男「NHKです。受信料の徴収に来ました。国民の義務ですよ」 (35)

男「俺は必殺徴収人。その徴収率は100%」

男「今回の依頼はこのエリア。何でも、7世帯の厄介な未契約者がいるらしい」



男「未契約1、居留守のジョー」

男「未契約2、逆ギレのトニー」

男「未契約3、理屈屋のスミス」

男「未契約4、泣き落としのメアリー」

男「未契約5、ルームシェアしてる中国人」

男「未契約6、山下君は嘘つき」

男「未契約7……別紙参照? まあいい」



男「百戦錬磨の猛者達が徴収し損ねた難攻不落の砦……相手にとって不足なし!」

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男「まずは未契約1、居留守のジョー」

ピンポーンシーン

男「部屋の灯は確認済み。居留守だな」

ガチャガチャ

男「鍵有りと。この場合は張り込みをするのがベターだが、俺は必殺徴収人。常に最速ラップを叩き出す」



ジョー「へへ、行ったかな?」

『大変だ! 街中にゾンビが溢れてやがる!』

ジョー「な、なにぃ!?」

『生存者は居ないかー! 居るなら返事をしろー!』

ジョー「あわわわわわ」

『……これで全員か。よし、この街を封鎖しよう』

ジョー「ヘルプミー!!!」ドタバタ

男「生存者か! ゾンビは金が好物だ! 全財産を渡せ!」

ジョー「は、はいぃ!」



男「徴収完了。居留守を使うチキン野郎は、不測の事態に弱い。ピンポンから15秒弱……まずまずだな」

男「次は未契約2、逆ギレのトニー」

ピンポーンガチャ

男「NHKです。受信料の徴収に来ました。国民の義務ですよ」

トニー「ハァア!? こちとらアメリカンだよ舐めてんのかアァン!?」

男「逆ギレだな。こうなると正論は逆効果。日を改めるのがベターたが、俺は必殺徴収人。モットーは悪・即・斬」



トニー「英文の契約書くらい用意しろよ不親切だろアァン!?」

男「ソーリー! スタンプポン! トニーマネーガッポガッポ! ドューユーアンダースタン?」

トニー「オー!! マネーガッポガッポ!?」

男「イエス! ビッグチャンス!」

トニー「ワーオ!! テンキュー!!」スタンプポン



男「徴収完了。夢見がちな米国人は、けしてチャンスを逃さない。今回は、それが仇となったな」

男「次は未契約3、理屈屋のスミス」

ピンポーンガチャ

男「NHKです。受信料の徴収に来ました。国民の義務ですよ」

スミス「ああ、私はイギリスの外交官でね。受信契約の対象外になっているはずだが……」

男「屁理屈だな。本来であれば本社に問い合わせるのがベターだが、俺は必殺徴収人。みすみす見逃すミスはしない」



スミス「申し訳ないが、しっかりと規約を確認してから出直してくr

男「チョイサアッ!!!」バチコン

スミス「グボァ!? ホ、ホワイ!?」

男「NHKを舐めすぎたな小僧」

スミス「こ、これは国際問題だぞ! すぐに本国に連らk

男「ふんッ!!!」糸クイ

スミス「ふぐ、く、首がッ!!!」ジタバタ

男「受信料を払うか死ぬか! 選べ!」

スミス「ひ、ひゃら、う……払ううぅぅ!!!」



男「徴収完了。言葉など、圧倒的な暴力の前では糞の役にも立たない。外交官か……皮肉な話だ」

男「次は未契約4、泣き落としのメアリー」

ピンポーンガチャ

男「NHKです。受信料の徴収に来まs

メアリー「ひぅ、うぅ……くすん」

男「泣いている。男ならばソッと抱き締めてやる所だが、俺は必殺徴収人。漢字の漢と書いて漢(おとこ)」



メアリー「うぇ~ん」チラ

男「ピギャアアアアア!!!!!」

メアリー「ビクッ!?」

男「オンギャアアアアア!!!!!」

メアリー「えと、あの……」オロオロ

男「アオンアオンアオオオオオン!!!!!」ジョボボボボボブリブリブリウニハマチ

メアリー「」

男「……お家に帰るので電車代下さい」

メアリー「あ、はい」



男「徴収完了。女の武器は涙。TPOなど意に介さない。とどのつまり、垂れ流し。話にならん……難易度Eだ」

男「次は未契約5、ルームシェアしてる中国人」

ピンポーンガチャ

男「NHKです。受信料の徴収に来ました。国民の義務ですよ」

中国人1「ナニ言テルアルカ?」

中国人2「ソレヨリ麻雀ヤローヨ! ワタシタチ友ダチ」

中国人3「ヤトメンツ揃タネー」

男「賭け麻雀だな。警察に連絡すれば終わりだが、俺は必殺徴収人。雀聖と呼ばれた男」



中国人1「……マタ天和アルカ」

中国人2「アイヤー! オタク強イネ」

中国人3「マダマダコレカラネ」

…………

男「こいつぁ驚いた。こんなことってあるんだなぁ……」牌パタパタパタパタ

中国人123「「「アイヤー!!!」」」



男「徴収完了。俺は、積み込みこそが芸術だと思っている。技術があるのなら……真似ても良いんだぜ?」

男「次は未契約6、山下君は嘘つき」

ピンポーンガチャ

男「NHKです。受信料の徴収に来ました。国民の義務ですよ」

山下君「あ、ボクのウチ、テレビないです……」

男「嘘っぱちだな。家宅捜査をすれば一発だが、俺は必殺徴収人。もはやテレビの有無は関係無い」



山下君「ウチ、パパが居なくて……その、貧乏だから、ママはずっと働いてて……」

男「この金でテレビを買え」

山下君「え、良いの!? で、でも……」

男「安心しろ。一年分の受信料は引いてある。余った分は、ママに電気代だと渡すんだ。良いな?」

山下君「う、うん! ありがとう! おじさん!」ニコ



男「徴収完了。受信料支払いは果すべき義務。そして、NHKの視聴は得るべき権利だ。坊やには、少し難しいかもしれないな」

男「最後は未契約7……情報は別紙参照だったな。どれどれ……」

男「……ふん。肩透かしだな。この程度の奴から受信料を徴収出来ぬとは、呆れてものも言えん」

男「ま、何にせよ、ここをクリアすれば依頼は完遂だ。さっさと終わらせよう」

男「……情報によればこの時間、奴は必ず家に居て、インターネットに興じているはず」

男「何やら訳の分からん掲示板で、SSなるモノを読んでいるらしい」

男「ピザの宅配でも装えば容易いだろうが、俺は必殺徴収人。獅子は兎を狩るにも全力を尽くす」

男「……やり口は変えない。これまで通り、チャイムを鳴らし、すかさずドアを開け、高らかにこう言うのだ――」



男「NHKです。受信料の徴収に来ました。国民の義務ですよ」



fin

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