高峯のあ「(プレミアム牛めし……あっあと焼のり)」 (386)


●注意●
・短編形式
・非シリアス
・のあさんのキャラ、口調、クールなイメージが『著しく』崩壊します
・独自解釈している点が多々ありますので、ご了承下さい


●登場人物●
高峯のあ、他
http://i.imgur.com/x1ltK4O.jpg


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1453369628


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【松屋 券売機】


のあ「(けれど、普通の物と100円違うだけで『プレミアム』?)」

のあ「(わ…、分からないわ。たかが100円如きの増額で大層な銘を打って、恥ずかしくないのかしら、松屋は?)」

のあ「……」

のあ「(松屋は初めてだから、やはりスタンダードな牛めしをまず頼みたかったけれど)」

のあ「(……けれど、気になる。どの要素を取ってプレミアムなの?)」

のあ「(……)」ジー

のあ「(…………)」ジー



客「……」

客「………」

客「………ンンッ」

のあ「(!!)」

のあ「ぁっ……」

のあ「サ……、先、どうぞ…」スッ

客「あっ、どうも」

客「……」ピッ

のあ「……」


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【カウンター】


店員「プレミアムの並と焼のりですね、お待ちください」

のあ「……」ソワソワ

のあ「(プレミアム。売り手の狡い策略に見事に踊らされてるわ……。広告の謳い文句や見出しをちょっと差し替えて、年がら年中セールやってたり、抱き合わせ商法で結局買い手が大幅に損したり……)」

のあ「(一番嫌なのは、アレね。通常価格で買ったのに、その物が後々半額以下で普通に売り出されてるのを見た瞬間ね)」

のあ「(やるせない気分になるわ。半額以下でも店側に利益が出るのに、それを高い値段でわざわざ買わされるなんて)」

のあ「(だから、半額とか割引って大好き。お惣菜とかお肉とかも夜買うし)」ソワソワ

のあ「(…………あっ)」

のあ「(だから日本人ってそういうケチな気質なのね、生来。だから割引とか特別感溢れる煽りに弱いのね)」

のあ「(その気質を逆手にとって騙すような商売して、本当にタチが悪い。やっぱり吉野家が一番かな)」

のあ「(ふ、ふふふ……。何が『プレミアム』なのか、しっかり堪能させて貰おうじゃないの)」ドキドキ

のあ「……フッ」ニヤリ

店員「お待たせしました、プレミアムの並とお新香です」コトッ

店員「ごゆっくりドウゾー」

のあ「……」カチャ

のあ「(ッ!?)」

のあ「ぁっ、ア…………えっ?」プルプル

店員「……?」

のあ「ぁっ、や、なんでも……っ」モゴモゴ

のあ「(……)」

のあ「(ふふふ……)」モグモグ

のあ「(間違って、みそ汁が付いてきてるわ。私、頼んでないのに)」

のあ「(も、儲かった……。て、店員さんには悪いけど黙っておこ)」

のあ「(これで少しは元が取れるはず。思わぬ収穫)」

のあ「(フフフッ……♪)」モグモグ


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【事務所】


留美「お疲れさま、P君」コトッ

モバP(以下、P表記)「あっ、ありがとうございます、和久井さん」

留美「いいえ、私のついでだから」

P「丁度キリもいいし、一息入れますか……、ふぅ」

留美「定時も過ぎているし、書類確認なら手伝いましょうか?」

P「あ、いえいえ。和久井さんこそ遅くまでお疲れでしょう。事務仕事まで手伝わせるわけには……」

留美「いいのよ、明日は暇だし、好きでやりたいんだから。ボランティア感覚で他の仕事に首を突っ込むなと言われれば、流石に引くしかないけれど」

P「流石に元有能秘書の和久井さんにそんな啖呵を切るなんて出来ませんよ。ははは……」

P「じゃあ、領収書の明細確認と記載漏れの修正をお願い出来ますか?」

留美「ええ、いいわ」

P「……ありがとうございます」

P「こちらの手が足りない時は他の子の送迎までやって頂いたり、事務仕事まで任せてしまって」

留美「構わないわよ」

留美「負い目に感じないでね。私達アイドルは、貴方と言う存在に本当に助けられているのだから」

留美「お礼を言いたいのは、寧ろ私達の方なの。だから……これはせめてものお返しと思って頂戴」

P「俺は裏方です。和久井さん達がアイドルの仕事を楽しんで頂ければ、それだけで本望ですから」

P「……お返しなんて、とんでもないですよ。感謝してもし足りないのはこちらの方です」

留美「謙虚ね、ホント。もっと頼ってくれてもいいのに…」


P「和久井さんは元秘書という職業で培ったアビリティを活かして事務仕事を手伝ってくれるし、真奈美さんはスタジオボーカリストとしての知識を他の子達に伝えて指導してくれている」

P「美優さん、亜里沙さんなどは率先して年下の面倒を見てくれるし……他の方達も以前の仕事で得た経験で俺の周りをサポートしてくれている」

P「本当にありがたい話です」ズズッ

留美「……そう言えば」

P「?」

留美「高峯のあさんって……、以前お仕事は何をされていたのかしら?」

P「…高峯さんですか?」

留美「他の人は、趣味・特技やら言動やらで大体察せられる部分はあるでしょう? 彼女からはそれが読みにくいというか」

P「まあ…、多くは言えませんが、割と色々な資格を持っていましたよ?」

P「(………)」ズズッ

留美「寡黙で多くは語らないからこそ、彼女みたいな人って案外苦労してきてるのかもしれないわね」

留美「仕事でも、人間関係でも」

P「そうですね……。ともあれ、俺は尽くすのみですよ」

P「(…………)」ズズズ







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【高峯宅】


のあ「……」カチカチ

のあ「ハァ。副業で何か割のいいバイトはないかな……」カチカチ

のあ「この年でアイドル一本っていうのは流石に厳しいわよね。手に職付けるには……」

のあ「…………」

のあ「新しく資格でも取ろうかな。でも何の仕事の役に立つのかいまいちピンと来ないわ」カチカチ

のあ「食生活アドバイザー、ビアテイスター、ロシア語能力検定……」

のあ「DCプランナー、デジタル技術検定、きものコンサルタント……」

のあ「食肉士……。ふふふ、強そうな名前……♪」カチカチ


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和久井留美
http://i.imgur.com/TUCAEis.jpg


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【事務所】


───ガチャ

蘭子「煩わしい太陽ね…」(訳:おはようございますっ!)」

P「ん。おはよう、蘭子」

蘭子「白銀と散り舞う息吹は去り、大いなる幸福の調律【ロール】を髣髴とさせん神々しくも麗らかな聖気に、この身を委ねん…」(訳:冬ももう終わりですね、今日は春みたいにぽかぽか暖かいですっ♪)」

P「うんうん、今日も絶好調そうで何よりだ」

蘭子「──ッ!」ピタッ





のあ「(……)」チラッ




蘭子「い…、畏怖されし慟哭の導き手……」(訳:た、高峯さん……)」

蘭子「(こ、怖い……っ! け、けど今日の今日こそは勇気を振り絞って、お話をっ……!)」ブルッ

蘭子「……っ」ドキドキ



のあ「(……)」

のあ「(神崎蘭子ちゃん。仲良くなりたいのだけれど、一度たりとも彼女とまともにコミュニケーションを取れた試しが無いわ……)」

のあ「(歳の差もあるんでしょうけれど、恐らくお互いに何か決定的なすれ違いが生じているんだと思うの)」

のあ「(ならば……言葉ではなく、感性と興味に訴えかけるのみ!)」サッ!

蘭子「!!」

蘭子「(鞄を開けて、何かを探ってる……?)」

のあ「……」ガサガサ

のあ「(蘭子ちゃんの趣味はゴシックファッション。黒を基調にし、オカルト的なイメージを連想させるアイテムを身に着け、重厚な雰囲気を醸し出す)」ガサガサ

のあ「(ゴシック、ゴシックホラー。丁度良かったわ、小梅ちゃん達との関わりでホラー映画とは最近縁があったばかりだもの)」ガサガサ

のあ「(蘭子ちゃんも、きっと気に入ってくれる筈!)」ガサガサ

蘭子「……」トコトコ

蘭子「其の方……っ。い、如何なる戯れを??」(訳:高峯さん。な、何をしているんですか?)」ドキドキ

のあ「!!」


のあ「……」スッ

ダンッ!


蘭子「?」





【『ドラキュラ』、『チャイルド・プレイ』、『SAW』等、白坂小梅提供ゴシックホラー映画集(未視聴)】



蘭子「(ヒッ!?)」ビクゥ!

のあ「(……)」ニヤニヤ

蘭子「ア……、タ、高峯さ───」プルプル



のあ「蘭子……」

のあ「これ、貸してあげる……」ニヤニヤ



蘭子「」

蘭子「……っ」ジワッ

のあ「(!?)」

蘭子「ア……、う゛あ゛ぁ゛~~~~ん……っ、ひっぐ……」トボトボ

のあ「!! ま、待……っ!」

───ガチャ、バタン


のあ「」

P「……ん!?」クルッ

P「お、おい蘭子!? …な、何かあったんですか、高峯さ──」

P「───!」

のあ「ワ……、わた、私は、な、何も……っ!」

P「あっ、あー………テーブルの上に並んでいるソレ、ホラー映画ですか? 蘭子のやつ、ホラー系の物はかなり苦手なんですよ」

のあ「!!!」

P「彼女、ゴスロリ系のファッションは好んで着るんですが、彼女の中でも線引きと言うか曖昧な基準が存在していてですね。ホラーっぽい装飾やスタイルは嫌がるんです」

P「ゴシックも分類が多岐に渡っていて難しいんですが……、そのせいで怯えてしまったのかも」

P「うぅん、ただ……、まさかその映画単体で泣くほど怯えるとは。精神がちょっと落ち着いていなかったのか、それとも何か別に怖い物があったのか……」

P「……っ!?」ギクッ!

P「た、高峯さんッ!? な、何故貴女も天を仰いで涙を流しているんですか!?」オロオロ


───ガチャ

美波「おはようござ───」スッ

美波「───っ!?」

P「!!」

美波「ぷ、プロデューサーさん! 高峯さんに何をしたんですかッ!?」

P「まま、待て待て待ってくれ!? お、俺は何も………!」オロオロ


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神崎蘭子
http://i.imgur.com/2iXhKvP.jpg
新田美波
http://i.imgur.com/0OAEDJB.jpg


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【事務所 応接室】


奈緒「……」チラッ

のあ「…………」ペラッ

奈緒「た……、高峯さん?」

のあ「(!!)」バサッ

のあ「(この子は、神谷奈緒ちゃん……!)」

のあ「(愛くるしいちょっと太めの眉毛が特徴で、時折覗かせる慎ましさと恥じらいが本当に可愛らしい、まさに年頃の女の子)」

のあ「(是非ともお友達になりたい。でも、何の用かな?)」

のあ「ド……どうしたの?」

奈緒「いえ、高峯さんがこの前に伊吹や小梅達と映画を観たって話を聞いてさ? じ、じゃあアニメも見たことがあるのかなー……って思って」

のあ「(アニメ……。この会話のパターンは……、以前の伊吹ちゃんの時と同じだわ……)」

のあ「(フフ、そうと決まれば……!)」ニヤニヤ

のあ「……語らう程の造詣は無いけれど、でも好きよ」

奈緒「! ほ、ホント? じゃあどんなの観てる?」

のあ「(ぐっ!?)」

のあ「(さ、最後に観たと言えば……)」

のあ「マ……、『魔法騎士レイアース』とか…………、か、『カードキャプターさくら』とか……」

奈緒「へえ、CLAMPか! あたしも『ツバサ・クロニクル』とか少し観たことあるよ!」

のあ「ソ、そう。非常に好ましいわ」

奈緒「(なんか、怖そうな人だったけど話が少し合って嬉しいな……。でも本当に意外だ)」

奈緒「じ、じゃあさ? そういう魔法少女系のヤツで面白いのがあるんだけど、これとかどーかな?」

スッ


のあ「(……『魔法少女まどか☆マギカ?)」

のあ「(……最近のアニメかな? DVDのパッケージに、ひらひらフリル衣装の可愛らしい女の子達と猫のようなマスコットキャラが映ってるわね)」

のあ「……少女に寄り添う動物の眷属。これは、『カードキャプターさくら』と構図が酷似してるわね」

奈緒「そう思うだろ? とにかく、騙されたと思って3話まで観てみてよ!」

のあ「(……奈緒ちゃん)」ドキドキ

のあ「(積極的に喋り掛けてきてくれて、本当に嬉しいわ。貴女とお友達になれるよう、頑張るから……!)」


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【夜 高峯宅】
【第1話鑑賞中】


のあ「ふふ……。あの奈緒ちゃんが勧めてくれた作品だもの、観ないワケには行かないわ。きっと面白いに決まっている」

のあ「とりあえず、言われた通りまず3話までざっと観てみましょうか」

のあ「(……)」ジー

のあ「(…………)」

のあ「あー、本当に可愛らしい女の子達が魔法使いになって、協力して悪と立ち向かうコテコテの魔法少女モノだわ、コレ」

のあ「レイアースやCCさくらの現代版ね。ふふっ、奈緒ちゃんは本当にアニメが好きなのね」



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【第2話鑑賞中】


のあ「みんな可愛らしいわ。主人公もその仲間も、本当に」

のあ「特に先輩キャラの黄色い子、なんだか応援したくなってくるわ。気丈に振る舞っているように見えるけど、その実は脆い一面もありそうで……」

のあ「勧善懲悪のようなシンプルなシナリオでも、こういう風にキャラの内面を掘り下げてくれると感情移入して観ることが出来て楽しいわね」

のあ「あぁ…、みんな可愛いなぁ。小梅ちゃんには申し訳ないけど、ホラー映画より全然コッチのほうが良い……♪」













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【翌日 事務所】

♪~~~~

ピッ

P「もしもし、高峯さんですか? どうしました?」

P「……体調不良ですか? ……と、一身上の都合? ええ、分かりました」

P「あっ、用向きは衣装合わせだけなので明日でも全然大丈夫ですよ。いいえ、とんでもないです、迷惑だなんて。わざわざ連絡ありがとうございます」

P「……」ピッ




奈緒「~~~♪」

奏「奈緒、何だか上機嫌ね?」

奈緒「えっ? ああ、昨日高峯さんとアニメの話してさ?」

奈緒「『魔法少女まどか☆マギカ』、貸したんだよ」

奏「ええっと、確か…、あの可愛らしい見た目に反してエグいって評判のダークファンタジーね。第3話から展開が激変するって噂の」

奈緒「壁を作ってるような人だったけど、こういう趣味の話が合うって分かって嬉しいなぁ♪」

奏「(羨ましいわ……)」


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神谷奈緒
http://i.imgur.com/BRcGQM4.jpg
速水奏
http://i.imgur.com/nsJjnT4.jpg


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【高峯宅 玄関】


ガチャ

のあ「……」スッ



───ガチャ

楓「……あ」



のあ「!!」ビクッ!

楓「オ……おはようございます、のあさん」

のあ「オ……おはよう、楓」

のあ「(お隣に住んでいる高垣楓さんだわ。まさか出勤で鉢合わせるなんて)」

のあ「(……)」

楓「今からお仕事ですか?」

のあ「……今日はスタジオでレッスンよ」

楓「奇遇ですね、私もです」

楓「(……)」

楓「(まさか彼女もアイドルだったなんて……。しかも、同じ事務所の)」

のあ「(……)」

楓「(……)」

のあ「(世の中狭いわ。けれど……)」

楓「(理屈じゃないけど、多分そう。類は友を呼ぶというけれど……)」

のあ「(…………)」ジー

楓「(…………)」ジー

のあ「(楓さんからは、私と同じ非リア充の匂いがする……)」

楓「(のあさんからは、私と同じコミュ力不足の匂いがする……)」


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【事務所】


のあ「……くしゅんっ」

楓「のあさん、風邪ですか?」

のあ「……最近多いわ。誰かが私の噂をしているようね」

のあ「(ふふふっ……)」

のあ「……くしゅんっ」

楓「2回目のくしゃみは悪い噂……、ですよ?」

のあ「っ!!」

のあ「ソ……そう……」シュン

楓「ゴ……、ごめんなさい。そんなに肩を落とさずとも……」

のあ「(………………)」

楓「(………………)」

のあ「……陰口を叩かれるほど、まだこの場所に馴染んでない気もするけど……」

楓「し、仕方ありませんよ」

楓「この事務所はとにかく若い子が大多数を占めていますし、とにかく若い子=陰口ですし……」

楓「仕方ありませんよ。何より私も最初の自己紹介とか何を話していいか分からなくて失敗しちゃったし、何よりもうとにかく何を話していいのか分からなくて……」

楓「何より……、仕方ありませんよ」

のあ「……仕方ないのね」

楓「はい……」

のあ「……」

楓「……」

のあ「……暇ね」

楓「そ、そうですね。お互いレッスンまで時間はありますし」

のあ「……」

楓「……」

のあ「…………」

楓「…………」

楓「イ……、良い天気ですね?」

のあ「ソ……そうね」

のあ「……」

楓「……」

のあ「…………」

楓「…………」

のあ「………………」

楓「………………」

のあ「しりとり」

楓「…………」

楓「………………」

楓「えっ……!?」ガタッ!

のあ「り」


のあ「……」

楓「り…………、り、りんご酒」
のあ「ゆず梅酒」

楓「……湯葉」
のあ「馬刺し」

楓「白子」
のあ「子持ちカレイの煮付け」

楓「ケバブ」
のあ「ぶりの照り焼き」

楓「肝吸い」
のあ「いか刺し」

楓「焼酎」
のあ「うどの天ぷら」

楓「らっきょう」
のあ「うずら卵の燻製」

楓「芋餅」
のあ「ちくわの甘辛炒め」

楓「めざし」
のあ「生姜焼き」

楓「きんきの網焼き」
のあ「きんぴらごぼう」

楓「うなぎ」
のあ「牛丼」

楓「ん……」

のあ「……!!」

楓「…………」

のあ「…………」

楓「ふふっ……」

のあ「フフフ……」

楓「まだ時間ありますし、ご飯でも行きますか?」

のあ「ええ、ご一緒するわ」

のあ「私……貴方の前なら、素の自分でいれる気がするわ。楓……」

楓「奇遇ですね、私もです。のあさん」

楓「(ふふふ……♪)」ドキドキ

のあ「(フフフフ……♪)」ドキドキ








P「何を話していたか聞こえなかったけど……」

P「あの二人が並ぶと、高尚なオーラが凄まじいな……ウン」

みく「そーかな?」


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──


高垣楓
http://i.imgur.com/NnNL821.jpg
前川みく
http://i.imgur.com/pf5EvEZ.jpg


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【事務所】


未央「楓さんっ! おはようございまーす!」

楓「(……!)」

楓「未央ちゃん……、と、卯月ちゃん、凛ちゃん」

楓「(ニュージェネレーション揃い踏みで、光栄だわ)」

卯月「おはようございますっ」

凛「おはようございます。あの、ちょっと良いですか?」

楓「ハ……、はい、なんでしょう?」

凛「楓さん、この後……予定空いてますか?」

楓「……えっ?」

楓「(ま、まさかリンチでもされるのかしら……。凛ちゃん、目つき鋭いし……)」オロオロ

凛「……」ジー

楓「い、いや……その……っ」オロオロ

凛「もし良ければ、これからボウリングに行きませんか?」

楓「…………」

楓「ぼ、ボウリング??」

未央「複合アミューズメント施設のCM撮影の仕事の時に、1ゲーム無料券を沢山貰ったんですよ! それが結構余ってて」

楓「(……)」

楓「(な、何故にピンポイントで歳が離れた私を誘ったのかしら? 不自然すぎるし、やっぱり何か別の意図があるんじゃあ……)」オロオロ

凛「(……)」ジー

楓「(ボウリング場って、よく色んな映画や漫画でゴロツキのたまり場になってる印象だし、不安だわ。でも……)」

楓「(でも……っ!)」

卯月「私達、あまり高垣さんとお話とかしたことないし、この機会に是非とも仲良くなれたらなぁ……って」

凛「無料券があるとはいえ、いきなり初手でボウリングに誘うのはどうかと思ったけどね。正直」

未央「どうですか、楓さん?」

楓「……」

楓「(い、行きたいっ……!)」ドキドキ

楓「(マイナスの印象以上に、ボウリング場とはリア充達がこぞって集う代表的な遊び場だもの! 遊びたいわ、私も青春の空気に浸りたい!)」

楓「(けど、実際行くのは恥ずかしい。この子達に混ざるなんて……!)」ドキドキ


楓「(それに行きたいのは山々だけど、ここは引いて大人の対応をするべきかしら? 私の加入で平均年齢を大幅に上げて、若い子達の輪を乱すワケにもいかないわ)」

楓「(私に気を遣いながらじゃあ3人も存分に楽しめないでしょう。なら……)」

楓「(……でも、うぅん。理由は素直に嬉しいし、好意を無碍にするわけにも……)」

楓「(夢にまで見たリア充の巣窟へのお誘い。残念だけれど、今回は流石に……)」

楓「…………」

凛「……ホラ、やっぱり楓さん困ってるよ」

楓「えっ?」

凛「ごめんなさい。流石に、一回りも違う年代に混ざるのは気が引けますよね?」

楓「エッ! あっ、い、いや、ベ……別に、そんナ、コト……」モゴモゴ

未央「ん……。そういえば、あっちの方はどうなったろ?」

卯月「奈緒ちゃんと加蓮ちゃんですか?」

楓「(……??)」

楓「あっちの方?」

卯月「はい、無料券が7枚余っててですね? 奈緒ちゃんと加蓮ちゃんも誘ったんです」

楓「(神谷奈緒ちゃんと、北条加蓮ちゃん……)」

卯月「私達3人とその2人で、あと残り2枚分の枠を1人ずつ、事務所の誰かに声を掛けようってことで話し合ったんです♪」

未央「ってなカンジで、私達は事務所内ランキングお姉さんにしたい人部門1位の楓さんを誘ってみたワケでしてーっ!」

楓「(う、うぅ。行きたい……!)」

楓「(本当に嬉しい、是非とも仲良くなりたい。……けれど、やっぱり若い子は若い子同士で……)」

───ガチャ


加蓮「おはようございます」スッ

凛「ん、遅かったね二人とも」

奈緒「おーい、ボウリングOKしてくれた人を連れて来たぞー」スッ

未央「おっ! だれだれ??」








のあ「…………」



楓「……」

のあ「……」

楓「(のあさん……)」

のあ「(…………)」

楓「(誘い、受けちゃったんですね……)」

のあ「(……ええ。だって行きたいんだもの、ボウリング)」

楓「(そう。仕方ないですよね、行きたいなら……)」

のあ「(年下から遊びに誘われて、凄く嬉しかったの)」

のあ「(……仕方ないのよ)」


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島村卯月
http://i.imgur.com/khWkkYJ.jpg
渋谷凛
http://i.imgur.com/AHZm1Fd.jpg
本田未央
http://i.imgur.com/H0TDZYh.jpg

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【高峯宅】


のあ「……」モゾモゾ

のあ「私がアイドルになって数ヶ月」

のあ「デビューしたとはいえ、まだ駆け出しの立場だけれど、そろそろ周りの目にも気を配った方が良いのかな?」

のあ「衣装は仕事の時に用意して貰えるのだけれど、普段着との差に開きがあり過ぎるのも問題よね」

のあ「とは言え……」グビッ

のあ「私のイメージって本当にどんなものかしら。コレ本当にずぅーっと悩んでるけど」

のあ「雑誌の組み版の煽りとか事務所の女の子にも、クールとかミステリアスとか寡黙の女王とか大層なネーミングを囁かれているけど……」

のあ「……」グビッ

のあ「パーカーにスウェットを着てビールを片手にコタツでくつろぐ私を見たら、きっと皆驚きのあまり失禁するわね。悪いギャップと言う意味で」

のあ「く、くくく……っ、女性として本当にピンチだわ。部屋の内装も女子っぽくないし、もうギリギリよ色々と」

のあ「……百歩譲って部屋着はどうでもいいの、部屋着は見られる心配はないし。美優さんも結構ラフでテキトーなカンジだって言ってたし」

のあ「詰まる所、普段着こそ一番の問題よ、普段着。下着とか靴下以外の、他人から見える範囲の衣服」

のあ「センスが問われるし、自然と人となりも伺えるというものよ」

のあ「……」グビッ

のあ「あー…。明日は雛祭りのイベントに向けた、告知のための宣伝広告用写真撮影だった。撮影用衣装は手配して貰えるらしいけど」

のあ「とりあえず……上手い具合に、オシャレな感じの私服を取り繕ってみよう」ガサガサ

のあ「こうクールで……、きゅっとしたカンジで、すらーっとしてて……、ミステリアスでズバババーみたいなチョイスを……」ガサガサガサ


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【翌日 撮影スタジオ】


P「(……)」

P「(…………)」ジー

のあ「……これは……そう、『さげもん』というのね?」

P「……えっ?」

のあ「……??」

P「あっ! は、はい。そうですね……」

P「それは『さげもん』といって、福岡県に伝わる風習の一つで、女児の健やかな成長を願い製作した飾りだそうです」

のあ「だから……桃の節句に良く見るのかしら」スッ

P「ええ、意匠を凝らした可愛らしい細工物と鮮やかな毬の形の物があってですね。動物や人形にもしっかりとそれぞれ意味が込められているのだとか」

のあ「……素敵だわ」

のあ「一つ一つに込められた想いを感じる……。こんな仕事をしたいものね……」

P「……」

P「………」

P「…………」



P「(高峯さん、この後に違う衣装で撮影に入るから別にいいんですが……)」

P「(……な、何なんだ!? 彼女のあの幾何学的なデザインの自前の服はっ!)」

のあ「(……)」

P「(ぱ、パリコレ? サイバーファッション……?)」

P「(あの分子モデルのようなハニカム模様は何だ、LED? 反射材? ど、どういう原理で発光しているんだ!?」

P「(雛祭りの色鮮やかな飾りの中、黒いシルエットの私服が、め、メチャクチャ浮いちゃってるッ!!」

のあ「(……)」

P「(でも……、本当に綺麗だ。絢爛な装飾に引けを取らず目を奪われる程の不思議な上品さと、有無を言わさない凄味がある)」

のあ「(……)」

P「(彼女の美しさを形容するのに曖昧な言葉しか持てない己が恥ずかしい……っ)」

P「(お、俺に……、本当に彼女のプロデュースが務まるのだろうか!?)」

P「(俺はこの先、彼女の気高さ……、神々しさに付いていけるのだろうか……)

P「ぐっ、ぐぅ……っ!」プルプル

のあ「(お腹空いたなぁ……)」


──────
────
──


※イメージ図↓
http://i.imgur.com/5doOmAV.jpg


──
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──────
【事務所】


楓「そう言えば……」

のあ「?」

楓「以前未央ちゃんが言っていた言葉、覚えています?」

のあ「……何だったかしら」

楓「『事務所内ランキング、お姉さんにしたい人部門……』」

のあ「……!」

楓「ふふふっ♪ 私、1位なんですって♪」

のあ「(いいなぁ…。素直に羨ましい)」

のあ「(私も皆から姉のように慕われたいわ。出来るお姉さんってカンジで羨望の眼差しを向けられたい)」

のあ「(何が足りないんだろう? オーラ? 女子力?)」

楓「あの後、気になって調べてみたんですけどね?」

のあ「!」

のあ「ホ……他にもあったの?」

楓「はい。実を言うとそのランキング、以前暇な時に十数人程の女の子達が会話していた物が元になっていましてね? 私もその時ちょっとだけコメントしたことがあって……」

楓「後々、その結果と色々な人から集めたコメントを、誰かがまとめた物がLINEのトークに上がっていまして……」

楓「多数の部門の中に、高峯さんが1位の物もありましたよ」

のあ「(!!!!)」

のあ「みっ、み、……!!」ガタッ!

楓「ふふふ……。見たい、ですか??」ニヤリ

のあ「!!」

のあ「そ、そうね。私の立ち位置が皆からどのように認識されているか……、少しだけ興味があるわ」

のあ「(LINE……。ちょっと苦手なのよね、会話に入りにくいし、まだ使いこなせていないし)」

楓「いいですよ。確か……、のあさんの名前が載っていたのは……」スッ

のあ「っ……」ドキドキ

楓「あ。ありました、コレです」サッ


☆7位:木場真奈美さん
 ・つよい(確信)
 ・女子力(物理)
 ・覇王翔吼拳を使わざるを得ない

☆6位:柊志乃さん
 ・圧倒的貫禄、ワイングラスは常に片手
 ・怒らせたら絶対怖い
 ・目だけで人を〇せそう

☆5位:佐久間まゆちゃん
 ・犯人はまゆ
 ・バッドエンド要因
 ・身内だけどラスボス

☆4位:鷹富士茄子さん
 ・確率とか支配した攻撃してきそう
 ・「わぁい、ツモりました~♪」→大三元字一色四暗刻単騎(+八連壮)
 ・むしろサイコロ振った瞬間ロンしてくる

☆3位:神崎蘭子ちゃん
 ・ノリノリで魔王を演じてる姿が想像出来る
 ・でも裏ボスにあっさり負けちゃう
 ・精神攻撃が弱点

☆2位:遊佐こずえちゃん
 ・無垢な可愛さで世界がヤバイ
 ・第五形態くらいまで確実にありそう
 ・怒ったら「ふわぁ~、あしもとがおるすだよ~?」とか言っておもむろに足を吹き飛ばしにきそう





☆1位:高峯のあさん
 ・光速の異名を持ち重力を自在に操りそう
 ・スーパーノヴァとか使っちゃう。のあだけに。ふふっ(笑)
 ・スタイリッシュを履き違えている服で登場する


【★ラスボスっぽい人部門★】





のあ「………っ」スゥー

楓「(!?)」ビクッ!

楓「な、涙ッ!? の、のあさん!?」オロオロ

のあ「(ラスボス……。まるで意味が分からない……っ)」プルプル

のあ「(女王なんて身に余る不釣り合いなネーミングを付けられたうえ、更に『ラスボス』……??)」

のあ「(わ、私は一体……これからどうすればいいのっ!)」プルプル

楓「の、のあさん! 落ち着いて下さい!」

楓「た、確かにコメントが悪口と紙一重ですが……、あ、悪意はありませんし、女の子達の可愛らしい想像だと思えば……っ!」オロオロ

楓「茄子ちゃんも真奈美さんも志乃さんもこれを見た時に笑ってましたし、その、深く捉えずに……」オロオロ

のあ「(コメント、『スタイリッシュを履き違えている』……。私の私服……ダサいんだ…………ッ)」ズーン…

のあ「……っう゛っ!? ぇっ、おえぇッ!」ガクガク

楓「!? だ、大丈夫ですかっ!?」ガタッ!!

のあ「ハー、ハー……、ウッ……」

楓「(のあさん、ここまでショックを受けるなんて……。ご、ごめんなさい……!)」

のあ「(とりあえず……)」

のあ「(今度オシャレな服、買いに行こ)」シュン


──────
────
──


──
────
──────
【車内】


のあ「……貴方、一つ伺っていいかしら」

P「はい、何でしょう?」

のあ「……衣服とは己を表現する形質、その者の重要な個性。ならば、貴方のその目に……」

のあ「……私の姿は、どう映っているの?」

P「(!!!)」

P「(いっ、以前の雛祭りイベント告知用宣材撮影の時の、あの服を着ている!)」

P「(高峯さん……、ひょっとしてこの問いで、俺の審美眼を試しているのか!?)」ビクビク…

のあ「(……)」ドキドキ

P「……ッ」

P「すみませんっ、未熟な俺には、何も分かりませんっ……!」プルプル

のあ「……」






━━━━━━━━━━
【夜 高峯宅】


のあ「……」

のあ「ハァ……プロデューサーも、言葉を濁していたわ」

のあ「やっぱり私の持ってる服ってダサいんだ、あぁ……あぁ……」

のあ「あぁ~~~~……最悪。もう全部捨てよう……」

のあ「……明日休みだし、服買いに行こ」

のあ「ユニクロでもしまむらでも無く、若者向けの、とびっきり女の子らしい可愛らしい服を」


━━━━━━━━━━
【翌日 服飾店】


のあ「(はぁー、はぁー……っ!)」ドキドキ

のあ「(ハッ、ハァー、ハァッ……!)」ドキドキ

のあ「(は、早く服を決めてしまおう! じゃないと……)」




女店員A「いらっしゃいませぇ~☆」スタスタ



のあ「(う゛っ!!)」ビクッ!

のあ「ぁっ……」

女店員A「お客様、何系の服をお探しですかぁ??」

のあ「イ……、イヤ……、そ、ソノ…………」

女店員A「けっこうスタイルいいですねー☆ よく言われませんかぁ?」

のあ「ソ、ソうかしら……? べ、別ニ……」

のあ「(ぐ、くっ……!)」ドクンドクン!

のあ「(な、何で若者向けの服屋って、こう、すぐに店員が寄って……。お願いっ、一人でゆっくり……っ!)」ドクンドクン

のあ「(ふっ、ふぅっ、ふぅっ……っ!)」ドクンドクン!




女店員B「いらっしゃいませー♪」スタスタ



のあ「(ッッ!?)」ビクゥ!

のあ「(ふ、増え───)」

女店員B「お客様、綺麗な銀髪ですねー♪ ムラも無いし、色合いの適宜な手入れとかかなり大変ですよね??」

女店員B「なにかコスプレとか、モデルとかやっていらっしゃいますか? ほんっとにキレーっ♪」

女店員A「服をお探しでしたら、今流行りのシックなフェミカジ系のコーデで合わせてみませんか? きっとお似合いですよぉー☆」

女店員B「髪色に合わせて、暗めのワントーンなんて如何ですか? 落ち着いた雰囲気でカッコイイと思います♪」

のあ「」


───ダダダッ!!




女店員A「あっ! お、お客様~??」

女店員A「も、猛ダッシュで帰っちゃった……。一体何だったんだろ??」

女店員B「うぅーん…、あの人、何処かで見たような……」


──────
────
──


──
────
──────
【高峯宅 玄関】


ガチャ

のあ「……」


───ガチャ

楓「……あ」



のあ「……!」

楓「こんにちは、のあさん」

のあ「……」コクン

楓「お買い物ですか?」

のあ「いいえ、昼餉に外食しようと思い立ったのよ」

楓「!」

楓「じ、じゃあご一緒しませんか? 私も丁度お昼に何処か行こうと思っていたんですよ」

のあ「!!」

楓「給料日ですし……ふふっ。リッチなランチと洒落込みませんか?」

のあ「フフフ……、いいわね。給料日だもの」

のあ「店は何処が良いかしら」スタスタ

楓「お寿司なんてどうでしょう? 寿司屋に行きたいと言うはやすしですが……ふふっ」スタスタ

楓「普段なら絶対に手が出ない、一人寿司、一人焼肉、一人ラーメン二郎……」

楓「……今日は二人一緒ですし、怖いものなんてありませんよ」ニヤリ

のあ「フフ、じゃあ行きましょうか」

のあ「私……、以前に回らない寿司屋に行ったことがあるわ。寿司屋ならお手の物よ」

楓「!! さ、流石はのあさん……! 頼りにしてます」

のあ「(フフフ……♪)」スタスタ


━━━━━━━━━━
【回転寿司屋】


のあ「……」

楓「……」

店員A「お客さまッ! 本日は御来店有難うございますッ!」

店員A「御用がありましたらッ、気軽に声を掛けて下さいッッ!!」

楓「ハ、ハイっ……」オロオロ

楓「(さ、最近の回転寿司って、店員さんが妙にフレンドリーよね……。愛想悪いよりは全然良いけど)」

楓「(掛け声も賑やかと言うか……寧ろちょっと耳が痛いくらい。アミューズメントみたいな店舗もあるし……)」

のあ「……」

のあ「…………」




のあ「(か、回転寿司なのに、全然お皿が回っていない!?)」




のあ「(ど、どういうこと!? 紙パックのジュースと寿司ネタのポップ広告的な物しか回っていない……!)」

のあ「(回転寿司なんて10年振りくらいだけれど、な、何故寿司が流れていないの!?)」

のあ「(……ま、まさかっ!)」

のあ「(この状況は、必然的に何度も何度も店員さんに注文する行動を余儀なくされるというの!?)」

のあ「(はぁー、はぁーっ……!)」ドクンドクン!

のあ「ふっ、ふぅっ……!」プルプル

楓「……!」



のあ「ス……、スミマセ、ン……ッ!!」プルプル




店員A「さあッ! 本日入荷した大分直送、活〆豊後寒鰤、如何ですかーッ!」

店員A「オホーツク産冬鰊、冬鰊どうっすかーーッッ!」





のあ「」

楓「(こ、声が届いていない! の、のあさん頑張って!)」

のあ「(はぁっ、はぁっ……!)」ドクンドクン!

店員A「ヘイらっしゃーーいッ!!」パシンパシン!


──────
────
──


──
────
──────
【続 回転寿司屋】


のあ「っ……!」スッ

楓「!!」

楓「(のあさん……っ、苦肉の策で、遂に手を挙げてアピールを……)」

楓「……あっ!」

楓「(ま、待って下さいのあさん!)」ガシッ!

のあ「(なっ、何??)」ビクッ!

楓「(目の前に『注文票』があります。ひょっとすると……)」

のあ「(!!)」

楓「(ひょっとすると、これで注文を纏めて行えるのではないですか?)」

楓「(渡す手間はあれど、これさえあれば精神的負担は大幅に軽減されるハズ!)」

のあ「(楓……、貴女は天才ね)」

楓「(いいえ……、これは私達2人の勝利です。のあさんと一緒に来なければ、恐らく私は無料のガリをひとしきり食べ終えたらすごすごと惨めに撤退していたでしょう)」

楓「(勇気ある貴女の行動こそが私を冷静にさせ、活路を開いたんです)」

のあ「(フ、フフっ……)」

のあ「(じゃあ、早速注文を書きましょうか)」

楓「(ええ。これからいよいよ私達のリッチなランチが幕を開けるんですね)」

のあ「(とりあえずサーモンを頼みましょう。4貫くらい)」カキカキ

楓「(じゃあ私は、先程オススメしていた寒鰤を……)」カキカキ

のあ「(ん……?)」

のあ「(このオススメメニューの『こぼれイクラ』って何かしら? 写真ではイクラが軍艦巻きの上に溢れんばかり……というか溢れている、大量に)」

楓「(そのイクラいくら? ふふふっ♪)」

のあ「(フフ……、一番高い皿よ。珍しいし、これも注文しておきましょう)」カキカキ

スッ


店員A「ハイッ! ありがとうございますッ、注文票を頂戴しますッ!」スッ

楓「(ふふふっ……渡せたっ!)」

楓「(この注文票さえあれば、もう今後は一人寿司すら楽勝ですね♪)」

のあ「(案外余裕だったわ。フフフ……♪)」

楓「……♪」ワクワク

のあ「……♪」ワクワク



店員A「ッ!!」

店員A「4番席さんから、『こぼれイクラ』ッ、『こぼれイクラ』入りましたァーーッ!!!」

楓「(4番席の……こぼれイクラ。のあさんですかね?)」

のあ「(そうね)」



ドンドンドンドン!!
ぱふぱふぱふぱふぱふ~~♪


楓「!?」

のあ「!?」


ドンドコドンドコ♪
 パフパフパフパフー♪
カチャカチャカチャカチャ♪

楓「(こ…、このけたたましい太鼓と鳴子とラッパは何っ!?)」ビクビク

のあ「(な、何っ!? 一体何の儀式が始まるのっ!?)」オロオロ

ゾロゾロゾロ…


店員B「……」

店員C「……」

店員D「……」

楓「(かっ、囲まれ───っ!?)」オロオロ

のあ「(なっ、なっ───!?)」オロオロ

店員A『「こぼれイクラ」ご注文頂き、アリガトウございますッッ!!』

楓「ぁっ、ぁぇ……?」

のあ「ぅっ……ぇっ……?」

店員A『ご注文された方はどちらでしょうかッ!』

のあ「ぁっ、はぃ……」オロオロ

店員A『アリガトウございますッ! ではこの皿を手にお持ち下さいッ!』グイッ!

のあ「ぇっ……ぇ?」カチャ

のあ「(何も乗っていない軍艦巻きが、皿の上に……???)」

店員A『それでは私が今から、この器より新鮮なイクラを注がせて頂きますッ!!』

店員A『そぉい!!』

店員A『わっしょーーいッ!!』ダバー

店員B「ワッショーイっ!」

店員A『わっしょーーーーいィッ!!』ダバー

店員C「ワッショーイっ!」

店員A『最後に、せーのッ! わっしょォォォーーーーーぃいッッ!!!』ダバー

店員D「アリガトウございま~~すっ!」

ドンドコドンドコ♪
 パフパフパフパフー♪
カチャカチャカチャカチャ♪

パチパチパチパチパチ!


店員A「はいッ! ご注文ありがとうございましたァーーッ!」

パチパチパチパチパチパチパチ!
 パチパチパチパチパチパチパチ!
パチパチパチパチパチパチパチ!
 パチパチパチパチパチパチパチ!











のあ「」

楓「…」

──────
────
──


参考動画↓
https://www.youtube.com/watch?v=YSDsszB1t8U
https://www.youtube.com/watch?v=D8Fih-nS7lk

訂正


参考動画↓
http://www.youtube.com/watch?v=YSDsszB1t8U
http://www.youtube.com/watch?v=D8Fih-nS7lk


──
────
──────
【外】


フラフラ…

のあ「(あー、うぅっ……)」フラフラ…

のあ「(レッスン中にコンタクト無くした……何とか乗り切ったけど。でもヤバい、殆ど見えない……)」

のあ「(早く帰ろ。急いで新しいの買わないと)」




「……」



のあ「!」

のあ「ぁっ……にゃんこ……」

「……」

───スッ


のあ「あっ」

のあ「(あぁ、可愛い……。生の猫を見かけるのは久しぶりだわ)」ドキドキ

のあ「(ちょっと追いかけてみよう)」


━━━━━━━━━━
【路地裏】


のあ「はっ、はぁっ……!」ゼエゼエ

のあ「(あ、足はやッ……!)」



「……」



のあ「(でも、もう行き止まりね。ふふっ……)」

のあ「観念しなさい、にゃんこ……」ジリジリ

「……」

のあ「……」ジリジリ

「……」

のあ「…………………………」スッ


カサッ






【ビニール袋】



のあ「(……!?)」

のあ「(ね、猫じゃない!? び、ビニール……っ!)」

のあ「……」

のあ「……」

のあ「フ…、フンフンフフーン……」プルプル

のあ「(ハァ、帰ろ……)」

クルッ


のあ「(!?)」ギクッ!






みく「……」



のあ「ぁっ……」

みく「……」

のあ「……」

みく「……」

みく「…………」

みく「………………」



みく「……ふっ」ニヤリ

のあ「ヒッ!」ビクッ!

──────
────
──


──
────
──────
【高峯宅】


のあ「……」モゾモゾ


~~~~~~~
アーニャ『私、ここの「隣」なので。いつでも、駆けつけますから、遠慮なさらず。ジェラーユ ヴァム パプラーヴィッツア、お大事に……』
~~~~~~~


のあ「……」

のあ「アーニャちゃん……。私が風邪を拗らせた時に、こう言っていたけど」

のあ「……けれど、実際隣の部屋に住んでいたのは、楓さんだった」

のあ「まあ、おかげで楓さんとは仲良くなれたけど。でも……」

のあ「あの言葉は嘘? いや、でも純粋な彼女がそんな事をする筈がないわ」

のあ「アーニャちゃんとも是非とも仲良くなりたいのに。この事務所には仲良くしたい子が多すぎて困るわ」

のあ「……」モゾモゾ

のあ「……ハッ!」

のあ「隣……まさか……っ!」

のあ「逆側っ!?」ガタッ!

のあ「こ、これだっ! というかもうこれ以外に考えられないッ!」

のあ「そうと決まれば、早速挨拶代わりに料理の御裾わけを……っ!!」ガタガタ!


━━━━━━━━━━
【隣の部屋の前】


ピンポーン♪

のあ「(……)」

のあ「(遂に…、遂に念願が叶うのね。このおでんはほんの気持ちなんだから……!)」

のあ「(断じて他意は無いわ。私の迸る女子力を見せつけて懐柔しようとしたり、あわよくば部屋にあがり込んで遊びたいなんてミリ程も思っていない)」

のあ「(………っ)」ドキドキ

───ガチャ


のあ「!!」







泰葉「はーい…?」




のあ「……」

泰葉「(……土鍋?)」

泰葉「(あっ、この女性、確か同じ事務所の……)」

のあ「……」

泰葉「どうしました、何のご用でしょう?」

のあ「ぁっ……!」




のあ「握手、して下さい……っ!」



泰葉「は、はぁ……」キョトン

のあ「お、『岡崎泰葉』ちゃん……!」

のあ「ム……、昔、テレビやドラマに出演している所を見ていましたっ。そ、その……、私も今、アイドルやってて……!」

泰葉「(えっ)」

のあ「ト……、隣に住んでいる者ですっ……、その……コレ、お、お裾分けデス……!」

泰葉「あ、ありがとうございます」

のあ「……♪」ギュッ

泰葉「……」ギュゥ

泰葉「(ひょっとして……、同じ事務所所属の事に気付いてない?)」

のあ「ア、ありがとう。これからも応援してマス……」ソワソワ

バタン


泰葉「(…………)」

泰葉「(………………)」

泰葉「(……あんな口調の人だっけ? 全然雰囲気違うような……まあいいや)」

泰葉「(ウッ、重っ! お裾分けって量なのかなコレ)」ズシッ


──────
────
──


岡崎泰葉
http://i.imgur.com/Nn5AgFq.jpg


──
────
──────
【商店街】


───ガラガラ

のあ「……」

ポトッ


店員「白、7等ですーっ」

のあ「(ハァ……)」

のあ「(こういうのって大抵当たりっこないのよね。毎度毎度殆どがポケットティッシュだわ)」

店員「あと3回引けますので、どうぞ張り切って回して下さいっ♪」

のあ「……」

───ガラガラ
ポトッ


のあ「(白……)」

───ガラガラ
ポトッ


のあ「(白……)」

───ガラガラ


のあ「(し…………)」

のあ「(ッ!?)」ビクッ!

ポトッ




のあ「(き、金ッ!?)」




のあ「ぁっ、あのっ……!」

のあ「き、き、きん……、たま、き、きん、金の玉が、ガっ……!」

店員「おおっ! オメデトウございまーすっ!」カランカラン♪

のあ「金の玉、き、金ッ! グッ!? ゲホッ、ごほっ!!」

店員「特賞、『10万円分の食事券』大当たりでーすっ!」カランカラン♪

のあ「(と……、特賞っ!)」

のあ「(わっ、や、やった……! 生まれて初めて福引に当たった!)」

のあ「(滅茶苦茶嬉しい、ふふふっ……♪)」ドキドキ


━━━━━━━━━━
【翌日 事務所】


藍子「高峯さん、何か良いことあったんですか?」

のあ「……?」

藍子「いつもより、雰囲気が柔らかいというか優しい表情をしているような……。気のせいですかね?」

のあ「(良く見てるなぁ……。流石は藍子ちゃんね)」

のあ「(折角だし、自慢しちゃおう。ふふふっ……♪)」




━━━━━━━━━━
【レッスンルーム】


藍子「…………それで、今度奢ってくれるって♪」

未央「へぇ、良いねぇあーちゃん! 私も付いていきたいなぁ……」

茜「良いですね! 福引でお食事券ですかっ!!」

未央「もし私が当たったなら、クラスのみんなと食べ放題に行きたいね。うぅん、ちょっと安っぽいかな?」

茜「バイキング、それも良いですね! 夢が広がりますねーっ!!」

未央「……で、何円相当の食事券なの?」

藍子「えーっと……、アレ? 幾らだったろ??」




━━━━━━━━━━
【車中】


留美「……福引、ね」

茜「私なら、もうお腹いっぱい白いご飯を頬張りたいですね! 白いご飯をおかずに白いご飯を食べる……、もう夢のようですね!!」

留美「そこは五穀米とかも合わせて食べたら如何かしら。その方が体に多少は良いかもしれないわよ?」

茜「むぅ、成程……!!」

留美「(冗談なのに)」

留美「私なら金券ショップ……いいえ、豪勢に使うのも悪くないけど、少しずつ小出しに使っていきたいわ」

留美「その食事券の額面金額はお幾らなのかしら?」

茜「確か…………んんー……!!」

茜「結構な値段だった気がしました! 100万円くらいではないでしょうか!!」

茜「藍子ちゃんに値段を聞いたのですが、恐らくそのくらいのインパクトがあった気がします!!」

留美「へぇ、100万」

留美「………………」

留美「……えっ!?」

留美「ひ、100万!?」

茜「はいっ!!」

留美「(100万……いきなり冗談の気配がしてきたわ。真偽のほどは定かではないけれど、うぅん)」

留美「(一応、報告した方が良いかしら……?)」


━━━━━━━━━━


のあ「(~~~♪)」ソワソワ

のあ「(どう使おうかなぁ♪ 藍子ちゃんとランチに行って、お隣の楓さんと泰葉ちゃんとも何処か美味しいご飯を……)」

───ガチャ


P「お疲れ様です、高峯さん」スッ

のあ「お疲れ様」

P「高峯さん。恐れ入りますが、噂によると福引で高額の食事券を当てたとか?」

のあ「……耳が早いわね。その通りよ」

のあ「貴方も……私との食事を渇望しているのかしら?」

P「(和久井さんからの話は本当だったか……)」

P「あっ、いえいえ。ちょっとその事でお話がありまして」

のあ「(……?)」キョトン

P「多分、福引の主催から案内があったとは思いますが、念のため確認します」

のあ「……いいわ。何が望み?」

P「ご存知かとは思いますが……」




P「税務署への申告に関してです」



のあ「…………ぜいむしょ……」

のあ「(……!?)」ビクッ!

のあ「ゼ……、税務、署ッ!?」オロオロ

P「ええ。今の時期ですと申告は来年辺りになりますね。早めにこちらで把握が出来て良かったです」

P「平たく言えば、高額の懸賞賞金の場合は一時所得の特別控除では扱えないんですよ。課税対象となるので確定申告をして頂く必要があります」

のあ「ぁっ? ……ぇぁっ……?」プルプル

P「高峯さんの場合ですと、えーっと、100万円ですから……」

のあ「っ!?」

のあ「(100万円を税務署に)は、払うの!?」

P「えっ? ええ。(大体計算して、25万くらい)払います」

のあ「ワ……、私っ……!」ジワッ

P「……っ!?」ギクッ!

のあ「何も、悪いこと、してないわ……っ!」ポロポロ

のあ「た、たすけて……っ」ポロポロ

P「たた、高峯さんッ!? な、何故涙を!?」


───ガチャ

奏「おはようござ───」スッ

奏「───っ!?」

P「!!」

奏「ぷ、プロデューサー! 高峯さんに何をしたのッ!?」

P「ぉお、俺は悪くねェ! お、俺は……っ!」オロオロ

──────
────
──

今日はここまでです
書き貯め作ってきます
楓さんのキャラ付けは、原作初期設定のとある台詞を拡大解釈しています
楓さんと泰葉にはのあさんの素が漏れてる感じです
あと課税金額に関しては結構ガバガバです。間違ってるかも。許してください

福引きなら普通に一時所得だから、(100万-50万)÷2で、所得が25万だな

アイドルの年間所得は知らないけど、まだ駆け出しだろうし税率はせいぜい10%、2万5千円くらい税金になるだろうな

因みに前作
特に関連性はありません。登場人物が被っているくらいです↓

高峯のあ「牛丼並……あっ大盛りで」
高峯のあ「牛丼並……あっ大盛りで」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1447664976/)
高峯のあ「和風牛丼並……あっあとから揚げ」
高峯のあ「和風牛丼並……あっあとから揚げ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1448875583/)

>>84
ご指摘ありがとうございます。
所得から税率を計算してなくてミスってました
ただのあさんの年収はちょっと考えていなかったので、独り身だと大体目安は10~25、6%が一般的ですかね?
書いてる途中ですごい違和感があったんですが、酷いですね。訂正します


━━━━━━━━━━


のあ「(~~~♪)」ソワソワ

のあ「(どう使おうかなぁ♪ 藍子ちゃんとランチに行って、お隣の楓さんと泰葉ちゃんとも何処か美味しいご飯を……)」

───ガチャ


P「お疲れ様です、高峯さん」スッ

のあ「お疲れ様」

P「高峯さん。恐れ入りますが、噂によると福引で高額の食事券を当てたとか?」

のあ「……耳が早いわね。その通りよ」

のあ「貴方も……私との食事を渇望しているのかしら?」

P「(和久井さんからの話は本当だったか……)」

P「あっ、いえいえ。ちょっとその事でお話がありまして」

のあ「(……?)」キョトン

P「多分、福引の主催から案内があったとは思いますが、念のため確認します」

のあ「……いいわ。何が望み?」

P「ご存知かとは思いますが……」




P「税務署への申告に関してです」



のあ「…………ぜいむしょ……」

のあ「(……!?)」ビクッ!

のあ「ゼ……、税務、署ッ!?」オロオロ

P「ええ。今の時期ですと申告は来年辺りになりますね。早めにこちらで把握が出来て良かったです」

P「平たく言えば、高額の懸賞賞金の場合は一時所得の特別控除では扱えないんですよ。課税対象となるので確定申告をして頂く必要があります」

のあ「ぁっ? ……ぇぁっ……?」プルプル

P「高峯さんの場合ですと、えーっと、100万円ですから……」

のあ「っ!?」

のあ「(100万円を税務署に)は、払うの!?」

P「えっ? ええ。(大体計算して、5万くらい)払います」

のあ「ワ……、私っ……!」ジワッ

P「……っ!?」ギクッ!

のあ「何も、悪いこと、してないわ……っ!」ポロポロ

のあ「た、たすけて……っ」ポロポロ

P「たた、高峯さんッ!? な、何故涙を!?」


───ガチャ

奏「おはようござ───」スッ

奏「───っ!?」

P「!!」

奏「ぷ、プロデューサー! 高峯さんに何をしたのッ!?」

P「ぉお、俺は悪くねェ! お、俺は……っ!」オロオロ

──────
────
──

訂正しました>>80
のあさんは新人という事と、人気具合を加味して一応税率20%で計算しておきました
計算忘れをしてしまい申し訳ありません

書き貯めないですが、今夜あたり体力に余裕があれば更新します


──
────
──────
【事務所 応接室】


文香「……」ペラッ

のあ「……」ペラッ

───ガチャ


麗奈「ねえ、文香っ!」ズイッ

文香「……はい」チラッ

麗奈「アタシ、今後のために事務所の人間の好き嫌いを把握したいのだけれど、アンタは何か怖いモノってあるの?」

文香「(……!)」

文香「はぁ、怖いモノですか。そうですね……」

文香「一概に言えず、言葉に詰まりますが……。強いて挙げるならば『ホラー小説』でしょうか」

麗奈「……ハァ? 本の虫の文香が、ちょっと意外ね」

文香「(……)」

文香「……はい。非現実的なおどろおどろしい事象の描写や痛ましい凄惨な情景、暴力的な人物像を想像として掻き立てる事が恐ろしいのです」

文香「……後味の悪さを覚える結末も、気分が滅入ってしまい個人的には好ましくなく……」

文香「……表紙を眺めるだけで、気分が悪くなる程です」

麗奈「フーン……。まあいいわ」クルッ

タタタタタ…
───ガチャ、バタン




文香「……」ペラッ

のあ「(文香ちゃんもホラーが苦手なのね……)」

のあ「(……)」

のあ「ホ……ホラー、苦手なの? 文香」ドキドキ

文香「……いいえ、好きですよ。ジャンルは問わず、読み物とあらば全て」

のあ「……えっ?」


文香「……古典落語の噺で『饅頭怖い』をご存知ですか? 脚色は多々ありますが、概ねの内容としては……」

文香【──ある村に饅頭が怖いと触れ回る一人の男がおり、周囲は面白がってその男を陥れようと大量の饅頭を拵え驚かせようとするのですが、男は驚くふりをしながら、本当は好物である饅頭を全てぺろりと平らげてしまう──】

文香「…………というお話です。端的に言えば、嫌いと偽り周囲を欺き巧妙に事を運ぶというものです」

のあ「えぇ、覚えがあるわ。昔、タイガー&ドラゴンというドラマで見た記憶があるわね」

文香「(……??)」

文香「……麗奈さんは最近、あの様に事務所の人々に嫌いな物を聞いて回り、そしてそれを突然押し付けて驚かせるという悪戯を頻繁に試しています」

文香「……先日の雨の日に、礼さんもとある悪戯をされて腰を抜かしておりました」

文香「……私も腰を痛めたくは無いので、先程のように嘘を教えた次第で……」

のあ「(成程ね…)」

文香「……因みに事務所の方達は、私のように嘘を逆手に取ったり、敢えて騙されてあげたりと様々な対応を凝らしているようですね」

文香「……子供を騙すのは気が引けますが、そこは止むを得ないと思いますので……」

のあ「(それで、文香ちゃんは本当は好きな物を嫌いと教えたワケね……)」





━━━━━━━━━━
【翌日 事務所の廊下】


スタスタ

のあ「……!」

文香「高峯さん、おはようございます」

のあ「……その手に持っている本は?」

文香「……早速、麗奈さんからの悪戯です。今朝方、私のロッカーに捻じ込んでありました」

のあ「(何か生真面目で可愛らしいわ、麗奈ちゃん。約束は守るタイプね)」

文香「『クリムゾンの迷宮』『殺戮にいたる病』……中々良いチョイスですね」

文香「……ホラーとしては勿論ですが、手に汗握るスリルと緻密なミステリーとしても堪能出来るので、私もオススメしておきます」

のあ「ソ……そう。今度是非目を通しておくわ」

文香「……あっ」

文香「今、応接室に麗奈さんがいるので、もしかすると貴女も同じ質問をされるかもしれません」

文香「……昨日も申しましたが、既に大勢の方は私と同じ対応をしていましたので、そろそろ麗奈さんも勘付くやもしれませんので……」

文香「……ご検討をお祈りしています」

のあ「心配には及ばないわ。所詮は子供の戯れ……」

のあ「遊興に身を投じるのも、悪くは無いわ」

文香「……では、私はレッスンがありますので」

───スタスタスタ


のあ「(……)」

のあ「(何だか、自然と文香ちゃんとお話しできたわ。自然な流れでアドレスを聞けば良かった)」ドキドキ


のあ「(……さて、応接室ね)」スタスタ

キィ




『わ……、我の身を穢す理(ことわり)を述べろと……?』

 『そう! アンタの嫌いな物、教えてよね』




のあ「(っ!!)」ビタッ!

のあ「(この声は……麗奈ちゃん、と……)」

のあ「(か……、神崎蘭子ちゃん!?)」

のあ「(ふ、二人とも中にいるのかしら……?)」ドキドキドキ




『そ、そのような問答で、我の何を推し量る気か……っ』

 『細かい事は良いから。ホラホラ、飴あげるから』

『くっ……! 小癪なっ……』

 『…………』

『…………』

『わ、私は……その……っ』

『た、高峯さんが……最近ちょっと怖くて……苦手というか……っ』

 『へー、意外。あのポーカーフェイスの女ね。分かったわ』





のあ「────っ!」

のあ「(ら、蘭子ちゃん……)」


───ガチャ

麗奈「……ン!」

のあ「(!!)」ビクッ!

麗奈「あら、おはよう。……!」

麗奈「ちょうどイイ所にいたわ、アンタ! さあ中に入って!」グイッ!

のあ「(……)」

のあ「(蘭子ちゃん……)」

のあ「(…………)」

のあ「(あの時に嫌われたと思っていたけど、想いが通じていたんだわ)」ドキドキ

のあ「(蘭子ちゃん、私も同じよ。麗奈ちゃんに聞かれたら、文香ちゃんを見習って好きな物を逆に嫌いと答えようと思っていたのよ……!)」

麗奈「ホラ、早く中に入って入って!」グイグイ

のあ「(あぁ、嬉しい。ふふふっ……♪)」ズルズルズル

───ガチャ





───ヒッ! ア、アァ……ッ

──────
────
──


小関麗奈
http://i.imgur.com/OSmKUjJ.jpg
鷺沢文香
http://i.imgur.com/xURpMCZ.jpg


──
────
──────
【事務所の廊下】


のあ「……」スタスタ

のあ「……おはよ──」カチャ




 『みくは、何か怖い物とかあるワケ?』

『どうしたの? 藪から棒に……』




のあ「ウっ!!!」ピタッ!!

のあ「(麗奈ちゃんと……、今度はみくちゃんね)」コソコソ

のあ「(……)」コソコソ




『怖いというか、嫌いな物はあるけど……』

 『なに?』

『魚介類かな。匂いもアウトにゃ』

 『猫キャラなのに変わってるわね』

『だ、ダメなものはダメなのっ!』




のあ「(…………)」







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【翌日 事務所 応接室】


奈緒「この前のボウリング、高峯さん途中から凄かったなぁ」

加蓮「いやぁ、コッチも結構緊張したけど、楽しんでくれてたから良かったね」

みく「ふふふ……っ♪」ゴソゴソ

奈緒「……あれ? みく、それ弁当か?」

加蓮「珍しいね?」

みく「のあにゃんが作ってくれたにゃぁ、コレ♪」

奈緒「おっ、いいなぁ」

加蓮「何かあったの?」

みく「ふふっ……みくはのあにゃんの弱みを握ったのにゃ!」

奈緒「よ、弱み……?」

加蓮「なにソレ、気になる!」

みく「ダーメ! 絶対言わないって代わりに作ってくれるって言ってくれたから」

奈緒「……変な関係だなぁ」


みく「ふふふっ……で、今日がその約束日で、みくのために拵えてくれたわけだけど」

みく「前に事務所の誰かがのあにゃんの料理の腕を絶賛してたから、みくも楽しみで楽しみで……」ゴソゴソ

パカッ




【白米】
【鰆の西京焼き】
【鱈の梅しそチーズ春巻き】
【魚肉ソーセージと野菜炒め】
【果物ゼリー】


プーン

みく「オ゛アアアアアァァァッ!!! おろろろろろろろろ……!!!」ビシャビシャ!



奈緒「う、うわあああっ!! な、何吐いてるんだよッ……、うわっ飛沫が!!」ガタッ!

加蓮「へー、手が込んでて美味しそうじゃん。食べられないなんて勿体無い」

奈緒「み、みくさ……魚が嫌いだって高峯さんに言ってなかったのか?」

みく「ハー、ハー、ハー…………ウップ……!!」ガクガク

みく「い、言ってなぃぃ……」ガクガク

みく「何か……善意を無碍にしちゃいけないと思って……言い出せなかった……」ガクガク

みく「一緒にロケ行った時も……、のあにゃんが探してくれた寿司屋を……最後まで堪能しちゃったし……」

加蓮「じゃあダメじゃん」

奈緒「自業自得だな」

加蓮「顔洗ってきなよ」

みく「(冷たっ!)」

みく「う、うん──」スッ

みく「─────!!?」ビクッ!




のあ「…………」ジー



加蓮「っ!?」

奈緒「うっ!?」

みく「の、のあにゃん!! い、いつからそこに……!?」

のあ「……………」プルプル

みく「っ!」

───ダッ!


みく「!?」

みく「ま、待つにゃのあにゃんっ! こ、これにはワケが……。せ、生理痛! そう、生理痛……っ」

みく「お、おえええっ……、ぐ、くっ……、ま、待ってぇ……!」フラフラ

奈緒「生理痛で吐くって、ソレもう病院行って来いよ……」

加蓮「追いかけるか吐くかどっちにしなよ……」

奈緒「あっ、あたし春巻き貰おうっと」ヒョイ

加蓮「私ピーマン苦手だからこの大きい魚貰うね。いただきまーす♪」ヒョイ

──────
────
──


北条加蓮
http://i.imgur.com/Sb3Of3W.jpg


──
────
──────
【喫茶店】


藍子「本当にありがとうございます、わざわざ個人的に誘って頂いて」

のあ「……構わないわ」

のあ「約束した筈よ。食事券の恩恵、貴女にも分け与えると」

のあ「それに、CDの宣伝に藍子のラジオに出演させて貰えるらしいから、そのお礼と思って頂戴」

藍子「そうなんですか? ふふっ、楽しみにしていますね♪」

のあ「……貴重な体験だわ。喫茶店で食事を摂るなんて」

藍子「ここの喫茶店、ケーキも美味しいんですけど、ランチメニューも充実しているんですよ♪」

のあ「……」

のあ「(落ち着いた照明に、意匠を凝らしたレトロな調度品、全体的にクラシックな雰囲気……)

のあ「(本来ならこんなオシャレなお店、一人で絶対入れないけど……)」

のあ「(藍子ちゃんが一緒なら、何も怖くないわ。ふふふっ……♪)」

のあ「……何を頼もうかしら」ペラッ

藍子「あの、ちょっとお手洗い行ってきますね」

藍子「もし注文を伺いに来たら、先にのあさんの分だけでも頼んでおいて構いませんから」ガタッ

のあ「……えっ」

───スタスタ…


のあ「(うっ……!)」ドキドキ

のあ「(くっ……!)」ペラッペラッペラッペラッ!



店員「お客様、ご注文はお決まりでしょうか?」


のあ「ぁっ…………」


のあ「(め、メニューが多いっ……!)」ペラッペラッペラッ!

のあ「(……よし、このパスタにしよう!)」



【ミレリーゲ・アラ・パンナ・コン・イ・ブロッコリ】
【海の恵みと山の幸の豪華仕立て 千葉県産新鮮ボイルエビと長野県産ぶなしめじ バジルを添えて】



のあ「……っ、こ、このっ……!」

店員「はい」

のあ「み……、みれ、ミレリーゲ、あ、アラっ……」

のあ「ぱ、パンナ・コン、い、イ、ブロッコリ……!」

のあ「う、海の恵みと、山の幸の豪華仕立て……っ!」

のあ「ち……、千葉、県、産、新鮮、ぼ、ボイルエビ、とっ!」

のあ「長野県産ぶなしめじ、ば、ば、バジルを添えて……ッ!!」

のあ「(言いにくっ……!)」





店員「はい、ブロッコリーのクリームパスタですね」

のあ「フッ!?」




───スタスタ

藍子「あっ、丁度良かった」

のあ「!」

藍子「すみません、私はランチセットAの、ピザとコーヒーで」

店員「はい、ランチセットAのモッツァレラチーズとバジルの特製ピザと、当店オリジナルブレンドコーヒーですね?」

のあ「(!?)」

藍子「はい、以上で」

店員「ありがとうございます」

スタスタ


藍子「?」

藍子「のあさん、どうしたんですか? そんなに顔を真っ赤にして……驚いた顔して……」

藍子「……??」キョトン


──────
────
──


──
────
──────
【岡崎宅】


楓「まさか、泰葉ちゃんも同じアパートだったなんて知りませんでしたよ」

のあ「……知り合いなの?」

泰葉「楓さん、以前は同じモデル事業部に在籍していたんですよ。よくお仕事をご一緒させて頂いていました」

楓「いえいえ、泰葉ちゃんに比べたら私なんて、全然知名度も経歴もないしぺーぺー同然ですよ」

のあ「(……)」

泰葉「……それで、お話とは?」

楓「パーティしましょう♪」

泰葉「……パーティ?」

楓「明日の3月25日、のあさんの誕生日なんですよ」

楓「折角なので、私達が一品を持ち寄りますから、泰葉ちゃんも如何ですか?」

泰葉「ご一緒させて頂いてもよろしいんですか?」

のあ「……寧ろ嬉しいわ」

泰葉「では、お言葉に甘えて……」

泰葉「でもお二人が腕によりをかけて料理を振る舞ってくれるのに、手ぶらでは申し訳ないので、私も何か簡単に用意しますよ?」

のあ「元は私達が無理やり誘ったのだから、遠慮しないで頂戴」

楓「そうですよ、泰葉ちゃんは仮にも学生な訳ですし、忙しいでしょう?」

泰葉「あ、いいえ……。その日は丁度休みですし、暇なので」

泰葉「場所はどちらのお宅ですか?」

楓「!!」

のあ「!!」

泰葉「……」

泰葉「……??」キョトン

楓「ヤ……、泰葉ちゃん! 本当に遠慮しないでいいんですよ! 場所さえ貸して貰えれば……!」アセアセ

のあ「リ……、料理は私達が拵えるから、貴女は悠々と構えているだけでいいの。片づけも私達が全て行うから」プルプル

泰葉「……」

泰葉「(なるほど、そういう事か……)」ジー

楓「……っ」ドキドキ

のあ「……」ドキドキ


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【高峯宅】


のあ「よ、良かった……。断られずに済んだ……!」

のあ「厚かましいお願いだったけど受け入れてくれるなんて、流石は大御所ね。これからも仲良くして貰いたいわ」

のあ「……」

のあ「……さて、何を作ろうかな」

のあ「ケーキはお高い市販の物を用意するから、パーティと言えば……」

のあ「……そうだ、『肉巻き』にしよう!」

のあ「お手軽に作れて、色鮮やかで、舌になじみがあるもの。完璧ね」

のあ「ふふふっ……、ここで私の女子力を二人に見せつけてあげよう♪」

のあ「……さて、今から取り掛かろう」ガタッ

のあ「煮物系の料理以外は作れないから、みくちゃんのお弁当の時のように、失敗しても良いように5回分の材料を用意して徹夜しないと上手くいかないのよね……」






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【高垣宅】


楓「良かった……。部屋が汚くてとても人様を招ける状態じゃないから、本当に良かった……」

楓「泰葉ちゃん、本当に優しい子だわ。泰葉ちゃんの誕生日の時も盛大にお祝いしてあげたい」

楓「……さて、何を作ろうかしら」

楓「ケーキはのあさんが買って用意してくれるみたいだし、パーティと言えば……」

楓「……そうだ、『ポテトサラダ』にしよう!」

楓「お手軽に出来て、カラフルで、慣れ親しんだ味。完璧ね」

楓「ふふふっ……、ここで私の女子力を二人に自慢してあげよう♪」

楓「お祝いもポテトでいーもん……芋だけに。ふふっ♪」






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【岡崎宅】


泰葉「うーん、お祝いの料理かぁ」

泰葉「パーティの時って、どういう品を用意したらいいんだろう? ローストチキンとか、キッシュとか?」

泰葉「二人も料理上手そうだし、あんまり粗末な物じゃあ恥掻きそうだなぁ……うぅん」

泰葉「手軽で、色鮮やかで、そんなに気取っていない物……」

泰葉「(……)」

泰葉「(こういうの、久しぶりだなぁ)」

泰葉「(なんか、楽しいな……)」


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【翌日 3月25日】
【岡崎宅】


のあ「……」

楓「……」





泰葉「ちょ、ちょっと悩んで、思い切って2品作っちゃいましたっ!」ドキドキ

泰葉「まずコチラがシェパーズパイですっ」ササッ

泰葉「イギリスの定番料理で、と、とてもお手軽に作れるんですよ! パイ生地も使いませんし! コテージパイとも言うそうです!」

泰葉「タイムとシナモンパウダーとローズマリーで香りを付けたので、ラム肉独特の風味を程良く引き立てて、それでいて豊かな味わいを楽しめると思います!」

泰葉「味付けのベースはウスターソースの代わりに赤ワインを使ったので、お二人の口にもきっと合うかとっ!」

泰葉「そ……、それでもう一つは、オードブルで定番のクラッカーのカナッペです!」

泰葉「クリームチーズとブルーベリー、ミニトマトと薄切りレモン、アボカドとスモークサーモン、ツナマヨとオリーブ、アスパラと生ハムなどなど、色々な物を取り揃えてみましたっ!」

泰葉「クラッカーが湿気ると味気ないので、急いで作ったんですが間に合ってよかった……!」

泰葉「あっ、あとウチにあったんですけど、このトリュフ塩を少しかけると風味がぐっと良くなりますよ!」

泰葉「そ、そうだ……! 今日スーパーでシャンメリーが売ってたんで、お、思い切って買っちゃいましたっ!」

泰葉「……っ!」

泰葉「あまり……その、パーティって何作ったら良いか分からなくて……」モジモジ

泰葉「ど、どうですか……、ね?」ドキドキ

楓「……」

のあ「……」














楓「ス……スミません。部屋、ま、間違えまシタ……」コソコソ

のあ「イ……一回帰るワ……。モ…、もっと女子力の高い料理を……」コソコソ

泰葉「!?」

泰葉「なな、何でですかっ!? お、お二人の料理は……???」


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────
──

今日はここまでです
今度こそ書き溜めを作ってきます


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【3月26日 事務所】


美優「のあさん、昨日お誕生日でしたよね? おめでとうございます♪」

美優「昨日までお休みでしたので、今日渡そうと思ったんですよ」

美優「これ、プレゼントです。おめでとうございますっ♪」

美優「あっ……、いえいえ! そんな大層な物では無いので……」

美優「でも、気に入って頂けると嬉しいです♪ では……」



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雪美「……のあ…………のあ?」

雪美「……これ、あげる…………遅れて、ごめんなさい」

雪美「おめでとう…………うん。誕生日……」

雪美「………………良かった」

雪美「…………早めに……食べてね??」



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未央「高峯さーんっ! お誕生日おめでとうございますっ☆」

未央「昨日とか細かい事は置いといてっ、ハイこれっ。プレゼントですっ!」

未央「えと……何渡そうか悩んでたんだけど、まー気に入って頂けたらと思いまして……」

未央「この間、ボウリング終わった後にゲームコーナーで高峯さん、それをじっと眺めてましたよね? だから、まあ…………えへへ……♪」

未央「い、いえいえっ! その代わり、また一緒に遊んでくださいっ! この間の罰ゲームドリンクの借りっ、覚えておいてくださいよ~?」



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藍子「あっ! 高峯さん、お誕生日おめでとうございます♪」

藍子「これ、プレゼントです」

藍子「……っと」

藍子「す、すごい荷物ですね……持てますか?」

藍子「あっ、良ければ少し持ちましょうか? 大丈夫ですか??」










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【女子トイレ】


のあ「(はぁっ、はぁっ………フフフフフ♪)」ドキドキ

のあ「(嬉しい……。誕生日メールは1通しか来なかったけど、でも、みんな覚えててくれたんだ)」

バリバリッ!
 ビリビリビリッ!


のあ「(美優さんがアロマギフトセット、藍子ちゃんがティーパック詰め合わせ、未央ちゃんが猫のクッション、雪美ちゃんがホールケーキ2箱……)」

のあ「(本当に嬉しい……。嬉しくて吐きそう……)」ドキドキ


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留美「おはよう、高峯のあさん」

留美「貴女……確か昨日、お誕生日じゃなかったかしら?」

留美「ああ、やっぱり……。これ、あげるわ。ボールペン」

留美「暮れて申し訳ないけど、お誕生日おめでとう。可愛らしくて素敵なデザインでしょう? たかがペンと思えるけど、これでも結構いい値段するんだから」

留美「小物と言えど、やっぱり女は華を持たなくてはね。知的な貴女にピッタリよ」



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卯月「高峯さーんっ、昨日お誕生日でしたよね??」

卯月「おめでとうございます♪ これ、私からプレゼントです♪」

卯月「詰め合わせのお花じゃないですよ? こう見えてもコレ、全部石鹸なんです」

卯月「えへへっ、おめでとうございます♪ これからもよろしくお願いしますっ!」

卯月「……銭湯ですか? うーん……どうでしょう? あまり行った事が無いので……」








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【事務所 応接室】


真奈美「お……、おぉ?」

のあ「……」ズシッ

真奈美「ははは……さながら、季節外れのサンタクロースだな。担ぐのを手伝おうかい?」

のあ「……高峯のあという一人の人間が数十年前にこの世界に生を受けた……、ただそれだけの事」

のあ「けれど……事務所の皆がこれほど祝福してくれるなんて……予想外だわ」

真奈美「昨日だったな。おめでとう、私からもささやかな贈り物だ」

真奈美「も、持てるか? 随分眉を顰めて苦しそうな表情をしているけれど……」

のあ「モ……問題ないわ。中身を聞いていいかしら」

真奈美「箱の中に3つの小瓶が入っている。野菜ディップソースとバーニャカウダソース、あとは苺ジャムだ。好みの食材に合わせて楽しんでくれ」

のあ「……ありがとう」

真奈美「……」

真奈美「…………」

真奈美「ちなみに……」

のあ「?」

真奈美「その……、異彩を放っている花の束は……誰からの贈り物かな?」

のあ「美波と奏よ」

真奈美「これは、黄色のラッパズイセンと白い薔薇、もう片方はあとは白いツバキとナズナかな……」

のあ「何か特別な意味を内包しているのかしら……?」

真奈美「さあ、私もあまり馴染みが無い。おおよそ『敬意』や『美しさ』を示す言葉だったと思ったが……詳しくは凛か夕美に聞いてみればいいさ」

のあ「(どこに飾ろう。事務所にでも置いておこうかな?)」

真奈美「(……)」


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三船美優
http://i.imgur.com/oSHjwYe.jpg
佐城雪美
http://i.imgur.com/gCmZVRW.jpg
木場真奈美
http://i.imgur.com/i6M7JHL.jpg


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【4月1日 事務所の廊下】



真奈美「おはよう、のあ」

のあ「ええ、おはよう」

真奈美「(……ん!)」

真奈美「のあ……以前も似た事があったが、今日も身嗜みを整える暇がなかったのかな?」

のあ「……?」

真奈美「口元にご飯粒と、髪に芋けんぴが付いてるぞ」

のあ「(……)」

のあ「……フッ」

真奈美「うん?」

のあ「謀ろうとしても、残念ながら無駄よ」

のあ「面白い冗談だけれども……今日ばかりは意に介する必要はないと知っているわ」

真奈美「(……???)」キョトン

───スタスタスタ…





のあ「(ふふふっ……)」スタスタ

のあ「(今日はエイプリルフールだもの。麗奈ちゃん辺りが最初に仕掛けてくると思ったけれど、まさか一番手が真奈美さんとはね)」

のあ「(その手の嘘には乗らないわ、ふふふふふ……♪)」


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【事務所 応接室】


文香「……」ペラッ

のあ「……」ペラッ

文香「(……)」

のあ「……」

文香「(…………っ)」チラッ

のあ「……」ペラッ

文香「あの……高峯さん」

のあ「(!!)」

のあ「……どうしたの?」

文香「……非常に申しあげにくいのですが……」

文香「……」チョンチョン

のあ「(……?)」

のあ「口元……?」

文香「ん……」

文香「そういった様相は、巷では母性本能をくすぐると囁かれていますが……それはあくまで男性の場合に限り……いいえ」

文香「……差し出がましい指摘、かも分かりません。ですが、その……仮に故意でないのならば……」

のあ「……」

文香「貴女の口元にご飯粒と、髪に芋けんぴが…………」

のあ「(……)」

のあ「前車の轍を踏むとは正にこの事ね。文香」

文香「……えっ?」

のあ「(ふふふっ…)」

文香「え……、えっ??」

のあ「……」ペラッ

文香「あ、あの……」オロオロ



───ガチャ



奏「おはようございます」スッ

文香「あ……おはようございます、奏さん」

のあ「……おはよう」

奏「二人とも読書?」

奏「最近よく見かけるけど、何か面白い本とか────」

奏「………………」ピタッ

のあ「……」

文香「(……)」

奏「(───ッ!?)」ビクッ!

奏「(た、高峯さんっ!)」プルプル

奏「(瑞々しい唇と視線を引く鮮やかな銀髪に、我が物顔で付着している謎の異物は何!?)」プルプル

のあ「……」

奏「(清廉で寡黙で家事能力も持ち合わせ、まさに才色兼備な大人の女性を体現した貴女が、そんなドジっ子のような失敗をするというの……!?)」

のあ「……」

奏「(庇護欲と母性本能をくすぐられるわ。高峯さんにも、こんな生活感溢れる一面が……)」ドキドキ

のあ「……」

奏「(……っ!!)」

奏「(いや、違うわ。まさか……演出?)」

のあ「……」

奏「(落ち着いて考えを巡らせれば、クールオブクールな彼女がこんなミスをする筈もない。有り得ない)」

奏「(……これは普段のイメージとは打って変わって、間の抜けた可愛らしい雰囲気を表現しようとする、彼女の策略……っ!)」

のあ「……」

奏「(あ、貴女はなんてしたたかなの……! 常人なら耐え難い羞恥にも関わらず、事務所の真ん中で悠然と構えて書を嗜んでいるなんて)」

のあ「……」

奏「(唇にご飯粒……くちびる……っ!?)」プルプル

奏「(それを堂々と見せつけて、この私にどうしろと? 誇示、はたまた……、誘惑!?)」

奏「ハーっ、ハーっ……、ぐ、くっ……!」プルプル

文香「(……)」

文香「(か、奏さん……体調が優れないのでしょうか? つっかえそうに息が荒く、髪の毛の根元まで朱をさしたように熱を持った顔色で……)」

のあ「……」ペラッ


──────
────
──


──
────
──────
【4月1日】
【事務所 応接室】


麗奈「ふーみかー??」

文香「はい、何でしょう?」

のあ「……」

麗奈「今日はエイプリルフールね」

文香「はあ……、そうでしたか」

のあ「……」

麗奈「相変わらず我関せずと言わんばかりにテンション低いわね。まあ、そんなことはどうでもいいケド………………、でも」

麗奈「文香、鼻毛出てるわよ」

文香「(!!)」

麗奈「アーッハッハッハ、おっかしいわ!」バンバン!

文香「(…………)」

麗奈「フフ……、クソ真面目な顔で堂々と鼻毛出してるんだもの。傑作、朝から笑わせて貰ったわ!」

麗奈「じゃ」

───ガチャ、バタン




文香「……っ」

のあ「(……)」ジー

文香「そ、そんなに見ないで下さい……」

のあ「出てないわよ」

文香「そ、そうですか……。顔を見られること自体、あまり慣れていないもので……」

文香「……けれど、今回は私の負けですね」

文香「……明らかに嘘だと察しても、やはり気になってしまい心が乱されてしまいました。絶妙な部分を攻めてきましたね」

文香「……今でも少し、動揺の感情が胸の中で渦巻いています」

のあ「……」

文香「……麗奈さん……、悪戯の手法を道具を使って驚かせる物から、精神的に追い込む物に変えてきました」

文香「……これは良く無い兆候です」

のあ「……そうね」


文香「……しかし、今日はエイプリルフールでしたか」

のあ「……」

のあ「嘘が赦される一日……解せないわ」

のあ「争いと猜疑心しか生まないもの、虚偽という行為は。なのに何故……」

文香「……エイプリルフールの由来、ですか」

のあ「知っているの?」

文香「……中世・近世西洋、商人や職人達の同業組合に『ギルド』という団体があった事をご存知でしょうか?」

のあ「……ええ」

文香「……彼等は仕事柄毎日帳簿を付けるのですが、そこはやはり人間ですから、時が経つうちに計算ミスや誤差が生じてしまいます」

のあ「(……)」

文香「……そこで新年度の開始日4月1日に、その誤差を誤魔化すために読んで字の如く帳消し……全てリセットしてしまおう、といった習慣が所謂エイプリルフールの由来だそうです」

のあ「(へえ、そうなんだ)」

のあ「……初めて知ったわ」

のあ「文香、貴女は博識ね」







文香「……嘘です」





のあ「…………」

のあ「……ぇっ?」

文香「……嘘です。今の由来の話、全て」

文香「……申し訳ありません」

のあ「…………」

のあ「(……文香ちゃん。物静かな子に見えたけど、ひょっとしてこの子……)」

のあ「(案外お茶目……!?)」ジー

文香「す、すみません……出来心で。そ、そんなに顔を見ないで下さい……」


──────
────
──


──
────
──────
【事務所 応接室】


のあ「……」

雪美「のあ……、お願いっ……」グイグイ

のあ「……」

雪美「のあ……、このままじゃ、死んじゃう……から……っ」グイグイ

のあ「良いのよ、雪美。貴女のその優しい気持ちですべて満たされたわ」

雪美「……お願い、だから…………これ……っ」グイグイ


───ガチャ



美波「おはようございます。………………ん?」

奏「おはよう。………………うん?」

のあ「……」

美波「(ソファに仰向けに力なく横たわっている高峯さん、と……)」

奏「(……お菓子を持った雪美ちゃん?)」

雪美「……!」クルッ

美波「どうしたの雪美ちゃん? そんなに不安そうな表情で」

雪美「お願い……、のあを助けて……っ」

美波「……え?」

雪美「のあ……このままじゃ…………死んじゃう……っ」

美波&奏「っ!?」

ダダダダダッ!!
 ガタガタッ!!


美波「た、高峯さん! 何があったんですか!?」ガバッ!

奏「き、気分が優れないんですか? それとも怪我……?」ガタガタッ!

のあ「心配には、及ばないわ……」グター

美波「(……ソファに横たわる高峯さん。まるでお伽噺に出てくる白雪姫を髣髴とさせる神々しさ……)」

奏「(静かに目を閉じた彼女の美しさはまるで、時を止め留めたような儚さと清浄を醸し出しているわ。……けれど)」

美波「(……ちょっと)」

奏「(頬が、痩せこけているような……??)」


雪美「のあ……のあは……っ」

雪美「もう……3日も……食べてないって。ご飯を……」

美波「お、お金が無いんですか?」

のあ「……いいえ」

奏「食欲不振、やはり何処か悪いのかしら……?」

のあ「頗る健康よ」

雪美「みるみる痩せて……元気も無くて………このままだと……………死んじゃう……っ」

雪美「このまま……、何も食べなかったら…………っ」

美波&奏「(………ハッ!!)」ビクッ!








美波&奏「(───断食っ……!!)」






美波「(断食とは読んで字の如く食を断つこと……。これは肉体的・精神的に自己を追い詰め……)」

奏「(解脱・極致に至ることを目的にしている宗教的行為。まさか……っ!)」

美波「(高峯さん……貴女はまさか、悟りを開こうとしているの!?)」

奏「(遥か高みへ、アイドルとしては勿論……衆生救済、普く生きる人々を歌の力で……!?)」

美波&奏「(か、敵わないッ……)」ガクッ




留美「……」ジー

留美「(応接室のソファにぐったり横たわる高峯さんと、そのほっぺたにお菓子をぎゅうぎゅう押し付けてる雪美ちゃん)」

留美「(……で、そんな二人を尊い物のように膝をついて拝んでいる美波ちゃんと奏ちゃん)」

留美「(な、なにコレ……。何かの遊びかしら??)」







━━━━━━━━━━
【夜 岡崎宅】


泰葉「……」

のあ「……我慢したわ。この日のために、全身全霊を掛けて挑んだ断食……」フラフラ

のあ「有り余っている福引で当てた食事券を、豪勢に使う時が来たわ……!!」フラフラ

楓「ふ、ふふっ……。そうですよ、この日の超豪華なディナーために私も3日間っ、何も食べずっ、口の周りを水を含んだ脱脂綿で湿らす程度だったのですからっ……!」フラフラ

泰葉「(私は特にご飯とか抜いてないけど……)」

のあ「フフフ……!」ヨロヨロ

楓「ふふっ♪ けほっ……」ヨロヨロ

泰葉「(この人達は、毎日を全力で生きてるなぁ……)」


──────
────
──


──
────
──────
【続 岡崎宅】


泰葉「御馳走して頂けるとは恐悦至極ですが……」

泰葉「それで、何処で夕食を取るんですか?」

泰葉「明日は休日ですし、そこまで豪勢と仰るなら多少なら遠出も大丈夫ですが」

楓「そこで、こんなアイテムをご用意しましたっ!」

泰葉「……6面サイコロ?」

楓「はい♪ そしてこの紙に、6つの番号を振り分けた超豪華なお店の名前が書いてありますっ!」

楓「サイコロの目に従って、そこの超豪華なディナーに決めましょう」

泰葉「あー……それ昔、ローカル番組の企画で見たことがありますよ」

泰葉「目的地や名物料理を書いて、それを全てサイコロの一投に委ねる過酷な企画ですよね」

楓「道中どんどん雰囲気が険悪になっていくんですよね、懐かしいですねぇ♪」

のあ「……勝手ながら、私と楓で食事処の検討を付けておいたわ」

のあ「……日常では出逢えない、珠玉の一皿を振る舞う店を厳選しておいたから、楽しみにしておきなさい」

泰葉「なるほど……」ジー

泰葉「(……超豪華? 珠玉??)」ジー

のあ「……そして、運命の導き手は泰葉、貴女に任せるわ」

泰葉「え、えぇ……? 私ですかぁ?」

泰葉「! た、高峯さん……そんな『えっ、何で?』みたいな悲しい顔をしないで下さいよ。だって責任重大じゃないですか」

楓「大丈夫ですよ、出た目に文句は言いませんから♪」

泰葉「何かソレ、私自体は非難されそうな振りにしか思えないんですけど……」

楓「ハズレを引き当てなければいいだけの話ですよ♪」

泰葉「屈託のない笑顔でさらっと難題を言いますね。そもそも、何でハズレの目的地があるんですか?」

のあ「えんたーていめんと性よ」

泰葉「(ただ夕食のお店を決めるだけなのに、何処にエンターテイメント性が入り込む余地があるんだろう………まあいいや)」

のあ「(……っ)」ドキドキ

楓「(……)」ドキドキ

泰葉「えいっ……!」


コロコロコロ…
───ピタッ



【⑥】



泰葉「」

楓「んー……?」

のあ「!」


━━━━━━━━━━
【吉野家】


泰葉「……」

楓「……」

のあ「二人とも……ここ吉野家は軟弱な松屋や影が薄いなか卯とは一線を画す存在……」ドキドキ

のあ「……心して掛かりなさい」ドキドキ

泰葉「……」←【松屋派】

楓「……」←【なか卯派】

のあ「……注文の際は券売機に頼らず、今まで培った己の力で、腹から声を出して相手に懇願するのよ」

泰葉「は、はぁ……」

のあ「ッ!」ビクッ!

のあ「いけないッ! 泰葉っ!」ガシッ!

泰葉「わっ!? な、何ですか、急に腕を掴んできて……」

のあ「誘惑に駆られてはいけない……それは死へと誘う甘い罠……」

のあ「かつて、今の貴女のように気を緩め同じ罠に陥り、散って逝った一人の女がいた……」

泰葉「ふ、ふぇ……?」

のあ「透明の禁忌の扉、地獄の釜……。目の前で不敵に構えているサラダは決して慈悲の心を持ち合わせてはいない」

のあ「……つまり、このサラダは有料よ、安易に手を伸ばしてはダメ」

のあ「吉野家は常に死と隣り合わせという事を胸に留めておきなさい」

泰葉「へ、へぇ……(知ってますケド……)」

楓「……」

泰葉「……」

楓「(泰葉ちゃん、見事にハズレを引き当てましたねぇ)」

泰葉「(だ、だからイヤだったんですよっ……)」

楓「(……でも)」

泰葉「(?)」

楓「(……のあさんが楽しそうだから、今日は良しとしましょう)」

泰葉「(……そうですね)」

のあ「……っ」ドキドキ

のあ「ス……すみませン……、ち、注文……っ」ドキドキ







【①】女性でもOKなハズ! 野郎ラーメンに行こう!
【②】泰葉ちゃんと一緒なら怖くない! かっぱ寿司!
【③】気分は高級イタリアン! サイゼリヤでディナー!
【④】金曜日はカレーの日! CoCo壱番屋で全部乗せ!
【⑤】ハンバーグを堪能しよう! びっくりドンキーでお肉!
【⑥】吉野家で牛丼一杯、いっぱい食べましょう♪(ハズレ)




──────
────
──

今日はここまでです。
構想としては次回で少し長めの話に入り、最後になります


──
────
──────
【事務所】


留美「P君、帰りはいつも通りで任せて頂戴」

P「あっ、はい。了解です」

茜「さあプロデューサーさん! 今日も一本、張り切って行きましょうっ!!」

P「よし、じゃあ締まって行くぞーっ」






楓「(……)」ジー

のあ「(……)」ジー

真奈美「二人とも、お茶はいるかな?」

楓「あっ、ありがとうございます」

のあ「……」ズズズ

楓「……」ズズッ

のあ「プロデューサーと留美……何か臭うわ」

真奈美「?」ズズッ

のあ「『帰りはいつも通り』……。密かに逢引でもしているのかしら」

楓「怪しいですね。スキャンダラスの臭いがしますね、コレは」

真奈美「何故そうなる…。案外君達は根も葉もないゴシップが好きなのか?」

のあ「単なる人間観察の結果生じた推測よ」

真奈美「あれは、アイドルの送迎の事だよ」

楓「送迎……?」


真奈美「仕事が終わればアイドルは直帰か事務所に戻るわけだが、それに際しての送迎を無償の奉仕で請け負っているわけだ、彼女は」

真奈美「勿論人手が足りない時と、未成年が同伴して夜が遅い場合だが」

楓「へえ……そうだったんですか」

真奈美「立場上、一つの現場に付きっきりでいられないからな。多忙なプロデューサー君は。他に事務仕事も手伝っているとか言っていたな」ズズズ

のあ「……」ズズズ

楓「という事は、車も留美さん自前ですか?」

真奈美「そうらしい。年少組からはかなり信頼を寄せられているみたいだね」

真奈美「本人は『持ちつ持たれつ。足代わりの役割を果たせれば』と控えめに言っていたよ」

真奈美「美世も真似していたな。助力には変わりないが、もっとも彼女の場合、目的は自身の車を───」




楓「年下から……」ボソッ

のあ「慕われる……姉のように……」ボソッ




真奈美「(───ん?)」

のあ「運転免許……!」ガタッ!

楓「ソレだわ……っ!」ガタッ!

真奈美「(……)」

真奈美「君達……。深くは聞かないが君達も何処か、手段と目的を逆転させようとしていないか?」

のあ「何も問題ないわ」

真奈美「そうか、それなら良いんだ」ズズー







━━━━━━━━━━
【翌日】
【事務所 応接室】


美波「うぅん……」ペラッ

奏「?」

奏「美波、さっきから何を見て首を傾げているの?」

伊吹「なになに? 机にたくさん広げちゃって……何かの資料??」

美波「あ、コレの事?」スッ

伊吹「??」

奏「……自動車教習所……申込み案内?」


伊吹「ほほーう? んー……でも、ぶっちゃけどこも変わらないと思うけど……コースの広さとか?」

美波「うん。教習所の評判も勿論だけど、一番重視してるのは、無料バス送迎の有無かな?」

美波「私の通う大学付近から送迎車が出ていれば、講義の後にすぐ行けて便利だと思うんだよね」

奏「美波、運転免許を取るの?」

美波「うーん、ちょっと考えててね……」

伊吹「へぇ! いーじゃん、みんな大学くらいで取るのが普通だよっ!」

奏「貴女は?」

伊吹「も、持ってないです……」

美波「もう少しお金を貯めてからとか、授業や部活との兼ね合いも考えて夏に短期で取っちゃおうとか……色々スケジュール調整もあるし」

伊吹「そだね、うん」

伊吹「時間とお金に余裕がある時に取るのが一番だよ。その上、アイドルのお仕事もあるんだしさ」

美波「うん。私も今は目星を付けるだけで見送って、もう少し後に入校しようと思うの。その方が時間的に効率が良いから」

奏「確か……、美波の趣味って資格取得だったかしら?」

美波「そう、色々ね」

美波「運転免許も卒業までには、って考えてるんだけど」

奏「そうね。就職には有利と聞くし、なにより……」

奏「運転出来る人って、ちょっと格好がつくものね」







楓「そうですね」スッ

のあ「わかるわ」スッ





奏&伊吹「っ!?」

美波「た、高峯さんッ!? ……と、楓さん……?」


楓「あっ、ここの教習所なんてどうでしょう? 送迎バスも出てますし」

のあ「そうね……早速ここに決めましょうか」

美波「(……ハッ!)」

美波「お……、お二人も、め、め、免許の取得をお考えなんですかっ!?」ドキドキ

のあ「……そうよ」

楓「ではのあさん、一緒に申し込みに行きましょうか♪」

美波「っ!!」

美波「みみみ美波もいきますッッ!! 寧ろいかせてくださいッ!!」ガタッ!

奏「(!?)」

奏「ちょっ……み、美波!? 今は見送るんじゃなかったの!?」バンッ!



美波「………………………………………………………」

美波「………………………………………………………エッ? ………んー……??」キョトン



奏「(……ッ!?)」

楓「美波ちゃんが一緒なら心強いですね♪」

のあ「頼りにしてるわ……美波」

美波「はいっ♪ 美波、頑張りますっ!」

キャッキャッキャッ フフフフフッ♪

───ガチャ、バタン



シーン…




奏「……」

奏「…………」

伊吹「か、奏?」

奏「……伊吹」

伊吹「は、ハイ」

奏「………………」

奏「……原付って、確か16歳から免許取れたわよね?」

伊吹「奏さん……?」


☆つづく
──────
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──


小松伊吹
http://i.imgur.com/0U7k2qc.jpg

すみません寝ます
また後で来ます

NAのGTOにのるノア…

──
────
──────
【送迎バス内】


楓「大学生ですかぁー……」

美波「? どうしたんですか、楓さん。深い溜息ついて……」

楓「いえいえ、ひとえに羨ましいなぁと思って」

のあ「(……)」

楓「遊びも勉強も、飲み会も……一番楽しい時期じゃないですか大学時代って」

のあ「……運命の分水嶺ね」

のあ「学生と社会人の狭間で、今後の人生を左右する経験や出会いが数多く待ち受けているわ」

のあ「……一期一会を大切に、自己を鑑みた者のみが……一流企業内定と言う名の栄光を勝ち取ることが出来る」

楓「将来のために色々と勉強してるなんて、偉いですね、美波ちゃんは」

のあ「(私とは大違いだわ……)」

美波「そ、そんな大層な事考えてないですよっ」

美波「ただ自分のやりたいことを見つけたり、就職に有利になれば良いなぁって軽く思ってるだけで……」

楓「十分立派ですよ」

美波「因みに、お二人は何故今免許を取ろうと考えたんですか?」

のあ「(……)」

楓「(……)」

美波「?」

楓「ジ……事務所の子達やプロデューサーの、タ、助けになれればいいと思って……」プルプル

のあ「ソ……そうね。送迎とか」プルプル

のあ「ジ……次世代の芽を豊かに実らせる。皆が十全に、ア、アイドルとしての真理を見出せることが可能な環境を整える事……力添えが出来れば、ただそれだけでいいの」

楓「モ、勿論私達もそうですが、みんなが伸び伸びと活動出来れば色々と事務所にもプラスになるでしょうし……」

美波「……」

美波「…………っ」

楓「み、美波ちゃん? どうしたの、涙なんか浮かべて……」

のあ「?」

美波「……グスッ……、い、いいえ……その、目にゴミが……っ」ゴシゴシ

美波「お二人は身を削って、そこまで事務所のみんなの事を案じているなんて……」

のあ「……」

楓「……」

美波「わ、私っ……自分の事しか考えて無くて……、お姉さんキャラとかみなみんリーダー☆とか持ち上げられて……、自分が滑稽に思えてしまって……っ」

のあ「……」

楓「……」


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【教習所】


女性の教官「はい、では始めて行きましょう。宜しくお願いします」

男性の教官「私達が運転の補助を担当します。今後ともよろしくお願いします」

美波「よろしくお願いしますっ」

楓「ヨ……よろしくおねがいします」

のあ「……」

男性の教官「まず初めの時間は、トレーチャーと呼ばれる模擬運転装置で運転の基本的な動作を体験して貰います。ゲームセンターみたいな感覚だから、緊張しないで大丈夫ですから」

のあ「(よ、良かった……。教習所の先生と言えば厳格なお爺ちゃんを想像していたから、少し気が楽になったわ)」

のあ「(二人とも案外若いなぁ。まだ30代くらいかな?)」

のあ「(……♪)」

女性の教官「じゃあ教室を移動しましょうか」

男性の教官「……あ、そうだ」

のあ「?」

男性の教官「ちなみに、私が新田さんを、隣の者は高垣さんを担当します」

女性の教官「高垣さん、宜しくお願いします」

男性の教官「新田美波さんと、高垣楓さん。確認ですが、お二人は……」

美波「はい」

楓「はい……?」

男性教官「貴女達二人は、習得技能はAT車の方でよろしかったですね?」

美波「はい!」←【AT車教習選択】

楓「あっ、はい」←【AT車教習選択】















のあ「…………えっ?」←【MT車教習選択】



女性の教官「高峯のあさん、貴女はマニュアルね?」

のあ「ぁっ…………ぁぇっ……?」

のあ「(ふ、二人はオートマなの? マニュアルは私だけ……!?)」オロオロ

のあ「(マニュアル取れば、両方運転出来るから便利だと思ったのに……っ!?)」オロオロ

楓「(今の時代はマニュアル車なんて殆ど乗る機会ないだろうし、操作が難しいから厳しいだろうから私はオートマにしたけど…………流石はのあさんだわ)」

美波「(高峯さんはマニュアルなんだ。ちょっと残念)」

のあ「…」

のあ「あ、ぁの……」オロオロ

女性の教官「はい?」

のあ「ワ……私の担当は……??」オロオロ

女性の教官「ああ、忘れていました。スミス~?」

楓&美波「?」

のあ「(す、すみす……?)」


───ガチャ!
バァン!!




スミス(米国人大柄男性)「コンニチワァー! マハロー!」




楓&美波「(!?)」ビクッ!

のあ「」

男性の教官「高峯さんの担当の、ジョン・スミスです。因みに偽名らしいから」

美波「(ぎ、偽名!?)」

外国人教官「ノアサーン、綺麗ナプラチナブロンドヘアー、素敵デスネー!」ガシッ!

外国人教官「スミスデス! コレカラ宜シク頼ミマース、オ願イシマース!」ブンブン!

のあ「ァ…………、ァゥッ………………」ブンブンブン

楓&美波「……」

美波「(す……、スキンヘッドのアメリカ人。人柄は良さそうな顔だけど、筋骨隆々でスーツが弾け飛びそう)」

楓「(す、スミス? モーフィアスの間違いじゃあ……)」プルプル

のあ「」






【楓さんと裏で必死に泣きついた結果、ローテーションで担当することになりました】


女性の教官→以下、女教官表記
男性の教官→以下、男教官表記
外国人教官→以下、スミス表記

☆つづく
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──

──
────
──────
【後日 教習所内コース】


女教官「じゃあ乗る前に、まず車体を確認して」

のあ「(車体確認……)」

のあ「(学科で習ったわ。車の下に、遊んでいる子供が潜んでいるかもしれない。気付かず発進したら大惨事になると……)」

のあ「(正直、そんな珍事態が起こる確率は天文学的数値に等しいのだけれど……まぁ仕方ないかな)」

のあ「……」チラッ

女教官「そうそう、念のため車の下もね」

のあ「……」

のあ「……異常無いわ」

女教官「下に猫ちゃんが居たら大変だものね。よし、じゃあ乗りましょう」

のあ「……」

女教官「? どうしたの?」

のあ「……私、車体確認は今後絶対に怠らないわ」

女教官「???」


━━━━━━━━━━
【車内】


のあ「(つ、遂に、この時が……っ!)」ドキドキ

女教官「じゃあ、エンジン掛けて」

のあ「……っ」ドッドッ!

のあ「(ハァー、ハァーっ!)」ドッドッドッドッ!

女教官「……」

のあ「(ぐくッ……、か、鍵を捻るっ!)」ドッドドッドッ!



ガチャ!

ドゥルドゥル、ブルンッ!



のあ「(!!!)」ビクッ!

のあ「や……、やった! か、掛かっ───」



ガクン! ブスンッ



のあ「(───!?)」ビクゥ!

のあ「ぇっ!?」クルッ!

女教官「……」

のあ「ぁ、ぁの、先生……?」オロオロ

のあ「え、エンジン……、独りでに、止まって……」オロオロ

女教官「……」

のあ「わ、私、何もしてないのに……勝手に、こ、壊れて……」オロオロ

女教官「……」

女教官「(デジタルの申し子みたいな服着てるのに、電子機器に疎い高齢者みたいな質問するわね、高峯さん……)」

女教官「はいもう一回。今度はエンジン掛けてもペダルから足を離さないでね」

のあ「は、はぃ」ガチャガチャ

のあ「……」シュン


──────
────
──

──
────
──────
【後日 教習所内コース】


───ブゥゥン…


女教官「次、左に曲がって直線ねー」

のあ「……はい」

女教官「坂での発進も無事に終わったし順調ね、高峯さん」

のあ「……そうかしら」

のあ「(嬉しい)」

女教官「じゃあ次の直線で40km/h出してみましょうか」

のあ「ッ!!」




のあ「(よ、40km/h……!?)」




のあ「(しょ…、正気の沙汰じゃないわ! 20でも充分速いのに、40km/h!?)」

のあ「(無理無理ッ! 負荷で体がバラバラになるわっ!!)」プルプル

のあ「(コースだって狭いし、事故っちゃうもん! ムリっ……!)」プルプル

女教官「ひだりよー」

のあ「!!!」

のあ「(ぐっ……、ぎ、ギアをっ!)」カチャ

ガコッ、ガコッ


のあ「(い、行くしか……ないっ!)」



【25km/h】



女教官「……」

ブゥゥン!



【38km/h】



女教官「……うん」

ブオォォォォ!!!


女教官「いいよ。スピード落として」

ブオォォォォォォォォォン!!!!



女教官「(──!?)」



【45km/h】




女教官「ブレーキ小刻みに踏み込んで。速度落とす落とす!」

ブオオォォォォォォォォォォォォン!!!!!



のあ「(うわあああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!!)」ドッドッドッドッ!!

女教官「ハンドル切って切って!! みぎみぎっ!!!」

ギュルッ!!


女教官「!?」ガクン!

ギュルルルルルルルルルルルル!!!

キキィーーーーーーッ!!



───ガクン、プスン



のあ「はーっ、はーっ、はーっ……!」ドクンドクン!

女教官「(……あの速度でほぼ半周しちゃったよ)」

女教官「な、何でアクセル離さないの。私の方で止めたから良かったけど」

女教官「あのまま突っ走ってたら何処かにぶつかるわよ」

のあ「はぁー、はぁー、はぁー……」ドクンドクン!

女教官「まあ……初めての人は萎縮しちゃって40km/hなんてそう出せないんだけど、良かった良かった。あとは焦らず操作することが課題ね」

のあ「(…………)」

のあ「…………私……っ」ドキドキ

女教官「うん?」

のあ「今なら、風とひとつになれそうな気がするっ……!」ドキドキ

女教官「無理よ。なれても災害の類だわよ」

のあ「ふ、フフフ……。ミスチルもビックリのスピード狂ね……!」ドキドキ

女教官「それ、ミスチルじゃなくてL'Arc〜en〜Cielじゃないの?」

のあ「……」

女教官「ほら早くエンジン掛けて。エンストしてるんだから」

のあ「……」カチャカチャ


☆つづく
──────
────
──

──
────
──────
【後日 教習所内コース】
【S字コース】


のあ「ふぅっ……ふぅっ。げほっ、ごほっ………!」ドキドキ

のあ「(ハー、ハー……っ!」ドキドキ

男教官「んー……」

のあ「イ……今掛けるわ、エンジン」カチャカチャ

男教官「大丈夫ですよ、落ち着いて下さい」

男教官「マニュアルの半クラッチ操作は誰もが手こずる課題ですから。ゆっくり行きましょう」

のあ「……ダメ。上手くいかないとダメなのよ……この程度でエンストなんかしていられないわ……」

男教官「?」

のあ「半クラッチ程度で躓くアイドルなんで、嘲笑の的……。不甲斐無いの一言に尽きるわ」カチャカチャ

男教官「そ、そうですか」

男教官「(知らなかった。今のアイドル界って半クラッチ必須なのか……)」

のあ「………」カチャ

男教官「……ちなみに、坂での停止と発進はどうでした? あそこもちょっとだけ半クラッチ使ったと思いますけど」

のあ「……上手くいったわ、一発で」

男教官「ま、マジすか」

男教官「(……何がいけないんだ? 初心者は複数の操作だと焦っちゃうから、そこが原因か??)」

のあ「(ハァー、ハァー……!)」ドキドキドキ

のあ「(お、男の人と……こんな狭い空間で、ふ、二人きりなんて……っ!)」ドキドキ

のあ「グっ!? げほっ! ごほっ……!」

男教官「だ、大丈夫ですか?」

のあ「モ…………問題ないわ」プルプル


━━━━━━━━━━
【送迎バス内】


のあ「……」

楓「学科講習も、流石に3時間連続だと睡魔が襲ってきますね。私もついウトウトしちゃいました」

のあ「……その点、美波は現役学生なだけあるわ。疲れた様子など片鱗すら伺わせなかったわ」

美波「い、いえいえ……」

美波「その……教室の座席でお二人に挟まれると……、その……色々……緊張しちゃって……」ドキドキ

のあ「(……?)」

楓「技能講習は皆さんどうですか?」

美波「運転の方は基本的な操作は大丈夫なんですけど、やっぱりS字コースは苦手ですね」

楓「ああ、分かります。狭いですもんね」

のあ「……そうね」

楓「私も、脱輪しちゃった時は内心驚きましたよ」

のあ「(……『脱輪』?)」

美波「あっ、私も今日なりました! 結構車体がガクンってなったから、ドキッとしちゃって……!」

のあ「……脱輪」

楓「のあさんは無いんですか? やっぱり元から運転出来そうな貫禄ありましたからね、のあさん。凄いなぁ」

美波「マニュアルなのに、この前は凄い速度でスイスイ走ってましたもんね! 流石は高峯さんですっ!」

のあ「(脱輪……。そんな恐ろしい現象があるのね……)」










━━━━━━━━━━
【後日 教習所内コース】
【S字コース】


男教官「……」

男教官「前回ダメだった半クラッチを、今日完璧に出来ている辺りは素晴らしいんですが……」

のあ「……?」

男教官「……思いっきり脱輪してるの、気付きました?」

のあ「……脱輪?」

男教官「はい。車、ガクンってなったでしょう?」

のあ「……してないわよ? 脱輪」

男教官「(!?)」

のあ「……走れているわ。今もなお、この通り問題なく、4輪で」

男教官「(!! こ、この人まさか……っ!)」プルプル

のあ「……??」キョトン


☆つづく
──────
────
──

──
────
──────
【後日】
【教習所 ロビー】


楓「はいコレどうぞ、お二人とも」スッ

美波「あっ、ありがとうございます」

のあ「(カフェオレ……)」

のあ「……ありがとう」

のあ「……」カコン

楓「学科試験も終わって、3人共無事に仮免試験合格ですねー♪」

美波「はい。私だけ落ちて恥ずかしい事にならずに済んで良かったぁ……」

のあ「……」ズズズ

楓「いえいえ、美波ちゃんは私より運転が上手でしたよ? 試験の時一緒に乗車していましたけど、本当に感心しました」

美波「そんな事ないですよ。楓さんもS字コースの走行、綺麗に曲がれていましたね」

楓「美波ちゃんこそ、クランクコースの走行がとっても上手で私、もうくらんくらんしちゃいましたよ♪」

楓「……ふふっ♪」←【AT車教習】

美波「うふふっ♪」←【AT車教習】

のあ「……………」←【MT車教習】

のあ「(いいなぁ、二人とも。オートマだから一緒にテスト受けれたんだ……)」シュン

のあ「(私もオートマにしとけば良かった)」ズズッ

のあ「ケ……けれど拍子抜けだわ。このまま本免試験も取れる心持よ」

楓「そうですねー♪ 初めは緊張しましたけど、運転って楽しいですね♪」

楓「っと……。午後からは何の説明会でしたっけ、のあさん?」

のあ「初心者の心得……事故抑止と倫理の啓発よ」

美波「それに関わるビデオを観るとか言ってましたね?」

美波「仮免取得の段階で気が緩んで、調子に乗って事故を起こしやすいと言いますから」

のあ「難儀だわ……。そろそろ時間ね、行きましょう」

美波「はいっ!」


━━━━━━━━━━
【仮免説明会 教室】


のあ「……」ジー

楓「……」ジー

美波「……」ジー




【●交通事故被害者家族の手記 『母の笑顔』──S・H──●】

 『────私の家は、世間一般で言うところの、貧しい母子家庭でした』

 『幼い時に父は蒸発し、残ったのは私と母と多額の借金だけ』

 『家庭環境もさることながら、私は不運の星の下に生まれたような体質で、とりわけ大きな吉事には恵まれませんでした』

 『しかし母は苦境を物ともせず、そんな私を、神社やスーパーのアルバイトを掛け持ちして、女手ひとつでめげずに大切に育ててくれました』

 『辛いはずなのに、苦しいはずなのに、天真爛漫を絵に描いたような母は、いつも気丈に笑っていました』

 『陰気な私にとって、母と過ごした毎日は、掛け替えのない宝物です』

 『卒業式も迫り、就職の道を選んだ私は「これからは私がお母さんに恩返しする番ですから」と言いました』

 『すると母は「じゃあ懐にも少し余裕が出来ますかねー?」「空いた時間で今度、一緒にゆっくり旅行でも行きましょうかー♪」と普段と変わらぬ笑顔で、でもどこか気恥ずかしそうに語っていました』

 『物心ついた時から片親でこれといった贅沢の経験も無く、借金まみれなのに旅行なんて以ての外でしたが、その台詞を聞いて少し心が躍ったのを覚えています』

 『年を感じさせないそのあどけない笑顔は、今でも私の心に焼き付いています』

 『────しかし、それが母の最後の笑顔でした』

 『それはその翌日の出来事でした。母の笑顔を奪ったのは、仮免許を取ったばかりの、同じ高校の同級生が起こした追突事故です』

 『その学生は推薦が決まり、浮かれていたのでしょう。酩酊状態にも関わらず運転をし、夜、パートの帰路についていた母の自転車に、ハンドル操作を誤り全速力で突っ込みました』

 『母は8メートル程自転車ごとはじき飛ばされ、全身を強く打ちました。出血性ショックの即死だったそうです』

 『加害者の同級生も、ハンドルを慌てて切ったため電柱に激突し頭を打ち、その後、帰らぬ人となりました』

 『今も無念でなりません。歯痒い気持ちでいっぱいです。怒りの矛先を向ける相手もおらず、いくら泣いても、心の拠り所の母親も帰っては来ないのです』

 『お礼の言葉もまだちゃんと言っていません。何一つ恩返しも出来なかった』

 『────長い間、苦労ばかり掛けて本当にごめんなさい。貴女の笑顔に、私は何度も何度も助けられてきました』

 『どうか安らかにお休みください。今まで本当にありがとう。ごめんなさい』






のあ「……」

楓「……」

美波「……」

のあ「…………グスッ」

楓「ウッ…………ウゥッ……」

美波「(!?)」ビクッ!

のあ「ワ……私、免許取るのやめようかしら……っ」プルプル

楓「運転……楽しくないですっ……悲しいですっ……」ポロポロ

美波「お、お二人とも!? まだ仮免ですよ!?」


【※架空の話です。登場人物も実在しません、キャラも一切関係ありません】
☆つづく
──────
────
──

──
────
──────
【後日】
【応急救護教習】


楓「(……)」

のあ「(……)」




女教官「では人工呼吸を行うので、顎を上げて傷病者の気道を確保して下さい」

美波「は、はい」スッ

マネキン(傷病者役)『…』

女教官「この時に傷病者の呼吸や胸の動きが確認できれば、回復体位を取らせ安置するのですが……」

女教官「途切れ途切れの呼吸など異常な様子が見られたり、呼吸が確認できない場合は人工呼吸に移ります」

女教官「新田さん? 本番を想定して、今回は感染症を防ぐためにフェイスシールで間接的に行います」

美波「……」ゴソゴソ

女教官「気道を確保した状態のまま、傷病者の鼻を摘んで息を吹き込みます」

女教官「この時に傷病者の胸が上がるのを確認してください。2回吹き込んでくださいね」

女教官「では、どうぞ」

美波「ハイっ」

美波「はぁぁ~っ……!」スゥー

カプッ


美波「ふぅぅーーっ…………っ」

美波「ぷはっ…………ふぅ」

女教官「では、もう1回」

楓「(……)」

のあ「(……)」

マネキン『…』


美波「ふぅ、はぁーっ……!」スゥー

カプッ


美波「ぷぅーーーっ……!」

美波「はぁーっ……、ふぅっ!」

女教官「はい、OKです」

美波「フー……」

のあ「(……)」ジー

楓「(……)」ジー

美波「ハァ、はーっ……」



のあ「(……)」ジー

のあ「(何かしら、アレ……)」

楓「(人工呼吸ですよ、ジンコウコキュー)」

のあ「(………淫魔?)」

のあ「(あれで救命処置のつもり? 逆に精気を吸い取っている構図にしか見えないのだけれど……)」

楓「(そうですね……。何故アレだけの少ない動作にもかかわらず荒い息遣いで、満足そうに頬を赤らめ上気させて官能的なオーラを放てるのでしょうか……)」

楓「(おまけに口同士を離す時に、淫靡に輝く一本の線がうっすら見えましたよ。もう完全にサキュバスですよ、サキュバス……)」

のあ「(これも彼女の才能かしら……)」ジー

楓「(ほとばしる色気……、彼女の魔性を垣間見た気がします)」

のあ「(……)」ジー

楓「(……)」ジー

美波「(……はっ!)」ドキッ!

美波「(す、すごい見られてる……。い、一体何だろう?)」ドキドキ

のあ「……」ジー

楓「……」ジー

マネキン「…」


☆つづく
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────
──

──
────
──────
【後日】
【路上 交差点】


のあ「(フッ……フゥッ、ハァー……!!)」ドクンドクン!

のあ「(ハーッ、はーっ、ぁ、アアっ、ア…………!!)」ドクンドクン!

ガチャガチャ!
カチャガチャガチャ!!




スミス「早クウゥッ!」

スミス「早クエンジン掛ケナイト、ヤバイヨォーー! ノアァーーー!!」

スミス「交差点ノド真ン中デエンストトカ、モウ正気ノ沙汰ジャナイヨォォォ!!」



のあ「ヒッ……、フ、フゥッ!」ガチャガチャ!

スミス「オ……落チ付イテ、落チ付イテ、ノアサーン!」

スミス「焦ッチャダメヨー? 素数ヲ数エテ落チ着クトイイヨー!」

のあ「(そ、素数……。フッ、フゥー……!!)」ドクンドクン!

のあ「い、1……2……3……4……5……6……」ドクンドクン!

のあ「7……8……9……10……っ」ドクンドクン!

スミス「ノアアァーーーッ!! イッツジョークダヨォォーー!!」ガタガタ!!

スミス「本気ニシタラ駄目ダヨォォ!? ヤバイヨ、信号変ワッチャウヨォォォ!!!」ガタガタガタ!!

のあ「フグッ!! ハァー、ハァー……!!」ガチャガチャガチャ!


スミス「落チ着クヨ、落チ着イテ、ノアサーン!」

スミス「ココハ日本、思イヤリの国、奇跡ノ島国」

スミス「大丈夫ダヨ、ミンナ優シイカラ待ッテクレテル。クラクションモ鳴ラサナイ」

のあ「(ひっ、ひっ、ふーーーっ、ふーーーっ……!!)」ガチャガチャ!!

スミス「ノアサーン、貴女ハ素晴ラシイ『アイドル』ダト、男教官サーンカラ聞キマシタ」

スミス「サナガラコノ交差点ハ、貴女ノ歌ヲ今カ今カト待チワビテイル、ライブハウスダヨ」

スミス「落チツイテ、呼吸ヲ整エテ。キーヲ回スダケダヨー」

のあ「(はーっ、はーっ、はーっ……!!)」ガチャガチャ!!



バキィッ!



のあ「!?」ビクッ!

スミス「……?」

のあ「ァ……、アァ……ッ!」プルプル

スミス「ノ、ノアサーン?」




のあ「…………」

のあ「………………」

のあ「………………鍵が折れたわ」フー




スミス「!? ホオォォリィシイイィッツ!?」ガタッ!

スミス「ソ、ソレハ普通ニヤバイヨ、ノアァァーーー!!」ガタンガタン!!

のあ「(う、うあああ、うあ、あああぁ……!!)」ドクンドクン!


のあ「ヒグッ……、フゥ、フゥー……!!」プルプル

のあ「(ど、どうすれば……っ!)」プルプル

ガチャ!



スミス「オールライット!」

スミス「ノアサーンハ車ノ中デ待ツヨー!!」バタン!



のあ「!?」

のあ「そ、外に出て何を……っ!?」

スミス『サイドブレーキハソノママヨーー!!』スタッ!

スミス『エンジンガ掛カラナイナラ、セルモーターモ使エナイ、カクナル上ハ……』

スミス『私ガ後ロカラ車ヲ押シテ動カシテ、路肩ニ寄セルヨオォーー!』ガシッ!

のあ「!! な、なら私も手伝うわ……ッ!」ガタガタッ! ゴンッ!

スミス『大丈夫ダヨオオォ!! 力仕事ハ私ニ任セテ、ノアサーンハ中カラ応援シテテオクレヨオオォォーーー!!』ググググッ!!

のあ「フッ……ウ、ウゥッ……!」オロオロ

のあ「も、モーフィアス……っ! が、頑張ってモーフィアスっ!」

スミス『フンヌラバアアァァァーーーーー!!』グググッ!

のあ「う、動いてるッ! そ、その調子よモーフィアス!」

スミス『ウオオオォォーーー! ハリウッドパワァァーーーーーッッ!!』グググググッ!!!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!!







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【後方】


ウオオォォォォォーーーーー!!




女教官「(……)」

楓「(……)」

女教官「何やってるのかしら、あの二人」

女教官「エンストかと思えば、一人は車押し始めるし、もう一人はドア開けて顔出して叫んでるし」

楓「さ、さぁ……?」


☆つづく
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──
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──────
【後日 事務所】



『●1.並進可』


留美「そう、免許を……」スタスタ

のあ「ええ。あれば何かと幅が利く他に……、彼の肩の荷を減らせることが出来ればと考えたのよ」スタスタ

留美「……」

留美「『彼』? 『P君』の事かしら……?」

のあ「?」



『●2.警笛区間』


のあ「そうよ……」

留美「……」ピクッ

留美「(この子……まさか……っ)」

のあ「留美と同じく、私も職種の領域を越え、色々な景色を眺めてみたいの」

留美「(……!)」

留美「あっ! ……あー……。そう、そうね。ごめんなさい、ちょっと勘違いしていたわ」

留美「そうね、良い事だと思うわ。うん。何事も挑戦よね」

留美「私も以前の仕事柄、P君や他の子達のスケジュールを把握したり送迎や事務仕事を処理したりしてるわ。真奈美さんとかも───」

のあ「(留美さん……さっき一瞬表情が固くなったわ。何故……)」スタスタ

留美「(……)」

留美「(違った……安心した。でもこの子がライバルになったら手強そうだわ)」スタスタ




『●3.サービス・エリアあり』


留美「───良ければ、ちょっと時間あるかしら? あっちのカフェでお茶しない?」

留美「折角だし奢るわ。私、以前から貴女と話をしてみたいと思っていたのよ」

のあ「……いいわ」

留美「みんな興味津々よ。けれど、貴女が纏う重い雰囲気が苦手で近寄れないって子も多いわね」

のあ「(そうなんだ……)」シュン

のあ「(笑顔、趣味、私服……今後の課題ね)」


━━━━━━━━━━
【事務所内 カフェスペース】


カランカラン♪

留美「お疲れさまです」

のあ「……」





『●4.動物が飛び出すおそれあり』


蘭子「(……ッ!?)」ビクッ!




のあ「(……!)」ドキッ

留美「お疲れさま、蘭子ちゃん」

菜々「あっ、いらっしゃいませー」



『●5.その他の危険』


蘭子「フッ……ア、ヒッ……!」プルプル

のあ「……」

菜々「蘭子ちゃん、お待たせしましたっ♪ コチラ注文のアイスココアで───」

蘭子「ッッッ!!」ガタッ!

───ダダダッ!
 カランカラン♪ ドテッ


のあ「!!」

留美「! ちょ、ちょっと蘭子ちゃん……?」

菜々「あ、ありがとうございましたー……」

のあ「(……)」

留美「ど、どうしたのかしら彼女? 私達の顔を見るな否や、生れ立ての小鹿のように痙攣して……しかも酷く顔が青ざめていたわ」

菜々「さぁ……?」

留美「菜々ちゃん、そのココア私が貰っていい? 勿論、御代も払うから」

菜々「あっ、いえいえ、構いませんよ! 特にその……っ」チラッ

のあ「(……)」

菜々「その……今日はナナの奢りでいいですから……」

留美「そういう訳にはいかないわよ。本当に蘭子ちゃん、何があったのかしら……」

のあ「(……)」

のあ「留美、私……」

留美「?」

のあ「人間関係…、特に年下との関わりについて相談があるのだけれど……いいかしら……」



『●6.一方通行』


☆つづく
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安部菜々
http://i.imgur.com/HVwOpxJ.jpg

──
────
──────
【後日】
【教習所】


女教官「えー……」

女教官「高峯のあさん、高垣楓さん、新田美波さん」

のあ「……」

楓「……」

美波「……」




女教官「卒業検定、無事3人とも合格です」




のあ「!」

楓「ほっ……」

美波「や、やりましたね楓さん、のあさんっ!」

男教官「あとは皆さん、後日に学科試験を指定のセンターで受けて規定点を越えれば、免許が交付され路上で自由に運転することが出来ます」

スミス「ヤッタネー」パチパチ

のあ「(や、やった……っ!)」ドキドキ

楓「(つ、遂に憧れの送迎が……っ!)」ドキドキ

女教官「……」


女教官「……オホン」

女教官「ですが、車の運転は一つのミスや気の緩みが、事故に繋がります」

女教官「特に免許取得から年数が短い人ほど、事故を起こす確率が高いという調査結果も出ています。何故だか分かりますね?」

のあ「……」

楓「……」

美波「……はい」

女教官「正直、肝を冷やした場面が少なくなかったです。特に誰とは言いませんが」

男教官「まあまあ……。卒業検定はぐうの音も出ないほど完璧で効果測定も満点だったので、裏で地道に頑張っていたか、本番に強いタイプなんでしょう」

女教官「……ですが常に確認を怠らず、規則を守って安全運転を心がけて下さい」

スミス「ノア、貴女トノドライブ、トッテモエキサイティングダッタヨー」

のあ「……」

スミス「運転スル時ハ心ノ余裕ガ大切ヨー。快適ナ運転、楽シンデ下サイネ。グッドラック!」ガシッ!

のあ「セ……センキュー……」ガシッ

女教官「……」

女教官「……私も、まさか本物のアイドルが運転を習いに来るとは思わなかったですよ」

楓「……?」

美波「??」

女教官「娘に自慢しました。教習所で私達が直接教えているのが、雑誌やテレビで見掛ける有名なアイドル達だと」

のあ「(……?)」

女教官「ですから、貴女達が事故を起こせば即座に多くの人に知れ渡るでしょう。勿論、私にも」

女教官「……そんな悲しいニュース、私は見たくありませんから」

楓「(!!)」

美波「(!!)」

女教官「……これからも応援しています」

女教官「頑張ってくださいね」ニコッ

男教官「よ……、良ければ後でサインください」

スミス「私、今度ライブ観ニ行クヨー!」

楓「はいっ!」

美波「お世話になりましたっ!」

のあ「……ありがとうございました」

>>269 のあ「GTOのATのNA乗ってる。先月免許取得して中古探しに行ったら見た瞬間に即決した。
カッコイイ、マジで。そして速い。アクセルを踏むと走り出す、マジで。ちょっと 感動。しかもスポーツカーなのにATだから操作も簡単で(ry」


━━━━━━━━━━
【後日 事務所】


───ガチャ

のあ「……おはよう」

留美「おはよう、のあさん」

のあ「留美。私……取ったわ」

留美「?」

のあ「免許。普通自動車第一種運転免許証を……」

留美「あら……!」

のあ「風と共に駆ける者の証……、血と汗と涙の結晶っ……!」ドキドキ

留美「ふふっ、頑張ったわね」

留美「LINEでも話題になっていたわよ、確か美波ちゃんが……」

のあ「(……?)」

留美「……まあ、それは置いておいて、じゃあ今度練習も兼ねてドライブでも行きましょうか?」

のあ「(ふ、ふふっ……♪)」ニヤニヤ





━━━━━━━━━━

P「高峯さん、お疲れ様です」

のあ「貴方。これを御覧なさい」スッ

P「……! おぉ、運転免許証ですか!」

のあ「免許。普通自動車第一種運転免許証……!」

のあ「数多の死線を越えた者にのみ携帯する事が許される、ハチロクを駆る者の証……!」

P「は、ハチロクを駆るんですか?」

P「噂には聞いていましたが、遂に取ったんですね、おめでとうございます」

のあ「(……)」ワクワク

P「……」

のあ「(……)」ソワソワ

P「……? どうしました?」

のあ「……」

のあ「……何か、言う事が無いかしら。頼むべき事が……」

P「えっ? ええ……えーっと……」

P「んーー……、ん。あ、ああ。分かりました」

のあ「!」

P「プロフィールに載っけておきますね。報告有難うございます」

のあ「……」

のあ「………」

のあ「………」プイッ

P「た、高峯さん??」

のあ「…………」


☆つづく
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────
──

──
────
──────
【岡崎宅】


のあ「……フフッ」

楓「ふふふっ……♪」

楓「ようやく取得できましたね、免許……」

のあ「……そうね」

楓「これさえあれば、私達も年下の子から羨望の眼差しを向けられますね」

楓「デキる大人、頼れるお姉さん。これで名実ともに私は……」

のあ「……いいえ、まだ早いわ」ドサッ

楓「!!」

楓「それは……車販カタログっ!」

のあ「留美のように車を用意しなければ、この免許は献血カード以下の代物よ」

楓「車さえ購入すれば、Pontaカード並みに、財布という舞台でメインを張れるんですね……!」

のあ「……ローンを組みましょう」ペラッ

楓「中古でもシラミ潰しに探せば、なかなか良いものがあるはず……」ペラッ

のあ「(FT-86……GT……ハチロク……!)」ペラッペラッ

楓「日産のマーチとかどうですか? 色も可愛らしいですし……でも軽も安いなぁ」

のあ「(……?)」

のあ「……軽とコンパクトカーって、一緒じゃないの?」

楓「……」

楓「えっ?」


───トコトコ


泰葉「ご飯出来ましたよー」

楓「あ、はーい」

のあ「(……)」ペラッペラッ

泰葉「? 車のカタログですか?」

泰葉「……ああ、確かお二人とも最近免許取ったんでしたっけ?」

楓「そうですよ、近々泰葉ちゃんも乗せてあげられますね♪」

泰葉「………………い、いや……まだ遠慮しておきます」

楓「!? な、何でそんな申し訳なさそうに引き攣った笑いを……っ!」

のあ「(……)」ペラッペラッ

泰葉「ふーん……」

泰葉「(……)」

泰葉「お二人とも、引っ越すんですか?」

のあ「えっ?」バサッ

楓「えっ?」








泰葉「だって……どこに車を駐めるんですか?」

泰葉「このアパート、駐車場無いじゃないですか。この近くに月極駐車場なんてありましたっけ……」




のあ「(……!)」バサッ!

楓「(!!)」

泰葉「月極駐車場も毎月利用してたら結構出費がかさみますし、イタズラも多いって聞きますよ」

泰葉「それなら、ちゃんとした駐車場のあるアパートに引っ越した方が比較的お得なんじゃないですかね?」

泰葉「ガソリン代や税金、保険、車検、そして駐車場費。維持費も馬鹿になりませんし、特に燃料費なんて年々増加の一途で……」

泰葉「……!?」ビクッ!

泰葉「ど、どうしたんですか? 二人とも急にテーブルに突っ伏しちゃって……お腹でも痛いんですか?」

のあ「……」

楓「……」

のあ「…………」

楓「…………」

のあ&楓「(何も考えて無かった……)」ズーン…

泰葉「ご、ご飯食べれます? 折角お二人が材料を用意して頂いて作ったすき焼きですけど……」

のあ「……食べるわ」

楓「……いただきます」




☆教習所編、終わり
──────
────
──

──
────
──────
【オマケ① (前回お蔵入りリクエスト『文香と気まずくなる話』)】
【事務所 エレベーター前】


のあ「……」

文香「……」


チーン♪




唯「それで、この後ドコに遊びに行こっか~??」

周子「そだねー……んっ」

フレデリカ「……おやっ? フミカちゃん!」

文香「……おはようございます」ペコッ

フレデリカ「おはよーっ♪ じゃあねーっ♪」

唯「文香、まったね~☆」

周子「おはよー文香ちゃん。今日も元気そうでなによりかな」

周子「……じゃ、今日これであたし達あがりなんだよね。また明日レッスンでー」ヒラヒラ

文香「……はい、お疲れ様でした」ペコッ

スタスタスタ…




のあ「……」スッ

文香「……」スッ

カチッ、カチ
ガタン

───ウィィン…



文香「……」

のあ「(……)」チラッ

のあ「(隣にいる、一緒にエレベーターに乗り込んだ女の子………たしか鷺沢文香ちゃんね)」

のあ「(それにさっきの子達は……文香ちゃんと同じプロジェクトのメンバーだったかしら)」

文香「……」

のあ「(……彼女ほど、質素と言う言葉が釣り合う子はいないわ。服は飾るというより肌を隠すためだけと言わんばかりに飾り気が無く控えめで……)」

のあ「(世界に対して自分を開かず、まるで飾るのを恥じているかのよう。性格も虫のように大人しくて、あらゆる面で都会には似つかわしくない。喧騒から取り残されたような印象だわ)」

のあ「(事務所で妖精と囁かれているのも頷ける。是非ともお友達になりたい……)」ドキドキ

文香「……」

のあ「(話題……何か、お喋りする話題は……)」ドキドキ

文香「……」


───ウィィン…

のあさんはハチロク(ZN6)が欲しいのかそれともAE86が欲しいのか



───ウィィン…

のあ「(話題……話題……っ)」

文香「……」


チーン♪




のあ「(……!)」

文香「(……!)」






早苗「……でさ。この後、みんなで行くお店なんだけど……」

瑞樹「……あっ、高峯さんじゃない?」

レナ「あら、のあちゃん。最近ご無沙汰ね」

早苗「お疲れさまっ! これから出勤かな?」

のあ「……」コクン

早苗「お姉さん達、今日は早上がりだから♪ じゃあまた明日ね?」

レナ「あ……、私達下に行くから、閉めていいわよ。ごめんなさいね、余分な時間取らせて…」

瑞樹「お疲れさま、高峯さん。それに文香ちゃんも。頑張ってね」ヒラヒラ

文香「……」ペコッ

カチッ
ガタン

───ウィィン…



のあ「……」

文香「(……)」チラッ

文香「(私の隣にいらっしゃるのは………、最近新しく事務所に所属した高峯さんですね)」

文香「(絢爛の輝きを放ち、それでいて澄明と冷たく刺すような雰囲気を纏った女性)」

のあ「……」

文香「(……偶像崇拝。日常性を越えた美しさを体現した彼女のような人物こそ、まさしくアイドルと称されるに相応しいのでしょう)」

文香「(音楽のように、相手が最も具体的であると同時に、この上なく抽象的な存在であるせいでしょうか……)」

文香「(美女というものは何事を持ってきても似合うと言いますし……。……何も取り柄も無い貧相な私に比べて…………本当に、羨ましい限りです)」

文香「……」

のあ「(話題……話題……っ)」ドキドキ

文香「…………」

のあ「…………」


───ウィィン…


のあ「……」

文香「……」

のあ「…………」

文香「…………」



のあ「フ……文香は……」

文香「!」

のあ「1階で出会った子達と同一の方向性で旗を揚げ……、研鑚し、舞台を彩っていたわね」

文香「……はい。同じプロジェクトの仲間ですが……?」

のあ「(私は……ユニットとか組んでないから、羨ましいなぁ。みんな可愛いし、一緒にワイワイ遊んだりしているんだろうなぁ)」

のあ「……私にとっては、遠い星を掴もうと手を伸ばすような、哀れで儚い一縷の望み……」

のあ「……仲睦まじいのね、貴女達は。文香も、よく遊びに行ったりしているのかしら、他の子達と……?」





















文香「……いいえ」













のあ「……」

文香「……」


───ウィィン…

のあ「…………」

文香「…………」


───ウィィン…


のあ「……」

文香「……」

のあ「…………」

文香「…………」



文香「タ……高峯さんは……」

のあ「!!!」

文香「以前に他の方から、木場さんと三船さんと食事をしたと伺いました」

のあ「……ええ」

文香「(私も……遊戯施設で遊んだり恋愛話に花を咲かせるのではなく、落ち着いた方々と適度な距離を保ったまま、趣深い語りに耳を傾けたりしてみたいものです)」

文香「……先程の片桐さん達の会話と以前までの行動から察するに、あの後、馴染みの居酒屋に向かうものかと思います」

文香「……高峯さんも他の大人の方々と頻繁に、お酒を嗜み語い合って親睦を深めていらっしゃるんですか?」




















のあ「……いいえ」














のあ「……」

文香「……」


───ウィィン…

のあ「…………」

文香「…………」


───ウィィン…



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────
──


──
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──────
【オマケ②】


【お姉さんにしたい人ランキング】

☆1位:高垣楓さん
 ・気品があってユーモアもあって優しいし、絶対に自慢したい!
 ・困ったときはそっと優しく背中を押してくれそう
 ・かえ姉さまって呼びたい

☆〇〇位:高峯のあさん
 ・今度一緒に映画を観ましょう
 ・また高峯さんの作ったご飯が食べたいです


──────
────
──

>>321
藍子の喫茶店の話も含めて、最後に少し説明します
申し訳ありません

──
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【オマケ③】
【某日 とあるLINE】


新田美波【お疲れさまー】20:19

未央☆【お疲れー】20:23
未央☆【( ̄▽ ̄)ノ オツカレー】20:24

うづき【お疲れ様です♪】20:24

かれん【自動車学校は順調?】20:25

神谷奈緒Mk-2【お疲れ様】20:25

新田美波【うん。今日は帰りに3人でご飯食べてきちゃった】20:28

かれん【うわー! 羨ましい!!】20:28

神谷奈緒Mk-2【高峯さんと楓さんと? いいなぁ】20:30

うづき【羨ましいです! 何処に行ったんですか?】20:33

新田美波【なんか最近すごい幸せ。人生のピークなんじゃないかってくらい多幸感が血流のように体を駆け巡ってる】20:33
新田美波【何もかもが順調。まるで曇った視界が澄み渡っていくみたいに、心もしっとりと潤っていく。今までの私と別人のよう、体が軽い】20:34
新田美波【あの人について行って良かった】20:35
新田美波【ガストだよー♪】20:36

未央☆【ガストかぁ、しばらく行ってないなぁ】20:47
未央☆【ハンバーグ食べたい、あのチーズが中に入ってるやつ】20:48

かれん【ポテトフライで10時間粘った懐かしい思い出】20:50

神谷奈緒Mk-2【あれは地獄だったなー】20:53
神谷奈緒Mk-2【途中から無言になった凛が怖かった】20:54

うづき【パフェ食べたいです><】20:55

新田美波【じゃあ今度みんなで行こうよ、御馳走するから♪】20:57

未央【お、気前良い! 流石はみなみん☆】20:58

かれん【よっしゃーパパどんどんポテト食べちゃうぞー】20:59

神谷奈緒Mk-2【おかわりもいいぞ!】21:00

かれん【(^q^)/ ワーイ】21:01

うづき【教習はどんな様子ですか?】21:05

新田美波【楓さんも高峯さんもすごい上手だよ、本当に!】21:07

うづき【高峯さん、車が似合いますもんね♪】21:10

未央☆【あー、ソレ分かる! なんか絵画的にね!】21:12

かれん【確かに。都内でスポーツカーとか乗り回してそう】21:14

神谷奈緒Mk-2【高峯さん、スタイリッシュってカンジだしなー】21:17

新田美波【そうそう、教習所の時の写真あるよ!】21:25
新田美波【教官にお願いして、写真撮って貰ったの】21:27

未央☆【おぉ、みせてみせてー♪】21:27


新田美波【最近撮ったのはコレかな?】21:34
新田美波【画像】21:34



http://i.imgur.com/PFd97aR.jpg



神谷奈緒Mk-2【待って待って。オカシイ。既に5、6個オカシイ】21:44

うづき【間違い探し……?】21:44


新田美波【えっ?】21:45

かれん【まず、何で高峯さんサングラス掛けてるの?】21:47

新田美波【似合うと思うけど……】21:47

かれん【似合う、似合うけどアイドルじゃなくなってる! 完全に殺し屋かSPの風貌になってる】21:50

神谷奈緒Mk-2【なんかマトリックスとかのSF映画に出てきそうw】21:50

新田美波【楓さんが教習所の男の教官から借りてきて、高峯さんに頼み込んでたよ♪ 高峯さんも即座にOKしてた】21:52

うづき【なんでその教官、サングラスなんて持っているんですか!?】21:54

未央☆【ノリ良いな高峯さん!】21:55
未央☆【そうそうSPみたい! 完全にみなみんが外敵から守護(まも)られてるよこの構図、ボディガードされてるよ!!】21:56

新田美波【守護られる……それもいいかも】21:57

未央☆【何が!?】21:57
未央☆【何で普通に3人並んで撮らないのww】21:59

かれん【楓さんも、主張しすぎない奥ゆかしさがいじらしくて可愛らしいww】22:00

神谷奈緒ver.2【つーか何で美波ちゃん制服?】22:03

新田美波【自動車学校だもの】22:05

神谷奈緒Mk-2【ん……うん…………。うん?】22:10

うづき【もう美波さんが何処かの御令嬢で、それをボディガードしてる高峯さんって絵が浮かびます……】22:12

新田美波【高峯さんを雇うなんて、そんな畏れ多い……】22:12

神谷奈緒Mk-2【何がだよ!?】22:12
神谷奈緒Mk-2【高峯さん、サングラスが凄いキマってるし車というアイテム自体は似合うんだけど、何だろうこの違和感】22:13

かれん【手前の車じゃなくて、奥の赤い車だったら普通にサマになったのにww】22:14

未央☆【ギャップなんてレベルじゃないw もう違和感しかないww】22:15

うづき【なんですかこの愛くるしいキャラクターの車!】22:18

かれん【これ教習車なの??】22:18

新田美波【可愛いらしいでしょう? そのキャラクターも、それをチョイスした高峯さんも♪】22:20

かれん【高峯さんチョイスだったのコレw センス無っww】22:23

新田美波【えっ】22:24

かれん【へっ?w】22:24




かれん【え?】22:46


──────
────
──

──
────
──────
【オマケ④】
【3月24日 高峯宅】


のあ「……楓さん、私の誕生日にパーティを開いてくれるなんて……」

のあ「……」

のあ「嬉しい……。お祝い事とか、あんまり縁がなかったから……」

のあ「……何だろう、この不思議な気持ちは……」

のあ「胸の辺りが、心なしかあたたかい……」

のあ「……」

のあ「……」

のあ「……」チラッ



【23:58】



のあ「ふふっ、あと2分で誕生日……♪」

のあ「……!」

のあ「そういえば、何人かとはアドレスを交換したから、ひょっとして……!」

のあ「……っ!」



【0:00】



のあ「……」

のあ「……っ」ドキドキ

のあ「(……)」



【0:15】



のあ「……」

のあ「いや……まだ希望はあるかな」

のあ「……」ソワソワ



【0:45】


のあ「……」

のあ「…………」




【1:15】



のあ「く、ククッ……」

のあ「はー……自嘲の一つもするわ。淡い期待を抱いて、馬鹿みたい……」

のあ「……寝よ」




───ピロン♪




のあ「!!!!」ビクッ!

のあ「っ!!」

ガタガタッ!
バキッ! パリン!


のあ「……ッ!!」ピッ!


















【★from佐城雪美】

『おたんじょうびおめでとう』
『おなかすいたら、いつでも言ってね?』












のあ「ウッ……フゥッ……!」

のあ「グスッ……、ゆ、雪美、ちゃ……っ」ポロポロ

のあ「うああ…っ、あ゛あ゛ぁ゛~~~~ぅっ……!!」ポロポロ

のあ「フー、フー……、ふぅっ、っぁー……」ゴシゴシ


──────
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【オマケ⑥】
【高峯宅】


のあ「……」モゾモゾ

のあ「……」


~~~~~~~
アーニャ『私、ここの「隣」なので。いつでも、駆けつけますから、遠慮なさらず。ジェラーユ ヴァム パプラーヴィッツア、お大事に……』
~~~~~~~


のあ「……彼女の中の『隣』の定義とは、一体……」

のあ「左隣は泰葉ちゃん、右隣は楓さん……。隣……」

のあ「……ひょっとして」

のあ「……隣の隣? いや、まさかそんな馬鹿な。でも隣の隣も『隣』よね……」

のあ「……」モゾモゾ

のあ「純真な彼女が冗談や嘘をつくとは思えない。アーニャちゃんがああ言った以上、近くに存在する事は間違いないの」

のあ「僅かでも可能性があるならば、私は屈しない。彼女とお近づきになるまでは……!」スタッ






━━━━━━━━━━
【翌日 夜】
【隣の部屋の前】


のあ「……」ドキドキ

のあ「(これで3回目のお裾分け……。おでんの調理がどんどん洗練されていく)」ドキドキ

ピンポーン♪


のあ「(良く考えてみれば、アーニャちゃんと仲良くなりたい一心で無我夢中だったけど、コレってかなり大胆な行動かなぁ)」

のあ「(……訪ねた先の部屋が怖い人とかだったら、もう命取りよ。仮にも私、アイドルなんだし……)」

───ガチャ


のあ「……っ!」ビクッ!

>>333
訂正

×オマケ⑥

○オマケ⑤

察してください


───ジャリッ!







時子「アー……?」





のあ「ぁっ……」

時子「……」カチャカチャ

のあ「(ち、チェーン、…外して……っ)」

時子「…………」ボリボリ

時子「……何」

のあ「」

のあ「ぁっ…………ト……ときこッ…………」

時子「……何かしら、のあ」ボリボリ

のあ「わ、わた、シ………実ハ……」

のあ「と、隣の、隣に……ス、住んデテ……。コレ、お裾分、ケ…………」スッ

時子「……隣の隣ィ?」

のあ「ヒッ!」ビクゥ!

時子「…………」クンクン

時子「…………………………ちッ」

のあ「フグゥッ!!」ドキッ!!

のあ「ジ……じゃあっ……!!」プルプル

ダダダダッ!!
───ガチャ、バタン!!


時子「……」

時子「(…………)」






━━━━━━━━━━
【翌々日】
【高峯宅の前】


のあ「(ハァ……今日も疲れた。早速お風呂沸かそ)」

のあ「……!」ピタッ

のあ「(……何コレ? 私の部屋のドアノブに、布バッグが引っ掛かってる。い、悪戯??)」カサカサ

のあ「(?? 中に、メモ用紙と………肉? チャーシュー??)」ピラッ


 【203号室へ。205号室より】


のあ「……」

──────
────
──



☆終わり


財前時子
http://i.imgur.com/2eXNS2m.jpg

以上です
お付き合い頂きありがとうございました
HTML化依頼出してきます


以下、蛇足になります

何人かが仰っていましたが、少し説明を。

藍子と喫茶店の話は「藍子が頼んだように、長いメニュー名を全て言わずとも店員に伝わるのに、のあさんはわざわざ全て読み上げて恥ずかしくなってしまった」
という内容です。
「ミレリーゲ・アラ・パンナ・コン・イ・ブロッコリ」は
「ミレリーゲとブロッコリーのクリームソース」または「ブロッコリーのクリームパスタ」
という意味合いになります。復唱では正しかったですが、その後はどうかは御想像にお任せします



のあさんが泰葉の家で探していた車の件ですが、FT86とはコンセプトモデルの事で、実際に使う場面は滅多にありません。
お店で「FT86が欲しい」と言ったら店員は渋い顔をするので、気を付けましょう。



どちらとも、描写説明不足で申し訳ありません


 以下、お蔵入り

李衣菜にロックで憧れられる話
夏樹を唖然とさせる話
給料日に遂にやらかす話
ある人にストーカーされる話
アナスタシアの住居(解決編)
蘭子と仲良くなる話
楓さんと共にリア充を目指す話外食編・娯楽編
楓さんと大学に訪れる話(文香、愛梨、美波いずれかの構想)
バイトを始めるも現実の非情さに打ちのめされる話
あいさんを普通に誤解する話
文香vs麗奈(温泉編)
麗奈に騙されてあげるも割と痛い目に遭う話
頼子から容姿に関して言及される話
乃々を物理的に追い詰める話
色々なユニットを羨み比較する話
Pを車内で誘惑する話2
子供組とある遊びをする話
飲み会で酔っぱらうある女性とゲームをする話
居酒屋で得意げに女子力をアピる話
長編、NG&TP&高垣楓とのボウリング
長編、ご近所付き合い編


内容は御想像にお任せいたします
また、前回頂いたレスの中で、前回お蔵入りの中の文香の話が見たいとの声があったので、オマケで書かせていただきました。如何でしたでしょうか(震え声)
時子の話のリクエストもあったのですが、体力が切れました書いてません許して下さい

では、長々と失礼いたしました
お付き合い頂き、本当にありがとうございました

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