飛鳥「あいさん、それはボクの箸だよ」 (18)
モバマス・二宮飛鳥のSSです。
駄弁るだけの話です。
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あい「……おや、これは申し訳ない」
飛鳥「や、構わないけど。しかし」
あい「せっかくだし取ってあげようか。サラダがいいかな。だし巻きにしようか」
飛鳥「あいさん」
あい「ほら、あーん」
飛鳥「あいさんってば」
P「だいぶ酔ってますね」
あい「……そう見えるかい」
P「ええまあ」
飛鳥「これで酔ってないんだったら、あいさんのイメージは足元から瓦解するところだよ」
あい「フフッ、参ったな。後輩たちに醜態を晒すことは控えたいんだが」フラッ フラッ
あい「……君のせいだよ」クイッ
P「え、ちょっと、あいさん、ちょっと待」
飛鳥「……ジンジャエールのおかわりお願いします」
比奈「何スかねこの飲み会」グビ
惠「まあまあ、私たちも飲みましょうよ」プハー
* * * * *
ー イベント打ち上げ・居酒屋の個室 ー
真奈美「ふむ。状況をまとめると、つまり」
P「まとめるも何も、真奈美さんも目の当たりにしているこれが全てでして……」
あい「……」ニコ
真奈美「少し遅れて参加したらこの惨状か……やれやれ」
真奈美「あい、しっかりしろ。私がわかるか?」ポンポン
あい「……フフッ、私がわかるかだって? 当たり前じゃないか、君と私の間柄なんだぞ」
真奈美「落ち着け」
あい「私が人生で全幅の信頼を置いている人間を三組挙げるとするなら、一に両親、二にサックスを手ほどきしてくれた恩師、そして三にプロデューサーくんだというのに」
真奈美「今の流れで私を挙げないとはどういう了見だ」
あい「……」
真奈美「……」
あい「すまん、間違えた。三に木場真奈美、君だ」
真奈美「よしたまえ。その修正は脱落したプロデューサー君の心に刺さる」
P「えっいや……大丈夫ですよ」ズーン
真奈美「目に見えてショックを受けているじゃないか」
飛鳥「くくっ、残念ながらあいさんのベスト3には残れなかったようだね」ポンポン
P「なっ、悔しくなんかないぞ!」
惠「飛鳥ちゃん、悪い顔してるわねー」グビグビ
比奈「14歳に茶化されるプロデューサーって……ねぇ」ゴクゴク
* * * * *
あい「♪」
飛鳥「や、だからあいさん、それはボクの箸で」
あい「ああ、ああすまない。そうだったね。返すよ」
飛鳥「……どうも」
あい「何かこう……ね、アレだね。橋をかけたみたいなね。箸だけにね」プフーッ
P「酷い」
飛鳥「ボクの中の魅力的なあいさん像は存亡の危機だよ」
真奈美「むしろまだ危機で済んでいるあたり、普段の人望が伺えるな」
P「以前お花見でお酒を飲んだ時には、頑張って自分を保っていたんだけどな」
飛鳥「……とはいえ」
あい「♪ー」
飛鳥「(髪をかきあげる仕草。少しうつむき加減のその表情。そのすべてが)」
飛鳥「(……顔はお酒でもう真っ赤だが、それでも仕草が絵になる。不思議な人だ)」
真奈美「……酷く酔ったものだな」
あい「ああ、すまないね。だが大丈夫だ」
真奈美「どこが大丈夫なのか問いたいものだよ」
あい「ふふっ、酔っているのは酒にだろうか。それとも、君にだろうか」フラ フラ
真奈美「顔も真っ赤にしているのに、口説き文句は一丁前か」
P「……」
飛鳥「自分が言われたかった、って思っているのかい」
P「そんなんじゃないぞ」
飛鳥「嘘も虚勢もヘタだね、プロデューサー」
P「……」
* * * * *
あい「ふう」
飛鳥「大丈夫なのかい。まだ顔が結構赤いけど」
あい「……ああ。水を飲んで休んでいたら少し楽になったよ。すまないね。恥ずかしい姿をお見せした」
飛鳥「いや……むしろ、そういうこともあるんだなというのは勉強になったよ。あいさんですら、ね」
あい「私はお酒に強くないからね。君も大人になった時は、自分をわきまえるんだよ」
飛鳥「……肝に銘じておくよ」
あい「……飛鳥くん」
飛鳥「なんだい」
あい「今日のイベントもお疲れ様だったね。大人組に混じって歌にダンスにと、かなり疲れたんじゃないかと思うが、大丈夫かい?」
飛鳥「まあ、多少はね。……けれど、八面六臂の大活躍だったあいさんに比べれば」
あい「ははっ、お気遣いありがとう」
あい「飛鳥くんも最近、活躍が目覚ましいね。日々のレッスンがいろいろ形になってきているのかな」
飛鳥「……そうだね、レッスンも、小さなイベント参加の経験も、……あとはプロデューサーや、みんなといる間の学びも、すべて、かな」
あい「うん、うん」
飛鳥「……あいさんも、いろいろ教えてくれるしね」
あい「おや。光栄な言葉だが、はたしてそれほど語ってみせただろうか」
飛鳥「背中で。あるいは言動で。あいさんが見せてくれる”プロ”って、”大人”って、そして”カッコイイ女性”って。そのすべてがボクには憧憬の対象で、羨望の眼差しの先さ」
あい「……フフッ、それはよかった。柄にもない虚勢も張ってみるものだね」
飛鳥「あいさんの実力は本物だろう」
あい「私だって不安になることはたくさんあるよ。それを認めるのも大事なことだ」
比奈「いいこと言ってる気はするんスけどね」
惠「二人とも相変わらず、キメッキメね」
* * * * *
真奈美「やっぱりだから、栄養バランスを考えるとそれはよくないって話で」
P「いや、それはそうなんですけど、それとは別にー」
ワイワイ
あい「フフッ、あっちもにぎわっているね」
飛鳥「……あいさんは」
あい「うん?」
飛鳥「あいさんはプロデューサーと、とても厚い信頼関係を築いているように思うんだけど、……何かその、大切にしていることみたいなものは、あるんだろうか」
あい「おや、珍しい質問をするね」
飛鳥「まあ、その、ね」
あい「……ふふっ、どうだろうな」
飛鳥「……」
あい「……結局、大切なのは信じることと、ちゃんと語ることだと思っているよ」
飛鳥「ちゃんと語ること……」
あい「そう。言葉にせずとも伝わることがあるのはとても美しい。だけど我々も人間だ。言葉にせずとも、変化が起こるなどということは、ないんだよ」
あい「彼を信じている。信じているから動けるし、もっともっと信じたいから、語るべきことは語る。それだけのことさ」
あい「はは、照れくさいな。酔いは覚めたかと思ったのに顔が熱いよ」パタパタ
P「あ、あいさん大丈夫ですか? またお水いります?」
あい「いや大丈夫だよ、ありがとう。……そうだな、少し外の空気を吸ってくるよ」
P「ひとりで行けますか」
あい「もちろん」
P「足元気を付けてくださいね」
あい「ありがとう」
飛鳥「……ふむ」
♪誰もが全てを理解れやしない 移ろい変わる人を
それでもボクらは知らずにいられず 何度も何度も問うてく
飛鳥「……大切なのは、信じること、か」
* * * * *
あい「ああ、飛鳥くん」
飛鳥「?」
あい「信頼関係を保つうえで、”多少のことには目を瞑る”というのも時には優しさだからね」
飛鳥「……?」
あい「さっきの私の醜態をあまり拾わずいてくれることとか」
あい「プロデューサーくんが実は下心混じりな気持ちで我々を見ていたとしても、気づかなかったことにするとかね」
P「ちょ、何言ってんですか急に」
飛鳥「……フフッ、そうだね、彼も男性なんだしね」
P「やめて飛鳥」
あい「おや? 事務所に保管されてる写真資料、私と比奈くんの水着の写真だけ別ファイルにしているの、知ってるよ?」
飛鳥「は?」
比奈「へ?」
P「えっ、ちょ、あいさん!?」
あい「去年の夏に撮った水着グラビア、白と黒の二種類あったね。どうやら彼は黒がお気に入りだったようだ。フフッ」
P「ちょっと待ってあいさん、何で知って……ハッ」
真奈美「……」
惠「……」
飛鳥「……」
あい「離席失礼」ピシャ
P「待ってみんな、違うんです。そのですね、あの」
飛鳥「信頼の形はそれぞれだけど……なんというか、ちょっと、その」ススッ
P「待って飛鳥、他意はないんだよこれは、そのね、ちょっと離れないで」
ポン
比奈「……今の話、アタシにも詳しく教えてもらっていいっスか……?」コオオオオ
P「(あっ目が座ってる)」
飛鳥「これからは助平プロデューサーと呼ぼう、それがいい」ツーン
P「飛鳥待って、ちょっと」
ワイワイ
真奈美「なんというか、青春だな」
惠「フフッ、そうかもしれませんね」
あい「♪キミの目が映し出したこのセカイは 今どんな色で揺れる?」
以上です。
他に
飛鳥「青春と乖離せし己が心の果てに」
あい「恋より先の、もっと先の」
比奈「オトメゴコロ」
など書いています。
ありがとうございました。
このSSまとめへのコメント
この作者さん好きなんだけど過去作が追いにくい……