佳奈多(今更直枝に甘えたいとか言い出せない・・・) (49)




葉留佳・佳奈多部屋

佳奈多「うぅーーっ!」

ポフッ!

葉留佳「うぎゃあっ!なんでいきなり枕投げだしたのお姉ちゃん!?更年期!?」

佳奈多「殴るわよ?・・・そうじゃなくて、ごめんなさい。ちょっと最近ちょっと悩み事があって・・・」

葉留佳「悩み事?家のことでまた何かひと悶着あったの?」

佳奈多「いえ、もう裁判の手続きで私がやれることはないわ」

葉留佳「じゃあ風紀委員のことととか?」

佳奈多「引き継ぎ業務は終わったからそれも大丈夫」

葉留佳「えっ、じゃあなんで悩んでるの?」

佳奈多「まるで私を構成してる物がその二つしかないみたいな言い方やめてくれない?私にだって他に悩むことくらいあるわよ・・・直枝のこととか・・・」

葉留佳「えっ、なになに!?なんて!?全然聞こえなかった!」

佳奈多「ウソ!今絶対ちゃんと聞こえてたでしょう!!」

葉留佳「やはは!まあまあ、冗談は置いておいて聞こうじゃああーりませんかっ」

佳奈多「悪いわね。あんまりこういうのって誰に相談していいか分からないから・・・」

葉留佳「まあ正直はるちんも良く分からないけど、人様の恋愛事情ほど聴いてて楽しいこともないからね」

佳奈多「なんか引っかかるけどまあいいわ・・・実は最近、直枝と過ごしてて少し物足りなさを感じるのよ・・・」

葉留佳「物足りなさっていうと・・・全然会う時間がないとか?」

佳奈多「いえ・・・その・・・」

葉留佳「なんだなんだー!相談するって決めたんなら大人しく吐かんかー!」

佳奈多「・・・実は私、もっと直枝に甘えたりしたいの・・・」

葉留佳「な、ナニーっ!?」

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佳奈多「な、なによ!あなたが素直に言えって言ったんでしょう!?」

葉留佳「い、いやだって意外というか・・・佳奈多がそんな俗的なこと言うとはこのはるちんの目を持ってしても・・・」

佳奈多「あなた本当私をなんだと思ってるの・・・。私だって、もっと直枝とこ、恋人っぽい事とかしたいのよ・・・!」

葉留佳「逆に今まではしてこなかったの?」

佳奈多「しようとは思ってるけど・・・どうしても恥ずかしくて事務的な対応をしちゃうのよ!」

葉留佳「ううむ、業が深い性格ですナ・・・」

佳奈多「私だってもっと素直になりたいわよ・・・」

葉留佳「えーじゃあもうストレートに甘えたいって言ったどうなんですカ?」

佳奈多「だ、ダメ!」

葉留佳「えっ、なんで?」

佳奈多「だって・・・・・・ごにょごにょ」

葉留佳「なんでいなんでい」

ズイズイッ

佳奈多「・・・わ、私のキャラじゃないから・・・そんなこと言ったら直枝が幻滅するかも・・・」

葉留佳「うおお!!か、佳奈多が『キャラ』とか言った!こりゃ日本の夜明けですネ」

佳奈多「だってそうでしょ!?今までこうやって通してきたんだから、直枝に今更そんな弱さみせたらどう思われるか・・・」

葉留佳「いや~甘えることは弱さじゃないと思うけどナ~」

佳奈多「と、とにかく!そういう訳でどうしようか迷ってるのよ!今だってもう秋よ!?このままじゃ学校生活なんてあっという間に終わっちゃうじゃないっ」

葉留佳「他人の恋愛には電撃作戦がどーのこーの言っといてこの姉は・・・。まあ、いいでしょう!そこまで想いの丈をぶつけられちゃあこのはるちんも一肌脱ごうじゃありませんカ!」

佳奈多「ほ、本当!」

葉留佳「おうとも!私にいい考えがある!」

導入おわり(∵)

てすてす(∵)

お、まだ生き残ってたか
よし再会

葉留佳「じゃー行動は早いほうがいいですナ。お姉ちゃん制服のスカート貸して?」

佳奈多「え?いいけどどうして?」

葉留佳「そりゃあモチロン明日までに佳奈多のスカートを微妙に短くするためですヨ」

佳奈多「はぁ!?」

葉留佳「フッフッフ!男の子の気を引くならまず目線から誘導するん・・・ンガッ!」

ゴンッ

葉留佳「痛ったーー!?急に妹にゲンコツする姉がどこにいるのさっっ!?」

佳奈多「バ、バカ言ってるんじゃないわよ!そんなハレンチなこと出来る訳ないでしょう!直枝だけならともかく学校中の生徒にまで見られるのよ?私が元風紀委員長だったこと忘れてるの!?」

葉留佳「まーまー。この学校、自分の制服を改造してる生徒多いですヨ?姉御とか。クド公に至っては絶対アレ学校指定のマントじゃないでしょ」

佳奈多「来ヶ谷さんは着崩しているだけよ・・・」

葉留佳「あっ!そうだ!」

佳奈多「?」

葉留佳「スカートがダメなら理樹君と2人っきりの時だけこう、胸元をおもむろに開けてみ・・・ぎゃあ!」

ゴンッ

葉留佳「また殴った!二度も殴ったね!?」

佳奈多「馬鹿ね、ほんと馬鹿・・・。もういいわ、今日は寝ます」

葉留佳「えーー!そんなんじゃあいつまでたっても仲が進まないよ!」

佳奈多「そ、そのうち良い考えを思いつくわよ。あなたも早くシャワー浴びて寝なさい」

葉留佳「はいはい、分かりましたよ~だ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・


・・・

・・・


・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・


次の日



教室

教師「で、あるからして~」

葉留佳「・・・」

葉留佳(佳奈多はああ言ってたけど、あれはまさに「冷蔵庫に大量に余った卵をどう処理するか迷ってて気付いたら賞味期限切れてた」ってタイプですネ
・・・ここは多少強引でも距離を詰めていかないと関係が一気に冷え切り、終いには修復不可能な状況に陥る!)

葉留佳(すぐ殴ってくる姉といえどそれは流石に不憫すぎる!やはりここはこのはるちんがなんとかしなければ!しかしどうやって・・・)

教師「・・・と、こんなものか。おい田中、そっちの窓開けてくれないか?そろそろ空気を入れ替えよう」

田中「えー!寒いですよー!」

葉留佳「入れ替える・・・?ハッ!」

葉留佳(そ、そうか!一つあった!我ら姉妹の得意技が!よ、ようし・・・これなら理樹君とお姉ちゃんの距離を縮められる!)

昼休み

裏庭

理樹(パンを携え、裏庭へ行くと隅のベンチに佳奈多さんは座っていた)

理樹「来たよ佳奈多さん」

佳奈多「えっ?ああっ、き、来たわね直枝・・・」

理樹(今日の佳奈多さんはどこか落ち着かない感じだった)

理樹「いやあ、いきなり呼び出すんだから真人から離れるのが大変だったんだよ?いつも昼ごはんは2人で食べてるから」

佳奈多「ごめんなさい、今日はどうしても2人で話したかったの。ほら、そこに座って」

理樹(ことの初めは葉留佳さんが昼休みが始まった直後に佳奈多さんから話があると裏庭に呼び出された事だった。葉留佳さんは葉留佳さんで言うなり急いでどこかへ駆け出して行ったけど何かあったんだろうか)

佳奈多「・・・実はね直枝、私たち最近マンネリを感じているの・・・」

理樹「マンネリ?」

>>12
訂正

昼休み

裏庭

理樹(パンを携え、裏庭へ行くと隅のベンチに佳奈多さんは座っていた)

理樹「来たよ佳奈多さん」

佳奈多「えっ?ああっ、き、来たわね直枝・・・」

理樹(今日の佳奈多さんはどこか落ち着かない感じだった)

理樹「いやあ、いきなり呼び出すんだから真人から離れるのが大変だったんだよ?いつも昼ごはんは2人で食べてるから」

佳奈多「ごめんなさい、今日はどうしても2人で話したかったの。ほら、そこに座って」

理樹(ことの初めは葉留佳さんが昼休みが始まった直後に佳奈多さんから話があると裏庭に呼び出された事だった。葉留佳さんは葉留佳さんで言うなり急いでどこかへ駆け出して行ったけど何かあったんだろうか)

佳奈多「・・・実はね直枝、私最近マンネリを感じているの・・・」

理樹「マンネリ?」

佳奈多「そう。いえ、今のままでも勿論幸せだわ。でもこの状態が続いていくといつか私たちのどちらかがお互いに対して心が離れていってしまうんじゃないかって焦りを感じてきたのよ。つまり、なんというか、ほら・・・ね?」

理樹「・・・ええっと、なにか刺激が欲しいってこと?」

佳奈多「そう!そうなの!」

理樹「うーん・・・刺激といっても一緒にお出かけしたりっていうのじゃダメなの?先週だって一緒に映画観にいったじゃない」

佳奈多「えっ、そんな事してたの!?」

理樹「ん?」

佳奈多「ご、ごほん!いやなんでもないわ・・・ええと、違うのよ直枝、そういうことじゃなくて普段の接し方というか・・・ほら、私たちどこかまだ友人の延長戦というか他人行儀なところがあるじゃない?そういう所を改善していきたいのよ」

理樹「それについては佳奈多さんが『いい?付き合ったからといっても私は元風紀委員長だし、他人の目だってあるんだからあんまりベタベタしないでよね!親しき中にも礼儀ありよ』っていってたじゃないか。僕は一応それを守ってるつもりだけど・・・」

佳奈多「あんのバカ姉・・・っ。い、いや・・・確かにそれはそうなんだけど、それで私たちの関係が冷えることになったら本末転倒というか・・・もっと甘えたいっていうか・・・とにかくもっと私は甘えたいのよ!」

理樹「・・・・・・」

ジー

佳奈多「・・・な、なに?」

理樹「いや・・・なんか佳奈多さんらしくないなって」

佳奈多「!!・・・わ、私らしくないってなによ!?」

理樹「いやあ、そういう事を言ってくれるのは嬉しいんだよ?でも、いつもの佳奈多さんならそんな直接言いづらいことをはっきり口に出して言ってこないからさ」

理樹(そう、いつもの佳奈多さんならこういう時、直線的につっぱしっれば30秒でたどり着けるような距離を超迂回して一時間かかる大回りをして伝え、しかもそれをあたかも僕が言い出したから仕方がなくそれに乗ってやるといった形をとるのだ。佳奈多さんはそれに成功した時、とても分かりづらいが、毎度喜びの表情を隠しきれておらず、僕はその様子を見て言い知れぬ愉悦を感じるのだ。しかし今回の佳奈多さんはどこかなりふり構わずストレートに甘えてくるチワワのようなイメージだった。まあそれはそれで可愛いんだけど)

佳奈多「あ、あはは・・・たまにはそういう気分の時もあるのよ・・・だからね、直枝、次から私と会った時はもっとベタベタに接してくれると・・・」

理樹「そう、そこもだ。佳奈多さんはいつも自分を律しているのに今日は『もっと自分にご褒美をちょうだい』なんて凄く佳奈多さんらしくないよっ。たまの膝枕ならまだしも」

佳奈多「うっ・・・」

理樹「もちろん佳奈多さんがそれを望むなら尽くしたいけど、なんだか葉留佳さんみたいな物言いだなって。まさか葉留佳さんの変装だったりしてね!ははっ」

佳奈多「ぎ、ギクゥーッッ!」

理樹「佳奈多さん・・・?」

佳奈多「ば、ばか言ってんじゃないわよ!当然自分を律することは忘れてないわよ!律しまくりよ!」

理樹「えっ、今のどこら辺が?」

佳奈多「え、ええと・・・そ、そう!まさか私が甘えるだけで終わると思っているんじゃないわよね?」

理樹「・・・というと?」

佳奈多「甘えたら甘えた分だけ、次の日は厳しくなるのよ!例えば今日手を繫いだとしたら次の日は見かけたら素早く目を逸らすとか!」

理樹「え、ええっ?」

佳奈多「そうよ!物事はバランスが大事なの。メリハリというか、なんというか・・・とにかくお互いの距離がより近づいたら近づいただけ今度は離れるのよ。そうすることで互いの適正な距離を測っていくの!言っている意味が分かるわね!?」

理樹「ええと・・・全然分からないけどとりあえずベタベタしたり冷たくしたりを交互にやっていけばいいってこと・・・?」

佳奈多「そういうことですヨ!それじゃ今日は解散!」

ダダダッ

理樹「・・・ヨ?」

理樹(彼女の提案はなんだかとても不思議なものだったが、今の慌て具合は少しいつもの彼女っぽかった。とにかくああも必死に言ってくれたんだからしばらくはその通りにやってみよう。確かにあまり進展がないという点ではその通りだったし)



草むら

ガサガサッ

佳奈多(葉留佳)「・・・う、うおお!あっぶなーっ!もうちょっとでバレるところだったカモ・・・流石恋人なだけありますネ。しかし、うう・・・弁解するために結構余計なことも言っちゃたかな・・・?」

葉留佳「・・・・・・」

葉留佳「・・・まっ、あの二人だしよっぽどの事にはならないでしょ!」

キーンコーン

葉留佳「おっと、予冷が・・・じゃああとは頑張れお姉ちゃん!妹として仕事は果たしたぞよ!」

次の日

放課後

寮長室

あーちゃん先輩「よーし!じゃあ引き継ぎはこれで全部かな?・・・ふう、これで寮長としての仕事も最後か」

佳奈多「お疲れさまでした。これからは私が先輩方に恥じぬよう務めを果たしていきますので」

あーちゃん先輩「あー固い固い!そんな気張らなくても卒業するまでは私もここにきてサポートするからさぁ~」

佳奈多「そういってお茶を飲むために遊びがてらに来るだけっていうのはやめてくださいよ」

あーちゃん先輩「あはは、鋭いなぁかなちゃんは。大丈夫、心配しなくてもそこの恋人との時間を邪魔することはしないからさ」

理樹「り、寮長っ・・・」

佳奈多「か、からかうのはやめてください!」

あーちゃん先輩「はっはっは。ま、直枝君もあげてね。言われるまでもないだろうけど」

理樹「ええ、まあ僕が出来る範囲ならそうします」

あーちゃん先輩「よっしゃあ!そんならお邪魔虫は退散するとしますか!それじゃごゆっくり~」

バタンッ

佳奈多「・・・嵐のように去って行ったわね・・・さて、私たちもここの書類の整理が終ったらさっさと帰りましょ」

理樹「・・・・・・」

佳奈多『次から私と会った時はもっとベタベタに接してくれると・・・』

理樹「ねえ、佳奈さん」

>>17
訂正

次の日

放課後

寮長室

あーちゃん先輩「よーし!じゃあ引き継ぎはこれで全部かな?・・・ふう、これで寮長としての仕事も最後か」

佳奈多「お疲れさまでした。これからは私が先輩方に恥じぬよう務めを果たしていきますので」

あーちゃん先輩「あー固い固い!そんな気張らなくても卒業するまでは私もここにきてサポートするからさぁ~」

佳奈多「そういってお茶を飲むために遊びがてらに来るだけっていうのはやめてくださいよ」

あーちゃん先輩「あはは、鋭いなぁかなちゃんは。大丈夫、心配しなくてもそこの恋人との時間を邪魔することはしないからさ」

理樹「り、寮長っ・・・」

佳奈多「か、からかうのはやめてください!」

あーちゃん先輩「はっはっは。ま、直枝君もあげてね。言われるまでもないだろうけど」

理樹「ええ、まあ僕が出来る範囲ならそうします」

あーちゃん先輩「よっしゃあ!そんならお邪魔虫は退散するとしますか!それじゃごゆっくり~」

バタンッ

佳奈多「・・・嵐のように去って行ったわね・・・さて、私たちもここの書類の整理が終ったらさっさと帰りましょ」

理樹「・・・・・・」

佳奈多『次から私と会った時はもっとベタベタに接してくれると・・・』

理樹「ねえ、佳奈多さん」

佳奈多(私は書類を分類しながらこれまでのあーちゃん先輩の仕事ぶりを思い出していた。今まで私はこうやって寮長室で出来るような仕事は手伝っていたけど、これからは寮内で起きたことは率先して自分で出向いていくのだ。彼女は多くの生徒から信頼されていたが、どちらかと嫌われ役だった風紀委員を務めていた自分にそれが出来るだろうか。そんな事ばかりを考えていた)

理樹「ねえ佳奈多さん」

佳奈多「なによ」

スッ・・・

佳奈多「ひっ!?」

佳奈多(直枝の声に首を動かさず返事をした直後、背中から優しい温かみを感じた。それが直枝の抱擁による物であることに気付くのに時間はかからなかった)

佳奈多「な、直枝!?あなた何をやっているの!?」

理樹「なにって見ての通りだよ。なに、誰も見てないさ」

佳奈多「み、見てないけどっ!」

佳奈多(とても予想外の衝撃だった。直枝とは付き合っているとはいえこういういわゆる”恋人ムード”というのに積極的になる訳がないと断定していたからだった。まあ、だから昨日ああして葉留佳に相談もしたんだけれど)

理樹「いつ見ても綺麗な髪の毛だ。ミントの香りも素敵だ」

佳奈多「な、なあ!?」

佳奈多(今のは本当に直枝が言ったんだろうか?まさかこれまで一度も女の子と付き合った事どころかデートの経験さえなさそうなこの男が、こんな歯が浮くようなセリフを言うとは)

佳奈多「は、離れて!」

スッ

理樹「あっ、ご、ごめん・・・やりすぎたかな」

佳奈多「や、やりすぎたっていうかいきなりすぎるというか・・・いや、ほら・・・作業も残ってるし・・・」

佳奈多(心臓の鼓動がかつてないほど高まっている。確かに積極的にきてほしいとは葉留佳にも言ったけど、いきなりこんな風にこられても心の準備がまったく出来ない)

理樹「昨日佳奈多さんが言ったんじゃないか・・・まあいいけど」

佳奈多(今日は朝からシャワーを浴びててよかった。今日はハンバーグを食べたけど制服は匂わなかっただろうか、いや、それより口臭がまずい!こんなことなら食後の歯磨きをさぼるんじゃなかった!なんたる失敗)

佳奈多「ブツブツ・・・」

理樹「佳奈多さん・・・?・・・まあ、今日はこんな所でいいか。ええと明日はちょっと冷たくしたらいいんだっけ・・・」



佳奈多「・・・ということがあってね!いや、私もびっくりしたけどまあ直枝だし、広い心でその場は大人の対処をしたけどちょっとがっつきすぎよね!ふふっ」

葉留佳「ああ・・・そうだったの。それはよかったですナァ」

佳奈多「まったく、まあ私が寛容だったからいいけど本来男女というのはもっと徐々に距離を詰めていくものなのよ?ねえ、聞いてる葉留佳?」

葉留佳「ちゃんと聞いてますヨ~というかお姉ちゃん、この前、もっと直枝君にはガツガツ来てほしいって言ってなかった?」

佳奈多「こ、こんな感じでどんどん調子に乗ってきたらどうしよう・・・ま、まあ私もやぶさかではないけど・・・」

葉留佳「ダメだ聞いてねえ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・



・・・



次の日

お昼休み

廊下

佳奈多「・・・♪」

佳奈多(今日はお弁当を2人分作った。私と直枝の分だ。別に昨日の事はなんら関係ないけど実は最近直枝には最近栄養が足りていない昼ごはんしか食べていないように感じたため、急遽私の栄養バランスを考えたメニューを取らせることにしたのだ。ただ昨日のように二人っきりなのをいいことに私に近づきすぎないかどうかだけが不安だ。別に昨日の事とはなんら関係けど)

佳奈多(私は高まる胸を鎮め、直枝の教室に着くと弁当を背中に隠しつつドアを開けた。すると丁度直枝がそこにいた)

理樹「あっ」

佳奈多「あっ、な、直枝・・・」

理樹「こんなところまできてどうしたの佳奈多さん?」

佳奈多「え、えっと、その・・・ほら、今からお昼休みでしょう!?」

理樹「ああ・・・うん、そうだね」

佳奈多「その・・・どうせこれからパンでも買いに行くんでしょう?だったら私に付き合いなさいよ。実は今日・・・」

真人「お?どうしたんだ理樹、そんなところで立ち止まって。早く買いに行こうぜ?カツサンドは遅い奴を待たねえぞ!」

佳奈多(直枝の後ろからぬっと友人の井ノ原真人が現れた。どうやらこれから直枝と昼ごはんを食べようとしていたらしい。しかし、この男は運が悪い。何故なら直枝は今から恋人たるこの私と2人でランチとしゃれこむのだから)

理樹「あーごめんお昼ご飯は一人で食べてくれない?・・・佳奈多さん」

佳奈多「・・・えっ?」

佳奈多(今・・・私の名前を言ったのか?この男は)

理樹「前も真人のご飯断ったばっかりなんだよね。申し訳ないんだけどさ」

佳奈多「え、えと・・・今日お弁当作ってきたのよ?ほら、あなたが好きな金平ごぼうも入ってる・・・」

理樹「・・・っ」

理樹「ごめん。葉留佳さんとか小毬さんを誘ってくれると助かるな」

佳奈多「・・・あ、うん・・・」

理樹「・・・行こっか真人」

真人「ん?おう、話はもういいのか?」

タッタッタ・・・

佳奈多「・・・」

裏庭

ベンチ

佳奈多(お弁当はとてもおいしそうな中身だった。見た目の色彩バランスもよく、シャケやウインナーソーセージ、それにエビフライとメインとなる食材も惜しみなく使われており、特にシャケなんかはおっちょこちょいな直枝が一気に食べても問題ないよう小骨を一本一本取り除いたのだ。もちろん栄養も考えてキャベツの千切りや、全体的に味が濃い目なのでもやしも入っている。我ながら完璧なお弁当だ。だからこそ・・・)

佳奈多「・・・一人で2人分だって余裕だわ。ええ、余裕ですとも」

パクッ



・・・・・・・・・・・・


裏庭

理樹(真人との昼ごはんを早めに切り上げ、僕は佳奈多さんを探していた。一昨日、佳奈多さんは僕に『甘えたらその分次の日は厳しく』と言った。だからこそ僕は心を鬼にしてお昼ご飯の誘いを断ったのだ。きっと佳奈多さんも辛かったに違いない。しかし、それは彼女自身が選んだ僕たちのためのルールなのだ。とはいえあのまま放置していくのも我慢できなかったのでこうして探してはいるが・・・)

理樹「ええと・・・多分この辺で食べているんだと思うけど・・・あっ」

理樹(裏庭のベンチに佳奈多さんはいた。どうやら一人で座っているようだが、あれは・・・)


佳奈多「ぐすっ・・・もぐもぐ・・・」

ポロポロ・・・


理樹「!!」

理樹(なんということだ!佳奈多さんは目から涙を少しずつこぼしながら自分の作ったお弁当を食べていた。しかも横には既に完食済みのお弁当箱・・・つまりは僕が食べなかった分も全部一人で食べているのだ)


佳奈多「ううっ・・・おいひい・・・」

モグモグ・・・


理樹(無理やり何かを自分に言い聞かせながら食べるその姿はとても痛々しいものだった。しかし残酷ながら僕が今あそこへ行けば彼女の努力は無駄になるだろう。そう、今は我慢の時。今のは彼女の戦いの時なんだ。頑張れ佳奈多さん。僕はそう物陰の隅で応援することしか出来なかった)



・・・・・・・・・・・


・・・・・・

・・

佳奈多「ぐ・・・ご馳走様」

理樹(彼女はそういうと目をごしごしと擦り、お弁当箱をかたずけていった)

理樹「佳奈多さん・・・ごめん・・・」

キーンコーン

理樹(片付けが済むと、学校の予鈴が鳴った。佳奈多さんは次の授業でクラスメイトに弱気な表情を見せたくないのか、携帯の小さな液晶を鏡代わりにして空いた片手で頬っぺたを伸ばしたり引いたりして顔を無理やりキッといつもの強気な表情に戻した)


佳奈多「よし・・・」

スクッ


理樹(そしてベンチから立ち上がると、そのまま凛々しい表情で裏庭を去って行った。しかし、その歩きはどこかふらついているようにも見えた)

理樹「・・・・・・っ」

ゾクゾクッ

理樹「!?な、なんだ今のは・・・」





理樹・真人部屋

理樹「ううん・・・」

真人「どうした理樹、寝れねえのか?」

理樹「ちょっとね・・・」

真人「俺に出来ることと言えば筋肉子守唄を披露することぐらいだが・・・」

理樹「ありがとう、でも遠慮しておくよ」

理樹(ずっと今日の昼の事を考えていた。彼女が心配なのもそうなんだけど、それ以上に引っかかるのは僕の、僕自身の感情だった。あの時、いつもは生徒の見本であろうと誰より気を張っていてカッコイイ佳奈多さんが、涙を浮かべながら弁当を食べていた時、僕は何故かとても心の中にドロッとしたゼリーにも似たような温かい快感のようなものを感じたのだ。もちろん、あの状況でそんなことはあり得ない。彼女を嫌っている人間ならともかく僕は彼女の事を愛しているのだから。まったくあの時の僕はパソコンのバグのように狂ってしまったのだろうか?自分で自分の事が腑に落ちない)

真人「眠れ~眠れ~大胸筋~~♪」

理樹(だがいくら考えてもそれと言った答えは出てこなかった。もう忘れた方が良いかもしれない。それより明日は罪滅ぼしではないけど佳奈多さんを目いっぱい甘やかそう。そう、明日はそうしてもいい日なのだから)



同時刻

佳奈多・葉留佳部屋

佳奈多「・・・・・・」

葉留佳「お、お姉ちゃーん・・・?どうかした?」

佳奈多「・・・何も」

葉留佳「そ、そういえば理樹君お弁当どうだって?」

佳奈多「・・・もう寝るわ。おやすみ」

ガバッ

葉留佳「・・・・・・い、嫌な予感がする・・・」

続く(∵)

次の日

職員室

佳奈多「はぁ・・・」

理樹『あーごめんお昼ご飯は一人で食べてくれない?・・・佳奈多さん』

佳奈多(失敗した・・・よく考えたら直枝が昼ごはんをいつもどうしてるかなんて全然考えてなかった。なのに私、勝手に一人で張り切って作っちゃって・・・バカみたい)

先生「・・・二木さん?」

佳奈多「・・・えっ?」

先生「ふふ、どうしたの?ぼうっとしてたわよ」

佳奈多「あ、いえ・・・すいません」

先生「じゃあちょっと重いかもしれないけどよろしくね」

佳奈多「はい」


職員室前

佳奈多「失礼しました」

理樹「おっと・・・あれ、佳奈多さん」

佳奈多「あっ・・・!」

理樹「その書類どこに運ぶの?」

佳奈多「これは寮長室に運ぶもので・・・」

理樹「僕も一緒に持っていくよ。重いでしょ?」

佳奈多「い、いいわよ」

佳奈多(別に直枝とはあんなことだけで仲が悪くなったわけではないのに、今は少し気まずかった)

理樹「今更何を遠慮してるのさ。ほら、2人で持った方が早く着いて効率もいいでしょ?」

佳奈多「・・・あなた”効率”って言葉使ったら私が黙るって思ってない?」

理樹「はははっ。ほら、持つよ」

佳奈多(直枝はそうやって半ば奪うように書類を持って私の隣に並んだ)

理樹「さ、ホラ行こうよ」

佳奈多「はあ、分かったわ。あなたの勝ちよ」

佳奈多(直枝は基本的にいつも私によくしてくれている。ちょっと引くくらいだ。だから、昨日の事で落ち込むことなんて何もない。そう、あれはたまたまだったんだ)





寮長室

ドサッ

理樹「もうここに置いたままでいいの?」

佳奈多「ええ。ありがとう、お疲れ様」

理樹「・・・」

理樹「・・・これから佳奈多さんはどうするの?」

佳奈多「えっ?これからはそうね、先生から頼まれたことも終わったしこのままここに残って仕事の続きをするか、もう帰ってしまうか・・・」

理樹「そっか・・・」

佳奈多(その言葉を聞いた直枝は寮長室の扉をゆっくり閉めた)

佳奈多「どうしたの?」

理樹「いやなに、人の目につくのは流石に嫌だからね」

佳奈多(すると直枝は私のそばまで近づいてきた)

佳奈多「なんの話・・・?」

佳奈多(そしてお互いの呼吸の声が聞こえるところまで近づくと、彼は私の肩に両手を置いた)

佳奈多「えっ・・・あの・・・」

佳奈多(こんなに近いと言うのに直枝の表情からは何も読み取れなかった。そのせいかこの状況下で男が女にすることは一つであることに”それ”をされてからじゃないと気づけなかった)

理樹「口は恥ずかしいから・・・」

スッ

佳奈多「!!」

佳奈多(直枝はまったく理解が追いつかない。先ほどまで・・・いや、昨日からそんなそぶりはまったく見せなかった直枝が、いきなり私のおでこにキスをした)

佳奈多「な、なにを急に!」

理樹「なんでって・・・僕も分からないけど、急に君のおでこが可愛く見えたからさ」

佳奈多「何言ってんのよ!」

ドンッ

理樹「うわっ!」

佳奈多「ば、ばかじゃないの!?いきなり了承もなくこんなことして!なにかの映画に憧れでもしたの!?」

理樹「いや・・・その・・・」

佳奈多「最低ね・・・最低。今日はもう帰るから」

理樹「ご、ごめん!確かにいきなりだったよね!もうこんなことはしないから!」

佳奈多「当たり前よ!明日までに頭を冷やしておきなさいこのムッツリスケベ!」

佳奈多(私はそういうとやや乱暴目にドアを閉め、出来る限りの速足で寮へ戻った)

バンッ

理樹「・・・・・・ううん、あの反応的にただなんでもベッタリしたらいいってことじゃあないんだな。難しいなあ・・・とりあえず明日は昨日より冷たくしないと」



葉留佳・佳奈多部屋

佳奈多「・・・ってことがあったのよ!もうほんと直枝にはうんざり!ちょーっと甘やかしたらこれなんだから!どう思う葉留佳?」

葉留佳「え、えーっとですナ・・・」

佳奈多「まったく、ああいうのが許されるのが恋愛漫画か何かくらいってなものよ。しかも直枝はそういうキャラって感じでもないし」

葉留佳「そのぉ・・・」

佳奈多「あーやだやだ。男の人が理性的でいられない時もあるのは分かるけど直枝はもっと利口かと思ってたわ。ちょっと考え方を改めようかしら・・・って、ごめんなさい。今何か言おうとしたわよね」

葉留佳「・・・いや、なんでもないです・・・」

佳奈多「そう?じゃあそろそろ寝ましょう。今日のことについて語ってたらいつの間にか消灯時間だったわ」

ガバッ

葉留佳「そうですナ・・・じゃあ消すね・・・」

パチッ

葉留佳「・・・・・・」

葉留佳(ううむ・・・結局『でもお姉ちゃんさっきから口角上がりっぱなしですヨ』とは言えなかった・・・)

佳奈多「・・・・うふっ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・・




・・・

数時間前



恭介「なに、人に冷たくするにはどうすればいいか?」

理樹「・・・うん」

恭介「ま、まず理樹からそんな質問が来るとは思わなかった。なにか嫌な奴でもいるのか?」

理樹「ち、違うんだよ!実はその・・・ちょっとした友人にさ、ちょっとした実験でその人自身に頼まれたんだよ、僕から冷たくあたってほしいって」

恭介「実験だと?」

理樹「うん。なんでも冷たくするのと優しくするのを日ごとに対応を変えてほしいんだって」

恭介「そいつ変態じゃないのか?」

理樹「凄いストレートに言うね・・・でもそういう人じゃないんだよ。確かにその日は変だったけど。まあとにかく明日は冷たくする日って訳なんだけど正直どうやればいいのか分からなくてさ・・・前回はなりゆきで出来たんだけど」

恭介「ふーむ。まあどうしてそんな事になったかはともかく事情は分かった。とりあえずそいつに冷たくすればいいんだな?」

理樹「うん。こういうこと相談できるの恭介しか思い当たらなくて・・・」

恭介「それはそれで聞きづてならねーな」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・



理樹(恭介はそれから腕を組んで少しの間目を閉じて黙ると、ちょっとしてから口を開いた)

恭介「そうだな。じゃあこういうのはどうだ?次にそいつがやってきたら舌打ちして無視するというのは」

理樹「いやいやいや!それはヤバいでしょ!」

恭介「何故だ?冷たくするっていうんだろ?」

理樹「で、でも・・・」

恭介「大丈夫、ずっとそうする訳じゃあないんだ。それをやった次の日にはその分優しくすればいいんだから」

理樹「う、うーん・・・」

次の日

放課後

廊下

タッタッタッ

佳奈多「うーん・・・」

謙吾「む?誰かと思ったら二木か。うちの教室まで来るとは珍しいこともあったもんだ」

佳奈多「宮沢・・・」

謙吾「その様子だと誰かを探しているようだな。能美か?」

佳奈多「いえ、ちょっと直枝をね・・・」

謙吾「理樹だと?またどうして」

佳奈多「いやその・・・また寮長室に運ぶプリントがあるんだけど直枝にも手伝ってほしくて」

謙吾「そのためにわざわざこっちまで来たのか?プリントを運ぶくらいお前なら他にいっぱいツテがあるだろ」

佳奈多「そ、それは!ええと・・・彼は暇そうだし・・・いつも寮長の仕事を手伝ってもらってるから・・・そう、いつものことだからなの!」

謙吾「ほぉ?まあなんでもいいがな。理樹ならさっき真人と飲み物を買いに行ったぞ。カバンは置いてあるしここで待っていたらそろそろ戻ってくるだろう」

佳奈多「ほんと!?あ、ありがと」

謙吾「・・・・・・」

ジッ

佳奈多「な、なによ?」

謙吾「・・・いや、なんだか前と比べて少し余裕がないように見えるんでな」

佳奈多「は、はあ?余計なお世話ね。それよりあなたはここで道草食っててもいいのかしら?」

謙吾「ふっ、言われずとも行くさ。ではな」

佳奈多「・・・直枝のことで余裕がない?この私が・・・?」

真人「ふっふっふ!まさかほんとに当てやがるとはな!この浮いた120円でなんか2人で食える物買おうぜ!」

理樹「いいよ、たかがジュースなんだし。真人がとっときなよ」

真人「お、お前聖人か・・・?」

佳奈多「あっ!」

佳奈多(直枝が井ノ原と共に戻って来た。向こうから来たのは幸運だった。これなら自然に頼みごとをして2人になれる)

トテトテ

佳奈多「あ、あの・・・」

理樹「それじゃあ帰ろっか真人」

真人「おう!」

佳奈多「・・・っ」

佳奈多(声をかけたが直枝が気付ずそのまま教室に入ってしまった。しょうがないので教室から出て来たところを改めて待つことにした)


・・・・・・

ガラッ

佳奈多「・・・」

真人「そういえばよぉ、最近恭介がこの間の就活帰りに新しいボードゲーム買って来たって言ってたぜ」

理樹「それは楽しみだね」

佳奈多「!」

佳奈多(直枝が出て来た)

佳奈多「直枝っ」

佳奈多(今度は聞き逃されないように大きめの声で叫んだ。しかしそのせいでちょっと声がうわづってしまったかもしれない)

真人「おお、二木か。どうしたんだ?」

佳奈多「いえ、あの・・・ちょっと直枝に・・・」

スタスタ

理樹「真人どうしたの?早く行こうよ」

佳奈多「!?」

真人「えっ、いや理樹お前・・・」

佳奈多(今・・・今、私を無視した・・・!?)

佳奈多「ちょ、ちょっと直枝・・・」

理樹「・・・」

ツーン

佳奈多「!!」

佳奈多(間違いない!あの直枝が私を意図的に無視している!)

真人「おいおい、聞こえてないのか理樹?」

理樹「ッチ・・・早く行こう、真人」

佳奈多「な・・・な・・・!」

佳奈多(舌打ちまでした!)

タタタッ

真人「あ、おい、待てよ理樹!」

佳奈多「あ・・・う・・・」



・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・


・・



理樹「・・・・・・」

真人「二木のことか?」

理樹(あれからずっと部屋で黙っているのを見かねてか真人が声をかけてくれた)

理樹「うん・・・」

真人「お前らになにがあったのかは知らねえけどなんだ・・・そのまあ、よく話し合えよ。俺でよかったら話を聞くからさ」

理樹「うん、ありがとう真人」

理樹(今回の話は二木さん本人がそうしたいと言ってやっていることだ。他の人には多少トラブルに見えてもしょうがない。実際やっていることは酷いものだけど・・・)

佳奈多『あ・・・う・・・』

理樹(そう、確かに酷いことのはずなんだ。だけど、どうしてだろう。この間もそうだったが、何故か二木さんの落ち込んでいる姿を見ると妙に自分の中で心地いい感覚になるのは)

理樹(誰かを虐待すると楽しいとか、そんな気持ちは一切ないし、いじめ問題なんかを取り扱った記事を見るととても心が痛む。だが、だけど・・・)

佳奈多『え、えと・・・今日お弁当作ってきたのよ?ほら、あなたが好きな金平ごぼうも入ってる・・・』

理樹(ああクソ!何故か二木さんをいじめると興奮する!そのへこんだ姿がとても愛らしくなって次に会う時は抱きしめたくてたまらなくなるんだ)

理樹「僕はいったいどうしちゃったんだろう・・・」

真人「どうかしたか理樹?」

理樹「いやなんでも!お、おやすみ!」

真人「?」

理樹(それから奇妙な日々は続いた)

・・・・・・・・・・・・・・・・・

寮長室

理樹「佳奈多さん、お揃いのミサンガ買って来たんだけどどう?」

佳奈多「えっ、あっ・・・ふん、一応貰っといてあげる」

次の日

廊下

佳奈多(あ、直枝だ・・・ミサンガ気付くかしら)

真人「おろ?理樹、昨日買ってたヒモどうしたんだ?」

理樹「ああ、あれ?なんか付ける前になくしちゃったみたい」

真人「ふーん」

佳奈多「えっ・・・」

スッ

理樹「・・・・・・ふふっ」

そのまた次の日

寮長室

佳奈多「ちょっと直枝!」

理樹「えっ、なに?」

佳奈多「あ、あんたなんでミサンガなくしちゃったのよ!普通2人で付けるものを」

理樹「ミサンガってこれのこと?」

佳奈多「えっ、なんで持って・・・」

理樹「昨日、必死に探して見つけたんだ。あってよかったよ。だって、僕と佳奈多さんのお揃いだもん」

佳奈多「あふっ・・・そ、そうなの。そうならいいのよ・・・」

理樹「もちろんお願いは僕らの仲がずっと続くようにって願ったよ」

佳奈多「!」

佳奈多「バカね!ほんと・・・ばか」

理樹「・・・ちなみに佳奈多さんはなんで僕がなくしたこと知ってるの?」

佳奈多「あっ、いや、それは」

そのまたまた次の日

真人「あれ、理樹またヒモついてねえな」

理樹「あ、なんか昨日の夜どこかにひっかっかって千切れたっぽいね」

佳奈多「えっ!?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・


・・・

理樹(このような日々を続けた結果、佳奈多さんと僕の間には奇妙な距離感が生まれた)

佳奈多「えと・・・お、おはよう直枝」

理樹「おはよう佳奈多さん!」

佳奈多「あ・・・うんっ」

理樹(ここ最近佳奈多さんは僕に対して怯えたような、それでいてなにか期待するような目を向けるようになった。ついこの間までは自信に満ち溢れていた彼女が今では僕の発する挨拶の声色一つで赤にも青にも染まった)

理樹「あっ、ねえ佳奈多さん」

佳奈多「な、なに・・・!?」

理樹「・・・」

ゾクゾクッ

理樹(最初は正体が分からなかったこのドロっとした感覚、もはや間違いない。僕は・・・)

トコトコ

佳奈多「な・・・なによ、黙って近寄ってこな・・・」

理樹「・・・」

スッ

佳奈多「ひっ・・・」

ナデナデ

佳奈多「えっ・・・?」

理樹「いや・・・今日も綺麗な髪だなと思ってさ」

佳奈多「あ・・・えへ・・・」

ナデナデ・・・

理樹(僕はドSだ!)

数日後

夕方

グラウンド

恭介「よおし、今日の練習はここまでにしよう!」

小毬「はーい!」

クド「今日も頑張りました!」

ゾロゾロ・・・

真人「ううむ・・・」

葉留佳「おや、真人クンどったの?珍しく元気ないですネ」

真人「おお、三枝か。いや、なんでもねえよ」

謙吾「下手な誤魔化しはよせ、理樹のことだろう」
真人「謙吾・・・」

葉留佳「り、理樹君のこと?」

謙吾「うむ。この頃なにか理樹の様子がおかしいんだ。いや、正確には理樹と二木と言ったところか」

葉留佳「げっ」

真人「げっ?」

葉留佳「うおっほん!い、いや、なんでもないデスヨ!?それで2人がなんですか!?」

真人「それがよお、最近理樹の様子がおかしいんだ。どうも二木と会うと仲がいいんだか悪いんだかいきなり笑顔で会ったかと思えば次の日にはびっくりするほどよそよそしいと来たもんだ。俺はあの二人にいったい何が起こったもんかと思ってさ」

謙吾「俺も最初は2人が喧嘩したのかと思った時もあったが、二木本人に聞くと別段そういう風でもなかった。しかし、何か2人の間に妙なことがあるのは事実。だからと言って俺達が理樹に直接聞きいた所で本当のことを聞けるかどうか・・・」

葉留佳「へ、へ~~そうなんですな・・・」

真人・謙吾「「・・・・・・」」

葉留佳「え、なになに、まさかはるちんに何か探ってこいとでもおっしゃりますのかナ・・・?」

謙吾「・・・いや、お前にだって解決できる問題じゃないかもしれん。他を当たる」

葉留佳「なにをぉ!このはるちんにあの二人の事で右に出るやつぁ・・・!」

謙吾「ほお!では行ってくれるか!頼んだぞ三枝!」

真人「悪ぃな、こればっかりは俺の専門外だからよお」

葉留佳「ハッ」

葉留佳(しまったァ~~!つい乗せられてしまった!で、でもこれも元はと言えばはるちんが災いの元、上手くいくかは分からないけどなんとかするしかないかぁ・・・でもどうやって・・・)

次の日

裏庭

佳奈多(葉留佳)「結局なにも思いつかなかった・・・とりあえず本人に扮して理樹君らが今どうなってるのか確かめようかな・・・」

理樹「・・・」

トコトコ・・・

葉留佳(おっ、噂をすれば!)

理樹「あっ、おはよう佳奈多さん・・・あれ、どうして今日はチョーカー付けてないの?」

葉留佳(しまった、本物はチョーカーを付けていたのか!)

葉留佳「あ、あはは・・・ちょっと忘れちゃって・・・」

理樹「ダメじゃないか忘れちゃあ・・・あれは佳奈多さんが僕の物だっていう証って言ったろ?」

葉留佳「!?!?」

葉留佳(どどどどどういうコト!?)

理樹「しょうがないなぁ・・・じゃあ今日も佳奈多さんにはお仕置きが必要みたいだね」

葉留佳(や、ヤバイ・・・具体的には分からないけど、今の理樹君はとにかくヤバイ!に、逃げなくては・・)

ガシッ

理樹「あれ、どうして逃げるのかな。いつもなら喜んで受けるのに。知ってるんだよ、嫌がってるように見せていつも嬉しそうな顔してるの」

スッ

葉留佳「ヒィ!」

理樹「じゃあ行くよ・・・」

葉留佳(ナムサン!)

ナデナデナデナデナデ

葉留佳「えっ・・・」

葉留佳(な、なでまくるだけ・・・?な、なんだてっきりバイオレンス的な何かかと思ったけど案外実情はこんなもの・・・)

理樹「はっはっは驚いたでしょ!いやあ、やっぱり佳奈多さんは最高だなあ、一日一回は怖がってる表情を見ないと最近は寝付きが悪いよ」

葉留佳「・・・・・・」

サァ・・・

葉留佳(や、やっぱりこの理樹君はヤバイ・・・!)

葉留佳「ち、ちょっとそういう冗談はもうやめなさ・・・」

理樹「え、なんで口答えしてるの?」

葉留佳「ひぎっ」

理樹「もう、本当におしおきされたいの?流石に僕も怒っちゃうよ」

葉留佳「・・・・・・」

葉留佳(り・・・理樹君じゃないっ!この目の前の人は確実に理樹君ではない!!そんでもって、理樹君がこうだという事はおそらく佳奈多もまともじゃなくなってるはず・・・)

葉留佳(あの花嫁騒動が起こってからはや数か月、はるちんも姉のためならばと身を引いたこそすれ、2人がこんな風になるために涙をのんだわけではない!こ、ここはこの葉留佳、漢を見せる時!)

理樹「はぁ・・・じゃあそこに座って・・・」

葉留佳「なんぼのもんじゃい!」

理樹「!?」

葉留佳「ちょっと、直枝。あなた最近私が下手に出てたと思ったらなによその言い草は?」

理樹「い、いや・・・だって君も割とノリノリ・・・」

葉留佳「だまらっしゃい!なーにが『僕のもの』よ!このご時世そういう言い方流行らないどころか物議を申されるくらいよ!」

理樹「あ、う・・・」

葉留佳「いい?よーく聞きなさい!カップルってのはお互いを尊重し合っていくものであって決してイニシアチブを取り合うようなものなんかじゃあないの!」

理樹「は、はい!」

葉留佳「確かに私は時には冷たくあしらうようにとも言ったかもだけど、それはあくまで2人のためであってこんな歪んだ駆け引きのためじゃないの!もうこれからはいつも通りの私で行くからあなたもそのつもりで!」

理樹「わ、分かりました!」

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・

数日後

廊下

葉留佳(いやぁ・・・あの時は勢いで言ってしまったけどその後どうなったのかな・・・)

真人「おお三枝!お前なかなかやるじゃねえか!」

葉留佳「へっ?」

謙吾「おうとも。見直したぞ、それ見ろあの二人を」

佳奈多「ちょっと、来なさい直枝」

理樹「えっ、な、なに?」

佳奈多「また襟元が曲がってるわよ。もう、だらしないんだら」

理樹「あはは・・・ありがとう」

佳奈多「べ、別に・・・あなたが変だと彼女の私が恥ずかしいんだから・・・」

理樹「えっ、なんて?」

佳奈多「な、なんでもないわよ!」

真人「ほれ、なんだかいつも通りだと思わねえか?」

葉留佳「た、確かに・・・!」

葉留佳(よ、よかった~~!)

謙吾「これで一件落着だな。それにしてもいったいどうやって2人を元に戻したんだ?」

葉留佳「へっへっへ、そりゃあはるちん流の駆け引き術ってやつですヨ!」

真人「またなんか言ってら」

謙吾「まあまあ。よし、じゃあ解決のご褒美に今日は俺が後輩から譲り受けていた秘蔵のスペシャル食事券でもご馳走しようじゃないか」

葉留佳「うっひょ~~!流石謙吾の兄貴!話が分かるゥ!」

真人「やりぃ!」

謙吾「お前は自分で買え!」

真人「な、なんだとぉ!?」

ワッハッハ・・・・





佳奈多「・・・はぁ、まったくこんなんじゃ今日もお仕置きが必要みたいね、直枝」

理樹「は、はい・・・佳奈多さん・・・」

佳奈多「ふん、嬉しそうに笑っちゃって・・・」

ニコッ


終わり(∵)

うーむいざ見てみれば一年近くもかけてしまったか
長らく放置してしまって見てくれた人には申し訳なかった
また何か思いついたら近いうちにまた書くと思う
その時はよろしく頼む

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