衛宮邸
凛「せーいっ!!」ドガッ!!!
士郎「くっ……!?」
凛「ちょっと、士郎。手加減してない?」
士郎「いや、別にしてないぞ」
凛「練習にならないでしょ」
キャスター「あらあら。また野蛮なことをしているようね」
凛「む……」
士郎「キャスター、いらっしゃい。また料理教室か?」
キャスター「坊やには関係のないことよ」
士郎「桜のレシピが役にたってるみたいで良かったよ」
キャスター「それでは私は急いでいるから、手癖の悪い魔術師とそのまま戯れていなさいな」
士郎「そうする」
凛「んー? それってどういうことかしら、衛宮くん?」
士郎「あ、いや、深い意味はないぞ」
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凛「大体、手癖が悪いっていうのも聞き捨てならないわね、キャスター?」
キャスター「あら、そうかしら。見たままの光景を口にしただけなのに」
凛「これは体術の特訓よ。あんまりサボってると腕が錆びるのは、魔術も同じでしょ」
キャスター「ふぅん。私には分からないけど、そういうものなのね」
士郎(キャスターの魔術の腕が錆びるなんて、確かに考えにくいよな)
凛「いい? 現代の魔術師はね、体術習得が必須なのよ。いくら砲台が大きくても、懐に入られたら何もできなくなる」
凛「昔の魔術師はその弱点から目をそらして、魔術の威力向上ばかりを目指していたみたいだけど、そんなのは古いのよ」
キャスター「言うわね。懐に入ることができない魔術師が存在していたとは考えないのかしら」
凛「昔なんて関係ないわ。今、この時間においては、体術を見下す魔術師は生き残れないってだけよ」
キャスター「魔術から逃げ出して、他の力に頼るのは現代魔術師の弱点かしら?」
凛「なんですって……」
キャスター「体術を磨く前に女としての気品も磨いたほうがいいわね」
凛「……」
士郎「遠坂、落ち着けって。キャスターはほら、桜の大事なお客さんなんだし」
凛「ふっ。そうね。オバサンに私たちのことを理解してもらおうとしたのがいけなかったのよね。反省しなきゃ」
キャスター「挑発にしては、随分と安っぽい言葉をならべるのね」
凛「こめかみに青筋が見えるけど、錯覚かしらね」
キャスター「小娘に付き合っているほど、私も暇ではないのよ」
凛「あんたから突っかかってきたくせによくいうわね」
キャスター「あまりにも粗暴なことをする魔術師がいるから、見るに見かねただけよ」
凛「その粗暴な魔術師に後れを取るのが、化石魔術師の残念なところよね」
キャスター「……」
士郎「キャスター、ほら、桜が待ってるから」
キャスター「面白いわ。そこまでいうのなら、現代の魔術師がどれほどのものか、見せてくれるかしら」
凛「ええ、こんな品の欠片もない魔術師でよければ、相手になるわ、オバサン」
キャスター「また言った! オバサンって言った! もう許さないわよ!! 小娘!!」
凛「サーヴァントだからって調子に乗らないで!! キャスターぐらいなら素手で倒せるだから!! 実際、一度ボコボコにしちゃってるし」
キャスター「あれは油断していただけよ!!! 奇跡は魔法以外じゃ起こせないのよ!!」
凛「あーら、それならもう一度奇跡を起こしてみせましょうか、メイガス?」
士郎「お、おい、やめろって、二人とも。なんでさ、なんでケンカになるんだよ」
キャスター「どこからでも来なさい、青二才」
凛「いいの?」
キャスター「私に触れることもでき――」
凛「せーいっ!!!」ドゴォッ!!!
キャスター「ごっ……!?」
士郎「キャスター!?」
凛「はい。現代魔術師の勝ちね」
キャスター「ま、まちなさい……いまのは……ふらいんぐ……」
凛「どこからでも来ていいって言ったのはキャスターでしょ」
キャスター「くっ……」
凛「葛木先生が前衛にいなきゃ、何もできないのね」
キャスター「……」
士郎「遠坂、それは言い過ぎだぞ」
凛「ふんっ」
キャスター「……かえる」
士郎「え?」
キャスター「もう、帰るわ」
士郎「待ってくれ。桜との約束があるんじゃないのか」
キャスター「坊やから、言い訳しておいて」
士郎「キャスター……」
キャスター「さよなら」
士郎「遠坂、あれはどうかと思うぞ」
凛「何がよ」
士郎「キャスターが傷ついてたじゃないか」
凛「知らないわよ。こっちだってね、色々と苦労してるの。それをあんなふうに言われたら、腹だってたつわ」
士郎「それは分からなくもないけど」
凛「体術の習得まで課せられる泥臭い私のことなんて、天才のキャスターには分からない」
士郎「……」
凛「さ、続きを始めるわよ、士郎」
桜「あ、せんぱーい、ねえさーん。キャスターさんを見ませんでしたかー? そろそろ来るころなんですけどー」
冬木市
キャスター「くっ……くくく……」
キャスター「この私が……現代の魔術師に、それもあんな小娘に劣っている……ですって……」
キャスター「あり得ない……そんなこと、認められるものですか……」
キャスター「そんなこと、あっていいはずがない……」
キャスター「そうよ!! これは夢!! 私はただ、長い悪夢を見ているだけなのよ!!!」
キャスター「早く夢から覚めないと。こうして瞼を閉じれば、きっと宗一郎様の顔が近くに――」
セイバー「何をしているのですか」
キャスター「あら、可愛い。このまま連れ去ってしまいたい」ガシッ
セイバー「離せ、下郎」パシッ
キャスター「あぁ」
セイバー「人の往来で夢想ですか。願望を描くのは勝手ですが、時と場所を選んだほうがいいでしょう」
キャスター「うぅ……うぅぅぅ……」
セイバー「キャスター?」
キャスター「やっぱり……夢じゃないのね……うぅぅ……」
セイバー「――なるほど。リンに打ち負かされてしまったのですか」
キャスター「魔術師としては無論、私のほうが格上ではあるのだけど、あんな戦術を用いられるのは不意打ちに他ならないわ」
セイバー「現代の魔術師のスタイルはシロウも含め、やはり前衛で戦うのが主流のようですからね」
キャスター「そういえば、どこかのゴリラもサーヴァント相手に素手で戦っていたわね」
セイバー「バゼットのことですか……。あれは特殊な部類かと……」
キャスター「昔はよかったわ。魔術さえ優れていれば、周囲は畏怖し、称えたというのに」
セイバー「時代が変われば、戦い方も変化する。その変化に適用できなければ、時代に取り残されることになる」
キャスター「貴方も魔術師は肉弾戦をするべきだと、思っているわけ?」
セイバー「いえ。とんでもありません。そんなことをされたら、私の立場がなくなってしまう」
キャスター「でも、このままあの小娘に馬鹿にされるのも癪ね……。魔術師としては邪道だというのに……」
セイバー「キャスターはごく身近に体術の師となる者がいるではないですか。教えを乞うことで弱点を克服できるかもしれませんよ」
キャスター「何を言っているのかしら。とっくに宗一郎様には頼んでいるわよ。毎朝、宗一郎様は朝の体操として、あの不思議な拳法の特訓をしているのだから」
セイバー「その体操を共にしていれば、身につくのでは?」
キャスター「だから、私も頼んだのよ。その体操、ご一緒してもいいですかって。でも、宗一郎様はね、こういうの。「お前の繊細な手は他のことに活かして欲しい。例えば、料理とかにな」っていうのよー!! キャー!!」
セイバー「……」
キャスター「宗一郎様のさりげない心遣いが私の五臓六腑を満たしていくぅ……」
セイバー「つまり、あの特殊な体術を学ぶことはできないということですか」
キャスター「そうね。どうしたらいいかしら」
セイバー「私に訊かれても……」
キャスター「私はこのままでも十分強いけれど、体術を身につければもっと強くなれるのは確かね」
キャスター「筋力A+も夢ではないような気がするもの」
セイバー「その向上心たるや尊敬に値しますが……」
キャスター「どこかに私を満足させてくれる者はいないかしら」
セイバー「リンの体術の師に頼むというのは?」
キャスター「誰のこと?」
セイバー「コトミネキレイです」
キャスター「却下よ。どうしてあの神父に頭を下げなければいけないのかしら」
セイバー「では、バーサーカー……」
キャスター「ダメよ!! それだけは絶対に!!!」
セイバー「むぅ。我儘ですね」
キャスター「セイバーが先生になるっていうのは?」
セイバー「私が教えられるのは剣術ぐらいです。体術を教えることはできません」
キャスター「剣術でもいいじゃない。要は魔術を使わず、ショートレンジで戦えればいいんでしょう」
セイバー「端的に言えばそうなりますが」
キャスター「それでいいじゃない。私もセイバーの近くにいる口実ができるし」
セイバー「どういう意味ですか」
キャスター「さぁ、行きましょう。柳桐寺には剣を振るうだけの場所もあることだし」
セイバー「勝手に話を進めないでください。私は了承した覚えはありません」
キャスター「私が小娘なんかに虚仮にされていてもいいというの」
セイバー「百歩譲ってリンの非礼を本人に代わり私が詫びてもいい。しかし、剣術を教えるかどうかは別の話です」
キャスター「そんなこといわないで、セイバー。お願い」
セイバー「しかし、今は敵対していないとはいえ、本来は殺しあう間だ。その相手を強化する手助けをするなんて……」
キャスター「何を言っているのよ。セイバーは剣聖。私がほんの少し努力したところで、貴方には敵わない。私はあの小娘にさえ勝てればいい。セイバーには未来永劫、勝利なんてできないでしょ」
セイバー「確かに……」
キャスター「私が剣術を齧ったところで、勢力図に変化なんて起こりようもないのよ。だから、いいでしょう?」
柳桐寺
セイバー「……」
一成「セイバーさん? いつ、こちらに?」
セイバー「つい先ほどです」
一成「では、衛宮も一緒ですか」
セイバー「いえ、今日は私だけです」
一成「失礼ですが、どういった用件で?」
セイバー「鍛えてほしいと言われたのでここまで足を運んだのですが……」
一成「え……?」
セイバー「あれでは話になりませんね」
キャスター「ちょっとー!! 私は竹刀が重いって言っただけじゃない!! ちょっと力を使って軽くするぐらいいいじゃない!!」
セイバー「ですから!! それでは打ち負けると言っている!!」
キャスター「そんなわけないでしょ。セイバーの竹刀だってちゃんと軽量化してあるもの」
セイバー「ええ。確かに随分と軽い。まるで風を纏っているかのようだ。では、この剣戟を貴方は捌けますか?」ブンッブンッ!!!!
キャスター「ひぃ……」
一成「セイバーさん、何を……!!」
セイバー「竹刀を軽くしたところで、相手の速度についてくることができなければ貴方はただ向かってくる妙技に怯えるだけだ。今のように」
キャスター「でも、私、ルールブレイカーより重いものは持てないし……」
セイバー「深窓の嬢でもあるまいし……」
キャスター「短剣でなんとか教えてくれないかしら」
セイバー「それならばアーチャーのところへ行ってください。短剣の扱いに関しては、私よりも秀でていると思います。なにせ、シロウが真似するぐらいですから」
キャスター「私はセイバーに頼んでいるのよ。たとえ短剣であろうとも、剣の扱いに関して右に出る者はいないはず」
セイバー「……」
キャスター「それともセイバーは、弓兵よりも劣っているというのかしら。ふふふ」
セイバー「そんなわけがない。私はセイバーだ。最強であることを自負している」
キャスター「だったら、短剣の扱い方も最強でしょう」
セイバー「無論です。剣の長さに得手不得手はありません。私は、セイバーですから」
キャスター「それなら、お願い」
セイバー「仕方ない。ここに短刀があります。持ってください」
一成(セイバーさん、騙されていないだろうか……)
衛宮邸
桜「はぁ……。結局、キャスターさん、来てくれなかった……。料理レシピの交換会、楽しみにしてたのに……」
ライダー「残念ですね」
桜「はぁ……ホントに……」
凛「お茶が美味しい」
士郎「遠坂。桜には謝ったのか」
凛「帰ったのはキャスターの意志でしょ。私は関係ないわ」
士郎「あのなぁ」
凛「いいじゃない。あの化け物に魔術では絶対に勝てないんだから。体術ぐらいは勝っていないと、バランスが偏るでしょ」
士郎「遠坂の言いたいことはわかるけど」
セイバー「――リンの言うことにも一理あります」
士郎「セイバー、おかえり」
セイバー「ただいま戻りました、シロウ」
凛「急にどうしたの、セイバー?」
セイバー「やはり、私は暗黙の禁を破ってしまったのかもしれませんね」
凛「どういうことかしら?」
セイバー「庭のほうへ来てください」
凛「庭……?」
ライダー「どうやら、客人がいるようですね」
士郎「こんな時間に客って……」
凛「な……!?」
キャスター「フフフ……」
桜「キャスターさん!」
キャスター「今日は約束を反故にしてしまったわね。謝るわ」
桜「そんな、いいんです。では、早速、愛妻弁当のレシピを――」
キャスター「それはまた後日にさせてもらえるかしら」
桜「えぇ……」
ライダー「愛妻弁当……?」
キャスター「もう一度、お手合わせ願えるかしら、小娘」
凛「当然、魔術なんて無粋なものは使用しないわよね?」
キャスター「ええ。私にも矜持があるもの。現代の魔術師と同じ土俵で戦うわ」
凛「いい度胸ね。また泣くことになると思うけど」
キャスター「好い気になっていられるのも今の内よ。何せ、私は生まれ変わった。そう、真・キャスターとでも呼んでくれていいわ」
凛「それ、自分で言ってて恥ずかしくないわけ」
キャスター「さぁ、どこからでもかかってきなさい」シャキンッ
凛「その短剣は……」
キャスター「特訓の成果を見せてあげるわ」
凛「面白いじゃない」
士郎「やめてくれ!!」
セイバー「シロウ、止めてはなりません」
士郎「なんでさ!?」
セイバー「キャスターにも譲れないものがあります。彼女もサーヴァントなのですから」
士郎「でも……」
キャスター(フフフ、丸腰相手に聊か卑怯かもしれないけれど、小娘が悪いのよ。私を、私を本気にさせるから)
凛(隙だらけね。一発で倒しちゃってもいいのかしら)
ライダー「この勝負、一瞬で終わります」
桜「え……」
キャスター「来ないなら、こちらから行くわよ」
凛「……」
キャスター「やー」テテテッ
凛「ふんっ!!!」ドゴッ!!!!
キャスター「がっ……!?」
士郎「キャスター!!!」
桜「姉さん……!!」
凛「……」
キャスター「ま、まち、なさい……これ、これは……あ……う……うぅぅ……」
凛「まだやるの?」
キャスター「きょ、今日の、ところは、これぐらいに、してあげるわ……フフフ……いのち、びろいしたわね……こ、むす……め……」
士郎「だ、大丈夫か?」
キャスター「坊やに心配されるほど、安い女じゃないのよ……今日は、もうかえるわ……」
セイバー「考えてみれば、相手が素手ということを忘れていた。キャスターには対剣士用の戦法しか教えていませんでした」
ライダー「セイバー。貴方の業はとても深いですね」
桜「キャスターさん!! 怪我は!?」
キャスター「気にしないでいいわよ。少し、呼吸が、しにくいだけだから……」
桜「それって、結構なダメージ……」
士郎「遠坂!!」
凛「これは魔術師同士の戦いなのよ、士郎。甘い考えじゃあ、こっちが殺されるわ」
士郎「確かにキャスターは短剣を持ってたけど、だからってあそこまで完璧なカウンターを決めることないんじゃないか」
凛「思いのほか綺麗に決まったのは認めるけど、それはキャスターが隙だらけだったからよ」
キャスター「うぅぅ……」
桜「姉さん!! そこまで言わなくても!! キャスターさん、泣いているんですよ!?」
凛「だからなによ。魔術師の戦いで泣き言なんて許されないわ」
セイバー「キャスター。今日のところは出直したほうが無難です」
ライダー「おやすみなさい、キャスター」
キャスター「うぅぅ……そーちろうさまぁ……」
冬木市
キャスター「おなかいたい……」
キャスター「これほどまで、愚弄されたのは久しぶりね……。魔術なら、あんなチンチクリン、一捻りなのに……」
キャスター「そう、魔術なら勝てるのよ。魔術なら……」
――昔の魔術師はその弱点から目をそらして、魔術の威力向上ばかりを目指していたみたいだけど、そんなのは古いのよ。
キャスター「フフフ……。弱点……。弱点ね……。セイバーや宗一郎様のような一流の武術家を相手にするなら話は別だけど、格下の魔術師相手に無様を晒すのだけは我慢できない……」
キャスター「自分が、許せない……」
キャスター「でも、どうすることもできない……セイバーにも頼んだのに、あの有様……」
キャスター「筋力A+にステータスが更新されてもいないし……」
キャスター「無駄な努力だったのかしら……」
キャスター「あ、買い物いかないと」
アーチャー「こんなところで何をしている」
キャスター「あら、貴方こそ。その買い物袋、似合っているわよ」
アーチャー「なに。私のマスターはサーヴァントを召使いと勘違いしているようでね。こうして食料の買い出しをよく頼んでくる。今日の特売は上質なものが多かったので、買い物をする価値はあったがね」
キャスター「そうなの。私も急がないと」
アーチャー「待て。特売の終了までは30分ほど猶予がある」
キャスター「それがどうしたの?」
アーチャー「私には関係ないことなのだろうが、どうしても気になることがあってね。それで声をかけた」
キャスター「何が言いたいのかしら」
アーチャー「これも性分でね。気を悪くさせるかもしれないが、訊ねないわけにはいかない」
キャスター「聞きたいことでも?」
アーチャー「――何故、ここで泣いていた?」
キャスター「……」
アーチャー「話す気がないことは分かっている。一応、聞いただけだ」
キャスター「……」
アーチャー「足を止めさせたな。急がなければ他の猛者に食いつくされ、特売は終了する。台所を守る身であるならば、急いだほうがいいだろう」
キャスター「貴方も……その……得意だったわね……」
アーチャー「ん? 何か言ったか?」
キャスター「私の話を聞いてくれるかしら」
アーチャー「声をかけたのは私のほうだ。キャスターがこちらの都合を伺うことはない」
アーチャー「――我がマスターが失礼なことをしたようだな。謝罪しよう」
キャスター「貴方から謝辞を聞きたいわけではないし、これは魔術師の戦い。そこに礼儀はあっても、罪悪はない」
アーチャー「それもそうだな。そして、キャスターは我がマスターを体術で負かしたいと?」
キャスター「現代の魔術師が前衛で戦うというが主流になっているというなら、私もそれに倣うだけの話よ」
アーチャー「神代の魔女が体術に拘るとはね」
キャスター「おかしいかしら」
アーチャー「いや。努力し、自分を高めようとする者を見るのは嫌いではない。そうした理由なら、私も手助けできるかもしれない」
キャスター「いいの? 貴方のマスターに危害を加えると私は言っているのよ」
アーチャー「ふっ。構わん。私の知らないところで危険にさらされようと、リンならば自力でなんとかするだろう」
キャスター「あら、随分と信頼しているのね」
アーチャー「手を貸せばむしろ怒号が返ってくるだろうからな。我がマスターの性根は中々、ねじ曲がっている」
キャスター「そういうことなら気兼ねなく頼めそうね」
アーチャー「セイバーからの教えはどうするつもりだ」
キャスター「私は裏切りの魔女よ。傍に利用できるものがあれば、全てを絞り尽くして、捨てるわ」
アーチャー「なるほど。セイバーの教えも私の教えも吸収し、リンに挑むということか。キャスターがそこまで武闘派だとは知らなかった」
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