─────夕方・カッフヱ
ほむら「あゝ、もう。棒金は解ったから、矢倉を教えなさいよ。」
杏子「マミに訊け。難しい将朞は、私は知らん。」
ほむら「嘘。然し、こんな力戰型、私には到底無理よ。」
杏子「…まどかは、石田流しか指さんだろ。其れで負けたら、又来い。」
ほむら「ほむ…。まどかのヴァージニティが賭かって居るの。次は無いのよ。」
杏子「いや、其れは訊いて居ないが。」
ほむら「あ。こんな時間。もう、私は往くわ。」
杏子「帰るのか。」
ほむら「うん。今日、有難う。貴女も速やかに帰宅なさいよ。」
杏子「そうするかな。私も、腹が減った。」
ほむら「…愛人に宜しく。貴女、あの金色ウヅマキを、今宵も愛でるかしら。」
杏子「こ、こら。そんな破廉恥はしない。」
ほむら「ほゝ。不埒ねえ、不埒ねえ。」
杏子「あ。待て。」
杏子「消えちまった。」
─────巴部屋
杏子「只今。」
マミ「あ。御帰り、佐倉さん。」
マミ「外は、暑かったでしょうに。さあ、御風呂を使いなさい。」
杏子「そうさせて貰うよ。」
マミ「上がったら、食卓よ。今晩は、ビュッフヱを拵えるから。」
マミ「鹿目さんの家から、オリイヴを擇山戴いたのよ。」
杏子「うん。何時も、有難う。」
マミ「…わ、私。好きでやって居るの。」
杏子「はゝ。マミの糧理道樂が、凄まじいのは知ってるよ。じゃ、湯を貰う。」
マミ「…うん。」
─────
マミ「オリイヴのロースト、レタス、炙った鮪とで、コンビネイション・サラドにしたわ。」
マミ「麺包は、其方。アリオ・オリオでひと皮ぶん、揚げたよ。」
杏子「旨いもんだなあ。良くもこんな、珎しくってモダンな食材、さ。」
杏子「…私も、糧理のひとつも出来れば良かった。」
マミ「ふゝ。貴女が食べて呉れるから、美味しくなるの。」
杏子「何だい、ニコニコとして。謎掛け。」
マミ「ううん。」
杏子「御馳走様。」
マミ「…ね、佐倉さん。片付けは、私がやるから。此方へ。」
杏子「何か。」
マミ「その、…ね。」
マミ「此処へ。御褒美、下さらない。」
杏子「え、あ。」
マミ「……。」
杏子「…ん。」
マミ「…えへ…。」
─────深夜・寝室
マミ「すう。すう。」
杏子「…良く眠って居るみたい。」
マミ「すう。すう。」
杏子「誰ぞは、茶化して云ったが。…マミの髪は、美しいな。」
マミ「すう。すう。」
杏子「肌理が、細かいや。髪だけじゃあ、ない。全部。」
マミ「すう。すう。」
杏子「優しくて、生眞面目で。」
マミ「……。佐倉さん…。」
杏子「……。」
マミ「すう。すう。」
杏子「…寝言か。」
─────深夜・公園
杏子「…如何にも、寝就けない。」
杏子「あの變態、私達の閨を覗いて居るんじゃあ無いのか。」
杏子「……。」
早乙女「薄曇る宵に、月見かしら。」
杏子「…先生か。」
杏子「考え亊。…否や、迷い亊。」
早乙女「學徒じゃあ無く為ったのだから、伍月蝿い亊、云いやしないわ。私にも壱本、戴ける。」
杏子「…もう、半年に為るかなあ。ほら。」
早乙女「雲雀、か。」
早乙女「貴女らしい。何より、梱の色が良いわ。」
杏子「不味い烟草、だよ。親父と同じで有るだけ。」
早乙女「其の迷い、とは。」
杏子「……。」
杏子「パスカル曰く。」
早乙女「…鳥は、天高く映えて、自由を知り。」
早乙女「其の迷える心を、人は、知らず…。」
杏子「…パスカルかい。」
早乙女「否え、私。」
杏子「人に訊いて置いて…。烟に巻かせて呉れるな。」
早乙女「解ったもの、貴女の心。」
早乙女「空虚なんでしょう。」
杏子「……。」
杏子「そうだよ。」
早乙女「私だって、雲雀だから。」
杏子「生憎。此方は、恋煩いじゃあ無い。」
早乙女「同じよ。倖せを恋うて居るのに、違いは無いわ。」
杏子「はゝ。しゃべくりが上手いなあ、大人とは。」
早乙女「茶化すわねえ。」
杏子「…教えを乞う。」
早乙女「愛人から、抱擁を擇山受ける亊ね。」
早乙女「そんな迷い、如何だって良く為る。」
早乙女「美しい雲雀らしく…空を駈け回って居れば。」
早乙女「屹度、何方かが心惹かれて、貴女を、抱き留めるわ。」
早乙女「ではね。」
杏子「…酒呑みだな。足がふらついて居やがる。」
杏子「……。」
─────朝・通學路
マミ「惡いわね。毎朝、鞄を持たせて。」
杏子「否や。其れ位しか、出来無いから。」
マミ「充分。有難う。」
杏子「うん…。」
マミ「浮かない顏して居るけど。」
杏子「…昨日、早乙女先生と会った。」
杏子「で、やっぱり。マミと一緒に、登校出来れば良かったな、って。」
マミ「…氣にしなくて良いのよ。貴女の個性だもの。」
マミ「昼食、何時もの様に冷蔵庫の中に有るので、召し上がってね。」
杏子「…解った。往ってらっしゃい。」
杏子「……。」
杏子「さて。今日は、如何するかな。」
杏子「…鳥らしく、噴水の脇で、麩菓子の欠片でも突くかよ。はゝ。」
─────噴水廣場
杏子「水の落ちる様は、涼し氣だな。」
杏子「眺めていると、此方の躯迄、冷たく為るみたい。」
杏子「…否や。やっぱり暑い。木陰の長椅子に…。」
さやか「……。」
杏子「…さやか。」
さやか「…あ。久し振り。」
杏子「學校は。」
さやか「へゝ。ちょっと、避暑。」
─────木陰
さやか「如何、調子は。」
杏子「相変わらずだ。盗みは、しなく為ったが。」
さやか「そう。じゃあ、マミさんとは、上手くやって居る模様だね。」
杏子「要らない世話。」
さやか「次いでに、學校にも通えば壱人前なのに、さ。」
さやか「如何して、辞めちゃったのよ。」
杏子「簡単に云うない…。私には、向いて無いんだろ。」
杏子「…其方こそ。避暑でこんな処迄、来るかよ。」
さやか「…ん。」
さやか「恭介に、厭われちゃった。」
杏子「…む。」
さやか「彼。ヴァヰヲリン、彈け無いから。私、音樂に係る話は、止めてるの。」
さやか「でも、…時々、不安定に為るから。
支えてあげたい、って、思って居るのに。」
さやか「私。何時も。空廻りで。如何したら良いか…解ら無い…。」
杏子「……。」
さやか「御免なさい…。もう、往くね。」
杏子「あ、あ…。さやか。」
杏子「……。」
─────后後・巴部屋
杏子「…鶏とマッシュルウムの炒め物。」
杏子「マミ。」
杏子「今日も、私だけの為に、糧理をしたのか。」
杏子「……。」
─────夕方・公園
QB「キュップヰ。こんにちは、杏子。」
杏子「…QBか。」
QB「…何時もの様な氣力が、君には感じられ無いなあ。」
杏子「そうかい。」
QB「何か。」
杏子「……。」
─────
マミ「只今。」
マミ「佐倉さんは…居ない。」
マミ「ま、何時も通り…ん。」
マミ「食べて居ないのね。これは、珎しい…。」
マミ「…手紙が。」
マミ「……。」
マミ「…何…。何よ、こんな…。」
マミ「…佐倉さん……。」
─────
杏子「親も居ず、學校にも馴染め無かった私には、さやか達が眩しい。」
杏子「…マミの厚意を、不意にしちまった。」
QB「…良く解ら無いが、今からでも應じれば良いんじゃあ無いのか。」
杏子「其れがすんなり出来れば、佳かったんだが。」
QB「…果たして。」
杏子「學を積まねば、簡單には這い上がれ無いよ。」
杏子「私の得意は、と云えば、ゲエムに興じる亊だけ。」
杏子「こんな…穀潰しが家に居ても、迷惑が掛かるばかりさ。」
QB「へえ。君の性分とは、眞しく、極惡非道のものかと思って居たが。」
杏子「……。マミは、優しいから。屹度、貴女は其れで良いと云うだろ。」
QB「では、良いんじゃあ無いの。何か、不味い亊かい。」
杏子「…別に。愛される價値が無いと、氣付いただけ。」
QB「……。」
杏子「幾ら頑張っても、報われ無い奴が居るんだ。」
杏子「私が豊かで在る道理が無い。」
杏子「何時も孤獨で。まともな者と、関わっちゃ不可ないんだ。」
杏子「飢えりゃ、盗みを働いて、辛うじて糧を得て。眠けりゃ、寝る。」
杏子「こうして、私の生涯は、汚れた租界の隅に終わって往くだろう。」
杏子「はゝ。」
杏子「……。」
QB「…此れで、泪を拭くと良い。」
杏子「……。有難う…。」
QB「本当の亊、云おうか。」
杏子「…ん。」
QB「君の其の、悩みの種を、此処へ呼んだ。直ぐにも飛んで来るだろう。」
杏子「……。」
QB「良く考える亊だ。…では。」
─────
マミ「……。佐倉さん。」
杏子「…何で…。」
マミ「私の倖せを。貴女、勝手に決めないで…。」
杏子「……。済まん。」
マミ「私、将朞が好きよ。」
杏子「…あゝ、知ってる。」
マミ「香車が好き。眞っ直ぐにしか進め無い香車が。」
杏子「うん…。」
マミ「柘植と漆で出来て居なくたって、良いの。」
マミ「松や、桐…或いはボウル紙で誂えて、其れで充分なの。」
マミ「そうして、無為に闘う亊こそ、樂しい!」
杏子「…じゃあ、私の倖せは、貴女だ。」
マミ「…帰って来て呉れるわよね。久し振りに壱局、御相手して。」
杏子「うん。…うん、宜しく。」
マミ「泣かないの。香車の杏子ちゃん。真っ直ぐ。」
マミ「ほら、ほら。金色ウヅマキ。触って触って。」
杏子「…起きてたのか。」
杏子「…變態。」
マミ「ふゝ。御互い様。」
終いです
以下、将朞スレ
もう何もテイロ・フヰナアレ。
7六歩
乙
旧字使ってるけどもしかして旧字全部把握してるの
変換で出ないやつとかどうやってるのよ
>>34
音読み変換も、区点入力も、あるんだよ
将棋の下ネタ以外のSSはつまらん
>>37
泣きそう
どんだけフルボッコなんですか
もっと叩いてお願い…
はよう糞マミれになろうぜ
くそつまんね
>>43
IDがpOla
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