空港
ことり「それじゃあ、穂乃果ちゃん!海未ちゃん!行ってきます!!」
穂乃果「こ"と"り"ち"ゃ"~ん"いかばぃべぇ~!」オイオイオイオイ
ことり「ほ、穂乃果ちゃん......」
海未「穂乃果...。ほら、そんなに泣いてはことりが行きづらいでしょう。泣かないと言った約束忘れたんですか!」コラッ
穂乃果「だっべぇ~。や"っ"ばり"ごどり"ち"ゃ"ん"い"な"い"どむ"り"だよぉぉぉぉ」
海未「あなたは何処ぞの藤原竜也ですか......全く。ほら、ことり、穂乃果は私に任せて。行ってらっしゃい」
ことり「あはは...ありがとう海未ちゃん。じゃあ」テフリフリ
海未「......」テフリテフリ
海未「......」
海未(振り返らずに行ってしまいましたね...)
穂乃果「うぇぇぇん!」オイオイオイオイオイ
海未「ほら、穂乃果帰りますよ」
タッタッタッ
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ことり「海未ちゃん!」
海未「えっ!?ことり、あなた行ったのでは!?ほら、早くしないと時間が......」
ことり「忘れ物しちゃった!」
海未「忘れ物!?まさかまた枕を取りに帰るとか言い」
チュ
海未「ふぇっ!?」
穂乃果「うへへい!?ことりちゃんやるぅ!!」
ことり「えへへ。ほっぺたでごめんね。じゃあ、本当に行ってきます!」タッタッタッタッ
ことり「かならずかえってくるからね〜」ブイッ
海未「こ、こんな公衆の面前で......」
海未「は......破廉恥です////」プシュゥ
穂乃果「うわ!?う、海未ちゃんしっかりーー!?」
海未(こうして、ことりは笑顔で日本を離れて行きました。
もう少し、穂乃果みたいに泣いて別れを惜しんでくれても良かったのではないのですか?とも思いますけど、
それはきっと、私の我儘なのでしょうね)
海未(あれから数年。
ことりは海外で有名な賞をとり、一躍時の人となりました。
その賞を取れば一流デザイナーの仲間入りをできる、とかいう、そういうやつです。
ことりからは私に真っ先に連絡がきました)
ことり『海未ちゃん海未ちゃん海未ちゃん!!』
海未「むにゃ......こひょり......いまにほんはなんじだとおもっひぇるんですかぁ......」ウッラウツラ
ことり『やったよぉ!!ことり!!賞取れたよ!!これで日本に帰れる!!うわぁぁあああん!!!』
海未「そうですか......にほんに......かえって......うむ......ではまたわたしのまぶたはごっつんこでしゅね.....おやしゅみなしゃい......」
ことり『え!?ちょっちょっと!?寝ぼけないで海未ちゃん!?海未ち』
ピッ
海未(寝ぼけていたとはいえ、ことりの報告の電話を切ってそのまま眠ってしまった私は、ことりの電話で聞きつけた穂乃果とにこと希にフルボッコに叩き起こされました)
海未「あの時は私が悪いといえ、とても怖かったです......」
海未(日本に帰れる、と報告してくれたことりですが、世界的な賞を獲り、有名になってしまったことで、
本人が望む通りにはなかなか日本に帰ってくることができませんでした)
---
ことり『ごめん......海未ちゃん......やっぱりまだ帰れそうにないや......本当にごめんね......』
海未「......」
海未「......そうですか」
ことり『......嫌いになった?』
海未「怒りますよ?」
ことり『ごめんなさい......。でも、海未ちゃん言葉にして伝えてくれないから、不安になっちゃうよ』
海未「私は大丈夫ですから。......それより、もう夜も遅いでしょう? 体調管理も仕事のうちですよ?」
ことり『うん......わかってるよ......ごめんね。今度ちゃんと埋め合わせするから』
海未(今度って、いつですか?)
海未「......すみません。そろそろ出ないと。切りますね」
ことり『......あの、海未ちゃん!』
海未「どうしました?」
ことり『えっと、......そのね......』
海未「......」
ことり『......やっぱりなんでもない。おやすみ。行ってらっしゃい』
海未「はい。......おやすみなさい。いってきます」
ツ-ツ-ツ-ツ-
海未「......」
海未(私だって、寂しいし、会いたいです。ですけど、私がそれを言葉にしたからってあなたの仕事の都合がついて帰国できるわけではないのでしょう?)
海未(ことりが忙しいことも、仕事に誇りを持っていることもわかっています)
海未(それに......私は......)
海未「.........」ハァ
海未(話し合わなければと思うのに、その時間さえ取れないなんて)
海未「.....何をやっているのでしょうか。ことりも私も」
海未(私はいつしか、通話後のビジートーンを聴くことが苦手になっていました)
海未(ことりは留学して以来帰ってきたのは、成人式の一度きりでした)
海未(再会というよりはことりも私も家族との関わりがメインで、あまり時間が割けず、ことりは同窓会にも出ずにトンボ帰り)
海未(いつも、我慢しているのは私。そんな意識が私の中に蔓延していたのだと思います)
海未(そんな時、私はとある人と久しぶりの再会をしたのです)
街中
海未(さて、今日の用事はこれで終わりましたね。帰りましょう)スタスタ
ドンッ
海未「いたっ」
「きゃっ!?す、 すみません」
海未「いえ、こちらもよそ見をしていたもので......って、真姫!」
真姫「えっ......あっ、......海未ちゃんじゃない。なんだ」
海未「なんだとはなんですか。久しぶりですね」
真姫「ホント、久しぶり。元気してた?」
海未「えぇ。そちらは?」
海未(真姫とは医学の大学に進んで以来、何かと予定が合わずにいたので、本当に偶然の再会でした)
真姫「よければお茶でも......って言いたいところだけど、ごめんね。ちょっと急がなくっちゃいけなくて。海未、連絡先変わった?」
海未「いえ、変わっていませんが......」
真姫「わかった。なら、また連絡するわね。それじゃあ」
海未(真姫はまた人並みの中に消え、すぐに分からなくなってしまいました)
海未(真姫もことりに負けず劣らず忙しい方だと承知していたので、社交辞令かと思っていたのですが)
海未(その再会から数日後、道場から自宅へ引き上げた私の元へ見計らったようなタイミングで真姫から連絡がありました)
真姫『明日にでも一緒に食事どうかしら?都合がつかなければ代わりの日を教えて?』
レストラン
海未「改めてお久しぶりです」
真姫「うん。久しぶり。元気にしてた?」
海未「えぇ。おかげさまで」
真姫「おかげさまでって。数年ぶりに会っただけなのにそんなかしこまらなくていいわよ」
海未「そうですか? でも、本当に真姫とは久しぶりすぎて、なんだか初めて会った時のように緊張してしまいますね」
真姫「もう。何よそれ。とりあえず、何か注文しましょう」
海未(私と真姫はそれぞれの近況を報告しあいました)
真姫「今は西木野の病院で働いてるわ」
海未「そうなんですか。真姫は夢を叶えたんですね。おめでとうございます」
真姫「なによ、医師免許の国家試験に合格した時にμ'sのみんなで祝ってくれたじゃない」
海未「えぇ。ですが、ふふっ、なんだか不思議ですね」
真姫「なにがよ?」
海未「真姫と私が2人っきりになるのは、たいてい音楽室で、お互いに曲や歌詞を考えながらだったのに」
海未「今はこうやってお酒を飲みながら、互いの近況を報告しあってます」フフッ
真姫「まぁ、ここのワイン美味しいから」
海未「あの頃は楽しかったです。......私の周りにはみんながいてくれました。真姫も、穂乃果も......そしてことりも」ゴクッ
真姫「......」
真姫「海未ちゃんは今、何をしているの?」
海未「私ですか?」
真姫「えぇ。だって、さっきから私ばかり話をしているわ?海未ちゃんの話も聞かせてよ」
海未「そんな、私の話なんてつまらないですよ」
真姫「つまらないかどうかは、私が決める。聞かせて?海未ちゃんの話」
海未(そんな風に私の話を聞きたがってくれる人が近くにいなかったからでしょうか。ジッと私のことを見つめてくる真姫の瞳からどうにも私は目が離せなくて......)
海未「私は、大学卒業とともに園田道場の師範を譲り受けて、今は師範をしています」
真姫「うん。日舞もまだ続けてるの?」
海未「はい。日舞も書道も弓道も相変わらず続けていますよ」
真姫「凄いわね、海未ちゃんは。高校生の時から凄かったけど」
海未「そ、そんなことは//// 私なんかより真姫やことりの方が凄いですよ!!///」
真姫「そんな、自分を卑下したような顔で自信なさげに言わないでよ。十分海未ちゃんだって凄いわよ」
海未「私は毎日同じことを同じ場所で繰り返すことしかできませんから」
真姫「......」
真姫「反復練習がいかに大切かなんて、私が言わなくても海未ちゃんならわかってるでしょう?」
海未「ですが......」
真姫「じゃあ、こう考えて?こんなに移り変わりのスパンが速い現代で、あなたはずっと同じ場所に居続けている」
海未「......」
真姫「μ'sのみんなはあの場所からそれぞれの場所に旅立って、それぞれに自分の新しい場所を見つけているわ」
海未「......そうですね」
真姫「みんな離れ離れになって、数年に一度会えるかどうかも疑わしい。私はみんなより大学の期間も長かったし、それから研修だったりなんだったりで本当にみんなに会う時間が少なかった」
真姫「仕方がないことだってわかってたけど、正直......寂しかったわ」
海未「寂しいなんて、素直に言えるようになったんですね、真姫」クスクス
真姫「茶化さないで。もう。素直に言わないとどうしようもないくらい寂しかったのよ。こっちはまだ大学通ってるのにみんなどんどん社会人になって忙しくなって、花陽と凛とも時間合わなくなっちゃったし」
真姫「それでもあなたはずっとあの場所に居るわけでしょう? 園田道場に行けば海未ちゃんに会えるわけでしょう?」
海未「はぁ...まぁ...居ますけど......」
真姫「それが私たちにとってどんなに安心することなのか、あなたは知らないのよ。でも、知るべきだわ。あなたが変わらずに居てくれるから、私たちは安心して変わっていけるの」
海未「......」
真姫「今日こうして会えてるのだって、その結果なのよ。ことりや絵里みたいに海外飛び回ってたり、にこちゃんみたいに日本中渡り歩いてたら、あんな渋谷の人混みの中でたまたま偶然だとしてもあえてるわけないんだから」
海未「......はぁ」
真姫「なんだか、よくわからない話になっちゃったけど、とにかく。私は海未ちゃんが海未ちゃんのままで居てくれてよかった、って話ね?わかった?」
真姫「また連絡するわね」
海未(そう言ってその日、真姫は帰って行きました)
海未(久しぶりで少しだけ何を話せばいいのか戸惑っていましたが、真姫との食事も会話も楽しくてお酒の効力もあってか、昔よりも話をしてくれる真姫もなんだかとても新鮮でした)
海未(その日以来、ちょくちょく真姫から連絡が来て、真姫と食事をしたり何処かへ行くことが増えて行きました)
海未「なんだか、私に時間を割いてもらっているみたいですみません」
真姫「謝らないで」
海未「ですが、真姫だって忙しいのでしょう?」
真姫「......忙しいわよ」
海未「なら、私と過ごすより貴重な休日くらい自分のために過ごして」
真姫「大丈夫。十分、自分のために過ごしているわ。海未ちゃんと一緒に居るの、なかなか楽しいもの」
海未「え......」
真姫「ほら、行きましょう? 美術館閉まっちゃうわ」
海未(真姫はその日、自然に私の手をとり、繋いできました)
海未(その手を払うこともできたのに、私はどうしてだか、その手を振り払うことができませんでした)
このSSまとめへのコメント
え!?続きは!?まきうみの香りがする!!