女「あぁ、ちょっとね。男に用事が有って。」
男「? そうかそうか。まぁ、上がって。麦茶で良いか?」
女「あっ、いや、気を遣わなくても良いよ。お茶は要らない。」
男「そう? それにしても久しぶりだな。こうやって、女と話すの。」
女「そうだね。学校では教室も違うし、あんまり話す機会、無かったからね。」
男「そうそう。よいしょ、っと。お菓子とかも要らない?」
女「うん、要らない。よいしょ。おぉ、ソファふかふか。」
男「女と初めて会ったのは、小学四年生の時……だったか?」
女「うん。男、私と同じ班になって、凄い仲良くしてくれた。」
男「ははっ。……昔の話って何か恥ずかしいな。違う話にしないか?」
女「男が小学生の時、とか言うから話してあげたのに。でも、男も男らしくなったよね。」
男「そうか? 俺は全然、変わってないと思うけど。」
女「だっていつも私と遊んでて怪我すると、大泣きしてたよ? ……変わったよ。」
男「や、やめてくれ。本当に恥ずかしくなってきた。」
女「ふふっ、男、顔真っ赤。」
男「あー。あー。何も聞こえない。」
母「ちょっと、男。うるさいわね。何時だと思ってるの?」
男「あっ、ごめん母さん。あの、女が俺に何か用事があるらしくてさ。な?」
女「……つーん。」
男「お、おい。女?」
母「……何、漫才やってるの? 私はもう寝るから、あんまり煩くしないでよ? じゃ。」
女「お母さん、ね。男のお母さんって若いよね。」
男「そうか? 俺は全然分からないけど。……って言うか、何で何も言わなかったんだよ。」
女「何か。気分。」
男「……まぁ、良いけどな。それで? 用事って?」
女「……あのさ、男。」
男「おう。」
女「これからさ、二人でどこかに遊びに行かない?」
男「え? これからか? ……もう結構遅いし、親は心配してないのか?」
女「いやぁ、きっと心配してると思うよ。」
男「だったら。」
女「でも、男と一緒に遊びたい気分なの。……駄目かな?」
男「ぅ……でももう夜も遅いし、遊べる所、少ないと思うぞ。」
女「良いよ。男と一緒に散歩できるだけでも。あっ、自転車持ってたよね? 遠くまで行こうよ。」
男「えっ、えーっ。俺は良いけど、本当に親は大丈夫なのか? 連絡だけでもする?」
女「それは駄目っ!」
男「うぉっ! ……びっくりした。……何か悩み事とか?」
女「……まぁ、うん。そんな所だよ。だからさ、お願い。わがままだと思って。」
男「でもなぁ……夜だし、危ないぞ? 家じゃあ駄目なのか?」
女「男が必ず守ってくれるでしょ? だったら心配なんて無いよ。」
男「……ふぅ、わかったよ。着いてってやるよ。」
女「へへっ、ありがと。」
男「じゃあ、自転車の鍵と家の鍵持ってくるから、ちょっと待っててくれ。」
女「はーい。」
女「お帰り。ちょっと遅いよ。」
男「ごめんごめん。待たせた。持ってきたよ。」
女「よし、行こう行こう。」
男「ちょ、ちょっと。そんなに慌てなくても俺は逃げないよ。」
女「私が待てないからね。時は金なりって言うでしょ?」
男「まぁ、言うけど。うぅ、やっぱり外は寒い……女は寒くない……?」
女「全然、普通。」
男「そ、そうか。凄いな。よいしょっと。登校以外に自転車に乗るの、久しぶりだな。」
女「そうなんだ。男っていつも自転車に乗ってるイメージがあるなぁ。」
男「そう? そこまで自転車好きじゃないけど……」
女「うん。いつも学校の前の坂、手で押して登校してたよね。最近は自転車押してないけど……」
男「友が家に停めて良いって言ってくれたからさ。甘えさせてもらってる。」
女「あぁ、友君の家は坂の下で学校にも近いもんね。」
男「そうそう、助かってる。あの坂、行きは自転車だと辛いし、帰りは急だから危ないし。よし、女。乗って。」
女「……二人乗りって怖い。何より初めてだし。」
男「ははっ。二人乗り、初めてなのか。まぁ、一応違反だしね。しっかりつかまってて。」
女「ん。」
男「え、ぁ、いや、抱き着かなくてもいいからな? そんな速度出さないし、服とか握ってれば。」
女「やだ。怖い。」
男「……まぁ、良いけど。……俺はたまに女が怖いよ。」
女「そう? 私は優しいから怖いなんて要素無いと思うけど?」
男「痛い! 痛いっ! そんなに強く抱きしめないで!」
女「ふん。」
男「まったく……よし。じゃあ、まぁ、行くか。」
女「おー!」
男「……夜風が気持ち良い。寒いけど。」
女「そう? 私は男にくっついてるから暖かいけど?」
男「は、恥ずかしい事言わないでくれ。運転に支障が出る。」
女「えへへっ。男、顔が真っ赤で可愛い。」
男「み、見えないだろ? その位置からじゃあ。しかも暗いし。」
女「見えなくても男の事なら全部分かる。」
男「……また恥ずかしい事を。」
女「それで? どこに向かってるの?」
男「いや、この時間だとこの辺りはどこも開いてないし、適当に進んでるけど。」
女「迷子にならない?」
男「うーん、大丈夫だと思う。ちょっと心配だけど。どっか行きたい所でもある?」
女「公園でブランコに乗りたかったりするかも。」
男「ベタだね。」
女「ベタだね。」
男「じゃあ、公園に向かおう。学校の近くに在ったはず。」
女「ん。そうだね。」
男「……ふぁっ。」
女「……ごめんね。こんな夜中に眠いよね。」
男「いや、良いよ。久しぶりにこうやって女と話もできたし。」
女「そう。私も男と久しぶりに話せて……嬉しいよ。」
男「……そうか。」
女「公園、前から思ってたけど、この公園広いよね。」
男「言われてみれば確かにそうだな。最近の公園はベンチしか無いって言うし、それに比べると結構整ってる。」
女「うん、そうだよ。……よし、男。ブランコに乗ろう!」
男「はいはい。よ、っと。……おぉ、やっぱり懐かしいなぁ。ここでよく遊んだなぁ。」
女「あれ? そうなの?」
男「うん、そうそう。女と出会う前になるけど、友とか、幼馴染とか、他にも小学校の奴らとさ。」
女「へぇ、そうなんだ。知らなかった。私もここで遊んだ事あるけど、男と一緒に遊びたかったな。」
男「ははっ。まぁ、女とは四年の時まで本当に面識なかったからなぁ。」
女「だね。……でも、今日はいっぱい遊んでね?」
男「……おう。よし、まずブランコだったよな。押してやるよ。」
女「やった。よいしょっと。ふふっ、子供の頃に戻ったみたい。」
男「だなぁ。まぁ、今でも子供なんだろうけど。」
女「そうだね。よし男、押して。」
男「おう。行くぞっ。」
女「♪」
男「ぜぇー……ぜぇー……」
女「ふふっ、楽しかった。……男、どうしたの? そんなに息切らして。」
男「はぁ、はぁ、いや、なかなか押すのは大変だったんだなって……」
女「子供の頃みたいに軽くないからね。い、いや、私は重くないよ?」
男「いや、結構重、痛い! 痛いっ!!」
女「ふん。よし、次はシーソーでもやろうか。」
男「シーソーって、痛っ! 尻が痛いだけじゃないか?」
女「そう? 全然、痛くないけど?」
男「女って何気にしたた、痛っ、かだよな。」
女「女の子に強かとか失礼だよ? えいっ。」
男「痛いっ!」
女「ふふっ、男、可愛い。」
男「シーソー、やめっ! 痛いからっ!!」
女「じゃあ、次は滑り台。」
男「ん。わかった。」
女「よいしょ、よいしょ。うーん。滑り台って結構小さい。」
男「まぁ、俺達が大きくなってるからな。」
女「そうだよね。……ね、ねぇ、男。」
男「ん?」
女「あ、あのさ……」
女「私、男の事、好きなんだ……」
男「……え?」
男「! おい、女? どこに行ったんだよ?」
男「おいおい……恥ずかしかったからって隠れるなよ……」
男「……」
男「女……?」
男「……」
男「くそっ! 取り敢えず、探さないと!」
男「どこに行ったんだよ……! 女!」
男「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
男「はぁ……女……どこに……」
男「! こんな時間に、電話……? 非通知……?」
男「……ごくっ。……はい、もしも。」
?『ぎゃああああああああああああああああああああ!』
男「うわぁぁぁ! はぁ、はぁ、はぁ……なん、なんなんだ!?」
男「はぁ、はぁ、体が震えて……! くそっ……! はぁ、はぁ。」
男「気持ち悪い……はぁ……はぁ……おえっ……」
男「! ぅ……また、非通知?」
男「……は、はい。」
?『もしもし。君が、男君?』
男「あ、え、はい。そ、そうですけど、あなたは?」
?『僕の事はどうでも良い。それよりも、男君。取り敢えず、その場から離れると良い。急いで家に向かうんだ。』
男「えっ?」
「ぁ。」
男「!? だ、誰だ……!?」
?『君が、今、目にしてるのは……悪魔だよ。まぁ、悪魔はちょっと優しい言い方かな。あー、詳しくは後で話すから取り敢えず、逃げて?』
男「意味がわから。っ! あああああああああああああああああああ!?」
「ぁぁ。」
男「はっ、はっ、腕が……! 腕が……っ! おえっ……!」
?『……困ったな。助けに行くから待ってて。じゃね。』
「ぁ。」
男「はぁ、はぁ、やめろ……! お前、何なんだ……! 近寄るな……!」
「ぁ。」
男「来るな……!」
「ぁ。」
男「くるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなっ!」
「ぁ。」
俺「く、くるな……ぁ……ぅぁ……やめろ……やめてくれ……」
?「いや。それに涙とか通用しないからね? 寧ろ喜び勇んで嬲るから。」
「ぁぁぁ。」
?「おっと、怖い怖い。さて、男君。勝ち目は無いし、取り敢えず逃げよう。」
男「……はぁ……はぁ、う、腕が……裂けて……」
?「後でくっつけてあげるから。さて、腰も抜けてるし、担ぐよ?」
男「……あ、あれは一体? って言うか、あ、あなたは……?」
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