提督「新薬の効果を試してほしい?」 (410)
このSSを読むにあたって
・初投稿です(真実)
・(文章力)ないです
・(構成力)ないです
・筆の進みが遅いです
・シリアス…?いえ、知らない子ですね
・キャラ安価は取るかもしれないです
暇を持て余した一提督の戯れ事
どうかよろしくお願い致します
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1389233794
不知火「……で、それが例の新薬なんですか?」
提督「ああ」
机の上に置かれた一つの小瓶
総司令部からの命令で艦娘に服用させ、どのような効果が現れたかデータをとれとの事らしい
どのような効果があるのかと問い詰めたが肝心な所はぼかされ強引に置かれていった形で残っている
提督「まあ……そこまで害がある物ではないと思うが」
総司令部の奴らもここまで輝かしい戦果を上げている艦娘達を排除しようとは思わないはず
…いやそういう思考をさせるのが上の狙いなのかもしれないが
奴らの思惑を考えれば考える程頭の中がこんがらがってしまう
不知火「確かに怪しい部分がいくつかありますが、それでも上の命令に従わないわけにはいかないでしょう
提督「そうだな…もし逆らって万が一にでも謀反の意志をとられてしまったら…」
最悪の場合艦娘達の身に何が起きるか…
帽子をとり頭をガシガシと掻く
不知火「結果の提出期限まではまだしばらくあります、決断できないのであれば保留しておくのも一つの手かと」
提督「……そうだな、だがいずれは決めなければならない事だ」
提督「だが……どれだけ悩んでも、どんな考えに至っても」
提督「お前たちに害をなさないような決断にするつもりさ」
不知火「……そうですか」
冷静で、物事を客観的に見ることができる
いつも自分を支えてきてくれた大切な…艦娘だ
そんな自分の自慢の秘書艦、不知火
いつも無表情で物事を淡々と処理する彼女だが、提督のその言葉を聞いた時
少しだけ顔をほころばせていた
提督「……そうして笑うとやはり不知火は可愛いな」
心の中で思ったことがつい口に出てしまった」
不知火「ッ!」
不知火「そのような事を急に言うのは……少し不適切かと思われます」
提督「あっ、あぁすまんすまん!」
彼女の少し紅潮した顔を見て自分まで少し恥ずかしくなってしまう
無意識ながらもこんな言葉がよくすんなりと言えたもんだと自分に感心してしまう
不知火「それで……ひとまずそちらは保留にしておくということでよろしいでしょうか?」
だが、すぐにいつもの無表情に戻るあたり彼女らしいとは思った
提督「うむ、そうしよう」
薬を保管する場所は、他の艦娘達に発見されて興味を持たれても厄介なので提督室の机の引き出しに保管することにした
不知火「ヒトフタマルマル、そろそろ昼食の時間ですね」
提督「もうそんな時間か」
不知火「えぇ、今日はどちらでお食事を?」
提督「そうだな……今日は食堂に行って皆と交流するかな」
不知火「はい、了解致しました」
提督「よしそれでは早速向かうとしようか、昼時だと聞いたら急にお腹が空いてきてしまったよ」
不知火「ふふっ、では急いで行きましょう」
不知火「信頼してますよ……貴方の事」ボソッ
提督「ん?何か言ったか?」
不知火「いえ、何も?」
――彼らはまだ知らない
この薬のせいで起きた事件が後にこの鎮守府の(黒)歴史として語り継がれる事を…
~鎮守府食堂~
提督「うむ……やはり昼時だけあって中々に混んでいるな」
不知火「そうですね…空いている席は…」
提督「飯を食べるも目的の一つだが、交流をするのも大事な目的だな」
提督「ということでどこかに相席したいのだが……」
不知火「なるほど……そうなると……」
北上「ん?おー提督じゃーん、こんなとこに突っ立ってどしたの?」
提督「おお北上か、飯はもう終わったのか?」
北上「んーにゃこれから食券出しに行くとこだよー」
提督「そうか、なら自分達も今から昼食なのだがよければ相席して食べないか?」
北上「んー?そーさねぇ……まっいいんじゃないかな?」
提督「そうか、恩に着る」
北上「またまたかしこまっちゃってー、あたしと提督の仲じゃないかよー気にすんなって!」
提督「う、うむすまんな堅苦しい喋りになってしまって」
北上「ほーらまた堅苦しい喋りになってるぞー」
提督「む、むぅ……」
北上「あははっいやー提督はやっぱりいじり甲斐があるね~」
このように自分を弄って無邪気に笑っている彼女の名前は北上
この鎮守府の戦力としてトップクラスなのだが、それを笠に着る事なく飄々と振舞っている
そのサバサバした性格から友人も多く、時には駆逐艦の子達から色々相談事もされたりするとか
(本人は駆逐艦をうっとうしいと思ってるらしいが、無碍に帰さないで話を聞いてあげる辺り優しい子なんだろう)
こんな感じのやりとりをしていると後ろからなにやら殺気を感じ、慌てて振り返ると
大井「あら~提督じゃないですか~ご機嫌いかが?」
提督「あ、あぁ大井奇遇だな!」
顔は笑ってるけど目が笑ってない
彼女に対面すると冷や汗をかいてしまう
……彼女の名前は大井
北上とよく行動していて、その戦力は北上に引けをとらない実力を持っている
飄々として本音をぶつける北上と対比して彼女はなんというか……その……腹に毒を持っているというか
他の艦娘達と喋ってる時は上手く場を立ちまわっていて、楽しそうに話しているのだが
何故か自分と話す時は露骨に笑顔が笑ってないという現状である
(よく一緒に居る北上に心当たりを聞いてみても「えーわからんなー」と言ってかわされてしまった)
大井「それで提督?北上さんと楽しそうにお話していましたがどんな事を話していたのですか?」
提督「え、えっとそれはだな」
北上「やだなーただ提督を弄って遊んでただけだよ~」
ここで北上の助け舟が出る
大井「……ふーん?そうなんですか~」
つまらなそうに返す
北上「あーそうだ大井っちー、提督がご飯一緒に食べたいんだってー」
大井「え?」
北上「まぁー別にいいよね~人数多い方が楽しいし~」
大井「え、えぇそうですね!」
おい、どういう事だ?と言わんばかりにこちらに視線だけ寄越す
提督「あ、あぁー……よろしくな」
大井「……えぇ、是非」
怖い、怖いよ、二人の食事を邪魔しやがってってオーラが半端ないよ
北上「んじゃー席はとってあるしさっさと食券出してきますかー」
提督「お、おうそうだな!よーしじゃあ何食うか選んでくるよ!」
北上「元気だねーそんなにご飯が好きなのか提督はー」
提督「あ、あぁそうなんだハハハ……」
そして後ろに殺気を感じながら食券を買いにいくのであった
提督「不知火は今日は何食べるんだ?」
不知火「私は日替わり定食を食べようかと」
提督「不知火食堂に来るときいつもそれじゃないか?」
不知火「えぇ、そうですね、考える手間が省けるので」
提督「たまには冒険するのもいいもんだぞ?」
不知火「……その冒険をして前見事に沈没していたのはどこの誰でしたっけね」
提督「うっ」
不知火「ですが……確かにいつも同じ物を頼むのも芸が無いですね」
不知火「では今日はこの……"間宮特製!スペシャルゴーヤランチ"を」
提督「おおう……結構冒険するんだな不知火」
不知火「不知火に何か落ち度でも?」
提督「ないです」
提督「さてじゃあ自分は……ん?この"間宮オススメ!マムシのフルコース!"ってこんなんあったっけ……」
不知火「冒険をするのでは?」
提督「します!」
つい勢いでマムシのフルコースの食券を買ってしまう
そして食券を渡しに行くと
間宮さんが
うわぁ……本当にこれ頼む人が居るなんてと言うような憐れむような表情をしていた
ま、まぁ間宮さんの事だしハズレはないだろう多分……多分
提督「不知火は今日は何食べるんだ?」
不知火「私は日替わり定食を食べようかと」
提督「不知火食堂に来るときいつもそれじゃないか?」
不知火「えぇ、そうですね、考える手間が省けるので」
提督「たまには冒険するのもいいもんだぞ?」
不知火「……その冒険をして前見事に沈没していたのはどこの誰でしたっけね」
提督「うっ」
不知火「ですが……確かにいつも同じ物を頼むのも芸が無いですね」
不知火「では今日はこの……"間宮特製!スペシャルゴーヤランチ"を」
提督「おおう……結構冒険するんだな不知火」
不知火「不知火に何か落ち度でも?」
提督「ないです」
提督「さてじゃあ自分は……ん?この"間宮オススメ!マムシのフルコース!"ってこんなんあったっけ……」
不知火「冒険をするのでは?」
提督「します!」
つい勢いでマムシのフルコースの食券を買ってしまう
そして食券を渡しに行くと
間宮さんが
うわぁ……本当にこれ頼む人が居るなんてと言うような憐れむような表情をしていた
ま、まぁ間宮さんの事だしハズレはないだろう多分……多分
謎連投しました、すいません
できるまで時間がかかるとの事なので番号札を渡され、北上達の席を探す事にした
席を探している途中
暁「あ、提督だ」
電「はわわ!提督さんなのです!」
提督「ん?おお暁と電じゃないか」
この子達は暁と響
第六駆逐隊と呼ばれる四姉妹の長女と末っ子である
暁は長女として一人前のレディーを目指してるようだが、少し背伸びしている所がとても可愛らしい子だ
電は末っ子として守ってあげたくなるような庇護欲オーラが全開で出ている
危なっかしいところを見ると保護してあげたなってしまうのだ……
この子達以外に後次女の響と三女の雷が居るのだが、めずらしく今日は四人ではなく二人で行動してたようだ
提督「お前たちもご飯を今から食べるところか?」
暁「んーん、もう食べ終わったところよ」
電「今日のご飯も美味しかったのです~」
幸せそうに目を細める電
見てるとやっぱり……和むなぁ
だが先に一つだけ言っておく、自分はロリコンではない!断じてだ!
暁「誰に向かって言ってんのよ……」ジトー
電「ろ、ろりこん?ろりこんってなんですか?」
不知火「それは覚えなくていいことです、電さん」
提督「あれ?声に出てた?」
暁「しかも結構でかい声でね……はぁ」
暁「ほら電、響達待たせてるし行くわよ」
電「あ、そうだったのです!提督さんまたなのです!」
提督「うん、またな」
食堂から出て行く二人の後ろ姿を眺めてぽつりと呟く
提督「……まったく、駆逐艦は最高だぜ!」
不知火(本当にこの提督に着いて行っていいんでしょうか)
自分の判断を誤ってしまったかと思う一時であった
そしてまた北上達の席を探していると
準鷹「おお~提督じゃん!よっす!」
飛鷹「こんにちは、提督」
提督「ん、準鷹に飛鷹か」
彼女達は準鷹と飛鷹
共に軽空母であり、一緒に行動している事が多い
ここの鎮守府の貴重な航空戦力でありとても頼りにしている
ポジション的に言えばは準鷹が明るく、ボケの立場 飛鷹がややおとなしめ、そしてツッコミの立場だろうか
凄くよくできた二人組みだと自分は思っている
提督「お前たちも昼食はもう済ませたか?」
準鷹「あ~残念ながらもう食っちまったんだよなー」
準鷹「なんだい提督?もしかしてあたし達美人二人とご飯食べたかったのかい?」
飛鷹「ちょっと準鷹……」
ニヤニヤとしながら聞く準鷹
提督「ああ、そうだな」
準鷹「へっ?」
提督「機会があれば今度は一緒に食べよう、お前たちともっと仲良くなりたいからな」
提督「そうだ、酒を飲むのもいいな、今の時期ならあれとあれで一杯やれば……」
準鷹「え、えーうん、あー、そうだね!テヘヘ……」
飛鷹(提督、躊躇なくこういう事言えるからね……言葉通りの意味が他に無いだけに恐ろしいわ……)
準鷹「あ、あー!んじゃあたし達はこれで行くわ!」
提督「おう、そうか、また今度な」
飛鷹「提督、今度はご一緒しましょうね」
提督「うむ、楽しみにしてるよ」
不知火(意外と……乙女なのですね、メモメモっと)
誤字&名前間違い申し訳ないです
変換で一番上にあったやつはもう信用しません
提督「うーん、やはりこううろうろしていると色々な子達と立ち話してしまうな」
不知火「提督は人気者ですからね」
提督「人気者?自分が?」
不知火「ええ」
提督「はは、それはないよ」
提督「皆上官という立場に義務を感じて話しかけてきてくれるだけだよ、それも嫌な顔一つせずにね」
提督「本当に自分には出来過ぎた子達だと思ってるよ……だから」
提督(絶対にこの子達を守らなきゃいけない、そう決めている)
不知火「……まさか本当に、自覚がないんですか?」
提督「自覚?なんの事だ?」
提督「あぁ、上官という立場を振りかざして無理矢理交流させてると言うことを控えろと言うことか……すまなかったな」
不知火「……」
提督「不知火?」
ガッ!
不知火の手が提督の首根っこを掴んだ
その手は怒りに震えていた
不知火「それ以上……自分の事を卑下したら」
不知火「私は貴方を……許せなくなります」
提督「し、不知火……?」
不知火「……ッ」
バッ!
急に腕を離され、後ろによろめいてしまった
不知火「……申し訳ありません、今のは忘れてください」
提督「不知火……」
不知火「北上さん達を探さないとですね、急ぎましょう」
スッと今まで隣で歩いてくれていた不知火が前に歩いて行ってしまう
その後ろ姿を追いかけている時に自分の何が悪いかを必死で考えていた
……気のせいだろうか、不知火の後ろ姿が怒りより悲しみに満ちているように見えたのは
北上「ん?あ~提督~不知火~こっちだよこっちー」
提督「すまん、待たせたな」
不知火「お待たせいたしました」
北上「いーのいーの気にしないで、それよりさー……」
北上「なんで二人はそんな正反対の顔してんの?」
提督 不知火「……別に?」
北上「おやおや二人とも全く一緒の言葉とはー、仲がいいねぇあんた達も」
提督 不知火「……」
北上「……なんだよ辛気臭い顔してさー、提督が一緒に食べたいって言ったから呼んであげたのに」
北上「そんなんじゃせっかく出来たご飯がまずくなっちゃうよー?」
提督「……あぁ、すまない、もう大丈夫だ」
不知火「ええ、申し訳ありませんでした」
北上「んー……まあちょっとあたしもからかいすぎたかな、めんごめんご」
北上「ところであんた達は何注文したのー?」
不知火「私はゴーヤランチを」
提督「自分はマムシのフルコースを」
北上「辛気臭い顔してなくてもまずそうなご飯だね……」
提督「いや?何事も冒険だぞ?」
北上「あたしはパース、毎日が冒険だってのになんでご飯まで冒険しなきゃいけないんだよー」
提督「ははは、違いない」
提督「それで北上は何食べてるんだ?」
北上「んー?これはね、オマール海老のリゾットだよー」
提督「中々洒落た物を食べてるな」
北上「なになにー?一口欲しいってか?」
提督「いやいや、人の物を奪うまで飢えてはいないさ」
北上「いーや、その顔は食いたいですって顔してんね ほら一口食べてみ!」
提督「うわっちょっ」
提督「んー……!これは美味いな!」
北上「でしょ~?北上様の目に映るものは全て当たりになるのさー」
提督「なるほどやはり北上は凄いな」
北上「おーい言葉がなんか投げやりだぞー」
提督「凄いなー(棒)」
北上「おーいってば!」
きゃっきゃとじゃれあう二人
それはまるで……
不知火(……なんでしょう、この二人を見ていると……)
不知火(胸が……痛い?病気でしょうか……いえ艦娘は病気にならないはず)
不知火(分かりません、先ほども何故あそこまで激昂したのか)
不知火(今日の私は……どうしてしまったんでしょう)
提督「不知火?」
不知火「ッ! 私がどうかしましたか?」
提督「いやすまん、何か落ち込んだような顔をしていてな」
不知火「……いえ特になんでも、辛気臭い顔をしてしまっていたら申し訳ありません」
北上「もうそれはいいってー、どうしたの不知火らしくない」
不知火「そうですね……らしくないです」
提督「……」
提督「そういえば大井はどこに行ったんだ?」
北上「あー今さっき提督達とすれ違いでご飯できたから取りに行ってんだよねー」
提督「そうなのか、それは……」
大井「"よかった"ですか~?提督~?」
提督「お、大井っ、や、やぁ!」
大井「さっき振りですね、また楽しそうにお話してましたけどお邪魔だったかしら?」
提督「そ、そんな事はないぞ!大井が居なくてどこに行ったか気になったから今聞いたんだ!」
大井「……ふーん」
大井「まっいいですけど」
ストンと腰を下ろす
北上「あーそうだ提督いい話してあげよっかー?」
提督「ん?なんだ?」
北上「実はねー大井っちさっきまで提督が中々こないっていってちょっとイライラしてたんだよねー」
大井「!?」
提督「ああ、それはすまなかった二人共食事を早くしたかっただろうに」
北上「……いやまーそういう事じゃないんだけどさー」
大井「き、北上さん?その話はもうやめましょ?ね?」
不知火(……やはりほんとに自覚がないんでしょうね)
書き溜めをとりあえず投下しきったのでちょっと書き溜め作るまで休憩します
遅くなりましたがぼちぼち投下していきます
大井「そ、そうだ!提督は何で私達とご飯を食べたいと思ったんですか!?」
提督「ん? んーそうだなぁ……」
提督(たまたま食堂で一番最初に会ったから……って言うのもなぁ)
北上「提督の事だし一番最初にたまたまあたしに会ったからじゃないの~?」
北上「提督は平等精神maxだからね~」
大井「……そうなんですか?提督?」
提督(また不機嫌な顔に戻ったな……しかし北上、やはり鋭いな)
不知火(大方図星ってところでしょうか)
提督「あー、ゴホン」
提督「確かに北上の言うとおり最初に会ったから、という理由もある」
大井「やっぱり……」
提督「だがな、いくら最初に会ったからって」
提督「そいつらが本当に好きでなかったら自分は勿論他の艦娘達と交流する事にしているよ」
大井 北上「好きっ!?」
提督「自分としてはやっぱり艦娘達全員と仲良くなりたい」
提督「だが、それはあくまで最終段階であって最初っから誰とでも接することができるほど出来た人間でもないのさ自分は」
提督「要するに自分は"お前ら"と話したかった、そんな些細な理由だ。つまらない理由ですまない」
大井「あー、あーはい……」
北上「恐ろしい人だよ本当に提督は……」
不知火(一番飄々としているのは提督かと思われます)
提督「そうだ、大井は結局何を食べる事にしたんだ?」
大井「え!?えーとですね、私はクリームコロッケ定食を……」
大井「そ、そういう提督は何を頼んだんですか!?」
提督「マムシのフルコースだ」
大井「……何をするつもりなんですかね」
提督「何って……冒険かな?(意味深)」
大井「そうですか……不知火さんは何を?」
不知火「私はゴーヤランチを」
大井「二人揃って冒険家ですね……」
ころころ表情が変わる大井は可愛いなぁと心の中で思った提督なのであった
一応コテハン付けておこうと思います
やり方間違ってたらスルーしてあげてください
提督「うむ、うまかったな」
不知火「ええ、そうですね。やはり間宮さんの作る料理にハズレはありません」
不知火「今度からくる時はゴーヤランチしか注文しなくなるかもしれません」
提督「はは、今度は日替わりゴーヤランチか」
北上「いや~……いくら美味しいからって私はそれはパスしますわー」
大井「私もですね」
提督「見た目だけに惑わされるのはよくないぞ?」
提督「大事なのは中身だ!表面だけ見てちゃ分からないさ」
大井 北上 不知火(内面を見ろって、どの口が言えるんですかね……)
心の中で通じあった三人なのであった
不知火愛が溢れて失敗しました、すいません
(黒)歴史が自分にも増えました
提督「よし、では自分はそろそろ行くよ」
北上「ん、そっか」
大井「ではまだ今度、提督」
提督「うむ、またな」
不知火「失礼致します」
そして去っていく提督達
食器に残骸が乗っているのを見た艦娘達に何食ったのー?などと聞かれているようだ
その度に立ち止まってはマムシのフルコースと答えている
それを聞いた艦娘達のリアクションは様々だった
北上「……ああやって、ちょっと歩くだけで色んな人に話しかけられるんだもんね」
大井「ええ、あれは……マムシ効果もあるかもしれませんが」
北上「でも結局は」
大井「……そうですね」
大井(もう少しだけ……素直になれたら)
北上(……いくらサバサバしているって自負してる私でも、腹に貯めといてるものもあるんだよ?)
北上 大井「はぁ……」
二人のため息がシンクロするのであった
不知火「ヒトハチマルマル、そろそろ休憩なさっては?」
提督「うむ、そうするか」
提督「夕飯の時間……にはまだ早いか」
不知火「どうされますか?」
提督「そうだな、そこら辺を歩いてみよう」
不知火「了解致しました」
提督(食堂に行ってから不知火の様子が少しおかしい気がする)
提督(いつも通り仕事はキッチリこなしてくれるのだが……なんというか)
提督(自分でも言ったじゃないか、表面だけでなく内面を見なきゃいけないって)
提督(だが、何が悪かったのか、何をしてしまったのだろうか)
提督(考えれば考える程……)
不知火「提督?」
提督「あっ、あぁすまん」
不知火「お体でも優れないのですか?」
提督「いや、すまん心配させたな」
提督「不知火は自分の事を本当によく見てくれているな、それに比べて自分は……」
不知火「提督」
提督「……すまん、先ほど言われたばかりだったな」
提督「これからは自分も不知火の事をよく見るようにするよ」
不知火「なっ」
提督「ん?」
不知火(この人は……どこまで)
不知火「ほ、ほら早く行きましょう。もたもたしていると夕飯時になってしまいますよ」
提督「そうだな、行こうか」
もう少しだけ素直になれたら
それは皆が心のどこかで必ず思ってること
この薬はそんな人達に
ほんの少しだけ勇気をくれる味方
不知火「マルフタマルマル、……提督?」
不知火「寝てしまわれたのですか……」
ファサッ
机に突っ伏して寝ている提督の背中に毛布をかけてあげる
不知火「艦娘達と交流したい、からって仕事をとにかく片付けるだなんて……」
不知火「この書類なんて……明後日でもいいほどではないですか……」
不知火「……無理をしないでください提督、貴方の代わりは居ないのですから」
不知火(でも私達には、代わりがいる。それもいくらでも)
不知火(私達は……"兵器"なんですから)
提督「んー……ん、不知火」
不知火「提督?」
提督「行かないで……行かないでくれ不知火」
不知火「……」
不知火(どんな夢を見ているんでしょうか)
不知火(確かに私達に代わりは居ます)
不知火(でも……私が居る間は"私"が居てもいいですよね?)
不知火「提督、私はここに居ますよ。」
誰も見ていない場所で、不知火はまた微笑んでいた
不知火「そういえばこの薬……」
手持ち無沙汰になったがまだなんとなく寝付けない
そんな不知火は昼間の出来事を思い出し、この薬をいつの間にか手に持っていた
不知火「これも、仕事ですよね」
不知火「……秘書艦としての務めです」
誰に言うでもなく、一人で呟く不知火
それは自分に言い聞かせていたのだろうか
不知火(大丈夫、私には代わりがいる)
不知火(例え私が死んでも、それでこの薬の真偽が分かるなら……)
なら、と
ゴクッ
少し飲んでみる
不知火「!?…ガハッ!ゴホッゴホッ」
不知火(やはり……毒?)
不知火(体が……熱い)
不知火(それに……酷い眠気が……)
不知火(て…いと…く…す…みま…せ…)
そしてそのまま提督に覆いかぶさるように目を閉じてしまった不知火であった
それが、この愉快な愉快な物語の始まり
チュンチュン……
提督「zzz……ハッ!?」
提督「ああ、いつの間にか寝てしまっていたのか」
提督「……ん?」
不知火「すぅ……すぅ……」
提督「し、不知火?」
そこには自分の肩にもたれるようにして寝ている不知火の姿があった
提督(え?え?一体どんな事が昨日あったんだ?)
提督(駄目だ……寝る前後の記憶が無い……)
提督「こ、これは夢だな!うん!」
提督「夢なら……夢なら」ゴクリ
バンッ!
と勢いよく扉が開かれる
金剛「ヘーイ提督ゥー!朝だ……」
提督「あっ」
金剛「……」
提督「い、いやこれは違うんだ金剛」
金剛「提督……」
金剛「触ってもいいケド、時間と場所をわきまえなヨー!!!!!!」
うわぁぁぁぁんと泣き叫びながら提督室から走り去っていく金剛なのであった
提督「誤解だあああああああああああああああああ!!!」
提督「ああ……おしまいだ、これが青葉に伝わってしまえば……」
あの艦娘と夜の砲撃戦!?
秘書艦に手を出した非道提督の末路!
提督「こんな見出しの新聞が出来てしまう……うわぁぁぁぁ!」
不知火「ムニャ……うるさいですね……」
提督「し、っし不知火!これはだな!」
不知火「あぁ、提督おはようございます」
提督「あ、あぁおはよう。朝の挨拶は大事だな!ってそうじゃなくて!」
不知火「何をそんなに焦っているんですか?」
提督「そそそそそれはその不知火があのそのあの」
不知火「……ああ、こうやって密着している事が原因ですか?」
提督「そうだ!あ、いや、そうじゃない!いや、そうなんだが……」ゴニョゴニョ
不知火「驚かせてしまってすいません、駄目でしたか?」
提督「いや、駄目と言うか……なんというか……」
不知火「ならいいじゃないですか」
不知火「私は提督が"大好き"なのですから」
提督「………………は?」
不知火「提督、愛していますよ」
提督「はああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
榛名「あらお姉さまどうされたんですか……って、えっ!?」
金剛「うえええええええええええええええええええええええん!!!!ハルナァーーーー!!!!」
その日は朝から騒がしかったのであった
提督「ど、どどどどおおどお」
不知火「提督、こっちを見てください」
提督「ひゃ、ひゃいっ!」
あまりの動揺からか、声が裏返ってしまった。そこにいつもの提督の姿はなかった
……いつもの不知火の姿もなかったが
不知火「……」
提督「あのー……?不知火さーん?」
対面して不知火の顔を見る
こうして真近で見ると今まで何度も見てきたのに、まるで別人のような印象を受けてしまった
人形のように整った顔立ち
撫子色に輝く上質な絹のようなショートカットの髪
どこからどう見ても非の打ち所がない――紛れも無い美少女だった
提督(綺麗だ、本当に……)
そんなことを考えている余裕はないのに心のどこかでそう思っていた自分が居た
だがそれも次の言動で全てふっ飛ばされてしまう
不知火「キス、しましょう」
提督「……は?」
不知火「日本語に直すと接吻ですね」
提督「いや、あの」
不知火「ロシア語にするとпоцелуйです」
提督「世界各国のキスの説明はいいよ!キスは分かってるよ!」
不知火「ではさっそく」ズイッ
提督「ちょちょちょちょっと待て!!!」
不知火「不知火に何か落ち度でも?」
提督「いや、そうじゃなくてな、あーいや落ち度があるかもしれないが、いやそーじゃなくて」
不知火「もしかして……提督」
不知火「わたしのこと……きらいですかぁ?」グスッ
提督「へっ?不知火今わたしって……」
不知火「うっうっうううう~~~~……」
不知火「わあああああああああああああん!!!てーとくはわたしのこときらいなんだああああああああ!!!」
提督「ええええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?!??」
本日二度目の提督の絶叫が響く
<ワーワーギャーギャー
加賀「何やら騒がしいですね……」
赤城「それよりご飯食べませんか?」モグモグ
加賀「今食べてるじゃないですか」
赤城「これはおやつです!あ、違いました!非常食です!」モグモグ
加賀「はぁ……」
結局なんとか不知火をあの手この手で宥めて、これは自分だけで手に負える事態ではないと確信し
ミーティングルームに全員招集する旨を放送する事にした
ザーザー…
提督「ごほん、皆おはよう。」
提督「すまないが重大な事件が起きたため、今から迅速に全員ミーティングルームに集合してほしい」
提督「事情はそこで話させてもらう、すまない」
提督「皆を信じているぞ、自分h」不知火「提督öpücükしましょう」提督「それもはや何語だ!?」
<ちょっと待て!そこは!ちょっ
<提督、不知火に何か落ち度でも?
<落ち度だらけだよ!!!
ギャーギャーワーワー
陽炎「し、不知火……?」
黒潮「不知火はん……?」
――こうして不知火を知る人達に波紋が広がったのであった
自分が不知火を宥めてミーティングルームに着く頃にはほぼ全員が集合していた
よほど不知火の言動が気になったのだろう
皆雑談をするでもなく、ピンと張り詰めた緊張の糸が張っていた
事態を重く見てくれたのは不幸中の幸いかもしれない
提督「あー、ゴホン皆よく集まってくれた」
提督「正直に聞いて欲しいまず自分は無実だ」
いきなり自分の弁明に走る辺り、小心者だと思う
だがこれは徹底しなけれb北上「あのさー提督ー」
北上「まずなんで不知火は提督の腕にくっついて離れないの?」
不知火「秘書艦なので」
北上「いやそれ答えになってn」
不知火「秘書艦なので」
北上「……」
提督「……」
<どういう事なんですかあああああああああああああああ提督ぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!
<提督……侮れませんね……
<あの不知火さんを一体どうやって……
<これは、そう、夢ね!夢なのね!
不知火の腕組みを見たのを皮切りに緊張の糸が一瞬ではじけ飛ぶ
それからは艦娘達の聖徳太子でも聞き取れないほどの質問が飛び交ってきた
……全員集めるのはやはり失敗だったかもしれない
――少し時間は遡る
提督「不知火!今放送してるんだって!ちょっと!」
不知火「何も関係ありません、私は自分の本心を吐露しているだけです」
提督「そんなキャラじゃないだろ不知火は!」
不知火「キャラ……?いえ、知らない子ですね」
提督「それ別の人!」
提督(一体何が……一体何が変わってしまったんだ?)
提督(くそっ……考えろ……考えるんだ!)
提督(そうだ、まずは初歩的な事だ)
提督(状況を整理する、つまり、現場を見ること、なにかヒントがあるかもしれない!)
チラッ
←机の上にある小瓶
提督「答え……あったな、はは」
提督「と、いうことでこれが唯一不知火以外に昨夜までと変わっていた事だ」
コトンと小瓶を机に置く
その中身は役四分の一ほど減っていた
怪しげな薬を見たことにより、再び皆に緊張の糸が張り詰める
提督「……これは総司令部からの命令でな」
扶桑「総司令部からの……」
提督「この薬を艦娘達に服用させ、データを取るように言われていたんだ」
提督「……すまない、俺の決断が遅かった」
提督「まさか……こんな事になるなんてな」
提督「はは……俺は提督失格だな」
……沈黙が流れた
龍驤「……んで提督、その薬は一体どんな効能があるんや?」
提督「それが……詳しくは聞かされていないんだ」
提督「恐らくこの不知火の様子を見る辺り……何か洗脳の効果があるのかもしれない」
提督「……上は恐らくこれでお前たちをこの鎮守府に縛り上げるつもりだったんだろう」
提督「そしていずれは……いや、そこまで考えても仕方がないか」
提督「だがこれで上の腹は読めた、俺はもう――」
大井「あの、提督、無理やりシリアス路線に持ってこうとしてますけど」
大井「洗脳って言う割には……」
提督「こら不知火!皆見てるから!ちょっと!」
不知火「不知火に落ち度でも?」
提督「ちょっとおおおおおおおおおおおおお!!!!」
隼鷹(あれどう見ても洗脳じゃないよなぁ……)
飛鷹(だってあれ命令まず聞いてないし、例えもし洗脳であったとしても提督はそんな命令を出さないだろうし)
暁(むしろあれは……)
艦娘達(欲望のままに生きてるような……ハッ!?)
また書き溜め投下し終わったので休憩します
決まった時間に投下できなくて申し訳ないですが、片手間に見る程度にお待ちいただけるとありがたいです
こんな時間ですが結構筆がノリノリで進んだのでぼちぼち投下していきます
やはり艦娘達のじゃれあいを書くのは楽しいですね
――その時艦娘達に電流走るッ……!
榛名(あれを使えば……)
足柄(提督ともっと……)
艦娘達(仲良くなれるのでは……?)
そんな考えが艦娘達の脳裏をよぎった
そして皆が考える中、声を上げたのは意外な子だった
島風「てーとく?ちょっと質問なんだけどー」
提督「どうした島風」
島風「結局その薬はどうするの?」
早いっ……!かつ単刀直入っ……!
これが40ノット以上のスピードっ……!
提督「ん……あぁ、これはもちろん廃棄するつもりさ」
提督「そもそも詳細も無しに渡されたものなんだ。どうやってこの怒りを総司令部に伝えるか悩みどころだよ」
艦娘達(!!!!!!)
愛宕(それはまずいですわね……)
霧島(提督なら言動の通りに実行するかもしれない……いや、するでしょう)
那智(何よりこのままいけば……)
艦娘達(明らかに不知火の一人勝ち……!)
提督(そうか、この表情……やはり皆もこの事態を深刻と捉えているんだな……)←勘違い
提督「では、これは即刻廃棄処分とする。他に何か意見はあるか?」
龍驤「あ、ま、まってや提督」
提督「ん?」
龍驤「そのな、えーと……」
提督「龍驤にしては歯切れが悪いな、どうしたんだ?」
龍驤「えーとえーと…そうだ!」
龍驤「その薬を廃棄せずに何かに有効活用できるか考えんか?」
提督「今そうだって言わなかったか?」
龍驤「言ってへんで?」
提督「……」
加賀「ええ、龍驤の意見は軽空母ながら非常にいい案かと思われます」
龍驤「誰の胸が軽空母やねん!!!」
加賀「そこまでは言ってません」
加賀「ゴホン……提督、上の命令というものはそう簡単に逆らう事はできません」
加賀「その事を重々承知していたから提督は決断が遅くなった。違いますか?」
提督「それはそうだが……しかしもう吹っ切れたよ。これは不知火の弔いでもある」
陽炎「何か死んでるような言い方ね……」
不知火「勝手に殺さないでください提督」ギュー
提督「いててててて!頬を引っ張るな不知火!」
加賀「チッ」
赤城(加賀さん……負けないで!)モグモグ
加賀「……そもそも総司令部はこの薬を使ってデータを取らせることが真の目的では無いのかもしれないのです」
提督「ふむ?」
加賀「この薬の効用によって何らかの事態を艦娘に起こさせ、それに激昂した提督を誘い込み」
加賀「まんまと罠に引っかかった提督を総司令部への謀反の疑いがアリとし、艦娘達の指導権を剥奪し上層部の物にする……」
加賀「これは提督の性格をよく知り、尚且つ従わせる権限がないと成功しない目論見です」
加賀「……このような考えも無きにしも非ずと言うことです」
提督「……ふむ、一理あるな」
加賀「ならばこそ、上層部の思惑を逆手に取り、この薬にどのような効果があるのか……それを研究し」
加賀「もし有効に活用できるのであれば、これを改良していって独自にまた戦力を高めることもできるかもしれません」
加賀「というのが私の考察です、もしよければこの意見も頭に置いていただくと助かります」
翔鶴(……さすが加賀さん)
瑞鶴(言ってることが凄い滅茶苦茶なのに、それっぽい理由になってる……!)
高翌雄(あそこまで総司令部を黒幕に仕立てあげると逆に可哀想になるレベルですね)
すいません無知で申し訳ないのですが
sagaはとこに入れればいいのでしょう?
こんな感じで大丈夫でしょうか?
ルールがよく分かってなくて本当に申し訳ないです
これだけで大丈夫ですかね?
お手数かけてしまってすいません
お詫びと言ってはなんですが続きをぼちぼち投下して行こうと思います
提督「なるほど……加賀の意見は参考になった。ありがとう」
加賀「いえ、お気になさらず」
加賀(……適当に理由並べてみましたけど、提督は優しいですから。私達を疑う事をしませんね)
加賀(少しの罪悪感もありますが……それも全てはあの薬……いえ、提督のため)
赤城(GJです加賀さん)モグモグ
加賀(赤城さん……!物を食べながら直接脳内に……!)
提督「なるほど……そうだ、この件は自分一人で抱えるには荷が重いと思っていて皆を集めたのだったな」
提督「皆に何か意見を貰う……とてもありがたい事だ。自分一人では到底このような思考はできなかったからな」
提督「やはり自分の目に違いはなかった、皆、本当に感謝している」
提督「そして……これからも自分を支えていってほしい」
最上「提督、水くさいじゃないかよ」
提督「え?」
雷「そうよ提督!私達をなんだと思ってるの!?」
提督「お前らは……そうか」
提督「とても信頼できる……"仲間達"だったな」
提督「はは……こんな事も忘れていたのか自分は」
利根「そうじゃぞ提督!吾輩たちををもっと頼るがいい!」
電「電もしっかり提督を支えるのです!小さくたって頑張るのです!」
提督「お前達……」
提督「本当に……いい仲間を持ったよ自分は……」ウルッ
夕立「提督、泣いてるっぽい?」
伊58「なかないでほしいのでちー提督ー」
そして、湿っぽいようなハートフルストーリーが繰り広げられていくのであった……
だが、ここで終わっておけばいい話になるような物を終わらす事が出来ないのは皮肉な話である
提督の次に発した言葉でハートフルはハートフルボッコストーリーへと変化していく
提督「ところで、もし有効活用方法を研究するとしたら誰がやるんだ?」
何気なく放った一言
この一言が艦娘達の導火線に火をつけたのであった
金剛「HEY!テートクゥ!、ここは私に任せるのデース!!」
加賀「ここは譲れません、そもそも意見を出したのは私です。金剛さんは紅茶でも飲んでてください」
龍驤「おい加賀ぁ!意見を最初に出したのはウチやろ!」
加賀「なんの事でしょう」
隼鷹「まーまー落ち着けって皆ー」
隼鷹「ここはおねーさんのあたしがぱぱっと解明してやんよー」
天龍「おねーさんってかおっさん……」ボソッ
隼鷹「なんか言ったか天龍」
天龍「ひぃっ!?な、なななんでもないですぜ隼鷹お姉さま!!」
隼鷹「後で工廠裏な」
天龍「ひぃぃぃぃぃ!!!」
雷「提督、もーっと私を頼っていいのよ!」
雷「提督のためなら私なんでもするわ!」
電「提督さんのために一杯頑張るのです!」
長門「まあ待て、やはりここはビッグ7の私がだな……」
大和「いえ、いくら長門さんには少々荷が重いかと思われます。ここは艦隊決戦の切り札の私が…」
<ギャーギャワーワー
一瞬だった、艦娘達の心で通じあった時間は
それもそのはずである、なにせこの薬を一人占めされたら先ほどの団結が全くの無意味になる
確かに彼女達は嘘偽りなく"仲間"である
だがそれと同時に"ライバル"でもあったのだ
提督「皆……そこまで献身的に……やはり持つべき物は仲間だな!」←一人だけ前の空気から抜け出れてない
この討論は延々と続くのであった
訂正
×大和「いえ、いくら長門さんには少々荷が重いかと思われます。
○大和「いえ、いくら長門さんでも少々荷が重いかと思われます。
他にも沢山訂正箇所ありますがとりあえず最新の物だけ
もっと推敲するようにします
――どれだけ時間が過ぎただろうか
一通りの自己アピールが終わったところで、まとめ役(仮)の加賀が口を開いた
加賀「はぁ……はぁ……分かりました、ならこうしましょう」
加賀「一人占めというのはとても愚かな事です、先ほど提督もおっしゃっていたように私達は団結しなければいけません」
艦娘達(お前が言うな)
加賀「ですが、このように薬には量の限りがあります」
加賀「恐らく……全員に行き渡らせる事は不可能と言ってもいいでしょう」
加賀「なので公平に、ここは古典的ですがくじ引きで決めるとしましょう」
金剛「はぁ……はぁ……仕方がないデース、ここはその案でいきまショウ」
なんとかこの加賀の発言で皆息を整える
加賀「では早速私があみだクジを作りましょう。少々お待ちください」
龍驤「ってちょっと待てや!加賀が作ったら絶対自分が引けるように何か細工をするやろ!」
加賀「そんな事は一航戦の誇りにかけてしません」←くじに爪で見えにくい傷をつけながら
龍驤「一航戦の誇り即堕ち2コマより早く捨てられてるやないか!!!!」
ギャーギャワーワー
と、まぁ、なんやかんやあって結局提督に作ってもらう事になりましたとさ
え、適当になってるって?そんな事はないですよ?
提督「さて……できたぞ」
提督「ほんとは皆やりたければやらせてあげたいんだが……量にも限りがあるしな」
提督「すまないがこういう手法を使わせてもらう。さぁ順番に引いていってくれ」
提督「さぁ誰から引く?誰でもいいぞ?」
シーン……と静まり返る
それもそのはず、ハズレが出た時点で今まで保ってきた希望がパーになるのだ
まずは様子見……そして自分達の当たりの確率を上げる……
狡猾っ……!まさにハイエナっ……!
だがしかしっ……彼女達は重要な事を一つ忘れているっ……!
それはっ……当たりを引かれれば自分達の確率は下がると言うことをっ……!
子供でも分かることっ……!初歩的なミスっ…!そして盲点っ……!
雪風「では司令官、雪風がここは一番に引いてみたいと思います!」
提督「おお雪風か、うむ、どれにする?」
雪風「んーとですねー……じゃあこれっ!」スッ
雪風「あれ、司令官ー!なんかこれ先っぽが赤いですよ!!」
雪風「これってなんですか?」
艦娘達(!!!!!!!!!!!!!!!)
提督「ああ、それが当たりだ」
雪風「雪風当たりですか!!幸運の女神のキスを感じちゃいます!」
これを皮切りに静まり返った場は一気に動き出す
提督は群がってきたハイエナ達にもみくちゃにされつつも
"仲間達の熱い思い"を胸に(提督とは別のベクトル)最後まで笑顔を絶やさなかったと言う……
当たりは後九本……誰が引くかは神のみぞ知る
五分ほどで完売したあみだクジ
引いてすぐに確かめる者、下の部分を抑えてゆっくりゆっくりと結果を確かめる者、引いても確認せずに周りをキョロキョロしている者、……あみだクジを食べる者
艦娘達の性格がよく出ている、と思った
そしてその結果に阿鼻叫喚する者、そして、狂喜乱舞する者、それもまた様々だった
提督「よし、皆引き終わったな」
提督「すまないが確認するのに全員に提出させるのは骨が折れる、それに、まだ結果を見ていない者も居るようだからな」
提督「なのですまないが、当たりだった者は後ほどくじを持って提督室まで来てくれ、手間をかけさせてすまないな」
提督「それでは皆、解散!」
そして提督が去っていく
……腕に不知火を張り付けたまま
<不知火!歩きにくいって!
<私はそんな事ありません
<いやだって不知火さん歩こうとしてないし!
――後ろでの地獄絵図はまだしばらく終わりそうになかった
ひとまずまた書き溜め放出したのでちょっとおでん作ってきます
書き溜めができたらまたふらっと投下します。
なんてことだせっかく前の文章をくじ引きにしたのに後の方を変えてなかった……
五分程で完売したあみだクジってなんだよ(哲学)
申し訳ないですが脳内補完でお願いします
ちなみにくじ引きは木の棒でやるあれと思ってくれればうれしいです
あれ……見なおしたら前の文章もあみだクジになってた……
すいません許してください!何でもしますから!
なんだこいつら!?(驚愕)
続き短いですが投下していきます
提督「ふぅ……」
提督室に戻ってきたが、不知火の様子は変わることはない
自分の腕にしがみついたままである
提督「あの……不知火」
不知火「なんでしょうか」
提督「腕にくっつかれてると仕事ができないんだが」
不知火「ならしなければいいんじゃないですか?」
提督「自分一応提督だから!ね!?」
不知火「……ですが不知火は知ってますよ」
不知火「あなたが艦娘と交流したいが為に、積まれた仕事は即こなしている事」
不知火「そして私も艦娘……あとは分かりますね?」
提督「……ははっ、不知火には敵わないな」
提督(そうだな、例えいつもと違う不知火だって、それもまた不知火じゃないか)
提督(内面を見れていない、結局自分は表面だけしか見れていない)
提督(自分の言動に自分が当てはまってない……これでは上に立つ者として失格だろう)
提督「ふぅ……」
不知火「て・い・と・く?」
提督「ほわぁっ!?」
自分自身が情けないとうつむいていると、いつの間にか目の前には不知火の整った顔立ちがあった
提督(近い……だから近いって!)
不知火「不知火が提督が今考えていた事を当ててあげます」
提督「へ?」
不知火「てーい」
ガッ!
提督「ごふぇっ!?」
力なく振りぬいた不知火の拳が提督の顔に突き刺さる
突然の事に提督は反応できず、間の抜けた声を出し、そのまま椅子からずり落ちてしまった
不知火「解答+罪の執行です、一石二鳥ですね」
提督「あぁ……とっても効率がいいな」
提督(見透かされている)
提督「すまんな、これはもはや自分の癖になってしまっているようだ」
不知火「そうなんですか」
提督「あぁ」
不知火「なら頭を撫でてください」
提督「へ?」
またも間の抜けた声を出してしまう
不知火「二回も言わせるんですか?」
提督「す、すまん」
不知火「謝る前に、行動で示してください」
提督「……」ナデナデ
不知火「~♪」
さっきまで不機嫌そうな顔していた不知火の顔がみるみる撫でられている猫のような顔になっていく
不知火「あー……提督はとってもテクニシャンですね、不知火は感動しました」
提督「……そうか」ナデナデ
――今までの日常から見ると、これはとっても異質な光景かもしれない
けど、今までの日常でも起こり得たかもしれない日常
きっかけはなんだったんだろう?
薬のおかげ?それとも……?
不知火「不知火は満足しま……せん!!!」
提督「満足しないのか……」
不知火「えぇ、この程度で不知火を沈ませられると思ったのですか?こんなもんじゃ陽炎型二番艦駆逐艦位しか満足しないですよ」
提督「いや、まぁうん、ツッコミの人がボケに回ると辛いってのが分かったよ」
人間とは恐ろしく順応性が高い生き物である
朝にあれほど異質に感じた不知火に次第に慣れてきた自分が居た
……いや、これもれっきとした"不知火"なのだ、別人なんかじゃない
不知火「ええ、つっこむのは中々大変でしょう?……って誰がボケやねん!!!」
提督(やっぱり別人かもしれない)
こんなやりとりを続けていると、扉をノックする音が聞こえた
提督「鍵は開いてるぞ、入ってきてくれ」
バタンッ
雪風「失礼します司令!雪風、只今到着致しました!」
提督「おう雪風か、お前がくじ引きの当たりの訪問者の一人目だよ」
雪風「そうなんですか?くじ引きも一番に当たりを引けましたし、何か運命を感じちゃいます!」
提督「はは、幸運艦の名は伊達じゃないみたいだな」
雪風「てへへ……そんなに褒められると雪風照れちゃいます!」モジモジ
提督(雪風は可愛いなぁ)
不知火「てーい」ガッ
提督「どぼふっ!?」
不知火「罪の執行です」
提督「いやいや不知火さんそれもうノールックで地獄に送り出す閻魔様並みの横暴さだよそれは」
不知火「ここでは不知火がルールです」
提督「いやここ自分の部屋ね」
雪風「あははっ、二人とも面白いです!」
雪風「それで司令!早速……と言いたいんですが」
雪風「じ、実はですね。雪風あんまりお話聞いてなくって……どんな事をするのか分からないまま当たりを引いちゃったところもあるんです」
提督「ふむ、話を聞かなかったのはあまり感心しないな。だが雪風が人の話を聞かないなんて珍しい、何かあったのか?」
雪風「え、えーとえーとそれは口止めされてて……あの、その」
提督「言ってくれたらこれをやろう」スッ
雪風「わぁ……こんなに沢山のお菓子……!!」キラキラキラ
提督「どうする?」
雪風「言います!」
提督(……子供の口に戸は立てられんのさ)
提督「それで?どんな事があったんだ?」
雪風「それはですね司令ー、実は雪風は……」
コンコン
実に間が悪いタイミングでノックの音がした
提督「鍵は開いてるぞ、入ってくれ」
キィ…
加賀「提督、失礼します」
提督「おお、加賀か。くじが当たりだったか?」
加賀「ええ、やりました」スッ
提督「そうか……加賀が当たりだったか」
加賀「……残念でしたか?」
提督「いや、真逆だよ。自分は他の子達には申し訳ないが、あれだけ貴重な意見を出してくれた加賀には当たりを引いてほしいと思っていた」
提督「加賀のいつも冷静なところには助けられているよ、ありがとう」
加賀「……ありがとうございます」
不知火(……提督は気づいてないかもしれないですが)
不知火(不知火はわずかに加賀さんの口角が上がっていることを見逃しません)
提督「それで雪風?一体何があったんだ?」
雪風「え!?え、えーとえーとですね……」ダラダラダラ
加賀「あら、雪風じゃない。あなたも来ていたのね」
雪風「か、加賀さん!こんにちはです!」ダラダラダラ
加賀「どうしたの雪風?何か司令に言うことがあったんじゃないの?」ズイッ
雪風「い、いや、あの……」
雪風「し、司令っ!ごめんなさいっ!」ダッ
提督「雪風!?ちょっ」
雪風「ごめんなさあああああああああああああいっ!」ダダダダダダダ……
提督「……行ってしまったな」
加賀「どうしたんでしょうか?ひどく焦っているようでしたが」←原因
提督「さぁ……?」
不知火(冷静というより、結構……)
不知火(……?こっちを見ている)
加賀(……負けませんから)
不知火(……なるほどね、加賀さん)
不知火(いいでしょう、不知火の相手にはふさわしいです)
提督(なんか空気が重い……いやっ熱い!なんか熱い!?)
不知火と加賀の視線での刺し合いに、火花が散っていた(比喩表現無し)
書き溜め放出したのでまた休憩します。こいついつも休憩してんな
不知火は司令なんだよなぁ…
気にしてるの自分だけかもしれないけど
④
>>87
本当だ……司令でしたね
まあ二次創作と言うことで……でも自分の中で提督と呼んだ方がしっくり来てました(公式に逆らう屑)
他にも第六駆逐隊の皆も司令官呼びだね
>>89
マジですか……
一旦全てをリセットして提督の呼び方や一人称を学習してから書きたくなってきました
ですがどうにかこの話は終わりまで持って行きたいので、提督の呼び方はキャラ愛で補完していただくと助かります
本当に申し訳ありません
色々な励ましの言葉ありがとうございます。提督の呼び名はいきなり変えても違和感が残るので登場させたキャラはひとまずこれで通させていただきます。ご了承ください
加賀「さて……これが例の薬ですか」
提督「あぁ、だが、自分はこの薬を服用している所は見たことがない」
提督「不知火がこうなったのも本当は薬のせいではないのかもしれない」
不知火「こんなんってどんなんですか提督」ギュー
提督「いだだだだだだだ!腕の皮を引っ張るな不知火!」
提督「いてて……だが、それでもお前はこれを飲むのか?」
加賀「……ふふっ、飲むのは自己責任で、何が起こっても関与しないと言う保身ですか?」
提督「いや、そんなことは」
加賀「冗談ですよ、提督はそんな人じゃないって分かってます。からかってみただけです」
提督「……そうか」
提督(この子達の目に自分は……どう写っているんだろうな)
加賀「それでは」
提督「あぁ」
加賀「すぅー……」
大きく深呼吸をした後
ゴクッ
若干の躊躇いを見せたが、彼女の手は止まらなかった
飲んだ瞬間、まるで時が止まったかのように、彼女は微動だにしなかった
だが、一分もすれば薬の"効用"は現れた
加賀「!?…ガハッ…!?」
提督「加賀!?」ダッ
後ろにのけぞり、バランスが保てなくなった彼女を支えるために
提督の体は理屈などではない、反射で体が動いていた
提督「加賀!?大丈夫か!?」ダキッ
加賀「てい…と…く」
提督「加賀!しっかりしろっ!加賀!!!」
ゆさゆさと彼女の体を揺さぶっても、彼女の口からは言葉の代わりに息が漏れていくばかり
泣きそうな顔の提督、それを見て微笑みながら瞼を閉じていく彼女は、とても儚く見えた
加賀「……」ガクッ
そして瞼が完全に閉じると同時に、彼女は息を……
不知火「寝てますね」
提督「……」
不知火「加賀!しっかりしろっ!加賀!!!」
提督「やめて!!!!!」
このまま自分がずっと抱きかかえてる訳にもいかないので、ひとまず自分が使っているベッドに彼女を横にする事にした
提督「よっ……と」ヒョイ
提督「軽いんだな……加賀は」
提督「……すまんなこんなむさ苦しい男のベッドで。我慢してくれ」スッ
ベッドに彼女を横たわらせてあげると、安心したかのように安らかな寝息になっていった
加賀「すぅ…すぅ…」
提督(……こんな風に隙を見せまくりの加賀を見るのははじめてだな)
提督(何故だろう、悪戯してたくなってきた)ウズウズ
提督(いやいや、いかんだろう。あんなに真剣だった加賀にそんな事をするなんて)ブンブン
提督(だがこんな無防備の加賀を見れるなんて一生にあるかないか……)
提督(……ちょ、ちょっとだけなら)ソー
ぷにっ
寝ている彼女の頬を指で突いてみた
提督(や、柔らかい……)プニプニ
加賀「う、うぅん……」ゴロン
当たる指がくすぐったいのか、逃げるように寝返りをうつ加賀
触られたところが痒いのか、彼女は頬を掻いていた
提督(これは……可愛い!)
提督(も、もう少しだけ)ソー
ガッ
不知火「提督?」ギリギリギリギリ
提督「不知火さん!それはやばい!だって指が明後日の方向向いてるもん!!!!」
提督「ああああああああああああああああああああああやばいやばいやばいってそれ!!!」
ポキッ
※音声と全く関係ないですがポッキーの日というものがあるのを最近知りました
提督室から本日何度目になるか分からない悲痛な叫びが廊下にこだましていくのであった
酒が入って筆がのらなくなってしまったのでまた夜中に来ます
小出しですいません
お酒の力には勝てなかったよ……
続き小出しに投下していきます
不知火「申し訳ありません提督、ちょっとやりすぎました」
包帯を巻きながらぽつりと不知火はつぶやいた
提督「いや、あれは自分が調子に乗りすぎていた。提督たる者、このような出来事には対処できるようにならんとな」
痛みに必死に耐えつつ冷静を装う提督
不知火「一体どっちが薬が必要なんだか」ボソッ
提督「ん?」
不知火「なんでもないですよ」クルクル
不知火「はい、おしまいです」ポンポン
提督「いててて!」
不知火「で」
提督「で?」
不知火「不知火にはいつお姫様抱っこをしてくれるのですか?」
提督「えっ」
不知火「不知火にはいつお姫様抱っこをしてくれるのですか?」←横に寝転びながら
提督「いやあれは本当に緊急時だったから咄嗟にな……」
不知火「なるほど、緊急時ならばokという訳ですね」
提督「いやそういう事でもないんだが……」
不知火「少々お待ちを」スッ
どこに入れていたのか、バナナの皮をおもむろに取り出し、床に無造作に置いた
不知火「これでよしっと」
不知火「では」トコトコ
ぐっと不知火がバナナの皮を踏んだ瞬間、擬音でよく使われるツルッという音と同時に足をとられ、床に尻もちをついてしまった
不知火「あーーーーーそうですね、これは痛い」チラ
不知火「っべーわこれまじっべーわ」チラチラ
露骨っ……!いやこれは最早その域を超えているっ……!
――だがそれでも提督は
提督「大丈夫か?不知火」ヒョイ
不知火「あ……」
提督「不知火もこんなに軽いんだな」
提督(触ったら、壊れてしまいそうなくらい)
不知火「提督、首に手を回してもいいですか?」
提督「あぁ、いいぞ」
不知火「提督、もっと強く抱きしめもらってもいいですか?」
提督「いいぞ」ギュッ
不知火「提督、……提督の胸を借りてもいいですか?」
提督「……」
……不知火の目には、いつの間にか涙が溜まっていた
その涙のダムは今にも決壊しそうに、灰色の瞳の中で揺れている
提督「……あぁ、こんな自分の胸でよかったら、いくらでも貸してやるさ」
不知火「そうですか、……では遠慮無く」
不知火「うっ……うぇぇ……うぇぇぇぇぇぇん」
わんわんと泣きじゃくる不知火、そこに居たのはいつもの強くて、冷静な秘書艦の彼女ではない
そこに居たのは子供らしく、素直に自分の本心を言葉に出し、嫉妬する。だが、それでいて紛れも無い"不知火"なのであった
彼女はいつまでも泣いた。一度決壊したダムは、止められる場所なんてない
ただただ水が無くなるのを待つだけ
――いつからだろうか、不知火が子供らしさを捨て、強くなろうと思ったのは
――いつからだろうか、提督が彼女を強くて冷静で、自慢の秘書艦と頼りきってしまっていたのは
二つの歯車はいつまでも噛みあわず、嫌な音を出しながら廻ってるように見えただけ
……けど
ほんの一つのきっかけで、ほんの一つの部品を組み込んであげるだけで
歯車はまた噛み合うかもしれない
複雑そうに見えた歯車は、意外と雑に出来ていた
不知火「ありがとうございます提督。おかげで提督分が存分に補給できました」
提督「いや、提督分ってなんですか不知火さん」
不知火「そうですね……提督とハグ一分で1P程貯まる機能になっております」
不知火「さきほどのお姫様抱っこではボーナスポイントがつきましたので、さしずめ+1000Pと言ったところでしょうか」
提督「すごい溜まったな!ちなみに提督分が枯渇するとどうなるんだ?」
不知火「自我を保てなくなり、狂戦士と化します」
提督「物騒だな!」
不知火「ちなみに提督分は一分で1P程減っていきます。ご了承ください」
提督「ハグ±0になってるよ!?ずっと抱きしめてろって事!?」
不知火「言わせんなよ恥ずかしい」ガッ
提督「ごふっ!鳩尾は駄目だって不知火さん……」
こんなやりとりを続けていると
加賀「んん……はっ!?」
ベッドから落ちそうな勢いで、加賀が飛び起きた
加賀「あれ……ここは」キョロキョロ
若干呼吸も乱れているようだ、まだ薬の作用があるのかもしれない
提督「目が覚めたか?加賀」
加賀「こ……こは」
キョロキョロと辺りを見回していた彼女の目が提督を捉えた瞬間、時が止まったかのように静止した
そして次の瞬間
加賀「て、提督ぅーーーーーーーー!!!!!」バッ
一瞬だった
彼女がベットから飛び跳ね、提督の胸目掛けて突進していたのは
まるで某格闘ゲームの相撲キャラの技の如く
提督「おぼぉっ!?」
弾丸の如く飛んできた彼女を支えきれず二人とも後ろに倒れこんでしまう
だがその衝撃を吹っ飛ばす衝撃がさらに襲う
加賀「提督!提督はここに……ここに居ますよね!?」
提督「え、あ、あぁ」
加賀「なら…居る証拠を確かめさせてください」
提督「へっ」
加賀「提督、んっ」チュッ
提督「!?!?!?!?!?!?!?」
不知火「……」ピキッ
――愉快な物語は小さな渦を次々と巻き込み、大きな渦になっていく
お昼ご飯食べてきます
――怖い夢を見た
私は映画を見ている
シーンはヒロインが大切な人を失う場面
ヒロインを庇い、大切な人が倒れる
別れの言葉は、すまない、守れなくて
ありきたりな言葉だった
ヒロインは必死に泣きながら大切な人に声をかける。でも、届かなくて
瞼が閉じていく。そして暗転
よくある構成だ
それなのに私は涙が止まらなくて
映画のスタッフロールが流れる
ヒロインの名前は、私だった
………
……
…
一瞬何が起きたか分からなかった
だが、理解するのも一瞬であった
提督「~~~~っ、ぷはっ!」バッ
加賀「んっ……」
提督「かかかかかかかが?」
加賀「提督、何で逃げるんですか?」ズイッ
提督「は、ひ、い、いやだっていま、き」
加賀「キスしました」
不知火「……」ピキッピキッ
提督「え、え、なんで?」
加賀「したかったからです」
提督「う、うん え?」
加賀「よく分かりませんでしたか?ならもう一度」ズイッ
提督「待て!加賀!Wait!」
加賀「待てません……あら?」
加賀「不知火さん、御機嫌よう。調子はいかが?」
提督「っしらぬい!これ……は……」
不知火「……」
不知火の後ろに、鬼が見えた
比喩なんかじゃない、本当に見えてる
……比喩であってほしかった
不知火「そうそう提督、一つ不知火が言い忘れていた事がありました」
提督「な、なんでしょう」
不知火「提督分は、提督が誰かといちゃついてるのを不知火が見ると」
不知火「問答無用で-1000Pになってしまいますので、あしからず」
とても、冷たい声だった
不知火「――ふっ!」
提督「くっ」サッ
冷徹な声、それに見合った残酷に振り下ろされる拳の速度
無駄だと知っているが、それでも反射で防御の構えをとってしまう
ガッ!
鈍い音が響いた
……しかし、不知火の拳が提督に届くことはなかった
不知火「……何の真似ですか」
加賀「何の真似かとは、此方のセリフです。今貴女は何をしようとしていましたか?」
不知火「……そこをどいてください」
加賀「どきません、質問に答えてください」
提督「加賀……」
提督を庇ったのは、紛れも無く彼女だった
不知火「……どけって……!」
不知火「言ってんだろうがぁ!!!!!!」
加賀「どきません」
二人は睨み合う、どちらも一歩も引いていない
それからしばらく無言の攻防が続いた
先に口を開いたのは、加賀だった
加賀「貴女は何故、提督を殴ろうとしているのですか?」
不知火「決まっているでしょう。不埒な真似をしている者を粛清しようとしているだけです」
加賀「その理論だと私も粛清する、という事を言ってると解釈してもよろしいでしょうか」
不知火「ええ、そうなりますね」
加賀「なら、何故貴女は"私"を最初に狙わなかったのですか?」
不知火「……っ!」
加賀「艦娘の貴女が本気を出して殴れば人間の提督がどうなるか考えなくても分かるでしょう」
加賀「貴女はそれを知りつつ、行動を起こした。それは最早提督を守る秘書艦として失格の行為です」
不知火「それは……」
言葉の殴り合い、それによって加賀が徐々に押していく
加賀「いいですか、私達は――」
提督「不知火!加賀!頼む!もうやめてくれ!!」
加賀「……提督」
不知火「くっ……!」
その言葉を聞き、両方共後ろに一歩下がり、お互いが距離をとる
提督「こんな……こんな」
提督「俺は、お前たちが争うのをこれ以上見たくない……」
提督「はは……いつも戦争にお前たちを送り出している自分には口が裂けても言えないセリフだな」
提督「すまない、自分勝手な事を言って」
加賀「……」
不知火「……」
不知火「すみません、提督、少々頭を冷やしてきます」
提督「……不知火」
不知火「それでは」
バタン
……扉を閉めただけなのに、いやに重い音だった。その音は静かな部屋にやけに響いていた
加賀「提督、お怪我はありませんか?」
提督「いや、大丈夫だ。ありがとう」
提督「それよりも……加賀は何故あんな事を」
加賀「……提督、それは言わなければいけない事ですか?」
加賀「愛する人を求める、それはいけない事なのでしょうか」
加賀「確かに私達は"兵器"です。ですが、それは人を愛してはならない理由になりません」
加賀「誰かを愛し、愛する者と共に生き、愛する者と死にたい。万物の理想の形だと私は思っています」
提督「加賀……」
加賀「もし気分を害してしまったなら、どうかこの私をお叱りください」
加賀「今の私はどこかおかしいのかもしれません」
加賀「例えそれが薬のせいだとしても、私は私です」
加賀「ですから」
加賀「……そんなに悲しい顔をしないでください」
――窓の外で、しとしとと雨が降り始めていた
夕ごはん食べてきます
まぁ確かに嫉妬に駆られて真っ先に男に殴りかかるのはおかしいわなw
現実では例え男から手を出しても女は真っ先に女を責めるらしいが
>>115
ハーレム物のラノベで幾度となく見てきたシチュだな
>>115
確かに男を真っ先に殴ろうとするのはおかしいですね
何故なのか解明できればいいのですが(一級無茶フラグ建築士)
>>116
ハーレム物が書きたいのにまだあんまりかけてなくてもやもやで爆発しそうです
夕張ちゃんは出ますか?(希望)
>>120
実はまだ加賀、雪風、不知火以外に薬飲ませるキャラまだ練ってません
皆さんの意見を参考にさせていただく事もあると思います
昨日の夜から全然続きが書けてません
雪かきしながら考えてくるのでこんなSS見てくださっている方居ましたらもう少しだけお待ちください……orz
乙ー
金剛あたりに飲ませたらどうなるんだろう
追加ボイス聞いてから長門が見たくなった
お待たせいたしました、続き投下していきます
>>124
金剛ですか……
ラブコメ系だと王道を征きますよね、考えてみます
>>125
長門ですね、彼女は最近になってようやくE-2でお迎えできたので、結構感慨深い人です
是非、考えさせていただきますね
提督「……不知火を探してくる」
加賀「なら私も付き添います。もしも今度貴方に危害を及ぼすようでしたら……」
提督「加賀」
加賀「……いえ、なんでもありません」
提督「ごめんな」
加賀「いえ、少々出過ぎた真似をしてしまいました」
提督「……それじゃ、行ってくるよ」
加賀「ええ、お気をつけて」
――行かないで
小さく呟いた言葉は、閉じられた扉に遮られてしまった
加賀「不知火さん、私は羨ましいです」
加賀「今の貴女は自分の本心を存分にさらけ出している」
加賀「そして、それに応えてくれる人が居る」
加賀「正直に言います、私は嫉妬しています。貴女に」
加賀「ですが……」
加賀「譲れない事だって、あります」
加賀「……今だけは貴女に分がある、と認識してあげましょう」
加賀「……」
一人取り残された部屋で、自分に言い聞かせていた
提督「……こんなところに居たのか、不知火」
提督「ここに居たら、風邪を引くぞ?」
不知火「……」
しとしとと雨が降る中、彼女は小さく塞ぎこむように座っていた
提督「……」
不知火「……」
二人の間に紡がれる言葉は無い
鳴る音は、ただただ雨が床を叩いていく音だけ
不知火「ごめんなさい」
提督「……」
不知火「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
まるで壊れたラジオのように同じ言葉を繰り返す不知火
塞ぎこんでいるせいで、表情は見えない
しかしその声は、震えていた
不知火「不知火は秘書艦失格です、加賀さんの言うとおりです」
不知火「自分の感情だけに動かされ、自分を抑制することができませんでした」
不知火「不知火は欠陥品です」
不知火「そして……どうしようもなく子供です」
不知火「もう捨てたはずだったのに……」
不知火「使えなくなった機械は廃棄するべきです、でも――」
不知火「……捨てないで」
不知火「もう……"私"を……捨てないで……」
提督の目を見て、そう言った
その顔は、雨のせいなのか、涙のせいなのか分からない位くしゃくしゃになっていた
提督「……あぁ、不知火は確かに"子供"だ」
不知火「あ……」
不知火の顔に絶望が満ちる
まるで一切の希望を打ち砕かれたかのように
不知火「そう……ですよね」
不知火「あは……そうでした……私は……」
提督「けどな、不知火が"子供"だとしたら」
提督「俺は大がつく"馬鹿野郎"だよ」
不知火「え……?」
提督「お前を、俺は全く理解してなかった」
提督「甘えきっていたんだ、"子供"の不知火に」
提督「"大人"であるべきはずの自分がな」
提督「そんな奴が、誰を責められるんだ?」
提督「一体、どっちが子供なんだ?」
提督「やっと分かったよ、ここまできてな」
提督「すまなかった、不知火」
提督「遅すぎるかもしれないが、自分には謝る事しかできないんだ」
提督「すまない……」
不知火「……うっ」
不知火「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
不知火は、提督の胸に飛び込んだ
そして、提督はそれを抱きしめる
――強く、強く抱きしめた
不知火「不知火は……寂しかった」
提督「……」
不知火「不知火は……もっと自分を見て欲しかった」
不知火「やめたかった……自分を偽るのはもう」
不知火「でも、それで今の関係が壊れるのが怖かった」
不知火「捨てられたくなかった、だから……」
不知火「けど、あの薬を飲んでから」
不知火「不知火の心の枷はどこかに行ってしまったようでした」
不知火「こうしたかった、人の目を気にせず、"自分"の目を気にせず」
不知火「子供のように怒りたかった、泣きたかった、素直に物を言いたかった」
不知火「そして……」
不知火「このように、たくさん、甘えたかった」
提督は、不知火の言葉一つ一つに頷き、その返答かといわんばかりに、不知火の頭を優しく撫でていた
不知火「……今からでも、できるでしょうか」
不知火「望んでも、いいことなんでしょうか」
不知火「夢にまで見た自分に、なってもいいのでしょうか」
提督「……あぁ、なんたって不知火は」
"子供"なんだから
――雨はいつしか、止んでいた
加賀「……おかえりなさい提督。そして……不知火さん」
提督「ただいま、加賀」
不知火「……」
不知火「加賀さん」
加賀「……なんでしょう、不知火さん」
無機質な声だった、まるで相手を見定めるような
不知火「申し訳ありませんでした」
深々と、頭を下げる
不知火「先程までの不知火は頭に血が登っており、加賀さんの言うとおり秘書艦失格でした」
不知火「提督に手を上げたことは、どれだけ謝っても償いきれない事だと思います」
不知火「……ですが」
不知火「提督に、本当の"私"、不知火を知ってもらって、また、不知火も提督を知れました」
不知火「そして、それを受け入れた」
不知火「それら全てを踏まえた上で、不知火は罪を背負い続けて、秘書艦をまだ続けていこうと思います」
加賀「……」
不知火「加賀さんからどんな言葉をいただいても、どんな事をされても」
不知火「私は続ける、そう決めました」
不知火「――だって、ここが不知火の居場所なんですから」
加賀「……そうですか」
加賀「吹っ切れたようですね」
不知火の言葉を聞いて、あの加賀が
にっこりと、笑った
加賀「もし、貴女が秘書艦をやめるなどと言い出しましたら、私はこの場で貴女を処理していました」
加賀「けど、貴女は罪を背負い、そしてやり続けると言った」
加賀「それについてはもう私からは何も言うこともありません」
加賀「ですが、その道は辛く険しいものになるでしょう」
加賀「一度落とした信頼を回復するのはそれほど難しいということです」
加賀「それでも貴女は、やり続けるのですね?」
不知火「はい、どんなに辛くてもやり通してみます」
加賀「いい返事です……"不知火"」
その声は、まるで相手を包み込むような優しい声だった
加賀(それでこそ、私のライバルです)
加賀「……分かりました、今日のところは私は去りましょう。ですが」
不知火「はい」
加賀「恋の勝負は、それとは別です」
不知火 提督「っな!?」
加賀「貴女には負けません。それでは」
不知火「ちょ、ちょっと、加賀さん!」
提督「か、加賀!」
聞く耳もたず、と言ったようにバタンと扉が閉じられる
波瀾万丈な一日が、ようやく終わりを告げようとしていた
不知火(まぁ、簡単に引き下ってくれる方だとは思っていませんでしたが)
不知火(まさかあそこまで直球で言ってくるとは……)
不知火(……ですが)
不知火(不知火は……負けません!)
提督「ひとまず、一件落着か?」
不知火「えぇ、そういったところでしょうか」
提督「なら不知火はお風呂に入ってくるといい、あんだけ濡れたんだ。本当に風邪を引いてしまうぞ」
不知火「……艦娘は病気になりませんが、そのお心遣いは感謝致します」
不知火「ではお言葉に甘えて」
バタンと扉が閉められる
そうすると、つい先程までの喧騒が嘘のように静まり返った
提督「……ふぅ」
提督「自分も風呂に入って寝るとするか……」
提督の風呂は流石に女の子しか居ない艦娘達の風呂と一緒にする訳にはいかないので、自室に備え付きの風呂がある
チャポン……
提督「あぁ……いい湯だ……」
提督「今日は流石に疲れたな」
提督「だが」
提督「色んな事が、知れた」
提督「それだけで+1000P……だな、はは」
風呂場で一人で笑う提督は、傍から見ると変だった
提督「ふぅ……」
提督「あー寝よ寝よ、仕事は明日だ」
電気を消し、もそもそとベッドに入る
提督「おやすみ……」
不知火「はい、おやすみなさい、提督」
提督「……」
不知火「……」
がばっ、と起きる
そして電気を付ける
提督「……不知火さん?あの、ここ自分のベッドなんですが」
不知火「ええ、知っています」
提督「じゃああの、不知火さんは不知火さんのベッドで寝て欲しいかな~なんて……」
不知火「不知火は子供なので、提督が添い寝してくれないと寝れません」
提督「……」
不知火「駄目……ですか?」←上目遣い
提督「……うっ」
提督「はぁ、分かったよ……今日だけだからな?」
不知火「やったぁ!」
子供のようにはしゃぐ不知火
その顔はまるで新しいおもちゃを買い与えられた子供のようだった
提督「……全く、不知火には敵わんな」
不知火「ええ、子供とは意地が悪いものなのです。一筋縄ではいきません」
提督「自分で言うか」
不知火「ふふっ、素直ですから」
提督「まったく……ほら、電気消すぞ」
パチン、ともう一度電気が消される
提督「じゃあ、おやすみ不知火」
不知火「えぇ、おやすみなさい提督」
そして、眠りに落ちていく……
提督(って、そんな都合よく眠れるか!!!!!!)
見えない何かに怒る提督であった
提督(風呂上がりでいい匂いがして、しかも滅茶苦茶近いし)
提督(駄目だ……意識するな、意識するな……)
提督(赤城が消費したボーキサイドが100…赤城が消費したボーキサイドが1000……)
不知火「うぅん……」ゴロン
提督「!!」
不知火「ていとく……大好き……むにゃ」
提督(こんなん、寝れるかーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!)
声のない悲鳴が上がったのであった
ばーっと書き溜めを放出したので、また書き溜め作ってきます
私はギャップ萌えが大好物です(聞いてない)
すいませんここ最近私事で忙しく中々更新できませんでした
やっと今日落ち着いてきたのでこれからまた続き書いていきたいと思います
もし見てくださっている方居ましたらもう少しだけお待ちください
大変お待たせ致しました、ぼちぼち投下していきます
チュンチュン……
不知火「むにゃ……」
提督「……」
不知火「ん……」
不知火「ふわぁ……朝ですか……」
不知火「あれ、ここは……ああ、そうだった」
不知火「提督?起きてますか?」
提督「……」
不知火「提督、起きないなら悪戯しちゃいますよ?」
提督「……」
不知火「なるほど、無言は肯定と受け取りました。では早速」ゴソゴソ
提督「起きてるよ!!!」ガバッ
不知火「あら残念」
提督(結局ほとんど眠れなかったもんで最初は確かに起きてなかったけどな)
提督(起きてなかったら今頃……うん、考えるのはやめよう)
不知火「提督、まずは何から始めますか?」
提督「そうだな」
提督「まず不知火、自分の体にしがみつくのはやめようか」
不知火「何故でしょうか」
提督「いやその、色々とあれだから!」
不知火「ですが、提督。これには理由もあるのです」
不知火「この部屋は今気候のせいもあり非常に室温が低下しているかと思われます」
不知火「なのでここは不知火が暖を取るのと同時に提督にも暖を取らせる」
不知火「まさに一石二鳥のアイデアかと思われます。よって離れる事は効率的に悪いかと」
提督「くっついてるのが一番効率悪いよ!!!!」
不知火「そうですか、なら二度寝しましょう」
提督「さっきの理由も全て台無しになっちゃったよ!」
結局不知火はそのまましがみついており、提督も睡眠不足というのもあり
二人は朝の贅沢、二度寝をする事にしたのであった
――災難はまだまだ続いていく
コンコン
ガチャ
加賀「失礼します、提督。そろそろ起床時間ですよ」
不知火「zzz……」
提督「zzz……」
加賀「ふむ……」
加賀「なるほど、理解しました」ゴソゴソ
提督「何も理解してないよ!?」ガバッ
加賀「あら提督、おはようございます。今日も寒いですね」
提督「うん、おはよう加賀。ところでお前たち二人はなにか打ち合わせでもしているのか?」
加賀「と、言うと?」
提督「まるで不知火の一挙一動をそのままコピーしているかの如くのナチュラルな動きだったんだが」
加賀「あらそれは困りましたね、不知火さんはやはり解体しましょう」
提督「いやまてお前の事を言ってるんだ」
加賀「なるほど、やはり私がいい。ということでしょうか?」
提督「どういうことなの……」
加賀「ここは譲れません、私とも寝てください」
提督「その言い方は誤解を招きそうだからやめて!?」
加賀「言い換えましょう、私と添い寝してください」
提督「何も変わってない……」
まあ案の定加賀も離してくれる事はなく、不知火も幸せそうに寝ているので
提督は思考停止して朝のフルコース、三度寝をする事にしたのであった
無限ループって怖くね?
金剛「ふんふんふフーン♪」
金剛「提督は昨日は不知火とイチャイチャしてましたガ」
金剛「今日は先手必勝デース!、まさかこんな早朝に不知火がいるはずはないデース!」
金剛「そしてこんな時間ダカラまだ寝ている提督の顔を見ツツ……」
金剛「あんな事やこんな事もしちゃっタリ!クー!!!!私恥ずかしくなってきちゃいマシタ!」
金剛「フフフ……私の高速戦艦たる所以を見抜けなかった事を後悔するがいいデース!」
ガチャ
金剛「提督ー!おはようございマース!」←小声
不知火「zzz……」
金剛「!?」
提督「zzz……」
金剛「!?!?」
加賀「zzz……」
金剛「!?!?!?」
金剛「ナ……」
金剛「なんじゃこりゃぁあ!!!」※太陽にほ○ろ風
――
霧島「ふぅ……今日も寒いわね」
霧島「ってあれ、金剛姉様。提督室の前でなにやってんだろ?」
霧島「金剛姉様?」ポン
金剛「あぁ……霧島」
霧島(あれ、いつものデースマース口調じゃない)
金剛「俺は……真理を見た」
霧島「一人称変わってるし口調変わってるし言ってること分からないしツッコミ長すぎるしーー!?!?」
霧島のツッコミの才能が開花した瞬間であった
結局、三人がベッドから降りたのは、いつもの起床時間より二時間程遅い時間だった
不知火「ふわぁ……不知火はまだ眠いです」
提督「あぁ……自分もな」
提督(結局二度寝も三度寝も中途半端だったしな……隣から来る甘い匂いのせいで……っていかんいかん)
加賀「久々によく寝ることができました、やはり提督の腕枕は最高ですね」
提督「やはり、って今まで一度もやった事ないよね?」
加賀「酷いです提督……あんな事までしておいて」ウルウル
提督「捏造はやめよう!」
不知火「そうです加賀さん、捏造はやめましょう」
提督「うむ、不知火はやっぱり冷せ……」
不知火「提督は不知火の枕です。そして、今まで貸し出した事はありません」
提督「捏造に捏造で張り合ってどうする!?」
不知火 加賀「なるほど、なら事実にしましょう」ズイッ
提督「やっぱりお前たち絶対何か打ち合わせしてるよね!?」
金剛「へへ……真っ白に燃え尽きちまったよ……」
霧島「金剛姉様ーーーー!!!!!」
提督「ふぅ……やっとこさ食堂に来れた……」
不知火「時間帯を外したせいか、大体の人たちが食事を終えてますね」
加賀「提督、どちらで食べる事にしますか?それとも私?」
提督「よし、あそこに相席してもいいか聞いてこよう」
不知火「ええ、分かりました」
加賀「なるほど、質問には答えつつ華麗にスルー。お見事です」
提督「……ありがとう」
はじめてキャラ安価とってみます
そこに座っている艦娘を指定してあげてください(複数可)
↓×2
提督「夕張」
夕張「……ん?あら、提督じゃないですか。おはようございます」
提督「食事中の所すまんが、相席してもいいか?」
夕張「他にも席はいくつでも空いてるみたいですが?」
提督「いや、夕張と話したかったから聞いてみたのだが……やはり迷惑だろうか?」
夕張「……ふーん」
チラッと視線を提督の後ろに向ける
そこにはなんとも言えない表情をした加賀と不知火が立っていた
夕張「……ま、私でよければ。どうぞ座ってください」
提督「ありがとう、恩に着る」
夕張「こんな事で恩に着られたら提督ずっと恩を返せなくなっちゃいますよ」
提督「そうか?なら一生かかっても返していくさ」
夕張「相変わらずサラっとこういう事言いますね……」ボソッ
加賀「では、私もお言葉に甘えて失礼します」スッ
提督「あの、加賀さん。座るのはいいんだけど」
加賀「なんでしょう」
加賀「椅子をもうちょっと離してくれないかなーって思うんですが」
加賀「それは不可能です。なにせこの椅子は床に固定式されていますので」
提督「さっきおもいっきり動かしてたよね?後不知火も無言で椅子寄せてこないで」
不知火「チッ」
夕張「……ずいぶんと仲がよろしいようですね。お二方、いえ不知火さんはまあ昨日見たからあれですが……」
夕張「そんなに積極的に見せつける方達でしたっけ?」
加賀「ええ、私は平常運転ですよ」←提督の右腕に抱きつきながら
不知火「不知火も特に変わったところは」←提督の左腕に抱きつきながら
提督「ありまくりだよね。これでどうやって自分飯食べればいいの」
不知火「司令官!不知火がいるじゃない!」
加賀「加賀の事もーっと頼ってもいいのよ」
夕張「なるほど……これは凄いですね」
提督「だろ?」
夕張「ところで提督、話は変わるのですが」
提督「ん?」
夕張「もし……もしもの話なんですけど」
夕張「私が、昨日のくじの当たりを引いていたら、提督はどう思いますか?」
提督「そうだな……」
提督「夕張は自分が着任して早々に来てくれた初期メンバーであり、その頃からずっと自分を支えてきてくれた」
提督「そんな夕張にさらなる負担をかける事になるかもしれない今回の薬の研究だが」
提督「それでもやってくれるなら、自分としては本当に有り難いし、恩が返せなくなるほど溜まってしまうな」
夕張「……そうですか」
提督「ああ」
夕張「分かりました。仮の話とはいえ、ありがとうございます」
提督「こんな事でいいなら、いくらでも恩が返せるな」
夕張「ふふっ、意外とそういう返しもできるんですね」
提督「他の子達と色々会話してきた賜物だな」
夕張「……ふぅん、そうですか」
加賀「今、一瞬露骨に顔に出ましたね」
不知火「ええ、提督は気づいていないようですが」
小声で話す二人
間に居るのに提督に聞こえない声で会話するという謎の高テクニックである
夕張「さて……私は先に行きますね」
提督「もう食べ終わったのか?」
夕張「ええ、結構前からここに来ていたもので。ごちそうさまでした」
夕張「提督、お話していただいてありがとうございました。それでは」
提督「ああ、またな」
颯爽と立ち去っていく夕張
その後ろ姿を眺めつつ、結局残った三人で食事をするのであった
不知火「提督、あーんしてください」
加賀「ここは譲れません。提督、私はいつでも大丈夫です。あーん」
提督「平常運転って言葉を調べなきゃな今度」
書き溜めまた作ってきます。
三日位しか経ってないのに既にこんなんでいいんだっけという一抹の不安ががが
また失踪しようとしていた所を憲兵に捕まったので初投稿です(意味不明)
細々と続き投下していきます
提督「さて……飯も食い終わったし仕事をこなそうと思うんだが」
不知火「ええ、書類も少し溜まりつつあります。その判断は賢明かと思われます」
加賀「そうですね。私もそう思います」
提督「うん、分かってるならそろそろ腕を離してくれないか二人共」
不知火 加賀「それは無理です」
提督「oh……」
不知火「大丈夫です提督。不知火が文字通り提督の手となり足となり働いてみせましょう」
加賀「不知火、その任務は貴女には少々荷が重いかと、ここは一航戦の私に任せてください」
提督「手を離せば自分がやるんだけどね?」
不知火 加賀「それでは意味がないでしょう」
提督「これもうわかんねぇな……」
提督「分かった、仕事の話は少し置いておこう」
提督「そうだな、不知火、加賀。お前達がこのまま両腕にくっついていたとする」
提督「そうするとどうしても避けては通れない大問題が発生する。それは分かるか?」
提督「いやまあ今も問題と言えばそうなんだが」
不知火「ふむ……」
加賀「なんでしょう。これは難問ですね……」
提督「その……な?トイレや風呂っていう行為は人間として必ず行わなければいけない事なんだ」
不知火「ええ……それは承知していますが」
加賀「それが何か問題でも?」
提督「え、いや普通に考えてお前たちは入れないよね?ってか入ってこないよね?」
不知火「提督、不知火は秘書艦としての役目を貫くと決めました」
不知火「そのためには提督の身の安全を常に護っていかなければならないと自負しています」
不知火「その役目は環境や時間にも左右されません。寝室、浴室、トイレなどでもおはようからおやすみまで提督をお護り致します」
不知火「何かご不満な点はございますでしょうか?」
提督「ありまくりだよ!!役目ってかもうそれ以前にプライバシー侵害してるから!!」
加賀「そうですよ不知火。少し落ち着きなさい」
提督「そうだよ加賀、言ってやってくれ」
提督(ああ……こういう時に加賀が居てくれると助かるなぁ)←大分混乱してる
加賀「貴女は秘書艦を全うすると言い、私は一時は場を引きました」
加賀「ですが、私は以前にこうも言いました、貴女の信頼を取り戻すのはとても辛い道だと言うことを」
加賀「その言葉通り、私はまだ貴女を信頼してはいません」
加賀「なので貴女"だけ"ではその役目は荷が重いと思われます。いえ、無理といっても過言ではありません」
加賀「いざ提督が何者かに襲われた時。そしてそれがもし戦艦級や重巡級だったら……貴女は本当に守りきれるのですか?」
不知火「護れます、不知火の身が朽ち果てても、提督に傷を負わせる事はさせません」
加賀「口だけではどうとでも言えるのです、そのように大口だけ叩いて散っていった者達が何人居るか」
加賀「起こってからでは遅いのです。そして、その責任は貴女だけの物ではない、私達全艦娘達の責任となるのです」
加賀「そうなれば貴女一人にその責任背負う事は到底できません。いえ、持つのすらおこがましいでしょう」
不知火「……」
加賀「いいですか、よく考えてください。無謀と勇気は違うものです」
加賀「冷静に今の状況を考え、自分の身の程を弁えて物を発しなさい」
不知火「……」
不知火「……そうですね、不知火はまた一人で抱え込もうとしていたみたいです」
不知火「加賀さんの言葉はもっともな話。前回の叱咤に加え不知火の更なる向上の為そのお言葉を頭におかせていただきます」
不知火「ですが、それでも不知火は秘書艦として提督を護る。そう宣言させていただきます。例えそれがどこまでも愚かで無謀な事でも」
不知火「不知火の宣言は確かにただの言葉ですが、その言葉を軽い気持ちで言えるほど無能ではありません」
不知火「例えこの判断が不知火以外の全てを敵に回しても、不知火はこの言葉を撤回しません」
加賀「……」
加賀「……はぁ、貴女もつくづぐ頑固ですね。人の事を言えない立場かも知れませんが」
不知火「ええ、子供ですので。受け入れられない事もあるということです」
加賀「……ですが、私がした話の中で貴女は勘違いしている所があります」
加賀「ヒントは貴女だけの責任ではない、ということ」
加賀「そう、私達は何の為に居るのですか?」
加賀「戦争に勝つ為でもありますが、私の一番の目的は提督をお護りする事だと思っています。」
不知火「……!」
加賀「恐らく、私が見ている限りでは皆そう思っていると思います。」
加賀「不知火、よく聞いて」
加賀「私達は確かにライバルかもしれない。けど、それと同時に」
加賀「かけがえのない、代わりのない大切な"仲間"なの」
加賀「先ほど私は貴女を信頼していないと言った」
加賀「けど、貴女を私は秘書艦として信用がある娘にしたいの」
加賀「その為にももっと私を頼りなさい、不知火」
加賀「例え貴女が私を信頼できなくても、二人なら一人よりは護れるはずです」
不知火「加賀さん……」
提督「加賀……」
提督「……ありがとう本当に、自分は幸せだ。」
加賀「提督……」
不知火「提督……」
提督(……あれ?なんかいい雰囲気に流されてたけどこれって)
提督「あの、雰囲気をぶち壊しにするかもしれないんだけど」
提督「さっきより悪化してない?展開が」
加賀「提督、私も提督を護りますよ。勿論四六時中どこでもどんな所でもどんなどんなどんな」
提督「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」
提督「分かった、ちょっと話がこじれすぎだし一旦落ち着こう」
提督「……なら、これでどうだ?」
提督「お前たち二人の希望を一つだけ叶えてやる。自分のできる範疇ならな」
提督「その代わり、腕にくっつくのをやめるようにする。どうだろうか?」
提督「ただしその希望で腕にくっつくとかそういうのは駄目だぞ。意味がなくなってしまう」
提督「あと、常に行動を制限されるような希望も無理だ、腕じゃなくて足にくっつくとかもし言われたらそれも意味がないからな」
不知火「……ふむ、提督といつでもくっついていられるという権利を捨てるのは惜しいですが……」
加賀「希望を叶えてくれるというのは、かなり魅力的な提案ですね」
提督「そんな権利は作った覚えはないし作られた話も聞いてない」
不知火「ルールは自分で作るものです」
提督「どこの暴君!?」
加賀「分かりました、それでは私はこちらの紙にサインと印鑑を貰ってもいいでしょうか?」スッ
提督「そんな事でいいのか?」
加賀「ええ、私の希望など微々たるものです。提督に負担をかける訳にはいきませんので」
提督(今まさに負担がかかってるんだが)
提督「ふむ……ところでこれ何の紙なんだ?」
提督(新しい兵器の開発申請とかかな)
婚姻届…
婚姻届
※提督の氏名欄と印鑑欄以外記入済み
提督「うん、無理」
加賀「おや?提督はさきほど望みを一つ叶えてくれると言っていたような気がしたのですが」
提督「これは無理!!ってかすごい制限されてるじゃん!主に自分の人生が!」
不知火「そんな……不知火と全く同じ事を考えていたなんて……」スッ
加賀「ふむ、やはり私が認めたライバル。ここまでは一緒のようですね」
提督「お前もかよ!?てか何でお前たちは婚姻届持ち歩いてんだよ!?」
加賀「QBK」
不知火「(Q)急に(B)ビビっと(K)来たので」
加賀「ええ、どんな状況になっても備えあれば憂いなしと言うことですね」
提督「某FW選手みたいな言い方で言ってもわけわからんよ!てか使い方間違ってるし!」
不知火「曲がり角でぶつかって結婚してくれって言われたら焦るじゃないですか」
提督「ねぇよ!!」
提督「とにかく、それは受け入れられない。何か別のにしてくれ」
提督「後契約系の物も遠慮してくれ、頼む」
不知火「チッ」
加賀「私の契約書は百八式まであります」チラッ
提督「見せんでいい!てかありすぎだろ!」
不知火「すー……はー……」
不知火「分かりました、それでは不知火は……こほん」
不知火「えっと……その……」モジモジ
提督「う、うむ」
提督(な、なんだこの不知火の雰囲気は……?)
不知火「また頭を撫でてもらっても……いいですか?」←上目遣い&背景にキラキラ
提督「そ、そんな事でいいのか?」
提督(い、いきなりその表情は反則だろう……!?)ドキドキ
不知火「駄目……ですか?」ウルッ
提督「いや!勿論いいぞ!」
不知火「ありがとうございます!!」パァァ
この一連の流れを見ていた加賀に電流走るっ……!
加賀(この娘……今までの直球具合からのいきなりの恥じらいを見せた表情という先ほどまでとのギャップ)
加賀(そして自分の特性を最大限に活かした甘える方法、そして許可を貰った後の子供の一番の武器、無邪気な笑顔……!)
加賀(尚且つ一番のキーポイントが"また"という部分……!)
加賀(これは不知火が今までに私の見ていないところで提督に甘えていましたよという事を見せつけるためでもある……)
加賀(この娘……やはり只者じゃない!!)
不知火「……ふっ」ニヤァ
加賀「!!」
加賀(こっちを見てあざ笑うかのような顔……なるほど、頭にきました)
加賀(……受けて立ちましょう、全力で!!)
加賀「なら……提督、私のお願いも聞いてもらっていいでしょうか?」
提督「あ、あぁなんだ?」ドギマギ
提督(また雰囲気が……)
加賀「私はですね……提督に、膝枕をしてあげたいです」
加賀「そして、耳かきもしてあげたいです」ニコッ
提督「なっ……そんな事でいいのか!?」
加賀「ええ、私が提督に"してあげたいのです"よろしいでしょうか?」ニコニコ
提督「!!」ズキューン
提督「ぜ、是非お願いします」ペコリ
何故かお願いを叶える立場の提督が頭を下げていた
そうせざるを得ないような場の流れがあったのだ、それだけ加賀の言葉とは大変な物だった
そして、この一連の流れを見ていた不知火にも電流走るっ……!
不知火(……!あれは、人が必ず心のどこかで求めるもの、"母性"を全面に出したお願い!)
不知火(加賀さんの特性、頼りたくなるというイメージを甘えたくなるというイメージに変換させた禁断の言葉……)
不知火("耳かき&膝枕"!!)
不知火(そしていつもの無表情な加賀さんからは到底見られないようなあの包容力に溢れるようなにこやかな笑顔!)
不知火(そしてこの言葉が一番のキーポイント!)
不知火(お願いという立場でありながら、"してあげたい"という献身さ!!)
不知火(この即死コンボ……そして尚且つ加賀さんのいつものイメージとのギャップもあり、これは……強い!強すぎる!!)
不知火(不知火は……こんなに強大な敵と戦っていたのですか……?)ガクッ
不知火(……?加賀さんがこっちを見ている……?)
キーポイントをボーキサイトに空目しました……
お腹空いたなぁ
加賀「ふっ」ドヤァ
不知火(!!!!)
不知火(あの勝ち誇った顔を超えた完全なドヤ顔……!!)
不知火(ふふ……ふふふふ)
不知火(不知火を……怒らせたわね……!)
提督「いやぁ、お前たちの事だからどんなお願いをしているかヒヤヒヤしていたが」
提督「そんな事でいいならいつでもやってあげたい位だよ。ああいや加賀の場合はやってもらうかだったな」テレテレ
提督「いやぁ、よかったよかっ……た……?」
不知火「……」ゴゴゴゴ
加賀「……」ゴゴゴゴ
一瞬だった
先ほどまでの二人で護るといういい雰囲気はどこにいったのだろうか
この場は……"修羅"と化していたのである
二人の視線が交差する中で起きる冷戦、最早これは喧嘩を超えた戦争だった
食うか、食われるか。そこまでの緊張感がこの部屋には張り詰めていたのであった
だがしかし……
提督(……何でこんなに二人は見つめ合ってんだ?)
――台風の目というのは、外の荒れようからは考えられないほど静かなものであった
>>181
私もお腹が空きました
かゆ…うま…(ゾンビ並の考え)
今日は何故か筆が進むので頑張って続き投下していきたいです
こんな薬がまだ6人分もあるのか(白目)
追加で送ってもらおう(無茶振り)
>>185
大本営「被検体が少なくてデータが取れない?了解しました。3ガロン送りましょう」
ってなるなきっと。だってこんなモン送ってくる大本営だもの
デレデレな子も良いけど北上のゆるい距離感も良いよね
あの仲良しだけど一線は越えない感じが落ち着く
>>184
まだ六人?……あっ(絶望)
完結するんでしょうかこれ
>>187
距離感がないようであるのっていいですよね、一番近いのに遠いみたいな(薬を飲ませるとは言っていない)
ちまちま続き投下していきます
――物語は新たな来訪者によって次の展開を迎える
コンコン
提督「ん?鍵は開いているぞ、入れ」
雪風「失礼します!司令!」ガチャ
提督「おお雪風か、昨日はいきなり出て行ったから心配してたぞ」
雪風「ああ、その件に関しては本当に申し訳ないです……」
雪風(ん?なんか……部屋の空気が重い……?)
雪風(なんだろう、まさか、敵襲!?)バッ
不知火「……」ゴゴゴゴ
加賀「……」ゴゴゴゴ
雪風「ふわぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」
思わず壁まで後ずさる雪風
その顔はこの世の終わりを見たかの如く、恐怖に怯えていた
提督「どうした雪風!?大丈夫か!?」
雪風「し、司令……あれは?」フルフル
震える指先で二人を指さす雪風
だが提督はあっけらかんとしていた
提督「いやなんか、お互い見つめ合ったまま動かなくなっちゃったんだ」
提督「なんでか分かるか?雪風」
雪風(この雰囲気に……なんでこんなに冷静なんですか!?)
雪風(流石司令……雪風とは肝の座り具合が違います……!)※違うのは提督の空気の読めなさ具合です
雪風「ゆ、雪風にはとてもとても分かりません……ひぇぇ……」ガクガク
提督(……一体何に怯えているんだ?雪風は……?)
提督(雪風は、部屋に入って来た直後までは普通だった。そして、部屋に入って見つめ合ってる二人を見てから急に怯え出した……)
提督(そこから導き出される答えは……?)
提督(……!そうか!)
提督「あー、雪風。そのな?」
雪風「は、はいなんでしょう……?」ビクビク
提督「別にあいつら二人はあー……その、所謂大人の関係って訳じゃないぞ、見つめ合ってるけど」
提督(まあ確かに見つめあったあの二人みたらビビるかもしれんな……雪風が大人の関係を知るのはまだ早いだろうし)
提督(急に見つめ合ってる二人見たらしょうがないな、それに女性同士ってのもあるだろうし)
雪風「は?……へ?」キョトン
見つめ合ったまま微動だにしなかった二人が、提督の言った言葉に反応した
二人が、ゆっくり、ゆっくりと顔を提督の方へ向ける
その顔に不知火の先ほどまでの屈託のない笑顔は無い
その顔に加賀の先ほどまでの母性溢れる笑顔も無い
そこにあったのは、闘争心を剥き出しにした、修羅の顔だけ
不知火「提督、今なんと」ギロ
加賀「おっしゃいましたか」ギロ
提督「え、あーいや雪風が何か勘違いしているみたいだったからさ、訂正してあげてたんだ」
雪風「ひ、ひぃぃぃぃっぃぃぃい!!!!!!!!」ガクガクガク
雪風「い、いのちだけは……」ガタガタガタ
提督(……!?まだ雪風が怯えている!?くそっ、一体何が!)←原因
提督(くっ……まだ怯えるのが止まらない、俺はどうすれば……!)
提督(……ハッ!?あの方法があったか、一か八か……!頼む!)
提督「雪風!」
雪風「は、はひゃはひゃはひゃひ……」
既に失神寸前の雪風
そこで提督がとった行動とは、あの時不知火を救った、(恐らく)全艦娘に効くであろう特効薬だった
提督「ごめんな……こんな事しかできんが」ナデナデ
雪風「ほぇ?」ポカーン
そう、提督は雪風の頭を撫でていた
泣いている子供をあやすように。その行為には紛れも無く提督の雪風への愛があった
雪風「し、司令……?」カァァ
突然頭を撫でられた雪風は、混乱から先ほどまでの恐怖を忘れ、呆気にとられた後、事態を知り赤面してしまった
しかし、混乱した頭では何も考えられず、提督が自分の頭を撫でる行為に恥ずかしさを覚えつつ、だが、どこか安心していくのであった
提督「大丈夫だ……雪風には自分が居る。だから……」ナデナデ
提督「そんなに怯えた顔をしないでくれ、せっかくの雪風の可愛い笑顔が台無しになってしまう」ナデナデ
雪風「ふ、ふぇぇ……?」
提督「……少しは落ち着いてきたか?」ナデナデ
雪風「な、なんとか……」
提督「よし、なら確認といっては何だが」
提督「雪風のいつもの可愛い笑顔を見せてくれないか?」ニコッ
雪風「……!」
雪風「はい、司令!雪風はもう大丈夫です!」ニコッ
――提督が今まで見た雪風の笑顔の中で、その笑顔は一番輝いていた
その一連を流れを見ていた加賀と不知火に電流走るっ……!
不知火(こ、これは不知火達の思惑を二つ兼ね揃え、そして達成した……!)
加賀(まさか、信じられません。提督の父性をあそこまで引き出し、甘えさせてもらい、尚且つ笑顔が、か、可愛いとまで!)
加賀(そして、あの、不知火の計算された無垢な表情が百倍にも研磨された真の純真無垢……!)
不知火(まさかこんな所で雪風がダークホースとして飛び込んでくるとは……)
加賀(これが……私達にない唯一つの雪風の武器、そして最強の武器……!)
不知火 加賀(幸運艦……"雪風"……)
膝から崩れ落ちる二人
完敗だった、それは見事なまでに
戦場に置いての最強の武器、それは計算され尽くした計画でもない、最新型の兵器でもない
どんな状況でも覆す、最高の"運"であった
そして……
不知火 加賀「弟子にしてください、雪風さん」←土下座
雪風「ひ、ひぇぇっ!?」ビクッ
……先ほどまでとは違った意味で驚く雪風なのだった
夕飯食べてきます
お(なかへ)つ(た)
完結するかしないかじゃない!させるんだ!(他人事)
イ級「ワテラガ」
ロ級「ノンデモ」
ハ級「カマヘン」
ニ級「デ?」
不定期更新になってしまって本当に申し訳ないです
続きが多少書けたので投下していきたいと思います
後、とてつもなく今更なんですが
このSSは独自設定、二次ネタなどが沢山入っています
それを踏まえた上で見ていただけると有難いです
滅茶苦茶遅い業務連絡ですいませんでした
提督「それで雪風、聞くのが遅れたが結局何の用だったんだ?」
雪風「あ、申し遅れました!昨日も来たんですが、薬の研究の件でですね!」
提督「おおそうだったな……」チラッ
何気なく、薬を既に服用済みの二人の顔に目をやる
不知火「」チーン
加賀「」チーン
提督(見つめ合って固まってたと思ってたら今度は生気がない目をして固まってる……)
提督(薬の副作用か何かなのか?)←原因
提督「ふむ……」
提督「で、雪風」
雪風「何でしょうか!司令!」
提督「……本当にこれ飲むのか?」
雪風「はい!提督のお役に立てるならどんな事でもします!」
提督「そうか……それなら雪風の意志に口を挟むのは余計な事になるな」
提督「こんな自分の為に尽くしてくれると言うんだ、本当に有り難いよ」スッ
自然と提督の手がまた雪風の頭の上に伸びていた
今度はあやすような撫で方ではなく、褒めるような撫で方だった
雪風「ひゃっ!」ビクッ
提督「あっ、すまん。つい手が伸びてしまっていた」
雪風「い、いえ!突然だったのでビックリしてしまっただけです!」
提督「そうか、驚かせてすまない」サッ
提督の手が雪風の頭から離れる
雪風「あ……」
提督「ん?」
雪風「いえ……なんでもないです」シュン
提督「……もしかして」
雪風「ち、違いますよ!本当はもっと頭を撫でてほしかったなんてそんな厚かましいこと考えてませんよ!」
提督「……雪風は嘘をつくのが本当に下手だなぁ」ナデナデ
雪風「う、うぅ……自分が不甲斐ないです……」
不知火(これは……あざとい!)
加賀(でもこれ天然なんでしょう?)
不知火(ふむ……時代はあざとい系天然女子ですか……)
加賀(どうやらまだ混乱してるみたいですね、しっかりしなさい不知火)
加賀(武器とはその人が持って初めて兵器になるのです。自分の特性を省みない属性はかえってマイナスになりますよ)
不知火(さっきから加賀さんの胸からチラチラ"これでアナタも今日からあざとい系天然女子になれる!"って本が見えるんですけど)
加賀(実はこれ雪風の部屋から頂戴してきたんです)
不知火(速攻で雪風売りましたね、最低です)
提督「さて……これが例の薬だ」コトン
雪風「……」ゴクリ
提督「まぁ、尻込みするよな普通は」
雪風「あはは……やっぱり目の前にいざ出てくるとちょっと物怖じしちゃいますね」
提督「無理はするなよ、雪風」
雪風「……いえ!大丈夫です司令!」
雪風(司令の為に役立ちたい、これは紛れもない本心だから!)
提督「そうか」
提督はそれ以上は何も言わず、黙って見届ける事にした
雪風「では……いきます」
雪風「んっ……」ゴクッ
雪風「……!げほっ!げほっげほっ!」ガクガク
提督「雪風!」バッ
薬を飲んだ直後に痙攣しだした雪風
提督は慌てて駆け寄り雪風の体を支えた
薬を飲んだのを見たのは二人目といえど、目の前で艦娘が倒れるのを見るのは慣れるはずもなかった
提督「大丈夫か!?雪風!」
雪風「し、司令……」
雪風「ごめんな……さい、少しお休みいただきます……」ガクッ
提督「雪風!」
雪風「……」スゥスゥ
提督「……ほっ」
不知火「不知火も見るのは二回目になりますが、流石に動揺しますね」
加賀「……ええ、私は初めてでしたから足が動きかけていました」
加賀(けど……私なんかよりもっと速く提督は動いていた……)
加賀(いくら私は人間に似ているとはいえあくまで艦娘。それに反射速度で勝った提督は……)
加賀(陳腐な言葉ですが、これが"愛の力"というものなのでしょうか)
加賀(……駄目ですね、言葉としては捉えられますが、本質までは分かりません。まだまだ未熟ということですね)
提督「すまんな雪風……こんなベッドだがせめてゆっくり寝てくれ」
そっと雪風の体を降ろしてあげる
雪風の体はまるで羽のように、静かにベッドに沈んでいった
提督「さて……そろそろ仕事を始めるとするかな」
不知火「待ってください提督」ガシッ
加賀「ええ、どさくさに紛れて戻ろうとしないでください」ガシッ
提督「うごっ!肩が!肩がぁ!」
不知火「不知火のお願いの前に不知火の目の前で雪風の頭を撫でるなんて……」
不知火「新手の焦らしプレイでしょうか?生憎不知火はそういう性癖もつけることができますが」
提督(そのカミングアウトはどうなんだろう)
不知火「ですが……」
不知火「どんな事があっても、最後は不知火を誰よりも愛してくれないと許しません」
提督「不知火……」
不知火「ふ、ふん別に雪風に嫉妬しているわけじゃないんだからね!勘違いしないでよね!」プイッ
提督「え、えぇ!?」
加賀(属性ぶっこみすぎでしょう、提督困惑してますし)
加賀(ですが、数撃ちゃ当たるというやつでしょうか。提督の好みを探すのもまた正妻としての努めですね)
加賀「提督、私も膝枕と耳かきをしてあげると言っていましたよね」
提督「あ、あぁそうだったな」
提督(先ほどの雪風の一件で頭から吹っ飛んでいたなんて言えないな……)
加賀「もうっ、私との約束忘れるなんていけない子なんだから!このーっ☆」ポカポカ
提督「え、えええええええ!?」
不知火(提督の顔がまるでブラックホールに吸い込まれた時みたいな表情になってます)
加賀(なるほど、こういうキャラは驚愕する……と)メモメモ
加賀(驚いた提督の顔も可愛いですね、これからも色々開拓していきましょう)
提督(やっぱりこの薬、皆に飲ませてよかったんだろうか……?)
結構深刻に考える提督であった
ねぇねぇ、聞いた?
どうしたの?
今度私達の艦隊に……"死神"が来るんだって……
ええ!?本当に!?
どうしよう……絶対嫌だよ……
そんな……嘘でしょ!?
私まだ死にたくないよぉ……
なんとかして助かる方法は無いのかなぁ……
やっぱり、関わらないようにするのが一番なんじゃない?
そうだよね、それくらいしかできないよね……
……何が"奇跡の駆逐艦"よ
その実態は他の人達の命を刈り取って生きているだけの"死神"じゃない!
ちょっと、声が大きいよ!
いいでしょ、もし居たら聞こえるように言ってるのよ
本人だって死神としての自覚があれば、何かしらケジメをつけるでしょ?それをしないって事は
きっと楽しんでやってるのよ、ほんと最低だわ……
……居なくなればいいのに、あんな子
イナクナッテシマエバイイノニ、コンナコ
コンナシニガミ、キエテシマエバイイノニ
ドウシテ、ワタシハイキテルノ?
ドウシテカミサマハ、ホカノコタチトイッショニサセテクレナイノ?
ドウシテ?ドウシテ?
キセキナンテイラナイカラ、ヒトツダケノゾミヲカナエテヨ
ネェ……
「……お前が新入りの子か?」
「……そうですけど、それがどうかしましたか?」
「探していたんだ、お前の事」
「……なんですか?"死神"の私に何か用でしょうか」
「死神?お前が?」
「そう呼ばれてるの、知らないんですか?有名ですよ、"奇跡の駆逐艦"なんて肩書よりですね」
「私が皆さんの命を奪ってるから生きている、そして私が生き残るために次の犠牲を探して色んな艦隊に入ってくる……」
「そういう認識みたいですね」
「……」
「おかしいですか?それとも怖いですか?」
「……お前は、そんな事を言われてどう思っているんだ?」
「慣れましたよ、もう」
「私はもう誰とも関わっちゃいけないんだって、分かりましたから」
「関わらなければ、傷つく事はありません。何を言われても笑っていられます」
「笑っていて、それを気味悪がられても、笑います」
「だって私が悲しんだら、他の人に言われちゃいます」
「"死神"が悲しむな、本当に悲しむべきはお前以外の人だ、って」
「……」
「……もう話は終わりましたか?それでは私は」
「いや、まだ話は終わっていない」
「……なんですか?私はもうこれ以上は話したくないです」
「なあ、お前はさっきから死神死神って言ってるが」
「ええ」
「その死神って、一体どこにいるんだ?」
「……は?」
「おかしいな、お前の話し方だとまるで自分が死神だと言ってるように聞こえるんだが」
「……だからそう言ってるじゃないですか」
「自分の目の前には、可愛い女の子しか居ないぞ?」
「あの、話を本当に聞いていましたか?馬鹿なんですか?」
「ああ、自分の事を一番よくわかっている自分でも馬鹿だと思う」
「けど、自分より馬鹿な奴が居るとしたら」
「お前の活躍を実際に見ないで、言伝だけでお前を死神と避ける奴らかな」
「……!」
「何でお前が悲しんじゃ駄目なんだ?」
「何でお前が仲間と一緒に居たいと思うのが駄目なんだ?」
「誰が決めた?神様か?」
「……一万歩譲ってそれを神様が決めたとしよう」
「けどな、本当に神様がそう言ったとしたら」
「自分はその神様をぶん殴ってやる」
「そして、こう言わせるようにしてやる」
「"自分の生き方は自分で決める物"だとな」
「……さっきから黙って聞いていれば私の事を悟ったような話ばっかり」
「貴方に何が分かるんですか!?私の事なんて何も分からない癖に!!」
「死神と呼ばれ、恐れられ、蔑まれ、恨まれ!!」
「幾度となく投げかけられた言葉に、自分の存在理由まで分からなくなった!」
「だから死にたかった!けど死ねなかった!死ぬのは怖かった!」
「自分の感情だって表に出すことは許されない!自分の本心だって表に出すことなんて許されない!」
「分からないでしょ!?私の事なんて何も分からないでしょ!?」
「だからもう私に関わらないでよ!悟ったような口を聞かないでよ!!」
「だから……もう……っ……」
「……」
「……すいません、取り乱してしまいました。もう本当に失礼します、それでは」
「……そうか」
「なんだ、もう自分が神様を殴りに行く必要はなかったな」
「……何の話ですか」
「お前は言ったよな、もう慣れてるって」
「確かに俺はお前の事が分からない、けどな」
「泣いてる子が居ることに気づけ無い程、馬鹿でもない」
「……え?」
いつの間にか、私の目からは涙が溢れていたらしい
いつから?なんで?
あんなに怒っていたはずなのに
ついに自分が壊れてしまったんだろうか
……何も分からない
「確かに、お前がどれだけ辛かったかなんて、自分の言葉では指し図る事なんてできないほど辛い事だと思う」
「でも、自分に過去をどうにかする能力なんてない、だから」
「自分にできるのは、今のお前を助ける事だけだ」
「たす……ける?……私を?」
「ああ、死神なんてどこにも居ないって証明してやる」
「その為に自分は絶対に死なない」
「……無理に決まってます、貴方だってすぐ……」
「なら、自分が死ぬとき、それは」
「お前と一緒に逝ける時だ」
「え……」
「まあ、死ぬ気も死なせる気も微塵もないけどな。本当にifの話だ」
「だがifの話だとしても、お前を自分は置いていかない」
「奇跡の駆逐艦って証明できるまで世界がお前の敵でも、自分だけはずっとお前の味方だ」
「……」
「何も分からない、なら他の事でカバーするさ」
「大馬鹿なりの考えだ、どうだ?」
「……ええ、本当に馬鹿ですね」
「はは、そうだろう。よく分かっている」
(……助ける、なんて初めて言われた。いままではずっと、助けてくれ、だったのに)
(私の話を聞いて、こんな言葉が出るなんて、馬鹿じゃなかったらなんなんでしょうか)
(絶対無理だってのに)
(……でも)
(……もう一度だけ、あと一回だけ、人を信じてみてもいいのかな)
「はぁ……」
「ん?」
「ため息もつきたくなりますよ、さっきまであんなに感情を剥き出しにして怒ってたのに、いつの間にか泣いてて」
「そして今は、呆れている。全部これどこかのお馬鹿さんが原因ですね」
「はは、照れるな。そこまで褒められると」
「褒めてないですよ、脳みそ腐ってるんですか?」
「腐ってなきゃこんなくさい事言えないだろ?」
「……それもそうかもしれないですね」クスッ
「分かりました、見届けてあげますよ、貴方の最期」
「それまでよろしくお願いしますね、"司令"」
「ほう、ってことは一生一緒に居てくれるって事か、よろしくな」
「減らず口ばっかり、そもそも貴方には寿命があるでしょう」
「その時は生まれ変わってまた会いに行くさ」
「……いつまでそんな事言ってられるか、楽しみにしてますよ」ニヤ
「ああ、楽しみにしていてくれ」
「こほん、さて、申し遅れました」
「私の名前は、"死神"……改め、"奇跡の駆逐艦"」
――雪風、です!
皆さん、本当にごめんなさい
雪風は、皆さんの憎しみ、悲しみ、喜び、怒りそれら全てを背負って、もう少し生きてみようと思います
最低だと思いますよね、でも、雪風は初めて言われたんです
自分の生き方は、自分で決める物だって
だから、最低の私は、最低なりに頑張って、這いつくばってでも生きていこうと思います
なので、皆さん、もう少しだけ待っていてください
長くなりました。そして、これが最期の謝罪です
生きていてごめんなさい、でも雪風は生きていきます
――たとえ、それが死ぬ事より辛くたって、自分が決めた生き方だから
酒の勢いで書いた書き溜め放出したのでまた書き溜め作ってきます……
お久しぶりです……
中々投下できませんでしたが、ちまちま書いていたものを投下していきたいと思います
不定期な投下で本当に申し訳ないです
提督「分かった!分かった!だから順番にな?な!?」
不知火「なら不知火が先に」
加賀「何故そうなるのですか、年長者を敬う事は世間の常識と言います」
不知火「世間の常識はここでは通用しません、不知火がルールです」
提督「いやここ一応自分の部屋ね」
加賀「ふむ……なら公平にここはじゃんけんで決めませんか?」
加賀「古典的ですが、後腐れがない楽な方法でしょう」
不知火「なるほど……拳で語り合うのもまた乙な話ですが、ここはその話にのりましょう」
提督「何でそんなに喧嘩腰なの不知火は」
不知火「不知火にとって命がかかっているようなものなのです。なのでこれは不知火の人生にもかかわります」
提督「頭撫でられる事に人生かかってるの!?結構安いな人生!」
加賀「ではいきますよ……さいしょはぐー」
不知火「じゃーんけーん……!」
雪風「う、うぅん……」ムクッ
不知火(こ、このタイミングでぇっ!?)
加賀(これが……女神が与えた幸運というものなのですか?)
提督「ん、雪風。起きたか」
雪風「あれ……ここ……」ボー
提督「ここは提督室、そして雪風はあの薬を飲んだ後、倒れてしまって、それからしばらく眠っていたんだ」
提督「どこか痛む所は無いか……?」スッ
パシッ
提督「へっ?」
雪風「何をしているんですか司令、今何故私の体に触れようとしたんですか?」
提督「え、いや、その、どこか痛む所があったらって……」
雪風「もし痛む所があったとして、提督が私の体に触って解決することなのですか?」
提督「いや、それはだな」
雪風「それはだな、ではないです。きちんと説明してくれませんか?何故触ろうとしたんですか?」
提督「それは、あの、その、心配だったから……」
雪風「ふむ、心配だったから。なるほど、それは理にかなっているかもしれませんね」
雪風「私が倒れて、それに心配した司令が目を覚ました私に対して安堵しての行動……十分筋が通っています」
雪風「それならば初めからそう言ってくれればいいものを、私が変な誤解をしてしまったではないですか」
提督「え、あ、うん、すまん」
雪風「では司令に粗相をしてしまったお詫びとして、此方へどうぞ」チョイチョイ
提督「へ?でも……」
雪風「私が来なさいと言っているのです。それに司令は従えばいいのですよ」ニッコリ
提督「は、はひ……」テクテク
雪風「ん……よしよし」ナデナデ
提督「ほぁぁ!?」ビクゥ!
雪風「少々厳しい言葉を投げてしまいました。怖かったですか?」ナデナデ
提督「は、はい、少し怖かったです……」
雪風「そうですか、それはごめんなさい。ですが司令、これからはきちんと説明してから行動するんですよ?」
雪風「説明とは大事な事です。それをする事によって話の筋が通りますし。大人なら常識の事です」
雪風「今度からはしっかり実践しましょうね?司令?」ニコッ
提督「ひゃ……ひゃい……」トローン
不知火 加賀(だっ、誰だぁっ!?)
不知火(起きて早々提督が心配して手を差し伸べた所をいきなり冷酷に払いのけた……)
加賀(普段の雪風だったらありえない事です、まずその時点で提督は混乱させられたでしょう)
不知火(そこからの普段では考えられないような理詰め、淡々と問い詰める様はいつもと真逆でした)
加賀(そしてここからが真骨頂……谷底にぶん投げてからの天国!!)
不知火(これも今までの雪風とは全く違う手法です……彼女は電と同じで庇護欲をこれでもかと掻き立てられるキャラだったと思います)
加賀(だがしかし次から次に起きる今までとのギャップのオンパレード……)
不知火(しかし最期のあの聖母のような頭撫でで提督はもう完全に雪風の虜に……)
加賀(目がハート状態ってこの事を言うんですね)
不知火(飴と鞭……うまく使いこなせば落ちない者は居ないと言われていましたが……)
加賀(これは……本当に雪風なのですか?気のせいか、一人称まで変わっている気がします)
雪風「……」ジー
雪風「……」ニコォ
加賀 不知火「!」
不知火(この不知火が、雪風に臆している……!?)
加賀(誇り高き一航戦の私が……)
雪風「よーしよーし司令はいい子ですね~」ナデナデ
提督「うっうっ……仕事辛い……上司うざい……」グスングスン
雪風「大丈夫ですよ、司令なら乗り越えられますよ。私も付いていますし」
提督「本当?雪風が居ないと自分は駄目だよ……」
雪風「ええ、私はずっと一緒に居てあげますよ。」
雪風「文字通り、貴方の"最期"までね」ボソッ
提督「そうか、なら安心だなぁ」スリスリ
雪風「こらっ、くすぐったいですよぉ」
<キャッキャッ
不知火 加賀(某霊駆除漫画の途中からでてきたヒロインに全部かっさらわれた気分です……)
不知火「……ですが」
加賀「ここで諦める私達じゃありません、そうですよね?私のライバル、不知火」
不知火「ええ、不知火のライバルは貴方だけですよ、加賀さん」
雪風「……」
雪風(……まぁ、こんなもんじゃ諦めませんよね)
雪風(ふふ……でも司令はいずれ、私の虜にしてあげますよ。楽しみにしていてくださいね……)
雪風「さて司令、そろそろ離れてくださいね。お仕事の時間ですよ」
提督「えぇ……もう少し……」
雪風「だ・め・で・す」グイッ
提督「……ハッ!?自分は一体何を!?」
提督「雪風が倒れて手を差し伸べようとした時から……うっ、思い出せん」
不知火 加賀(ずいぶんと都合のいい記憶喪失ですね)
雪風「クスクス……」
提督「そうだよ仕事だよ、っていや、その前に」
不知火「あら、今度は学習したようですね」
加賀「私の提督なら言う前に気づくと信じていましたよ」
提督「信じてるならその手に持ってる凶器をしまってくれないか」
加賀「あらやだ私ったら、間違えてつい愛用の拷問器具を持ってきてしまいました」
提督「その話を聞いて100倍ドン引きだよ!!」
加賀「レプリカですよ、あくまで」
加賀「まあ、実用性はあるかもしれませんが」ボソッ
提督「凄い不穏な言葉聞こえたよ!?」
提督「……まあ、それは置いておこう」
提督「で、結局どっちがじゃんけんに勝ったんだ?」
不知火「ああそれがですね……」
雪風「司令、さっきから何の話なんですか?私にも分かるように説明してください」ズイッ
加賀「……」ピキッ
不知火「……」ピキピキッ
提督「あ、あーえーとだな……」
提督(やばいやばい、二人の顔が阿修羅になってるよ)
提督(だがこれを隠したら雪風が今度は……ああああ……)
雪風「し・れ・い?」ギロッ
提督(な、なんで雪風から戦艦級のオーラが……!?)
提督「……」ダラダラダラ
提督「……よし、じゃあ説明するからちょっと三人共後ろ向いててくれないか?」
雪風「……その提案はかなりの疑問ですが、教えてくれるなら受け入れましょう」クルッ
不知火「……言ったら」ボソッ
加賀「……拷問器具」ボソッ
提督「……」ガタガタガタガタ
提督「……よし、三人共後ろを向いたな」
提督「それじゃ、少し待っててくれ」
雪風「なるべく早くしてくださいねー司令」
雪風「早くしてくれないと……私また怒っちゃいますよ?」クスクス
不知火「もう提督には指一本触れさせませんよ、雪風」ギロッ
雪風「あら……怖い顔」クスクス
加賀「少しばかり先手を打ったからといって、調子に乗ることは愚鈍な輩がする事ですね」
雪風「それは誰に向かって言ってるの?自分?ふふっ……」
加賀「……頭にきました」ピキピキッ
後ろに黄色のオーラを纏った三人……
一触即発の空気に提督が下した決断とは……!
三人「提督(司令)っ!まだですか!?」クルッ
モヌケノカラーン
三人「……」
雪風「これはお仕置きが必要みたいですね……」
不知火「仕方ないですね、ここは一時休戦といきましょう」
加賀「提督を確保する事が最優先事項ですしね」
雪風「ええ、仕方ないですね。ここは手を組みましょう」
ある意味、提督の判断はよかったのかもしれない(?)
三人が結託したのだから……表面上は
雪風(ふふ……司令を私が一番最初に捕まえて……)
不知火(誰も居ない部屋に引きずっていって……)
加賀(私だけしか見れないようにする……)
三人「……」ニヤァ
三人が去っていった後に、遠征の報告に来た駆逐艦の子が、提督室の空気の異変に敵襲と勘違いして助けを求めたのはまた別の話である
提督「はぁ……はぁ……ここまで来れば……」
提督室からかなり遠い所にある、工廠に提督は来ていた
提督「こ、ここなら資材も沢山あるし隠れられるだろう……大丈夫だ……大丈夫だ……」ブツブツ
日向「何を一人でぶつぶつ言っているんだ……君は」
提督「うぼぁぁっ!!!」
日向「うおっ」
提督「……って日向か、驚かせないでくれよ」
日向「いや、驚いたのは私の方なんだがね?」
提督「ここでなにしてるんだ?」
日向「私としては君に聞きたい質問だが……」
日向「まぁいいさ、私は装備のメンテナンスにね、先の戦闘で少し損傷してしまったんだ」
提督「ふむ……大丈夫だったか?」
日向「ああ、一日もあれば直せる程度だ、すぐに出撃できるさ」
提督「いや、自分は日向の体が大丈夫だったか聞いたんだが……」
日向「……?あぁ、私ならほら、この通りピンピンしてるぞ」
提督「そうか……よかった」
日向「しかし、つくづく思うが、君は変な提督だな」
提督「変、自分が?」
日向「所詮、私達なんて兵器なんだから、多少の損傷なんて当たり前だろう?」
日向「他の鎮守府の提督でそんなに艦娘達の体調とかを気にしているって話は聞いたことないからね」
日向「私も以前居た鎮守府では自分より装備を大事にしろと言われてたもんでね、つい装備の事を聞かれたのかと思ったよ」
提督「……」
提督「なぁ、日向」
日向「なんだい」
提督「自分は、変か?」
日向「……変だね、うん。紛れも無く」
日向「所詮私達なんて使い捨てだってのにさ、そこまで私達に固執する理由はなんなんだい?」
提督「……そうだなぁ」
提督「まぁこれは当たり前の事だけど、お前らは"お前たち"しか居ないだろ?」
日向「……」パチクリ
提督「けどこれは本当に当たり前の事だからな……日向が求めてる答えとはまた別の事なんだろうな……」
日向「あー……いや、十分だよ。君の言いたい事は分かったさ」
提督「こんな当たり前な話でよかったのか?」
日向「……それが当たり前かどうかは、常識のズレが起きているのかもね」
日向「世間の常識じゃぁ私達なんていくらでも代わりが居る、使えなくなったらまた新しい艦を作るように……」
日向「だから君の言うような私達は私達しか居ないっていう考えは、とっても珍しいと思うがね」
提督「でもそれって、普通だろ?」
日向「……話は聞いていたか?」
提督「そうか、ある程度自覚はしていたが……やっぱり変なのか、自分って」
日向「……まぁ、そうなるな」
日向「でもな、私はその変な君が好きだぞ?」
提督「え」
日向「ああ、好きってのは……まぁ、あれだ」
日向「尊敬してるとか、まあそんな意味として受け取ってくれ、うん」
提督「そ、そうか……」ドキドキ
提督(日向は時折こういう直球で勘違いするような言葉を言ってくるからな……落ち着け、自分)←ブーメラン
日向「……ふむ、ならついでにもう少し質問してもいいかな?」
提督「あ、あぁ。自分に答えられる事なら」
日向「ありがとう。それじゃあ……」
日向「何で、私達は戦ってるんだろうな」
提督「……え」
日向「護りたい人を護るため?国の勝利の為?名誉の為?恩賞の為?」
日向「そして、"敵"っていうのはなんなんだろうね?」
日向「あっちから見ればその"敵"ってのは私達だ」
日向「それだったら、どっちが正義でどっちが悪なんだろうね?」
日向「こっちにも正義ってのがあるように、奴さん達にも正義ってもんがあるのかもね?」
日向「まあ、それは言語が通じないから分からないだけかもしれないんだが」
日向「……戦うために生まれた私がこんな事を口走るなんて、絶対に言ってはいけないはずなんだがな」
提督「それ……は」
日向「……少し意地悪な問だったかな?」
提督「……」
日向「ま……君にこの質問をするのはよくなかったな」
日向「すまん、気にしないでくれ。どうやら私も提督と同じで変な奴みたいだ」
提督「……それはフォローになってるのか?」
日向「はは、なってないな全く」
日向「……それじゃ、私はそろそろ行くよ。ゆっくり話せて、よかった」
提督「ごめんな、答えられなくて」
日向「いいさ、気にしないでくれ。あの質問は私の気の迷いさ」
日向「私達は戦う為に生まれた、そして戦いで死ぬために生まれた」
日向「これは揺るぎない事実さ、答えになってるよ」
日向「それじゃ、また」
提督「……ああ、また」
離れていく、日向の背中
傍から見れば、いつもの頼もしい背中かもしれない
けど、提督から見ればその背中は、どこか寂しげに見えた
話を聞いたからだろうか?それとも気のせいだろうか?
でもそれが、提督には耐えれなかった
提督「……日向!」
日向「……?」
提督「質問に答える事はできなかったけど、これだけは言わせてくれ」
提督「自分は、誰も沈めない、平和になるまで絶対な」
提督「敵にも正義はある、だけど自分には信念ってもんがある」
提督「それが自分のエゴでも、それを自分は貫き通していく」
提督「だから……戦いで死ぬなんて人生、自分には絶対にさせないからな!」
日向「……」
日向「……やっぱり、君は変だね」
提督「自覚しているさ」
日向「なら、そのエゴを貫き通してみな、私もできるだけ付き合うよ」
日向「それじゃあ本当にさよならだ」
提督「ああ、"またな"」
日向「……あぁ、"またね"」
気のせいか、日向の背中は
いつもの強くて凛々しい背中になっていた、ような気がした
日向「……」テクテク
日向(変な奴……だけどさ)
日向(私は、大好きな変な奴だよ?)
日向(まぁ、また近い内に会うだろう、なぁ"提督"?)
日向はポケットから赤い印の付いた棒を取り出し、くるくる回しながら機嫌よく工廠を出て行った
不知火「あ、日向さん。少しいいですか?」
日向「ん?どうした不知火」
不知火「実は今提督を探しているんですが……どこかで見ませんでしたか?」
日向「ああ、提督なら工廠に居るよ」
不知火「ありがとうございます、では急いでるのでこれで」スタスタ
日向「うん、またな」
日向「あ、そういえば何で提督あそこに居たのか聞けなかったな……まぁいいや」
提督「……ふぅ」
提督(やっぱり、色んな考えの娘達が居るんだなぁ……)
提督(……もっと、皆の話を聞きたいな。逃げ回りつつ話ができれば……)
不知火「ごきげんいかがですか?提督」
提督「……」ガクガクガクガク
不知火「どうして震えているんですか?提督の秘書艦、不知火ですよ?」
提督「……や、やぁ奇遇だな不知火」
不知火「ええ、奇遇ですねこれは最早運命なのでは?」
提督「一つ聞いてもいいか、不知火」
不知火「一つとおっしゃらず、何でも聞いてください提督」
提督「その後ろに持ってる注射器は……なんだ?」
不知火「すいません、それは答えられません」
提督「いやあの」
不知火「ならヒントだけ、これは狩猟用の麻酔薬ですね」
提督「それ答え!てか自分に使う気だったのかよそれ……」
不知火「あくまでも、最後の手段ですよ。暴れられたら困りますから」
提督「な、何をするつもりなんだ……?」
不知火「決まっているでしょう……?それはですね」
提督(……南無三!)
不知火「頭を……撫でてください」
提督「……へ?……あ……そうだったな」
提督「はぁ~……」ヘタリ
不知火「……何命が助かったみたいな顔しているんですか?」
提督「いや、気迫がな……」
不知火「不知火はどんな事があってももう提督に手は出しませんよ」
不知火「拘束したり、昏睡はさせたりするかもしれませんが」ボソッ
提督「あー何も聞こえんなー」
不知火「まぁそんな事はどうでもいいんです、早くしてくれませんか?」ズイッ
提督「……はは、不知火は可愛いな」
……自分をただそのお願いの為だけに探しまわっていた不知火が、とても可愛く見えた
異常な条件下の吊り橋効果ってやつかもしれないが、提督にはとにかくそう思えた
それもそのはず、提督の目の前に居たのは、一人の恋する少女だったから
不知火「なっ……」カァァ
不知火「はぁ……本当に提督はずるいですね、今は不知火のターンだったじゃないですか」
提督「はは、緊張がとけたらつい本音がな」
不知火「……っ!その言葉も余計です!」
提督「っと、すまんすまん」
不知火「い、いえ、そ、それより早くしてくれませんかっ!?」
提督「うん、おいで不知火」
不知火「……はい」
あぐらをかいて座った提督に、とことこと近づいていく不知火
密着するまで近づくと、不知火は提督のあぐらの中に背中を見せて座った
不知火「……待たされた分、やってくれなきゃ嫌ですからね」ムスッ
提督「ああ、気が済むまでやってあげるさ」ナデナデ
不知火「あ……」
提督「どうだ、痛くないか?」
不知火「いえ……ちょうどいいです」
提督「そうか、よかった」
不知火(……)
不知火(……さっきまで、提督に対してあれだけ怒っていたのに)
不知火(それをまた、提督に宥められてしまいました)
不知火(やっぱり不知火の軸となっているのはいつも提督なのですね、分かっていましたが)
不知火(何故、提督と一緒に居るとこんなに安心するんでしょう?)
不知火(恋……とはまた別の何かがあるのでしょうか?)
不知火(それとも……)
提督「不知火?」
不知火「なっ、なんでしょう?」
提督「いや、なんだかぼーっとしてたみたいだから」
不知火「そ、それはですねえーと」
不知火(い、言えない……まだ自分の中でも分からない事なのに……何か別の事……別の事……)
不知火「提督のナデナデが凄い気持ちいからで……あ!」
提督「……そうか、ご期待に添えてなによりだよ」
不知火「~~っ!!」
火がついたように顔を真っ赤にして、そのまま俯いてしまった
提督はそれを見てまた可愛いと思い、耳まで真っ赤にしている不知火に対して、悪戯心がむくむくと沸き上がってきた
提督「……」サワ
不知火「ひゃっ!?て、提督?」
提督「ん?どうした?」
不知火「な……なんで不知火の耳を触っているんですか?」
提督「いやあなんか耳が真っ赤になっていてなぁ、心配だったんだ」ニヤニヤ
不知火「そ、それは!」
提督「不知火は原因が分かったりするか?」
不知火「……提督は意地悪です」
提督(……可愛いなぁ)
いつもやられる立場だっただけに、受け身になってる不知火に対して次は何してやろうか楽しみになってきた提督
不知火も受けに回ると弱いのは自覚しているらしく、ただ提督が手を出すのに赤面しながら体を寄せていた
提督(……不知火の肩、腕、お腹……)
不知火「ひゃっ、あっ、んんっ……!」
提督(腰、太もも、ふくらはぎ……)
不知火「んんっ!提督!そこはっ!」
不知火の全身を撫でたり、揉んだり、くすぐってみたり
とにかく、好き放題だった
提督(いかん……妙な気分になってきた……)
正気に戻ろうと、一旦手を止める
そこでやっと不知火がグッタリしている事に気づいた
それに慌てて手を離す
不知火「はぁ…はぁ…」グッタリ
提督「す、すまん!やりすぎたな」
不知火「……いいですよ」ボソッ
提督「……え?」
不知火「提督がしたいなら……不知火は、いいですよ?」
ゆっくり振りむきながら、提督の顔を上目遣いで見て、そう言った
後ろを向いていたので表情が分からなかったが、不知火は顔を真っ赤にし、少し息も乱れ、瞳が潤んでいた
不知火としてはこれでも精一杯声を出したつもりだったのだが、蚊がなくような声になってしまっていた
だが、その小さく囁くような声と表情は、とてつもない破壊力になっていた
提督(……したいって……まさか……な)
不知火「提督……」ポー
提督「……!!」
提督「だ、駄目だっ!」バッ
不知火「あっ……」
提督は反射的に不知火を押しのけていた
それは、明確な拒絶でもあった
不知火「てい……とく?」
拒絶された不知火の顔は、先程までと打って代わっていた
甘えて、信頼しきった顔
それが、信じていた人に拒絶され、混乱したような、呆然ともしているような表情だった
提督「……はっ!?」
提督「ご、ごめん!不知火!突き飛ばしたりなんかして、怪我はないか?」
不知火「……いえ、体はどこも」
提督「そ、そうか……よかった」
不知火「……提督、ありがとうございました。撫でてくれてとても嬉しかったです」
不知火「不知火は少し行く所があるので、失礼します」
提督「あ、あぁそうか。気をつけてな」
不知火「……えぇ、ではまた」
駆け足で去っていく不知火
その背中を見つつ提督は、自分のとった行動に困惑していた
言葉で止める事なんていくらでもできたはずなのに、先に体が動いていた
考えれば考える程分からなくなり、提督は俯いた
起き上がれるようになった時には、当然不知火の姿は見えなかった
背中を追うことなんて、とてもできなかった
不知火「馬鹿……!」
誰も居ない部屋で不知火は呟いた
不知火「不知火の……馬鹿!」
不知火「どうして……あんなこと……」
不知火「何で……望んでしまったの」
不知火「いやだ、いやだよ……」
不知火「これで関係が壊れてしまったら……」
不知火「提督に拒絶されたら、不知火はもう生きていけません……」
蹲るようにして泣く不知火
何に対して泣いているのかが、自分でもよく分かっていなかった
拒絶された事が悲しかったから?
関係が壊れるのが怖いから?
信頼していた人に突き放されたから?
どれも当たっていて、どれも間違ってるのかもしれない
ただ、一つ言えるのは
とても、とても悲しかった
不知火(……どうして?)
不知火(……どうして、拒絶するなら、不知火に今まで構ってくれたの?)
不知火(なんで、不知火を助けてくれたの?)
不知火(それとも……あれも全部嘘だったのかな……)
不知火(嫌だよ……嫌……そんなこと)
歯車は噛み合ったように見えた
だけど、それは表面上にしか見えてなかったのかもしれない
少しの事で、また歯車は止まってしまう
大雑把だけど、繊細
ややこしい歯車は、いつきちんとはまるんだろうか
誰にも分からない
神様にも……分からないかもしれない
投下終わりです
意外と長い書き溜めができてました
それではまた書き溜め作ってきます
乙
雪風だけかわいさの欠片もないな
>>257
クゥーン……(子犬先輩)
毎度不定期な更新で申し訳ありません
少しだけですが、投下していきます
加賀「探しましたよ、提督」
提督「……」
加賀「……何かあったんですか?」
提督「……いや、なんでもないよ」
加賀「そうですか」
提督「それにしても、不知火も加賀もよくここに居るのが分かったな」
加賀「私の前に、不知火が来ていたんですか?」ピクッ
提督「ああ、不知火が一番乗りだったな」
加賀「なるほど、駆逐艦だけあって、機動力は流石ですね……」
加賀「ですがこの際一番など関係ないのです、勝敗とは、与えられた印象です」
提督(……そうだった、不知火の一件で忘れていたが)
提督(加賀もその為に追いかけてきてくれたのかな)
提督(なんで自分は、あそこで体が動いていたんだ?)
提督(……怖かったのか?、深く関わろうとするのが)
提督(逃げてるのは、自分なのか?)
加賀「提督」
提督「あ、あぁなんだ?」
加賀「……はぁ、なんだかここまでいつもと違うと、不知火に何をされたのかが気になってしまいますね」
提督「い、いや、不知火とは何もしてないぞ、やましいことなんて何も……」
加賀「そこまで聞いていないのに、喋ってしまうんですね」
提督「あ……」
加賀「まあ、そんな正直な所が好きな所でもありますから」
提督「そ、そうか」
提督(こんな直球で感情を伝えられる事が……何故だろう、嬉しさよりも)
提督(やっぱり、怖いんだろうか、自分は)
加賀「提督、提督」
加賀「……そろそろ、頭にきました」
提督「え?」
加賀「私は、提督が好きです」
加賀「皆との交流を嬉しそうに話す提督を見るのも、少々嫉妬しますが、好きです」
加賀「どのようにしている提督も好きです、が」
加賀「……今は、私と提督しか居ないんですから」
加賀「私の話を聞いて、私を見てください」
加賀「そのように、沈んだ顔だけは、私は好きになれません」
提督「あ……」
加賀「悩みがあるなら、話してください」
加賀「私は、提督の部下……いえ、仲間なんですから」
提督「加賀……」
加賀「と、ここまでが感動する仲間との掛け合いとして」
提督「……へ?」
加賀「ほら、行きますよ提督」グイッ
提督「え、ちょ、どこに?って力強っ!!」
加賀「私のお願いを聞いてもらっていません、不知火が一番に来たのなら恐らく提督は不知火のお願いをもう叶えたと考えます」
加賀「その結果あのような事になっていた、何が起こったかは分かりませんが、提督に何かしらの印象を与える事には成功したはずです」
加賀「それを塗り替える為に、加賀の本気を見るのです」
提督「行き先結局言ってない!てか何か違うの混ざってるし!」
加賀「ほら、さっさと歩く」
提督「いだだだだだ!」
加賀「嫉妬するって、言ったでしょ?」ボソッ
提督「え、何?何か言った!?いだだだだ!もうちょっと力緩めて!あああああああ!!」
加賀「何でもありません」
加賀「さあ、到着です」
提督「痛い……痛い……」
加賀「大丈夫ですか、提督」
加賀「あら、少し赤くなっていますね。これは大変です」
加賀「唾を付ければ治ると言いますが……」
提督「大丈夫だから!大丈夫だから話しながら舐めようとするのはやめて!」
加賀「しかし、それでは私の計画が(提督の苦しそうな顔を見るのは耐えられないです)」
提督「本音と建前間違えちゃってるよ!」
加賀「さぁ、どうぞ」ガチャ
提督「……ここは?」
加賀「私の部屋ですよ、正確に言えば私と赤城さんの部屋ですが」
綺麗に整頓された、余計な物が無いシンプルな部屋だった
壁紙も真っ白なもので、清潔感が出ている
二人の性格がよく出ていると思った
提督「……そうか」
加賀「ええ」カチャ
提督「……何で鍵をかけた?」
加賀「邪魔が入ると困りますので」
提督「……あ、自分ちょっと用事思いだしちゃったなー」
加賀「どこに行くんですか?」ガシッ
提督「ま、待て落ち着くんだ加賀、話せば分かるから」
加賀「何ですか?」
提督「その、後ろ手に持ってるの何か見せてくれないか?」
加賀「……」
提督「あ、あの、無言で詰め寄ってくるのは何でなんだ?なあ加賀、加賀さん」
加賀「大丈夫、痛くはしないわ」
提督「や、やめてくれ!拷問だけは、拷問だけはぁ!!」
提督「じ、自分にはまだ使命が……」
加賀「提督」
提督「は、はい!」
加賀「私のお願い……忘れてしまいましたか?」
後ろ手に持っていた物を、提督に見せる
それは、どこにでもあるような耳かき棒だった
提督「……」
提督「はぁあ~……」
加賀「何をそんなに怖がっていたんですか?」
提督「いや、加賀がやけに威圧感を出して迫ってくるからさ……」
加賀「そんなものは出した覚えがありませんね」
加賀「はい、此方に頭を向けて寝転んでください」
加賀が、クッションの上に正座し、提督に手招きする
緊張の糸が切れた提督はフラフラと導かれるように吸い込まれていった
加賀「上手にできるか分かりませんが……精一杯努めさせていただきますね」
提督「う、うん此方こそよろしく頼むよ」
提督(なんか緊張してきたぞ……これはただの耳かきだ……耳かきだ……)
加賀「では、一航戦、加賀、出撃します」
提督「出撃って……」
5分後
加賀「提督、此方はどうですか?」
提督「あっ、そこ……」
加賀「ふふ、顔がウットリとしていますよ?そんなに私のテクがいいのですか?」
提督「あ、あああ、加賀の棒捌き凄いよ……そんな所まで……」
加賀「まだまだ、これからですよ。今度はここです」
提督「そんな!裏までなんて……ふぁぁぁぁあ……」
加賀「あら、こんなに溜まっているじゃないですか提督」
提督「す、すまん……」
加賀「いけない人ですね、これからは私が毎日絞りとってあげますよ」
提督「毎日!?こんな事毎日やられたら、自分は駄目になってしまう……」
加賀「いいんですよ、私の前では駄目な提督になってください」
加賀「それを知るのは、私だけでいいのです。その表情は私だけのものです」
提督「あ……あぁ……もっとしてくれ、加賀……頼む……」
加賀「ええ、提督の望みとあらば……素敵ですよ、その表情」
※耳かきです
短いですが、今はこれまでで
また今日の夜にも投下する予定です
21時位に投稿しようと思ってたんですが某ネトゲに時間食われてました(自業自得)
続きぼちぼち投下していきます
加賀「まぁ、強いて言うなら」
提督「……ん?」
加賀「こう見えて、少し緊張していたのかもしれません」
提督「……?」
加賀「私……いえ、ここに居る皆が恐れている事、それは何か分かりますか?」
加賀「それは、提督に拒絶される事です」
提督「!」
加賀「だから、私達はどこかで境界線を作っていた」
加賀「ここを超えたら、こんな事を望んだら、関係が壊れてしまうのでは、と」
加賀「おかしい話ですよね、提督本人に何も聞いていないのに、自分達で壁を作ってしまっているのです」
加賀「少し、話を変えます」
加賀「何故、皆はあの薬の研究をしたがっていたのか?」
加賀「それは、もしかしたらあの薬が自分たちの境界線を壊してくれるんじゃないか?と考えたのです」
提督「……」
加賀「薬に頼るのが、弱い事だと思いますか?」
加賀「しかし、提督の事に関しては、どうしても後押ししてくれる何かが欲しかった」
加賀「それほどまでに、提督の存在は大きく、そして簡単には変えがたいものだった」
加賀「だからこそ、あそこまで未知の薬にも、藁にも縋る思いで手を伸ばした」
加賀「ある意味、残酷な競争ですよね。欲しい人は沢山居るのに、数は限られた量しかない」
加賀「こんな事を提督に伝えたら、さぞ悩む事でしょう、ですから言いませんでした」
加賀「でも、私は怖かったのです」
加賀「それは、提督にも境界線というものがあったら、ということ」
加賀「私達がどれだけ近づいても、提督が私達をただの仲間としてか認識できないならば、意味がありませんからね」
加賀「言葉とは、繰り返されるたびに弱まっていくものです」
加賀「だから、私の好きという言葉も、いつしかは心に何も響かなくなったらと考えたら」
加賀「とてもじゃないけど、私にはそれが耐えられなかった」
加賀「ですから、この事実を知って欲しかった」
加賀「私達が、どんな事を心に秘めているか、知って欲しかった」
加賀「……でも、これは自分に対する言い訳かも知れません」
加賀「皆を盾にして、自分の都合のいいように解釈した、そうともとれます」
提督「……」
加賀「申し訳ありません、長々と喋ってしまいましたね」
提督(拒絶……する事)
提督(それを……恐れている)
加賀「……実は私、嘘を一つついているんです」
加賀「それは、不知火が一番乗りだった、ということ」
提督「!」
加賀「見てたんです、提督が日向と話していた時から」
加賀「本当は、日向と話し終わった後私が行くつもりでした」
加賀「そして、この話をしようと、そう心に決めていました」
加賀「ですが、私とした事が、怖気づいてしまった」
加賀「この話をして、何かが変わってしまったら、それが悪い方へ向かってしまったら」
加賀「そうこうしている間に、不知火に先を越されてしまいました」
加賀「まあ自分で言うのもなんですが、私はずるいですから」
加賀「一部始終を見させてもらいました」
加賀「……不知火が走り去っていく所まで」
提督「……」
加賀「私と不知火はライバルです」
加賀「ですが今、私は敵に塩を送っている状態ですね」
加賀「ずるいといっても、フェアにやりたいんですよ」
加賀「それが、一応ポリシーですからね」
加賀「だから……」
提督「加賀」
提督「本当にお前にはいつも助かっている、自分では気づけなかった事を教えてくれるからな」
提督「本当に頼りになる、そして……」
提督「とてもいい、"女"だよ」
加賀「!」
提督「そして、ごめん。先に謝っとく」
提督「自分は、不知火を探してくるよ」
加賀「……ええ」
いつか見たような光景
提督の後ろ姿を見守る加賀
呟く声は、相変わらず届かなくて
加賀「……二度目はないって?」
加賀「私は、ずるいですから、嘘もつきます」
加賀「まぁ、一歩以上は、前進したでしょう」
加賀「そうでしょう?不知火」
提督「どこだ……どこに居るんだ、不知火」
息を切らしながら、部屋から部屋を駆け巡る
まさか、こんな数日で不知火を二度も走って探す事になるなんてな、と自嘲めいた笑いがこぼれそうになる
本当に馬鹿だった、何も分かっていなかった
分かった振りをしていただけだったのだ
そうやって、自分の心を抑えこんでいた
怖かった、彼女はそう言った
それは自分にも備わっていた感情で、彼女も同じ感情を抱いていたのは、知らなかった
皆怖いのだ、関係が脅かされるということは
当たり前の事だったのに、何で自分だけだと思っていたんだろう
それなら、その関係を壊そうとして勇気を振り絞った行為を拒絶された不知火は、想像を絶する痛みを負ったはずだ
提督「はぁ……っ!はぁっ……!」
胸が苦しかった、それは全力疾走をした事による息切れなのか
それとも、胸の中を締め付ける痛みのせいなのか
でも、そんな事はどうでもよかった
自分の痛みなんて、不知火に比べれば微々たるものだから
提督「……はぁ……はぁ、やっと……見つけた」
提督「こんな……ところに居るなんて……不知火は隠れるのがうまいな」
不知火「……っ、て、提督……」
提督「でも、やっと見つけられた……もうかくれんぼは終わりさ」
不知火「……何の用ですか」
部屋の中は電気が付いておらず、窓から差し込む光だけが不知火と提督を照らしていた
暗くてよく見えないが、鼻をすすりあげる音、そして、赤く腫れた瞳だけが分かった
震えた声、しかしそれをなんとかいつもの声色に戻そうと必死になっていた
この状況でも、平静を装うとする不知火を見るのは、これ以上耐えられなかった
提督「不知火」
すっ、と足を踏み寄る
不知火「……ひっ!」
それに怯えたように、飛び退く不知火
最早、平静を保つ事は不可能だった
不知火「こ、来ないで!」
不知火「もう……あんな思いをするなら」
不知火「不知火は、もう、心なんていらない!」
提督「不知火」
呼びかけると同時に、足をまた一歩踏み寄る
彼女また、怖かったのだ
本当に、本当に怖かったんだ
不知火「やめて……やめて!」
不知火「お願いします……もう不知火に近づかないで……」
じりじりとにじみ寄る提督に、それに合わせるように下がる不知火
だがしかし、もう壁はすぐそこに迫っていた
不知火「あ……!」
気づいた時には、不知火にもう後はなかった
提督「不知火」
最後の一歩を、歩み寄る
もう逃げ道はなかった
提督「自分は、馬鹿だからさ」
提督「何度も、自分の知らぬうちにこうやって傷つけてきたんだろう」
提督「でも、頑張って一つ一つ覚えていくから」
提督「だから……まだ愛想を尽かさないでくれ、これは自分の我儘だ」
優しく、不知火を抱きとめていた
その体は震えている、やめて、やめてと
まるで提督の体温を拒絶するかのように震えていた
提督「……一つ分かったことは、お前たちが自分と一緒の感情を持っていた事」
提督「自分も、怖かったんだ、この関係が壊れる事が」
提督「深く踏み込んだら、もう戻れないんじゃないかって、心のどこかで思ってたんだ」
提督「けど、やっと決心がついたよ。お前達と一緒だって事を知れてな」
提督「自分はもう逃げないから、少しずつ変わっていこう」
不知火「てい……とく……」
その言葉を聞いて、不知火の震えは止まった
だが、その瞳には涙が一杯に溜まっていた
不知火「……すいません、また胸をお借りしてもいいでしょうか」
提督「こんなのでよかったら、いくらでも」
その言葉を聞き、不知火の瞳からぼろぼろと大きい雨粒のような涙が流れる
不知火「……っ…うっ……うっ……」
静かに、胸に顔を押し付けるように
声を押し殺して、泣いた
月の光が、二人を照らす
まるで、何かを祝福しているかのように
涙はまだ、止まらなかった
既にゲームセットしているように見えますがまだ続きます
後まだ薬飲んでない子が七人
あっ……(察し)
少し投下していきます
最後にちょっとしたキャラ安価だけ出させていただきます
提督「少しは落ち着いたか?」
不知火「ええ……ふふ、提督の胸をこんなに短期間に二回借りるとは思いませんでした」
提督「自分だって貸すとは思わなかったさ、それに不知火を二回も探すのもな」
不知火「この数日は、色んな新しい事がありすぎましたね」
提督「少し疲れたか?」
不知火「いいえ、さっきの提督の言葉で疲れなんて吹っ飛びました」
提督「そうか、そりゃよかった」
提督「……不知火、さっきの話の続きを言ってもいいか?」
不知火「続きなんてあったんですか?不知火はてっきりこのまま不知火√かと思ったんですが」
提督「√ってなんだよ……数学か何かか?」
提督「そうだな、これで自分達のお互いの思ってることは分かった訳だ」
提督「だけどな……まあ、何というか……」
提督「まだ不知火が好きか、とかそういうのはよく分からないんだ」
提督「だから、それも含めてこれから少しずつもっとお互いを知れればな、って事なんだが」
不知火「……ふふ、罪な人ですね。私達でハーレムでも作るつもりですか?」
提督「いや、そんな事はない」
提督「自分の気持ちがはっきり分かったら、すっぱり決断させてもらうさ」
提督「例え、それが誰かを傷つけたとしても……それは自分のケジメだ」
不知火「……冗談ですよ、提督がそんな人じゃないってのはずっと昔から知ってます」
提督「ん、何だからかってたのか?」
不知火「可愛い戯れじゃないですか」
提督「自分で言うな」
不知火「あら、いいツッコミですね」
提督「ここ数日で鍛えあげられたからな」
提督「さて、そろそろ部屋に……」
ぐぅ~
提督「……」
不知火「……」
提督「ん?何の音だ?」スットボケ
不知火「~~っ!!」カァァ
提督「さーて、不知火。今日の夕食は何にしようか?」ニヤニヤ
不知火「な、鳴ってないです!不知火のお腹の音なんかじゃないです!」
提督「不知火、自分でお腹の音って言ってるぞ、自分はお腹の音とまでは言ってないしなぁ」ニヤニヤ
不知火「~~っ!!!!」
不知火「……」キッ
提督「おお、こわいこわい、睨むなって」
提督「ほら、食べに行こう」スッ
不知火の前に、手を差し伸べる
不知火「……あ」
不知火「……ええ、行きましょうか」
不知火は、少し恥ずかしそうに、それでも、しっかりと手を握った
その綺麗で華奢な手を、提督もしっかりと握り返した
それは、何かの決意かのように
不知火(……手を繋ぐだけでも、不知火は幸せです)
不知火(何故でしょう、決断を下せないと言われた時に少しがっかりもしましたが)
不知火(それ以上に、もう少しだけこの曖昧な時間を楽しみたいと思ったのは)
不知火(……いつか来る日までに、強くならなきゃですね)
不知火(でも、きっと大丈夫です、だって提督は言ってくれたから)
不知火(自分も、私達と一緒だって)
不知火(その言葉だけで、不知火は一杯勇気を貰えましたから)
提督「今日は何食べるかなぁ……」
不知火「また、冒険しませんか?正直マムシのフルコースは見ててキツかったですが」
提督「でもあれ、意外と美味しくなかった?料理は見かけによらずって奴だよ」
不知火「なら、今日は虫でも食べましょうか」
提督「……それは無理ぃ!」
不知火「ふふ、冗談ですよ(棒)」
提督「目が笑ってないけど!?」
不知火「やだなぁ、不知火がまさかちょっとからかわれた程度で心がぐつぐつ煮えたぎってるとかそんな事はないですよ?」
提督「だから目が笑ってないけど!?」
廊下を仲睦まじく手を繋いで歩く二人は……親子?それとも?
意外と、人と人の関係ってのは、分からないものである
雪風「はぁ……全然見つからない……」トボトボ
雪風「提督はまだこの世に存在してるんでしょうね……まぁあの二人に何かされてたら消しますけど」
提督「……おい、人を勝手に殺すなよ」
雪風「あら、提督。自分から来てくれるなんて感心しました」
雪風「……おや?不知火さん、居たんですか」
不知火「ええ、ご機嫌よう雪風」
そこで、提督と不知火が手を握っているのに気づいた
雪風「……ずいぶんと仲がいいことで?」ニコニコ
不知火「ええ、不知火と提督はずいぶんと仲がいいんですよ、知りませんでしたか?」ニコニコ
雪風「ええ、知りませんでした私、まさか不知火さんとなんてねぇ」ニコニコ
不知火「ま、知らなくても無理はないですね。不知火達に付け入るスキなんてありませんから」ニコニコ
提督(……笑ってない、二人とも笑ってるように見えるけど、目がマジだ!)
提督(ど、どうすればいいんだ?くそっ、大事な選択肢の前にはセーブさせろって言ったじゃないか!)←錯乱中
提督(ここで取ればいい判断は……考えろ……考えろ……)
提督(……!なんだ、答えは一つしかないじゃないか!)
提督「あ、あーゴホン」
提督「ゆ、雪風」
雪風「あら、なんでしょう提督。私少々気が立っておりますので、言動には少々注意をお願いしますね」ニコニコ
提督(こ、怖い……が!)
提督「こっちの手、空いてるぞ」ヒラヒラ
雪風「……は?」
不知火「……え?」
呆気にとられた雪風と、これまた同じく呆気にとられた不知火
皮肉な事に、いがみあっていた二人の表情はシンクロした
提督「や、飯これから食いに行こうと思ってたんだけどさ、よかったら雪風もどうだ?」
提督「今日は寒いから、食堂に行くまでに手が冷えるとあれだし、手を繋げば暖かいぞ!」ニコッ
精一杯の今できる笑顔だった
雪風「……はぁ」
雪風「……それじゃ、お言葉に甘えて」
提督「お、おうそうこなくっちゃな」
雪風「どうします、不知火さん。まだやりますか?」
不知火「……ふっかけてきたのはそっちですが、まあもうそんな気はどっかに行ってしまいましたよ」
雪風「ま、それもそうですね。じゃあ食堂までしっかりエスコートお願いしますね?」
すっと手を前に出す
その小さくて真っ白な手を空いた手で、しっかり握った
提督「……」
雪風「……?どうしました?」
提督「いや……雪風の手、冷たいなって」
雪風「手が冷たい人は、心が温かいって言うじゃないですか?」
提督「どの口g……何でもないです」
雪風「惜しかったですね、今最後まで言ってたら提督のポイントが-に到達してたんですが」
提督「……-になったらどうなるかとかは、聞かないでおくよ」
雪風「賢明な判断だと思いますよ。なに、死ぬような事はしませんし安心してください」
提督「何も安心できないけど!?」
不知火「不知火のポイントが-になっても大丈夫ですよ、ただ-になると+に戻るまで一生離れず行動するようになるだけですから」
提督「それも怖いけど!?」
不知火「冗談です、+でも一生離れず行動しますから」
提督「冗談と言って欲しかった言葉はそれじゃねえ!!」
和気藹々……かどうかはちょっと不明だが
愉快な仲間を一人増やして、食堂へまた向かうのであった
提督(雪風の手……あの冷え方は、多分)
提督(自惚れでなければ、ずっと自分を探してたんだろう。平静を装っているが、必ず疲労は溜まってるはずだ)
提督(……やっぱりもう逃げるのはやめよう。もう昔の自分とは決別しなければな)
提督(誰かを傷つける判断になっても、後悔しない為に)
雪風「-ポイント……電気ショック……記憶改竄……」ブツブツ
提督(……やっぱり逃げた方がいいかもしれない)
提督の決断は、意外と簡単に揺らぎそうになった
まだまだ彼の人生は前途多難らしい
提督「さて……まぁ食堂に来たわけだが」
不知火「これまた混んでますね」
雪風「まあ夕飯の時間ですからねぇ」
二人と手を繋ぎながら食堂に入った提督達
流石に、近くを通りかかった艦娘達は目を丸くしていたが
不知火と雪風が相手(薬飲んだ二人)というのが分かると、なんとも言えない顔をして挨拶だけしていった
提督「どこか空いてる席は……」
不知火「無さそうですね」
提督「なら、また相席させて貰うか」
提督「んー……あそこに聞いてみようかな」
グループでも一人でもokです
安価直下
如月、了解しました
それではまた夜に来ます!
かるーく如月の分だけ投下して行きます
提督「如月、ちょっといいか?」
如月「あら、司令官じゃないですかぁ~」
如月「如月に何か御用ですか?」
提督「んん……まあ大した事じゃないんだが」
提督「如月は一人なのか?」
如月「うーん、さっきまで睦月型の子達と食べてたんだけどね~、やっぱり子供達は食べるの早くって……」
如月「レディーの如月は食べるのが遅いから、一人で食べてたの~」
提督(……どっちが子供なんだ?)
提督「そ、そうか、ところでだな、自分達はこれから飯なんだが」
提督「見ての通り席の空きはありそうもなくてな、よかったら相席してもいいか?」
如月「司令官なら大歓迎よ~、さっ座って座って」
如月「ほ~ら如月の隣が空いてますよ~」
不知火「では、お言葉に甘えて」サッ
如月「あ、あら~?不知火ちゃんが座っちゃうのねぇ」
如月「でももう片方も空いてるわよ~ほら~」
雪風「では私はこちらに」サッ
如月「雪風ちゃんも如月の隣に座るの~?」
如月「うーん……如月、人気者で困っちゃうわぁ~」ケロッ
提督(……対応はやっぱり大人かな、なんというか、飄々としてる)
提督「じゃあ自分はここに座るよ」
如月「あら、司令官、如月の目の前ですね~、なんだか向かい合うなんて、恋人みたい?」
不知火「……対面に座ったくらいで恋人気取りですか」フッ
雪風「これだから素人は(笑)」ハンッ
何故か勝ち誇ったかのような二人
それに対して
如月「如月はね、こういうささやかな恋人ごっこみたいなのでも幸せなの~」
如月「ねっ、司令官。この輝く肌、もっと近くでみていいのよ?うふっ」
提督「ん、んん、そうだな、綺麗だ」
如月「や~ん、如月が綺麗だなんてぇ、お世辞でも嬉しい~」
提督「そ、そうか、よかった」
如月「……ねぇ?司令官、ちょっとお耳を貸してぇ?」
提督「な、なんだ?」
如月「ご飯食べたら如月のお部屋に来ません?そ・し・た・ら・ぁ……」ヒソヒソ
如月「いい事、してあげちゃうかもぉ?」ボソッ
提督「い、いい事?」ゾクゾク
如月「そ、あ~んな事やぁ……こ~んな事ぉ?」ボソボソ
提督「う、うあ……」
耳元で囁かれる、脳を甘く溶かすような声
一瞬理性を失いかけたが、そこは提督の理性がカバー……ではなく
不知火「……」メキッ
雪風「……」バキッ
主に、如月の両隣からのプレッシャーで冷静になった
……やはり如月は、色んな意味で大人かもな……
それにしても、あんな知識どこから覚えたのか……
これ以上如月のペースに巻き込まれる訳には行かず、それとなく話題を変える事にした
提督「あ、あーところで、如月は何を食べているんだ?」
如月「これ?これはねぇ、海藻のサラダと、コラーゲンたっぷりの豚足よぉ?」
提督「如月、豚足なんて食べるのか?なんか意外だな……」
如月「やっぱり、いつまでも美しくありたいもの~、それに結構、豚足って美味しいのよ?」
如月「はい、司令官。あ~ん」ニコニコ
提督「え、いや、自分は」
如月「ほら、あ~んしてぇ?」ニコニコ
提督「う……」
何故か、如月の笑顔を見てると断れなくなる
ある意味、恐ろしい才能かもしれない
提督「あ、あーん……」
如月「はい、どうぞぉ~」
提督「ん……なるほど、トロトロになるまで煮込んであって、これは美味しいな」
如月「でしょぉ?美容に良い物は大切だけど、やっぱり美味しくて美容にもいいなら最高よね~」
如月「ところで司令官、いい事教えてあげましょうかぁ~?」
提督「ん?如月のオススメのメニューか?それなら是非聞きたいな」
如月「じゃあまたお耳を貸してぇ~?」
提督「ふむ、まぁ構わんが……」
耳を如月の方に寄せる
如月「か・ん・せ・つ・キ・ス」ボソボソ
提督「!?」ガタッ
如月「あら、司令官、顔真っ赤ですよ~?」クスクス
提督「き、如月!」
如月「もう、司令官ってば初なんだからぁ、これくらい軽くいなせないとレディーの相手は務まりませんよ~?」
提督「そういうのには、どうにも耐性がつかないんだよ……」
如月「まあそれが司令官らしさもありますしねぇ、私は好きですよぉ?そんな司令官が」クスクス
提督「うっ……」
くすくすと笑う如月
駆逐艦と言えば大体の娘達が幼い印象を受けるが、その中で如月には大人びた印象を受ける事が多かった
最初は子供が背伸びしている……なんて思っていたのだが、振る舞いを見ている内に、鎮守府で一、二を争う大人な娘なんじゃないかとも思い始めている
如月の特徴は、常に飄々としていて、常に笑顔でいること
その為、本当の表情や内心どう思ってるかがとても掴みにくいのだ
苦手……という訳ではないのだが、どうにも自分が会話の手綱を握れる日が来るビジョンは見えそうにない
提督「ん……ゴホン、さて、食券を買ってくるかな」
不知火「ええ、そうですね。不知火も行きます」
雪風「私もお腹が空いたので買ってきますね、ついでに一緒に行ってあげますよ」
如月「あら、皆行っちゃうのかしらぁ?」
提督「ん、すぐ戻るさ」
如月「それがね~……司令官と楽しくお喋りしながら食べてたら、もうご飯食べ終わっちゃったのぉ~」
提督「あ……本当だ、でもそんな量で足りるのか?」
如月「あら、如月の事心配してくるんですか?」
提督「やっぱり、ご飯をしっかり食べないと元気が出ないと思うからな……古い考えかもしれんが」
如月「司令官のお気持ちだけいただいておくわぁ~、でも本当にお腹一杯なのよ?」
如月「なんだったら……触って確かめてみますぅ?」ニコニコ
提督「なっ!?」
如月「や~ん、司令官ったらどうしてそんなに可愛い反応するのかしらぁ?」クスクス
如月「もっと色んな事言ってあげたくなっちゃうわぁ~」ニコニコ
提督「……はぁ、如月には敵わんな」
如月「うふふ……」
如月「でも、如月も提督に敵わないこと、一杯ありますよ。それに皆にもね」ボソッ
提督「?なんか言ったか?」
如月「いえ、なんでもぉ~?」ニコニコ
如月「それじゃ、一人で待ってるのも寂しいし私は部屋に帰るわねぇ~」
如月「この席は自由に使ってねぇ~それじゃ~」
ばいばい、と手を振り去っていく如月
相変わらず、敵わんなと如月の後ろ姿を見つめる
まあ、でもいい子ってのは分かってるから、これからもっと会話をして、色々知れればいいな
なんて事を考えてると
不知火「提督、いつまで如月を目で追ってるんですか?」ガシッ
雪風「私、お腹減ったって言いいましたよね?いつまでそこで突っ立ってるつもりですか?」ガシッ
まあ、その時の二人の顔の怖さときたら……中々表現できなかった
提督「あ、ああ、すまんかった、すぐ行こう今行こういますぐ行こう」ガクガク
照れたり、怖がったり、驚愕したり、呆れたり、喜んだり
提督の顔はさながら百面相の様に変わっていくのであった
投下終わりです
文章だけだと如月と愛宕が被りそうで中々難しいですね……
続きは深夜か、明日になると思います
読んでくれている方、いつもありがとうございます
こんな時間ですが投下していきます
提督「ふぅ……食った食った」
不知火「ええ、お腹一杯です」
雪風「ちょっと食べ過ぎたかもしれませんね……」
提督「んん……腹ごなしに散歩でもしてこようかな」
不知火「もう夜ですよ?」
提督「今夜は月が綺麗だからな……なんて、詩人みたいだろ?」ニヤ
雪風「そこはかとなく不快ですね、ドヤ顔やめてください」バッサリ
提督「うぐっ、詩人の言葉より心に響いた」
提督「……ま、まぁとにかく自分は散歩してくる事にするよ、二人はどうする?」
不知火「是非お供します……と、言いたいところなんですが」
不知火「恥ずかしながら少々疲れてしまいまして……ちょっと今日は早めに寝ようかと思って」
提督「ん、そうか。しっかり体を休めな」
不知火「ええ、ありがとうございます」
提督「……また自分のベッドに入ってるなよ?」
不知火「しっ、不知火がそそそんな事考えているとでも?」
提督「挙動不審すぎるだろ……」
提督「雪風はどうする?」
雪風「んー……私も少し疲れてしまいましたね」
雪風「不知火さんと同じく、私も体を休める事にしますね」
提督「そうか、雪風もしっかり体を休めてな」
雪風「ありがとうございます。司令」
提督「それじゃ、ここでお別れかな。また明日」
不知火「また明日」
雪風「ええ、また明日」
食堂を出たところで、それぞれ別の道へ歩いていった
提督「はぁ……確かに月は綺麗だが」
提督「やっぱり、夜だけあって結構寒いな……厚着すりゃよかったか」
提督「……ん?」
夕張「……」ボー
提督「こんなところで何やってんだ?夕張」
夕張「わひゃっ!?」
夕張「……なんだ、提督じゃないですか。驚かせないでくださいよーもー」
提督「すまんな、珍しい奴が黄昏れてたからさ」
夕張「私だってセンチな気分にもなるんですーっと」
そう言い放った後、不貞腐れたようにそっぽを向いてしまう
提督「……」
夕張「……」
二人共空を見上げる
しばらく沈黙が流れた
しかし、それは嫌な沈黙ではなく、どこか落ち着いたようないい雰囲気だった
提督「綺麗だな」
夕張「へっ?」
提督「月が、綺麗だなって」
夕張「あ、ええ、そうですね……」
提督「……センチな気分って事は、なんかあったのか?」
夕張「うーん……まぁ、なんというか」
夕張「これ、なんだか分かります?」スッ
ポケットから取り出したのは、赤い印が付いた一つの棒だった
提督「……夕張も当たりを引いていたのか」
夕張「ええ、前は仮の話って言ってましたけど、正直気づいてましたよね?」
提督「まあ、な」
夕張「これが今私の頭を悩ませている物ですかね……」
提督「やっぱり、薬を飲むことが心配って事か?」
夕張「んーまあ、心配と言えば心配というか……」
提督「ふむ……」
夕張「ちょっと私の話、聞いてもらえますか?」
提督「ああ、全然構わない。是非話してくれ」
夕張「んー……そうですねぇ……」
しばらく空を見上げ悩む夕張
だが、少し経つと、心を落ち着ける為か深呼吸をした後、ぽつぽつと喋り始めた
夕張「提督、直球で聞きますけど」
提督「ん?」
夕張「ここに居る皆が、提督に好意を抱いている……というのは自覚してますか?」
提督「……っ」
とくん、と心臓が跳ねた気がした
ほんの数刻までに決意し、覚悟していた事だが
好意を持たれる、それも多数の娘達からというのを実際に伝えられるとやはり動揺するものである
夕張「まあ、好意って言っても程度の差はありますけどね?」
夕張「まだ恋という感情を知らず、ただ好きと言ってる子や」
夕張「何故好きなのか?という事に頭を悩ませ、自分の本心が分からなくなってる子や」
夕張「よくある本とかだと、恋ってのは理屈じゃないとか言われますけど、それでも悩む物は悩みますよね」
提督「……」
夕張「私も、提督に対して好意を持ってます」
夕張「程度の差……と言いましたが、これが恋ってところまでは自覚してます」
夕張「……えへへ、なんか間接的に告白しちゃった感じになっちゃいましたね」
提督「……」
夕張「……提督、そんなに重く受け止めないでくださいね」
夕張「重いのは私の装備だけで十分だー!……って、なんちゃって」
提督「……」
提督「くくっ……」
夕張「あ、ちょっとウケました?意外と笑いの沸点低いですね」
提督「いや、だってこの流れでそういうのをねじ込んでくるかって思って」
夕張「まああんまり重い話にして二人とも気が滅入ったら嫌じゃないですか、それこそこんな月が綺麗なのに」
夕張「楽しく話せたら、そっちの方がいいじゃないですか?」
提督の方を向き、元気に笑う夕張
いい笑顔だな、と提督は思った
それと同時に、その笑顔に胸を締め付けられるような何かを感じていた
夕張「……まあ、本題はこれからなんですけどね?」
夕張「こんな事、本人に聞いてどうなるんだろうって話になっちゃうんですが……」
ここで、また詰まった言葉を絞り出すかのように、深呼吸をした
夕張「本当に、私でいいのかなって思ったんです。この薬を使うの」
提督「……?」
夕張「確かに、私は提督が好きです。そして、あの薬がどのような効果をもたらすか……」
夕張「程度の差はあれど、提督との距離が一歩位は近づくかなって思ったりしました」
夕張「……でも、皆の顔を見ている内に」
夕張「本気で提督の事を思っている人達に、申し訳ないというか」
夕張「本当に、この人達と戦って、私は勝てるんだろうか?って思ったり」
夕張「勿論、私の気持ちが本気じゃないって事ではないんです」
夕張「ただ……その……」
夕張「戦いの場に立って、それで傷つくのが怖いというか」
夕張「皆と衝突して関係がこじれたら……とか」
夕張「だから私は、皆から一歩引いたところで想っていた方がいいんじゃないかって考えたりもして」
夕張「そんな甘い気持ちで、恋とか言ってる自分に自己嫌悪しているというか、その……」
夕張「……ごめんなさい、なんだか結局ちょっと重たい話になっちゃいましたね」
夕張「しかも、こんな話を話の中心である提督にするなんて……なんでだろう、今日の私はきっと変なんです」
夕張「提督には、こんな話聞かされたって、どうにもできないのに……って」
夕張「あ、あれ?」
気づけば、夕張の頬を涙が伝っていた
夕張「おかしいな……なんで涙なんか」
提督「……」
提督は、それを見て強く、強く拳を握った
自分は、今までこんな事を考えていた夕張に、どう接していただろうかと
夕張の考えてることを、悩んでいる事を見抜けなかった自分がどうしようもなく不甲斐なかったのだ
提督「……夕張」
夕張「ごっ、ごめんなさい、全然止まらなくて……本当に変……ですね今日の私」
だが、それ以上に自分が不甲斐なかったのが、目の前で泣いている彼女に、なんと声をかければいいか分からなかった事だった
優しさゆえに、皆と争いたくない、皆を悲しませたくない
そのために自分が一歩引くのは、本心を封じこめる事になり、自分が苦しくなる
そして、それを誰かに相談しようとしても、皆提督の事が好きだから
その事を話して、自分と同じ様に身を引くようになったら、とか
仲違いになってしまったら、と考えると、どうしてもできなかった
とにかく、八方ふさがりだったのだ
そこに、この薬という起死回生のチャンスが転がってきた
最初は少し期待していた、弱い自分が変われるチャンスなんじゃないかと
けど、やはり悩んでいた。本当に私でいいのか、と
そこに、張本人の提督に、つい本心を打ち明けてしまった事に
今まで心の奥底で貯めていた感情が爆発したのだ
夕張「ごめ……んなさい、こんな……話聞かされたうえに、目の前で泣くなんて……」
夕張「とって……も迷惑ですよね……ごめ……んなさい」
こんな時でも、自分の事より他人の事を考える夕張
その姿を見続けるのは、提督には到底できない事だった
夕張「ごめん……なさい、お見苦……しい姿を見せて……しまって、私……もう行きますね」
後ろを向いて立ち去ろうとする夕張
それを見て
提督「夕張!」
夕張「――っ」
言葉が思いつかない、けど、体は反射的に動いていた
提督は、夕張の腕を掴んでいた
夕張「ど、どうしたんですか、提督?」
提督の行動に、夕張は驚いていた
提督「夕張、お前は弱くなんかない」
夕張「……え」
提督「その逆だ、お前は優しく、そして人の抱えてるものが分かる強い人間だ」
提督「だから……自分をそんなに卑下するな」
提督「……今まで自分が言われていた事を、他人に言うなんてな。皮肉なもんだ」
夕張「そんな……私なんて……」
提督「夕張」
夕張「……ごっ、ごめんなさい」
提督「ごめんなさい、じゃない」
提督「分かりました、でいいんだ」
夕張「わ、分かりました」
提督「……夕張はいい子だな」
わしゃわしゃと頭を撫でる
夕張「んん……子供扱いしないでください……」
提督「ん、すまん」スッ
夕張「あぅ……」
手が離されると、とてもわかり易く悲しい顔をする夕張
また撫でてあげたくなったが、そこをぐっとこらえ、話の続きを喋り始めた
提督「でも、夕張、お前のその優しさ、もうちょっと自分に回してあげていいんだ」
夕張「……え」
提督「さっき、程度の差はあれど皆自分に好意を持っている、と言ってくれたよな」
提督「けどな、それと同じ……いや、それ以上に皆は仲間達を愛していると自分は思うんだ」
提督「だから、仲間を信じて、そしてなにより自分を信じるんだ」
提督「夕張の決めた事が原因で仲違いしたりなんてする程、皆の器量が狭いと自分は思わない」
夕張「てい……とく」
提督「大丈夫、なにせ、夕張はこんなにいい子なんだから」
また頭に手を置き、今度は優しく撫でた
夕張は、撫でられながら、静かに、泣いた
いつも明るく、元気に振る舞っていた夕張
しかし、それは自分の悩みを悟られない為の仮面だったのかもしれない
月が、二人を照らす
地面に手を繋いだ二人の影を描いていた
投下終わりです
多分明日また続きを投下すると思います
明日(大嘘)
ここ最近忙しくて更新はもう少し後になるかもしれません
申し訳ないですが、少々お待ちを……
お待たせしました、少しだけですが続き投下していきます
提督(……今更だが、自分をどんどん窮地に追いやってる気がするな)
提督(まあいいさ、自分が重荷を背負うだけで済むなら、いくらでも背負ってやるさ)
夕張「提督……あの……その」
提督「ん?」
夕張「手……その……」
言いづらそうに、ゴニョゴニョと呟く夕張
提督「あっ、あぁ、すまん、痛かったか?」
それを見て、パッと手を離す提督
夕張「あっ……いえ、その」
夕張「はぁ……」シューン
提督「そろそろ体も冷えてきたな……戻ろうか」
夕張「んー……私はもうちょっとここに居ますね?」
提督「そうか、体を壊すなよ」
夕張「ええ、私はもう大丈夫です!」
先ほどまでとは打って代わり、元気に答える夕張
提督「……そうか、なら安心だな」
その返事を聞いて、優しく微笑む提督
夕張「それじゃ、提督。また明日」
提督「うん、また明日」
別れの言葉を告げ、建物に戻っていく提督
一人外に残った夕張は、誰も居ない場所で、ぽつりと呟いた
夕張「……私、皆の事も本当に大好きだよ」
夕張「けど、そのせいで勝負で自分から身を引くなんて、私らしくなかったね」
夕張「ふふ……こんな昔から居るのに、やっと私もスタートラインに立てたみたい」
夕張「もう、誰にも負けないんだから!」
決意を決めた夕張の顔は、今までで一番いい笑顔をしていた
提督「おーさむさむ……なんか暖をとれる物は……」
冷えきった廊下を通り、提督室に帰ってきた提督
余りの寒さに、暖房器具を出すことにした
とりあえず、ストーブでもなかったかと提督室の押し入れを漁る事にした
提督「んー……ごちゃごちゃしてんなぁ、いい加減整理しなきゃな」
山積みになった書類、四季を感じられる電化製品などなど、押入れの中は阿鼻叫喚になっていた
提督「ん?あー……そういえば、これも買ってたなぁ」
提督「でもこれ出したら、ここで寝るようになってしまうような……」
そう、それは冬の悪魔と呼ばれている、KOTATSUである
これに飲み込まれ、足を絡めとられる人は後を絶たないとか……
提督「ええい、ままよ!」
KOTATSUには勝てなかったよ……
提督「そっか、これ組み立て式だったな」
提督「面倒臭いが……これが終わったら極楽が……」
にへら、と笑う提督
これが悪魔に魅入られた者の顔である
提督「ここを……こうして、うん」
着々と組み立てていると、扉をノックする音が聞こえた
提督「ん?鍵は空いてるぞ、入ってくれ」
金剛「HEY!テートクゥ!遊びに来たヨー!」ガチャ
提督「ん、金剛か。ちょっと待っててくれ」
金剛「oh……なんか軽くかわされた気がしマース……」
若干しょんぼりする金剛だったが、ふと提督が組み立てている物に目が行った
金剛「テートク、これは?」
提督「そうか、金剛はこれ、見慣れないか?」
金剛「desk……ではありマスが、何か布団のような物がついてマース……?」
提督「これはな、炬燵って言うんだ」
金剛「KOTATSU?何をする道具なのデスか?」
提督「まあまあ、出来てからのお楽しみさ」
金剛「なら、私も手伝いマース!」
元々組み立て式といっても、簡単にできる物だったので、二人がかりとなるとすぐに組み立ては終わった
提督「ん、これで完成だ」
金剛「ウーン……暖をとるための道具いうのはなんとなくわかりマスが、それならストーブでいいのでハ?」
提督「まあまあ、とりあえず座って、これに足を突っ込んでみてくれよ」
金剛「テートクがそう言うなら……」モゾモゾ
金剛「……やっぱりこれはちょっとナンセンスだと思いマース……あんまり暖かくないデース……」
提督「ふっ……真骨頂はこれからさ」
スッと炬燵のスイッチを手に持つ
金剛「……?それは何ですカ?」
提督「スイッチ……オン!」
金剛「what……?なんだか、少しhotになってきたようナ……?」
金剛「な、何をしたのデスか?テートク……」
提督「まあまあ、ちょっと自分は蜜柑を取ってくる」
金剛「蜜柑……?別に私ハ……」
提督「金剛は炬燵を満喫してな、じゃあ行ってくる」ガチャ
金剛「は、ハァ、行ってらっしゃーいデース、テートク」
金剛「ummm……一体これはどういう仕組みになってるんデスか?」
金剛「でも、何だかこうしていると、凄い落ち着きマース……」
金剛(ウーン、演習の疲れなんでしょうカ……何だか眠ク……)
金剛(でも……ここで寝たら、テートクと遊べまセーン……)
金剛(でも……でも……)
葛藤する金剛
しかし、三大欲求には勝てず、そのまま机に突っ伏してしまった
提督「ただいま、どうだ金剛、初めての炬燵は?」ガチャ
提督「……ん?」
金剛「すぅ……すぅ……」
安らかに寝息を立てて、机に突っ伏し寝ている金剛
提督「……早かったな」ニヤリ
KOTATSUという魔物にあっという間に魅入られた金剛を見て、満足気に笑みをこぼす提督
KOTATSU、皆で入れば、怖くない(提督談)
実際は堕落した人間が増えるだけなのは、秘密である
提督「おーさむさむ……自分もお邪魔させてもらうよ」モゾモゾ
提督「はぁ……生き返る」ポワーン
凍えるような冷たさの廊下から、この暖かさは、地獄から天国に等しかった
提督「んん……でも、まだ仕事をこなさければな……」
提督「……!?足が、動かない!?」※動きます
謎の一人芝居をする提督、KOTATSUという物の持つ破壊力は、人までも変えてしまう物だったのだ
悪魔、まさに悪魔である
提督「んぐぐ……もう少しで、手が届く……!」
ぐぐっと体を伸ばし、机の上の書類を取ろうとした
だがしかし、もう少しというとこで届かない
もう少し……もう少し手が長ければ……!
提督は、自分のリーチが短い事をこの時ばかりは憎んだ
そんな風にバタバタとしていると
金剛「ん……むにゃ……あ、テートク、おかえりなさいデース……」
金剛が起きてしまった
ゴシゴシと眠たげに目を擦り、背伸びをする
提督「あ、すまん。せっかく寝ていたのに起こしてしまったな」
金剛「イエ……すいません、テートクを待ってる内になんだか眠くなっちゃッテ……」
提督「炬燵の魅力、十分に伝わったみたいだな」
金剛「これは……凄いデース……日本の力を感じマース……」
提督「そうか……それはよかっ……」
ここで提督はふと気づいてしまった
金剛の顔に、机に突っ伏していた為に、手の跡が付いてしまっている事に
しかもそれが、美味い具合に面白く付いていて……
提督「……」スッ
笑いをこらえるため、目をそらす提督
しかし、急に目を逸らされた金剛は、それが不満だったようで
金剛「……?テートク、なんでこっちを見ないんですカー?」
提督「いっ、いや……すまん……くっ、くく……」
必死に笑いをこらえる提督
それを見て
金剛「人と話す時ハ、目を見て話すべきデース!」
ぷんぷんと怒りながら、最もなこと事を言う金剛
しかし、その顔は、正論を語るには相応しくなかった
提督「い、いや……それはそうなんだが……」
金剛「私に何か不満があるんだったら言ってほしいデース!言わなきゃ分かりまセーン!」
ずいっと詰め寄ってくる金剛
しかし提督は、まだ目を合わせれなかった
金剛から見れば、笑いをこらえて複雑な表情している提督は、何だか不機嫌なように見えた
金剛(……!もしかしテ……)
金剛(テートクが帰ってくるまでニ、寝ちゃってた私に怒ってるのですカ……?)
金剛(テートクは、そんな事で怒るような人じゃ……デモ……)
金剛(それとも、違う所で何かしてしまったのデスか?)
金剛(でもそれでもし、き、嫌われてしまっていたラ……)
いつもポジティブに考える金剛、しかしその時は、何故かネガティブな思考になっていた
提督の初めて見せる表情に、混乱していたのかもしれない
実際は、笑いをこらえているだけなのだが
金剛「テートク……もしかしテ……」ウルッ
提督(……気づいてくれたか?)
金剛「私の事……嫌いになってしまいましたカ……?」
提督「え!?」
金剛「だって、いつもはちゃんと目を合わせて喋ってくれるのニ、今は私の事を見てもくれまセーン……」
じわ、と金剛の瞳に涙が溜まる
金剛「うっ……」ジワァ
提督「ち、違うぞ金剛!自分は嫌いになんか……!」
慌てて金剛の方を振り向く提督
だがしかし
提督「……ふっ……くっ……くく」
あまりにも今の金剛の顔は、インパクトが強すぎた
結局提督は笑いに勝つことは出来なかったのである
金剛「何で人の顔を見て笑うんデスカー!!私は真剣に聞いてるのニー!!」
瞳に涙を溜めながら、声を荒げる金剛
提督「分かった……!くっ……金剛、ふふっ……よく聞いてくれ」
金剛「なんデスカ!はっきり言ってくれなきゃ分かりまセーン!」
提督「その……顔にな……うん……くく」
金剛「顔……?私はいつも通りデス!笑われるような格好もしているつもりはありまセーン!」
提督「いいから、自分を信じて……くっ……鏡を見てみてくれ……」
金剛「……これで何も変わってなかったら、テートクなんて大嫌いデース……」
懐から手鏡を取り出し、ブツブツと呟きながら鏡を覗く金剛
覗いた後、一瞬のタイムラグを置いてから、金剛はわなわなと震えだした
提督「こ……金剛?」
様子を伺うように声をかける提督
それを聞き、真っ赤にした顔を上げて、キッと提督を睨みつけた
金剛「……テートクの」
金剛「バカァー!!」ダッ
大声で罵り、そのまま泣きながら提督室から飛び出して行ってしまった
金剛「うえええええーーーーん!!」
金剛の泣き声は、廊下の壁を反響して、遠くなりながらしばらく聞こえ続けた
提督「……金剛、すまん」
提督「自分は……勝てなかったよ……今度間宮さんのアイス、奢ってやるからな……」
心の中で懺悔しながら、先ほどの金剛の顔を思い出し、また笑ってしまった、非道な提督なのであった
今日はこの辺で
ところで皆さんはケッコンカッコカリを誰としましたか?
ちなみに、私は加賀さんとしました(ご満悦)
帰還しました!
実は酔っぱらってフラフラなので本当に少しだけ投下します!すいません!
提督「んー……それにしても」
提督「やはりこいつは出すべきではなかったか……自分も動けそうにないな」
提督「ええい、ここから出ないと始まらん!気合だ!」
と、同時にまた扉を叩く音がした
提督「ん、鍵は空いてるぞー」
青葉「ども!司令官、失礼しまーす!」ガチャ
屈託の無い笑顔で入ってきた子は、この鎮守府の広報役。青葉だった
逆に、提督の顔は若干引きつった。何故ならこの子が来る時は……
青葉「ところで、先ほど金剛さんが泣きながら提督室から出て行くのを見たんですが……」ワクワク
……そう、このように必ず新聞のネタになるような事があるからだ
今までも、例えば駆逐艦の子と喋ってただけで実はロリコン!?大人の女性に靡かない真の理由とは……!?
みたいな見出しで新聞に書かれたり……
誰かと二人で喋っていた所を写真に撮られて、深夜の密会!?提督との危険な接触!……とか書かれたり
一度流石にこれは取り締まろうと青葉に詰め寄った事もあったのだが、青葉曰く
この新聞は大量のリピーターが居るので、これを潰したら皆さんが悲しみますよ?と逆に脅されてしまった
……実際にこの新聞の売れ行きはいいようである。正直納得がいかない部分もあるが、皆が喜んでるならそれでいいかと放っておく事にした
まあ、青葉自身も新聞は楽しく書いているようだし、戦闘の息抜きになればいいとも思ったというのもあったが
提督「あー……それはだな」
青葉「しかも、チラっとすれ違う時に金剛さんの顔に何か赤い痣のようなものが付いていたんですが……」
青葉「これは、久しぶりに大スクープになりそうな気がしますね……青葉、記者魂が燃えてきました!」
提督「いや、だからそれh」
青葉「もしかして、大人のプレイ……しかもちょっぴり過激な事をしていたとか……?」
青葉「うむむ……これをはたして記事にしてもいいんでしょうか……しかし全てを平等に伝える事が記者としての青葉の務めなのでは……」ブツブツ
青葉「……よし、やっぱり、きちんと書くべきですね!どれだけショッキングな事でも、青葉は耐えてみますよー!」
提督「……」
この若干……というより、大分思い込みが激しいのもこの子の特徴でもある
青葉「さあ、司令官!是非何か一言を!」ズイッ
提督「……青葉、ちょっと下を向いてくれるか?」
青葉「え……?はい、こうですか?」スッ
提督「落ち着け」ペシッ
暴走している青葉を落ち着ける為に、軽く頭を叩く
青葉「あたっ!」
青葉「ちょ、ちょっと司令官!青葉の頭を叩くなんて、駄目ですよぉ!」
青葉「この頭の中には大事な記事のネタが詰まってるんですからぁ……忘れちゃったらどうするんですか!」
提督「そんなに強く叩いた覚えはないし、捏造だらけのネタなんて忘れてしまいなさい」
青葉「……ぶー、捏造なんかじゃないですよ!青葉の記事は全部真実しか載せません!」
提督「……」
どこがだ、と言いたかったがあえてスルーする事にした
提督「じゃあ、きちんと新聞に載せる為に真実を話さないとな……」
青葉「お、そうこなきゃですよ!司令官!」ワクワク
こうやって、ネタを貰える時の青葉の顔は、まるでエサを貰える時の犬のような期待に満ちた顔している
多分、尻尾が付いていたらぶんぶん振り回さていることだろう
提督「……とまぁ、こんな話だ」
青葉「……なるほど、金剛さんらしい話でしたね……」ズーン
提督「どうだ、これは新聞に載るか?」ニコニコ
青葉「……そーですねぇ、ちょっと青葉の脚色を加えて、鬼畜提督!?あの金剛さんを泣かせた訳とは!?みたいな記事になら……」
提督「おい、真実を載せるんじゃなかったのか!」
青葉「じょ、冗談ですよぉ、そんな記事書いたってつまらないですからねぇ」
提督「全く……」
青葉「それに、司令官が私達にそんな仕打ちをするなんて微塵も思ってないですしね」
と、信頼しきったようにニコっと笑って、そう言った
提督「ん、ん……そうか、ありがとう」
青葉のもう一つの特徴としては、こういう思っている事をサラっと述べられる事だと思っている
これも青葉曰く、真実を追求する為には、自分も真実を話すべき!というポリシーを持っているらしい
青葉「んんー……でもネタが一つ潰れてしまいましたねぇ、結構スクープになりそうだったんですが」
青葉「司令官、お詫びに何かネタになりそうな事ないですか?」
提督「なんで自分がお詫びする立場なんだよ!」
青葉「おおう、司令官の本格ツッコミいただいちゃいました!恐縮です!」
……やっぱり、青葉と接していると、調子が狂うな
なんだか、彼女の手のひらの上で踊らされているようである
青葉「何かネタになりそうなものはー……っと、司令官、炬燵なんてあったんですか?」
きょろきょろと辺りを見回し始めた青葉の視線は、つい先ほど部屋の真ん中に置かれた炬燵に止まった
提督「ああ、自分も昔に買った物だったから、しばらく忘れていたが奥の方にあったのを見つけたんでな」
青葉「へぇー……青葉はこんな物があるなんて知りませんでした」
青葉「……!そうだ!」
提督「ん?」
青葉「青葉にいい案があります!聞いてもらえますでしょうか!」
何かを思いついたかのように、手を上げる
まあ、青葉の提案であんまり良い方向に向かった事が無いのが辛いのだが
提督「うん、聞くだけならな……」
青葉「ありがとうございます!それでは早速ですね……」
青葉「以前、司令官に取材していた時に、ポロっとこぼしていた事を参考にさせてもらったのですが……」
青葉「自分は、皆ともっと交流したいと……そうおっしゃってた事は覚えてらっしゃいますか?」
提督「ん、そうだな。できれば皆ともっと仲良く、そして絆を深められたらと思っている」
青葉「それでですねぇ……ここにある炬燵、皆の憩いの場にしちゃいませんか?」
提督「……へ?」
青葉「とは言っても、全員が押しかけてしまったら部屋がぎゅうぎゅうになってしまうので、何かしらの制限を付けるようにしますよ?」
青葉「日替わりとか、週替りとか、そんな感じで交代制にしていくつもりです!」
青葉「どうでしょう!司令官は皆と交流できるし、皆はここで寛げるし、一石二鳥だと思うんですが!」
提督「う、うーん……」
確かに、青葉の言ってるとおり、ここに皆が来てくれるならそれは有り難い事だし、皆も寛げるなら何よりだと思う
だが、形式上とはいえ、仕事をする部屋に皆を招いていいものかと思ってしまった
交流するのに比重が傾き、仕事を疎かにしてしまったらそれこそ本末転倒だ
青葉「なかなかここ最近では一、ニを争う名案を出したと思うのですが……何かご不満な点がありましたか?」
提督「そうだなぁ……まあ、確かにいい案だと思うんだが、一応ここは執務室でな……自分が仕事をする為の部屋なんだ」
提督「だから、なるべく秘書艦の子だけ居てもらって、他の子と交流する時はなるべく外で……というのが自分の中で区切りがあったんだ」
まあ、一部の子達はずかずか執務室に入ってくるのだが
青葉「ふうむ……まあ確かに、仕事に支障をきたすようになったら、ちょっといけないところがありますねぇ……」
うーん、と唸る青葉
しかし、すぐに何かを考えついたのか、顔を上げた
青葉「なら、時間を決めて訪ねるようにする、という風にするのはどうでしょう?」
青葉「司令官の負担にならないようにあまり長い時間は居ないようにする、というのも追加しておきましょう!」
青葉「ちょっと寛ぐ、とは離れてしまうかもしれませんが、それでも司令官とお話したい子はたくさん居ると思いますしね!」
提督「ふむ……それなら、いいかもな」
青葉「本当ですか!」
提督「ああ、そこまで自分の事を考えてくれるなら、提案を許可するしかないだろう?」
提督「それに、その提案は自分にとってもすごい魅力的な話だしな、是非こっちからお願いするよ」
青葉「ありがとうございます!司令官!」
青葉「よーし、明日の特別記事が決まっちゃいましたね!今日は徹夜で奮闘しますよー!」
提督「おいおい、あんまり無茶するなよ」
青葉「青葉の事心配してくれるんですか?大丈夫です!こう見えて青葉は意外と強いですから!」
提督「……そうか、なら、期待してるよ」
青葉「ええ、楽しみにしていてください!」
そう言って、青葉は嬉しそうに、輝くような笑顔を見せてくれた
なんだかんだ言って、この笑顔を見てしまうと、とてもじゃないが憎めなくなってしまうのである
青葉「で、えーとですね……」
提督「ん?」
何故か、先ほどまでとは打って代わり、言いにくそうにもじもじとし始めた
その顔は若干、紅潮しているようにも見えた
青葉「こ、これは記者の特権というか……やっぱり、まず、青葉自身が体験しなきゃいけないと言うか……」
青葉「と、という事で!青葉がまずは一番のお客さんという事になりましょう!」
と、自分を奮い立たせるかのように一気に話した
赤面しながらも、真剣な表情をした、その顔がどうにも可愛く思えて
提督「……青葉は可愛いなぁ」ボソッ
と、つい本心が口から出てしまった
青葉「か、かわっ!?」
提督の突然の言葉に、青葉の顔は、茹でたタコのように真っ赤になっていた
実際には見えていないが、頭から蒸気が出る位顔周辺の温度が上がっている気もした
青葉「う、うー……司令官は突然魚雷を放ってきますから、恐ろしい存在ですよ……」
提督「い、いや今のは本当に無意識でな」
青葉「……無意識の方が、怖いですよ」
青葉「ん……ごほん、で、ですが、青葉は先ほど言ったように、真実を追求する者なのです」
青葉「……なので、先ほどの言葉、もう一回言って貰っていいですか……?」
提督「……う、うむ」
流石に、無意識で出た言葉をもう一回言うのは恥ずかしいものである
が、青葉のためならと思い、自分を奮い立たせる
提督「……青葉は可愛いな」
青葉「~~っ!!」
青葉「す、すいません司令官、も、もう一度……」
青葉にもし犬の尻尾が付いていたら、千切れるのではと心配になるくらいぶんぶんと動いていることだろう
顔は真っ赤だったが、嬉しさを抑えきれないように口角が上がっていた
提督「も、もういいだろう……」
そして、茹でたタコのように真っ赤な顔をした人物が、もう一人増えたようであった
青葉「い、いえ、その、よく聞こえなかったのでぇ……えへへ」
ぽりぽりと痒そうに頬を掻きながら、目を細めて、もう一度というように人指し指を立てる
提督「ん……ごほん、青葉は可愛いし、と、とても綺麗だよ」
ここまできたならと思い、提督は、からかうつもりで言葉を追加してみた
だが、言った後に死ぬほど恥ずかしくなり
青葉「え、えぇぇぇえ!?」
そして言われた青葉も、不意打ちを食らい、真っ赤になってしまったようで
向かいあった二人は、どちらが何を言うでもなく、そのまま顔をごちん、と炬燵にぶつけるように伏せてしまった
まるで、若いカップルのような初々しさである
そんなこんなで、鎮守府の夜は更けていく
投下終わります
炬燵のくだりはどう考えても某艦これSSの影響を受けています
が、こちらをメインにする気はないのでどうにかお許しください……
リクエストされたキャラは基本いつかは出すようにします!是非希望ガンガンお願いします!
どうも、さっき郵便歩いて出しに行ったら鴉にまさかの糞を頭にダイレクトアタックされました
少量投下していきます
前と違和感を感じても生暖かい目でスルーしてください
青葉「う、うぅ……」
呻きながら、よろよろと立ち上がる青葉
青葉「きょ、今日のところはこの辺で!明日の新聞楽しみにしててくださーい!」
と、早口で捲し立てそのまま急ぎ足で提督室から出て行ってしまった
提督「ふぅ……どっと疲れが溜まった……」
提督「今日はもう寝るか……」
提督「多分、今日仕事をしても捗らんだろう……」
提督「とりあえず風呂に入ろう……」
炬燵からなんとか抜け出し、ふらふらとした足取りで風呂場へ向かうのであった
提督「はぁ……」
手短に風呂を済ませ、行きと同じようにふらふらとした足取りでそのままベッドに突っ伏した
ちらりと自分の机を見る、そして散乱した書類を見て、げんなりした
仕事、溜まりつつあるなぁ……明日こそ頑張らなきゃな
ぼんやりとそんな事を考えつつ、電気を消し、目を閉じる
疲れきった体に睡魔が襲ってくるのは、あっという間だったようで、数分後には安らかな寝息が聞こえていた
提督が寝息を立ててから数分後、扉をノックする音がした
だが、部屋の主は寝ているため当然返事は返ってくるはずはなく、仕方がなく来訪者は中を確認するようにゆっくりと扉を開いた
「失礼します、提督」
「……あら、寝ちゃってるんですね」
「そうですよね……いつもあんなに頑張ってらっしゃるんですから、疲れてないはずがありませんよね」
「ふふ、それにしても、いつもとはこんなに違う表情をして眠るんですね提督は」
「報告もわざわざ起こしてしまうのは気が引けますし……かといってこのままなにもせず帰るのもなんだか惜しいですね……」
深夜の来訪者は、安らかに眠る提督の顔を見ながら何をすべきかと思案する
いつもは提督をサポートして、無邪気に提督に懐く子達のお世話もする彼女だが、今日の彼女の顔はまさしくその無邪気に懐く子達の顔をしていた
きっと提督が起きていたら、さぞ驚いただろう。この新しい悪戯を考えた子供のような彼女の表情は、中々見れる物ではない
「さて、まずは本当に寝ているのかを確認しましょうか」
と、誰に言うでもなく、独り言を呟く
足音を忍ばせ、提督の寝ているベットの側に立ち、そっとベッドに腰掛けた
先ほどもまじまじと観察した提督の顔を、更に観察し始める
「おや、提督ったら、お髭の剃り残しがありますよ」
提督は基本的に毎日風呂で髭を剃っている。
本人曰く「軍人として清潔感を保ちたく、また、自分を磨く為にも髭を剃っている」との事だが
提督が年齢の割に童顔であり、髭を伸ばしても貫禄がつくどころか全く似合わないと考えているのが本当の理由でもある
まあ、その思惑も艦娘の皆に筒抜けな訳だが
「提督ってば、いつもビシッとしてるようで、少し抜けている部分もあるんですから」
「まあ、その抜けている部分が可愛いんですけどね」
と、呟きながら頬をつついてみる
ぷにぷにとした感触、そして男の割には綺麗な肌をしており、そのまま頬に指を伝わせていくと、すべすべとした感触も得られた
肌年齢も、世間の肌の悩みを抱えている女子諸君には、軽く嫉妬される程のレベルのようだ
「きっと、お化粧したら提督だって気づく子、少ないかもしれませんよ?」
女装した提督を前にした皆の反応を考えると、クスリと笑いがこぼれた
「今度起きてる時に、提案してみましょうかね、ふふ」
「ねえ、ちょっと興味あるんじゃないんですか?て・い・と・く」
頬を撫でる手を止めず、急に耳元で呟く
ぼそぼそと脳を溶かす蠱惑的な甘い声、耳に吹きかかる彼女の息遣い
これがもし狸寝入りだったら、提督は飛び起きていただろう、しかし今日に限ってはよほど深い眠りに落ちているようだ
「……ふふ、本当にお疲れみたいですね」
「まあ、それならそれで私も好都合です」
何か意を決したかのように、彼女は大胆にも提督へのベッドに侵入をし始めた
毛布を捲り、きっちりとした性格を表しているかのようなびしっと両腕を体に添えて寝ている提督に寄り添うように滑りこむ
「あぁ、温かいですね、提督」
そのまま、抱きつくように提督の反対側の肩に自分の手を回す
「今日は少々冷えますから、ちゃんと暖をとらないと、ね?」
寝ている提督に、彼女は語りかける
「こうやって、体を寄せあって……んっ」
モゾモゾと彼女が動く度に、提督の腕に彼女のその豊満な女性の象徴とされる部分が当てられる
提督の腕に当たるたびに形を柔軟に変える"それ"は男の永遠に求めるべきとも言えるであろう
今度は、世に溢れる男性から怨念を浴びる形になったようである
しかし残念な事に彼はその感触を味わえていない、それどころか彼女が自分に添い寝していることすら分からないのである
「提督は、大きい子の方が好みなんでしょうか?」
「私、結構"ここ"には自信があるのですか、如何でしょうか?」
大胆にも、彼女は豊満なそれを押し付ける
もしかしたら彼女は酔っていたのかもしれない、それは酒ではなく、場の空気というものに
実際、彼女の頭の中では、今自分がしている行動を客観的に見て驚いている彼女が居た
これほどまでに大胆に出れたのは理由は、誰の目を気にする事も無かったからだろう
ここには二人以外誰も居ない、そして想う相手の目も無い
これほどまでに大胆に出れたのは一番の理由は、誰の目を気にする事も無かったからだろう
ここには二人以外誰も居ない、そして想う相手の目も無い
ただ、それだけで踏みきれた訳ではない
彼女もまた、あの薬によって起こされた騒動に感化された者であり、競争の場に踊りでた者なのである
今まで、微笑ましいと思って見ていた駆逐艦や軽巡の子達のコミュニケーションも
重巡の子や戦艦の人たち、はたまた空母の皆との和やかな会話も
今の彼女にとっては、どこか焦燥感を煽られる要因になっていた
今までは、彼女は自惚れかもしれないが、それなりにここに居る年数も長く、提督に信頼されていて、一番ではなくとも提督のお側には居ると考えていた
しかし、あの薬の騒動で環境は急変し、少なからずの子達はもう既に好意を直接ぶつけ、そして提督もそれを聞いて徐々に変わりつつある
その姿を見ている内に、彼女の中ではいつしか独占欲というものが芽生えていた
もっと私を見て欲しい、もっと私をお側に置いてほしい、もっと私を愛してほしい、と
そんな感情を、彼女は振り払うように仲間達と積極的に接していた
皆が幸せなら、それでいい、それ以上に何を望むのかと
私は、この関係を、この場所を失いたくないと、そう思っていた
でも、たった一つのきっかけで、その願いは崩れてしまうかもしれない、そう、"今"が例えばたった一つのきっかけなのかもしれない
「ねえ、提督」
体をぎゅっと密着させ、提督の耳元で呟く
もう少し近づけば、提督の耳とキスしてしまいそうな勢いである
「どうして、あんな物が私達の所に飛び込んできてしまったんでしょうか?」
「私は、今のままの関係でもよかった、と言えば嘘になるかもしれません」
「でも、こんなに急に何かが変わっていく事を、私は望んでいませんでした」
「ゆっくり、ゆっくりお互いの気持ちが知っていければって、そう思ってました」
「それこそ、皆が幸せなら、私は何番目でもよかった、選ばなくたってよかった」
「でも、今は違うんです、私の中で何かが暴れているんです」
「もっと私を見て、もっと私を愛してって、そう思ってるんでしょう?って、まるで私の中にもう一人の私が居るかのように、私に話しかけてくるんです」
「その声が、日に日に大きくなっていくんです、それが、私は怖いんです」
「もしかしたら、この私の中に居る私が、いつか本当の私になってしまうんじゃないかって考えるのが」
「それとも、この醜い感情を持った私が、本当の私なんでしょうか?もしかして今まで、偽物の私がこの体を乗っ取っていたんでしょうか?」
「考えれば考える程不安になるんです、そして提督の顔を見る度に、抑えられなくなってきて」
すっと白くて細い、人形のような綺麗な手が提督の服に伸びる
「こんな事をしそうになる自分が止められなく、なって、いって」
そう呟きながら、ぷちぷちと提督の上着のボタンを外していく
ボタンを下まで外し、少しだけ左右に服を広げてみる
そして、提督の鍛えられた体にそっと手を沿わせる
「心のどこかで、止めようとしている私の声が、小さくなっていくんです」
「好きです、提督、愛しています、愛してください、見ています、見てください、お側にいます、お側に居てください」
彼女は、もう自分を止める事ができなかった
耳元で何度も愛の言葉を呟く、もうその頭の中には提督が起きた事を考える余裕は無かった
しかし、奇しくも彼女を助ける結果になったのか、邪魔する結果になったのかは分からないが、深夜の来訪者は彼女一人だけではなかったのである
ガチャ、と戸が開けられる音が聞こえた同時に冷静になった彼女は、反射的に一先ず毛布を被り、身を隠す事にした
「ふにゃ……司令官、起きてますかぁ……?」
枕を抱え、眠たげに目を擦りながら入ってきた子は、文月だった
「あれ……おねんねしちゃいましたか~?……」
グスリと鼻を啜る、その目には少しだけ涙も浮かんでいるようである
暗くてよく見えないのか、手を壁に沿わせつつ提督のベッドまで近づく
「怖い夢見ちゃって……寝れないから一緒に寝て欲しいんだけどぉ……」
「でも、司令官も寝ちゃってるし、あたしも寝ちゃっていいよねぇ……」
そのまま、もぞもぞと提督のベッドに侵入していく
その声を聞きながら、先客の彼女の心拍数はとてつもなく早くなっていった
この子がもし、私が提督のベッドに忍び込んでいた事をポロっと誰かに話してしまったら
そうしたらこれだけ狭い環境だ、あっという間にその情報は伝わっていくだろう
駆逐艦の子の口に戸は建てられぬとでも言うべきか、彼女はもう半ば諦めていた
そして、文月が彼女に擦り寄り、ぎゅっと抱きつく
「……っ」
少しだけ、声を上げてしまった
しかし、半分まだ寝ぼけていた文月の耳には入らなかったようである
「むにゃ……司令官、今日はちょっと……」
抱きついた後に呟き始める、子供は正直だ、本当の事を言ってしまうであろう
「柔らかくて……気持ちいいね……えへへぇ……」
と、言ったっきり、安心したかのように眠ってしまった
「……」
あぁ、私もそうだったなぁ、と過去を思い出した
子供というのは、何かを疑う事もしないんだったと
自分に抱きついてくれた文月の手をを優しく解いて、提督のお側に近づけてあげる
彼女は自分を冷静にさせてくれた文月に感謝をしつつ、部屋から立ち去った
扉の前に立ち、先ほどまでの行動を整理しつつ、どことなく頭の片隅で彼女は感じとっていた
私の中に居るあの私か、今のこの私が、どっちが偽物なんて分からないけど
とりあえず今は、これが二つ合わさって私なんだろう、と
仲間も大事だけど、提督も大事
さっきの文月を見て、子供の頃を思い出していたのに、大人になってずる賢くなってしまった私に少し苦笑した
少しだけ自分を知れた彼女は、口元に色々な事を思わせる不思議な笑みを残し、歩を進めていく
その後ろに結んだ綺麗な銀色の髪を靡かせながら、千歳は廊下の先に消えていった
投下完了です、それではまた
このSSまとめへのコメント
早く続きが見たいです
早く続きが見たいです(。>д<)
続きが気になる…
続き…はよ…
おう続きあくしろよ(続き読みたいです)
終わっちゃった?
続きを所望します!
続きまだ?
続き期待
続き見たい……
続きはないのか?
続き頑張って!(*><)
ないのか……?
いや、憲兵隊にしょっ引かれたんだろ
それか鳥の糞爆撃にでも・・・