狐娘「坊主様?」 男「誰?」(18)

男「俺思うんだよね。こんな寺つぶしちまったほうがいいって」

父「そうか。首を吊れ。経くらいは上げてやる」

男「いっそ駐車場にでもしたほうが世の中の役に立つと思うんだよね」

父「そうか。火葬場に連絡をしておいてやろう。焼け死ぬ覚悟はできたか?」

男「こんなボロ寺残してても何にもなりゃしないよ。親父もいい加減あきらめろよ」

父「この・・・罰当たり息子がぁああああ!」

男「いってぇ!?なにしやがる!木魚で殴り掛かってくるあんたのほうが罰当たりだろうが!」

父「それでお前が改心するなら仏様も見過ごしてくれるわい!」ボゴッ!

男「ってぇ!?そんな暴力を許す仏様がいてたまるか!」

父「仏の顔も三度までというが、貴様の頭は3回程度じゃ足りんじゃろ!」ボゴボゴボゴ!

男「やめろ糞親父!」

父「うるさい!おとなしく改心しろ!」

ドゴッ!バギッ!

男・父「ぐふっ・・・」

母「ご飯だって言ったでしょ?あなたたち?」

男・父「は・・・はい・・・」

母「まったく・・・あなたたちも毎日毎日飽きませんね」

男「親父の頭が固いのが原因だろ」

父「このバカ息子の馬鹿頭がそもそもの原因じゃ」

男・父「・・・!!」

母「・・・食事下げますよ?」

男・父「・・・い、いただきます」

母「まったく・・・」

母「そうだ、男さん。後で倉の整理を手伝ってもらえませんか?」

男「え?倉?」

母「えぇ。そろそろお漬物がいい具合になってる頃でしょうから」

父「・・・おい母さん、倉に漬物樽を置いとるのか?」

母「えぇ、それがなにか?」

父「し、神聖な倉になんちゅーことを・・・」

母「あら?そのお漬物をおいしいおいしいって食べていたのは誰だったかしら?」

父「・・・・・・むぅ」

男「いや、まぁいいけど・・・樽をもってくりゃいいのか?」

母「えぇ。お願いしますね?」

~倉~

男「こんな倉でも漬物を作るくらいの役には立つもんだな」

男「にしてもきたねぇなー・・・歴史があんだかなんだかしらねぇけどゴミにしか見えねぇもんばっかだな」

男「よいしょ・・・っと」ドスンッ  パキッ

男「あ、重しが」

男「・・・まぁいいか。二つに割れても重さは変わんない・・・し?」

?「・・・」

男「・・・」

?「・・・」キョロキョロ

男「・・・」

?「・・・ここは」

男「・・・」

?「あ・・・坊主・・・様?」

男「・・・はい?」

?「坊主様ですね!お会いしとうございました!あぁ!こんなにも御髪が伸びておりましたので気づきませんでした!」ダキッ

男「?????」

?「いかがなさいました?」

男「ど、どちらさまで?」

?「はぅっ!?」

男「いや、そんな落ち込まれても・・・」

?「私です!狐娘です!覚えておられないのですか!?」

男「覚えてないかって言われても・・・初対面ですし・・・そりゃ・・・ね」

狐娘「はぅあっ!?」

男「いやだからそんな落ち込まれても・・・」

狐娘「そんな・・・あなたは坊主様ではないの・・・ですか?」

男「いや、俺は男っていうんだけど」

狐娘「そんな・・・こんなにも似ていらっしゃるのに・・・」カサカサ

男「なにそれ?」

狐娘「坊主様の似顔絵でございます!ほら!そっくりでございましょう?!」

男「・・・いやいやいや!こんな日本史の教科書に出てきそうな絵を見せられても似てるかなんてわかんねぇよ!」

狐娘「・・・こんなにもそっくりなのに・・・」

男(こいつの目には俺はいったいどう映ってるんだ?)

男「というかあんたいったいどこから出てきたんだ?しかもなんだその耳と尻尾は?」

狐娘「?」

男「いや、なにいってるの?みたいな目でこっちを見られても・・・」

狐娘「この耳と尻尾になにか?」

男(こいつあれか?ちょっと行きすぎちゃってる思考の・・・)

狐娘「私の耳と尻尾になにかおかしいところでもございますか?他の者とさして違いがあるとは思いませんが・・・」

男「いやいやいや、思いっきり違うでしょ!人間の耳はこれ!尻尾はふつうないでしょ!」

狐娘「それは人間の方はそうだと思いますが・・・」

男「は?」

狐娘「私は人間というよりも妖の類ですので」

男(だめだこいつ・・・頭がいっちまってる・・・!)

狐娘「坊・・・男様の身の回りには私のような者はいらっしゃらないのですか?」

男「いやぁ・・・俺の周りはいたってノーマルな奴しかいないから・・・」

狐娘「のーまる?・・・・・・頭の良い人のことですか?」

男「・・・・・・?」

男(・・・のー・・・まる・・・脳・・・丸)

男「違う!そんなダジャレを答えとして求めていたんじゃない!」

狐娘「だじゃれ?」

男「とりあえずもういい!このままじゃいつまでたっても話が先に進まない!」

狐娘「男様はほんとうに坊主様ではないのですか?」

男「だから違うって言ってるだろ」

狐娘「本当に似ていらっしゃいます。こうして・・・」ピトッ

男「なっ・・・!?」

狐娘「御髪を隠してしまうと瓜二つにございます。本当に・・・」

男「だぁあ!やめやめ!とりあえず親父のとこにいくぞ!」

狐娘「おやじ・・・男様のお父様ですか?」

男「あぁそうだよ、親父ならあんたのことなんかしってるかもしれないしな!」

~男の家~

父「・・・」

男「・・・」

狐娘「・・・」ニコッ

父「か、母さん!大変だ!男が女の子を連れてきたぞ!」

母「えぇ!?本当ですか?!」ドタドタドタ

男「おいちょっとまてぇ!てめぇの知り合いじゃねぇのかよ!」

父「なにいっとんじゃお前は。初めてうちに来た子のことなんぞ知るわけがなかろうが!」

男「じゃあこいつは誰なんだよ!」

父「そんなのお前が連れてきたんじゃからお前のほうが知っとるじゃろうが!」

~居間の隣部屋~

父「なぁ母さんや・・・男が女の子を連れてきたから取り乱してしまったが」コソコソ

母「なんですか」コソコソ

父「あの子のあの耳と尻尾は何なんじゃ?」コソコソ

母「さぁ・・・きっと都会ではああいうのが流行っているんですよ。この間テレビでやってましたこすぷれ?とかいうものじゃないですか?」コソコソ

父「ふぅむ・・・都会ではああいうのがはやっとるのか・・・今の日本はようわからん」コソコソ

母「それにしても・・・男さんが女の子の友達を連れてくるなんて・・・」

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