提督「そうか」ズズーッ
青葉「呑気にお茶なんて飲んでる場合ですか司令官! 恋人ですよ恋人!」
提督「艦娘は第一に兵器とはいえ、少女の姿と心を持つんだ。恋人くらいいてもおかしくないだろ」
青葉「真面目ですか!」
提督「提督としては模範的な解答だと思うんだが……」
青葉「違うんですよぅ! 青葉が求めてるのはもっとセンセーショナルな反応です!」
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提督「センセーショナルな反応ねえ」ズズーッ
青葉「そうです! 提督という立場を笠に着て、歪んだ独占欲を振りかざすとかあるでしょう!」
青葉「『鎮守府の艦娘は全て俺のものだグヘヘ』とか!」
提督「お前の心がゆがんでるだけだろう」ペシッ
青葉「あいたっ」
提督「まったく……」
青葉「うぅ……でも、司令官は本当に気にならないんですか? みなさんの恋人」
提督「……気にならないと言えば嘘にはなる、が」
提督「お前、本当は単に自分の好奇心を満たすために俺を焚き付けたいだけだろう」
青葉「や、やだなあ……何言ってるんですか司令官」フイッ
提督「俺の目を見て話せ」
青葉「あ、青葉を信じてくださいよっ! ねっ!」
提督「あまり他の奴らのプライベートにずけずけ踏み込むんじゃないぞ」
青葉「も、もう……。でも、みなさんが恋人を作ってるっていうのはある意味由々しき事態じゃないですかね!?」
提督「どうしても話を続けたいらしいな……」
青葉「艦娘は存在自体が軍事機密みたいなものじゃないですか?」
青葉「歩く軍事機密がどこの馬の骨とも知れない存在とピロートークしちゃうのはまずいんじゃないかなぁって!」
提督「ピロートークって……お前なあ」
青葉「も、物の喩えですよっ! でも情報流出の危険性はありますよねっ!?」
提督「確かに、そこは否定できないし……艦娘の良識に任せる他はない」
青葉「とくればやはり我々で探るべきなんですよっ! 急に恋人が増え始めた艦娘の秘密を追え、みたいな!」
提督「結局そこに行きつくのか」
青葉「良いじゃないですかぁ司令官、青葉、気になります!」
提督「本当に好奇心だけで物を言ってそうだな……」
青葉「しれいか~ん~」ユサユサ
提督「揺らすな……掴むな……」
提督「……というかだ青葉、お前はどうなんだ。いないのか恋人」
青葉「あっ、それ聞いちゃうんだ」
提督「え? ダメだったのか」
青葉「…………恋人、欲しいから調べたいんじゃないですか」フッ
提督「……俺が悪かったよ」
青葉「青葉だって恋がしたいですよぉ! 青春したい!」
青葉「青葉の青は青春の青なんですよ!」
提督「初耳だなそれは」
青葉「というわけで、調べましょ、司令官! ねっ!」
提督「…………」
青葉「普段、司令官に好意を隠さない子ですら恋人が出来たって言ってるんですよ!? 気になるでしょ!?」
提督「……それはまた、なかなかの心変わりだな」
青葉「あ、ショック受けましたね今」
提督「海軍軍人は狼狽えない」
青葉「わかりました! じゃあ、次執務室に尋ねてきた子に質問します! 青葉が!」
提督「わかったわかった……もうそれでいい。俺の前でならお前も暴走はしまい」
青葉「恋人ってどうやって作るんですかね? 艦娘は出会いがそもそもないっていうのに」
提督「言われてみるとそうだが……外出申請も届くし、外で見つけているんじゃないか」
青葉「一回や二回で見つかるのかなあ……いいなぁ……」
提督「恋に恋するお年頃か……」
青葉「思春期ですからねっ」
コンコンッ
矢矧『――提督、いいかしら』
青葉「青葉のターゲットは矢矧さんのようですねっ」
提督「矢矧か……」
矢矧『提督?』
提督「すまない。入ってくれ」
矢矧「失礼します。演習の報告書をお持ちしました」スッ
提督「ん、確かに受け取った。ありがとう」
矢矧「礼には及ばないわ」
青葉「……」ニコニコ
矢矧「……それで、そこでニコニコ笑っている青葉はどうしたのかしら?」
青葉「はいっ! 青葉、矢矧さんに質問があるんですっ!」
矢矧「質問? この矢矧に答えられることであれば……」
青葉「ありがとうございますぅ! ズバリッ! 矢矧さんに恋人はいらっしゃるんでしょうか!」ズバーン
矢矧「なっ、こ、恋人っ?」チラッ
提督「……答えにくいようなら無理に答えなくてもいいぞ」
青葉「最近鎮守府では恋人が流行りのようですからねぇ……で、どうなんですかねっ」
矢矧「うん、まあ、そうね……いる、けれど……」モジモジ
青葉「おおっ!」
提督「ほう」
青葉「凛とした雰囲気で男性を寄せ付けない印象がありましたが……いるんですねっ、矢矧さん!」
矢矧「あ、あまり連呼しないでほしいわ……恥ずかしいし」
提督「青葉のタレコミが本物だったとはな……」
青葉「それどういう意味ですかね!?」
提督「何でもない。……すまないな矢矧、変なことを聞いて」
矢矧「いえ、いいのよ。隠すことでもないしね」
提督「そうか。……こんなことは言われなくてもわかっていると思うかもしれないが。くれぐれも軍機密は」
矢矧「それについては心配いらないわ」
青葉「ほえ?」
矢矧「相手方も軍属なの。それも海軍」
提督「ほう、そうだったのか。まさか俺の知っている奴だったりしてな」
矢矧「……ふふ、ええ、きっとそうだわ」
青葉「はぁ……同じ軍内に恋人ですかあ……」
青葉「職場恋愛、憧れちゃうなぁ……」ハァ
矢矧「大丈夫、青葉にもすぐにいい人が出来るわ」
青葉「恋人持ちはみんなそう言うんですよぉ……」
提督「お前の恋人、機会があれば紹介してくれ。……引き留めて悪かった、下がっていいぞ」
矢矧「了解。それじゃあね」ヒラヒラ
青葉「まさかの海軍軍人が恋人と来ましたねー」
提督「意外といえば意外だが……艦娘の相手としてはベストなのかもしれないな」
青葉「そういうものですかね」
提督「俺たちは艦娘がどういう存在で、彼女らにどれだけ助けられているか……」
提督「誰よりもよく知っている。その自負があるからな」
提督「きっと矢矧の恋人も、矢矧を大事にしてくれるに違いないさ」
青葉「そうですね。うん、そうだといいと思います!」
提督「……しかし、話を蒸し返すようだが、お前のタレコミが真実とはな」
青葉「青葉はいつだって正確で公平な報道を心がけてますよお!」
青葉「しかし初っ端が当たりだったから、俄然他の人たちが気になってきましたね!」
提督「そうか?」
青葉「気になるって言ってくださいよ! 大義名分が出来ないじゃないですか!」
提督「大義名分って……」
青葉「次来た人にも質問しますよ? いいですよね? ねっ?」
提督「どうせ俺が頷かなくてもするだろう」
青葉「まぁ、しますけどっ」
青葉「でも……提督も気になりますよね?」ニコッ
提督「……気にならないと言えば嘘にはなるが」
青葉「はい決まりー! じゃあ質問決定!」
赤城『失礼します、提督……いらっしゃいますか?』コンコン
青葉「次なるターゲットは赤城さんですねっ」
提督「赤城ね……食欲と戦闘欲の塊にいるものだろうか」
青葉「酷い言い様ですね……」
赤城「提督、聞こえていますからね」
提督「おっ、と……すまない。失言だった」
赤城「許してあげませんっ」
青葉「まあ今のは司令官が悪いですよぉ」
提督「あ、あー、それで、どうした赤城」
赤城「はい、補給に関する要望書の提出を」スッ
提督「ああ、あれか。ありがとう。受け取った」
赤城「はい。それでは私はこれで失礼しますね」クルッ
提督「どこか行くのか?」
赤城「ご飯を食べに!」ニッコリ
提督「そうか……楽しんでくるといい」
青葉「あっ、待って下さい赤城さん!」
赤城「はい、なんでしょう?」
青葉「ズバリお聞きしますが赤城さん! 赤城さんに恋人はいらっしゃいますか?」ズバーン
提督(いないと思うがな)
赤城「はい、いますよ」
提督「いるのか……」
青葉「いるんだ……」
赤城「変な提督ですね。そんなに驚くなんて」
青葉「赤城さんも彼氏持ちですかあ……花より団子が赤城さんの座右の銘じゃなかったんですねっ」
赤城「なんですかそれは……人を食欲の化け物みたいに」
提督「いや、すまない……正直俺も青葉と同じ感想だった」
赤城「もう」
青葉「ズバリいつ頃出会われたんですかっ!?」
赤城「いつだったかしら……ちょっと忘れてしまったけれど、初めて会ったのはここに着任したての頃よ」
提督「随分と長続きしているんだな」
赤城「ええ。とても理解のある方ですから」フフッ
青葉「ほうほう、具体的には?」
赤城「空母の喜ばせ方をよく心得ておられる方なんですよね」
提督「なんだ、まさか俺の同業か?」
赤城「ええ、そうですよ」
青葉「また海軍軍人ですかっ!」
赤城「そうですけど……それが?」
提督「いや、実はついさっき他の艦娘にも恋人がいるという話を聞いてな」
提督「そいつの相手も海軍軍人だったものだから」
青葉「いったいどうやったら職場恋愛できるんですかぁ……」
赤城「たゆまぬ努力の結晶かしら。……ふふっ、それでは提督、私はこれで失礼しますね」
提督「ああ、引き留めてすまない」
青葉「わぁお……赤城さん、大人の女性っぽい……」
提督「お前では身に付きそうもないな……」
青葉「ひっどい!」
青葉「あーあ……いいなぁみんな恋人がいて……」
提督「矢矧といい赤城といい、どちらも成熟した部類だからな」
青葉「なんですかあそれ、青葉がまだ子供みたいな!」
提督「実際子供だろう」ワシャワシャ
青葉「あーっ! 髪の毛弄んないで下さいよぉ!」
叢雲「なーにやってんのよあんた達は」ジトーッ
青葉「あっ、叢雲さん!」
提督「叢雲か。どうした」
叢雲「ご挨拶じゃない。今度の演習で試す陣形について纏めたレポート、持ってきてあげたんだけど?」ヒラヒラ
提督「おっと……それはすまない。ありがたく受取ろう」
叢雲「はいはい。それじゃあね」
青葉「あーちょっと待ってください叢雲さん! 質問!」
叢雲「何よ?」
青葉「最近、艦娘の皆さんに恋人が出来始めてるって話は聞いたことありますか?」
叢雲「ああ、あの話? そりゃもちろん聞いたことあるけど」
青葉「で、で、ずばりですねっ、叢雲さんはどうなのかなって! 青葉気になりますっ!」
叢雲「またアンタは……」ハァ
提督「まあ、あまり責めないでやってくれ。どうも青葉は本気で恋人が欲しいらしい」
提督「……が、青葉お前、駆逐艦の叢雲にまで聞くってそれは」
叢雲「ハァ?」ジロッ
提督「え」
叢雲「まるで私には恋人がいないみたいな口ぶりじゃない?」
提督「……すまん、どうも俺は失言が多いようだ」
叢雲「あんたにそう言われるとは思ってなかったわよ、まったく」
提督「面目次第もない」
青葉「その言いっぷりだと、いるんですね、叢雲さん!」
叢雲「当然じゃない」
提督「当然なのか」
叢雲「当然でしょ」
青葉「これじゃ無限ループですよぉ」
青葉「ちなみに、海軍軍人ですか?」
叢雲「ええ、そうよ?」
提督「艦娘と海軍軍人は相性がいいんだな」
叢雲「何を初めて知ったみたいに……」
提督「ああ、すまない、ただの感想だ」
叢雲「まあ、別にいいけど……」
青葉「ちなみに職場恋愛の秘訣ってなんですか?」
叢雲「いかに同じ空間で仕事をするかってとこじゃない?」
提督「ほう」
青葉「じゃあじゃあ、叢雲さんは同じ空間で仕事をすることが多い相手だったと!」
叢雲「まあそうなるわね」
提督「……ふむ」
叢雲「どうしたのよ?」
提督「少し……いや、ほんの少しだが、黒い感情が」
青葉「えっ、司令官、略奪愛はまずいですよ!?」
提督「そういうのじゃあない。ただ、叢雲は俺の初期艦だからな」
青葉「なるほど、不甲斐ない相手には任せられないと!」
提督「ああ、叢雲を任せるに足る相手でなければ、精神注入棒だな」
叢雲「アンタ、自分を叩く心配した方が良いんじゃないの?」
提督「……かもな」
叢雲「ま、なんでもいいけど、ちゃんと調子は戻しときなさいよ」
提督「ああ、すまない」
叢雲「じゃあね」
青葉「いやー、しかし司令官があんた嫉妬丸出しの言動を見せるなんて青葉意外でした!」
提督「嫉妬じゃあない。娘を見守る親の気持ちと言え」
青葉「娘を取られた父親の気持ちじゃないんですかねえ……」
提督「うぐっ……」
青葉「しっかしまあ……こうまで職場恋愛が流行してるとなると、このビッグウェーブに乗れてないのが悲しくなりますねぇ」
提督「無理に乗ることもないだろう。焦っても碌なことにならん」
青葉「そういうもんですかねぇ……」
提督「……そろそろ良い時間だな。腹も減ったし、食堂にでも行くか」
青葉「あっ、いいですねっ。みんなが集まる場所には情報もたくさんですよっ」
提督「情報ね……」
青葉「はい! みなさんがいつ! どこで恋人を手に入れたのか!」
青葉「レッツ調査です!」
提督「元気な奴だ……」
提督(とはいえ実際、叢雲に恋人がいるってのはそこそこ来るものがあるな……)
提督(提督の領分は弁えておかなくては……)
今日はここまで
次回くらいで終わりになるかと
>叢雲「アンタ、自分を叩く心配した方が良いんじゃないの?」
>提督「……かもな」
あぁ、そういう事か
《食堂》
ザワザワ
吹雪「みんな、彼氏とはどうなの?」
叢雲「上手くやってるわよ。ま、当然ね」
初雪「……うん」コクリ
吹雪「へぇー、そうなんだ。まあ、私も万事快調なんだけどねっ」
初雪「……同じ布団で寝ることも、ある……」
叢雲「なっ……初雪アンタ、同衾まで……!?」
吹雪「お、大人だね初雪ちゃん……」
提督「……耳を疑う台詞が飛び込んできたんだが」
青葉「ど、どどどど同衾っ……」
青葉「く、駆逐艦にまで先を越された……」ズーン
提督「付き合いは人それぞれの話だから俺が口を挟むべきではないだろうが……」
提督「しかし初雪たちの見た目で同衾は……」
青葉「ああぁぅ……司令官、青葉置いてかれちゃってますよぉ……」
提督「焦るな焦るな……」
青葉「うぅ……傷心の青葉に奢ってください……」
提督「お前、実は余裕だろう」
青葉「そんなことないですよっ! 青葉のガラスのハートはボロボロですぅ!」
提督「ハートがボロボロの奴が吐く台詞か……。まあいい、B定食でいいか」
青葉「はいっ! 青葉は何でもおいしくいただきますっ!」
提督「はいはい……」
青葉「どこに座りましょうかねーっと」
大和「……あ、提督、青葉さん。座る席をお探しですか?」
提督「やあ、大和。座ってもいいか?」
大和「はい、勿論です」
比叡「こんにちはー、司令っ」
提督「ああ、こんにちは」
提督「二人で食べてたのか」
比叡「大和は私の事慕ってくれるんですよー。可愛いなあもう」
大和「ふふ、比叡さんってば……」
青葉「青葉も失礼してーっと……」
提督「よし、いただきます」
青葉「いただきまーす」
比叡「……それで大和、相談事ってなに?」
大和「あ……それは、ええっと……」チラッ
提督「なんだ? 俺に聞かれるとまずい内容か?」
大和「いえ、そういうわけじゃないんですっ。ただ、恥ずかしいなって……」
青葉「大丈夫ですよ、司令官の口は堅いですしー」モグモグ
提督「お前は軽そうだがな」
青葉「司令官はさっきから失礼ですー!」
比叡「あはは……」
大和「提督がそうおっしゃるなら……大丈夫かな、うん」
青葉「青葉は席外した方が良いですか?」
大和「ううん、大丈夫です。……相談というのはその、恋人の件で」
青葉「がっでむ!」
大和「ええっ?」
青葉「あ、何でもないんですよー、はい、続けてください。さあどうぞ!」
大和「はい……実はその、最近恋人の部屋に私物を置くようになったんですけど……」
比叡「ふむふむ……」
大和「数日経つと、何故か忽然と消えていて……」
青葉「ほえー……」
比叡「なんだろね、それ。大和の恋人が勝手に捨ててるのかな?」
大和「勝手にそんなことする人ではないはずなんですけど……」
青葉「知らないうちに不和になってるとかですかね……?」
提督「さてなぁ……」
青葉「ちなみに大和さんの恋人というのは……当然のごとく海軍軍人ですか?」
大和「もちろんですよ」
提督「もちろんなのか……いつのまに艦娘と海軍軍人はそんなに……」
比叡「あはは、何そんなに驚いてるんですかー、司令ってば」
提督「ああ、すまん」
比叡「でも確かに大和の話はちょっと気になるね」
大和「はい……」
比叡「ま、一回相談してみることだね! それから、まだ私物を置くのか、それともやめるのか決めたらいいんじゃない?」
大和「ありがとうございます、比叡さん。そうしてみますね、提督」
提督「ん? ああ、良いんじゃないか」
提督(俺が口を挟める話じゃあないしな)
青葉「はぁ……なんか青葉のテンションが下がっちゃいましたよぉ」
比叡「なんで?」
青葉「だってみんな恋人いるって…………あっ、比叡さん!」バッ
比叡「ふぇ?」
青葉「金剛さん一筋の比叡さんなら、恋人なんていませんよね!?」
提督「何を期待してるんだお前は……」
大和「比叡さん、いるんですか?」
比叡「ひえぇ……注目が……」
青葉「お願いですぅ! 青葉の心を救ってください!」
比叡「あ、あはは……」
比叡「青葉には申し訳ないんだけど……私も、いるんだなぁ、これが」
大和「比叡さんにいないわけないですよね!」
青葉「青葉の精神はズタボロです」
提督「まあ比叡は戦艦だし。駆逐艦じゃないだけ良いだろ」
比叡「えへへ……」
大和「ラブラブなんですか?」
青葉「どうせイチャイチャしてるんですよね……青葉知ってます……」
比叡「う、うん、休日は部屋の掃除とかしてあげてるかな……」テレテレ
提督「ほう。比叡には似合いそうだな、そういうの」
比叡「そ、そうですかね……」
大和「もう、提督ってば」
比叡「でも最近、どこから拾ってきたのかわからないようなものが転がってたりして……」
比叡「そういうの、男の人って集めちゃうんですかねえ……?」
提督「あー……まあ、男はいつまでたっても子供と言うしな」
提督「もしかしたらそういう類かもしれないな」
比叡「そうですかぁ……。しっかりしないとですね、司令!」
提督「耳が痛いな……」
青葉「片や同棲の準備を始め、片や通い妻……なんですかねこの恋人ラッシュは……」
大和「あ、青葉さんにもすぐできますよ……」
青葉「矢矧さんもそう言ってましたよぅ……」
プリンツ「あっ、ちょうどよかった! 席空いてますよ、姉様!」
ビスマルク「――あら、重畳ね。ねえ提督、そこ座ってもいいかしら? もちろん答えは肯定だと思うけれど」
提督「ああ、構わんぞ」
プリンツ「ありがとうございますっ、提督っ」
提督「うむ」
青葉「頬ゆるんでますよー」ジトーッ
提督「そんなことはない。海軍軍人は狼狽えない」
ビスマルク「ふふふ……このビスマルクが隣に座ることに喜び咽び泣いてもいいのよ?」
提督「泣くか」
ビスマルク「あなたたち、何の話をしていたの?」
大和「恋人の話ですよ、ビスマルクさん」
プリンツ「わぁ、恋人ですかぁ! 素敵ですねっ! ねっ、ビスマルク姉さまっ!」
プリンツ「コーイーバーナ……ってやつですねっ! 私も気になるなあ!」
ビスマルク「えっ? あっ、そ、そうねっ?」
提督(あ……)
比叡(これ……)
青葉「ビスマルクさん……!」
ビスマルク「な、何よ青葉……」
青葉「ズバリお聞きしますけど……ビスマルクさん、恋人はいらっしゃいますか!?」ズバーンッ
ビスマルク「んなっ……なっ、こ、恋人っ、くらいっ! いるわよ! 当然じゃない!?」
ビスマルク「このビスマルク級のネームシップ、ビスマルクを舐めてこられちゃ困るわねっ!」
青葉「ビスマルクさん……」ポンッ
提督「ビスマルク……」ポンッ
ビスマルク「ふ、二人して何故私の肩に手を置くのよっ!」
プリンツ「え、えっとぉ……ひょっとして、ビスマルク姉様は」
大和「プリンツさん」
比叡「世の中には、言わない方が良いこともあるんだよ」
ビスマルク「ちょっとあなたたちねぇっ!」
青葉「でも実際いらっしゃらないんでしょう……?」
ビスマルク「んぐっ……!」
青葉「だ、大丈夫ですぅ! 青葉もですから! 青葉も仲間です!」
青葉「この鎮守府中を騒がせているビッグウェーブに乗れなかった哀れな重巡ですよぉ……!」
ビスマルク「くっ……提督! あなたねえ! 私にこんな辱めを受けさせて……!」
提督「あ、案ずるなビスマルク。お前みたいな素晴らしい戦艦に恋人が出来ないわけがないだろう」
ビスマルク「あら……ふふん、よくわかってるじゃないの、流石は私の提督ね」
提督「ははは……いつお前のものになった」
ビスマルク「まあいいわ。あなた、特別に私の恋人として立候補することを許してあげても良いわよ?」
プリンツ「姉様」
ビスマルク「なによ、プリンツ」
プリンツ「それはダメですよっ」ニコニコ
ビスマルク「でもプリンツ」
プリンツ「姉様」
ビスマルク「うっ、わ、わかったわよ……」
プリンツ「はい」ニコニコ
提督「……?」
青葉「…………」
青葉(……ビスマルクさんの台詞が飛び出た瞬間、食堂中の視線がこちらを射抜いた気がするのは
青葉(気のせい、ですよね……? うん、気のせい、だよね……ね???)ブルッ
大和「ビスマルクさんってば」クスッ
《廊下》
青葉「うーん……」
提督「どうした青葉」
青葉「いえ……なんかこう、妙な感じを覚えちゃってですねえ……」
提督「なんだそれは」
青葉「いえ、青葉の思い過ごしかもしれませんし」
提督「そうか。まあ、体調には気を付けること」
青葉「了解ですっ!」ビシッ
翔鶴「ふぅ……」
加賀「大丈夫、翔鶴?」
翔鶴「はい……すみません加賀さん……お手を煩わせて」
加賀「いいのよ。私はあなたの先輩なのだから」
提督「翔鶴、それに加賀。どうした、廊下の真ん中で」
青葉「こんにちはっ」
加賀「あら、こんにちは提督」
翔鶴「て、提督……」ヨロッ
提督「翔鶴!?」ガシッ
青葉「だ、大丈夫ですか!?」
翔鶴「あ、すみません……お見苦しい所を……」
翔鶴「提督のお顔を見たら……なんだか安心してしまって……」
加賀「精神的なところで頼っているのね」
翔鶴「ええ……」
提督「どうしたんだ、急に。体調が悪いならしっかり休養を……」
翔鶴「ふふ、すみません……ちょっと、吐き気がするくらいですから……」
加賀「そんな言葉で片付けていいものでもないでしょう」
青葉「吐き気ですか……」
提督「本当に大丈夫か?」
翔鶴「大丈夫です……ふふ……ありがとうございます」
提督「とにかく、無理はしないように」
提督「加賀、もし可能であれば翔鶴の面倒を見てやってくれ」
加賀「もちろんよ。先達として、務めは果たします」
翔鶴「加賀さん……」
青葉「麗しき師弟愛ですねぇ……」ウンウン
翔鶴「提督、期待していてくださいね……?」ニコッ
提督「ああ」
加賀「さ、行きましょう翔鶴」
翔鶴「はい……ふふ、暴れないでね……」サスサス
青葉(い、いま、お腹を擦って……)
青葉(ま、まさか妊娠……? いやいやそんな、まさかそこまで進んじゃってるんですか!?)
提督「……翔鶴、大丈夫だろうか?」
青葉「だ、大丈夫じゃないですかね……あ、でも、激しい運動は控えた方が良いのかも……」
提督「そのようだな」
青葉「いや……う、うーん……」
提督「どうした青葉」
青葉「あっ、な、なんでもないですぅ! はい!」
提督「そうか。……今日は疲れた。早いところ仕事を切り上げよう」
青葉「あっ、そうですね! ……疲れたのって、艦娘に恋人がいる件についてですかぁ?」
提督「言わせるのか?」
《提督の私室》
提督「今日も一日よく働いた……」
提督「……ふわぁ」チラッ
提督「……ん? 俺、あんなところに花瓶置いてたか……?」
提督「思い出せんな。まあいい……風呂にでも……」
《洗面所》
提督「……歯磨きは、と……」
提督「……ん? 俺、いつ新しい歯ブラシなんて……」
提督「いつの間にか出したのか? いや……そんな記憶は……」
提督「……あれ、なにか落ちてるな」ピラッ
提督「…………な、ぜ、女物の下着など」
提督「……艦娘が侵入したのか!?」
提督「いや……まさか……」
提督「だが、知らぬ間に増えていた花瓶と言い……不気味だな……」
提督「青葉に協力を要請するとしよう……」
提督「――というわけで、お前の協力を仰ぎたい」
青葉「…………」ガクガク
提督「どうした」
青葉「あ、青葉……青葉、全部繋がっちゃったような気がするんですけど……」
提督「何を言っている?」
青葉「あ、あの、こ、恋人……みんなに恋人が出来たのって……司令官の事なんじゃ……」
提督「はぁ!? 馬鹿を言うな、俺は誰ともそんな関係にはなっていないぞ」
提督「それに、皆も言っていただろう。それぞれの恋人のこととか」
青葉「い、今思い返したら……あれ、司令官に当てはめてみても矛盾ないじゃないですか……」
提督「なに……いや、まさか……」
提督「脅かすなよ青葉……」
青葉「か、考えすぎて悪いことはないと思います……。青葉も、協力はしますけど」
提督「う、うむ……俺の部屋に侵入者がいないことさえわかればそれでいいんだ」
青葉「わかりました……カメラ、設置しておきますから……」
提督「よろしく頼む……」
青葉「うぅ、杞憂であってください!」
提督「それは切に願うよ……」
提督「……今晩、俺はお前の部屋で寝る」
青葉「は、はぁ!? 何言ってるんですか!?」
提督「すまん、言い方が悪かった。今晩俺はお前の部屋で監視カメラの映像をチェックする」
青葉「そ、そうですね、うん、それがいいです! 青葉、ひとりで見る勇気はありません……」
提督「……設置終わったら、行くか」
青葉「は、はい……」ゴクリ
《青葉の部屋》
提督「……意外と整理されているな」
青葉「も、もう! 変なところ見ないで下さいよ!?」
提督「肝に銘じよう。……それで、モニターは」
青葉「はい、これです。バッチリ映ってますよ!」
提督「うむ、そうか。……ベッドと、部屋全景だな」
青葉「はい……」
提督「では、監視を開始するとしよう――」
ガチャッ
青葉「――! い、いま、司令官の部屋の扉が!」
提督「侵入者か――!」
***
初雪『……』
初雪『……』キョロキョロ
初雪『……同衾、しにきた』スタスタ
***
提督「は、つゆき……」
青葉「……よ、予想は、最悪の形で的中しそうですね……」
初雪『いない……』
初雪『いない……! 誰か他の女に……!?』
ガチャッ
初雪『!』モゾモゾ バッ
***
青葉「ま、また扉が……!」
提督「…………」ゴクリ
大和『…………』
大和『はぁ……。今日は遅くなっちゃったなぁ……』
大和『ちゃんと、二人の愛の巣を作らないと、ですねっ』ニコニコ
***
提督「あ、あお、あおば……」
青葉「み、見てない……青葉は何も、見てない……」
***
大和『歯ブラシは補充済みっ。箪笥にはちゃんと私の分の下着も入れておかなくちゃ……』
大和『うふふ……』ゴソゴソ
ガチャッ
大和『!』
***
青葉「や、大和さんが……隠れましたよ……」
提督「…………」ガタガタ
***
比叡『今晩も! 気合! 入れて! 掃除します!』
比叡『…………』
比叡『……また変な匂いがしてるなあ。いつも掃除してるんだけどなぁ……』ウーン
比叡『今日はこのオブジェを置いちゃいましょう』
比叡『うんうん、似合ってる似あってる!』
比叡『さーて、お掃除お掃除ーっと……』フンフン
***
青葉「……予想通りでしたね」
提督「そんな……いったいあいつらに何が……」
青葉「……私にはわからないですよぉ……でも、このままじゃまずい気がします、明らかに」
提督「くっ……」
ガチャッ
比叡『――!』スッ
叢雲『……やれやれ、昼に変なこと言うから心配になって来ちゃったじゃないの』
***
提督「叢雲……お前まで……」
青葉「あ・……」
***
叢雲『…………ふぅん?』
叢雲『いつの間にか偉くなったものねえ。本当に――』
叢雲『ねぇ? こんなものまでつけていて』ジロッ
***
提督「」
青葉「」
青葉「め、目が……目が逢いましたよ……?」
提督「いや、気のせいだ……だが、今ここにいては……」
青葉「あ、青葉、怖いですよぉ……!」
提督「俺も怖いさ! だが、とにかく今は……」
叢雲「――どこに行くのかしら、二人して」ガチャッ
提督「……ッ!」
青葉「……む、むらっ、くもさ……」
叢雲「よくないわ……私に隠れて浮気って……」
提督「な、何を言ってるんだ……!?」
叢雲「そっちが何を言っているのよ、まったく」
叢雲「まさか部屋に他の女を連れ込んで、自分は別の部屋で逢引とはね」ジロッ
青葉「こ、ここ、これはそういうんじゃなく……」
提督「お、落ち着け叢雲……」
叢雲「話はあとでゆっくり聞くわ」
青葉「あ、後って……」
叢雲「まずはあんたたち二人とも……こう、よ!」
ガンッ!
ドサッ
***
**
*
矢矧「――はぁ」
赤城「どうしたんです、矢矧さん。ため息なんてついて」
矢矧「ああ、赤城さん」
赤城「話、聞きますよ?」
矢矧「……ありがとう。実は、恋人が失踪したの」
赤城「まぁ……それは、お気の毒に……」
矢矧「いつまでも引き摺るのは……よくないんでしょうけどね……」
赤城「鎮守府も、最近恋人ブームだったでしょう?」
矢矧「ええ」
赤城「でも、大半の子たちが破局してしまったそうよ。かく言う私もその一人だから……仲間がいるわよ、大丈夫」
矢矧「ふふ、そうね……」
叢雲「――♪」
赤城「あら、叢雲さん。上機嫌ですね」
叢雲「赤城に矢矧じゃない。ええそうね、ちょっと今機嫌がいいの」
矢矧「なにかあったの?」
叢雲「恋人ととても上手くやってるのよ。――とても上手く、ね」クスッ
おしまい
昨日の時点では「静」のヤンデレを書きたかった、が
今日は書いてくうちに「動」になってしまった……反省。
お付き合いいただきありがとうございました。
明日あたりからホモスレに戻るでち♂
みなさん乙ありがとうございます。
過去作についてご質問をいくつか受けているようなのでお答えします。
が、好き嫌いがかなり別れる作風なのでご注意ください。
翔鶴「提督……あの、ご相談が」(完結)
翔鶴「提督……あの、ご相談が」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1451178761/)
提督「提督になったら艦娘とイチャイチャできると思ってた」(完結)
提督「提督になったら艦娘とイチャイチャできると思ってた」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1448855326/)
提督「それでも艦娘とイチャイチャしたい!」(現行)
提督「それでも艦娘とイチャイチャしたい!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1452674356/)
それでは
このSSまとめへのコメント
戦慄した
赤城さんでもしかして?となって、叢雲でほぼ確信したけど、やっぱり提督なのね。
翔鶴姉は寝ている提督を襲ったりしたんだろうか・・・。
ほぼ同じ文面でキャラがアイマスのを見たことあるなあ…
※2
想像妊娠だと思われ・・・
怖いわ
え?青葉死んだ?