あかね「姉として」あかり「妹として」 (31)



いらっしゃい、待ってたわ。


そこに座って。


...来てくれてありがとう、ともこ。


ごめんなさい。


...そうなの?


なら少し安心ね。


まだ少しだけ時間があるの、少しお話を聞いてくれるかしら?


あかりと私の昔話よ。



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ともこ、見えるかしら?


私のお団子は今いくつ?


そう、ひとつよね。


あかりのお団子の数は?


そうね、ふたつ。


急にどうしたのって顔してるわね。


あかりのお団子はね。


昔、私があげたのよ。


あれはあかりが小学生になる前だったわね。



『ひっく...お姉ちゃん...』


『あかりどうしたの?』


『あ、あのね...お姉ちゃんが結んでくれたお団子解けちゃった...ぐすっ』


『あらあら、じゃあまた結んであげるから泣かないで?』


『うん...ごめんなさい...』



『どうして謝るの?』


『だって...解けちゃったから...』


『あかりは悪くないんでしょう?』


『でも...』


『...じゃあこうしましょう、あかり』


『お姉ちゃんにはごめんなさいって言う前にありがとうって言って?』


『ありがとう...?』



『ええ、お団子解けちゃってごめんなさい...よりも』


『また結んでくれてありがとうって、ね?』


『...うん』


『お姉ちゃん』


『なぁに、あかり?』


『お団子結んでくれてありがとう!』


『どういたしまして、うふふ』



『...そうだあかり』


『なに?』


『お姉ちゃんのお団子の中にはね、嬉しい事や楽しい事がいっぱい入ってるの』


『へぇ、お姉ちゃんのお団子は魔法のお団子なんだね!』


『そうよ、とっても素敵な魔法のお団子なの』


『この魔法のお団子をあかりにひとつあげるわ』


『ええ!?』


『お姉ちゃんのお団子が減っちゃうよ...?』


『お姉ちゃんは嬉しい事も楽しい事もたくさん知ってるから、このお団子がひとつでも大丈夫なのよ』


『だからお姉ちゃんは、あかりに付けてもらいたいな』



『...わかった!あかりがつける!』


『ありがとうお姉ちゃん!』


『うふふ、どういたしまして』


しゅる...


きゅっ


『出来たわよ、あかり』


『わあ、あかりのお団子がふたつになったよぉ!』


『うふふ、よかったわね』


『ありがとうお姉ちゃん、あかり今とっても嬉しいよ!』


『きっと、お団子のおかげね』



だからね、このお団子はあかりにとってすごく大切なものなんだよぉ


あかりはこのお団子から嬉しい事や楽しい事よりも


もっと大切な...優しさをもらったんだよぉ。


あの時思ったんだ、お姉ちゃんみたいな人になろうって。


お姉ちゃんみたいに優しくて、心が綺麗な人になろうって。



それからお姉ちゃんの真似をしてきたんだぁ。


困ってる人を見つけたらお姉ちゃんみたいに助けて。


怪我してる人がいてもいいように救急箱ももって。


...少しはお姉ちゃんに近づけてるかな?


...そっか。


ありがとう、ちなつちゃん...。



ごめんね、ちなつちゃんを選んじゃって...。


あの時お断りしちゃったのに...。


でも、どうしてもちなつちゃんに来てもらいたかったの。


...そうだね、ごめんなさいより


ありがとうだよね、ちなつちゃん。



ともこ、私がいつも笑っている理由を話した事はあったかしら?


...そう、ないのね。


うふふ、じゃあ話そうかしら。


自分で言うのもなんだけど、私は友人が多いでしょ?


ともこもよく言ってたわね、私の周りには人が集まるって。


...ねえともこ、笑顔って不思議よね。



『えへへ、お姉ちゃんっ』


『なぁに、あかり?』


『なんでもないよっ』


『うふふ、可愛いわね』


『あ、笑ってくれた!』


『え?』


『あかりね、お姉ちゃんの笑った顔がだぁいすき!』


『本当?』


『うんっ』



それが初めての大好きだったかな?


それからお姉ちゃんはずっと笑顔でいるようになったんだよぉ。


あかりはお姉ちゃんの笑顔が大好きって言ったからずっと笑ってるのかなって思ってたんだけどね


昨日の夜、ちゃんと教えてくれたんだぁ。



...お姉ちゃんが笑顔でいれば


お姉ちゃんの近くにいるあかりも自然に笑顔になって


お姉ちゃんのお友達も笑顔になって


あかりのお友達も笑顔になって


あかりが笑顔に包まれるから。


そう言ってくれたんだよ。


辛い事もあったのに、悲しい事もあったのに。


ずっとあかりのために笑ってくれてたんだね。


えへへ...本当に自慢のお姉ちゃんだよぉ。



ともこから聞きたい事はない?


...いつから、ね。


もちろんあかりが産まれてきた時からよ。


姉としては、ね。


あかりを愛し始めたのは...あの時からかしら。


きっとあかりは覚えてないけど。


笑わないでよ?



『お姉ちゃん、誕生日プレゼントだよ!』


『あらあかり...ありがとう、お姉ちゃんとっても嬉しいわ』


『開けてみて!』


『ここで?』


『うん!』



『私の部屋だから構わないけれど...じゃあ開けるわよ』


しゅる...


かたっ


『こ、これは...パンツ?』


『うん!あかりのパンツだよぉ!』


『えっと...どういう事かしら...』


『あのね、お姉ちゃん』


『どうしたのあかり...正座しちゃって...』


『真剣なの!』



『プレゼントにパンツを送る意味って知ってる?』


『聞いたことないわね...』


『ずっと傍にいたいとか大切なあなたを守るって意味なんだって!』


『そんな意味があったのね...深いわねパンツ...』


『それでね』


『あかり、ずっとお姉ちゃんの傍にいたいなって思ってるの』


『...だからあかり、お姉ちゃんのお嫁さんになる!』



自分の事ながらどうかしてるわよね


妹に...それも自分よりふたまわりも離れた妹に


プロポーズされて心が動いちゃったなんて。


でもね、今思うと


あかりのあの目を信じてよかったって思うわ。



あかりはそのプレゼントをした時からお姉ちゃんの事が好きだったと思うよぉ。


曖昧?


えへへ...だってお姉ちゃんを好きになった事なんていっぱいあり過ぎてどれが最初か思い出せないんだもん。


でもね、この気持ちを信じてよかったって思ってるよ。


最初はいけない事だって


忘れなきゃって


ずっと悩んでたんだぁ。



でもよかった。


お姉ちゃんを


あかねさんを信じて。


でもまだたまにパンツが無くなるんだよね...。



そう言えば、あの部屋はともことあかりにしか見せてないわね。


そう、私の部屋よ。


...少し、話させて。


ありがとうともこ。


私はさっきも言ったけど友人は多かったわ。


でもね、告白なんてされたこと無かったのよ。



意外そうな顔してるわね、ふふっ。


でも本当よ。


私の愛し方が異常だって事には気付いていたわ。


あかりの純粋な気持ちにどう返せばいいか分からなかったの。


私なりの愛情表現だったの。


...それしか知らなかっただけなんだけどね。



お姉ちゃんの愛?


重いなんて感じた事ないよぉ。


とってもまっすぐで


一生懸命で


精一杯


あかりの事を想ってくれてるんだなぁって。


だから怖いとか思った事はないかなぁ。


初めてありのままのお部屋を見た時もそうだったよ。


...でも


あかりが作ったおやつをゆっくり食べすぎるのは、ちょっと...


お姉ちゃんのお腹が心配になるかな...あはは。



さて、そろそろ披露宴の時間かしら。


ありがとう、ともこ。


あなたがいてくれたからここまで来れたの。


だから泣かないで。


大好きよ、ともこ。



そろそろ披露宴の時間だね...。


ちなつちゃん、あかりのわがまま聞いてくれてありがとう。


中学からずっとお友達で...仲良くしてくれて、ありがとう。


泣かないでちなつちゃん、あかりも泣きそうになっちゃうよぉ。


大好きだよ、ちなつちゃん。



「行ってらっしゃい、あかねちゃん」


「ええ、行ってくるわ...ともこ」



「行ってらっしゃい、あかりちゃん」


「うん、行ってきます...ちなつちゃん」


おわり。

くだらない

おつ

乙乙

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