クマ「ゲッターロボ・クマー!」 (511)

ゲッターロボの二次創作。擬音多量で読み辛い読解し辛い。
オリキャラ。カオス。十中八九ゲッター線に導かれる。
完全な自己満足なのを読む上でご了承くれ。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1458911012

イーグル号パイロット『ぐ、おぉぉぉぉぉ……』

ジャガー号パイロット『お、おお、おおお……!』

オペレーターA「イーグル号! ジャガー号! 安定していないぞ、どうした!」

オペレーターB「血圧、網膜反応低下! 博士、このままでは危険です!」

早乙女「続けろ」

オペレーターB「しかし!」

早乙女「我々にただの人間は必要ない」

イーグル号パイロット『ぎ、ぎ、ぎ……ぎゃばっ――――』

ジャガー号パイロット『ぎゃああああ…………』

オペレーターA「……イーグル号、ジャガー号、共にパイロットの生体反応消失。墜落します……」

早乙女「……ベアー号は帰投。イーグル号とジャガー号の残骸を回収しろ」

カラン カラン



???「…………また、違ってたクマ……」


 ゲッターロボ・クマ


.    第 一 話


.   【ナガレ】

―――

――――――

―――――――――


黒服A「一文字 流(イチモンジ ナガレ)だな」

ナガレ「……そうだが、お前らは?」

黒服B「それを知るかどうかは、お前次第だ」

チャキ

ナガレ「ヘッ……一般人相手に刃物を出すか。とりあえず、まともじゃねえのはよく分かった」

黒服C「掛かれ!」

ババッ

ナガレ「おっと!」ヒョイ

黒服A「ハアッ!」

黒服B「ウオーーー!」

ナガレ「とろっくせえなあ! オラァ!」

ドカッ! バキッ!

黒服B「がっ……」

黒服A「ぐはぁ……」

ドサ……

ナガレ「さて、これで残るはお前一人。そらそらどうした。眠りこけたお仲間を起こさなくていいのかよ?」

黒服C「クソガキが……イヤーッ!」

ドシュッ

黒服C「ば、馬鹿な……剥き身の刃を素手で……!?」

ナガレ「残念だったな」

ゴキャッ

黒服C「ぎょへっ……」

ナガレ「次はバズーカでも持ってきやがれってんだ。おー、いて……」


カラン カラン


ナガレ「ッ……! 何モンだ!」

早乙女「流石だな、一文字 流」

ナガレ「……誰だ、ジジイ。テメエがこいつらを差し向けたのか?」

早乙女「そうだ、と言えば?」

ナガレ「だとしたら、慰謝料を貰わねえとな。見ろよこの手の怪我、どうしてくれんだよ?」

ナガレ「有り金全部寄越しな、ジジイ」

早乙女「クックック……調べた通りのクズだな」

ナガレ「何だと?」

早乙女「18歳。男。両親は小学生の頃にハチュウ人類の襲撃に巻き込まれて死亡」

早乙女「親戚の家に引き取られるが、非行を繰り返し、中学を中退」

早乙女「そして親戚の家を出、以降は暴力と恫喝で得た金で生計を立てている」

早乙女「技術も減ったくれもない喧嘩殺法を得意とする……」

ナガレ「……何者だ。俺に何の用だ」

早乙女「ハチュウ人類と戦ってもらう!」


早乙女「人類の希望、『ゲッターロボ』に乗って――――!」


ナガレ「……下駄、ロボ!?」

 ―― 早乙女研究所 ――


ナガレ「浅間山の麓に、こんな研究施設があったとはなー」

早乙女「人類の敵、ハチュウ人類……その猛威に対し、世界各国は各々の対抗手段を作り出した」

早乙女「ハチュウ人類が操る巨大ロボット『メカザウルス』に対抗するため、同じく巨大ロボット、スーパーロボットを……」

ナガレ「でも、まともに戦えているのはアメリカのテキサスマックとステルバーくらいじゃねえか」

ナガレ「ま、それも辛うじてってレベルだけどな」

早乙女「人類が開発したスーパーロボットを駆使して尚、人類滅亡への道を緩やかにしただけ」

早乙女「それは、そのロボットがハチュウ人類に対する正解答ではないからだ」

ナガレ「とすると、ここはその正解を作ってるってわけか? その、下駄ロボ?」

早乙女「ゲッターロボ」

ナガレ「そう、それ。それが、今までのロボットと何が違うってんだ?」

早乙女「正しくは、ゲッターロボがエネルギーとするゲッター線だ」

早乙女「宇宙から降り注ぐ進化の光線……今日に至るまで、地球上のあらゆる生命体に進化と淘汰を与えてきた」

早乙女「ハチュウ人類の祖先である恐竜は、ゲッター線によって滅ぼされ、地底へと追いやられたのだ」

早乙女「ゲッターロボは、そのゲッター線を武器とする……」

ナガレ「早い話、弱点を突く方法を見つけたって事だろ?」

早乙女「馬鹿だが、要点を掴むのは上手いな」

ナガレ「殺すぞジジイ」

早乙女「着いたぞ」

ナガレ「アン?」

早乙女「これが、ゲッターロボだ――――」

ナガレ「……俺には、バカでかい飛行機に見えるんだが」

早乙女「紅い機体がイーグル号。白い機体がジャガー号。黄色の機体がベアー号」

早乙女「この三機のゲットマシンが合体する事で、ゲッターロボはその姿を現す」

ナガレ「合体……? これが……?」

ナガレ「クックック……アーッハッハッハッハ!」

ナガレ「クク……付き合ってられねえな、ジジイ。俺は帰らせてもらう」

早乙女「帰る場所があるとでも思っているのか? お前のような屑に」

ガッ

早乙女「離せ」

ナガレ「本当に殺すぞ、ジジイ」

早乙女「このゲッターロボは、常人には乗れん。これから先の地獄に、人間は不要だ」

早乙女「死んでも良い者が、そして死なない者のみが、このゲッターロボに乗れる!」

ナガレ「ならまずテメエが死ぬか!? アアン!」


キュムキュムキュム

???「止めるクマ!」

ナガレ「ア? てめえ、誰に物を……」

???「早乙女博士を離すクマ!」

ナガレ「…………ジジイ、これは俺の見間違いか? 頭がおかしいのは俺か?」

パッ

早乙女「さてな。狂っているのは、この世界なのかもしれん。とにかく、これは現実だ」

キュムキュム

???「早乙女博士、大丈夫クマ?」

早乙女「ああ、心配ない」

ナガレ「これが現実なら、ジジイ……俺の目の前にいるのは」

ナガレ「喋るチビの『熊』って事になるんだが――――!?」


クマ「うるさい人間クマ! クマはクマだクマ!」

ナガレ「ク、クマだと……!」

早乙女「そうだ。こいつは正真正銘の熊だ」

ナガレ「嘗めんじゃねえぞ、喋れるクマがいるものかっ!」

早乙女「それを可能としたのが、ゲッター線だ」

ナガレ「なァに?」

早乙女「ゲッター線は進化を促す光線。こいつは取り分け、それの影響を受けやすい体に生まれた」

早乙女「急激な進化を受けたこいつは、人間の言語を理解し会話を行える知能と、二足歩行と前脚の自由を獲得した」

早乙女「熊のとしての本来の強靭な肉体を有したままに、だ」

クマ「その通りクマ」

ナガレ「おい、熊公」

クマ「なにクマ?」

ナガレ「名前が?」

クマ「クマだクマ」

ナガレ「生物学上の分類は?」

クマ「ツキノワグマだクマ」

ナガレ「語尾が?」

クマ「クマだクマ」

ナガレ「一人称」

クマ「クマだクマ」

ナガレ「ジジイ、翻訳をよこせ!」

クマ「ちゃんと喋れてるクマ!」

クマ「早乙女博士、このうるさい人間は何者クマ?」

早乙女「パイロット候補だ」

クマ「えっ……この人間がクマ?」

ナガレ「乗るなんて言ってねえ」

クマ「こっちだってお断りクマ! お前みたいな野蛮なサルみたいな人間と一緒にゲッターに乗るなんて嫌クマ!」

ナガレ「何だと? お前まさか、あの機械に乗るのか?」

早乙女「そうだ。こいつはベアー号パイロット」

クマ「正式なゲッターパイロットだクマ!」

ナガレ「冗談じゃねえ! 得体の知れねえ生き物とワケの分からん機械に乗れってか!」

ナガレ「ますます付き合えねえな! 他の物好きを当たりやがれ!」

ギュインギュイン! ギュインギュイン!

ナガレ「なっ、なんだ! このサイレンは!」


「ハチュウ人類の襲撃! ハチュウ人類の襲撃! メカザウルスが一機! 南南西三〇〇m!」


早乙女「来たか……」

ナガレ「ハチュウ人類だと! このサイレンは、奴らの襲撃を知らせてるのか!」

クマ「早乙女博士ッ! クマ、ベアー号に搭乗するクマ!」

キュムキュムキュム

早乙女「ああ。ナガレ、お前も乗れ!」

ナガレ「はあっ!?」

早乙女「ワシがジャガー号、お前はイーグル号だ! 来い!」

ナガレ「ふざけた事抜かすな、ジジイ!」

ナガレ「勝手に連れてきて、勝手に俺の立場決めて、テメエ何様のつもりだ!」

ナガレ「奴らハチュウ人類に、あんなスクラップで何ができる!」

ナガレ「動かせるかどうかも、戦えるかどうかも分からねえ機械に、テメエの命を乗せられるワケねえだろ!」

ナガレ「俺は俺の為だけに生きる! こんなところで死ぬなんざゴメンだし、お前らの言葉に従うのは癪だ!」

ナガレ「勝手にやってろ、俺は逃げる!」


クマ『情けないクマ!』


ナガレ「ッ……スピーカーからあの熊公の声が」

早乙女「クマ……」

クマ『所詮は口だけクマ。威張っていても、実際は臆病者の度胸無しだクマ!』

ナガレ「ンだと……降りてきやがれ、クマ野郎! ぶっ殺してやる!」

クマ『野生では、今日明日生きられる保証はないクマ。いつ死ぬか分からないクマ』

クマ『だからみんな知恵を絞って、本能に従って、時には戦い、時には逃げたクマ!』

クマ『でも逃げたら、弱くなるクマ! どんどんと、体とは別のところが死んでしまうクマ!』

クマ『だから戦うクマ! 戦えるなら、勝てるなら……明日の為に、今日を戦うんだクマ!』

クマ『今のお前は群れの中で一番下クマ! 一番弱い、一番いらないクマ!』

クマ『それでいいクマ!? 達者な口は、それを動かす自信があるからじゃないのかクマ!?』

クマ『一文字 流!』

クマ『お前を見つけた早乙女博士を、お前を選んだゲッターを信じるクマ!』

ナガレ「…………口が達者なのは、お前も同じじゃねえか」

ナガレ「ケッ! あのクマなんぞに発破掛けられたってのがムカつくがな」

ナガレ「気が変わったぜ、ジジイ。乗ってやろうじゃねえか、あの機械に」

ナガレ「お前が作った自慢の『ゲッターロボ』にッ!」

早乙女「ふっ……それでこそだ」

早乙女「来い、ナガレ!」

ナガレ「命令すんな、ジジイ!」

 ―― イーグル号内部 ――

ナガレ「…………って、操作方法分からねえじゃねえか!」

ナガレ「説明書とか付いてねえのか! おいジジイ、熊公!」

クマ『騒ぐんじゃないクマ! お前みたいな単細胞の馬鹿でも操縦できるように、使うのは手元足元のレバーとスイッチだけクマ!』

クマ『それ以外は音声認識になっているクマ!』

ナガレ「レバーとスイッチ? こ、これか……?」

ガシッ

ナガレ「おい、本当にこれで大丈夫なんだろうな!」

早乙女『右手のレバーを引けば右に、左手のレバーを引けば左に進む』

早乙女『両方のレバーを同時に奥にやれば加速、引けば減速だ』

ナガレ「意外と簡単だな……よし、やってやらァ!」

クマ『ナガレ。パイロットスーツは着なくて大丈夫クマ?』

ナガレ「へっ、あんなクソだっせェもん着れるかよ」

ナガレ「大体、お前だって手袋以外は何も着けてねえじゃねえか」

クマ『クマは丈夫だからクマ。でも普通の人間は、ゲッターの負荷に耐え切れないクマ』

早乙女『クマよ、心配は無用だ』

クマ『早乙女博士……でもクマ』

早乙女『確かにパイロットスーツはゲッターの常軌を逸した加速や、あり得ない行動による負荷を軽減するように設計されている』

早乙女『だが、この戦い……こんな道具がなくとも戦える者しか勤まらん』

ナガレ「ぺちゃくちゃ御託を並べるな。やってやればいいんだろうが!」

クマ『……後で泣いたって知らないクマ!』

ナガレ「泣くかよ、テメェこそ散々能書き連ねてくたばるなよ!」

整備士『終わりました、いつでも出せます!』

早乙女『分かった。このまま出る。下がっていろ』

整備士『ハイ! みんな、下がれェーっ!』


ナガレ「ああ、そうだ、熊公」

クマ『何クマ?』

ナガレ「お前は言葉が多すぎる。さっき俺を焚き付けた時だがな、あんなもんは一言でいいんだ」

ナガレ「『死にたくなければ乗りな、クズ』。これだけでよ」

クマ『……クマはそこまで冷血じゃないクマ』

ナガレ「要約すればそんな事を言っていたがな」

早乙女『話はそれまでだ。出るぞ!』

ナガレ「イーグル号!」

早乙女『ジャガー号!』

クマ『ベアー号!』



「「「発進!」」」



バシュゥン!

ヒュオオオ……

ナガレ「ひょおー、すげえー!」

クマ『はしゃいでる場合じゃないクマ! 後方、メカザウルスを視認したクマ!』


メカザウルス「ギシャアアアアッッッ!」

ズズゥゥン……ズズゥゥン……


ナガレ「で、けえ……!」

早乙女『全高四〇mちょっとと言ったところか……』

ナガレ「チッ……ぶっ飛ばしてやる!」

ギュオン!

クマ『馬鹿っ、勝手に先行したら危険クマ!』

早乙女『戯けが……!』

メカザウルス「ギシャアアッッ!」

ズゥン!


ナガレ「操作はレバーとスイッチと音声認識……そしてレバーの持ち手の端にはスイッチ」

ナガレ「こう言うのは得てして武器の発射スイッチって相場が決まってるんだよ!」ポチッポチッ

パラララララララ

ナガレ「オラオラオラオラ!」

パラララララ

メカザウルス「ギシャアッ!」

カンッカカカンッカンカンッ

ナガレ「たっ、弾がはじかれた!」

メカザウルス「ギシャアアッッ!」ブオン


ナガレ「うおっ!」グイッ

ギュオン

ナガレ「あっぶねえ……どうなってんだジジイ、武器が全然効かねえじゃねえか!」

早乙女『当たり前だ。それは生身のハチュウ人類用につけた豆鉄砲に過ぎん!』

クマ『このくらいで倒せるなら、他のスーパーロボットは苦戦しないクマ!』

ナガレ「それを早く言えよ! だったらどうする!」

早乙女『合体だ!』

ナガレ「合体……さっきも言ってたがよ、できるのか!」

クマ『それが『ゲッターロボ』の本領クマ! 早乙女博士が作ったゲッターを信じるクマ!』

メカザウルス「ギシャアアアアッッッ!」バクンッ


ナガレ「な、なんだ。メカザウルスの肩が開いたぞ!」

クマ『ミサイルクマ!』

ナガレ「なにぃっ!?」


メカザウルス「ギシャアッ!」

バシュンバシュンバシュンッ!


ナガレ「撃ってきやがったあっ!」

クマ『ナガレ! 加速してミサイルから逃げながら合体するクマ!』

ナガレ「ええい、それしかねえんだろ! やってやるよ!」

クマ『一列になるクマ! イーグル号が先頭、ジャガー号が真ん中、ベアー号が最後クマ!』

早乙女『まずはワシとクマが合体する! ワシらがお前のイーグル号と合体するのだ!』

クマ『ナガレは速度を落とすだけでいいクマ! 合体の衝撃は大きいクマ、気を付けるクマ!』

早乙女『合体の際に、右のレバーのスイッチを押しながら叫べ! 『チェンジ、ゲッター1』だ!』


キィイイン……!

ナガレ「うるせえーーー! ミサイル避けながらお前らの話なんざ聞けるかァ!」


クマ『一列クマ!』

ナガレ「おりゃあッ!」グイッ

ギュオン

クマ『よし! 早乙女博士、いくクマ!』

早乙女『来い!』

ギュオン……

ガシィン!

ナガレ「ジジイと熊公のマシンが!」

早乙女『ぐうぅ……!』

クマ『早乙女博士、大丈夫クマ!?』

早乙女『心配するなッ……それよりも、合体を……!』

ナガレ「おいおい、大丈夫かよジジイ!」

クマ『よそ見しないクマ! ナガレ、スピードを落とすクマ!』

ナガレ「俺だけ蚊帳の外かよ、うおおおっ!」グイィ

ヒュウゥン……

早乙女『レ、レバーのスイッチを押して叫べ、ナガレェ……!』

ナガレ「ああ!? なんて言った!」

クマ『『チェンジ、ゲッター1』クマ!』



ナガレ「チェーーーンジ、ゲッターァ 1 !」



ガシィン!


グググ……


グワオン!


キィイイン……ドワオ! ドガン! バゴォン!


ヒュー……ズガァン!

パラパラパラ……

ナガレ「ミサイルの直撃を受けて、あの高さから落下して、無傷かよ……」

クマ『成功、したクマ』

早乙女『フッ……訓練も無しに、成功させるとは……』

ナガレ「これが…………これが!」


ナガレ「『ゲッターロボ』か―――――ッ!」

メカザウルス「ギシャアアアアッッッ!」

ナガレ「うるっせえ!」グイッ


ガン!


ガン! ガン! ガン! ガン!


ナガレ「おらあっ!」グイッ

バキィッ!

メカザウルス「ギャアアアアッッッ!」

ナガレ「まだまだアッ!」

ゴシャアッ!


クマ『すごいクマ……説明も受けないで、既にゲッターを手足のように動かしているクマ……』

早乙女『ぐ、うう……そうだ、それでいい、ナガレ……!』

ナガレ「もう一発……」

メカザウルス「ギシャアアッッ!」ブンッ

ドガッ!

ナガレ「ウオオオッ!」

早乙女『がはぁっ!』

クマ『クマーッ! ナ、ナガレ! むやみやたらに攻撃しても埒が明かないクマ!』

ナガレ「黙ってろ熊公! だったらテメエがどうにかできるってのか!」

早乙女『ぐふっ……。武器をぉ、使え……!』

ナガレ「ジジイ! ……血ィ吐いてんじゃねえか、オイ! 大丈夫かよ!」

クマ『早乙女博士!』

早乙女『ゲッター……ビームだ……!』

ナガレ「ゲッタービーム……?」

早乙女『ゲッター線をエネルギー光線に変換し、放つ……奴らハチュウ人類にとって……天敵の……!』

ナガレ「ジジイ!」

クマ『…………「ゲッタービーム」。そう叫びながら、左のレバーのスイッチを押すクマ』

ナガレ「熊公」

クマ『正面の相手に向けて、撃つクマ。早くするクマ!』

ナガレ「……さっきみたいに、役に立たねえ豆鉄砲だったら、後でテメエら揃ってぶっ殺す!」


メカザウルス「ギシャアアアアッッッ!」ブンッ

ナガレ「おらあっ!」


ガシィッ


メカザウルス「ギシャアッ!?」

ナガレ「掴まれちまったら逃げられんわなァ、ええ?」

ナガレ「こちとら初めてなんでよ、これくらいは優しくしてもらわねえと当てる自信がねえのよ!」

メカザウルス「ギシャア! ギャアアアアッッ!」ジタバタ


ナガレ「くたばれ、トカゲ野郎!」

ナガレ「ゲッターーーッ! ビィーーーム!」


キィイン……キュオン

バオオォォォォオオオンン!


ナガレ「うおおおおおおおおおッ!」


クマ「クマーーーーーーー!」



メカザウルス「ギャアアアアアアアアアアッッッ…………!」

ドロドロドロ……


ズズゥン……

ナガレ「…………や、やったぜ。あの、クソ忌々しいトカゲを、それもメカザウルスを」

ナガレ「俺が、倒した……」

早乙女『どうだ、ナガレ……ゲッターの乗り心地は……』

ナガレ「最高だ、ジジイ」

早乙女『そうか……何よりだ……』

クマ『早乙女博士、早く戻るクマ。そのままだと危ないクマ!』

早乙女『ああ……』

クマ『ナガレ、研究所に戻るクマ』

ナガレ「分かってるっつの、命令するんじゃねえ、熊公!」

クマ『クマはクマだクマ!』


ガン ガン ガン ガン…………

第一話【ナガレ】終。

次回、第二話【ジン】。投下日未定。

艦これの球磨が人気なので急遽内容を変更して艦これクロスSSスレにするわけねーだろ!

クマ『ナガレ。このままじゃ研究所に入れないクマ。合体を解除するクマ』

ナガレ「ああしろこうしろって言われてもやり方が分からねえよ。どうすればいい?」

クマ『「オープン・ゲット」って言うクマ。トップのパイロットが言うだけで、音声認識で合体解除できるクマ』

ナガレ「オーケー。オープン・ゲット!」

ガチャン! バシュゥン!

クマ『それから正面のモニターパネルでオートパイロットモードに変更するクマ』

クマ『そうすれば、研究所の誘導で格納庫にオートで飛行するクマ』

ナガレ「正面のモニターで……これか」ピッピピッ

ナガレ「はーあ、詰まらねえな。慣れる事も必要なんだからよ、パーッと飛ばさせてくれよ」

クマ『実戦の後のメンテナンスは必要クマ! 予想外の動作不良を起こしていたら、そのまま木っ端微塵クマ!』

クマ『死にたくないから戦ったのに、勝った後で死にたいクマ?』

ナガレ「そう言う理詰めは嫌いだよ。分かった分かった!」

ヒュウゥン……ガシャン ガシャンガシャン

整備士『機体の安定を確認。降りてきて大丈夫です』

ナガレ「っぷう。あー……ちょっと体が軋みやがるな」

ナガレ「おい、もうちょっと乗り心地は良くならねえのか? ゲッターは最高なんだが、飛行機の方が退屈だな」

整備士「飛行中、機体の下を開けて座席をぶら下げますか? 自由にバタついてもらっていいですよ」

ナガレ「乗り心地の話をしてんだよ」


クマ「さ、早乙女博士っ!」


ナガレ「ん……? どうした、熊公!」ダッ

タタタッ

ナガレ「じ、ジジイ……血塗れじゃねえか!」

早乙女「かひゅっ……かひゅーっ……」

クマ「誰か医療班を呼ぶクマ! 担架でも良いクマ、早くするクマ!」

ナガレ「おい、ジジイ! てめえ乗る前はあんだけ威張り散らして、何だそのザマは……!」

クマ「 黙 っ て る ク マ !」

ナガレ「っ…………」

クマ「早乙女博士、早乙女博士……しっかりするクマっ……!」

ナガレ「ジジイ……」


クマ『クマは丈夫だからクマ。でも普通の人間は、ゲッターの負荷に耐え切れないクマ』


早乙女『確かにパイロットスーツはゲッターの常軌を逸した加速や、あり得ない行動による負荷を軽減するように設計されている』


ナガレ「耐えられないくせに、乗ったのかよ……そこまでする必要があるのかよ……!」

クマ「医療班はまだクマ!?」

整備士「今呼びました! 間もなく到着します!」

ナガレ「だああ! 待ってられるかァ!」

グイッ ドサッ

クマ「ナガレ!? 早乙女博士を背負ってどこ行くクマ!」

ナガレ「どっちに行けばいいんだよ! 教えろ熊公!」

クマ「……こっちクマ!」

ナガレ「おらおら、邪魔だ! 退きやがれーっ!」

ナガレ「ジジイ、何も話さねえでくたばりやがったら、骨の髄まで残らずハチュウ人類に食わせてやる……!」

早乙女「ナ、ガ……ぐふ……!」

 ―― 翌日 ――


ナガレ「よう、ジジイ」

クマ「早乙女博士っ」キュムキュム

早乙女「クマ、ナガレ」

ナガレ「頑丈なジジイだな。昨日あれだけズタボロになって、翌日には意識がはっきりしてやがる」

クマ「早乙女博士……大丈夫クマ?」

早乙女「ああ……すまんな、心配をかけて」

ナガレ「まったくだぜ。ジジイはジジイらしく、隠居してりゃいいんだ」

早乙女「そう言うわけにもいかんよ。まだやるべき事がワシには多すぎる」

ナガレ「だが、その様子じゃもうゲッターには乗れねえ。どうするんだ?」

クマ「ゲッターは三人での搭乗を前提としたスーパーロボットクマ……」

早乙女「それに関しては心配ない。既にパイロット候補を見つけている」

クマ「ほんとクマ?」

ナガレ「じゃあ、一緒にそいつもつれてくれば良かったじゃねえか。そうすりゃ、ジジイが無理する事も無かったぜ」

早乙女「そいつにはお前と違って人間としての生活があるからな。強硬手段には出られん」

ナガレ「ンだとっ……そりゃあ俺には人権もねえように聞こえるぜ!」

クマ「ちょっとナガレ黙ってるクマ、話がややこしくなるクマ」

クマ「早乙女博士、その候補はどんな人間クマ?」

早乙女「これだ……」ゴソゴソ

スッ……

ナガレ「写真?」

クマ「クマ」


ナガレ「……ジジイ、マジか。マジで言ってんのか?」

クマ「これ、女の人クマ」

早乙女「能力はお前たちにも劣らない。それに、ゲッター乗りとして相応しい性質を持っている」


早乙女「名を、橘 神(タチバナ ジン)。弁護士だ」


 ゲッターロボ・クマ


.      第 二 話


.      【ジン】


 ―― 橘法律事務所 ――


ジン「…………」カタカタカタカタ

ジン「……………………」カタカタカタカタ

ジン「………………………………」カタカタカタカタ

コンコン

助手「橘先生、失礼します」

ジン「あ、マイちゃん」

助手「お茶が入りました。どうぞ」コト

ジン「ありがと。丁度、休憩しようと思っていたのよ」

助手「嘘ばっかり。ずっと集中していたじゃないですか」

ジン「あら、ばれてた?」

助手「私がこうやって邪魔に入らないと、先生ってば何時までもパソコンと睨めっこしてるんだから」

助手「眼鏡、また度が上がったんですよね?」

ジン「ハイハイ。気を付けるわ」ズズ

ジン「あら、美味しいね。お茶っ葉、変えた?」

助手「分かります? 流石は橘 神、鋭い視点でズバッと切り込む凄腕弁護士!」

助手「その上ぷくっとボインなナイスバディ、男が振り向き女が妬む美貌の持ち主! いよっ!」

ジン「後半は関係ないでしょ。いつも飲んでるんだから、これくらいはね」

助手「ま、そうなんですけどね……」

ジン「…………」ズズ

ズズ……


ジン『ヒヒヒ……』

助手『や、止めて……』

ジン『フひゃあッ!』ヒュッ

ザシュッ!

助手『ぎゃああっ!』

ジン『ヒへははははは! ギヒ、ギヒイッ!』

グチャッ ドチャッ

助手「――――せい。先生?」

ジン「ッ…………あ。な、なに? どうかした?」

助手「それはこっちのセリフですよ。先生、カップに口付けたままボーっとするから」

ジン「あ……うん」カチャ

ジン「ゴメン。ちょっと、外に出るわ」

助手「あれ? 今日、何か予定がありましたっけ?」

ジン「ええ、ちょっとね。暫く戻らないから、後は頼むわ」イソイソ

助手「あ、はい……分かり、ましたー……」

バタン!


カツカツカツカツ

ジン「…………あ、もしもし。牧村メンタルクリニックですか?」

ジン「すみませんが、今すぐに診察をお願いしたいんです。ハイ、橘 神と……」

 ―― 牧村メンタルクリニック ――


牧村「また、妄想ですか」

ジン「……はい。今日は、助手の女の子を、私が、この手で……」

ジン「惨く、嬲り殺しにした幻を見て……!」

ジン「その前は、電車の中で知らない男性……その前は、兄を!」

牧村「誰かを目の前にすると、その人を惨殺する妄想を見る……前回と同じですね」

ジン「先生! 本当に私は真っ当な人間なのでしょうか! そんな妄想を無意識に見るなんて、普通じゃない!」

ジン「怖いんです……その残虐性が、誰かを傷付ける事に悦びを感じるのが、私の本性かもしれない事が!」

ジン「もう、頭がおかしくなりそうでっ……!」

牧村「落ち着いてください、橘さん」

ジン「うう、ううう……!」

牧村「ゆっくり、向き合っていきましょう」

ジン「すみません、先生……取り乱してしまって」

牧村「不安に駆られれば誰だってああなります」

牧村「ふむ……精神の不安はストレスが理由の事が多いです。そう言った妄想の原因は、実生活での抑圧かもしれませんね」

ジン「抑圧、ですか……」

牧村「弁護士、と言う仕事柄、法律に触れる事が多いでしょう」

牧村「あれをしてはいけない、これをしてはいけない、と言う知識がある半面、その状況がストレスでもある」

牧村「それが、「自由でない」と言う意識に繋がっている……と言う事も考えられます」

ジン「そんな……私は心から、この仕事を楽しんで!」

牧村「勿論、それを疑いはしません。可能性の一つです」

ジン「…………はい」

牧村「とは言え、仕事漬けと言うのも体に悪い」

牧村「実際、休暇を取ってみてはいかがでしょう? 同時に、少し遊んでみては?」

ジン「遊ぶ……ですか」

牧村「ええ。クラブで夜通し遊び倒す、とかね。要するに、開放的な気分になれる「遊び」をすればいいんです」

ジン「開放的な気分……」

牧村「人間は不安不満を抱える複雑な心理構造を持つ上で、何か一つで満たされればそれを解消できる単純な生き物なんです」

牧村「たとえ殺人欲求、嗜虐欲求があったとして、別方向で心を満足させれば良いんです」

牧村「それが、遊び。あなたの事だから、まさか犯罪に手を染めやしないでしょう」

ジン「そう言われても、何をすればいいのか……」

牧村「……そう言えば、ジムに通っていらっしゃるとか?」

ジン「ええ、ハイ。週に三回……体を動かすのが好きなので。今日も仕事帰りに行く予定でした」

牧村「でしたら、屋外スポーツなんてどうです? スキーとか、スカイダイビングとか、登山とか」

ジン「屋外スポーツ、ですか……」

牧村「気楽に考えていいんです。自由にいきましょう」

牧村「今日はこのくらいにしておきましょう。念のため、いつもの精神安定剤を出しておきます」

ジン「はい、ありがとうございました」

牧村「本当は、他の誰かに話せれば良いのですが……難しい話ですからね」

ジン「…………はい」

牧村「……では、お大事に」

ジン「ハイ……」

ジン「…………あの、先生。最後に一つ、いいですか?」

牧村「なんでしょう?」

ジン「気付いた事があって。妄想の私は、いつも、眼鏡を掛けていないんです。何か関係があるのでしょうか?」

牧村「…………この場では判断しかねますね。とりあえず、眼鏡は掛けたままで大丈夫でしょう」

ジン「分かり、ました。ありがとうございました……」

 ―― ジンの家 ――


ジン「ただいま……」ポイッ

ドサッ……ボフン

ジン「はあ……」ゴロン

ジン「私、どうしちゃったんだろ……昔はこんな事、なかったのに」

ジン(こんな事、誰にも相談できないし……お母さん、お父さん、お兄ちゃん……)

ジン(遊び、か……何をしたらいいんだろう。火遊び的なのは、したくないし……)

ジン「……この時点で、自由じゃないし……もう、やだ」

ジン「彼氏でも、作ろっかな……」

ジン「…………リモコン」モゾモゾ

ピッ

『――――ヨークに出現したメカザウルスを、ステルバー、テキサスマックのタッグで撃破……』

ジン「…………何かやるんだったらいっそ、ハチュウ人類共を根絶やしにしたい」

ジン「できるわけないよねぇ~~~~! ハァーン、もーーー、嫌っ!」ボフッ

 ―― 数日後 ――


ジン「…………」カタカタカタカタ

助手「橘先生、お疲れ様でーすっ!」

ジン「うん、お疲れさま。気を付けて帰るのよ」

バタン

ジン「…………」カタカタカタカタ

ジン「……………………」カタカタカタカタ

ジン「…………ハッ! もうこんな時間かっ」

バタバタ

ジン「電気良し!」パチン

ジン「施錠良し!」カチャリ

ジン「駄目だぁ~、仕事から離れて休めって言われたのにー……」

カツカツカツカツ……

橘 神→「號」の橘翔と神隼人の名字を組み合わせたもの


牧村→デビルマンから

これで合ってる?

ウィーン……

ジン「フッ、フッ、フッ、フッ」

インストラクター「よーし。橘さん、あと一キロで休憩にしますか」

ジン「ハイっ。フッ、フッ、フッ……」

ブルンブルンブルン……

インストラクター「まじ絶景……」

ジン「へっ? 今、何か言いましたっ?」

インストラクター「べっ……いえ、橘さん、良い腹筋してますねって」

ジン「ああ、はいっ。ありがとう、ございますっ」

ブルンブルンブルン……

>>58
大正解。ナガレも同じ命名方法だけど。

インストラクター「…………橘さん、この後に予定とかあります?」

ジン「予定、ですか? 帰って、ゆっくりする、つもりですけどっ」

インストラクター「もしよければ、一緒に飯とかどうっすか?」

ジン「すみませんっ。明日の、仕事に、障ると、嫌なのでっ」

インストラクター「あ、はい……」

ジン「フッ、フッ、フッ、フッ」

インストラクター「…………あ、一キロっす。そこまでで」

ジン「はいっ。はー、はーっ……」

ジン(…………遊べないなあ、私)

インストラクター「ハイ、橘さん。水、どうぞ」

ジン「あ、ありが――――」


インストラクター『ぎゃああ!』

グシャッ バチュッ

ジン『ひゃは、ハアアアアッッ!』

インストラクター「橘さん?」

ジン「…………あ」

インストラクター「大丈夫ですか? ぼーっとしてましたけど」

ジン「す、すみません。ちょっと、気分が悪くて」

ジン「帰ります」

インストラクター「ええっ? ああ、いや……それなら、分かりました。大丈夫ですか?」

ジン「大丈夫です。失礼します……」

インストラクター「……チッ、間接キス失敗」

カツカツカツカツ

ジン(早く帰ろう。帰って休もう。マイちゃんに連絡して、明日は休もう)

ジン(もう駄目だ。何かして気を紛らわそう)

カツカツ

ジン(……薄暗いし、人通りも無いからいつも通らない道だけど、こっちの方が駅に近い)

ジン「…………」グッ

カツカツカツカツ

チンピラ「よー姉ちゃん。そんなに急いでどこ行くんだぁい?」

ジン「ッ……」ピタ

ジン(最悪……一人だけなら戻れば何とか)

カサッ……

ジン(後ろ――――!?)

チンピラB「よっとォ」ブオン

ジン「くっ!」バッ

チンピラA「うぉーい、外すなよばぁか」

チンピラB「外してねえよ避けられたんだよ。あーあ、避けなきゃ余計に痛い目に合わずに済んだのにー」

ジン「あなたたち……暴行罪よ」

チンピラB「いやいや、ハチュウ人類に滅ぼされるのに法律とか無意味っしょ」

ジン(二人……片方は木製バット。もう片方は折り畳みナイフ)

チンピラA「法律より大事な生命の存続ってのがあるからさあ。生き物って危険に晒されると生殖活動に躍起になるらしいし?」

チンピラB「お姉さんも人類存続のお手伝いしよーよぉ。元気な子供作ろうぜぇ?」

チンピラB「そんなわけでさ、ちょっと気絶しててヨッ!」ブン

ジン「ヒュッ……」スッ

スカッ

ジン(引いて、踏み込んで)

チンピラB「あ?」

ジン「ふっ!」

グチャ!

チンピラB「ぎょっ……!?」

カラン ドサッ

チンピラB「アッ……アッ……!?」ピクピクッ

チンピラA「きっ、金的……!?」

チンピラA「この、アマぁ!」チャキ

ヒュン

ジン(振ったナイフが返ってくる時に)

チンピラA「オオオアッ!」グン

ジン(腕を滑り込ませて防ぐ)

ガッ

チンピラA「うっ!」

ジン(そのまま鳩尾を殴る)スッ

ズガッ!

チンピラA「がっ……」

ジン(落としたナイフを拾って、太腿に刺す)チャキ

ヒュン ドスッ!

チンピラA「ぎっ……ゃああああああぁぁっっ!?」

牧村って名前でさらにクラブで夜通しって言われたら、デーモン召還しか浮かばないw

チンピラA「いでえ、いでえッ!? ぐあああああああ……!」

ジン「自業自得よ。ちゃんと左脳と下半身は別けておくべきだったわね」

ジン(嫌だけど警察呼んで、さっさと証言して帰ろう)


ナガレ「見事だな、女」


ジン「ッ……まだ一人!?」バッ

ナガレ「似たようなもんだが、そいつらと一緒にされるのは癪だな」

ジン「なら、なんだって言うのよ……」

ナガレ「ただの使いっ走り。面倒臭ェと思っていたが……ま、流石ジジイが目を付けただけはある」

ジン(何なのよ、もう……今日は厄日か何かなの?)

ナガレ「金的に、鳩尾に一発、ナイフを奪って太腿にブスリ」

ナガレ「動きの一々に迷いがない。ジジイが欲しがるわけだ」

ジン「あなた、何を言って……」

ナガレ「相手を傷付ける事に躊躇いが無い、筋金入りのクズか」

ジン「うっ…………」

ジン(そうだ、私は何を考えていたんだろう)

ジン(正当防衛が成立する状況だったとはいえ、どうして、ここまで)

ジン(いえ、私は、その事すら考えていなかった! 私は……!)


ジン『ヒャハハハハハハハッッッ!』


ジン「ヒッ!」

ジン「ちっ、違うのよ。この男たちが、私を襲ってきて」

ナガレ「否定するなよ。そんな中途半端なモンは要らねえって話なんだからよ」

ジン「…………あなた、何者なの……」

チンピラA「あああ! いてえ、ぐそおお!」

ナガレ「うるっせえよ、黙ってろ!」

ゴシャッ!

チンピラA「びっ――――」

ナガレ「寝てろ、ボケが」

ジン(だ、駄目……尋常じゃないわ。警察、警察を……)ゴソゴソ

ナガレ「テメエも!」

ブンッ

バキィッ!

ジン「ッ――――!」(携帯を破壊されたっ!)

ナガレ「余計な真似をするんじゃねえ」

ジン「……私に、何の用?」

ナガレ「テストだとさ」

ジン「テスト?」

ナガレ「このボンクラ共を一方的に叩きのめした時点で合格っちゃ合格だが……」

ナガレ「個人的な意見として、女を一緒に乗せてピーチクパーチク喚かれても困るんでな」

ナガレ「第二テストって事だ。構えろ、橘 神」

ジン(…………何なのよ、もう)

ジン(なんで私が、こんな目に合わなくちゃいけないのよ。なんで私が、こんな……)

ジン(どいつもこいつも、私の事を……!)


ポイッ ドサッ……

ジン「…………」

ナガレ「ヒュー。おっかねえ目をしやがる。なら、遠慮なくやらせてもらうぜ!」

ナガレ「おらあッ!」ブン

ジン「…………」スッ

スカッ

ナガレ「フッ! どりゃアッ!」

スカッ スカッ

ナガレ(この女、軽い動きでかわしやがる! 運動好きなド素人なんじゃねえのかよ、ンな生温いモンじゃねえって事ぁ分かってたけど!)

ナガレ「ゥンのッ……!」ブン

ガシッ

ナガレ「なっ……掴まれた!?」

ジン「…………」グッ

ギリギリギリ……

ナガレ「ぐうぅっ!」

ナガレ(何だ、この握力は! 手が、砕かれる!?)

ナガレ「オオオオッ!」

グワッ!

ジン「…………」スッ

ガッ

ナガレ(渾身の上段蹴りまで簡単に……!)

ジン「…………」グイッ

ナガレ「どわっ!?」

ダンッ ドン

ナガレ(まずい! 倒されて上に乗られた! マジで何だこの女、めちゃくちゃ強ェぞ!?)

ジン「…………」スッ

ナガレ(胸ポケットから、ペンを出した……!?)

ナガレ「まっ、ちょ待っ」

ヒュッ

ピタ

ナガレ「ぐっ…………」

ジン「…………」

ナガレ(は、反撃できねえ。下手な真似すりゃ目ン玉に容赦なく刺すつもりだ)

ジン「答えなさい。テストって何? 何の目的で私に近づいたの?」

ナガレ「この状態でお喋りなんてできるかよ……」

ジン「まずは左目ね?」

ナガレ「わーった、話す! アンタが『ゲッターロボ』パイロットに相応しいかどうかをテストしたんだよ」

ジン「ゲッターロボ?」

ナガレ「ゲッターってのはな、ハチュウ人類に本当の意味で対抗できるスーパーロボットなんだとよ」

ジン「聞いた事が無いわ。つまり最新型?」

ナガレ「どうだか。俺もよく知らねえからな。それの開発者が、お前をパイロットにしようと企んでるわけだ」

ジン「荒唐無稽ね。それよりも頭のおかしい男が、与太話で女性を襲った、の方がまだ釈然とする」

ナガレ「同感だぜ」

ジン「その開発者って言うのは誰? 名前と風貌、細部まで情報を教えなさい」

ナガレ「早乙女……下の名前は知らねえや。ジジイ。下駄」

ジン「私は別に、今後一生あなたが両目の視力を失っても構わないのよ?」

ナガレ「この状況で適当ぶっこけると思う方がどうかしてるな」

ジン「……いいわ。とりあえず、今の発言は後で警察に証言してもらいます」

ジン「傷害罪、略取未遂、監禁未遂の各現行犯……そんなところかしら」

ナガレ「冗談じゃねえな。とりあえずお前にはまだ用があるから」

ぷすっ

ジン「つっ……!?」バッ

ナガレ「その続きはポリ公じゃなくて、ウチでしてもらうぜ」

ジン「何を……うっ」クラ

バタリ……

ナガレ「……本当に大丈夫かよ、これ。アフリカゾウも三秒で眠る劇薬だっつってたけど」

ナガレ「と言うか、こんなモンの世話になるたァな……絶対使わねえって決めてたのに」

ジン「…………」ビクンビクン

ナガレ「腹立つが、認めるしかねえか」

ナガレ「ご愁傷さま、ジャガー号パイロットに決定だとよ、橘 神」

ピッピッ

ナガレ「……俺だ。終わったから回収役をよこせ、ジジイ」

 ―― 早乙女研究所 ――


ジン「…………う……」

ジン「ここ、は…………」

ギシィ

ジン「う……動けないっ……!」

ジン(拘束具……? なんで私が、こんなものを!)

早乙女「目が覚めたか」

ジン「誰!」

早乙女「18時間52分……驚異的な代謝能力だ。常人では死亡、予測でも丸二日は眠るだろうと想定していたが」

ジン(何を言っているの、この人……白衣の壮年、下駄……)

ジン「……まさか、サオトメ」

早乙女「察しが良い。あの馬鹿とは大違いだ」

ジン「解放しなさい。権利を持たない略取に逮捕監禁は立派な犯罪よ」

早乙女「橘 神。26歳。女。家族構成は父、母、兄が一人。ごく普通の家庭に生まれ、不自由無く育つ」

早乙女「聖チャペル学園を卒業後、浅間大学法学部に進学。在学中に弁護士の資格を取得し、一年のアメリカ留学を経験」

早乙女「二年間、弁護士の許で勉強し、24歳の若さで個人事務所を設立。以後、敏腕弁護士として活躍」

早乙女「運動は好きだが、スポーツの実績はこれと言って無し……これだけならば、特筆する事はない」

ジン「……私をどうするつもり?」

早乙女「ゲッターに乗ってもらう」

ジン「嫌よ」

早乙女「乗るのだ」

ジン「嫌よ!」

ジン「どうして私なのよ……なんで私が、そんな得体の知れないものに乗らなければならないの!」

ジン「ハチュウ人類と戦う? つまり、死ぬかもしれないって、そう言う事じゃない!」

ジン「私は普通の女なのに……どうして、私ばかりがこんな目に……」

早乙女「早晩、ハチュウ人類によってお前は死ぬ。ワシも死ぬ」

早乙女「どの道死ぬのであれば、お前たちに選ぶ余地などない」

ジン「そんな事、知らないわ!」

早乙女「……我々に時間はない。これだけは言っておこう」

早乙女「お前には、ゲッターに乗るに相応しい素質がある」

早乙女「肉体、そして、本能がな……」

カランカランカラン……

ジン「私が、何をしたって言うのよおッ!」


ジン「あああああああああああアアアアアアアアアアアアアアッッッ!」

ジン「…………」

ナガレ「よう、元気か?」

ジン「…………」

ナガレ「睨むなよ。飯だ」

ジン「…………食べられるワケ、ないでしょう。こんなものを、着けて!」

ギシッ

ナガレ「そうやって暴れるからそんなモン着けられるんだろうが」

ナガレ「まあ……多分、お前が本気を出したらそんなモン普通にぶっ千切ると思うけどな」

ジン「私をゴリラか何かだと思っているのね。できるならさっさとそうしてるわよ……」

ナガレ「そう思うのは自由だけどな、例として一つ見せてやる」

ジン「例?」

ナガレ「こいつはステンレス製のスプーンだ。何の変哲もない普通のスプーン」

ナガレ「ほっ、と」

ぐにゃぐにゃっ ぶちっ

ナガレ「こんな感じで簡単に曲げて引き千切れる」

ジン「それはあなたが馬鹿力だからでしょ……何を簡単にステンレスを千切ってるのよ」

ナガレ「じゃあその俺を真っ向から倒したお前は? 憶えてない、とか言うなよ?」

ジン「それ、は……」

ナガレ「どうであれ、ここにいる以上は認めるしかねえのさ」

ジン「だって私は、普通の人間なのに……」

キュムキュムキュム

クマ「ナガレの馬鹿クマ!」

ジン「えっ……く、熊!?」

ナガレ「誰がバカだ、熊公!」

クマ「どうしてスプーンを壊しちゃうクマ。それじゃあこの人がご飯食べられないクマ!」

ナガレ「あっ……いや、これは……まあ、つい、だな」

クマ「ついの一言で備品を壊していいルールはないクマ。こんな事もあろうかと、もう一本持ってきて正解クマ」

ナガレ「チッ……気の利くこった」

ジン「なんで、どうして……熊が、喋って……!」

クマ「ジン、初めましてクマ。クマはクマだクマ」

ナガレ「こればっかりは俺も嘘だと思うがな。どうも、事実らしい。こいつは喋る熊だ」

ジン「は、アハハハ……頭が、おかしくなりそう」

クマ「とりあえず、そのままじゃ食べられないクマ。ちょっと待つクマ」

キュムキュム

ジン「えっ……?」

クマ「んー、ここをこうするクマ……」カチャカチャ

ジン「ちょ、ちょっと……解放してとは言ったけど、勝手に外していいの……?」

クマ「手が使えないと食べられないから仕方ないクマ。ここ、難しいクマー……」

カチャカチャ

ジン「……良いの?」

ナガレ「知らねーよ。そいつがやりたいって言うならやらせるしかねえし。お前からすれば悪くないだろ?」

ジン「そうだけど……」

カチャリ

クマ「できたクマ! さ、これで脱げるクマ」

ジン「あ、ありがとう」

クマ「どういたしましてクマ」

ジン「…………」モグモグ

ナガレ「…………」

クマ「…………」

ジン「…………」ゴクン

ジン「……話の大筋は、分かったわ。でも、それでも納得できない。私より相応しい人間なんて、たくさんいるはずよ」

ジン「それこそ他のスーパーロボットと同じように、軍人やスポーツ選手、常日頃から体を鍛えている人間から選定した方が、よっぽど」

ナガレ「俺は知らん。俺も、お前と同じくワケも分からん内に連れてこられたからな」

ナガレ「分かっている事は、必要なのは乗っても死なない人間で、死んでもいい奴だけって事くらいか」

クマ「ゲッターは、理屈で動かせるモノじゃないクマ」

クマ「早乙女博士が言ってたクマ。「人類最後の一人まで試し尽くす」って……きっと、そう言う事クマ」

ジン「……やっぱり、無理よ。そんなモノ、私には扱えない。乗れない」

ナガレ「くどいなァ、さっさと頷いて乗っちまえばいいのによ」

ジン「私はあなたほど脳筋じゃないのよ」

ナガレ「役に立たねえならさっさと乗ってくたばっちまえ! そうすりゃ、お前なんざ諦めて別の奴を探せらぁ!」

クマ「止めるクマ、ナガレ!」

ナガレ「チッ……使える奴がウジウジしやがって、腹が立つ」

クマ「……ジン。クマは、ジンが乗らなくても良いと思うクマ」

ジン「どうして? あなただって同じパイロットなら、早く仲間が見つかった方が良いんじゃないの?」

クマ「クマは、何人ものパイロット候補を見てきたクマ。さっきジンが言った、エキスパートや恵まれた運動神経を持つ人たちクマ」

クマ「みんな、強そうだったクマ。でも、みんな、ゲッターの負荷に耐えられなくて死んじゃったクマ……」

クマ「多分、ジンは本当にゲッターに乗れるクマ。でも、ジンが嫌だって言うなら、乗らない方がいいクマ」

クマ「死んじゃうより、絶対にその方がいいクマ」

ジン「…………」

ナガレ「…………ケッ」

クマ「もしそうするなら、クマが早乙女博士を説得するクマ」

ジン「優しいのね、クマちゃん……」

クマ「そんな事無いクマ」

ナガレ「事なかれ主義ってやつだろ。吐き気がする」

ジン「次に余計な事言ったらその舌引っこ抜くから。クマちゃん、悪いけど、お願いできるかしら」

ジン「私には、私の生活があるの……それを失えない。だから、ゲッターには乗れない……」

クマ「分かったクマ。残念だけど、仕方ないクマ」

ナガレ「あーあ、目ン玉抉られそうになったってのに結果がこれか。やってられねえな!」

クマ「うるさいクマ。拗ねるんじゃないクマ」

ナガレ「テメエが乗せる方向で説得すれば良かったんだろうが!」

ジン「…………」

ジン「何だったのかしら、あの二人……一人と一頭?」

ジン「拘束具を着け直さないで帰るし……片方は馬鹿だからって言うので分かるけど」

ジン「熊の方は、良い子……なのよね、うん」

ジン(…………だって、無理よ。急に命を懸けて戦え、なんて言われても)

ジン(家族に何も言ってないし、事務所の事だってあるし……)

ジン(……あ。そう言えば、19時間は経ってるって言ってたっけ……連絡してない。やばい)

ジン(携帯……は、あの馬鹿男に壊されたんだった。思い出したらムカついてきた)

ジン(…………私の生活だとか、事務所だとか、何言ってんだか)

ジン「人を殺す妄想する気違いのくせに……」

―――

――――――

―――――――――

ジン?『…………』

ジン『……血塗れの、私?』

ジン?『…………』スッ

ジン『や、やめて、来ないで……』

ギュッ

ジン『え……?』

ジン?『…………』ナデナデ

ジン『い、嫌っ……』

ドンッ

ジン?『…………』

ジン『……どうして、悲しそうな顔をするの?』

ジン『『あなた』は、私の何なのよ……』

ギュインギュイン ギュインギュイン

ジン「んあっ…………?」

ジン「何、なにっ……!?」

ジン(いつの間にか寝ていた……それはいいけど、このサイレンは何!)

ジン「只事じゃない事しか分からない……誰か! 何があったの!」

ギュインギュイン ギュインギュイン

ジン「こんな独房染みた場所に来る職員なんて居ないってわけね……」

ジン「このっ……!」ドンドン

ジン「だああっ!」ガンッ

バキィッ!

ガシャン……

ジン「……壊しちゃった。ら、ラッキーって事にしておきましょうっ!」

ギュインギュイン ギュインギュイン

ジン「鳴り止まないわ……まだ事態の解決ができていないのかしら」

キュムキュムキュム

クマ「ジン!」

ジン「クマちゃん!」

クマ「どうしてここにいるクマ? 閉まっていたドアはどうしたクマ?」

ジン「ごめんなさい、壊してしまったの……このサイレンは何?」

クマ「そうクマ! 合流できたなら関係ないクマ、まずい事になったクマ!」

クマ「ハチュウ人類が襲ってきたクマ!」

ジン「何ですって!」

クマ「こっちに来るクマ!」

オペレーターA「ゲッター光線砲台三機が損壊! ハチュウ人類歩兵と交戦中のトゥルーパー1が全滅!」

オペレーターB「敵、飛行型メカザウルス、無傷です!」

早乙女「小手先の武装など無意味か……」

クマ「早乙女博士!」キュムキュム

ジン「これはどう言う状況なの、ハチュウ人類って……!」

早乙女「……どうもこうも無い。ハチュウ人類がゲッターロボの存在を感知し、襲撃を仕掛けてきた。それだけだ」

ジン「それだけって……」

クマ「早乙女博士、脱出経路は見つかったクマ?」

早乙女「ハチュウ人類の歩兵をどうにかせん限りには、人一人逃げられんだろうな」

ジン「そ、そんな」


ナガレ『オラオラオラ! 邪魔だクソトカゲ共があっ!』

バララララララ バキッ バラララララ


クマ「ナガレ!? あいつ何してるクマ!?」

早乙女「ゲッターが出せないと知って、銃を持って飛び出していきよった。だが奴なら問題あるまい」

クマ「ナガレがいないと尚更ゲッターを動かせないクマ! 本当に何を考えているクマ!」

ジン「待ってよ! どうしてゲッターロボとやらを出さないのよ?」

早乙女「ゲッターロボは三人で乗るロボットだ。二人は勿論、一人でなど論外だ」

クマ「オートパイロットじゃあ合体もできないクマ……」

ジン「ここの人たちは、他に誰か乗れないの!?」

早乙女「できるのならばそうしている。できないからこそ、お前を連れてきたのだ」

ジン「うっ……」

ズガアァァァン!

ジン「きゃあっ!」

クマ「クマーッ!」

早乙女「ぐっ……被害状況!」

オペレーターA「所員食堂が全壊! 居住区域にも被害小!」

早乙女「重要箇所は免れたか……」

ジン「居住区域って……避難は終わってるの?」

早乙女「…………この場にいる人間は、皆覚悟している。勿論、あそこにいた所員も残らずだ」

ジン「そんな……!」


ナガレ『ッの……野郎ォ! オオオォォラアァッ!』

バララララララララララ


クマ「誰かあのバカに弾の無駄だと伝えるクマ! え? 無線持って行ってないクマ? ほんとに馬鹿クマ!」

クマ「早乙女博士、もう駄目クマ、逃げるクマ!」

早乙女「ゲッターロボを残したままで逃げられん。ゲットマシンに乗って、お前たちだけでも逃げろ」

クマ「ゲットマシンを持って逃げても早乙女博士が一緒じゃないと意味ないクマ!」

早乙女「ワシには役目がある。お前たちが逃げた後、地下のゲッター炉心を暴走させる」

早乙女「少なくとも、奴らを道連れにできる」

クマ「それは逃げる事も出来なくなった後の本当の最終手段クマ! まだ打つ手はあるクマ!」

早乙女「橘 神がゲッターに乗るとでも言うのか?」

ジン「っ…………」

クマ「それは、駄目クマ!」

ジン「クマ、ちゃん?」

クマ「ジンはゲッターに乗りたくないクマ! ジンの本能がそうさせているクマ!」

クマ「本能は理性よりも優先される大事なものクマ! だからクマは、絶対にジンをゲッターに乗せないクマ!」

早乙女「クク……本能か。本能が何よりも優先されるならば、既に答えは一つなのだ」

クマ「クマ?」

早乙女「どうするのだ、ジン」

ジン「……腹の底から、そんな事はお断りよ」

ジン「でも…………」

ジン「三人乗れば動くって言うなら、乗るだけ乗ってやる!」

クマ「ジン!」

ジン「乗るだけよ! 私は何もしない、何もできないんだから!」

早乙女「クマ! ジンをゲットマシン格納庫に連れていけ。ナガレは外で回収する」

クマ「分かったクマ! ジン、こっちクマ!」

ジン「ええ!」

キュムキュム……


早乙女「そうだ。本能こそが、お前たちを突き動かす……」

ナガレ「ウォオオオオオ! オラオラオラァ!」

バララララララララララ

恐竜兵士A「ギャッ!」

ナガレ「死ねぇっ!」

バキッ

恐竜兵士B「グバッ!」

ナガレ「くそったれ……! 次から次へと沸いてきやがる!」

ナガレ「その上、真上のメカザウルスには攻撃が届かねえ!」


メカザウルス「ギョアアアアッッ!」バサバサッ


ナガレ「負けたんじゃねえか、これ……フン!」

ガスッ

恐竜兵士C「げえっ!」

ギュオン……

ナガレ「ん……この音は、ゲットマシン!?」

バシュウ!

ナガレ「イーグル号がこっちに来る! 乗れって事か!?」

ナガレ「へっ……無茶言いやがる、ゼッ!」タンッ

ガシッ

ギュオン!

ナガレ「うおおお! 落ちるかああああ!」グイッ

ガシッ ガシッ

バシュッ

ゴロン ドカッ

ナガレ「ぷはっ! 流石に、死ぬかと思った……!」ピッ

クマ『ナガレ! 大丈夫クマ?』

ナガレ「ああ? 余計な心配するんじゃねえよ、熊公!」

クマ『元気そうで何よりクマ』

ナガレ「どうするんだよ。ゲットマシンを出したって、合体出来なけりゃメカザウルスは倒せねえ」

ジン『だから、合体できればいいんでしょ?』

ナガレ「ジン! テメエ、乗らねえんじゃ……なんだその恰好!?」

ナガレ「パイロットスーツのサイズ合ってねえじゃねえか! すげえエロいぞ!」

ジン『うっさい! スーツが一着しかないんだから仕方なかったのよ!』

クマ『来るかどうかも分からないパイロットの体系に合わせてスーツの数を用意するのは難しいクマー』

ジン『とにかく、さっさと合体して、あのメカザウルスを叩いてハチュウ人類を蹴散らす! そして私は帰る!』

ナガレ「面白れぇ。このゲッター、乗ったら最後の地獄行き超特急だって事、思い知りな!」

クマ『ゲッター以外で対処できないメカザウルスを先に破壊するクマ! 合体するクマ!』

ジン『いきなりね……でも合体するだけなら!』

クマ『さっき説明した通りにするクマ! ジンならできるクマ!』

ナガレ「励まし合いなんざ要らねえ! 行くぜ!」

ギュオン

ジン『クマちゃん!』

クマ『行くクマ、ジン!』

ギュオン……

ガシィン!

ジン『ぐうっ! た、確かにこれは、キツいっ……!』

ナガレ「へこたれるな、本番はここからだぜ!」

メカザウルス「ギョアアアアアアアッッッ!」ギュン


クマ『メカザウルスがこっちに来るクマ!』

ジン『か、回避を!』

ナガレ「そんな暇あるか! 行くぜえええーーーッ!」



ナガレ「チェーーンジ! ゲッタァーーー 1 !」ポチッ



ギュオン

ガシィン!

グググ……グワオン!


ナガレ「よっしゃあ、かかってきやがれ!」

メカザウルス「ギョアアアアアアッッ!」

ドガッ

ナガレ「ぬおおっ!」

ジン『があっ!?』

ナガレ「いってえな……だがこれで!」グイ

ガシッ

メカザウルス「ギョアアッ!?」

ナガレ「捕まえたぜェ! 食らえ、ゲッター……!」

メカザウルス「ギョアアアアアアッッ!」

バサバサ

ナガレ「ぬわ! この、暴れるんじゃねえ!」

メカザウルス「ギョアアアッ!」パカッ

ナガレ「何だ、口を開けて……!?」

クマ『ナガレ、手を放すクマ! 攻撃してくるクマ!』

ナガレ「なにぃ!?」


キィン……パウッ

ズガガガガガ!


ナガレ「どわああああっ!」

ジン『あ、熱い!』

クマ『超高熱のビーム攻撃……! ナガレ、早く手を放すクマー!』

ナガレ「クソったれえーー!」パッ

ヒュー……ズガァン!

ナガレ「ハアっ、ハアっ……クソ、ゲッターの装甲が軽く溶けてやがる……!」

クマ『あのまま受け続けていたら、クマたちが蒸し焼きになっていたクマ……』

ジン『ほ、本当に地獄行く……!』


メカザウルス「ギョアアアアアアッ!」バクンッ

バシュンバシュンバシュン!


ナガレ「ぐっ……今度はミサイルかよ!」

キイィィン……ドワオ!

バキィッ!

ナガレ「ぐわあっ! なんだこいつ、前の奴より滅茶苦茶強ぇぞ!?」

クマ『多分、前のは斥候クマ……こっちこそが、ハチュウ人類の真の戦力クマ!』

ジン『ちょ、ちょっと……倒せるの、本当に!?』

ナガレ「うるせぇーッ! 客は黙ってろ!」

クマ『ナガレ、落ち着くクマ!』

ナガレ「落ち着いたらあいつに攻撃が届くのかよ! 空を飛んでるんじゃ、こっちが一方的にやられるだけじゃねえか!」

クマ『昨日あれだけ説明したのにもう忘れたクマ!? ゲッター1は空中戦も視野に入れたゲッタークマ!』

ナガレ「だったら飛ばしてみろよ!」

クマ『「ゲッターウィング」クマ! 音声認識で出るクマ!』

ナガレ「思い出したぜ! ゲッターウイィングッ!」

ブワッ……バサッ!

バオン!

ナガレ「なるほどなあ、こいつは良い!」

クマ『はしゃいでないでメカザウルスをちゃんと見るクマ! またミサイルが来るクマ!』

キイィィン……

ナガレ「あらよっと!」グイ

ヒョイ ヒョイ

ナガレ「もう当たりゃしねえよ!」

メカザウルス「ギョアアアアアアッッ!」パカッ

ジン『ナガレ、またビーム攻撃よ!』

ナガレ「分かっている! 見切って一気に接近してやる!」

キィン……パウッ

ズガガガ!

ナガレ「ぐおおおおっ! クソが、避けられねえ!」

ジン『ばっ……何をやってるの!』

クマ『発射から着弾までが早すぎるクマ! 撃つのを見てからじゃ避けられないクマ!』

バオンッ

ナガレ「カハッ……ハアっ、ハアっ! おい、どうする熊公! 近付こうにもあのビームを避けられねえんじゃ話にならんぞ!」

ナガレ「言っておくが、こんな距離からゲッタービームを当てる自信なんざ無ェからな!」

クマ『何を威張っているクマ……』

ジン『何か他に武器はないの? もしくは、囮にできるものは!』

ナガレ「おとり……イーコト思い付いたぜ! ゲッタートマホークッ!」

ジャキンジャキン ガシッ

ジン『肩から出た鉄球が斧に……でも、それで何をするつもり?』

ナガレ「見てろよー……!」グイ

バオンッ

メカザウルス「ギョアアアアッ!」バサバサ

ナガレ「トマホーゥク……ブゥーメラン、ダブルッ!」

ブンッ ブンッ

ギュルギュルギュル……!

メカザウルス「ギョアアッ!」パカッ

キィン……パウッ!

ジュワッ……

ナガレ「貰ったぁ!」グイッ

バオンッ

ガシィッ!

メカザウルス「ギョアアアッ!?」

クマ『うまいクマ! ゲッタートマホークを囮にしてビームを撃たせている間に、後ろを取ったクマ!』

ジン『真後ろならビームの範囲外だし、ミサイルも届かない……やるじゃない』

ナガレ「褒めても何も出ねえよっ」

ナガレ「さぁて……よくも散々手古摺らせてくれたなァ?」

メカザウルス「ギャアアアアッッ!」ジタバタ

ナガレ「終わりだ! 喰らえェ……ゲッター、ビーーームッ!」

キィイン……


メカザウルス「ギョアアッ!」ガチッ

バカンッ


ナガレ「何っ!?」

ジン『メカザウルスがっ……!』

クマ『分離したクマッ!?』

キュオン

バオオォォオオンン!

ナガレ「くっそおおおお! 必殺のゲッタービームを外したァ!」

クマ『奴らは……分離したメカザウルスはどこ行ったクマ!』

ジン『下よ、落下している!』


ズガァン! ズズゥン!

メカザ「ギョアアアッ!」

ウルス「ゲシャアアアッ!」


ナガレ「なんだありゃあ、分離した上半身と下半身がそれぞれ動いてやがる!」

ジン『つまり、最初から合体していた二機のメカザウルスだったって事!?』

クマ『多分そうクマ……』

ナガレ「合体できるのはこっちだけじゃねえってか……面白くねえ真似しやがって!」グイッ

バオンッ

クマ『待つクマ! 相手が二機に増えたなら、無暗に突っ込むのは危険クマ!』

ナガレ「うるっせえよ熊公! こうなったらさっさとどっちかを叩き潰すしかねえだろうが!」

メカザ「ギョアアアアッ!」ガチャガチャ

ナガレ「まずはテメエだ! ゲッターパァンチ!」

ブンッ

メカザ「ギョアアアッ!」ヒョイ

ナガレ「甘ェ! ゲッタートマホーク!」

ジャキンッ ガシッ

ナガレ「オオオオオリャアアアッ!」

ジン『――――ナガレ、後ろ!』

キィイイン……ドワオ!

ナガレ「だああっ! なんだあっ!」

クマ『もう一機のメカザウルスクマ! ミサイルを撃ってきたクマ!』


ウルス「ゲシャアアアアッ!」


ジン『片方に気を取られていたらもう片方にやられる……!』

ナガレ「やりやがったなァ! このっ――――」

メカザ「ギョアアアッ!」パカッ

ナガレ「しまっ……!」

キィン……パウッ!

ズガガガガガガガガガ!

ナガレ「ウオオオオオオオッ!」

ジン『きゃああああああ!』

クマ『クマーーーーー!』

ズズゥン……

ナガレ「ま、まずい……んじゃねえか、これ……!」

クマ『だ、だから言ったクマ……人の話を聞かないでからこうなるクマ!』

ナガレ「うるっせえ!」

ジン『ナガレ……下半身の方が来るッ!』

ウルス「ゲシャアアアッ!」

ガシッ

ナガレ「クソッ……!」グイグイ

ウルス「ゲシャアアッ!」バクンッ

ジン『こ、この距離でミサイルを撃つ気だわ』

クマ『ナガレ! 振り解くクマ!』

ナガレ「やってんのが見えねえのかクソ熊公!」ガッチョンガッチョン

バシュンバシュンバシュン

ドワオ! ドガァン! バゴォン!

クマ『クマーーー!』

ナガレ「こ……の……!」

メカザ「ギョアアアッ!」パカッ

キィン……パウッ

ズガガガガガガガ!

ジン『アアアアアアアアッッ!』


ナガレ「うおおアアアッ……ゲェッター! ビィーーームッ!」


キィイン……キュオン

バオオォォオオンン!


メカザ「ギョアアアアッ!」バッ

ウルス「ゲシャアアアッ!」バッ

シュウウウウッ……

ナガレ「ハアーッ、ハアーッ……!」

クマ『ク、クマー……』

ジン『し、死ぬ……熱い……!』


早乙女『ナガレ、クマ、ジン。聞こえるか?』


ナガレ「そ、その声……ジジイ……!」

クマ『早乙女、博士……ごめんなさいクマ、あいつら強いクマ……』

ジン『ひゅー……ひゅー……』

早乙女『ナガレ。今のお前では二機以上のメカザウルスを相手にできない。ゲッターを活かしきれていない』

ナガレ「るっ、せぇ……だったらテメエが乗ってみやがれってんだ……!」

早乙女『勝つには一つだ。奴らの攻撃を受けないほどの速さで翻弄し、殲滅する』

早乙女『速さに特化した「ゲッター2」へとゲッターチェンジするのだ』

ナガレ「ゲッターチェンジ……だと!?」

クマ『さ、早乙女博士っ! でも、それは……!』

ジン『ひゅー……ひゅー……がはっ』

早乙女『ジン。お前が戦うのだ』

ジン『げほっ!? げほげほっ、がはっ! ごほごほっ!』

早乙女『むせている場合ではない。今すぐに合体を解除し、お前が操縦者となって戦え!』

クマ『早乙女博士、それは約束と違うクマ! ジンを戦わせない、それを条件にジンはゲッターに乗ったクマ!』

早乙女『ならばお前が戦うか? 確かに「ゲッター」はあの熱光線を耐えられるだろう』

早乙女『だがその熱によって、お前たちは確実に死ぬ』

クマ『でも、ジンは……』

早乙女『戦わない為に乗ったのではない。死なない為に乗ったのだ!』

ナガレ「だとよ、ジン……どうする?」

ジン『ど、どうもこうも……』

クマ『……ジン。このままナガレに任せたままだと、負けるクマ』

ナガレ「ぐっ……ムカつくが、その通りだ。俺はこんなところで死にたくはねえ」

クマ『だけど、嫌なら、クマが頑張るクマ。ナガレよりはできるクマ』

ジン『クマちゃん……』


メカザ「ギョアアアアアアアッッッ!」

ウルス「ゲシャアアアアアアアアッッッ!」


早乙女『時間はないぞ、選べ!』

ジン「…………結局、こうなるのかー」

ジン「どうなったって、知らないんだから! あなたたち全員、死んでも私を恨むのだけはやめてよね!」

ジン「戦えばいいんでしょうが!」

クマ『ジン!』

ナガレ『判断が遅いんだよ、オープン・ゲット!』

ガチャン! バシュゥン!

クマ『ジン、ナガレ! 順番が入れ替わるクマ! ジャガー号が先頭、クマが真ん中で、イーグル号が一番後ろクマ!』

ジン「ええ!」

ナガレ『つまり俺が後ろから突っ込むわけか。熊公、容赦なくやるぜ!』グイッ

クマ『事故だけは嫌クマ!』グイッ

ギュオン……

ガシィン!

ナガレ『どんなモンだ!』

クマ『ジン、スピードを落とすクマ!』

早乙女『合体の前に叫べ、「チェンジ・ゲッター2」だ!』

ジン「え、ええ……!」

ナガレ『ビビるなよ、諸共に死ぬぜ!』

ジン「脅かすんじゃない!」

ジン「すー……はー……!」

グッ



ジン「…………チェンジッ! ゲッター 2 !」



ガシィン!


グググ……


グイーン


ガキョン!


ヒュー……ズザザザザ

ジン「…………せ、成功した?」

クマ『やったクマ! すごいクマ、ジン!』

ナガレ『テメエ今、目ェ瞑りながら合体しやがったな!? マジで殺す気か!』

ジン「だ、だって……恐いんだから仕方ないじゃない!」

早乙女『口喧嘩なら後でやれ! ジン、手元のレバーが腕に連動し、足元のレバーが脚に連動している!』

ジン「そんなので大丈夫なの? 本当に動くのよね!?」

ナガレ『俺はそれで操縦していたんだからできる! 四の五の言うんじゃねえ!』

早乙女『知識を捨てろ、自由に動かせるはずだ!』

ジン「ま、待ってよ……このレバーが腕だから……」グイッ

ウィーン

ジン「それで、足が……」グイッ

ウィーン

ウルス「ゲシャアアアアッッ!」ズンズン

ドガァアン!

ジン「きゃああっ!」

カシャン……パキッ

ジン「あっ、め、眼鏡が……!」

ナガレ『当たり前だぁ! じっと止まってたら攻撃されるに決まってんだろうが!』

ジン「待って、眼鏡が……前がよく見えない!」

ナガレ『ンなモン心の目だか何だかでどうにかしやがれ!』

クマ『何を意味の分からない無茶言ってるクマ!』

ウルス「ゲシャアアアッ!」

ガンッ ズガァン

ジン「きゃあああっ!」

ガンッ ガンッ

ジン「うぐっ、ぐうぅ…………」

ナガレ『何してんだバカが、反撃しろ!』

ジン「でも、見えない……! 何がどうなっているのか、分からない!」

クマ『落ち着くクマ! ナガレ、クマたちで補佐するクマ!』

ナガレ『補佐も何も目の前にいるじゃねえか、とりあえずそいつをどうにかしろ!』

クマ『助言もできないなら騒いでないで黙ってるクマ!』

ウルス「ゲシャアアッ!」グワッ

ガキッ バキバキバキッ

ジン「か、噛み砕かれてる!」

クマ『ゲッター2は速さに特化してる半面、装甲が薄くなるクマ!』

ナガレ『それを早く言えよ熊公!』

バキバキッ

ジン「ヒッ…………!」

ジン(こんなところで、死ぬ?)

ジン(死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ)

ジン「い、嫌ァーーーー!」グイッ

ギュイイイーーーン!

ジン「喰らえエエェーーーー!」

ドスッ

ウルス「ゲシャアアッ!?」

ジャリジャリジャリズババババババッ!

ウルス「ゲシャアアアアアアアアアッッッ!」

ズバアッ!

バラバラバラ……

ナガレ『うわあっ、汚ェ!』

クマ『やったクマ! ジン、あと一機クマ!』

ジン「ハッ、ハッ、ハッ……!」


ズズゥン……ドシャッ


ジン「ハッ、ハッ、ハッ……!」


ジン『ヒヒヒャヒャハ、ハアアアッ!』


ジン「ハッ、ハッ――――!」ゾクゾク

メカザ「ギョアアアアアアアアアッッッ!」パカッ

クマ『ジン! 熱光線攻撃クマ!』

キィン……パウッ

ジン「ハアッ!」グイッ


ザザ――――

ザザザザザ!


メカザ「ギョアアアッ!?」

ナガレ『だあああ、速ェぞ!?』

クマ『クマっ……流石のクマも、ちょっとキツいクマー……!』

ジン「あああああッ!」

ザザザザザ

メカザ「ギョアアアッ! ギョアアアアアッッ!?」キョロキョロ

ズサッ

クマ『後ろ、取ったクマ!』

ナガレ『やれぇ、ジン!』

ジン「やアアアアアッ!」グイッ

ゾブッ ズバアッ!

メカザ「ギョアアッ!? ギョアアアアアアアアアッッッ!」

ナガレ『バカ野郎、この距離で急所を外すかあ!?』

クマ『ジン、焦っちゃ駄目クマ!』


メカザ「ギョアアアッ……!」ジタバタ


ジン「――――フヒッ」

ギュイィーン!

ズブッ ズバアッ!

メカザ「ギョアアアアアッッ……!」

クマ『また急所を外した……いや、これは、わざと外しているクマ?』

ナガレ『おい、ジン! 何を考えてやがる、さっさととどめを……!』


ジン「ギヒッ、フヒャハハハハッ!」

クマ『ジ、ジン!?』


ギャリギャリギャリギャリ!

ジン「なんで気付かなかったのかしら! ハチュウ人類が相手なら、何をしても構わないじゃない!」

ギャリギャリギャリギャリ

ズババババババッ ブシャアッ

メカザ「ギョアアアアアアッ!?」ジタバタ

クマ『ジン、どうしたクマ!?』

ナガレ『こいつ、メカザウルスを……嬲ってやがる……!』

ジン「ハチュウ人類相手なら刑法204条・傷害罪に問われない!」

ジャリジャリジャリズババババババッ

ジン「殺人罪に問われない!」

ズバッ ドチャッ

ジン「ぐちゃぐちゃにしても死体損壊にならないッ!」

グチャッ

ジン「目を抉り出しても、耳を千切っても、鼻を削いでも、何をしても許される!」

ジン「あれだけ『夢』見た事が、全部、デキルッ!」

ギュイイイーーーン!

ジャリジャリジャリ……

バシャアッ!

ジン「ッ――――――――!」ビクビクビクッ

ジン「さいっ……こぉ……」プシャア

ナガレ『な、なんて女だ……メカザウルスを嬲り殺して、イってやがる……!?』

クマ『ジン……』


早乙女「……クマ。強制オープン・ゲットし、帰投しろ」

クマ『分かったクマ』

ガチャン バシュゥン

早乙女「オートパイロットでジャガー号を拾え」

オペレーターA「は、はい」

早乙女「トゥルーパー4を出撃させろ。残っているハチュウ人類歩兵を全滅させるのだ」

カランカラン

早乙女(本能こそが、生き物を生かす。それでいいのだ、ジン)


ジン「あーっ……」ビクビクッ

 ―― 早乙女研究所 ――

所員A「おーい、誰かペンチを貸してくれー」

所員B「せーので持ち上げるぞ、せーのっ!」

ナガレ「こっちは危ねえからお前らは来んな。俺が渡す!」


ジン「…………」

クマ「ジン」

ジン「…………クマちゃん」

クマ「隅っこで体育座りなんかしてどうしたクマ?」

ジン「ちょっとね……自己嫌悪」

クマ「嫌な事、あったクマ?」

ジン「自分の事を、最悪だって思う」

ジン「私、よく妄想するのよ。白昼夢って言った方が、近いかもしれないけど」

ジン「人を殺す妄想……それも惨く殺して、私がそれを喜ぶ妄想」

ジン「私は自分の事をまともな人間だと思ってた。だから、それが嫌で、それが自分の本当の姿だなんて認めたくなくて」

ジン「……でも、それが本性だった。もう、ほんと、嫌でね……」

クマ「クマは、あの時のジンは、とても生き生きしていたと思うクマ」

クマ「あの時のジン、すごく綺麗だったクマ!」

ジン「お世辞なんていいのよ」

クマ「お世辞なんかじゃないクマ、本当だクマ」

クマ「ジンは、それが本性だって言うクマ。でも、それは嫌クマ?」

ジン「当然じゃない。そんなの、人としておかしいわ……」

クマ「クマはそうは思わないクマ」

クマ「自然界では、さっきのジンみたいに獲物を弄ぶなんてしょっちゅうクマ」

クマ「それは強い生き物が持つ特権みたいな物クマ。別におかしくはないクマ」


ジン「でも私は、野生動物じゃなくて理性のある生き物なのよ?」


クマ「野生動物にだって理性はあるクマ。さっきもクマは言ったけど、それより大事なのが本能クマ」

クマ「ジンは戦いたくないからゲッターに乗ったクマ。死にたくないから、結局ゲッターに乗ったクマ」

クマ「その結果、ジンの本性が出てきたクマ」

クマ「本性は、即ち本能クマ。本能は全ての生き物がすべからく持つ物クマ。つまりジンの行動は、全て本能クマ」

クマ「生き物は本能に従って生き残るクマ。ジンは本能に従って動いただけクマ」

クマ「なのに本能に従うのが駄目だなんて、それじゃあまるで、人間だけが生き物じゃないみたいクマ」


ジン「……人間界じゃ、そんなのは通用しないのよ」

クマ「じゃあ人間界に通用するように言うクマ」

クマ「ジンのおかげでクマは助かったクマ。みんな助かったクマ。ありがとうクマ」

ジン「……本当に優しいのね、クマちゃん」

クマ「そんな事無いクマ。今のはちょっとずるい言い方だったクマ」

クマ「ジン。本能は、もう一人の自分クマ。ちゃんと、仲良くしてあげるクマ」

クマ「そうしたら、いざと言う時、絶対に助けてくれるクマ」

ジン「……仲良くなんて、できるかしら。今まで散々否定してきたのに」

クマ「できるクマ。そうじゃなくちゃ、野生じゃ生き残れないクマ」

ジン「……ええ、頑張ってみるわ」

ナガレ「オイ、熊公! サボってんじゃねえぞ、働け!」

クマ「手伝ってほしいならそうだって言うクマー!」

ナガレ「るせー! テメエの不器用な手なんざ要らねえよ!」

クマ「……かと言ってナガレみたいに本能と口が直結した生き方はしなくていいクマ」

ジン「そうね。それには、賛成だわ」

クマ「今行くクマ!」

キュムキュムキュム

ジン「……待って、私も手伝う!」

 ―― 橘法律事務所 ――


助手「橘先生、事務所をたたむって、本気ですか?」

ジン「一時休業するだけよ。ちょっと私用でね。安心して、私の弁護士の先生にマイちゃんを紹介しておいたから」

ジン「あ、勿論マイちゃんさえ良ければの話だけどね。ここの代わりにそこで働いて」

助手「それは、ありがたいんですけど……何があったんですか?」

助手「この前だって、急に休んで、連絡も取れなかったし……」

ジン「だから言ったでしょう。急に熱出して、動けなかったんだって」

ジン「連絡しなかったのは悪いと思うけれどね。ハイこれ、先生の事務所の住所」

助手「……橘先生。本気ですか? 予約が入ってる状態で、突然休業なんて……」

助手「復職したとして、そんな信用を失った状態で、まともに仕事なんて……!」

ジン「そうね。そうなったら、別の仕事を探すわ」

助手「そんな適当な」

ジン「先方への謝罪の連絡、手伝って?」

助手「……はい」

 ―― 早乙女研究所 ――


ナガレ「で、仕事を辞めてきたわけか」

ジン「ええ」

ナガレ「アホだな。二足の草鞋って選択肢もあったろうに」

ジン「弁護士って仕事を馬鹿にしてるでしょ。それこそ何年にも渡って、一つの案件に関わることもあるのよ」

ジン「そうでなくても何日も拘束されるのに、同時にゲッターパイロットなんてできるわけないじゃない」

クマ「頑張ってやっとなれた夢の仕事でもクマ……?」

ジン「そうだけど……天職は一つだけとは限らないわ」

ジン「それに私がいなくても裁判はできるけど、『ゲッターロボ』は動かせない」

ジン「考えるまでもないの」

ナガレ「あれほど嫌がっていたのに、心変わりが早い事で」

クマ「でも、これでやっと三人揃ったクマ!」

ギュインギュイン ギュインギュイン

ナガレ「おっと……トカゲ共が来やがったか」

クマ「のんびり言ってる場合じゃないクマ。ゲットマシンに乗って待機クマ!」

キュムキュムキュム

ジン「そうね、急ぎましょう」スッ

カチャ……

ナガレ「眼鏡、外して良いのか?」

ジン「ええ……大丈夫」

ナガレ「また「前が見えなぁい」とか言いやがったらそのままコックピットから叩き落すからな」

ジン「そんな言い方してないんだけど」

クマ「二人とも何をしているクマ、急ぐクマ!」

ナガレ「うるせえぞ熊公! どうせテメエは一番遅ェんだから先に行ってろ!」

クマ「クマはクマだクマー! 本気出したらクマが一番早いクマ!」


ジン「…………フヒ」ニィ

第二話【ジン】終。

次回、第三話【クマ】。投下日未定。

なんか長引いたわ。戦闘シーンが実質二回あるのが原因に違いない。

>>67
それが思い浮かんだのならこっちは満足。

鉄球からトマホークに変形するってことは新ゲッターのに近いのかな?

マ゛ダ゛ー゛?゛

>>140
鉄球からトマホークの流れは合理的だと思ったから採用しただけです。
リメイクゲッターと言う点でリスペクトパロディしている節はあるけど。ナガレの冒頭とか。

>>141
デギダー゙。

今更だけどゲッター1、ゲッター2のデザインは従来のゲッターと同じ姿で想像してもらえればいいです。
ちょこちょこディティールは違うけど、どうせ描写しないし。

早乙女「『ゲッターロボ』とは、イーグル号、ジャガー号、ベアー号の三機のゲットマシンが合体して完成するスーパーロボットだ」

早乙女「ゲッターロボはゲットマシンの順番を入れ替える事で、三つの形態に変形できる」

早乙女「イーグル号がトップとなり、空陸戦を可能とするゲッター1」

早乙女「ジャガー号がトップとなり、地上及び地中での戦闘を得意とするゲッター2」

早乙女「そしてベアー号がトップとなり、三つの形態の中で最も装甲が固く、また水中戦を目的としたゲッター3」

早乙女「状況に応じて変幻自在に姿を変え、戦闘を有利にする事をコンセプトに設計したのがゲッターロボだ」

早乙女「ゲッター1はイーグル号、ジャガー号、ベアー号の順番でのゲッターチェンジ」

早乙女「ゲッター2はジャガー号、ベアー号、イーグル号の順番でのゲッターチェンジ」

早乙女「ゲッター3は……」

ナガレ「ジジイ、質問」

早乙女「質問する時間は後で設ける」

ナガレ「何だって今更そんな基礎的な事を学ばされてるんだ、俺たちは?」

ジン「簡単な話よ。私たちはゲッターロボについて知らなさすぎる。その結果が、前々回での戦闘での参事よ」

ナガレ「あれはジン、テメエがうだうだ駄々を捏ねるからだろうが」

ジン「それは認めるわ。同時に、ゲッターに対する知識が無かったからこその無様だった」

ジン「信じられない……一回学習しておきながら、ゲッターの武装を全部忘れてただなんて」

ナガレ「そんなモンは戦いの中で体が覚えるもんだ。大体にして勉強なんて小学校の頃以来で嫌いだよ!」

ジン「なら出て行くと良い。その場合、今後の戦闘は私とクマちゃんだけでするから」

ナガレ「ざけんなクソアマ! また空を飛ぶメカザウルスが出たら、どう戦うってんだっ?」

ジン「いっその事、敵に合わせて搭乗するゲットマシンを変えても良いかもね。ナガレは置物で」

ナガレ「表に出ろ。ひん剥いて一晩中犯す」

ジン「真っ裸にされて貧相なモノをカラスに突かれたければ、付き合うけど?」

早乙女「止めんか、お前たち」

ナガレ「チッ……」

ジン「すみません、博士……」

ナガレ「と言うか、一番の疑問はなんで熊公がここにいねえのかって事だよ」

早乙女「クマは既にゲッターパイロットとして十分な知識を得ている。武装の追加等が無い限り、今更説明を受ける必要はない」

早乙女「この講習で一番重要なのは、お前たちをクマと同じ程度まで引き上げる事だ」

ナガレ「つまり俺たちは人間にして熊以下か」

ジン「仕方ないわ、その通りだもの……今のままじゃ、クマちゃんだけに負担を強いる事になる」

ナガレ「知った事かよ。あいつ今まで戦闘した事ねえじゃねえか。負担なんてねーだろ」

ジン「今後の話よ。戦いの中で成長できるなんて、都合が良すぎるわ。私たちは私たちで、努力しないと……」

ナガレ「……まあ、いつまでもアイツ頼りってのは癪だからな」

早乙女「忘れるな。お前たちが協力する事で、ゲッターはいくらでも強くなれる」

早乙女「協力するには、兎にも角にも情報の共有だ。続けるぞ」

ジン「お願いします」

ナガレ「早く終わらせてくれよ、もう……」

 ―― 早乙女研究所・飛行訓練場 ――


クマ「みんな。やっと、ゲッターパイロットが三人揃ったクマ」

クマ「ナガレと、ジンって言うクマ。ナガレは、乱暴で自分勝手な奴クマ」

クマ「ジンは、冷静で強い女の人クマ。でも二人とも元々は一般人だから、多分、みんなが見たら怒るクマ」

クマ「「こんな奴らがゲッターに乗るのか!」って……言うと思うクマ」

クマ「それでも、クマたちが、これからはゲッターを動かしてハチュウ人類と戦うクマ」

クマ「だから……ちょっと我慢して、応援してほしいクマ」

カサッ……

クマ「……ケン、テツオ、ジョウ、モンジ」

クマ「トモカズ、ナルミ、ヤスノリ」

クマ「タカヒロ、ユウ、トシハル、ヒデオ、ナオヤ、キヨユキ」


クマ「……ミチル、タツヒト……」


 ゲッターロボ・クマ


.     第 三 話


.     【クマ】


ナガレ「だあーっ……頭がパンクしそうだぜ……」

ジン「あの程度の情報量で何を情けない……」

ナガレ「黙っとけ。はーあ、無駄に頭を使ったから腹が減った。飯にしようぜ、飯!」

ジン(多分、食後には全部忘れてるわね)

キュムキュムキュム

クマ「ナガレー、ジンー」

ナガレ「あっ、熊公てめえ! どこに一人で行ってやがった!」

ナガレ「俺たちだけに講習なんか受けさせやがって、お前はお気楽に散歩か!」

クマ「野暮用クマ。二人は、ちゃんと憶えられたクマ?」

ジン「ええ。後は実践して、体に落とし込むだけよ」

クマ「ジンは流石クマー」

ナガレ「どうせテメエが操縦するゲッターの特性を憶えられればそれでいいんだ。後は知るか」

クマ「ナガレはそんな事だろうと思ったクマ」

ナガレ「熊鍋にしてやろうか!」

ガツガツガツガツ

ナガレ「んぐんぐんぐ……」ゴクン

ガツガツガツガツ

ジン「ナガレ、少し落ち着いて食べなさい」

ナガレ「はあん? おえあえうあうえうああうおおうおッ!?」

クマ「ナガレ汚いクマ、散ってるクマ」

ジン「最低……」

ナガレ「んぐっ……お前らいつハチュウ人類が来るかも分からねえってのに、ちんたら食ってる暇があると思ってんのか!」

クマ「いやあクマにはそんな深い意図はなくただがっついているようにしか見えなかったクマ。食べカス飛んでたクマ」

ナガレ「ンだと! テメエこそ熊公、肉食獣の分際で何をお上品に食ってやがる! 野菜じゃなくて肉食えよ、犬食いとかしろよ!」

クマ「クマがやると本気で見苦しいからやらないクマ。あと栄養バランスを考えた食事をしないとコンディションに影響が出るクマ」

ナガレ「お、おう……」

クマ「と言うか、ナガレ。熊公って言うの止めてほしいクマ。クマはクマだクマ!」

ナガレ「生意気言ってんじゃねえよ、テメエなんて熊公以外になんて呼べってんだよ」

ジン「またそんな事を言う……名前くらい普通に呼びなさいよ。ナガレだってポケットモンキー呼ばわりされたら嫌でしょうが」

ナガレ「意味は分からねえが馬鹿にされてるのは分かるな。言った奴はぶっ飛ばすから安心しろよ」

ジン「話にならねー……。そう言えばクマちゃん、名前で呼ばれているのかそうじゃないのか、一応分かっているのね」

ナガレ「どっちも同じイントネーションの「くま」なのにな」

クマ「当たり前クマ」

ジン「クマちゃん」

クマ「名前クマ」

ナガレ「熊公」

クマ「馬鹿にしてるクマ」

ナガレ「若干呼んでる人間に引っ張られてねえか?」

クマ「そんな事ないクマ!」

ナガレ「しかし、何時までこんな青空食堂なんだ? テントすら張らねえで、しかも飛行訓練場の側ってよ」

クマ「早乙女博士が言うには、食堂を元通りにするまで二週間は掛かるらしいクマ」

ジン「跡形も無くなったものね……その程度の期間で元に戻せると考えられるのも凄いけれど」

クマ「早乙女博士が言うんだから間違いないクマ!」

ジン「クマちゃんは本当に博士が好きなのね」

ナガレ「お前みたいなのを置いとくんだから、あのジジイも相当変人だよな。お前、いつからここにいるんだ?」

クマ「四年前クマ。クマが1歳の頃クマ」

ナガレ「って事はお前今、5歳か」

ジン「人間換算だといくつなんだろ?」

クマ「普通のツキノワグマだと20歳ちょっとくらいクマ」

ジン「へえ、もう大人なんだ!」

クマ「でも、クマはちょっと普通じゃないし、自分でもそれほど大人だと思えないから、実際はもう少し下だと思うクマ」

ナガレ(普通だったら俺より年上だったのか……)

ジン「ねえ、クマちゃん。クマちゃんがここに来るまでの経緯、詳しく聞いても良い?」

クマ「どうしてクマ?」

ジン「クマちゃんは私とナガレについて、もうそれなりに知っているけれど、私たちは何も知らないから」

ジン「一緒にゲッターに乗るんだから、それくらいは知っておきたいなって思って」

ナガレ「くっだらねえな。俺は要らねえ、テメエらで話してろ」ガタ

ジン「ちょっと、どこに行くのよっ」

ナガレ「腹ごなしの散歩くらい行かせろよ」

ジン「チームワークッ!」

ナガレ「ウンコと一緒に流してくる!」

ジン「全く……あいつには協調性がまるで無い。一人で戦うワケじゃないのに……」

クマ「それは同意クマ。ゲッターは三人の息が合ってこそ真の力を発揮するって、早乙女博士が言っていたクマ」

ジン「まあ、聞く気が無い奴に居てもらっても邪魔なだけだし、却って良かったかもね。私だけでも聞くから」

クマ「……大した事じゃないクマ。早乙女博士に見つけてもらって、育ててもらって、ゲッターパイロットになったクマ」

ジン「…………」

クマ「…………」

ジン「…………えっ、それだけ?」

クマ「それだけクマ」

ジン「人間の言葉とか、最初から喋れたわけじゃないんでしょ?」

クマ「……早乙女博士に教えてもらったクマ」

ジン「見つけてもらったって……じゃあ、どういう状況で?」

クマ「研究所側で野垂れ死にそうになっているところをクマ。クマはこんなのだから、満足にエサも確保できなかったクマ」

ジン「ああ、そう……」

クマ「ナガレやジンほど、ショッキングな出会いじゃなかったクマ。それでも、早乙女博士は恩人クマ!」

ナガレ「ふあーあ……食ったら眠くなっちまった。この上熊公の身の上話なんざ聞かされたら三秒で寝るぜ」

ナガレ「ったく、ジンの奴、余計な事を言いやがって……なんだって女ってやつぁ要らねえ詮索したがるんだか」

ナガレ「…………ン? なんだありゃ」

スタスタ……カサ

ナガレ「……花束? っていうか、摘んだ花を紐できったなく結んだだけだけど」

ナガレ「何だってこんなものがここに」

ナガレ(落とし物……じゃねえわな。人が通らない茂みの中に、隠すように「置かれている」)

ナガレ「飛行訓練場の近くの茂みに花束、ねえ……」

ナガレ「なるほど、間抜けへの手向けか。縁起悪ぃ」

ナガレ「あふ……なんか面倒な事ばかり起きやがるな。部屋に帰って寝るとすっか……」

 ―― 翌日 ――


ナガレ『フゥーーー! ヒャッホォォォォウウゥッ!』

ギュオン

クマ『ナガレ、はしゃぎ過ぎクマー!』

ギュオン

ジン「これは飛行訓練よ! あなたが大好きな運動系なんだから、真面目にやりなさい!」

ナガレ『うっせえなぁ……ゲットマシンの動きに慣れるのも立派な訓練だろ!』

クマ『クマたちはもう十分にゲットマシンを動かせるんだから、あと必要なのはスムーズな合体クマ!』

ジン「時間の無駄よ。ほら、ゲッター1!」

ナガレ『チッ、優等生共が……』

クマ『ナガレ!』

ナガレ『わーったよ! チェーンジ、ゲッター 1 ! スイッチ、オンッ!』ポチッ

ナガレ「ふぅ、訓練終わり、っと。ン、ああー……やっぱ窓全開にしても、乗り心地はアレだなぁ」

クマ「ナガレ!」キュムキュム

ナガレ「だはぁ、うるせえのが来た……」

クマ「なにをぶつぶつ言ってるクマ。いい加減、訓練だからって真面目にやってもらわないと困るクマ!」

ナガレ「実戦で死んだら元も子もねえンだろ、分かってる分かってる」

クマ「実戦前に訓練で死んだら本当に下らないクマ! ゲッターチェンジは一番危険クマ!」

ナガレ「少しでも互いのタイミングがずれたら合体の衝撃でぺちゃんこになるんだろ、分かってる分かってる」

クマ「分かっていながら何でちゃんとやらないクマ」

ナガレ「嫌いなんだよ、規律なんてモン」

クマ「嫌いなのは勝手だけどクマたちを道連れにされたら困るクマ」

ナガレ「今までだって十分合体はできてただろうが! おんなじ事をブチブチ垂れんじゃねえ!」

ジン「いい加減にしなさいよ、ナガレ」

ナガレ「出たようるせえ変態露出狂。いい加減って言うならテメエもパイロットスーツ新調しろよ」

ジン「まだ新しいのができてないんだから仕方ないでしょ!」

クマ「技術の粋を集めて開発したスーツ一着ができるまで、少なく見積もっても三週間は掛かるクマ……」

ジン「それは置いといて! 何時までも子供みたいな事言ってないで、協力しなさい」

ナガレ「あーあ、やれ一言目には「真面目にやれ」、二言目には「協力しろ」。息が詰まるぜ!」

クマ「クマたち、言ってる事の何か一つでも間違ってるクマ?」

ジン「間違ってないところでこいつは納得しないでしょうけど」

ナガレ「分かってるじゃねえか。話は終わりだなっ!」

クマ「ずぇんっぜん終わってないクマ! 待つクマー!」

キュムキュム

ジン「はあ……私たちじゃ駄目ね」

カツカツカツ……

ジン「……あったあった。博士の研究室」

コンコン

ジン「早乙女博士、いますか?」

早乙女「ジンか。入れ」

ジン「失礼します」

カシュッ

ジン(自動ドア……)

早乙女「何の用だ?」

ジン「はい。ナガレの事で話があります」

早乙女「どうした」

ジン「ナガレは……協調性に問題があります。三人で動かしてこそのゲッターに乗せるのは、危険過ぎます」

早乙女「その程度の事、放っておけ」

ジン「その程度って……ナガレの身勝手は常軌を逸しています」

ジン「実際、ナガレは前回の戦闘の際にも、敵メカザウルスに不利だったゲッター1から変えたがりませんでした」

ジン「状況に応じて変幻自在を活かす事こそが『ゲッターロボ』であれば、それは放置して良いものとは思えない! 博士から、何か一言」

早乙女「言ってどうにかなると思うか? あれくらいの屑でなければ、ゲッターは乗れん」

ジン「あんな調子のナガレと組まされたら、命がいくつあっても足りません!」

早乙女「所詮貴様らは消耗品だ。使えなくなれば、新しいものを探す。いくらでも死ねばいい」

ジン「……何ですか、その言い方は」

早乙女「話はそれだけか?」

ジン「そうですか。やはりあなたも、相当の狂人なのですね」

早乙女「まともな人間などゲッターには必要ない」

ジン「クマちゃんに対しても、同じように死ねと言えますか?」

早乙女「…………」

ジン「あなたの事を恩人と慕うクマちゃんを、私たちと同じく扱えますか?」

ジン「死なせても良いのなら……もう、私は何も言いません」

ジン「ただ、元々からゲッターに乗せるためだけにクマちゃんを見つけたのなら……」

早乙女「クマを見つけたのはワシではない」

ジン「え……?」

早乙女「そして奴には、死を恐れない理由がある。だからワシは、クマにも同じように言えるし、その上で言いはしない」

ジン「待ってください。なら、クマちゃんは……誰が見つけたんです?」

早乙女「ワシの娘だ」

ジン「娘……お子さんがおられるんですね」

早乙女「ああ、二人な」

ジン「でも、会った事は無いような……?」

早乙女「どちらも、もうこの世にはおらん」

ジン「…………すみません」

早乙女「気にせんよ……ゲッターチームの事は、ゲッターチームで解決しろ。三つで一つのお前たちに、部外者は口を出せん」

ジン「ですが、博士なら」

早乙女「ワシの口から言ったところで意味はない。生死を共にするお前たちだからこそ、お前たちで解決するのだ」

ジン「それまでに、死ななければ良いですが」

早乙女「お前たちは死なん。だからこそ選んだのだ」

ジン「我々は普通の人間です」

早乙女「普通の人間にゲッターは乗れん。肉体的にも、精神的にもな」

ジン「…………」

早乙女「話は終わりだ、出て行くがいい」

ジン「……はい」

 ―― 早乙女研究所・ジンの部屋 ――

ジン「はあ……」

ジン(結局、何も解決できてないし……謎だけ増えたし……)

ジン(クマちゃんを拾ったのが早乙女博士でなく、早乙女博士の娘さんだった。それはいい)

ジン(どうしてクマちゃんは、そんな嘘を吐いたの?)

ジン(娘さんの死が関係しているのは間違いないけど……)

ジン(博士も、死んでも良いって言う割には、クマちゃんだけは特別視してるみたいだし……)

ジン「って言うか、今はそんな邪推してる場合じゃないからっ」

ジン(早乙女博士は、チームである私たちで解決しろと言う。実際、それは尤もな意見ではあるけれど……)

ジン「解決できないから他に丸投げしたいのよぉ~~~、ナガレのバカ、ホントばか、マジ馬鹿……!」

ジン「んあーー、ムカついてきた……明日言う事聞かなかったら、ぶん殴ろ……」

 ―― 翌日 ――


早乙女「ゲッター1の武装はゲッタートマホーク、ゲッターレザー、ゲッタービーム」

早乙女「外部武装でゲッターマシンガン、そして飛行を可能とするゲッターウィングがある」

早乙女「ナガレ。ゲッタートマホークはいくつ搭載されている?」

ナガレ「ジジイ、質問。一昨日も昨日も同じ事を聞いた気がするが、俺の気のせいか?」

早乙女「気のせいではなくなるまで続ける。答えろ」

ナガレ「マジかよ……えっと、三つ?」

早乙女「ジン」

ジン「両肩に二本ずつ、計四本です」

早乙女「正解だ。これは改良する際に、搭載できる数も増やす予定だが、現状はその数となっている」

早乙女「では、ナガレ。ゲッター2のドリルハリケーンの射程はどれくらいだ?」

ナガレ「……三〇〇mくらいだっけか?」

早乙女「ジン」

ジン「無風状態で六二〇mです」

早乙女「正解だ」

ダンッ

ナガレ「やってられるか!」

ジン「それを早乙女博士の前で言えばいい」

ナガレ「言って聞くようなジジイなら、元より俺はここにいねえよ」

ジン(同じ事言ってるし……)

ガツガツガツガツ

ナガレ「ふぁいふぁい、ほあおえっあーおほふへいあんえいあいうういひあいはお……」モシャモシャ

ジン「食べながら喋るな、散ってるし、汚いし……」

ナガレ「んぐ……なんで他のゲッターの特性なんて理解する必要があるんだよ」

ジン「他のゲッターがどのような性質を持つか、互いに情報を共有する事で、戦闘を優位に進める意味があるのよ」

ナガレ「そんな事知った事じゃねえよ」

ジン「もうそれ、五回目ね」

ナガレ「やってられるか!」

ジン「それも三〇回は聞いた」

ジン「……ナガレ。本当に、真面目に言うわ。もうそろそろ、真剣に私たちに協力しなさい」

ナガレ「知らねえよ、もう飽きるほど聞いたぜ」

ジン「いい加減にして!」

ガシャンッ

ザワザワザワ……

ナガレ「冷静じゃねえな、珍しい事で」

ジン「私たちはただゲッターを動かすだけじゃない。それを動かす意味を背負っているのよ」

ジン「人類の未来、世界の平和、ハチュウ人類を殲滅する為、牙無き人の明日の為に戦う!」

ジン「そんな大義名分の上で私たちは戦っている! なのにあなたは、そんな子供みたいな事ばかり」

ナガレ「知ったこっちゃねえな、そんなモン! 俺は俺の為に戦う! 俺は俺がやりたいようにやる!」

ナガレ「元々乗りたくもねえものに無理矢理乗せられてンだ! それくらい自由にやらせてくれたっていいだろうが!」

ジン「そんな傍若無人が通るわけないでしょうが!」

ナガレ「それはお前らが邪魔なんだよ! お前らなんか要らねえんだ、ゲッターが一人で動かせたなら!」

ジン「いい歳してたらればで物事を語るな!」

ナガレ「ハチュウ人類嬲り殺してイっちまうようなド変態の気違いに説教されたかねえな!」

ジン「なっ……今はそれは関係ないじゃない!」

ナガレ「いいや、お前が俺に文句があるなら関係あるね」

ナガレ「今後毎回、あんな風に発情されたんじゃこっちだって安心できねえからよ!」

ジン「そうならないように努力はするわ! でも、ナガレはそれを欠かしている。一緒にしないで」

ナガレ「ハァー、出た出た。ヒス女特有の自分は特別ですって価値観。吐き気がする」

ジン「頭が悪い癖に話をすり替えるのは達者ね。どれだけ私を貶しても、あなたの立場は変わらないわ」

ナガレ「俺はお前と違って周りに媚びる必要ねえからな、知るか!」

ジン「このっ……!」

ジン「…………ああ、私、馬鹿だったわ。こんな奴に言葉なんて通じるわけないのに」

ナガレ「喧嘩売ってんのか? 買うぜ? こっちも甲高い声で耳が痛え。どっちが上か、はっきり分からせてやる」

ジン「一人じゃ何もできない小僧が、図に乗るな」

ナガレ「ぶっ殺す!」

クマ「ナガレ、ジン!」

キュムキュムキュム

クマ「食事中に何を暴れているクマ!」

ナガレ「うるせえ。お前も殺すぞ、熊公」

ジン「クマちゃん。こいつ、一回本気で叩きのめさないと駄目」

クマ「落ち着くクマ! クマたちが争ったって良い事はないクマ!」

ジン「それは……そう、だけど」

クマ「ナガレ。ナガレの気持ちは分かるクマ。でも、嫌でも、ちょっとでいいから我慢して、頑張ってほしいクマ」

クマ「クマたちは三人しかいないゲッターチームクマ。だから仲良くして、信じ合って、助け合いたいと思……」

ガシャアンッ

ナガレ「黙ってろ! 熊の分際で人間様に口きいてんじゃねえ!」

クマ「クマっ……」

ナガレ「揃いも揃って仲良しこよしを要求してきやがって、虫唾が走る!」

ナガレ「大体テメエはいつもいつも上から目線で物言いやがって、ムカつくんだよ!」

ナガレ「自分は優秀なんですってか? だから俺を見下しても良いって、そういう事か?」

ナガレ「ゲッター線で進化したから何だってんだ。獣らしく四足歩行で這い蹲ってりゃいいんだ!」

シーン……

ジン「ナガレ……あなた、一緒にゲッターに乗る仲間になんて事を……!」

ナガレ「仲間? 笑わせんな! 喋る熊なんて気持ち悪いモンと一緒にされたかねえな!」

ナガレ「」

クマ「……ク、クマッー!」ダッ

キュムキュムキュム

ジン「あっ、クマちゃん!」

ナガレ「ヘッ、本当の事を言われて逃げやがった。畜生が俺に口答えするからだ」

ジン「……ナガレェ!」

ナガレ「やるか、来いよ! お前を降して、次はあのクソ熊を黙らせてやる!」

ジン「……もう、いい。あなたの事なんか、知らない」

ナガレ「あん?」

ジン「ナガレ。あなたの事、最低な人間だと思っていたけど、訂正するわ」


ジン「クズよ、お前は……!」


ナガレ「ンだと……」

ジン「クマちゃん、待って!」ダッ

ナガレ「おい、逃げんのか! ジン!」

シーン……

ナガレ「……なんだよ、テメエら。何だその目は。文句があるなら言えよ、かかって来いよ!」

ナガレ「どいッつもこいつも、ざけやがってよオ!」

ドガッ ガシャアンッ!

ナガレ「俺の何が悪いってんだよ……」

ジン「クマちゃん! どこにいるの、クマちゃん!」

ジン「クマちゃん!」


クマ「くすん、くすん……ミチル、タツヒト……」


ジン「……クマちゃん」

クマ「クマっ……ジ、ジン」

ジン「ごめんなさい。ついてくるべきでは無いと思っていたけど……どうしても、ね」

クマ「……みっともない所を見せちゃったクマ。恥ずかしいクマー」

ジン「クマちゃん。あんなクズの言う事なんて気にする必要ないわ。何だったら私がぶっ殺したって」

クマ「止めてほしいクマ! ジンにまで、そんな事を言ってほしくないクマ」

ジン「クマちゃん……」

クマ「確かに、ナガレはバカで、どうしようもない奴クマ。でも、クズ呼ばわりされるほどじゃないクマ」

ジン「私、弁護士やってきた中であいつほどのクズを見た事ないわ」

クマ「それでも、クマ」

クマ「それに、ナガレの言っている事は正しいクマ。クマは、気持ち悪いクマ……」

ジン「そんな事ない! クマちゃんは気持ち悪くなんてないわ!」

クマ「違うんだクマ! これは自虐とか、そう言うのじゃなくて、客観的事実なんだクマ」

クマ「普通のツキノワグマは喋ったりしないクマ……あとクマは小さいし、人間たちと違って不器用クマ」

クマ「人間でもない、熊でもない……分類できない不完全な存在クマ。気持ち悪いって言われるのは当然クマ」

ジン「だからナガレは正しいの?」

クマ「……そうクマ」

ジン「なら私は間違っていてもいい。私はあなたを認める。きっと、早乙女博士も、研究所のみんなも」

クマ「分かってるクマ!」

クマ「みんな、優しくしてくれたクマ……だから、ナガレの言葉にショックを受けちゃったクマ」

クマ「ナガレが悪いと言うなら、クマだって悪いんだクマ」

ジン「どうして、そこまで……」

クマ「クマたちは三つで一つ、代えられないゲッターチームだからクマ」

ジン「……分かった」

クマ「ありがとうクマ」

ジン「でも、許せるわけじゃない。その時が来たら、私は本当にナガレを、どうにかする」

クマ「その時が来ない事を祈るクマ」

ジン「それはナガレ次第ね」

クマ「クマ。……ジンは、先に戻っていてほしいクマ。クマはもう少しここにいるクマ」

ジン「ええ。その……本当に気にしないでね」

クマ「大丈夫クマ。クマはこれでも図太いクマ!」

ジン「ふふ。じゃあ……ね」

クマ「気を付けて戻るクマ」

所員A「全く、アイツにも困ったもんだよな。なんだってあんな奴がゲッターロボに……」ガチャガチャ

所員B「暴れるならまだしも、せめて片づけていけってんだよなあ……」ガチャガチャ

ジン「手伝います。ごめんなさい、騒いでしまって」

所員A「た、橘さん! いえ、大丈夫です! 自分ら、男なんで!」

所員B「そんな事より、傍観してすみませんでした。クマをあんな風に馬鹿にされて、悔しかったのに……」

ジン「あんな奴に突っかかっていくだけ損です。それより、ナガレはどこに行きましたか?」

所員A「さあ……あの後、すぐにいなくなりました。部屋に戻ったのではないでしょうか」

ジン「そうですか。もう一つ……「ミチル」と「タツヒト」と言う名前に憶えはありますか?」

所員B「それは……言って、いいのかな?」

所員A「いや、でも、なあ……」

ジン「言い辛いのであれば、大丈夫です。ありがとうございます」

所員A「すみません、お役に立てず……」

 ―― ナガレの部屋 ――


ナガレ「あーあ、酒も駄目タバコも駄目、ただでさえ娯楽が少ねえってのに、飯の時間まで腹の立つ」

ナガレ「…………何だってんだよ。どいつもこいつも、俺ばかり」

ナガレ「うおー……クソったれがぁ!」ドガッ

ドンガラガッシャン! カラカラ……

ナガレ「はっ、はっ……」

ガンッ!

ナガレ「うおっ!?」ビクッ

ガンッ ドガッ

ナガレ(な、なんだ……何かが部屋のドアをどついている……?)

ナガレ「だ、誰だ! 今開けるから、そこで待ってろ……!」

バキャアッ!

ナガレ「だあああ、ぶっ壊れたアッ!?」

ガシャンッ

カツカツ……

ジン「お邪魔するわ、ナガレ」

ナガレ「お邪魔じゃねーよ! テメエ何やってんだ、ドア蹴破って入ってくる奴があるか!?」

ジン「話がある。ついてきなさい」

ナガレ「話だあ? 馬鹿かお前は、こんな乱暴な奴についてくアホがいるかよ!」

ジン「嫌だって言っても、無理矢理にでも連れていく。要らないのは両腕? それとも両足?」

ナガレ「なんでどっちを選んでも揃って両方持ってこうとするんだお前は……」

ジン「大事な話だからよ」

ナガレ「…………」

ジン「無言って事はどっちも要らないのね?」

ナガレ「チッ……分かったよ、行きゃあ良いんだろうが」

ナガレ「って、なんだ。どこに連れていかれんのかと思えばジジイの部屋じゃねえか」

コンコン

ジン「早乙女博士、いらっしゃいますか?」


早乙女「入れ」


ジン「失礼します」

カシュッ

ナガレ(自動ドア……)

ナガレ「入るぜジジイ」

早乙女「ナガレも居たのか。何の用だ」

ジン「単刀直入にお尋ねします。「ミチル」と「タツヒト」とは何者ですか?」

ナガレ「誰だそいつら」

ジン「クマちゃんはどうして、ゲッターロボに乗ったのですか?」

早乙女「……驚いたな。クマがそれを話すわけがない。所員も口を閉ざすだろう」

早乙女「となれば、僅かなヒントだけでたどり着いたか。流石だと言わせてもらおう」

ジン「ありがとうございます」

ナガレ「下らねー茶番は良いからさっさと話しな。帰るぞ」

早乙女「せっかちな奴だ……まあ、よかろう」

カチャカチャ スッ……

ナガレ「写真?」

早乙女「ゲッターロボ開発の初期メンバーだ」

ナガレ「どれどれ……おっ、これがジジイか。今とあまり変わらねえな!」

ナガレ「アッ! こいつ、あの整備士のヤローじゃねえか! 何だ意外と昔からいたんだなあ」

ジン「……博士。この女の子が、娘さんですか」

早乙女「ミチルだ。そしてその隣にいる男が、息子の達人」

ナガレ「ジジイ、子供がいたのか!? 堅物の分際でやる事やってんなあ」

ナガレ「なんだジン、お前の質問解決したじゃねえか。なんのこっちゃねえ、このジジイの子供だとよ」

ジン「そうね」

ナガレ「何だその気のねえ返答……ン? でも、こいつらに会った憶えは無いぜ?」

早乙女「死んだよ、二人とも」

ナガレ「あれま、ナンマンダブ。なんで死んだ?」

ジン「本当にデリカシー無いわね、ナガレ」

ナガレ「知らねえな、そんなモン」

早乙女「止めんか、お前たち。どうせ話す事だ」

ナガレ「だとよ」

ジン「チッ…………」

早乙女「……もう、四年にもなるか」

―――

――――――

―――――――――


早乙女「いかんと言ったらいかん! 『ゲッターロボ』は玩具ではない!」

達人「俺が玩具で遊ぶほど子供に見えるか? 許してくれよ、親父!」

達人「帝王ゴール率いるハチュウ人類が最初に襲撃してきたその日、お袋は巻き込まれて死んだ……」

達人「親父はお袋の仇を取るために、ゲッターロボを作ったんだろう!」

達人「俺だって同じだ。親父がお袋の仇を討たせてくれ!」

早乙女「ゲッターロボには、作ったワシですら分からん謎が多い。殆ど偶然の産物だ」

早乙女「それどころか、ワシの半生を注いで研究したゲッター線ですら、解明できていない事ばかりなのだ」

早乙女「それがどれほどに危険か、分かっているのか、達人!」

ミチル「さっぱり分からないわね、お父さん」

早乙女「ミチル……」

ミチル「私もお兄ちゃんと同じ気持ちよ、お父さん。小さかった私には、お母さんの記憶はそんなにない……」

ミチル「だけど、優しかったのは憶えている。幸せだった事は知っている」

ミチル「それを奪ったハチュウ人類を赦せない!」

ミチル「私たち早乙女一族の因縁は、早乙女一族で果たす! 違うの、お父さん!」

達人「俺たちは親父ほど頭の出来は良くない。だからゲッター開発にはまるで関われなかった……」

達人「なら、ゲッターに乗る事こそが、俺たちにできる唯一の事なんだ」

ミチル「お願いよお父さん……私たちをゲッターのパイロットにして」

早乙女「……お前たちの気持ちは分かった。だが、だとしても駄目なのだ」

早乙女「ゲッターロボは三機のゲットマシンが合体する事で姿を現す……あと一人、足りん」

早乙女「急ぎ、そのパイロットを探し育成する。その間、お前たちもパイロットとして十分な訓練を積むのだ」

達人「親父、それじゃあ!」

ミチル「お父さん!」

早乙女「想定されるゲッターロボの負荷は並大抵ではない。それにハチュウ人類と戦うと言う事は、命を懸けると言う事!」

早乙女「その覚悟があるか!」

達人「上等だぜ!」

ミチル「当然じゃない!」

早乙女「……良かろう。ワシも、より安全にゲッターを動かせるよう、研究を進める!」

早乙女「見ていろ、ハチュウ人類共め……! 早乙女一家の執念を思い知らせてやる!」

早乙女「――――ゲッター2の耐久度は低い。敵の攻撃を一度でも受ければ……」

達人「お、親父、ちょっと休憩させてくれ」

早乙女「なんだ、まだ三〇分も経っておらんぞ」

ミチル「私たちが勉強苦手なの知ってるでしょー!」

早乙女「勿論知っているとも。お前たちは一度として良い評価の通知表を持って帰って来た事がないからな」

早乙女「お前たちは揃って恵まれた肉体を持つ反面、頭の方はどうにも弱い。こんな事は時間の無駄かもしれん」

達人「い、いや! そんな事はない! いきなり車に乗せられて安全運転なんてできるわけがないからな」

ミチル「た、大切な事だっていうのは分かってるから、怒らないで……!」

早乙女「良い心掛けだ。では続けるぞ」

達人「うぐぐ……」

ミチル「お父さんの鬼ー……!」

達人「親父、これがゲッターパイロット候補の情報か?」

早乙女「そうだ。自衛隊、アスリート、NISAR……あらゆる分野、機関に所属する人間の情報を集めた」

ミチル「色々な人がいるのね……」

達人「どうやって誘うんだ?」

早乙女「素直に言うしかあるまい」

ミチル「この人なんかいいんじゃない? 体格も良いし、有名大学卒業だって」

達人「28歳……だいぶおっさんだな。歳が離れすぎているとチームワークに支障が出るんじゃないか?」

ミチル「子供ばかりのチームより良いと思うわ。大人としての冷静な観察眼も欲しいもの」

達人「ほー……思ったより考えているじゃないか、ミチル」

ミチル「お兄ちゃんみたいな子供っぽい男の人が増えても仕方ないもん。あ、この人カッコイイ!」

達人「前言撤回だ。親父、パイロットの選別は親父に任せるよ」

早乙女「同感だ。ミチルにはまだ早い」

タッタッタッ……

ミチル「ほっ、ほっ……」

ミチル「いくら体力と運動神経に自信があるからって、体力作りを欠かしちゃいけないもんねっ」


「くぅん……くるる……」


ミチル「……あれ?」ピタ

ミチル「なんだろ、今の……こっち?」

ガサガサガサ……

「くぅん……」

ミチル「く、熊だ! でも、子供……怪我をしているのね」

ミチル「待ってて、今助けるから! よっと!」グイッ

ミチル「お父さん、大変!」

早乙女「どうした、ミチル?」

達人「ミチル、なんだその動物!」

ミチル「子供の熊よ。飛行訓練場予定地近くの森の茂みで倒れてたの……」

「くぅん……」

達人「熊……なのか、これ。親父?」

早乙女「いや、普通の熊とは違うな……」

ミチル「ええっ、熊じゃないの!?」

早乙女「しかし、確かに酷い怪我だ。それに痩せ細っている」

ミチル「お父さん、この子を助けてあげてっ」

早乙女「生物は専門外だが……やってみよう」


「くぅ……くるるる……」

早乙女「ふむ……」

達人「どうした、親父?」

早乙女「ミチルが拾ってきたあの子熊……やはり、普通の熊とは違うようだ」

達人「見た目からして変だからな。具体的には何が違うんだ?」

早乙女「遺伝子構造的には二ホンツキノワグマそのものだが、骨格がやや異なる」

早乙女「股関節が長時間の二足歩行に対応し、足の平もやや細く広い。前足は人間の手と大差ないほどに自由に動かせるようだ」

早乙女「気になるのが、声帯だ。大体の形はツキノワグマだが、人間と同じ個所も見られる」

達人「本当に熊なのか、あいつ……?」

早乙女「……どうだかな。あの熊の体から、膨大な量のゲッター線が確認された」

達人「どういう事だ? ゲッター線って、そんな代物だったか?」

早乙女「ワシにも分からんよ。ただ、ゲッター線は進化を促す放射線だ……」

達人「あの熊がゲッター線で進化した新種、もしくは突然変異って事か?」

早乙女「…………なんとも言えん」

ミチル「クマちゃーん、ご飯だよ」

「きゅーん……」

ミチル「自分で食べられる? はい」

「くるるる……」マウマウ

ミチル「おー、良かったあ。ちょっとは体力が付いてきたみたいね」

ミチル「お父さんとお兄ちゃんがね、クマちゃんにあまり近寄らない方が良いって言うの」

ミチル「クマちゃんはこんなに大人しいのに。ねークマちゃん」ナデナデ

「くるる…………ク……」

ミチル「ん? どしたのクマちゃん?」

「グ……ク、マー……」

ミチル「…………ま?」

ミチル「お父さん、お兄ちゃん!」ガンッ

早乙女「なんだ、どうしたミチル?」

達人「騒がしいな、ってお前なんでその熊持って来てるんだ!?」

ミチル「大変なの、クマちゃんが……喋った!」

早乙女「…………」

達人「気のせいだからその熊をよこせ。部屋に戻す」

ミチル「気のせいじゃないわ! 本当に喋ったの!」

達人「熊が喋るわけないだろうが! どこぞのマスコットキャラじゃあるまいし」

ミチル「本当だもん! ほらっ、クマちゃん!」

「クマー」

達人「…………お前腹話術上手いな」

ミチル「お兄ちゃん、現実逃避しないで」

早乙女「まさか…………」

早乙女「ワシが指し示す平仮名を読め」スッ

「あ。さ。け。み。ろ。を」

早乙女「ではこの漢字を読んでみろ」

「いち。はやし。あお。くも。かお。ほそい」

早乙女「正解だ。次にこの算数テストをやってみろ」

「……かけざんがあるクマ」

早乙女「…………」

「クマー…………」カキカキ

「…………できたクマ」

早乙女「よし。戻っていい」

「わかったクマ」

キュム キュム キュム

早乙女「一週間の学習で、小学一年生修了。二年生も問題ないか……」

達人「これが算数テストか。字は汚いが、ペンは持てているみたいだな」

達人「……ほー、一〇〇点満点の花丸じゃないか。おつむの出来も中々か」

早乙女「覚束ないが二足歩行もできつつある。発声も問題ない」

早乙女「見ろ。握力測定の結果だ。肉体こそ小さいが、普通のツキノワグマよりも高い数値を出している」

早乙女「指の構造の違いから強く握る事ができる分有利だとも考えられるが、それを差し引いても十分な値だろう」

達人「で、これが四足歩行での二〇〇m走のタイムか。一八秒六六……十分に速いな」

早乙女「これも体格や骨格の僅かな違いから出る差だろうが、実際に熊が出せる速度よりやや遅い程度だ」

達人「将来的に見て人間と同じ知能を持ち、身体能力は熊そのもの……本当になんなんだ、あの熊」

達人「これが、ゲッター線が齎す進化ってやつなのか?」

早乙女「……一つ言えるとするならば、あれは進化の一言で片付けられる代物ではない」

早乙女「進化よりも恐ろしい何か、かもしれん……」

達人「ハチュウ人類を相手に戦うってその前に、なんとも言えないババを引かされたな、俺たち」

ミチル「クマちゃん、テストどうだった?」

「たぶん、できたとおもうクマ」

ミチル「クマちゃん、頭良いからね。大丈夫だよ」

「ありがとうクマ。ミチル」

ミチル「うふふ。すっかり口癖になっちゃったね。「クマ」」

「なんでかわからないけど、いいやすいクマ」

ミチル「憶えてるかなぁ。クマちゃんが最初に言った言葉、「クマー」だったんだよ」

「おぼえてるクマ。ミチルがなんども「クマ」「クマ」っていうから、まねしてへんじしたんだクマ」

ミチル「そうだったんだ。やっぱり頭良いなあ、クマちゃん。一ヵ月もしたら私やお兄ちゃんなんて抜かれるかも」

「それはないとおもうクマ」

ミチル「あり得るんだよねえ、私もお兄ちゃんも馬鹿だから……」

「ミっ、ミチル。おちこまないでクマ」

「ミチルー、タツヒトー」

達人「おうクマ、どうした?」

「あれ、なにクマ?」

ミチル「あれは、『ゲッターロボ』よ」

「ゲッターロボ……」

達人「対ハチュウ人類用のスーパーロボット。親父が作ったんだ。と言っても、これはゲットマシン状態だけどな」

ミチル「これに、私とお兄ちゃんが乗って、ハチュウ人類と戦うのよ」

「ミチルとタツヒト、戦うクマ?」

達人「ああ。あと一人パイロットが見つかれば、そりゃもうハチュウ人類やメカザウルスなんざ挽き肉の泥団子に変えてやるのさ」

ミチル「ギタギタのメッタメタに叩き潰して、二度と蘇らないように纏めて活火山の溶岩の中に沈めてやるのよ」

「二人とも、こわいクマ……」

達人『こちらゲッターイーグル号、達人! ミチル、調子はどうだっ?』

ミチル『こちらゲッターイーグル号、ミチル。想定負荷再現装置での訓練と比べるとちょっときついけど、問題ないわ!』

達人『同じくだ。親父、そっちから見てどうなっている?』

早乙女「機体は安定している。ただ、お前たちの心拍数が上がっているな」

達人『なあに、ガムでも食ってりゃ落ち着くだろうよ!』

早乙女「舌を噛んでも知らんぞ。それに機内は飲食禁止だ」

「二人とも、すごいクマー!」

ミチル『クマちゃん見ててね。カッコ良く決めるからっ』

早乙女「二人とも、話はそれまでだ。コマンドAの連携だ」

達人『ミチル、遅れるなよ!』

ミチル『お兄ちゃんこそ!』

「クマー……かっこいいクマ……!」

『メカザウルスの襲撃での死者は、現在確認できている限りで二二三人、怪我人は三〇〇〇人に及ぶと言われています』

『この襲撃に対しイギリス政府は、他国との連携を強め――――』

「クマ……これがハチュウ人類のメカザウルス、クマ……?」

ミチル「そうよ。私たち人類の敵。私たち早乙女一家の、怨敵……」

達人「……親父、一つ確認するぞ」

早乙女「……なんだ」

達人「ゲッターロボが動かせれば、絶対に、ハチュウ人類は叩きのめせるんだよな?」

早乙女「……可能不可能の話ではない。「打ち倒す」のだ……!」

ミチル「お父さん、パイロット候補はまだ見つからないの!? これ以上もたもたしていたら、被害者が……」

ミチル「私たちと同じように悲しむ人たちが増える! それなのに、ただ待っているだけなんて……!」

ミチル「これじゃあ本当に、『ゲッターロボ』がただの玩具じゃない!」

達人「落ち着け、ミチル! 吠えたって……何もできやしないんだ、今の俺たちには……」

早乙女「……もう少し、待っていろ。必ず、探し出す」

「ミチル、タツヒト、早乙女博士……」

「…………」

ミチル「クマちゃん、どうしたの?」

「ミチル」

ミチル「ここはゲットマシンの格納庫よ。邪魔になっちゃうから、あっちに行きましょう」

「……ちょっと、考え事をしていたクマ」

ミチル「考え事?」

「クマは……どうして他の熊たちと違うのか、クマには何ができるのか」

「クマを助けてくれたミチルたちに、何か返せる恩は無いのか……考えていたクマ」

ミチル「……クマちゃん?」

「クマは、みんなが大好きクマ。ミチル、タツヒト、早乙女博士……だから」


「ミチル、クマは――――」

達人「用ってなんだ、親父」

早乙女「ゲッターロボは、三人でなければ動かせない」

達人「何?」

早乙女「達人、ミチル、そしてあと一人……相応しい人間を探した。そして、ようやく見つけた」

達人「本当か!?」

早乙女「ああ。知力、体力、頑強さ、どれをとっても文句のない、パイロットに相応しい逸材だ」

達人「誰なんだ、それは! 早く一緒に訓練を初めて、ゲッターを……!」

早乙女「……ワシは、宿命と言うものを感じてならん。まるで、こうなる事が決まっていたかのように」

達人「親父!」


早乙女「達人、ワシは――――」




「三人目のゲッターパイロットになるクマ」



早乙女「クマを、三人目のゲッターパイロットにする」


ミチル「な、何を言っているの、クマちゃん……駄目よそんなの、危険だわ!」

「分かっているクマ」

ミチル「そんな事をさせる為に、私はクマちゃんを助けたんじゃない! 認めないわ!」

「じゃあミチルは、お母さんの仇を討つために死にに行っても良いと思うクマ?」

ミチル「何よそれ……私は死なない、お兄ちゃんも死なせない。私たちは、絶対に復讐すると決めたんだから!」

「でも、危険クマ。ミチルが今、自分で言ったクマ」

ミチル「うぐっ……」

「危険な事は百も承知クマ。だけどそれなら、クマは黙ってミチルとタツヒトを送り出すなんてできないクマ」

「ミチルがクマを心配してくれるように、クマもミチルが心配クマ。死んでほしくなんかないクマ」

「他の誰でもないクマ自身が、二人の為に戦いたいクマ! 他の人になんて不安で任せたくないクマ!」

「だから、クマは、ミチルとタツヒトの二人と一緒に『ゲッターロボ』に乗るクマ!」

ミチル「……ふふ。ここで言い返す言葉が思い付かない時点で、私の負けね」

「ミチル……」

ミチル「いつの間に、そんなに賢くなっちゃったのね。ちょっと悔しい」

ミチル「そうよね。クマちゃんも、家族だもんね。早乙女研究所の、早乙女の、家族だもんね」

ミチル「ごめんね、仲間外れにしようとして」

「怒ってないクマ。全然気にしてないクマ」

ミチル「知ってる。クマちゃん、一緒に戦おう」

「本当クマ?」

ミチル「ええ。そうと決まったら、お父さんとお兄ちゃんを説得しに行こう?」

ミチル「私、頭悪いから言い負かされちゃうだろうけど、その時は反論お願いね」

「クマ!」

達人「しょ……正気か親父。いくら規格外の存在と言っても、熊だぞ!?」

早乙女「だからこそだ。身体能力でクマを上回る人間などそういない」

達人「確かにそうだが……」

早乙女「お前たちにはこの二ヶ月間を共に過ごした絆がある。それはゲッターロボを動かすのに最も必要なものだ」

早乙女「ゲッターは三人で動かすスーパーロボットだ。それには互いの信頼と連携が必須となる」

早乙女「新しいパイロットを見繕い、それを作るまで、一体どれだけの時間がかかる?」

達人「だけど……クマは、俺たちと違って背負うものが無い。人間の俺たちに付き合わせて良い道理はない」

早乙女「クマは賢いぞ。それで特別扱いされてクマが喜ぶとでも思うか?」

達人「……怒るだろうな。実際に、本人に聞いてみない事には分からんが」

早乙女「あらゆる要素を加味し、ワシはクマこそが、ベアー号に乗りゲッター3を操るに相応しいと判断した」

早乙女「まだ、異論があるか?」

達人「……まったく、親父には勝てないな。何よりゲッターの製作者の言葉だ、従うしかあるまい」

早乙女「一つだけ確認する。お前は、クマが三人目で、戦えると思うか?」

達人「下手な奴と組まされるよりはよっぽど戦えるな」

早乙女「決まりだ。ゲッターパイロット三人目は、クマとする」

達人「それは良いんだけどよ、ゲットマシンにクマは乗れるのか? あいつ小さいから、多分レバーに手足が届かないぜ?」

早乙女「ゲットマシン内部をクマ仕様に改造すればいい」

達人「となれば、後はクマの承諾を得るだけか」

バタバタ

ミチル「お父さん、お兄ちゃん、いる?」

「早乙女博士、話があるクマ!」

達人「おっ、噂をすれば丁度良い。俺たちも話があるんだ」

早乙女「すまないが、こちらから話をさせてもらう。実はな――――」

ギュオン

「クマーーー! 飛んでるクマ、飛んでるクマーっ!」

ギュオン ギュオン

達人『はしゃぐなよ、クマ。これから飽きるほど飛ぶんだからよ』

ミチル『良いじゃない。お兄ちゃんだって、最初は大はしゃぎだったくせに』

「これがゲットマシン……ミチル、タツヒト! クマ、ちゃんと飛んでるクマ!」

達人『ああ、実際すごいよ、お前は。負荷再現装置の訓練でも平気だったからな』

ミチル『正直、私も最近慣れたばかりなのに……でも、これでやっと、晴れて三人揃ったって言えるわね!』

早乙女『喜ぶのはまだ早い。合体が出来て初めてゲッターチームが完成するのだ』

「じゃあ、早く合体するクマ、早乙女博士っ!」

早乙女『浮かれるな。合体は危険が伴うのだ。負荷に耐えられても、お前は操縦技術が圧倒的に足りていない』

「ご、ごめんなさいクマ」

ミチル『大丈夫よ。クマちゃんは頭が良いんだから、すぐに合体だってできるようになるわ!』

達人『その通り。親父、見ていろよ。すぐに、俺たちの手でゲッターを合体させてやる!』

早乙女『フッ。楽しみにしておこう』

「ゲッター1は空戦、ゲッター2は地中戦、ゲッター3は水中戦、クマ……」

ミチル「クマちゃん。復習?」

「ミチル。基礎は大事クマ。特にクマは人間じゃないから、ちゃんと勉強しないと、ミチルたちに迷惑かけるクマ」

達人「迷惑なんて思った事は一度もないぜ。俺たちは、家族だ」

「タツヒト……嬉しいクマ」

「クマは変だから、お母さんに捨てられちゃったクマ……家族を知らないクマ」

「でも、熊の正しい家族観ではないけれど……それでもクマは、ミチルに見つけてもらって良かったクマ」

ミチル「えへへ、照れるな……クマちゃんが本当の家族と一緒に過ごせたならそれが良かったんだろうけど」

ミチル「だけど、クマちゃんと会えた事は、私も良かったと思うわ」

達人「クマ。男はこういう時、多くを語らないモンだ」

達人「明日、ゲッターチェンジの本番だ。俺たちはお前を、信じている。決めてやろうぜ」

「ミチル、タツヒト。……クマ! 頑張るクマ!」


早乙女「……和子。三人を、守ってやってくれ……」

ギュオン ギュオンギュオン

達人『イーグル号、達人! 好調だ』

ミチル『ジャガー号、ミチル。同じく問題なし!』

「ベアー号、クマ! 以下同文クマ!」

早乙女『三人とも、状態が安定しているな……これより、合体訓練を行う!』

早乙女『重ねて言うが、ゲッターチェンジは大きな危険を伴う! 成功を目指すな、失敗しない事だけに気を遣え』

達人『そんな弱腰、ハチュウ人類相手じゃ通じないぜ。了解!』

ミチル『大丈夫よ。私とお兄ちゃんは頭悪いから無茶するけれど、クマちゃんがいるもの』

「クマばかりに頼らないでほしいクマ、クマだっていっぱいいっぱいクマー……」

ミチル『わあー、ごめんごめんっ。お兄ちゃん、気を引き締めていきましょ!』

達人『気が緩んでるのはミチルだけだ。親父!』

早乙女『よし。ゲッター1にチェンジだ!』

達人『よっしゃあ! こい、ミチル、クマ!』

ギュオン

「ミチル、行くクマ!」

ミチル『オッケー!』

ギュオン

ガシィン!

ミチル『グッ!? こ、これが、合体の衝撃ッ……!』

「ミチル、大丈夫クマっ?」

ミチル『へ、へーきよ……思ってたよりキツいだけっ! お兄ちゃん、行くよ!』

達人『ああ! チェンジ、ゲッター 1 !』ポチッ

ギュオン

ミチル『ウ、ググ……!』

「み、ミチル……?」

ギュオン

ガシィン!

達人『ぐおおっ!?』

ミチル『きゃああっ!』

「ミチル、タツヒトっ!」

早乙女『どうした!?』


グググ……


達人『これは、確かに想像より……ぐあああっ!』

ミチル『い、息が……でき、な……!』

「ミチルー! タツヒトー! しっかりするクマー!」


グワオン!

早乙女『こ、これは……!』

「どうしたクマ、早乙女博士!?」

早乙女『ゲッター線の量が、異常に増えている。合体したゲッターの出力が上がっていく!』

ミチル『がっ……ああああアアアアアアッッ!』

達人『ミ、チル……! クマ……がはあっ!』

バシャッ

「た、タツヒト、血を吐いたクマ!?」

早乙女『い、いかん! オープン・ゲットするのだ! 急げ!』

達人『腕が、動かね……ぐああああ!』

ミチル『お兄、ちゃ……おと、さん…………!』

早乙女『くそっ、強制オープン・ゲットを……!』カチャカチャ

ピー!

早乙女『くっ、墜落の危険があるから解除できんだと……!? ミチル、タツヒト、クマ!』

「ミチル! タツヒト! 頑張るクマ、操縦するクマ!」

達人『ぐふっ……む、無理だ……』

「タツヒト、タツヒトぉ! ミチルーーー!」

ミチル『く、クマちゃん……』


達人『…………ミチ、ル。クマだけ、は……』

ミチル『ウン……!』


「ミチル、タツヒト……? 何を話してるクマ!?」

「いや、クマ。ミチル、何してるクマ。タツヒト! 早乙女博士、二人を助けてクマ!」

早乙女『よせ、止めろ達人! ミチル!』


達人『クマ……人類の未来……頼む……』

ミチル『ごめん、ね……クマちゃん……!』




達人『ぐおおおおおおおおッッッ!』カチッ

ミチル『うおおおおああああああッッッ!』カチッ



バシュウッ!


「オープン・ゲット……」


ガキッ

グシャアッ

ドガァァン!


早乙女『た、達人……ミチル……?』

「そ、そんな……うそクマ……こんなの……いやクマ……」


パラパラパラ……


早乙女『達人ーーーー! ミチルーーーー!』

「クマあああああああああああああああああ!」

早乙女「…………」

「…………」

早乙女「…………」

「…………」

早乙女「…………」

「…………」

プルルルル プルルルル ガチャ

早乙女「ワシだ…………構わん。それで進めろ。ああ」

「…………」

早乙女「それは任せる。ああ。では頼んだ」ガチャ

「…………」

早乙女「…………」

「…………」

早乙女「…………」

「…………」

早乙女「…………」

「…………」

早乙女「…………」

「…………ミチル」

早乙女「…………」

「うう、ぐす……タツヒトぉ……」

早乙女「…………」

「わああぁああん! うう、わあああ……!」

早乙女「…………クマよ」

「ぐすん、ぐすんっ……」

早乙女「まだ、ゲッターに乗れるか」

「さおとめ、はかせぇ……」

早乙女「我々に、足踏みしている余裕はない。ワシは次のパイロットを探す」

「そんな……だって……クマはぁ……」

早乙女「お前がもう乗らないと言うのであれば、それでいい。ベアー号含め、新たなパイロットを探す」

「クマ……クマ……」

早乙女「お前はここで考えていると良い」

「ま、待ってクマ!」

「乗る、クマ」

早乙女「……良いのか?」

「早乙女博士の言う通りクマ。クマたちが止まっている間に、ハチュウ人類はどんどん侵略してくるクマ……」

「クマがゲッターから離れたら、奴らはもっともっと暴れるクマ……それに」

「そんな事したら……ミチルとっ、タツヒトはぁ……無駄死にになっちゃうクマ!」

「だからっ……」

ギュッ

早乙女「もう、分かった……」

「えぐ、えぐっ」

早乙女「そうだ……死んでしまった我が子たちの為にも、我々は進み続けなければならないのだ……」

「ごめんなさいクマ、クマがちゃんとしていれば!」

早乙女「戦おう、共に……達人とミチルの想いを忘れずに」

「なんで、クマだけがっ……」

早乙女「済まない、クマ。何も知らない、何も分かっていなかった愚かなワシを赦してくれ……!」

「うわあああああん……!」

早乙女「赦してくれ、クマ……!」

「早乙女博士! ケンとテツオは!? どうなったクマ……!?」

早乙女「……即死だった」

「そ、そんな……」

早乙女「ゲットマシンの基礎的な性能に問題はない……だが、合体した瞬間にゲッター線量が爆発的に上昇する」

早乙女「それに伴い、ゲッターの負荷も比例して上がる……この関連性は何だ?」

早乙女「ゲッターの何が欠陥なのだ? 何が、どうなっているのだっ!」

ガンッ

「早乙女博士、落ち着いてクマ! 手から血が出てるクマ……!」

早乙女「……次の、パイロットだ。それまでにゲッターロボの出力を減らし、そうすれば負荷も減る……」

早乙女「設計構造から見直しだ……」フラ

カランカラン

「早乙女博士……」

「早乙女博士、どういう事クマ!? パイロット訓練を廃止するって……!」

早乙女「……無駄なのだよ。訓練など」

「それは……確かに、みんなゲッターの負荷に耐えられなかったクマ。でも、いつかきっと」

早乙女「いいや、ワシが間違っていたのだ。ゲッターを人間の器に収めようというのが、そもそもとして間違っていた」

早乙女「ゲッターロボの出力を下げた。だが合体する際に、それはリミッターを超えて臨界に達する」

早乙女「負荷を軽減するパイロットスーツも開発した。だが、それでも誰一人として合体に成功しない」

早乙女「何故だ?」

早乙女「簡単な理由だ。ゲッターを動かせるのは選ばれた存在のみ。そこに、人間の小細工など無意味だったのだ」

「選ばれた存在……? だ、だとしても、訓練もせずに乗せるなんて、人道的に間違ってるクマ!」

早乙女「だからどうした!」

「クマっ……」

早乙女「二年だ! 達人とミチルが死んで二年が経った! だのに、ワシは遅々として先に進めていない!」

早乙女「それもこれも、人間性と言う理性と固定観念が原因だ!」

早乙女「我々に必要なのはただの人間ではない! 死んでも良い屑で、死なない奴だけだ!」

早乙女「訓練など不要だ。所属機関など関係ない。素人だろうが誰だろうが、死んでも良い奴を片っ端から乗せる!」

「そんな事をして、ミチルとタツヒトが嬉しいと思うクマ!?」

早乙女「思わないだろう。だが、関係ない!」

早乙女「『ゲッターロボ』を動かすその日が訪れる前に諦めてしまえば、二人を殺した意味がない!」

「早乙女博士が殺したんじゃないクマ! あれは、事故だったクマ!」

早乙女「殺した罪の意識も背負わずに生きるくらいならば、ワシは悪魔に魂を売る!」

早乙女「誰でも良い、集めるのだ……人類最後の一人まで試し尽くす……」

「早乙女博士……恐いクマ……」

早乙女「……クマよ。お前だけは、そのままでいろ。ワシは悪魔に魂を売るが、お前だけは……」

―――――――――

――――――

―――

早乙女「……まあ、こんなものだろう。クマとゲッターの話は」

ジン「……ありがとうございました」

早乙女「構わん」

ナガレ「……なんだよ、長々付き合わせやがって、結局ジジイの身の上話とお涙頂戴かよ」

ナガレ「なるほどなあ、俺たちはジジイにとって換えの利くゲッターロボのパーツってわけだ。俄然やる気が出るね」

早乙女「珍しく物分かりが良いじゃないか」

ナガレ「チッ……あーあ、下らねえ。部屋に帰って寝るわ」

ジン「待ちなさい」

ナガレ「何だよ」

ジン「クマちゃんにとって、私たちはただの相乗り仲間じゃないわ」

ナガレ「アン?」

ジン「待ち侘びた掛け替えの無い友、家族って事よ」

ナガレ「…………だからどうしたってんだよ」

ジン「自分がクマちゃんに吐いた言葉、よく考えなさい」

ナガレ「気分じゃねえから説教垂れんな。家族だってんなら、俺にも優しくしてほしいもんだ!」

カシュッ

ジン「…………はあ。やっぱり無理です、博士。あいつ、どうしようもありません」

早乙女「どうだかな」

ジン「え?」

早乙女「ゲッターに選ばれたお前たちは、そう簡単に離れられん」

ジン「私はあいつと今すぐにでも離れたいですが。主にあいつを消す方向で」

早乙女「好きにしろ」

 ―― 早乙女研究所・飛行訓練場 ――


クマ「……なんだか、いろいろ思い出しちゃうクマ」

クマ「ここでクマが折れちゃったら、みんなに合わせる顔が無いクマ……」

クマ「みんな、ありがとうクマ。ミチル、タツヒト、クマは頑張るクマ」

クマ「だから、お願いクマ……クマたちを守ってほしいクマ」

 ―― 翌日 ――


ギュインギュイン! ギュインギュイン!

早乙女「出たな、ハチュウ人類……出現場所は!」

オペレーターA「静岡県駿河湾沿岸! 近くの市街地には侵攻せず、その場に留まっています」

オペレーターB「衛星から静止画像来ます!」

早乙女「メカザウルス一機……ゲッターロボを誘い出すつもりだな」

早乙女「ゲッターパイロットをゲットマシンに呼び出せ!」

クマ『早乙女博士! クマ、ベアー号に搭乗したクマ!』

早乙女「クマ、他の二人はいるか?」

クマ『ナガレが居ないクマ。クマも今来たばかりクマ!』

ジン『ジン、ジャガー号に搭乗!』

早乙女「ナガレはまだか……」

ジン『そのようです……くそっ、こんな時にまでイラつかせる』

クマ『…………あっ、来たクマ!』

バシュッ ドサッ

ナガレ「悪い、待たせたな!」

ジン『遅い! 何をしていたの!』

ナガレ「四六時中ハチュウ人類の襲撃になんて備えてられっか! テメエらだけゲットマシンで生活してろ!」

ジン『またそんな屁理屈を捏ねて……』

クマ『話が進まないクマ。早乙女博士、状況を教えてほしいクマ』

ナガレ「…………チッ」

早乙女『襲撃を受けた場所は静岡県沿岸だ。相手はメカザウルス一機』

ナガレ「余裕だな。さっさと行こうぜ!」

早乙女『三度に渡る交戦を、全て撃退してきた。ハチュウ人類にはまだゲッターロボの姿形は把握されていないはずだ』

早乙女『だが、今度はゲッターロボを引き摺り出す作戦に出たらしい。また斥候かもしれんが、気を付けろ!』


早乙女『それぞれのゲットマシンに座標を送った。各員、モニターパネルを確認しろ』

ナガレ「光っている場所、ここに向かえば良いんだな?」

早乙女『そうだ。発進後、すぐにゲッター1に合体し、最高速で向かえ!』

クマ『了解クマ!』

ジン『了解です』

ナガレ「分かった分かった!」

早乙女『ゲッターチーム、出動!』

ナガレ「イーグル号、発進ッ!」

ジン『ジャガー号、発進!』

クマ『ベアー号、発進クマ!』

ギュオオ…バォン!

バシュゥン!



ナガレ「チェーンジ、ゲッター 1 !」


ガシィン ガシィン

グググ……グワオン!

ナガレ「ゲッターウイィング! 飛ばすぜ!」

バオンッ!

バオンッ

ナガレ「…………」

ジン『…………』

クマ『…………』

ナガレ「…………」

ジン『…………』

クマ『…………』

ナガレ「…………チッ」

ジン『何よ。何か文句あるなら言えば?』

クマ『戦闘前に喧嘩は駄目クマ』

ナガレ「だとよ。黙ってなアバズレ」

ジン『よく吠える……』

ナガレ「今すぐ決着付けるかァ!? 俺は良いんだぜ、どこの知らねえゴミが死んだってよ!」

クマ『ナガレ、ジン!』

ナガレ「でけえ声出すな熊公!」

ジン『……ごめんなさい、クマちゃん』

クマ『…………』

ナガレ「何だよ、何だその目は。一々人を小馬鹿にしやがって、言いたい事があるなら言え!」

クマ『もうすぐ目的地に着くクマ。その怒り、一時的でいいからメカザウルスに叩き付けるクマ』

ナガレ「誤魔化すんじゃねえ! この俺を、虚仮にしやがってぇ!」

クマ『ナガレ、何を怒っているクマ? 何が嫌クマ?』

ナガレ「テメエに分かるかよ……猿真似で人間できてると思ってる熊風情に!」

ジン『黙って聞いていれば、もう我慢できない! このクズが、本当にぶっ殺す!』

ナガレ「上等だ! オープン・ゲットだ、すぐに降りて――――」

クマ『二人とも!』

ナガレ「ア゙ア゙!?」

クマ『その暇はないクマ……メカザウルス視認!』

メカザウルス「グオオオオオオオッッ!」


ナガレ「チッ……こんな時に! テメエら、このクソトカゲを始末した後、憶えておけよ!」

ジン『ヘボパイロットが倒せずに泣き付いてこないといいけど!』

ナガレ「ほざけ!」グイッ

バオンッ

ナガレ「何だこいつ……首が何本もありやがる!」

クマ『いや、違うクマ……首長竜の胴体から、首と同じ太さの触手が何本も生えてるクマ!』

ジン『細いのも数えきれないほどあるわ。その上、胴体だけでも六〇mは近い。馬力も相当ありそうね』

ナガレ「関係ねえよ。ゲッタービームで吹っ飛ばしゃあ済む話だ! その後はお前らで第二ラウンドだぜ」

ジン『いいからさっさとやりなさいよ』

クマ『油断は禁物クマ!』

ナガレ「片腹痛い!」

ナガレ「気色悪いウニ野郎め。喰らいな……ゲッター――――」

メカザウルス「グオオオオオオオッッ!」

チャキッ

ジン『触手の先端をこっちに向けた……?』

クマ『あれは、触手の先が砲門クマ! ナガレ、回避クマッ!』

ナガレ「ばっ……できるかあ!」

メカザウルス「グオオオオオッ!」

チカッ チュチュンッ

ズガガガガッ!

ナガレ「どわあああああ!? ビームだと、嘗めた真似しやがって!」

ジン『良いから回避しなさい、馬鹿が!』

ナガレ「るせー! こンの……!」グイッ

バオンッ

メカザウルス「グオオオオオッ!」

チカッ チュチュンッ

ナガレ「うおおおおおおっ!」グイッ

ヒョイ ヒョイ

ジン『上手く躱しているけど、この調子じゃ攻撃できないわ!』

クマ『あの砲門をどうにかしないと話にならないクマ!』

ナガレ「もう少しで見切れるから黙って見てろ!」

メカザウルス「グオオオッ!」

ウィーン……バカンッ

クマ『メカザウルスの背中が開いたクマ!』

ジン『パターンからして、嫌な予感がするけど……!』

クマ『大正解クマ……ミサイルの発射口クマ! ナガレ、気を付けるクマ!』

ナガレ「黙って見てろよおおおおおっっ!」グイグイ

メカザウルス「グオオオオオッ!」

バシュバシュバシュッ

クマ『撃ったクマ!』

キィーン……

ジン『ナガレ!』

ナガレ「うおおお、ゲッタートマホークッ!」

ジャキンジャキンッ ガシッ

ナガレ「トマホーク、ブゥーメランッ!」グイッ

ブンッ

クルクルクル……ズバッ

ドワッ! バウッ! ズガァンッ!

ナガレ「どうだあ!」

……キィーン

クマ『まだクマ! 余ったのが来るクマ!』

チュチュチュンッ ピチュンッ!

ジン『ビームも止まらないし、どうするの!』

ナガレ「避けながら叩き落す! フンッ!」グイッ

バオンッ

ナガレ「ドリャアッ!」

ズバッ ズババッ

ナガレ「うおりゃあああああ!」グイ

バオンッ

ズガガガアアンッ!

ナガレ「よっしゃあ、上手くいったぜ!」

ジン『ぬか喜びするな、戦闘は終わってないのよ!』

ナガレ「チッ……観客は黙ってな!」

メカザウルス「グオオオオオッ!」

チュチュチュチュンッ

クマ『遠距離戦じゃいい的クマ! 接近戦にシフトするクマ!』

ナガレ「命令するんじゃねえ! 言われなくてもやってやる!」

メカザウルス「グオオオオオオオオオッッ!」

ナガレ「このタコ野郎、足ィ全部斬り落としてタコ焼きにしてやらぁ!」グイッ

バオンッ

ジン『待ってナガレ! 水の上なら、ゲッター3にチェンジした方が……!』

ナガレ「聞こえねえなあ! ゲッタートマホーク!」

ジャキンッ ガシッ

ナガレ「オオオ!」

ばっしゃあぁぁぁん!

ナガレ「掛かってこいやァ!」

メカザウルス「グオオオオオオオッッ!」

ブワッ!

ジン『チッ……ナガレ、触手が来る!』

ナガレ「見りゃ分かる! ドリャアッ!」グイッ

ズバッ ズバッ

ナガレ「次ぃ!」グイッ

ズバッ

メカザウルス「グオオオオオオオオオオッッッ!?」

ナガレ「ハハッ! 図体だけでかくても、懐に飛び込んじまえば大した事ねえな!」

ジン『図に乗るんじゃない!』

クマ『まだまだ来るクマ!』

メカザウルス「グオオオオオッッ!」

ブワッ!

ナガレ「バカの一つ覚えだな、欠伸が出るゼッ!」

ズバババッ

ナガレ「チョロいっ!」

メカザウルス「グオオオッ!」

グワァッ!

クマ『ナガレ、後ろから大物が来るクマ!』

ナガレ「口出すな、熊公!」グイッ

ズバッ!

ナガレ「お前らの手助けなんざ要らねえ!」

ズバッ

メカザウルス「グオオオオオッ!」

ナガレ「オラオラオラアッ!」

ズバッ ズバッ ズバッ

クマ『触手の量が多い…………ナガレ、上クマ!』

ナガレ「見てられるかアッ!」

クマ『ジン! メカザウルスの胴体の影、砲門が三つ、こっちを狙ってるクマ!』

キラッ

ジン『……見えた。つまりこの触手は陽動で、私たちを釘付けにするための罠!』

ナガレ「聞こえねえよ!」

ズバッ ズバッ

クマ『今すぐここを離れるクマ!』

ナガレ「お前の指図なんか受けるかよ! 黙ってろ熊公!」

ジン『この期に及んで何をアホ抜かすか! さっさと逃げなさい!』

ナガレ「うるせえぞ外野ぁ! トマホークブーメランッ!」

ブンッ

クルクルクル……ズバババッ

ドワオッ!

メカザウルス「グオオオオオオオオッッッ!」

クルクルクル……ガシッ

ナガレ「叩き落せば良いんだろうが! オラアッ!」

ズバッ

ジン『……お見事』

ナガレ「しかし、次から次へとキリがねえ!」

クマ『触手を削り落としても本体へのダメージは殆どないクマ……』

ジン『でもこの量、いくらなんでも捌くだけで手一杯よ!』

クマ『近付けば触手、離れれば砲撃……まるで要塞クマ』

ジン『とにかく、この状況じゃ埒が明かないクマ! ナガレ、一旦ゲッター2にチェンジして離脱を……』

ナガレ「逃げ腰のクソ共は黙ってろ! 全部ぶっ飛ばしてやる!」

クマ『何をするつもりクマ!?』

ナガレ「消し飛べえっ! ゲッタァーー……!」

シュルシュル ガシッ

ジン『細い触手がゲッターの足に絡み付いてきたわ!』

ナガレ「何ィ!?」

グンッ

ナガレ「どわっ! 引っ張られてバランスが……!」

バシャッ

ズズゥゥン……

ナガレ「く……っそがあッ!」ガシャガシャ

クマ『あんな囲まれてる状態でのんびり大技撃とうとしたらこうもなるクマ!』

ナガレ「分かった口きいてんじゃねえ! このクソタコ足が、ぶった切ってやる!」グイッ

シュルシュル ガシッ

ナガレ「う、腕が! この、ゲッターレザー!」

ジャキンッ ズバッ

シュルシュル

クマ『駄目クマ、また新しい触手が別の所に巻き付いてきたクマ!』

ジン『ナガレ、お前じゃ話にならないわ! とにかく、オープン・ゲットよ!』

ナガレ「うるっせえーー! 乗ってるだけの置物が、ピーチクパーチク喚くな!」

ジン『マジお前ホントお前こんな時まで意地張ってんじゃないわよ!』


メカザウルス「グオオオオオオオッッ!」


グワァッ!

ドガッ

ナガレ「だはあっ!?」

ゴシャッ ズガッ

クマ『クマーーー!』

ジン『きゃああっ! な……ナガレ、早く!』

ナガレ「だ、黙れェーーーー! お前らなんかに、お前らなんかに頼って……!」ガッシャガッシャ

メカザウルス「グオオオオオオオッッッ!」

バシャバシャ

ズズズ……!

ナガレ「な、なんだ……?」

バシャバシャ

ズズズ……!

クマ『まさか……このまま海の中に引き摺り込もうとしてるクマ!?』

ジン『まずいわ。ナガレ、早くオープン・ゲットを!』

ナガレ「クソが、離しやがれ! ゲッタービームッ!」カチッ

キィイン……キュオン

バオオォォォォオオオンン!

ジン『ゲッタービームじゃなくてオープン・ゲットしろってのよ! しかも外したし!』

ナガレ「クソったれがあ! お前らなんぞの言いなりになって堪るかッ!」ガッショガッショ

ジン『この屑が! クマちゃん、早乙女博士に繋いで強制オープン・ゲットを要請して!』

クマ『合体解除したところで、ナガレがゲッターチェンジに協力してくれなきゃ意味ないクマ……』

ジン『ナぁガぁレぇーーーーーーーー!』

ナガレ「うるせええええぇぇぇえええっ!」

メカザウルス「グオオオオオッ…………」

バシャバシャバシャ……

ザパーン!

ブクブク……

ブク……

ナガレ「くそっ、完全に海中だ!」ガンッ

クマ『まずいクマ……』

ナガレ「アアン!?」

クマ『この海域は近くが駿河湾クマ。その水深は一番深くて二〇〇〇mを超える深海クマ』

ナガレ「にせっ……」

クマ『そこまで連れていかれたら、ゲッター1のままだとゲッターはともかく中のクマたちは間違いなくぺちゃんこクマ』

クマ『それだけじゃないクマ。ゲッター1とゲッター2は水中だと性能が落ちるクマ』

ナガレ「何を冷静に御託並べてやがる! クソ、離しやがれこのトカゲ野郎!」グイ

ギギギ……

ナガレ「微動だにしねえ! ゲッタービーム!」カチッ

キィイン……キュオン

バオォォオオン……ブクブク

ナガレ「なんだこりゃ! 全然威力が出ねえ!」

クマ『ゲッタービームは単純に熱エネルギークマ。水中だと威力が半減するクマ……』

シュルシュル……ガシィ!

ナガレ「だ、駄目だ、完全に覆われちまった……!」

ジン『まだよ、まだ間に合うわ! オープン・ゲットすれば振り解ける!』

ナガレ「お前らに頼るか!」グイグイッ

ジン『はあっ!?』

ナガレ「俺一人で、戦ってやる!」

ジン『もう……好きにしろ、馬鹿野郎!』

ナガレ「そうすらあ! このっ、このっ!」ガッシャンガッシャン

クマ『水深二〇〇m……』

ナガレ「うおおあああああっっ!」ガシャンッ

クマ『二一〇mクマ……』

ガンッ!

ナガレ「何だってんだよ! 俺の何が、何が悪いんだよ!」

ジン『全部よ。お前の我が儘が、自らの不幸を招いただけ』

ナガレ「俺をこんな事に巻き込んだ世界こそが一番の我が儘じゃねえか!」

ナガレ「それでなんで、俺だけが、悪者扱いされなくちゃならねえんだよ!」グイグイ

ジン『だから屑なのよ。死んでも問題ない、死なないだけ厄介な、人間の屑』

ジン『まさか、ここまでとは思わなかった。お前なんかと心中する羽目になるなら、ゲッターになんて乗らなきゃ良かった……!』

ナガレ「お高く止まってんじゃねえ! どうせ同じ穴の狢じゃねえか、お前に俺を責める権利があるのかよ!」

ジン『誰の所為で死ぬと思ってるのよ!』

クマ『二人とも、喧嘩はやめるクマ』

ナガレ「おうおう流石獣様は覚悟が異なりますなあ! 自然界は厳しーからいつでも死ぬ準備ができていますってか!?」

ジン『八つ当たりの前に少しは協力してよ! あんたがそんなだからこんな事になったって言ってんでしょうが!』

ナガレ「喚くなクソ女!」

ジン『お前が一番喚き散らしてるだろうがあああああ!』ガンッ

クマ『ジン!』

ジン『…………分かったわ、ごめんなさい』

ナガレ「おいおい、威勢良い事言って結局熊公の言いなりかよ。面白すぎるなア、オイ!」

ジン『フン…………』

ナガレ「それでいいんだよ! お前らは黙ってろ! 俺一人でどうだってできる!」

ナガレ「今までだってそうやって来た! 気に入らねえ奴はぶっ潰す! 全部一人でやった!」

ナガレ「欲しいモンは奪った! 逆らう奴は叩きのめした! 俺一人でだ!」

ナガレ「ヤクザなんて何人も返り討ちにした! ポリ公は俺を怖がって手出ししてこねえ!」

ナガレ「ハチュウ人類が何だってんだ! これからも変わらねえ! お前らなんか要らねえんだ!」

ガッシャンガッシャン

ナガレ「何が仲間だ……!」

ギギギ……ギギィ

ナガレ「なにがチームだ、笑わせるな……!」

ブクブクブク……

ナガレ「クソがッ!」

ガンッ!

クマ『ナガレ……』

ナガレ「こんッな時に何だクソ熊アァッ!」

クマ『クマは、ナガレがゲッターに乗るって言ってくれた時、すごく嬉しかったクマ』

ナガレ「あン……?」

クマ『ナガレは、ゲッターを信用したクマ。早乙女博士を信じてくれたんだクマ。それが嬉しかったクマ』

クマ『初めて一緒に、ゲッターを動かせるんだと思って……嬉しかったんだクマ!』

ナガレ「そんな与太言聞いてられるか、後にしろっ!」

クマ『ナガレ……クマはそれこそ、ここでナガレやジンと一緒に死んでも構わないくらい幸せクマ』

ナガレ「俺は死にたかねえし、お前の幸せで俺を不幸にするんじゃねーーーーっ!」

クマ『なのに、クマの事は信じてくれないクマ?』

ナガレ「ッ…………」

クマ『ナガレにとって、人間じゃないクマは、そんなに信用できないクマ?』







ナガレ「黙れェーーーーーーーー!」





ナガレ「……どの口が……どの口が、お前に詫び入れらるんだよ」

ナガレ「家族が死ぬ悲しみなんて、俺自身がよぉっく知ってるってのに……」

ナガレ「お前にでかい口叩いて、その後お前の生い立ち知って、悪い事したなあって……!」

ナガレ「そんな都合の良い事、俺が、どうやって、言えばいいんだよ!」

ナガレ「誰にも謝った事がねえ、諂った事もねえ、我を貫くしかできねえ、クソみたいな人生送ってきた俺が!」

ナガレ「どうやって、お前とヘラヘラ笑えってんだ!」

ナガレ「どうやって、お前たちに仲間って認めてもらえるんだよ!」

ナガレ「言ってみろよ熊公! その賢い頭で、ジジイの息子娘に貰った知識で、俺に!」

ナガレ「言えよ、クソ熊……!」

クマ『……早乙女博士から、ミチルとタツヒトの事を聞いたクマ?』

ナガレ「ああ……!」

ジン『ごめんなさい、クマちゃん』

クマ『良いクマ。どうせいつかは話そうと思っていたクマ。早晩クマ』

クマ『…………ナガレ、ジン』

ナガレ「なんだよ」

ジン『うん』

クマ『大丈夫クマ。クマたち、お互いが好きクマ。大好きクマ』

ジン『……うん』

クマ『……………………ナガレ聞いてるクマ?』

ナガレ「聞いてるよ!」

クマ『良かったクマ』

クマ『だから、いがみ合う必要ないクマ。信じて良いクマ。そう確信したクマ』

クマ『一蓮托生とか、家族とか、友とか、重いものは背負わなくていいクマ』

クマ『喧嘩しても良いクマ。仲良くなくたっていいクマ』

クマ『クマたちはクマたちのやり方で、戦っていけばいいクマ』

クマ『クマたちはゲッターチーム、三人で一つのゲッターチームクマ』

クマ『…………違うクマ。言葉が多いクマ。二人だったら、もっと分かりやすく言うクマ』

クマ『ナガレ……やっぱり無理クマ。クマはうまく言葉を纏められなかったクマ』

ジン『大丈夫、私には伝わった。ナガレはどう?』

ナガレ「…………さっぱり、分からねえ」

クマ『じゃあもうちょっと頑張るクマ』

ナガレ「もう良い、聞き飽きた」


ナガレ「このクソウニ野郎のメカザウルス、お前に任せるわ、クマ」

クマ『任せるクマ!』

クマ『ナガレ、ジン! ゲッターロボは今、メカザウルスの触手に完全に覆われているクマ』

クマ『まずはそれを解くクマ。ゲッタービームを撃ち、即座にオープン・ゲットクマ』

ジン『了解よ、クマちゃん!』

ナガレ「ゲッタービームは水中じゃ威力が落ちるんじゃねえのか?」

クマ『少しでも良いから触手を剥がせればいいクマ。問題は、その後クマ』

ナガレ「その後?」

クマ『迅速なゲッターチェンジをしなければ、また触手に捕まって今度こそ一巻の終わりクマ!』

クマ『更に言えば、水深七〇〇mクマ! 水圧の変化でゲットマシンの挙動がいつもと違っているクマ』

ジン『普段通りに合体しようとすれば、事故は確実……早さだけじゃない、繊細さも必要なわけね』

ナガレ「マジかよ、自信ねえぞ、俺」

ジン『普段から訓練を真面目にしないからよ』

ナガレ「うぐっ……」

ジン『元を辿れば、ナガレがごねたのが原因だし、自業自得ね』

ナガレ「うぐぐっ……今それを言うなぁ!」

クマ『大丈夫クマ! クマは……二人を信じているクマ!』

ジン『フッ……私もよ』

ナガレ「…………やるぜ、熊公、ジン!」

クマ『クマ!』

ジン『ええ!』


ナガレ「ゲッターチャージ、完了!」


ナガレ「ゲッタアアアァァアアッ! ビイイィーーーーーンンムッッ!」カチッ

キィイイン……キュオン

バウッ――――


バオオォォォォオオオンン!

メカザウルス「グオオオオオオオオオオオオオッッッ!?」

ナガレ「ザマぁ見やがれ! オープン・ゲットォ!」カチッ

ガチャン! バシュゥン!

ぶわあっ!

ギュオンギュオン ギュオン

ジン『脱出成功よ!』

クマ『今クマ! ナガレ、ジン!』

ナガレ「行くぜ、ジンッ!」グイッ

ジン『口より、手を動かしなさいっ!』グイッ

ギュオン……

ガシィン!

ナガレ「来い、クマ!」

ジン『クマちゃん!』


クマ「チェンジ、ゲッター……!」


クマちゃん!

クマ、人類の未来、頼んだぜ。


クマ(ミチル、タツヒト……)



クマ「――――ゲッター 3 クマ!」カチッ



ガシィン!


グググ……


ガキョンッ!

ジン『ゲッターチェンジ、成功』

ナガレ『これが、ゲッター3……なんか、魚に人間の上半身が生えたみたいな形状だな』

クマ「待ちに待った出番が、やってきたクマ……」

ナガレ『アン? 今、何か言ったか?』

クマ「……なんでもないクマ!」


メカザウルス「グオオオオオオオオオオッッッ!」

バシュバシュバシュッ


ジン『メカザウルス旋回、同時にミサイルを発射したわ!』

ナガレ『熊公!』

クマ「ナガレ、ジン、ちょっと痛いクマ!」

ジン『えっ!?』

ナガレ『お前、まさか、あれだけ俺に言っておきながらマジか!?』


ドワオッ……!

ナガレ『ずわああああっ! 直撃ィ!?』

クマ「大丈夫クマ! ゲッター3の装甲はそう簡単に傷付かないクマ!」

ナガレ『俺らにはダメージが通ってるじゃねえか!』

ジン『我慢よ!』

ナガレ『チッ……付き合ってやるよ、地獄の底まで!』


メカザウルス「グオオオオオオオッッ!」

クマ「ぶちかましクマァーーーー!」グイッ


ズガアアアアンッ!


メカザウルス「グオオオオオオオオオオオオオッッッ!」

シュルシュルッ ガシィッ

ナガレ『この野郎、触手を伸ばして……右腕が封じられたぞ!』

ジン『今の体当たりで怯みもしないなんて、こいつ、見た目通りタフネスだわ!』

クマ「想定内クマ!」

メカザウルス「グオオオオオッッッ!」

グワァッ!

ナガレ『熊公、大物だ!』

クマ「分かってるクマ!」グイ

ガシッ!

クマ「掴まえたクマ!」

ジン『でも、あっちの「手」はまだまだ沢山あるわ……!』

メカザウルス「グオオオッ!」

ブワッ!

ズガッ ドガッ ガガガッ

ジン『クッ、触手を使った乱打……掴まれてるから逃げられない!』

ナガレ『なに遊んでやがる、熊公!』

クマ「大丈夫クマ!」

ナガレ『当たり前だ!』

メカザウルス「グオオオオオッ!」

ガコォンッ ガァンッ……!

クマ「頑丈なのは認めるクマ……でも、ゲッター3は「水中要塞」クマ。そっちよりも固いし、パワーもあるクマ!」グイ

ググッ……ガンッ!

メカザウルス「グオオオオオオッ!?」

ジン『掴まれている方の腕で殴った!? なんてパワーなの!』

メカザウルス「グオオオオオオオオオッッ!」スイー

ナガレ『こいつ、逃げるぞ!』

クマ「無駄クマ!」グイッ

ギシィッ

メカザウルス「グオオオオッ!?」

クマ「お前がゲッターを逃がさないために腕を縛ったように、クマもお前を逃がさない為に掴まえたクマ!」

クマ「ミサイルはそっちだけの専売特許じゃないクマ!」

クマ「喰らえクマ、ゲッターミサイルッ!」カチッ

ガションッ……バシュンバシュンッ!

ズガッ バオォオオンッ!

メカザウルス「グオオオオオオオオオッッッ!」

バシュバシュバシュッ

ナガレ『熊公、またミサイルだ!』

クマ「自爆覚悟クマ……ならお望み通りにしてやるクマ!」

グイッ

メカザウルス「グオオオオオッッ!」

ドワオッ……!

メカザウルス「グオオオオオ…………!」

ググッ

ブチィッ

ジン『あっ! 触手が千切れた!』

ナガレ『おい、逃げるぞ!』

メカザウルス「グオオオオオオッ……」スイー

ジン『こいつ……逃げるためにミサイルに触手を巻き込んで、強引にぶっ千切ったわ!』

ナガレ『生意気な真似しやがって! 熊公!』

クマ「逃がさないクマ!」グイ

ギュオオッ

クマ「ゲッター3は水中戦を任されているんだクマ、その機動力を侮るなクマ!」

メカザウルス「グオオオッ!」

ブワッ!

クマ「遅いクマ!」グイ

ギュオオッ ヒョイ

メカザウルス「グオオオオオオッ!」

バシュバシュバシュッ

ジン『ミサイルよ……!』

クマ「突っ込むクマーーー!」

ズガガガガガァン…………!

ゴポゴポゴポ……

メカザウルス「グオオオオオオッ……!」スイー


ギュオオオッ!

クマ「そんな攻撃、通じないクマー!」

ナガレ『だからって突っ切る奴があるかーっ!』


メカザウルス「グオオオオオッ!?」

クマ「喰らえクマ! ハンマーパンチ・ラッシュ!」グイッ

ガンッ!

メカザウルス「グオッ……!」

クマ「クマクマクマクマクマクマクマクマーーーーッッ!」

ガンガンガンガガガガガガガッ!

ガガガガガガガガガガッ――ズガァンッ!

メカザウルス「グオッ……グオオオッ……」ピクピクッ

クマ「とどめクマ! ゲッタートライデント!」カチッ

シュコッ ジャコンッ! ガシッ

ナガレ『槍……三叉槍ってやつか!』

クマ「スパークチャージ!」

キィイン……パチパチッ

ジン『槍の穂先が帯電している……確かゲッタートライデントはゲッター線をエネルギー変換して穂先に集中させる事が出来る』

ナガレ『溜めたエネルギーは、ゲッタービームとは異なる方法で放出する事もできる、だったか!?』

バチバチッ……!

クマ「大正解クマ! ナガレ、意外と憶えているクマ」

ナガレ『伊達に何度も聞かされてねえよ!」

クマ「それもそうクマ。……臨界、到達クマ!」

メカザウルス「グオオッ……グオオオオオオオオオオオッッッ!」

ナガレ『こ、こいつ! あれだけ叩きのめしてまだ動きやがる!』

ジン『なんてしぶとい奴……!』

メカザウルス「グオオオオオオオオオオオオオッッッ!」

バシュバシュバシュッ! ブオワァッ! プスプスッ……

ナガレ『使えねえレーザー光線まで動員しての最後の悪足掻きか……熊公!』

クマ「大丈夫クマ!」

ナガレ『これで大丈夫じゃなかったら帰った後にどつき回す!』

ジン『やっちゃって、クマちゃん!』


クマ「ゲッター……スパークネット!」


バリバリッ……パンッ

バッシャアアァァァァアアアンッ!


メカザウルス「グオオオオオオオオオオッッッ!?」


ドガァン! バゴォ! ズババババババアッ!


ナガレ『穂先から放たれたエネルギーが四方八方に拡散して、網のように広がってやがる……』

クマ「海中での有効範囲の直径は実質無限、この技から逃れる術はないクマ!」

バリバリバリッ……!

メカザウルス「グオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!」ビキッ

バキバキ……!

どかああぁぁぁぁああン!

ゴポゴポ……

クマ「メカザウルスの撃破、確認クマ」

ジン『倒し、た……?』

ナガレ『つっ、疲れた……』ドサッ

ジン『まったく、ナガレが駄々を捏ねなきゃこんな苦労する事も無かったのに』

ナガレ『うるせぇ。もうそれは言うな……』

ジン『やだ。未来永劫事ある毎に言ってやる』

ナガレ『ふざけんな!』

クマ「二人とも、そこまでクマ」

ナガレ『チッ……へいへい、わーったよ』

クマ「他、敵性の存在は認められずクマ。状況終了――――」

クマ「ゲッターチーム、これより帰還するクマ!」

バオンッ

ナガレ「…………」

ジン『…………』

クマ『…………』

ナガレ「…………」

ジン『…………』

クマ『…………』

ナガレ「…………」

ジン『…………』

クマ『そう言えばナガレ』

ナガレ「なんだよ」

クマ『戦闘前に言ってた喧嘩の決着、付けるクマ?』

ナガレ「ブッ!?」

ジン『アハハハハハハハハッ!』

ナガレ「お前あの会話の後でそれを言うか!? やらねーよ! 疲れた、帰ったらすぐ寝る!」

クマ『そりゃあ良かったクマ』

ナガレ「熊公お前、次に同じ事言ったらマジでぶっ飛ばすからな!」

ジン『アハハハハハハハ! ひー、面白すぎるっ……』

ナガレ「テメーはテメーで何笑ってんだ!」

クマ『あとさっき、クマの事、名前で呼んだクマ?』

ナガレ「呼んでねーよ!」

クマ『それは嘘クマ! 絶対呼んでたクマ、クマには分かるクマ!』

ナガレ「俺はいつも通り「熊」って言っただけだぜ!」

クマ『ナガレは意地っ張りで本当に困るクマ』

ナガレ「うるせーー!」

ジン『アハハハハハハハッ!』

ナガレ「何時まで笑ってんだよ!」

 ―― 早乙女研究所・飛行訓練場 ――


クマ「みんな、心配かけたクマ。クマたち、ちゃんと仲直りできたクマ」

クマ「研究所のみんなの前でクマに当たり散らしたから、ナガレの印象は最悪で大変だったクマ」

クマ「しかもナガレはナガレで絶対謝らないから……クマとジンでみんなを説得したクマ」

クマ「でも、あれから講習と飛行訓練は前と比べて真面目にやってたクマ」

クマ「……前と比べて、だけどクマ」

クマ「ジンも、ちょっとだけナガレの事を許すって言ってたクマ」

クマ「…………みんな、不安かもしれないけれど、クマたちを応援してほしいクマ」

クマ「地球と人類の未来は、絶対に、守るクマ」

クマ「ミチル、タツヒト……クマたち、頑張るクマ!」


ナガレ「あっ! こんなところに居やがった。おいクマ! ジジイが呼んでるぜ!」

クマ「分かったクマ!」


キュムキュムキュム……

第三話【クマ】終。

次回、第四話【変幻】。投下日未定。でも次回は早く投下できるはず。俺の気分次第だけど……

ゲッター3の形状はダークネスに近い。ジャガー号が地上だとキャタピラ出すくらい。
両腕は伸びる。胸にツキノワグマと同じように月の模様がある。この設定に意味は無い。
このシーン分かり辛いから補足欲しいって人は言ってください。説明します。

乙ー
偽書ゲッターは中学生の時に買って学校で開いたら大変なことになった思い出が


このナガレは書籍や映像の流よりも一等荒れてるなぁ
でも、比較的珍しい知的な3号パイロットや真っ当な価値観を持ってる2号パイロット等、良いチームだと思う

>>269
なぜ学校で開く前に家で読まなかったのか。
そういえば最近、ゲッターをそんなに知らない友人に偽書を押し付けたんだけど大丈夫でしょうか?
俺は多分だめだと思う。

>>270
イーグル号 → クズ
ジャガー号 → 潜在的キチガイ型クズ
ベアー号 → クマ
どうよこの完璧な布陣。


投下前に修正
>>168
ナガレの空白のセリフは消し忘れです。なかった事にしてください。
本当はもっと貶す言葉を入れるつもりだったけど思いつかなry

>>179
>達人「俺だって同じだ。親父がお袋の仇を討たせてくれ!」  ×

○ 達人「俺だって同じだ。親父がしたいように、俺にもお袋の仇を討たせてくれ!」

なんで抜けたのかはわかんね。あともう一つあったような気がしたけど忘れた。

 ―― マシーンランド ――


???「ガレリイ長官! ガレリイ長官は居られるか!」

ガレリイ「何事ですかな、バット将軍」

バット「地上奪還について、お話ししたい事がある。会議に同席して頂きたい」

ガレリイ「ククク、この老骨に手伝える事など無いとは存じますがの」

バット「何を仰られるか。メカザウルスの設計、開発の全てを指揮する貴方だからこそ、頼んでいるのだ」

ガレリイ「バット将軍にそこまで煽てられては、行かぬわけにも参りますまい」

バット「感謝する」

ガレリイ「してバット将軍。あれだけ声を荒げるからには、尋常では無いと存じますが」

バット「如何にも! 我々の侵略を危ぶむ事態となっている……!」

バット「ガレリイ長官は、先日出撃させたメカザウルス・ガラを憶えておられるか?」

ガレリイ「勿論ですとも。確か日本に向かわせて、撃破されたはずですな」

バット「あの時現れた謎のスーパーロボット……手古摺りながらも、メカザウルスを撃破した!」

ガレリイ「しかし映像を見る限りでは、大した問題ではないと存じます」

バット「『ゲッターロボ』」

ガレリイ「なっ……バット将軍、今、なんと! あの忌々しきエネルギーの名を、仰られたか!」

バット「聞き間違いではない。そのロボットの名は、『ゲッターロボ』!」

バット「我らが最も忌むべき、その力の名を冠するロボットが、メカザウルス・ガラを、ゼバを、バマとバオを、ザイを!」

バット「日本に送り込んだ我らのメカザウルスを打ち破っていたのだ!」

ガレリイ「つまり、奴らサル共は、ゲッター線を操る術を身に着けたと言う事か!」

バット「そうであろう。そしてこの男が!」

ウィーン……ピッ

『――――先日、静岡県駿河湾沿岸に出現したメカザウルスを撃退したスーパーロボット、ゲッターロボを開発したとされる』

『早乙女博士が、間もなくこの会見場にお見えになるとの事です。ゲッターロボは、未知のエネルギー・ゲッター線を……』

バット「ゲッター線を、解き明かしたのだ……!」


 ゲッターロボ・クマ


.     第 四 話

       
.     【変幻】


ガヤガヤ……ザワザワ……

「日本で三機目のスーパーロボットか……」

「国が開発した前二機は、あっさりメカザウルスに破壊されたからな。今回もどうだか……」

「でも今回の襲撃の実績は確かですよ。それに、噂では浅間山周辺で何度か撃退もしたとか……」

「放射線由来のエネルギーって、安全なのか……?」

「変形合体で三つの姿を持つらしい……」

「開発までに、何十人ものテストパイロットが犠牲になったって本当かな……?」

「パイロット情報を公開しないのは、ハチュウ人類やスパイ対策ですかね……?」

「これでアメリカへの借りが増えなくなるならいいけどな……」

ガヤガヤ……ザワザワ……


カラン カラン カラン……


「……あっ。来たぞ、早乙女博士だ!」

早乙女「…………」

「皆さま、お待たせ致しました。ただいまより、早乙女博士によるゲッターロボ発表記者会見を行います」

早乙女「この度は、記者並びに有権者の方々にはご足労頂き、またこの場を設けて頂いた事に、誠に感謝致します」

パシャ パシャ

早乙女「その理由としましては、元々ゲッター線を研究していたのですが……」

早乙女「その最中にゲッター線をエネルギー転用できる事に気付き、新たなスーパーロボット開発に着手、そして完成させ」

早乙女「それを『ゲッターロボ』と命名し、実戦投入した結果、メカザウルスの撃破に成功した事の報告」

早乙女「及び、ゲッターロボの発表を目的としたものでございます」

パシャパシャ パシャ

早乙女「ゲッターロボは、我々がゲットマシンと命名した三機の飛行機形状の乗り物が合体する事で姿を現します」

早乙女「また、合体するゲットマシンの順番を入れ替える事で、三種類の姿に変形する事も可能です」

早乙女「ゲットマシンにはそれぞれパイロットが一人ずつ登場し、合体時に…………」

―――

――――――

―――――――――

早乙女「…………以上が、ゲッターロボの解説となります」

早乙女「ここまでの事で、皆さまからのご質問を受け付けたいと思うのですが、何かご質問はございますか?」

バッ!

早乙女「……では、手前左から順にどうぞ」

記者A「A新聞のアカシです。三機の飛行機が合体するとの事ですが、安全面の方は大丈夫なのでしょうか?」

記者A「戦闘時には高速で移動するでしょうし、実際に映像でも激しい挙動が見られます。事故の可能性などは?」

早乙女「勿論、安全面には最大限の注意を払っています。優秀なパイロットにも恵まれました」

早乙女「しかし可能性と言う話となれば、決してゼロではないとしか言えません」

パシャパシャ ザワザワザワ……

早乙女「その点に関しては、戦闘データを重ねると共に、できる限り改善していく所存です。次の方、どうぞ」

記者B「B社のカシマです。ゲッターロボのパイロットは、最初から変わらずに現在搭乗する三名のみですか?」

記者B「控えのパイロット、もしくは、今までに事故などで搭乗不可になったパイロットなどは居ませんか?」

早乙女「パイロットは、ゲッター戦闘チームは搭乗する三名のみです」

早乙女「後者の質問ですが、二桁では語れない数の候補が死亡した事実を認めます」

ザワザワザワ……!

記者B「それはゲッターロボと言う存在の危険性そのものを語っている事に他ならないと思うのですが!」

早乙女「パイロットは全員、死亡のリスクを覚悟して搭乗し、命を落としました」

早乙女「その犠牲の上で、ゲッターロボは完成した。事実はそれだけです」

パシャパシャパシャ!

早乙女「次の方、どうぞ」

記者B「待ってください! 質問はまだ終わっていません! 人が死ぬ可能性を考慮しておきながら……!」

早乙女「全員分の質問を問答で繰り返していてはどれだけの時間がかかるか分かったものではない」

早乙女「どの道、あなたが尋ねずとも他の記者が問う事です」

パシャパシャ

早乙女「次の方、どうぞ」

記者C「Cテレビのアサヒです。ゲッターロボのエネルギー源となっているゲッター線ですが」

記者C「解明されていない放射線を扱うにあたり、その安全性は保証されるものでしょうか?」

記者C「原子力のように放射能汚染などの危険性の有無の開示をお願いします」

早乙女「…………」

記者C「…………早乙女博士? ゲッター線の安全性は」

早乙女「下らんな」

記者C「え?」

ザワザワ……!

早乙女「時間を割いて説明しに来たというのに、口を開けば安全性、危険性……下らん」

早乙女「帰らせてもらう」

カラン カラン

記者C「ま、待て! ゲッターロボが危険な乗り物なら、国民が黙っちゃいないぞ!」

記者B「人を殺しておきながら下らないの一言で済むと思っているのか!」

記者A「開発者として、きちんとした情報開示をしろ!」


早乙女「黙れ」

シーン……

早乙女「お前たちがいくら吠えようと、戦いは起こり、誰かが死ぬ。これは戦争なのだ」

早乙女「誰も犠牲にならない戦いなどない。その手前で安全だの危険だの、反吐が出る」

早乙女「我々に戦うための武器や手段を選ぶ余地があると思っているのか?」

早乙女「ゲッター線の安全性だと? 知った事ではない」

早乙女「安全であろうが危険だろうが、生き残る為には我々はそれに縋るしかないのだ」

早乙女「ハチュウ人類に対抗する為には、ゲッターロボしかないのだ」

早乙女「お前たちにできる事は、ゲッターロボを受け入れて自らの命運を委ねるか」

早乙女「或いはゲッターを否定し、人類全てが皆殺しになるか。その二つだけだ」

早乙女「お前たちがどのような選択をしようとそれは構わん。我々は、ゲッターと言うスーパーロボットで戦う」

早乙女「憎き悪のハチュウ人類を赦さない」

早乙女「それだけだ」

カラン カラン カラン……

 ―― 早乙女研究所 ――


クマ「あわわわ、早乙女博士……!」

ナガレ「あーあ。全国放送でナニやらかしてんだ、ジジイ。大ブーイングだぞ」

ジン「まあ、この記者会見ですら乗り気じゃなかったものね。国民感情なんて関係ないって言って」

ナガレ「当然の判断だな。ジジイの言葉は尤もで、あの場に居た記者共は揃ってアホだ」

ナガレ「癪だが、ジジイの意見に賛成するぜ。死にたくなければ戦うしかねえんだからな」

クマ「でも、こんな事したら、ゲッターロボが悪者扱いされちゃうクマ!」

ナガレ「ならねえよ」

クマ「どうしてクマ?」

ナガレ「俺たちが、ハチュウ人類のクソトカゲ共に勝つからに決まってんだろ」

ジン「勝てば官軍負ければ賊軍、なんて言葉は容易く認めたくもないけど、贅沢言ってられないのも事実だし」

ジン「……でも、クマちゃんにとっては、ゲッターロボはそう言うものじゃないのよね」

ナガレ「止めてくれ辛気臭ぇ。俺はそう言うのガラじゃねえんだよ」

クマ「…………死んじゃったみんなの想いを、悪者みたいに言うのは許せないクマ」

クマ「正しいと信じて、平和な世界にする為にみんなが乗ろうとしたゲッターは、一片の曇りも無く正義クマ」

ジン「うん。だから、私たちが、ゲッターロボを認めてもらえるようにするのよ」

ジン「ちゃんとゲッターロボを動かして、ハチュウ人類を蹴散らして……」

ナガレ「都合良く祭り上げられて晴れてヒーロー、ってわけだ」

ジン「違う違う、そんな捻くれた見方じゃない」

ナガレ「ハッ! 世間の意見なんか知るかよ。要はそう言う事だろうが」

ジン「極端……」

クマ「……ジン、ナガレ。励ましてくれてありがとうクマ!」

ナガレ「励ましてねー」

ジン「フッ、照れてる……」

ナガレ「照れてねえっ!」

ナガレ「なあに気負ってんだよ! オラ、合体訓練するぞ!」

ジン「予定時間じゃないけど?」

ナガレ「ぅるっせえ! 喚くしかできねえクソ雑魚共に文句も言えねえほど見せつけてやるんだよ!」

ジン「強がりも下手になったわね、ナガレ」

クマ「それ以上茶化したら可哀想クマ。早乙女博士が言い張った手前、クマたちが情けなかったら駄目なのは確かクマ」

ナガレ「そう言うこった!」

ジン「言い出しっぺなんだから、ちゃんと訓練してよね。また以前みたいに」

ナガレ「あーあー聞こえねー!」

クマ「聞こえていない人間がする行動じゃないクマ」キュムキュム

ナガレ「黙っとけクマ公!」

ジン「ほら聞こえてる」

ナガレ「ぶっ飛ばされてえかテメエら!」

 ―― マシーンランド ――


ガレリイ「ゲッターロボ……開発者の早乙女と言う男の言葉が確かならば、忌まわしきゲッター線をエネルギーとしているようだ」

バット「くっ……何たる事だ! ここにきて、尚も立ちはだかると言うのか……!」

バット「願わくは勘違いであってほしかった……偶然であろうと、思いたかった!」

バット「ぬあああああ!」チャキッ

ズバッ

ゴシャッ バチバチッ……

バット「あり得ぬ……あり得てなるものか……!」

ガレリイ「バット将軍! お気持ちは甚く分かりますが、玉座の前です、刃を収められよ!」

バット「ぬう……」チャキッ


???「貴方が取り乱すとは、珍しいな、バット将軍」

バット「ラプト大臣……!」

ガレリイ「ラプト大臣。倒れられた帝王ゴール様に代わり、大臣のご意見をお聞きしたいですな」

ラプト「騒いだ所で事態は変わるまい。それにゲッターロボ、あの様では恐れるに足らずと見た」

バット「何を呑気な事を! 遥か昔、我らの祖先は、宇宙から降り注ぐゲッター線に滅ぼされた!」

バット「残った祖先は地中に逃れ、このような、命の一つも生み出せないマグマ層まで追いやられた!」

バット「知力を手に入れ、作り上げたマシーンランド……だが、このような生活がいつまで続く!?」

バット「故に、地上の奪還は我々の悲願! それを、今になって、またもやゲッター線が阻もうとしているのですぞ!」

バット「それを…………恐れるに足らず、だと!?」

ラプト「…………ほう?」

ガレリイ「バット将軍!」

ガレリイ「ラプト大臣、お許し下さい。大臣もご存じの通り、我々は遺伝子レベルで、ゲッター線への恐怖を抱いております」

ガレリイ「如何な武勇に優れるバット将軍に、この私ガレリイとて例外ではございません」

ラプト「勿論存じているとも。何、たとえそれで貴方たちが私に息巻いたからと言って、首を刎ねたりはせん」

ガレリイ「寛大なお言葉、感謝します」

バット「クッ……!」

ガレリイ「さてラプト大臣。ご意見の続きを頂きたいのですが、よろしいですかな?」

ラプト「先ほどの中継を見る限り、あの男はゲッター線をエネルギー変換できただけで、それ以外は解明できていないらしい」

ラプト「つまり、真にゲッター線として扱えているわけではないのだ。それは果たして、我々が恐れるゲッター線であろうか?」

ガレリイ「なるほど。一理あるお考えでありますな」

ラプト「我々が追い求める未来、恐竜帝国繁栄の道は、ゲッター線如きで閉ざされて良いものではない」

ラプト「今は伏しておられるゴール様の御意志を、我らが引き継ぎ、目を覚まされるその日までに、必ずや地上を奪い返す!」

ラプト「ゲッター線が何するものぞ。そうであろう、バット将軍、ガレリイ長官?」

ガレリイ「御尤もでございます。ゴール様の下、同じ志に我らは集い申した」

バット「……グッ、如何にも」

ラプト「そうだ。だからこそ、何も変わりはしない。倒すべき存在が、不確定なエネルギーから実物に代わっただけの事」

ガレリイ「その志、お見事でございます。なれば我々はこれに失礼致します」

ガレリイ「地上奪還に向けて、対ゲッターロボ作戦をバット将軍と練らせていただきます」

ラプト「うむ。期待しておるぞ、ガレリイ長官。ゴール様へ善き報告ができるよう、全霊を尽くすのだ」

ガレリイ「御意に。バット将軍、参りましょうぞ」

バット「う、うむ……!」

カツ カツ カツ カツ

ウィーン カシュッ


ラプト「…………フン。技術屋風情が謀りよる」

ラプト「まあ良い。ゴールが倒れた今、恐竜帝国はこの私の物だ」

ラプト「後は隙を見てゴールを殺し、スーパーロボットを駆逐し、バットとガレリイを追放すれば……」

ラプト「フフフ……ラプト帝国の設立は近い! フハハハハハ!」

ラプト「足掻くが良い人類。そのような玩具で、我が野望を止められると思うなよ……?」

カツ カツ カツ カツ

バット「…………」

ガレリイ「……感謝します、バット将軍。よくぞ堪えられた」

バット「……いや、こちらこそ、礼を言う。ガレリイ長官が言葉を繋いでくれなければ、あのコソ泥に斬りかかっていた!」

バット「おのれ、ラプトめ! ゴール様に毒を盛った分際で、よくもあのような口が叩ける!」

ガレリイ「お静かに。どこにラプトの間諜が潜んでいるか分かりませんぞ」

ガレリイ「奴が毒を盛った確たる証拠は無い。そしてゴール様が倒れられた後、手際良く民の動揺を抑えた」

ガレリイ「勿論それは奴の保身だろうが、故に民から信用も得ている。下手に手を出せば、逆賊として処刑されてしまうでしょう」

バット「なればこのまま、ゴール様の恐竜帝国をラプトの玩具にしても良いと……!?」

ガレリイ「ゴール様の意識は無いが、御存命でおられる限り、未来はありましょう」

ガレリイ「今は堪え、地上奪還を進めるのです。ゴール様の為に」

バット「…………そうであるな。奴の言葉を借りるようで癪だが、我々は何も変わらない」

バット「帝王ゴール様と恐竜帝国、全てのハチュウ人類の為に、その悲願を果たす」

バット「何、処刑されようと追放されようと、いざとなればこの命に代えてもラプトを殺せばよい」

バット「その時はガレリイ長官、貴方にゴール様の御意志を継いで頂きたいものだ」

ガレリイ「ククク、滅多な事を申されますな。貴方がそのような事で斃れられる事を、ゴール様は望まれないでしょう」

ガレリイ「それに、私も指揮官には向かない性格ですので、その指名は実に困ります」

バット「フッ……なれば、共に戦うしかないようだ」

ガレリイ「そのようですな」

バット「しかし、ゲッターロボは由々しき問題だ。一筋縄ではいくまい」

ガレリイ「そうとも限りませんぞ?」

バット「何? まさか、既に策を思い付かれたのか?」

ガレリイ「映像を見て、一つ思い浮かびましたので。ですがまだ、情報が足りません」

ガレリイ「二週間ほど時間を頂けますか? その間、バット将軍には二機のメカザウルスを出撃させて頂きたい」

バット「任された。戦う事しかできぬこの身が役に立てるのであれば!」

 ―― 数日後 ――


メカザウルス「グルルルルルルッ…………!」

ギュウゥウウン……!


ナガレ「おおりゃアアアッ! ゲッターキィーックッ!」グイッ

ガァン!

メカザウルス「グルルルルルッ! グラアアッ!」

グンッ……バァンッ!

どがあっ!

ナガレ「どぅわっ!?」

ガン ガン

ナガレ「このっ……ゲッタートマホーク!」

ジャキンッ ガシッ

ナガレ「これならどうだぁーーー!」

ブンッ


ガキィンッ!


ナガレ「かっ、固えっ……!」

メカザウルス「グラアアアッ!」ダッ

グワッ

ナガレ「こっ、のお!」グイッ

ヒョイ スカッ

ジン『ナガレ、一回離れて!』

ナガレ「くっ……分かってらあ!」

バオンッ……

メカザウルス「グルルルルルッ……!」

ギュウゥウウン……!


ナガレ「ゲッターの攻撃が悉く通用しねえ……また頑丈野郎かよ!」

クマ『ゲッタートマホークを弾く装甲に、ゲッターパワーに動じない内部の衝撃吸収性能……』

クマ『多分、ゲッター3のパワーでも簡単には倒せないクマ』

ジン『ブースターで加速を得ての体当たりも厄介ね……動きの緩急に対応できないわ』

ジン『このまま市街地にまで突っ込まれたら大変よ!』

ナガレ「別に誰を巻き込んだって構いやしねえよ!」

ジン『あほか! ただでさえ世間の風当たりが強いのに、そんな事になったら暴動が起きるっての!』

クマ『どうにかして、市街戦は避けるクマ!』

ナガレ「当然だ! クソトカゲ共なんぞに手古摺るなんて何より気に入らねえ!」

ナガレ「このトゲトゲクソ亀野郎、ゲッタービームでドロッドロに溶かしてやる!」

メカザウルス「グラアアアアアアアッ!」グンッ

バシュンバシュンッ!


クマ『甲羅の刺を射出したクマ!?』

ナガレ「チィッ……お前ら、対ショック!」

ジン『了解!』

クマ『了解クマ!』

ナガレ「ゲッター、ビーーーームッ!」カチッ


キィイン……キュオン――――

ヒュゥウン……ズガッズガッ!

ジン『きゃああっ!』

クマ『被弾、装甲貫通、ジャガー号損傷クマ!』

ナガレ「こン……のオオオオオっ!」


バオオォォォォオオオンン!

メカザウルス「グラアアアアアアッ!」

グンッ……バァンッ!


ナガレ「なにぃっ!?」


ずがあああぁぁぁああんっ……


ナガレ「クソがァ……ブースターを使って回避しやがった!」

クマ『ジン、大丈夫クマっ!?』

ジン『あと六〇センチずれてたら直撃して死んでたわ……無事よ!』

ナガレ「ジン、引っこ抜くから動くんじゃねえぞ!」グイ

ズブッ ズブッ

ポイッ

ナガレ「クッ、ジャガー号損傷37%……どうするよ! ゲッター1の攻撃全部対策されてンぞ!」

クマ『ゲッター3なら持久戦でどうにかなると思うクマ……でも無視されて市街地に突っ込まれたら追いつけないクマ』

クマ『再接近してもう一度ゲッタービームはどうクマ?』

ナガレ「今のが躱されるんじゃ駄目だ! 瞬間加速が尋常じゃねえ、振り解かれる!」

メカザウルス「グルルルルルッ……」

ギュウゥウウン……!


ジン『……メカザウルスの後ろのブースター、その上にファンがあるわ。回ってる』

ジン『多分、ブースターの火を燃やす酸素を吸入している。あそこに攻撃を当てれば、ブースターを封じられると思う!』

ナガレ「無茶を言いやがるな! 四本しかねえトマホークであんなモン当てられるわけねえだろ!」

ジン『ゲッター2の速度で接近してぶち抜く!』

ナガレ「バカ野郎てめえ、死ぬ気か!?」

クマ『損傷したジャガー号でゲッターチェンジするのは危険クマ!』

ジン『ええ、だから、お願いね?』

ナガレ「ッ…………どうなったって知らねえぜ! オープン・ゲット!」

ガチャン! バシュゥン!

ナガレ『クマ公!』グイッ

クマ『もうやるしかないクマ!』グイッ

ギュオン……

ガシィン!

ナガレ『ジン、焦るなよ!』

クマ『いつも通りで大丈夫クマ!』

ジン「二人の命預かって、土壇場で慣れから外れられないわよっ!」グイッ


ジン「チェンジッ! ゲッター 2 !」カチッ


ガシィン!

グググ……グイーン


ヒュー……ズシィン!

メカザウルス「グルルルルルルッ!」


ジン「何とか、成功ね」

クマ『肝が冷えたクマ……』

ナガレ『損傷している状態でいつまで持つかも分からねえ、さっさと決めちまえ!』

ジン「まあ、そうさせてもらうわ」グイ

ザッ――――

ギュイィーーーン!

ジン「ドリルゥ……ハリケェーーンッ!」カチッ

ブワッ……グワオオオッ!


メカザウルス「グラアアッッ!」

グンッ……バァンッ!


ナガレ『クソッ、ブースター吹かして逃げやがった!』

クマ『あっちは市街地クマ、まずいクマ!』

ジン「大丈夫よ」グイッ

ブワッ……ガガガガガガッ!

ゴロゴロ……バッ

メカザウルス「グルルルルルルッ……!」

ギュウゥウウン……!


――――ズサッ


メカザウルス「グラアアッッ!?」

ジン「そんなに息したいなら、もっと吸わせてあげる」

ギュイイイーーーン!

ギャリ――――ギャリギャリギャリギャリ!

メカザウルス「グラアアアアアアアアアアッッ!」

ジン「逃げられはしない。大気を吸入できなければブースターに点火できない!」

ジン「緊急回避の為の予備動作がお前の隙だッ!」

ギャリギャリギャリギャリッ!

ジン「このままドリルをファンの回転に方向を合わせて、捩じ切り壊してやるっ!」グンッ

ギギギ……バキィッ!


メカザウルス「グラアアアアアアアッッ!?」


ジン「ヒヒッ……ヒヒャハハハハヒャアッ!」

ギャリギャリギャリ……ズブッ

ズババババババッ

メカザウルス「グラアアアアアアッ!」ジタバタ

ジン「ああーーン! 中から引き千切り[ピーーー]この感覚最高ォーーーーッ!」ゾクゾク

ジャリジャリジャリ……

ナガレ『まぁた始まったよ……』

クマ『ジン、今日は控えめにクマ。ジャガー号の負担が大きいと危険クマ』

ジン「フヒ、フヒヒヒヒャヒャ! ぎひゃひゃひゃはははァ……!」


ギュイイィィーン……ズバアッ

 ―― 早乙女研究所 ――


『――――見てくださいよ、この白い機体に変形して勝ち、かと思ったら、メカザウルスを嬲り始めたじゃないですか』

『凶暴な人間性が現れています。これがゲッターロボのパイロットの行動ですよ? こんなのに任せて大丈夫なのでしょうか?』

ナガレ「だとよ。おい、言われてんぞ淫乱気違い」

ジン「やめてよ、自己嫌悪が止まらないんだから……」

ナガレ「開き直っちまえば話は早えのに」

ジン「私は誰かさんと違って良識があるのよ!」

ナガレ「これが、良識ある人間のする事か?」

ジン「だから自己嫌悪なのぉー……」

ナガレ「言いたいだけ言わせておけよ。どうせこいつら、お前がどんな人間か知らねえんだ」

ナガレ「事実だろうが誤解だろうが、こんな赤の他人のネガキャンなんて気にする意味ねーよ」

『大体にして、この赤い機体の状態でも相手の攻撃を受けてしまっているじゃないですか』

『相手に攻撃が通用していないし、本当に必要なんですかね?』

ナガレ「これどこの局だ? Dテレ? おい次に戦闘する時この局ぶっ壊そうぜ」

クマ「ジンー!」キュムキュム

ジン「落ち着きなさいよナガレ……あら、クマちゃん」

ナガレ「ようクマ公。どうした、なんだそりゃ?」

クマ「やっとできたクマ、届いたクマ、ジンのパイロットスーツクマ!」

ジン「ホント? ああ、とりあえず良い事一個あった……」

ナガレ「おー、やっとできたのか。これであのストリップから卒業だな」

ジン「ストリップじゃない」

クマ「さっそく着てみるクマ!」

ジン「そうね。一度袖を通しておきたいわ」

クマ「きっとばっちり似合うクマ!」

ナガレ「ま、暇だし拝見しようかね」

ジン「…………いや、着たのはいいんだけど」

ナガレ「ぷっ、くく……」プルプル

クマ「やっぱり似合うクマ! カッコいいクマ!」

クマ「ジンの身体に合わせて作った、ジン専用のパイロットスーツクマ!」

ジン「ありがとう、なんだけど……」

ジン「着心地は良いし、キツくないんだけど……」

ジン「なんか、ぴっちりしてると言うか、体のラインが出過ぎてると言うか……」

クマ「何か、変なところでもあるクマ?」

ジン「うん、なんて言うか、有り体に言えばね……」

ナガレ「肌の露出が減っただけで前と全然変わんねえじゃん……プッ」プルプル

クマ「そんな事ないクマ! ナガレは変なところに目が付いているだけクマ」

ナガレ「あーもうお前はそれでいいよ、偉いえらい」

ジン「まあ、前よりはマシね。谷間とか露出してないだけ……はあ」

 ―― 数日後 ――


クマ「ゲッターミサイルッ!」ポチッ

ガションッ……バシュンバシュンッ

キィイイン……ズワオッ!

メカザウルス「ブアアアアアアッッ!」グラッ

ズズゥン

ジン『よし、よろけたわ!』

ナガレ『今だ、クマ公!』

クマ「逃がさないクマ!」グイッ

ギャルルルルッ

ガシィッ!

メカザウルス「ブアアアアアアッッ!」

クマ「アーム・エクステンドッ!」

グルグルグル ギシッ

メカザウルス「ブアアアアッッ……!」ジタバタ

クマ「クマーーーーッ!」グググッ

メカザウルス「ブアアアアアッ……!」ジタバタ


ギギギ……ギシッ ギシィッ


ジン『イケるわ、ゲッター3のパワーなら!』

ナガレ『このまま、千切り潰せ!』

クマ「ゲッタァー……ブリーカーーーッ!」


ギギッ……メキィ!

バキバキッ

バキャアッ!


メカザウルス「ブアアアアアアッッ……!」


バチバチッ……ばごおおぉぉおんッ!

パラパラパラ……

クマ「メカザウルス撃破、確認クマ」

ナガレ『ふう……妙に面倒臭ェ奴だったな』

ジン『そうね。動きは鈍いけど、前の奴以上に装甲が固くて、ゲッター3でも持久戦になった……』

クマ「でも、一般人に被害の出ない山間部での戦闘で良かったクマ。」

クマ「状況終了、オープン・フォーメーション! これより帰還するクマ!」

クマ「オープン・ゲット!」ポチッ


ガチャン! バシュゥン!


ナガレ『はーあ、腹減った! 帰って飯にしようぜ!』

ジン『私もお腹ペコペコ。やっと食堂も直ったし、これからは落ち着いて食べられそうね』

クマ「食べ終わったら、あとで戦闘の映像を見返して反省するクマ!」

ナガレ『もういいだろ! 毎回毎回戦った後に反省会なんて!』

クマ「大事な事クマ!」

バシュンバシュン バシュン……

『ゲッターロボが発表されてから、メカザウルスが日本を襲撃する頻度が高くなっています』

『去年は一年で合計六回だったのに対し、ゲッターロボが発表されてから半月足らずで二回ですよ』

『それ以前にもゲッターロボの戦闘があったようで、それを含めると、ゲッターロボの戦闘回数は計六回になります』

『今年の二月にも一度襲ってきていますから、これでもう、去年を超えているわけです』

『日本はまともなスーパーロボットを持たない、と言う弱点がありましたが、言い換えればそれは、主だって狙われないと言う事でした』

『ゲッターロボの存在がハチュウ人類を呼び寄せているのではないか、自衛力が却って日本を危険に晒しているのではないか』

『国民からはそんな不安の声が寄せられています』


『確かにメカザウルスを倒している実績はありますけど、でも、ギリギリな戦闘ばかりじゃないですか。不安ですよね』

『ゲッター線って、どんなエネルギーなのかもよく分からない。使って大丈夫なのか信用できないからー、うん』

『早乙女さんの記者会見での態度! ありえないでしょ、あれ! 亡くなられたパイロットの遺族を馬鹿にしてる!』

『あれのパイロットって、まともな人間なのか不安ですね。ドリルが付いているやつの……』


『ゲッターロボは、いない方が良かったかもしれない』

 ―― 早乙女研究所 ――


カチャカチャ カチャ……

早乙女「……6番レンチを取ってくれ」

整備士「はい」

カチャカチャ……

早乙女「……ここのボルトが無いな。戦闘時に外れたか」

早乙女「…………ふう」

整備士「早乙女博士、少し休んでください。もう三時間もぶっ続けで整備してるじゃないですか」

早乙女「止められんよ、止まっている暇など無いのだから」

整備士「トップのあなたが倒れたら、困るのは俺たちですよ?」カチャ

早乙女「ワシがやらねば誰がやると言うのだ。クマ、ナガレ、ジンが前線で戦っているというのに」

整備士「あの三人、いいチームに仕上がりましたね。一時はどうなるかと思いましたが」

早乙女「まだまだ、青い。だが……奴らなら、ゲッターの性能を更に引き出せる」

整備士「……なのに、世間の風評、ひどいもんです」

早乙女「だからと言って戦わんわけにもいくまいよ」カチャカチャ

カチャカチャ……

 ―― マシーンランド ――


バット「おのれ、ゲッターロボめ……よくもメカザウルス・ユガを!」

ガレリイ「ふむ、装甲とパワーは申し分ない性能のメカザウルスまでも倒したか……」

ガレリイ「だがこれで、必要なデータは全て得た」

バット「ガレリイ長官! 果たしてこの作戦で、ゲッターロボを倒せるのか?」

ガレリイ「さあて、どうでしょうな……」

バット「何?」

ガレリイ「ゲッターロボのみならず、そのパイロットも恐れるに値するほどに、逆境に強い」

ガレリイ「無策にただ多くのメカザウルスを投入したところで、突破される可能性があります。バマとバオはそれで負けた」

ガレリイ「ですが、閃いた程度の私の策が通用するかどうか……その時こそ、ゲッターロボの真の力を判断できるでしょう」

バット「なるほど……サル共をそれとして侮らず、それでも確率にして、六分七分と言ったところか」

ガレリイ「とは言え、私としても最初から負けるつもりで挑むわけでもありません」

ガレリイ「ある程度の勝算があって立案したのですから、成果は残して見せましょう」

バット「ふっ、そうであるな。吾輩も協力しているのだ。多少の成果を出さねば、ゴール様に顔向けできん」

ガレリイ「それでは私は、作戦に必要なメカザウルスの選定と調整をして参ります」

バット「うむ、お願いする。メカザウルスは作戦の要だ、素人の吾輩が口を出せる事ではない」

ガレリイ「お任せを。代わりにバット将軍は、作戦決行の地を見極めて頂きたい」

ガレリイ「恥ずかしながら机に噛り付いて生きてきた為に、戦についてはとんと分かりませぬ故」

バット「それまで奪われては、吾輩の立つ瀬と言うものが無い。任せてもらおう!」

バット「恐竜帝国繁栄のため、帝王ゴール様のため!」

ガレリイ「そして、ハチュウ人類の未来のため!」


「目にものを見せてくれる、ゲッターロボ…………!」

 ―― 数日後 ――

ギュインギュイン! ギュインギュイン!

クマ「緊急アラームクマ!」キュムキュム

ナガレ「なんだなんだ、最近やけに襲撃が多いな!」

ジン「ハチュウ人類もそれだけゲッターロボを警戒しているって事でしょうね」

タタタッ

整備士「クマ! ゲットマシンの準備はできてるぞ、乗れ!」

クマ「ありがとうクマ!」

バシュッ ドサッ シュタッ ポフッ

ナガレ「よっと! まあ、何度襲ってきたって関係ねえ、俺たちがぶっ飛ばすまでよ!」

ジン『油断は禁物よ。なんだかんだで、苦戦を強いられてばかりなんだから』

クマ『特に今回は、なんだか嫌な予感がするクマ……気を引き締めるクマ!』

ナガレ「ハン! 気は抜いたって手は抜かねえよっ」

早乙女『ゲッターチーム、全員いるか?』

クマ『集合完了クマ! 早乙女博士、状況を教えてほしいクマ!』

早乙女『場所は栃木県東部。座標を送った、確認してくれ』

ナガレ「どれどれ…………ンン? おいジジイ、反応が多くねえか?」

ジン『反応が三つ……敵は三体のメカザウルスと言う事ですか?』

早乙女『衛星画像でも確認した。三体のメカザウルスが山岳地帯から市街地に向かっている』

ジン『飛行型が一体、中型二体。本格的に攻めてきたわけですか……』

ナガレ「チッ、クマ公の野生の勘とやらが大当たりかよ……!」

クマ『それなら早く行かないとマズいクマ!』

早乙女『奴らの侵攻速度から言って、到着する時には人の生活圏に入っているだろう。市街戦を覚悟しろ』

クマ『市街戦は初めてクマ……』

ジン『近隣住民の避難が終わっていないと、まともに戦えないわ。どうにかして町の外に引き摺り出して……』

ナガレ「面倒臭ェ! 逃げてねえ奴なんざ知るか、関係無ェ!」

クマ『そう言うわけにもいかないクマー!』

ナガレ「要するに、アホ共に被害が出る前にメカザウルスを叩き潰せば良いってわけよ!」

ジン『それがどれだけ難しいと……まったく』

早乙女『だが、住民の事を考えるとそれしかない。難しい戦いになるが、頼む』

早乙女『ゲッターチーム、出撃!』


ナガレ「了解、イーグル号!」

ジン『ジャガー号!』

クマ『ベアー号!』


「「「発進!」」」

ズゥン……ズゥン……

メカザウルスA「ジイイイイイイッ!」バサッ

メカザウルスB「ガガガッ! ガガァッ!」

メカザウルスC「ゴオオオオオオオオッ!」


ズガァン! バゴオッ! グシャア!


「メカザウルスだ、逃げろぉーーー!」

「誰かあああ、助けてえええ!」

「自衛隊は何をやっているんだ!」


メカザウルスA「ジイイイイイイイッ!」ガパッ

ボウッ……ボワアアッ!


「ほっ、炎が! ぎゃああああああああっっっ!」



ゴゴゴゴゴ……ドロドロ

メカザウルスA「ジイイイッ……ジイッ?」

バオンッ……キイィィイン


ナガレ「ゲェッターーー! キィーーーーック!」


メカザウルスA「ジイイイイイッ!」バッ

メカザウルスB「ガガァッ!」シュバッ

メカザウルスC「ゴオオオオオオオオッ!」


ごしゃあっ!


メカザウルスC「ゴオオオオオッッ!?」

ガガガガッ……ズシィン

ガシャンッ ガンッ

ナガレ「かぁー、かってぇ!」

メカザウルスC「ゴオオ……ゴオオオオオオオオオッッ!」

ナガレ「このゴツいの、また頑丈だぞ! どうなってんだクソトカゲ、オイ!」

ジン『ぼやくな! 大してダメージが通っていないわ、離れて!』

ナガレ「おうっ!」

ガン ガン

ガン

ナガレ「さぁて、雁首揃えてお出ましのトカゲ共は……」

メカザウルスA「ジイイイイイイッッ!」

ナガレ「鬱陶しいハエトカゲと……」

メカザウルスB「ガガッ! ガアァッ!」

ジン『細長い中型メカザウルス……』

メカザウルスC「ゴオオオオオオオオオッッ!」

クマ『装甲に覆われた中型メカザウルスクマ』

ナガレ「ヘッ、ケツに火ィ着いたと思ったら、代わり映えしねえヤツよこしやがって!」

クマ『油断禁物クマ! この布陣、何か企んでいるはずクマ』

ジン『もし、今までの戦いでゲッターロボの性能を見ていたのだとしたら……仕留めにきているはずよ』

ナガレ「しゃらくせえ! だったらもっと見せてやるぜ、『ゲッターロボ』の力を!」グイッ

ガン ガン ガン

ガン!

ナガレ「ゲッターパンチッ!」

ブンッ

メカザウルスC「ゴオオオオオッ!」グッ

ガァン!

メカザウルスC「ゴオオオッ!」グググ

ナガレ「邪魔だァ!」グイッ

グググッ……

ジン『馬鹿、一対多数で捕まってどうすんのっ!』

ナガレ「叩き潰せば良いんだろーが!」

クマ『ナガレ、左から細いのが来るクマ!』

ナガレ「アンっ!?」

メカザウルスB「ガガガッ! ガアッ!」ヒュバッ

ジン『速いッ――――!』

メカザウルスB「ガガッ!」グワッ

バキィッ!

ナガレ「どわあっ!」

ズズゥン ガラガラガラ……

ナガレ「クッソがあ……やりやがったなァ!」

ジン『いたた……恐ろしく身軽な奴だわ』


ズシィン

メカザウルスC「ゴオオオオオオオオオッ!」

ガシッ


クマ『掴まれたクマ!』

ナガレ「離しゃーがれ、このっ……!」グイグイ

メカザウルスC「ゴオオオオオッ!」ブンッ

ズガッ!

ナガレ「ぐわっ!」

メカザウルスB「ガガガッ!」ギュン

ドカッ!

ジン『きゃあああっ!』

クマ『こ、このままじゃ不利クマ!』

ナガレ「クソったれ共が……ゲッタートマホーク!」

ジャキンッ ガシッ

ナガレ「オオオオッ!」グイッ

ブンッ

メカザウルスB「ガガッ!」シュバッ

メカザウルスC「ゴオオオオッ」グッ

ガキッ!

ジン『クッ、やっぱり通用しない!』

ナガレ「上等ォ! ゲッタービーム!」

キィイン……

メカザウルスC「ゴオオオオッ!?」バッ


――――キュオン

バオオォォォォオオオンン!

シュオオオ……


メカザウルスA「ジイイイイイッ!」バッサバッサ

メカザウルスB「ガガッ! ガアアッ!」

メカザウルスC「ゴオオオオオオオッ!」


ガン ガン


ナガレ「へっ……逃げたなあ、装甲自慢! どうにも流石に、ゲッタービームまでは耐えられねえようだな!」

ジン『問題は、どうやってそれを当てるかって事ね……』

ナガレ「ゲッタービームばかりがゲッターじゃねえだろ? あっちが壁を立てるんなら、こっちは要塞をぶつけるまでよ」

ジン『ふぅん、とすると?』

ナガレ「クマ公! ゲッター3のゴリ押しで、ゴツいのを叩きのめせ! 他の二体はそれから片付けようぜ!」

クマ『ナガレが文句を言わないなら、任されたクマ!』

ナガレ「お前の働き次第だな、オープン・ゲット!」

ガチャン! バシュゥン!


クマ「チェンジ!」


ギュオン ガシィン!


クマ「ゲッター 3 クマ!」


ギュオン ガシィン!

グググ……ガキョン!


ズシィン!


クマ「速攻でやるクマ! キャタピラ、展開クマ!」ポチッ

ウィーン ギャルルルルッ!

クマ「クマーッ!」グイッ

メカザウルスB「ガガッ!」シュバッ

ジン『一匹逃げたわ!』

ナガレ『本命はそっちじゃねえんだ、ほっとけ!』

メカザウルスC「ゴオオオオオオッ!」ズサッ

ナガレ『って、テメエまで逃げてんじゃねえぞクソゴリラ!』

クマ(装甲が取り柄のメカザウルスが、パワー勝負で分が悪いと判断したクマ……?)

クマ「……まさかっ!」バッ


メカザウルスA「ジイイイイイイイイイッッ!」ガパッ


クマ「クマっ、間に合わないクマ……!」

ナガレ『どうしたクマ公!』

クマ「二人とも、対ショック姿勢クマ!」グイッ

ギャルルルルッ


メカザウルスA「ジイイイイイイイイイッ!」

ボウッ……ボワアアッ!


ズアアアッ!


クマ「ぐうっ! 炎の息……!」

ジン『な、なにこの温度……身体が融けるっ!』

ナガレ『あちっ! レバーがもう熱い! このままじゃ茹だるぞおっ!』


クマ(メカザウルスは真上から狙っているから、物陰に隠れられないクマ!)

クマ(かと言ってこのままオープン・ゲットしたら、ゲットマシンが温度に耐えられないクマ……)

クマ(この炎の中じゃゲッターミサイルも即時に起爆してしまうクマ……!)

ズアアアッ……!

クマ「クマーっ! こうなったら、アーム・エクステンド!」グイッ

グイーーンッ

ガシッ

ナガレ『近くのビルを掴んで、どうする!?』

クマ「壁がないなら、作ればいいクマ!」

クマ「壊して、ごめんなさいクマ!」

グググ……バキッ!

クマ「クマーーーーッ!」グイッ

ブンッ

ジン『圧し折ったビルを投げて、炎を遮るのね!』

ナガレ『タイミングは一瞬だぞっ!』

クマ「十分クマ……!」

ヒューン ジュワッ……

クマ「今クマ! オープン・ゲット!」カチッ

ガチャン! バシュゥン!


メカザウルスA「ジィッ! ジイイイイイイイッ!」

ボワアアッ!


ギュオンギュオン ギュオン


ズアアアッ……

ギュオン

クマ「間一髪クマ……!」

ジン『ゲッターにダメージを与えられないからって、パイロットを狙ってくるなんて……!』

ナガレ『クソトカゲ共らしいクソみてぇな作戦だな!』

クマ「でも、飛行型がいる限りゲッター3は封じられているも同然クマ」

ジン『先に飛行型をどうにかしないと、ゴツいのを相手にするのは難しいわ!』

ナガレ『だったらゲッター1で叩く! 空中戦で一対一に引き摺り込んでやる!』

ジン『まあ、それしかないわね……』

クマ「なんだか嫌な予感がするクマ」

ナガレ『さっきからそればっかりじゃねえか! 罠は承知で突っ込むしかねえだろ!』

クマ「当然クマ。これ以上、奴らに好き勝手させないクマ!」

ギュオン ギュオンギュオン

メカザウルスA「ジイイイイイッ!」


ナガレ「このハエトカゲ、目にモノ見せてやらぁ!」

ギュオン ガシィン!


ナガレ「チェーーンジッ、ゲッターーー 1 !」ポチッ


ギュオン ガシィン!

グググ……グワオン!


ナガレ「っしゃあッ! いくぜェーー、ゲッターウィイング!」

ブワッ……バサッ!

バオンッ

メカザウルスA「ジイイイイイイイイッ!」ガパッ

ボウッ……ボワアアッ!

ナガレ「甘ェ!」グイッ

ヒョイッ

ズアアアッ……

ナガレ「邪魔が無けりゃそんな火遊び、欠伸が出るぜ! ゲッタートマホーク!」

ジャキンジャキンッ ガシッ

ナガレ「挽き肉にしてやるっ! トマホーク、ブゥーメランッ!」

ブンッ

グルグルグルッ……

メカザウルスA「ジイイイッ!」バッ


――――バオンッ


メカザウルスA「ジイイッ!?」

ナガレ「貰ったァ!」

ジン『――――ナガレ! 下方向からミサイル!』

ナガレ「なあっ!?」


キィイイン……ドワオ!


ナガレ「ぐわああっ!」

メカザウルスA「ジイイイイッ! ジイッ!」

グワッ ズガッ!

ナガレ「ぐおお! に、逃がすかッ!」


キィイイン……ドガガガッ!


ジン『ぐうううう!』

ナガレ「こな、くそォ!」

クマ『み、ミサイル追撃、全七基クマ! 回避クマー!』

ナガレ「チィッ!」グイッ

バオンッ

バオンッ……

ナガレ「くぅ……あと少しでやれたのに! どこのどいつだ、邪魔しやがったボケはァ!」

クマ『……あいつクマ!』

ナガレ「どいつだ、ぶっ殺してやるっ!」

クマ『細いやつクマ!』


メカザウルスB「ガガッ! ガガガガガァッ!」グンッ

バシュバシュバシュバシュッ


ジン『追加で撃ってきた!』

ナガレ「ザけた真似しやがって! だったらテメエから始末しちゃらァ!」グイッ

バオンッ!

ジン『待てナガレ! 頭に血ィ上らせんな、敵の思うつぼよ!』

ナガレ「うるっせぇ! ゲッタートマホーク!」

ジャキンッ ガシッ

ナガレ「トマホークブーメラン、ダブルッ!」

ブンッ!

ギュルギュルギュル……!

キィイイン……

ギュルギュルギュル……

ズバッ

ズバババババッ!


ずわおっ……!


クルクルクル ガシッ

ナガレ「オオオオオオオオオッ!」

メカザウルスB「ガガッ!」シュバッ

ナガレ「逃がすかよオッ! トマホークブーメランッ!」

ブンッ

クルクルクル……

メカザウルスC「ゴオオオオオッ!」バッ

ガキッ!

ナガレ「邪魔だアアッ!」グイッ

ズギャッ!

ギチギチギチ……

ナガレ「ウオオオオオッ!」

メカザウルスC「ゴオオオオオオッ!」

ナガレ「[ピーーー]えええぇっ!」

ジン『ナガレ、落ち着いて!』

クマ『このままじゃ堂々巡りクマ! 退くクマ!』


ナガレ「…………チッ!」グイッ

バオンッ

ナガレ「こいつら、絶対ぶっ[ピーーー]! 人を虚仮にしやがって、俺を怒らせたらどうなるか思い知らせてやるッ!」

ナガレ「ジン! ゲッター2であの細長クソトカゲを小間切れにしてやれェーーー! オープン・ゲットォ!」カチッ

ガチャン! バシュゥン!

ジン『ちょっ……話は纏まってないのに!? ええい、仕方ない!』

クマ『ナガレ、頼むから落ち着いて合体するクマ!』グイッ

ナガレ「奴らの吠え面見るまでは[ピーーー]るかよぉ!」グイッ

ギュオン ガシィン!

やっちまった再投下。



ギチギチギチ……

ナガレ「ウオオオオオッ!」

メカザウルスC「ゴオオオオオオッ!」

ナガレ「死ねえええぇっ!」

ジン『ナガレ、落ち着いて!』

クマ『このままじゃ堂々巡りクマ! 退くクマ!』


ナガレ「…………チッ!」グイッ

バオンッ

ナガレ「こいつら、絶対ぶっ殺す! 人を虚仮にしやがって、俺を怒らせたらどうなるか思い知らせてやるッ!」

ナガレ「ジン! ゲッター2であの細長クソトカゲを小間切れにしてやれェーーー! オープン・ゲットォ!」カチッ

ガチャン! バシュゥン!

ジン『ちょっ……話は纏まってないのに!? ええい、仕方ない!』

クマ『ナガレ、頼むから落ち着いて合体するクマ!』グイッ

ナガレ「奴らの吠え面見るまでは死ねるかよぉ!」グイッ

ギュオン ガシィン!

ギュオン

ジン「チェンジ、ゲッター 2 !」カチッ

ギュオン ガシィン!

グググ……グイーン!


ズサッ―――


ジン「フウっ……」

メカザウルスC「ゴオオッ! ゴオオオオオオッ!」

ズゥン ズゥン

ナガレ『ジン、来るぞ!』

ジン「遅いわ」グイッ

ザッ……ザザザザザッ

メカザウルスC「ゴオオオオッ!?」

ジン「地上じゃ障害物が多すぎる。地中から目標に接近する!」

ギュイイィィーン!

ズガッ ガガガガガガッ

ガガガガガガッ……

ナガレ『本当に地面を掘り進んでやがる……おいっ、今配管壊さなかったか、大丈夫なのか!?』

ジン「どうせ暫くはまともな生活なんてできないわよ! 目標まであと六〇m!」

ガガガガ……ガガッ……ガガッ……

クマ『……微振動を検知、地震クマ! ジン、落盤の危険があるクマ、気を付けるクマ』

ジン「こんな時に? 活火山が近くにあるからって……」

クマ『震源地は…………違うクマ、地震じゃないクマ!』

ナガレ『地震じゃねえってのは?』

クマ『震源地は後方、メカザウルスの内一匹、ゴツいやつクマ!』

ナガレ『ハア!? どういう事だ!』

クマ『地上に出てみないと分からないクマ! 言える事は、意図的に引き起こされているって事クマ!』

ガガッ……ズガッ!

ジン「クッ……まさかとは思ったけど、ゲッター2まで……。地上に出る!」グイッ

ギュイイィィーン!

ガガガガガガッ――――ガァンッ!

ジン「あ、あれは……!」


メカザウルスC「ゴオオオオオッ!」ググ

ゴゴゴゴゴ……!


ナガレ『何だあのクソゴリラトカゲ、地面に手ェ突っ込んで!』

クマ『何をしているのかはさっぱり分からないクマ。でも、あれで地震を引き起こしているのは間違いないクマ!』

ジン「でも今の状態なら隙だらけよ。ぺらっぺらにスライスして…………!」


メカザウルスB「ガガガッ! ガアッ!」グンッ

バシュバシュバシュバシュッ


ジン「――――チッ!」グイッ

ズサッ

キィイイン……ドワオッ……!

ザザザ……ズサッ

ジン「建物が邪魔で…………動き辛いッ!」

メカザウルスC「ゴオオオッ!」ズボッ

メカザウルスC「ゴオオオオオオッ!」

ズゥン ズゥン

メカザウルスA「ジイイイイイイイッ!」バサッ

メカザウルスB「ガガッ! ガガガガッ!」


ジン「…………ナガレ、私もあんたと同感よ。これ、無茶苦茶ムカつくわ――――!」

ナガレ『嬉しくねえ賛同だが、こと今回に関しちゃブチ切れたぜ!』

ジン「どいつでも良い、引き千切ってやる……苦しみ抜いてから死ぬ寸前まで嬲ってヤル……!」

ナガレ『今ならゲッタービームぶち込んで一網打尽だ、俺に変われジン! 俺にやらせろォ!』ガッショガッショ


クマ『…………突破できるかもしれないクマ』


ジン「…………」

ナガレ『…………』

ジン「えっ!?」

ナガレ『マジか、クマ公!?』

クマ『ゴツいメカザウルスは、ゲッター2の妨害をする時、動けなかったクマ』

ジン「確かにそこは明確な隙よ。だけど、他のメカザウルスに妨害されるわ」

ナガレ『他の形態のゲッターでも、結局他のメカザウルスが邪魔してきやがる』

クマ『それは、プログラム上の作戦クマ。クマたちには、奴らが数値として持たない能力があるクマ!』

ナガレ『数値として持たない……どういう意味だ?』

ジン「ハチュウ人類が対策出来ていない私たちの力があるって事?」

ナガレ『そう言う事か。ンなモンあるのか?』

クマ『ちょっと危険クマ……でも、クマたちならできるクマ!』

ナガレ『何をさせるつもりだお前! それは何だ!』

ジン「何をすればいいの?」

             ガッツ
クマ『――――『根性』クマ!』

メカザウルスA「ジイイイイイイイッ!」

メカザウルスB「ガガガッ!」

メカザウルスC「ゴオオオオオッ!」


ジン「――――ドリルッ、ハリケェーーーンッ!」カチッ

ブワッ……グワオオオッ!


メカザウルスA「ジイイイイイッ!」バッ

メカザウルスB「ガガッ! ガガガッ!」シュバッ

メカザウルスC「ゴオオオオオッ!」グッ


ジャリジャリジャリ――――!


メカザウルスC「ゴオオオオオオオオオッッ!」

メカザウルスB「ガガガガッ!」グンッ

バシュバシュバシュバシュッ


ナガレ『ミサイルだ!』

ジン「潜るわよ!」

ギュイイィィーン!

ズガッ ガガガガガガッ


キィイイン……バゴォンッ!

ガガガガガガッ……

ナガレ『本当に大丈夫なのかよ……』

ジン「大丈夫かどうかは、私たち次第よ」

ナガレ『その通りだけどよー、自爆戦法も甚だしいぜ! ゲッター3で炎を誘って突撃、ゴリラトカゲを捕まえるなんて!』

クマ『ゲッター3なら炎の攻撃を耐えられるクマ』

ジン「確かに炎の中なら細いやつのミサイルの妨害も受けないけれど……普通に考えて、クマちゃんの言う通り、危険ね」

クマ『大丈夫クマ! クマたちにできない事なんてないクマ!』

ナガレ『ヘッ……クマ公、お前も相当イカれてきてるぜ』

クマ『褒め言葉として受け取るクマ』

ガガガッ……ガガッ……ガガッ……

クマ『微振動を確認クマ。震源地、前方、メカザウルス直下! ジン、今クマ!』

ジン「ええ! ナガレ、ケツの穴の小さい事言ってないで、覚悟決めなさい!」グイッ

ガガガガガガッ……!

ナガレ『ンだと! お前こそ、スピードが肝心なんだから土壇場でミスるなよ!』

ジン「フッ……地上に出るわ!」グイッ

ガガガガガガッ――――


――――ガァンッ!


メカザウルスC「ゴオオオオオッ!」ググ

ゴゴゴゴゴ……!


クマ『目標まで二〇mクマ!』

ナガレ『ドンピシャだぜ! ジン!』

ジン「オープン・ゲット!」ポチッ

ガチャン! バシュゥン!


メカザウルスB「ガガガァッ!」グンッ

バシュバシュバシュバシュッ……


ナガレ『うおおおっ!』グイッ

ジン「こい、ナガレェ!」グイッ

ギュオン ガシィン!

クマ「チェンジ、ゲッター 3 クマ!」ポチッ

――――ガシィン!

グググ……ガキョン!


キィイイン……ズワオッ! ドガァン! 

ドガガガッ……!


パラパラ……


――――ギュルルルルル!

クマ「突っ切るクマーーーっ!」


メカザウルスB「ガガァッ!? ガガガガアッ!」シュバッ

メカザウルスA「ジイイイイッ! ジイイイイイイイイイッッ!」ガパッ

ボウッ……ボワアアッ!


ズアアアッ!

クマ「ぐうっ!」

ジン『と、飛んで火にいる夏の虫っ……!』

ナガレ『下らねえ事言ってんじゃねえー! クマ、まだかあっ!』

クマ「もう少しクマ!」グイッ

ギュルルルルルルルッ!


メカザウルスC「ゴオオオオオオオッ!」グッ……


ナガレ『や、野郎、逃げる気だ!』

クマ「逃がさない、クマ! アーム・エクステンドッ!」グイッ

グイーーンッ

ガシッ!

メカザウルスC「ゴオオオオッ!?」

クマ「クマーーーーっ!」

ギュルルルルル――――ズガァン!

メカザウルスC「ゴオオオオオオオッッ!」

ズアアアアッ!

メカザウルスC「ゴオオオオオオオオオオオッッッ!?」ジタバタ

クマ「クマっ……は、離さないクマ!」

ナガレ『ぐおおおお! おいハエトカゲ、お仲間が苦しんでるぜ、炎を止めなァ……!』

メカザウルスC「ゴオオオオオオオオオッ……!」ジタバタ……


メカザウルスA「ジイイッ!? ジイイイイッ……」バクンッ

ボウッ……シュウゥ


ジン『カハァッ! あ、熱かったッ……!』

ナガレ『い、今だクマ公、締め殺せェ!』

クマ「クマァーー!」グイッ

ググッ……ギシッ!

メカザウルスC「ゴオオオオオッ!?」ジタバタ

クマ「その装甲が伊達じゃないと知らしめる、いい機会クマ!」

クマ「逃げずに思う存分、発揮すれば良いクマー!」

グググッ……ギシッ ギシィッ!

メカザウルスB「ガガガアッ!」グンッ

バシュンバシュンバシュンバシュン


ジン『く、クマちゃん! ミサイルが来るわ!』

クマ「根性ぉーーーーーー!」グググ


キィイイン……ドガガガッ!


メカザウルスC「ゴオオオオオオオッッ!」

クマ「クマーっ……ゲッタァー、ブリーカァーーーーッ!」グイッ

ミチミチッ……バキッ!

メカザウルスC「ゴオオオオオオオオオオオオッッッ!」


バキバキッ……ゴシャアッ!

ばごおおぉぉおんッ!


パラパラパラ……


クマ「一機、撃破クマ!」


メカザウルスA「ジイイイッ! ジイイイイイイイイイッッ!」ガパッ

ボウッ……ボワアアッ!


ナガレ『クマ公、炎がくるぞ!』

クマ「今更クマ! オープン・ゲット!」ポチッ

ガチャン! バシュゥン!


ズアアアッ……


ジン『次は細いやつよ! 私に任せて!』

ナガレ『チッ、仕方ねえ! クマ公、行くぞ!』グイッ

クマ「クマ!」グイッ

ギュオン ガシィン!


ジン「チェンジッ! ゲッター 2 !」ポチッ


ギュオン ガシィン!

グググ……グイーン!

ズサッ

ジン「目標まで直線、遮蔽物無し……」


メカザウルスB「ガガッ……ガガガガガァッ!」グンッ

バシュンバシュンバシュンバシュン


ジン「遅い……!」グイッ

ザッ……

ズガガガガガッ…………

――――ズザッ

メカザウルスB「ガガッ……」

ジン「ゲッター2は地上戦用よ。その意味、憶えておくことね」

キィイイン…………ズズゥン……

メカザウルスB「ガッ……ガガガガガガガガガアアッッッ!」ブン

ジン「悪いけど、今回は弄ぶ時間は無いの」グイッ

スカッ

メカザウルスB「ガガッ――――」

ジン「だから一瞬だけ」

ギュイイィィーン

ゾブッ

メカザウルスB「ガッ……」

ギャリギャリギャリギャリジャリジャリジャリズバババババッ

ズバアッ!

ジン「感じられたかしら、私たちの強さ」

ジン「…………ちょっと、物足りないわねっ」

ナガレ『アホか、お前!』


メカザウルスA「ジイイイイッ!」ガパッ

ボウッ……ボワアアッ!


ジン「…………オープン・ゲット!」ポチッ

ガチャン! バシュゥン!

ギュオンギュオン ギュオン

ジン「最後はあなたよ、ナガレ。ここでヘマしたら、どうなるか分かってるわね!」

ナガレ『誰に挑発してんだよ、待たせやがって!』

クマ『もしもナガレだけ手古摺ったら、罰として晩御飯抜きで単独飛行訓練クマ!』

ナガレ『テメエら俺の時だけ変なペナルティを科すんじゃねーよ!』

ジン「だったら、失敗しない事ね!」グイッ

ギュオン

クマ『さあ、最後の一機クマ!』グイッ

ギュオン

ガシィン!

ナガレ「ま、大トリってのも、悪くねえな!」

ギュオン……

メカザウルスA「ジイイイイイッ!」

ナガレ「綺麗に、飾ってやるよ!」グイッ



ナガレ「チェーーーンジッ! ゲッタァーーー 1 !」ポチッ



ガシィン!


グググ……


グワオン!


ブワッ……バサッ!


ナガレ「オオオオオオオオオッ!」

バオンッ!

メカザウルスA「ジイイイイイイッ!」ガパッ

ボウッ……ボワアアッ!


ナガレ「だから今更、そんな攻撃が通用するかよォ!」グイッ

バオンッ

ズアアアッ……

メカザウルスA「ジイイイイイイイイイイイイッッッ!」

ボワアアアアッ!

ナガレ「火ィ吐くしかできねえヤツなんざ、何も恐くねえっつの!」

バオンッ

ナガレ「ゲェッター……パァンチッ!」グンッ

バキッ!

メカザウルスA「ジイッ……!」

ナガレ「オラオラオラ!」

ズガッ! ドカッ! バキッ!

ナガレ「オラアッ!」

ゴシャッ!

メカザウルスA「ジ……ジィッ……!」


ガシッ


メカザウルスA「ジッ!?」


ナガレ「憶えておけ、ハチュウ人類のクソトカゲ共!」

ジン『この程度の対策でどうにかできると侮ったのが敗因だと……!』

クマ『この『変幻』が、『ゲッターロボ』の力クマ! そして!』

キィイン……!

ナガレ「この『根性』が、『俺たち』の力だ――――!」


メカザウルスA「ジイイイッ……!」

ナガレ「オラァ!」グイッ

ブンッ

メカザウルスA「ジイイイッ…………!」



ナガレ「ゲッタァーーー! ビイィーーーーーンンムゥッ!」


キィイン……キュオンッ!

バウッ――――

バオオォォォオオオオンッ!


ナガレ「うおおおおおおおおおっ!」

ジン『ハアアアアアアアッ!』

クマ『クマーーーーーーーっ!』


メカザウルスA「ジッ…………!」


ドロドロドロ……ジュワッ


ヒュー……ズズゥン

ナガレ「…………フゥッ。どっと疲れたぜ……」

ジン『本当に……まさか、ハチュウ人類がゲッターを対策してくるなんて』

クマ『ハチュウ人類も本格的に、ゲッターロボを脅威と認めたと言う事クマ』

ジン『厄介だわ。これからの戦闘も、今回と同じかそれ以上に辛いものになる』

クマ『クマたちじゃ対処できない搦め手を使われると、大変クマ……』

ジン『これから戦う度に、これだけ人間の生活圏を破壊していったら……』

ナガレ「上等じゃねえか! 何を企んだところで、俺たちに勝てる奴なんかいやしねえ!」

クマ『そんな能天気な話じゃ済まないクマ!』

ジン『ま、でも……ナガレの言う通りよ。私たちは負けない』

クマ『当然クマ! クマたちは、負けられないクマ!』

ナガレ「どんな戦いも、俺たちは勝つ!」


ナガレ「敵殲滅! ゲッターチーム、これより帰還する!」

ナガレ「オープン・フォーメーションッ!」

 ―― マシーンランド ――


ラプト「バット将軍、ガレリイ長官」

バット「……ハッ」

ガレリイ「お呼びですかな、ラプト大臣」

ラプト「先日の戦闘データ、見させてもらった。三機のメカザウルスを使い、ゲッターロボに敗れたな?」

ラプト「作戦の立案はガレリイ長官、指揮はバット将軍だと聞いた」

ラプト「このザマはなんだ?」ギロリ

バット「面目次第もない……」

ラプト「この事がゴール様のお耳に入れば、ゴール様はさぞお怒りになられるだろう」

ガレリイ「それに関して、ゴール様がお望みであるならば、我々は喜んで処罰を受けましょう」

ラプト「なに?」

ガレリイ「ですが、これでゲッターロボが如何に脅威であるか、ゴール様にご理解頂けるはずです」

ガレリイ「ラプト大臣。ゲッターロボを甘く見た貴方も、お解りの事と存じます」

ラプト「…………フン。此度の失敗は不問とす」

バット「ラプト大臣! 日本、いや、ゲッターロボに回す戦力の増強をお考え頂きたい!」

バット「愚計ながら我らの作戦が打ち破られたのは、間違いなくゲッターロボの実力!」

バット「これからは戦力の小出しなどせず、余剰火力であろうが……!」

ラプト「バット将軍。次の作戦を成功させてから、その話の続きを聞かせてもらおうか」

バット「なっ……!?」

ラプト「敗戦の将の言葉など、民草の誰が信じよう?」

バット「グッ……!」

ラプト「日本などと言う小さな島国など放っておけ。大陸を侵攻し、我らの領土を増やす方が先決だ」

ラプト「方針は変えぬ! 下がるがよい」

ガレリイ「畏まりました」

バット「……承った」

カツ カツ カツ カツ

ガレリイ「愚かな男だ、ラプトめ。メカザウルス三機の連携を打ち破った相手を放置してどうなるか、分からぬはずもあるまいに」

バット「……屈辱だ。帝王ゴール様より賜った将軍の位、それを奴は、虚仮にした……!」

バット「だがっ……ゴール様のお命を握られている以上は、従うしかあるまい……」

ガレリイ「とは言え、こうなっては仕方ありますまい。今までと同じ戦力で、ゲッターロボを対処する他ないですな」

バット「メカザウルス三機掛かりで倒せぬ相手を、どのようにして対処すると言うのだ!」

ガレリイ「勝利ばかりが戦いではないと思いますがの」

バット「……負ける事で勝つ戦もあると言う事か?」

ガレリイ「如何にも」

バット「ラプトは負けを許さぬ。数は稼げんぞ」

ガレリイ「そうなれば、ラプトと奴らサル共、どちらがより愚かか。それだけの話です」

バット「なんとも下らぬ話だ」

バット「……見ていろ、ゲッター。いつの日か、打ち倒してくれる!」

 ―― 早乙女研究所 ――


『先日のメカザウルスの襲撃とゲッターロボの交戦の被害を受けたこの場所は、このように、見るも無残な状況となっています』

『ビルは倒壊し、地面は激しく隆起しています。ゲッターロボがドリルを使って地面を掘った為に、地中の配管までも破壊されています』

『激しく破壊されたこの場所を再び元に戻すには、三年以上掛かるとも言われており……』

『近隣住民からは、もっと上手い戦い方があったのではないか、との疑問の声があがっています』

ナガレ「うっせぇ!」ピッ

プチッ……

クマ「あー、何をするクマ!」

ナガレ「口を開けばゲッターの文句ばかりじゃねえか、くっだらねえ。見るだけ時間の無駄だ!」

クマ「マスメディアは国民感情を知るのに必要な情報媒体クマ! リモコン返すクマー!」キュムキュム

ナガレ「何が国民感情だ、知るか!」

ジン「良いじゃないのよテレビくらい。前にどこの誰が私たちの事を悪く言っても気にしないって、自分で言ってたじゃない」

ナガレ「あーあー聞こえねー!」

ジン(多分、自分の事じゃなくて、本当は私たちを馬鹿にされるのが嫌なんでしょーね)

クマ「かーえーすークーマー!」ピョンピョン

ナガレ「だあっ!」

第四話【変幻】終。

次回、第五話【白無垢鉄火】。
申し訳ないけどリアルがシャレにならんくらい忙しくなってきたんで、俺の気分とか関係なく暫く投下できません。
続きは三ヶ月後くらいかもしれないので、暫く来なくても大丈夫です。


ゲッター3の「アーム・エクステンド」はただ腕を伸ばすだけ。
腕を伸ばす描写が出来なかったんです。

……クマって勝手にメスだと思ってた……

マジで本編に絡んで来なさそうな設定で草

OVA竜馬にちょっと劣るくらいって既に人外wwwwww

そもそも平気な顔してゲッターに乗れる時点ですでに人外レベルの身体能力だからその辺は言われるまでもないかなって

>>366
作中でオスとも明記してないんで大丈夫です。

>>367
絡めます。

>>369-370
具体的には真対ネオの竜馬以下ですね。因みにナガレは新ゲ竜馬にちょい劣るくらい。
個人的な意見ですがOVA竜馬の身体能力は真対ネオ>真≧新だと思ってます。

>>371
まあ念の為に言っただけです。規格外の中の規格外的な意味で。

でもってお待たせしました凄い奴。何だかんだマジで三ヵ月待たせてごめんなさい。
で投下する前に修正

>>193
ミチルがイーグル号に乗ってるって言ってるけどジャガー号です。

チュンチュン……


ジン「すぅ……すぅ……」


ピピピッ ピピピッ ピピピッ……


ジン「ん…………」モゾ


ピピピッ ピピピッ ピピピッ……


ジン「んン…………」

モゾモゾ

ピピピッ ピピピッ

カチッ

ジン「…………」ムク

ジン「眼鏡……めがね……」モゾモゾ

スチャ……

ジン「…………六時。はふぅー……」

ジン「んんーー…………!」


ジン「…………ねむ」


     ゲッターロボ・クマ


.         第 四 話


.      【白無垢鉄火】

 ―― 早乙女研究所・飛行訓練場 ――


タッタッタッタッ……

ジン「フッ、フッ……」

タッタッタッ……

ジン「フー…………。水……」スッ

キュッ

ジン「んくっ、んくっ……」ゴクゴク

ジン「ぷはっ。はぁー……最近、暑いわねー。そろそろこの日課、止めた方が賢明かしら」

ジン「体力作りの為に体ぶっ壊しちゃ、元も子もないし……」

ジン「ま、それは後でいっか。さーて。シャワー浴びてご飯食べよ」

ザッ……

ジン(ミチルさん。達人さん。散っていった、ゲッターチームの皆さん)

ジン(今日も私たちを、見守っていてください)


ジン(って、…………なーんか、視線感じるのよね。何かしら)

 ―― ジンの部屋 ――


ジン「ふー、さっぱりしたぁ」ゴシゴシ

ジン「…………ん? えっと、眼鏡、眼鏡……」スチャ

ジン「あ。お兄ちゃんから着信来てる」スッ

ジン「んー……ま、いっか」スイスイ

ジン「…………あ、お兄ちゃん? うん、ジン。こんな朝早くにどうしたの?」

ジン「元気だよ? うん。ちゃんと仕事してるよぉ。うるさいなあ、余計なお世話」

ジン「そんなんだからお兄ちゃんだって三十路手前で彼女できないんだよ」

ジン「ハイハイ、二〇代後半になってまで愛嬌なんて必要ありません。それ昔の話でしょ!? 今関係ないじゃない!」

ジン「もー……で、何の用? えっ、住所? うん、うん……えー、いいよぉ、近いうちに自分で取りに行くから」

ジン「ホントに行くって。え? そんなわけないじゃん。私、弁護士だよ? 今時危ない事やったって碌な事にならないもん」

ジン「大丈夫だから。本当。暫く連絡しなかったくらいで心配し過ぎよ。だからあれは携帯壊しちゃったんだってば」

ジン「うん。うん。分かってる。お兄ちゃんこそ気を付けてね。最近はハチュウ人類の襲撃も多いから」

ジン「お父さんとお母さんの事、お願いね。うん、よろしく言っといて。うん、じゃあね」

ピッ

ジン「ふー……危なかった。住所なんて言ったら、何処にいるかバレちゃう」

ジン「お兄ちゃんってば、無駄に勘が鋭いから、下手に情報与えたたらすぐに突き止めてくるかもしれないし」

ジン「言えないもんねぇ、妹がこんな所でロボットのパイロットやってるなんて」スイスイ

ペンポンッ

ジン「お、ニュース…………わはー」


『「ゲッターロボ」は敵か味方か! 激化する反対運動』

『「ゲッターロボ」の戦闘で住居を破壊された国民の怒りの声』


ジン「しかも、世間から非難轟々の『ゲッター』だもんなー……卒倒しちゃうよなー……」


『ハチュウ人類と戦う傍ら、破壊活動に特に勤しむのは白いゲッターロボ、「ゲッター2」だろう』

『水道、ガス、電気などのライフラインの大半を地中に埋め込んでいる現代では、ドリルを使って地中に潜る特性はそれらの寸断以外に他ならない』

『とりわけ目立つのは、戦闘時に垣間見えるパイロットの残虐性だ』


ジン「…………」


『我々の命運をこのような異常性の持ち主に委ねて良いものか。国民の糾弾は止まない』


ジン「ハア…………しょーがない。ご飯たーべよ」

 ―― 食堂 ――


ジン「はーぁ……」パク

ジン(いつもより味がしないなあ……)モグモグ

クマ「ジンー!」キュムキュム

ナガレ「よっ」

ジン「あら、クマちゃん、ナガレ。おはよう」

クマ「おはようクマ。もう、朝の日課は終わったクマ?」

ジン「ええ、起きてすぐにね。そのくらいしか時間が無いから」

ナガレ「朝っぱらからよくも走り回れるな。寝ててーよ、俺は」ガシャンッ

クマ「ナガレ、食器は静かに置くクマ!」

ナガレ「へーへー」

ジン「あんたは夜更かしし過ぎなのよ。ゲッターパイロットとしての責任感ってのをちゃんと持ちなさい」

クマ「まったくクマ。昨夜だって日付が変わってもまだ起きてたクマ?」

ナガレ「それを知ってるお前も同類だぜ」

クマ「さっき健康管理士さんが愚痴ってたクマ」

ジン「ナガレの性格を考えれば大体想像できるし」

ナガレ「余計なお世話だっつーの……!」ガツガツ

クマ「戦闘中に居眠りとかしないでほしいクマ」

ナガレ「ふふはほんはほッ!」

ジン「ちょっとカス飛んだ……」

クマ「ホントにまったくクマ……それで、ジン。どうかしたクマ?」

ジン「え?」

クマ「なんだか、元気がないように見えたクマ」

ナガレ「ング……遠くからでもよーく見えたぜ。生理か?」

ジン「…………フッ。なんでもないわよ、クマちゃん」

クマ「嘘じゃないクマ?」

ナガレ「お前こそ無理してぶっ倒れんじゃねえぞ。邪魔臭ェから」

ジン「心配無用よ。これでも私、二〇年間病気も怪我もした事ないんだから」

クマ「……分かったクマ。でも、疲れたり辛かったりしたら、ちゃんと言ってほしいクマ」

ジン「ええ。でも、ありがとう。それとナガレ?」

ナガレ「あん?」

ジン「アンタ、次にデリカシーない事言ったらキンタマ引き千切るから」

ガタガタッ

キュッ

ナガレ「お前、飯食ってる時にそんな事言うなよ……」キュッ

クマ「同意だけど、元はナガレの所為クマ。自業自得クマ」

ナガレ「はー、食った食った。今日はなんか予定あったっけか?」

クマ「今日は一日自由行動クマ」

ジン「自由行動って言っても、申請も無しに勝手に外に行かないでよ」

ナガレ「自由が鼻で笑えるな」

ジン「仕方ないわよ。任務が任務だもの」

クマ「勝手に出かけて行って居場所が分からない時に、メカザウルスが襲ってきたら大変クマ」

ジン「特にナガレは通信機とか持って行かない癖があるんだから、それくらいはしっかりしなさいよ?」

ナガレ「うるっせーなー! 今日はどこにも行かねえよ、行く気も無くなった!」

ジン「別に行くなって言ってるわけじゃないんだけどね」

クマ「ルールさえ守れば良いのに、ナガレは無法者だから色々言われるんだクマ」

ナガレ「ケッ、やってられっか!」

クマ「ジンはこれからどうするクマ?」

ジン「襲撃が無ければ、部屋でゆっくり過ごそうと考えてるわ。クマちゃんは?」

クマ「早乙女博士のお手伝いクマ!」

ナガレ「ジジイの手伝いって……お前に手伝える事なんてあんのか?」

クマ「伊達に早乙女博士の傍で過ごしてないクマ。普通の人間よりも役立つ自信があるクマ」

ジン「そう言われると、当然な話ね。確かに私やナガレが手を貸すよりよっぽど息が合ってるだろうし」

ナガレ「俺ァそもそも誰かの手伝いなんて面倒だからヤだぜ」

ジン「ほーら話にならない」

ナガレ「うるせぇ。喧嘩売んな」

クマ「きっとナガレにもできる事があるクマ。じゃあ、クマはこっちクマ」

ナガレ「おう、さっさと行けよクマ公」

ジン「じゃあね、クマちゃん」

クマ「また後でクマ!」

キュムキュムキュム……

ナガレ「……さーてと、ンじゃあ俺は適当にブラつくかね」

ジン「ええ…………ふふっ」

ナガレ「なんだよ」

ジン「前に比べて、クマちゃんへの当たりが柔らかくなったなと思って」

ナガレ「チッ、うるせーな」

ジン「別に咎めてるわけじゃないんだから、不機嫌になる必要ないじゃない」

ナガレ「余計なモンは余計だろうが。黙ってりゃいいモンを口に出しやがって」

ジン「気楽に口に出せるだけ、私は今の方が良いわ」

ナガレ「あーそうかよ…………ジン」

ジン「なによ?」

ナガレ「お前、マジでなんかあっても、絶対に俺に言うなよ。頼るならクマ公にしとけよ」

ジン「…………あら、なんでナガレは駄目なのかしら」

ナガレ「俺にかったるい事させんな。じゃーな」



ジン「…………そうね。『二人』が心配してくれる事だし」

ジン「気にしないようにしなきゃ」

 ―― ジンの部屋 ――


ジン「……………………」カタカタカタカタ

ジン「…………この判決は納得いかないわね」

ジン「……………………」カタカタカタカタ


ジン「……………………」カタカタカタカタ

ジン(あー、この犯人捕まったのね…………)カタカタカタカタ


ジン「……………………」カタカタカタカタ

ジン「…………あ、お昼過ぎてる」


ジン「……………………」カタカタモグモグ

ジン(…………やめよ、食べるのに集中しよ)アムアム


ジン「あーあーどのチャンネルもゲッターの批判ばっかりだぁ……」ピッピッ

ジン「……………………」カタカタカタカタ

ジン「…………」カタ

ジン「ふぅ。んあぁー……ちょっと、休憩しよー……」

フラフラ

ボフッ

ジン(あー、久々のデスクワークって言うか、長い時間パソコンに向かい合ったから体が……)

ジン「あー……うー……」ゴロゴロ

ジン(メカザウルスの襲撃が無いオフって、暇ねー。まあ、騒がしくないならそれに越した事はないんだけど)

ジン(今、クマちゃんとかナガレとか、何やってるんだろうなぁ)

ジン「…………ちょっと、散歩しよ」ガバッ

ジン(クマちゃん、早乙女博士の手伝いって言ってたな。まだやってるのかな)

ジン(でも博士の研究室にはいなかったし、どこだろ)

所員A「あ、ジンさん。お疲れ様です」

ジン「あ、お疲れ様です。……そうだ、早乙女博士って今、どこにいるか分かりますか?」

所員A「博士ですか? ゲットマシン格納庫に居ますよ。あ、でも今は……」

ジン「何か、都合が悪いですか?」

所員A「ゲッターの改造をしているんで、忙しいと思いますよ」

ジン「そうですか……ゲッターの改造?」

所員A「ゲッタートマホークの搭載数を増やすそうです。ただ、かなり難航していて」

ジン「ああ、前から言っていたような…………そんなに難しいんですか」

所員A「改造が中々成功しないところを見ると、そうみたいですね。ゲッターの整備専門じゃないんで、よくは知らないんですが……」

ジン(確かに、改造するって言うのは良く聞くけど、実際に性能が変わったって話はあまりしてないわね)

所員A「ま、そんなわけで、早乙女博士は格納庫です」

ジン「分かりました、行ってみます。呼び止めてごめんなさい」

所員A「いえ! 俺で良ければ頼ってください」

ジン(ってわけで取りあえず来たけど、なんか騒がしいな……)


早乙女「…………今だ、ゲッター線量を上げろ!」

整備士「了解! ゲッター線増幅ッ!」


ググ……ギュィイイイインッ


ジン(ゲットマシンが光ってる……何やってんのか全然わからないけど)


整備士「32%……55%…………70%!」


グググッ…………!


クマ「早乙女博士っ! ゲッター合金の変形を確認クマ!」

早乙女「そのまま維持だ!」


ググッ…………

クマ「……早乙女博士! 出力低下してるクマ!」

早乙女「何っ!」

整備士「数値は70%のままです!」

クマ「感じるクマ、ゲットマシンが反応していないクマ!」


ギュゥウウン…………


整備士「くっ……博士! 数値がどんどん低下していきます!」

早乙女「またかっ……!」


ウウゥン…………


整備士「0%…………失敗です」

クマ「早乙女博士、さっきと比べると、定着が甘いクマ。ゲッター線を増やすより、減らしてみるのはどうクマ?」

早乙女「…………もう一度やるぞ。クマ、手伝ってくれ」

クマ「任せるクマ!」


ジン(本当に忙しそう…………邪魔するのは、悪いな)

カツカツカツカツ

ジン(クマちゃんって、本当に『ゲッター』について詳しいのね。知識だけじゃなくて、感覚的にも)

ジン(因縁もあるし、ゲッターに対する執着や想いはそりゃあ強いわよね)

ジン(世間にあんな風に言われて、我慢できるはずないのに…………)

ジン「それに比べて私って、子供だなあ……」


ナガレ「オリャアアアッッ!」

ダァンッ!

歩兵A「ぐはっ!」


ジン(……ナガレはあそこか。確か、トゥルーパー用の戦闘訓練室だったはず)

ジン「なにやってんだかあのバカは……まあ、好きそうなところだけど」ヒョイ


ナガレ「オラ、どうした! 次かかってこいやァ!」

???「なら次は俺たちだ」

ナガレ「ン? ……お前らは、たしか……えーっと…………」

黒服A「フッ、まあ憶えてなくとも仕方あるまい」

黒服B「だがお前をスカウトしに行った際、刃物まで取り出して負けた屈辱……」

黒服C「それを活力とバネにして、我々は再び己を鍛え直した!」

ナガレ「あー、あの時の黒服連中か。お前らトゥルーパー所属だったのか」

黒服A「行くぞ一文字 流! このコンドウ、負けはせんーッ!」

黒服B「続けオキタ! イヤーッ!」

黒服C「でやぁああああっ!」

ナガレ「だからお前らな……」

ヒョイヒョイ

ナガレ「どりゃあッ!」

バキッ!

黒服C「ぐわっ!」

黒服A「隙アリーッ!」ブンッ

ナガレ「だあっ!」

ガキッ

黒服A「ぐう!」

ナガレ「オラオラ!」

ドカッ! ゴキャッ!

黒服B「べはっ!」

黒服A「ぎゃっ!」

ドサッ……

ナガレ「ワンパターンが過ぎるんだよ。動きは良くなってもそれ以外何も変わってねえじゃねーか」

ナガレ「…………気絶してんじゃねえよ!」

ゲシッ

黒服A「ぐあっ! うぐっ……!」

ナガレ「おいおい、実戦部隊が雁首揃えてこんなモンかよ。前から思ってたけどお前ら必要ねえだろ」

黒服A「ぐぐ、くそっ……」

ナガレ「俺だけでハチュウ人類なんざ叩きのめせるぜ」

ジン「必要ないわけないでしょ、馬鹿ね」

ナガレ「ジン。おい入るなら靴脱げよ」

ジン「分かってるわよ」ヌギヌギ

ナガレ「それで何だよ、なんか文句あっか」

ジン「大ありね。メカザウルスが襲ってきたらゲッターロボが出撃するけど、同時に相手の歩兵が出てきたら?」

ジン「ゲッターロボでちみちみ虱潰しでもする? 研究所に侵入されたらどうするわけ?」

ジン「流石がゲッターを降りて戦うなら、誰がゲッターを動かすの?」

ナガレ「ぐうっ……! だけどこいつらが雑魚なのは事実だろうがっ」

ジン「実際の戦闘では防具と銃器で武装して遠中距離で戦うから近接戦闘の力量なんてそうそう関係ないわよ」

ナガレ「ぐうっ……」

ジン「馬鹿ねアンタ。ホントにアンタ馬鹿ねー」

ナガレ「黙ってろこのクソボケ!」

ジン「ほらほら、みんなの邪魔しないの。あんたが居たってなんの薬にもならないんだから」

ナガレ「チッ……そうだ。折角だからお前も付き合えよ」

ジン「は?」

ナガレ「何だかんだお前とは口で争っても実際にやり合う事は無かったからな」

ジン「嫌よ、疲れるのに。大体にして初めて会った時のテストだかなんだかで叩きのめしてあげたじゃない」

ナガレ「ペンはノーカンだろ」

ジン「そんなアンタ都合のルールなんて知らないわよ」

ナガレ「素手だったら負ける気がしねえぜっ!」

ジン「人の話聞きなさいよ」

ナガレ「お前らこのアホ共邪魔だから片付けろ」

ジン「だから……」

ズルズルズルズル…………

歩兵B「橘さん、やっちゃってください!」

ジン(……仲間を引き摺ってまでする事なの、これ。かたき討ち?)

「女だろ? いくらゲッターロボに乗れるからって、大丈夫なのか?」

「知らないのか。俺たちが手も足も出なかったナガレが、それこそマジで手も足も出なかった相手だって話だぜ」

「ゲッターの乗り回しっぷりから、相当ヤバいのは間違いない」


ジン(聞こえてるっての!)

ジン「ちょっと、決闘は法律で禁じられているのよ! 明治22年法律第34号、通称「決闘罪に関する件」!」

ジン「決闘を申し込んだ者、受けた者、立会人、場所提供者その他諸々、関わった人間全てに適用される!」

ジン「この場に居る全員、しょっ引かれたいの!」

ナガレ「だから決闘じゃなくて、実力の確認だっつーの。空手とか柔道の試合と大差ねえよ」

ジン「物は言いようにも程があるわよ。あのね、仮にも法を操る人間が、罪に触れるような真似をすると思うの?」

ナガレ「ハチュウ人類相手なら何しても良いとかしょっちゅう発狂するとか、本性極悪人のくせによく言うぜ」


ジン「…………」ブチッ


ナガレ「お?」

ジン「侮辱罪に名誉棄損罪は虚仮威しや伊達じゃないのよ。れっきとした罰として存在する」

ジン「そして罰を犯した人間は裁かれなければならない。身内であれば、躾けなければならないわ」

ジン「その命知らずで無鉄砲な性根を叩き直してあげる」ポキポキゴキ

ナガレ「そうこなくっちゃ面白くねえ。いっぺん、どっかしらでテメエに勝っておかなきゃ、俺の腹の虫が治まらねえんだ」

ジン「なら、無理ね」

ナガレ「抜かせ。眼鏡、外さなくていいのかよ」

ジン「ええ。そんな手間も必要ないわ」

ナガレ「おいおい、叩き壊すぜ?」

ジン「できもしない事、あまり大勢の前で言うものじゃないわよ」

ナガレ「嘗めんなよォ!」ダッ

ダダダッ

ナガレ「ウオオ!」

ジン「…………フッ!」ズオッ

ガシッ

ナガレ(かっ、顔を掴まれただと!? 早すぎてまるで反応できねえ……っ!?)

ジン「はあっ!」グンッ

ナガレ「オッ――――」

ゴシャッ!

ナガレ「おぶぁっ……!」

ドサッ

ジン「ふぅ…………」


「なんだ今の……早すぎて全然見えなかった」

「って言うか、頭から叩き付けられたぞ、ナガレの奴。大丈夫か……?」

「大丈夫だろ、畳だし、ナガレだし……」


ジン「これ、勝敗はどうやってつけるの?」

ナガレ「ン、なもん……」ググ……

ダァン!

ナガレ「ブッ潰れるまでに決まってんだろ!」

ジン「まあ、そう言うでしょうね」

ナガレ「頭から床に叩き付けやがって、畳じゃなかったらどーすんだよ!」

ジン「ナガレだったら大丈夫かと思って。静かになるならそれでいいし」

ナガレ「テメエ……マジで叩きのめす!」

ナガレ「どりゃあ!」

ジン「…………」スッ

スカッ

ナガレ「うおおおおっ!」

スカッ スカッ


「すげえ……ナガレの連打を事も無げにかわしている」

「ナガレの奴は技術もクソも無いが、場数を踏んでる分だけ良い動きしてるってのに……!」


ナガレ「だあああああああっ!」

グワッ!

ジン「フッ!」

ガッ!


「ふ、防いだ! あの上段蹴りを!」

「どんな反射神経してやがるんだ!」


ナガレ「甘ェ!」グッ

グワオッ!

ナガレ(防がれたままに、もう片方の脚で後ろ回し蹴り! これが通用しなきゃ……!)

ジン「…………」スッ

ガシィッ!

ナガレ「ばっ…………!?」

ジン「フンっ!」グイッ

ナガレ「うおっ!?」

グオオッ!

ナガレ(人間一人を片手でぶん回すって、マジでこいつどんな体してんだよっ!)

ジン「やああアアアッ!」ブン

ずだぁんっ!

ナガレ「ごばァッ!」

ジン「ハアッ!」

ズドッ!

ナガレ「おげぇっ…………!」


「床に叩き付けてからの腹にストンピング攻撃……」

「えげつねえ……!」

ナガレ「がはっ……こ、の……!」ググ

ジン「…………フッ!」

ガシッ グイッ

ナガレ「うぐあ……!」

ナガレ(こ、こいつ、首を絞めてきやがった……息が……!)

ギリギリギリ

ナガレ「か、はッ……ジ、ンンンッ……!」ジタバタ

ジン「私、素人だから、死ぬ前に降参した方が良いと思うわ」

ナガレ「ふ、ザ……け…………な……!」

ジン「なら仕方ないわね」ググ

グググッ

ナガレ「グウッ……!」

ググッ

ナガレ(あ、トぶ――――)ガクッ

ドサッ……

ジン「…………ふう。これからは身の程を弁える事ね、馬鹿餓鬼」

ジン(やった事も無い絞め技やったけど、死んでないよね?)

ジン(…………心臓は動いてるからまあ大丈夫か。ほっといたら後遺症があるんだっけ)

ジン「ほっ」トンッ

ナガレ「――――うあ」

ナガレ「ハッ!?」ガバッ

ジン(あ、起きた)

ナガレ「…………」

ジン「ナガレ? 大丈夫? 意識ちゃんとある?」

ナガレ「…………」スッ

スタスタ

ジン「ちょっと、ナガレ」

ナガレ「うるせえ」

スタスタスタ……

ジン(……やり過ぎたわね、確実に)

ザワザワ

「マジかよ……ナガレが完全に負けたぞ」

「橘さんヤベえ……これがゲッターパイロットかよ……」

「本当に素人かよ、絞め技なんて使うか?」

「やっぱり普通じゃねえんだ。戦ってる時だって……」

「おいバカ、聞こえるぞ!」


ジン「…………迷惑かけて、ごめんなさい。ナガレには後できつく言っておきます」


「あ、いや、その……」

ジン「気にしないでください。では、失礼します」

…………カツカツカツ


「おいどうすんだよ、怒らせちまったじゃねーか!」

「だ、だってよぉ!」

「バカお前らまだデケェ声出すな!」

 ―― ジンの部屋 ――


ジン「はーぁ」

ボフッ

ジン「あーあ、やっちゃった……」

ジン(あんな安い言葉で挑発されて乗っちゃうなんて……カルシウム不足かしら)

ジン「…………だったら、良かったのになあ」

ジン(どう考えても、今朝見たニュースが頭から離れないのが原因よね)

ジン(私って、こんなにメンタル弱かったのね。まあ、強かった自覚があったわけじゃないけど)

ジン(それとも司法に関わってたから? 悪い事してるって意識が後から出てきて、すごい辛いのよね)

ジン(それこそ、ナガレみたいな唯我独尊の悪党にでもなれれば気が楽なんだろうけど)

ジン「それだけは絶対ヤだわー……」


『本当に素人かよ、絞め技なんて使うか?』

『やっぱり普通じゃねえんだ。戦ってる時だって……』


ジン(…………ねえ、『もう一人の私』)

ジン(私はまだ、あなたの事を受け入れられないみたい)

 ―― 翌日 ――


ズズゥン……ドッガァアン!

メカザウルスA「ギリリリリリリリッッ!」

メカザウルスB「バウゥッ!」


バオンッ

ナガレ『チィッ、ボケ共が! 街中でドンパチ暴れやがってェ!』

クマ『被害が拡大する前に時間重視で一気に仕留めるクマ! ゲッター2クマ!』

ジン「ま、待って! 今ならゲッタービームで焼き払っても被害は大差ないわ、そっちの方が……」

ナガレ『見たところ片方は頑丈でもう片方は俊敏な奴だ。ゲッター1じゃ振り回されるだけだぜ!』

クマ『クマも同意見クマ。それにもしもゲッタービームを回避された後の隙を考えると、それこそ被害が広がるかもしれないクマ』

ジン「だけど!」

ナガレ『四の五の抜かすな! オープン・ゲェット!』


ガチャン! バシュゥン!

ギュオンギュオン ギュオン

ジン「ちょっと……もう! 分かったわよ!」グイ

ギュオン!


ジン「チェンジッ! ゲッター 2 !」ポチッ


ガシィン! ガシィン!

グググッ……グイーン


ヒュー……

ジン「こうなったら落下の速度も乗せて、一気に貫いてやるッ!」

ギュイイィィーン!


メカザウルスA「ギリリリィッ!」ズシィン

メカザウルスB「バウゥッ!」バッ


ナガレ『逃げるぞ!』

ジン「でも一匹はトロい! もう、遅い!」

ギュイイィィーーーンッ!

ジン「ヤアアァーーーッ!」

メカザウルスA「ギリリリリリリッ…………」


ズブッ!


ズババババババァッ

メカザウルスA「ギリリリリリリリリリィッッ!」

ジン「フゥー、フゥー…………!」

ジャリジャリジャリジャリジャリ!

ジン「フ……フヒ――――――――」

ギャリギャリギャリギャリギャリ!

ジン「ヒヒャヒャヒャハハハハハハァッ!」


ナガレ『だあ、このボケ女が、さっそくイカれやがった!』

クマ『ジン、もう一匹が来るクマ!』

メカザウルスB「バウゥッ!」バッ

グワッ!

ジン「へはァ…………」グイ


ユラリ…………


ザッ……


ザザザザザ――――――――

ナガレ『どぅうおおおおおおッ! 今日はまた粗いな…………!』

クマ『でも、これならいけるクマ!』

ズサッ

ジン「ギヒャハははッ!」

ギュイイィィーンッ

メカザウルスB「バウゥッ!」

ジャキッ……!

ナガレ『こいつ、ゲッター2の速度に反応して爪を……!』

クマ『ジン!』

メカザウルスB「バウゥゥッ!」

グオオッ!

ジン「フヒッ」グイ


ザッ――――


スカッ

メカザウルスB「バウッ!?」


ザザッ――――ズサッ


メカザウルスB「バウッ――――」ピクッ

ジン「ヒャハアッ!」

グワッ 

ガシィッ!

メカザウルスB「バウッ……!」


クマ『やったクマ! ゲッターアームで掴まえたクマ!』

ナガレ『もたもたすんな、さっさとやっちまえ、ジン!』

ジン「フゥッ、フゥッ……!」



『とりわけ目立つのは、戦闘時に垣間見えるパイロットの残虐性だ』

『我々の命運をこのような異常性の持ち主に委ねて良いものか。国民の糾弾は止まない』



ジン「ギヒッ、ヒヒャヒャヒャヒャヒャヒャハハッ!」グイッ


ググッ……ズガァン!

メカザウルスB「バウッ……!」


クマ『ジン! ゲッター2の力じゃ地面に叩き付けても意味ないクマ!』

ナガレ『クソがッ……もうこうなったら飽きるまで待つしかねえ』


ジン「グヒィッ!」グイッ


ズルズルズル……ガガガガガガガガガッ!

メカザウルスB「バウゥッ…………」

ジン「ハアアアアァッ…………アアアッ!」

ググッ……ブンッ!

クマ『メカザウルスを投げたクマ……!?』

ナガレ『ばっ……ジン、お前! そっちにはまだ無事な建物が!』


ずがああぁんっ!

メカザウルスB「バウウウゥッッ!」


ジン「アハハハハハハハ! ギャハハハハハハッッ!」

ザザッ――――


メカザウルスB「バウゥ…………」ガクガク

ギュイイィーーン……ドズッ!

メカザウルスB「バウッ……!」

ジン「うぉおおおおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおっっっ!」

ズガガガガガガガッ!

ズズゥン…………


ナガレ『ドリルで貫いたメカザウルス諸共、次々と建物を薙ぎ倒してやがる……』

クマ『いつものジンの暴走と桁が違うクマ! どうしたクマ!?』

ナガレ『どうしたもこうしたもねえだろ! クマ! ジジイに連絡して強制オープンゲットだ!』

クマ『分かったクマ!』

ギュイイィィィーーーーーンッ!

ジン「ヒヒャハハハハハハハハッッ!」

ガガガガガガガガガガガガッ!


ナガレ『おいおいついにメカザウルス関係なしに暴れ出したぞこのクソ馬鹿女!』

クマ『ジン! 止めるクマ! 『ゲッターロボ』でそんな事をしちゃ駄目クマ!』

ナガレ『テメエいつまでトチ狂ってやがる、ジン! そんなザマでよくも人の事を言えたなァ!』


ジン「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

ズガガガガガ!

ジン「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

ごしゃあっ!

ジン「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

バキバキッ……ガリガリガリガリッ!


ナガレ『止めろジン! ジンーーーッ!』

ギシッ……


クマ『――――ジン! 後ろからっ……!』


メカザウルスA「ギリリリリリリリリリィィッッ!」グワァッ


クマ『まだメカザウルスが生きてるクマっ!』


ジン「アアアアアアアアアアアアアアアアアアア――――――――」



―――

――――――

―――――――――

 ―― ジンの部屋 ――


ジン「……………………」ポケー


『昨日のゲッターロボの暴走により倒壊した家屋・建築物は四〇棟以上に上るとされており』

『ご覧の通り、メカザウルスの物とは異なる生々しい暴走の傷跡が残されています』

『住居を失った人々からは、以前にも増して、ゲッターロボに対して強い批判的な意見が出ています』


『家を返せ、この悪魔! 悪魔だよ本当に!』

『本当にね、許せないですよ。メカザウルスよりも質が悪いです』

『こわかった。もうたたかわないでほしい』


『このような戦闘が多く続く中、ゲッターロボの活動停止を求める声が強くなっています』

『また、問題視されているゲッターロボのパイロットの精神不安について、どちらも早乙女研究所は黙秘を続けています』

『現場からは以上です』


ジン「……………………」スッ

ピッ

プツン…………

ジン「……………………」フラ

ドサッ ボフッ

ジン「……………………」

ジン「……………………」

ジン「……………………」

ジン「……………………」

ジン「……………………」ギリ

モゾモゾ

ボフッ

ジン「ぶわあああああああああああああああああああああああああ!」

ジン「わああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

ジン「わあああああっ…………」

ジン「…………」

ムクッ

ガシッ

ジン「ッ……!」ブンッ

……ボフッ

ジン「……………………」

ジン「なに、してんだろ、私……」

カツ カツ カツ……

ジン「……………………」


所員A「今回ばっかりはなあ……フォローできねえよな」

所員B「流石にあの破壊活動はな。橘さん、やっぱり頭のネジが飛んでんだな」


ジン「…………」ピタ


所員A「避難は終わってたから、直接の死傷者が居なかったのが唯一の救いだな」

歩兵A「つっても、下手したらあのままゲッターロボが破壊されてたかもしれないんだぜ?」

所員B「ああ。クマの通信が間に合って、土壇場で強制オープン・ゲットができたから何とかなったものの、な」

歩兵B「メカザウルスをどうにかできていたとして、あのまま暴れてたら、メカザウルスよりも被害を出していたかもしれねえし」

歩兵A「いや、ヤベえのはゲッターに乗ってるからってだけじゃねえ。あのナガレを、生身で叩きのめしたんだぜ」

所員B「あー、あれな。首絞めて落としたってやつ。素人が、正気の沙汰じゃねえよ」

所員A「今まで何だかんだまともだと思っていたけど、まあ、早乙女博士の言葉を借りるならクズだったって事かなあ」

所員B「あんまり言いたくはないけど、な……」


ジン「…………」

カツ カツ カツ…………

カツ カツ カツ

ジン「…………」

コンコン

早乙女「誰だ」

ジン「……私です」

早乙女「…………入れ」


カシュッ


ジン「失礼、します」

早乙女「具合はどうだ」

ジン「芳しくありません」

早乙女「そうか。次の出動までに整えておけ」

ジン「…………はい」

早乙女「それで、何の用だ?」


ジン「ゲッターパイロットを、辞めます」

早乙女「……何故だ?」

ジン「私は、ゲッターロボのパイロットに相応しくありません……」

早乙女「……聞こう」

ジン「ゲッターロボは、正義であるべきです。メカザウルスを打ち倒し、恐竜帝国を滅ぼす」

ジン「ですが、私は、その理念とは正反対にいる……私がゲッターに乗っていると、ゲッターが悪に変わってしまう」

ジン「『ゲッターロボ』の為に死んでいった方々へ申し訳が立ちません。そして、クマちゃんにも……」

ジン「…………私は、ゲッターロボに乗ってはいけないんです」

早乙女「…………ジン。お前はいくつかの大きな勘違いをしている」

ジン「勘違い、ですか?」

早乙女「まず、お前ほどゲッターに相応しい人間は他に居ない」

早乙女「次に、ゲッターロボは正義などではない。生存競争を戦い抜く道具に過ぎん」

早乙女「ワシは、悪だの正義だの、下らない理由で戦う人間など必要としない」

早乙女「そして…………本当にゲッターと人類の末を想うのであればこそ、乗るのだ」

早乙女「『ゲッターロボ』に散っていった者たちに報いるならばこそ、だ」

ジン「…………乗るだけならば、できます。でも、もう……戦うのは」

ジン「今の私は、『私』を抑えられない……!」

早乙女「それはお前の一存では決められない。襲ってくるメカザウルスに合わせて形態を変えるのがゲッターだ」

早乙女「お前が拒もうと奴らは襲ってくる。お前は戦わなければならない」

ジン「…………コラテラルダメージが増えても、ですか?」

早乙女「何を犠牲にしても戦え。それが今、人類が為すべき事だ。お前とて例外ではない」

ジン「…………」ギリ

ジン「…………分かりました。失礼、します」

カシュッ


早乙女「…………四年も経って、娘の扱い方など忘れてしまったよ。和子、ミチル……」

ジン「……………………」ポケー

ぴとっ……

ナガレ「よっ。珍しいじゃねえか、休憩所でのんびりか?」

ジン「…………冷たいんだけど」

ナガレ「気ィ抜けてんなァ。飲めよ」

ジン「何よ」

ナガレ「ビール。飲めんだろ」

ジン「…………気分じゃないし。第一、メカザウルスがいつ襲ってくるかも分からないのに、酒盛りなんてできるわけないでしょ」

ナガレ「三五〇ml缶一本ぐらいで酔っ払うかよ」カシュッ

ジン「って、こら」スッ

ヒョイ

ナガレ「あっ、てめっ、何しやがる。返せよっ」

ジン「アンタこそ何してんのよ、未成年でしょうが」

ナガレ「酒なんざ昔から飲んでるっつの。今更関係ねえよ」

ジン「ハァ……未成年飲酒の常習。禁止の罰則対象は自分じゃないからって……しかも、買ったのナガレ?」

ナガレ「だからなんだよ」

ジン「なら販売者も違反ね、まったく……これは没収」

ナガレ「ふっざけんな!」

ジン「ふざけてるのはナガレの方よ。日本国民なら日本の法律を守りなさい」

ナガレ「ったく、こう言うトコだけはいつだって変わんねえんだから面倒臭ェな」

ジン「当然よ。これでも弁護士だったんだから」

ナガレ「止めちまえ、そんな心構え」

ジン「お生憎様。アンタみたいなルール度外視の迷惑野郎を適正な法で裁きたくて、進んだ道だもの」

ジン「それに、その迷惑野郎が未成年なら正しい道に戻すのは大人の役目なのよ」

ナガレ「そーかよ」

ジン「…………そうよ」

ナガレ「…………」

ジン「…………」

ナガレ「…………調子悪ィならよ、クマ公に言えっつったろ」

ジン「大丈夫よ、私は……」

ナガレ「だから、それで俺に迷惑掛けんなって、それも言ってんだろ」

ジン「掛けてないじゃない」

ナガレ「笑わせんな。結局あの戦闘だって、最後は俺がゲッター1でお前のケツ拭いてやったんじゃねえか」

ジン「それはっ…………ごめんなさい」

ナガレ「謝って済むかよ。謝るくらいなら最初からするなってんだ」

ジン「…………」

ナガレ「俺は赤の他人の不幸だの責任だの面倒臭ぇモン背負わされるのはまっぴら御免だぜ」

ナガレ「だからよ、頼れっつってる奴がいるなら、そっちの方に行ってほしい訳だ」

ナガレ「なあ、ジン。俺はお前の事なんざどうだっていいし、内面が超クズで、どこの何をぶっ壊したってンなぁこたァ知らねえよ」

ナガレ「だけどよ、そんなお前を心配してる奴がいてよ、そいつに本当に迷惑かけたくないってんならよ」

ナガレ「そいつと顔と顔向かい合って話すのは、悪い事じゃないんじゃねえか?」

ジン「…………これは、捨てておくわ」スッ

ナガレ「置いてけ」

ジン「駄目よ。また新しいのを買い直しても、没収だから」

ナガレ「ケッ、じゃあせいぜい見つからねーようにするぜ」

ジン「見つかった時を楽しみにしなさい」

ナガレ「ジン」

ジン「なに?」

ナガレ「クマ公は四階フロアのコンピューター室に居るぜ。メカザウルス襲撃の報告書を書いてるんだとよ」

ジン「……そう」

ナガレ「今まで襲ってきたメカザウルスの情報なんざ、頭に叩き込んでおけばいいのに、面倒な事するよなぁ」

ジン「…………ナガレ」

ナガレ「なんだよ」

ジン「ありがと。見直したわ」

カツ カツ カツ カツ……


ナガレ「…………なァんで俺がこんな事しなきゃなんねぇんだよ、ジンのボケクソが」

カツ カツ カツ カツ……

ジン(コンピューター室……ここね)

カラカラ……

ジン(クマちゃんは……いた)


クマ「胴体を貫かれても生きていたクマ……この部分に生体部品を置いていないクマ?」ブツブツ

クマ「もしくは全部を機械に変えて、重要なパーツを二つ作って…………」ブツブツ


ジン(…………話しかけたら、悪いわね。戻ろう……)


クマ「…………クマ?」ピクピク

クマ「あっ、ジン!」

ピョンッ

ジン「あっ…………」

キュムキュムキュム

クマ「全く気付かなかったクマ。いつからそこに居たクマ?」

ジン「いえ、さっき。でも、クマちゃん集中していたみたいだから……邪魔よね、帰るわ」

クマ「いやいや、大丈夫クマ。クマもちょっと疲れたから、休憩クマ」

クマ「それで、クマに何か用クマ?」

ジン「用、ってわけじゃなんだけど……昨日の、戦闘の事で」

クマ「あっ、そうだったクマ! 具合は大丈夫クマ?」

ジン「ええ、それは大丈夫」

クマ「良かったクマ。今回はいつもと違うから、何か負担が掛かっていないか心配だったクマ」

ジン「体の方は大丈夫。それで、ごめんなさいね。あんな事しちゃうなんて」

クマ「気にする事無いクマ。普段から厄介なナガレに比べたら可愛いものクマ」

ジン「……そんな事、無いわ」

クマ「ジン、あまり思い詰めちゃ駄目クマ。メカザウルスを倒せたんだから、今はそれで良しとするクマ」

ジン「いいえ、良くないわ。あれは、私の心の弱さと甘さが原因だもの」

クマ「どんな人間でも弱い所を突かれれば痛いクマ」

ジン「痛いのは私じゃない、から…………」

クマ「痛くないなら普通はしょげないクマ」

ジン「…………」

クマ「立ちっ放しも何クマ、座るクマ」

ジン「……ええ」

クマ「よいしょ…………クマ」ポフッ

ジン「…………」ギィ

クマ「さて……ジンは、クマが前に言った言葉をまだ憶えてるクマ?」

ジン「どれの事かしら……?」

クマ「『本能は、もう一人の自分クマ。ちゃんと、仲良くしてあげるクマ』」

クマ「『そうしたら、いざと言う時、絶対に助けてくれるクマ』……そう言ったクマ」

ジン「憶えているわ。でも…………仲良くできたつもりだったんだけどね。駄目みたい」

クマ「勿論、簡単な話じゃないクマ。それこそ、一生を終えるその瞬間まで分かり合えないかもしれないクマ」

クマ「それに、クマのその言葉が本当に正しいかどうかなんて、分からないクマ」

クマ「だけど……もし分かり合えても、受け入れられなくても、今回の事は、ジンは悪くないと思うクマ」

ジン「……どうして? あんなに許されない事をしたのに?」

クマ「クマは、ジンは間違っていないって、絶対に正しい事しかしないって、思っているクマ」

ジン「信じてくれているのね。嬉しいけど……でも、今回の事は正しくないわ」

クマ「そうとも限らないクマ」

ジン「え?」

クマ「ちょっと切り込んだ話になるクマ。ジンは、どうしてあの時、いつもより暴走したと思うクマ?」

ジン「…………自業自得よ」

ジン「ゲッターロボが世間から批判されて、私の本性がバッシングを受けて、それでへこんでいただけなの」

ジン「それで終わっていれば良かったんだけど、私は……世間に八つ当たりしたんだわ。最低よ」

クマ「んー……そうかもしれないけれど、違うかもしれないクマ」

ジン「どうして?」

クマ「言っても、多分ジンは納得できないと思うクマ。でも、頭に入れておくだけで違うと思うクマ」

クマ「ジンの本能は、ジン自身を守ろうとしたんだクマ」

ジン「私を、守る?」

クマ「敵意を向けられたなら自己防衛をするのは当然の事クマ。力があるなら、敵意を排除するのは正当な権利クマ」

クマ「加えて相手は匿名の不特定多数クマ。それなら、手当たり次第に敵に関わるものを壊すしかないクマ」

ジン「そんなの……それこそ許されない事よ!」

クマ「その通りクマ。人間が構成した社会で生きるなら、それは許されない事クマ」

ジン「なら、結局悪いのは私よ……」

クマ「話の肝はそこクマ」

クマ「人間社会を構成するのは道徳倫理と積み重ねられた司法クマ」

クマ「ジンが法律に携わり、何が正しくて何が悪いか、何が許されないか、それをよく理解している事をクマは知っているクマ」

クマ「その性根が限りなく善である事は明白クマ。そんなジンを、その事実を知らない人間が責める事は、悪い事にならないクマ?」

クマ「皆が寄って集って、正しい事を知りそれに尽くすジンを否定する事は、悪い事にならないクマ?」

ジン「でも、それでも私は、人類社会に敵対するような真似をしたのよ」

クマ「それは順序が逆転しているクマ。ジンが戦わなければ人が死ぬ。だからジンが戦う」

クマ「その戦い方が常軌を逸しているから叩く。それにジンが反撃する」

クマ「この通り、先に手を出したのは向こうの方クマ。ジンの行動は、言うなれば正当防衛か、悪く言っても過剰防衛クマ」

クマ「自分を守るためなら他人を傷付けていいなんて道理は、確かに無いクマ。でも、今回に限って言えばそれはおあいこクマ」

クマ「今回の一件、分かり易く言えば喧嘩両成敗クマ」

ジン「私の罪はそんな軽いものじゃないわ!」


クマ「誰にも真っ当に裁けないクマ」


クマ「ジン。自分ばかりを責めちゃ駄目クマ。自分で自分を否定しちゃ駄目クマ」

クマ「何度でも言うクマ。ジンは悪くない、間違っていないクマ」

ジン「…………ありがとう、クマちゃん。気が参っていて、ネガティブになっていたわ」

クマ「仕方ないクマ」

ジン「少し気が楽になった。そうね、何であれ、しょげているままじゃダメよね」

クマ「その通りクマ! と言っても、ナガレみたいに気にしないでいるのも問題クマー」

ジン「ふふっ……クマちゃん、私、負けないわ」

クマ「その意気クマ!」

ジン「ええ。ごめんね、心配かけさせて……と、作業の邪魔をしてごめんなさい」

クマ「こんなの後回しで大丈夫クマ。クマでよければいつでも相談に乗るクマ」

ジン「頼もしいわ。じゃあ私、部屋で考え直すわ」

クマ「ゆっくり休むクマ。心の疲れが体に出ているかもしれないクマ」

ジン「分かったわ。それじゃあ」

ギィ

ジン「クマちゃんも、頑張りすぎないようにね」

クマ「気を付けるクマー」

 ―― ジンの部屋 ――


ジン「…………まったく、私ってば何やってるのかしら」

ジン「自分の事で他人に迷惑かけて、人に心配させて……」

ジン「ナガレの言葉を借りるワケじゃないけど、自分の事くらい自分でなんとかしなきゃ」

ジン「そうよ、私は一人前の大人なのよ。私がゲッターチームの最年長なんだから」

ジン「私が正しくなくて、しっかりしなくてどうするの……!」


―――

――――――

―――――――――

ジン『…………久しぶりね、『私』』

ジン?『…………』

ジン『夢の中なら会えると思っていたわ。呼んだのは他でもない、話があるからよ』

ジン?『…………』スッ

ジン『来ないで』

ピタ

ジン『昨日のアレ。あれはクマちゃんの言う通り、私を守ったの?』

ジン?『…………』コク

ジン『誰がそれを頼んだ? 誰がそこまでやれって言った? 私はそんな事を望んでいたかしら』

ジン『……いえ、どこかでそれを望んでいたのかもしれない。あなたは私の本性だから。それは認めるわ』

ジン『『あなた』も紛れもない私で、私は残忍で凶悪な気違いよ』

ジン『だからって、それを看過し許容し甘えるほど、私は子供じゃないし弱くも無い』


ジン『私はあなたを拒む。決別する!』

ジン?『…………』

ジン『そんな顔をしても、無駄よ! 私はこれ以上、みんなに迷惑をかけるわけにはいかないの』

ジン『良識ある大人として、踏み外した行動は断じて許されないし、私が許さないの!』

ジン『法と正義に悖るような行為に甘えるなんて絶対に嫌!』

ジン『その甘えが原因で他の誰かが犠牲になるなんて考えたくも無い!』

ジン『正しいのは私であると、胸を張って言える存在でないといけないの!』

ジン『それが元弁護士、現ゲッターロボパイロットである私、橘 神!』

ジン『橘 神は、私よ!』


ジン『私は、私なのよ!』


―――――――――

――――――

―――

 ―― 数日後 ――


ギュインギュイン! ギュインギュイン!

オペレーターA「メカザウルス出現を確認!」

カラン カラン

早乙女「場所は」

オペレーターA「場所、熊本県阿蘇地方!」

早乙女「遠いな……」

オペレーターB「視認敵数、一機! 静止画像出ます!」

早乙女「また市街地か……ゲッターチーム、ゲットマシンに搭乗しているものは応答せよ!」


ナガレ『イーグル号、ナガレ! いるぜ!』

ジン『ジャガー号、ジン! 搭乗しています!』

クマ『ベアー号、クマ! 全員揃っているクマ!』

早乙女「各ゲットマシンに座標と画像を送った」

ジン『画像確認。中型メカザウルス一機のみですね』

早乙女「だが、今回の戦闘は九州だ。遠いぞ」

ナガレ『九州!? ついに本島から離れやがったか!』

クマ『ゲッター1の最高速で向かっても、一分近くかかるクマ!』

早乙女「加速の時間を考えれば更に時間がかかるだろう」

ナガレ『だったらもたもたしてねえでさっさと行くぜ!』

早乙女「メカザウルスは既に市街地まで侵入している! これ以上の蹂躙行為を許すな!」


ナガレ『ッたりめーだ!』

ジン『了解!』

クマ『了解クマ!』


早乙女「ゲッターチーム、出動!」

ナガレ「イーグル号、発進ッ!」

ジン『ジャガー号、発進!』

クマ『ベアー号、発進クマ!』


ギュオオ…バォン!

バシュゥン!


ナガレ「チェーンジ、ゲッタァー 1 !」


ガシィン ガシィン

グググ……グワオン!

ブワッ……バサッ!


ナガレ「待ァってろよこのクソボケがあッ!」

バオンッ!

ズズズ……ズガァン!

メカザウルス「キシャアアアッ……」クチャクチャ

パキキッ……グチャッ

メカザウルス「キシャアアアアアアアアアアッッ!」


――――ギュルギュルギュル!


メカザウルス「キシャアアッ!」ピクッ

シュバッ

ナガレ「――――そこだァ!」グイッ

ガシィッ!

メカザウルス「キシャアアアアアッッ!?」

ナガレ「どんなもんだ! 二本のゲッタートマホークで逃げ場を限定すりゃあ、どんなボケナスも掴まえられるって寸法よ!」

ジン『説明は良いから、早く倒すのよ!』

クマ『逃げられたら元も子もないクマ!』

ナガレ「わーってらい!」

ナガレ「さぁて、このクソトカゲが、叩きのめして…………げっ!?」


グチャ……ピチャ


ナガレ「こ、こいつ……人間を、食いやがったのかっ!」

ジン『なんて事を……!』

クマ『……これ以上の被害者を、出すわけにはいかないクマ!』


メカザウルス「キシャアアアアアッッ!」


ナガレ「このッ……! 気持ち悪いモン見せやがってエエッ!」

ガン ガン!

ナガレ「おォらゲッターパァンチ!」グイッ

ゴキャッ!

メカザウルス「キシャアアッ!」ジタバタ

ナガレ「放すかよ! オラオラオラ!」

ズガッ ドガッ バキッ

メカザウルス「キシャアアアッ!」ジタバタ

ナガレ「ぬおっ! 何だこいつ、見かけの割にタフな野郎だ!」

メカザウルス「キシャアアアアアッ!」グンッ

ドガアッ!

ナガレ「どわあっ!」

クマ『あの状態から突進してきたクマ!?』

パッ……

ナガレ「クソが、衝撃で手が離れやがった!」

ジン『何してるのよ!』

ナガレ「黙っとけ! 勝手に手ェ放すなんざ整備不良かなんかじゃねーのかァ!?」

クマ『後でしっかり見ておくから今はメカザウルスをどうにかするクマ!』

メカザウルス「キシャアアアアアアッ!」

グワッ

ずがぁん!

ナガレ「ぐおおおっ!」

クマ『クマーーーーー!?』

ナガレ「クッソ、トカゲが、図に乗りやがってェ! ゲッタートマホークッ!」

ジャキンッ ガシッ

ナガレ「ドリャアアアアッ!」グイ

メカザウルス「キシャアアッ!」シュバッ

スカッ

ナガレ「このッ、避けンじゃねえっ!」

ブンッ ブンッ

メカザウルス「キシャアアアアッッ!」シュバッ

スカッ スカッ

メカザウルス「キシャアアアアアアッッ!」グンッ

ドガアッ!

ナガレ「だはあっ!」

クマ『クマっ……ナガレの動きが完全に見切られているクマ!』

ジン『このまま相手してもゲッター1じゃ埒が明かないわ!』

ナガレ「じゃあどうするってんだよ!」

クマ『当然、それ以上のスピードで制圧クマ!』

ジン『私に任せて。ソッコーで片付けてやる!』

ナガレ「チッ、仕方がねえ!」


メカザウルス「キシャアアアアアアアアッッ!」グンッ


ナガレ「喰らえ、トマホゥークブーメランッ!」ブンッ

クルクルクル……!

メカザウルス「キシャアアアッ!」シュバッ

ナガレ「今だ! オープン・ゲットォ!」カチッ

ガチャン! バシュゥン!


ギュオンギュオン ギュオン

ナガレ『行くぜクマ公!』グイ

クマ『クマ!』グイ

ガシィン!


ジン「よし……!」


早乙女『何を犠牲にしても戦え。それが今、人類が為すべき事だ。お前とて例外ではない』

ナガレ『俺は赤の他人の不幸だの責任だの面倒臭ぇモン背負わされるのはまっぴら御免だぜ』

クマ『何度でも言うクマ。ジンは悪くない、間違っていないクマ』


ジン「…………大丈夫よ、落ち着いて、橘 神」


ジン「チェンジッ! ゲッター 2 !」


ガシィン!

グググッ……グイーン


ズサッ

ジン「覚悟しなさい、メカザウルス!」グイ


ザザ――――


メカザウルス「キシャアアッ!」


ザザザッ……ズサッ


ジン「ハアアアアアアッ!」

ギュイイィーーン

メカザウルス「キシャアアッ! キシャアッ!」シュバッ

ジン「クッ、逃げられた!」

ナガレ『おいジン! テメーなにボケっとしてんだ!』

ジン「分かってるわよ!」グイ


ザザザッ


ジン「逃げるなら、加速したまま、貫くッ!」

ギュイイィーーン!

メカザウルス「キシャアアアアッ!」グンッ

ジン「えっ……!」

どがしゃっ!

ジン「きゃああっ!」

クマ『ゲッター2の速度に反応して、逆に突っ込んできたクマ……!?』

ナガレ『ジン! 手ェ抜いてんじゃねえだろうな!』

ジン「そんな訳、ないでしょ!」グイッ

ギュイイィーーン……

メカザウルス「キシャアアアッ!」

ガキィッ!

ジン「ドリルが弾かれた……クッ、ゲッターアーム!」グイッ

メカザウルス「キシャアアッ!」シュバッ

ジン「逃がすものですか!」グイ

ザザザッ……

メカザウルス「キシャアアアアッ!」

ジン「掴まえ…………!」

スカッ

ジン「な、なんで……!」

メカザウルス「キシャアアアアアッッ!」ブン

バキッ!

ジン「うぐぅ……!」

ナガレ『さっきっから何してんだ! 動きに全然キレがねぇぞ!』

クマ『ジン、一度下がって距離を取るクマ!』

ジン「ええ!」グイッ


ザザッ……ズサッ


ジン「冷静に、落ち着いて……ドリルハリケェーン!」カチッ

ギュイイィーーン……ブワッ

グワオオオッ!

メカザウルス「キシャアアアッ!」シュバッ

ジン「今なら!」グイッ

ザザザッ……


メカザウルス「キシャアアッ!」


ズサッ!


メカザウルス「キシャアッ!?」

ジン「やああアアアアアァァッ!」

ギュイイィィィーーーーーンッ!

メカザウルス「キシャアアアッ!」シュバッ

スカッ

ジン「そんなっ……どうして、当たらないの!」

スカッ スカッ

ジン「このオオオッ!」

ナガレ『なんだ、ジンの奴、どうなってやがる……!』

クマ『……おかしいクマ。ゲッター2の速度なら、こんな相手に手古摺るはずがないクマ』

ナガレ『それ以前だぜ。ジンの奴、いつもと動きが全然違ェ。トロいにもほどがある!』

クマ『まさか……あの時の事を引き摺って、抑えているクマ!?』

ナガレ『だとしたら相当のアホだぜ!』

ジン「誰が、アホよ、馬鹿ナガレ……!」

ナガレ『お前の事だよ! チャラチャラ動いてねえで、さっさとぶち殺せ!』

ジン「やってるわよ!」

ナガレ『だから言ってんだろうが、俺に迷惑かけるんじゃねえ!』

ジン「…………だからぁ! 頑張ってるんじゃないッ!」

ナガレ『そう言う事じゃ……!』


ピピッ ピピッ ピピッ


クマ『二人とも、研究所からの連絡クマ!』ピッ

ナガレ『チッ……俺だ! 何の用だ、ジジイ!』

早乙女『……ゲッターチーム! 戦闘中に邪魔するが、悪い報せだ……』

早乙女『研究所が、メカザウルスの襲撃を受けた』


ジン「なっ……」

クマ『別の場所での同時襲撃クマ!?』

ナガレ『よりにもよってこんな時にか!』


早乙女『いつかは来るだろうと想定していた事だ……ぐうっ!』

『ズガァンッ……ズズゥン……!』


クマ『博士!? 早乙女博士、大丈夫クマ!?』


オペレーターA『今の攻撃で、三番ゲッター光線砲台が破壊されました!』

早乙女『……応戦しているが、長くは持たん』


ジン「そんな…………」

ジン(どうしよう。早く倒さなきゃ。でも、このままの調子じゃ、研究所が手遅れになる)

ジン(こいつを無視して、研究所に今すぐ戻って……でも、そうしたら街が)

ジン(あいつに、頼る? でも、そうしたら、また暴走したら、街も研究所も、どっちも……)

ジン(駄目よ! このメカザウルスは今、倒さなきゃ!)

ジン(でもこのまま戦っていても、街の被害が広がって……)

ジン(街を見捨てて、研究所を……!)

ジン(ゲッター3にチェンジして、それともゲッター1に……!?)

ジン(速度を重視しなきゃいけない状況なら、ゲッター2のままが……)

ジン(でも、今の私じゃ…………!)


ジン「あ……ああ…………!」ガクガク


メカザウルス「キシャアアアッ!」

オペレーターB『博士! 二番ゲッター光線砲台も機能停止! トゥルーパー3から応答ありません!』


ジン(どうしたら、いいの……)








ナガレ『ジン!』






ジン「ナガレ……」

ナガレ『なぁにチンタラしてやがる! そのクソトカゲをさっさとぶちのめせ!』

ジン「で、でも研究所が!」

クマ『研究所の防御設備だって伊達じゃないクマ、少しくらいなら持ちこたえられるクマ!』

ナガレ『テメェ一人じゃねえんだ! ボケナスのトチ狂いぐらい、いくらでもフォローしてやらあ!』

ナガレ『何をぶっ壊したって知るか! 好きなだけ暴れちまえ!』

ナガレ『チッ…………俺たちを頼れ! クソボケドアホが!』

クマ『ジン。クマたちは、ジンを信じているクマ。だからジンも、ジン自身を信じてほしいクマ!』

クマ『ジンの全部を、ジンが、信じるクマ!』


早乙女『……ジン。ゲッター2の本領はスピードだ。待っているぞ』

プツッ……


メカザウルス「キシャアアアアア!」

ジン「…………どうせ考えていたって、時間の無駄なんだわ。理屈なんて、置き去りにすればいい」

ジン「信じて、いいのね。私たちは、ゲッターチームなのね……」

ジン「『私』たちは、ゲッターチームの、一員なのよね…………!」














ジン「フヒッ」

ギュイイィィィーーーーーンッ!

ジン「ヒャハッ!」グイ

ザッ

ザザザザザ――――

メカザウルス「キシャアアッ!?」

ザザザザザ――――


ナガレ『ずわあああああっ!? いきなりぶん回すなァ!』

クマ『でも、戻ってきたクマ! ジンの、動きクマ!』


ザザザザザ

ズサッ


メカザウルス「キシャ――――」

ゾブッ

ギュイイィーーン

ジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリ

ギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリ

ズババババババババババババババババババッ

ズバアッ!

バラバラ……ドチャッ


ジン「へはァ…………!」

 ―― 早乙女研究所 ――


ズガァン! ドゴォン! ドワオッ……!

メカザウルスB「ブフゥーーンッ……!」


オペレーターA「八番ゲッター光線砲台が停止! これで稼働している砲台が全て破壊されました……!」

オペレーターB「ハチュウ人類歩兵、研究所内への侵入を確認! トゥルーパー2が応戦中です!」

早乙女「万事休すか……」


ズズゥン……


メカザウルスB「ブフゥーーンッ……!」ガパッ


オペレーターA「メカザウルス、ミサイルの砲門を開きました……目標、ここです」

オペレーターB「博士、避難してください!」

早乙女「…………」


メカザウルスB「ブフゥーーンッ!」

バシュンバシュンバシュンッ!


――――バオンッ

ガチャン バシュゥン……

ガシィン ガシィン

グググッ……グイーン

ギュイイィーーン

ブワッ……グワオオオッ!


ズワオッ! ドワオッ! ズガァン……!


メカザウルスB「ブフゥ!?」

ガリガリガリガリ……!


オペレーターA「じょ、上空から竜巻が……ミサイルが巻き込まれて爆破しました!」

オペレーターB「竜巻から、ゲッター線を観測! ゲッター2の、ドリルハリケーンです!」
 
早乙女「……来たか」


ズシャッ!

ジン「…………」

メカザウルスB「ブフゥーーンッ……!」

ズゥン ズゥン……


ジン「…………」グイ

ザッ

メカザウルスB「ブフ……」

――――ドスッ

ジャリジャリジャリズバババババッ!

メカザウルスB「ブ……ブフゥーーーーンッッ!」

ジャリジャリジャリズバアッ!


ジン「フヒ――――ヒャヒャヒャハハアハハハハハハぁハあああっ!」グイ


ギュイイイーーーーーンッ!

ゾブッ グチャアッ!

メカザウルスB「ブフゥーーーンッ!」

ジン「これよぉーーー! こうやって、生きたまま切り裂いて!」

ギャリギャリギャリギャリ!

ジン「生きたまま中身を抉って!」

ズバッ ドチャッ

ジン「好きなように刻んで、殺すのがァ!」


ジン「『私』は好きで好きで好きで好きで、大好きで仕方がないのよッ!」

メカザウルスB「ブフゥーーーンッ!」ガパッ

――――ガァン!

メカザウルスB「ブフゥ!?」


ジン「いい穴、見つけたぁ……」ニタァ

ギュイイィーーン

ギャギャギャギャギャギャリギャリギャリギャリジャリジャリ!

バゴオォンッ!

メカザウルスB「ブフゥーーーーーーンッッ!」

メカザウルスB「ブフゥ……ブフゥ……」ヨロヨロ

ガシッ

メカザウルスB「ブ…………!」

ジン「私たちの留守中に、研究所を襲うんだからぁ……相応の覚悟くらい、できてるのよねぇ?」

ジン「私が今まで溜めに溜めたストレス、全部ぶつけるまで、『生きていてくれる』のよねェ!?」

ジン「すっごい、嬉しいわぁ…………」


ギュイイィーーン……

ドスッ ズバアッ!


ジン「ふへっ、ふひっ、ぐひひひひっ!」


グチャッ ドチャッ


ジン「ギヒッ、ぎへはひゃひゃ、あひゃひゃひゃはッ!」


ジャリジャリジャリ!


ジン「あっ、いぐっ――――」ビクンッ

ジン「いぐぅぅぅぅぅぅぅッッ!」ビクビクビクッ

ジン「あひっ、あひっ…………」プシャア

ジン「あへぇ…………」グイ


ギュイイィーーン……!


グチャアッ

ズババババババッ!

ドチュッ

ギャリギャリギャリギャリズバアッ!

ジン「あああああああ、もう、やっぱりィ!」ビクビクビクッ

ギュイイイーーーーーンッ

ジャリジャリジャリ

バシャアッ!

ジン「この感じ、さいっ……こぉ――――」プシッ

ナガレ『ったく……本当に心底どうしようもねえ女だな、こいつは』

クマ『でも、このジンの方が、活き活きしていて綺麗クマ』

ナガレ『その価値観は分からん』


ザシュッ グチャッ

ジン「ふひ、ふひぃ……!」ビクビクッ


ナガレ『…………まあ、面倒臭ェのに比べたら、吹っ切れてもらった方が大分マシだな』

クマ『元に戻って、良かったクマ!』


ジン「んぎゅううううぅぅぅぅううっっ!」ビクビクビクッ

 ―― 数日後 ――


チュンチュン……

ジン「すぅ……すぅ……」

ピピピッ ピピピッ ピピピッ……

ジン「ん…………」モゾ

ピピピッ ピピピッ ピピピッ……

ジン「んン…………」

モゾモゾ

ピピピッ ピピピッ

カチッ

ジン「…………」ムク

ジン「眼鏡……めがね……」モゾモゾ

スチャ……

ジン「…………六時。はふぅー……」

ジン「んんーー…………!」


ジン「…………ねむ」

 ―― 早乙女研究所・飛行訓練場 ――


タッタッタッタッ……

ジン「フッ、フッ……」

タッタッタッ……

ジン「フー…………。水……」スッ

キュッ

ジン「んくっ、んくっ……」ゴクゴク

ジン「ぷはっ。はぁー……よし、朝のランニング終わりっ。シャワー浴びてご飯食ーべよ」

ザッ……

ジン(ミチルさん。達人さん。散っていった、ゲッターチームの皆さん)

ジン(今日も私たちを、見守っていてください)

ジン(あと、傲慢ですけれど……『私』を、認めてください)


ジン(…………なーんか、やっぱり、視線感じるのよね)

 ―― 食堂 ――


ジン(確か今日は、この後に飛行訓練……その後は改造の進捗状況の報告で……)モグモグ

クマ「ジンー」キュムキュム

ナガレ「ようジン」ガシャンッ

ジン「あ、おはようクマちゃん、ナガレ」

クマ「ジン、体の調子はどうクマ?」

ジン「ええ、もう大丈夫よ」

ナガレ「本当かよ」

ジン「もう嘘吐いたって仕方ないでしょ?」

ナガレ「これ以上誤魔化されたら付き合ってらんねえよ」

クマ「それはナガレは薄情だからクマ」

ナガレ「だぁってろ」ガツガツ

ジン「本当に大丈夫よ。でも、心配してくれてありがとう、二人とも」

ナガレ「はへはひははいはいふへはふは!」

クマ「ナガレいい加減口の中に物入れて喋るの止めるクマ本当に汚いクマ」

ナガレ「ング……うるせえ、そんな上品な生き方してられっかよ」


『ゲッターロボは批判にまるで応える事無く、その対象であるゲッター2での戦闘を繰り返しています』


ナガレ「…………」ピク

クマ「…………」ピク


『これは先日、視聴者の方が撮影した映像です。浅間山にある早乙女研究所が、メカザウルスに襲撃されている、その瞬間』

『ゲッター2が上空から飛来し、メカザウルスとの戦闘を開始します。その光景は、処刑と言うのが近いでしょう』

『すぐにとどめを差さずに、まるで傷付ける事を楽しむかのような攻撃を何度も何度も行っています』

『何一つ変わらないゲッターパイロットの異常性は、我々にとって信用できるものなのでしょうか』

『こちらは、その前の戦闘での映像です。街を破壊するゲッターロボ。そして、近隣住民の悲鳴は止みません』


『メカザウルスよりも質が悪いです』

『家を返せ、この悪魔!』

『こわかった。たたかわないでほしい』

ナガレ「…………」ガタ

ジン「良いわよ、別に。放っておきなさい」

ナガレ「…………飲みモン取りに行くだけだっつの」

スタスタ

クマ「……あんなに好き勝手言われているのに、良いクマ?」

ジン「ええ。構っても時間の無駄だもの」

クマ「でも、クマは許せないクマ」

ジン「そりゃあ私だって本音を言えば嫌よ? でも、クマちゃんとナガレは、そんな私でも認めてくれるんでしょ?」

クマ「勿論クマ」

ジン「なら、私はそれでいいわ。本当の私の事を知ってくれる人が居れば、それでね」

クマ「…………ジンがそれでいいなら、分かったクマ!」

ナガレ「…………ったくよォ、俺たちがどう戦おうと俺たちの勝手だっつーのにな」

ジン「お帰りナガレ。で、もう牛乳置いてあったのにもう一本牛乳だなんて、今日は珍しいわね?」

ナガレ「…………あーあー、うるせえ! 知らねえ!」

ナガレ「あー、食った食った」

ジン「この後、飛行訓練なのよ? ゲットマシンの中でゲボ吐かないでよね」

ナガレ「吐くかよ!」

クマ「吐いても良いけどクマたちに近寄らないでほしいクマ」

ナガレ「吐かねえっつってんだろーが!」

クマ「まあ、それは知ってるクマ」

ナガレ「テメー茶化すなよ? わざとお前にゲロすんぞ?」

ジン「止めなさい……あ、そうだ。私、一度部屋に戻るわ。パイロットスーツ、部屋にあるの」

クマ「じゃあ、クマたちは先に行ってるクマ」

ナガレ「要らねえだろあんなもん」

ジン「せっかく作ってもらったんだからあと十回は着ないと勿体ないでしょうが。それじゃ、また後でね」

クマ「待ってるクマー」

ナガレ「行くぞ、クマ公」

カツカツカツカツ

ジン「…………ん?」


コソコソ

所員A「……どうよ、この写真」

所員B「うっほ、すっげ、エロ過ぎ……!」

歩兵A「これはまた堪らんブレストミサイル……!」

黒服A「素晴らしい角度だ……」

所員A「まあまあ、ここまではいつものヤツだ。今日は目玉商品を用意してきた」

歩兵B「目玉商品……?」

所員A「撮りたてほやほや。朝のランニングをする橘さん、イン動画ァ~…………」

所員B「どう、がッ……!?」

歩兵A「お前……どこまで犯罪を犯せば! なんて素晴らしい真似を……!」

所員A「躍り跳ね揺れる橘さんのダイナミックボインが入ったこの動画、いくら出す?」

所員B「5!」

歩兵A「10!」

黒服A「12!」


ジン「それ、私に購入する権利はあるのかしら?」


「「「「「……………………」」」」」

ジン「ふぅん……随分手慣れているじゃない。常習?」

ジン「盗撮、肖像権の侵害、名誉棄損。画像の売買で罪の重さ上乗せね。女性蔑視も入れとく?」


所員A「…………あの、ごめんなさい」

所員B「出来心です」

歩兵A「勘弁してください」

歩兵B「妻と子がいるんです」

黒服A「親に仕送りしなくちゃならないんです」


ジン「私は元何?」

所員A「弁護士ですごめんなさい」

ジン「嘗めた真似してくれたわね」

所員B「靴嘗めます」

ジン「今まで撮影したデータ、売買したデータを全て渡しなさい」

歩兵A「何でもします」

ジン「そして金輪際、私に限らず盗撮をしない事、法に誠心誠意従う事、仕事を頑張る事を誓いなさい」

歩兵B「はい、反省します」

ジン「もし、提出を拒んだ場合、或いは提出せずに隠し持った場合、個人的制裁の形を取らせて頂く場合もある事を留意してください」

黒服A「死んでも忘れません」

ジン「全く、本当に男子って馬鹿なんだから」

ジン「何が胸が大きいよ。人の事をあんなに頭おかしい扱いしてたくせに」

ジン「結局どいつもこいつも胸しか見てないじゃない。馬鹿みたい!」

ジン「それにしてもまた、かなりの量を撮られてたわね。感じていた視線はこれだったのか……」

ジン「一部ちょっと海産物臭いし……最悪。焼いて捨てよ」


ジン「…………フ、フフ」


ジン「くふふふふ、ふ、ははははは」

ジン「あっはっはっはっはっは!」

ジン「ばっかばかしい! 周りの評価なんて、なんて下らないの!」

ジン「そんなものの為に、『私』を変える必要なんて、無いんだわ!」


ジン「そうだったのね、『ジン』」


ジン?『…………』フッ

第五話【白無垢鉄火】終。

次回、第六話【ゲッターロボ対テキサスマック&ステルバー】。
特に忙しい訳じゃないけど話の構想とか流れとかがまるで立っていないからまた時間かかりそうです。

ジンが「ぶわああああ」って喚いてるシーンは枕に顔を埋めて大声を上げてるんです。
あと別にジンは二重人格じゃないです。似たようなものだけど違うんです聞いてください。

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