佳奈多「初めての悪行」 (39)

佳奈多(今思えば最初から直枝のように告白しておけばよかったと思う。でも、それは後の祭り。私は私の心の弱さが祟り、最悪の結末を辿った)








カチャカチャ

葉留佳「もぐもぐ」

佳奈多(今日も静かな朝だった。昨日は私も直枝も遅くまで寝ていなかったけど、当の2人が出会うと眠気はどこかへ飛んでしまった)

佳奈多「…………」

佳奈多(直枝をジッと見てみる)

理樹「………っ」

佳奈多(目を逸らされた。それにしてもびっくりした。今まではなんとなく彼のことを変態のイメージで観ていたけどまさかこんなウブだったとは)

佳奈多(…………人のことは言えないけど)

葉留佳「おやおや?どしたのかなたん」

佳奈多「えっ!な、なに?」

葉留佳「イヤーさっきから理樹くんのことずっと見てたからさぁ」

佳奈多「……………………見てないわ」

葉留佳「ねえ知ってる理樹くん?」

理樹「?」

葉留佳「お姉ちゃんって、とっさに嘘つくときちょっと間があるんだよ」

佳奈多「なっ!!」

理樹「そ、そうなんだ…へぇ」

佳奈多「ごちそうさまでした!」

ガタンッ

佳奈多(居心地が悪くなったので自分の部屋に避難することにした)

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佳奈多部屋

佳奈多「うう……」

佳奈多(なんという失態。……いいえ、違う。違うわよ。あれは失態なんかじゃない。だって私が悪い訳じゃないもの。そもそもの発端は直枝が昨日の夜に笑っちゃうような告白をしてきたからであって私はそれがあったから今日の直枝の反応を伺おうとしたんだから。というかそう考えたらそもそも嘘をついた訳じゃないし。チラッと見ようとしただけで別に直枝のことをじーっと見ようとしたんじゃない。例えるならポストの中に手紙が入っているかどうか確認したと同じくらいのさり気なさだったもの。そうよ嘘をついているのは凝視しているなんて事実を曲げた葉留佳だわ。まるで映画の謳い文句ね。大袈裟に言えば注目してもらえるとでも思ってるんだわ。あの中には直枝しかいなかったけど。………なんか直枝のことばかり言ってるような気がしてこなくもないわ………いいえ3人で暮らしている以上直枝のことを考えてしまうのはごく自然なことよ。というか自然と直枝のことを考えていること自体に何か抵抗があるって思ってしまっているかもしれない。そんなことはないわよね。だって直枝はなんだかんだ言って私達を救ってくれた恩人なんだから考えてむしろ当然よ。別にそういう意味で意識してるとかそういう訳じゃないわ。ええそうよ)

コンコンッ

理樹「二木さーん」

佳奈多「どひゃあっ」

理樹「えっ?」

佳奈多「ゴホン……いえ、何でもないわ」

佳奈多(驚いた。心臓に悪いわ…人は不意に話しかけられることに慣れていないというのは分かっているでしょうに。ノックくらいしなさいよまったく)

佳奈多「なにかしら?」

理樹「そろそろ時間かなって。葉留佳さんが二木さんを呼んでって言ったから」

佳奈多「えっ」

理樹「?」

佳奈多(時計を確認する。12時だった。まさか考えているだけで4時間も過ごしたというの!?)

佳奈多「わ、分かったわ。20分ちょうだい」

理樹「長っ!?」

佳奈多「うるさいわね…これでも女なのよ?色々準備があるの」

理樹「ごっ、ごめんなさい!」

佳奈多(今の文句は自分で言ってて道理が合わないなと思った。でも直枝だから気にする必要はなかった)




佳奈多(準備が出来て部屋を出ると葉留佳と理樹が両手の指を順番にタッチしていって先にどちらの手も5本になってしまったらアウトになるあのゲームをやっていた)

佳奈多「ごめんなさい。待たせちゃったわ」

葉留佳「もー!まあ寛大なはるちんは許してやらんこともない」

佳奈多(イラっ)

理樹「まあ時間には充分間に合うし大丈夫だよっ」

葉留佳「そんじゃまー行きますか」

佳奈多「ええ」







ショッピングモール

シネマホール

佳奈多(ここへは昨日も行った。でも目的が違う。一度目は買い出しで、二度目はこうして3人全員で映画を見に行くためだ)

葉留佳「ううーんキャラメルポップコーンのいい匂い…」

理樹「せっかくだから買っていく?」

葉留佳「いいの!?」

佳奈多「ダメよ。最近無駄使いばかりなんだから少しは抑えなさい」

理樹「今日くらいはいいんじゃないかな。せっかく楽しむんだからこういう時はパーっといかないと」

佳奈多「あなたがそこまで言うなら……」

葉留佳「いやっほーぅ!!」

理樹「あはは…葉留佳さんは何食べたい?」

葉留佳「えっとですネ…これとーあれとー…」

佳奈多(なんだか葉留佳の精神的幼さも相まってまるで夫婦と子の会話のようになってしまった。…いや、別に直枝が夫とかそういうアレではないけど………誰に言い訳をしているのかしら私は…)

劇場内

スクリーン『~~~~………』

佳奈多(席は右から直枝、私、葉留佳の順だった。割とビックタイトルな映画なのに他の客はあまりいなかった)

理樹「なんだかこういうCMが終わって本編に入る前の妙な静けさ結構好きだな僕」

佳奈多「妙なフェチを持ってるわね」

理樹「こ、これフェチって言うの?」

佳奈多「シッ。始まるわ」

佳奈多(スクリーンに字幕が映った。やはり洋画は字幕の方が雰囲気が出るわ)

スクリーン『遠い昔、遥か銀河の彼方で・・・』

葉留佳「遠い昔、葉留佳銀河の佳奈多で…」

佳奈多(葉留佳が隣で小さくボソッと呟いた。何を言いたいのかはなんとなく分かったけど口出しする気にもならなかった)


…………………………………………


……………………





電車

佳奈多「……………」

理樹「そんなぐったりしてどうしたの二木さん」

佳奈多「大音量であんな長時間いたらこうなるわよ…あなたたちはよく平気でいられるわね…」

葉留佳「くすぐったら元気になるかも」

佳奈多「やめて」

佳奈多(例えそうでなくとも途中で2人のゲームセンターにも寄っているんだから疲れるに決まっている。今日は帰って晩御飯を食べたらすぐに寝よう)

深夜

佳奈多部屋

佳奈多「…………………」

佳奈多(眠れない。あんなに早く寝てしまったせいか妙な時間に起きてしまった。幸い学校はないけどこれじゃあ戻った時に生活バランスが崩れてしまう)

佳奈多「……ココアでも…」






佳奈多(部屋を出てリビングへ向かおうとした時だった)

佳奈多「直枝の部屋……開いてる…」

佳奈多(閉め忘れたのかもしれない。とりあえずそのままにしておくのはなんだか気持ち悪いので閉めに行くことにする)




理樹「………………」

佳奈多(当たり前だけど中では直枝が寝ていた)

佳奈多「………………そういえば直枝の寝ているのところなんて見たことがなかったわね」

佳奈多(なんとなくその顔を見にいった。誰でも初めて見るものにはそれなりの好奇心が湧くはずだ)

理樹「んぁ…………」

佳奈多(直枝の横に立った。口をポカンと開けてアホっぽい顔を晒している。見事にヨダレまで垂れていた)

佳奈多「………………」

佳奈多(直枝は私を寝ている間に勝手に触った。ならば私も少しくらいイタズラをするのは構わないはずだ)

佳奈多「……………」

理樹「………………」

佳奈多「…えいっ」

佳奈多(頬を指で突いた)

理樹「ん……ふふ」

佳奈多「!」

佳奈多(直枝が笑った)

佳奈多「馬鹿じゃないの…………」

佳奈多(どんな夢を見ているんだろうか。でも、少なくとも突かれて喜ぶなんてとんだMだわ。最低ね)

佳奈多「……最低」

理樹「二木さん…」

佳奈多「!!」






佳奈多部屋

佳奈多(なんで、いけないわ。なんで……なんでいきなり私の名前を呼んだの?)

佳奈多(えへへと笑いながら私の名前を………)

佳奈多「……………………」

佳奈多(これ以上考えるのはやめることにしよう。なんだかおかしくなってしまう気がする。本能がそう言った)

佳奈多「もう……寝よう…」

続く(∵)


前スレ↓

理樹「初めての悪行」
理樹「初めての悪行」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453131020/)

次の日



佳奈多「……………………」

佳奈多(また直枝の部屋が開いていた。この男は他人の部屋にはちょっかいをかける癖に自分の部屋に関しては無頓着らしい)

佳奈多「ふん…」

佳奈多(ドアを閉め…)

理樹「スゥ……」

佳奈多(閉め………)

理樹「ムニャムニャ」


理樹『二木さん…』


佳奈多(………………)

理樹部屋

佳奈多「直枝の髪って女の子みたいにサラサラしてるわね…」

理樹「ううーん………」

佳奈多(これは直枝がドアを閉めていないのが悪い。こんな顔してぐーすか寝るなんて悪戯してくださいって言ってるようなものなんだから。………あらいけない、今のはなんだか葉留佳が言いそうなことだわ)

佳奈多(とにかく今はサラサラを楽しもう)

理樹「んぁ……なにするのさ恭介……」

佳奈多「…………は?」

佳奈多(なんでそこで棗先輩の夢を見るの?いったい同じ家に住んでいるのは誰かしら?直枝の癖に生意気ね。……生意気だわ)

佳奈多「佳奈多……佳奈多……佳奈多……」

佳奈多(耳元で囁いた)

理樹「うっ………か…佳奈…多?」

佳奈多「!!」

バチンッ!

理樹「いたぁっ!?」

佳奈多(まずい。条件反射で叩いてしまった)






佳奈多部屋

佳奈多「なんとか直枝が起きる前に帰ってこれたわ…」

佳奈多(いきなり下の名前で呼んできたんだから当然の措置である。今日のところはもう寝てしまおう)

次の次の日

佳奈多「……………………」

佳奈多(またまた直枝の部屋が開いていた。……開いていたというか隙間が出来ているという程だったけれど『注意』をするには事足りる理由だった)



理樹部屋

佳奈多「直枝のまつ毛って下手すると葉留佳よりあるんじゃないかしら…女装とかされちょうと気付かないかもしれないわね」

佳奈多(少し勇気を出して直枝のまぶたを開けてみた)

理樹「う…ん………」

佳奈多「クスクス…」

佳奈多(直枝はまるで起きなかった。それどころか夢でうなされているらしい)

佳奈多「スン……」

佳奈多(今度は匂いを嗅いでみた。……特に何も匂わない。期待外れだ)

佳奈多「……………お休みなさい」

理樹「……おや…すみ……」

佳奈多「!」

佳奈多「………うふふっ…」

次の次の次の日



廊下

佳奈多(今日は遠目に見て直枝の部屋は開いていなかった。でも、もしかしたらそれは私の勘違いかもしれない。夜だから目が寝ぼけているだけで近づくと扉は開いてるかも)



理樹部屋前

佳奈多「……………」

佳奈多(近づいても直枝の部屋の扉は消えていることはなかった。しかしまだまだ寝ぼけているだけでもしかしたら開いているかもしれない)

佳奈多(試しにドアノブを回してみた)

ギィ……

佳奈多「ふん…やっぱり開いてるじゃない直枝の奴……」

佳奈多(直枝の部屋に入ると直枝はまたまたぐーすか寝ていた。隙しかない)

理樹「すぅ……」

佳奈多「……………………」

佳奈多(次は何をしてやろうかしら……もう悪戯という悪戯はやり尽くしたしそろそろ直枝が本気で嫌がるようなことをしよう)

佳奈多「直枝が嫌がること……暴言も暴挙も大した効き目は無いし……」

理樹「んん……………」

佳奈多(そうだ。キスをしよう)

佳奈多「どん好きでもない奴にそんな事されたら直枝も………」

理樹「……………………」

佳奈多「……………………」

理樹「……………………」

佳奈多「………………ほ、頬なら…ノーカンだから…」

佳奈多(直枝の顔に近づく)

佳奈多「うっ…………」

理樹「…………………」

佳奈多「んっ」














佳奈多(気がつくと私は枕に顔を埋めていた。自分の部屋に戻った記憶が消えていた。ちょっと今日はやり過ぎたかもしれない。寝よう)

次の次の次の次の日



理樹「うーん……」

葉留佳「どうしたの理樹君?」

理樹「いやぁ…なんか昨日おかしな感覚を覚えたんだ」

葉留佳「おかしな感覚?」

理樹「うん…なんか昨日寝てたら近くに人の気配がしたから意識が半覚醒したみたいなんだ」

佳奈多「!」

葉留佳「ほーほーそれで?」

理樹「そしたらいきなり頬が濡れたのかな?水っぽくなってさ…」

佳奈多「!!」

理樹「それでやっとの事で起きたら誰かが出ていった気がするんだ」

葉留佳「な、ナンデストー!?それって泥棒じゃ……」

理樹「うーんどうかなぁ…僕の部屋からは何も盗まれてなかったし、そもそもそれ自体が夢の途中だったって事もあるからね。だから変な感覚だったんだ。あれは本当に夢だったのかなって…」

佳奈多「ば、バカみたい!なにもしない不法侵入者なんている訳ないじゃないっ。さっさとそんなこと忘れなさい!」

理樹「い、いやまあ忘れるけどさ……」



佳奈多(そんな直枝の部屋の扉はまたもや閉まっている…………ように見えた)

佳奈多「…………………」

佳奈多(今回はどうやらドアノブを回しても閉まっているように見えるらしい)

佳奈多「チッ…鍵を掛けたか……」

佳奈多(しかし甘かった。こんな事もあろうかと部屋のマスターキーを事前に用意していたのだった)

佳奈多「……………!」

佳奈多(ガチャリと音を立てて扉が開いた。やはり最初から開いていたらしい。気が乗らないが今日も『注意』しなくてはならないらしい)

佳奈多(直枝の不注意さにはただただため息が尽くばかりである)

佳奈多(まずは葉留佳が起きてきても気付かれないように扉の鍵を閉めた)

佳奈多「……………さて」

理樹「……う……ん……?」

佳奈多「今日はどうすればいいかしら…これ以上レパートリーがないっていうか…」

理樹「…………!?」

佳奈多(そうだ、言葉責めと言うのはどうだろう。今は寝ているから普段言わないような事も言えるかもしれない)

佳奈多「ね、直枝…」

理樹「……………っ!!」

佳奈多「この間、相性が良いかもって言ったわよね?」

佳奈多「あれの意味、教えてあげましょうか?」

理樹「………………ゴクリ」

佳奈多「実はあんなことは本当に言うつもりなかったのよ?でもあんまりにもあなたが変なこと言うからつい……ね」

理樹「…………………」

佳奈多「私は葉留佳を除いて自分と同等だと思った人間はいなかったの。でもあなたは違ったわ」

佳奈多「先に言っておくけど別にナルシストとかじゃないわよ?同じレベルじゃないだけであーちゃん先輩や来ヶ谷さんとか人として同じくらいの年でも私の一歩二歩先をいっている人は勿論いる」

佳奈多「でも同時に今から牢屋に入ることになるであろう大人達のように学校で問題ばかり起こしている問題児より下と確信を持てる人間がいることも分かっているわ」

佳奈多「そんなある意味共感してくれる人がいないままの世界であなたに出会った」

理樹「………………」

佳奈多「そりゃ最初の印象は変人の一言よ。学校で喋ったかどうかすら怪しい男子が自分の手を引っ張るんだから」

佳奈多「でも話していくうちにあなたは私が今まであったどのタイプの人にも当てはまらないってことが分かったの。大抵の人は私達の事情を知って同情したわ。数年すれば頭から消え去るようなその場限りの同情をね」

佳奈多「でも、誰もが奈落でもがく私達に上から声援を送り、満足すると去っていく中であなただけは自分も一緒に奈落の底へ落ちる覚悟で手を差し出したわ」

佳奈多「つまり何が言いたいかっていうと直枝。あなたは救おうだなんて考えずに救ってしまったのよ。あなたは初めて私達と同じ地点で物事を考えてくれた人」

佳奈多「…………ふふっ、馬鹿らしい。なに熱くなってるんだか…」

理樹「………………………」

佳奈多「いいの、忘れて。それじゃお休みなさい……ってもうあなたは寝てるんだったか」

……………………………

………………







葉留佳「ほんじゃ行ってきまーす!」

佳奈多「帰りに牛乳忘れないでね」

佳奈多(葉留佳が出て行って久しぶりに家にこの2人だけとなった。昨日のこともあるしなんだか恥ずかしくて話掛け辛い)

理樹「…………昨日の夜さ、また夢見たんだよ」

佳奈多「そう…」

理樹「その夢の内容は何故か君が感謝してる内容だったんだ」

佳奈多「そ。なら所詮は夢物語ね」

理樹「もう夢のことだから何に感謝していたのかは忘れちゃったんだけどさ、僕はその二木さんの言葉を聴いて一言だけ言いたかったんだ。感謝する必要はないって」

佳奈多(……………)

佳奈多「………馬鹿なこと言ってないでご飯早く食べちゃいなさい」

理樹「うん、分かった」

佳奈多「……それでもありがと」

理樹「えっ?」

佳奈多「なんでもない」

理樹「ええ、教えてよ!なんだか今の言葉凄く聞き逃したらいけないような気がしたんだけど!?」

佳奈多「なんでもないったらないわよ!!」

理樹「ひぇっ…!」




おしまい

おまけ


その日の夜



佳奈多「…………………」

佳奈多(直枝のドアにチェーンがかかっていた)

佳奈多(しかし今日の夕方ホームセンターの袋を持ってきたのは知っていたので私もあらかじめそれを無力化する道具は用意していた)

佳奈多(ドアはガキンと鈍い音を立てた。またもや直枝のドアが空いていてしまった。空いているなら仕方がない)





理樹「………あ…ああぁ…嘘だろ………!」

佳奈多「ん?」

理樹「うっ……」

佳奈多(心なしか直枝の体が震えている気がした。しかもそろそろ肌寒くなってきたというのに汗もかいている)

佳奈多「どうしたのかしら直枝…風邪かしら?」

佳奈多(もしも病気なら大事だ。私はおでことおでこをくっつけた。まだよく分からなかったので頬もスリスリしてみた。どうやら風邪ではないらしい)

理樹「フゥーッ……フゥーッ……!!」

佳奈多(顔を近づけると息が荒いことに気がついた。何か他の病気かもしれない)

佳奈多「とりあえず今日のところはこれまでにしておいてあげるわ。おやすみなさい」

佳奈多(今日はゆっくり眠れた)

次の日の朝

理樹「…………」

葉留佳「あれっ、理樹君どーしたんですカ?箸が震えてますヨ!チョップスティック!」

佳奈多(直枝は歯もガタガタ揺らしていた。本当になにか危ないのかもしれない)

理樹「だだだ大丈夫だよ葉留佳さん!はははー!」

佳奈多「そう…?病院に行って診てもらえば?」

理樹「…………本当にいいよ!」

佳奈多(直枝がしきりにこちらを見ない。いったいなんだというのか)

次の日の夜


佳奈多(直枝のドアはうんともすんとも言わなくなってしまったまま空いている。どうやら後ろから家具を並べて開かな……動かないようにしているようだ)

佳奈多「ふむ……………」





理樹部屋

パリンッ

理樹「えっ!?」

佳奈多「よっと…」

佳奈多(扉がダメなら窓が開いた。ここは二階だけどちょうど木の枝が足場になってくれたので助かった)

理樹「い……いや………」

佳奈多(何ということだろう。今度の直枝は目を開けて狼狽しながら寝て……………えっ?)

佳奈多「……………な…直枝……?」

理樹「……………は、はい!」

佳奈多「もしかして起きてた?」

佳奈多(直枝は答えなかった代わりに無言で小さく頷いた)

佳奈多「い、いつから…?」

理樹「え、えっと……ドアにチェーンかけたあたりから……」

佳奈多「………………………………」

理樹「………………………………」

佳奈多「……………わ、忘れて…」

理樹「ごめん…ちょっと難しい…」




佳奈多(私はこれまでの行為がすべて見られていたことを悟り、それから1週間自分の部屋に引きこもった)

終わり(∵)

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