飛鳥「あいさん、それはボクの箸だよ」 (18)




モバマス・二宮飛鳥のSSです。
駄弁るだけの話です。




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1457427450




あい「……おや、これは申し訳ない」

飛鳥「や、構わないけど。しかし」

あい「せっかくだし取ってあげようか。サラダがいいかな。だし巻きにしようか」

飛鳥「あいさん」

あい「ほら、あーん」

飛鳥「あいさんってば」



P「だいぶ酔ってますね」

あい「……そう見えるかい」

P「ええまあ」

飛鳥「これで酔ってないんだったら、あいさんのイメージは足元から瓦解するところだよ」

あい「フフッ、参ったな。後輩たちに醜態を晒すことは控えたいんだが」フラッ フラッ



あい「……君のせいだよ」クイッ

P「え、ちょっと、あいさん、ちょっと待」

飛鳥「……ジンジャエールのおかわりお願いします」





比奈「何スかねこの飲み会」グビ

惠「まあまあ、私たちも飲みましょうよ」プハー



* * * * * 



ー イベント打ち上げ・居酒屋の個室 ー



真奈美「ふむ。状況をまとめると、つまり」

P「まとめるも何も、真奈美さんも目の当たりにしているこれが全てでして……」



あい「……」ニコ

真奈美「少し遅れて参加したらこの惨状か……やれやれ」



真奈美「あい、しっかりしろ。私がわかるか?」ポンポン

あい「……フフッ、私がわかるかだって? 当たり前じゃないか、君と私の間柄なんだぞ」

真奈美「落ち着け」

あい「私が人生で全幅の信頼を置いている人間を三組挙げるとするなら、一に両親、二にサックスを手ほどきしてくれた恩師、そして三にプロデューサーくんだというのに」

真奈美「今の流れで私を挙げないとはどういう了見だ」

あい「……」

真奈美「……」

あい「すまん、間違えた。三に木場真奈美、君だ」

真奈美「よしたまえ。その修正は脱落したプロデューサー君の心に刺さる」



P「えっいや……大丈夫ですよ」ズーン

真奈美「目に見えてショックを受けているじゃないか」

飛鳥「くくっ、残念ながらあいさんのベスト3には残れなかったようだね」ポンポン

P「なっ、悔しくなんかないぞ!」





惠「飛鳥ちゃん、悪い顔してるわねー」グビグビ

比奈「14歳に茶化されるプロデューサーって……ねぇ」ゴクゴク




* * * * *



あい「♪」

飛鳥「や、だからあいさん、それはボクの箸で」

あい「ああ、ああすまない。そうだったね。返すよ」

飛鳥「……どうも」

あい「何かこう……ね、アレだね。橋をかけたみたいなね。箸だけにね」プフーッ

P「酷い」

飛鳥「ボクの中の魅力的なあいさん像は存亡の危機だよ」

真奈美「むしろまだ危機で済んでいるあたり、普段の人望が伺えるな」



P「以前お花見でお酒を飲んだ時には、頑張って自分を保っていたんだけどな」

飛鳥「……とはいえ」

あい「♪ー」



飛鳥「(髪をかきあげる仕草。少しうつむき加減のその表情。そのすべてが)」

飛鳥「(……顔はお酒でもう真っ赤だが、それでも仕草が絵になる。不思議な人だ)」





真奈美「……酷く酔ったものだな」

あい「ああ、すまないね。だが大丈夫だ」

真奈美「どこが大丈夫なのか問いたいものだよ」

あい「ふふっ、酔っているのは酒にだろうか。それとも、君にだろうか」フラ フラ

真奈美「顔も真っ赤にしているのに、口説き文句は一丁前か」



P「……」

飛鳥「自分が言われたかった、って思っているのかい」

P「そんなんじゃないぞ」

飛鳥「嘘も虚勢もヘタだね、プロデューサー」

P「……」



* * * * *



あい「ふう」

飛鳥「大丈夫なのかい。まだ顔が結構赤いけど」

あい「……ああ。水を飲んで休んでいたら少し楽になったよ。すまないね。恥ずかしい姿をお見せした」

飛鳥「いや……むしろ、そういうこともあるんだなというのは勉強になったよ。あいさんですら、ね」

あい「私はお酒に強くないからね。君も大人になった時は、自分をわきまえるんだよ」

飛鳥「……肝に銘じておくよ」



あい「……飛鳥くん」

飛鳥「なんだい」

あい「今日のイベントもお疲れ様だったね。大人組に混じって歌にダンスにと、かなり疲れたんじゃないかと思うが、大丈夫かい?」

飛鳥「まあ、多少はね。……けれど、八面六臂の大活躍だったあいさんに比べれば」

あい「ははっ、お気遣いありがとう」





あい「飛鳥くんも最近、活躍が目覚ましいね。日々のレッスンがいろいろ形になってきているのかな」

飛鳥「……そうだね、レッスンも、小さなイベント参加の経験も、……あとはプロデューサーや、みんなといる間の学びも、すべて、かな」

あい「うん、うん」



飛鳥「……あいさんも、いろいろ教えてくれるしね」

あい「おや。光栄な言葉だが、はたしてそれほど語ってみせただろうか」

飛鳥「背中で。あるいは言動で。あいさんが見せてくれる”プロ”って、”大人”って、そして”カッコイイ女性”って。そのすべてがボクには憧憬の対象で、羨望の眼差しの先さ」

あい「……フフッ、それはよかった。柄にもない虚勢も張ってみるものだね」

飛鳥「あいさんの実力は本物だろう」

あい「私だって不安になることはたくさんあるよ。それを認めるのも大事なことだ」





比奈「いいこと言ってる気はするんスけどね」

惠「二人とも相変わらず、キメッキメね」



* * * * * 



真奈美「やっぱりだから、栄養バランスを考えるとそれはよくないって話で」

P「いや、それはそうなんですけど、それとは別にー」



ワイワイ



あい「フフッ、あっちもにぎわっているね」

飛鳥「……あいさんは」

あい「うん?」

飛鳥「あいさんはプロデューサーと、とても厚い信頼関係を築いているように思うんだけど、……何かその、大切にしていることみたいなものは、あるんだろうか」



あい「おや、珍しい質問をするね」

飛鳥「まあ、その、ね」



あい「……ふふっ、どうだろうな」

飛鳥「……」



あい「……結局、大切なのは信じることと、ちゃんと語ることだと思っているよ」

飛鳥「ちゃんと語ること……」

あい「そう。言葉にせずとも伝わることがあるのはとても美しい。だけど我々も人間だ。言葉にせずとも、変化が起こるなどということは、ないんだよ」



あい「彼を信じている。信じているから動けるし、もっともっと信じたいから、語るべきことは語る。それだけのことさ」






あい「はは、照れくさいな。酔いは覚めたかと思ったのに顔が熱いよ」パタパタ



P「あ、あいさん大丈夫ですか? またお水いります?」

あい「いや大丈夫だよ、ありがとう。……そうだな、少し外の空気を吸ってくるよ」

P「ひとりで行けますか」

あい「もちろん」

P「足元気を付けてくださいね」

あい「ありがとう」



飛鳥「……ふむ」



♪誰もが全てを理解れやしない 移ろい変わる人を

 それでもボクらは知らずにいられず 何度も何度も問うてく



飛鳥「……大切なのは、信じること、か」



* * * * *



あい「ああ、飛鳥くん」

飛鳥「?」

あい「信頼関係を保つうえで、”多少のことには目を瞑る”というのも時には優しさだからね」

飛鳥「……?」



あい「さっきの私の醜態をあまり拾わずいてくれることとか」

あい「プロデューサーくんが実は下心混じりな気持ちで我々を見ていたとしても、気づかなかったことにするとかね」

P「ちょ、何言ってんですか急に」



飛鳥「……フフッ、そうだね、彼も男性なんだしね」

P「やめて飛鳥」



あい「おや? 事務所に保管されてる写真資料、私と比奈くんの水着の写真だけ別ファイルにしているの、知ってるよ?」



飛鳥「は?」

比奈「へ?」

P「えっ、ちょ、あいさん!?」



*参考
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira103233.png
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira103234.png




あい「去年の夏に撮った水着グラビア、白と黒の二種類あったね。どうやら彼は黒がお気に入りだったようだ。フフッ」

P「ちょっと待ってあいさん、何で知って……ハッ」



真奈美「……」

惠「……」



飛鳥「……」



あい「離席失礼」ピシャ

P「待ってみんな、違うんです。そのですね、あの」

飛鳥「信頼の形はそれぞれだけど……なんというか、ちょっと、その」ススッ

P「待って飛鳥、他意はないんだよこれは、そのね、ちょっと離れないで」



ポン



比奈「……今の話、アタシにも詳しく教えてもらっていいっスか……?」コオオオオ

P「(あっ目が座ってる)」



飛鳥「これからは助平プロデューサーと呼ぼう、それがいい」ツーン

P「飛鳥待って、ちょっと」



ワイワイ





真奈美「なんというか、青春だな」

惠「フフッ、そうかもしれませんね」



あい「♪キミの目が映し出したこのセカイは 今どんな色で揺れる?」



以上です。

他に
飛鳥「青春と乖離せし己が心の果てに」
あい「恋より先の、もっと先の」
比奈「オトメゴコロ」
など書いています。

ありがとうございました。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年04月02日 (土) 08:33:25   ID: B0pImgYC

この作者さん好きなんだけど過去作が追いにくい……

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