える「折木さんのご親戚の方ですか?」 白望「ダルい……」【氷菓×咲-Saki-】 (50)


注意
氷菓七割、咲三割くらいのクロスです。
何番煎じかは怖くて知りません。
多分短いです。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1456792025

――岩手

奉太郎「…………」

シロ「…………ダル」

える「えっと、折木さんのご親戚の方ですか?」

豊音「ちょー似てるよー!」

さて、どうして省エネ主義を掲げている俺がこんな状況に陥っているのか。

どうして千反田と二人で岩手になどはるばる遠征しているのか。

時間は三日前に遡る。

――三日前 古典部

える「フェアに行きましょう!」

奉太郎「……はぁ?」

いつもの放課後の古典部。
当然俺もいつものように本を読み、千反田の話を右から左へと受け流していると、突然とそんなことを言われた。

もちろん、話の繋がりが見えてこないのでイエスでもノーでもなく聞き返すことしかできなかったのが今回の俺の敗因だろう。

える「だからフェアです!農業フェア!行ってみましょう!」

奉太郎「……」

千反田の詳細を喋らない癖はどうにかならないものか。
そう思ったが、しかし俺も人の話を聞かないと言う行為をしているので千反田のことを言えたものではない。

とりあえず、

奉太郎「今日は里志と伊原は来ないのか?」

える「二人とも都合があるようですよ」

奉太郎「そうか、なら今日はもう帰るか」

える「はい――ではなく!フェアです!!」

誤魔化せなかった。
折木奉太郎、本日二度目の敗北。

奉太郎「……とりあえず一から話せ。フェアだと言われるだけだとこっちは何も返答できん」

える「そうでした。こほん、では」

千反田が言うには、今度の三連休、岩手にある高校で農業フェアがあるらしい。
農家だからだろうか、一度見てみてもいいんじゃないかと親父さんに言われ、千反田自身も将来のためと興味がわいたと言う。
しかし生憎と両親は行けなくなり、千反田一人では寂しいので古典部にお鉢が回ってきたと言うのだ。費用も千反田の親父さんが出してくれるらしい。さすが豪農千反田家。太っ腹である。

える「というわけです。どうですか?折木さん」

奉太郎「だるいから嫌だ」

える「おーれーきーさーん!」

奉太郎「そう言われてもだな。岩手に行くと言ったら新幹線か飛行機だろう?」

俺はとにかく乗り物酔いしやすいのだ。
新幹線はまだしも、飛行機となると未知なる浮遊感でその場でリバースする可能性がある。修学旅行はどれも新幹線だったしな。あまり覚えてはいないがその時も危なかった気がする。

える「いえ、金曜日の夜から新幹線に乗ります。着いたらそのまま宿に行き、日曜に帰る予定です。私のわがままで三連休を潰させるわけにも行けませんから」

ふむ、それはなかなかに良い。長旅から帰ってさぁ学校では俺の可処分エネルギーも底を尽きてもなおしんどい目に合うというものだ。

奉太郎「そうだな……岩手は騒がしくもないだろうし、たまには旅行というのもいいかもしれない。里志と伊原にはまだ言ってないのか?」

える「はい、合った時には伝えそびれてしまって。帰ったら電話で伝えるつもりです」

奉太郎「そうか。なら、二人が行くと言うのなら」

える「わかりました。ありがとうございます、折木さん」

なに、せっかくの三連休も家でゴロゴロするだけでは味気ない。里志でも誘ってゲーセンにでも行こうかとも思ってたくらいだ。実行するかは別として。
それに比べて少しエネルギーを使うが、一日休日さえあればエネルギーも保つだろう。それに岩手にはそれほど何もないはずだし。

える「では、詳細は後程をお伝えしますね」

奉太郎「あぁ」

この時、俺は軽率な判断で岩手行きに応じてしまった自分を殴りつけたくなるのをまだ知らなかった。

どうやら俺は、千反田が関わるとどうしても省エネ主義を貫けないらしい。


奉太郎「どうしてこうなった……」

岩手の宿に一人、俺はため息をついていた。
今は夜の11時。千反田は風呂に入ってきているため部屋にはいない。

里志と伊原も、部屋にはいない。
というか岩手に不在である。

金曜日の六時頃。
千反田が一人で迎えに来た。
ここで気づくべきだったとワンアウト。

駅のホーム。二人はいない。
千反田に時間に間に合わなくなるからと押され新幹線に乗る。ツーアウト。

そして流されるまま旅館にいる。男女分かれて二部屋取っていたが、二人しかいない男女が分かれて部屋を取るのも贅沢なもので、不運なことに一部屋飛び入りで来た家族客に千反田が譲ってしまった。
俺だって男だ。軽率なことはしないでもらいたいが、チタンダエルの慈悲により家族が一組救われたのなら何も言えまい。

これでスリーアウト。俺の回はすでに終わっていた。始まってすらもいないかもしれない。千反田に三打席三連続ホームランを打たれた気分だ。

える「戻りました。折木さん、出るの早かったんですね」

千反田が浴衣姿で静かに入ってくる。
流石お嬢様、立ち振る舞いが上品だ。
というか、この状況は俺のエネルギー効率を大きく損なっている気がする。変な気は起こさないように努めることとしよう。

ここは温泉宿で、俺も温泉に入ってきたがすぐに出た。枯れ尾花の宿の二の舞にはなりたくなかったし、今は千反田と二人だ。介抱させてしまってはせっかくの旅行なのに申し訳が立たない。
俺は学習する男なのである。この場合は自分の体たらくを弁えたと言うか。

奉太郎「あ、あぁ。男の風呂は行水ともいうしな」

える「そうですか。えと、あの……折木さん?」

奉太郎「なんだ」

える「怒って……ますよね」

奉太郎「……他の二人が不在なのに無理やり連れだったことか?」

える「はい、折木さんは福部さんと摩耶花さんが来るのなら行くと言ってましたから……ですが、二人とも都合が悪かったらしく」

奉太郎「……まぁ」

える「ですよね。本当に申し訳ありません」

奉太郎「勘違いするな。俺は怒っちゃいない。エネルギー効率が悪いからな。そう怒らない。それに、どうせ里志辺りがそそのかしたんだろう」

える「えっと、はい。『悪いんだけど僕と摩耶花は行けない。だからホータローと行きなよ。連れってっちゃえば、文句言う気も起きないだろうからさ』、と」

里志め。帰ったら覚えておけよ。
伊原に色んなことを吹き込んでやる。


奉太郎「それに俺も止めようと思えば止められたからな。俺にも原因の一端はある。しかし」

える「しかし?」

奉太郎「…………流石に、同室なのは、すこし不味くないか?」

える「……そう、ですね。えぇ、その通りです」

このまま俺だけはファミレスで時間を潰そうかとも思った。
しかし岩手。侮っていたがさすが東北。寒い。

える「……」

奉太郎「……」

しばらくの沈黙の後、俺の就寝宣言を経て、ひかれてあった布団を出来うる限り苦痛にならない程度に離し、荷物で仕切りを引いた。

奉太郎「千反田、意味はないと思うが一応誓う。俺はここから一歩たりとてそちらにはいかない。トイレだってそっちには入らずに行ける道があるしな」

える「はい、わかりました。折木さんを信用します」

その誓いは仰々しく、まるでお姫様に跪く騎士のようだった。
俺が騎士ならずいぶんと頼りない王国だ。

さて、そんなこんなの夜を過ごして俺達は土曜日を迎える。
何かあったかだと?あったらすでに新幹線の中だ。

それに、何かあるとしたら、それは。

える「折木さん、折木さん」

奉太郎「なんだ?」

える「あそこの方、困ってるみたいです」

奉太郎「うん?……あの、身長の高い人か?」

える「はい、行ってみましょう。何か手助けできるかもしれません」

奉太郎「はいはい……」

何かあるとしたら、それはきっと、フェアにあるはずだ。


こういうイベントで、この好奇心の猛獣である千反田が、面倒事を引っ張って来ないわけないのだから――

書き溜め分は以上です。
次回は早くとも明日になります。

麻雀要素は一切ないです。

咲キャラが出てない?
出てきたから(震え声

それではおやすみなさい

レズはなしの方向で

信者の方に「新スレあったの気づかなかったけど荒らしてくれたから気がつけたわ」と感謝されたので今回も宣伝します!

荒らしその1「ターキーは鶏肉の丸焼きじゃなくて七面鳥の肉なんだが・・・・」

信者(荒らしその2)「じゃあターキーは鳥じゃ無いのか?
ターキーは鳥なんだから鶏肉でいいんだよ
いちいちターキー肉って言うのか?
鳥なんだから鶏肉だろ?自分が世界共通のルールだとかでも勘違いしてんのかよ」

鶏肉(とりにく、けいにく)とは、キジ科のニワトリの食肉のこと。
Wikipedia「鶏肉」より一部抜粋

信者「 慌ててウィキペディア先生に頼る知的障害者ちゃんマジワンパターンw
んな明確な区別はねえよご苦労様。
とりあえず鏡見てから自分の書き込み声に出して読んでみな、それでも自分の言動の異常性と矛盾が分からないならママに聞いて来いよw」

>>1「 ターキー話についてはただ一言
どーーでもいいよ」
※このスレは料理上手なキャラが料理の解説をしながら作った料理を美味しくみんなで食べるssです
こんなバ可愛い信者と>>1が見れるのはこのスレだけ!
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456676734/)


える「あの、何かお困りですか?」

?「うひゃい!?……わ、私ですか?」

千反田が話しかけると、その女性は目に見えて分かるほど驚き、恐る恐るとこちらを向いた。

おお、近くで見るとさらに威圧感がある。

える「はい、そうです。私は千反田えると申します。こちらは折木奉太郎さん。農業フェアのためにここに来たのですが、遠目からあなたが何か困っているのを見かけたので、声をかけさせていただきました」

千反田の懇切丁寧な言葉が今は怪しげな宗教団体にしか聞こえない。
これではこの人も訝しがって狼狽えてしまうだろうと予想していたが。


豊音「えっと、ありがとうございます。私は姉帯豊音です」


と、お辞儀しかえしてきた。
即座にわかる、この人に怪しい宗教、通販を近づけてはいけないと。

える「よろしくお願いします、姉帯さん。姉帯さんはこの高校の生徒でしょうか?」

豊音「はい!今年で三年生です」

おっと、先輩だった――というか社会人だと思ってたが違った。
よく見れば周りと同じ制服なので十分推測できたが、身長にばかり目が行ってしまっていた。

える「私たちは今年で二年生ですので、敬語は遣わなくても大丈夫ですよ」

豊音「そうなの?しっかりしてるから年上かと思ったよー」

える「そんな、私はまだまだで」

奉太郎「おい千反田。話が進んでないぞ。困っていることを聞くんじゃなかったのか?」

える「そうでした!すみません姉帯さん」

豊音「いえいえだよー。あと、豊音で良いよー。私もえると奉太郎くんって呼ぶから。いい?」

える「はいっ!」

なんだこのほのぼの空気。
二人ともに犬のしっぽが見えてしまう。このままでは日が暮れるまで延々とゆったりとした会話を続けるぞ。

ん?思ったよりも悪くない。疲れないし。

える「では、豊音さん。何かお困りですか?」

豊音「そうそう大変なんだよー!落し物しちゃったの!」

える「何を落とされたんですか?」

豊音「それが解らないんだよー!!」

奉太郎「…………は?」


豊音「何かを落としたんだけどそれが何か思いつかないんだよー!!」


これは、思ったよりも厄介かもしれない。

とりあえず、詳しく話を聞いてみることにした。
やるべきことなら手短に。何か解らないものを延々と探すなど無駄なエネルギー浪費この上ない。

豊音「えっとねー、さっきまでフェアの出し物のお野菜料理とかの食べ歩きをしてたんだけど」

豊音「それでお腹いっぱいになって部室に行こうとしたの。友達と待ち合わせしてたから」

豊音「でも、なんだろう。何かが足りない気がして、その何が足りないのかを考えたんだけど思いつかなくって」

豊音「それであたふたしてたら二人に声をかけてもらったんだよー」

える「どうです折木さん、分かりますか?」

奉太郎「……普通に、財布とか携帯とかじゃないっすか」

豊音「んーん?お財布と携帯はここにあるよ」

そういってスカートのポケットから小さめの財布と今流行のスマートフォンを見せてくれた。
文明人だったか。高校生にもなって携帯を持っていない俺達が異端に思える。

奉太郎「じゃあこのフェアのパンフとか」

豊音「それは……昨日楽しみで単純に家に忘れてきただけだったりー……」

奉太郎「新しくもらわなかったんですか?」

豊音「えへへ、全部覚えちゃったから」

すごい。
千反田にもできるだろうが、その記憶力を俺にも分けてほしいくらいだ。
これでテストも平均以上に上がるかもしれないのだから。

える「えっと、じゃあ」

と、千反田が姉帯さんの耳元で何かを言い始めた。
すると、姉帯さんの頬が少し赤く染まり、首を横に振った。

奉太郎「何を聞いたんだ?」

える「お、折木さんには教えられません!」

さいで。

まぁ違ったのだから深くは聞くまい。

そうだな……。

奉太郎「どうして違和感を感じたんですか?」

豊音「え?」

奉太郎「部室に行こうとしたら足りないとおっしゃったでしょう。てことはその何かはいつも見えてるものくらいじゃないですか。例えばバッグの中身でも、それはバッグを開けてからじゃないと何かを落としたかもとは思い至らないはずです」

える「確かに……お財布や携帯みたいなポケットに入ってるものはありましたから、そうですね。見えてるもの、服装やアクセサリーなどですか」

豊音「服装……アクセサリー……あー!」

千反田の出したキーワードで姉帯先輩は何か思い出したかのように大声を上げた。


豊音「帽子、帽子を無くしちゃったんだよー!」

える「帽子ですか?」

豊音「そうそう、いつも被ってる帽子なんだけど。どこで落としちゃったんだろー」

帽子か。
さっきまで買い食いしてたって言ってたから、その出店にあるのかもしれない。
食事中まで帽子をするのはマナー違反だし、この人はそれを破ることはなさそうだ。

奉太郎「食べ歩き、教室内では何か所行きましたか?」

豊音「えっと、三か所かな。教室だと帽子かぶってない時の方が多かったからどこかに置いた後忘れちゃったのかも」

える「じゃあその出店と、受付に行きましょう。落し物として届けられてるかもしれませんから」

ふむ、こんなところか。
俺の出る幕はこれでおしまいだろう。見つからなかったら、その時は諦めてもらうしかない。

結論を言って、姉帯さんの行った出店、受付にも帽子はなかった。
念のために他の近い箇所も回ってみたが見つからない。

豊音「うう……大事にしてたのに、私のバカ―……」

える「ごめんなさい、姉帯さん。力になれず……」

すでに敗戦の重い空気となっており、俺自身、二人の暗い顔を見ていると少しばかり焦ってくる。

俺はもう一度、少し考えてみた。

奉太郎「―――――あ」

える「どうかしましたか、折木さん」

豊音「何か解ったの!?」

奉太郎「千反田、もし俺が落し物をしたとして、それを届けようとしたらどうする?」

える「え?えーと、折木さんのクラス教室に行きます」

奉太郎「もし俺のクラスが解らなかったらどうだ?」

える「えっと、古典部に―――あ」

豊音「もしかして、部室?」

奉太郎「はい、希望はあると思います」


そう、
例えば千反田の落とし物を俺が拾ったとして、千反田のクラスが解らないとすれば、俺は迷いなく古典部に持って行くだろう。他の、遠外内や沢木口先輩、十文字などの部室のようないつもいるところが解っていてもそうだ。

ここなら絶対来るから、そこに持って行く。

もし落し物に気付かなかったら、落とし主は受付に行かない。ならばそうするよりも確実性を求めるだろう。

奉太郎「誰か姉帯さんの友達か知り合いが、持って行ったんじゃないでしょうか」

豊音「そうかも!さっそく行ってみよー!」

える「えっと、何の部活ですか?」


豊音「麻雀部だよー!」


フェアのやっているところからは少し離れた教室、そこに俺達は連れてこられた。
姉帯さんは扉の鍵が開いていることで誰かがいることを確信したらしく、意気揚々と入っていく。

豊音「こんにちはだよー!」

姉帯さんに続いて俺達も入ると(千反田は丁寧にお邪魔しますと言って扉の前でお辞儀をしていた)、そこには麻雀卓のある見慣れない空間があった。

そして、その奥にあるソファ。
そこに一人の、姉帯さんと同じ制服を着た女生徒がいた。

?「……だる」

女生徒はそう呟き、俺と目が合うと、その気だるげそうな目がこう言っている気がした。


『また厄介ごとか』、と。

おはようございます

仕事中に考えた結果、私には謎の才能はないと知りました。それでも書いて行きます。

>>14
百合要素は一切ないです

たくさんのコメントありがとうございます。
>>1は単純なので感想があるととても喜びます。

ようやくこのクロスのもう一人の主人公が出てきたところでおやすみなさい

豊音「あ、シロー!私の帽子知らないかな!」

シロと呼ばれた女生徒はゆっくりと手を上げると、棚の方を指す。
そこには黒い帽子が置いてあった。

豊音「あったー!ありがとう奉太郎くん!!」

奉太郎「いえ……」

よし、これでこの案件は終了だ。
さっそくフェアを見て、そして帰ろう。

そう画策していると、千反田がいつものように爆弾発言をかましてくれた。


える「なんだかシロさん、折木さんに似ていますね!」

部屋に少しばかりの沈黙が下りる。
しかしそれはすぐにぶち壊された。他ならぬ、姉帯さんによって。

豊音「確かに!奉太郎くんシロみたいに帽子見つけてくれたし!」

える「あの方も推理がお得意なんですか?」

豊音「うん!たまーに変なことが起きるとちょっと考えてはすぐに解決してくれるんだよー!」

える「折木さんもよく私が気になることをすぐに解決してくれるんですよ」

豊音「それに天然パーマの所もあるし、気だるげそうだし!」

える「そうですね!すごく似ています!」

本人たちをよそに何だか盛り上がっている千反田嬢と姉帯嬢。

奉太郎「…………」

シロ「…………だる」

それにそんなに似てもいないだろう。
俺はここまでダルそうにしてはいない。ただ単にエネルギー消費を抑えているだけだ。それに俺に似ていると言えば、この人もあんまりだろう。

つくづく、今日はあの二人がいなくてよかったと思う。里志はからかい、伊原はきっと否定するために俺をけなし続けるだろうからな。

……あぁ、夏のプールの時は俺もこんな感じだった気がする。
あと寝起きの直後とか。

奉太郎「なぁ、もういいだろう千反田。早く――」

える「折木さん折木さん!」

奉太郎「……なんだ」

える「あの方、もしかして折木さんのご親戚ですか?」

ここで回想は終了する。



奉太郎「はぁ?」

俺の知っている限り俺と歳が近い親戚は知らない。少なくとも岩手には。

奉太郎「さすがに悪乗りが過ぎるぞ千反田」

える「そうですか……瓜二つとは言いませんが、結構似ていたんですけど」

奉太郎「分かったから、もう行こう」

豊音「ちょっと待って!」

姉帯さんに呼び止められ、俺は扉へと向かう足を止めた。

豊音「もうちょっとで友達みんな来るから、みんなに紹介してもいいかな!」

える「麻雀部の皆さんですか?」

豊音「そう!それにお礼もしたいからちょっとジュース買ってくるねー!」

有無を言わさぬ動きで外へとかけていく姉帯さんに、手伝いますと追いかけて行った千反田。

当然のように俺と俺に似ているらしいシロさんが二人部室に取り残される。

再び沈黙が下りた。さっきとは違い長い沈黙だ。

見知らぬ男がいても不安だろうと考え外で待っていようかと、もう一度扉の方へと足を向けたが、

シロ「折木、くん……」

と、シロさんに呼び止められた。

奉太郎「なんすか」

シロ「ちょっとこっち来て」

消え入りそうな声だ。
俺は聞こえないように溜息を吐きながら、のそのそとシロさんの寝転がっているソファへと歩いて行く。

シロ「そこ、座って」

奉太郎「……はい」

麻雀卓に設置されている椅子に腰かけ、寝転がっている人と座っている人が対面するようになる。なんだかシュールな絵面だ。

シロ「……」

奉太郎「……えっと、それで、なんですか?」

シロさんはむくっと起き上がり、姿勢を正すと、少しばかり身体を前に傾けた。

シロ「……まずは、豊音が世話になった。ありがとう」

奉太郎「え、ぁいや、俺は何もしてないですよ。帽子が部室にあるかもしれないって言っただけで、絶対にとは言いませんでしたし」

シロ「それでも、豊音はたぶん延々と探し続けたと思うから、みんなが来る前に辿りつけたのは折木、くんのおかげ」

奉太郎「はあ……無理して君付けじゃなくてもいいですよ。呼び捨てで」

シロ「そう、なら奉」

一気に距離を詰めてきたなこの人。
俺よりも省エネ主義なんじゃなかろうか。

シロ「いっぱい喋ったら疲れた」

奉太郎「よくわかります」

そして、シロさんは再び寝転がる。そして目を閉じた。

シロ「……」

奉太郎「……」

静かだが、これはこれで悪くはない。
相手が遠慮して話しかけてこないと言うのが解るから、俺も無理して話しかける必要もない。

昨日は緊張してあまり寝れなかったから、俺も少しばかり眠い。
この空間は人の睡魔を増強するところだ――


?「あー!部室に男の人がいるー!!」


墜落する夢と共に俺は起きた。

一応言っておきますが、恋愛要素は絶対にないです。
折木は基本千反田意識です。

短いですが今日はこの辺で。

仕事だー。

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