ネミッサ「デビルサマナー鹿目まどか 対 魔法少女鹿目杏子」まどか「戦うの?」 (514)

・この作品は
「魔法少女まどか☆マギカ」×「デビルサマナー ソウルハッカーズ」
のクロスSS

【ネミッサ「いつかアンタを泣かす」ほむら「そう、期待しているわ」】


の続編です。

その設定を引き継ぎ、短編を気まぐれに投稿するスレッドです。
基本、21時~23時投稿予定です。

前回の読者の方向けですので、ご注意ください。

>>2>>3で原作との相違点を説明します。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1360757740


原作と違うところ

・ネミッサ
メアリー・スー。別の時間軸のさやかのグリーフ・シードを食べたため、
髪型がそっくりです。マミちゃんラブ。でもすれ違い。
魔法少女を組織的に保護して、来るべきワルプルギスの夜の
再戦に備えてます。意外とセクシー。シュークリーム好き。
魔法少女の素質があり、さやかの魂のお蔭で変身までできます。

・ほむら
時間停止できなくなったかわり、かつてのまどかのような弓を
武器にします。
性格がやや丸く、明るくなりました。『うにゃ』は禁句。
時折ネミッサが気になっているような言動が見られます。
まどかが一番、ネミッサ二番。三時のおやつは巴マミ。

・まどか
魔法少女にならず、なんと悪魔召喚士に。
シヴァと白山比咩大神(キクリヒメ)と契約してます。ほむらラブ。
人気急上昇中のほむらが心配です。
例え何があってもQBと契約しない決心をしています。
ネミッサはライバルです。

・さやか
一度魔女になるも、魔法少女に復帰(ご都合主義)今も昔も上条ラブ。
仁美と仲良く三角関係。
ほむらのネミッサへの好意をなんとなく察してますが、黙ってます。
さやかはネミッサの弱みを握ってて、強気です。
映画版と同じフォルティシモの髪飾りがついてます。

・杏子
皆と和解します。身寄りがないため鹿目家に養子縁組しました。
『葛の葉』に協力し、サマナーのパートナー見習いやってます。
さやかやネミッサとはゲームセンターで遊ぶ仲良し。
詢子ママによって可愛く改造されつつあります。
まどかたちの見滝原中学校に転入しましたが、クラスが違います。

・マミ
生き残り、二度の絶望から立ち直りました。
ネミッサと相思相愛ながらも、種族の違いからすれ違います。
本作では総合的に最強の魔法少女に設定してます。
おままごとの結婚式をあげちゃいましたが、ネミッサにとって
悪魔の契約になってしまったことに気付いてません。


・上条、仁美
ネミッサに暴露されて魔法少女の事情を知っています。
さやかとの三角関係を続けていますがとっても仲良しで、
そんな状態を楽しんでいるようです。


・グリーフ・シード、ソウルジェムの人工浄化システムができて
魔女になる確率が大きく減りました。
更にソウルジェムを直に浄化する方法も開発中です。

・ネミッサがスワチカを使って時間の巻き戻しをしたため、
彼女が執着している四人の魔法少女は魔力が少し高くなっています。

・QB
悪魔という契約の競争相手ができたため、魔法少女の真実を
伝えてから契約をせざるを得なくなりました。
マニトゥの力を使って、世界中の人間からエネルギーを少しずつ
回収する方法を開発中です。
『葛の葉』と消極的ながら協力関係を結んでいます。
あれ以来、五人の前に姿を見せていません。

来てたか
応援してるぞ


筆者です。

>>4
お、さっそくですね。
応援多謝です。

ただ、しばらくは看板に偽りありな内容です。
続編を期待してた貪欲な方に喜んでもらえるよう
頑張ります。

ネタが尽きるまで、お付き合いくださいまし。


【ばれんたいん くわとろって】

【ぷろろーぐ】

二月十四日。

女の子にとって特別な日。そして男の子にとっても緊張の日。
例年であれば、マミにとっても。

そして、魔法少女の宿命を持った少女たちにとっても。


マミは達成感に包まれていた。手ごたえを感じていたし、面接も
そつなくこなすことができた。

今年一年、特に四月には大変なことがあった。あの一か月は恐らく一生
忘れることがないと思っていた。そんな年に、試験があることは不安
ではあったが、それも無事に乗り越えることができた。
ひとえに家事を頑張ってくれた同居人のお蔭だろう。

あの地獄のような一か月からもう十か月は経った。

(でもそのおかげで可愛い後輩と、一番のお友達ができたのよね)

後輩の顔が一人一人次々と浮かび、最後に一番のお友達の顔が浮かぶ。

『二回目、だよ』

あれから半年も経つのに、思い出すだにまだ顔が赤くなる。
全くの迷いも見せず、まっすぐに宣言した横顔。
何の臆面もためらいも、恥じらいすらなく唇を重ね、
周囲の人間が仕掛けたサプライズなおままごとを、
丸ごと受け入れた、満面の笑み。

「私、あの子にやられっぱなしよね……」

試験会場の帰り、何気なくコンビニに立ち寄る。そこでマミはあること
に気付いた。入口入ってすぐ、正面のわかりやすいところにある。赤を
基調とした包み紙がこれでもかというほど並んでいる。

(ああ、チョコレートね…………)

(…………)

しばし熟考する。

「チョコレート!!」

突然大声をだし、周囲の店員やまばらなお客の視線を集める。くすくす
笑う女性店員やすぐに視線を外した客に慌ててその場を立ち去った。


今年は、入試に集中しすぎて、何にも用意していなかったのだ。
誰よりも大事な人がいる、初めてで、特別な、バレンタインデーに。


入試日とバレンタインデーが重なっていたのはすぐに気付いたが、
さすがにその前に手作りチョコなどやる暇も、そんな精神状態でも
なかった。
試験のことなどすっかり吹っ飛び、足早に帰宅する。
家にあるケーキの材料を思い出す。

(うん、使ってないから悪くなってない材料はあるはず、あとはカカオ
とか、そういうものは買って帰りましょう)

今日作って今日渡すのは恐らく難しい。残念ながら渡すのは明日に
なってしまうだろう。

(でもあの子は気にしなそう)

笑みをこぼしながら材料を選ぶ。なるべく多少高額でも品質の
良いものを、包装紙も念入りに選ぶ。綺麗で、彼女に似合った色。
感謝と、愛情をこめて。

試験を終えた解放感と、自分の思いを伝える機会を前に高揚していた。


さやかは、苦戦していた。

気持ちだけ先走り、なかなかうまくいかない。
となりのほむらもまどかも、杏子も仁美もそうだが、特にさやかは
焦ってしまう。

「さやかちゃん、大丈夫。焦らないでいいからね」

まどかの父、知久は優しい声で支えてくれる。しかし、隣にライバルが
いると思うと、やはり気になってしまう。

(これでいいのか。シンプルにハートがいいのか。少しひねる方が)

そのライバルも豊かな髪をまとめ上げ、一心不乱に作っている。
まどかも、ほむらも渡す相手を想って作っているからかかなり真剣だ。
そのなかで杏子はまだ余裕があるが、他の雰囲気にのまれ会話も
ままならない。

「まどか、ネミッサちゃんはどうしたんだい?」

「今日はお仕事で遅くなるんだって」

寄り目になりながら、父親の顔を見ずにチョコと格闘している。
知久としてはもっと和気藹々となることを期待していたのだが。ムード
メーカーのさやかがテンパっていてはそれはままならない。


友チョコを作りたい。そういったまどかたちに二つ返事で了承した知久
だったが、まさかこんな果し合いのような雰囲気になるとは
思っていなかった。
もう一人のムードメーカー、ネミッサもいない現状ではこの空気は
変わらない。

(みんな本命チョコを作ってるんだね……)

珍しい居心地の悪さを感じていた。

(まどかも、誰にあげるんだろうなぁ)

父親としては気が気ではない。だが、この雰囲気では問いただすことも
できない。

「ね、皆。そんなしかめっつらじゃ美味しいものは作れないよ。
笑顔で作ろうよ、ね」

「パパは静かにしていて!」

「は、はいっ!」

「ま、まどか、パパが困ってるから、ね?」

「お姉ちゃんも話しかけないで!」

「はっ、はいぃ……」

(まどかが怖い)

姉と父の共通認識だった。


ネミッサはマミの部屋で、宅配便を受け取っていた。
一抱えほどもある段ボール箱で三つ。サインを書いて受領すると
溜息を一つつく。

「なんでこんなにあるのよ! オカシ―でしょ!」

梱包を解きつつ、文句を垂れる。その中にあるのは、
色とりどりの包装紙に包まれた、チョコ。当然バレンタインのそれだ。
きっちりとした市販のもののほかに、手作りのものがある。
これらは『葛の葉』に参加していたり、参加していなくても交流のある
魔法少女が『伝説の魔法少女たち』のため今日に合わせて
昨日送ってきたものだ。これは十三日までの分のため、
翌日にはこれよりも多くのチョコが送られてくる。
百人近い人数からの贈り物がネミッサに集中している。

「ううう、分別がめんどくさい……。でもやんないと」

甘い匂いにげっそりしつつ。用意した五つの紙袋に分別し出した。
ご丁寧に紙袋は二重にしている。手持ちが重さで切れること防ぐためだ。

向こうでは比較的わけて入れてくれたが、それでも万が一の間違いを
防ぐため一個一個確認している。

「もう、なんなのよー。っていうかなんでマドカちゃんの分も!?」

仕方なく、もう二枚紙袋を取り出し、これも二重にするとその包装も
分別して入れる。
確かに夜を撃退した彼女たちに憧れるのはわかる。けれども、
まさかここまでになるとは思っていなかったし、
こんな形で憧れが発露するとも思ってなかった。

「女の子ってこういうのだって話には聞いてたけどね……」

自分にこんな形で降りかかることになろうとは、予想外だった。


筆者です。

バレンタインに合わせてプロローグをお届けしました。

明日は各々のチョコを渡す模様をお送りいたします。

さっき調べたら、群馬の高校選抜試験って14日のようです。
今年だったら、皆チョコどころじゃないですね。

誰に、とかいろいろあるでしょうが、お付き合いくださいまし。


みなさんは、チョコ、誰かにあげましたか?

乙でした。
家族から貰えればそれでいいや。

フロストを魔晶変化させたお菓子の長靴を、ちょっと気になる魔法少女に渡そうとするクズノハの新人サマナーとかもいるかも?

>>13

ネミッサ「アンタいい線いってるわね。褒めたげる。
明日見せるつもりだったけどアタシ宛にもあったのよ。ギフト。
特別に見せてあげるわ」

つ【霊かんセット】
つ【鳥サブレ】
つ【魔界獣肉ギフト】
つ【うろこせんべい】
つ【まんだらメロン】

ネミッサ「ちゃんと、少しはチョコはあったし、
首とか頭とか死体がないだけいいけどさ……。
あれか!アタシへの嫌がらせかなんかかこれは!」ウガー!

ネミッサ「これでマミちゃんたちから
義理でももらえなかったらアタシ泣くわ
……明日に期待して寝るわ……」

ネミッサ「アンタらはちゃんとチョコあげなさいよ……」


wktkせざるを得ないw

乙であります。

前作読破して涙腺崩壊の後やって参りましたDQ×メガテンの作者です。
自作品へのコメ感謝と共に今作も期待しています。
マミネミは良いものだ………

バレンタイン? はて、そんなシット団暗躍中のイベントに縁はございませんなチクセウ。


筆者です。

>>15
前作の番外編のようなのほほんとした空気を
お楽しみください。
片方がシリアス一直線なのでこちらでガス抜き
しております。


>>16
コメントありがとうございます。
あちらの可愛いのに癒されておりますよ。
涙腺崩壊とか言われて身悶えしております。
……ちなみにどこで泣きました?


残念ながらチョコに縁がなかった方も
魔法少女たちの甘いバレンタインで
ちょっと和んでくださいね。

ちょっと宣伝を。

ほむら「ジョーカー様呪い、という都市伝説」
ほむら「ジョーカー様呪い、という都市伝説」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1360403969/)

でシリアス一直線のものを書いております。
こちらもご興味があればぜひお付き合いください。



あとちょっとしたお願いですが、

前作の読者の皆さんが、どのシーンが好きなのか、
教えて欲しいんです。差支えなかったら教えてくださいね。
後学のためにもよろしくお願いします。

こちらは雑談してもOKですので、気軽にあれこれ
書き込んでくださいね。


筆者です。

今から続きをお届けします。

でも……せっかくバレンタインSSを企画したのに
サーバ落ちのせいで、日付が……。

気にせず行きます。

気にしませんとも、ええ。そうともさ!


【ほむら まどか】

まどかに連れられて、ほむらはまどかの部屋にいた。
ぬいぐるみがたくさんある。可愛らしい部屋。
ほむらがこの部屋に来たのは初めてではないが、今日の事情を
考えると落ち着かない。

お互い緊張していた。目の前で作ったチョコを交換し合うというのも
妙だった。けれど二人とも自分の作るのに精一杯で相手が何を作って
いたか、全然見ていなかった。

「私から、いいかしら」

ほむらの声が上ずる。顔も赤い。けれど、頑張って作ったものを
ちゃんと渡すため、なけなし勇気を振り絞って手渡す。
まどかの衣装に合わせた、ピンクと白の包装紙に、藤色のリボン。
横長の小さな箱。これも意味があるのだろう。

(すごく、ほむらちゃんらしいなぁ。きれい)

ほむらのセンスの良さが気に入ったのか、顔が綻ぶ。

「開けていいんだよね?」

ほむらは顎を引くように頷く。


ドキドキしながら、まどかは箱を手に取る。リボンを丁寧にほどき、
包装を破らないように開ける。丁寧な包み方がほむららしい。

箱のふたを開けると、そこには小粒のチョコが四つ入っていた。
全部、同じ作り。父の知久に教えてもらったとはいえ、すぐに
そう何種類も作れないので当然といえば当然だった。
それでもとても、綺麗な作りだった。
まどかには、どんな宝石よりも綺麗だと思った。

「綺麗……、ぜんぶ同じ味?」

「ええ、つまらないかもしれないけれど……」

「そんなことないよ、とっても綺麗。はんぶんこしよう?」

「いいえ、それは全部貴女に」

まどかは驚いたように顔を上げる。

「四つとも、まどかに食べてほしいの。
今私の前にいるまどか。
私を助けてくれたまどか。
私と一緒に戦ってくれたまどか。
そして…」

そこで言葉を切る。
まどかはそれに気づいた。先ほどとは違うドキドキが胸を打つ。

(ほむらちゃんにのろいをかけた私……)


「そして、私を送り出してくれたまどか」

まどかは今にも崩れ落ちそうな顔をしている。項垂れて、
しゅんとしてしまう。

「ご、ごめ……」

「呪いだなんて、思ってないよ」

ほむらの声が柔らかく、優しくなっている。まどかの手を取り、顔を
上げさせる。
一言一言、ゆっくりと、捧げるように、厳かに。

「あの貴女のお蔭で、今の貴女に会えたんだよ。貴女を救えたんだよ。
ありがとう、鹿目さん」

ほむらは、それまで溜めに溜めたものをまどかに捧げた。

精一杯の、笑顔。

「ありがとう。大好きだよ。鹿目さん」


まどかは、ほむらの手を振りほどく。その行動にほむらは嫌がられたと
思ってしまった。だが、それがすぐに違うことが分かった。
ほむらに抱き着くまどか。そのまま押し倒し、胸の顔を押し付ける。

突然の出来事に驚くほむらだったが、まどかの様子に気づき、優しく
抱きしめるだけにした。声を掛けたらいけないと、直感していた。

「私も、大好きだよ。ほむらちゃん。ずっと、一緒にいてね」

返事をする代わりに、まどかの髪を撫でる。優しく、優しく。

「私も、ほむらちゃんに、チョコ、上げるね」

「ありがとう。開けて、いいかしら?」

「駄目!」

珍しくきつい口調にほむらが戸惑う。

「今は駄目」

「どうして?」

「とにかく駄目なの」

苦しいくらいに抱きしめて、離そうとしない。ほむらは諦めて
抱き返す。お互いの、心臓の音が聞こえるくらい密着していた。
そして、小さな声だが、はっきりした声でつぶやく。

「ネミッサちゃんには……負けないんだから……」

「え……、え? えっ!」

「ほむらちゃんの一番の友達は、私なんだから!」

【ほむらちゃん。だいすき】

「デビルサマナー鹿目まどか 対 ヘンタイ王ホムホム」かと思った(適当)


投稿の途中ですが筆者です。

>>24
あなたの真後ろに、弓をつがえたほむらがいるから、
頑張って避けてください。

ちっちゃいほむらがわらわら出てきてまどかに群がる
んなら、……一匹くらい捕獲できないかな?



さぁ、次はさやさやですよ!


【さやか ひとみ】

公園のベンチ。いつもの噴水の前。
上条のバイオリンの練習時間が終わるまでの間、時間を潰していた。
二人は上条にチョコを一緒に渡すつもりだった。

「き、緊張するね」

「はい、そうですね」

「そうは見えないけど?」

さやかは軽口をたたきつつも、仁美の手が震えていることは
知っていた。その分、さやかには余裕が多少あるのかもしれない。

「わかってらっしゃるくせに」

仁美は緊張の面持ちで笑うと、一つの包みを差し出した。鮮やかな青と
白の包装紙。それがさやかの魔法少女の衣装と同じ色だと
すぐに気付いた。

「こちらを、どうぞ」

「あれ。これ恭介のじゃないの?」

「いいえ。さやかさんへのものですよ」

誤解されないよう、きちんとさやかの名前を言う。


「開けていい?」

「はい、まだ時間はありますから、召し上がってください」

丁寧に開けようとするさやかだが、端っこが少し破けてしまった。この
当たり、さやかの奔放な性格が出ているようだった。けれどもなるべく
破らないよう注意して包装を解く。

「これって……」

「私の、さやかさんへの、今の気持ちです」

「こ、これはずるいよ、こんなの。不意打ちすぎる」

さやかがむくれ、仁美が苦笑いをする。

「ごめんなさい」

だが、さやかはすぐに許したようだ。満面の笑みで答える。

「こんなことされたら。困っちゃうよ。でも、仁美には負けないからね」

「はい、それは私も」

「もしも、もしもだよ。二人とも振られたらさ」

「あとで後悔するような、素敵な女性になりましょう」

「うん、見返してやろうよ!」


【いちばんのしんゆうのさやかさんへ】


筆者です。

さやかと仁美の恋の行方はどうなるのでしょう?
筆者的には結末を考えておりますが、
敢えてぼかしておきます。
あの三人が仲良しのSSがないので、せめてここだけ
でも、ね。


次は杏子です。


【きょうこ じゅんこ ともひさ】

まどかとほむらは二階に上がり、さやかは仁美と出かけた。鹿目家の
リビングには杏子だけが残った。

その杏子は、緊張した面持ちで、詢子と知久の前にいた。
家族水入らず。杏子が求め失ったもの。

「そういえば、杏子はチョコを誰かにあげに行かないの?」

ココアを淹れながら、知久は何気なく尋ねる。
その言葉に動揺する杏子。
杏子の挙動にカンのいい詢子はにやっと笑う。知久の膝をつつくと
ウィンクして制する。

杏子は逡巡していて、いつもの快活さが鳴りを潜めている。
らしからぬ姿を二人はゆっくり大事に見守っている。
これも思い出の一つ。

意を決して、杏子はチョコを取り出した。
皆で食べられるような、大き目な箱に、少しいびつながらチョコの
粒が沢山入っていた。


つかえつかえながら、用意していた言葉を伝える。

「パっ……、パパ、ママ。あの、ありがとう。これ、お礼……です」

「誰に上げるのかと思ったけれど……」

「教えてもらったのを上げるのはおかしい、かな」

「そんなことはない。頑張って作ったんだろ」

「大丈夫だよ。楽しみだなぁ」

出来の悪さにしょげ返っていた杏子は顔を上げる。安堵の顔。
思わず、目に涙が浮かぶ。

「やっとパパママって言ってくれるようになったなぁ」

「あとは言葉遣いだね」

「きょーこねーちゃ、ないてる」

「な、泣いてないよっ」

タツヤの言葉に、目を袖口で拭ってごまかす。次いで、隣に座るタツヤ
の頭を優しくなでる。タツヤに、失った妹の姿が重なった。
辛くないわけはないが、それと一緒に歩いていこう。そんな気持ちに
なっていた。


おやつには遅く、夕飯には早い時間だった。いつもの休日ならば夕餉の
買い物に出かける時間だ。たいてい知久が一人で行くはずだが、今日は
杏子を誘った。

「チョコはデザートにしようか。杏子、買い物に付き合ってくれる?」

「お、おうっ、いくっっ」

「杏子。こ・と・ば・づ・か・い」

「あ……」

「これは、改善のし甲斐があるねぇ」

にやにやと詢子が笑う。杏子のほっぺたを左右に引っ張った。
それを止めるでもなく笑って見つめる知久。
タツヤは自分のほっぺたをひっぱり、お姉ちゃんとお揃いと笑う。

それは、仲のいい家族にしか見えない光景だった。

【パパ ママ ありがとう】


筆者でございます。

最後時間がなくて駆け足でした。ごめんなさい。

そして、一日遅れという意味で、マミッサは明日以降に
いたします。

こう、なんつーか、甘酸っぱい気分になれたら
いいなぁ、と思います。

あと、キャラの性格、変になってませんかね。それがいつも心配です。




感想お待ちしておりますね。

乙でした。

>>14
ネミッサは女悪魔だから、悪魔の好きそうな物を……という間違った配慮が産んだ悲劇ですね……。
でも誰もすいせんの花とかペリの財宝とか奮発しなかったか……。

>>18
ネミッサも魔法少女に関わって二周目と分かった所とスプーキーのヴィジョンクエスト
特に後者はサターン版しかやった事なくて、やっと3DSで生還ルートに進んでたのとほぼ同時期だったので、
その補正もあるかも。

あともう一つのマミッサスレ。

乙であります。
仁美好きだから出番多いと嬉しいですな。

>>17の質問ですが……
魔女さやかの前で演奏する上条君に泣き、
マミとネミッサの結婚式ごっこに泣き、
ほむらの涙腺崩壊シーンにシンクロし……数えきれるかぁ!(笑)
今回も杏子と鹿目家のシーンでウルッと来てます。
年とってから涙腺がユルユルだよチクセウ。

続きも期待してます。
次はマミネミだぜヒャッハー(モヒカン)


筆者です。
お返事です。

>>33
(私の脳内では)あのギフトにネミッサは大層ご立腹でした。
というか、もらった贈答品って悪魔たちどうしてんですかね?
お菓子の長靴とか食ってんの? 共食い?

ネミッサの本音がわかるシーンですね。
スワチカとほむらの固有魔法をからめるのは真っ先に
思いついたのですが、説明はかなり難産でした
スプーキーのヴィジョンクエストはまどか覚醒のためにも
頑張りました。甲斐があります。ご回答ありがとうございました。
マミッサ、エロスのほうは未だに恥ずかしいのです。


>>34
泣き所が数えきれないって……こっちがびっくりします。
ほむらの号泣シーンはテーマだから狙いではあるんですけど
色々感動してもらえて嬉しいなぁ。
実は、泣かないほむらはまとめで感銘を受けた
【まどか「がんばれ、泣き虫ほむらちゃん」】と
【まどか「がんばったね、泣き虫ほむらちゃん」】
の裏返しなんです。
ただ、あの作品で一点嫌なところがあったのであの作品を書いたんです。

……仁美の演説シーンはどうでした?
泣き所以外にも好きなシーンとかも教えてくださいね?


筆者です。

こんな時間からゆるゆると投下します。

マミッサが一番長くなってしまいまして、
なんかみんなと扱い違いますが、まぁあれです。
依怙贔屓です。


【まみ ねみっさ】

マミが帰宅した後、ちょっとした誤解による騒動があった。

ネミッサが、テーブルの上にチョコを並べていたのだ。

「ず、ずいぶん多いわね。どうしたの?」

「『葛の葉』に参加してる魔法少女やらなんやらから貰ったのよ」

誤解を招く言い方をしてしまったのだが、ネミッサは気付きもしない。
マミの顔色が悪くなる。

「……ずいぶんな人気ね」

「ホントよ、うんざりするわ」

「そう、なのね」

「ちょっと、何怒ってるのよ」

マミの声色が変わっていることに気付きネミッサも声を荒げる。
仕事もできずにひたすらチョコの梱包と分別を行っていて
多少苛立っていたのだ。

「人気者はつらいわね」

ネミッサはやっとマミの怒った理由に気付いた。その可愛らしい嫉妬を
理解した途端、先ほどまでの苛立ちが霧散した。
我ながら、現金だと思う。

(誤解で拗ねるマミちゃん可愛い)


「ホントよ、すっかり人気者になってね」

「じゃぁ、チョコいらないわね」

「ん? マミちゃんいらない?」

「ネミッサのことよ。それだけもらえば十分でしょう?」

にやっと笑うと、紙袋の一つをマミに見せる。そこには付箋で「巴マミ」
と印がついていた。
その中には十や二十ではきかない数のチョコの包みが入っていた。

「あっ!」

含み笑いをしたまま、ネミッサは続ける。

「そっかー、マミちゃんはいらないかー。
憧れのマミちゃんに断られた子たちはがっかりするだろうなー」

「しっ、白々しすぎない? ……あんまりいじめないで」

「だーめ、勝手に勘ぐって怒ったマミちゃんがいけないの」

「ご、ごめんなさい」

「可愛いすぎるのがいけないのよ」

にこっと笑うネミッサに、マミはまた完敗した形だ。


当日には、前日までに届いたものを配る。さすがに『本命』の邪魔
をしたくはなかったが、届けてくれた魔法少女たちに申し訳ないので
なるべく早めに渡すことにした。

ちなみに、一番多いのはほむら。ついで杏子、マミ、さやかが
同じくらい。ネミッサはそれらより少ない。そしてなぜかまどか宛に
もいくらかあった。恐らくまどかを魔法少女と勘違いしている人が
ちらほらいるのだろう。

更に(非常に困ったことに)マミ宛に、若いサマナーからのギフトが
いくつか届いていた。そのグラマラスな肢体に人気が集まっていた。

(でもさ、ジャックフロストの魔晶化したお菓子は食べていいの!?)

どこかで見たことがあるお菓子の長靴が、マミ宛に紛れていたので
こっそり除外した。そんなものを人間に送るな、と。

「ねえ、貴女宛の紙袋に、お肉の詰め合わせみたいなのが
見えるのだけど……」

「ああ、それ、見ないフリしてもらえる? ネタか嫌がらせかの
どっちかだから……」

盛大に溜息をつくネミッサに、マミが苦笑いを浮かべる。


さらに翌日。
一日遅れのバレンタイン。マミが頑張って作った手作りチョコ。
材料を多く用意したため、当然皆の分も作ってある。
すぐに悪くなるものでもないので、これは近く行うお茶会用に
取っておくことにした。

けれども、ネミッサへの『本命』チョコはすぐに渡したかった。
幸いにして、ネミッサは手作りチョコ作成中外出していた。
不幸にして、ネミッサは未だに外出先からは帰っていない。
例のミーハーな魔法少女たちからのチョコを配って歩いていた。

ほむらは、自分が贈られたチョコの数にうんざりしていたが、それと
同じ数がもう一度贈られて、悲鳴を上げていたそうだ。

マミとネミッサは夕飯を取るのが暗黙の了解となっていた。仮に片方が
不在の場合は前もって連絡があるが、今夜は一緒に食べることを約束
していた。

日中学校があったものの、なるべくごちそうを作ろうと頑張るマミ。
チョコを渡すだけでは勿体ないと、いろいろ作っていたのだ。

受験に協力し、家事を頑張ってくれたお礼に。


約束の時間通り戻ったネミッサと共に食卓を囲む。
時間がない中、一生懸命作ってくれたのだろう豪華な夕食にネミッサは
感激した。

「受験で疲れてるだろうに……」

「ふふ、家事ありがとうね」

「お疲れのお祝いしなきゃいけないのにねー」

「いいのよ。気持ちだけも十分」

「なら合格祝いに何かする。たぶん皆やってくれるよ」

「うん、期待してる。ありがとう」

「……合格してればね?」

「ちょっとぉ!」

ネミッサのヒドイいいようにマミがむくれる。冗談とわかっているから
こその言葉が心地よい。
会話の花咲く食卓。一時期は受験勉強に焦るあまりソウルジェムが
濁りまくり、魔法少女たちが手に入れたグリーフ・シードを慌てて
使わせてもらったこともあった。
だがそれも無事乗り越えた。ほっとしたようなマミの笑顔が、試験の
手ごたえがよかったことを表していた。

ネミッサがからかうまでもなく、マミは合格するだろう。
受験から解放されたマミは、明日からパトロールに復帰する。


楽しい食事が終わり、ネミッサが皿洗いを買って出た。これも家事を
手伝っていた経緯があり、もはや手慣れたものだ。
最初のうちは、泡が残っていたり、汚れが落ち切れてなかったりして
マミのやり直しが何回かあったものだが。

洗ったお皿を片づけ、手を洗う。次は紅茶だ。これはまださすがに
慣れていないようで、キッチンタイマーを駆使して淹れていた。
蒸らし時間や温度など、茶葉によっていろいろ工夫するところが多い。
大雑把には、茶葉が大きければ蒸らしは長く、小さければ短く。温度が
高すぎれば香りが飛んでしまう。本格的にやるとなるとかなりの手間に
なる。もちろんその分、美味しくもなる。

「ネミッサ、ポット温めててないよ」

「あー、忘れてた……」

「カップも温めて。ほら」

「うー、あと何注意すればよかったんだっけ……」

頭を悩ますネミッサが、マミには可愛くて仕方ない。
この指導のやり方を見たらほむらは怒るに違いない。
なぜなら、自分が指導されたときより、ネミッサはかなり優しく
丁寧に指導されているからだ。

きっと『巴先輩、ずるい』と、言うだろう。


食後の紅茶と共に、マミはチョコを差し出す。

「ネミッサ、一日遅れだけど。バレンタインチョコよ」

包みは、スプライトのパターンの入った銀色。リボンはやや濃いめの
黄色。二人の色。

「わぁお! えー? 手作り? いつ作ったの??」

受験シーズンに重なるため、ネミッサは過度の期待をしないように
していた。だから先日のヤキモチもあったが、まさか手作りする
余裕があるとは、まるで思ってなかったのだ。

「あ、ごめん。……アタシ用意してなかった」

「いいのよ。これはお礼なんだから。家事頑張ってくれたしね」

「そんな……でも、食べていい?」

「もちろん」

破らないように細心の注意を払い、慎重に解くネミッサの姿に
マミは苦笑する。

箱に入っていたのはミルクチョコと、ビターチョコに包まれた
オレンジピール。その綺麗な作りに、思わず顔が綻ぶネミッサ。

本当はマミはオレンジピールから作りたかった。だがさすがに時間が
かかるため、オレンジピールは市販だ。次こそは、全部作ろうと
心に決めていた。


「いただきまーす。ん……、んふふ、んー」

甘いもの好きのネミッサが嬉しそうに食べる。満面の笑みで一個ずつ
味わう姿に、マミも嬉しくなってしまう。上体を左右に揺らして
喜びを表現するネミッサは、屈託がない。

「顔、すごいことになってるよ」

「美味しいんだから仕方ないわ。んふー、ふふふ」

ここまで喜んでもらえるのだから、作り甲斐があると言いうもの。
このあたりのあけすけな姿勢は、背伸びをして大人ぶろうとする、
他の魔法少女たちには見られない幼さ。
それでいて、魔法少女を救おうと尽力する様は頼りになる
年長者のようでもある。
そのギャップが堪らなく可愛い。

要は、マミはネミッサが大好きだということだ。

(ピールが手抜きなのが悔しいなぁ。次はちゃんと準備しなきゃ)

ちなみにこの時点でマミは気付いていない。日本のバレンタインチョコ
は男性にあげる習慣だという発想が、すっぽり抜け落ちていることに。


「マミふぁーん、ふぁい」

ネミッサがビターチョコの端を唇でくわえ、物思いにふけるマミに
近づく。マミは器用にチョコを唇の動きだけで上下に動かすネミッサに
ちょっと呆れた。

「ほっひーけーむ、やろ」

「やっ、やらないわよ!」

「えー、やろうよ?」

艶めかしい唇の動きに、マミもドキッとしたのは確かだ。だがさすがに
そう何度もネミッサにやられるわけにはいかない。ここはびしっとする
べきだろう。

「はしたないわよ。食べ物で遊んじゃダメ」

「えー」

「そうやっていつもからかうんだから」

諦めて手を使わず口の中にしまうネミッサ。あまり残念そうには
見えないのが彼女らしい。だが、その唇の動きにマミの視線が集中する。

『二回目、だよ』

半年前のことがまた頭に浮かび、顔が赤くなるのがわかった。

「じゃぁこっちならいい?」

とホワイトコーティングのものを咥えてマミに差し出す。

「も、もうっ! やめなさい!」

「ちぇー」




(あんまり誘惑しないでよ、抑えられなくなっちゃう。
友達じゃ、いられなくなっちゃうから)


筆者です。

バレンタインの様子をお送りしました。
マミちゃんとネミッサだけ長いのは依怙贔屓です。

こんな感じで短編をエタ?らない程度に投稿します。
一方の作品がシリアスでちょっと息抜きできないので
こちらで可愛く動かしていこうと思います。
次は、ひな祭りか、ワルプルギスの一年後かに
なるのかな?

また感想等お待ちしております。
前作の読者さんには引き続き、
前の作品のお気に入りシーンなど教えてくださいまし。
お願いしますね。

乙でした。マミッサカワイイ!!

やっぱり魔晶食品は人の食べ物じゃないか……。
珍味のおつまみが人も食べられる限界かな?

かずみ編をやってみるとか。


筆者です。ストーリー投下しないので
下げで対応します。

お返事ですのよ、と。

>>47
ありがとうございます。
別作品キャラのカップリングとかいいのかしらん?
なんてことは【もはや考えず】妄想全開で突っ走ります。

本気なら魔晶食品より宝石渡せばいいんでしょうが
多分、サマナー的にはネタなのでしょう。


>>48
かずみはまだ未読なのです。結構バタバタ死人が出て
ナイスなストーリーらしいのですが。
織莉子も未読なので前作ではチョイ役のみにしました。
本格的に読破して、反映させてみたいです。


乙であります。

ヒャッハー! マミネミだー! 百合は糖分だー! 仁美はキマシタワー!
……失礼、俺の中のモヒカンが暴走しました。
女の子の描写がすげえ少女漫画だ……すばらしい(ヘブン)

>>35ですが……
仁美の演説シーン? んなもん同時展開の上条演奏とあいまってハンカチじゃなくてタオル用意しましたがな!
泣き所以外ってことだと、シヴァが杏子に婚約突きつけたとこですかね。
「おいシヴァ、そこ代われ」って口に出して言ってしまった……(死)

ではでは。今後も可愛い魔法少女たちを期待しております。


>>50
いやいや、少女漫画って、いやいや……。
読んだことなんてないですよ? 多分。

百合百合を書くとモヒカンが暴走するのか
なるほどなー(アイギス)
またやろうっと。

泣き所について
あの二人は筆者の思惑を離れ、勝手に戦ってくれました。
「さやかのためになにができるか」とキャラが勝手に動く
状態でした。なのでそれを聞いてまどかが動くところは
全く計算してません(汗)
すごいね、あの子たち。

あと、シヴァからコメントです
シヴァ「カーリーに踏まれてもいいなら代わる。むしろ助けてくれ」
とのことです。今も踏み続けられてるようです。
杏子ちゃんをかどわかそうなんてした罰でございます。


小ネタ 【わたしもあくま あなたもあくま】


英雄マミ「ねえ?」

ネミッサ「なぁに?」

英雄マミ「私たちももう悪魔なのよね」

ネミッサ「まぁ、そうね。
契約すればGUNPの中とかに格納もされるわよ、多分」

英雄マミ「至高の魔弾って技が使えるらしいんだけど
かっこいいわね! (名前考えようっと)」

猛将ほむ「あまり実感ないけどね。
燃費悪いなりに時間停止使えるのは助かるけど」

猛将杏子「あたしは自分以外も実体のある分身
つくれるようになったよ。状態異常魔法?
も使えるらしいんだよね」

英雄さや「私、メシアライザーっての使えるみたい。
これ燃費以外は高性能すぎるよ」

英雄まど「ラスタキャンディってどんな効果なの?
というか、なんで私魔法少女なの?」

ネミッサ「私に聞かれても困るってば」





英雄マミ「どこかで悪魔として
召喚されたりないかしら?」キラキラ

猛将ほむ「あなた……そういう露骨な提案しないほうが
いいわよ。相手に迷惑でしょ」

ネミッサ「マミちゃんってこんな子だったっけ?」

猛将杏子「まぁ、割と。昔はね?」

英雄まど「ネミッサちゃんも知らなかったんだね」

英雄さや「あんたが知らないんじゃ、私らは知らないよね」



……本気にしないでくださいね?

きも

乙であります。

杏子を嫁にできるなら
カーリー、ドゥルガー、ヘカーテ、スカサハの全員にミンチになるまで踏みつけられてもかまわんって人、かなり多いと思いますが?


筆者です。お返事だけなので下げ対応いたします。

>>53
大丈夫、自覚してます。
エロマミッサ書いてドン引きされた私には
それくらいじゃ同じませんぜダンナ。

ひょっとして、さやかの魔女化からの復活にご意見くれた人ですか?
そういった意味で批判でしたらうぇるかむですから、ぜひ具体的に
お願いします!


>>54
シヴァはカーリーが足踏みをすると地震を起こすので、それを抑えるために
敢えて踏まれるという神話があります。【地母の晩餐】の元ネタでしょうか。
そこからちょっと踏んでもらってます。

しかし、そうですか。杏子ちゃんのファンをなめてました。ごめんなさい。
「杏子ちゃんちょっと生意気可愛い」くらいにしか思ってなかったので、改めます。

悪魔になれば、ジェムの濁りを気にせずガンガン魔法使えるね!!

さやかは流石にソーマ神権現は使えなかったかーー。
まどかはサバトマ辺りでサマナー成分をごまかされたかな?

>>56
多分ジェムなしで変身できるんでしょう。
マグネタイトは食うかもしれませんが。

さやかは他人を癒すほうが似合いそうな気がして、
まどかは皆の無事を願ったので全部補助かけられるように
ってノリでつけました。まぁ、洒落です。
サバトマはもってそうですね、まどか。

みんなのスキル、決めたほうがいいですかね?

あいまいにしといて
展開に合わせて作ってく感じでいいと思う


筆者です。

>>58
そうですね~。活躍の幅が狭まっちゃいますしね。
それで行きます。
しかし、デウス・エクス・マキナたるワルプルギスを
倒すのはまだ躊躇ってます。できれば原作尊重したいので。


集団でワルプルギスと戦うのは
【キュゥべえ「ボクを信じてくれ、暁美ほむら」】
ですでにやってましたね。真似になっちゃうかな?


筆者です。

これからのなんとなく予定!
本編投稿じゃなくてすみません。


 4月:本編1~4章 【けっせんぜんや】
 5月:本編5、6章
 6月:
 7月:【いらいざはだれ?】
 8月:【ほんしんはどこにある?】
 9月:【えいゆうたちのたんじょうひわ】
10月:
11月:
12月:
翌1月:
翌2月:【ばれんたいん くわとろって】
翌3月:


転生後:【しがつのおわりのおまつり ふたたび】


こんな感じで月ごとに時期を分けて書こうかと思ってます。
時期が前後して矛盾がないようにしないといけないけどね。

スーパーセルの活躍が動画サイトにあげられて
困惑する上条と仁美ってのも面白いかな?

もう一個の方もありますので、時間がかかります。
気長にお待ちください。



追伸
遅ればせながら……。
前作の最後の方のコメント。非常に嬉しかったです。
あれで〆られてよかった。ありがとうございました。

>>60
乙。
上条&仁美ネタwktk


筆者です、時間が空いてしまってすみません。

>>61
お話の通り上条と仁美にスポットを当てたものを
作りました。六月分ですね。
具体的にはあの三人です。
ちょっと仁美の出番が少ないかな。

ネミッサは、今回チョイ役です。
お気に召すとよいのですが。


【がくしとせいじょはゆうめいじん】

(えっと、『みたきはら』の漢字は……)

『魔法少女保護管理室』でも仕事のお昼休み。
ネミッサは住居をマミの部屋で申請しようと住所を書いていた。
給与明細などを送る住所に使うそうだ。
漢字が苦手なネミッサは、ネットを使い漢字を確認しようとした。
たまたま検索サイトのテキストを使い打ちこむ。一発変換で出たので
それを見ながら書類に住所を手書きで書き込む。

「あれ? 室長も興味あるの?」

『魔法少女保護管理室』のスタッフが気さくに声をかける。長い髪を
三つ編みにして、肩から前にたらすのが彼女流。

「え、なんのこと?」

「【見滝原の奇跡】のことだよ。でも、起こしたのは室長だもんね」

ため口で話すスタッフにネミッサは怒るでもなく平然と応対する。
見た目も実年齢も年下のネミッサに、妹の様に接していた。
スタッフもネミッサの口調にいちいち突っかかったりしない。
だが彼女が何を言っているか、さっぱりわからない。

「だからなんのこと?」

「ああ、ならそのまま検索すればわかるよ。
動画サイトがヒットするからさ」

郵便番号も調べる必要があったので何気なくそのまま検索する。
その検索結果を見たネミッサは、呆けたような顔をした。

「ああ、なるほどなー」

「ひょっとして知らなかった?」

「いやぁ全然よ」

「これから大変かもよ、その二人」

スタッフはそれほど大変とも思えない口調で言った。


――き原の皆さんに申し上げます。
わたくしは志筑家の一人娘、志筑仁美と申します――

携帯電話やデジカメが普及したためか、一般の人が映像を撮影し公開する

ことが簡単になった昨今の弊害といえようか。

――なさん、僕は上条恭介です。ご存じの方はいるでしょうが、僕はほん

の一週間前まで、事故で左手が動かせませんでした――

ワルプルギスの夜が現れたあの日、自らにできることを探し戦った二人
の活躍がネットの動画サイトにアップされたのは五月の末。大騒ぎになっ

たのは六月に入ってからだった。

仲間内で最初に気付いたのはまどか、というかその母親が発見した
らしい。比較的早い時間に帰ってきた詢子は、晩酌の合間に話した。

「なぁまどか。仁美ちゃんと上条君が動画サイトで評判になってる
って、知ってた?」

「え? ううん、知らないよ」

「仁美とぼうやが? 何かあったんか」

「杏子、言葉遣い」

「は、はい」

じろっと睨む詢子に素直に謝る杏子。

「ほら、あの嵐の日、二人が頑張っただろ? あの時の映像が動画で
インターネット上にあるんだって。閲覧数も結構多いみたいだ」

多少まどかは関心を持ったらしい。寝る前にスマホを使い動画サイトを
閲覧しようとしたが、宿題があることを思い出した。そのためそれを
検索したまま放置して充電器に繋ぎ、翌朝までそのままに
なってしまった。

※再貼り付け 改行位置修正


――き原の皆さんに申し上げます。
わたくしは志筑家の一人娘、志筑仁美と申します――

携帯電話やデジカメが普及したためか、一般の人が映像を撮影し公開する
ことが簡単になった昨今の弊害といえようか。

――なさん、僕は上条恭介です。ご存じの方はいるでしょうが、僕はほん
の一週間前まで、事故で左手が動かせませんでした――

ワルプルギスの夜が現れたあの日、自らにできることを探し戦った二人
の活躍がネットの動画サイトにアップされたのは五月の末。大騒ぎになっ
たのは六月に入ってからだった。

仲間内で最初に気付いたのはまどか、というかその母親が発見した
らしい。比較的早い時間に帰ってきた詢子は、晩酌の合間に話した。

「なぁまどか。仁美ちゃんと上条君が動画サイトで評判になってる
って、知ってた?」

「え? ううん、知らないよ」

「仁美とぼうやが? 何かあったんか」

「杏子、言葉遣い」

「は、はい」

じろっと睨む詢子に素直に謝る杏子。

「ほら、あの嵐の日、二人が頑張っただろ? あの時の映像が動画で
インターネット上にあるんだって。閲覧数も結構多いみたいだ」

多少まどかは関心を持ったらしい。寝る前にスマホを使い動画サイトを
閲覧しようとしたが、宿題があることを思い出した。そのためそれを
検索したまま放置して充電器に繋ぎ、翌朝までそのままに
なってしまった。


通学路。まどかと杏子が待ち合わせ場所で佇んでいる。いつも通りなら
ほむらがそろそろ現れる頃だ。案の定いつもの時間にほむらが来る。

「おはよう、まどか、杏子」

二人もほむらに挨拶を返す。まどかにはこの柔らかくなったほむらが
嬉しくてたまらないらしい。真っ先にほむらに駆け寄る。

「おはよう! ほむらちゃん!」

「さやかも仁美も、ぼうやもまだだよ」

「さやかは遅刻かしらね」

くすくす笑うほむらは、あの頃の鹿爪らしい顔は影をひそめていた。
そのおかげで人気が出てしまい、まどかは気が気ではないのだが。

そんな風に待ち合わせをしていると、杖を突きながら上条が表れた。
その左右には上条のカバンを持つさやかと、躓かないように気を
配る仁美。上条の歩行の邪魔になる小石を、さやかがさりげなく
蹴り飛ばし安全を確保する。細やかな気遣い。

「おっはよう!」

「おはようございます」

「おはよう」

以前はまどかとさやか、そして仁美だけだった登校風景が今や六人だ。
ここにマミが加わると七人になり、より賑やかになるのだが……。

「マミは遅れるわ。ネミッサの出勤に合わせるそうよ」

ほむらの携帯にメールが来ていたようだ。皆も確認するとCCで
同じ内容が送られていた。

「……あいっかわらず仲いいねぇ」

「仲良くなるようお願いはしたのよ。
ただ、あそこまでやれとは、言ってないんだけれどね」

ほむらはつぶやくと、皆がくすくす笑う。二人の仲の良さが
微笑ましかったのだろう。
そのなかでまどかだけが、仏頂面をしていた。いつからかは不明だが
ほむらがネミッサの話題をすると、途端に機嫌が悪くなった。


「このぉ、春か、この世の春なのか。これか格差か!」

そもそも上条も悪い。美人転校生二人に美人お嬢様。幼馴染の女の子に
その親友の女の子。そんな中に一人男が混じっていて、思春期の男子の
怨嗟を受けないはずがない。時にはスタイルと美貌で有名な先輩女性
まで『侍らせて』いるのだから。

「羨ましいよなぁ」

「いたたたたたた! いたいって!」

とクラスメイトの中沢に肩を痛いほど掴まれる。リハビリだマッサージ
だとこうして攻撃を受けているのだ。
上条も魔法少女の件では秘密を共有する仲だ。だからさやかの学業も
フォローするし、仁美とともに協力をしている。そのおかげか、
さやかも最近は目に見えて成績が上がっているらしい。

「それに、それだけじゃないんだよなぁ……」

教室の前には女生徒がちらほら。これは上条と仁美が目当て。あの演奏
と演説により、ファンが急増したとのことだ。

あの規格外の嵐で人的被害が最小限に抑えられたのも、暴動も略奪も
起きなかったのも、あの二人の功績があったからとみられていた。
中学生が必死になって住民に呼びかけた結果だった。

しかしそれにより上条は【奇跡の楽師】、仁美は【見滝原の聖女】
などと揶揄されていた。女性ファンが増える要因である。

中沢の指に必要以上の力が入る。

「や、止めろって! わるかったから!」


休み時間、昼休みになれば廊下に人だかり。放課後になれば昇降口や
校門に人の波。さすがにマスメディアがくるわけではないが。地元の
物見高い人々が集まっていた。
お昼休み、屋上に退避した一同はマミも交えて会話に花を咲かせていた。

「でもなんでこんなに集まるのかしらね」

「それがですね、動画サイトで広まってるらしいんです」

ネットの情報に疎いマミの疑問に、詢子から情報を得たまどかが答えた。
悪魔召喚アプリ入りのスマホを取り出す(対悪魔の護身用)と、
昨晩放置した動画サイトを立ち上げ、二人の動画を再生してみせる。
まどかに悪意はない、知らないであろうマミに見せるためだった。

――なさん、僕は上条恭介です。ご存じの方はいるでしょうが、僕はほん
の一週間前まで、事故で左手が動かせませんでした――

「ああ! ちょ、ちょっと!」

取り乱し停止させようとする上条。スマホに手を伸ばすがそこを杏子に
横からとられる。

――ですがそんな僕を……、おっ幼馴染が……支えてくれました――

雑音交じりとはいえ、明瞭に言葉は聞こえてくる。幼馴染への感謝の
行になると、さやかが真っ赤になる。当然、上条も。

――未熟とはいえ、ここまで演奏することが出来るように
なったのは……、その支えのおかげです――

演説が終わり、巻き起こる拍手のところで動画は途切れる。
そのほかに、そこで演奏した曲もサイトに上がっていた。ご丁寧に上条
は曲紹介をしてから演奏をしていたので、動画を投稿した人物は、
ご丁寧に曲ごとに投稿していた。ちなみにその中に
「グノーのアヴェ・マリア」はない。

「おい、まどか、仁美のほうのはどうやってみるんだ?」

「え! わたしのもあるのですか!?」

「聞きたい~。杏子さん聞かせて!」

皆は表情は興味津々。仁美は戦々恐々だ。

「いいけど、やりかたわかんないんだよね。どうやるの?」

「貸してごらんなさい、多分検索すれば出るから」

「ほむらさん! や、止めてください!」

「仁美、諦めたほうがいいよ……」


――すが、今この瞬間にも一人でも多くの人を救おうと
戦っている人がおります――

「このあたりは私たちにも聞こえたわ」

マミが声を出して喜ぶ。この演説で折れた心が奮い立ったのだから当然
だった。同時にあの時を思い出し、少し涙ぐむ。

――皆さんを守る人たちは大勢いるのです。
どうかパニックにならぬよう、心お静かにお待ちください――

「今だから言えるけれど、
これがなければ私たち、負けていたかもしれないわ」

ほむらがしみじみと呟く。掛け値なしの本心だった。振り返ってみれば
皆の後押しがどれか一つでも欠けていれば、あの夜は無事に
超えられなかったはずだ。
ほむらは内心で、誰にも頼らないと意固地になっていた自分を恥じた。

――まだ避難所にたどり着けていない方もいらっしゃいます。
皆で協力し合い、この嵐をのりきるために力を貸してください。
どうかよろしくお願い致します――

「このあと、スプーキーズさんと一緒に
避難のお手伝いもしたんだよね。すごいよね」

「はい……。も、もう、恥ずかしいです。止めてください……」

上条と仁美が照れるのはわかる。だがなぜかさやかまで真っ赤に
なっていた。それは、上条と仁美が揃って演説の中で、揃ってさやかの
ことを暗喩していたことに、気付いてしまったから。

二人はこう言っていた。

――さやかたちが頑張っているから、皆さん力を貸して――

と。


放課後まで上条は散々中沢にいじられた。もはや男子生徒の怒りを一身に
受け、疲労困憊だった。

放課後になると、脚のリハビリの上条にさやかが付き添う。仁美は
習い事で付き添えないのでその代りだ。仁美が予定がなければ代わりに
付き添いそうなものだが、なぜかその時仁美はさやかも無理やり
引っ張っていくのが、さやかには不思議だった。


ほむらやマミは気を利かせ、さやかと上条と別行動を取ることにした。
悪戯心がないわけではないが、やはり、二人で話すこともあろうという
気遣いだ。仁美も日直で職員室に行った後、習い事で帰ってしまう
とのこと。完全に二人きりになっていた。

だが、今日ばかりはそれが裏目に出てしまったらしい。
校門の前に人だかりができている。それはやはり上条を待ち構えていた
他校の生徒、それも女子生徒ばかりだ。

(あっちゃぁ)

こればかりは避けようがない。裏門はないわけではないがリハビリの病院
にいくには遠回りになり、上条に負担がかかる。変装などしようにも
松葉杖は隠しようがない。

「恭介、どうしよう?」

「うーん……、無視して突っ切るしかないよね、時間もないし」

だが、それより先に向こうに気付かれたようだ。四、五人の女子生徒が
学校の敷地まで入り込んできた。


「あー、こいつだ。上条って!」

「そこそこかっこいいじゃん」

「なんだバイオリン持ってないの?」

「あんたじゃま。どいてよ」

その一行は隣で荷物を預かっているさやかを押しのけて上条の写真を
撮ろうとする。その動きに苛ついたさやかは、その写真に割り込む
ように上条の前に立つ。

「ちょっと、邪魔しないでよ!」

「あんたたちこそ邪魔だよ。恭介は用事があるんだから」

女子生徒の一人は鼻で笑う。

「はぁ、あんたにはカンケ―ないじゃん」

「関係あるよ! 私は恭介の幼馴染なんだから!」

上条が何か口をはさむ間もなく、さやかと女子生徒たちの口論が
始まった。

「うわ、有名になった途端恋人面してんの? キモ!」

さすがにその言いように腹を立てた上条が口をはさむ。

「止めないか。さやかはずっと幼馴染だよ」

「あー、はいはい。騙されてるねあんたー」

女子生徒はからかってまともに取り合わない。


その言いようにますますさやかがヒートアップする。さすがに声が
大きくなり、周囲の注目を集める。だが、そこに割り込もうとする
者はいない。遠巻きに見守り、巻き込まれることを恐れているようだ。

「さやか、落ち着いて。時間もないし、行こう」

「なんだよ! 写真くらいとらせろよ!」

歩き出した二人を止めようと、さやかの前に立ちふさがる女子生徒。

「ジャマ」

「邪魔なのはあんただよ。とっととどっかいってもらえない?」

元々、感情の波の大きいさやかだ。徐々にたまった鬱憤が少しだけ
漏れる。

「……いいかげんに……しなよ……」

経験が浅いとはいえ、魔法少女としてもう何度も命のやり取りをし、
あの夜も乗り越えたさやかだ。ベテランには及ばないもののその辺の
同年代とはくぐった修羅場が違う。その眼光、吹き出す威圧感は完全に
女子生徒を怯えさせた。


「な、なにコイツキモい……。い、いこ」

「だいたいコイツ上条のなんなんだよ! むかつく!」

負け惜しみを言い、怯えきった女子生徒たちはその場を立ち去った。


「さやか」

「あ、ごめん。行こ?」

努めて明るく振る舞うさやか。だが、女子生徒が言った言葉にわずかに
傷ついているようだった。その傷は、きっと幼馴染の彼にしか
気付けないし、癒せない。
肩を並べて歩く二人。いつもは朗らかなさやかが言葉少なだった。

病院の前まで来て、上条は意を決して話しかける。なるべく穏やかに
声をかけるつもりが、つい上ずってしまう。

「さっきのこと、気にしてるよね」

「あははは。そんなことでめげるさやかちゃんじゃないけどねっ」

笑いも自然に出たが、そこにはわずかな陰が見える。それが上条には
痛々しい。

「まだ、確かに、恋人なんて僕らは言えないと思う」

少女の表情が強張る。だが少年は力強く言う。

「けれど、君は僕にとって、特別な幼馴染だ。
それだけは、知ってて欲しい。少なくとも……」

少女の不安げな顔がわずかに揺れる。少年は真心をこめて言う。

「僕の左手は、僕のものじゃない。君の、君のためのものだから」


さやかの顔が崩れる。それを隠そうとそっぽを向く。

「い、いやだなぁ。それじゃプロポーズみたいじゃない。
仁美に、悪いよ……」

「ごめん、ちょっと重かったね。でも、僕の本心だよ」

「こんなところで言うことじゃないでしょ!」

さやかは顔を上条に見せないようにしている。そのままの姿勢で、
返事だけ荒げていた。

「さぁ、さっさと行きなっ! リハビリ頑張って!」

わざとぶっきらぼうに言うと、上条の背中を引っ叩く。そのまま
顔を見ない、見せないように足早に立ち去った。
痛みが走る背中に困惑しながらも、上条はさやかを見送った。


「もう、もう、もうっ! あんなこと言われたら、
抜け駆けしたくなっちゃうよ。そんなんじゃ……きっと私……、
自分が許せなくなっちゃう!」

さやかは駆け出した。走りながら涙が出てきた。
嬉しくて、申し訳なくて、幸せで、許せなくて、ぐちゃぐちゃになった
まま、家まで走り抜けた。


自宅についてから、鞄を預かったままだと気付き、
慌てて引き換えした。だいぶ、ばつが悪かったようだ。




「そうですか、そんなことがあったのですね」

「うん、ごめんね。こういうのは隠し事したくなかったから」

「いいんですよ。上条さんを守ってくれたんですから、それくらいは」

「で、でも、フェアじゃないよね」

「ふふ、大分自信があるんですね。
でも、それくらいでは、私は負けませんわ。お気になさらず」

「う。そういうわけじゃ……」

(不器用ですね……。だからこそ、応援したくなってしまうんです。
例え、ライバルでも。いいえ、ライバルだからこそ)

仁美は、そんなライバルが、大好きだった。

ひょっとしたら、上条よりも。


「さ、お昼終わったし、仕事仕事」

切り上げて、動画サイトのウィンドウを閉じる。当然お気に入りに
することも忘れない。当面これで二人をからかうことにした。

「ねえ、こないだ参加決めた子、会いに行っていい?」

「室長暇なら一緒に行く?」

「はは、アタシ暇に決まってんじゃん」

「それなら実体化ダイブで連れてって」

「……それなら交通費請求しないわよね?」

二人の背後にマダムが立っていた。三つ編みのスタッフは口をつぐむが
ネミッサはどこ吹く風だ。さして後ろめたい話をしてたわけではない
からだろう。

「暇なら、新人さんの研修に立ち会ってもらえる?」

「アタシ魔法少女の戦い方なんて教えられないわよ」

「それなら、また誰か連れてきて。そうね、マミちゃんがいいわ。
教え方がいいって好評よ」

「受験生なんだから、そっちを優先させて」

「それなら代わりに貴女にお願いするわ、暇ならね」

弱点のマミを人質に取られては頷くよりほかはない。
マダムにはかなわないとこっそり溜息をついた。


筆者です。

連続投稿ですが、お送りしました。
仁美と上条事情を知っているケースがないので
ちょっと風変わりなSSになったかと思います。

次回もまた間を置きます。
ごゆるりとお待ちください。

あのメンバーを天城屋旅館に連れてくネタを
妄想したことあったのですが
P4の格闘ゲーム未プレイなので
妄想にとどまっておりました。
そしたらすでに番長が見滝原いくSSあったので
お蔵入りさせました。

ちょっと遅かったですね。

乙でした。

魔法少女もひとりひとり戦い方が違うっぽいから、
多分ネミッサでも教えられる戦闘の基礎的な座学と、シーアークみたいな異界での戦闘訓練の護衛辺りなのかな?


筆者です。

>>78
乙ありがとうございます~。
対魔女訓練ではなく、サマナー相棒見習いみたいな訓練のつもりで
おりました。多分シーアークで戦わせるんでしょう。

お礼ついでにちょっと『座学』で思いついた小ネタを。

――――――――――――――――――――――――――――――――

【まず、ぬすみみしたことをあやまろう】


魔法少女への講義が終わったネミッサのつぶやき。

「マミちゃんから(無断で)借りた魔女ノートって役に立つわね。
魔女の姿かたち、結構特徴掴んで描いてるからすごく便利」

ぺらぺらと、何気なくめくると、魔女以外の何かも書いてある。

「ん? 『ネミッサの広範囲雷魔法 → 【grande・fulmine】』
……これって『ぐらんで・ふるみね』とかって読むのかな」

小首をかしげるが、すぐに思いあたった。

「ティロ・フィナーレの仲間かもね。今度一緒に戦うとき使ってみようっと。
……喜んでくれるかなぁ」

――――――――――――――――――――――――――――――――

※イメージ的には『The different story』とかで杏子に見せたノートです。

※【grande・fulmine】
イタリア語でgrande(大きな)・fulmine(雷)
という意味で適当に作りました。

ちなみに、ロマ・フルメンは【fulmen】(雷)だそうです。
ロマの意味はわかりません。

筆者です。

すいません、大間違いをしてしまいました!

転入前の杏子がナチュラルに混じってます!

すいませんが、勝手に紛れ込んだとか
侵入が慣れっことか、脳内補てんしてください(汗)

うわぁぁぁぁぁ……。
只でさえミス多いのに……。
申し訳ありません。

乙であります。

仁美の立ち位置がCCさくらの知世ちゃんを彷彿とさせます。
切ない感じがグッときま……キマシタワー(笑)

演出上仕方ないとはいえ、身勝手な女子学生に殺意が……
うちの主人公(殺伐)にザンマオン打たせていいですか?(笑)

今後も期待してます。

乙。2828が止まらんwww


筆者です。

>>81
CCさくらは詳しくなかったのですが
似てるのかぁ。両方ともお嬢様ですしね。
仁美がこっそり、さやかの魔法少女姿を撮影してる情景を
想像してしまった……アリですね。
そんな仁美が、怖い人たちをあの女子高生に派遣しましたので
余計な魔力使わなくてへいきです。


>>82
あの三人には、恋を通じて成長して欲しいです。
2828しながら、見守ってあげてください。
もっと2828してもらえるよう頑張ります。

筆者です。

本編はできてません。
ご期待してくださるかた(いるよね?)には
申し訳ありません。
気長にお待ちいただければ幸いです。

今空いてる月はこんな感じ。


10月:
11月:
12月:
翌1月:
翌3月:


10月はまどかの誕生日、3月は卒業式かな?
11月~翌1月はアイディアがありません。

スキー旅行とか書こうかなぁ。私もスキーやるから
描きやすいし。

かずみと織莉子はまだ未読でス。
それを読んだらなんかアイディアわくかなぁ。

あ、一応織莉子は『葛の葉』に参加してます。
予知能力で大活躍していると思います。


筆者です。

まどマギの談義でひな祭りの話があったので
かいてみました

三月の話もこれでいいかなと、思ってます

書き溜めましたので、連続で投稿行きます


【ひなまつり うけつぐもの】

三月三日はひな祭り。

比較的新しい街である見滝原では、雛飾りを飾る習慣のある家庭は
なかなかない。
そんな中、お嬢様の仁美の豪邸にはちゃんとしたお飾りを毎年行って
いるとのこと。
習い事のないその日、魔法少女たちに交じっていた仁美がそんなことを
言う。放課後のファーストフード店は少女たちのトークで彩られる。

「アタシ見たことないなぁ。どんなのなの?」

「ちょっとまって。去年撮ったのが、あったよ。はい」

まどかが行事に疎いネミッサに携帯で撮影した仁美の雛飾りを見せる。
小さいが鮮明な画面に、可愛らしい人形が映っていた。しかし馴染みが
薄く、現物を見たことがないネミッサはイマイチピンとこないようだ。

「あんたね、せっかくまどかが見せたのに。反応薄いなぁ」

「さすが無粋なネミッサね。まどか、悲しまなくていいからね」

「相変わらず空気読まないからなぁ」

「はいはい。そういうときアタシ弄るのはもうネタよね。ネタ」

「別に悲しんでるわけじゃないのに。ネミッサちゃんも気にしないでね」

さすがにまどかはネミッサいじめに参加はしない。苦笑いをしながら
フォローに徹した。


そんな流れを見て仁美も助け船を出す。

「ふふ、日本の行事に疎いのは仕方ありませんわ。
一度見にいらっしゃいます?」

「いいの? 悪いわねー」

こういうときに遠慮も何もないネミッサは、今日の今にでも
行きそうな勢いだ。その様子にさすがのさやかが慌てる。少なくとも
ネミッサよりは空気を読める子である。

「ちょっと、今から行くの? さすがに迷惑でしょ」

さやかは杏子以上にフットワークの軽いネミッサをたしなめる。
さすがにお嬢様の家に、いきなり突撃するのは憚られた。
だが仁美はにっこり笑って言う。

「私たちも……いいのかしら?」

「わたくしが一緒ならば問題ありませんわ。皆さんもどうぞ」

各々が仁美宅に行くことはあったが、この大人数で行くのはあの時の
打ち上げ以来である。
仁美としては、家に友人を招くのが嬉しくて仕方ないらしい。にこにこ
しながら応じている。
ちょっと遠慮がちなマミにも笑顔を向けている。どこかマミに通じる
何かを感じているとのことだ。あの時のお菓子談義も楽しかった
のだろう。にっこり微笑んで言えた。

「巴先輩もご一緒にどうぞ」

「皆が行くのに断るのが失礼よね。お邪魔するわね」


ネミッサが初めて見た雛飾りは、彼女の予想に反しこじんまりとした
物だった。豪華絢爛というものではなく、細部に拘った飾り雛。
雛あられや白酒代わりの甘酒と共に、雛壇のある部屋に通される。

「……意外にちっちゃいのね」

「失礼なこと言うな!」

写真からみたイメージでネミッサは語るが、さやかはそれを悪くとった
らしい。しみじみとみるネミッサの尻を引っ叩く。

「まぁまぁ。これはお母様が代々受け継いでいるものだそうです」

「じゃぁあんたもいずれ受け継ぐんだね」

「そっかぁ。大事にしないとね。仁美ちゃん」

よく見ると、細部の作りはきちんとしていた。いやらしいお金のかけ方
をしていない。所謂名門とされる志筑の家の伝統ある雛飾りだった。
だからこそ、世代を超えて受け継ぐことができる質の良さを備えている
のだろう。
もっとも、ネミッサや中学生にそこまで理解できるわけもなく、
ただただ日頃見ない珍しいものに目を奪われていた。

もっとも、食いしん坊の杏子にとっては、雛よりあられ、といった風で
あるらしい。ネミッサと雛あられの取り合いをし、二人とも
マミにはたかれていた。


マミ宅戻ったネミッサは、言葉少ななマミに気付いた。友人の家に行く
ことが少ないマミは、まどかの家に行ったときも、緊張しつつも喜んで
いたはずだった。そのマミが浮かない顔をしていた。

「なんかあった? ずいぶん静かじゃん。なんか落ち込んでない?」

「うん? ううん、違うのよ。ちょっと忘れてたのをね」

浮かないというよりは、考え事をしていたらしい。いつもは開けない
押入れを開けると、制服姿のままお尻を突き出した格好で何かを
探している。

「スカートの中見えちゃうわよ」

「もう、茶化さないで。ここにあったはずなのよ」

「お雛様?」

「ええ、そうよ……。たぶんこれ」

と埃にまみれた段ボール箱を取り出す。さらにその中には木製の
しっかりした箱に守られたひな人形が入っていた。
これまで一度も出したことがないため、ネミッサも当然見たことがない。

「なんだ、アンタも持ってたのね」

「うん、今日話にでるまで忘れていたわ。これ、ママのなのよ」


事故で亡くなった両親から、受け継ぐはずだったもの。形見。
それなりに古いものらしく、今売られているものにある飾り方の説明書
らしきものが入っていない。

「ママもね、おばあちゃんから貰ったんだって」

しみじみという。ネミッサが知ることがない、家族を失った悲しみ。
突然の事故死では、形見や受け継ぐものなどを受け取る暇もなかった。
ましてやマミは魔法少女としての宿命を負ってしまった。

「ママの形見って、あまり意識してなかったの。
でも、ちゃんとあったのね」

マミはお雛様を胸にかき抱き、目をつむる。その唇からはネミッサにも
聞き取れない呟きがこぼれる。それからしばらくしてまじまじと
雛人形を見つめると、くすっと笑う。

「昔は、もうちょっと綺麗だと思ったのになぁ。
志筑さんの家のを見たら比べちゃうなぁ」

「そんなの比べても仕方ないでしょ。……ねぇ、それ今から飾る?」

にこにこしながら、首を左右に振る。

「ううん、並べ方がわからないのよ。それに今日は遅いしね」

「……アタシ手伝うよ、見たい。駄目かな?
並べ方ならインターネットで調べられるしさ。どう?」

そんなことを言いながら、ネミッサは必死に飾ろうと主張する。
マミはなぜそこまでネミッサがこだわるかわからなかった。けれども
彼女がそこまでいうならと、素直に応じることにした。
台を組み立て、敷物を敷き、人形を組み立て、調べたとおりに並べる。


始めると時間を忘れてしまい、熱心に並べる。なんとか飾り終えると、
夕食の時間になっていた。
二人とも帰った時の服のまま埃まみれ。マミに至っては髪に埃がついて
しまっていた。

「こんな時間、お腹すいちゃったね」

「時間かかるのね、ゴメンね?」

にこにこしながら、首を左右に振る。

「ううん、いいのよ。気を使ってくれたんでしょう?」

「ふふ、どうかしらー?」

ネミッサの含んだ笑い。マミにとって、そんな思わせぶりな表情は
もはや慣れっこだ。図星を刺され照れくさいとき、彼女はいつも
そうする。
箱や周りを片づけ、雛壇の前に座る二人。洋室にちょっと場違いな
和の飾りが鎮座する。

「綺麗ね」

「そうね」

「ネミッサ、ありがとうね」

「なんのこと? それよりお腹すいちゃった。なんか作ろう?」

「……ええ、いっしょにね?」

「え、ええっと、本気?」

ネミッサの肩をがっちり押さえつける。自分の得意料理をネミッサに
教えるつもりなのだ。

母に教えてもらった料理を、娘に。






――本当に受け継ぐとは思わなかったわ――

――そう? でもあちこち修理したから、原型とどめてないかもよ――

――でも、嬉しいわ。今年も飾ってみない?――

――あの時みたいに?――




――あのとき、みたいに――


筆者です。

ぱっぱっぱーと書きました。

相変わらずのマミッサでございます。

日本古来の行事もいいよね


ニーズはなさそうですけどね!

乙でした。

片付けが遅れると嫁入りも遅れる、という伝承にネミッサはどう反応するかな?
すぐ片付けて「はやくお嫁にいらっしゃい」なのか?
しばらく片付けずにいて「絶対嫁になんて出さない」なのか?

一方マミは甘酒に吟醸ゆめざくらを混入したりとか……しなさそうだな……。

そういう悪戯はさやかとか杏子のイメージ


筆者です。

>>94
乙多謝です
おお、そのネタは考えてなかった!

脳内シミュレートの結果、
早く片付けようとすると
「あら、アタシと一日でも早く結婚したいの?」とにやにやし、
片づけるのを遅らせると
「婚期遅らせてでもアタシと一緒にいたいの?」とにやにやしてました

我乍らいい性格してます。あの子


>>95
マミを素直にさせるため、仕込むさやかと杏子。
けれどもゆめざくらをうっかりマミの杯に入れてしまって
酔ったマミが攻めに回った途端、狼狽えて逃げるネミッサ。
……というのはどうでしょう?

大げさにやることで冗談に見せていたネミッサが迫られた瞬間
恥ずかしがる……アリですか?





あと、台本形式でネタを思いついたので投稿します。
デビルサバイバー2ネタが少し絡みます。


小ネタ【しーあーくにて】

――シーアーク、エレベーター内――


まどか「ネミッサちゃん、ちょっといい?」

ネミッサ 「まだ訓練中。集中しないと危ないよ」

まどか「うん、ごめんね」

杏子 「ひょっとして、あれまだでてこないのか?」

まどか「この間『キョウジ』さんから譲ってもらったかみさまがね」

ネミッサ 「……出てこないって、召喚に応じないってこと?」

まどか「うん。故障じゃないのにね」

杏子 「さっき白虎はでたもんな」

ネミッサ 「まぁいいや。貸して。話聞いてみる」

まどか「うん、いいよ。お願いね」

ネミッサ 「かみさまの名前は?」

まどか「カーマっていうかみさまだよ。愛のかみさまなんだって」

ネミッサ 「そんな気難しいやつだっけなぁ」

杏子 「一度ロビーいこうよ。ここじゃ危ないでしょ」

ネミッサ 「そうね。ロビー行ったら変身も解除しちゃっていいよ」

杏子 「言われなくたって」


――シーアーク、ロビー――

杏子 「飲み物買って来たよ。まだ駄目そう?」

ネミッサ 「うん、無反応」

まどか「ありがとうお姉ちゃん」

杏子 「まどかはミルクティーだよな」

ネミッサ 「アタシコーヒー。甘いの」

杏子 「あいよ。ほれ。一息入れなよ」

ネミッサ 「そうする。……今日はもういいかな」

杏子 「もうオシマイ?」

ネミッサ 「マドカちゃん、会話にも慣れたっぽいし。いいかなって」

まどか「まだびっくりしちゃうけどね」

ネミッサ 「これだけ解決して帰りましょ」

杏子 「食事していこ……して帰らない?」

ネミッサ (言葉づかい少し良くなったのね。さすがマドカママ)


――数分後――

ネミッサ 「出てこないなら合体素材にしちゃうわよ!」

杏子 「どんなやつ?」

ネミッサ 「んー、こんなやつ」

杏子 「どれどれ……うおっ、まぶしっ!」

まどか「え、なになに?」

ネミッサ 「えええええ! ちょっと大丈夫?」

杏子 「大丈夫、びっくりしただけだよ。でもやっとでてきたね」

まどか「えっと、カーマさん?」

ネミッサ 「ちょっとアンタ! 召喚士の命令聞きなさいよ!」

カーマ「……ナノネ」

みんな「ん?」

カーマ「呼んだのはおへそがきれいなあなたナーノネ?」ジリ

みんな「……はい?」

カーマ「その美しいおへそを見せるノネー!」ジリジリ

杏子 「うわぁぁ! 近寄るな馬鹿! くるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」ダッ

――しばらくお待ちください――


――数分後――

ネミッサ 「シヴァありがとう。動いたら、すぐ焼いて」

シヴァ「杏子どのに不埒な真似をしおってからに」ギリギリ

ネミッサ 「……一応アンタも婚姻迫ったんだからね。忘れてない?」

杏子 「なんであたしばっかりこんな目に……」メソメソ

まどか「お姉ちゃん。お菓子上げるから元気出して」

カーマ「シヴァがいるなんて聞いてナイノネ!」ガクブル

シヴァ「我が主の求めに答えるか、パスパタに焼かれるか、選べ」

カーマ「ヒィィィィィ、ナノネ」

ネミッサ (ふざけてるのコイツ?)

カーマ「で、でも……」

まどか「だめなんですか?」

カーマ「綺麗なおへその人の命令しか聞きたくナイノネ!」

みんな「」

ネミッサ 「シヴァ……焼いて。焼き尽くして」

シヴァ「承知」

カーマ「ヒィィィィ! わかった、わかったノネ! 指示に従うノネ!」

ネミッサ 「……使い物になるの? コイツ」

杏子 (正直逃げたい)

まどか(なんで『キョウジ』さん、このかみさまくれたんだろう?)


――後日――

こうしてカーマさんは私の契約に従うようにはなりました。
けれども魔法少女衣装のさやかちゃんを見て同じように騒ぎ出したり
えっちな気分を誘発する弓矢で騒動をまきおこしたので
シヴァさんにきっちりオシオキしてもらいました。
『キョウジ』さんにはちゃんと文句を言うつもりです。

おしまい

筆者です。

祝、デビルサバイバー2アニメ化!

キャラ的にはさっぱりとしたヒナコが好きです。
あと適当男ジョーも
グリモア+千裂突き+石化追加(+貫通)で
物理反射以外をぶちのめす二人が大好きでした

そんな感じで思いついたネタでした
それではおやすみなさい

乙ラギオン
サマナーSSを探してたら偶然見つけて一日で本編含めて全部読んでしまった。
あなたの書くネミッサはちゃんとネミッサしてて良かったよ、ありがとう。
これから書くSSも楽しみです、でも無理はせずに。
あ、杏子と大天使系の絡みもみたいかもー?ww(チラッチラッ

乙でした。

キョウジの頃は忠誠度上げ辛かったから、「綺麗な女の子の命令しか聞きたくナイノネ!」とか駄々こねるカーマをまどかにゆずらざるをえなかったか?


筆者です。

>>103
おお、ご新規さん!
あの長ったらしいのを読破なさいましたか
ありがたいやらもうしわけないやら……
ネミッサはサターン版3DS版合わせて8週はしましたので
キャラづくりに多少自信あります。ネミッサ可愛いよネミッサ

大天使……、口がいっぱいイスラフェールとか見せたら
トラウマもんだと思います。信仰折れますよたぶんww
考えておきます!


>>104
作るの大変な割に、イマイチ使えなかった印象ですからね
ジャッジメントもなぁ……
女の子のほうがいいって駄々に対応しただけだったら……
まどかに失礼ですよね、『キョウジ』も

実際には、キューピッドアロー的なものを使ったコメディを
やりたい筆者の都合なんですけどね!

乙であります。

世代を越えて受け継がれるものっていいですね。
しかしこうなると、マミさんが『お母さん』してるところも見たくなるなあ。
んで、ちょっとヤキモチ焼くネミッサとか(笑)

そして杏子はなんでこんな災難ばっかなんだ(笑)
あとマンセマットは呼ぶなよ!
あのインチキ天使に杏子をゼレーニンみたいにされちゃたまらん。
せいぜいライラかガブリエルに……って、それもある意味ヤバイ。

これからも楽しみにしてます。

二億四千万の乙
>>105コメ返し有難うです!
いやいやーデビサマ好きな私としてはもっと長くても良かったのよ?ww

8週かあ、素晴らしい。ネミッサって割とお馬鹿キャラで書かれる事が多くて・・(喋り方やキャハハ笑いが原因なのか?)
その点、作者様のネミッサはイメージぴったりで好きになりました。

見ただけでトラウマになるイスラフェールさん涙目wwアズラエルもやばいなww
>>106さん、聖女に災難は付き物ですよww

ペルソナSSも読みましたよーなかなかダークですね、マミッサでSAN値を保ちつつお願いしますww
所長とたまきちゃんに期待。長文失礼しました。

筆者です
コメントだけなので下げで対応します。


>>106
コメントありがとです
マミママさんもいいですねぇ~ちょっと脳内で組み立ててみます
ネミッサがむくれるシーンも描いてみたいし

さすがにまやかし天使を出すのは……怪しさ大爆発ですから、濁りまくりますよ
そっちの方がよっぽど災難です
無難にデビルサマナーシリーズの天使大天使にしましょう


そういや誰も突っ込まないけど、ソウルハッカーズに
キクリヒメでないんですよね、確か


>>107
うちの子はエンディング後をイメージしてます
記憶が戻り、役割に目覚めたネミッサがカッコ可愛かったので
そんな子を好きになってもらってありがたい限りでス
天真爛漫で、知識はないけど大事なものを知ってる、って感じが
だせたらいいなぁ、と思ってます


筆者です
連絡事項をば

本編でなくてすみません


短編まとめデス

 4月:本編1~4章 【けっせんぜんや】
 5月:本編5、6章
 6月:【がくしとせいじょはゆうめいじん】
 7月:【いらいざはだれ?】
 8月:【ほんしんはどこにある?】
 9月:【えいゆうたちのたんじょうひわ】
10月:
11月:
12月:
翌1月:
翌2月:【ばれんたいん くわとろって】
翌3月:【ひなまつり うけつぐもの】

転生後:【しがつのおわりのおまつり ふたたび】



これが全部埋まったらそこで続編は終わりにしようかなと思ってます
最後に転生後の物語を書いて、そこで終わりかな、と
それまでお付き合いくださいませ

あと、前作の読者の方は、差支えなかったら、
前作の好きなシーンとか教えてください
参考にしたいのです
気が向いたら、おねがいしますね

それではおやすみなさい

乙カジャです
好きなシーンいっぱいですが、特に好きなのは3つですね。(未読の方は飛ばしてください)



1つは、ネミッサがシャルに腕やられて部屋に戻った後マミが堪え切れなくなったシーン。原作のマミさんは受け止めてあげる人が居なかったからこれは救われたなと。

2つ目はまどかのビジョンクエスト。一番印象に残ってます、その後のVQ告白も鳥肌もんでした。ただ、VQってネイティブアメリカンの儀式(実際にあるみたいですね)の1つで、なぜリーダーが誘えたのか。やっぱりリーダーに姿を変えた赤男だったのかな?って細かい事はいいかww

三つ目はワル夜戦の主人公ズ。いやあ王道展開が好きなんですよwwサントラのイベント戦流して読むと、止まらないww
ハッカーズ側に偏った感想で申し訳ないです・・

終わり思うと寂しくなりますが、ここまで読まさせていただいただけでも感謝しております。
ペルソナの方もwwktkししてますwwでも決して無理はなさらず、のんびりと書いていって下さいね。

長文失礼しました。


筆者です

くっだらない小ネタが思いついたので投下しつつ、
コメント返しです

>>110
おお、ありがとうございます!
2は裏設定(というのかな)としてスワチカで因果を絡めてしまったスプーキーが
死後レッドマンに近い霊力を備えてネミッサを見守っている、という風にしました
レッドマンよりスプーキーが見守る方が、皆も嬉しいかなと思いましたしね

終わるのはまだ先ですし、ネタが思いつかないので
こういう小ネタをはさんでお茶を濁すので、ご心配なく。



ざっとみるとサマナーよりのネタのほうが受けがいいのかな
ニッチでマイナーな分、コアなファンが多いのがメガテンの特徴かな
なるほどなー


小ネタ【ふたりがけんかする わけがない】


夏休みを目前に控え、お茶会を兼ねた旅行の打ち合わせ。
魔法少女だって青春を謳歌していいはずだと、受験生のマミも含めた
宿泊旅行を計画中だった。
そんなことができるのも人工浄化のグリーフ・シードがあるからで、
魔女との戦いに明け暮れていたら、こんなことはできないはずだ。
全員が見滝原を離れる期間は、『葛の葉』に参加している魔法少女を
派遣してくれるとのことだった。
魔女が多数現れる見滝原はかなりの人気の縄張りで、すでに数人の
当てがあるらしい。

だから、気兼ね全員で旅行に行けるとあり、皆で楽しく計画していた。

けれど、そんな和気藹々とした雰囲気は二人の態度で脆くも崩れた。

「ここは海に行くべきよ。海水浴をするべきだわ」

「ううん、やっぱり山だよ! そこでキャンプするの楽しいよ」

寄りにもよってほむらとまどかが口論をしていた。いつもは仲が良い
どころか、喧嘩一つしない二人がなぜか言い争いをしていた。

さやかも杏子も、マミですら呆れている。ネミッサは当ての魔法少女に
連絡を取っていて不在である。


二人が喧嘩することなど、誰も見たことがない。ほむらにしろまどかに
しろ、相手を常に慮り互いを助けあう姿が普通だったはずだ。

「ねえ杏子、当然海よね?」

「さやかちゃん! やっぱり山だよね?」

「んん? う~ん?」

さやかも杏子も煮え切らない。むしろ二人の剣幕にたじろぐばかりだ。

「暁美さんもまどかさんも、落ち着きましょう。紅茶でも飲んで」

「まどか、らしくないよ?」

「ほむらも、なんかおかしいじゃん」

「お姉ちゃんとさやかちゃんは私の味方だよね!?」

「マミはどっちにつくの?」

いまだ矛を収めない二人にマミが呆れる。

「おちつきなさいふたりとも」


そんな最悪の空気の中、ネミッサが帰ってくる。無駄に張りつめていて
居心地の悪い中帰ってきた彼女は気の毒としか言えない。

「……なに、どうしたのよ?」

さやかが気を利かせ、小声で伝える。

「まどかとほむらが喧嘩してるの」

ネミッサも雰囲気を察し、納得したように頷く。
なので、無理やり空気を換えようと話題を振り、話を変えようとした。

「まぁいいわ、話変えるけれど……夏の旅行はどこにいくか決めた?」

(ネミッサ、残念ながら話が変わってないんだよ)

「ええ、海に決まったわ」

「ちがうよ! 山に行くんだよ、ね、みんな」

「……ちょっと、どっちなの。なにがあったの?」

さすがのネミッサが呆れかえる。二人の喧嘩は珍しい、いや、初めて
ではないだろうか。ネミッサは心の中で明日世界が滅ぶんじゃないかと
危惧した。


マミが二人を押さえつけ、さやかが話をまとめようやく聞いたところに
よると、まどかは山に、ほむらは海に行きたいとのことだった。
誰となく、二手に分かれるなどを提案しようとした。だが車を出して
くれる知久のことを考えれば、無理はさせられないとのこと。

(そういうところは、気が利くというか、ちゃんと考えるのね)

なのになぜか、ほむらはまどかの意思を考えていない。いつものほむら
らしくない。大抵、こういうときはほむらは折れることが多い。いや、
そもそもこんな議論に発展することすらない。

「理由は聞いたの?」

「ううん。二人とも頑なに話そうとしないんだもん」

さやかの言いように、ネミッサは大げさに溜息をつく。これをかれこれ
一時間も前からやられていたマミたちはもっとウンザリしていた。
そこでネミッサは一計を案じた。とはいえどちらかと言えば脅迫に近い
ことだが、いい加減、はっきりさせないと派遣される魔法少女の動きに
支障をきたす。

「ちゃんとした理由を言ってくれないと、
魔法少女の派遣キャンセルするわよ」

些か腹立たしげにいう。一つの縄張りに二人以上の魔法少女がいる地域
から、一人ずつ呼ぶ形で派遣をお願いしていた。そのため多少の無茶や
優遇措置を検討していた。有事の際はその派遣魔法少女を優先的に
フォローするという程度であったが、その割り振りは簡単ではない。


「それじゃホムラちゃん!」

指先で指名する。その間、ネミッサはずっと目線を合わせ
動かそうとしない。いい加減な言い訳は許さないという姿勢だ。
じっと目を見つめられ続けて、とうとうほむらが折れる。

「……まどかが……」

「うん?」

「山歩きをすると、疲れてしまうんじゃないかと思ったの。私たちの
ように体を強化できないし、ちょっとした怪我でも心配だったのよ」

(過保護にもほどがあんでしょ)

「でも……それを言ったら気にするでしょう? だから……」

自分が悪者になれば、気にすることもない。そう思ったらしい。
努力の方向が間違っているような気もしないでもない。その一方で
とてもほむららしいと思わずその場にいる全員が納得しまった。
内容にではない、ほむらがそういうことを言う背景に、だ。

そして、その気遣いを知ってか知らずかまどかは強硬に山に行こうと
提案するので、つい気が立ってしまったとのこと。

「ごめんなさい。我ながら自分勝手な怒り方をしてしまったわ」

そういって項垂れる。


「んじゃ、まどかは?」

ネミッサは無意識だが、まどかに避けられているような気がしていた。
そのため、助け船を出すつもりでさやかが代わりに尋ねる。
実際ネミッサの危惧は当たっていたのだが。

「まどかさんも、暁美さんのことが心配してのことかしら?」

かろうじて頷くだけだった。

「だって、ほむらちゃん……肌弱いって言ったから……日焼けが」

「少しくらい焼いた方が健康的でしょ。ほむらもさ」

「だっ! 駄目だよ! ほむらちゃんは、白い方が綺麗なんだから」

(え、なにこの惚気話)

あまりに喧嘩の内容がすご過ぎて全員半笑いだ。要は、双方が相手を
心配するあまり意固地になっていただけだ。

「そ、それに……、ほむらちゃんが、たぶん注目されちゃうから……」
心配してるの。だから、ごめんなさい」

それには全員同意する。中学生とは思えないモデル体系が同年代に
強烈なインパクトを与えるだろう。ナンパなどもあるかもしれない。

「そ、それは……どうかしら? 私より、マミの方が……」

その発言で全員がマミを見る。その抜群のプロポーションは一種の
凶器に近い。
全員が溜息をついた。

「え? え? えっ?」

本人たちに自覚がないのが一番たちが悪い。


(マドカちゃんも心配するはずよね)

「さて、二人とも。それを踏まえたうえでどっちにする?」

マミが仕切り、ようやく話し合いが進むようになった。

「それでだけど、ネミッサはどっちいきたい?」

「んー、山、かな? 石川県行きたいのよね」

ネミッサの素っ頓狂な意見に全員が噴き出す。時々ネミッサが斜めな
意見を言うので皆も面白がっているのだが。

「あんたの面白意見は無視するとして、どうしようか」

「アタシ真面目なのに……」

不貞腐れて出されたお茶を啜る。それをなだめようと頭を撫でるマミ。
いつもの作法で飲む姿はちょっと可愛らしい。

そして、皆で和気藹々とした話し合いが始まった。先ほどまでの
ギスギスした空気ももう程遠い。ほむらとまどかも元のさやにもどった
ようである。

「一安心ね」

マミの溜息に合わせて同意するネミッサ。いつも喧嘩しない二人が
喧嘩することに驚いたが、これも思い出になるのだろう。


「ママとしては心配ね?」

「ふふ、そうねぇ、ネミッサも立派になって手もかからなくなったし、
あの子たちのママになろうかしら」

「あら、子離れできないのはどっちかしら?」

ネミッサも負けてないので言い返してみた。こういうエスプリの効いた
返しをしてみた。これが彼女の敗因だったのだが。

「そうねぇ……ネミッサもそろそろ独り立ちするころね」

ちょっと意地悪な返しをするマミ。その表情にネミッサが少し慌てる。

「え、ちょ、それホント?」

「家事もできるし、お仕事もあるんだから、ね?」

とからかうと、ほむらに声をかける。

「暁美さん、ネミッサが独立するっていうから、
代わりにうちの子にならない?」

事情を察し、ほむらも尻馬に乗る。

「それもいいわね。明日から厄介になるわ」

「え、ちょ、ちょっと! 何よそれ!」

本気で狼狽える姿に、一同が笑う。からかわれたことに気付き、顔を
真っ赤にしてトイレに逃げ込むネミッサ。いじける姿に、
全員の顔が綻ぶ。


後日、水着の用意がないほむらや杏子、ネミッサのため
皆で買いに行くイベントがあるが、そこではほかの三人がそれぞれを
着せ替え人形のように扱われることになるが、詳しくは別の機会に。

「マミちゃん。せめてラッシュガードは羽織らせて!」

「そんな布少ないのはだめなんだぞさやか!」

「まどかぁ、もう勘弁して……」

「「「だーめ」」」

賑やかな水着売り場に歓声と悲鳴がこだました。


筆者でございます。

マミママさんはまだむつかしいです。

まどほむが喧嘩するSSがあったのですが
百合百合しすぎて面白くなかったので
相手を気遣って喧嘩する姿をやりたくなったのです

またしばらく間が空きますが、ごゆっくりお待ちください

それでは~

うおおっ!?
ホントにマミママネタ来ちゃったよ!?
乙であります!

まどかとほむら、仲良くケンカしなって感じですな。
振り回されるみんなはたまったもんじゃないが(笑)

で、結局海で水着……魔法少女は公式で色々イラストあるけど、
ネミッサはどんなんだろ?

次回も待ってます。

まどほむ書けないとかいいながら普通に書けてるじゃないですか

乙でした。

ネミッサは以前話に出た白山神社に皆を連れて行きたかったのかな?

筆者です。

連絡です。一週間のご無沙汰です。
アイディアが思い浮かばず放置してしまい申し訳ありません。

マミママみたいなアイディアがあれば気軽に書き込んでください
興が乗ればがーっといけそうです。がーっと


>>122
ネミッサはあっけらかんとしてるイメージだったんですが
ちょっとくらいマミを意識させたかったので
都合のいいアイディアでした。多謝です!

ちなみに、ネミッサの水着は、チューブなんとかっていう
肩ひものない水着、色は黒を意識してます
あとは濃い色のパーカーで肩の傷を隠してます
イラストが描けないうえ、水着の名前に詳しくないので
絵や写真があればいいのですけどねえ


>>123
前にこぼしたことがしっかり拾われている!
むむむ、自分としてはキャラの掘り下げが足りず
満足いってないのですが……
もっと二人が仲良く喧嘩するシーン作りたくて
鋭意制作中です


>>124
【ほんしんはどこにある?】の話を覚えてる方が!
時系列的にはこっちが先で、あそこに話がつながる様に
しました

実際、今回のSSで白山神社に取材に行こうかと思ったのですが
関東からだと飛行機使って合計六時間とか言われたので断念しました
鶴来遠すぎ。パンフとかでごまかすしか……


大天使がらみで何か描こう……
頑張ります

・・・そうね。この乙が終わったら、あの店のマンゴープリンを食べに行くのよ。

ほむほむが大人になったらナオミみたいな姿になるかもしれない。はい妄想です。

マミママとペル読みましたよ!マミママ癒されますなあ、ペルが殺伐としてる分こっちが平和だとマジ癒される。
取材に行こうとか行動力すげえ。取材とかよく行かれるんですか?

次回も楽しみにしてます。でも無理はなさらぬ様に。
あと>>111で疑問にお答え頂き有難うございました!


筆者です

>>126
そんな、声まで変わって! 懐かしいですな、ナオミ・キャンベル

取材というと大仰ですが、前作を製作中に左利き用のバイオリンのことや
入門者向けの楽曲について、音楽に詳しい方に話を聞きに行ったりはしました

神様や悪魔を出すときは嘘を書きたくないので調べられる範囲で確認してます
アトラス信者としての矜持でもありますし、読者に納得してもらうための
説得力としての側面もあります。白山比咩大神とかですね
同じ理屈で現実にあるものを出すにはなるべく調べたかったのですが
さすがにSSのために飛行機は乗れませんでした……


そして、私が懇意にしているSSスレのキャラに触発されたものを
投稿いたします。元々考えていた物語ですがそのキャラに捧げたいと思います


ふと思いつきましたが
ナオミといえば独特の召喚術ですが
アプスーやティアマトを使い魔にしたら
どんなチートな攻撃になったんでしょうね

作中で出してみようかな……だめかな

っと、投稿いたしますね


【おままごと の あとしまつ】

業魔殿の式場から封書が届いた。
封書には業魔殿の文字はなく、知らない結婚式場からのものだったため
ほむらは何かのダイレクトメールかと思ってしまった。

けれど、すぐに思い返し封を開ける。夏にドレスを着て写真を撮った
あの式場からだと気付いた。さすがに晴れの日の席で『業魔』はない。
だから、式場はもっと無難な名前だった。だから気付くのが遅れた。

中には式場で焼き増しされた写真と、データが入った記憶媒体。カラー
ドレスにウェディングドレス、そして、一人だけタキシード。
ネミッサとの仲をからかわれたマミはチャペルでの写真も入っている。

(あのときのマミの顔、忘れられないわ)

驚き、怒り、照れて、笑ったマミ。
ほむらたちは魔法少女が長く生きられないことを知っていた。だから
あのチャペルでのおままごとは、彼女たちが望み、憧れ、求め、そして
諦めたものだった。

(ネミッサは何も躊躇わずに誓ったわね……)

すごいと思う。あれだけ人を思うことができたら、
どんなに幸せだろうかと思う。ネミッサにとって誓いは魂の……

「あっ!」

気付いてしまった。
あれはネミッサにとって『おままごと』どころではない。
契約だ。それも、魂を賭けるほどの重さの誓いだ。

そして、それにマミは恐らく気付いていない。

ほむらの心に不安がよぎる。
真相を確かめるべく、ネミッサを呼び出すメールを携帯から送る。


はたしてネミッサはほむらの家に現れる。ここなら誰にも聞かれたり
しない。ほかの誰の家でも話せる内容ではないのだから。

「どーしたの、アンタが呼び出すなんて珍しいじゃない」

ネミッサは自分の家にも届いた封筒には気付いていないようだった。
どうやら出先からそのまま直接来たようだった。

「そうかしら。まぁ上がって、お茶でも用意するわ。紅茶は平気?」

「適当に……あ、でもアンタの紅茶美味しいんだよね。紅茶!」

「いいわ、任せなさい」

余裕を見せているつもりだが、内心ほむらの心は波打っている

いつもの手際と手順で淹れる紅茶はいつも通りの味だ。夏の暑い盛り
とはいえ、マミはアイスティーはあまり飲まない。それに毒されている
ネミッサも当然。
それだけ通じ合っている二人に立ち入った話をすることは彼女の趣味
ではなかったが、今回はそうも言っていられない。
二人が不幸になる可能性があるのだ。

紅茶をもってテーブルに給仕する。それをネミッサが一口。味や香りを
堪能していたい。
合格点はもらえたようだ。にっこり微笑んでほむらを見返す。


「うん、さすがね。……で、話ってなに? ずいぶん重要っぽいけど」

だがほむらはその笑顔に応じることができない。真っ直ぐにネミッサを
見つめる。その表情は険しい。
思いつめたような、ネミッサと決別したあのときの表情に近い。
ほむらは躊躇いも迷いもなく、真っ直ぐに問いかける。

「貴女、ひょっとして……あのおままごとが契約になってない?」

ネミッサは溜息をつく。一度驚いたものの、それはどことなく
予想していたかのような態度だった。
その態度にほむらはすべてを理解した。問いの答えも、ネミッサの覚悟
そのものも。

「あら、ばれちゃった? さすがね」

「茶化さないでっ! マミは知っているの?」

鋭いほむらの口調を受け流すように笑う。その笑顔に影はない。
どこまでも明るい。そして、それは悲しい。

「知ってたら大変よ。たぶん気付いてないわ」

マミの鈍感さにほむらが苛立つ。あそこまで想われていて
気付かないのかと、かすかに怒りがこみ上げる。
だから思わず辛辣になってしまう。だが、声色はどこまでも
優しくするよう心がけた。


「……私から伝えましょうか」

「やめてよ。マミちゃんを苦しめたいの?」

ほむらはネミッサに愛情に近い思いを抱いている。それは恋愛に至るもの
とも、違うとも言い切れない。自分でも戸惑っていた。だから自分が何を
願ってこんな話をしているか、わからない。
唯一求めることとわかるのは、ネミッサの心の平穏。

「貴女が苦しむのは見たくないわ」

「アタシも、マミちゃんが苦しむのは見たくないわ」

めらっ、と怒りが鎌首をもたげる。ほむらの秀麗な眉が吊り上る。

「だったら!」

「いいのよ」

「でも……」

ネミッサの穏やかな言いように、毒気を抜かれた。けれども、なおも
食い下がる。自分を救ってくれたネミッサにも、救われて欲しい、幸せに
なって欲しい。自分がかつて、まどかに願ったように。ネミッサがいまも
そう願ってくれているように。

「人と悪魔が一緒になれるわけないじゃない、バカね、あの子」

再びほむらが燃え上がる。マミへの侮蔑に怒ったのた。だがすぐに
その侮蔑が、ネミッサ自らに向かっていることに気付いた。

「貴女はっ……それでもっ!」

「でも、でもさ……」

そこで初めて、ネミッサの声が濡れる。


「それでも、大好きな人と、一緒に……いたいモンだよね」


本音を聞かされて、言葉に詰まるほむら。ネミッサの口から絞り出た
真意がほむらを縛り付ける。マミへの真相を伝える口を封じられた。

「アタシに少しでも友情を感じてくれてるなら」

それは、ほむらには酷な言葉だ。だが、違うとは決して言えない。
言えば、自分はネミッサの友人ではいられなくなる。
最愛の人が誰かを告げる、残酷で綺麗な言葉。

「マミちゃんには教えないで。お願い」

「貴女……本当に馬鹿ね」

こう毒づくのが精一杯だ。

「うん、自覚してる」

「でも、そういう貴女は嫌いではないわ」

ほむらが言える、ぎりぎりの言葉。
まどかと、マミと、ネミッサに挟まれた彼女の心が言える最大の告白。
そして、自分の思いの終わりの言葉。
ここが彼女が引き返せる最後の地点、『Point of No return』だった。


「ふふ、ありがと。ホムラちゃん」

そして、最後に残った、かすかな希望。それはパンドラの函にも似た
希望という、別の何かだった。
ほむらはそれに縋った。

「仮に、仮によ? 貴女が人間になれる方法があったら……どう?」

呆れたようにネミッサは笑う。ほむららしからぬ駄々っ子ような言葉に
困ってもいるようだった。諦めの悪さは、あのループで知っていた。

「何言ってるのよ。ワルプルギスの夜はどうするの。アタシしか
できないことなのよ」

その答えに、唇を噛みしめるほかなかった。
ソウルジェムが濁りかねない思いがほむらの心を満たす。
例え魔法少女の願いにより人間になれる可能性があったとしても、
彼女はそれを拒むと言い切ったわけなのだから。

「ありがとう、ホムラちゃん」

向かい合うソファから立ち上がると俯くほむらをネミッサは抱きしめる。
なぜだかわからないが、ネミッサはそうするべきだと思った。
……そうしたくなった。
後で振り返っても、ネミッサはなぜだかわからなかったらしい。
それだけ自然な振る舞いだった。

「アンタを苦しめるつもりなかったわ。ゴメンね」

「不器用な『友人』たちのために、何かしたかったんだけどね」

「……ありがと、気持ちが何より嬉しいわ」

不思議と、涙は出なかった。



――この気持ち、まどかに話そう。そして、軽蔑してもらおう――

――ひょっとしたら――

――嫌われて二度と友達になれないかもしれない――

――けど、けれど、もし許してもらえたなら、私はまどかをずっと――

――ずっと――

――好きでいられると思う――

――ネミッサに教えてもらったから――

――人を好きになることがどんなに素敵なことかを――

   
   


後日、二人だけの部屋。ほむらがまどかを招いた。
奇しくも、或いは当然のようにあのときと同じく、向かい合って座る。
案の定、まどかは驚いた。唇を噛みしめて何かを耐えていた。

「ごめ……」

「謝らないで!」

まどかには珍しい、怒気をはらんだ声。それでも声が大きくないのは
彼女の優しさによるものだろう。

「いいよ、しょうがないもん。
ネミッサちゃん、ほむらちゃんのためすっごく頑張ったの
知ってるもん」

ビジョン・クエストでみた、天海市でのネミッサの地獄。
ほむらのために戦ったあの夜。それは、ネミッサがどれだけほむらを
魔法少女を、まどかを、案じたかを示す証。

「でも、でも……ほむらちゃんは渡さないよ……」

ほむらは瞠目する。嫉妬は人を醜くするというが、この場合は違った。
真っ直ぐほむらを見るその目は力に満ちて美しかった。少なくとも
ほむらにとっては。

「……ほむらちゃんは、私の、最高の、友達なんだから!」


その言葉にほむらは機械仕掛けの様に頷くしかできない。
まどかがいったい何を決意したのか想像もつかないからだ。

目の前で狼狽えるほむらは、まどかにとってとても大事な存在だ。
だから、譲れない。
たとえ恩人でも、見滝原を守ったヒーローでも。



――かっこよくなって――

――綺麗になって――

――強くなって――

――ネミッサちゃんから――



――ほむらちゃんを取り返すんだっ!――


決意してにっこり笑ったまどかに、
ほむらはこれからしばらく振り回されることになる。

それは、かつてのほむらとまどかの関係に似ていた。


――異世界で 人と魔の恋慕に悩む あの娘へ――
  


筆者でございます

ちょっと演出過多かな

自分が描くとなぜかどうしても人と悪魔の恋愛は
成就しないのです
他の方のSSにそういう境遇のキャラがいたので
その娘のためにと勝手に書きました

さー、頑張って天使ネタで杏子ちゃん書こう

乙でした。

ほむらは悪魔との契約の意味に気づいたのか……。
英雄やら猛将やらに成り果てた後は、ほむらもこの件で安心したのかな?

もう過ぎたけどホワイトデーにペリの財宝をお返しに渡されて、価値が高すぎて持て余す魔法少女とかいたのかな?
2000円で売れる宝石辺りがサマナーとしては妥当なのかな?


>これからしばらく振り回されることになる。

期待しちゃって良いんですよね

読者の方々にはお目汚し失礼します、ドラクエ×メガテンの作者です。
まずは乙でありますっ!
そしてありがとう!

ネミッサの一言一言がうちのキャラに語りかけるようで……
それを抜いてもネミッサの切なくなる思いが綴られていてグッときました。

自分も期待に応えられるよう執筆頑張ります。
本当にありがとうございました!


筆者です。

杏子×天使の話が難産です
彼女がプロテスタントかカトリックか、というところから調べております
天使の存在がそっちの人たちにどういう受け入れ方をされるのか
いっこもわからんのが困りものです


>>140
ほむらは前作でネミッサと契約していますからね
その危うさをある程度把握していますので、今回の役を振りました

あ、ちなみに織莉子とキリカは例の若いサマナーに(義理)チョコを渡し
お返しにペリの財宝を(シャレで)要求したそうです。
あんな可愛い子を侍らせているのだからそれくらいは、ねえ。

ゲーム中の宝石はカット前の原石だと思ってます。それならあの値段も納得ですしね。


>>141
何 を 期 待 し ち ゃ っ て る の で す か

エロスはやりませんよ。けどまどかはよりほむらにべったりになるでしょうけど
まどほむをもっと研究して可愛く描きたいなぁ。あの子たち大好きですから
そういうことなら、頑張りますよ~


>>142
先に謝りますがあのセリフは「うしおととら」にあったセリフを流用しました
14巻、雪女のエピソードです。
でもネミッサの心を良く表しているように思ったので言わせました

そちらのあの子にも届くことを祈っています。



今宵はここまでです。
おやすみなさい

DEFENSE_EXTRA
FURI-FURI-OTU

天使系の話をしてしまった者ですが、作者様の事を考えない発言で多分に悩ませてしまってごめんなさい。
もし無理そうなら、どうぞこの話は忘れてくださいなww

参考になればと思い少し調べてみました。杏子の宗派、ニコの大百科の掲示板で放送中期辺りに考察があったみたいです。結論は出ていませんでしたが、カトリックでは神父の結婚が出来ない事を鑑みればプロテスタントなのではという事でした。
ぶっちゃけ私もキリスト系には明るくないので判りませんが、公式に描写が無い以上キリスト系っぽい何か違う宗教と
言うしか無いみたいです。(佐倉杏子について語るスレの236~246,338,1057レスを参照しました)

話を振っておいて何の力にもなれませんが、応援しています。でも無理をせずにお願いしますww

長文失礼しました。


筆者です

いやはや、いらないことをいうと人を傷つける好例ですね

>>144
まったくもってお気になさらずに
アトラス信者を嘯いておりますが、宗教やそれにかかわる人に関心がなかった自分に
わりと愕然としておりましてね。よい学ぶ機会を得たとむしろ感謝しているのですよ
宗教は結局は人が作るもの。ならば人を知らなければ本当に学んだことにはなりませんからね

難産難産と、いらんことを申しました。こちらこそお許しください

代わりに、友人と話して思いついた小ネタで茶を濁します。
珍しく即興ですので楽しんでいただければ幸いです

では、どぞ

【やりをもつひと ひとりめ】


――シーアーク、ロビーにて――

スカアハ 「うむ、そこの槍の魔法少女よ。少々良いかな」

杏子 「ん? あたし?」

スカアハ 「ああ、そなた槍捌きが素晴らしいと聞いておる」

ネミッサ 「女神スカアハよ。槍の名手の師匠よね、確か」

スカアハ 「そう。あのクランの猛犬にも修行を施し魔槍を授けたこともある」

杏子 「あたしに稽古つけるのかい?」

スカアハ 「多分に我流の様子。私の元もその技を磨いてみぬかね、しばし時間がかかるが……」

杏子 「……申し出は嬉しいし、腕を評価してくれてありがたいけどさ」

ネミッサ 「ん?」

杏子 「あたしは武術の腕が欲しいんじゃないんだ。ネミッサみたいに……」

ネミッサ 「……」

杏子 「『腕の中のもの』を守りたいんだ。例えば、妹とかさ。だから過度な力は、いいんだ」


スカアハ 「……そうか。ふふ、ふてぶてしいがますます気に入った。ならばこれをとらそう」

杏子 「ん? なにこれ」

スカアハ 「ゲイボルクだよ」

杏子 「槍じゃないじゃん。踵がない靴みたいな……」

スカアハ 「そなたは遠距離戦が不得手であろう。これで自らの槍を投擲すれば……」

スカアハ 「30の槍となって降り注ごう。そこそこ強力なはず。納められよ」

杏子 「ああ、ありがとな。感謝するよ」

スカアハ 「うむ、武運を祈る。槍の魔法少女よ」


ネミッサ 「アンタさ……」

杏子 「こう見えてさ」

杏子 「あたしはあんたに憧れてるんだよ」

ネミッサ 「ばっ、なっ。何言って……!」

杏子 「マミのこと、よろしくな。あいつ、結構寂しがりだからさ」

ネミッサ 「~~~~~!」

杏子 「でもこれ、どう使うのかな? 聞きそびれちゃったな」


筆者です。

槍で括ると結構いろいろでてくるのですね
猛犬の父とか、魔術の王とか、盲目の兵士とか……

ネミッサは杖(カドゥケウス)、まどかほむらは長弓、マミは鳥銃(マスケット)、
杏子は槍(スピア)で、さやかは片手剣(サーベル)
でそれぞれかけちゃいそうですね

短くて浅い文章ですが、こんなもんでお許しを

それではまた

>>147
スカアハ師匠!筋がいいだけでゲイボルグ渡すとかどんだけ杏子気にいってんっすか

乙であります。

>>149でクー・フーリンが嫉妬してる(笑)
杏子は慈愛系の天使に可愛がられそう。
裁き系は杏子の慈愛っぷりに悔い改めそうだ。


筆者でございます。先こされたので即興でGOします

>>149さんゑ
>>150さんにも

ナイスアイディアでした

即興で投稿します。てい


【おとこのしっとは さすがにどうなの】

スカアハ 「ええいだまれ駄犬! あの女丈夫はセタンタ坊やのような素質に依らぬものだぞ!」

クーフーリン「今更幼名で呼ばなないでください!」

スカアハ 「弟子が女々しくて女々しくてつらいよ」

クーフーリン「どこで覚えたんですかそれ」

スカアハ 「ネミッサ! 睡眠薬を持ってきてくれ、致死量で」

ネミッサ 「死なせてどうするのよ」

スカアハ 「以前飲ませたのだが、効きが悪くてな。死ぬぐらいでちょうどよい」

ネミッサ 「ちょっと黒すぎるでしょアンタ!」

クーフーリン(神経にちょっとだけ強いのはいいことなのか悪いことなのか)

杏子 「なぁ、これ、使い方……教えてくれよ。ほったらかしにすんなよ……」

まどか「仲魔のみんな、にぎやかだなぁ」


【てんしが うっかり だてんします】


権天使「最近来た新米サマナーを知っていますか」

大天使「はい、あのネミッサの知人ということくらいは」

天使 「結構可愛らしい子ですよ。一度遠目に見ましたわ」

権天使「そう、その子らです。確かに大変清楚で可愛らしい……」

天使 「あまりに見惚れて、堕天してしまいそうですわね」

大天使「それが心配なのですよ。あのネミッサにはない可憐さが」

ネミッサ 「わーるかったわね、可憐さがなくて」

杏子 「あ、あの、こんにちは……(噂されてるところに行くのはキツイだろ!)」

まどか「こんにちはぁ。わぁ! ホントに天使さまだ!」

権天使「おお、これはこれは。見れば見るほど美しい」

杏子 (ううう、悪魔の美的センスおかしいだろ! なんであたしが!)

まどか「あ、あはは。ちょっと照れちゃいます。褒めすぎですよ」

まどか「あ。私鹿目まどかっていいます! こっちはお姉ちゃんの鹿目杏子ちゃんです!」ペコリ

大天使「うむ、洗練されてはいないが年相応の礼儀を心得ておいでのようですな」

天使 「これは数年すれば立派なレディになりますね。ネミッサと違って」

ネミッサ 「アンタらアタシに恨みでもあんのか!」

権天使「おおネミッサ。レディの案内ご苦労。お二人を置いてとっとと帰りなさい」シッシ

ネミッサ 「アンタらが堕天しないように見張ってあげてんじゃないの!」ムカムカムカ

ま・杏「あ、あははははは」

まどか「仲良いね」

杏子 「どこをどうみたらそうなるんだよ……」

筆者です

クー・フーリンはスカアハが飲ませた睡眠薬に耐えて戦争に向かい
友人を打ち取ってしまう故事からネタを書きました
あと、杏子が貰ったゲイボルクは槍状ではなく手槍の投擲用っぽいやつです
石突きに固定して投げるあれですね

一方のほうはタイトルにウーピー・ゴールドバーグのあの映画のをつけようかとしましたが
某SSで女性に現を抜かして堕ちた天使がでたのでそちらに絡めました
ちなみに、権天使の上、力天使が最前線で戦うせいか堕天しやすいとか

杏子×天使はもうちょっと頑張ります

結局振り回されるんですけどね、杏子ちゃん

乙でした。

ファントムソサエティの幹部やってるグリゴリの天使って、
確か聖書だと人間の女の色香に迷って堕ちて、色々な知識を与えたり、人間の女にネフィリムを産ませたりしたんだったっけ?

乙であります。

スカアハ師匠がカラオケで練習するのを想像してワロタ。
モーリアンとかマッハと一緒に「三人で八時間! ドリンクサービス付きで」とか(笑)

鹿目姉妹は天使に人気ですか。
まあ女神と聖女だし……天使たちはグリゴリ団みたいにならないよう気をつけて。

次回も楽しみにしてます。
いじられ確定の杏子、ファイトー(笑)


筆者です。

>>157
自分も半可通ですので同程度の知識ですが
概ねあたっておりますね
恐らくこの世界ではQBもファントムも
「我こそが人間をここまで発展させた」
と言い張るのだと思います


>>158
なんだそのカラオケ慣れしてる女神たちは……
あるいはヒトカラが弟子にばれたスカアハの方が
痛い気もします。
どっちにしますか?



そして書いたぜっ! 杏子×天使
けれどもなぜかストーリーが全然違っちゃった!

なんでかわかんないのでこのまま投稿します。
正直出来に自信ないけど、脳内の詢子さんが
「このままいけ」っていうから行きます


シーアーク。
かつてそこは『ファントムソサエティ』が、自分たちの配下である
ダークサマナーたちに開放していた建設中のホテルに偽装した
対悪魔の訓練施設である。

その施設が天海市の陰謀が潰れると、ファントムソサエティは
放棄した。悪魔を放し飼いにしている改装中のホテルを、だ。

その施設を『葛の葉』が接収し封鎖。そののち、経験不足の
サマナーや、目的の悪魔を作るため合体素材の悪魔を探すサマナー
への開放した。
フロアごとに放し飼いにされている悪魔の種類が違うため、
各々が目的の悪魔を求めてエレベータを利用する。

その中で、ロビーは放し飼いの悪魔がいないのでサマナーたちは
ここを拠点として各フロアに移動する。
休憩などもここで行うことが多い。

そのため、自然とサマナーやその仲魔同士の社交場になった。
悪魔の情報。武器の使い方。新しいアプリの情報。
そして最近では新人サマナーの情報。
毎週日曜日、ネミッサが連れてくる可愛らしい新人サマナーや
その補佐役の噂で持ちきりだった。

サマナーの中には、遠巻きに見守るだけのもの、善意で助言や
少々高価なアイテムを贈るもの、露骨に近寄りネミッサに
蹴飛ばされるものなどがいた。


まどかと杏子の対悪魔訓練が一段落した休憩時間。ネミッサは
まどかと共に他のサマナーの車に便乗し業魔殿へ。新しく仲魔を
譲ってもらうとのこと。
めんどくさがった杏子は一人お菓子を食べながらロビーで寛いで
いた。

そんな微睡そうな午後。杏子に話しかける天使がいた。

大天使ライラ。女性の懐妊を伝え、胎児に魂を宿す天使。夜の天使
などと言われ、特徴的な黒翼で描かれることが多い。
天使に性別はないはずだが、その役割からか女性人格のような
振る舞いをする。

「こんにちは。槍の魔法少女さん」

「んー、なに? あんただれ?」

「ライラと言います。種族は大天使ですね。初めまして」

「あたしは、さく……鹿目杏子だ。まぁ、知ってるよね」

無駄に有名人扱いされ照れくさそうに鼻を掻く。ぼさぼさだった
長い髪は、まどかママ行きつけの美容院に整えられていた。
笑顔で頷くと隣に腰掛ける。
遠巻きに見つめているのは高校生や大学生ほどの年齢の
男性サマナーたち。……かろうじて、杏子を彼女にしても
何とかなりそうな年頃の彼らにとって、杏子の容姿や実力は
注目の的。一方の杏子にとって、そんな居心地の悪い視線から
守るライラという防御壁はありがたい限りだった。


「うろ覚えだけど、受胎を報告する天使だったよね」

「お詳しいですね」

「一応、聖職者の娘なんだ。あたしはもう信仰してないけどね」

相手が天使だということを気にし前置きをする。キリスト教系も
イスラム教系も偶像崇拝を禁じている。そのため天使の偶像も
禁じられているらしい。
聖職者の娘だから詳しいけれど、あたしはそんなアレルギーはない
という意味だ。
だが、詳しいはずの彼女が『もう信仰してない』という。
その事情を知らないライラはそれをさらりと流す。個々の事情に
突っ込んではいけない。それを人間界に来て学んだ。

「例え信仰がなくても、貴女が受胎したら報告に赴きます。
その時はよろしくお願いしますね」

にっこりと夜の天使は微笑んだ。整った顔で笑う顔は整いすぎて
しまうこともあるが、ライラは妊婦を担当するからか、柔和な笑顔
をしていた。


「あたしみたいな悪党にもきてくれるの? ってか相手いないよ」

杏子は板チョコを半分に割り、ライラに差し出す。受け取った方は
口には運ばず返事を返す。
悪魔であるライラも食べられないわけではない。しかし理由もなく
本当になんとなく手で大事にしていた。
偽悪的な発言にライラも苦笑いをする。

「そんなに悪い方には見受けられませんが……。
私のサマナーも『聖女』だ『天使』だと、噂しているほどなのに」

二つの意味でむっとし、途端に機嫌が悪くなる杏子。

「なんだ、男の差し金かよ」

「いえ、許可は貰いましたが指示は受けてません。
全くの私の独断、あるいは気分です」

杏子は偽悪的に板チョコをかみ砕く。彼女が苛立った時にいつも
する仕草だ。
彼女の魔法少女の衣装は、牧師の服を模しているようだと周囲に
言われている。そのため、彼女の戦いぶりを見た人々は、
その容姿も相まって、『聖女』『天使』と称賛する。

それが何より彼女を苦しめることだと知らずに。

「盗みをしまくった奴を『聖女』扱いなんかすんなっての」


父親の無理心中から一人生き残った杏子は、生きるために窃盗を
繰り返し生きながらえてきた。その頃ちょうどマミとも袂を分かち
刹那的退廃的な生き方を続けてきた。

あの夜を超えて、鹿目家の養女となる話がでた。だがそのことが
後ろめたく、同意することができなかった。それはそうだろう。
誰だって窃盗犯を義理の娘に迎え入れたくない。執拗に食い下がる
詢子や知久に苛立ち、とうとう窃盗を行ったことを伝えた。

その話を聞いた二人が表情を変えたとき、これで話は終わったと
杏子は確信したらしい。
だが、そうではなかった。二人は杏子にとって意外な行動を取った
のだ。


――うちの杏子が大変なご迷惑をおかけしました――

――弁償で済むとは思いませんが、埋め合わせさせてください――

――お怪我などはされませんでしたか?――

――はい、このたびは私の監督不行き届きで、大変申し訳なく――


わざわざ仕事を休み、まどかにタツヤを預けてまで、両親は杏子が
迷惑をかけた店舗に赴き、謝罪と弁償を行ったのだ。
まだ、養子縁組が済んでいない状態で、だ。


思い出した杏子の声がひび割れる。大音量で溢れ出た真意。

「『聖女』なんかじゃねえよ。親泣かせてなにが『聖女』だよ!」

ライラの防御壁を超えて、杏子の声がロビーに響く。だがライラの
お蔭で、周囲に近づこうなどという不埒物はいない。

「ホントの親じゃないのに頭下げてさ! 一緒に怒られてさ!
弁償してさ。なのにあたしを怒鳴りもしないで! なんだよ!?」

必死に涙をこらえ、怒りの表情でライラを見返す。

「そんなんで、パパママなんて呼べないよっ!
あたしは聖女なんかじゃ……ないっっ!
……聖女なんて、そんなふうに……二度と呼ばないで……」

隣にいつもまどかがいたからだろう。どうしても誰にも言うことが
できずたまっていたものが、ライラの言葉によって漏れ出だした。

ライラはそれを柳の様に受け止めていた。そして落ち着いた口調で
こう言った。


「人間たちの社会に詳しいわけではありません。
ですが子供の不始末を一緒に謝り許してもらおうとする大人を……
一般的に親というのではありませんか?」

小首を傾げ、当然の疑問の様に返す。

「でっ、でも! わたしは悪いことをしたんだ!
今は反省してるし償いたいけど、そんな奴は聖女じゃないよっ!
父さんや母さんに迷惑かけるんだ。子供になる資格ないよ!」

「間違えて一度堕ちたからこそ、立ち戻って正しい教えを理解し、
説くことができます」

反論に詰まる杏子。ライラは淡々と続ける。

「それに、貴女は懺悔なさいました。窃盗の罪を告白し、反省し
許しを請いました。私は聖職者ではありませんが、こういいます」

完全に固まる杏子。そのときそのロビーは、懺悔室になった。

「父と子と聖霊の御名において、貴女の罪は清められました」


だが杏子は納得できないらしい。唇を噛みしめて罪悪感と戦って
いた。
その様子に気付いたらしいライラは、夜色の羽を広げ杏子の肩を
抱くようにして引き寄せる。杏子は素直にそれに従った。

「まだ納得できないのでしたら、今の気持ちを養父母さんに
伝えてみてはどうですか。
私から見れば呆れるほど、貴女方は家族に思えます」

押し殺したような啜り泣きが、翼の中に木霊する。
ライラは、自分が正しいことをしたのかわからない。けれども
本来は清い魂である杏子が、苦しみのあまり優しさや慈悲を
受け取ることができなくなってることに、心を痛めた。

だから、多少強引な論法でも彼女を癒したかった。
二人が業魔殿から帰るまで、彼女は翼の中から出てこなかった。


「お姉ちゃん、ただいま」

「お静かに。彼女は眠っています」

戻ってきたまどかとネミッサに人差し指を立て制するライラ。
涙の跡もそのままに杏子は無防備に眠っていた。
叩かれた夜は寝やすいという。心のつかえがとれたため、
穏やかな表情をしていた。

「どーしたの? なにがあったのよ」

「……吐き出せない心労を吐露して、疲れてしまったようです」

「ひょっとしてお姉ちゃん、うちが気に入らなかったのかな」

はっきりとしょんぼりするまどかに、ライラは首を振って否定する。

「いいえ。全くの逆です。貴女達を愛するがゆえ、それまで
自分のしてきたことが許せなくなったようです」

ソウルジェムの心配をするネミッサ。杏子の指輪の宝石を確認した。
多少濁っていたものの、魔女化の兆候ではないこと判断し、溜息を
つく。



それから杏子は、まどかも交え家族会議を行った。
だが、詢子も知久も、まどかですら当たり前のように笑って
受け入れてくれた。

大泣きをする杏子を抱きしめる詢子。
その姿はまどかが妬くほど、仲のいい親子のそれに見えた。



この日を境に、杏子は知久と詢子を「パパ・ママ」と呼び二人を
喜ばせた。
本当の家族になれた日だった。


筆者です。

むこうでネタにマジレスしちゃってへこんでます
でもいいんだ、もう振り向かないぞ

そして、杏子ちゃんを救うシナリオを投稿しました
コミカル路線にしようとしたら、ライラが勝手に動きやんの

こんなんで、どうです?

乙であります。

受胎告知の天使で杏子がアタフタしたら可愛いなと思い、
ライラとガブリエルの名前を出したのですが、こう来るとは!
お見事な展開でした。おかげでまた涙腺が……

当方のSSにも同じ境遇のキャラがいるので参考にさせてもらいます。

乙でした。
良い話でした。
杏子ちゃんの次は武器泥棒のほむらちゃんもお願いしますライラさん。
多分正しい意味での確信犯だからより厄介でしょうけど。

>>159
完全に商売敵っぽいし、QB対ファントムの仁義なき潰しあいになるかと思ってました。
それともQBがグリゴリの変種なのかとか色々予想していましたが、その上を行かれて面白かったです。


筆者です。

>>171
どこをどうしてああなったのかわかりません
ホントはあたふたするコメディにしようとしたのになぁ
でも、あんこちゃんが救われたかな、と思ってます

あの子はもっと泣いた方がいいんです
原作でも、泣いてないでしょう?


>>172
ほむらがやらかしたことは最低でも大臣が変わるほどのことですが
規模が大きすぎてピンとこないんではなかろうか
戦艦丸ごとなくなるって、エルドリッチかなんかか?

むしろ借金200万のほうがわかりやすいんじゃ


そのうちシャレでカラオケネタやりたいけれど
J-POPに詳しくないので多分すぐにできないと思います
あの子らがどんな歌うたうか、想像つかないのでス

そして、明日のネタです
あと数分ですけど
投げてるうちに日付代わるよね
ということで行きます


【しがつばか そのいち】

杏子 「お、ライラじゃんか。どうした?」

ライラ「こんにちは杏子さん。ネミッサはいます?」

ネミッサ 「ここにいるけど……、アタシに用ってメズラシーわね」

杏子 「サマナーの使いってことかな」

ライラ「当たらずとも遠からず、ですね」

ネミッサ 「時間ならあるからいいわよ」

ライラ「時間はとらせません、一言だけ。……おめでとうございます」

杏子 「なっ!」

ネミッサ 「はぁ?」

ライラ「それだけです。じゃぁ♪」

ネミッサ 「」

杏子 「ネミッサ……あんたなぁ……」

ネミッサ 「いやちょっとまって! なに誤解してんの! ってライラ!」

杏子 「あいつが嘘つくわけねえだろ!」

ネミッサ 「ああもう、めんどくさい騙され方しないでよ!」

杏子 「てめえ! 白状しやがれ! 相手は誰だぁ!」

ネミッサ 「いや違うって、今日は何の日か知ってんでしょ!」

杏子 「うるせえ!!! マミ泣かすなら許さねえ!!!」



ライラ「う、嘘はついてませんよ」


【しがつばか そのに】

ハリティー 「ネミッサ。もうしわけないのだけれど、頼んでいいかしら」

ネミッサ 「いいわよ。ちょっと手が空いてるからね。なに?」

ハリティー 「この子預かって欲しいのよ 召喚士に呼ばれててね」

ネミッサ 「アンタが珍しーわね。子守りの経験なくていいなら……」

ハリティー 「お願いね。しばらく頼みます」

ネミッサ 「っていうか鬼子母神が子供手放すなんて……。そか、逆ね」

さやか「おいすー、ネミッサじゃん。何もってんの?」

ネミッサ 「んー、赤ちゃんだよ。さっきあず」

さやか「あんたぁ! 何やってんのよ!」

ネミッサ 「へっ? いやだからあず」

さやか「マミさんという人がいながら……どういうことよ!」

ネミッサ 「……アンタも誤解する口かっ」

さやか「事と次第によっちゃ……あたし許さないからっ!」

ネミッサ 「いいから人の話を聞けっっ!」



ハリティー 「蹴られた召喚士の復讐とはいえ、気が重いですわね」


【しがつばか そのさん】

ネミッサ 「ああ、ひどい目にあったわ……」

モーショボー「ママー」

ネミッサ 「ちょっと、冗談に付き合うつもりわないわ。召喚主はどこ?」

モーショボー「ママ、抱っこ~」

ネミッサ 「ああもううざいわね。迷子?」

モーショボー「うん、サマナーどっかいっちゃった」

ネミッサ  「もう演技するつもりないのね……。探してあげるわ」

ほむら 「あらネミッサ。……その子は?」

ネミッサ  「モー・ショボーっていうのよ。迷子みたいでさ……」

モーショボー「ママ抱っこ~」

ほむら 「……ふぅん、そういうことね。わかったわ」

ネミッサ  「ちょ……なにがわかったのよアンタ」

ほむら 「いいのよ何も言わないで。理解しているわ」

ネミッサ  「あのさ、わざと誤解してるわよね」

ほむら 「大丈夫よ。巴マミには黙っておいて、あ・げ・る・わ」

ネミッサ  「……アンタが一番タチ悪いわ」



モーショボー「これ、上手くいったのかなぁ……」


【しがつばか そのよん】

ネミッサ 「もう疲れた……なんなのよもう」

マミ 「どうしたの。疲れた顔してるわね」

ネミッサ 「リベンジャーというかアベンジャーというか」

マミ 「違いが判らないわね……」

ネミッサ 「まぁいいわよ。それより今日はもう帰りたい。疲れた」

マミ 「ふふ、いいわよ。甘いものでも用意するから、ゆっくりして」

ピクシー「あ、ネミッサ発見ー!」

ネミッサ 「……今度はアンタか」

マミ 「あら、こんにちは。可愛らしい妖精さんね。ネミッサに用事?」

ピクシー「ウン、そうよー。ネミッサに伝言預かってるのー」

ネミッサ 「いやなよかんがする……」

ピクシー「『引っ越しして寮に入る話どうなった? 連絡してね』って」

マミ 「えっ?」

ネミッサ 「……そうきたか……」

マミ 「えっ? えっ? ええっ!?」

ネミッサ 「……その話、即断ったはずよね。マダムも了承済みよ」

ピクシー「確かに伝えたからね。ばいばーい」



マミ 「あ、あのそんな話、聞いてないのだけど……」

ネミッサ 「えっとね、説明すると長くなるんだけどね」

マミ 「そ、そうなの。どっか、いっちゃうの?」

ネミッサ 「ううん。それは違うわ。ずっと一緒よ」

マミ 「ほんと……?」

ネミッサ 「うう、泣かないでよ。これ嫌がらせなんだから」

マミ 「うん、ごめんね。違うってわかっても、すごく悲しくなって」

ネミッサ 「こっちこそごめん。嫌がらせに巻き込んじゃったね」

マミ 「ほっとしたら……涙出てきちゃった……、ふぇぇぇ……」

ネミッサ 「だいじょうぶ、大丈夫だからね? ソウルジェム、へいき?」



ピクシー「結構ザイアクカンあるね。もうやりたくないなぁ」



ネミッサ 「未だに尻蹴っ飛ばされたの根に持ってんのね」

ネミッサ 「マミちゃん絡めたこと、死ぬほど後悔させてやるわ」


【しがつばか あとしまつ】

ピクシー 「さー、帰ろうっと」

ほむら「まちなさい」

まどか「こんにちはピクシーさん」

ピクシー 「あっ……。噂の新人サマナー……」

まどか「ほむらちゃんから聞きました。サマナーさんの指示で」

ほむら「いろいろやってくれたみたいね」

ピクシー 「」ガクガクブルブル

ほむら「ネミッサに復讐するのは、まぁいいわ。あの子は強いし」

まどか「でもマミさんを巻き込んだのは」

ほむら「ええ、巴マミを巻き込んだのは」

ふたり「許せない……」

まどか「……よね?」ほむら「……わね?」

ピクシー 「」マッサオ

ほむら「バレたとき、エイプリルフールで誤魔化すつもりだった?」

まどか「でも、誤魔化されませんよ」

ほむら「安心して頂戴。貴女や召喚士には……」

まどか「私の仲魔さんが行きますよ」ニッコリ

ほむら「お願いを聞いてくれてありがとう、まどか」ニッコリ

ピクシー 「普通の可愛い笑顔なのに、滅茶苦茶怖いんですけど……」

白虎 「マァ、確カニ」

シヴァ「我らのお礼が」

白山 「言葉通りとは」

カーマ「言えナイノネ」

ほむら「さぁ、帰って召喚士に伝えなさい。いいわね」

ピクシー 「は、はははははいっ!」




ほむら「さぁ、マミを慰めに行きましょう」

まどか「うん。きっとすごく落ち込んでるよ」

ほむら「マミを泣かせるなんて、ネミッサもお説教ね」

まどか「ウェヒヒ。ホントだよっ。ちゃんと守ってくれないと」


この日、とあるサマナーさんから一挙に四体の悪魔が契約を解除して
その彼の元を離れました。
そのあと、今度は私と契約してもらっちゃいました。もうこれで仲魔が
十人になってしまったけれど、こんなにいてもお仕事はありません。
そのことを伝えたら、私の昼間の護衛にはピクシーさんや
モー・ショボーさんのほうが都合がいいそうなので、そういうことを
お願いする予定です。

あ、ちなみにあのサマナーさんには、カーマさんの弓矢を使いました。
一週間くらい、自宅にある冷蔵庫が恋人に見えるようにしたそうです。
ドアを開け閉めしすぎて、風邪を引いてしまったそうです。


おしまい


筆者です。

エイプリルフールネタです
嘘はついてないんで、話としてはおかしいんですけどね
くすっと笑ってもらえたらうれしいです
さぁ、まどかの仲魔、残り二体どうしようかなーっと


本編のQBは自分が理解した限り原作のほぼまんまです。
本編作成時に考えたことは
原作の設定に大きな変更は加えないということでしたが
上手くいったでしょうか
せいぜい杏子がマミの弟子という部分を公式と勘違いした
くらいでしょうか





乙でした。

エイプリルフールの嘘は縁起物だから、ついておいた方が良いと信じています。
それにしてもこの冷凍庫部分が特にセクシーだ……。

乙であります。
ネミッサは災難でしたな。
しかしこのサマナー、ライラ・ハリティー・モーショボー・ピクシーを仲魔にしてたって……
とんだハーレムサマナーじゃないか! この仕返しは妥当です(笑)
あと冷蔵庫が対象と聞いて、禁書SSの某未元物質さんを思い出してしまった。
仮にそう考えると器物フェチの上にアーッ!という凄まじい仕返しに(笑)

泣き虫マミさん可愛いよマミマミ。

次回も楽しみに待ってます。 

ネコマタとリャナンシーは仲魔に出来なかったのかサマナー


筆者でございます

最近真4のため、リハビリでSJを再プレイ中です
改めてプレイすると、ゼレーニンや三賢人が
QB並みに何言ってるかさっぱりわかりませんでした
そんな私はダーク・カオス


>>182さんが件のサマナーに思えてなりません
マミちゃんの腰かお尻か微妙なところを触ったので
ネミッサに蹴られたのですよ


>>183
この世界観では合体推奨な世界のなので
合体で作り、しぶしぶ従わせていたのでしょう
全員逃げ出しましたけど

皆さんていとくんのせいか、冷蔵庫好きですね
「とある~」は詳しくないのですけど
誰かメガテンとクロスさせてくれないでしょうか


>>184
ネコマタ「そりゃ私らにだって……」

リャナンシー 「……契約相手は選ぶわよ」

だそうです


そして、これから投稿します
一部シチュエーションをあらたまい先生の
「巴マミの平凡な日常」から借用しました

わかりにくかったらすみません、即興でいきます

【ともえまみ こちょうのゆめ】



ネミッサ 『もしもしー、マミちゃん?』

マミ 「あ、ネミッサ。あのね、大変なの!」

ネミッサ 『え、なに! 何かあった?』

マミ 「あ、あのね……ごはん、買ってきてほしいの」

ネミッサ 『…………はぁ? 食うに困ってるのアンタ?』

マミ 「違うの、出かけられなくなっちゃったの」

ネミッサ 『要領得ないわ。ちゃんと説明して』

マミ 「ソウルジェムの汚れを重曹でとってたら……排水溝に落としちゃったの」

ネミッサ 『そういうことね。あの家の周り微妙にお店なかったわね』

マミ 「百メートルの距離にはないのよ。あっても途中で倒れたりしたら……」

ネミッサ 『取り出せばいいじゃない。業者呼んでさ』

マミ 「月曜まで電話受付やってないのよ!」

ネミッサ 『アタシも外せないわよ?』

マミ 「それはいいの。だからせめて食べ物だけでも買ってきて」


ネミッサ 『学生時代はこんなヘマしてなかったのにね』

マミ 「うう、それを言わないで……、反省してるんだから」

ネミッサ 『まぁいいわ。困ってるのは確かだもんね』

マミ 「ありがとうネミッサ!」

ネミッサ 『……アンタもそろそろカレシ作りなさいよ』

マミ 「で、でもなかなかそういう出会いがなくてえ仕事も魔法少女のことも……」

ネミッサ 『わかったってば。でもアタシにだってカレシも仕事もあるのよ?』

マミ 「えっ?」

ネミッサ 『今でもアンタのこと……その……、だ、大好きよ? でもそろそろさ……』

マミ 「えっ! ちょっと今なんて?」

ネミッサ 『~~~! アンタのこと、大好きだって言ったの! 何度も言わせないでよ!』

マミ 「そ、そうじゃなくて……彼氏?」


ネミッサ 『うん、そうよ。悪魔だってことも、アンタのこともひっくるめて支えてくれてるの』

マミ 「えっ……、そ……そんなぁ……」

ネミッサ 『アンタもさ、もうアラサーなんだし……。もう一人身ってわけには』

マミ 「」

ネミッサ 『いつまでも中学時代のジャージ部屋着にしたりしないでよね』

マミ 「」

ネミッサ 『ちょっとマミちゃん? 聞いてるの?』

マミ 「」クラッ




マミ 「う~ん、う~ん……」

さやか「マミさんうなされてる?」

ほむら「受験で疲れてたのかもしれないけど、どうしたのかしら」

マミ 「……いやっ! はっ! はぁ、はぁ。あ、あれ……。ネミッサに彼氏が……」

さやか「??? マミさん大丈夫ですか? すごい汗ですよ」

杏子 「転寝してたっぽいけど、ネミッサいたから上がらせてもらってるよ」

まどか「うんしょ。ネミッサちゃん、これ冷蔵庫に入れるね」

ネミッサ 「うん、お願いねー。あ、おはよマミちゃん」

ほむら「顔色悪いけれど……どうしたのマミ」

さやか「なんか様子がおかしいね。夢見が悪かったのかな」

マミ 「ああ……、ネミッサがいるぅ……」ジワッ

ネミッサ 「そりゃいるわよ。今週末のお花見の打ち合わせするって……」

マミ 「よかったぁ~~」ダキッ


ネミッサ 「なっ! ななななななななな!」

さやか「わぁお、マミさん大胆~♪」

まどか「み、見てる方が照れちゃうね」

杏子 「あン時もそうだったけど、こいつ驚くと直立不動になるんだな」

さやか「相棒さんに抱きしめられた時のこと? あんときもこうなってたね」

ほむら「へぇ、可愛いところあるじゃない」

まどか「むっー。えいっ!」ダキッ

ほむら「きゃっ!? な、何? まどか??」

さやか「お、どうしたのさ、まどか」

まどか「ふーんだ」ギュッ

杏子 「なんだこいつらまで抱きついて……」

さやか「ふふーん。ていっ!」ダキッ

杏子 「うぉっ! いきなり何すんだよ!」

さやか「えー、なんだか杏子が寂しそうだったからさー」

杏子 「別に寂しかねーよ。つーか離せ!」

ほむら「これじゃ誰もお茶の支度ができないわね……」


――お茶会終了後――

ほむら「それじゃまたねマミ、ネミッサ」

まどか「おじゃましましたー」

杏子 「お弁当はこっちで作るから、お茶とデザートよろしくな」

さやか「恭介と仁美もくるし、大きめシート持ってきますね」

マミ 「ええ、お願いするわね」

さやか「ネミッサー。さっきの続きごゆっくり~」

ネミッサ 「……アンタのだけデザートにワサビ入れとくわ」

マミ 「そんなことしないの!」



みんな「お邪魔しましたー」



ネミッサ 「続きはあれだけどさ、さっきどうしたの?」

マミ 「えっ……。あっ、あのね……夢を見たの」

ネミッサ 「はぁ、どんなよ?」

マミ 「私が三十歳になっても独身で、皆がどんどん結婚して……」

ネミッサ 「ちょっと、何それ」

マミ 「ネミッサにも彼氏ができて……私から離れちゃう夢」

ネミッサ 「ずいぶん生々しい夢ね」

マミ 「ねえ、いつかは私から離れてどっかいっちゃう?」

ネミッサ 「アンタにカレシができたら離れるしかないわね」

マミ 「……らない」

ネミッサ 「ん?」

マミ 「じゃぁつくらない。そうしたら、ずっと一緒にいられるよね」

ネミッサ 「そういうわけにはいかないでしょ。三十路マミちゃん独身は無いわよ」

マミ 「……一緒にいられるならそっちのほうがいい……」

ネミッサ 「バカ言わないの。すぐいい人見つかるわ。アンタならね。ほら、ご飯にしよ?」






マミ (どんなにいい人でも、あなたのほうがいい……なんて言ったら、困らせるかな)


筆者でございます。

読み返したら最初の説明が少なすぎました
わかりにくくて済みません

あと、クロスオーバーで異なる作品のキャラによる恋愛って
叩かれるらしいっすね
ここは読んでる人少ないから、叩く人も確率的に少ないんでしょうけど



それでは、また感想お待ちしております

『おやすみのあいだ アクマに にくたいを のっとられぬようおきをつけて』

おやすみなさい

三十路マミさんのだらしなさは好き

まだ百合だから大丈夫だが普通のカプなら……

GJ
ここで『巴マミの平凡な日常』ネタとは不意討ちすぎるwww

乙であります。
何度見ても重曹ネタは噴く。
実際はネミッサが独り身続けるわけで……悪魔で良かったねネミッサ、アラサーとか気にせずに済むよ(笑)

自分もクロスオーバー書いてるからちと不安です。
ほとんどオリジナルだから輪をかけて……(汗)

ジかいモタのしみにシて……おヤ? なニかサレたようダ。
(それじゃバイド汚染だ(笑))

乙でした。

もうマミさんが家庭に入ってクズノハに勤めるネミッサを主婦として支える未来しか見てなさそう。

『巴マミの平凡な日常』の世界で、一度思いっきりグリーフシードを重曹で磨いてみたい。
でもそもそもグリーフシードがある世界だったっけ?


筆者でございます
ペルソナの方で苦しんでおります
ちょっとはしおっちゃおうかな……


>>194
正直お味噌マミさんで
マミちゃんにはまった口です、私
あれ単行本にまとまらないかしらん?

>>195
マミちゃんの夢の話ですが使っちゃいました
件の友人から同人誌のアラサーマミの薄い本を
譲って貰えるので、その記念でもあります

>>196
ここの読者さんは笑って許してくださってるので
開きなおってマミッサやれてます。感謝感謝
ちなみに、一番の見どころはマミちゃんが夢で
ネミッサ『大好き』と言われたいという願望を出しているところです

>>197
この時点ではそうっぽいですね
一応、マミちゃんのお相手は割と細かく決めてるんですけどね
オリジナルキャラなので実際表現しようか悩んでます



そして、今日ほとんどのところで入学式だと思うので
短いけれど真面目なものを贈ります


【にゅうがくしき】


春を地獄の季節と例えたのはランボーだっただろうか。
浅学な筆者にはあの詩歌はとてもではないが理解できなかった。

けれど
彼女たちにとって春は
そんな苦いものではない。

時折
あるいは常に
涙零すことになる季節ではあるけれど。


四月五日
今日は巴マミの高校入学式。

やや遠方に住むマミの養父母も出席する。

だが、その日に合わせわざわざ仕事を休み魔法少女の面接もずらした
彼女がいること。そのほうが嬉しかったらしい。

いつもの部屋から出る高校の制服のマミと、きちんとした身なりの
ネミッサ。一年前の辛い出来事を乗り越えた力強いマミの笑顔が
輝く。

春の桜が、澄んだ青空が、門出を祝う。


マミの高校受験の合否がわかったのが試験から一週間後。
緊張の面持ちのマミ。そのマミに腕を痛いほど掴まれて引っ張られる
ネミッサ。
一人で見るのは怖い、とのことで無理やり連れてこられたわけだ。
けれども、マミと違いネミッサはある種楽観していた。なぜなら
マミの頑張りを、努力をずっとそばで見ていたから。

右手に受験番号、左手にネミッサの手を繋ぎ張り出された番号表を
仰ぎ見るマミ。痛いほど手を握り締めているが、その手のひらは
緊張の汗でわずかに湿っていた。

(大丈夫だよ、あんなに頑張ったじゃない。
今まで勉強以外も頑張ったマミちゃんに、悪い結果なんかないって)

シフトが決まるまではパトロールと勉強を両立させて、
決まったあとでも待機シフトのときは皆を助けに行った。
パトロールでへとへとのはずなのに、決めた勉強時間は減らさない。
そんなマミだから、ネミッサも家事を手伝った。

握られた手にもう一方の手を添えて握り返す。

(大丈夫、大丈夫よ)


周囲が喜びの声をあげるなか、マミは険しい表情で見つめている。
その横で、ネミッサは祈りながらマミを見つめる。
番号を探すマミの首の動きが止まる。そしてぷるぷる震えている。
様子が変わったマミに、ネミッサも少し心配になる。
突然首をネミッサに向けて回すマミ。小さく驚くネミッサ。
ネミッサが声を掛けようとする前に、マミが口を開く。

「……あった……」

「……ったりまえじゃん」

「やったぁー、あははははっ、あったぁ! あったよぉ!」

喜びを爆発させてネミッサに抱き着く。痛いくらい強く激しく。

「あたりまえでしょ。マミちゃんが落ちるはずないって」

「うん、うん……、ぐすっ……、ありがとう……ふぇぇぇぇ……」

笑顔のままマミは泣き出した。号泣と言っていい。
その様子にネミッサどころか周囲の受験生も驚く。

この涙は、ただ合格したことによるものではない。

死の運命から救い、魔法少女の運命から救いだし、
みしらぬあしたに導いてくれた人たちへの感謝の涙だった。
ほむら、まどか、さやか、杏子。そして『葛の葉』の関係者。

そして何より
誰より
ずっと隣で
支えてくれたネミッサへの。

大きな声を上げ、周囲の目もはばからずマミは泣き続けた。


そして入学式当日。高校に向かうマミとネミッサのそばに一組の
夫婦が近づく。

「パパさんママさん? こんにちは、アタシネミッサ」

銀髪をなびかせ、マミの養父母に挨拶する。マミは敬語を使って
欲しかったが諦めた。
一応、ネミッサが所属する法人格の名刺を渡して身分を説明して
おいたため、悪い印象はなかったようだ。

「ああ、あなたがマミの言ってた『一番のお友達』ね」

「あ、そういう風に伝えてたの? 光栄ね」

やや年老いた養父母はなかなかマミの様子を見に行けないらしい。
けれども、何かにつけて電話や手紙でのやり取りをしており、
その中でネミッサやまどかたちのことをマミはよく伝えていた。

「私たちはなかなか見滝原には行けないのだけれど……」

「マミのこと、よろしくお願いしますね」

「あの子が笑っていられるのもあなたのお蔭だと思うの。
あなたに出会えて、本当によかったわ」

暗に事故のことを言っているのだ。あれ以来塞ぎがちで鬱気味な
様子が、近年とみに払拭され明るくなっていた。それがネミッサの
お蔭だと、養父母は感じていた。

「アタシの方こそマミちゃんにいろいろ大切なものを貰ってるわ。
アタシも、マミちゃんに出会えてよかったって思ってるの。
お相子ね」

養父母の後ろで、マミが涙ぐんでいることにネミッサは気付かない。

桜の後ろで、青空がさらに輝きを増した。


マミは卒業式でも後輩たちの前で大泣きしたが、
入学式でも泣いてしまった。
きっと、これからの人生の節目節目で泣いてしまうだろう。
あの一か月を思い出して。苦しくても悲しくても辛くても、
全力で駆け抜けたあの一瞬を。

なぜなら、その節目にはいつもいつまでも、一緒に駆け抜けた人が
隣にいてくれるから。そばで笑ってくれるから。

見守ってくれるから。

ずいぶん先の話になるけれど、いずれマミとネミッサも違う道を
歩むことになる。それでも二人はそのときを、
きっと涙と笑顔で迎えることができる。




マミの養父母と別れ、二人は商店街の方に歩き出す。

「皆があのお店で待ってるって」

「え、その格好で行くの?」

「高校の制服姿見たがってたじゃん。お披露目だよ」

「えっ、と。貴女のことよ」

「似合うでしょ。このジャケット姿」

「……それはどうかしら?」

「嘘でも似合うって言ってよ! ヒドい!」

苦笑いをするネミッサに、マミも顔が綻ぶ。

桜の花びらが、ネミッサの頭に乗っかっていたことをマミは黙って
いた。皆に指摘されて、からかわれるネミッサを見たかったから。

マミは、幸せだった。


――入学おめでとう。マミ。ネミッサさんと仲良くね――

両親のお墓には、真新しい花が供えられていた。


筆者です。

最近は番号張り出しとかやらないのかな?
古すぎたりして


全レスを嫌う人や、作者が出しゃばるを嫌う人が
いると総合スレで知りました
読者の中で、気分を害されてた方がいらっしゃられたら
ごめんなさい


それではおやすみなさい。よい週末を

>>206
おつー
マミッサまじキマシタワー

乙でした。

マミさん感無量だろうな……。

自分は作者様の全レスも好きで乙していますので、作者様のお好きにどうぞ。

筆者です

小ネタを繋ぎに書きます

>>207
いつもマミッサに興奮していただき感謝デス
しっかし私はどこにいこうとしてるのか
なるべくついてきてください(笑)

>>208
ああ、ちゃんと感じてくれた。ありがたい限りでス
卒業式は描くSSはあるんだけれど、合格発表は見当たらなかったので
ちょっと頑張りました
全レス苦手、ってひともいたんですけどね
やっぱりこういうやり取りが楽しいですし


そして手抜きですが少し投げます。


【けんをもつひと ひとりめ】

ヴィヴィアン「そこの魔法少女さん、学業に悩んでない?」

さやか 「うーん。確かにね。私勉強苦手だし」

ヴィヴィアン「やっぱりね、学生だもんね。そんなアナタにこれを」

さやか 「剣?」

ヴィヴィアン「これを装備すればあら不思議。頭がよくなるの!」

さやか 「おお!」

ヴィヴィアン「あのネミッサの相棒さんも一時期使った代物よ。欲しい?」

さやか 「うん! 欲しい!」

ヴィヴィアン「なら譲ったげる。でも只じゃないわよ~」

さやか 「う、中学生に払える範囲で……」

ヴィヴィアン「ん~、十五万は欲しいところだけれど、一万五千でいいわ」

さやか 「うっ、それでも高い……」

ヴィヴィアン「CDアルバム五枚分でテスト対策がばっちりになるのに?」


ほむら 「まちなさい貴女。それ装備したままテスト受けられると思う?」

さやか 「あっ……」

ヴィヴィアン「うっ……」

ほむら 「ネミッサには伝えておくわ」

ヴィヴィアン「あ、え。そ、それは……その……」

ほむら 「なら黙っておく代わりにそれを只でよこしなさい。
切れ味はいいんでしょう?」

ヴィヴィアン「そ、そうよ! 一応思考能力向上も嘘じゃないわ!」

ほむら 「ならそれを置いて、とっととサマナーのところに帰りなさい」

ヴィヴィアン「はっ、はいっ!」



ほむら 「さやか、あなたはどこまでおろかなの」

さやか 「う……返す言葉もないです」


【やりをもつひと ふたりめ】

杏子 「あんたも槍使うんだっけ」

ルーグ「ん? 『も』?」

杏子 「あれ、こないだ勉強したよ。あんたの武器ブリューナクって」

ルーグ「???」

杏子 「ちがうの?」

ルーグ「これのことですか?」コロン

杏子 「弾……だよね」

ルーグ「弾……ですね」

杏子 「どうして?」

ルーグ「これを投げたとき、光の軌跡が槍のように見えるらしくて」

杏子 「そういうものなのか?」

ルーグ「そういうものらしくて」



まどか「二人とも、難しい顔をして、どうしたの?」


【でおち】

マミ 「……」

くびなしライダー「……なんだよ」

マミ 「い、いえなんでも……」 

ネミッサ「マミちゃ……ん?」

ほむら 「そっとしといてあげてネミッサ」


筆者です。

強風で外出できなかったのでこんなんばっかり書いてました

つまんないかもしれませんが、そのときは笑ってすませてください


それではおやすみなさい
寝ている間の永眠の誘いに気を付けて

乙でした。

さやかちゃんは、四霊山の防具とか四方神の防具とか制服の下に着れるか試してみる? 

大天使のブラを装着するマミを見て落ち込む面々


さやか「>>215さん、ありがとう! ちょっと試してみるね」

ネミッサ 「四霊山の防具ね。これ布だからなんとかなるかも」

ネミッサ 「全部揃えて身に着けると身体能力が上がる代物よ」

さやか「おっし、じゃぁちょっと試させて」



――試着中。しばらくおまちくだ……


「アンタ肌キレーね。それにこう、胸も結構あるし」

「オヤジくさいなぁ……」

「カミジョーも早くしないと誰かに取られちゃうのにねぇ」

「いいんだって。恭介はバイオリン頑張ってくれれば……」

「カミジョーも顔可愛いし、誰かに取られちゃうわよ」

「う、うっさいな! そっちだって告れなかったくせに!」


――……しっ、試着中。しばらくおまちください――



さやか「おし、これでOKかな。うん、なんとか見栄えも悪くないっぽいし」

ネミッサ 「なんとかなってよかったわ。それあげるから、好きに使って」

さやか「サンキューネミッサ!」



さやか「おし、これでテストも授業もOKだね。さぁ、やっちゃうよ!」

和子 「美樹さん、授業中は帽子を脱いでくださいね」

さやか「」

ほむら「貴女はどこまで愚かなの……」



>>216

――マミ宅にて――

マミ 「前に話していたウサミミの帽子と、そのブラジャー型の防具ってまだあるの?」

ほむら「私が預かっているわ……。いい加減ネミッサに引き取ってもらいたいのだけど」

マミ 「見せてもらっていいかしら?」

ほむら「ええ、いいわ。ちょっとまって。……はい、どうぞ」

マミ 「ありがとう暁美さん。ちょっと身に着けてみようかな」

ネミッサ 「あら、『大天使のブラ』?」

ほむら「ネミッサ。いい加減に防具を引き取ってもらえないかしら?」

マミ 「ああ、今ね、それを身に着けてみようかと思って……」シュルシュル パサリ

ネミッサ 「!?!?」

ほむら「ちょっとマミ! 何を脱いで!?」

マミ 「え? ブラジャーだもの」

ネミッサ 「それ服の上からでもいいのよ!」

マミ 「…………ええええええええええっっ!」

ほむら「マミ……、脱ぐのは、ネミッサの前だけにしなさい」

マミ 「あ、あぅ……」///



――しばらくお待ちください――


――続き――

ほむら「ふぅ、びっくりしたわ」

ネミッサ 「まったくね」

マミ 「ううう……」///

ネミッサ 「気を取り直して。着てみるなら手伝うわよ」

マミ 「うん、お願いね……」///

ほむら「まだ照れてるの?」

ネミッサ 「ほら、手を挙げて……後ろでとめてあげるからじっとして」

ほむら「ちゃんとホックまであるのね」

ネミッサ 「ホントにまんまブラだからね、間違えるのも仕方ないけど」

マミ 「も、もういいでしょ……くすん」

ネミッサ 「別にからかってるわけじゃ……、あれ。とまらない」

ほむら「サイズが合わないのかしら。ちょっと代わって」

ネミッサ 「おーけー。なんかやり方悪いのかな」

ほむら「えっと……。うーん、普通のホックよね。サイズも問題は……」

ネミッサ 「ちょっとおっぱい大きいけどね」

マミ 「ううう~~」///

ほむら「だめね、なぜかとまらないわ」

ネミッサ 「あ、ひょっとして……」


『大天使のブラの装備条件。【知力20以上】』


みんな「……」

ネミッサ 「ドンマイ」

ほむら「ドンマイ」

マミ 「ぐすん……」







筆者です

お返事+投稿しました

ちょっと風変わりなネタになりました
せっかくアイディアくれたので膨らませて
お返しします



明日発売のきらら☆マギカが楽しみです
あらたまい先生の漫画が一番楽しみな筆者でした

それではおやすみなさい


追伸
なぜか時々、下に無駄に改行が多くなってますね
気を付けないとなぁ

>>1のマミさんはときどきポンコツになるよなと思っていたが、
アラサーマミさんのネタが好きと聞いて納得した
そうか…まあマミッサ自体は好きだからいいや

乙でした。

単品で知力が上がる防具はドルフィンヘルムとかわうその帽子だけだったはずだから、授業中は使えないかーー。
残念だったねさやかちゃん

マミさんは四霊山の防具→四方神の防具→大天使のブラと着替えればワンチャンス……あるといいね。


風の強い夜にこんばんは、筆者です

>>222
ポンコツ、ポンコツかぁ
あんまり安易なマミちゃんネタは止めた方が
よさそうですね
お詫びにマミッサ濃厚作品をお納めします

しっかし、ノーブラはねぇ。ネミッサが知ったら泣くだろうなぁ


>>223
知があがるのは頭装備だけですからねー
辛うじてランスロットの剣かな

先のヴィヴィアンのやり取りを見た若いサマナーたちが、
我先に知恵の香の準備に取り掛かったようです


でも中学生で知20ってかなりハードル高いですよね
だから装備できなくても当たり前だと思うの(言い訳)

【あのひとの あこがれのひと】


「わたしネミッサちゃんきらい」

「まどか、それはちょっと……」

会話の流れで、ネミッサの話が出たそのとき、まどかが呟く。
呆れたようにもらすさやか。下校中の三人の会話が突然重くなる。
いつものまどからしくない言いようにほむらすら慌ててしまう。
十月の、やや寒さが忍び寄る。そんな登校風景。

「貴女らしくなくて、ちょっと驚いたわ」

「あ、うん……ごめんね」

「ンン……まぁ、まどかだってそういいたいときもあるだろうけどね」

元々心優しい子である。でなければほむらもここまでまどかに好意を
持たなかっただろう。
だがその一方で、まどかも人の子である。負の感情がないはずがない。

それが、嫉妬……ジェラシーであったとしても。


まどかが不機嫌になるときは、概ねほむらがネミッサの話題をするとき
だった。

ほむらがネミッサに感謝の念と、好意を持っていることをまどかは
知っている。それが決してまどかを蔑ろにするものではないことも。
自分のために頑張ってくれたほむら。まどかは彼女に対する感謝の念と、
純粋な好意をもっている。

それと同じものをほむらがネミッサに持っていてもおかしくはない。
まどかを救おうと頑張ったほむらの行動と、ほむらを救おうと頑張った
ネミッサの行動は、同じようなものだからだ。
だからまどかのように、ほむらがネミッサに感謝の念と純粋な好意を
もっていてもおかしくない。

おかしくはないのだが、それが納得できない。理屈ではなく、心で。

(私にとっては最高のお友達なのに)

ややもすると恨みにも似た感情が滲む。まどか本人は気づきもしないが。


授業にも集中ができず悶々とし、ほむらは悩んでしまう。

”さやか、フォローお願いね”

”OK、まかしといて”

”ありがとう。助かるわ”

授業中のテレパシーでの内緒話、それは魔法少女特有の特権。
ほむらはさやかにフォローをお願いする。出会った当初からは想像も
付かない殊勝な態度にさやかも苦笑い。

(あのほむらが私にね~。変わるもんだね)

あとで杏子にも協力をお願いしようと考えながら。
ほむらを変えたネミッサのためにも頑張ろう、そう心に決めて。


しかし、放課後になるとまどかも笑顔を取り戻す。終始不機嫌を
貫くわけではないので、さほど周囲が困るわけではない。
せいぜい、ほむらやさやかの精神衛生上よろしくないというだけだ。
だからか、クラスの違う杏子はさほど心配していない。

「けどさ、まどかだって神様じゃないんだ。そういう感情くらい、ね」

杏子は他人でありながら家族になったため、平たい目でまどかの日常を
観ることができた。それからすると、気になる点もあるのだという。

「まどかはさ、優しさを理由にやらないことがあるんだよ」

具体的には、相手が悲しむから強く言えない、という類のことだ。
それがある種引っ込み思案として受け止められていたが、ビジョン・
クエストを経て少しだけ前向きになったようだった。
だがほむらがそうであるように、まどかも芯には小心翼々たる意識が
ある。すぐさまそれが改まり強くなれるわけではない。

それが同病相哀れむの心で互いを引き寄せるのであり、相手が克服した
時間軸では、ひどく魅力的に映るのだろう。
それがほむらとまどかの関係だった。

「大事なことをすることを、躊躇っちゃいけないんだ」

親父の受け売りだけどね、と杏子は照れくさそうに笑う。彼女は
実父母を「親父」「お袋」といい、鹿目家の父母を「パパ」「ママ」と
いう。
そんな杏子はお姉ちゃんの顔で、まどかを諭す。偉そうなことを言った
ことを照れて鼻を掻いてごまかした。


「嫌われてる? まどかさんに?」

マミの部屋でお茶を啜りながら頷くネミッサ。相も変わらず持ち手を
持たず、ふちをもって紅茶を飲む。

「まどかさんがねぇ」

「信じてないわね……、アタシも信じられないけどさ」

杏子が養女になり苗字が変わって以来、マミは二人をそれぞれ
「杏子さん」「まどかさん」と呼ぶようになった。距離感が変わった
というよりは、苗字が同じになったからというだけだ。けれども、
杏子は名前を呼んでくれるようになって、ちょっと嬉しそうだった。

「あまり気にしなくていいんじゃない? あ、でもひょっとして」

思い当たることがあるのかマミが言いよどむと、ネミッサは身を
乗り出してきた。ネミッサとしてはまどかはとても大事な友人だ。
そして何よりその無償で無限の優しさは、時に危うさを含むものの、
一人の人間として尊敬できるものだと思っていた。

だから彼女は思う。危うさの部分を自分が守ってあげられたら、と。

「そのマナーを無視するのは改めたほうがいいわ。
まどかさんのおうちは、結構しっかりしてるから」

杏子がマナーに四苦八苦するのを知っているマミはそうたしなめる。
飲もうとしたティーカップを持ち替えると、ちゃんと取っ手を持って
口に着けた。
ネミッサはマナーを知らないわけではない。知ったうえでその通りに
やるのが嫌なのだ。だから、マナー知らずの人間よりたちが悪い。

「ひょっとして結構気になってた?」

「そうね、娘の無作法は、母親の責任ですもの」

ブッ、と吹き出すネミッサ。じとっとした目でマミを睨む。
けれどもマミは涼しい顔でやり過ごし、紅茶を飲んで受け流した。
ここは、マミの勝ち。


お茶会に集まる一同。言われてみれば、ネミッサから距離を取る位置に
座るまどか。あるいはネミッサの隣に座るときはほむらとの間に座る。
ほむらとネミッサの距離を作ろうとするわけだ。

(結構本格的なんだね)

さやかには純粋だったまどかが、ちょっとだけ我を出すようになって
見えた。恋を現在進行形でしているさやかには、よくわかる。
けれども、その思考にたどり着いたときは驚いてしまう。

(あれ!? ひょっとしてこれって恋愛関係の三角……四角関係?
…………、いやいやいやいやいや!)

自分の思考を笑って流す。でも同時に冷や汗も流す。

「ネミッサ、お茶運んで~」

「私がやるわ」

座る位置の関係で一番遠くなったネミッサを思いやり、入口に一番近い
ほむらが代わりに買って出る。ちょうど対角線に座っているので
必然的にそうなる。

「ありがとホムラちゃん」

「いいのよ、貴女は座ってて」

「ちゃんとお礼を言えるのね。ママ嬉しいわ」

「はいはい」

「ネミッサちゃんえらいでちゅねー」

「バ・カ・に・す・ん・な・ってーのっ」


お茶会の雑談に花が咲く。

「ねえ、ほむらちゃん。次のお休みにおでかけしようよ」

「そうね。担当はネミッサと杏子で待機もさやかがいるし、いいわよね」

「大分信頼してもらってるわね。頑張ろうキョーコちゃん」

二人でハイタッチして気合いを入れる。ついで隣にいるさやかにも
ハイタッチ。このあたりのノリの良さが、三人の頼もしさでもある。

「貴女たちの実力を信頼しているからね」

うっすら微笑む顔に、ネミッサも嬉しくなり笑顔で返す。そこに皮肉や
嫌味がない。笑いあう様子にまたぞろ機嫌を悪くするまどか。

「むー、ほむらちゃん!」

「ひゃぅ! な、なに?」

ネミッサを褒めるようなことを言うたび、まどかはほむらに抱き着く。
そして、なぜかネミッサを睨むつけるような目で見る。
ネミッサにとっては心当たりのない視線である。戸惑うことはあるが
それでまどかを嫌うことはない。
暖簾に腕押し、というところだろうか。


結局、このお茶会でまどかがネミッサと仲直りすることはなかった。
なぜなら、まどかが悪感情をぶつけているとしても、ネミッサがそれに
対し怒りを向けることはないからだ。

ネミッサはまどかが好きなのだ。友人として、優しいその人柄が。

誰も気付いていないが、これは練習なのだろう。
誤解を恐れずに言うならば、まどかが人を嫌いになったとき。
そのときのための練習だ。

まどかがこれまで今まで、人を嫌いになったことなどない。ましてや
軽蔑したこともない。それは両親の躾の良さでもあるし、本人の優しさ
によるものが非常に大きいものと思われる。
けれども、いつかまどかにも嫌いな、苦手な人が現れるだろう。
そのとき、その人との付き合い方や距離の取り方を学んでおかないと、
その時大怪我をしてしまう。いつか詢子の言っていた「転び方を学ぶ」
ことに近いのではなかろうか。

幸い、他の誰よりもネミッサは打たれ強い。またそのあけすけさで
後引くようなこともない。まどかが「嫌いになる」にはうってつけの
人材といえた。


とはいえ、嫌われ続けていて気分がいいわけではない。怒らないだけで
精神は摩耗する。お茶会の終了後。ぐでっとするネミッサ。

「やっぱり嫌われてるのかしらね。なんでかしら」

その様子を見てマミはくすくす笑う。実はほむらやさやかから相談を
受けており、酷くなれば仲裁するよう頼まれていたのだ。けれども
ネミッサはそれを柔らかく受け止めていたため彼女の出番はなかった。

「ネミッサは偉いわね」

とネミッサの頭を撫でる。言葉やしぐさの意味が分からず困惑するが
払いのけることはしない。その温かさに、とても弱いから。

「よくわかんない」

「いいのよ」

「……こないだはごめんね?」

「ブラジャーのこと? ビックリしただけであなたのせいじゃないわ」

「でも、ごめん」

「ふふ……。ならさ、一つお願いしていいかしら?」

「許してくれるなら、何でもするわ」

こういう空手形を切るのがネミッサの悪いところだ。まどかにも
同じようなことを言ってしまう可能性がある。これが人間同士なら
いいが、ネミッサは悪魔だ。契約が魂に食い込み、その存在を危ぶむ
可能性がある。


「じゃぁ、ぎゅっ、ってして?」

提案の内容に大きく驚き、困惑し顔を真っ赤にするネミッサ。
言った手前、必ずやり遂げないといけない。おずおずと、ネミッサは
マミを抱き寄せる。受験のためでもあるとのこと。
マミは大人しく、ネミッサの腕の中に納まる。

「ふふ、あったかい」

「うう、なんか緊張する。変な気分」

「ね、まどかさんのこと、私に任せもらえないかしら」

「えっ? うん、いいけど。私がいけないんじゃないの?」

「お願い、任せて」

これがマミのズルいところだと、ネミッサは思う。こんな状態で、
体温や香りを感じながらお願いされたら、断れるわけがない。

「マミちゃん、ズルい」

「うふふ。ふふ」

マミに方はすました顔で、ネミッサに甘えていた。
こうやって、問題を解決するエネルギーをもらっているのだ。

これで交際してないと言い張るのだから、周りは困ってしまうだろう。


翌日、昼休みにまどかを呼び出すマミ。ほむらたちには事情を話しして
席を外してもらっていた。屋上の、人気の少ないところで二人だけの
昼食。
さすがにその状態に不安を感じているのだろうまどかは言葉少なだ。
ある程度マミの言わんとすることに気付いているうようだった。

「ごめんなさいまどかさん。急に呼び出して」

「いえ、いいんです……。話があるんですよね」

「うーん。ご飯食べてからにする?」

と、マミは優しく言う。逆にまどかは優しくされればされるほど
緊張してしまう。

「話先に聞きます」

「そう。いいのね」

とお弁当箱のふたを閉じる。ネミッサにも同じものを渡してある。
きっと今頃味わってくれていると思う。

「ねえ、ネミッサのこと、きらい?」

内容は真っ直ぐだが、その声色は優しく穏やかだ。なるべく圧迫しない
よう、隣に座り前を見ながら語りかける。
風がふわふわと二人の間を流れる。


「どうして、ですか」

「ネミッサが落ち込んでいたの。あなたに嫌われたーって」

びくん、とまどかが痙攣する。唇を噛みしめて怯えているようだった。

「ごめんなさい。責めてるわけじゃないの。あの子がなにかして……」

「そうじゃないんです。ネミッサちゃんのせいじゃないんです」

そういって。まどかはぽつぽつと話す。ほむらがネミッサのことばかり
話すこと。それがなぜか嬉しそうに見えること。そしてそれに嫉妬する
自分が嫌になること。

「ほむらちゃんは、私の最高の友達なのに」

まどかは気付いていないが、嫉妬する自分が嫌いだというものを
ネミッサに「転嫁」しているようだった。もちろんマミにもそれと
わかるわけではないが、漠然とそう感じていた。

自分の呪いを受けて、ほむらは苦しみつつもまどかを救った。それだけ
ではないが、それゆえまどかはほむらに感謝し好意を持っている。
同じ理屈で、ほむらを救ったネミッサにほむらが感謝と好意を持って
いてもおかしくはない。
おかしくはないのだが、それがまどかにとっては悔しいことだった。

「たぶん、これ、嫉妬っていうんです」

完全に俯いて、落ち込んでしまう。自分の嫌な部分を見つめることが
恐怖だった。
けれども、憧れの先輩の優しい眼差しのおかげで、何とか向き合える
ことができた。


「私とおんなじね。私も暁美さんに嫉妬してる……かも」

マミはくすっと笑う。その反応に驚くまどか。まどかはマミがそんな
自分のような嫌な部分を持っているとは思わなかった。それがまどかに
とっては驚きだった。

「本当ですか!?」

「うーん、あなたも美樹さんも、私をどうみているのかしらね」

マミは苦笑してしまう。きっと二人には聖人君子に見えているのでは
ないだろうか。それが結局、彼女を逆差別してしまっていることに
二人は恐らく気づいていない。
だからこそ、臆面もなく切り込むネミッサに特別な思いを持った。

「私もね、ネミッサが憧れる人に、嫉妬しちゃうの」

ネミッサが憧れるのはほむら。ネミッサにからすれば、自分と同じく
時間の巻き戻しを繰り返しても諦めなかったほむらは憧れの対象であり、
諦めた自分を見せつけられる嫌な存在でもあった。

「私だってそうなのよ。
……ううん、誰だってそう。きっと暁美さんも、ネミッサもね」

――ホムラちゃんはスゴイんだ、カッコいいんだ!
アタシの憧れなんだ! アタシが逃げた道を歩く夢なんだ!――

「あんなこと言われちゃったら、くやしいわ」

――好きな人と一緒にいることがそんなに悪いことか!
いけないことか!――

「あんなこと?」

――そんなちっぽけな祈りがわるいことかっ!――

「暁美さんのためにあんな強い魔女に、立ち向かうあの子の思いが」

――うるさい! うるさい! うるさい!
嘲笑うな! 嘲笑うな! 嘲笑うなァァ!! ――

「すごくまぶしくて、くやしいの。かなわないな」

それは、『叶う』か『敵う』か。


まどかが一番嫌いなのは嫉妬してしまう自分だ。だから、それから目を
背けるため、ネミッサを嫌おうとしていた。そこまでマミなりまどかが
言葉にできていたわけではないが、漠然とそれを感じ取り理解した。

それはきっとまどかにとって、いいことではないのだろう。
だから、マミは自分をさらけ出して、まどかを諭した。

「ごめんなさい。マミさん」

「いいのよ。責めるつもりじゃないもの。駄目な先輩よね」

「そんなことないです! マミさんは素敵で、いい先輩です」

(私なんかを気にかけて、こうやって声をかけてくれるんだから)

「なら先輩からお願い。ネミッサのこと、許してあげて?」

まどかは笑って頷くことができた。

二人の食事が終わったころを見計らい、ほむらたちが屋上に現れる。
心配させたことを謝るまどか。
さやかや杏子はまどかにちょっかいを出している。そんな様子にマミの
説得が上手くいったことを理解したほむらは微かに嫉妬した。

(やっぱり巴先輩には、かなわないな)

それは、『叶う』か『敵う』か。


夕食のとき、マミは報告をした。任せろと言った以上、しっかりと
報告できるような結末にしたかった。

「無事に何とかなったわ」

「ホント! よかったわー。ありがとう、さすがね」

心底ほっとしたような顔をする。これで本当に悪魔だというのだから
マミは信じられない。

(まるでどこにでもいる普通の女の子じゃない)

悩んで、恋して、喧嘩して、愛する。あの時ネミッサが悩んでいた
種族の違いなんて問題にならない、そう思ってしまう。

「はーっ。気にはならないなんて嘘ね。やっぱり嫌われたくないわ」

「やせ我慢してたのね」

「そういうわけじゃないわ。なんて言えばいいのかしら……」

「大丈夫。わかるわよ」

まどかの行いに怒るほどネミッサも心が狭くない。だがまどかにわけも
わからず嫌われているのは精神的につらい。
なぜなら、相手があのまどかだ。そしてそのまどかに余程のことを、
しかも知らず知らずのうちにしてしまったと思い込み、
自分を責めてしまったから。


「受験勉強で忙しいのに、ホントごめんね」

「いいわよこれくらい。あなたや後輩のためだもの」

自慢げに胸をそらす。服の上からでもわかるほど豊かで形のいい乳房が
つん、と天井を向く。ネミッサも思わず赤面し目をそらすほど綺麗だった。

(あれが昨日アタシの体に密着してたのよねー)

ああいう無防備さのまま、うっかりほむらの前でも服を脱ぎだしたのを
からかったのはまずかったかもしれない。ネミッサも反省した。
それは、マミがネミッサを信頼し心を許しているからであり、
良し悪しにかかわらず頼ってくれているからであるからだ。

「……? どうしたの?」

「ん? ううん。えーと……」

何かを察し、話を変える。

「まどかさんの誕生日、用事で行けなかったわよね」

十月三日はまどかの誕生日だった。けれどもネミッサは、他の地域で
起った魔法少女のトラブルで終日見滝原にいられなかったのだ。

「仲直りのしるしに、何かプレゼント買いに行かない?」

「あ、いいわね。付き合ってくれる? 勉強あるだろうけど」

「平気よ。一緒に行きましょう。何買っていいかわからないだろうし」

「どーかしらねー」

「はぐらかさないの。素直にお願いしなさい」

「マミちゃんお願い。買い物付き合って」

「どうしようかしらね」

ネミッサはやり返されてわざとむくれてみた。
マミは笑っていた。

そんな夕食の風景。


筆者です

なんかストーリーがめちゃくちゃな気がしますが
これを十月のにしました
ほんとはまどかの誕生日にしたかったのですが
時期が遠すぎるので止めました
そいや、ネミッサの誕生日っていつになるんですかねえ
魔法少女たちの誕生日も公には決まってないんですよね


そんな感じで今夜はここまでといたします

アボイドスリーパでおやすみなさい

まどかメインな話がマミッサで終わる……乙

乙でした。

マミさん達を見習ってほむらちゃんともっといちゃいちゃすれば、まどかちゃんの嫉妬心も和らぐかな?

さて、知恵の香が出るまで芝浜コアでゲームし続けるか……。


マミさんの甘え方が着々と上達している…

>>224
自分が個人的にあれが嫌いなだけだからそんなに気にしないで
気に入らないネタなら読まなければ済む話

乙であります。

マミさんは母性も責任感もあるけど、
どっか無防備で抜けてるってのが可愛いですな。
だから周りのみんなも頼りにするし、同時に世話を焼きたくなるという……

嫉妬するまどか。
本編だといい子過ぎる感じもあったから、人間らしさが見れてより魅力的に見えます。
ほむらはもう、まどかに押し倒されちまえ(笑)

次回も楽しみに待ってます。


こんばんは、筆者です
寒いですね

>>241
その続きを今夜投下します
つぎはぎで話つくったからか、ちぐはぐですみませんでした
教訓にいたします


>>242
そのへんちょっとやろうかな。せっかくカーマもいるし
ありがちなコメディできますし

でも知恵の香渡された魔法少女は複雑でしょうね(笑)


>>243
誰にも甘えられないマミちゃんが唯一我を出せる相手ですから
あの手この手で甘えようとするのでしょう

私としては運命を乗り越えたアラサーマミが日常的なことで悩む姿が
大変平和的で、気に入ったのです
魔法少女がらみで悩む姿よりよっぽどかわいいな、とね


>>244
マミちゃんはとある有名ベテラン声優さんをモデルにしている部分が多々あります
日常的にはドジで、甘いもの好きで、ほんわかしてるけど、仕事はスゴいっていう……

本編より魅力的とは持ち上げすぎで、赤面してしまいます……
カーム・プリーズ私


そして、続きを投下します
お付き合いくださいまし


【あのひとと なかなおり】


さて、そのまどかはネミッサに謝罪するために一生懸命シュークリーム
を作っていた。
鹿目家にはちゃんとしっかりしたオーブンもあるのだが、さすがに知久
でも作ったことはないらしい。娘二人とインターネットのサイトを
にらめっこしながら作っていた。
幸い料理やお菓子に詳しい知久はカンが良く、まどかを上手くサポート
していた。

「膨らまないことがあるんだね。コツものってるね」

「むむむ。結構難しいんだね」

タマゴは常温でおいてから使う。三個全部使わない。バターが沸騰して
から薄力粉を一気に入れるなどなど……。お菓子作りでも難しい部類に
入るのではないだろうか。

「しかし、なんだってシュークリームなんだい?」

「ネミッサが大好物なんだってさ」

「へぇ。そういえばあの子いつもおいしそうに食べるよね」

嬉しそうな顔を思いだして軽く知久は納得する。実際にはまどかは
お詫びのつもりで一生懸命作っているのだ。

ただ、まどかにはとっても残念なことに、ネミッサは謝罪が必要なほど
怒ってはいない。ただただ純粋に喜んでくれることだろう。


一方のネミッサは買い物の最中だ。まどかに似合うプレゼントを探して
あちこち歩き回っている。
そんな中、ネミッサはまどかの趣味というか好みをあまり把握して
いなかったことに気付いた。ネミッサがまどかに関心が薄いというわけ
ではなく、ただただそういう方向に頭が働かなかっただけだろう。
そもそもネミッサのほうに、誰かに何かを贈り物するという感覚が
備わっていないようなのだ。
だから今回は一生懸命、まどかに似合うプレゼントを探していた。

「自分が欲しいものならすぐ思いつくけどね」

「まどかさんの気持ちになって探すのが大事よ」

そういうもんか、とネミッサは納得する反面、そんなことできるのかと
不安に思っている。最近になってようやく自分の感性やセンスが
ぶっ飛んでいることに気付いたため、どうもその当たりの行動が及び腰
になってしまう。

「ぬいぐるみが好きっていうのは知ってるんだけどなぁ」

「持ってるのを渡されたら困っちゃうかしらね」

「嫌な顔はしなさそうよね。それじゃ渡すほうが困っちゃうよね」

マミはネミッサの気遣いに嬉しくなる。ちゃんとまどかのことを考えて
行動していることが見えているからだ。

ただ気の毒なことに、ネミッサのセンスに難がある。彼女が選んだもの
でも、まどかがそれを気に入るかがわからない。
マミはそこだけが不安だった。


「シュークリームってキャベツが語源なのか。へぇ~」

もっぱら食べる専門の杏子はパソコンを借りて興味のある記事を斜め
読みしていた。まどかのためにも力仕事を中心に行うつもりでいる。
かき混ぜたり、足りなくなった材料を買い出しに行ったり。

「キャベツ人形って……。作った人がそう言われてたからなの?」

もうすでに杏子はシュークリームとは別の記事を読んでいる。ちなみに
そのキャベツ人形の製作者は幼少時に『キャベツから生まれた』と
言われていたらしい。その話をモチーフに生まれたキャラクターとの
ことだ。

……人非ざるモノから生まれた人非ざるものが、それでもなお、なおも
人と共に生きようとする。そんなネミッサがシュークリームを
好む理由に、そういった背景が関係していると思うのは、
深読みが過ぎるだろうか。

ともあれ、何度目かの失敗ののち、やっと生地が膨らんだ。ヘタること
もなく、しっかりとした形を維持して、まどかの前に並んでいる。
さすがにまどかも疲れてはいたが、そのシューの形の向こうにある
ネミッサの笑顔を思い、にこやかに笑っていた。

「お姉ちゃん。できたよ。味見して」

何個も作ったまどかは、その匂いだけですでにお腹いっぱいになって
しまったようだった。杏子はこれ幸いと、喜び勇んでキッチンに向かう。
生地を焼く前にカスタードをかき混ぜる手伝いをしてからずっと
お預けをくっていたため、お腹がぺこぺこだった。


ハロウィンのこの時期だからだろうか。まるっきりジャックランタンの
まんまのぬいぐるみがあった。ネミッサはそれを可愛いと思ったらしく
買おうとしていたが、マミが止めた。ギザギザの歯が怖かったからだ。

(可愛くしようとしてるのはわかるけれど、あんまり可愛くない……)

やはりついてきてよかったと胸をなでおろす一方、ネミッサの斜めな
センスに呆れかえる。ついでに言えば、ネミッサは可愛いもののほかに
(彼女本人にとって)やや奇抜なものを探す傾向にある。それが
一般的に見て『やや奇抜』に納まらないため、マミが手綱を引き抑えて
ないと大変なことになってしまう。

「自分のセンスが駄目駄目だってことに気付いたわ」

「奇抜なものを選ばなければいいのよ。受け取るのはまどかさんよ?」

「つい一捻りしたくなっちゃうけど。もうそれはヤメ! ってことね」

「そういうこと。ほら、あそこで軽くお昼済ませましょ。続きは午後」

マミのお許しが出たのは可愛らしい写真たて。この間のドレスの写真を
入れても映えるような柔らかな白磁にピンク色の、陶器のもの。
ぬいぐるみでお許しが出なければこれにするつもりでいたが、まだまだ
ネミッサは頑張るつもりのようだ。


「うん、うまいよ! これでいいんじゃないか」

「杏子。言葉遣い」

いつもの窘められる一連のセリフにまどかも笑う。杏子は食いしん坊
ではあるが、美味しくないものをそんなふうにはいわない。
だからまどかも一安心、といった風だ。
今日ネミッサに出す分は十分に作れたし、カスタードも申し分ない。

「頑張ったねまどか。それじゃネミッサちゃんに連絡しようか」

今日、ネミッサとマミを呼ぶようにあらかじめ伝えてある。
改めて準備ができたら連絡するようにも言ってあるので、急用が
なければ来てくれるだろう。
それまでに全部準備を終わらせなければならない。
とくに飲み物は紅茶。マミもネミッサも味にうるさいお客だ。喜んで
貰うためには気が抜けない。

「まどか、頑張れ」

「うんっ!」

けれども、まどかは忘れている。ネミッサが味にうるさいとはいえ、
気に入らないからと言って不機嫌になったり、まどかの謝罪を
受け入れないという狭量ではないということを。
そもそも、ネミッサにとって謝罪は必要ではないのだから。


一方のネミッサは結局陶器の写真たてを購入した。桜色の、まどかに
似合いそうな可愛らしいものだ。あしらっている装飾は薔薇の形。
だが柔らかな厚みのある花弁に仕上がっており、まどかの人柄を
連想する温かみのあるデザインになっている。
値段も手ごろ。まどかも受け取ってくれることだろう。
プレゼント用にとラッピングもしてもらった。ネミッサは販売員の
ラッピング技術に驚き、まじまじと見つめている。きっと彼女は自動車
の全自動洗浄マシンを見て、時間が潰せるタイプなのだ。

「これでよろこんでくれるといいなぁ」

「大丈夫よ。ちゃんと考えて選んだんだもの」

紙袋を大事そうに持ち、一路鹿目宅へ。買い物途中に連絡があり、
準備ができたことが告げられた。
マミがそうと告げると、満面の笑みでネミッサは応える。

「よし、それじゃ行きましょうか」

シュークリームをご馳走してくれるという話も聞いていたので、
ネミッサは上機嫌だ。いつも以上に朗らかに笑っている。マミも仲直り
に関して心配しておらず、穏やかな気持ちでいられる。
けれども内心、ネミッサはプレゼントを喜んでもらえるか不安だった。
まどかがどうこうというより、自分のセンスがおかしいことに気付いた
ためだ。


杏子が失敗作の方に手を付けたころ、まどかの電話が終わる。
嬉々としたやり取りが聞こえている様子からして、快く来てくれるよう
だった。

「ふふ、来てくれるって」

そりゃそうだろう。という言葉を二人は飲み込んだ。まどかの朗らかな
顔をわざわざ暗くする必要もない。無邪気な顔が眩しい。

「やっぱりまどかには笑顔のほうが似合うね」

「そうだね。ここしばらくのしかめっ面だったしね」

知久も杏子と同意見だったようだ。ネミッサを意識してしまってからは
なんとなく雰囲気を変えてしまい、それが生活の空気を少しだけ悪く
してしまっていた。険悪というほどではないが、あの可愛い笑顔が
時折暗くなるだけで、鹿目家は雰囲気ががらりと変わる。

だから今まどかが笑顔になっているのは鹿目家にとっても大事なこと。
多少顔色が違うと、弟のタツヤも気付くのかあまり近寄らなくなる。
けれど、今日のまどかはいつも通りなのだろう。タツヤも抱き着いて
離れない。

「もう、タッくん。紅茶淹れられなくなるから離してよ~」

迷惑そうな声を出しつつも、まどかは嬉しそうだった。


玄関のベルが鳴る。それを待ってましたとばかりに杏子が出迎える。
紅茶の準備で手が離せないまどかに代わってだ。

「おっす、いらっしゃい」

「お邪魔するわ。ん? もう紅茶淹れてるのね」

「匂いでわかるのか? 犬みたいだな」

「ふふ、まどかさん頑張ってるわね」

ちなみにいう。このまどかの紅茶の淹れ方はほむらに教わっていた。
ほむららしからぬまどかへの厳しい指導は大変だったらしい。だが
まどかは大好きなほむらと一緒にいられるとあってか、非常に
熱心に教わっていた。ほむらもまどかのためと時間を多く使い指導を
していた。

「いい香りね」

「こんにちは、いらっしゃい。
さっきまどかが君に失礼をしたから謝りたい聞いたけど……」

「ん? ああ、いいのよパパさん。ちょっとだけすれ違っただけだし」

と顔を出す知久にネミッサは相変わらずタメ口で応じる。マミも杏子も
苦笑いをするしかない彼女の変わらぬ対応。だが逆にそれこそネミッサ
がいつもと変わらぬ心持でまどかに向き合えるという印でもある。
ようは、ちっとも怒ってないということだ。


そして、お詫びの気持ちを込めたお茶会が始まる。味こそマミのそれに
敵わないものの、一生懸命入れた紅茶はネミッサも喜ぶものだった。

「わぁお、手作り! すっごい!」

お店のもののような仕上がりにネミッサはすっかりはしゃいでいる。
カスタードのほかに、ホイップクリームで飾りつけしたそれは、
ちょっと手作りとは思えない出来だった。

「ん~、じゃぁ、手がクリームで汚れちゃう前に私から。
こないだの誕生日行けなかったから、その分と、お詫びも込めて、ね」

とネミッサから手渡されるプレゼント。ピンク色の包み紙にシルバーの
リボン。

「え! いいの? ありがとう! でも、お詫び?」

「気に入ってくれるといいな。……マミちゃんお墨付きのやつよ」

「でも選んだのはネミッサじゃない」

「なんだろうな。開けてみる?」

「せっかくだし、食べて片づけてからにしないか?」

「うん、そうだね。あとで開けるね」

まどかも嬉しそうにしている。シフトのほむらとさやかがいないだけで、
いつものお茶会とそう変わらない雰囲気でもある。

「それじゃ、食べようか?」

「でも、その前にいい? 私、ネミッサちゃんに謝らないと……」


だがネミッサはそれを笑って受け流す。何でもないという風情だ。

「それなんだけどさ、アタシ何かされたっけ?」

「ええっ! 気付いてたんじゃないの?」

「それがさっぱり……。
てっきりアタシがなんかしちゃったのかとばっかり思ってね」

ぽかんとするまどか。次いでそれを気遣いと解釈し、にこっと笑う。
許してもらえたと、そう思ったわけだ。

「だからさっきお詫びって言ったんだね」

「ほらな、こいつがそんな繊細なわけねーんだよ」

「それは聞き捨てならないわね。そっちには謝罪要求するわ」

大げさに身を乗り出して杏子に合わせるネミッサ。杏子のほうも
調子を合わせて喧嘩のふりをする。

「ほらほら、杏子が喧嘩をしてどうするんだい。
喧嘩でもないのなら、普通に楽しんで食べようよ」

「そうですね。ほら、ネミッサも、ちゃんと座って」

杏子も、タツヤを椅子に座らせる。この短い間ですっかり自然に
お姉ちゃんをやっている姿にマミも顔が綻ぶ。


「それじゃぁ……」

「「「「「いただきます」」」」」

美味しいシュークリームと、写真立て。それが二人の仲直りのしるし。


あとで、あの写真立てには、結婚式場で撮った集合写真が入った。

新郎姿のネミッサと新婦姿のマミに、知久も詢子も驚きつつ笑っていた。


筆者です
最近土日天気が悪いのでSSに集中しまくっています

まどかだって、嫌いな人くらいいるよね
ほかのまどマギキャラを嫌いになるくらいなら
ネミッサを嫌いになる方がいいような気がします
エンディング直前の、大人びたネミッサなら
受け止めてくれそうですしね

それでは感想等おまちしております



目覚まし代わりにパトラ唱える仲魔欲しいなぁ……

パトラのあとにM要求されて……

乙でした。

仲直りできて良かったね、ネミッサ、まどか。

そんな時はこのカイフクブレイクで稼いだメ・パトラの石で……。
……駄目だ、人間しか使えないけど>>1さんが寝てる……。

五千回ぐらいやれば一回は知恵の香が出るはずなんだ……。


筆者です。こんばんは

えっとね。確かに構ってチャンですよ?
人気ないですよ? 
でも意欲落ちてないですからね!
談義スレで話題に上がったので良しとします

>>258
目ぇ覚ます前に干物になるんですね
えっちな意味ではなく、魂削られる意味で

>>259
仲直りってほどでもないんですけどね
なんかセリフ微妙におかしいけど、もうしょうがないネ

サマナーが必死こいて五千回も回す知恵の香、
ますます受け取りづらいねさやかちゃん


そして、小ネタを投稿します。

台本形式なのでお察しください、どぞ

【たとえばこんな そうぞうを】



まどか「ほむらちゃん……」

ほむら(まどかの顔が赤い……風邪かしら? 声も鼻にかかってる?)

まどか「えへへ……」ギュッ

ほむら「まっ! まどか! どうしたの!? 具合でも……」

まどか「わたしね、ほむらちゃんがすきなの」

ほむら「私も好きよ? でも、これは……」

まどか「わたしのすきは、こいびとのすきだよ。ほむらちゃんと……」

ほむら(ん、まどかのいい匂いがする。シャンプーかしら)クラクラ

まどか「……きすしたい。ぎゅっとだきあいたいの……だめ?」

ほむら「待ってまどか。気持ちは嬉しいけど私たちは女の子同士よ」

まどか「ねみっさちゃんもまみさんもそうだけどなかよしだよ」スルスル

ほむら「あの二人を例えに出すのは……」クラクラ

まどか「ね……おねがい」トサッ

ほむら(ああ、ベッドに押し倒される……抗えない……服も……)


ネミッサ 「はいそこまで二人とも」つディスチャーム

ネミッサ 「……カーマ。召喚士にこんなことするのアンタだけよね」

カーマ「ばれてーら、ナノネ」

ネミッサ 「地震(カーリー)、雷(ネミッサ)、
火事(パスパタ)、オヤジ(戦の魔王)……」

ネミッサ 「どれでも好きなの選んで。拒否したらフルコースお見舞いするわよ」

カーマ(どれ選んでも死ねるノネ……)

まどか「あ……、あれ? ひゃぁぁぁぁぁぁっ! ほむらちゃん!?」

ほむら「……まどか? 元に戻ったのね、よかったわ」グッタリ

まどか「え、私とんでもないことをしちゃった……? ご、ごめんなさい!」

ほむら「い、いいのよ。貴女のせいじゃないみたいだし」

ほむら(キスされる寸前で止まったみたいだし)


――遠くで カーマの 断末魔――


ほむら「……服、直すから、ちょっと向こう向いてて?」

まどか「あっ、うん! ごめん……」

ほむら(まどかにみられたまどかにみられたまどかにみられたまどかに……)ドキドキ

まどか(ほむらちゃん……はだけたところが真っ白ですごく綺麗……)ドキドキ

まどか(唇も形がいいし綺麗な紅で……って何考えてるの私!)

ふたり「あっ」ドキドキ

ほむら「も、もういいのよ……、こっちむいても」

まどか「う、うん……。ごめんねほむらちゃん」

ほむら「え? ううん、いいのよ。貴女のせいじゃないし」

まどか「で、でも! ほむらちゃんの嫌がることしちゃったし!」

ほむら「ううん……、貴女だったら……その…………ぃぃょ」///

まどか「えっ!?」///

ふたり(かおがまっすぐみられなくなっちゃった)


――妄想妄言終了――


さやか「っていうのをやったらお互い意識しあうと思うんだけど……」

カーマ「面白そうナノネ。さっそく試してみるノネ!」

ネミッサ 「今からそのフルコースお見舞いしたら止めてくれる?」

カーマ「あんまりシャレになってナイノネ!」

杏子 「え、えっちなのはいけないんだぞさやか!」///

マミ 「さりげなく私も巻き込まれて……」///

まどか「さ~や~か~ちゃ~ん!」

ほむら「カーマ、試しにその弓矢を上条と仁美にやってくれないかしら?」

カーマ「任せるノネ。矢で軽くひっかくだけでも効果あるから痛くないノネ」

さやか「ごめんなさいちょうしにのりましたやらないでください」ドゲザ


 ――お茶会終了――


まどか「あ、パパからメールだ。帰りに卵買って来てって」

杏子 「んじゃ途中にスーパー寄って帰ろうか」

まどか「うん。メール返事しとくね」

マミ 「それじゃ、みんな。また学校でね」

みんな「おじゃましました~」 カーマ「ナノネ」return


 ――皆が帰った後のお片付け中――


マミ 「もう、美樹さんも困ったものね」

ネミッサ 「サヤカちゃんはムードもトラブルも作るわねー」

マミ 「で、でね……」モジモジ

ネミッサ 「ん? あによ」

マミ 「また……ぎゅってして?」

ネミッサ 「ん、んもう。ずいぶん甘えん坊になっちゃって」アタフタ

マミ 「だ、だって……」モジモジ

ネミッサ 「しかたないわねぇ」ハァ


 ――鹿目家への帰り道――


まどか「あれ、携帯置いてきちゃった。マミさんちだよね」

杏子 「ん、さっき返事送ったとき使ったろ。玄関じゃないか」

まどか「ちょっと行ってくるね」

杏子 「あたしもついてくよ」

さやか「私たちはさきに帰るよ~」

ほむら「さやかと二人なんて不本意だけどね」

さやか「とかいいつつ楽しそうじゃないの~。うりうり」

ほむら「それはないわね。さっきの妄想もあるし、私の身も危ないわ」

さやか「ごめんなさいもうしませんゆるしてください」

まどか「あははは、さやかちゃんがいけないんだよ」

杏子 「ほむら、さやかに気を付けて帰れよ~、またな~」

ほむら「ええ、また。ほらさやか、途中まで『一緒に』行くわよ」クスッ

さやか「えっ……。うん、ありがと」ニコッ


 ――マミ宅、居間にて――


ネミッサ 「すっかり甘えん坊ね」ギュッ

マミ 「うん。ごめんね」

ネミッサ (『先輩』になってるから、皆には甘えられないものね)

マミ 「あったかい……。あんしんする……」

ネミッサ (パパさんママさんいないんだもん。寂しいんだろうね)

ネミッサ (……アタシなんかで、役に立つなら、いっか)

マミ 「……? えいっ」ギュッ ムニュ

ネミッサ 「うわ!? なになに?」

マミ 「うふふ、抱き着いちゃった」

ネミッサ 「もう、ホントしかたないなぁ」

ネミッサ (アタシがアンタ好きになったら、迷惑……かな)

マミ 「ん? どうしたの?」

ネミッサ (いつかアンタのための別れがぜったいくるけれど)

マミ (何か考えてる? とってもつらそう……泣きそうな顔……)

ネミッサ (それまではこうしてて、いいんだよね。
……わがままやっていいんだよね)

マミ (大丈夫だよ。私、貴女のそばを離れないから。泣かないで)


 ――マミ宅、玄関――


杏子 「開けて携帯だけ持ってけばいいでしょ」ガチャ

まどか「え、それじゃだめだよ」アタフタ

杏子 「ほら、あった。これでしょ」

まどか「そ、そうだけど……あ」///

杏子 「ん? なにを……あ」///

まどか「抱き合ってる……」

杏子 「ふたりきりになった途端かよ」

まどか「そーっとね。じゃましちゃだめだよ」コソコソ

杏子 「あ、ああ。静かにね」コソコソ



 ――マミ宅からの帰り道――


まどか「あー、びっくりした」

杏子 「マミがあんなに甘えるなんてなぁ」

まどか「ウェヒヒ。マミさん私たちの前じゃやらないもんね」

杏子 「ネミッサの奴がマミのこと支えてくれてるんだろ」

杏子 (あたしら皆マミの後輩だもんな。頼りすぎ甘えすぎてたかな)

まどか(私も……あんなふうに……ほむらちゃんと……)

杏子 「うん? おい、どっかいってんな。帰ってこいよー」


それから? なんとかあたしがなんとか手を引いて連れて帰ったよ。
なんだかうわの空で足元も危なかったしな。困った妹だよ。

それはそうとネミッサの奴、ちゃんとマミのこと支えてくれてんだな。
あたしらは皆弟子だったり後輩だから、あいつ強がっちゃうんだけど
ネミッサはそうじゃないもんな。

マミさんのこと、頼んだからな。……泣かせんなよ。

おーしまいっ


筆者です。

マミッサがやはり自分の中で一番ほっとです
甘えるマミさんが可愛いの
ついで、盛大に照れるほむらが好きです
なんだかんだで皆可愛いんですけどね

さて、私信ですがピクシブで前作を修正しアップしてます
横に見づらいのを直したり、わけわかんない言い回しを修正したり
お暇でしたら何かのついでにご覧くださいまし

つか、二章の真ん中なのに三万文字打ってました
終わるまでに何万文字打ったんでしょうか。こわいです

それでは、おやすみなさい

パネェなwww

マミッサは良いものだ

甘えモードのマミさんきゃわわ

乙でした。

おまじない気分で悪魔を使うと酷い事になるって、さやかちゃん覚えた?

マミッサ二人ともかわいいよマミッサ。
まどほむもカーマ無しでイチャイチャしちゃう?


筆者です。
先週は金曜にネタを上げたのでお許しくださいまし
返事と質問だけなので下げ対応です。


>>271
甘えるマミちゃんが一番かわいいのです
だから一番筆がすすみます。


>>272
甘え方をいろいろバリエーション増やしたいところです
エロスにならない程度に、こう……ね?


>>273
さやか「う……はんせいしてます」

ほむら「ほんと、そういうところ以外はいい……。なんでもない」

ネミッサ 「なければ? なんなのさ」キョトン

ほむら「……なんでもないわ」フイ

杏子 「ほほう」ニヤニヤ

マミ 「へえ」ニコニコ

さやか「続き聞きたいねえ」ニヤニヤ

ほむら「ぜったいにいわないわ!」

まどか(またライバルが増えた……。もう、ほむらちゃんのばか)

ちゃんちゃん


そして質問でございます。アンケートかな?
マミちゃんが普通の男性とする結婚式って描いてオーケーですか?
ファンには申し訳ないんすけどね、怒られないかしらん?

いいんでない?
そりゃ魔法少女の運命とか、ネミッサはどうするのとかあるけど、
マミさんには普通に幸せになって欲しいってのもあると思う

>>1さんの書きたいように書いてください。

自分としてはとても読みたいです。
マミさんを射止めた幸運な男がどんな人物なのかとか、
以前のままごとの影響で、ネミッサがどういう反応するかが楽しみなぐらいです。

やっぱ年上かね
まどほむマミッサの場合、相手も男同士で…なのかな

こんばんは。筆者です
お約束通り、マミちゃんの結婚風景を
お送りします


>>275
マミちゃんに幸せになってもらいたいのは私もおんなじです
でもリサイクルもあるし、何とかなるんではないかなと思ってます

>>276
ありがとうございます。マミちゃんに似合う立派な男性を
探してきましたよ。
皆さんの予想や期待に沿えるとよいのですが。

>>277
一応年上です
ちなみに今回のでほむらにもお相手を用意しました
こっちも起られないでしょうか
んで、男同士……? いやいや、フツーのひとですフツーの



調べたらクレオパトラは39歳で没して
子供も産んでるんですよね。彼女が魔法少女なら
頑張ればそこまで生きていけると思っております


【Con Te Partirò】

「あんにゃろう! こんな日に遅刻なんて!」

「ったくだ。マミを困らせやがって!」

さやかと杏子が叫ぶ。寄りにもよって初めての大遅刻がこんな
一番大事な日になるなんて。そんなネミッサに二人は憤慨していた。

「いいのよ二人とも。あの子遅れるって前もって教えてくれてたから」

「にしたってあれだけ長く一緒だったマミさんの結婚式じゃない!」

「あの子だって生活や仕事があるのよ。無理言っちゃだめよ」

最上級のウェディングドレスに身を包んだマミに言われたら、後輩たち
も矛を収めざるを得ない。何しろ今日はマミの結婚式。晴れの大舞台に
しかめっ面は似合わない。

マミの結婚に当たり、まどかたちも当然招待されていた。彼女たちは
友人代表のスピーチも担当している。何を話すか今からマミは
楽しみでもあり、不安でもあった。

「次は、ほむらさんよ?」

歳の離れた彼氏のいるほむらは、その言葉に首筋まで赤くする。
ほむらのお相手は十も年下。仮に(ほぼ間違いないが)結婚すると
まどかには、同い年の妹ができることになる。


マミと彼との結婚が決まった日、ネミッサはマミの家を出た。
二人の住まいはあの部屋だったから。
当初彼はかなり渋っていたが新居が簡単に用意できるわけもなく、
またあの部屋を手放すのもマミが躊躇ったため、自発的にネミッサが
出ることにした。

「ごめんなさい、ネミッサ」

「いいってば。アタシが長居しすぎたのよ」

あれからかれこれ十年は経つ。ネミッサは『葛の葉』で用意された寮の
ような借家に住むらしい。そこは家具が備え付けられているため、
家具や家電にこだわりのないネミッサにはありがたい限りだった。

段ボール三箱に納まるコートや大き目のバッグに納まる衣類。彼女の
私物はそれくらいなものだ。
食器類は箸ですらおいていくとのこと。当初は捨てるつもりでもあった
らしくマミを仰天させたが、すぐに思い直したそうだ。

「次遊びに来た時に使うから、取っておいて」

そんなさばさばした物言いに、彼の方も気に入ったらしく同意していた。

「いつでもいいよ。ネミッサはマミの大事な人なんだから」

彼は二人の事情を知っていた。
マミがどれだけネミッサを大事にしているか。
ネミッサがどれだけマミを大事にしているか。
だから快く迎え入れるつもりだった。

どれだけ、彼女が相手を愛しているか知っているから。

ときに、彼が敵わないと思ってしまうほどに。


結婚式の数月前。ネミッサは彼、新郎に呼ばれた。指定されたカフェに
行くと、その彼はにこやかに出迎えた。彼は新婦のマミと同じくらい
ネミッサと付き合いが長い。むしろマミが知り合った日、真っ先に
彼女に紹介したくらいだからだ。マミは当時を振り返り言う。

「ネミッサに駄目だしされたら、今後会うのを止めるつもりだった」

余りの依存ぶりに、後で聞いたネミッサは苦笑してしまう。だが結局
ネミッサは彼を受け入れた。それから三人で行く、奇妙なデートが
続くようになった。時に急用でマミが来られず、二人で買い物をして
土産をマミに渡すようなことすらあった。

だから時折彼に呼ばれることは、ネミッサにとって不思議でもなんでも
ない。だが、問題はそれが婚約直後であることと、そこに意外な人物が
待っていたことであろう。

「あれ、パパさんにママさん。それと……そっちはアンタの?」

「ああ、そうだよ。二人も君に逢いたいっていうからさ」

「……アタシが言うのもあれだけど、こんな時期に女と会わないでよ」

「ネミッサにしちゃぁ常識的な発言だね」

「……式の直前だから、顔以外なら殴るわよ?」

ちなみに、彼は総合格闘技の組手をやっており、かなりの実力と成績を
納めていた。打撃ではないため、顔には傷一つない綺麗な顔だ。だが
関節技を抜けるの際、あらぬ方向に肘や膝を曲げてしまい選手生命を
失ってしまったそうだ。

彼はコーチとしてそのジムに残ることもできた。だが、才能ある彼の
脱落をむしろ喜ぶ選手たちに指導をする気力がなくなり、そのジムを
あとにした。


半ば自棄になった彼が最初に行おうとしたことは、ケーキのドカ食い
だった。元々甘いもの好きの彼ではあったが、選手としての体重制限の
ため、思うままに甘いものを食べることができなかった。

見滝原の小さなケーキ屋に飛び込んだ彼は、端から端までを選んで
食い散らかそうとした。
それを咎め諭したのが、当時高校生でケーキ屋の夢を歩き出した
アルバイトのマミだった。

「そんな食べ方、ケーキを作る人たちに申し訳ないと思わないんですか」

ケーキ屋で働き始めたばかりのマミにとって、ケーキを作るためにする
工夫や努力は尊敬に値していた。それを乱暴に食い散らかそうとする
彼が許せなかった『のではないか』という。彼女は当時のことを
あまり覚えていないらしい。客を咎めることを言い店長に怒られたこと
くらいは覚えているようだが。

ともあれ、長身で大柄な四つも年上の男性に怯むことなく諌めるマミの
性格を、彼はすっかり気に入ってしまった。
またそこのケーキの味も気に入ったため、毎週のように新作を一つだけ
買いに来る。それが彼の習慣になった。

それから彼がマミに恋するようになるのはそう時間はかからなかった。

だが、それ以上に、マミのケーキにかける情熱に心を打たれた。夢を
無くし不貞腐れていた彼の前に、新しい道が開けたとも言えた。
そして自暴自棄になった自分を恥じた。

彼は格闘家からパティシエになる道を選んだ。


マミも真面目で勤勉、そして格闘家とは思えぬほど優しい性格の彼に
ゆっくり、ゆっくり魅かれていった。このころのかなり早い時期に
ネミッサにも紹介した。その時点ですでにマミの中で気になる存在に
なっていたのだろう。

料理学校にともに通い、二人で創意工夫、切磋琢磨していくうちに恋に
落ちた。知り合ってから実に十年。プロポーズは彼から。

『一緒にお店をやろう。小さくてもいい。皆を笑顔にするケーキ屋を
やらないか』

それがプロポーズの言葉だったらしい。マミはそれを笑顔で受け入れた。
真っ先に報告を受けたネミッサは、手放しで喜んだ。
ちなみにそんなに時間がかかったのはいろんな原因がある。けれど彼が
その話をするたびに友人たちから長いだの奥手だの臆病者だのと、
罵られるらしい。


そんな彼の両親に挨拶と紹介をされ、席につく。なんで呼ばれたのか、
ネミッサには見当もつかない。

「久しぶりです、ネミッサさん。娘がお世話になっております」

「こんにちはパパさん。足調子よくないって聞いたわ。大丈夫?」

「それがですね、そのことでネミッサさんに折り入ってお願いがね」

「ん? そのためにアタシ呼んだの?」

「そうなんです。実はですね――」


話を聞いたネミッサはにやっと笑った。そして、嬉しくて仕方ない
という顔をした。非常に明るい声で返事をする。

「いいわよ、協力するわ! むしろやらせて!」

「ありがとう。君なら承諾してくれると思ったよ」

「当然よ。……あ、でもパパさんやそっちの方はいいの?」

その提案は、慣例とは大分違う。ある種奇抜な提案だった。息子や娘の
門出にふさわしいかどうかがネミッサは気になっていた。ちなみにこの
彼女らしからぬ気遣いは、冠婚葬祭をする経験が多少あるからだ。

「ええ、いいんです。むしろ他の誰よりも適任だと思います」

「あの子のことを貴女がどれだけ大事に思ってくれたか。
娘や彼から十分すぎるほど聞いていますから」

「だから、これは貴女へのお礼でもあるのです。私たち夫婦からの」

「それを聞いてしまっては、私どもも了承せざるを得ません。
いいえ、むしろ私たちからもお願いしたいくらい。
是非息子の結婚式に協力してください」

「僕からもお願いするよ。引き受けてくれないかい」

ここまで言われては、ネミッサに断る理由はない。むしろ喜んで
その役目を引き受けた。
彼女への恩返しになる。その方法を探していた彼女にとってそれは
朗報以外の何物でもなかった。

「そうとなれば早速……」

彼女は一つの提案を全員に伝え了承を得ると、すぐさまとあるところに
連絡をした。これからその準備をするという。
相変わらずのフットワークの軽さである。


そうして喜び勇んで立ち去るネミッサを、五人は唖然として、しかし
とても嬉しそうに見送った。

「新婦は大変素敵なご友人をお持ちですね」

「はは、お恥ずかしい。私どもも娘の様に思ってまして……」

新郎の母親は、ネミッサの人柄から逆にマミに好感を持った。あれだけ
友人に慕われるマミが悪い子であるはずがない。奔放で礼儀を欠いたと
見えたネミッサに、最初は不安を感じたらしい。だが、相手を気遣う
言葉や態度は言葉遣いを超えた人柄を感じ取った。

「彼女の言葉遣いは誰にでもああだよ。ある意味誰にでも平等だね」

一同は笑いに包まれた。そして、結婚式の成功を確信した。


一方のネミッサは喜びに満ちていた。自分にできる恩返しを探し悶々と
していた矢先の提案である。嬉しくないはずがない。嬉々として準備の
手配をする。
何せ、マミをだませる最後で最大の大舞台なのだ。失敗するわけには
行かない。

「さぁ、やっちゃうわよっ!」


どこにでもあるというわけではないが、ホテル内のチャペルのそばには
隠れ家がある。新婦の控室がチャペルから遠い場合に使う。新婦は
そこに先に隠れ、その姿を親戚友人たちに見せないようにするための
部屋だ。

マミはそこですべての準備を終えて、介添え人とともに待機する。
緊張と不安、そして喜びに満ち溢れた顔に影を落とすのは、只一つ、
ネミッサのこと。
遅刻の件もそうだが、一人暮らしになった彼女が不安なのだ。そして
何より、ずっと自分を支えてくれた彼女に恩返しができていないと
思っていた。

「マミさん、ネミッサさんが到着されたそうですよ。今支度中だそうで」

「そ、そうですか……間に合ってよかった」

(支度? ドレスにでも着替えてるのかしら)

マミはあの時頑なにドレスを嫌がったネミッサを思い出した。肩の傷も
そうだが、単純にひらひらした服が嫌いな彼女の嫌がり方。
それが今も鮮やかに思い出される。

「ネミッサさんも準備できたようです。それでは行きましょうか」

介添え人が促すのに従い、純白のドレスに気を付けながら立ち上がる。

隠れ家のドアを開け、静々とゆっくり歩く新婦。あの時の様に彼女は
足元ばかり見つめて歩いていた。だから、その新婦父役のエスコートを
する人物の足しか見えなかった。
前から聞いていたのは、脚の悪い養父の代わりにその弟、叔父にあたる
男性が代役に立つこと。それはそれで残念だったが……。

立ち止まったマミが視線を上げた瞬間、悲鳴も上げた。


――きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!――

チャペルに響く新婦の悲鳴に色めき立った参列者たちに、進行役の
スタッフが説明する。あの時、魔法少女たちにドレスの試着をお願い
した彼女だ。その彼女が買って出た大役だった。

「えー、皆さん失礼しました。介添え人の説明によりますと、
新郎が仕掛けたサプライズが成功したとのことです」

にやっと笑う新郎が左右の参列者に頭を下げる。そこで安堵の笑いが
上がるとようやく場の緊張がほぐれた。

「それでは、お待たせいたしました。新婦のご入場です……」

先の悲鳴と笑いが独特の緊張感をほぐしてしまった。和やかな雰囲気で
新婦の入場が始まる。オルガンの生演奏が響く中、両開きのドアを開け
新婦が入ってくる。

その見事なプロポーションに似合うドレスに一同が見惚れる。だがそれ
以上に、『エスコート役』の姿に両家の友人たちは度肝を抜かれ、
呆然自失としてしまった。

そのなか唯一反応し、場違いな声を上げたのは、あの時と同じ色の
カラードレスに身を包んださやかだ。

「あんた! なにやってんのよっっ!!」

慌てて杏子とまどかが黙らせる。


半ば呆然としたまま歩く新婦に上手く合わせていたのはモーニング姿の
ネミッサ。
ぶっつけ本番のはずなのに、小器用に歩幅を合わせる二人。それは長年
一緒に暮らした二人だからこその芸当だったのかもしれない。

「ご友人の皆様にご説明いたします。本来ならば新婦のエスコートは
お父様にお願いするところですが、お足下に不安があるということで、
古くからの友人であり、ルームメイトのネミッサさんにお願いすると
いうことです……」

進行役が事前に用意した説明をアナウンスする。
ネミッサの堂々とした姿に皆があっけにとられている中、悠々として
エスコートしている。
ちょうどほむらたちの隣を横切った時、マミの頭越しにウィンクを
する余裕すらあった。

「お二人はあの見滝原大災害の頃お知り合いになり、お互いに
大変な時期を支えあい励ましあった、姉妹のような関係とのことです。
ご両家ご親族の承諾の元、ネミッサさんがエスコートを……」

だが、それを見たほむらは泣きたくなった。彼女の思い、恋心を知って
いたから。どれだけネミッサが彼女を思っているか、慕っているか。
仲良くなるよう頼んだほむらの心が軋む。

(ここまで仲良くなれなんて……頼んでないじゃない……)

ネミッサの真意を測りかね、ほむらは困惑した。


バージンロードの中央付近で立ち止まる二人。それを迎える新郎。
まず、参列席の新婦父に一礼する。ついでネミッサに一礼。

「ありがとうございます。大成功ですね」

「これ以上ないってくらい、呆気にとられてるわよ。
……ここからはアタシ行けない。アンタに託すわ」

「はい、任せてください。絶対に、幸せにします」

新郎はそれに目礼で返すと、新婦の手を取る。やっと我に返った新婦は
促されるまま歩く。そしてそのときようやく、ネミッサの方を向き
立ち止まる。

今まで一緒にいたこと、楽しかったこと、喧嘩したこと、節目節目で
見守ってくれたこと、抱きしめてくれたこと、唇を二度も重ねたこと。
それらを思いだし、歩けなくなってしまったのだ。

「マミちゃん、お幸せに……、いってらっしゃい」

満面の笑みで送り出す。

マミにとってネミッサは娘であり、妹であり、姉であり、一番のお友達
であり、そして何より、まぎれもなく恋人であった。
それをマミ自身は思い出したのだった。

その一言に、マミは大粒の涙を流した。


式は滞りなく進む。終始涙に濡れる新婦ではあったが、誓いの言葉は
とても素直に言えた。ネミッサが後ろで見守ってくれている以上、
失敗なんかできない。それに見守ってくれているときは、必ず上手く
いった。そういう自信があった。

「新婦、マミ。貴女はこの新郎を夫とし、
病める時も健やかなる時も愛し、守り、助け合うを誓いますか?」

「はい、誓います」

厳かな式の中、ほむらたちの横に移動したネミッサは相変わらず
しれっとした態度を崩さない。
小声でさやかと杏子に突っ込みを入れられて苦笑いをするだけで
あとはずっと静かだった。

賛美歌が歌われ、神の前で夫婦になった二人に祝福の拍手が響く。
ネミッサはただただ嬉しそうにその様子を見守っていた。

そんなネミッサをほむらは不安げに見つめている。彼女の心中と契約を
思うと心がざわめいてしまう。
ネミッサやマミはそのあたりをどう折り合いをつけたのだろうか。
そう思うとほむらは気が気ではなかった。


披露宴では友人代表として魔法少女たちがスピーチをする。最も
真面目なまどかがマミに指名されたが、そこにほむらを引っ張って
さやかと杏子、ネミッサが邪魔をする。

「私たちは、巴マミ親衛隊です。マミさんに相応しい彼氏かどうか」

「言い寄る男どもを、あたしたちが試していたんです」

「いや私はやってないわよ!」

「アンタが『マミと付き合いたければ私たちを納得させてから
交換日記からはじめてもらうわ』って言ったんじゃない」

これはとある漫画からの引用だったらしい。

「ほむらちゃんが言ったんだよ、私覚えてるもん」

「ええ、確かに言われましたね。あのときは本当に困りました」

と新郎が返すと、

「ええっ! 私それ聞いてないわよ!」

新婦も驚き、そう返す。

「実際に交換日記はやってないからねぇ」

「その代りネミッサが監視してたんだよね」

「あのときは彼が体が大きくて怖かったから
ついてきてもらったんです」

新郎もノリを合わせてたところで新婦も仕返しにとばかりにやり返す。
会場が笑いに包まれる中、なかなか進まない進行に司会者が苦笑いを
していた。


両家の親族友人たちの余興も進み、最後の幕になる。
新郎や新婦が両親に花束を渡し、挨拶をする。そして、新郎の父親が
二人の門出を祝し、最後のスピーチをする。

ここまではいい。問題はこの後だ。

真っ暗でスポットライトが当たっているところで新郎新婦とその両親が
頭を下げて、そこで披露宴は終わるはずだった。
それが違った。

新婦にもう一度、大きな花束が手渡される。そして新郎が心得たように
マイクを持ち、新婦にかざす。
これはきっと新郎新婦が企画したサプライズなのだろう。花束は黄色を
中心とした、明るい派手な色彩のものだった。花束の包みも淡い黄色。
そして何より、それを束ねるリボンが、レースの黒だった。

「最後に、私が一番感謝したい人に花を渡します」

両親を差し置いてまで誰に? と問うも無粋であろう。
新郎新婦は静かに真っ直ぐ、未だモーニング姿のネミッサに近づく。
驚きたじろぐネミッサに、マミは微笑みかける。逃げないで、という
意味だ。

「貴女よ、ネミッサ」


どよめく参列客がまるで目に入っていないように二人はネミッサに近づく。

「ねえ、貴女は私のことを三度も救ってくれたわ。そのおかげで、
素敵な後輩にも恵まれて、こうして素敵な彼にも出会えた……。
それだけじゃない。ずっとずっと……私の隣にいて、節目節目で
見守って……くれたよね」

観念したネミッサは真っ直ぐに向き合う。マミがいつか見惚れた、あの
背の高いすらりとした姿だった。
あの時と、ちっとも変ってない。穏やかにマミを見守る優しい目。
きっとあの眼は相棒さんがネミッサに注いでくれた視線なんだと、
マミは勝手に信じた。

「ありがとう。貴女のお蔭で、私は旅立てます。
他の誰に誤解されてもいい……、私は、私は貴女を……」

そこでマミは言葉を詰まらせる。涙が溢れ止まらない。
俯いて喋れなくなる肩に、後押しをするような手が乗る。気付いて
見上げるそこに、彼の穏やかな顔があった。優しく頷くと背中を押す。
マミは微笑んだ。その温かさで続けることができた。

ネミッサはそれを見て気付いた。もう、自分は必要ないのだと。

「私は、貴女を愛しています。ネミッサ」

『Time To Say Goodbye』が流れる。
日本、いや世界的にもサラ・ブライトマンが歌ったことで有名な曲。
だが大雑把にいえばこの「Goodbye」は誤訳のようなもので原曲の
『Con Te Partirò』はイタリア語で「君と共に旅立つ」という
ニュアンスだそうだ。

だがこれは両方の意味があるのかもしれない。
ネミッサに「Goodbye」し、新郎と「Con Te Partirò」するという
意思表示が。


今度こそどよめく参列客。まったく無反応なのは事前に知っている
新郎新婦の両親くらいなものだ。寄りにもよってこんな席で言うべき
ことではない。親族の中には思わず立ち上がったものもいた。

それを制したのはネミッサだ。マイクも使わず、朗々とした声で返事を
した。マミの心をすべて汲んで受け止めたのだ。

「アタシには家族なんてなかった」

どよめきを打ち払う力強い声だ。それが場の空気を一気に支配する。

「そんなアタシを受け入れてくれたのは、アンタだよ。
妹に、お姉ちゃんに、ママに、一番のお友達になってくれたね。
アタシの初めての家族になってくれて、ありがとう。
アタシはアンタに会えて、本当に幸せだった」

そこで言葉を切る。ネミッサの次の言葉を待っているのだ。
全員の視線が彼女只一人に集まっていた。

「これからはその彼をおんなじくらい、愛してあげて。
アタシに対してもできたんだ。彼にもして、あげられるよね」

マミはマイクを持ったまま泣き出した。今日何度目の涙だろう。

「アタシも愛してるよ。マミちゃん。お幸せに」

その言葉と共に新婦に近づき、花束を受け取ると、二人抱き合う。

「ネミッサぁ、ありがとう、ありがとう、あり……がとう」

その二人の肩を新郎も抱き支える。

ほむらたちは安堵の溜息をついた。マミの暴挙をネミッサが何とか
上手くごまかした形だ。
咄嗟の行動にしては上手くやれたのではないだろうか。周囲も納得し、
拍手を送っている。友人たちは素直に涙さえ流し、その抱擁を
見守っていた。


披露宴を無事に終えて、ようやく落ち着いた魔法少女たち。ロビーの
椅子に腰掛け一息入れる。

「あーもー……マミのヤロー、ヤバいことしやがって」

「ホントだね。ネミッサがなんか上手くやったからいいけどさ」

「そのネミッサも大概のことやったけど」

「私も心臓ドキドキしちゃった。二人とも」

ほむらたちは疲労困憊だ。大方がネミッサのせいだがマミのせいでも
ある。幸い二次会までには若干の余裕があり、それまでに落ち着いて
いればいい。幸いマミの二次会は彼とマミを交えた魔法少女たちだけの
ものだ。
ちなみに、かつて予言されたようにほむらは新郎側の男性友人に声を
かけられまくり、困惑していた。

ネミッサの姿がまどかたちから少し離れたところにいることに最初に
気付いたのはほむらだ。ようやく男性陣の包囲網から解放され
(婚約者がいると逃げた)あとから近づいたため、周囲を見て
ネミッサが別の離れたところにいる姿を見たのだ。

ほむらはやはり気になってしまう。一人ネミッサの背後に回る。


ネミッサは呆然自失でロビーの椅子から中庭を見ている。疲れている
からなのかは不明だが、微動だにしない。

「ネミッサ? どうしたの?」

その声が聞こえていないかのように、彼女は一点を見つめて動かない。
顔を覗き込んでも、表情すら現れていない。固まったままだ。
不安のあまり、ほむらが背中をさする。まだモーニング姿で着替えも
していない。ネミッサのショックを思い慌ててしまった。

「ん……んん……?? どしたの? ホムラちゃん?」

「どうしたじゃないわよ。貴女が固まってるから心配したんじゃない」

「あ、そか……ごめんね」

「マミとの契約、ちゃんと破棄してもらったんでしょうね」

ここで『大丈夫か』なんて聞いても、『問題ない』としか答えないはず。
だからほむらはより具体的な質問に切り替えた。

「それはもういいのよ」

「……破棄してないってことね」

相変わらず切り込み方が鋭い。ネミッサは内心辟易している。

「どうして?」

ネミッサは『関係ない』と突っぱねることもできた。だが今の状態では
その気力がなかったのだろう。力なく首を振るだけだ。


「これでいいのよ、これで」

そうつぶやくのが精一杯だ。だがその目に涙が溜まる。
ほむらはそれですべてを察した。だから無理やり手を引いて、衣装室に
連行しようとした。抵抗があるものと思われたがネミッサは操り人形の
ように、ふらふらとついていく。

その二人に離れた位置で気付いたさやかはテレパシーを飛ばす。
この歳になってもその力は健在だ。支給され続けるリサイクルや浄化の
システムのおかげで戦わずにこの年まで生きてこられた。

”ほむら。何してんのさ”

”ネミッサがおかしいの。着替えさせてくるから二人には待っててって”

”手伝おうか? あ、やっぱりやめといたほうがいいかな”

”それがいいと思う。二人には上手く伝えて頂戴”

相変わらず何かを直感で察するさやかはに舌を巻きつつ、ほむらは
ネミッサの手を引いて歩き出す。あの表情豊かなネミッサが凍りついた
ように表情を硬くしているのは、彼女の知り合いにとって信じられない
光景だろう。そしてその状態にマミたちとの二次会に連れて行くこと
など、断じてできない。そんなことをすればネミッサがひた隠しにする
契約がマミにばれてしまう。

(ネミッサは私を友人と信じてお願いしたんだ。絶対に悟らせない)

ほむらにとって友達との約束は、何よりも重い。それはあのループでの
行動においても明らかだ。

(安心しなさい。貴女は、私が守り抜いて見せる)

ネミッサが苦しむなら、自分も一緒に地獄に落ちること。
それが地獄から自分を救ってくれたネミッサへの恩返しになると信じて
疑わない。


スタッフには顔で通る二人である。着替えの手伝いと称して窓もない
個室に案内される。スタッフの手伝いはほむらが断った。
あとでちゃんとネミッサの私服も届けてくれるそうだ。

甲斐甲斐しく脱がすほむらにされるがままのネミッサ。その顔には
生気が感じられない。少しの間で下着だけの姿になると、ノックの
音がして私服が届いたことを知る。ドアをわずかに開けて受け取ると
それを広げ、やはり着せ替え人形の様にほむらが着させる。

やや青白い肌に、形のいい乳房、そして、右肩の傷跡。それを見ない
ふりをしてほむらは着付ける。

「ほら、手を挙げて。そう、いい子ね」

さすがにあの頃のレザーではないが、ネミッサらしいシックな色合い
のジャケットだ。ちゃんと白いシャツも着ている。結局男性っぽい
服ではあったが、ほむらはもはや見慣れたネミッサの服装だ。
疲れたように備え付けの椅子に座らせ、髪を梳る。

「終わったわよ。……どうしたの?
マミの晴れの日にそんな顔して、いいの?」

マミの名前に反応したのか、やっとほむらの顔を見る。


「わかんないのよ」

「なにが?」

「嬉しいのか、悲しいのか、悔しいのか、苦しいのか、悔しいのか」

とうとうネミッサの目からも涙が滴る。だが、それだけでは足りない。
ほむらは言葉を探し、なんとかしようとした。

「嬉しいに決まってるじゃない。貴女が必死になって頑張ったから
私たちはここまで長生きできているのよ。こうして結婚まで、ね」

ネミッサが望んだことは殆ど叶ったはずだ。だから喜んでいいのだと、
ほむらはいうのだ。

「それにね、わからないのなら、嬉しいってことにすればいいのよ」

その発想にネミッサも顔を上げる。驚いたようにほむらを見上げる。
そんなネミッサをほむらは抱きしめて胸に押し付けた。

「おめでとう。貴女の頑張りが、今日、結実したのよ。
胸を張って喜びなさい」

ようやくネミッサはほむらにすがりつき、泣きじゃくった。マミ以外、
今まで誰もここまで彼女が泣くところを見たことがない。

「私の結婚式で、あんな顔をしたら、許さないわよ」

ほむらの意地悪な言い方に、ネミッサは胸の中で何度も頷いた。


二次会には、笑顔で行けた。ほむらやスタッフのお蔭で赤い目にならず
化粧もなんとかできた。このあたりの女性的な細やかなことはネミッサ
にはできない、女性らしい女性の得意分野だった。

「ネミッサさん、大役ありがとう」

「堅苦しいわね。そんな呼び方したことないじゃない」

「ホント、あれにはびっくりしたよ。サプライズどころじゃないって」

「マミさんも悲鳴あげてたしね」

「ええっ! き、聞こえちゃったの?」

「そりゃそうだよ。筒抜けだっつーの」

「ビデオにはしっかり録音されてるはずよ。あとで確認しましょう」

新郎新婦はエンゲージリングをせがまれ、見せた瞬間に携帯で
撮影されたり、キスシーンを再現させられそうになって慌てたり
していた。
賑やかな二次会会場は笑いに包まれていた。

ネミッサは自然な笑顔で、マミを送り出すことができた。
いつか必ず来る別れの時を、今笑顔で送ることができた。
明日から二人は別の家に帰る、それも互いに納得できた。

ネミッサも、十分に幸せだったと思う。


「で、なんでここにいるのよ」

「呼ばれた」

「呼んだ」

「ちょっと、昨日の今日でなんで」

「浮気しに来た」

「へぇ……、ネミッサ、いい度胸ね」

「は、冗談で、忘れ物がね」

「ふぅん……貴女の食器全部持って帰っていいわよ。
ついでに彼の分も一緒にね」

「ゴメンナサイ」

「ごめんなさい」

「許してあげません……。今日は二人で晩御飯用意してね。
作れないなら買ってきなさい」

「「はぁい……」」

(むしろ浮気って、俺じゃなくて君らでしそうだよ)



という形でお送りしました
筆者です

ホントはこれをエピローグにでもしようと思ったのですが
走り出したペンは止まらないのでそのまま出しました
ご賞味くださいまし

皆が納得してくれる終わり方でしたでしょうか
ちなみに、式や披露宴は経験から語っております
一般的なモノと同じかどうかはわかりませんが

それでは、感想お待ちしております。おやすみなさい

ほむらはやっぱりタツヤか

えっ?夢オチでも何でもないの?
少なくともほむタツの件は丸々要らなかったんじゃないかな(憤怒)
テスト的な物かと思ってたけど百合好きな読者様()を敵に回しただけやないですか

マミさんが幸せそうで何より

乙。色々『こうきたかー』と唸りながら読みますた、GJ

ネミッサにはほむほむがよく似合うな!

乙でした。

あれ?
新婦の両親代わりってまどかの両親かな?


こんばんは、筆者でございます。

いつもながらぎりぎりです。手短にお返事と投稿を済ませます。

>>303
賛否あるかとは思いましたが、こういう流れにいたしました
理由は一応あるのですが、

>>304
こればかりは申し訳ありません。信念を持って描かせてもらいました。
魔法少女を救うことで、ネミッサも救われる……。そんな物語なので
こればかりはお許しいただけませんでしょうか

>>305
はい、これで自分の夢にむかって、幸せに歩けると思います
きっと新郎側の友人に皆さんが紛れ込んでいるつもりで描きました

>>306
「Time To Say Goodbye」の裏話的な話を聞いてピンときました。
なのでネミッサに新婦父役をやらせて前作の伏線回収をさせてもらいました
後で調べたらwikiにもかいてあるんですね。音楽に詳しい人に聞かなくてもよかったようです……

>>307
そういってもらえるとちょっと嬉しいです
前作のタイトルのとおりなら、ホントはこうですしね

>>308
すみません。誤解させてしまいましたね。
マミの養父母は詢子や知久じゃない、別の人です。(遠い親せき筋)
ネミッサはゲーム中で『ランチ、パパさんには冷たいのよね』的なことを言ってましたので
誰かの父親母親に対して「パパさんママさん」と言わせてます

足早ですが、投下いたします。
出来が不安ですがどうぞ

【まもるもの、まもられるもの】

その日、若いサマナーはいつも通りの訓練を二人の魔法少女と終えて
休憩がてら雑談に興じていた。
さすがに二十歳そこそこの彼に取り、ローティーンの彼女らは守備範囲
外。けれども、それでも魅力的な二人に好意を持っていた。

「ああっと。長話して悪かったね。駅まで送るよ」

「いいえ、楽しかったですから。……お願いします」

「あー、やっと帰れる~。時間が無駄になったよ。もったいない」

「なんだい、愛は無限なんだろ」

「そりゃそうだよ。だけどそれをする時間は有限なんだ」

「しかし、無限の愛ってのはいいのか悪いのか」

「いいにきまってる!」

黒い魔法少女がいきりたつ。白い魔法少女はおろおろしている。いつも
泰然自若な彼女も、黒い少女の動きには辟易しているようだ。
そこもまた可愛らしいのだが。

「無限だったらありがたみがないように思えてなぁ。
有限だからこそ惜しげもなく与えたいもんだな」

つまり、数が少なく貴重なものほど惜しみなく与えるほうが価値がある
のではないかと彼は言うのだ。それに反論できず詰まる少女たち。
してやったり、という彼の顔をみてイラついた黒い少女は、サマナーを
蹴っ飛ばして椅子から突き落としていた。


車の後部座席に二人が乗り、サマナーが運転する。シートベルトを確認
するまで車を動かそうとしない。理由を聞くと彼女たちを怪我させたく
ないから、だそうだ。黒い少女は戦っていることを理由にその意見を
笑う。
けれどもだからこそだと、サマナーは言う。

「こんなつまんないことで怪我させたくないじゃないか」

どこまでも前向きな彼の言葉に白い少女は笑う。

「あ、そうだ。明日シーアークですか? そこに行きますよね」

「お、予知かい? それともスケジュール伝えたっけ?」

「いえ、スケジュールは伺ってますが……。そこでトラブルが……」

その言い回しに顔が曇るサマナー。だが白い少女は笑っていた。左程
切羽詰まった問題ではないらしい。そんな様子にサマナーは安堵した。

「あなたの手持ちの仲魔で……」

と特徴をすらすらいう。それに覚えのある彼は運転しながらも返事を
する。決して高位の悪魔とは言えないが、それなりに歴史のある地母の
神だ。能力も決して悪くはなく、奔放ではあるが契約には従順な性格
なので扱いも難しくない。そんな『彼女』は、そこそこの需要がある。

「そうです。その彼女を必ず連れて行ってくださいね」

全部を説明しないまま、白い少女は言う。
その横では、黒い少女が穏やかな寝息を立てていた。


シーアークのロビーに二人を放置するとネミッサは出かけてしまった。
どうやら魔法少女の面談があり、それに顔を出す必要があるからだ。
とはいえさすがにまどかもここのつくりや仕来りには慣れたもので、
残されることにあまり心配していないようだ。

「いってらっしゃい。気を付けてね」

今日の付き添いはほむらだ。だからだろうが、まどかはすっかり安心
しきっていた。ついでにいうとお弁当も作ってきたらしく、お昼には
それを二人で(二人で!)食べようとしていたらしい。
相変わらずの溺愛ぶりにほむらが困った顔を浮かべていると周囲の
視線が集まる。

ただでさえ美貌で有名なほむらと、愛らしさで人気のまどかだ。若い
男性サマナーにはその二人は注目の的で実際に交際を申し込んだり
メアドを聞き出そうと躍起になるものまでいた。
もちろんほとんどすべてをネミッサが蹴っ飛ばしていたのだが。

「はい、ほむらちゃん。あーん」

「じ、自分で食べられるわ」

衆人環視の中で食べさせられるのはかなり恥ずかしい。まどかのほうは
気にしていないのか、臆面もなくやろうとする。だが一方のほむらは
恥ずかしくてできない。
何しろ相手は、自分の憧れの人であり、守りたい人だからだ。

(まどかは私を『そういう目』で見ていない……はず……よね……)


そんな平和なロビー。微笑ましい風景をサマナー数人が眺めている。
フロアへ通じるドアが開き、一人のサマナーがロビーに戻る。必要な
仲魔を確保できて、満足しているようだった。

だがそのせいか、ロビーにまで仲魔を召喚したまま戻ってきてた。
別段それはルール違反ではないが、今回ばかりはサマナーが悪い。
とある、非常に問題のある仲魔を出しっぱなしにしていたからだ。

「オオ! アソコニイルノハ有名ナさまなーデハナイカ!」

神獣カマプアア。ハワイの勇敢な戦士にして半獣半人の男性神だ。
普段は大変美形な神であるとされているが、現在の姿は豚の姿をして
いる。そもそもハワイ語でカマプアアは『豚の子ども』というらしい。

「ンン。コウシテハイラレン。さまなー、少シ離レルゾ」

「お、おい!」

すかさず美形の男性に変身すると、ロビーの階段を紳士の風情で降りる。
洒脱な歩き方は野暮ったさがない。少なくとも、日本国内でも通用する
整った面立ちだ。中身も決して野暮天ではない。

「こんにちはお嬢さん方」

穏やかに話しかけるカマプアア。それに先に気付いたのはほむらだ。
向かい合うまどかの背後から近づいているのだから当たり前だが。


「ど、どちらさまですか?」

ほむらには思い当たる顔ではない。恐らくまどかにしてもそうだろう。
振り向いたその顔に困惑の表情が浮いていたのだから。

「貴女方が有名なお二人と聞いてつい声をかけてしまいました」

カマプアアは爽やかな笑顔をしたつもりなのだろう。だが元来
人見知りなまどかにとっては、見ず知らずの男性に話しかけられるのは
ちょっとした恐怖である。間に知り合いがいればいいがそうでなければ
怯えてしまう。その心境のままほむらの背後に隠れた。

「そう、でもナンパはお断りしたいところね」

努めて冷淡に言うが、ほむらも内心怯えている。彼女もまた根は
人見知りで病弱な少女だ。かろうじて背中にいるまどかの体温で
立ち向かえてはいるが、彼女もこんなことに対してはなすすべがない。

「そういわずに、少しおしゃべりをいたしませんか」

離れたところで見るサマナーも、どうしていいものか困惑している。
カマプアアが女性に乱暴をする性格ではないことを知っているからだ。
けれども、少女二人の態度を見るに怯えてるのは見て取れる。

「遠慮するわ」

「そういわずに」

と一歩前に出て、ほむらの手を取るカマプアア。本人は紳士的な動きの
つもりだったが、相手の様子をはっきり理解していなかった。
それに一瞬怒りと恐怖を感じたほむらはその手を振り払ってしまった。


怯えるまどかが小さな悲鳴を上げるのが癇に障ったのか、断られ続けて
苛立ったのか、表情が変わる。

「ちょっと話をするだけですって」

「いや、あんたさ。その子ら怯えてるじゃないか。んー?」

義侠心というか正義感で老齢のサマナーがカマプアアに割って入る。
さすがに不穏な空気を察し、カマプアアの契約主が近寄ってきた。
老サマナーは彼女らを娘か孫の様に感じており、それを庇おうとして
いるのだが、カマプアアにはそれが気に入らないらしい。

割って入られたおかげで二人は距離を取ることができた。まどかが荷物
をいい加減にまとめると、ロビーの外に出ようとした。それに続いて
ほむらもカマプアアと老サマナーのやり取りを見ながら距離を取る。

「あ、こらおっさん。邪魔だよ!」

「少し向こうで話そうか。男同士な」

老サマナーはほむらにウィンクをすると離脱を促す。
ほむらがそれに気づき小さく頷くと、まどかの背中を抱きながら
立ち去ろうとする。

「あ、ちょっと、待ってくれよ! ちょっとどけって!」

力任せに老サマナーを引きはがすと、カマプアアは二人に近寄る。
それがとどめになった。二人ははっきりそれとわかる様に走り出した。


その態度に怒るカマプアア。召喚主の制止の声もきかず追いすがろうと
する。周囲にいた若いサマナー数人も老サマナーに加勢しようと
押しとどめる。

だが、カマプアアはかなり力が強い。また打撃や斬撃を吸収し無効化
する特性を持っている。一体で三人の体重を引きずって歩き出した。
そこまで意固地になることもないのだが、やや直情的な性格であった
からだろうか。

「まって、待ってってば!」

「こんの馬鹿力、とまれってんだ!」

「おい! お前らも仲魔呼べ! 抑えろ!」

もうすっかり女子中学生二人はおびえてしまう。いくら戦いに
慣れてきたとはいえ、見知らぬ男性に迫られることは恐怖だった。
ましてやそれに追いかけられるのだからなおさら。

召喚主が慌てて帰還命令を出そうとするが意固地になっている
カマプアアには通じない。

「ほむらちゃん……」

「大丈夫よ、私がいるから、ね」

とはいえほむらも若干怖がっている。ロビーから外に出ようとして
いる。まどかがそこまで気付いていない。ただただ頼る様にほむらに
しがみついているだけだ。


けれども、そこで初めて気が付いた。
ほむらも手が震えていることに。まどかにはそれが驚きだった。

(ほむらちゃんは、私より強くてかっこよくて、何でもできて……)

だがそれがすぐに間違いだと気付いた。ほむらの本性をまどかは良く
知っているはずだった。

『病弱で、物静かで、泣き虫で、とっても可愛いくて、
細い体でずっと頑張ってくれたほむらちゃん。』

それが本当のほむらのはずだった。それを都合よく今の今まで
忘れていたのだ。
そんな思いが、まどかを奮い立たせる。

――かっこよくなって――

――綺麗になって――

――強くなって――

――ネミッサちゃんから――

――ほむらちゃんを取り返すんだっ!――

「や、やめてください! ほむらちゃんが怖がってます!」

傍から見れば、声も体も震えているのはまどかで、ほむらのほうが
落ち着いているように見える。
だが、その震える体で、声で精一杯ほむらを守ろうとしているのだ。


そのとき、外に通じるドアが開く。そこには一人の若いサマナー。
彼女から聞かされた状況とわかると、手持ちの悪魔を召喚する。
地母神ペレ。ハワイで一番名の知れた、火もしくは火山の女神だ。
そして何より、カマプアアの妻として有名な奔放な美女として親し
まれている。

彼女の体のあちこちから立ち上る炎のごとく、怒りに満ちている。
けれどもその表情はなぜか、冷え切ったように無表情だ。

「あなた。何をしてるのかしら?」

「ペレ!」

カマプアアの表情が変わる。だがそれは恐妻家に対するそれではなく
自分の行動を邪魔されたことに対する、怒りが見て取れた。

「こんな幼い子供に、何を盛っているのかしら?」

「何をしてもかまわないだろう。
こちらは君の気まぐれに嫌気がさしているのだ」

「へぇ。私だってあなたの豚としての習慣にウンザリしているのよ」

にらみを利かす二人。ぴりぴりした空気の中、その隙を狙い、無理やり
カマプアアを召喚主が送還する。抵抗されると思ったが、どうやら
ここで暴れることを嫌ったのか大人しく従った。

召喚主は、ほむらとまどか、そしてカマプアアを抑えていたサマナー
たちに頭を下げた。幸い大事には至らなかったので皆もさして感情的
にはなっていなかったようだ。

「ふぅ。ごめんなさいね。お嬢さんたち。
ウチの宿六が怖がらせたみたいね」

ふう、と大きく溜息をつき、燃え盛る炎を収める。
先ほどまでの怒りの色などどこにいったのか。穏やかな笑顔でまどかを
見やる。


「あ、ありがとうございます」

「お礼はサマナーに言ってね」

ペレにお辞儀したまどかは、律儀に若いサマナーに頭を下げる。
彼も彼で照れくさそうに頬を掻きながら呟く。

「こっちもお礼なんてなぁ。こんな状況を予想した子がいてね。
ペレを連れて行ってくれないか、って頼まれたんだよ」

ほむらはすぐさまそれが誰か直感した。こんな状況など予測できるはず
がない。むしろこれは予知に近いからだ。
きゅっと唇を結び警戒の色を示す。それに気付いていない若いサマナー
は朗らかに言う。

「まぁ君らが無事でよかったよ。曲がりなりにも神様だからね。
ただの夫婦喧嘩でも大変なことになるからね」

(あの二人、いいえ、彼女ね。何が目的なのかしら)

ほむらは事情を察し、唇を噛みしめた。

その後、トラブルを知りようやく戻ってきたネミッサに、まどかは
安堵の表情をした。事情を知らないネミッサは困惑していた。


「くしゅん!」

可愛らしいくしゃみ。ワイズマンたる白い魔法少女の彼女の力を
もってしても、彼女を噂する人を特定することはできない。
その様子に、黒い魔法少女は過剰に反応し慌てる。

「風邪かい? 大丈夫?」

「平気よ。風邪じゃないわ」

「本当かい? こないだ寒いところで雑談したから冷えたんじゃ……」

「大丈夫。心配してくれてありがとう」

にっこり笑って、諭した。
誰に噂されているかなど考えもせず、彼女は紅茶をたしなむ。
向かい側に座る少女も、紅茶に砂糖をドバドバ入れてティータイムを
楽しんでいる。

(彼も無事に喧嘩に巻き込まれずに済んだようだし、ひと安心ね)

まさかそこに彼女を警戒する魔法少女が居合わせたことなどとは
露にも思わない彼女は、安堵の表情で笑っていた。

「お礼にいいところのケーキでも買って来てもらおうかしら」

もはや彼女は、人を殺してまで救世を行おうとは思わないだろう。


再びネミッサは二人のそばを離れる。仕事の途中だったとのことで
とんぼ返りだ。
そんなネミッサの慌ただしい背中を見送ったのち、ほむらはまどかに
向き合う。

「まどか、ありがとう。守ってくれて」

「え? そ、そんなことないよ。守ってくれたのはほむらちゃんだよ」

「いいえ。ホントのことを言うとね……私怖かったの。
でも……まどかの手前、逃げるわけにはいかなかったわ」

そういってまどかの手を取るほむら。その手は未だに震えている。
魔法少女とはいえ、彼女にだって男性に迫られる経験などない。
もっと具体的に言えば、男性にあそこまで近寄られたこともない。
だから、そういう意味ではあの瞬間はほむらは元の姿に戻っていた。

「ありがとう。守ってくれて。……大好きよ」

そういうと、溢れる思いのまままどかに抱き着く。まどかの方は
ほむらの積極的な行動に赤面する。例え同性とはいえ、これほど美形の
ほむらに抱き着かれて動揺しない人などいない。

――私もほむらちゃんを守りたいの――



彼女の願いが ひとつ 叶った

筆者です。

とりあえず、もう談義スレは覗きません。自重します

それでは、ご感想お待ちしております


悪いが先週の見てから今回のまどほむっぽいの見ても茶番にしか見えない
多分マミッサ見ても同じ感覚に陥りそう

もうなんでもいいからさっさと終わらせろ

乙!
おまえが長く談義スレを覗くならば、談義スレもまた等しくおまえを見返すのだ
強い精神力が必要だよね!



そもそもここのまどほむにせよマミッサにせよ、今の段階じゃおままごとだし
それを茶番とか言われても

こんばんは、筆者です。
今夜は手抜きです。
長いものを書いていたのですが、どうにもまとまりませんでした。
どっかの誰かさんのせいではなく、単純に題材がむずかしかったのです。


>>323
そうです。茶番です
別れるって自分で決めてるのにネミッサはマミちゃんに惚れてます
それをなるべく明るくしなければ、惨めなだけです
愛しちゃいけないものを愛してしまう、そんな切なさを
上手く表現したかったのですが、上手くいきませんね

ここでは「タツヤが猛アプローチした」と思っております
その辺も書こうと思ったのですが、止めておきます。波風たちそうですし


>>324
ご心配なく、そろそろ書きたい話も吐き出したので終わりが見えています


>>325
全くもってその通りでした。申し訳ない
自制が聞かないからああいったものを呼び寄せてしまうのですね
反省いたしております


>>326
実際こんな好色っていう謂れは見つからなかったのですけどねぇ
私もサラマンダー→アラミタマの流れでした作らなかった覚えがあります
シーアーク4階をうろうろしたのもいい思い出です


それでは台本形式ですが、どうぞ


【やりをもつひと さんにんめ】

オーディン「ふむ、失礼するぞ御嬢さん方」

杏子 「あ、なんだいじいさん。あたしに用かい? っとここ座る?」

オーディン「ほっほ。口は悪いが気遣いは心得ておるようぢゃな」

杏子 「今の家が躾には厳しいからね」

まどか「お姉ちゃんわざと言葉遣い悪くしてるんだもん」

杏子 「べ、別にいいでしょそれくらい」

オーディン「座るほど長いこと邪魔はせんよ。麗しきワルキューレたちに、お節介をしようと思っての」

杏子 「お節介?」

オーディン「そうぢゃ。スカアハが抜け駆けしたようぢゃからな。わしも同じように、な」

まどか「あれ、でもオーディンさんって魔法の神様ですよね」

オーディン「ちゃんと勉強しておるようぢゃな。確かにわしは魔術を極めたものぢゃ」

杏子 「悪魔ってみんなそうなのかい? 皆してあたしにあれこれしてさ」

オーディン「他はどうかは知らんが、わしのは年寄りの道楽とお節介ぢゃよ」

杏子 「それでもあたしらを助けてくれるんだろ。ありがとうな、じいさん」


オーディン「素直に受け取るのも大事な素質ぢゃろうて」

オーディン「ところでお前さん。肌身離さず持っているものはあるぢゃろうか」

オーディン「それにわしが魔術を掛けよう。願掛けのようなものぢゃが……」

まどか「偉い神様にかけてもらったら効果ありそうだよねお姉ちゃん」

杏子 「ああそうだな。じゃぁこれでいいかな」

まどか(ポニーテールの中……? 前にちらっと見たけど)

オーディン「ほほう。変わった十字架ぢゃの。どれこれに魔術を……ん?んん?」

杏子 「どうしたんだい。じいさん」

オーディン「ふむ。もう一度……。…………。やはりできぬのう」

まどか「どうしたんですか」

オーディン「ふむ、これにの、勝利のルーンを刻もうとしたのぢゃよ。ぢゃが……」

オーディン「どうしたことかすでに強力な加護が備わってわしの魔術を受け付けぬ」

オーディン「おぬし、これは父母の持ち物ではないかの」

杏子 「あ、う、うん。そう、だよ」

まどか(お姉ちゃんの本当のパパとママ……)


オーディン「やはりのう。それではわしの魔術も受け付けぬわけぢゃ」

杏子 「なんで? あたし……あんなことをしたのに?」

オーディン「おぬしのことを詮索はせんよ。ぢゃが、これにはお前さんの父母の……」

オーディン「……、愛ぢゃな。愛情が強力な加護となってすでに備わっておる」

杏子 「…………」

オーディン「それにわしがあらためて加護などと無粋もいいところぢゃな」

まどか「……お姉ちゃん……」

オーディン「代わりと言ってはなんぢゃが……二人にこれを渡そうかの」

まどか「あ、これ、ストラップ?」

オーディン「うむ。最近は携帯電話などにつけるのぢゃろう?」

オーディン「わしも信仰を集めるため工夫をしておるのぢゃよ。受け取ってくれるかの」

まどか「あ、ありがとうございます!」

オーディン「うむ。気持ちの良い返事ぢゃの。それでは邪魔したの。失礼するぞい」


まどか「お、お姉ちゃん……」

杏子 「なんだい最近神様はお土産屋みたいなことしてるのかよわらっちゃうね」

まどか「……」

杏子 「こんなストラップ作ってさ……わ、わらっちゃう……ね……」

まどか「お姉ちゃん……」

杏子 「う、ううううう……、『父さん』……『母さん』……」

まどか「お姉ちゃん……」ギュッ

杏子 「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……。ごめんなさい……ごめんなさい……。ありがとう……」

まどか(杏子ちゃんのパパとママ……、これからもお姉ちゃんこと守ってください……)

まどか(……おねがいします……)


その日、まどかと杏子が天海市から帰ってきたところに会ったんだけどさ。
二人とも目を真っ赤にしてびっくりしたよ。送り迎えのネミッサも
事情知らないみたいだしさ。何かあったんだろうね。

できることがあれば、さやかちゃんは頑張っちゃいますよ~!
だからさ、だからさ、二人で抱え込まないで相談してよ。いつでも聞いてあげるからさ。

話せる時が来ること、待ってるからね、まどか? 杏子?

……おしまい。


筆者です。
手抜きにもほどがあんだろうという有様ですが
今宵はこれでご勘弁を

別に杏子ちゃんはお涙専門ってわけじゃないんだけどなぁ
なんでこうなるんだろう
ホントは最初、分身の数を増やすとかそういうの考えたんだけどなぁ

ちなみにオーディンが渡したのは「↑」のようなルーンです
ティール、「勝利」という意味合いで
魚の骨みたいに矢印の傘を増やすと、効果が高くなるそうです


それではまた

スカアハ師匠みたいにグングニルあげるのかと思った

乙でした。

神にとっては、『加護を受け取る=信徒が増える』というメリットがあるからWinWinな関係なんだろうな。
……というふうに考える時点で、自分は多分良い意味で適当な日本の信仰にどっぷりなのかな?


こんばんは、筆者です。
真4をやりたいのを我慢して執筆いたしました
一言だけ、メデューサのデザインはないわ。なんじゃありゃ。

>>335
そりゃ安易すぎますですよ。はい
もともと魔術がらみで何かするのは最初から考えてましたが
なぜか杏子ちゃんがらみは泣かせるネタばかり……こっちも安易ですねぇ

>>336
自分も信者によって神が強くなるって設定を使ってます。(前作>>10参照のこと)
キリスト教が勢力を伸ばしたのもローマ帝国下で信者が増えたから、だと思ってます
最も信者が増えれば勢力は増えるんですけど、それと神の力を重ねてみた感じですね


あと、ごめんなさい。書くのがなくなったって言いましたね。

あれ、嘘です。増えました。

さやか、上条、仁美の三角関係の行方が描きたくなりました。
いずれ、書きます。


【たましいのあんそくちへ】その一

業魔殿では、今日も今日とて悪魔合体が行われている。悪魔が合体し
一つの存在となる、そんな背徳的な技術を悪魔自身が易々と
受け入れている背景には、人間のそれよりシビアな弱肉強食があるから。

悪魔の力は安定している。それはつまり強くも弱くもなりにくいと
いうことだ。反面人間の力は不安定で、鍛錬によっては時に悪魔を
上回る力を発揮する。
そのため、悪魔たちは弱いままでいるよりはより強い力を得るため、
合体することに対しほとんど抵抗がない。また、ある程度前の悪魔の
記憶を継承するため、命令をする側も無理なく使役できる。
サマナー、悪魔の双方に利のあることなのだ。

そんな技術も欠点がある。研究成果により合体前の素材から合体結果
が予測可能なのだが、極稀に結果と違う悪魔が現れるケースがある。
これを合体事故といい、予測できないがゆえに様々な能力を持つ悪魔が
生まれてしまう。

今回はそんなケースで、合体を依頼したサマナーはぽかんと口を開け
出来上がった悪魔を見つめている。

「これは……我が輩も知らぬケースであるな」

「俺もだよ。なんか使役すんのが気の毒になるな」

その悪魔は、おどおどびくびくし、周囲を見渡している。小さな物音や
声にも過剰に反応してしまう。

「ヴィクトル様、この方、見覚えがございます。
私にお任せくださいませんでしょうか」

「……そうか。ならば処遇を一任しよう。
サマナーよ、この悪魔、こちらで引き取っても構わんかね」

「あ、ああ。材料はもったいねえけど、命令も気が引ける。いいぜ」

「代わりにこちらから悪魔を一体用意させよう。
メアリは彼女へ連絡を」

その悪魔は不安げに三人の顔を代わる代わる見つめている。


深夜、寝静まったころにネミッサの携帯が鳴る。マミも連日の受験の疲れで
ようやく眠りについたころだ。その理不尽な音に苛立ちつつもネミッサ
は着信を確認する。
相手は業魔殿だ。すわ仕事の話かとやむなく通話を始める。ついで
いそいそと廊下に移動し、マミの快眠を妨げないようにした。

『夜分遅くに申し訳ありません』

「メアリ? 何よこんな時間に。マミちゃんが起きちゃうじゃない」

苛立たしげにつぶやく。彼女のおかしなところは、理由がマミを
起こしたくないという点をあげていることだろう。
自分が眠たいということは理由にはしない。奇妙な性格だった。

『実は、貴女がたにお願いしたいことがありまして』

ネミッサの愚痴もどこ吹く風。用件だけを伝えるメアリにネミッサは
軽いめまいを覚える。まぁ、そのあたり仕方ないと言えば仕方ないの
ではあるが。

「がた? アタシだけじゃ駄目なの?」

『できればそちらにいらっしゃる魔法少女の皆さん全員で』

「わかったわ。明日……もう今日ね。は無理だけど次の土曜日はどう?」

『かしこまりました。それまでお待ちしております』

「あ、でもマミちゃんは模試だから欠席よ」

『はい。ですが、できればサマナーのあの方もお連れ下さい』

その後二言三言会話を交わし電話を切る。ネミッサは首をかしげつつも、
了承した。何が起きているのかメアリは結局肝心なことを言わない。
余りの眠気に思考も覚束ない。手帳に掻い摘んで書き込むとマミと同じ
布団にもぐりこんだ。


そして当日。皆を連れて実体化ダイブにより天海市へ。日中再度連絡を
したところ、大事件というものではないことが分かった。
だが説明が難しい(メアリにとっては、だ)らしく、とりあえず現地に
向かうことで話を付けた。

見上げるほどの船体に相も変わらず怖気づきながらホテルへ向かう。
時期的にクリスマスのイルミネーションが飾られている。
ネミッサがメアリと話し、ロビーで待たされる一行。
暫くしてから、メアリの案内の元で薄暗い地下の実験室へ連れて行かれる。

何度も訪れているまどかやネミッサはいいが、ほとんど初めての
魔法少女たちは少々怖気づいている。特に、お化けが苦手なさやかは
杏子の服の裾を、単純に怖がっているほむらはまどかの手を、それぞれ
握っている。
途中、面白がったネミッサはほむらの脇腹をくすぐった。そのため悲鳴を
上げ涙目になったほむらに銃口を向けられるという微笑ましいエピソードを
添えておく。

「つ、次やったら容赦なく撃つわ、いいわね」

「ほ、ほむらちゃんやりすぎだよ!」

「こいつはたまにこれくらいやられるべきだと思うぞ」

「撃たれてちょうどいいなんてそんなのぜったいオカシーわよ!」



そんなこんなでようやく研究室にたどり着く。そこにいたのは
美しい翼をもった天使のような、慈悲深い女神のような存在。

「あっ! ほむらちゃん! さやかちゃんも杏子ちゃんも!」

先ほどまで不安で怯えきっていた女神さまが笑顔で迎える。


一同がぽかんと口を開けている。悪魔が化けているにしてはあまりにも
そっくりだ。そう、まどかに。唯一の違いは、髪の色と長さ。
柔らかなピンクの髪がほむらのそれよりも長くなびいている。
現実にない色のはずなのに、非常にしっくりきているのが奇妙だった。

「あ、あれ……これって、ドッペルゲンガー?」

まどかたちも学んだが、悪魔の中に人物の姿を真似るというものが
いる。その悪魔は概ね遭遇した相手の姿を真似ることが多い。伝承では
その自分の姿を見たものは病などで亡くなることがあるとされる。
日本では芥川龍之介、海外ではエイブラハム・リンカーンや
エカテリーナ二世などが自分の似姿を目撃しその後亡くなっているらしい。

「ううん、違うよ。私は……、鹿目まどかだよ」

だが、ドッペルゲンガーそのものにしてはおかしな点が多い。
まず、あの悪魔は似せることはしても本気で内面まで真似るつもりが
ないため、こんな可愛らしい話し方はしない。
物陰から先にいたであろうヴィクトルが姿を現す。別の作業を行って
いたようだった。『まどか』は彼が出てくると怯えるのか縮こまる。

「ああ、よく来てくれた。どうやらこの少女の悪魔、自分を鹿目まどか
といっているのだよ。特徴を調べるにドッペルゲンガーでもない」

また最初からこの姿だったという。そして、ここがどこだかわからず
怯え泣いていた。そこでメアリがまどかにかかわりがあるのでは、
と判断し皆を連れてきたとのことだった。
そして、皆が来るまでの間話を聞くに、どうやら内面もメアリが知る
鹿目まどかにきわめて似ているようだった。好みの飲み物やお菓子が
聞いている範囲で一致する。


別室の移り、飲み物を出された一同はキツネにつままれた面持ちでいた。

彼女はココアを飲みながら魔法少女とまどか、そしてネミッサを見渡す。
両手でカップを持つしぐさまで同じだ。

「んで、まどか専門家のあんたからしてどうなの?」

「何よそれ……、でも私にもまどかにしか見えないわ」

「だよねぇ。幼馴染の私にもね」

「あたしもそうさ。付き合い短いけど、……まどかにしか思えない」

『まどか』のほうはそういって話し合う彼女たちを瞬きもせずに
見つめていた。そして、その目に徐々に涙を浮かべる。音も声もなく
双眸から溢れる涙。それをぬぐうこともなく、皆を見つめている。

「ど、どうしたの? 大丈夫?」

まどかのほうが『まどか』を慮り声をかける。自分と同じ顔であろうと
こう言った時に労りが出る彼女の優しさは、やはり深い。

「うん、大丈夫……、ごめんね、みんなが懐かしくて。ごめんね、
ちゃんと自分のこと話すね。……わかる範囲で」

そういって『まどか』は語り出した。


「私はね……たぶん、別の世界から来たんだよ」

彼女は言う。自分がいたのはこの世界とそっくり同じな世界。
まどかがいて、さやかがいて、マミがいて、杏子がいて、QBがいて
魔法少女がいて……、魔女がいる世界。

「そこでね、ほむらちゃんに出会ったの」

それまでは明るい表情の彼女が、暗くなる。

「でもね、皆いなくなっちゃった」

ほむらの転校、マミとQBとの出会い、そしてマミの死。それをきっかけ
としたさやかの契約。杏子との殺し合い。さやかの転落と魔女化。
そしてさやかの魔女を道連れにした杏子の自爆。
たった一人ワルプルギスに立ち向かうほむら。

「ずっとほむらちゃんにダメって言われてたんだけど、私契約しちゃったの」

照れ笑いなのか自嘲の笑いなのか不明だが、悪戯を見咎められたかの様に
笑いながらいう。

「だからね、皆が生きてて……嬉しくて……悲しくて……」

ぼろぼろと涙を流しながら、そこまで語った。

「過去、現在、未来の魔女を、生まれる前に消し去りたい。
そういう願いで契約したの。そうしたら、私は世界から消えちゃって、
誰にも気付かれない。忘れられた存在になっちゃったの」


まどかたちが『葛の葉』から説明された、悪魔たちの知識の範囲で解説する。

有体に言えば、この『まどか』は本霊の分霊に当たる存在のようだ。
分霊とは、本霊である神が某かの理由で自分の分身を作り、それを物質界
(つまり人間界)に送り込むためのインタフェースだ。
神となった『まどか』が直接物質界に干渉するにはこう言った方法が
必要になる。また、この方法であれば別の世界……別の宇宙にすら干渉する
ことができる。もっとも、それにはかなり多大な力が必要になるはずだ。

「でもね、そこに、貴女はいなかったんです」

「アタシ?」

と『まどか』は初めて会う人に接するような態度でネミッサに話しかける。
所謂パラレルワールド的なものだろう。こちらとそちらの世界の相違点が、
ネミッサの存在であるとのこと。いないというと語弊があるが、『まどか』の
いた宇宙ではネミッサはまどかたちに出会っていない、という意味だ。

彼女は、ある程度他の『あったであろう宇宙』のことを把握している。
その中の一つが、ここの宇宙であると彼女は言う。

「ネミッサが私と出会うだけで、こんなに違う結果になるの?」

ほむらのつぶやき。それに対する回答を誰も持ち合わせていない。

「多分、アタシも時間を巻き戻しまくったからかも。
時間を巻き戻すことさえしなかったら……、そっちに似たような
結果になってたんじゃないかな」

時間を巻き戻し続けることで他の宇宙とのズレが大きくなっていった。
その結果、今の状態に落ち着いた……『収束』ないしは『落ち込んだ』
のだろう。


「ちょっとさやかちゃんにはわかんないですね~~」

「うん、私も全然……」

「と、とにかくさ。この『まどか』がまどかとあんまり変わんない子
だってことはわかったよ。で、悪魔だっけ? これからどうするのさ」

杏子が取り繕うようにいう。
メアリやヴィクトルの様子からして、見滝原の魔法少女たちに『まどか』
を保護してもらいたいようだ。幸い、まどかのスマホには『まどか』の
体を維持するのに十分なマグネタイトはある。また本人の姿は普通の人
には視認できない。連れて帰ったところで、まどかが二人いるなどと
大騒ぎになることもない。

「あ、うん。そちらの私について行ってもいいんだけど……、パパとママ
のこと見たら、多分泣いちゃう」

彼女がいた宇宙では、両親も彼女のことを覚えていないのだという。
人が人非ざるものになること。そんな想像を絶する地獄が、そこにあった。
人の心では到底耐え切れないほどの地獄が。

「なら、私の家に来る? 『まどか』」

ほむらが言う。なんとなくだが、そこが十分な落としどころに思えた。
その言葉に、『まどか』の表情が明るくなる。一方のまどかは複雑な表情
をしている。

「え、いいの! やったぁ。ありがとうほむらちゃん」

さっきまで暗い顔をしていたのがどこへやら、心底嬉しそうに笑う『まどか』。
逆に、落ち込んだ顔をする、まどか。

「うう、またライバルが……」

「まぁまぁ、今回くらいは許してあげなよ。ね?」

同じ顔をしている自分を見て落ち着かない上に、憧れのほむらがその
自分と同じ顔にとられてしまいそうになるのが嫌なのだ。
だが当の『まどか』はそんなことを全く考えていない。お気楽とも言えたし
呑気とも言えた。だが、誰も頼る人もいないところに放り出された彼女には
ほむらの提案は嬉しかったのだろう。


ほむらの家に着き、二人きりで開口一番に言うのは謝罪だ。
玄関先で佇み俯く。その姿勢にほむらが振り返る。

「ごめんなさい。ほむらちゃん」

ほむらはその意味を取り違えた。優しい声で応じる。

「そうね。私もこちらのまどかには、悪いことをしたと思うわ。
けれど、困っている貴女を放っては置けなくて」

マミの部屋で保護する方法もあったが、あのとき本人が不在では
ネミッサの一存でどうすることもできなかった。しかもマミは受験生だ。
そこでほむらが率先して保護を申し出た。それが正解かどうかは
ほむらは今でも自信がない。

「ううん、違うの……。私のせいで……ほむらちゃんが苦しんで……」

まどかの願いにより、同じ時間を繰り返したことを言っているのだ。
昏い、重い表情で呟く。叱責されると怯えているかのようにも見える。
だが、それは間違いだ。ほむらは気付き、頷く。
困ったように眉をひそめて言う。

「でも、それは私じゃないわ。私に似た別の人」

「で、でも!」

「貴女はその『私』をも救うために、その願いをしたのでしょう。なら
私がそれに感謝こそするけれど、絶対責めたりはしないわ。『私』ならね」

『まどか』の知るほむらがしなかった笑顔。それがこの宇宙では
当たり前のように存在する。それが『まどか』には羨ましがらせる。
そして、悲しませる。

「そうね、もしよかったら、貴女の宇宙の私の話を聞かせて?」

『まどか』は嬉しそうに背中の羽をゆらゆらさせていた。


ほむらは、時間を忘れて語る『まどか』を眩しそうに見つめる。その朗らかな
顔がまどかには一番似合う。それはきっと誰しもがそう思うことだろう。

ほむらがあらゆる事態に対応し、何度も自分を助けようとしたこと、
ときに事情を知らない『まどか』に心無い言葉を浴びせられ涙を流したこと、
どんなときも、いつまでも諦めることなく戦い続けたこと、
何度か、何度も、何度でも、その横顔に憧れ見惚れたこと……。

「そう、貴女はこちらのまどかより多くのことを知っているのね」

まどかにはループのごく初期の記憶しかない。ビジョン・クエストによって
三回分のループと、桜井……スプーキーの記憶を見せられたことを本人から
聞いていた。それが桜井の気遣いであるのか、能力的な制限によるものなのかは不明だが。

「ほむらちゃんはね、一回も投げ出さなかったの」

何度も繰り返しているため、そのループを『捨てる』こともできたはずだ。
だが『まどか』の知る限り、彼女はそんなことを一度もしなかった。
只の一回も諦めず、投げ出さず、腐らず、ただただまどかを救うことだけを
試し研究し、祈り続けてきた。そんなことが常人にできるわけがない。

「ぜんぶの私を救おうとしてくれたんだよ。
……そんなこと知ったら、私……大好きになっちゃうよ」

照れ笑いを浮かべ『まどか』は締めくくった。


ほむらと『まどか』は一緒の布団で眠ることにした。こちらの世界のまどかが
みたら拗ねてしまいそうな状況だ。
『まどか』に睡眠が必ずしも必要ではないのだが、久しぶりの物質界を
満喫したい『まどか』にとって、布団の魔力は抗いにくいもののようだった。

「ふふふ……、ほむらちゃんと一緒に寝られるなんて……」

「布団はもう一組あるのだけどね」

「いーや。一緒に寝たいもん」

「はいはい」

「でも、あとでこっちの私にもやってあげてね。たぶん拗ねちゃう」

ほむらの心に懸念が持ち上がる。まどかがほむらをどう思っているか、という
点のことだ。ほむらに同性愛の趣味があるわけではないが、恋愛経験の皆無な
彼女にとって恋愛感情と友情の区別がついていない。それは恐らくまどかも
同じなのだろう。ほむらを遮二無二に慮るさまは、どちらとも言い難い感情に
思えた。

「ええ、わかったわ。私も……、そういうの、憧れてるし」

(いいんだ♪)

「けれど、貴女これからどうするの?」

「……どうしよう?」

布団の中で向かい合いながら『まどか』は悪戯っぽく舌を出した。
なにも、考えていないらしい。
ほむらは、複雑な表情をしつつも、その状態を楽しんでいた。


「ね、ほむらちゃん。ネミッサちゃんのことだけど」

不意に話が途切れた時、『まどか』が呟く。ほむらが不思議に思ったのは
『まどか』は、ネミッサのことをあまり知らないはずだということだ。
にもかかわらず、なぜ彼女の話題が出るのか。

「きっと……、ううん、ネミッサちゃん、マミさんのこと大好きだよね」

『まどか』のその言いようからして、異性への恋愛感情に近い意味で
言っているだろうと、ほむらは察した。そして、そのことをほむらが気付いている
こともこの『まどか』は知っている。

「ええ。仲良くするように頼みはしたんだけどね。まさかああなるとは」

「……何回も繰り返すうちに、ネミッサちゃんも好きになっちゃったみたいなの」

マミをだ。考えてみればわかる。世話好きで包容力があり優しいマミは
魔法少女のことがなければ誰からも慕われる愛される少女だろう。それを救おうとして
何度も繰り返したネミッサが、彼女に好意を持ってもおかしくはない。
それを『まどか』はずっと見続けて知っているという。

「でも、ネミッサちゃんは……」

さやかが恭介に思いを告げられなかったように、ネミッサもまたマミに本心を
打ち明けられないでいる。日頃大袈裟に好意を向け続けることで冗談に取られることを
狙っているらしい。

人と悪魔は同じ時間を生きられないことを知っていているから。
いつ別れても平気なように。


だが彼女はマミに生涯愛することを誓ってしまった。それが悪魔にとって
それは魂に食い込む鉄の契約であるにもかかわらずだ。それをマミに悟られまいと
必死になっている。いつか来るそのときに、彼女の重荷になってしまわないように。

「大丈夫よ。あの子のことは私が守るわ。私にあの子がしてくれたように」

それをきいて『まどか』は笑った。このほむらも、自分が思う――想う――
心優しくも強い少女だとわかったから。

「ありがとう。でもね、ネミッサちゃんは……、きっと幸せになれるよ」

「どういうこと?」

「ええへ、ひみつ」

「わかったわ。あなたが言うなら信じるわ」

納得しつつも、ほむらは小首をかしげる。その仕草や表情は『まどか』の知る、
あの可愛らしいほむらのそのまま。だからつい嬉しくなってしまった。
布団の中でほむらに抱き着いた。驚き狼狽え照れるほむらに気付かず、『まどか』は
その胸に顔を押し付ける。ほむらの体臭と温度が感じられる。

「ちょ、ちょっと?」

「ほむらちゃんとこうしたかったの! 少しの間だけでも、いいから」

女神となった『まどか』の子供っぽい行動に苦笑し、ほむらはその肩を抱く。
いつかほむらが泣きじゃくり縋りついたときのまどかと、何も変わらないように思える。
そんな小さな体で、彼女はあの宇宙で戦い続けているのだ。魔法少女の祈りが、魔女という
悲しみで終わらないように。
そんな彼女の頑張りが、ネミッサの歩む未来と重なる。

(そう、二人とも同じことをするつもりなのね)

だからほむらは思う。これから二人が歩む時間に来ればそれがたとえ僅かでも、せめて
この瞬間はこの分け御霊の『まどか』にも、今マミの隣にいられるネミッサにも、
人との温かさを感じてほしい、癒されていて欲しいと。

二人は眠りに落ちるまで、そうやって互いを抱きしめあった。



筆者でございます。前作の最後の様に連作でございます
プロットはあるのですがあと3~4回くらいでしょうか
それまでお付き合いください


頑張って週一回のペースを維持します
それではまた……

乙。今回も意表突かれた。
まさか、まど神様までもとはwww


まど神様の種族は何だろう
女神だとちょっと違うか、やっぱ英雄?

乙でした。

女神マドカ光臨?!
悪魔全書に登録してからソウルジェム浄化の研究のアドバイザーになってほしい。

まど神様来たなら、こういう感じで諸々のほむほむが迷い込んで来てもいいはずw
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15951103


こんばんは、筆者です。
サボったわけじゃありませんがまど神さまのネタは
結構難しゅうございます

>>352
これは前作の時点ですでに構想にありました
マミちゃんたちが英雄猛将として甦るのなら
まど神さまも……と思ったのがきっかけです

>>353
女神、英雄よりは固有の種族名と考えてます(覚醒人ヒメネスみたいな)
救済神とか考えたけどしっくりこなくて……。いい種族名ありませんかね

>>359
ふふふふふ、彼女にはもっと別の役割があります
そしてその時にはソウルハッカーズ陣営でまだ出てないやつらにも手伝わせる予定です
あの曲を準備しておいてください

>>360
残念ながらほむほむあたりは神格化されてないのでちょっとこの設定だと
難しかろうと思います。
……ギャグならこのまど神さまがむりくり連れてくるのでしょうけど。


そして、遅くなりましたが、その二をお送りします。どうぞ、召し上がれ


【たましいのあんそくちへ】その二


翌日の日曜日、マミへの報告を兼ねてのお茶会。
受験に疲れているマミにかわり、ネミッサとほむらが茶を出す。もっとも、
マミも不安げにネミッサの所作を見つめている。

「ほら、また間違えた」

「~~、こ、こうだっけ?」

「そうよ。……うん、よくできました」

その指導も柔らかい。だがそこでほむらはちょっとだけ不満げな顔をしている。
さすがに所作に現れることはないが、表情には浮かんでいる。彼女が
鉄面皮などと言われていたのは昔のこと。最近はかつてに比べたらとても
表情豊かだった。もっとも、むかしもマイナス方向の表情は豊かだったが。

「……ずるい……」

ぼそっと、だがはっきりと呟くほむらの言葉をマミが拾う。マミの方は
言葉の意味が分からずにいた。その顔にますますほむらはむくれる。

「私が教わった時は、もっとスパルタ『でした』」

「へえ、アンタも淹れ方誰かに教わったのね。だからあんなにウマいんだ」

ネミッサが明後日の方向へ回答する。かつてほむらもマミに紅茶の淹れ方を
教わったなどとは気づきもしない。それがかなりスパルタで、眼鏡のほむらは
当時難儀したそうだ。だがそのおかげか、紅茶はマミ直伝の正当でとても美味しい
淹れ方だった。

(もう、全然説明の仕方が違うじゃない。何よこの差は……)

ほむらはマミの自覚のない依怙贔屓にむくれていた。彼女もまた、マミを尊敬し
その人柄を好いていたのだ。だから、この差が、気に入らないらしい。


マミ直伝の紅茶を仕上げるネミッサに任せ、マミは先に座る。その間簡単にだが
『まどか』から説明を受けていた。違う宇宙から来たこと、そこにはネミッサと
出会わないほむらたちがいたこと、そして、悲しい結末を迎えてしまったこと。

「それって……死ぬよりも辛いことなんじゃないの……?」

ぽつり、マミが感想を呟く。心なしか顔が青ざめている。人の心を持ったまま
人非ざるものになる辛さ、皆から忘れ去られる辛さ。それをひしひしと感じていた。
その感覚はネミッサにはないものだ。つい先の夏のことを思いだし眉をひそめる。

「でも、私はすべての魔法少女の希望になったんです。だから、へいきです」

にっこりと『まどか』は応じる。
向こうの杏子は言った。戦う理由が見つかったなら突っ走るしかない、と。
向こうのマミも言った。まどか自身が、魔法少女すべての希望になる、と。

「そっちのほうがよかったのかもしれないわね……。アタシのやり方じゃ救えない子、多すぎる」

ため息交じりのネミッサ。取り繕うように紅茶を啜る。やはりマミが淹れたほうが
断然美味しい、とがっかりしながら。
彼女が救おうとしても、救えない魔法少女が何人かいた。魔女になってしまったり、
その前に自害してしまったり。また契約前に悪魔に襲われ大けがをしてしまったものもいた。

魔法少女の契約を理解しても、魔女になることへの理解が足りず成してから後悔する
ものも大勢いた。

「ヘタに希望持たせたせいで、余計苦しめてさ。やっぱり間違ってたのよね。アタシのやり方」

だが、『まどか』は首を左右に振る。

――希望を抱くのが間違いだなんて言われたら――
――私、そんなのは違うって、何度でもそう言い返せます――
――きっといつまでも言い張れます――

「そんなことないよ……。私はそれは違う、って何度でも言っちゃう」

「ん……、よくわかんないけど、ありがとう」

『まどか』の慰めに、ネミッサは弱弱しくも微笑を浮かべることができた。


マミへの説明がすんだところで、ここからどうしようか、という話になった。
ある程度方向性として、『まどか』と共に外出しようという流れになっている。

だが問題としては、彼女がヘタに姿を現したらややこしくなる、ということ
だろう。まどかとそっくりな顔かたちもそうだが、長くピンク色の髪は
とにかく目立つ。だからといって、姿を見せないままではたい焼き一つ
食べられない。空中で消滅するたい焼きなど、クトゥール神話群になってしまう。

「ねえ、ネミッサちゃんみたいに誰かに憑依できないの?」

悪魔のことを学んだまどかが言う。それは同時にあることを彼女が期待して
いるということなのだが……。全員が気付き思わず顔を見合す。

「それってひょっとして」

「うん、私に憑依したら駄目かな? ネミッサちゃんと、遠野さんみたいに」

「うーん……。たぶんできると思うけど……」

『まどか』は消極的だ。いくら自分とはいえ他人の体を乗っ取るのは気が引ける。
自分のわがままのため体の自由を奪っては申し訳ない。という気持ちだが……。
問題は、自分以上にまどかは頑固だということだった

結局なし崩しにまどかに憑依することが決まった。行動の主導権は
『まどか』が握るとのこと。その代り感覚を共有し、五感を伝え合う。
また、意思疎通は魔法少女のテレパシーを行う。そこまで決まると
『まどか』はまどかに憑りついた。結局嬉々としていたのは言うまでもない。


六人はそのまま見滝原をぶらりとする。懐かしさに酔いしれながら『まどか』は
感嘆の声を上げながらきょろきょろする。ほむらはまるで末っ子を心配する姉の
ような面持ちでいた。お昼には若干早いものの、『まどか』は久しぶりの
ファストフード店での食事とあってか待ちきれないらしい。

そのまま昼食。いつもは小食のまどかもこの時ばかりは色々食べたくて仕方ない
とのことだ。父親の手料理も恋しいが、それとは別にこう言ったジャンクフード
らしさを堪能していた。

”ちょ、ちょっと! 食べすぎだよう!”

「あ、あははは、ごめんなさい」

『まどか』はまどかの叱責に大慌て。確かに味は共有しているが、いわゆるカロリー
はまどか持ちである。要は、太るのはまどかの方だということだ。

「あんな食べるまどか初めて見たよ」

見た目が全く変わらないため、さやかも驚く(とはいってもポテトのサイズが
ワンランク上、という可愛いものだが)食べっぷりだった。

”うう、お腹周りが気になる……”

ご満悦の『まどか』の裏で、まどかが明日の体重計に怯えていた。


次はウィンドウショッピング。『まどか』が試着するものと思いきや
『まどか』がコーディネイトをしたいらしく、着せ替え人形を求めて
いた。こういう状態になると十中八九、ほむらが生贄になる。

ちょっと離れたところにいると、試着室を往復する『まどか』がいて
試着室に行くたびに、ほむらの短い悲鳴が聞こえてくる。さすがに六人は
その通路にいられないので距離を取っていたが、それゆえに『まどか』は
着せ替えほむらを大分堪能できたようだった。

満足できる着せ替えがすむたびに、試着室からマネキンほむらを取り出しては
皆に見せる。それがなんともほむらに似合う服装で、全員が溜息をつくほど。
それだけ『まどか』もまどかも、ほむらを良く見ているということなのだろう。

続いて標的にされたのは杏子だ。あのおへそを出した服装は鳴りを潜めたが
どこかざっくばらんな服装が多い。そのため『まどか』が協力し、杏子が
恐らく着ないであろう甘めの服装を着せていた。

「次の獲物はキョーコちゃんか。気の毒に」

「んー、でも本人楽しんでるっぽいよ」

さやかが言う。二人で洋服を見に行くときに大概杏子に服を着せるのだが
スカートやらなんやらを選ぶと走って逃げてしまうらしい。それがまどか
相手だと大人しく従っている。

「杏子、ずるい」

今度はさやかがほむら化した。


着せ替えで大分時間が取られたものの、ぶらぶらと商店街を歩く。
『まどか』は見るものすべてが懐かしく、目を細めながら風景を見ていた。

「『マドカ』ちゃん、たのしそーね」

「うん! ふふ。あんまり時間経ってないはずなのに、懐かしくて楽しいよ」

”よかった。せっかくなんだもんもっといろんなところ行こう?”

「まどかさんがいいならいいんだけど、時間とか平気?」

「パパとママが心配するから、暗くなる前に帰ろうよ」

杏子が携帯の時間を確認した。鹿目家に入って以来、門限をきちんと気にする
ようになった。元々聖職者の娘である。根はまじめでいい子なのだ。

最後に行きたいところということで、やや自宅から離れた橋まで足を延ばす。
その場所の意味にほむらは漠然と気づいたが黙っていた。何の変哲もない、
といえばそうなのだが、そこはほむらやまどかにとっては思い出深い場所だ。

――早速ばれちゃったね――
――クラスのみんなにはナイショだよっ――

「ここはね、まだ魔法少女になる前のほむらちゃんを助けた場所なの」

マミも知らない魔女。凱旋門の形をした、芸術の魔女。


まだ病弱で魔法少女にもなってないほむら。彼女は転校初日で
なかなかクラスになじめなかった。勉強も休学続きでわからず、入院続きの
体は準備運動だけでも貧血を起こす。誰もが自分を笑っているような、そんな
憂鬱な気分になっていたとき、魔女の結界に呼びこまれた。
それを救ったのがベテラン魔法少女のマミと、クラスメイトのまどかだった。
それが運命の出会いだった。

「マミが知らないのも無理はないわ」

最後のループでは、マミのことはネミッサに任せ、自分は武器の調達や魔女の
討伐を行っていたのだ。来るべきワルプルギスの夜との戦いに備えて。
ここに現れるであろう魔女も、マミに気付かれる前に撃破していた。
同じ時間を繰り返したため、統計学的に魔女の出現時間や場所がわかるように
なっていたからだ。

「それで何が起こるか知っていても、微妙に遅れたりしたのね」

ほむらとて万能ではない。魔女の出現パターンに揺れがあるせいか、マミの
救出時もぎりぎりになってしまったし、さやかの救助もなかなかうまく
行かなかった。

「うん、そう。ここが」

”はじまりの場所”

ほむらは、ふと思い出したように言う。

「そういえば、ちゃんとお礼を言ってなかったわね。
……助けてくれてありがとう。鹿目さん、巴先輩」


それは当時の呼び方だったのだろう。控えめにはにかんでそういった。
たったそれだけのことなのだが、師走の気の早い夕日に照らされたほむらの
美貌は、全員に凄まじい衝撃を与えた。

(ああ、これは惚れるわ)

まどかたち以外が異口同音にそう思ったほどの魅力を放っている。
そのためか、『まどか』はうずうずしている。何事かとさやかが聞くが早いか
『まどか』はほむらに抱き着いた。

「あああああああああ! ほむらちゃんかわいいいいいいいいいいいい!」

”あああああああああ! ほむらちゃんかわいいいいいいいいいいいい!”

「きゃぁっ!?」

思わず押し倒しかねない勢いで飛びつき首にしがみつく。確かに余計なことを
考えなければほむらの美貌とあの微笑は、異性同性を問わず籠絡するほどの
魔力を放っている。まどかの様になることもありえなくはない。

「ちょ、ちょっとまどか!? は、離して! ね?」

まどかたちにはおさげのほむらの記憶がある。その愛らしさにすっかり骨抜き
にされている彼女たちにとって、あのはにかみと喋り方は危険すぎた。
ほほを摺り寄せて満面の表情をするまどかたち。突き飛ばすわけにもいかない
ほむらの狼狽えぶりも見ものだった。

そして、すっかり蚊帳の外にされた皆。

「きーすきーす」

「きーすきーす」

「きーすきーす」

「ず、ずいぶん投げやりね」

さやかと杏子にネミッサ、そしてマミの言いようは相棒に抱きしめられた
ネミッサを囃し立てたときと同じだが、今回は完全に惚気に当てられて
ほとんどやる気のないようだった。


門限に合わせ解散、というところで『まどか』はまたほむらのところに
戻る予定だったが、なぜかまどかがそれを良しとしなかった。

”ね、よかったら、パパとママにも会っていかない?”

「え、それはちょっと……、怖いよ」

と不安がる『まどか』を諭し、まどかは実家へ連れていこうとした。
ほむらもそれに同意しにこやかに説得する。もともと本人も会いたがって
いたし、大好きなほむらに諭されては断ることもできなかった。

果たして『まどか』は両親と対面する。幸いというかなんというか同じ本人
のため、さして不自然にならずにいられた
はずだった。
それはやはり生みの親の強さというものだろうか。帰宅した詢子は一目見た
瞬間に思った。

(まどか……? じゃない、この子、誰だ?)

ようは全くの直観で『まどか』を察したのだ。さらに恐ろしいことに、
実の娘のまどかのことすら感知した。
取り繕うようにして家族四人食卓を囲む。余計な気を回さなければこの
まどかににた別人はまどかと仕草は変わらない。夫の美味しい料理に
舌鼓を打ちつつ、会話を楽しんでいた。


その夜、詢子はまどかを呼び出した。そして、まっすぐに尋ねる。

「なぁ。あの、変なこと聞くけど、いい?」

「どうしたのママ?」

(表情までおんなじだ。でも、なんで違うってわかるんだろう)

「なぁ、あんた誰だい? まどかそっくりだけど……いや、まどかなのは
わかるんだ。いや、違う、なんだ、何言ってんだろう……」

その言葉に二人は戦慄した。どうしていいかわからない。けれどその前に
『まどか』が反応した。詢子の生みの親としての直観に、心を打たれ
大粒の涙を流してしまった。

「うん……私……『まどか』だよ。ママの子供だよ……」

ボロボロと泣きながら母親にすがりつく。当然真実など語れるわけがない。
だからこうしてすがって泣きじゃくるしかない。それで某かの思いが
伝わってくれることを祈って。

『まどか』の本当の母親でないことは頭では分かっている。だがそれでもなお
詢子は母親だった。そして、その母親は全く情報がない状態で『まどか』の
存在をおぼろげに察した。
泣き出した娘を抱き返して詢子は思った。

(どっちでもいいじゃないか、どっちもまどかには違いないんだ)

言葉はなくとも、二人ともただただ抱き合っていた。

”ありがとう、ママ。『まどか』ちゃんを、抱きしめてくれて”

まどかは自分の母親の凄さと優しさを目の当たりにして、
とても誇らしく思った。

そんな日々が、一週間は続いた。


こんな具合でお届けしました、その二でございます


次回その三にて、『まどか』はとあるところに向かいます

それはどこか、彼女の目的は? 未だ現れない人物とは?

なーんてかんじで煽ったところでおやすみなさい

やはりマドホムは良いものだ

乙でした。

女神様の休日って感じが良かった。
まどかと『まどか』の心が一つになった、ほむほむ抱きつきタイム!!

こんばんは、筆者です。
先週は落としてしまってすみません
今週はちゃんとこれから投稿します

>>378
もうちょっとカワイイ描写がしたいんですけどね~
まだはっちゃけられないです

>>381
おさげのほむらを知ってるのはあの二人だけなので
思いきりシンクロしたようであります

そしてその三をお送りいたします。
ちょっと強引な話運びですが、ご賞味ください


【たましいのあんそくちへ】その三

週の中ごろ、ほむら宅でのお茶会が催された。いつものマミの部屋では
ない理由は家主のマミの追い込みと、ネミッサの不在によるもの。
ネミッサは相変わらずマミの家事をフォローするが、本人にも仕事があり
毎日自宅にいられるわけではない。ことに魔法少女のことになるとどうしても
不定期に外出を余儀なくされる。
ただ幸いなことに、今日は前もって外出がわかっていた。だからほむらの
許しを得てこうして皆で集まっているのだ。

「みんなに集まってもらったのはほかでもない」

「いや、なに勿体ぶってんだよ。クリスマスだろ」

「いやまぁそうなんだけどね」

「ウェヒヒ。さやかちゃん、ドラマのセリフみたいなこと言いたいだけだよね」

「まーねー。場所はここでいいの?」

「ええ、構わないわ。マミは受験だし、飾り付けの余裕もないでしょう?」

実は、と勿体ぶるほどでもないが、詢子や知久はクリスマスパーティの会場に
自宅を使うことを提案していた。だが、やはり魔法少女のこともあり即決は
しなかったそうだ。
そんななか、件の『まどか』はやや離れたところにいる。パッと見ると
身を引いて遠慮しているように思われる。だが理由を聞くと微笑ましい返事が
返ってくる。

「どうしたの『まどか』。貴女も話に参加してもいいのよ?」

「遠慮しなくていいよ?」

「ううん、遠慮じゃなくてね。皆の顔が見たいの」

楽しいパーティのための話し合いに顔を輝かせる皆をみるのが楽しい。
彼女はそういっていた。


「でも話に参加した方がもっと楽しいよ。ほらほら」

さやかに促され、『まどか』も話の中に入る。最初は大きかった翼も
今は日本家屋に対応し漫画のような小さな翼になっている。それが
本人の気分によりゆらゆら揺らめいたり、楽しそうに羽ばたいたりと
表情豊かだ。

「そういえばパパとママがさ、パーティにならリビング使っていいって」

「まどかんち結構広いしね。……でも、そうすると『まどか』が……」

とさやかが『まどか』を見やる。見られた本人はきょとんとしている。
さすがにご両親の前でまどかが二人になるわけにはいかないだろう。
そうするとやはりどうしてもほむらかマミなど、一人暮らしの家で
やるしかなくなる。

「あはは、私を気にしなくていいよ~」

『まどか』はにこやかに笑っている。ほむらが淹れてくれた紅茶を飲んで
ご満悦だ。そういえばこの『まどか』は自分から特別あれこれをしない。
だが、皆の間にいるだけで嬉しそうだった。

「そういうわけにもいかないでしょ」

「私はかまわないわ。それにまどかたちはご家族でパーティするでしょうし」

ほむらとしては無理に家族の団欒に割り込むこともない、と思っている。
一方で詢子と知久の方はほむらを巻き込みたいと思っている、らしい。
これはほむらが知らないことではあるが、タツヤがほむらを気に入っており
ほむらが家庭教師として来る日をしょっちゅう尋ねるそうだ。

「さすがパパの子だ」

と詢子は笑い、知久も苦笑していた。


ともあれネミッサまで入れれば六人で押しかけるのもどうか、という
ことで、結局はほむらの部屋で行うことになった。飾りつけの手伝いに
まどかの使い魔たちにも頼むという。彼女ら――シヴァ以外はほぼ女性――は
嬉々として快諾してくれた。ちなみに、手伝う彼女らもパーティに誘ったが、
さすがに人数が多すぎると辞退されてしまった。

「でさ、気になるんだけど、『まどか』はずっとここにいてくれるの?」

さやかの何気ない疑問。それは確かに全員の疑問でもある。というのも
『まどか』はまどかと契約を交わしていない。保護という形でまどかの
スマホからマグネタイトをもらっているだけだし、まどかも使役する
(シヴァあたりからして全員と友達感覚ではあるが)つもりがない。
『まどか』に害意がまるでないためもあるが、完全にお友達感覚で
接していた。

『まどか』は嬉しかった。さやかの『いてくれる』という表現に気付いた
から。だからとてもにこやかに笑ってこういう。

「いていいのかな?」

「いいんじゃない?」

「私はいて欲しいわ」

「私もいてほしいな」

「あたしもそうだな」

『まどか』は表情を明るくして笑顔を見せた。隠しごとを露ほどにもみせずに。
そうして、月末のクリスマスイベントに向けた和やかな会話が続いていった。


その週末、まどかは例によって天海市へ。付き添いはほむらだ。とはいえ
毎回シーアークに行くわけでもなく、場合によっては座学であったり
サマナー同士の親睦を深めるイベントだったりする。ことにまどかは
期待の新人サマナーとして人気や知名度があり、話しかけようとする
若いサマナーが途切れない。人見知りするまどかは困惑している。だが
そのおかげで彼女に協力するというサマナーも増えている。
最も、まどかは戦闘を行うつもりがないので協力するほうも気軽に力を
貸せるのだという。
また、人数は多くないが若い女性サマナーもいる。そんな女性陣からも
まどかは人気があり、しばしの歓談を楽しんでいた。

そして相変わらずほむらは男性陣が集まる。その隣では防波堤のネミッサが
いる。とはいえ彼女も出席者に顔を見せないといけない立場だ。そのため
終始ほむらのガードができるわけではない。席を外す必要があった。

困ったのはほむらだ。いつもの座学などであればよかったがこう言った
ところで好奇の目に晒されるのは苦手なのだ。同じく苦手なまどかの
ためと意を決して出席したが、ここまで男性に囲まれるとは思ってなかった
らしく困惑していた。

それを助けたのはなんと『まどか』だ。別段悪魔の召喚は禁じられては
いないが、慣例的に皆控えていた。そこを契約していない『まどか』が
勝手に現れてしまった。

「ほら、ほむらちゃん。お菓子食べに行こう?」

「わ、わわわ……。まっ、『まどか』、まって、引っ張らないで……」

『まどか』が振り回すお蔭で男性陣は声をかける暇もなかったようだ。
……当然後でネミッサだけこってり怒られたわけだが。


怒られたネミッサを何とか連れだし、業魔殿から抜け出す。悪魔の扱いに
十分な注意が必要だということをちゃんと説明しないとならない立場の
ためだ。だが、ほとんどの人間が忘れているが、ネミッサも悪魔なのだ。
そんな複雑な状況に、ほむらはつい笑いがこみあげてしまう。
ほがらかなほむらも、珍しいと言えるだろう。だからまどかも『まどか』
もやや興奮しながらほむらの顔を見つめている。

またもほむらに二人が抱き着くものと思いきや、珍しく落ち着いた口調で
『まどか』が口を開く。

「ね、お願いがあるの」

『まどか』からの珍しいお願いであった。彼女のお願いなど見滝原に
来た時以来。とはいえ気軽な言い方に皆当たり前の様に受け入れた。
ほむらもそうだが、ネミッサもまどかには甘い部分がある。同じことを
さやかなり杏子なりが言うとわざと渋ったりすることがあるのだ。

もっとも、マミのお願いであった場合はまったく抵抗なく受け入れる
ネミッサは、魔法少女たちに割と甘い方ではないだろうか。

「行きたいところがあるの」

「へえ? なに、天海市で?」

「いいわよ。時間もあるのだし」

照れ笑いを浮かべながら『まどか』がいうことは全員を驚かせた。

「シーアークの最上階。そこに連れてって欲しいの」


シーアーク最上階。そこには名だたる魔王たちの分霊が鎮座しスワチカを
守護していた。それらをすべて撃破した相棒とネミッサはスワチカを奪い
時間の巻き戻しを行った。リーダーの命を救うために。
だが相棒とネミッサは何度繰り返してもそれを達成できなかった。そのため
情けなくもそれを諦め、スワチカを業魔殿に預けたまま明日に進んだのだ。

ここを知っているのはこの一同ではネミッサだけだ。まどかにしろ
ほむらにしろ魔法少女たちはここに連れてきていない。ここに放し飼いに
されている悪魔は皆強力で危険なためだ。魔法少女であればなんとか
戦いにはなるだろうが、まどかを庇いながらではそうはいかない。
また特に見返りもないのにそれだけ危険な相手に戦いを挑む必要もない。

だから、なぜ『まどか』がここを知っていて、来る必要があるのか
誰にもわからなかった。
ともあれ、ネミッサの案内もなくふわふわと『まどか』が先に進む。
連れて行ってほしいというわりに、彼女が案内をしているかのようだ。
そして彼女がたどりついたのは、ネミッサたちが時間を巻き戻すために
使った部屋だ。

そこに待っていたのは一人の女性。見た目三十代で通りそうな女性だが
ネミッサには見覚えがあった。その女性はネミッサを見ると一瞬驚いた
顔をしたが、すぐに表情を引き締めた。

「そう、貴女の知り合いだったのね」

「アンタがなんでここに?」

「ヴィクトルに頼まれてね。ここの力場の『加工』と、これを届けにね」

彼女が差し出したのはずっしりとしたジュラルミンケース。それはかつて
ネミッサがワルプルギスの夜との決戦前に業魔殿から回収していたもの。
そして使わなかったため再び業魔殿に預け保管してもらっているもの……
スワチカを運搬するためのものだ。


「は、はじめまして。私は鹿目まどか、です」

「私は暁美ほむら、です」

「そちらのお嬢さんたちは初めまして。私は麗鈴舫。レイ、でいいわ」

彼女がレイなら実年齢は四十代のはずだが、見た目や肌は瑞々しく
未だ三十代前半で通りそうだった。
彼女は『キョウジ』のパートナーだ。残念ながら(或いは幸いにして)
彼と男女の仲ではないが、『葛の葉』では一目置かれる巫女であり
パートナーである。
今回は彼女の巫女としての力を頼りにされ、依頼をこなしていたそうだ。

「ここはスワチカを使う特殊な力を持った場なの。
だけれど、そこの可愛い悪魔さんのお願いで少し細工をしたわ」

時間に干渉するこの力場を、巫女たるレイが手を加えたらしい。
それはヴィクトルからの依頼らしく。詳細は話さなかった。

「それにしても、悪魔の貴女がこうまで人を救おうとするとはね……」

「うっさいな。アンタにはどうでもいいでしょ。あの頃から知ったような顔してさ」

苛立たしげにネミッサが噛みつく。初対面のころからどうもネミッサは
レイを気に入らないらしい。年長者の知ったような顔が気に入らないと
後になって気付くのだが、この時点ではイマイチわかっていないようだった。


そんな雰囲気を『まどか』が諌める。めっ、とばかりにネミッサの鼻先を
指でつつき気勢をそぐ。

「レイさん、ありがとうございます。無理をお願いしてすみませんでした」

「貴女は礼儀正しいのね。いいのよ。報酬はちゃんともらえるのだから」

どうやら二人は面識があるらしい。ほむらもまどかも、ネミッサですら
唖然としている。そんな三人を置いてけぼりにしつつ、会話を進める。

「それで、これから移動するのかしら?」

「今からでもいいのですけれど、すぐじゃないとだめですか?」

「あまり加工は持たないと思うわ。早い方がいいと思う」

「えっ!? いまから? みんなに挨拶は?」

ほむらも慌ててしまう。マミたちに一言も断りもなく行ってしまうというのか。
一方で、事情を知っているのかまどかは落ち着いたものだ。それでも
唇を噛みしめ別れの悲しみと戦っているようでもあった。

「……年長者として言うわ。ちゃんとお別れしてきなさい……」

レイは諭すようにいう。だが『まどか』のほうは左右に力なく首を振る
だけだ。

「これ以上ここにいたら、行きたくなくなっちゃいます」

「いいえ、それは許さないわ。ちゃんとお別れをいいなさい。いいわね」

ほむらが語気鋭くいう。まどかにたいしこんなきつい言い方をしたことなど
今までなかった。ネミッサも同意見らしい。『まどか』ではなくレイに言う。

「その加工ってやつ、どれくらい持つの? もう一回とかできないの?」

「一週間は持つわ。だから次の日曜日まで平気よ。
もう一度手を加えることもできるけれど、私も準備があるから」

だからなのだろう。『まどか』はクリスマスパーティに消極的だった。
自分が参加できないと知っていたから。だから別れの挨拶もせずに
立ち去ろうとしたのだ。



……どこに?


「やっぱり駄目だよ。ちゃんとお別れの挨拶しよう? ね?」

事情を最初から聴いていたまどかも説得に加わる。ほむらが知る限り
『まどか』もまどかも自分を蔑ろにする傾向にある。それは優しさからくる
美徳ではあるのであろう。だが同時にかつて杏子が言っていたことにも重なる。

『まどかはさ、優しさを理由にやらないことがあるんだよ』

「それがより大きな悲しみを呼ぶことになる。前に『私』も言ったはずよ」

ほむらの言葉に詰まる『まどか』。全く同じことを『ほむら』に言われたことを
思い出し、言い返すことができなくなってしまった。

「あのさ。アンタだって嫌なんでしょ。あの二人、きっとすごく怒るわよ」

「マミに至ってはソウルジェムが濁るでしょうね。あなたのせいで」

『まどか』が言葉に詰まる。自分の身勝手な判断で俯いて言葉が出せない。
確かに、ここで黙っていけば簡単だ。だがそれではこの場にいない三人は
納得すまい。むしろ憤慨してしまう。そうなると矛先は止められなかった
ほむらとネミッサに向かうであろう。あとに禍根を残しかねないのだ。

「『まどか』ちゃん……。ちゃんと挨拶しないと、私『あげないよ』」

まどかの奇異な言葉に『まどか』が驚き不安がる。ネミッサたちには
それの詳細はわからないが何か大事なもののやり取りのようだった。

「でも、ちゃんと挨拶していったらちゃんと『あげる』から、ね?
それにさ、『まどか』ちゃんだって……
ホントは黙って行きたくないんだよね?」

『まどか』の表情が歪み、こらえきれずに涙をこぼす。

「なら、決行は延期ね。それまで少しでも安定するようにするわ」

「ありがと。ごめんね」

レイはネミッサの殊勝な態度に驚きつつも大人の余裕で応じた。

(変わるものね……彼女も)


後日、そのことに驚きつつもマミたちは『まどか』の出発を受け入れた。
やはり最初はさやかも杏子も腹を立てたが、それを諌めたのはマミだ。

「やめなさいふたりとも。『まどか』さんだっていっぱい悩んだ結果なのよ」

そういうとウィンクをして『まどか』に微笑む。それだけで救われた気がして
『まどか』は感極まってしまった。声もなくぼろぼろと流す涙にさやかも
杏子も、それ以上腹を立てることができなくなってしまった。

何か特別お別れ会をやったわけではないし、一人一人に気の利いた言葉を
かけたわけでもない。けれどもそれをすることで皆納得し、笑顔で送り出す
ことができた。その一事だけでも、ちゃんと話をすることができたこと、
それは正しかったと思われる。

「黙って行こうとしてごめんなさい。でも……」

「もういいよ。けど、向こう? どこに行くか知らないけど、元気でね」

「やらなきゃいけないことがあるんだろ。なら突っ走るといいよ。ね」

「会えなくなるのは寂しいけれど……頑張ってね」

全員を天海市に送らず、見滝原でお別れとなった。ネミッサの案内の元
『まどか』は実体化ダイブで五人の前から姿を消した。

「寂しくなっちゃったね」

「なんだかんだで楽しかったもんな」

「もう少し、向こうの世界の話聞きたかったなぁ」

「そうね。異世界の話なんてなかなか聞けないものね」

「頑張ってね『まどか』ちゃん」

まどかの最後のつぶやきは、皆の気持ちの代弁だった。


「ところで、聞きたいことがあるんだけれど」

「何よ」

「まどかの魔法少女の素質のほとんどが急に消えてしまったんだ」

「はぁっ!?」

「何か知らないかい?」

「アンタらがわからないのにアタシにわかるわけないじゃん」

「そうかい?」

「魔法少女のことはアタシなんかよりずっと詳しいでしょ」

「そうだね。わかったよ」

「ほら、魔法少女候補生の情報交換やるわよ。とっとと終わらせましょう」

「そうだね。それじゃぁ一人目は……」




――はじめまして――

――君は?――

――お二人にお願いがあってここで待っていました――

――何の用なんだよ――

――私を連れて行ってほしいんです――

――どこに? ”いつに?”――

――ワルプルギスの夜との、さいごのたたかいに――

――……こちらも行くつもりだった。連れて行こう――

――連れて行くだけじゃない。手伝わせるつもりだろ、なぁ――

――わかってしまいますか――

――わからないわけがない――

――ごめんなさい、それではお願いします。ところで二人のお名前を聞いても……――

――名前も知らない相手を頼って待つか――

――ならちゃんと聞いて覚えときな――



――……十四代目、葛葉……――――



という具合に進めました
筆者です

まだシェフも双子ハッカーも弾き語りも、関西弁研究者もでてませんが
これでほとんど出てきたはずです
あと短編で誰か出そうかなぁ……

それでは感想等おまちしております。

乙でした。

『まどか』はダブルライドウを呼びに行ったのか……。
これって夢にまで見た、超力戦艦ヤソマガツ対ワルプルギスの夜クルーーーーー?!

乙。これはこれで続きが読みたいぞw

こんばんは、筆者です。
今夜も投稿いたします。

>>396
呼び行ったというか、連れて行ってもらったというか
彼女には視えていますからね

>>397
ありがとうございます。ご期待に沿えるよう
頑張ります
ちょっと、ちょっとだけ出来が心配です


【たましいのあんそくちへ】その四

そして舞台は時を超える。



再びまみえるワルプルギスの夜。それを倒さんと挑む伝説の魔法少女たち。
悪魔合体という秘術により英雄・猛将として生まれ変わった彼女たちは
元の魔力を上回る力を発揮していた。
そして、とりわけ暁美ほむらを信奉する魔法少女たちと共に
組織的に編成され、ワルプルギスの夜が作り出す結界内に攻め込んだ

奇跡を重ねたとはいえ五人の力を持って撃退したことがある以上、
それを上回る魔力を備える彼女らと、それをフォローする多数の人員を
もってすれば撃破は難しくない。それが戦闘前の予想であった。

だが、それは甘い計算だったと言わざるを得ない。

「暁美さん! 時間停止を!」

マミがリボンをネミッサとほむらに伸ばす。これを繋ぐことでほむらの
魔法を二人にも適応させる。かくしてリボンでつながった二人は、離れた
位置でも時間停止の恩恵を受けられる

「ええ! 二人とも全力で撃って!」

ほむらの魔法により、本来なら準備に時間がかかるはずの万魔の砲撃が
瞬時に出現する。放たれる射撃は正確に夜の中心線に命中している。
その凄まじい攻撃力をもってしても、まだ夜は明けない。

結界内の夜は予想をはるかに上回る魔力を有していた。恐らく結界外で
実体化するために相当な魔力を使っていたのであろう。それをすべて
攻撃防御すべてに回しているとしたら……、おそらく魔法少女たちに
勝ち目はない。今のままでは。

ネミッサの心は誰にも知られないまま折れかけていた。
それを辛うじて支えていたのは、そばにいるマミの体温。


青年二人が駆け抜ける。魔女の結界。
後詰のユニットたちの前を無言で走るさまは異形の一言だった。
元々、大正時代の学生としては一般的な服装ではある。だが、それが
今のこの場所に会った服装とはとても言えない。

その青年二人の後を俊敏に追う黒猫二匹も奇妙だ。そもそも猫は持久力
に欠ける。人間の成人男性を追随できるようなスタミナはないはずだ。
だがそれでもやすやすとついていく。

”後詰部隊に告ぐ。今そこを走るサマナー二人と共に、最深部へ進め”

”総司令、あの人たちは一体……?”

”俺が知る限り、史上最強のサマナーたちだ。腕も性根も信用していい”

”で、ですが……”

”行 け”

”りょ、了解!”

そもそもなんで『男性』が魔女の結界にいるのか。
当たり前の様に存在する彼らに追い越そうと魔法少女たちは走り抜ける。

総司令の無言の重圧に耐えられる魔法少女など、誰一人いなかった。
魔法少女の足に勝るとも劣らない速度で走る二人に、全員が追随する


「ちゃーんと食べなあかんよ」

突然現れた妖鬼アズミが強力な回復魔法を使う。本来なら使うはずがない
強力なそれで瞬時に魔法少女の怪我を治してしまった。
所謂サマナーが『鍛えた』結果ではあろうが、それでもなおその性能は
尋常ではなかった。

「あのでかいのとやりあってまぁ……、ネミッサちゃんも難儀やなぁ」



「おねえちゃん! ここ狙って!」

凶鳥モー・ショボーが叫ぶ。その声に驚くもののとっさにそれが撃った弓に
対しほむらは反応した。矢の軌跡から着弾地点を見極め、そこを狙って打つ。
ほぼ重なる様に着弾した瞬間、爆発するような衝撃が走りワルプルギスの夜を
のけぞらせる。
威力にほむらは驚き、命中させたことに悪魔は驚く。

「す、すご……」

「すっごいおねえちゃん! なんで当たる前に当たるの!?」

彼女の言っている意味がわかりづらいが、要は着弾地点を割り出せたことが
驚きのようだった。ほむらのほうは威力に驚いていたが、それを上回るはしゃぎ
っぷりに思わず笑ってしまう。

「えっとね、弓の軌跡からなんとなく、わかるのよ」

「すごいすごいすごい! ねね、じゃぁこんどあそこ! あそこだよ!」

「落ち着いて。ちゃんと狙うから、ね?」


「ほーら。ここはまかして、一旦やすんどき」

巨大な骸骨の悪魔、邪鬼ガシャドクロがその巨体を生かし使い魔を
足止めする。その後方には大怪我をした友人を抱きかかえる魔法少女たち。

「あ、ありがとうございます!」

「ええよ。しかし自分らえらいな。ちゃんとお礼言えて」

同じく巨大な象の使い魔を抑えびくともしないで、涼しげなことをいう。
それどころか押し返し、横転させるありさまだ。
そこに後詰の魔法少女たちが攻め込み、柔らかい腹部目がけて攻撃し使い魔を
葬る。



「全盛期はね、八艘行けたんですよ。八艘」

立烏帽子に武者鎧の美麗な武将、英雄ヨシツネが砕けた口調で話しかける。
複数の使い魔に攻められ逃げるのがやっと。そんな少女たちを庇うと
その前に立つ。その姿が消えたかと思うと、使い魔の間を縫って凄まじい
勢いで飛び回っていた。並みの使い魔や魔女ですらあっさり殲滅させて
しまうほどの威力と速度の斬撃。
その隙をついて魔法少女らが追撃し使い魔を殲滅する。

「はー、はーっ。さ、さすがに、貴女方の攻撃の方が……、ゆ、有効のようですね」

膝をつき、両手を地につけて突っ伏す。
短距離走して息が上がったかのようにヨシツネは呟く。

「も、もういっかい……。こ、今度こそ八艘跳びを……」

「わかりましたからもういいです! 顔色真っ青ですよ!」


ネミッサにはその個々に凄まじい戦闘能力を示す悪魔に見覚えがあった。
試しの場で『キョウジ』と戦い、その後面白がって戦いを挑んできた
あの不思議な悪魔召喚士の使い魔そのものだった。

「まっ、まさか!」

アラカナ回廊で拾ってきたというものを繰り出し、相棒とネミッサを
試したあの二人のサマナーが思い浮かぶ。だがあれから何年たっていると
いうのか。

そして何より、この危機的状態で、あの凄まじい使い手二人がここに
いること。そんな都合のいい、夢みたいなことがあり得るはずがない。

でも、そこにいた。自分の戦いにきてくれた。

『久しいな黒き魔女よ。戦艦斬りをやってのけたお主が、この程度の
相手に後れを取るのか?』

真っ黒な猫が、テレパシーでも使っていうのだろうか。猫の口調のまま
ネミッサに語りかける。ちょこんと、スレイプニルのお尻の上に乗っかって。

「う、うっさいなぁ……。ぐすっ……。なんで、アンタらサマナーは……」

(いつもいつもいつも……、苦しいときに都合よく助けに来てくれるの?)

『お主を助けに来たのではない。お主の志に賛同したのだよ。こやつらがな』

「「十四代目、葛葉……」」

「ライドウ」「雷堂」

「「……推して参る」」


ライドウたちの参戦により、再び戦線を押し返す。使い魔をいとも簡単に
切り裂く二人の実力に全員が唖然とし、そして士気を揚げる。

「ぎりぎりまで近づく。隙を」

「切り札を早速切ってやるよ」

二人の顔は非常に似通っている。唯一違うのは雷堂の顔に斜め傷が
入っており、そのため片目が開けづらくなっている点、だろう。
だが、二人の実力も霊力も、その頼もしさも全く同じだった。

「これが終わったら、ここにいる皆でカフェーとしゃれ込もうぜ」

「雷堂、戦いに集中しろ」

「……異世界というだけでなんでこんなに堅物になるかねぇ」

からかうように言いながらも、今まで魔法少女が苦戦していた使い魔を
易々と殲滅していく。

「ふふ……」

そばで一部始終を見ていたマミはとても誇らしい気分になっていた。
自分の最愛の人が、周囲に愛されていること。そしてその人のために
ここぞというときに集まり共に戦ってくれること。

「ねえ黒猫さん。私の恋人を助けに来てくれてありがとう」

『こっ、恋人!? むむむ……、み、未来はすすんでいるのだな……』

ゴウトの困り果てた返事に、マミは思わず笑ってしまった。

(私の恋人は、こんなにすごい子なんだ)

こころのなかでよろこびをほえる


ネミッサは涙をぬぐう。そして一度だけマミを強く抱きしめる。

「マミちゃん、ちょっと離れる。手筈通りお願いね」

「ええ……。気を付けて」

顔を見合わせ、軽く唇を重ねる。お互いに勇気を与えるために。
近くで見たゴウトも業斗も吃驚していた。
ネミッサはスレイプニルの背から降りる。予てから準備した新たな
切り札を切るためだ。
一方のマミはスレイプニルに指示を出す。猛スピードでネミッサから離れ
移動砲台になりながら魔法少女たちを援護する。ちょうど、夜の周囲を
まわりながら砲撃する形だ。

一方のネミッサはマミと反対方向に走り抜ける。二人のライドウたちと
挟撃するように移動する。ライドウたちもそれを察しているのか無言で
その動きに合わせる。

”おい! ネミッサが動いたぞ。全員距離を取れ!”

”皆、離れて! 怪我がひどい子は私が治す。分身に集まって!”

接近戦を繰り広げていたさやかと杏子がテレパシーで警告する。
退避行動が遅れる少女は分身した杏子が抱きかかえ退避させる。
また、分身したままさやかは、新しく身に着けた回復魔法を発動させる。
これは凄まじく魔力を喰うが、周囲の人員の致命傷以外を全快させるという
非常識な効果を発揮する魔法だ。
それを分身したまま、夜を包囲する少女たち全員に同時に影響させるのだ。

「たはは……、さすがに八人分のコレは……きつかったかなぁ」

軽くめまいをしたさやか全員を杏子の分身が抱きかかえ、距離を取った。


「新魔法のお披露目よ!」

「見せてもらおうか。お前の魔法の性能とやらを」

雷堂が楽しそうに呟く。ライドウはほとんど無表情で近くの使い魔を
斬り伏せた。

腰の管を右手で引き抜き、左手で右肩を掴むとカーテンでも開けるように
引き開ける。これがネミッサの魔法少女への変身ポーズだ。
見えないマントが翻り、その内側から魔法少女衣装のネミッサが
現れる。魔法少女の魔力で強化した召喚魔法を使うつもりだ。

だが、何かに感づいたのか夜が浮遊を始める。距離を取って攻撃から
逃れようというのだろうか。あるいは空中から砲撃を繰り返して
嘲笑おうというのか。

そこでマミが動く。捕縛部隊の魔法少女一人が出せる強度と長さのリボンを
無数に操り夜に巻きつける。砲撃をしつつ設置し、捕縛をさらに強化させる
つもりなのだ。
回転すら抑え込むほどきつく巻かれ浮上を抑えられた夜に、新たな召喚魔法が
襲い掛かる。

「マニトゥが残してくれた力よ! 見せてやるわっ!」

管を両手で引き抜く。そこから溢れ出てくるそれは大量の海水。そして
極低温の冷気。




___『Magic_大海嘯』___




『苦い水』『海水』という意味を持つ古代バビロニアの神霊ティアマト。
それは神霊アプスーとともに、天海市の地下に不完全ながら存在していた。
なぜ、日本のそこにバビロニアの神いたのかは不明だ。むしろファントムが
それを知って、その土地を選んだのかもしれない。どちらにせよその神の
力を飲み干し、マニトゥはその性質を変えた。
その性質が、ネミッサにも引き継がれていたのだ。

海水が夜を覆い、極低温の冷気の嵐がそれを凍らせる。リボンの結束が
結果的に強化された形だ。これで夜は上昇を封じられた。
だが、夜もそれで終わるわけではない。リボンと氷の間から使い魔と
影魔法少女を無数に生み出し、結束の破壊と周囲への攻撃を行う。

その隙を狙い、体勢を立て直した魔法少女とほむら、まどかが砲撃を
行う。開戦のときとほぼ同数の飛び道具が迫り、影魔法少女ごと夜を
直撃する。

「まだまだぁ!」

「向こうもやる気だな」

「こちらも、切り札を使わせてもらう!」

砲撃の隙に、二人のライドウは仲魔を収容していた。次に呼び出す
ものに霊力を使うためだ。
ネミッサは魔法に集中しほとんど忘我の域にいる。だから二人の方が
彼女に合わせなくてはならない。大人の余裕というものだろうか。

「連続召喚!」

___『Magic_戦の魔王』___


「「ダブル召喚」」

___『超力戦艦ヤソマガツ』___


魔法少女や仲魔たちからどよめきと歓声が上がる。ワルプルギスの夜に
匹敵する三体もの巨体が次々と乱立し、攻撃を仕掛けたからだ。

「ぼけっとすんな!!! ネミッサとおっさんを守れぇ!!!」

「上空の使い魔は弓に任せて、私たちは歩く使い魔を!!」

杏子、さやかの号令のもと接部隊は巨大な召喚魔法により無防備になる
三人の防衛にシフトする。それに合わせ、砲撃部隊は夜本体よりも
空中から襲い掛かる使い魔を迎撃する。

ほむら、まどかは背中合わせになり、各々が夜の放つ魔力弾を撃ち落とす。
単騎の遊撃部隊としてマミはスレイプニルの背に乗り夜の周囲を走り回る。

まどかの使い魔だったライラも、ハリティーも、キクリヒメも、カーマも
ピクシーにモー・ショボーだって戦っている。白虎は風の壁を打ち消す
シヴァの護衛として、もう三十を超す使い魔を屠っていた。

総力戦だった。

シュウの打撃。超力戦艦の砲撃。特に超力戦艦はリボンを爆弾に変換し
それを誘爆させるという戦法が夜に大打撃を与えていた。
だが、それでもなお、なおも夜は高笑いを崩さない。あれだけの大打撃を
受けても退かない。まさに伝説に名を残す巨大な魔女の面目躍如と言ったところだ。



そこに、場違いな声が響く。

「やぁ、みんな頑張ってるかい」

それが契約当初以外ほとんど聞くことのない、QBの声だと全員が気付いた。

「さすがにワルプルギスの夜も、これで倒せそうだね」

呑気な声ですらない。いつも通りの淡々とした言い回しである



「まぁ、あと何体同じくらい超弩級の魔女がいるかはっきりしないけどね。
同じことをすれば、きっと倒せるよ。頑張ってほしいな」



それは皆の士気を挫く、毒。


矢継ぎ早に投稿しました筆者です

舞台は百年後に移りました
そしてどうにも伝えづらかったのですが
この章を最後にこのスレを終わらせる予定です
どうぞ、最後までお付き合いください

それでは良い夜を

乙。
因果地平まで付き合いますぜw

乙でした。

ゆけ超力超神!から超力陽弾コンボか……。
耐性の無いリボンからならてきめんに効くだろうな……。

こんばんは、筆者です

相も変わらず日曜の夜に更新します

>>410
ありがとうございます。そういう方にこそ
最後まで楽しんでもらいとうございます

>>411
ワルプルギスそのものが爆弾になるのはナシだったのですが
思いつきとはいえ、いい連携技ができてうれしい誤算でした



それでは今夜もお付き合いください


【たましいのあんそくちへ】その五

その毒で全体の魔法少女が折れたわけではない。むしろほとんどは
それをある種当然と思っていた。何しろQBは真実すべてを言わない。
これまでの経験上わかりきったことだからだ。
だから、その毒にまともに反応し動揺したのは一人だけ。

ネミッサ。

彼女は魔法少女の力はあるが、そのものではない。そのため契約自体の
経験がなくQBの毒に慣れていない。付き合いがないわけではないが
完全に事務的な流れでしかない。だからそれをもろに受け止めてしまった。

その証拠に、周囲から見える巨体のティアマトとシュウが姿を消す。
彼らを支える魔力と集中力が途切れたためだ。極低温の嵐が無くなり
リボンの氷が解ける。リボンの伸縮性が辛うじて切断を防いでいるが
上昇してしまうのは目に見えていた。

その様子に顔色を変えたのはマミだ。一瞬QBを睨みつけると無言で
スレイプニルに指示を出した。それを受けて嘶き走り出す。
マミの指示通り、夜の使い魔の真っただ中に向けて。

ネミッサはその事実を知らなかったわけではない。むしろQBから直に
聞いていた。だがそれを決戦前に公表することを控えた。それは
組織的な判断でもあったし、ネミッサも同意したことでもあった。
皆をだましていた。その一事をもって、彼女は動揺してしまった。

だが、だからマミが言わなくてはならない。あの時の様に。

(もう! いつも何でもかんでも一人で抱え込んで!)

マミは怒っていた。


その思いに呼応したのは伝説の魔法少女たちだ。彼女らはQBの奸計に
怒りを覚えていた。
マミは真っ直ぐ躊躇いなくネミッサへの最短距離を走っている。そこは
夜の真正面であるし、使い魔たちの密集している場所だ。だが彼女に
とってそんなものは問題ではない。一分一秒でも早くネミッサの元に
馳せ参じる。それだけがマミの望みだった。

「人の恋路を邪魔する人は!」

珍しく怒っているまどかが弓を引き絞る。それを放物線を描くように
マミ目がけて放つ。中空で分解し無数の矢の雨になると、マミには
一切当たらずに、周囲の使い魔だけを殲滅する。

「弓に射られて!」

次いでほむらが矢を放つ。まどかのそれより貫通性の高い矢が、
生き残った使い魔を貫き殲滅する。一矢で二、三体を倒しマミの
道を作る。ほむらも猛っていた。

「剣に切られて!」

さやかも参戦し、背後から襲い掛かろうとする使い魔を切り倒す。
高速で移動する蒼と白の衣装が翻り、瞬く間にマミの背中を守り切った。
さらに迫ろうとする使い魔も射出した剣先に貫かれて近づけない。

「槍に刺されて!」

まどかやほむらの矢の範囲外にいる使い魔を薙ぎ切る杏子。かつて
譲り受けたゲイボルクに自らの槍を乗せ投げつける。
その紅の槍は三十本の流星となり使い魔に降り注ぐ。


『馬に蹴られて!』

それでもなお迫る使い魔にスレイプニルが強烈な体当たりと蹴りを
繰り出す。また正面に立ちふさがる相手に対しては轟くような咆哮を
揚げ、衝撃波と共に吹き飛ばす。

『「「「「地獄に、おっちろ!」」」」』

まどかもノリノリで物騒なことを叫ぶ。マミはそれを聞こえていつつも
聞いていなかった。ただただ単身敵中突破を敢行しそれをやり遂げたのだ。

だがそれでも夜の上昇には間に合わない。リボンが悲鳴を上げて
千切れかける。止む無くライドウたちはヤソマガツを夜に取りつかせる。
巨体がきしみ悲鳴を上げる。
その船体はネミッサたちに撃破された時の傷が残っていた。応急処置のみ
施しこの場に来ていたためだ。

最後に立ちふさがる使い魔をマスケットで一蹴すると、その銃を投げ捨て
曲芸の様にネミッサを拾い上げる。呆然自失としていた彼女は易々と
マミに拾い上げられ、鞍の前に引き上げられた。

「何をぼーっとしてるの!」

「あ、マ、マミ、ちゃん?」

「どうして貴女はいつもいつも! ……自分で抱え込むの!」

マミの説教が響く。
スレイプニルは二人を攻撃から守るため縦横無尽に戦場を走り回る。
それが自分にできる最良の行動と信じて。
それに振り回されるゴウトはしっぽにしがみつきぶら下がっていた。


「あの時も言ったでしょう!
『一人で悩まないで。私も悩みたい。ネミッサと一緒に』って」

強烈な平手打ちを喰らったようにネミッサは目を見張る。その眼前には
目に涙を浮かべ、歯を食いしばっている恋人の顔があった。

「なんで頼ってくれないの! 支えさせて! 守らせて! 戦わせて!」

二度三度頬を叩かれているかのようだった。その一言ごとに顔には生気が
戻ってくる。目に力が戻った時、ネミッサはマミに抱き着いた。

「……ありがとう。また一人で抱え込むところだった」

「もう、もうへいきね? 大丈夫よね」

ネミッサが折れかけたのは、やはりマミがそばにいないからだろう。
ライドウたちの登場で二手に分かれる判断をしたのが災いした形だ。
戦意を取り戻したことに気付いたのだろう悍馬は一言大きく嘶くと、
夜目がけて突進する。

「ううん、だめ……。そばにいて?」

「いいよ。……甘えんぼさん」

『んん! お、お主たち。睦言はもういいであろう? ほれ、戦うぞ』

「出刃亀すんなっ、変態黒猫!」

『む、むぅぅ……』

軽口と罵声が戻ったことはいいことなのだろうが、ゴウトは鼻白んだ。


駄々漏れのマミの言葉が念話となり、周囲に伝わる。

”ほら、やっぱり室長とマミさんデキてる”

”デキてないほうに誰も賭けてないじゃん”

”えー、でも『ほむ×ネミ』っていう子いたよー?”

”『マミ×ネミ』か『ネミ×マミ』かだけオッズあっただけだし”

”うるせえ!!! てめえら集中しろ!!! 死ぬぞ!!!”

杏子の罵声念話が響き渡る。この激戦でどうやってこんな話をしているのか
甚だ疑問だが、それも一喝で吹き飛ばす。

(ったく……緊張感吹っ飛ばしやがって……、あんのバカたちは)

と言いつつも、杏子も嬉しそうに微笑んだ。



「雷堂。ここは任せる。一人で維持できるか」

「何言ってる。そのために急いできたんだ。とっとといけ」

ライドウは頷くとヤソマガツを預け一人駆け出す。二人で支えていた
それを雷堂一人で支えるつもりなのだ。それには先ほどの倍の出力を
必要とする。
封魔管から一人離れた途端、凄まじい重圧が雷堂にのしかかる。だが
これを支えきること。それが歴史上最強の名前を冠するに相応しいと
彼は思っていた。冷や汗を出しながらも不敵な笑みを浮かべた。

一方のライドウはマミの通った後を駆け抜ける。
再び雲霞のごとくあふれ出す使い魔。それらを「レギンの剣」
「コルトライトニング」を以て次々と打ち倒すも、押しに押される
物量に屈しつつあった。

だが彼は仲魔を出すわけにはいかなかった。これから召喚する悪魔を
維持するには凄まじい霊力を必要とするからだ。だからここは己の体で
のりきらねばならない。
かすり傷程度の攻撃を受けつつも己が肉体と技を信じ、まっしぐらに
とある魔法少女を目指す。真の切り札を携えて。

彼女の祈りと共に。


雷堂を救ったのはさやかの分身たちだ。魔力を消費し決して
万全の状態ではないが、無防備な雷堂を庇うには十分だった。
またその周囲を後詰の部隊が守る。さやか一人に負担を掛けさせる
必要はなくなっていた。

「えっと、サマナーさん? なんであのロボ、壊れてんのさ!」

雷堂はさやかを一瞥するとめんどくさそうに応じる。応じるだけまだ
マシかもしれない。それだけ彼の精神は摩耗しているのだ。

「あれを直すのには時間がかかるんだよ。
その間にこっちの霊力が全盛期を過ぎちまう。
……そんなんじゃ、とてもじゃないが助けにならないからな」

「……そういうもんなの?」

脂汗を見せまいとそっぽを向きながら話したからか、そもそも
さやかも切羽詰まっているせいか、使い魔に向かいそれきり話が
終わってしまう。
彼は彼で夜にしがみつくヤソマガツを操るので精いっぱいだ。

「先輩の意地ってのを見せてやるよ」

歯を食いしばり、夜を睨みつけながら霊力を絞り出す。

「あっちが限界突破してるんだ。こっちもやらないとなぁ」

連続召喚をやってのけたネミッサを睨み、不敵に笑う。


杏子の分身が一人シヴァに近寄る。シヴァの周囲に使い魔が集まり、
状況が悪化していたためだ。白虎だけでは支えきれないほどの数が
群がる。そこに巨大な鉄鎖鞭を振りかざした杏子が増援に現れる。
分身であっても戦力的には申し分ない。時間はかかったが白虎と共に
徐々に使い魔の数を減らしていった。

『おお、久しいな花嫁よ。元気そうだな』

「ちげーだろ!」

軽口をいうと、あの槍を一閃。杏子の周囲の使い魔を殲滅した。

「あのな! 自分でできるならやれよ!」

あのときの冗談が身に染みて嫌なのか、露骨に顔を歪めている。だが
シヴァの戦力が必要とわかって渋々援軍に来たのだった。

『さすがにこれ以上は無理だ。何しろ奴の奥の手が残ってる。
それを中和せねばならないからな』

最後の魔力を伴う巨大竜巻のことだ。あのときは結界外であったが、
今回結界の中でそれをやった場合のの威力や範囲が予測できない。
ゆえに、シヴァはそれを中和させるためここで見守っていた。
もちろん前もって打ち合わせたとおりだが。

「ったく、最高神さまがぼーっと見てるだけとはなぁ」

『ならば再びこれを託そうか。本人に届けよ』

「いっ、いらねーよ! また嫁にされたらかなわねー!」

『そんなことはせぬよ。持っていくがいい。
それで撃ち出したら……』

杏子がハッとする。そして自分がスカアハから譲り受けたそれを
思いだしまじまじと最高神を見つめる。

『どれだけの威力か……、試してみたいと思わんかね』

シヴァはニヤリと笑った。


まどかの隣にライドウが到着する直前。一際巨大な使い魔が行く手を遮る。
その使い魔がジャグリングのクラブを振りかぶり叩きつけた。
だがそれは空を切り、ライドウは背後に回っていた。その隣にはほむら。
彼女が時間を止め彼を誘導したのだ。その彼の傷だらけの体を見て
助け出した。

「いったい何を!」

「彼女に会いたい」

それだけ短くいうと、空中の使い魔を迎撃しているまどかを真っ直ぐ
見つめる。大概ライドウは無口だが、今はいつにもまして寡黙だった。
それが疲弊しているからだとほむらは気付かなかった。

「まどかのこと?」

「ああ、会わせてほしい」

本来なら見ず知らずの男性をまどかに近づけるなど論外だ。
だがネミッサを知るサマナーが援軍としてここにいる以上
何らかの意味があるはずだ。

「会わせたいんだ」

正直に言えば、彼の寡黙さは口下手によるものが大きい。彼の生まれ
育ちを考えればおかしくはない。だが同じ学友から『お前誰だっけ』
と言われるくらい印象がないのは、探偵稼業に精を出し過ぎて
出席日数が足りないばかりが理由ではないだろう。
要は彼が何を言いたいか、ほむらにはさっぱりわからないということだ。
とはいえ戦場で押し問答などやってる場合ではない。

「はぁ、わかったわ。行きなさい」

魯鈍な使い魔が振り返るころには、そこに弓をつがえるほむらからの
強烈な一矢が飛び、一撃で粉砕した。


強力な魔力弾や炎の塊を避けつつ、馬の鞍にしがみつく二人。もはや
二人が離れることなど論外だった。

自分の計略が失敗したことを悟ったQBはこともなげに見つめている。
ネミッサが折れ、周囲の魔法少女からの信頼が崩れればこの戦線は
あっという間に崩れる。それが彼の目測だった。だがそれもせいぜい
嫌がらせ程度にしかならなかった。

”テメー、よくもやってくれやがった”

”僕はエールのつもりだったんだけどね”

”エールだけでもねーだろ! 今度こそ百回は殺す!”

”けれど、今はワルプルギスの夜に集中した方がいいんじゃないかい?”

しれっとした念話に苛立った杏子はそのまま回線を閉じる。
先ほどシヴァと接触した一体から受け取ったそれを取り扱うのが
精一杯だったからだ。
砕けんばかりにそれを握り締め、腰から一つの武器を引き抜く。それは
冗談で受け取ったとばかり思っていたゲイボルクだ。

洋の東西を混ぜ合わせた合体技……とでもいえばいいだろうか。

超重量の槍をそれにあてがい、槍投げの姿勢で構える。そして
裂帛の気合いと共に全力で投擲した。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


マミとネミッサの合体魔法。それを馬上から一発ずつ作り撃ちこむ。
大威力の大技を撃ちこむより、万魔の砲撃を小刻みに目標を変え撃ちこむ
ほうが効果的と判断したからだ。大きな使い魔や、魔力の塊を狙撃し
他の仲間や仲魔を守ることにシフトした。

『ほう、さすがに機を見るに敏だな』

ようやくスレイプニルの尾からネミッサの背中にたどり着いたゴウトが
呼吸を荒くして呟く。だが最大火力のマミが本体を狙えない状態が
好ましいとはあまり言えないのではないだろうか。

「いや、これじゃだめよ。私たちが攻撃の要なんだもの」

マミは内心臍を噛んだ。だがこれでないと魔法少女たちを守りきれない。

今回の作戦の最大の目的は、全員の生存である。
魔女化せず、死亡者を出さずワルプルギスを殲滅する。そのために
伝説の魔法少女たちが率先し大技を繰り出していたのだ。
それが戦いを早く終わらせられると信じて。
だが現実はそうではなかったため、今は防衛を重視した戦い方にシフト
させたのだ。

だが、それでは敵には勝てない。皆を守ろうとするあまり防衛的な
戦いになっていた。それは決して悪いことばかりではないが、今の
目的にはそぐわない。

ネミッサは撤退も意識し出していた。


だが、そんなネミッサの思惑などどこ吹く風でいたのはライドウその人だ。
まどかとの間に立つ使い魔を撃破し、隣に並んで立つ。

「初めまして、サマナーさん。無事に会えましたか?」

「ああ、ここにいる」

引っ込み思案と無口な二人。だがライドウの前ではまどかですら饒舌に
ならざるを得ない。まどかもいい加減喋るのは苦手だがここはそうは
言っていられない。

「すぐ会えますか?」

「ああ、任せろ」

その無口な男性は、それだけはきっぱりはっきりと言い切った。それは
清々しく、頼もしく、雄々しかった。

封魔管を一つ取り出すと、それに意識を集中させる。溜めた息を吐き
霊力を管に込める。
キリキリと勝手に回転し管のネジが開く。そこから溢れだす力が形を
取っていく。
柔らかな光。穏やかな救済の力。
超力戦艦に匹敵する霊力を必要とする悪魔……神を召喚する。



純白に優しいピンク色をあしらった服。スカートの内側は宇宙の様に
星空が瞬く。長い髪は今のまどかと同じピンク色。手には花が飾られた
長弓が握られている。

「久しぶりだね、『まどか』ちゃん」

「うん……。あなたから預かった因果の力。
レイさんから貰ったスワチカの力……」

円環の理の神、『まどか』その人だった。

「まどかちゃんに託しに来たよ」

筆者です
色々と詰め込みました

ちょっと詰め込み過ぎてしまい、あと2~3回の投稿が必要であります

もう、ね。先は皆さん見えてるんでしょうけれど
どうぞ、蛇足にお付き合いください

乙でした。

流石に牛黄丹とかソーマでも簡単には直らないのかヤソマガツ。


こんばんは、筆者です。

今宵は私の体調不良で一本しか書けませんでした
×ペルソナ2のほうはお休みいたします
申し訳ありません……


>>425
双方のバランスを考えた結果ですね
それに戦ってすぐ、のほうがライドウたちの真面目さが
伝わるかな、と


それでは、お届けいたします


乱戦は続く。

マミと同じ馬上にいるネミッサは、再度召喚魔法を準備する。超力戦艦
とはいえ、一体で夜を支え続けることが無理だと判断したためだ。
なぜならば、その船体が著しく損壊していることに気付いたから。
そんなことに気付かないほど、先ほどは動転していたのだろう。

『ネミッサ。ヤソマガツはそうはもたん。シュウを再度呼び出せ』

「いわれ……なくたって!」

ライドウたちが持つ封魔管に似たそれを引き抜く。かつてマダム銀子が
扱っていたそれに似て、さらに高性能だった。かつてライドウたちは
ビルドアップしまくった仲魔を二体同時召喚していた。プログラム
に依らない召喚方法の中では同時召喚はかなりの難易度のはずだ。
それをネミッサは再び試みる。ためらうことなく管を二本取り出すと
馬上でかざす。スレイプニルから零れ落ち置き去りにされる形で二体の
巨体が佇立する。
幸い、移動はスレイプニルが担う。そしてネミッサの身を守るのはマミの役目。

(この子のからだも、こころも、たましいも、私がすべて守る!)

「もう一度力を貸して! シュウ! ティアマト!」


___『Magic_大海嘯』___

___『Magic_戦の魔王』___



ワルプルギスの夜の笑い声を掻き消さんばかりの咆哮が結界内を満たす。


三叉戟を槍に見立て水平に夜に投げつける。ゲイボルクより放たれた
それは三十にも及ぶ流星群となり真っ直ぐ夜に突き刺さる。夜の外装を
まるで薄い紙のごとく破り貫く。槍が途中で止まった歯車にも、柄の半ば
まで突き刺さる。さらにその衝撃で夜が大きく仰け反った。

「さすが……。威力凄い……」

何が恐ろしいかと言えば、貫いた音があまりにも軽かったことだ。
また歯車にも、柔らかなバターを斬るかのように全く抵抗なく突き刺さった。
その凄まじい威力に周囲の魔法少女からは歓声が上がる。

ちなみに、この武器はトリシューラという。弓のピナーカと混同される
ことがある。それはシヴァの異名が『ピナーカパーニ(ピナーカを持つ者)』
というところから来ているのだろう。シヴァを描く際トリシューラは弓より
描きやすいためか良く描かれる。
それが異名と相まって混同したものではないかと、筆者は考える。

そしてその弓は、ライラが運んでいた。非常に重く、魔力も桁違いの
それは、彼女をもってしても困難なものだった。だが彼女もまた
それが戦いの役に立つと信じ疑わない。
かつて彼女は召喚士の命令とはいえ、ネミッサをだまし心を傷つけた。
当の本人は気にはしていないものの、やはりライラ自身が負い目を
感じてしまっている。

何より、ライラは魔法少女たちが好きだった。
魂を入れ物に移し替えてもなお、人として優しく真っ直ぐ生きる
彼女たちが。朗らかに笑い、人のために戦おうとする少女たちが。

だから彼女はこの戦いに率先して参加した。まどかとの再契約も
全く拒まなかったほどだった。


本体たるさやかの武器は自前のサーベルではない。両腰に落とし差しに
しているレーヴァティンとランスロットの剣だ。両手でも困難な長さと
重量のそれを軽々振り回し、使い魔を殲滅する。素早い動きのため
中空に取り残される炎の剣の残り火が、周囲を照らす。
その姿は松明を掲げる自由の女神にも似て、先導する女神のごとく
さやかを彩った。

「さやかさんに続けぇ! サマナーさんに使い魔を近寄らせるな!」

ユニットの隊長が叫び使い魔を押し返す。一筋縄ではいかない物量は
決して油断できるものではない。だがそれでもなお後詰の部隊たちは
ヤソマガツを操るサマナーのため、防衛ラインを崩さない。

「おい、お嬢ちゃん。これが終わったらカフェーにでもいかないか」

「……オゴってくれるならいいですよ」

「コラコラ! ナンパなんかすんなぁ! この子らはあたしの嫁だっ!」

さやかが軽口と共に現れ、空中ブランコの使い魔を真っ二つに斬る。
地上に意識を回すあまり頭上が手薄になってしまったのだ。

「あんまり無駄話してると、こわーい先輩に怒鳴られるよ!」

”聞こえているわよ美樹さやか!!!”

間髪入れずほむらの念話が響き、一体の魔法少女の脳内に衝撃を与える。
耳鳴りにも似た残響が、さやかの脳内にも残った。
だが、それが皆の緊張を少しほぐしたのだろう、肩の力が抜けた部隊は
冷静に戦闘に参加した。


そのほむらの元に、ライラが急ぐ。
ジャグラーの使い魔が投げる『ポイ』や『メテオ』をかわし、
高足の使い魔の後頭部を蹴り飛ばす。使い魔一体一体が生半可な悪魔より
強い。倒すことは難しくないが、そんな時間などライラにはない。
シヴァがその武器を魔法少女に託した意味は非常に大きい。信頼し、
自らの攻撃力を分けた意味。そしてそれをライラに預けた意味。

曲撃ちの使い魔が放つ銃弾がライラの足に当たる。メクラ撃ちであるため
致命傷には程遠いが、前方が弾幕になって飛行を阻害する。

(これを必ず届ける! あの気持ちのいい子たちのために!)

まどかはライラたち悪魔を友達として受け入れていた。本来ならば契約と
いう利害関係でしかないはずなのに、だ。それはまどかの無知からくる
優しさではあるだろう。悪魔との付き合いはそういうものではないことを
ライラは知っていたし、これまでもそうだった。
人間との間に友情などない。そんなものは悪魔にはあり得ない。

だから、だからこそ、感動してしまう。ありえないものをもたらす、
まどかの優しさに。

命令されたことではない。シヴァにしても弓をほむらに託すこともまた
命令ではない。にもかかわらず彼らはそれが主のためと信じ行動している。

大砲で撃ち出す使い魔に直撃されたライラ。しがみつかれもがく中、
天使は落下する。それを拾い上げたのはカーマだ。彼もまたまどかの心に
心酔し、命令以上の行動を行っていた。

「ヒドイけがナノネ」

「これを、ほむら様に!」

「……一緒に届けるノネ。じゃないとシヴァに焼かれるノネ」


シュウはその巨体でワルプルギスの夜にしがみつく。手に持った武器を
夜や大地に突き刺し上昇を阻害する。ヤソマガツとの巨体ですら夜は
徐々に持ち上げつつあった。そのシュウごと、ヤソマガツごと
ティアマトは攻撃を仕掛ける。
そうはさせまいと夜が魔力弾を放つ。ティアマトに直撃し大きく
仰け反らせる。また更に無数の使い魔と影魔法少女を生み出し、召喚主
たるネミッサを攻撃する。
マミのマスケットがそれを冷静に狙撃し、スレイプニルは使い魔に
囲まれぬよう高速移動する。

「ティアマト! 力を出しなさい!」

しがみつく巨体を避けるように氷塊を生み出し、夜目がけて放つ。直撃
した氷はそのまま付着し動きを阻害する。
頭部や腕が凍りつくが、夜には意味がないらしい。すでに反転し下部に
あった歯車が動きだす。耳障りな音を立てて氷を破壊し、しがみつく
巨大な悪魔二体の胴を削り出す。
それと同時に魔力の嵐を生み出した。魔力と瓦礫と氷の嵐。シュウを
ヤソマガツを巻き込み引きはがさんと猛る。自ら生み出した使い魔すら
巻き込む。夜にとって、使い魔など使い捨て以下なのだろう。

周囲の気圧がさがったため魔法少女たちは耳鳴りを覚えるほどの嵐。

『風を操る力で負けるわけにはいかぬ。鹿目召喚士殿に勝利を!』

『……イチドイッテミタカッタ?』

『……聞かぬふりをするのも気遣いぞ?』

『アトデショウカンシニツタエテオク』

シヴァは苦笑いだが、拒まなかった。


「彼女はね。倒せないの」

『まどか』は言う。まどかに、そしてライドウに語りかける。ライドウは
表情を変えなかったが、まどかは目に見えて顔色を変えた。
『まどか』は詳しい理屈を言わなかったが、それが正しいとまどかは
はっきりと納得してしまった。

「そっ、そんな! それじゃみんなはなんのために!?」

悲鳴の様に叫ぶ声は、幸い誰の耳にも届いてないようだ。ソウルジェムが
かつてのようであったなら、濁り切ってしまうような告白だ。

「……だからといって、諦めるわけにはいかない」

それを救ったのはライドウ。淡々と、だが何の躊躇いもなく決意する。

「それを聞いて諦めきれるのか? ネミッサは何を夢見て戦いを挑んだ?
我々もそうだ。君たちもそうじゃなかったのか?」

「うん、そう。だからって諦めない。ほむらちゃんだって諦めなかったんだよ。
私たちだって、諦めない」

『止めないだけをする』、『絶望に逃げない』
ほむらがやってのけ、ネミッサが吠えた言葉だ。まどかもそれを思いだし、
表情を引き締めた。

「だから、救うの。……大丈夫?」

「うん、ごめんなさい! 大丈夫……。『まどか』ちゃん……」

まどかは『まどか』に手を伸ばし、触れ合う。

「「もう一度、一つになって……行こう……。
ネミッサちゃんの夢に向かって」」

それは百年前の約束。再び出会い、共にネミッサを助けようと誓い合った
……約束。

「「だって、ネミッサちゃんが……だいすきだから」」


満身創痍のライラとそれを担ぐカーマがほむらの元にたどり着く。

「ほむら様! シヴァの弓を、使ってください!」

息も絶え絶えに叫ぶライラにほむらは驚き近寄る。ライラが格別弱い
わけではないが、使い魔の群れを突破するほどとは言えなかった。
そのような無茶をするライラを本気で心配していた。
ほむらとてシヴァの武器の凄まじさは肌で知っている。今も杏子の
放った攻撃を目の当たりにしたばかりだ。

ライラから差し出されたその弓は重く、魔力の高さも感じられる。
かつて魔法少女のままのほむらであれば扱いきれないほどの力だ。
その力があればネミッサの手助けになる。ほむらもそう考えていた。
だがその強弓を受け取ったほむらは、しばし考える。
そして、意を決して、はっきりという。

「……いいえ、運んでくれて嬉しいけれど……。
これを使うべきなのは私ではないわ」

ライラの肩越しに視るその先に、まどかと『まどか』がいた。
二人が手を取り合い、再び憑依しようとする姿が見えた。

「きっと、これがまどかの力になるわ。私の役目はそれを……」

ぐっと弓を握り締める。

「安全に、正確に撃たせることだと思うの」

そしてライラとカーマに向き合い手を取る。

「来て頂戴。あなたたちにも見届けてもらうわ」


超力戦艦が轟音と共に崩れ落ちる。胴に当たる部分を削られて立つことも
困難になったためだ。万全の状態であれば問題ない損傷であったろうが、
連戦のため脆くなっていたのが災いした。
一方のシュウも引きはがされつつあった。腕力に物を言わせ、ネミッサの
魔力でブーストした力でも魔力の嵐には抗しきれなかった。歯車に血痕を
残しながらこちらも崩れ落ちる。

「……ごめん、シュウ」

戦闘不能になった巨体は管に吸い込まれる。これでしばらくは戦えない。

そして、夜は浮上をする。上空に逃げられては打つ手がない。ティアマトも
氷塊で撃墜を試みるが、竜巻に飲まれ氷塊が砕け散ってしまう。
嵐の合間から放たれた魔力の砲撃がティアマトを貫いたのが致命的だったのか
彼女もまた力尽き、管に戻ってしまった。

「アハハハハハハハハハハ、アハ、アハハハハハハハハハハハ……」

『ええい、勝利の雄叫びのつもりか! 忌々しい』

ゴウトの苦々しい言葉。飛び道具は竜巻に吹き流され、魔力も途中の
瓦礫に邪魔される。接近戦は風で不可能。飛び上がろうにも
あの竜巻では押し返されるのがオチだ。目に飛び込むなど論外だ。
そもそも結界を天地に貫く高さでは、上空から回り込むことすら
できない。
五人で戦った時は一瞬だけだった、それを風の壁と合わせたのだろう。
竜巻で攻防一体の状態を作り出し上空から魔法少女たちに迫る。


「『まどか』はあなたが連れてきたのね。サマナーさん?」

時間停止を駆使しほむらは、まどかたちとライドウの元へ。周囲はまだ
残った使い魔と竜巻が暴れ続けている。そのためそこから少し距離を取る。
ライドウは無言で頷く。ただでさえ無口なうえに、霊力を使い続けているためだ。

「ほむらちゃん、こんにちは。やっぱり悪魔になったんだね」

「え? ええ。あのときの『まどか』ね? ワルプルギスを倒しに?」

ほむらの当然の問いに、まどかたちは首を振る。そして微笑む。

「「みんなを救いに」」

違いが判らずやや呆然とするほむらに、二人は続ける。

「「ワルプルギスの夜も救うの」」

「あの子たちの魂も円環の理に、つれていかなきゃいけないの」

『まどか』の説明にますます困惑するほむら。だが、何をするにしても
ほむらがまどかの手伝いを拒むわけがない。盲信とも取れるが、それが
ネミッサの願いに則したものであると漠然と理解したからだ。

「それなら、これ、役に立つかしら?」

シヴァの弓を差し出す。最高神の力を秘めたその強弓には、ライラや
カーマの祈りも込められている。ほむらはそれも力になると信じて
いるのだ。

「うん! 役に立つよ!
それと、ほむらちゃんの力も必要なの! 力を貸して!」

「ええ、勿論よ」

間髪入れずほむらは言い切った。


まどかたちが嬉しそうに頷き手を取り合う。そして『まどか』が光と
なってまどかに吸い込まれる。あのときみた、憑依の再現だ。光が収まる
ころには、まどかの衣装が『まどか』に変わっていた。唯一違うところは
リボンを解いた髪はまどかのままの長さだということだ。

「ハイパーまどか、だよっ」

「ふふっ、可愛い名前ね。ま……ハイパーまどか?」

「ぶー。ほむらちゃん今笑ってなかった?」

その屈託のないネーミングセンスに皆が笑うものの、秘められた力はあの夜に
匹敵するほどだった。分霊としての『まどか』とスワチカの力によって、
本霊には及ばなくとも、ここの誰を上回る魔力の魔法少女となった。
ほむらから受け取った弓を携える。この弓にしろ『まどか』の力にしろ、
まどかが人間のままでは到底受け止められない力だ。それはまどかが
英雄カナメマドカになったがゆえに扱える、途方もない力だった。

「私の力で、魔女を浄化するの」

「あの竜巻はどうする? 貫通できるとは思えないが」

それまで成り行きを見守っていたライドウが呟く。『まどか』を支える
必要がなくなったため、霊的な疲労はないようだった。
ほむらがまどかに触れて、時間を止めて撃つことは不可能ではない。だが
竜巻そのものは消し去ることはできない。竜巻の目に飛び込むにしても
上空天高く風の壁は続いている。飛び越せるとは思えない。

「竜巻を貫通して本体を攻撃する力があればいいノネ」

近くに来ていたカーマが言う。共にあるオウムの背には傷ついたライラが
保護されている。

「できるの!?」

「準備ができたら念話をよこすノネ。そうしたらあの竜巻なんか、ぶっ壊してやるノネ!」

カーマはそういって息巻いていた。

それが悲壮な決意だと、誰にも悟られずに。


筆者です


友人にはあっさり看破されましたが
この作品、特にこの章は自分の中で、
ソウルハッカーズの続編的位置づけにあります

そして、ネミッサのとある謎もこの章でバラします
そこが続編たる所以なのですが……どうぞ、しばらくお付き合いください


いつもコメントくださる人、感謝してますよ。アレルイヤ~

乙でした。

そろそろ終わりが近くなってきた感じがして、楽しみなような、終わるのが惜しいような……。

お体にお気をつけて。

乙。待ってますよー

筆者です。先週は済みませんでした
日曜日ではありませんが、更新いたします

あと謝りついでですが>>427にサブタイ
『【たましいのあんそくちへ】 その6』
が抜けてましたね。具合が悪いとただでさえ多い誤字脱字が大変なことに……

>>438 >>439
もうすぐ、ネミッサの旅が終わります。そこまでどうぞ見届けてください
きっと最初から追いかけてくださった方、だと思いますから……


【たましいのあんそくちへ】 その7

ほむらとまどかは頷きあうと準備をする。ピナーカをつがえたまどかに
ほむらが背中からくっつき、その両手に手を添える。その背中の温かさに
まどかは安心感と勇気をもらう。
引き絞ると、何もない空間から矢が現れる。そこに込められた魔力は
今までの比ではない。淡い桜色にも金色にも輝くその力は、救済の力が
込められていた。

”みんな、聞こえる? これから……”

”わかってるってーの。時間稼げばいいんだろ。『まどか』”

遠目に状況を察した杏子が訳知り顔でいう。いや、遠目どころではない。
さやかも、マミも、ネミッサですら状況を理解していた。それは、信頼の証。

”ありがとう……。準備が整うまでお願いします!”

「行かせねえよ! 妹を守るのが、姉の役目なんだからな!」

杏子は自らの槍を巨大化させると、ゲイボルクに乗せる。その重量のまま
強引に投擲する。その質量と大きさであれば竜巻の風に流されないと
思ったからだ。だが、その大きさが災いし、巻き込んだ瓦礫に防がれ
瓦礫を増やした。

「こっちだよ! 私が相手だっっ!」

さらばとさやかが分身と共に、無数の剣を生み出し射出する。千は優に
超える本数の剣林だ。だがそれは逆に軽すぎ、風に飲まれてしまう。

「まどかさんの!」「邪魔はさせないってーの!」

マミとネミッサの合体魔法も撃ちこまれた。だがそれもまた瓦礫に阻まれ
貫通するには至らなかった。辛うじて一、二発、貫通したものもあったが
夜本体に大打撃を与えるほどではなかった。

だが、それでも彼女らは諦めない。ワルプルギスの注意を、まどかから
逸らすために全力を尽くした。


一方で、カーマは竜巻とシヴァの中間あたりに移動して浮遊していた。
そこで矢をつがえて合図を待つ。その矢の先は夜ではなく、シヴァ。

神話では、シヴァは瞑想の邪魔をカーマにされた。それに怒ったシヴァは
怒りのあまり額の第三眼からパスパタと呼ばれる炎(或いは投げ槍)を
撃ち出し、カーマを焼き尽くしたとされている。
それを再現しようというのだ。
カーマを一瞬で蒸発させるようなシヴァの怒りの一撃は、竜巻どころか
夜を粉砕するに相応しい威力であろうことは想像に難くない。
それを以て中空に浮かび上がる夜を撃墜しようとしていた。

それはつまりカーマの死を意味していた。それはカーマ自身覚悟の上だ。

(あんなに皆が鹿目召喚士のためにやってるのに。ワシだけなにもしないのはのう)

カーマは魔王マーラとも同一視される存在だった。今その本性を晒し
戦うことは決して難しくないし、戦力として申し分ない……どころか
シヴァに匹敵する力を以て戦いを有利に運ぶだろう。
だが、その禍々しい男性器にも似た姿を少女たちの前で晒すことを彼は
拒んだ。ゆえに、神話の再現を以て鹿目まどかに使えようとしたのだ。

(さぁ、合図をよこすノネ。それが最後の奉公になるノネ)

彼は滅ぶ気だった。少なくともそれを良しとしたのだ。
二度と会えないわけではない。悪魔が滅んだところで本霊には何の痛痒もない
だが、彼女に仕えていた記憶は、絆は消えてしまう。
その絆を対価に、彼女に奉仕しようというのだ、この神は。


それをこの結界内で察したのは、ライドウと雷堂、そしてゴウトと業斗。
異常なことだと驚きを以て理解した。

『悪魔が、命令でもないのに捨て身の献身をする……だと?』

彼には信じられなかった。ゴウトも業斗も元は刑に服しているサマナー
である。だから悪魔にも詳しい。その知識が、カーマの行動を奇異と
理解した。
そしてその重みも理解し、心の底から戦慄した。

『それほどの人物なのか! あの少女は!』

契約に縛られるのみのはずの悪魔が、契約に寄らず献身する。
それが信じられない。
だが、まどかはそれを信じてしまう。人見知りではあるが一度受け入れて
しまえばそれを疑うことはない。信じるのではなく『疑わない』のだ。
無邪気さと言ってしまえばそれまでだが、それが悪魔を心底感動させて
しまうのも確かだ。
契約にのみ寄るものだからこそ、心を揺さぶられる行動に弱い。

「ならば、それだけのサマナーの使い魔を、むざむざ失うべきではない」

ライドウは、空になった封魔管を取り出して備えた。

「あのお嬢ちゃん……、大したモンだ。悪魔ならいちころだろうな」

雷堂ですら諦めたようにつぶやく。


他の魔法少女や仲魔たちも、必死に攻撃を加える。夜はまるで歯牙にも
かけず移動する。まっすぐ躊躇いなく、まどかの元へ。
彼女は知っていた。まどかが自分を滅する力を有していると。その準備を
していると。

ほむらは発射の際に魔力をつぎ込むつもりで、時間停止を使っていない。
竜巻が消滅したと同時に時間を止めて移動し、至近距離から撃ちこむ
つもりだった。

それをまどかは知っていた。眼前に迫る巨大な竜巻が怖くないわけがない。
だが、背にいるほむらの温かさ、香りが勇気と自信をくれる。

(ありがとう。私の、最高の友達……、そして……)

ちらりとほむらを見る。真面目で真剣な、綺麗な横顔。その横顔にまどかは
ずっと、ずっと憧れていた。
アリアンロッド、という女神がいる。その女神はタリシエンの書において
「称えるべき横顔」と言われるほどの美しさだという。ほむらの横顔は
それに勝るとも劣らないとまどかは思う。

(やっぱりほむらちゃんは綺麗。だいすき)

そして夜が目前まで迫る中、準備は整った。二人は全く同時に深呼吸を
して、集中する。

”カーマさん、お願いします。準備できました”

カーマの後先を知らず、まどかは念話を送った。


カーマは全く躊躇わず、誘惑の矢を放つ。
それにシヴァは気付いた。矢そのものではない。カーマの覚悟に。

(カーマ……。よかろう。お前の覚悟に応えよう……せめて、避けろよ)

シヴァがいなければあの竜巻は結界内すべてを覆い尽くすほどのものに
なっていたはずだ。それを彼は必死に抑えてた。本霊であればともかく
分霊では、万分の一も力もない。だがまどかの命令であれば必ずこなす。
彼もまた、まどかの博愛を愛した。

カーマから放たれた矢を避けることなく受け止める。そこから湧き上がる
怒りに身を任せ、すべて第三眼からの力に注ぎ込む。

「一度ならず二度までも! その身を焼かれたいかカーマァァァァ!!」

シヴァの身の丈を超える直径の炎の柱が放たれる。カーマを焼き、夜を
破壊するに余りある熱量の炎はカーマと夜に直進する。途中割って入る
使い魔を一瞬で蒸発させても、些かの衰えもない。微動だにせず
その位置で見つめるカーマは、その炎の中に姿を消した。

夜はその熱量に対し魔力弾を瞬時に発生させる。夜が瞬間的に作り出せる
最大の量のそれは、すべてパスパタを迎撃するためだけに撃ち出された。

離れた位置にいた魔法少女ですら顔が熱さを感じるほどの超高熱。
竜巻を貫き、瓦礫を蒸発させ、魔力弾をものともせず、夜に直撃した。
夜の胸に当たり、巨大な穴をあける。右腕が根元からもがれて落ちる。

ワルプルギスの夜が、轟音を立てて墜落する。けたたましい笑い声も、
悲鳴に聞こえるほどの音を立てて。歯車を地面に突き立てるように
落下すると、周囲に凄まじい振動が生じた。


竜巻が消し飛び、周囲に瓦礫が飛び散る。だがふたりは瞳を閉じること
なく、まっすぐに夜を見つめていた。機を見て二人は時間停止する。
ふわりと二人の翼で浮かび上がると、静かに夜の真正面に移動した。

「もう、もう、いいんだよ。貴女は、誰も呪わなくていいの」

「ごめんなさい。何度も貴女を攻撃して。貴女も苦しかったのよね」

「せめて、貴女の魂が、救われますように」

時間停止の中、矢を放つ。それは結界の外まで行くとそこで止まる。
凄まじい魔力が込められたとは思えないほど穏やかで優しい一矢。
それは、救済の一矢。

「貴女がいれば、皆でいじめなくてもよかったのかもしれないわね」

「ううん、違うよほむらちゃん」

『まどか』は言う。

「みんなが彼女の心の鎧を壊してくれたから、
サーカスに付き合ってくれたから、私のちからも届くんだよ」

「それ、ネミッサに言わないと、拗ねてしまうわね」

「ぶー、まただ。ほむらちゃん、ネミッサちゃんのことばっかり」

「ふふ、ごめんなさい。今でも、私、彼女のこと好きよ」

「いいもん。私の魅力で取り返しちゃうんだから」

「ええ、楽しみにしているわ」

時間が動き出す。全くの無音で、夜の歯車に矢が突き刺さった。


それは、そこにいたすべてのものが目撃していた。

矢の当たった一点を中心に、淡い光が夜を包む。そしてそれが払暁の
明るさになると異変が起きた。暴れることなく、もがくことなく、
ワルプルギスの夜が静かに光になっていく。光る砂になり、
徐々に崩れ消えていく。
音もなく、悲鳴もなく、ただただ光輝に満ちていく魔女の体。

「ああ、綺麗」

一人の魔法少女がぽつりとこぼす。目の前で戦っていた使い魔もまた
光に満ちて崩れていく。
そんな光景が、そこかしこで展開されていた。
夜の昏い結界内に、光輝く花畑が広がっていくようだった。それは
スズランにも似た、小さな花が沢山寄り添っているようにも思えた。


――……――


それは結界の中にいるすべてのたましいが聞いた。だがそれが何を
意味するものなのか、誰にもわからなかった。

すべての光が消えると。耳が痛いほどの静寂があたりを包む。
誰も何もしゃべれない。
ワルプルギスの夜の結界が解けるまで、身じろぎすることもなく
立ち尽くすばかりだった。


結界が解けて、皆は元の場所に戻る。激戦の後のあのファンタジックな
光景に心を奪われて放心状態になっていた。
そんななか、最初に心に己を取り戻したのはネミッサだ。マミに痛いくらい
腕を捕まれていた。そのため真っ先に我に返ることができたようだった。

”状況報告して! 被害報告も! いい? まだ終わってないのよ!!”

その念話に全員がわれに返る。ユニットごとに集合し、各々の被害と状況を
確認する。ややあって、ユニットの小隊長からの報告をまとめた中隊長挌が
報告を取りまとめる。これも念話であるし、全員が聞こえるようにしていた。

”大隊長、報告します。重軽傷者計42名。うち意識不明なし。
行方不明、死亡報告、魔女化報告……なし”

”ミッションの完遂を承認する。ネミッサ、皆、よくやってくれた。
……お前から、伝えるといい”

ネミッサへの念話を拾ったのだろう司令が、ネミッサにのみ通達する。
だが彼女もどういっていいかわからない。だから、少しカッコつけて
いうしかなかった。あとで思いだし一人赤面するのだが、それを笑うものは
誰一人としていなかった。

”……ワルプルギスの夜の撃破。及び被害ゼロを確認。皆、作戦成功よ”

念話といわずテレパシーと言わず、歓声が上がる。帽子を被っている少女は
それを天高く投げる。長物の武器を持つ者はそれを高々と掲げる。


そして、伝説の魔法少女たちも集まる。皆無言。それは悪い意味ではなく
言葉を交わす必要がなかったからだ。歓声が上がる中真っ黒に汚れた
顔を見合わせ、ようやく微笑む。心地よい沈黙。
誰も、本当に言葉が出せない。言葉を発したら、この心地よさが
消えてしまう、それを恐れているかのようだった。

そんななか、まどかに寄り添っていたほむらと、マミに寄り添うネミッサの
視線が絡み合う。するりと互いのパートナーの手が自然に離れると二人
向き合う。

「へ……へへへ、ホムラちゃん、アタシが言った約束のこと、覚えてる?」

照れくさそうに鼻の頭を掻きながら、ネミッサは言う。

「えっ?」

ほむらには何の事だかわからない。あの時の様にやや幼げな顔でネミッサを
見つめ返すだけだった。ほむらのほうから言いたいことがあったのだが、
それの出鼻をくじかれた形だ。目に見えて動揺する。

それに気づいたのはまどかだけだった。くすっと笑う。

「わ、わかんない、何かした……っけ」

「しょっちゅう言ってたでしょ、『いつかアンタを泣かす』って。
アタシ、果たせたかな? ……アタシ、あんたの涙の役に、立てた……かな?」


はっとするほむらの顔。横で微笑を絶やさないまどか。状況がわからずとも
笑って受け止めている三人の前で、二人は近づき手を取る。

「やったよね。アタシ。やれたんだよね……。アンタを救えたんだよね」

「あっ……あ、当たり前じゃ……ない……」

それだけ言うのがやっとだった。二人抱き合う。

「ありがとう……、ありがとうネミッサ……。頑張ってくれて……ありがとう」

百年越しの悲願。それをネミッサに押し付けてしまったほむらの心境はいかばかりか。
ネミッサの望み。それはほむらの救済。だがそれはただの同情心からでは
ない。桜井を手にかけたネミッサが人を救うことで、人を救うことができると
他ならぬ自らに証明することだった。
だからこれは、ネミッサ自身を救う、ネミッサ自身のたたかいだった。

力なく、二人とも膝から折れてしゃがみ込む。互いの耳元で絶叫にも似た
号泣が響き渡る。

「「ううう……。うぁあああああああああああああああああああっ!!!」」

恥も外見もなく、周囲の魔法少女や仲魔たちが見守る中二人は泣きはらした。

「わ、私のせいで……マミさんと……離れ離れになって……。
ごめん、ごめんねネミッサ。……私を……ゆるして……」

「そんなことないよ! みんなたすけにきてくれたじゃん!
手伝ってくれたじゃん! みんなに会えて、アタシ……嬉しかったっ!」

それを見ていた魔法少女たちもまたすすり泣く。自分たちが憧れる英雄に
助力を求められ、その悲願に協力したから。そしてたった今、その悲願を
成し遂げて泣き崩れる英雄を見てしまったから。

すべての魔法少女の涙を暁が清々しく照らす。



彼女らは魔法少女史上に残る最大の魔女、
その撃破という偉業に、ついに成功した。


泣きはらしたほむらとネミッサが落ち着くのを見計らい、シヴァが二人を
抱きかかえ肩に乗せる。驚き狼狽える二人に、戦闘に参加したすべての
視線が集まる。

『偉業を達成した英雄たちよ。彼女らの声に応えるといい』

傷だらけ汚れまみれの少女たちが、きらきらした瞳で二人を見上げる。
彼女たちが待っているもの。
ほむらはネミッサを見つめ頷く。ネミッサの方はそれを笑って受け入れて
促す。

「みんな……、助けてくれて……ありがとう!」

わぁっ! と歓声が上がる。彼女たちの求めていたものは英雄からの
感謝の言葉。労りの言葉。

「ホムラちゃんに協力してくれて、感謝するわ! これから打ち上げよ!」

どっ、と笑い声が響く。激戦を潜り抜けた魔法少女たちの表情は一様に
明るい。そして、偉業を達した達成感に満ち満ちていた。
シヴァのそばに伝説の魔法少女たちも集まり、手を振る。伝説の、憧れの
存在に笑みを向けられ喜びを爆発させる彼女たち。
だがその目には全員、歓喜の涙が光っていた。


「おめでとう、君たちは偉業を達したんだね」

「白々しい」

司令がキュゥべえの頭を掴んでいた。かつて葛葉キョウジとして戦い、
魂と肉体を分けられた男の魂が、魔女となり抜け殻となった少女の
肉体に憑りついていた。

「これからも超弩級の魔女を倒すため頑張ってほしい。
難しいかもしれないけれど」

「……だがこれで実績と筋道はたった。奇跡がなくとも、同じことは
不可能ではない。残念だったな」

「君らが思っているほど、魔女は簡単じゃないよ」

「人間はな、変化と蓄積ができる。英雄の凱旋を邪魔するな」

握力だけで握りつぶすと、それを投げ捨てた。



撤収準備が進む中、目を腫らしたネミッサたちにまどかが言う。

「ねえ、みんな。後で一緒に来てほしいところがあるの」

「ど、どこに?」

皆の間に走る緊張に、ゴウトと業斗が気を利かせる。

『大したことはない。お前たちに会わせたい人物がいるのだ』

『我々も付き添う。……といえばどこに行くかはすぐにわかろう?』

「いつでもいい。しばらくは我々も滞在する」

「とりあえずこの時代のカフェーに行きたいからな」



「それで『まどか』は、どこに行ってほしいのかしら?」

ほむらの問いかけに、まどかは応える。

「シーアークの最上階。そこから『まどか』ちゃんのところへ」

そして筆者です。

人的被害以外は結構甚大ですがなんとか倒しました

そして次回はネタ晴らしのシナリオです
来週にかきあがるかなぁ……

明日ペル2クロスの方をアップします
両方見てる方が多そうなので、こちらで告知をば

それではおやすみなさい。良い連休を

乙。待った甲斐があったわー

乙でした。

スケロクさん今は魔法少女の体に入ってるのか……。
ヤソマガツは超力死界ぶっぱなす前に沈んだし、カフェーの後は完全修理を目指さないと。

こんばんは、筆者です。その八をお送りします
ついぞ思ったのですが、短編を一個ずつスレ立てた方が読む方は楽だったかもしれませんね
などと今更思ってみたり

>>461
うーん、嬉しいことを言ってくださる。ありがとうございます

>>462
書いてないけれど、マダムも多分います。さすがに現役ではないでしょうけれど
スケロクの中身は前世~来世での理解者として残しておきました
簡単に成仏しなそうですし



そして今回と次回で本編終了の予定です
最初からご覧の方にはとくに、最後までお付き合いいただけたら、と思います


【たましいのあんそくちへ】その八

『まどか』も交えての打ち上げ。現役魔法少女たちから戦闘参加した
サマナーや仲魔も会場で歓談する。その中心はやはり伝説の魔法少女。
戦いのノウハウや心構え、魔女の特徴を聞き出したくて仕方ないらしい。
ちやほやされてノリノリのマミやさやか、杏子はいい。人見知りのまどか
やほむらは人に囲まれて困惑している。ことまどかは、魔女との交戦の
経験などない。魔力を含めた力はあるが、そのような細かな質問に
到底答えられない。

だがそれでも彼女らは、達成感に酔いしれていた。ネミッサも室長と
してその会場で中心的なところにいた。勿論、苦手ではあったが立場が
それを許さない。そして更にこんな謝辞が相次いだ。

「あー、室長! おめでとうございます!」

「アリガト。アンタらのおかげよ。大怪我とか隠さないでよね?」

「あ、いえ、そうじゃなくて……。マミさんと婚約されたそうで♪」

「はぁっ!?」

日本国外から参加した、黒人女性の魔法少女がニヤニヤ言う。隣にいる
ヒスパニック系な子も同じようにニヤついている。どうやら友人(?)らしい。
勘違いというべきか、意識されていないというべきか、ネミッサとマミたちは
『葛の葉』のスタッフに、あまり悪魔と認識されていない。
それだけネミッサがなじんでしまっているのだろう。

「大丈夫です。私の母国は同性婚できますから」

「……はぁ……」

何が大丈夫なのかは明瞭ではないが、自信満々に言う。
その二人の魔法少女は指を絡ませながら手を繋いでいた。


そんな打ち上げも終わった。だが数日は事後処理が続きネミッサは雑務に
忙殺されていた。主に戦闘のレポート作成に時間が取られている。
その間、雷堂はカフェー(笑)に魔法少女を連れて行くし、ライドウは
後輩のサマナーに特別に実地訓練を施していた。

伝説の魔法少女たちも各々がのんびりとすごしていた。さやかと杏子は
百年後の街が珍しいのか、緊急時以外魔法を使わない、という条件のもと
外出許可を貰って散策していた。最も、魔法を使わなくてはならないような
事態にはまずならないだろうが。

「それじゃ行ってくるよ。お土産買ってくるよ」

「私たちも行ってきます」

「行ってらっしゃい。気を付けてね」

『まどか』とともにあるまどかとほむらも、似たようなものだったが
よりこちらはよりデートの趣が強いらしい。困惑するほむらの腕を
引っ張る様に外出していった。
そんななか、マミだけがネミッサの手伝いをしていた。ネミッサの役に
立ちたいというのもあるし、そばにいたいと思っていたからだ。これも
ある種デートであるかもしれない。

「あなたはいいの?」

「なにが? ……ああ、いいのよ。みんな誰かの役に立ちたいのよ」

意味の通らない答えに訝しがるネミッサ。微笑し補足するマミ。
さやかと杏子は互いの、まどかはほむらの役に立ちたくて外出をして
いる。それと同じことをマミはしているのだと主張する。

「それに、パティシエのときから得意なのよ。
大好きな人のために……、朝から晩まで働くのはね」

そんなマミのウィンクにネミッサは呆れたふりをしたが、
内心とても喜んでいた。それは遠く望み、手放した、幸せ。


ネミッサが雑務に追われ忘れかけていたころ、ライドウから連絡があった。
といっても大正時代『生まれ』のサマナーが携帯電話など用意しているはずも
ない。仲魔が伝令役になってネミッサに声をかけてきた。

「あのサマナーの方は準備できたノネ」

「ってアンタどこ行ってたのよ! マドカちゃん心配してたわよ!」

しれっと現れるカーマに、ネミッサは怒鳴りつける。マミがなだめるも
かなり立腹している。

「ン? そもそも今の彼女とは契約してナイノネ。ノリで参加しただけなノネ」

「パスパタ発動させるのに体張ったって聞いたわ。まどかさん泣いてたわよ」

「契約してないから気にする必要ない、なんてあの子には通じないわ」

だがカーマは素知らぬ顔だ。どこ吹く風という姿勢を崩さない。そこに
マミもネミッサも彼の頑なさを感じ取った。ため息をするだけしかなかった。

「とにかく知らせたノネ。可愛いおへその子たちにも知らせるノネ」

それだけ言うと、そそくさと立ち去った。二人は彼のその屈託のなさに
呆れかえり、言葉を失ってしまった。


数日後、ほむらたちは天海市へ。『まどか』と共に向かうのはライドウ
たちが待つシーアークの最上階。かつて『まどか』が旅立ったあの場所。
ちなみに、シーアークはホテルの趣から事務棟のビルに様変わりしていた。
周囲は天海空港を利用する貿易会社や倉庫街が立ち並んでいる。
ロビーだったそこは、その周辺で働く従業員のためのフードコートとして
賑わっていた。
変わってしまったそこに驚きつつも懐かしさを感じながら一行は通り抜け
最上階へ。
時空のひずみ、空間の裂け目、異界への入口へ

「「待っていた」」

『『準備はできているぞ』』

異世界の同一人物たるライドウとゴウトがハモる。

「カフェーは楽しんだ?」

「まぁそこそこな。思っていたものとだいぶ違ったがな」

ネミッサの軽口を皮切りに、雑談に興じる。あれから何人かの魔法少女を
誘ったそうだが、生憎あまり乗ってくる少女はさしていなかったそうだ。
それで別段がっかりするわけではなく、雷堂にとってはただの冗談だった
とのこと。

「特にこいつは乗り気じゃなくてな。女に弱いからな」

「かっ、構うな。……行くぞ……」

ライドウは無表情のなかに不貞腐れたような色を浮かべ、その部屋に誘う。
時空のひずみ、空間の裂け目から、未だ見ぬせかいへ。


何事にも例えがたいその世界。星々の様に魂が浮かび浮遊する。無重力
空間のようなそこに二つの大きな輝きをもつ魂が浮かんでいる。
それに近づくように、ふわふわと移動する一同。近づいたのち、足場の
ような硬さの板に立つ。

並んでいる魂は『まどか』の本霊と、一人の男性。その男性を
見知っているまどかは真っ先に二人に近づいた。そして同時に
憑依していた『まどか』も分れて本霊たる『まどか』に戻る。それで
記憶や力を共有するらしい。

「みんな、待ってたよ。ほむらちゃん、さやかちゃん、マミさん、
杏子ちゃん、ネミッサちゃん。……まどかちゃん」

円環の理たる『まどか』は皆が来ることを知っていたようだ。だから
彼のいるこの場に来て、待たせてもらっていた。

「『私』のこと、大事にしてくれてありがとう。すごく、楽しかったよ」

「初めまして、という必要もないってことなのね」

「役に立ててよかったよ」

「ホントにまどかが神様とはねぇ」

「ほんと、信じられないよ。自分の妹ながらね」

そんな中、ネミッサだけは微動だにしない。言葉も発することもできず、
目を大きく見開いたまま、男性の顔を見つめていた。
そんなネミッサを心配し、マミはそばに寄る。

「久しぶりだねヒトミちゃん。いや、ネミッサ」

リーダー、スプーキー……そして、桜井雅宏と呼ばれた男性が
そこに立って、ネミッサに微笑みかける。


ネミッサの表情が歪む。耐えようとしてた努力も空しく崩れていく。
歯を食いしばり、腹に力を入れて、何とか笑おうとしても、できない。
足が震える、膝が笑う、倒れ込みそうな体をマミに支えられてやっと
立っている。

「……リ、リーダー?」

「そうだよ。ずっと君を見ていた。ずっと頑張っていたね。ありがとう」

「ウソ、ウソよお礼なんて……。アタシが何度もアンタを殺したのよ……?」

「……あれが僕の望みだったんだ」

「助けたかったのに、助けられなかったのに、お礼なんて言われるはず……」

「あの時の僕には生きる意志がなかった。僕が悪いんだ。
だから、重荷に感じることなんかないんだよ」

ぼろぼろと双眸から涙が毀れる。いやいやをするように首を振る。
スプーキ―の言葉を受け入れられないほど、彼女は苦しみ傷ついていた。
かつて、杏子が苦しみのあまり優しさや慈悲を受け入れられなかったように。

「……辛いことをさせてごめん。もう、君は、苦しまなくていいんだ」

「うあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……
……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~~!!!」

その言葉を皮切りに、ネミッサは泣き崩れた。いつもの澄んだ声ではない。
喉の奥から絞り出すような、苦々しい声色で。

「ごめん、ごめんなさいリーダー! 諦めて! 見捨てて! ごめんなさい!
アタシはホムラちゃんみたくなれなかったの! 
お礼なんて言われる資格ないの!」

膝をつき、顔を地に押し付けながら号泣した。地に落ちるほどの涙を
流しながら。贖罪の涙を流し続け、嗚咽を上げるしかなかった。
その苦悶の姿勢に、誰もが声をかけることができなかった。
それは彼女が長きにわたる抱え込んだ、悔恨の現れ。


マミがその背中を抱きしめる。彼女の苦しみを少しでも肩代わり
したかったから。共有したかったから。嗚咽に震える体が、とても小さく
見えるほどだった。
そのマミの様子に胸をなでおろすスプーキー。

「巴マミちゃんだね。彼女のパートナーになってくれて、ありがとう。
できることなら、少しでも長く彼女を支えてあげてくれないだろうか」

マミは首を左右に振り、はっきりとした声で答える。決意を秘めた目。

「いいえ……。長くどころではありません。永遠に支え続けます。
私も支えられたから。もう……、もう二度と、離れません。
百年も、一人ぼっちにさせてしまったのですから……」

そうつぶやき、深く抱きしめる。身を捩って慟哭するネミッサが、
愛おしくてならない。
他の魔法少女も同じ思いだった。マミに同意するように頷く。なぜなら
彼女たちは全員、救われたから。それがネミッサにとって自らを救うための
踏み台であったとしても。それを知ってもなお彼女たちはネミッサを支えたいと
思っていた。動機が何であれ、救われたことには、違いがないから。

「……ありがとう。それを聞いて、僕も胸のつかえが取れたよ」

涙さえ浮かべ、スプーキーは礼を言った。頭を下げ、まっすぐに
お辞儀するその姿勢は、娘を預ける父親の姿にも見えた。

「ネミッサのお父様みたいですね」

指摘され、スプーキーは鼻の頭を掻いて照れた。自分でもそう思って
しまったからだろうか。


未だ涙を流し嗚咽するネミッサに、『まどか』が近づく。それは女神の
慈愛にも似て、優しく大きく柔らかな翼でネミッサとマミを包み込む。
ネミッサが感情をため込む少女だということを知っていた。だからここで
すべての感情を吐き出させたいと思った。

「ねえ、ネミッサちゃん聞いて。『私』と宇宙と、皆の宇宙の違いを」

ネミッサの耳元で呟く。だがそれは全員にも聞こえるように言った。
皆の注意を大きく引いた。
それを伝えるのが、皆を、ネミッサを連れてきた目的だった。

「それはね、【運命】が変えられるかどうかなの。『私』の宇宙は
運命を変えられないの」

だから『ほむら』が何度ループしても『まどか』は魔法少女になり、
ループの原因になっていた。『ほむら』の不幸はそこにあった。だが
諦めない意思は、『まどか』の素質を高め、世界の理を変えるまでに至った。

だが、こちらの宇宙は違う。マミは生き残り、さやかは魔女から復活し
杏子は皆と和解するに至った。そして、まどかは魔法少女にすらならずに
すんだ。

「でもそれは、ものすごく大変なことのはずなの。
ほむらちゃんとネミッサちゃんが時間を何度も巻き戻して
やっとってくらいに」

そもそも、ネミッサはあの日あの時あの場所で、マニトゥと共に滅びる
定めだった。そこから逃げ出すことが運命の変わる分岐点。
スプーキーを助けると願い繰り返した果てに運命から逃げることができた。
本来ならば交わるはずのない、ネミッサとほむら。だが時間を繰り返しが
天文学的な出会いの確率を徐々に引き上げた。その結果出会った二人が
ついに絡みついた。
そののちに始まるネミッサによる時間の巻き戻しが、今度はまどかの
運命を変えるに至った。

「でもね、契約すること自体は変わってないんだよ。
相手がキュゥべえか、白山さんか、ってだけで」

所謂ペテンに近い解釈だ。さやかのために契約する、という事実は
変わっていない。契約相手がわずかに変わっただけことだった。
それだけ運命を変えることは困難なのだ。

「スプーキーズの皆や、『葛の葉』の皆さんが頑張ってくれたから。
何より、ネミッサちゃんが頑張ってくれたからだよ。
ネミッサちゃんの天海市での頑張りは、ぜんぜん無駄じゃないんだよ」

その言葉にネミッサは再び声を上げる。慟哭が彼女の心から悲しみを
押し流すまで。
まどかは『まどか』の言葉を追認した。その話をきっと前世で
憑依したときに聞いていたのだろう。他の誰もが驚く中、
まどかだけが受け入れていた。


「ごめんまどか、正直全くわかんない」

杏子も同意見なのだろう。あいまいな表情を浮かべるしかなかった。
ただわかることは、ネミッサの最初の努力があってこそだということだ。
それを聞いて、彼女は少し救われたのだろうか、肩で息をしながら、
絞り出すように尋ねる。その余裕はできたようだった。

「そ、そっちの世界の『アタシ』と『リーダー』は?」

ようやく泣き止んだネミッサの問いかけ。それはパンドラの函。覗いては
ならない深淵の闇。言いよどむ『まどか』にスプーキーが応じる。 
それはネミッサがほむらに告げたのと同じ、告白。

「それは僕が話そう。……君はマニトゥと共に消え去った。
僕はレイさんに助けられて……、生き残ったんだ」

『麗鈴舫』が治療と魂の分離を行ったらしい。怪しげな術と笑っていたが
それゆえ、一命を取り留めたとのこと。それがあの宇宙での運命だったと
いうのだ。
その言葉にネミッサは、涙でべとべとだった顔を上げ叫ぶ。

「じゃぁそっちの方が良かった! リーダーが生きてる方がいいよ!」

感情に任せ、ネミッサが吼える。
それまで黙っていたほむらは、正確にネミッサの次の言葉を読んだ。
なぜだかわからない。だがはっきりとわかった瞬間、怒りに任せ歩み寄る。

「アタシが死んでも、リーダーが……」

ネミッサの頬を強かなほむらの平手が打ち、それが言葉を遮る。
その手で胸ぐらを掴み怒鳴りつけた。ほむらの目には涙が浮かんでいた。

「今何を言おうとしたの!? 貴女のおかげで私たちは救われたのよ!
それを……『死んだほうが良かった』とでも言うつもり!?」

無理やりネミッサを引き起こし、吊るすように持ち上げる。怒りの感情の
ままに。だが、その目の奥に光るのは、憐憫。

「……ふざけないで! 貴女がいなければ私はまどかを救えなかったのよ!!」


ネミッサは突然ぶつけられたほむらの怒りに呆然としている。
自分より背の低いほむらに持ち上げられているのもされるがままだ。

「何より! それをマミさんの前で言うなんて、ゆっ……許せない!!
そんなこと……、二度と言わせないっっ!!」

ほむらは泣いていた。自分の憧れた人の情けない姿が許せなかった。
ネミッサを愛するマミの心を案じた。そして何より、ネミッサの今まで
ひた隠しにしてきた苦悩を案じた。彼女の心を癒せない自分が悔しかった。

「相変わらず……、何もかもしょい込むんだから……」

「みんなで悩もうよ、ね? ネミッサちゃん」

「おい、あんたさ。あたしらを友達だって言ったよな。
あたしらと出会う前なのに『自分が死んだ方がよかった』なんて、
ずいぶんじゃねーか?」

ほむらの平手で反省しているネミッサに、みんなの追い打ち。

「マミを泣かしたら許さねえって言ったよな……」

その視線の先には、目に涙をためたマミの顔があった。ネミッサの言葉に
涙するマミは、それでも笑顔を見せようとしていた。

「もう許してあげて……。ネミッサだって本心じゃない……はずよ」

マミがようやく助け船をだして皆は矛を収める。ネミッサの言葉は
確かにつらい。だが彼女の苦しみを理解している今では、それを
怒るようなことはできないし、したくなかった。


「私はマミさんに免じて許してあげる。だからさ、もう、泣かないでよ。
あんたは私の、私たちの恩人なんだよ?」

「だから、死んだ方がいいなんて言わないで、ね?」

涙に頬を濡らしながらようやくネミッサは立ち上がる。しゃくり上げる
ままマミに手を握られていた。それはまるで親に見つけられた迷子の
ような頼りなさだった。

「うん……、ゴメン、みんな。ゴメン……」

彼女の強がっていた仮面が、溢れる涙と共にはがされていく。彼女もまた
マミのようにほむらのように、強がっていたのだ。

「それにしても、ここどこ? 説明されてわかる自信ないけど」

空気を換えようと発したさやかの疑問。それももっともだ。何しろ普通に
ここの説明などされていないのだから。

「それに、ここに皆を呼んだのは? ネミッサのことがあったから?」

「ここは、【魂の安息地】と呼んでるところだ。現世を生き抜き、
死ぬべき時に死んだ魂が安らぐ地だよ」

スプーキーはこともなげに言う。ここに集まった魂は安らぎを得ながら
新たな転生のときを待つのだという。安らぎの歌、その懐に抱かれながら。

「ここがビジョン・クエストの……」

ここには魂の記憶が蓄積されている。レッドマンやその役目を受け継いだ
スプーキーは、求める魂の記憶を探しだし、力ある魂に見せることができた。

「彼女はここにはかかわりがないはずなんだけどね。さすが神様だけあって
いとも簡単にここに来ちゃったんだ」

控えめにだが笑うスプーキーに『まどか』も照れ笑いだ。
だがそれがどれだけすごいことか、皆にはピンとこない。

「へへ、皆がすっごく頑張ってくれたから、頑張ったみんなに、
私が会いたかったの。だから頑張ったんだよ」

ぐっ、とガッツポーズをして『まどか』は得意げに笑った。

筆者です
今夜はここまでデス。こんなネタ晴らしデス

ああでもほむらと『まどか』が淡泊すぎる……
次回で何とかしますね

乙でした。

PSとか3DSの二周目のスプーキー生存ルートだとまどかが円環の理ルートで、
SSの通常ルートを繰り返して溜まった因果ゆえのサマナーまどかルートって事かな?

雷堂はいろんな平成のカフェーをめぐったのかな?
秋葉原のメイド喫茶とか、名古屋のマウンテンとか……。

乙。なんか物凄いもん読んでる気がするのだぜ…
ここから更に外伝が派生しても、大歓迎しちゃいますよ、ええw

乙です。
……本当にどの子もこの子も、そしていろんなものを大事にしててすごいですねえ…。

次回に期待。
さ、さらに派生外伝書いちゃってもいいんですからね?(チラッチラッ

乙!
なんかマミッサにたいする違和感が拭えないなんだこれ
派生とか外伝は無理しない程度に頑張って下さい!

こんばんは、筆者です

最初にごめんなさい。ペルソナ2のほうは書けませんでした
お待ちしている方には申し訳ないですが、お休みさせてください
こちらは一応最終回なので、その分を注ぎ込んだつもりです


>>476
ご指摘のとおりです。
PS版3DS版、まどマギがいわゆる正史(原作どおり)で『まどか』の宇宙
こちらはその亜流といった形です

>>477
物凄いかわかりませんが、このアイディアはmixiに描いてた時期から考えてて
まど神様がでるまで表現できなかった部分なんで、練りに練れてると思います

>>478
大事なものがあるから、契約して悩んじゃうんでしょうね
原作からして、あの子らはいい子達ですよ。だから大好きです

>>479
マミちゃんがネミッサ裏切ってるから、かなぁ。
でもああしないとマミちゃんは家族に恵まれないしなぁ。うーん……

【たましいのあんそくちへ】その9


「それともう一つ。これは、彼女が気づいたらしいんだけれどね」

スプーキーは続ける。魂の安息地に皆を誘った意味、理由を。
彼の隣で、『まどか』が胸を張る。その様子はとてもかわいらしく、
女神には到底見えない、いい意味での幼さだった。

「……君は、君たちはキュゥべえたちの首に爆薬を仕掛けることができた」

突拍子も無い話に一同はすぐに思い至らなかった。
それは、キュゥべえたちが研究しているマニトゥのことだ。
ネミッサは全く予期していない方向からの言葉に、真っ赤な目をしながらも
小首をかしげる。

「マニトゥが君のほろびのうたを歌えるらしいんだ」

ようやくネミッサが、彼女だけがその言葉の意味を知り戦慄する。そして
理解した途端、笑いが込み上げてきた。最初は含み笑い、それから徐々に
こらえきれず爆笑する。

「ひょっとして、ひょっとしてよ? それマニトゥが狙ったの?」

「いや、さすがにそこまでは……。けれど、起爆装置は君が持ってる」

「だろーね。あんにゃろう……アタシに隠し事しやがって」

「ちょ、ちょっとネミッサなんのことよ!?」

先ほどまで泣いていたのが嘘の様に笑っている。そんな姿にほむらは
慌ててしまう。おかしくなったのかと思うくらいの変貌ぶりだ。
それにネミッサは説明する。皆の疑問に答える形で。

「……マニトゥがキュゥべえのエネルギー集めに協力してるのは
知ってるわね」

「え、ええ……キュゥべえと連結して回収システムの一部になってるわね」

「そのマニトゥが暴れだしたらどうなるかしらね」


暴れるとは言葉の意味そのままではない。だがシステムの根幹である
マニトゥからの攻撃は、QBたちにも影響はでるはずだ。
更にマニトゥ自身が自らをコピーし、無数にあるQBの個体の
あちこちに潜伏しているらしい。

「今でいう、スパイウェアみたいなもんかしらね」

「僕らのころはトロイの木馬かな。それに近いんじゃないかな」

QBがそれに気づき大元のマニトゥを削除しても、
無数にある個体すべてに潜伏するマニトゥを消し去ることは難しい。
そもそも大元がエネルギーの循環回収システムの根幹なのだ。
消し去ろうものならエネルギー回収に大きな損害を与えるはずだ。
さらに、それを消そうと不穏な動きを見せればネミッサが起爆すればいい。

QBは直接的な武力を持たず行使しない。その代わり言葉巧みに
罠を巡らせ策を弄した。それは効果的に魔法少女を絶望に追い込むためだ。
自発的、といってもいい。自らの行動で因果応報を受ければより絶望が
大きくなる。契約という形で本人の同意を得るのもそのためなのだろう。

だがそれは裏返すと、ネミッサが何をしようと実力行使ができない、
ということだ。そもそも武力行使ができるなら、ネミッサを殺害したはず。
そういう意味では、病院にいたマミの死神たる魔女は偶然だったと
言えるだろう。それを罠として狙って使ったにせよ。

「ここならアイツに聞かれないもんね。考えたわね。さすがリーダー」

百年にも及ぶ潜伏期間がそれを可能にした。少しずつ少しずつ侵食し
増殖するマニトゥの強かさや薄気味悪さが、心強かった。


つまりはこういうことだ。とネミッサはまとめる。

「今後『聞かれなかったからね』なんて言おうものなら、ボンッ、よ」

「ブフッ!」

ネミッサが親指で起爆スイッチを押す仕草をする。
声色を真似たその言い回しのおかしさにと全員が空気を漏らす。
その一言で空気が緩んだようだ。涙の跡は未だ残るが、それもいずれ
消えるだろう。

「似てねぇ~」

「い、いいじゃん」

泣いてたはずがもう笑ってる。これがネミッサの強さの根源かも
しれない。スプーキーはそう思う。彼女も一人のときは泣いていたはずだ。
それこそ、ほむらのように。だが、今はマミというパートナーがいる。
ほむらやまどか、さやかに杏子もいる。苦しみを分かち合える友達がいる。
かつて劣等感に苛まれた自分が作れなかった絆を彼女は育んだ。だから気付いた。

もう、彼女に自分は必要ないのだと。

大袈裟に言えば、親離れ子離れなのかもしれない。

「いい友達を持ったね」

「え、そうでもないよ。ひねくれてたり、甘えんぼだったり、
嫉妬深かったり、本音言わなかったりして、大変なんだから」

「あんた、本人目の前にしてヒドイこと言うねぇ……」

「し、嫉妬って何のことかな!?」

「貴女だって程よくひねくれてると思うけれど?」

「甘えてるのはそっちもおんなじじゃねーか」

「もう少し、思いやりを持ってくれないとね。ママ心配」

言い返され、スプーキーや『まどか』をそっちのけで騒ぎ出す。
そんな朗らかな姿が、何よりも二人を安心させた。


しばしそんなやり取りを続けていたが、遠くからライドウたちが近寄る。
積もる話もあると、送り出したまま離れて見守っていたのだった。

『話はすんだかな? 帰りは我らが送っていこう』

「ええ、すべて伝え終わりました。こうして友達にも恵まれてる姿を見て
安心もできました。ご足労、感謝しますよ」

「私も、宝物もらっちゃいました。これで円環の理、頑張れます」

「あ、え? 何まとめちゃってるの? 『まどか』も行こうよ」

さやかが気付き振り返る。『まどか』はほんの少し寂しそうに笑って
首を左右に振る。

「分霊を送るのはちょっと大変なの。この間は合体事故で
なんとかしたけど……。もうわがままいえないし、その必要もないんだよ」

決意をみた一同は、何も言えなくなった。これが本当の別れだと
気付いてしまったから。
どのまどかであれ『まどか』の決意した笑顔に、皆は弱い。

「でもね、まどかちゃんにお願いしてることがあるの」

『まどか』は続ける。それは、リサイクルの後先のことだ。
リサイクルされ続けると、そのグリーフ・シードは徐々に力を失う。
具体的には穢れの吸収率が悪くなる、ということ。僅かずつではあるが
吸収できる許容量が減ってくるらしい。幸いそれで孵化してしまった
ケースは無いが、それでもリサイクルにまわせなくなってしまうものを
もてあましているのが現状だ。

「だから『まどか』ちゃんの力を持った私が、ここにつれてくるの」

まどかが胸を張っている。自分にできる、自分にしかできないことを
見つけて……威張っているようだった。スワチカを自らの魔力で発動させ
魂の安息地へ送り届けるのが、彼女の役目。
そこで魔法少女の成れの果ても、安息を得ることができるという。
それをもって、ネミッサの魔法少女救済は完結する。


「それじゃ……、がんばれよ『まどか』」

「ありがとう。お姉ちゃん」

八重歯を見せながら笑うと、杏子と握手する。
たとえ血がつながっていなかろうと、二人は姉妹だった。時に姉と妹が
逆転することもあったが、それでもなお、二人には血より濃い絆があった。


「あの引っ込み思案の幼馴染が……女神さまかー」

「ふふ、さやかちゃんだって、英雄なんだよ。でも、とっても似合ってるよ」

いつもの嫁宣言のつもりで抱きつきながらうれしそうにセクハラするさやか。
それが心地よいのだろう。多少くすぐったそうにしながらも受け入れている。
それは二人の親友としての証。


「『まどか』さん、その……ありがとうね」

「ふふ、ネミッサちゃんと、お幸せに♪」

『まどか』の意地悪な台詞に、マミは頬を赤らめながらもしっかりと頷く。
憧れの先輩の幸せを願い、祈るように手を組んむ。『まどか』にとって
マミはどこの世界でも、憧れで、立派で、優しい先輩だった。


ネミッサはスプーキーに近寄り抱きつく。そこに言葉は無い。ただただ
幾ばくかの思いが伝わると信じて。

「ほら、もう離れないと、君のパートナーが焼餅を焼くよ」

その台詞とともにようやく離れる。ネミッサは、小さく頷くのが精一杯だ。
スプーキーが微笑み手を振ると、ネミッサはようやく決心した。
後ろ髪を惹かれる思いで、案内をするライドウたちへ近寄る。

「君はもう自由だ。僕より、隣の子と未来を考えるんだよ、いいね」

「ウン、アリガト……。バイバイ……。リーダー……」


その隣では、ほむらが『まどか』に向かい合う。いいたいことはすべて
前世でのあのほむらの部屋で伝えたからだろう。言葉は少ない。

「ネミッサが幸せになれる、ってこのことだったのね」

「へへ。うん。これが見えてたんだよ」

しばしの沈黙の後、ほむらは切り出す。

「……そちらの『私』のこと、気にしてる?」

「え? う、うん……。ずっと、『ほむら』ちゃんは戦ってくれてるんだよ」

「そんなことで『まどか』を恨むような『私』ではないわ。だから」

そっとその桜色の髪をなでる。そのとても優しく柔らかい仕草に、『まどか』は
目を細めて喜ぶ。暖かく優しいその手に、憧れ続けていたから。

「きっと、貴女に会えた『私』ならこういうはずよ。だからそれまで、私の言葉で我慢して」

けれども、ほむらもまたまどかに憧れていた。
同じ悩みを持つ身としてその悩みを克服したあの凛々しいまどかに。

「――――」

『まどか』は、その言葉ににっこり笑う。

「ありがとう、ほむらちゃん……」


ライドウ二人が作る結界に全員が乗る。彼ら二人があのシーアークの
あの部屋に送り届けるという。そのまま二人はまだアカラナ回廊を
観光旅行にいくそうだ。理由ははっきりいわなかったが、おそらくは
別れの言葉の湿っぽさが苦手なのだろう。

「では、移動する」

皆、別れの言葉が思いつかないらしい。口をつぐんでいる。そんな中
ネミッサだけははっきり胸を張っていた。

「アタシならこう言うよ。皆もそうでしょ?」

全員が察し、そして笑っていう。それが最後の言葉になった。
それを『まどか』が受け止めて笑う。スプーキーもそれを受けて微笑む。



「それじゃ……またね」



『まどか』とスプーキーに見送られながら、一向は少しずつ二人から
離れていく。徐々に小さくなるその姿を目に焼き付けようと皆瞬きもせず
じっと見つめていた。

それが光に包まれて消えると、また無音の世界に戻る。

「すごい子達だね。魂の安息地にたどり着いちゃうとはね」

『まどか』は彼の言葉に答えることができずにいた。大粒の涙を流し、
泣きじゃくっていたから。それは悲しみの涙ではない。歓喜ともいいがたい。
その涙の意味に気づいた彼は、そっと『まどか』を抱き寄せた。
これが最後の涙。彼女はこれからネミッサ以上につらい生き方で、魔法少女を
救うたたかいに赴く。
けれども今、今だけは、涙は許されるのではないかと、スプーキーは思った。


『葛の葉』に戻った彼女たちは、精力的に魔法少女を救う戦いを続けた。
時に魔女となる子もいなかったわけではないが、かつてネミッサだけで
動き回っていたころに比べ、かなり少なくなっていた。

「新しい候補生のところ、私が行くわ」

「あなたが行けば心強いわ。アタシも行くからちょっとまっててね」

「手ごわい魔女がいるみたい。私と杏子で援護してくる」

「二人なら安心ね。任せるわ。けど無理して怪我しないでよね」

「悩んでる子の話聞いたよ。ほむらちゃんと一緒に行くね」

「あの子のプロフ二人に渡してあげて。ある? じゃぁ読んでおいて」

「そのあと新人教育に行くわ。明日一日それでいいのよね」

「ビシバシ鍛えてあげて。まだ大型魔女は潜伏してるんだからね」

「失礼しまーす。室長、花束とメッセージ届いてますよ。ほらこんなに」

仕事の話で忙殺されてるなか、突拍子もない会話が飛び込む。
郵送で送られる花束の山、山、山……。白い花と黄色い花を束ねた
ものが次々と部屋に持ち込まれる。
それに添えられたメッセージは、文面こそ違えど、意味は同じ。

「あのさー、なにこれ。どーいうワケ?」

ネミッサのため息交じりの文句。それを受けてほむらは笑っていう。

「いい機会だし、改めて挙式したらいいわ。おままごとじゃなくて本物をね」

それは、マミとネミッサを祝福する、お祝いのメッセージの海。


こうして、ネミッサもまたみしらぬあしたへあるきだす。

傷つき苦しんだ時間はなかったことにはできない。逃げ続けた自分を
なかったことも、またできない。けれど彼女が通った道のりで、
救われた少女たちが大勢いることも確かだ。
それを否定することは、救われた彼女たちを否定すること。

そしてなりより、彼女には仲間がいる。
ほむらと喧嘩をしながら
まどかとほむらを取り合いながら
さやかと冗談を言い合いながら
杏子とダンスゲームに興じながら
マミと肩を並べながらあしたに歩き出していく。

ネミッサのやり方では、『まどか』のようにすべての魔法少女は救えない。
けれど、それでいいと彼女は思う。何もかも救おうとすればさやかの様に、
ほむらのように、『まどか』のように自らを贄として差し出す以外にないだろう。

けれど、それは己の分を過ぎたことだ。そういう意味では、
『まどか』はさやかと同じ過ちをしたと言えるかもしれない。
それでも、『まどか』はすべてを救うと突っ走っているのだ。
ネミッサも同じように突っ走るしかない。

だから、たましいの輝く限りネミッサは走る。
伝説の魔法少女たちと共に、魔法少女を救うために。


いつか、魂の安息地に還る、そのときまで。




【エピローグ】

二人が恋人として意識していた時期が長くて二年、ひょっとしたら一年程度
だと言ったら、驚くだろうか。その後百年にも及ぶ長い年月をネミッサは
その記憶を一日に何度も繰り返し思い出して支えにしていたと言ったら、
信じられるだろうか。

マミは誰よりも知っていたはずだった。孤独の寂しさ、つらさを。けれども
ネミッサは長年隣に居すぎた。そのかけがえのない時間の温かさや尊さに
慣れてしまっていた。
知らないことはいえ、マミは孤独をネミッサに強いてしまった。
だから彼女は絶対に離れないと決めた。仕事だろうと何だろうと、必ず同行する
ようにしている。今も、これからも。



そこはネミッサとマミの部屋。かつてはネミッサが居候だったが、今は逆。
時折現役組が邪魔しに来たり、さやかや杏子が食事をねだりに来たり
ほむらとまどかがお茶をしに来たりと、来客は途切れない。

「ちょっと、ネミッサ。そろそろ服を着なさい」

「まだ大丈夫でしょ。まだ一時間あるわ」

「だからって……もう!」

未だベッドで寝っころがるネミッサに、早々と着替えたマミのお叱りが
飛ぶ。昨夜の情事そのままに全裸でシーツに包まっている。

「……だって、昨日アタシ寝てないもん。誰が寝かさなかったと思ってるのよ」

原因のマミはさすがにあまりきつく言えない。マミはともかくネミッサは
あれで失神したようなもので、眠ったとは到底言えない。寝不足と疲労が
残っていた。

「でもほら、ほむらさんたちが来ちゃうわよ」

そういってシーツを掴む左手には、中指ではなく薬指にエンゲージリングが光る。
それと同じものがネミッサにもある。魔法少女の指輪がない代わりに二人で
買ったそれは、同じデザイン。

「ふぅ。わかったわ。じゃぁもうやらないほうがいいのね」

「う……」

意地悪そうにマミがいう。わざわざ耳元で呟くのだから始末に負えない。

「やだ」

「これからちゃんと支度してくれる?」

「……する」

「いい子ね、さぁ、起きなさい」

「マミちゃんの意地悪」

「ネミッサの駄々っ子」


それからちょうど一時間後、二人の部屋のチャイムが鳴る。来客はもちろん
あの大切な友人たち。思い思いのお祝いを持って訪れる。
近々、親しい友人たちだけを集めて式が挙げられる。
そこで同姓のカップルが二つ出来上がるわけだ。

それは三度目のバージンロード。
一度目はおままごと
二度目は旅立ち
三度目は永久の誓い

あの時と同じ、タキシードと、ウェディングドレスを身にまとって。



「私たちもしない?」

「やんねーよばーか。あたしにはこっちのほうが似合うだろ?」

「そうだね。祝福する役目きちっとやってね」

「さやかの賛美歌だって皆期待してるんだぞ」




「ふぅ、これで私の肩の荷も下りたわ」

「ウェヒヒ、『まどか』ちゃんは心配してなかったみたいだけどね」

「私もあのとき、それを聞いて安心したわ」

「おーい、二人とも、次はそっちだよ~」

「ええ」「うん」

こちらは二人ともウェディングドレス。純白が眩しい。


そして鳴るのは祝福の鐘。


「ネミッサ……、待たせてごめんね」

「いいよ。そのかわりこれからは、ずっと、いっしょよ」




――あれ、鍵空いてる? マミちゃーん。いるー? って、ん?――

――あ、あのっ――

――あれ、マミちゃんの知り合いかな。……っとアタシネミッサ。アンタは?――

――わ、私は鹿目まどかっていいます。マミさんの、後輩です――

――そっかぁ。ならマミちゃん知ってる?
昨日からケータイにもでなくてさー。どこいったか知らない?――

――……マミさんは、死んじゃいました……。ううう……――

――はぁ? 何言ってんの?――

――ごめんなさい、私が……よわむしだから……
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……――

――何? 死んじゃったって。何があったの!
泣いてちゃわかんないでしょ! 教えなさい!――




――サ、サヤカちゃん? ねえ、笑えないよ。目ぇ開けて? ねぇ!――

――あんた、さやかの知り合いだったのか――

――そうよ。なんで死んじゃってるの?――

――まだ、助かるかもしれないんだ。少し待ってくれよ――

――生き返るの!?――

――可能性はあるみたいなんだ……、だからさ――

――?――

――だから、泣かないで、まってくれよな。あたしがきっと、連れ戻してくるからさ――




――自爆?――

――ええ。戦いの果てにね――

――アンタそれ、キョーコちゃんがそうなるの、黙ってみてたの?――

――……ええ、そうよ――

――アンタぁ! それでも人間か!――

――違うわ。もう私たちは人間じゃない――

――何わけわかんないことを……。一体何をしてるのよアンタらはっっ!――

――それが宿命だもの――

――何が宿命だ! ふざけんなっ!!!――





――いやぁぁぁぁぁぁぁ! まどかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!――



――ホ、ホムラちゃん? しっかりして、ねえ! 目を開けて――

――そんな、なんて顔で……そんな顔で……――

――どうしてアンタらが死ななきゃいけないの? なんで? なんでさ?――

――アンタら何と戦ってるの? なんで戦ってるの? ねえ、ねえ!
誰か……、誰か教えなさいよ!――

――ああああああああああああああああああああああああっっ!――



――ほむらちゃん、ごめんね……。私……――

――アンタ、その恰好は?――

――ごめんなさい。私、約束破っちゃった。でも、やっつけたよ――

――マドカちゃん……、何言ってんの?――

――でもね、でもね……。私もだめ。ほむらちゃんがいない世界なんて耐えられない――

――ちょっと、何をするの!? 銃を降ろしなさい!――

――私も今そっちにいくから、いっぱい怒って、いっぱい叱ってね――

――や、やめなさい!――

――大好きだよ、ホムラちゃん。ごめんなさい――



――……。何? 何なの? アンタら何をしたの? 何が起きたの?
ねえ、誰でもいいから、アタシに教えて――

――アンタらにいったい何が起こってるのよっ!――


「いい機会だし、改めて挙式したらいいわ。おままごとじゃなくて本物をね」

「え、ちょっとどういうことよ!? この際ってどの際よっ!」

「そういうことなら私にまかせてっっ。しっかり式場押さえてくるっ」

「あたしも行くよ。また服借りないといけないしな。」

「私もドレス借りて参加するね。ウェヒヒ、楽しみだなぁ」

「……観念なさい、二人とも。こんなに皆楽しみにしているのだから」

「だって……、どうする?」

「……私は……したい……かな。ね、いいでしょ」

「決まりね。今度はおままごとじゃないわよ」

「わ、わかってるってば。ホント、ホムラちゃん意地悪い」

「二人の幸せな雰囲気に当てられてる身にもなってみなさい」

「ついでに、アンタらも式挙げたらいいわ」

「そうね、まどかがよければ、だけど。賛成してくれそうだけれどね」

「……ふたりとももうそのつもりなのね……。負けそうだわ」


筆者です。
これにて

【ネミッサ「デビルサマナー鹿目まどか 対 魔法少女鹿目杏子」まどか「戦うの?」】

の投稿を終了いたします
やりすぎた気もしますが言い訳しません。やりきりました
どうぞ最後までご賞味ください

お付き合い、本当にありがとうございました


派生なり外伝なりは、私の頭の中にいるあの子達が暴れたら書きますね
どんだけ期待してる方がいるのか、不安でもありますけれど

外伝とか派生はともかく乙!
無理すんなよ

……ああもう畜生!
本当に完成したのが嬉しいやら終わるのが寂しいやら……とにかく、いいもの読ませてくれてありがとう! 乙!!


そして>1さんの中のみんな、お疲れ様。
>1さんに無理させない程度に、しかし筆がとりたくなるくらいに、思い切り暴れてやってくださいな(期待

乙でした。

全てに決着がついて、とても楽しいハッピーエンドでした。

QBは悪魔と魂の取り合いしてると思ったら、マニトゥ使ってたのか……。
電霊とか大霊とか発生したのを魔女扱いしてネミッサ達に処理させてそう……。

もう乙。ただただ乙。
>>499に言いたいこと全部言われたw

いつかまた、>1氏の中のみんなに、会えたらいいねえ…

筆者です。ご感想ありがとうございます! 一応sage対応
書くものないけどお返事タイム!

>>498
心配させてすみません。持病と付き合いつつ、ネミッサたちとも付き合っていきます

>>499
前に「キャラが勝手に動いて困る」って言ったら「プロ気取りか」って罵られました
けど、私の小説は終始一貫してそんな調子なので、たぶん勝手に暴れだすんでしょう

>>500
残ってるのはさやかと上条と仁美の三角関係の行方くらいでしょうか
ご都合主義も甚だしいですが、やっぱり皆笑顔のエンドにしたかったし
何よりああしないとネミッサが自身を救えないのでス

>>501
同じことを言ってもかまわないじゃありませんか。こうして乙いただけるだけでも
ありがたい限りです


反省としてはキュゥべえが上手く動かせなかったこと
前作から(たぶん同じ人)「自己投影が過ぎる」といわれたのが直せなかったこと
装飾過多が相変わらず直ってねーことでしょうか
その辺何とか直したいです

しばらく間が空くかとは思いますが、pixivのほうも含めまたなんか書きます
その際はお付き合いくださるとうれしいです
温泉とか水着とかあざといネタ書こうかとおもってるけど、ネミッサが肩見せるの
嫌がるんだよなぁ……




だれかいる? おーい、こら、きづいてんでしょ

アンタよ、アンタ。アタシの魂でビジョン・クエストしてたアンタのことよ

ずっと見守ってくれたわね、アリガト



アタシの旅はここでおしまい。あとはみんなとしあわせにくらしましたとさってこと

拍子抜けした?




でもね、ほんとうの宇宙じゃアタシは死んでるしサヤカちゃんマドカちゃんは消えちゃって

ホムラちゃんは苦しい戦いを今も続けてるの

だからこれは祈り。こうであってほしいって思った人の祈り。その祈りが見せた、都合のいい夢かもしれないわ

目が覚めたら、そのうちみんな忘れちゃうかも、ね






もしも、もしもよ? アタシたちのこと忘れないでいてくれるなら

ちょっとウレシーんだけど、そうはいかないわよねぇ。どう? 覚えててくれる……?



覚えててくれるなら、またアタシ暴れてやるわ。そうじゃないと、暴れ甲斐ないしねー

あ、あのベッドのことは……忘れて? あれはさすがに、ねえ。プライバシーもあったもんじゃないわ

でも、でもさアタシたちのこと覚えててくれるならまたどっかで会いましょ



たとえ忘れられても、アタシはアンタの中にいてみしらぬあしたを待ってる

アタシたちの魂を見てくれたアンタとは、かすかでも、何かつながりがあると思う

アタシたちと一緒に生きてくれた、アタシからアンタへの、お礼


アリガト、それじゃ、またね?


『祈りの空より来たりて 切なる想いを胸に 我らは明日への道を拓く 汝 無垢なる翼――――』

殺され殺され殺され続け、それでも『明日』へたどり着いたガラクタの神様の聖句を贈りたいと思い、記します。

前作の終わりには書き込めなかったけど今回は間に合った!
完結乙であります!
外伝も楽しみにしていますがご無理はなさらずに。


私信で恐縮ですがこちらの作品がなかなか投下出来ず申し訳ありません。
お待たせした分よいものをお贈りできるよう執筆中です。いつも応援ありがとうございます。

ゴメンナサイ、でしゃばり筆者です。本当はネミッサの言葉で〆ようとしたのです
ですが、皆さんがあまりにも素敵な返事を下さるので、一言申し添えたくて書きます

本当に皆さんありがとうございます。特に、前作から読んでくださった方にはただただ感謝です
スクライドやデモンペインから引用された言葉がどうにも洒落ていて、おもわず落涙するところでした
いや、益体もない話ですが、正直泣きました。感涙です

大勢の人から「乙」ってもらえるほど大層なモンじゃありませんが、趣向を凝らしたお返事がうれしいです

今週末あたりにhtml化の申請をします。それまで何かあったら適当にあれこれ書いてください
ご意見ご感想、すべて目を通します

それでは、おやすみなさい


追伸
>>508
期待して待っています。いつもいい刺激をくれるので羨ましいやら恨めしいやら……
あと、またぞろ名前なぞ出して、スレをキナくさくしてすみません

あの子には、ネミッサが出来なかったことをかなえてほしいですね……

む、依頼し忘れてた。まぁいいや、しばらくこのままにしとこ

正直言うと、「乙」と多数の書き込みがある作品には嫉妬してましたが
こうして数は少なくとも洒脱なコメントのほうが私には価値があります
ほんと、ありがたい限りです

『戦士の休息』寡聞ながら存じませんでしたので検索しました
個人的にはエルビスプレスリーの名曲「(何度繰り返しても)好きにならずに居られない」で
マミッサをイメージしてましたが、これもなかなか……いい意味でゾクゾクしました
うん、次の短編のアイディアにしよう

なんか、ずいぶん愛されてるなァ、あの子達

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