理樹部屋
さ「にゃあにゃあ!」
真人「…………………」
理樹「…………………」
真人「理樹……」
理樹「分かってる。僕も理解が追いつかないんだ…でも今確実に言えるのはそれぐらいなんだよ」
真人「あの時はさ、確か笹瀬川の飼ってた猫の世界だったんだよな」
理樹「うん……そのはずなんだけど…」
さ「みう?」
真人「…………………」
理樹「…………………」
真人「うう……頭痛くなってきたぜ…」
理樹「僕は胃が痛いよ……」
真人「……ち、ちょっと一旦部屋から出ようぜ」
理樹「そうだね……」
バタンッ
さ「みゃ……」
理樹・真人「「なんだこれっっ!?」」
理樹(僕と真人は部屋に入るなり同時に叫んだ)
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理樹(まず真人が言った)
真人「どういう事だよ理樹!?というかなんであいつが部屋にいるんだ!!」
理樹「僕だって知らないよ!気付けば僕のベッドで寝ていたんだ!」
真人「おいおいやべーよ!もしかして今ってまたどっかの誰かさんが作り上げた世界なんじゃねーのか!?」
理樹「うわぁどうしよう!もしそうなら今回ばかりは本当に検討つける気がしないよ!誰が望んだら笹瀬川さんが猫になるのさ!?」
理樹(そしてお互いにツッコミたいことをツッコむと今度こそ冷静に話し合った)
真人「ていうかこの流れだと俺はまた理樹と別々に寝なきゃいけねえのかよ…」
理樹「た、多分……」
真人「よ、よし…自信はねえが一度部屋から追い出してみるぜ!」
理樹「い、いや、なんか嫌な予感がするんだけど……」
理樹(僕の忠告も聞かぬまま恐る恐るドアを開ける真人)
10分後
真人「前が見えねえ」
理樹(もう一度戻ってくるとそこには目が引っかかれた真人が出来上がっていた)
理樹部屋
理樹(真人は大人しく謙吾の部屋に泊まっていった。もちろん訳はまた適当に誤魔化したけど)
理樹「うーん……さ、笹瀬川…さん?」
さ「にゃー?」
理樹(当の笹瀬川さんはテッシュ箱を両手(前足?)で興味深そうにいじっていたが、名前を呼ぶと普通に僕の方を振り返った。一応自分のことが呼ばれていると理解出来ているらしい)
理樹「うわぁ……これ本当にどうするんだ…」
理樹(前回はこの流れで何事もなく寝てしまったが流石に今回は異変に気づかない訳にはいかない。しかし本当に…なんだこれ…笹瀬川さんがイタズラでもこんな生涯恥になりそうなことする訳がないし…)
理樹「謎は深まるばかりだ…」
さ「にゃー!」
理樹「いや、にゃーじゃなくて」
理樹(初めてこの笹瀬川さんを見たのは30分前…いや、1時間前だったかもしれない)
……………………………
…………………
…
今日の夕方
理樹(練習が終わって部屋に戻ってからのことだった)
ガチャッ
理樹『はあ、そろそろ冬に体操服で練習っていうのもキツくなってきたなぁ』
理樹(制服の上着を椅子に掛けると僕のベッドからもぞもぞと布が擦れる音が聞こえた)
理樹「ん?………えっ!?」
理樹(よく見ると布団が盛りあがっていた。ちょうど人が一人分)
理樹「だ、誰だ!?今日は早めに帰ったからリトルバスターズのみんなではないと思うけど……」
理樹(その布団の中の”なにか”は微動だにしようとしないので恐る恐るめくってみることにした。もしかしたら人ではないかもしれないからね)
理樹「ドキドキ……」
スッ
笹瀬川「………………」
理樹(人でした)
理樹「さっ、笹瀬川さん!?」
理樹(目を閉じて寝ていた。まるで赤子が母親の胎内にいる時の体勢だった)
理樹「こ、これは…」
笹瀬川「ん………?」
理樹「お、起きた!」
理樹(起きたばかりで明かりが眩しいのかまぶたを擦りつつも光を避けるように顔をしかめた)
理樹「さ、笹瀬川さん…いったいどうして僕の部屋に……?」
笹瀬川「にゃ?」
理樹「にゃ?」
理樹(きっと咄嗟に出てきてしまった言葉なんだろう。笹瀬川さんの次の言葉を待った)
笹瀬川「にゃっ!にゃーにゃー!」
理樹「おっとぉ?」
理樹(おかしいな…まだ寝ぼけているのかな?4足歩行でベッドから降りた)
笹瀬川「にゃっ」
理樹(そして何かあったのか?という表情でこちらを見上げる笹瀬川さん。いやそっちに何があったんだよ)
理樹「さ、笹瀬川さーん?」
笹瀬川「にゃー!」
理樹(僕の目には意識は完全に覚醒しているように見える。もはや夢遊病とかそういうアレではなさそうだ)
理樹「こ、これって……」
理樹(結論を独り言で弾きだそうとするとドアが開いた。真人だろう)
真人「ういっす!いやぁ、今日は疲れたなあ理…………えっ」
理樹(真人が素で驚いた)
…
……………
…………………………
続く(∵)
現在
理樹(ともかくこれは僕には手に負えない問題だ。一度恭介に電話してみよう)
プルルルルル
電話『おかけになった電話番号は……』
理樹「………嫌な予感がする…」
理樹(なんとしても話したいところだが彼は今就活の旅に出ている。他の誰かに助けを求めようと思ったが恭介以外に目撃もせずこんな話信じてもらえるとは思わない)
理樹(来ヶ谷さんや小毬さん辺りにも頼ろうかと思ったが、もう男子寮に女子が来ていい時間は過ぎてるし、謙吾に笹瀬川さんの今の状態を見てもらおうものならばいつか正気に戻った笹瀬川さんに殺されるだろう。謙吾に頼るのはどうしても行き詰まってしまってからだ)
理樹「ううむ……」
笹瀬川「ゴロゴロ」
理樹(今は様子を見るしかない。改めて考えると情けないが明日の朝になったらちゃんと真人や女の子達に助けを求めよう)
理樹「とりあえず笹瀬川さんをどうにかして寝かせなきゃ…」
理樹(とりあえず真人のベッドから毛布やシーツを引っ張り出して笹瀬川さんの横に即席の布団を敷いた)
笹瀬川「にゃっ」
ボフッ
理樹「よしっ、上手くいった!」
理樹(ちょっとばかり異常事態を前にのんきだと言われるかもしれない。けどこういうのは1日寝てから考えたほうが上手くいく。状態維持が出来るなら慎重に次に出るべき行動を考えてからでも悪くないだろう)
理樹(こういう考え方になれるのもここが普通の世界ではないと思ったからかもしれないな)
理樹(そうして今日も夜は更けていく………)
…………………………
………………
…
朝
理樹「ふああぁ……」
笹瀬川「………スゥ……」
理樹「……………………うん…」
理樹(目の前からいなくなってくれていること願っていたけどそんなことはなかった)
理樹「いや…でももしかしたらまともな笹瀬川さんになっているかも…!」
理樹(それはそれでかなりヤバい。けどまともじゃないほうがヤバい。期待と不安をこめて寝ている彼女の頬をついてみた)
笹瀬川「んん……にゃあ?」
理樹「ダメかー」
食堂
理樹(とにかく何を始めるにしても腹が減ってはまともな思考が出来ない。笹瀬川さんには部屋にいてもらって僕は購買で適当な惣菜パンを調達しにきた。中身が猫ならば今度こそキャットフードのほうが良かったりするのかな?)
ガヤガヤ
理樹「でも相変わらず混んでるなぁ…」
「おーい理樹ぃー!」
理樹(人ごみの先から力強い声が聞こえた。真人だ)
真人「珍しいなお前が購買の方で買うなんて」
理樹「うん。だって笹瀬川さんの事もあるしね」
真人「ああ、そういやそうだったな」
理樹(と、何気ない返しをする真人。昨日あれだけ騒いでおいて今日はえらくのん気だな…)
真人「まっ、そういう事なら俺に任せてくれ!この為の右手だ!」
理樹(荒波の中を逆らうように進む真人。あっという間に姿が消えてしまったかと思うとまたすぐに出てきた)
真人「さて、理樹と笹瀬川はいくつだ?」
理樹(したり顔で大量にある両手のパンを見せびらかしてきた)
理樹「そのために鍛えた訳じゃないでしょっ。でもありがとう真人。4つほど欲しいな」
真人「毎度あり!」
理樹(言わずもがな全部カツサンドだった)
理樹部屋
笹瀬川「もぐもぐ♪」
理樹(ちゃんと両手を使って人間的に食べてくれた。口だけ使って囓ろうものならどうしようかと思ったけど…)
キーンコーンカーンコーン
理樹「あっ、やば!」
理樹(観察していてHRの時間についてすっかり失念していた。助言も欲しいし一旦笹瀬川さんは置いていこう)
理樹「ごめん笹瀬川さん!また後で来るからっ!」
笹瀬川「にゃーん!」
理樹「!」
理樹(ドキッとした。ここまで満面の笑顔を向けられるのは少し刺激が強い)
教室
「起立!礼!」
理樹「ふう……」
理樹(担任が来るのが少し遅れたお陰でなんとか遅刻扱いを免れた)
理樹「……………」
キョロキョロ
理樹(辺りを見渡してもみんないつも通り授業を受けていて、世界の異変…というか笹瀬川さんの異変に気付いてそうな人はいなかった)
理樹(もしかしたらここは本当にいつもの世界かもしれない。まだ超自然な現象は起きていないし、笹瀬川さんの様子以外はいつもと寸分違っていない。きっと彼女がなにか変なものでも食べてああなってしまったという可能性も…)
ガラッ
笹瀬川「みゃーっ!」
理樹(なんて考えていると本人がドアを勢いよく開けて教室に入ってきた)
理樹「えええぇーーっ!!」
シタシタシタッ
ドサッ
理樹(全力の二足歩行で走ってきた。まっすぐ僕の席に来ると抱きしめんばかりの勢いで僕の胸にすがりついた)
理樹「さっ、笹瀬川さん!?部屋で大人しくしておいてって……!」
笹瀬川「♪」
理樹(僕の慌てぶりを尻目に笹瀬川さんは僕の頬に顔を擦り付けてきた)
理樹「まずいよこれは!」
理樹(僕の精神的にもまずかったがそれより怖いのは周りの反応だった。昨日まで優等生で通っていた生徒が異性になりふり構わず突撃する姿なんて…)
担任「こら直枝!」
理樹「は、はい!」
理樹(この時ばかりはその場で退学を告げられても大人しく従いそうだった。しかしながら担任の口から出た言葉は予想していた答えと随分スケールが違っていた)
担任「笹瀬川はちゃんと大人しく座らせるか寮母さんに預けるかのどちらかにしろと言われていただろう」
理樹「………………………」
理樹「……………えっ?」
担任「ほら、さっさと座らせなさい」
理樹(これはやっぱり作られた世界だ。もしくは果てしなく長い僕の夢だ。そうじゃなきゃ説明がつかない)
理樹(周りの生徒達を見渡したがその意見は変わらなかった。みんな「なんだ今日は来たのか」とか「授業が少しでも中断されるようにもう少し騒いでくれ」なんていう目をしていた。まるでクラスに別クラスの不良がちょっかいかけにきたって感じだった)
理樹「そ、それだけですか!?」
担任「ん?もっと叱って欲しかったのか」
理樹「いや…全然そういうわけじゃ…」
担任「よし、じゃあ授業を始めるぞ。では教科書34ページから…」
理樹「……いやいやいやいや……」
理樹(小声で呟いた。その言葉を聞いたのは既に僕の両膝にちょこんと座っている笹瀬川さんだけだった)
キーンコーン
担任「では続きは明日」
理樹(自然とそのまま行われた授業がようやく終わった。笹瀬川さん自体は乗ってても疲れは感じなかった。というか髪の良い匂いとかで感じるだけの余裕はなかった。黒板がかなり見え辛くはあったけど)
笹瀬川「にゃっ」
理樹(彼女は僕を椅子にすることに飽きたのか授業が終わると勝手に廊下へ出て行ってしまった。ちょっとした騒ぎになるかもと思ったが、教室での状態からするにみんなどうせ違和感を抱かないんだろう)
やっぱり>>1は世界に異変がある系の話のほうが面白い
理樹(とにかくみんなから話を聞かないと……もう今から頭が痛くなってきた)
来ヶ谷「なに、笹瀬川君の様子がおかしい?」
理樹「うん…見てくれたら分かったと思うんだけど…」
理樹(あの世界では、笹瀬川さんの抱える問題を知ってしまった人間はそのゲームマスターの意思によって世界から消されてしまった。しかし、今回ばかりは秘密もなにもなかったので堂々と聞いて回ることにした)
来ヶ谷「私は医者じゃないが人の異変には気付きやすい方だと思っている。だが分からないな…いったいなにかあったのか?私の目には元気に見えるが」
理樹「そりゃ普段よりも元気すぎるほど元気だよ!でもそれがおかしいじゃないかっ」
来ヶ谷「そう叫ぶな。なにかあったのかお姉さんに言ってみるといい」
理樹「言わなくても分かるでしょっ!笹瀬川さんが!猫に!なってるじゃないか!!」
来ヶ谷「ふむ。そう言われてみると彼女は少し猫っぽいイメージだな。鈴君とはまた違った種類だ」
理樹「いやそういうことを言ってるんじゃなくて…!」
来ヶ谷「要領を得ないな…なら何が問題なんだ?」
理樹(困惑した来ヶ谷さん。この時点でもう言っても無駄だと感じたが言わずにはいられなかった)
理樹「笹瀬川さんが人間の言葉を喋らなくなって僕に懐くように部屋に居座ってることが問題なんだよ!」
来ヶ谷「………理樹君」
理樹「な、なにさ…」
来ヶ谷「君が世話したいと言ったんだろ?男なら最後まで責任を持ちたまえ」
理樹(開いた口が塞がらなかった)
理樹「……………………」
真人「いきなり机につっぷしてどうした?眠いのか?」
理樹「ちょっとの間でいいからほっといてくれないかな…」
真人「お、おう…」
理樹(来ヶ谷さんから変な顔をされつつ聴けたこの世界の異変はこうだった)
・笹瀬川さんは入学式当初あんな様子で、世話役は何故か僕が引き受けたことになっている。
・それでもソフトボール部は入っており、どうコミュニケーションを取っているのか知らないが次期キャプテン候補なのも変わっていない。
・みんなが笹瀬川さんをマスコットのように可愛がっている。彼女のおかしさを感じているような人間は僕だけ。
理樹(これはまずい。これが本当なら今回は本人も含め味方が1人もいないぞ…)
ガバッ
理樹「そ、そうだ!ねえ真人!」
真人「おわっ!?急にどうしたっ!」
理樹「真人は笹瀬川さんの様子について昨日僕と喋っていたよね!?笹瀬川さんはおかしいよね!?」
理樹(僅かな希望の光がたくましい筋肉から放たれている気がした。真人も昨日の夜僕と共に動揺した中だった)
真人「そんなこと言ってたか?確かに牛乳を飲む量が減ったと聞いたが…」
理樹(しかしやっぱりその光は気のせいだったらしい。多分汗かなんかだったんだろう)
理樹「あ……そう……」
理樹(これではっきり分かった。この世界ではみんなの意識はおろか過去まで書き換えられていたのだ。つい昨日のことまで)
昼休み
屋上
笹瀬川「にゃーごっ」
パクパク
理樹(お昼ご飯のパンと牛乳を笹瀬川さんと一緒に食べながらふと思った。今回のゲームマスターは何が目的なんだろうと)
理樹(あらゆる衝撃を前に忘れかけていたがこんな事をするのは絶対に意味があるからなんだ。きっと笹瀬川さんを猫にしてしまう動機が犯人にはある)
理樹「笹瀬川さんを猫にする動機…?」
笹瀬川「にゃー?」
理樹(例えば笹瀬川さんの恥ずかしい姿をこの目で拝んでみたかったから?逆にこういうその…普段では見られなさそうなキュートな笹瀬川さんを見たかったから?………どちらもこんな世界で僕を巻き込んでまでやるような事とは思えない)
理樹「うーん……」
キィ…
理樹「うん?」
理樹(屋上の小窓が開いた。この侵入ルートを知っている人と言えば…)
小毬「うんしょっと……あっ、理樹君とさーちゃんだっ」
笹瀬川「にゃー!」
小毬「えへへっ、今日も元気だねぇ」
理樹(子猫な笹瀬川さんは笑顔で小毬さんに挨拶をした。なんだかこれに似たようなやり取りが前にもあった気がする)
理樹「ねえ小毬さん…小毬さんも笹瀬川さんのことをなんとも思わないの?」
小毬「ほえ?」
理樹「ほら、君は笹瀬川さんと1番の仲良しでさ、あの世界の時もよく協力してくれたじゃないか…」
理樹(無駄だと思われる説明ほど虚しいものはなかった。ただ、それでも、1人だっていい、理解者が欲しかった)
小毬「……うん…そうかも……」
理樹「えっ!?」
小毬「あっ、いや、大丈夫だよ!気にしないで下さいっ」
理樹「気にするよ!今なんて!?」
理樹(思わず小毬さんの両手を握ってしまった)
小毬「り、理樹君が怖いぃ~!」
理樹「ご、ごめん……でも気になったんだよ…やっぱり小毬さんも笹瀬川さんの様子が変だと思うんだね?」
笹瀬川「~~?」
小毬「う、うん……」
理樹「詳しく聞かせてほしいな」
小毬「へ、変と言ってもなんとなく…なんだけどね。こうさーちゃんが昨日まではしっかりしてたんだけど今日は子供みたいだなーっと……あっ、でも今のさーちゃんもしっかりさんだよっ!」
理樹(もはや人語が通じてるかも分からない笹瀬川さんに慌てて弁解する小毬さん。案の定本人もよく分かってなさそうだった)
理樹「うん。ありがとう小毬さん…ちょっと自信が持てたよ」
理樹(やはりおかしいのはこの世界だ!僕じゃない。ただそうなるとやはりこの学校の生徒はNPCなんかじゃなくてちゃんとここで学校生活を営んでいるんだろう。それは同時に囚われているということでもあるんだけど)
理樹(それより今は小毬さんが正気に戻りかけていることの方が大切だ!もしかしたら笹瀬川さんと一番近くにいたから自覚が持てたのかもしれない。ここはなんとかこちら側に引き込まないと!)
理樹「小毬さん。はっきり言って今の笹瀬川さんはおかしい。君の言う通りもっとしっかりしていていつも鈴と喧嘩をしてて、でも後輩や仲の良い友達に思いやりもある無類の猫好きだ!」
小毬「いつもの……さーちゃん……」
キーンコーン
理樹(あともう少しというところで予鈴がなってしまった)
小毬「と、とりあえずもう戻らないと…」
理樹「あ、うん…」
理樹(もはや間に合っても間に合わなくても同じだということは分かっていた。しかし無理に引き止めなくても大丈夫だろう。今回は急に煙になって消えるなんていうことはあり得ないんだから)
放課後
理樹(授業が終わるとまた笹瀬川さんが僕にじゃれてきた。授業が終わるまでは窓を見下ろす限り他の猫たちと遊んでいたようだ)
笹瀬川「~♪」
理樹「さて、少し歩き辛いけどゆっくり小毬さんに話の続きでも……」
理樹「………いや、待てよ……」
理樹(何か重要な事を忘れていた気がする…確かこういう時は決まって頭の中に思い浮かんだような…)
真人「なあ理樹~」
理樹「ちょっと待って今なにか思い出そうと……」
真人「そうか?悪いな。ちょっと恭介がまだ帰って来ねえから心配で…」
理樹「そうだ!恭介だ!」
真人「お?」
理樹(慌てて携帯を取り出した。明日には帰ってくる予定だと言っていたがまだこちらに姿を見せていない。もし恭介も他のみんなと同じく違和感を感じなくなっていたとしても良いアドバイスを貰えるかもしれない)
理樹「ちょっと電話してみるね…」
真人「おうっ!」
プルルルルルル……プルルルルルル……
理樹(1度目は失敗に終わった。しかし昨日にくらべて今日は本格的に世界がおかしくなった。真人の変化がそうだ。だから恭介に電話がかかるようになるという根拠にはならないが試してみて損はない)
理樹「頼む……今度こそ!」
理樹(しかし、現実は非情である)
『おかけになった電話番号は現在電波の届かないところに……』
真人「どうだった?」
理樹「だ、ダメだった…」
笹瀬川「にゃあ…」
理樹(笹瀬川さんも一緒になって悲しんでくれた)
『ご用のブツ……場合は…ブブブ………』
理樹「ん?」
理樹(急にアナウンスの声にノイズが混じってきた)
『発信音……ザザ……』
理樹(どんどんノイズが侵食してしまいにはアナウンスは聞こえなくなってしまった。なにやら様子がおかしい)
『ザザ……か…?……樹っ!……ザザザ…』
理樹「!」
理樹(今、僕の声を誰かが…!)
『そこに……か?……聞こえ……くれ…!!』
理樹(次はその声の方がどんどんクリアになっていき、次第にハッキリと聞こえるようになった)
『俺だ!恭介だっ!』
理樹「恭介!!」
いかん途中で寝てた
多分明日は早めに描けるから完結できると思うぜ!
>>17
嬉しいこと言ってくれるじゃねえか(∵)
恭介「よし!よし!やっぱり繋がれたな!」
理樹(こっちまで嬉しくなるほど会心の声を叫ぶ恭介)
理樹「き、恭介!実は大変なことになってて!」
恭介「ああ分かってる!にしてもまた同じようなことが起きるなんてつくづく理樹は苦労人だなっ」
理樹(まったくその通りだ)
恭介「ゴホン!とにかく今はそんな事を言っている場合じゃない。もはや俺とお前が何故今喋ることが出来るかなんていちいち話す暇はないんだ。早速だがそちらで起きている事を話してくれ」
理樹(口振りからするに恭介が電話に出れるのは短い時間なんだろう。僕も出来るだけ手短に異変だけを掻い摘んで話した)
理樹「………それで今に至るんだ」
恭介「…………そうだな……よし、分かった」
理樹(予想通りどんなトンデモ話でも恭介は時に聞き返したり、不鮮明な所を質問したり、真剣に耳を傾けてくれた)
恭介「それで今も笹瀬川は隣に?」
理樹「まあね」
理樹(全力な愛情表現のおかげで隣というかほぼ一体化してるけど)
恭介「……………………」
理樹「?」
理樹(恭介がぼそぼそと独り言を喋っていた。なにか思いついたのだろうか)
理樹「恭介どうかしたの?」
恭介「いや。今回の世界はそう危険なものでもないかもしれないと思ったんだ」
理樹「えっ?」
恭介「だって考えてもみろ。これまで誰も消されてなんかいないしお前だって危険があった訳でもないだろ?」
理樹「そ、それは……」
理樹(確かに今までに起こってる状況からして裏に何かとてつもなく恐ろしい思惑があるとは思えない。でも…)
恭介「まあ問題は願いを叶えなくちゃそこから出られないって事なんだけどな」
理樹「そこだよね…」
恭介「依然黒幕の気配はしないんだよな?」
理樹「うん…」
恭介「じゃあ異常な奴は笹瀬川だけと言うわけだ」
理樹「恭介、まさか…」
恭介「俺はまだなにも言ってねえぜ?まあ一つヒントをやるとしたら無意識なストレスもいつかは爆発するって事だ」
恭介「さっきは出られないと言ったが多分ここもそう長く支える事は出来んだろう。いつかはこの世界も形を保てなくなって崩壊する。理樹が何もしなくてもこの事件は解決する」
恭介「だが唯一このミッションをクリア出来るのも理樹、お前しかいない。黒幕を満足させるかさせないかはお前の手にかかっている。そろそろ俺は戻って普通に寝る。しっかりな」
理樹(恭介はひとり合点してどんどん落ち着いてきたようだ。残念ながら僕はまだその境地まで達せられていない)
理樹「そ、そうだ!恭介は今どこからかけてるの!?」
恭介「『前と同じ』と言えば分かるな?じゃ、解散」
プツッ
ツーツー
理樹「……ええ……」
理樹部屋
笹瀬川「んにやぁ~♪」
理樹「笹瀬川さん。人がいないからってのし掛かるのはやめようね」
理樹(停滞していた推理は恭介のおかげでまた思わぬ進展を見せてくれた。恭介はヒントどころかほぼ答えをくれたようなものだった)
笹瀬川「すりすり…」
理樹「笹瀬川さん。お願いだから顔に顔を擦りつけるのはやめようね」
理樹(つまり、この世界を作ったのはここにいる笹瀬川さん自身だという事だ。”ここ”はあちらとほとんど変わらない。現実と同じものを作ってなんの意味がある?)
理樹(本当に笹瀬川さんだけしかおかしくないのだ。みんな世界に順応している。ということは笹瀬川さんが無意識に…)
笹瀬川「にゃにゃにゃ!」
理樹「なっ!」
ドサッ
笹瀬川「んふふ~♪」
理樹「いやいやいやいや!この体勢はまずいって!!」
ガラッ
真人「おーい理樹ー俺の机にハンドグリップなかっ……」
理樹「あ………」
笹瀬川「?」
真人「り…理樹……お前……」
理樹(今世紀最大のワーストタイミングで部屋に来た真人。彼が絶句するのも無理はない。はたから見ると笹瀬川さんが馬乗りになって僕を襲っているようになっているし。というかその体勢だと真人からパンツ丸見えだよ笹瀬川さん)
理樹「違うよ真人!僕は被害者だ!襲われただけなんだよ!!」
真人「そうかよ理樹…お、俺は信じてたのに…」
理樹「し、信じてよ!決して真人が想像するような……!」
真人「俺との筋肉は遊びだったんだな……ハハッ…じゃ、2人でよろしくやっててくれ……ちょっと謙吾っちの所行ってくる…」
パタン
理樹「あ…あぁ……」
笹瀬川「?」
理樹「やってしまったぁぁ………!!」
理樹(頭ではどうせこの事も起きたらうろ覚えで終わると分かっている。だがしかし大切な友人にああいう勘違いをされるというのはなかなかキツい。是非とも早くここから出ないと)
理樹「笹瀬川さん…君はなにを思って猫なんかになってしまったのさ」
笹瀬川「?」
てしてし
理樹(無論答えてもらおうなんて期待していない。だけどその答えこそ最重要課題だ。笹瀬川さんが猫になってしまうほどストレスを溜めていたのなら出来る限りその原因を取り除きたい)
理樹(なのに、困った事にこれまでの高飛車なイメージとは違ってまったく無警戒で純情な彼女の強烈なギャップが僕の考察をめちゃくちゃにしてしまう)
理樹「とりあえずもう夜だしシャワーでも……」
理樹「………シャワー?」
理樹(今かなり重要なことに気付いたかもしれない。笹瀬川さんがトイレは勝手に済ませているのは知っているけどいったいこの状態の笹瀬川さんはどうやってシャワーをしてるんだ?)
そう廊下
理樹「ハァハァ……」
笹瀬川「♪」
理樹(この時間帯はまだみんなシャワーを利用しない。狙うなら今しかない!)
理樹「で、でも…」
理樹(連れて行ったところで笹瀬川さんは自分で洗ってくれるのか?猫並みの知能になっているなら毛づくろいするだけで済ませようとしてしまうのかも…そうなれば世話役の僕が責任を持って背中から全身隅々まで洗ってあげないと行けないのかも…。でもそんな倫理に反するような事をしてもし見つかってしまったらいくらこの世界での出来事とはいえ相当な変態のレッテルを貼られてしまう…いや、それだけじゃすまない。最悪大阪湾に沈められるかもしれない。何と言ってもあの笹瀬川さんだぞ?鈴程ではないけど男子からは人気があるし女の子っぽさで言えば俄然上をいっている。いや鈴を否定するわけじゃないけど最初会った時は男の子かと思ったし、前の事件で笹瀬川さんのいろんな一面を見ちゃった訳だし。でもここでやめる訳にはいかない。女の子は1日足りとも身体を洗わないなんてことはしてはいけない。そうだ直枝理樹!これは必要なことなんだ。誰かがやらなくてはいけない!恭介も言ってたじゃないか『これはお前にしか出来ないことだ』って!だから僕はまったくやましい気持ちで笹瀬川さんをシャワーに誘う訳じゃない。そうとも、あんながっかりおっぱいに興奮する訳ないじゃないか!これは紳士にだけ許された使命だ…そう、紳士の…紳士的な……)
小毬「あっ、理樹君。もう出てきてくれたんだね」
理樹「どひゃあっ!!」
理樹「こ、小毬さん…どうしてここに?男子寮だよ!?」
理樹(女子を部屋に入れてる僕が言えた訳じゃないけど)
小毬「どうしてって言われても…だってさーちゃんとお風呂入らなきゃいけないから」
理樹「えっ!?こ、小毬さんも僕と一緒に入るの!?」
小毬「ほえ?女子寮で2人で入ろうと思ってたんだけど…もしかして理樹君も来るの?」
理樹「えっ、あっ……いや…」
理樹(あっ、そういうことか。この世界じゃお風呂の時だけ小毬さんが笹瀬川さんを誘いに来るのか…毎回ここに来ることになってたんだろう)
理樹「ぜ、全然そんなつもりないから!」
理樹(となればかなり恥ずかしい思い違いをしていたことになる。そりゃそうだよね…笹瀬川さんもまさか自分の作った世界でそんなことになりたい訳じゃないだろうし……)
小毬「じゃ~行きましょう~!」
笹瀬川「にゃぉーん!」
理樹(仲良く手をつないで女子寮に向かう2人。なんとなく自分が汚れて見えた。心の方が)
深夜
理樹(ようやく濃厚な1日が終わった。現実では1時間すら経っていないんだろうけど)
理樹「おやすみ」
笹瀬川「ミュー…」
理樹(何故か寂しそうな声をあげる笹瀬川さん。しかしもう疲れは限界だ)
パチッ
モゾモゾ……
理樹「……う…ん…?」
理樹(何かに当たって目が覚めてしまった。当たったというより当てられている…?どうやら何かが僕の布団の中で動いているらしい)
理樹「な、なんだ……」
理樹(それは最初下半身にいたが、どんどん上半身へ登ってきた。4足歩行だ)
理樹「……嫌な予感がする」
理樹(ペラリとめくり、自分の勘はまだまだ鈍ってないことを再確認させられた。彼女が迫っていた)
理樹「ちょ…ちょ…!」
笹瀬川「ふにゃ~」
理樹(目がとろんとしていた。もしや彼女もまた寝ぼけているのかも)
理樹「それにしたって異性にこんなくっつく理由にならないよ笹瀬川さん!」
笹瀬川「すんすん」
理樹「匂いも嗅いじゃダメだよ!」
理樹(な、なんという僕殺しな…!)
理樹「なんでそんなに僕ばっかり甘えるのさ!」
笹瀬川「みゃーおっ!」
理樹「!」
理樹「待てよ…甘えるだって?」
理樹(これがもし正解なら恥ずかしいきっかけだけど、笹瀬川さんが世界を作った理由ってもしかすると……)
朝
食堂
理樹「うう……結局眠れなかった……」
理樹(あのあと頭にピンと来たのはいいけど笹瀬川さんを上手くなだめるのには失敗した。仕方がないのであっちが寝付くまで夜通しであっち向いてホイやくすぐり、猫じゃらしから指をクルクルさせるなど遊びのフルコースを振る舞う羽目になった。頭が痛い)
「おお、笹瀬川がいるぞ!」
「やん可愛い~!写真撮ってぇ~!」
「一度でいいから抱っこしてみたいなー」
理樹(そんな苦労もつゆ知らず笹瀬川さんはみんなからの愛情を一身に受け止めていた。なんかこんな感じの車掌さんがいた気がする)
理樹「笹瀬川さん、ごめん、今日はちょっと他に寄るところがあるからもう行こうね」
笹瀬川「にゃっ!」
理樹(振り向くとお菓子とゼリーを大量に貰っていた笹瀬川さんなのでした…)
理樹(そう、今日は足を引きずってでも色々と確認したい事があったんだ。裏付ける事が出来るかどうかはやってみないと分からない。でもダメで元々だ!)
グラウンド
笹瀬川「にゃー!にゃーにゃー!!」
理樹(腕を組まれたままグラウンドに連れて行くとあからさまに嬉しそうだった。やはりこんなことになってもソフトの情熱は変わらないらしい)
理樹(そして、笹瀬川さんの鳴き声にちょうど朝練を終えたソフトボール部の人達が彼女の元へ駆け寄った)
「おはよう笹瀬川さん!」
「今日のは終わったけど軽く打っていく笹瀬川さん?」
「笹瀬川さん~!」
理樹(上下関係なく全員から可愛がられていた。それもそのはず猫を嫌う人間なんてまずいない。そして例の3人はというと…)
取り巻き1「…………」
取り巻き2「さ、佐々美様…」
取り巻き「えっと……」
理樹(彼女らも小毬さんと同じく気付きかけているのかもしれない)
理樹(笹瀬川さんは他の人に任せて僕はこの3人にコンタクトを取ることにした)
理樹「ねえ、ちょっといいかな」
取り巻き1「あなたは確か2年の…」
理樹「うん。直枝だよ」
取り巻き2「何の用ですの?」
理樹「笹瀬川さんさ、少しおかしくない?」
「「「!!」」」
理樹(この言葉はパンチが効いたようだ)
取り巻き1「お、おかしいだなんて失礼な!佐々美様はいつものように凄くキュートですわっ!」
理樹「かっこいい…とかじゃなくて?」
取り巻き2「そ、それは……」
取り巻き3「やっぱり直枝さんもそうお思いですか!?実は私たちも佐々美様がいつもと違うと思っていたんです!」
取り巻き3「でも……どこが違うのか…それだけがさっぱり…うう!佐々美様の側近ともあろう私達が情けないですわっ!」
理樹(推測通り笹瀬川さんに近い人ほど違和感を覚えるようだ。……いや、僕はそんなに近いなんて言えると思えないけど)
理樹「その事で一つ協力してくれないかな?実はもしかしたらこの異変を解く鍵を見つけたのかもしれないんだ」
取り巻き3「鍵…?」
取り巻き1「なんですのそれは!」
理樹「笹瀬川さん…今の笹瀬川さんじゃない、本当の姿と思える彼女を想像してみて」
取り巻き2「本当の…佐々美様……」
理樹「その笹瀬川さんは何かこう必死じゃなかった?その人は凄く頑張り屋だった。だけど何かその裏もあったはずなんだ」
取り巻き3「は、はい……その通りです。私達がイメージしていた佐々美様は高貴で、隙が無い…というより見せないよう努力しているように見えていたと思いますわ…あやふやですけど…」
取り巻き1「もちろん今の佐々美様もキュートですわ」
理樹(それはもう聞いたよ)
理樹「うん。じゃあ”その笹瀬川さん”は他の人にべったりしたり、ちょうど今の彼女のように『甘えた』ことは?」
取り巻き2「気を許している方は私達も含めて何人かいますが、あそこまで露骨に好意を振りまくようなことは…」
理樹「うん。そうだよね!」
理樹(いよいよ笹瀬川さんの動機が分かった。今思えばかなり簡単な事だったじゃないか!あとはそれを思う存分達成してもらうだけだ!)
理樹(笹瀬川さんが猫になった理由。それはきっと他の人に甘えたかったからだ。日頃、次期キャプテンのエース争いや人気に嫉妬する女の子達に負けないため、決して他人に弱みを見せず勝者でいようとした笹瀬川さん。そんな彼女はいつの間にか単純に人に甘えるという心の寄り所を忘れてしまったのだ)
理樹(それが恭介の言っていた無意識のストレスだろう。ようは誰かに寄りかかりたいという欲求がついに我慢出来なくなって学校のみんなを巻き込んでこの世界で叶えようとしたのだ)
理樹(何故それで僕がまだ正気を保っているのかは分からない。きっと本当の意味での理解者が欲しかったのかも…。しかしそうと分かればやるべき事は明白だ。本人の要望通り甘えまくってもらおう。もちろんその相手は……)
理樹部屋
ガチャ
謙吾「どうした理樹?せっかくの休日に部屋へ呼び出して…」
理樹(真打ちを登場させた。これで一発合格だろう)
理樹「さっ、思う存分甘えなよ笹瀬川さん?」
理樹(我ながらナイスアイデアだ……………と、思っていた)
笹瀬川「に、にゃあ……」
フルフル
理樹「あれぇ!?」
謙吾「ん?笹瀬川がいたのか…お前の後ろにぴったりくっついていたんで気づかなかった」
理樹「いやいやいや!ほらっ、笹瀬川さん!猫になった今なら謙吾に近づいても恥ずかしくないでしょ!?」
笹瀬川「にゃぅ………」
謙吾「はあ困ったものだな。どうしたものか笹瀬川は俺にはあまり近づいてこないんだ。これについては参ったな」
理樹「えっ……いつもこんな感じだったっけ……」
謙吾「ああ、そうだが?」
理樹「そんな…当てが外れた…」
謙吾「よく分からないが…俺はもういる意味はないのか?」
理樹(僕の失意の目を見て悟った謙吾はもう帰る準備に入っていた)
謙吾「なにがあったか知らないがそう落ち込むな理樹。というか一番懐いてるかどうかならお前が一番じゃないか」
理樹「えっ、僕!?」
謙吾「うむ。世話係りになると決める前から笹瀬川はお前にべったりだったからなぁ。なるべくしてなったというか…」
理樹(隣の笹瀬川さんを見る。どちらにしろこの様子じゃ本来の目的は達成出来そうになかった)
理樹(そしてまた2人きりで部屋にこもる事になった)
理樹「笹瀬川さん、僕としてはここを出たい。ただしそれは笹瀬川さん自身の願いを叶えてからだ」
笹瀬川「にゃ?」
理樹「こんな笹瀬川さんも可愛いかもしれないけどやっぱり僕が好きなのはいつもの笹瀬川さんだから」
理樹「だからさ、僕で我慢してくれないかな…僕なら好きなだけ甘えていいから」
理樹(うわぁ、これ言う方がめちゃくちゃ恥ずかしい…)
笹瀬川「にゃぁーお♪」
理樹(でも、笹瀬川さんはそれで許してくれそうだった)
理樹(しかし甘えてもらうと言ってもどう甘やかしていいのか分からなかったから馬鹿らしいとは思うけど母親が子供をあやすような台詞になってしまった)
理樹「今までよく頑張ったね笹瀬川さん。他の人にはなかなか出来ることじゃないよ」
理樹(そこまで言ってから笹瀬川さんのモチベーションはいつも誰かに褒められて保たれていることを思い出した)
笹瀬川「にゃっ!」
理樹「あっ!」
理樹(まだ指をクルクルさせていないのに勝手に咥えられた)
理樹「さっ、笹瀬川さん!マジであむしたらめーだって!!」
笹瀬川「もごもご……」
理樹「ま……いっか……今は…」
理樹(そう。せっかく作った世界なんだ。それが終わるまで好きにさせてもいいじゃないか。僕も頭くらいは撫でさせてもらおう)
理樹「ほーら笹瀬川さん。くるくるくる~」
理樹(指と連動するように彼女の頭も動いた。それがなんだか面白くって思わず笑った。今はなんだかとても幸せだ)
理樹「あっ………」
理樹(ふと気付くと窓の外には景色が無かった。真っ白だったのだ。もうすぐ終わるんだろう。僕のとった道は正解だったんだ)
笹瀬川「ふみゅう……」
理樹(笹瀬川さんも甘え疲れたのかどんどん瞼が降りたり登ったりを繰り返して、とうとう開かなくなった)
理樹「やけに呆気なかったな。今回は……良いことなんだけど」
理樹(そう言ってるうちに僕らが座っているところまで白くなっていた。ここらが潮時だ)
理樹「おやすみ、笹瀬川さん」
笹瀬川「……うん……ありがとう……」
理樹「!」
……………………………………………
……………………………
………
…
朝
食堂
理樹「あっ」
笹瀬川「あらっ」
理樹(まさか着いた瞬間にばったり会うとは。でも笹瀬川さんの様子はあまり変わった感じはしない。少なくとも僕は意識してしまっているというのに)
笹瀬川「………それじゃ、ごきげんよう」
理樹「う、うん…」
真人「ん?なんかあったのか理樹?」
理樹「……そんなことないよ」
理樹(結局真人でさえ昨日のことをほぼ忘れていて、夢の内容のように次の瞬間にはすべて忘れていた。他のみんなもきっとそうだろう。何故なら笹瀬川さんがそう願ったから)
理樹(まあ、割と何人かはその防衛網を突破していたけど)
ダダダッ!
取り巻きズ「「「佐々美様~~!!」」」
笹瀬川「キャーーッ!!なっ、なんですの貴方たち!?」
取り巻き1「佐々美様!もっと私達に甘えてくださっていいんですよ!?何故そう思ったのかは不思議ですが!」
取り巻き2「佐々美様!私何故かとてつもなく佐々美様の猫の声真似が聴きたいですわ!」
取り巻き3「私もですわー!!」
鈴「朝からなんだアレは……」
小毬「うーん…私もよく分からないけどちょっと気持ち、分かるかも」
恭介「ふっ…理樹は『かなり』よく分かるんじゃないか?」
理樹「朝から茶化さないでよ…」
謙吾「ほーう笹瀬川と何かあったのか?」
理樹「そ、そんなんじゃ……いや、そうだけど…」
恭介「ヒューヒュー!」
理樹「やめてってば!」
笹瀬川「あっ、コラ止めなさい貴方!な、直枝理樹!助けなさーい!」
来ヶ谷「ほら、お呼びだぞ。直枝理樹君」
理樹「別に僕に頼らなくてもいいのに…」
理樹(まあ実を言うとそこで呼んでくれるのはかなり嬉しいんだけど)
葉留佳「確かにいつもはなにかにつけて謙吾君なのに珍しいッスねー!理樹君、なにかあったの?」
理樹「さ、さあー?」
恭介「特に気にすることでもないだろ。女の心は猫の眼と言うしな」
笹瀬川「わ・た・く・し・は!猫なんかじゃありませんわーー!!」
終わり(∵)
>>31
理樹「僕がこの世界から居なかったことになってる」
理樹「僕以外のみんながこの世界から居なかったことになってる」
恭介『理樹、今会ってるそいつは俺じゃない。今すぐ離れろ』理樹「えっ?」
思いつくのはこの3本。世界レベルでおかしい話はもうちょいあったと思うが>>31が言いたい話はこれらだろうな
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