魔王「我は退屈なのだ」
側近「ま、魔王様、何を御冗談を。魔王たる貴方様が誰に仕えると言うのです」
魔王「その魔王が嫌なのじゃ。我はもう我の事さえ我で決めたくないのだ」
魔王「だというのに、なぜ魔物達の運命を決める王などやらねばならぬのだ」
側近「そ、それは力有るものの義務ではございませんか!」
魔王「そのような事は知らぬ。我は決めた、我は>>3に仕えるぞ」
お嬢様
ー
魔王「………」
して、主を探すべく我は旅立ったのたが……。
道中、運が良かったのか……我の前に程よい主候補が見付かったのだが!
お嬢「」
魔王「困ったものよの……我の顔を見るなり色々とイケナイ物を垂れ流して気を失うとは」
側近「魔王様?それは仕方無い事なのでは……」
魔王「仕方無い?どう言う事か?」
側近「その……アホほど垂れ流してる魔力とか……バカじゃねえの?ってくらい放出してる魔族の覇気みたいな物とか……」
魔王「フム……?」
側近「その様な物を人間が直に受ければこうなるのは必然かと……」
魔王「なるほど」
側近「………」
魔王「あいわかった!その様な物を出していては下僕の分際にもなれぬと言うわけだな?」
側近「それはそうなんですけど……」
魔王「ふふ……ならば確りと見ておけッ!我は見事……御見事にこの小娘の下僕に成り下がってみせようぞッ!」
側近「………」
魔王「クハハハハハッ!」
側近 (こいつマジどうしよう……)
魔王「先ずは我の魔力!ぬん!更に魔気!ふぬん!」
側近「………」
魔王「どうじゃッ!?」
側近「あ……うん、いいんじゃないんですか……」
魔王「そうかッ!ふふ……流石は我……この様な事些細なものだ」
側近「左様で……」
魔王「ならば……ここから我が下僕大道が始まるのだ!」
ー
お嬢「……ひぁぃ……」ガタガタガタガタ
ふぅむ……困ったものよの。
先程から我が直々に下僕なろうと交渉を持ち掛けているのだが、この人間の小娘は震え同じ言葉しか発せぬ。
もしや魯鈍の小娘だったか?
さすれば誠に困ったものよ……はやまったかもしれん。
側近「これだけは言わせて頂きますね」
魔王「ぬ?なんぞや?」
側近「魔王様はアホの上にバカですか?」
魔王「なにをぅ!」
側近「先程言いましたよね?魔力出すなよって!」
魔王「………」
側近「それを……発している言葉一つづつに大量の魔力を込めて……このアホは」
魔王「……それほど出ておった?」
側近「出ておりました」
魔王「なんと……」
側近「………」
魔王「……魔力を出さぬと言うのも意外と難しいものよの」
側近「で?どうするんです?諦めて魔王に戻りますか?」
魔王「阿呆がッ!まだ下僕の下も成していないだろうがッ!」
側近「きっと魔王様には無理なんですよ……」
魔王「なっ!その様な事は無いッ!決してだッ!」
側近「………」
魔王「ぐぬぬ……小娘ぇッ!」
お嬢「ひゃわゎゎゎ……」ガタガタ
魔王「ええい!我主になろう者がその様ではどうするかッ!」
お嬢「………」ガタガタ
魔王「立てぃ!主根性をだな!」
側近「魔王様?」
魔王「そして主閃きに主熱血に主魂をだな!」
側近「魔王様!」
魔王「この星の明日のためのスクランブルでだな!」
側近 (このボケ……我を失ってからに……)
魔王「があああ!究極の!」
側近「……御無礼」スゥゥ……
ズダァーンッ!
魔王「ごあぶッ!?」
側近「………」
魔王「き、貴様……膝の裏にその角度で蹴り下ろすと
側近「……落ち着かれますように」
魔王「………」
側近「もう一撃いきますか?」
魔王「ややややめとうくれ……」
ー
魔王「すまぬ……」
側近「………」
何故、我が謝らなければならぬのか?
人間の小娘が我を下僕と扱えばそれで済む話だったのだが……。
しかしあれよの……幾千もの闘いの中で攻撃を受けた我でも、ローキックなるものは聞きしに勝る激痛を与えたるものなのだな……。
もう受けたくはないものよ。
側近「……ふぅ、魔王様」
魔王「なんぞや……?」
側近「いきなり下僕になると言うのも中々に難しゅう御座います」
魔王「うむ……」
側近「ですから、下僕の下に付き少々学ばれたら如何かと」
魔王「なるほどの……一理あるの」
側近「私め、下僕に関しては些か自信がありますゆえ……」
魔王「………」
側近「先ずは私めから下僕のイロハを学ばれる事が宜しいかと」
魔王「なるほど……良かろう」
側近「ならば魔王様はこれから見習い下僕として私めの下に付く……これで宜しいでしょうか?」
魔王「うむ」
側近「……では、最初に下僕の心得の取得からまいりましょう」
魔王「頼むぞ!」
側近「始めに……主に対しての言葉使いから。出来るだけ敬う言葉を使いましょう」
魔王「………」
側近「私めの発した言葉の後に続けて復唱してくださいね」
魔王「あいわかった!」
ー
お嬢「………」
何なのでしょう……。
先程から私に殺意を向けていた方々が大声を挙げ何やら叫んでいます。
方や、大きな板の前に細い棒を持ち……まるで教師の様な振る舞いでいる変わった侍女みたいな方と、体育座りをし侍女みたいな方の言葉を復唱している……この世の悪を表した様な衣装を纏っている殿方。
この状況を把握しきれずに私は呆然としています。
申し遅れました。
私、さる辺境伯家の娘で御座います。
ここ、遠きし至近の魔の森へと護衛を振り切り……ある事情の為にやって参りました。
この森に住まうと言われている魔女に会う為にで御座います。
森に入り早々……やはり女子一人では無謀だったと悟り、出直す為に足を返したので御座いまが……。
それが、この方々と出会ってしまい今の状況になっているので御座います……。
お嬢「………」
側近「いらっしゃいませこんちには!」
魔王「いらっしゃいませこんちには!」
側近「ご一緒にドラゴンの目玉の茹でた物、略してゴンタマは如何でしょうか!ご注文を承ります!」
魔王「ご一緒にドラゴンの目玉の茹でた物、略してドラマタは如何でしょうか!ご注文をた、たわまります!」
側近「魔王様……」
魔王「仕方無かろう!長いのだ!」
側近「………」
魔王「………」
側近「……本気でやる気あるんですか?」
魔王「ある……」
側近「本当に?」
魔王「本当にだ……」
側近「では、お辞儀の角度は?」
魔王「……このくらい?」
側近「部屋から退室する際、左手はどの位地に置くのが正しいですか?」
魔王「……この辺?」
側近「主が歩く時、下僕はどの位地にいるのが正しいですか?」
魔王「……三歩進んで二歩下がったくらい?」
側近「………」プルプル……
魔王「………」
側近「何一つ覚えて無いじゃないですかぁッ!」
魔王「そそそそんな筈は……」
側近「このアホは……」
魔王「魔王に対してアホとか言うのは良くないと思うのだが……」
お嬢「……あ、あの?」
側近「アホにアホと言って何が悪いんですか。私めがお教えしたのは初歩の初歩なんですよッ!」
魔王「………」
側近「どうせ先程練習した挨拶もまともに覚えて無いじゃないんですか?」
魔王「そ……そんなことは無い」
側近「ほう!なら実践して頂きましょう」
魔王「え……もう?」
側近「……出来るのでしょ?」
魔王「お、おうともさ!ああ!出来るとも!」
側近「……では、此方のお嬢様にレッスン2でお教えした挨拶を」
お嬢「え?え?」
魔王「………」グッ……
側近「さあ、簡単で御座いましょう?」
魔王「い、いらしゃいま……せ……ぇ?」チラ
側近「………」
魔王「はい?ご利用ご利用!ご注文を承りま……すよ?」チラ
側近「………」
魔王「ど……んどん……ぇ?」チラ
側近「……はぁ」
魔王「ち、違うたか?」
側近「魔王様にはまだレベルが高かったようで……」
魔王「………」
側近「どれだけ低レベルなんですか?」
魔王「そう言われてものう……」
側近「初歩すら出来ないとは……」
魔王「………」
側近「ヤレヤレで御座います」
魔王「………」
側近「仕方ありませんね。……私めも御一緒させて頂きますよ」
魔王「……え?来るのかえ?」
側近「こんな当たり前の事すら御出来にならない誰か!がいますので」
魔王「……ぐぬぬ」
側近「お嬢様」
お嬢「をぉ?……は、はい」
側近「申し訳ありませんが私め共々、暫くの間御厄介になりとう御座います」
お嬢「………」
側近「宜しくお願いいたします。………魔王様も然りとご挨拶を!」
魔王「う、うむ。……宜しくたもう主よ」ペコリン
側近「いい加減にしてくださいませんか?……何故、私めがやった挨拶をそのまま実践しないのですッ!」
ー
お嬢「………」
で、何とか御屋敷へと帰るので御座いますが……。
魔王「むほー!見よ側近!普通の植物がそこかしこにあるぞよ!」
側近「雑草を見てはしゃがないでくださいませんか……?」
お嬢「………」
やはりこのお方達は付いてくるようでして……。
心細い道中を一人で帰還するよりはいいのですが、帰ってからがどうなる事やらと別の心配をしてしまうので御座います。
この危険な場所にいても平気な態度をとっている事や……。
魔王「側近側近!これは我の配下かえ?!甘噛みしおって!かわええのお!」
ブラッドウルフ「ガルルルルルッ!」
側近「それは違いますよ。野良の魔物です」
魔王「そうかえそうかえ!」
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