シンジ「宇宙戦隊!!」「「「「「エヴァンゲリオン!!」」」」」 (54)

シンジ「僕の名前は碇シンジ。宇宙特別防衛機構NERVに所属するパイロット。謎のヒーローエヴァンゲリオンのリーダーでもある」

シンジ「僕らの役目は宇宙の平和をブラックゴッド星人率いる宇宙使徒から守ることだ」

シンジ「今日も平和な宇宙の片隅に、宇宙使徒の魔の手が忍び寄る」


マヤ「オメガ座星雲に反応あり!パターン青!宇宙使徒です!」

ミサト「来たわね。宇宙戦隊エヴァンゲリオンの出番よ!」

「「「「「はい!!」」」」」

ミサト「えーでは、リーダーのシンジ君」

アスカ「ちょおおおおおおっと待ったああああああ!!」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1458301930

ミサト「あら?時間がないんだけど、何かしらアスカ」

アスカ「何かしらじゃないわよ!リーダーがこのヘタレってのは一体どういうわけ!?」

ミサト「何か問題があるの?」

アスカ「大アリよ!こんなのがリーダーだったら物語が進まないじゃない!挙句の果てに世界滅びるわよ!?」

アスカ「また旧劇場版の悲劇を繰り返したいの!?」

ミサト「そうは言われてもね。彼、一応主人公だし」

レイ「一応……」

トウジ「一応な」

カヲル「つまりみんな、シンジ君の事が好きということだね」

カヲル「……一応」

アスカ「そんなのはどおおおおおだっていいのよ!!戦隊もののリーダーと言ったら赤!!つまりレッド!!」

アスカ「このあたしでしょうが!!レッド!!レッド!!レエエエエエッド!!」

ミサト「そうは言ってもね。この段階で企画を変えるのは……」

リツコ「戦隊のリーダーならば主人公でなければならない。鉄則ね」

アスカ「戦隊のリーダーは赤!!これも鉄則ぅ!!」

ミサト「そうねぇ……じゃここは多数決で決めましょうか」

レイ「多数決?」

ミサト「そうよ。チームメイトの信頼を一番勝ち得てる子がリーダー」

日向「なるほどぉ!」

リツコ「妥当な判断ね」

カヲル「好意に値する人間がリーダー……ということだね」

ゲンドウ「ああ、問題ない」

アスカ「はーいはーい!じゃあまずあたしからぁ!でーはー!このセカンドレエエエエッドこと惣流……」

マヤ「!これは!オメガ座星雲地点より通信!……ブラックゴッド星人です!!」

ミサト「なんですって!すぐに繋いで!」

ピッ

ブラックゴッド『ワハハハハ!私はブラックゴッド星人!我が配下の宇宙使徒を使って、地球人を皆殺しにしてやる!!』

ミサト「出たわね、ブラッ……」

アスカ「こんちきしょおおおおおお!!あたしが晴れてエヴァンゲリオンのリーダーになるっつー時に何邪魔してくれてんのよおおおおお!!」

アスカ「あたし、ちょっと行ってくるから!!」

ミサト「え?え、ええ……」

レイ「行ってらっしゃい」

トウジ「気いつけてなぁ」

カヲル「健気だね。僕も応援しよう」

アスカ「じゃっ!」ダッ

ミサト「……」

ミサト「じゃ、じゃあ気を取り直して」

ミサト「……とは言っても、アスカがいないんじゃリーダーを争う必要もないわよねぇ」

ミサト「まとりあえず、ここは暫定リーダーはシンジ君ってことで」

レイ「それが命令なら」

カヲル「好意に値するよ」

トウジ「なあ、ところで」

トウジ「なんでさっきからセンセはひとっことも喋らんのや?」

ミサト「……言われてみればそうね?どうかしたのシンジ君?」

シンジ「あ、いや……」

シンジ「あんまり喋らない方が、僕らしいかと思って……」

トウジ「……」

ミサト「……」

((こりゃ、本当に主人公交代した方がいいんじゃ))

リツコ「渚カヲル君、シンジ君のケアをお願い出来るかしら?」

カヲル「請け合おう」

カヲル「ああ、そんなことは言わないでおくれ、シンジ君」

カヲル「君の声を聞きたい、君の喋っている姿が見たい」

カヲル「多くの人間がそう思っているんだ。少なくとも僕はそうだよ。何故なら君は碇シンジくん、主人公なんだからね」

シンジ「か、カヲル君……。分かったよ、僕、頑張ってみる」

シンジ「じゃ、じゃあ、碇シンジ、行きます!」

シンジ「宇宙戦隊!」

「「「「エヴァンゲリオン!!」」」」

シンジ「よしみんな、出動しよう!」

トウジ「おう!」

レイ「ええ」

カヲル「もちろんだよ」

シンジ「行くよ!」

プシュー

アスカ「はあ、ただいま!さあ、邪魔者はやっつけてきたわよ、続きを始めましょう!」

ミサト「え?もうやっつけちゃったのアスカ?」

アスカ「もちのろんよ!こーんなヘタレシンジの出るまでもなく、あたしの活躍で宇宙に平和は戻ったわ!」

マヤ「本当です!宇宙使徒の反応、消えています!」

ミサト「なんとまぁ……」

シンジ「僕はダメだ……やっぱりダメなんだ……」

アスカ「じゃあそーいうわけで、さっきの続きよ!もちろんリーダーにふさわしいのはこの惣流……」

マヤ「通信入っています!」

ミサト「繋いで!」

ピッ

スーパーブラックゴッド『ガハハハハ!私はブラックゴッドではない!ブラックホールよりやってきたスーパーブラックゴッド!我が配下の円盤使徒を使って……』

アスカ「おんどりゃあああああああ!!今すぐ行ってやるから、そこで待ってろおおおお!!」ダッ

ミサト「あら、アスカまた行っちゃったわ」

レイ「行ってらっしゃい」

トウジ「忘れ物すんなよ〜」

カヲル「美しさの足りない努力だが、純粋な感情だ」

シンジ「僕はダメだ……やっぱり出しゃばらない方がいいんだ……」

ミサト「ふーん、これは参ったわね」

リツコ「レイ、ケアをお願い」

レイ「分かりました」

レイ「碇くん、元気を出して」

レイ「私はあなたを信頼してる、リーダーに相応しいと思うわ」

レイ「少なくとも私は、あなたを見てる。だから頑張って」

シンジ「あ、綾波……」

シンジ「……うん、分かったよ。そう言ってもらえると、僕も頑張れそうな気がする」

ミサト「よーし、じゃあちゃっちゃと始めちゃってくれるかな?」

シンジ「分かりました!」

シンジ「みんな、行くよ」

シンジ「宇宙戦隊!」

「「「「エヴァンゲリオン!!」」」」

プシュー

アスカ「ぜえ、はあ……。や、やっつけて来たわよ!円盤使徒!!」

ミサト「うっそー!?ちょーっち早すぎじゃない!?」

マヤ「本当です!円盤使徒の反応、消失しています!!」

シンジ「僕が頑張ってもやっぱりダメじゃないか……」

アスカ「さあー!!今度の今度こそ、邪魔は入らないわよ!えーでは、ゴホン」

アスカ「エヴァンゲリオンのリーダーに相応しいのは……」

マヤ「通信繋ぎます!」

ピッ

ウルトラスーパーブラックゴッド『ギャハハハハ!!私はどのブラックゴッドとも違う。宇宙の果てからやってきたウルトラスーパーブラックゴッド!!我が配下の……』

アスカ「こんくそがあああああああ!!その場を一歩でも動いたら承知しないわよおおおお!!!」ダッ

ミサト「行ったか」

シンジ「僕はどうせ役に立たないんだ……僕なんかいない方がいいんだ……」

ミサト「さーて、どうしたもんか」

リツコ「では司令、お願い出来ますか?」

ゲンドウ「ああ、問題ない」

ゲンドウ「シンジ、エヴァに乗れ」

シンジ「……父さん」

ゲンドウ「そしたら今度……一緒に遊園地に行こう」

シンジ「……父さん!」

シンジ「分かりました。僕はエヴァンゲリオンパイロットリーダー!碇シンジです!!」

シンジ「みんな!」

シンジ「宇宙戦隊!」

「「「「エヴァンゲリオン!!!」」」」

プシュー

アスカ「やった……倒したわ……。異次元使徒。これで……私がリーダーね!」

ミサト「ちょーっとちょっとー!!本気で言っちゃってるの!?」

マヤ「本当です!!異次元使徒の反応、消えています!」

アスカ「えーでは、大変長らくお待たせ致しました!!エヴァンゲリオンリーダーに相応しいのは……」

ミサト「はいストップ!!」

アスカ「な、なによ」

ミサト「今日で、宇宙戦隊エヴァンゲリオンは解散」

「「「「「!!!」」」」」

トウジ「どういうことや!?今日っていうか、今日しか結成してへんのやけど!?」

アスカ「そうよー!これからあたしがリーダーになるって時にぃ!!」

ミサト「だーってアスカが用意されていた使徒を全部倒しちゃうんだもん」

レイ「予定としては、宇宙の支配者ウルトラスーパーブラックゴッドを倒して、碇親子が絆を取り戻し、番組終了」

カヲル「それを君が全部倒してしまったわけか」

アスカ「なっ!だ、だーってえ!!あたしがリーダーになるのを邪魔してくるんだもん!!」

ミサト「はいはーい!愚痴は後よ!これで晴れて宇宙の平和は取り戻されたんだから、今日はパーっと飲み明かしましょ!!」

日向「自分が飲みたいだけでしょ……」

マヤ「不潔です」

アスカ「ちょーっとー!!あたしのリーダーはどうなんのよぉ!!」

ミサト「だーって、解散になるんだもん」

カヲル「これも一つの結末か」

アスカ「そんなー!!あたしは何のためにあんなに頑張ったの!!むっきいいいいい!!」

シンジ「僕はダメなんだ……僕はダメなんだ……」

ミサト「はい、っちゅーことで、アスカが使徒をぜーんぶやっつけてしまったので、新しい企画考えまーす」

アスカ「ちぇっ」

トウジ「で、今度は一体何をやるっていうんや」

ケンスケ「ラブコメさ」

トウジ「お、おうわー!ケンスケ、お前いつの間に!!」

ケンスケ「今回の企画、僕は裏方だからね。協力させてもらうよ」

トウジ「そ、そか。それにしてもラブコメやて?」

ケンスケ「そう、古今東西親しまれる甘酸っぱい愛のバラード!青春の一ページ!主人公を取り巻く人間模様!……ってわけだけど」

トウジ「どうせ主人公……こいつなんやろ?」

シンジ「ええ!僕ぅ!?」

ミサト「その通りよ、主人公はシンジ君っていうのは決定事項。司令からの要望だから」

ミサト「問題はメインヒロインを誰にするかねぇ」

リツコ「ええ。でも既にそれは解決してるわ。このことについては、実際にテストをして決めます」

ミサト「テスト?」

リツコ「そうよ。主人公とヒロインの関係がピークに達し、ついに主人公がヒロインに告白するシーン。そのクライマックスを実際に演出してみて、一番相応しいと思う人間に決めるわ」

リツコ「というわけで、まずはそうねえ……レイ、お願い出来るかしら?」

レイ「分かりました」

ミサト「えー、でーわー!主人公とヒロインの愛の告白シーン、ハクショーン!!」

シンジ「……えーと、やあ」

レイ「ええ」

シンジ「いい……天気だね」

レイ「ええ」

シンジ「あの、最近どう?」

レイ「良い感じよ」

シンジ「そっか……」

レイ「ええ」

シンジ「……」

レイ「……」

シンジ「……あの」

レイ「ええ」

シンジ「……」

レイ「……」

トウジ「なーにやっとんのやー!!はよ決めーい!!」

アスカ「おらー!ひゅーひゅー!!はーやくやっちゃいなさいよー!!」

ケンスケ「碇ー!!後が詰まってるんだー!!」


シンジ「うっ!」

シンジ「あ、あのさ、綾波」

レイ「なに?」

シンジ(逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ)

シンジ「あの、す、好きです!綾波のことが!」

レイ「そう、嬉しいわ」

シンジ「うん……」

レイ「そう……」

シンジ「……」

レイ「……」

ミサト「あっちゃー」

リツコ「人選ミスだったかしら」

ミサト「うーん、番組的には出来ればこういう役所はレイにやって欲しかったんだけど、難しいか」

リツコ「じゃあ次は……」

アスカ「はーいはーい!次あたし!行きます行きまーす!」

リツコ「……。いいわ、アスカお願い」

アスカ「ふっふーん、見てなさいよファースト。あんたってさ、優等生だからこういう時にダメなのよ」

アスカ「このアスカ様こそヒロインに相応しいっていう所、見せてやるわ!」

レイ「期待してるわ」

ミサト「ではではー!!気を取り直して、もう一度!!」

ミサト「アクショーン!!」

アスカ「あら、ごめんなさい!待たせちゃった?」

シンジ「はあ?待ったって……最初からここにいたじゃない」

アスカ「ちょっと空気読みなさいよ!これは演出よえ・ん・し・ゅ・つ!!」

シンジ「え、演出〜?凝りすぎじゃない?」

アスカ「いいから早く、付き合いなさいよホラ!」

アスカ「ごめんなさい!待たせちゃった?」

シンジ「え?あ、いや、待ってないよ!全然!別に来なくても良かったのに!!」

アスカ「あ゛ん゛!?」

シンジ「あぁ、しまった!」

トウジ「なんや、惣流のあのぶりっこ演技は……気色悪ぅ……」

レイ「碇くん、完全にいつものノリを抜けれてないわね」

ケンスケ「碇ー!!後がつっかえてるっつってるだろーー!!」


アスカ「ほら、早くしなきゃ!もう、しょうがないからあんた、さっさと告白しなさいあたしに!」

シンジ「え、ええ!僕がアスカに!?」

アスカ「そうよ、ほら早く!」

シンジ「わ、分かったよ」

シンジ「……アスカの事が好きです。はい、これでいい?」

アスカ「ふっふーん、そう?あたしはねぇ……」

アスカ「い!や!」

シンジ「な!」

アスカ「いやいやいやいや!!あんたとなんてぜーったいいや!!」

シンジ「なんだよ!!お芝居の話じゃないか!!それにそこまで言うことないだろ!!」

アスカ「お芝居だろうとなんだろうと、あんたと付き合うなんてぜーったい無理!!きーもちわるぅぅい!!」

シンジ「ひ、ひどいよ!!大体、そこまで嫌がるならこんな役やらなければいいじゃないか!似合ってもない!!」

アスカ「ぬぁああんですってえええ!!」

リツコ「話にならないわね」

ミサト「あちゃー、アスカでもダメか。となると」

リツコ「ええ、少し邪道だけど」

リツコ「渚カヲル君、お願い出来るかしら?」

カヲル「おや、やっと僕の出番かい」

カヲル「交代しよう、セカンド。君にしては頑張ったんじゃないかい?」

アスカ「おえええ、これからホモ見せられるこっちの身にもなりなさいよ」

ミサト「えーではではでは!!今度こそ!!!」

ミサト「アークショーン!!!」

カヲル「やあ、碇シンジくん」

シンジ「おはよう、カヲル君」

カヲル「今日は一段と、いい風が吹いている。風は悠久だ。僕達を常に未来へと運んでくれる」

シンジ「そうだね、今日の風はなんだか気持ちいいよ」

カヲル「風だけじゃないさ。君といる、この世界そのものが心地よさを僕にもたらしてくれるんだよ」

シンジ「カヲル君、そんなふうに言ってくれるなんて、僕……」

カヲル「君といるだけで、世界がこんなにも美しく見える。これは、おかしなことかな?」

シンジ「カヲルくん……!」

トウジ「な、なんやあれぇ……なんやあれぇ……。うぇっぷ」ワナワナ

マヤ「きゃあああああああ!!不潔ですううううううう!!」

ケンスケ「よーし!良い感じだ碇ー!!」


カヲル「明日も明後日も、僕はこの素晴らしい世界で生きていたい。それを叶えてくれるのは君だ、碇シンジ君」

シンジ「カヲルくん!!ぼ、僕、その、なんて言ったらいいか、嬉しいよ!カヲル君に、そんなふうに言ってもらえて!」

カヲル「僕もさ。そして、僕と君のこの言葉の掛け合いから分かることがある」

シンジ「か、カヲル君……」

カヲル「君と僕はお互いに、好きってことさ」

シンジ「カヲル君……」

リツコ「ふむ、悪くはないわね。ただ……」

ミサト「これじゃあどっちがヒロインだか分からないわね、うーん……チェンジ!!」

ケンスケ「次だってよ」

アスカ「次って言われても……」

レイ「もう、全員一通りやったと思うけど」

トウジ「次って、誰がおるんや」

ケンスケ「まだやってない奴がいるだろ

トウジ「やってないやつぅ?」

トウジ「……ってまさか!」

ケンスケ「そう、お前だよトウジ」

トウジ「わ、わわわわワシィ!?」

アスカ「おええええええええ、ついに来るところまで来たわね、バカの掛け算とは!」

レイ「なんだか心がザワザワする……」

カヲル「不快な響きだね」

ミサト「っちゅーわけで、ラスト行くわよ!!」

ミサト「アークショーン!!!」

シンジ「……あ、と、トウジ!」

トウジ「お、おう……なんや、センセか」

シンジ「うん、あの、あのさ!今日はトウジに話したいことがあって、ごめんね」

トウジ「ええんやええんや、なんやワシとセンセの仲やないか、なんでも言ってくれてええんや」

シンジ「ありがとう、トウジ。今日は少し、真面目な話なんだよ」

トウジ「せ、センセ……」


マヤ「きゃあああああああ!!きゃああああああああ!!!もう見てられませえええええええん!!!!」

カヲル「ふむ、これもまたシンジ君の一つの選択か……」

ケンスケ「いいぞー!碇ー!トウジー!」

レイ「碇くん、なんだか楽しそう」

アスカ「バカの二乗なんかやってどうするってーのよ!?」

シンジ「トウジ……変かな。いつもトウジとは学校で騒いでたはずなのに」

トウジ「お、おう」

シンジ「最近さ、普段通りじゃないんだ。トウジといると、変な気分になんだよ」

トウジ「お、おおう」

シンジ「トウジ……ダメかな」

トウジ「な、何がや?」

シンジ「僕が、トウジの事好きになるのは、ダメかな?」

トウジ「そんな……」

トウジ「そんなわけ、あるわけないやろ!」

トウジ「ダメなんかやない!シンジ!ワシもお前のことが好きや!」

シンジ「トウジ!」

トウジ「シンジ!!」

ミサト「おー、結構良い感じじゃない!青春を共に過ごした学友との泥臭い恋かぁ、わーかいっていいわねぇ」

リツコ「ええ。でもどうやらこれもダメそうね」

ミサト「えー、どういうわけ?」

リツコ「物凄いバッシングが来てるわ」

ミサト「バッシング?」

リツコ「ペンネーム『G司令@息子が反抗期で困ってる』さんからよ」

ミサト「oh...」

リツコ「この企画もダメ……ね」

ミサト「はぁー……」

ミサト「ってなわけでー、新しく企画を考えましたーイェイ!」

アスカ「で、今度は何よ?」

ミサト「よく聞いてくれたわ!ズバリ、今回はサスペンスよ!」

トウジ「サスペンスぅ?」

ケンスケ「湯けむり殺人……か」

ミサト「隠された頭脳を持つ中学生探偵碇シンジ君が、難事件を次々と解決していくのよ!!」

カヲル「興味深いね」

ミサト「マジ、そろそろ切羽詰まってきてるから、急いで完成させるわよ!はい、これ脚本」

ケンスケ「どれどれ」

『山奥の温泉旅館へとやってきた中学生探偵碇シンジ。美しい山の景色を臨むこの温泉旅館で彼は悲劇の渦中へと巻き込まれる!憎悪に狂った性悪女惣流アスカラングレーによる計画殺人で殺害された、大企業の秘書綾波レイの秘密を追え!(ブラックゴッドボイス)』

アスカ「……」

アスカ「ぬあああによこれええええ!!あたしの役所に悪意しか感じないんだけどおおおおお!?」

ミサト「えー、そんなことないわよ。熟慮して、適任の役に当てはめたんだから」

アスカ「ふざけんじゃないわよ!!性悪殺人鬼なんかにされてたまるもんですかぁ!!」

アスカ「ファースト!あんたも殺される役なんて嫌でしょ!?何とか言ってやりなさいよ!!」

レイ「いい」

アスカ「いいって、あんたねぇ!?」

レイ「仕事なら、いい」

アスカ「ぬううううう、あたしは良くないわよ!!」

ミサト「ま、まーま、アスカ。この役所はさ、ある意味ヒロインみたいなもんだから」

アスカ「ヒロインんんん!?どこが!?」

ミサト「最後に、主人公である中学生探偵碇シンジ君に諭され、昔の純粋さを取り戻して涙するのよ?この役は歴としたヒロインよ」

アスカ「む、むうううう!ひ、ヒロインですってええええ、そんな言葉でこのあたしが……」

カヲル「ヒロインと言えば女主人公という意味だね」

ケンスケ「主人公と言えば、レッドだよな」

アスカ「れ、レッド!」

リツコ「あなたにしか出来ない、あなたでしか出来ない特別な役よ?」

冬月「特別、即ち君だけということだな」

アスカ「あたし……だけ?」

レイ「私を差し置いて、セカンドはヒロインになれるのね」

アスカ「ファーストを差し置いて……あたしがヒロインんんんん!?」

アスカ「……やるやる!あたしやるわー!!仕方ないからやったげる!!まあ?あたしにしか出来ないようだし!特別だからね!」

ミサト「チョロいもんね」

リツコ「余裕だわ」

マヤ「不潔です」

ミサト「じゃー、細かいキャスティング決めていくわよー!」

ミサト「まーず鈴原くん!」

トウジ「はい!!」

ミサト「君は旅館の主人よ!死体の第一発見者でもあるわ」

トウジ「はっ!分かりました!」

ミサト「続いて、渚カヲル君」

カヲル「出来ることならばやろう」

ミサト「君は狂言まわしよ!シンジ君に時にヒントを与えたりする不思議な少年!」

カヲル「了解したよ」

ミサト「はーいそしてぇー!相田くん!」

ケンスケ「なんなりと!」

ミサト「趣味と称して事件に首を突っ込もうとする困ったちゃん!」

ケンスケ「ははぁ!」

ミサト「ってなわけで、キャスティングオッケーかしらん?」

リツコ「そうね、間違いないわ。では、みんな位置について」

ミサト「どぅえええわあああああ!位置についてーアークショーン!!」

レイ「」

トウジ「……ひっ!し、死んどる!!」

レイ「」

トウジ「ど、どないすればええんや!?せや、まずは警察!」

レイ「」

トウジ「で、電話線が切られとる!」ガガーン

レイ「」

トウジ「ゆーことはつまり……」

シンジ「外部からの接触を断たれた……というわけですね?」

トウジ「あ、あんたは!?」

シンジ「碇シンジ、通りすがりの探偵です」

ケンスケ「碇シンジ、聞いたことがあるぞ!最近有名な中学生探偵……!」

アスカ「な、なんですってー。なんでそんなすごい人がここにー」


ミサト「アスカ以外は問題なさそうね」

リツコ「まあ、これくらいは想定の範囲よ」

カヲル「どうやら、犯人の姿が見えてきたようだね」

シンジ「つまり犯人は、前々から気に入らなかった綾波さんを、計画的に殺害した」

ケンスケ「なになに!犯人が分かったんですか!?」

シンジ「後は一つ、動かぬ証拠さえあれば!」

カヲル「大丈夫。真実が、自ずとその証拠を君に与えるだろう。この推理が正しいのならね」

ケンスケ「ま、まさか!?あの中学生探偵の推理が見られるっていうのかぁ!?」

レイ「」


ミサト「良い感じよー!!そのままやっちゃって!!」

シンジ「つまり、綾波さんを殺したのは惣流さん、あなたですね?」

アスカ「なっ!ち、違うわよ!なんで私が!」

トウジ「動機ならある。せやろ、探偵さん?」

シンジ「ええ。あなたは日頃から、被害者である綾波さんに対して鬱憤が溜まっていた」

アスカ「だからあたしが人殺しだってぇの!?」

シンジ「あ……いや、あの」

アスカ「その程度であんた、このあたしを言い落とそうってんならいい度胸してるわねぇ!!言いがかりだとしたらただじゃおかないわよ、根暗探偵!!」

シンジ「ね、根暗……」

トウジ「ちょ、惣流お前いい加減にせえ。全然脚本にあるのと違うやないか」

アスカ「なによ、文句あんの!?」

トウジ「お前は犯人役で、今、心の弱いところを付かれて主人公に言い負かされていくシーンやないか!」

アスカ「なーんでこんな根暗探偵に言い負かされなきゃいけないのよ、このあたしが!ふざけたこと言うのも大概にしときなさいよ!」

トウジ「なんやとぉ?それはお前、ワシがふざけとる言うんか!?」

アスカ「そうよ!!三バカの癖に!!あたしに文句があんならはっきり言いなさいよ!!」

トウジ「おうおう!じゃあはっきり言わせて貰うけどな!!ワシはお前のその自分勝手過ぎるところがどーにも気に食わん!!もー少し誰かのために協調性ゆーもんを持たんか!!」

アスカ「あんですってぇ!?このジャージバカ!!このあたしがあんたのバカさに合わせろってーの!?そっちが努力してあたしに追いつきなさいよ!」

トウジ「なんやとぉ!?他人の悪口ばっかりはよう出てくるようやけどなぁ!こっちも言わせて貰えばお前のその分別のない振る舞いのせいでなぁ!!」

ケンスケ「ま、まあまあ二人とも」

トウジ・アスカ「「お前(あんた)は黙ってろ(なさい)!!」」

ケンスケ「……」

レイ「」

カヲル「付き合いきれないね」

カヲル「シンジ君、どうやらこれでは舞台にならないようだ。折角の君の晴れ姿が台無しになってしまって僕も悲しいよ」

シンジ「カヲル君、僕は……」

カヲル「君が恐れる必要はない。時の流れというものは、いたずらに人を惑わせることもある。リリンはただ、それに身を委ねるしかない弱い種族だというのにね」


ミサト「あーもうなんか、メチャクチャになってきたわね」

ミサト「とりあえず止めた方がいいかしら」

ミサト「ちょっとあんた達……」


レイ「うるさいって言ってんのよ!!」

「「「「「!!!」」」」」ビクッ

レイ「あんた達ねぇ折角この私がわざわざずっと死体なんかの役やってるっていうのに好き勝手やっちゃってどういうわけ?」

レイ「まずセカンド!」

アスカ「は、はい!」

レイ「あんたほんと前々から他人にバカバカ言う割に自分も大して頭良いとは思えない行動が多いし勉強はできてもむしろあんたの方が馬鹿なんじゃないのなーにーカルシウム足りてないのイライラしすぎじゃないちょっと外見に自信があるからっていい気になっちゃってほんと典型的なバカ女って感じで笑っちゃうのよねー」

レイ「次、碇くん!」

シンジ「は、はいぃ!」

レイ「あんたもさー、いくら主人公張って甘やかされるポジションだからってちょっとウジウジしすぎなのよネチャネチャしてないで男なら時には言いたいことの一つも言いなさいよ私がその姿勢に対して何にも感じてないとでも思ってたんでしょやろうと思えばビンタの一つや二つや三つや四つや五つや六つや……」

レイ「あとそこの二人!」

トウジ・ケンスケ「「は、ははぁ」」

レイ「あんたらさー行動には気をつけなさいよあんたらがやってる行為なんてあと四年もしたらバカですまされなくなんのよ若気の至りとは言ってもちょっと考えもんなのよそこんところしっかり理解してんでしょーねー」

レイ「……ふぅ」

レイ「すっきりしたわ。四人とも、ありがとう」


ミサト「こ、この場を簡単に収めた」

リツコ「なかなかのものね」

カヲル「綾波レイ、君は興味深いよ……」

ミサト「で、結局全部ボツかぁ」

リツコ「まあ、あれじゃあ仕方ないわね」

ミサト「司令からの直々の要望なのに。……首飛ぶのかなぁ」

リツコ「安心して、それはないわ」

ミサト「つーと?」

リツコ「ボツになったビデオを全て、司令が欲しがっているのよ。どうやら期待に沿うものに仕上がってくれたらしいわ」

ミサト「えーどういうことよ?まともなのが出来てないわよぉ?」

リツコ「さあ?司令の考えることは、よく分からないわね」フフ

アスカ「ちょっと、ファースト!」

レイ「なに」

アスカ「あたしはさっきのこと、まだ認めたわけじゃないからね!あんなの不意打ちよ!」

トウジ「もうやめーや惣流、なんかワシは疲れてきてもうて」

アスカ「あんたの事も!さっきはよくも言ってくれたわね」

トウジ「口喧嘩なら明日にしてくれ。ワシはもう帰って寝る」

アスカ「ちょっと、逃げるってーのー!?」

カヲル「セカンドはリリンの女性の中でも特に美しさに欠けるようだ」

カヲル「まあ僕は、そんな露見的な美しさには興味はない」

カヲル「シンジ君、君の心と生き方は、まだ何者にも触れていない。純粋で美しいよ」

ケンスケ「はぁ、結局裏方に徹したはいいけど、ろくなものは出来なかったなぁ」

ゲンドウ「……」

冬月「……」

ゲンドウ「……」

冬月「……」

冬月「酷いクオリティだな」

ゲンドウ「ああ」

冬月「だが、これで良かったのだろう?」

ゲンドウ「……ああ」

冬月「劇場版最新作を見て以来ナイーブだったお前が、気に入るのなら作らせた甲斐があったよ」

冬月「しかし、こんなおとぼけビデオのどこがいいというんだ?え?」

ゲンドウ「……」

ゲンドウ「シンジが友達と楽しそうにしているじゃないか」

冬月「……」

冬月「なるほど、お前もユイ君の夫となった人間……というわけか」

ゲンドウ「……ああ」


終劇

書き忘れたけどいわずもがな終局の続きネタでした
読んでくれた人は毎度あり

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