後輩少女「チョコよりお汁粉?」(40)

  高校からの帰り道。自販機前


男 「ど、れ、に、し、よ、う、か、な!」→ブラックコーヒー

男 「…」

男 「…お、ま、え、じゃ、ね、え!」ポチッ

ガタッ、ゴトン!

男 (汁粉かー)ガコッ

男 (ま、たまにはいい…)

男 「…あれ?」

男 「汁粉の缶が2つある?」

男 (当たり…な訳ないよなぁ)

? 「………」

男 (しかも、これ片方は冷てーし)

? 「……の」

男 (んー?)

? 「…あの」

男 「うん?」

男 (中坊の女子?)

少女「…いいですか?」ゴニョゴニョ

男 「ん? ああ、悪いね。こんなとこ突っ立ってて」ササー

少女「…ありがとうございます」ペコッ――ガコッ

男 (? 金入れずに、直で取り出し口?)

少女「…ない」

少女「んしょ」ガソゴソ

男 「…」

少女「場所、ここなのに」ガサゴソ

男 「ねえ」

少女「え?」

男 「なんか探し物?」

少女「あ、いえ…」

男 「…もしかして缶ジュースか何か?」

少女「! は、はい」コクコク

少女「さっき、ここで買ったんですけど」

少女「取り出そうとしたら電話かかって来て、それでうっかり取らずに帰っちゃって」

少女「そのことを思い出して、引き返してきたんですけど」

少女「今、見たらそれがなくて…」

男 「何買ったの?」

少女「え? お汁粉、ですけど…」

男 「ふーん」

少女「?」

男 「じゃあ、これ君のか」

少女「え…あ」

男 「俺もさっき汁粉買ったんだけど、そしたら2つあってさ、これ誰のだと思ってたんだが」

少女「それ、多分あたしのです」

男 「良かった。じゃあ――」

少女「?」

男 「――はい」スッ

少女「ありがとうございます…あ」

男 「…」

少女「…あの」

少女「これ、すごく温かいんですけど」

少女「あたし買ったの結構前だから、そっちの冷めてる方が、あたしのだと思うんです…」

男 「あー、俺つm…ぬるいのが好きなんだよね」

男 「だから、良かったらそっち貰ってくれない?」

少女「でも今日寒いです。だから、温かいこっちの方が…」

男 「平気、平気。それに寒いのはそっちも同じだろ?」

少女「けど、悪いです」

男 「悪くないって」

少女「けど…」

男 「…」

少女「…」

男 「あのさ」

男 「ここでにらめっこしてたら、君のも冷めちゃって、お互い損じゃないかな?」

少女「…」

男 「ね、ここは俺の顔を立てると思って」

少女「…はい」

男 「よし。じゃあ、今度は忘れないようにね」

少女「はい。あの…ありがとうございました」ペコッ

男 「うん、じゃ」

少女「失礼します」


  タッタッ…

  2月14日 高校

男 「ってことがこの間あってさぁ」

イケメン(以下池)「へー」

男 「いやー我ながらびっくりするくらいの紳士対応だったぜ」

男 「あの時のイケメン力をスカウターで計ったら42000くらいはあったぜ、きっと」

池 「ほうほう…で」

男 「ん?」

池 「お前、今日チョコ何個貰えたよ?」

男 「はっはっは。…0だよ、クソ野郎」

また明日来ます

池 「まあ第一段階のフリーザ様にイジめられる程度の力じゃな」

男 「あ? てめえネイルさんdisってんのか?」

池 「熱くなるな。そもそも、お前この間それで失敗したんじゃねえか」

男 「うぐっ。いやあれはだな…」

池 「アニメ好きは別にいいがよ、流石に休み時間ずっとでかい声で、女キャラのアレについて熱く語るのはどうかと思うぞ?」

男 「…やっぱアレのせいか?」

池 「まあ、あの件がなかったら1個くらいは貰えたかもな」

男 「ちなみにお前は?」

池 「数えてくれるか?」つ大量のチョコin紙袋

男 「お前ってやっぱクソだわ」

男 「ってか、お前だってアニメ見てるじゃん」

池 「俺は話題選ぶし。あと顔もいいし」

男 「なんだろうな。今、無性にその顔ぶっ飛ばしたい」

池 「男のジェラシーは見苦しいぜ」

男 「…お前、それ殴られるフラグだぞ」

池 「あの漫画、連載再開しねえかなぁ」

男 「俺らが卒業する前には再開するだろ」

池 「…世の中ってほんと平等だな、ファック」

男 「もう嫌になる」

池 「自業自得だろ」

男 「…いや、全部俺のせいは納得いかんぞ。そもそも話ふって来たのは――」

JK「やっほー!」

男 「――こいつだろ」

JK「ねえ、この戦利品見てよ見てよ! はい、牛カレーパンでしょ、三色サンド、イエローサラダ、そして…じゃーん! とどめのダブルベリーホイップ! どうだこのフルコース! 冬のパン祭り!」

池 「うーっす。レアゲット乙」

男 「お前、持ってきた弁当は?」

JK「え、早弁したけど」

男 「毎回思う。お前の胃袋どうなってんだ?」

JK「これくらい普通だよー」

男 「男の俺より食ってて普通はない」

JK「えー。普通だよね、ねえ池くん?」

池 「…まあ、お前は確かに昔からこの量だよな」

男 「その細っこい体でなぜこの量が収まるのか」

JK「ところで池くんのその紙袋何? お歳暮?」

池 「いや、チョコ」

JK「え…ああ、そっか。今日はヴァレンタインなんだ」

男 「ああ、ヴァレンタインなんだよなぁ…」

JK「男くんは貰えた?」

男 「ノーだよ」

Jk「あらら。まあ、男くんは女の子とあんまり交流ないものねー」

男 「唯一交流あるのお前くらいなんだよなぁ…」

Jk「? …あ」

JK「あたし、あげる側か」

男 「池さーん。こいつ女としての自覚ないんですけどー」

池 「知ってた」

JK「そんなことは…去年、あたし二人にあげたっけ?」

男 「俺はもらってません」

池 「俺ももらってません」

JK「一昨年は…」

男 「あったか?」

池 「なかったぞ」

JK「…あれ? 反論できない?」

男 「むしろなぜ反論できると思ったのか」

池 「とりあえず親父さんにはあげとけよ」

JK「むー。けど、あたし普段は二人から女扱いされてないのに、こういう時だけ女扱いって何かズルくない?」

男 「女扱いされたけりゃチョコ寄越せ。よこせよぉ」

池 「…ズルいというか必死なんだよなぁ」

JK「うーん。わかった!」

JK「あたしも女だからね、帰り二人にはチョコクレープおごってあげる!」

男 「おう、その発想は流石だな」

池 「いよー太っ腹ー」

JK「はっはっは。任せて! あ、飲み物買い忘れたからちょっと買ってくる」

JK「二人とも先に食べててね!」シュババ!

池 「まったく、忙しないやつだよなぁ」

男 「…よかったな」

池 「…なんでお前が俺に言うんだよ」

男 「べっつに~」

池 「けっ。お前こそ良かったな。0個の不名誉を免れて」

男 「おごりは1個でいいのか?」

池 「俺はカウントするぞ」

男 「…お前ってつくづく何だかなぁだよな」

また明日来ます。

  帰り

JK『ごめん! 部活で会議あるの忘れてた! また今度おごるから今日は本当にごめんね!』

池 『…俺も放課後用事あるの思い出したわ。先に帰っててくれ』

男 「冴えないオチだぜ、ったく…」

男 「あーやだやだ。なんで日本人なのに、チョコなんて物やりとりしなきゃいけないんだっつーの」

男 「日本人なら饅頭か団子でも食えっつーの」

男 「…」

男 「……」

男 「………寒い」

男 「今度はちゃんと熱い汁粉でも飲むかな…」ハア…

男 (ん? 自販機の前に誰かいる)

男 (あれは…)

? 「…」

男 「こんにちは」

? 「え…あっ!」

男 「…よかった」

少女「こ、こんにちは」

男 「こんにちは。先週のお汁粉の子だよね?」

少女「はい。えっと、あの時はありがとうございました!」ペコッ!

男 「あー、いいっていいって、そんな頭下げないで」

男 (…なんか、この間と違ってテンション高いな)

男 「奇遇だねー。誰か待ってるの?」

少女「え!? あ、その…はい」

男 「そっか。お友達?」

少女「じゃ、ないんですけど…」

男 「じゃあ親?」

少女「でも、なくて…」

男 「…もしかして、チョコとか?」

少女「…はい」

男 「あー…」

男 「話しかけちゃってごめんね」

少女「え?」

男 「いや、相手の男の子が来たとき、他に野郎がいちゃまずいでしょ?」

少女「…え?」

男 「俺、もう帰るね」

少女「……ええ!?」

男 (と、その前に)

男 (汁粉、汁粉)

少女「」アタフタ

男 (って、くそ。100円玉ねえ…)…チャリン

少女「」キョロキョロ

男 (しかしこんな奥手そうな子も青春してんのなぁ…)チャリン

少女「」ガサゴソ

男 (ハア…チョコ持ち美少女とか落ちてねえかな)チャリチャリン

少女「――…ッ」…アッ

男 (そうだ)チャリン

男 (今から街を回れば一人くらいは箱入り美少女がどっかに…)チャリン

少女「――…」エーット…

男 (…アホか俺は)チャリン

少女「……―ッ」バッ!

男 (とりあえずさっさと帰って…)

少女「あ――」




少女「――あのっっっ!!!!」

男 「」ヒッ                           ポチッ

男 「ど、どうしたの?」

少女「あの…あたし、少女と言います!」

男 「へ?」

少女「お名前、教えてもらってもいいですか!」

男 「(目白黒)…俺の?」

少女「はい!」

男 「男、だけど」

少女「…あの、あたし、ここで」

男 「うん」

少女「その…」

少女「男さんのこと、待ってました!」

男 「…うん?」

少女「良ければ、これ受け取ってください!」

男 「これは?」

少女「その、チョコレートです」

男 「」

少女「お汁粉のお礼がしたくて、作ってみたんです」

少女「すごく不格好で渡そうか迷ったけど…」

少女「あっ! でも味見はしました!」

少女「そんな悪くなかったと思います。だから…」

男 「……」

少女「男、さん?」

男 「…い」

少女「い?」

男 「いよっしゃぁぁぁぁぁぁああっ!」

少女「」ビクッ!

男 「名前確か少女ちゃんだよね!?」

少女「は、はい」

男 「ありがと! いや、ほんとマジでありがとう! これ家宝にするね!」

少女「え、えーっと…」

男 「あーもう何だよクソ! やっぱうれしいじゃねえか! さっきコンビニでチョコ買わなくてほんとよかった!」

少女「…」

男 「明日、あの馬鹿二人相手に愚痴をエンドレスで吐き続けてやろうかとも思ったが予定変更だな! つーか面倒だからさっさと爆発しろっつの、あの馬鹿どもは!」

少女「あ、あの…」

男 「あ」

男 「ごめんごめん。なんか嬉しくてテンション上がっちゃってさ」

少女「そんなに、ですか…?」

男 「そりゃあもう! チョコ貰って嬉しくない野郎なんていないよ!」

少女「そう、ですか」ホッ

男 「でも汁粉買う前に止めてくれてありがとね」

少女「え?」

男 「いや、甘いのは好きだけどさー」

男 「流石に汁粉にチョコとか続けてはきついもの」

少女「あ…」

男 「とりあえず返金して――あれ?」

少女「…」

男 「自販機のボタン点灯してない…ってまさか」ガコッ


お汁粉 ヤア


男 「…あのさ」

少女「…はい」

男 「…これいる?」

月曜までには来たい(願望)

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