杏「で、チョビ子もこの大学なんだ」
アンチョビ「それは私のセリフだ!……お前なら、もう少し頭のいい所に行ける……と言うか、戦車道推薦取らなかったのか?」
杏「まあね。チョビ子と同じとこ行きたかったし、推薦は蹴った」
アンチョビ「……下手な嘘だな」
杏「あっりー、ばれちった」
アンチョビ「冒頭の台詞を思い出せよ。明らかに私がここの学校だってわからない台詞じゃないか」
杏「あー、言われてみればそだね」
アンチョビ「…………」
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杏「でさ、チョビ子こそ戦車道推薦は取らなかったの?私なんかよりそっちの方が引く手あまただと思うんだけどさ」
アンチョビ「私も蹴ったよ。結局、アンツィオはベスト4すら達成できなかったしさ。ろくに結果も残してないのに推薦される資格はない!ってね」
杏「律儀だねぇ」
アンチョビ「ま、そんな落ちこぼれな統帥に推薦の話を持ちかけてくれた人達に申し訳なさもあるけどさ」
杏「あ、そうだ」
杏「その『アンチョビ』って呼び名、いつまで続けるの?」
アンチョビ「いつまでって何だよ」
杏「いやさ、アンツィオから出たら普通に安斎~とか」
アンチョビ「その名前で呼ぶな!」
杏「チョビ子とどっちがやだ?」
アンチョビ「……ギリギリチョビ子の方がマシだ」
杏「じゃーチョビ子で……でなんだっけ、そうそうアンツィオから出たら脱ソウルネームかと思ったんだけど、まだその名前で通してるんだね」
アンチョビ「おいおい、なんてったって魂の名前だぞ?名乗り続けるに決まっているだろう!」
杏「一生?」
アンチョビ「一生!」
杏「……将来が楽しみだ」
アンチョビ「?将来?」
杏「黒歴史になったら言ってね~」
アンチョビ「む、どういう事だー!」
杏「そういやさ、他のアンツィオ生はこの大学来てないの?」
アンチョビ「そうだな、ここにいるのは私一人だ」
アンチョビ「そもそもアンツィオは大学進学率はあまり高くないからな」
杏「あぁ勉強より飯って?」
アンチョビ「そういう事だ。ま、あの子達らしいだろ?」
杏「なんだ~残念。アンツィオのご飯美味しかったしまた食べたかったんだけどな~」
アンチョビ「私が作ったのでいいなら食わせてやるよ……今度」
杏「え!?嘘!マジ!?」
アンチョビ「……なんだその食いつきよう」
杏「いや、チョビ子がデレるなんて予想もしてなかったから、つい……」
アンチョビ「チョビ子呼ぶな……まぁ、ここでの知り合いらしい知り合いはお前くらいだし、そのくらいはね」
杏「……お前って何さー」
アンチョビ「お前はお前だよ」
杏「なんか余所余所しくない?」
アンチョビ「文句あるか」
杏「無いけどさー……私もここでの知り合い、チョビ子くらいしかいないしさー」
杏「そうだ、私のことはアン子って呼んでくれていいよー」
アンチョビ「なんだそりゃ」
杏「いいじゃん、アン子とチョビ子でアンチョビコンビ!私要素全くないけど」
アンチョビ「いや、そもそも私はその呼び方を許した覚えは──────」
杏「安斎」
アンチョビ「ずるいぞ!」
杏「基準がようわからんなー」
杏「じゃ、そんなわけで、宜しくねー」タタタ
アンチョビ「どういうわけだよ……それに宜しくって?」
杏「え、だってご飯食べさせてくれるんでしょ?」
アンチョビ「今日なのかよ!!」
アンチョビ「しかし、やっぱり気になる」
杏「何が」
アンチョビ「お前がこの大学に来た理由だよ。そこまで頭が良いわけでも戦車道が強いわけでもない。どこだっていいなら学園艦の大学に行けばいいだけの話だろうに」
杏「チョビ子だって、アンツィオの学園艦の大学はどうしたのさ」
アンチョビ「お母さん……じゃなくて、マードレが倒れてさ。幸い生命に関わるようなことじゃないっぽいけど、流石に看護が必要っぽくてね、実家に近いここにしたんだ」
アンチョビ「ペパロニやアンツィオのみんなが恋しい時もあるけど、奴ら毎日のように手紙やら電話やら寄越してくるから、むしろうんざりって感じだな」ハハハ
杏「んー、そっか」
アンチョビ「って、私の話はどうだっていいんだよ!私はお前に質問してたんだぞ!」
杏「いやー、実は私も実家が愛知にあってねー」
アンチョビ「……どうしても教えたくないってか」
杏「やー、だからチョビ子を追っかけてきたって言ってんじゃん」
アンチョビ「はいはい、そういうことにしといてやる」
アンチョビ「それで?今日も家に来るのか?」
杏「あ、うん。今日のご飯なに?」
アンチョビ「……勘違いするなよ、お前を家に連れてくるとマードレが喜ぶから呼んでるだけだからな!」
杏「わーかってるってー!で、今日のご飯は?」
アンチョビ「……サラダにボルシチ」
杏「ロシアかよ!!」
アンチョビ「こないだノンナさんから作り方教わったんだよ!」
杏「なんだその交友関係!?」
アンチョビ「あ、ボルシチに干し芋はいれるなよ、絶対だぞ!」
杏「しないってしないって」
アンチョビ「お前そう言ってこないだミネストローネに干し芋入れたじゃないか!あの時はどうなることかと」
杏「まあまあ、結局美味しかったからいいじゃん」
アンチョビ「そういう問題じゃないんだぞー!!」
杏「なあ、チョビ子」
アンチョビ「何だよ」
杏「今度一緒に大洗行かない」
アンチョビ「どうした急に」
杏「いや、別に。そろそろ旧友の顔が見たいかなーって思って」
アンチョビ「なんでそれに私を付き合わせるんだよ」
杏「ま、いいからいいから」
アンチョビ「……ま、お前がいないと暇潰しも出来ないからいいけどさ」
杏「素直に寂しいって言いなよ」
アンチョビ「だ……誰が!!」
杏「ふ~、久々の大洗!空気が美味しい!」
アンチョビ「何!?アンツィオの方がもっと空気が美味しいぞ!!」
杏「そんなことないね!大洗の空気にはほんのりサツマイモの香りが……」
アンチョビ「ならアンツィオにはトマトとチーズとバジルの香りだ!」
杏「…………」
アンチョビ「…………」
杏「我ながらアホらしいね」
アンチョビ「いきなり素に帰るなよ……」
杏「お、大洗に帰省したから巣に帰る、素に帰る!?座布団1枚!」
アンチョビ「ひとりで何やってるんだ……」
アンチョビ「それで?まずは学校に行くのか?それともご飯か!?」
杏「んー、ご飯にしよっか」
アンチョビ「そうこなくっちゃ!!」
杏「飯のことになると途端にテンション上がるねー」
アンチョビ「当然だ!なんてったって人生で一番幸せと感じる時は美味しいご飯を食べる時だからな─────」
杏「はいこれ」
アンチョビ「……何だこれ」
杏「お昼ご飯」
アンチョビ「……この干し芋がか?」
杏「うん。美味しいよ。食べながらいろいろ歩こう」
アンチョビ「…………」
アンチョビ「うう……こんなご飯は初めてだ……」トボトボ
杏「そう言うなってー。干し芋美味しいでしょ?」
アンチョビ「確かに美味いけど……歩き食いなんて、はしたない……」
杏「飲めや騒げは良くて歩き食いはダメなのか」
アンチョビ「宴会は出された食事に感謝しての祭り事だが、歩き食いなんて何かの『ついで』で食べるなんて─────」
杏「あーうっさ、飯のことになると本当に容赦ないねーチョビ子は」
アンチョビ「チョビ子じゃない……」
杏「あちゃ、ほんとにへなへなになってら」
杏「……今度その干し芋でまたパスタ作ったげるから許してよ」
アンチョビ「…………」
アンチョビ「……絶対だぞ」
杏「……こうチョロいと逆に心配になってくるよ」
アンチョビ「なんか言ったかー!」
杏「うっわ、いきなり復活しやがった」
アンチョビ「……おい」
杏「あー?」
アンチョビ「そろそろ夕方だが、学校はいいのか?」
杏「あー、ほんとだね。行かないと」
アンチョビ「……足はそう言ってないみたいだが」
杏「…………」
アンチョビ「本当は、違う目的でもあったりしたのか?」
杏「…………」
杏「かーっ、鋭いね」
アンチョビ「……適当に言っただけなんだが」
アンチョビ「なんだ、他に目的とやらがあるならさっさと終わらせてくれ」
アンチョビ「私はそろそろお腹が減った、夕飯の店は私に選ばせてくれよ、私の眼なら美味い店をズバッと当ててみせ─────」
杏「なあ、チョビ子」
アンチョビ「……なんだ」
杏「ちょっとばかし質問に答えて欲しいんだけどさ」
アンチョビ「……いいけど」
杏「まずねー……私と一緒にここに来てよかった?」
アンチョビ「?ああ……良かったよ、楽しかった。色々な店見て回ったり、ゲームしたりとか。お前とやるのは新鮮だったからな」
杏「……そっか、じゃ、次ね」
杏「私とご飯、どっちが好き?」
アンチョビ「……なんだその質問」
杏「心理テストみたいなものって捉えてもらっていいからさ、あまり考えずに言ってみな」
アンチョビ「……そうだな」
アンチョビ「甲乙付け難いが……ま、お前の方かな」
杏「……!」
アンチョビ「確かにご飯も好きだが、だからって親友を蔑ろにしちゃいけないだろう」
アンチョビ「飯が食えない悲しみより、親友と会えない悲しみの方がずっと深い、だろ?」
杏「……やっぱりアンツィオの皆と会えなくて悲しいんじゃないのか?」
アンチョビ「……ま、手紙や電話があっても、直で会いたいって言うのはあるさ。だけど……」
アンチョビ「私はみんなの前では統帥なんだ。統帥がみんなに会いたいーなんて言えるか?」
杏「……私の前では言えるんだ?」
アンチョビ「ふん……まぁ、お前の前では」
アンチョビ「私は統帥じゃなくて、親友のアンチョビだからさ」
杏「……いつからだっけ、私のこと親友って言うようになったの」
アンチョビ「今だよ。日常わざわざ口にするような事でもないだろ」
杏「……そっか」
杏「……へへ、そっか」
杏「じゃーこれで最後の質問ね」
杏「私がチョビ子のこと好き、って言ったら、どうする?」
アンチョビ「……その好き、というのは」
杏「うん、たぶんチョビ子が思ってるとおりであってると思うよ」
アンチョビ「……わからなかった……いつからだ?」
杏「ひとめぼれー」
アンチョビ「嘘だろ……!?」
杏「嘘じゃないよ。私も生徒会長とはいえ、人の上に立つ身だったからわかるのさ」
杏「チョビ子は優しいし、面倒見がいいし、信頼できるし、一緒にいて安心できる」
杏「アンツィオ校のみんなを見て、私羨ましかったんだよねー」
杏「私はああいう風にはなれないなあって」
アンチョビ「……私は別に」
杏「や、そういう意味では初めは嫉妬だったのかもね。あれだけみんなから慕われてずるいなーって」
杏「でも、戦車道の試合を通じてわかった。あれだけ仲間思いなんだから、慕われるのは当然だって」
アンチョビ「……お前だって慕われてただろ、プラウダの試合や黒森峰の時だって」
杏「違う、違うんだよ。私とチョビ子ではさ、決定的に」
杏「廃校を回避しようとしたあの時だって、不器用にしか立ち回れなかったし……たぶん私がチョビ子だったら、もっと器用に物事を進めてたかなって」
杏「ま、ひとことで纏めるなら」
杏「チョビ子のカリスマに当てられた、ってところかな」
アンチョビ「…………」
杏「チョビ子に取っては私は親友かも知れないけどね」
杏「私にとっては、大学を一緒のにするくらい後を追いすがりたい存在だったんだよ」
アンチョビ「……本当に私がいたからって理由だったのか」
杏「うん。そう言ってたでしょ」
杏「……だ、だからさ」
アンチョビ「……はー」ポリポリ
アンチョビ「そういやアンツィオ時代にも何度かあったなー、そういう告白」
アンチョビ「『統帥!付き合ってください!』とかさ」
アンチョビ「ま、上司部下に恋愛はご法度だからさ。『お前は統帥って名前に当てられてるだけだ、目を覚ませ、私が統帥じゃなくなったら私のことなんてどうでも良くなるぞ』って言ってあしらってたんだ」
アンチョビ「私にとってはお前は親友の角谷杏……アン子だと思ってたけど」
アンチョビ「お前にとって私は結局統帥・アンチョビだったみたいだな」
アンチョビ「統帥の私を見て惚れたんなら、悪いことは言わない、やめた方がいい」
杏「……うん、そうだね」
杏「今までは私もそう思ってたよ」
杏「だから、大学で会ってから、今までずっと溜めてきた」
杏「私はアンツィオ高校の統帥アンチョビじゃなくて、同じ大学の友人のチョビ子に告白してたんだけどな」
杏「そりゃ確かに出会いはそうだけど、友人としてずっと付き合ってたんだよ?チョビ子の好きなところなんて」
杏「惚れたところなんて、無限にあるに決まってんじゃん」
アンチョビ「……例えば」
杏「なんだかんだ言って私の言うこと聞いてくれることー」
アンチョビ「……やれやれ」
アンチョビ「こんなわがままなチビ、人様に迷惑かけさせられないなー」
杏「ちょ、なんだよそれ、チョビ子もチビじゃん」
アンチョビ「いいよ、付き合おう」
杏「……え?マジ?」
アンチョビ「マジだよ。別に私もお前のこと嫌いじゃないしさ。ただしアンツィオ生には内緒だぞ?何を言われるか」
杏「わーってるよ、むしろ私がアンツィオ生にどうやってコンタクト取れるかっての」
アンチョビ「お前ならやりかねん」
杏「……へへっ」
杏「良かったー、途中ひやひやしたよ。振られたらどうしようかって」
アンチョビ「どうするつもりだったんだ?」
杏「刺してたかも」
アンチョビ「怖い事言うな!?」
杏「じょーだんじょーだん、考えてもなかった」
アンチョビ「……さぞ自信があったんだろうな?」
杏「……んー、微妙。どっちかっつったら部の悪い賭けだったかな」
杏「ただま、そういうの、私何度もやってるから」
アンチョビ「……そっか」
アンチョビ「その、何だ……私はこういう、女の子同士の付き合いとかよくわからんから、アン子宜しく────」
杏「んなの私もわかるわけないっしょー初めてなんだから。ま、どうにかなるっしょ」
アンチョビ「……あ」
アンチョビ「まさか、この流れで大洗の奴らに私を紹介するために私を大洗まで……!?」
杏「ん、ああ、そうだね、当初はそうだった」
杏「けど」
アンチョビ「けど?」
杏「いや、二人の時間を邪魔されたくないから、明日にでもするよ」
アンチョビ「……やれやれ」
アンチョビ「二人の時間ならこれからいくらでもあるだろうに……」
おわり
おまけ
アンチョビ「おいアン子!手紙でアンツィオの奴らから冷やかしとかストーカーまがいの怖い文章とか来てるぞ!!チクっただろ!?」
杏「えー私じゃないよー」
アンチョビ「じゃあ誰がやったって言うんだ!!」
杏「大洗の子たちじゃない?確かカバさんチームにアンツィオに幼なじみがいるって奴が」
アンチョビ「それを先に言えよー!!」
カエサル「いやあ、生徒会長とそっちの隊長が付き合うことになるとは、面白いこともあるね」
カルパッチョ「そうだねたかちゃん、でも私達のラブラブ度には遠く及ばないよね?」
カエサル「当然だろう!ひなちゃん!」
どうせならツインテールの日にやりたかった
というかもう少しイチャラブとかさせたかったけれど限界だった
杏チョビは語呂もいい素敵なカップリングなのでもっと増えたらいいなと思います
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