだ。二人とも日に日にできることが増えていくからさ。俺も、もっともっと仕事を取ってこないとなって、いつも――
紗南「あう! わかった、わかったから! 茄子さんは? 茄子さんの『ご褒美』って、なに?」
茄子「私はね、私が出会う人たち皆に幸せになってもらいたいなって、ずっと思ってたの。アイドルになると、それまでよりずっとたくさんの出会いがあって……お仕事を頑張ると、皆が喜んでくれるでしょう? そのことが本当に嬉しかったの。紗南ちゃんみたいなアイドルのお友達もできたし……私、これからも皆を――
紗南「も、もう! 二人とも、きょうは何なの? やけに持ち上げるけど」
P「紗南の質問に、正直に答えただけだぞ。なあ?」
茄子「ねえ?」
紗南「なんだか照れくさいけど……確かに、二人があたしを認めてくれてるのは分かったし、期待に応えたいなって思ったよ。こういう時間も、あたしにとっての『ご褒美』って言えるのかも。へへっ」
茄子「まあ、これは……」
P「紗南に一本取られたみたいだな」
茄子「してやられちゃいましたね~。こっちまで『ご褒美』をもらった気分……紗南ちゃん、来年もよろしくお願いしますね」
紗南「うん!」
#3 終わり。エピローグである#4に続く
#4 紗南「きょうは茄子さんの誕生日だね」
§1月1日 朝 事務所§
茄子「新年あけましてー……」
「「「おめでとうございまーす!」」」
P「茄子さん、誕生日おめでとう」
紗南「おめでとう!」
茄子「ありがとうございます~。誕生日も同時に祝ってもらえるだなんて、とってもおめでたいですね~」
紗南「それでね、去年ちらっと話したとおり、茄子さんにプレゼントがあるんだけど……」
茄子「そうでした! 私、あれからずっと楽しみにしてたんですよ?」
P「気を持たせるつもりはなかったんだけどな……俺からは、これを」
紗南「あたしからは、これ! 茄子さんに似合いそうなのを選んでみたよ!」
茄子「二人とも……本当に、ありがとうございます。開けてみてもいいでしょうか?」
紗南「もっちろん! はやく開けてみせてよ~」
茄子「じゃあ、プロデューサーがくれた四角いのからね。これは……見たことのない本ですね~」
P「読んだことがあったらどうしようかと思ったけど、新年早々ラッキーだったよ。俺のお気に入りだから、ぜひ試してみてくれ」
紗南「例の、ほっこりするやつだね! ね、茄子さん! 読み終わったら貸してくれる? あたしも興味あるんだ」
茄子「ええ。またお茶の時間に、感想を話し合いましょう~」
茄子「紗南ちゃんのプレゼントは何かな? 私に似合うってことだったけど……あら、手袋ね! ちょうど持ってなかったから、嬉しいわ~」
紗南「やったね、Pさん! 二人の合わせ技で出したクリティカルだよ!」
P「それは重畳。俺も少しは役に立てたみたいだな」
茄子「さっそく着けちゃいましょう。えへへ、似合ってますか?」
P「ほう、これは……こっちも合わせ技でクリティカルって感じだ。紗南は茄子さんのこと、よく見てるもんな」
紗南「へへへっ、茄子さんのためだもん! このくらいはしないとね」
P「さて、プレゼントも渡せたし、そろそろ飯にしないか? 俺、腹減っちゃったよ」
紗南「あたしもお腹すいた~。茄子さん、お雑煮食べよう!」
茄子「はーい♪ お正月の朝は、やっぱりお雑煮ですよね~」
紗南ちゃんとプロデューサーのおかげで、きょうは特別な誕生日になりました。
三人で一緒に過ごせるなんて……私、やっぱり運がいいみたいです~♪
#4 終わり
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