モバP「「イノセント」(40)




―事務所―



時子「チッ、まさかこの私が事務所にバッグを忘れたまま帰ろうとするなんて、
   間抜けもいいところだわ」ツカツカ

時子「確かレッスンに行く前はソファに座っていたから、その近くに……」ヒョイ

こずえ「くぅ…… くぅ……」スヤスヤ

時子「……」




財前時子(21)
http://i.imgur.com/Hh3sEfj.jpg

遊佐こずえ(11)
http://i.imgur.com/bfhYYnn.jpg





こずえ「うぅん……」ギュー

時子(あの小娘、私のバッグを抱き枕にして……!! )ワナワナ…

時子「ちょっとアンタ、起きなさい」

こずえ「すぴー……」ムニャムニャ

時子「……そう。それじゃ起きなくていいからバッグを返して」ガシッ

こずえ「やー……」ガッシリ

時子「くっ……、この、離しなさいよ!」グイッ

こずえ「む……?」パチ





 スポーン



こずえ「あ」ズルッ

時子「あ」



 ビターン!!



こずえ「……」ピクピク

時子「ちょ、ちょっと大丈夫!? 床に落とすつもりはなかったのよ!」

時子(顔面からモロに落ちたし、脳震盪を起こしてるんじゃ……)オロオロ




こずえ「ふわぁ……」ムクリ

時子「しっかりしなさい!私が誰かわかる!? 」ペチペチ

こずえ「おはよー」ニコ

時子(ハッキリしてるのかそうじゃないのかわかりにくい子ね!)

こずえ「んー?」ジー

時子「な、なに?どうしたの?」

こずえ「そのかばん、ときこおねえちゃんのー?」

時子「そうだけど、それがどうかしたの?」




こずえ「こずえねー、だれかわすれてこまってるとおもったからあずかってたのー。
    もちぬしさんにわたせてよかったー」ニコ

時子(それで大事そうに抱えていたのね……)

こずえ「もうわすれちゃだめだよー?」ナデナデ

時子「え、ええ、気をつけるわ……」

こずえ「ありがとうでしょー?」プクー

時子「あ、ありが、とう……」

こずえ「よろしいー」

時子(何か釈然としないわ……)





 ジー



時子(は!? 視線!? )クルッ



アヤ「……」ジー





桐野アヤ(19)
http://i.imgur.com/ZSCG4Gj.jpg





アヤ「千奈美ー!なんか時子様が面白いことになってるぞー!」ダッシュ!!

時子「ま、待ちなさいよアンタ!今見たことは忘れなさい!」ダッシュ!!

こずえ「こらー、はしるなー」





***



―翌日―



時子(昨日は酷い目に遭ったわ。バッグはシワになってたし、昔の私なら容赦なく
   叱り飛ばしたのに気が弛んでいるのかしら?)ツカツカ

P「おう時子、昨日こずえと何かあったのか?」

時子「……」イラッ

時子「アンタには関係ないしょうがこの豚ァ!! 」ビシィ!!

P「いてえっ!? 何でいきなりキレるんだよ!? 」




時子「アンタ最近弛んでるのよ!! 主人の私が躾け直してあげるわ!! 」ヒュンヒュン!!

P「いいからムチを振り回すな!とりあえず落ち着け!」

ちひろ(さわらぬ神に祟りなし、と。くわばわくわばら……)カタカタ





―――



時子(2日続けて忘れ物をするなんて、いよいよ深刻ね。バッグに気を取られて
   今度は鞭を忘れるなんて……)ツカツカ

時子「更衣室に持って入ったのは憶えているから、多分ここに……」ガチャ

雪美「うねうね…… へびさんだよ……」フリフリ

ペロ「ニャッ、ニャッ」ネコパンチ! ネコパンチ!

時子「……」




佐城雪美(10)
http://i.imgur.com/MmXicDU.jpg





時子(わ、私の鞭を、ネコジャラシにするなんて……!! )ワナワナ…

雪美「ふふ……、たのしい、ペロ……?」フリフリ

ペロ「ニャ―ン♪」ゴロゴロ

雪美「ごめんね……、最近なかなか遊んであげられなくて……」

雪美「ペロが喜んでくれて、私もうれしい……」

雪美「今日はひさしぶりに、いっしょに寝ようね……」ニコ

ペロ「ニャーン♪」スリスリ

時子「いくらペットが可愛くても、寝床は別々にした方がいいわよ」

雪美「 っ!? 」ビクッ




時子「あなた、それが誰の鞭かわかってるわよね?」スタスタ

雪美「うん…… 時子のもの……」

時子「わかったうえで勝手に使ったのね。いい度胸してるじゃない」ギロリ

ペロ「フシャ―!! 」

雪美「だめ、ペロ…… 悪いのは私だから……」ギュッ




時子「……」ゴゴゴゴゴ…

雪美「ごめんなさい……」ブルブル…

時子「……」

雪美「……」ウルウル

時子「……はぁ」

雪美「……?」

時子「あげるわよそれ。そろそろ買い換えようと思ってたし」

雪美「え……?」




時子「ペットを躾けるのは主人の務めよ。あなたもその猫の主人なら、責任を
   持ってその務めを果たしなさい」

雪美「わかった……」コク

時子「それじゃ私は帰るわ」ガチャ

雪美「ありがとう時子…… 大事にする……」ニコ

時子「時子様と呼びなさい。まったく最近の若い子は……」バタン




雪美「ふふ…… ペロ、もらっちゃった……」フリフリ

千秋「遅くなってごめんなさい佐城さん。さあ帰りましょ……」ガチャ

雪美「うねうね…… うねうね……」フリフリ

ペロ「ニャッ、ニャッ」

千秋(佐城さんが鞭で猫を虐待してる!? )ギョッ!!

(その後千秋は『鞭を子供が持つのは危険』と説得して雪美から預かり、代わりに
 ペットショップで一番高いネコジャラシのおもちゃを買ってあげた)




黒川千秋(20)
http://i.imgur.com/GD3fLg9.jpg






***



―翌日―



時子(『佐城さんに凶器を持たせるなんてどういうつもりなの!? 』って、黒川の娘の
   分際で私に説教するなんて生意気ね。腹の虫が治まらないわ……)ムカムカ

P「おう時子、千秋が怒っていたがお前何かしたのか?」スタスタ

時子「うるさいわよ豚ァ!! 下僕の分際で馴れ馴れしいのよ!! 」ゲシゲシ!!

P「いってえ!? ヒールで蹴るなヒールで!! いつもの鞭はどうしたんだよ?」




時子「私の鞭を私がどうしようが問題ないでしょうがあ!確かに冷静に考えれば
   雪美に持たせるのは危なかったかもしれないけど……」ゴニョゴニョ

P「ん?何か言ったか?」

時子「だからアンタは黙ってろって……!! 」グラ…

時子(あら……?視界が回って……)グラグラ

P「時子?」

時子(回って…… まわって…… まわ―――――)



 バタン






***



時子「ううん……」パチ

時子「ここは……?」ムクリ

時子(医務室…… 確かPと話していたのは憶えているんだけど……)

あい「おや?目が覚めたかい」

時子「どうしてアンタがいるのよ……?」ギロリ

あい「P君に君のそばについていてやってくれと頼まれてね。なに、別に私の事は
   気にしなくてもいいさ」クス




東郷あい(23)
http://i.imgur.com/ALrI7bQ.jpg





時子「気にしてないわよ。頼んだ憶えもないし」フン

あい「君ならそう言うと思ったよ。P君からの伝言だ。『今日の予定はキャンセルに
   したからゆっくり寝てろ』らしい。後で様子を見に来ると言ってたぞ」

時子「そう。それなら帰るわ。Pにそう伝えておいて頂戴」

あい「帰ってしまうのかい?今薫が君のためにお粥を作っているのだが」

時子「……」ピタ




あい「医師の診断では君が倒れた原因は高血圧とストレスだそうだから、体に優しい
   お粥で元気になってもらおうと張り切っていたぞ」

時子「関係ないわよ。私はそもそも病人じゃないし」

あい「君が帰ったら薫は悲しむだろうな。君の回復を願って小さな手で一所懸命
   作っているのに、ひどく落ち込むだろうなあ」

時子「……何が言いたいのよ?」ギロリ

あい「聡明な君ならわかっているんじゃないのかい?」

時子「馬鹿馬鹿しい…… だけど家に帰っても特に予定もないし、今回だけ特別に
   あなた達のままごとに付き合ってあげるわ」フン

あい「ありがとう。私も薫を悲しませずに済んで良かったよ」クス





―――



時子「誤解しないで欲しいんだけど」

あい「何だい藪から棒に」

時子「私はあなたと違って子供が嫌いよ」

あい「私も特別好きというわけではないぞ」

時子「嘘おっしゃい。薫の言いなりになっているくせによく言うわ」

あい「くっくっ、君には私がそう見えているのか」

時子「そんな子供に付き合うなんて、私もヤキが回ったのかしら」

あい「好ましい変化だと思うがね。これを機に考えを改めてみてはどうだい?」




時子「あなたや千秋のように子供の下僕になれと?」

あい「そこまでしなくていいさ。私も自分より薫を優先しているわけではないし、
   薫も私を気遣ってくれるから無茶なことは言わないぞ」

時子「フン、子供にそんな判断力があるわけがないじゃない。あなた達は無意識の
   うちに自分のペースを乱されて、いつの間にか子供達に支配されているのよ。
   それに気付いていないなんておめでたいわね」

あい「これは手厳しいな。だが仮に君の言う通りだとしても、薫に支配されるのは
   悪くない。さしずめ私は小さな姫君に仕える従者といったところか」

時子「自分から豚に成り下がるなんて私は御免だわ」

あい「子供相手に主従関係など考えなくてもいいと思うが」クス





薫「おまたせー!」ガチャ



あい「やあ薫、ちょうど時子君も起きたところだよ」

薫「時子さんだいじょうぶ?おかゆ食べられる?」

時子「病人扱いするんじゃないわよ。食べてあげるからさっさと出しなさい」フ

薫「うん!わかった!準備するね!」ニコッ




龍崎薫(9)
http://i.imgur.com/XLfimgp.jpg





薫「ふんふんふーん♪」カチャカチャ

あい「薫は料理が得意だから期待していいぞ。私も時々教わるくらいだからな」

時子「お粥くらい誰でも作れるでしょ。でもさっきからお粥にふさわしくない甘い
   匂いがするんだけど、あの子何を入れたのかしら?」スンスン
   
あい「言われてみるとそうだな。これは柑橘類か……?」




薫「はいどうぞ、めしあがれ♪」

薫「みかん粥だよ♪」ゴトン

時子「」

あい「」




薫「えへへ♪ かおるが風邪をひいたらおかあさんがよくつくってくれたんだ。
  なかなかおいしく出来たよっ!」ニコニコ

時子(みかんジュースで炊いたお粥ですって?正気なの……?)ワナワナ…

あい(そういえば薫の故郷はみかんの名産地だったな。てっきり普通のお粥を
   作ると思っていたが、ここで郷土色を出してくるとは……)




薫「……もしかして時子さん、みかんきらいだった?」

時子「え……?」

薫「さっきからむずかしい顔してるし、だめだったのかなーって……」ショボン

時子「そんなことは……」あい「そんなことはないぞ薫!」

時子(どうしてあなたが言うのよ!)




薫「そうなの……?」ジー

あい「ああそうさ!見た目も綺麗だし香りも良いし、なかなか個性的で素晴らしい
   料理じゃないか!こんなお粥が食べられる時子君が羨ましいな!うん!」

薫「えへへ♪ もちろんあいさんのぶんもあるよ!」ニコッ

時子(ククク、墓穴を掘ったわね)ニヤリ

あい(フ、この展開は予想出来ていたさ。しかし薫が作った料理を食べないという
   選択肢は私の中に存在しない!)キリッ

時子(完全に身も心も薫に支配されているじゃない。救いようがないわね)




薫「いっぱい作ったから、時子さんもたくさんたべて元気になってね♪」ニコニコ

時子「フン、子供のくせに大人を気遣うんじゃないわよ」パク

時子(食べられなくは、ないわね……)モグモグ

時子(店で出されたら席を立つところだけど……)チラ

薫「どうかな時子さん?おいしい?」キラキラ

時子「……」




時子「……まあ思ったよりも悪くは」あい「とても美味しいよ!」

時子「だからどうしてあなたが言うのよ!」

薫「えへへ♪ よかったっ!」ニコッ

時子(チッ、だから子供は嫌いなのよ……)ハア



―――その後様子を見に来たPを交えて、時子達はみかん粥を完食した



おわり





 こずえに「れんたいほしょうにんになってー」って言われたら断れる気がしない。
みかん粥は離乳食ではそれほど珍しくないみたいですね。わが故郷には茶粥という
お茶で炊いた微妙な味のお粥がありますが、あれとどっちが美味しいだろう?
 愛媛ではみかん汁で炊いたご飯が給食で出るみたいだし、一度くらいなら食べて
みたいかも。では


今更タイトルミスってるのに気付いた…


×モバP「「イノセント」

〇モバP「イノセント」

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