ささ、乗っ取りなされ。
言葉は浮かび上がったもののこの腐れ脳みそは設定すら浮かばないのですじゃ。
男「中古で買ったパソコンの電源を入れたら中にえらい美人がいた」
男「何かのソフト……なのか? この美人がいる部屋みたいなウインドウが消えないな」
男「どうしたらいいんだろう。とりあえず話しかけてみるか。もしもーし」
女『あん? あんた誰よ?』
男「いや、それはこっちのセリフなんだが」
女『あたしが誰だろうとあんたに関係ないじゃん』
男「うん、そこが俺のパソコンの中じゃなかったらそうなんだけどね」
女『馬鹿言わないでよ。これはあたしのパソコン……って、何であたしパソコンの中にいるの?』
男「知らねーよ……」
みたいな感じでよろしく。
男「あ~、これがうわさのaiってやつか?」
女『人を勝手に人工知能呼ばわりしないでよ』
男「いやでもパソコンの中にいるし」
女『え、ていうか本当に私パソコンの中にいるの?』
男「本体に入ってるかどうかは知らんが、モニターの中にはいるな」
てな感じでオナシャス!
友「おーい!どうしたんだよ、急に走り出して」
男「なあ、さっきまでここにエラく美人な人が居たよな?」
友「何っ、それ本当か?どっち行った?」
男「えっと……ちょっと待ってくれ。―――だから、うん、彼女は何とも無しに散歩に出かけて…」
友「うん?っておい突然歩き出すなよ」
男「しばらくすると喉が渇いてくる。それで……そう、ここだ。ここの自販機で珈琲を買った」
友「おう、そうか。……なあ、あのさ」
男「彼女は最近の缶コーヒーの種類の多さに迷いはしたが、結局―――っと、どうした」
友「お前が話してるのって、ひょっとして夢の話か何かか?」
男「えっ?」
男「な、何言ってんだ、さっきから何かこう……分かるだろ?」
友「何がだよ。お前が分かんねーって、落ち着け」
男「おまっ、俺は真面目に――いや、そうだな。何言ってんだ俺。スマン」
友「ま、まあ疲れてるんだろ、こっちこそワリィ。折角だし何か飲もう。奢るぜ」
男「そうするか。じゃあ俺は、あー…………先買っていいや」
友「何だ迷ってんのか?じゃあお先ー」
男「えっと、そうだな。コーヒーの……どれにするかな……面倒だ!全部!」
友「あぁー!お前!奢るとは言ったけど!お前!」
男「えっ?あ、うわっスマン!何かつい!」
友「あのなー……ホント大丈夫かお前?」
男「ほんとスマン!この前も同じ事やったよな!スマン!」
友「バカ言うなよー初めてだよーこんな事そう何度もされてたまるかよー……」
男「いやいや、前にもこの自販機で……コーヒーを………何本も?」
友「くそー、お前にも後でタカって……おーい、どしたー?」
男「何本も……買って、こう、全部抱えて……」
友「って、おい何すんだコーヒー1つくらい寄越せ」
男「で、立ち上がったはいいが意外に重くて………ここで転ん あ痛っ」
友「おい何してんだコーヒー無駄にすんな」
男「………」
友「おーい」
男「助け起こしてくれ」
友「……へっ?」
男「彼女がここで転んだ時は通行人が声をかけてくれたんだ!だから、早く!」
友「な、何言ってるんだよお前……」
男「何が不満なんだ!俺にも彼女みたいに涙ぐめってのか!いいだろう、やってやる」
友「分かった!分かったよ!それは止めろ!ほら手出せ!」
男「何だよそれ!あの時はもっと優しくしてくれただろ!」
友「何だよそれ!あの時って何時の事言ってんだよ!」
友「意味分かんねーよ……」
男「ほら、コーヒー飲めよ」
友「ありがとよ、俺の奢ったヤツだが」
男「彼女も助けてくれた人へのお礼に1本あげたんだよ」
友「意味分かんねーよ……」
男「で、運ぶのが大変そうだと悟った彼女はここで全部飲んでいこうと考えたんだ」
友「へーそうかよ」
男「ゴクゴク」
友「………」
男「ゴク……」
友「……ん?」
男「多い……もういい……俺紅茶派なんだよ……」
友「知るかぁ!!」
友「おらテメェ全部飲めよコラ」
男「落ちっ、落ち着け。ここでは飲み干してないから。持って帰るから、な?」
友「ああそうかよ腐る前に全部飲めよコラ」
男「お、おう。分かってる。じゃあ移動しよう」
友「どこへ?」
男「分からない。分からないが、歩いてればその内分かる。気がする」
友「……何言ってるのか分からねーよ。その前にトイレ行ってくる」
男「あ、俺も」
―――――
男「そうか、彼女も公園を発って直ぐにもよおして戻ってきてる」
友「はいはい行く前に気づけて良かったな」
友「お前さっきからフラフラと何してんだ?」
男「彼女にはまだ缶コーヒーは重かったみたいでな…んかこう進んでたんだ」
友「おい。前、電柱だぞ」
男「ここで、ぶつかる!」
友「しなくていい。って急に立ち止まるなよ。今度は何だ」
男「ここの柿の木……」
友「やめろ。物欲しそうに眺めるな」
婆「あらあら。あんた達も柿が欲しいのかい?」
男「あ、すみません、そういう訳では――前にも欲しそうにしていた人が居たんですか?」
婆「うん、おったよ。あれはエラくべっぴんさんだったのう」
男「それ、どれくらい前の事か分かります?」
婆「はて、いつだったか……何日も前のような、さっきのような…」
男「そうですか……すみません、変なことを聞いてしまって。では」
婆「いいやぁ。気にしてないよ」
友「あっれー?2人が何の話をしてるのか分からないぞー?」
婆「あら、柿いるかい?」
友「なあ」
男「どうした?」
友「俺さぁ、ずっとお前の妄想だと思ってたんだけどさ」
男「おう」
友「美人さん、本当に居るのか?」
男「ああ」
友「本当にか?」
男「もうハッキリと感じるよ。彼女は居る」
友「本当にか?本当に何本も缶コーヒー抱えた上に柿を乗せて歩く美人が居るのか?」
男「あ、この辺で晩ご飯の材料買っていこうと考えて商店街に向かったっぽい」
友「本当にか?」
男「それにしても付き合わせてスマンな」
友「気にすんな。俺はその美人さんとやらに会いたいだけだ。あと、」
男「………」
友「店に立ち寄って買い物までしようとするお前も心配だ」
男「スマン」
友「ところでさ」
男「なんだ?」
友「野菜と果物と魚と肉と茶とパンと天かすで作る料理って何?あとその人コーヒーどうしたの?」
男「コーヒーは途中途中で飲んでた……のかな?で、商店街を抜けた駅前のスーパーで」
友「……今度は何を?」
男「カレールーを買う」
友「あー……」
友「歩き回って疲れたその人はバスに乗った、と」
男「そうだな」
友「どこで降りるんだ?」
男「多分、次なんだと思うけど……」
友「何か自信なさげだな、どうした?」
男「乗った直後は感覚があったんだけど……何か、段々、ぼやけてきて…」
友「ど、どうした?」
男「ああ、そうか……これは……」
友「何だ?」
男「すごく………眠い……」
友「おーい、もうバス停に着くぞー」
友「起きたか?」
男「ああ、バス降りたら目が覚めた。なんかすごい慌ててた」
友「そりゃあな」
男「よし、行くぞ」
友「ああ。いやーしかし今日は疲れたな」
男「結構歩き回ったからな。時には無駄にuターンしたりもしたしな」
友「それに加えてこっちは転びかけぶつかりかけ時に信号を間違えかけるお前を止めたりもしたんだぞ」
男「ま、まあそれももうそろそろでゴールだよ」
友「そうだな、ついに美人さんの家に…………ん?あっ」
男「おっ、目的地に近づいたことでついにお前も何かこう……感じ取れるようになったか!」
友「お前、何でちょっと嬉しそうなんだよ」
友「そうじゃないんだ」
男「じゃあどうしたんだ?」
友「これってさ、ストーカーじゃないのか?」
男「……え?」
友「だってよく考えてみろよ。俺たち、美人さんが通ったルートをなぞって家まで来てるけど」
男「おう」
友「その人との面識は全くない。それで家まで行ってどうする。ナンパでもするか?インターホン押して?」
男「おいおい、そんな訳ないだろ。何を言ってるんだよ」
友「はは、そうだよな、ワリィ」
男「俺はただ、帰路に着いてるだけだぞ?」
友「お前が何言ってんだよ!違うから!お前の家じゃないから!!」
男「おい、お前大丈夫か?ここが俺の家だぞ?分からないのか?」
友「ってもう目の前かよ!分かるか!」
男「疲れてるんならちょっと寄って休んでいくか?」
友「入ろうとすんな!落ち着けぇぇぇ!!」
男「げふっ!」
友「はぁ…はぁ……どうだ、俺の渾身の右ストレートは……」
男「痛ったー…………。でも落ち着いたよ。スマン」
友「そうか。それじゃあ、帰るとするか」
男「ああ、そうしよう……。―――ま、待て!今すぐ隠れろ!」
友「えっ、何だ何だ!」
男「彼女、油切らしてることに気づいてまた買いに出たんだ!」
友「えっ?それってつまり……」
女「あれ?ここ、私の家……だよね?」
男・友「あっ」
おわる。
誰かがどんな解釈かで書く「残(留思)念な美人」が読めることを願う
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