ダージリン「ようやく着いたわ、大洗女子学園に」ミカ「そうだね」 (52)


劇場版ガールズ&パンツァーのネタバレ注意!

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――――大洗女子学園正門にて


沙織「そろそろだね……集合時間」

華「ええ……」

優花里「短期転校者受入期間も、いよいよラストですねぇ~」

麻子「何だか無駄に疲れる日々だったな……」

みほ「うん……」

沙織「よぅし!ラストスパート、頑張るぞ~」

優花里「オーッ!……と、噂をすれば来たみたいですよ?」

華「聖グロリアーナのダージリンさんと、継続高校のミカさんのお二人ですね?」

みほ「あれ?二人共なにかお話してる……?」

沙織「ホントだ……」


ミカ「…………そんな風に『格式』と『伝統』にとらわれていて、君達は自由な人生を謳歌できているのかい?」

ダージリン「あら、『格式と伝統を守る自由』……というものが有ってもいいんじゃないかしら?」

ミカ「そうかもしれないね……では、あくまで自分達は『格式と伝統の奴隷』と化してはいないと?」

ダージリン「ええ、勿論そうよ?…………こんな言葉を知っている?『ある場合に自由と称せらるものは、他の場合において放縦と称せらる』――自由にとらわれ過ぎるのも良くないわ、他人に考えを押し付ける事なく、自分と相手、双方の自由を尊重することが大切よ?」

あんこうチーム(((なんか険悪ムード――っっ!?)))


ダージリン「あら?ごきげんよう、みほさん」

みほ「こ、こんにちは……ダージリンさん……」カチコチ

ダージリン「?……何を緊張していらっしゃるの?それに皆さんも……」

優花里「いや~アハハ……」

華「何と言いますか……」

ミカ「どうかしたのかい?」

沙織「あの~つかぬことをお聞きしますが……ひょっとしてお二人はあまり仲が良くないんですか?」

華「沙織さんっ!」

麻子「いくら何でもストレートすぎだろう……」

沙織「え~、だってさ~」


ダージリン「あら、別にそんな事ないわよ……?」キョトン

沙織「へ?」

ミカ「そうだね。彼女とは良きお付き合いをさせてもらっていると思うけれど?」

みほ「えっ、でも今二人で言い争いをしていて……」オドオド

ダージリン「言い争い?……ああ、成る程。別にあの位のやり取りなら日常茶飯事よ?」

華「そうなんですか……?だいぶ意見がぶつかっていたようにも聞こえましたけれど……」

ダージリン「……そうね。確かに彼女とはだいぶ価値観は違うみたいだし、傍から見たら、言い争いに見えるようなやり取りをすることもあるかもしれないわ……」

みほ「でしたら――」


ダージリン「――でも、だからこそお話をしていて面白いんじゃなくて?」

みほ「――!」

ミカ「――そうだね、皆同じ価値観を持っていたとしたら、会話というものはとてもつまらないものになるものだと思うよ?」

優花里「成る程……」

麻子「そういう考え方もあるか……」

華「思えば私達も趣味がバラバラですものね……」

ダージリン「――それに、仲が悪いのだったら『お茶会』になんて誘わなかったわけですし?エキシビジョンの方は気が乗らなかったみたいだけど……ね?」チラッ

ミカ「……そうだね」フッ


沙織「うんうん、わかるわかる!『結婚相手は価値観が違う方が良い。違う価値観を認めようという想いが互いの距離を歩み寄らせるからだ』とも言うし♪」

麻子「どんな納得の仕方だ……」

ダージリン「あら、あなたも格言を嗜むの?……今のは誰の言葉かしら?」

沙織「あぁ、今のは今月出た雑誌の巻頭特集でですねぇ――」

華「沙織さん、そのへんにしておきましょう?……お二人とも改めまして、ようこそおいで下さいました」ペコッ

みほ「ああっと……こ、これから数日間、よろしくお願い致します」ペコッ

ダージリン「あらあら、そんなに畏まらなくてもいいのに……」

ミカ「クスクス……こんにちは、廃校の危機を救った小さな立役者さん達」

みほ「そんな、立役者だなんて……皆さんが協力してくださったおかげです。お二人とも、その節は本当にありがとうございました」ペコッ


ダージリン「『謙遜は偉大な人を二倍名誉あるものとする』――貴方の一番の魅力は、その人徳なのかもしれないわね?」

ミカ「――私達は風と一緒に流れてきただけさ……気にすることはない」

ダージリン「あら?風は『暖かい所』に向かって吹くものよ?貴方もみほさんの人柄に、何か惹かれる所が有ったのではなくって?」

ミカ「フフフ、好きにとってくれてかまわないよ?」ポロロン

みほ「あはは……」

みほ(仲悪いわけじゃないとは言ってたけれど……この二人のやり取りを聞いてると、ヒヤヒヤしちゃうなぁ……)

ダージリン「――そういえば短期転校者は、貴方達あんこうチームの人達が案内してくれているとか……?」

華「はい、そうなりますね」


ダージリン「しかも『どうせ数日だけだから多少は授業そっちのけで、好きな所を見て回って良い』とかなんとか……」

沙織「ま、まぁこれまで皆、好き勝手に自由行動しちゃってたし……今更真面目に授業受けなくてもって感じはしますけれども……」

優花里「『数日間この学校に登校した』という事実があればいいわけですからねぇ……」

みほ(お姉ちゃんの時はまじめに授業受けてたのになぁ……)

ダージリン「……でしたら、ちょっと会いたいチームの方がいるのだけれど、紹介していただいてもよろしいかしら?」

みほ「会いたいチーム……ですか?」

ダージリン「ええ……ミカさんもよろしいかしら?」

ミカ「構わないよ?どうせ当てもなく、気の向くままに動くつもりだったしね……」

ダージリン「そう、でしたら――」



――――1時間後:戦車倉庫にて


ダージリン「――貴方はこんな言葉を知っていて……?」

丸山「……」

ダージリン「フフッ、ではこんな格言は……?」

丸山「…………」

ダージリン「フフフッ♪」

丸山「………………」

みほ「…………何をお話してるんだろう?」

澤「さぁ……?遠くて聞こえないですね」

山郷「でも二人共、何だか楽しげですよ?」

優花里「あ、こっちに来るみたいですよ?」


ダージリン「……ねぇ、みほさん?」テクテク

みほ「はい、どうしました?」

ダージリン「この娘……持ち帰ってもいいかしら?」スッ

丸山「……」

みほ「ふえっ!?だ、ダメですよっ!?」アセアセッ

ダージリン「あら残念。ここまで真剣に私の話を聞いてくれる子、そうそういないのに……」

優花里「えっ、でもオレンジペコさんは……?」

ダージリン「ペコは最近、対応の仕方がこなれて来ちゃってねぇ……」

みほ「あはは……そうなんですか……」


澤「もうっ!紗希もちゃんとお断りしなくちゃダメでしょ!?」

丸山「……」

優花里「……なんだか流石というべきですかね?この自由さ加減」

沙織「本当。急に『ウサギさんチームに会いたい』なんて言い出した時は驚いたけど。それで――」

華「……」

宇津木「……」

ミカ「……」ポロロン

沙織「……こっちはこっちで不思議空間を展開してるし」

みほ「う、うん……」


大野「あれぇ?優季ちゃん、何やってるの?」

宇津木「ん~?綺麗な音色だなぁって♪」

華「はい♪心が洗われるようです……」

阪口「へぇ~その琴みたいなやつ、なんて楽器なんですかぁ?」

麻子「……『カンテレ』だな。フィンランドの民族楽器だ」

阪口「カン……テレ……?」

宇津木「ほらぁ、前に武部先輩に教わったじゃない?人前では好きな人にワザとつっけんどんな態度をとって、二人きりの時の時には素直になるっていう……」

阪口「ああ~あれかぁ……」

麻子「……それは『ツンデレ』だ。――というか後輩に何を教えているんだお前は……」

沙織「いや~あはは……でも麻子もよく分かったね?」

麻子「お前が四六時中そんな話ばかりしているからだろう……」

沙織「ええ~そうかなぁ……?」


華「琴にそっくりな楽器なんですね?大きさは随分違いますけれど……」

ミカ「もっと大きい物もあるよ?ただ、この位の大きさだと戦車の中が狭くなくてすむからね……」

大野「えっ!?じゃあ試合中もこれを持ち込んで演奏を!?」

ミカ「ああ、そうさ」ポロロン

沙織(試合で通信の時に後ろで鳴ってたのはこの音だったんだ……)

大野「なんでわざわざ試合中も演奏してるんだろう……?」

宇津木「もしかしてぇ、すごく重い素材で出来ているのかも!?」

阪口「それ!漫画とかで見たことある!本気を出す時はその重いのを外してパワーアップするんだよね?」

宇津木「そうそう!落とした物が地面にズシンってめり込んだり♪」


大野「そういえば、聖グロリアーナは試合中でも戦車の中で紅茶を飲んでたよね……」

阪口「まさかアレも重い素材で――!?」

宇津木「あり得るかも!」

阪口「つ、つまり……」

宇津木「私達も重し代わりの何かを戦車内に持ち込むことで……」

大野「強くなれる……?」ゴクリ

麻子「そんなばかな……」

沙織「スミマセン、ウチの子達が好き勝手言っちゃって……」

ミカ「いや、構わないよ?――なるほど、この自由な発想力はウチには無いものだな……思えばあの試合でも型破りな作戦ばかり思いついていたね、君達の学校は」

阪口・宇津木・大野「「「…………?」」」

澤「もう!皆バカこと言って隊長さん達を困らせないの!!」

阪口「はぁい……」

宇津木「梓ちゃんに怒られたぁ……」


沙織「ん~まぁご迷惑じゃないならいい……のかな?」

ダージリン「――――あら、もうこんな時間……皆さん、そろそろお茶にでもしましょうか?」チラッ

みほ「あ、はい!それでは準備を……」

ダージリン「いいえ、それには及ばなくてよ?お湯さえ用意していただければ私が淹れるわ」スッ

みほ「ダージリンさんが……!?」

ダージリン「ええ。いつもはペコに任せるところだけれど、今回は各校の隊長しか来れないと聞いていたから、こうして――」

ガチャッ

ダージリン「茶葉とティーセット一式を持ってきたのよ」

阪口「わぁ~すごーい!」

澤「キャリーバックの中いっぱいにティーセットが……」

沙織「何をガラガラ転がして来てるのかと思ったらこんなものを……」

麻子「準備良すぎだろう……」


優花里「私も!こんな事もあろうかと、レジャーシートとアウトドア用の湯沸器を準備しておいて正解でした♪今お湯を沸かしますね!!」

沙織「――と、ウチにも用意周到な子がいたわね」

みほ「優花里さんって、予知能力でもあるんじゃないかと思う時がある……」

華「――さ、皆さん。ダージリンさんもこう言ってくれてることですし、せっかくですからごちそうになりましょう。美味しいんですよ?聖グロリアーナの紅茶って」

大野「へ~そうなんですか?」

沙織「そういえば華は聖グロに訪問しに行ってたもんね?その時もごちそうになったんだ?」

華「ええ。紅茶と一緒にいただくサンドイッチがまた格別でして……」

ダージリン「あらごめんなさい。流石に荷物になっちゃうから、ティーフーズは持ってこれなかったのよ……」

華「そうなんですか……」シュン


ミカ「では私の方から、我が校自慢のサルミアッキでも……」スッ

沙織「そ、それはちょっと……」タジッ

阪口「なんなんですか?サルミアッキって……?」

麻子「…………世界一まずい飴と言われている、フィンランドの伝統的なお菓子だ」

みほ「世界一……」

宇津木「でもなんだか、逆に興味あるかも~」

澤「で、でも美味しくないんですよね?流石にそれは……」

ミカ「フフ……冗談だよ?焼き菓子を持ってきてあるから、皆で食べるといい」スッ

優花里「おお!箱いっぱいにクッキーが!」

ミカ「実は『ミカはどうせ失礼な発言でご迷惑かけるんだから、何かおみやげを持って行った方が良い』と持たされてね……」

沙織(普段苦労してるんだろうな……そのアドバイスした人)


ダージリン「じゃあお茶菓子の方はそれで良いわね?私もお茶菓子の代わりに茶葉は何種類か持ってきたから……折角だから飲み比べでもしましょうか?」

華「それは楽しそうです!」パアァ

みほ「こんな高そうな物、いくつも開けてしまっていいんですか?」

ダージリン「ええ。構わなくてよ?どうせ我が校では1日6回はティータイムがあるから、これくらいの量なんてすぐ無くなってしまうものだし」

みほ「1日6回も……」

優花里「何だか紅茶だけでお腹が膨れてしまいそうな話ですね?」

丸山「……」

山郷「紗希も秘蔵の昆布茶葉を提供しますって言ってます!」

大野「紗希ちゃん、茶葉持ち歩いてるんだ!?」

澤「ええ~でも紅茶が並ぶ中で昆布茶はちょっと……」


ミカ「別に構わないんじゃないかな?……場に合わせることに慣れてしまうと、人生を楽しむことが出来なくなってしまうよ?」

澤「は、はぁ……」

ダージリン「――元々ティータイムとは社交・交流の場と言う側面が強いの。勿論最低限のマナーは必要だけれど……要は私達が楽しめれば後は何でもいいのよ?」クスッ

澤「そ、そう言っていただけるのでしたら……あ、私達も手伝います!」

ダージリン「フフ、ありがとう。……よろしかったら我が校伝統の美味しい紅茶の淹れ方をレクチャーしましょうか?」

澤「――はいっ!」

山郷「ねえねえ、もし紅茶の淹れ方をマスターできたら……」ヒソヒソ

大野「女子力アップ間違いなし!?」ヒソヒソ

宇津木「モテモテになっちゃったらどうしよう~♪」ヒソヒソ

阪口「よーし!やったるぞ~!!」グッ


沙織「それは聞き捨てならないわねっ!」グァッ

麻子「お前はいい、座ってろ」グイッ

沙織「ええ~でもぉ~」

華「『船頭多くして船山に登る』とも言いますし……」

優花里「ここは一年生の皆に任せましょう?」

沙織「う~ん、わかった!大人しく見守ろう!」フンスッ

ミカ「……君達はいつもこんな感じで賑やかなのかい?」ポロロン

みほ「あはは……まぁ」



――――夕刻:みほの部屋にて


みほ「……じゃあ、ダージリンさんが皆さんの分の大洗女子の制服を用意してくれたんですか?」

ダージリン「ええ、そうよ?元々『一度着てみたい』って話は何度か出てたし、事前にサイズも聞いていたからそんなに苦労はなかったわ。……一部サイズが合っていなかった人もいたみたいだけれど」クスッ

ミカ「おかげでとても賑やかなお茶会になったみたいだけれどね……」ポロロン

みほ「あはは……」


ダージリン「――まぁ秘密にしていた私が言うのもなんだけれど……みほさんもよく、あの戦力差で試合をしようと思ったわね?」

みほ「……あのままだと問答無用で廃校になっていましたから。惨敗する可能性が高かったとしても、まずはやれるだけの事はやってみようかと思って……」

ミカ「例え負けたとしても、自分達で戦う道を選べたのだから、負けても本望だったと……?」

みほ「……勿論、勝つための作戦は立てました。――あの場にいた誰もが、勝ちたいと思っていましたから……だから、あの時皆さんが助っ人に来てくれた時は本当に――」ポロッ

ダージリン「みほさん……?」


みほ「あれっ?……どうして今頃――だ、ダメなんです。隊長の私が、こんな風に泣いてちゃ……」ポロポロ

ミカ「……ずっと我慢してきたのかい?」

みほ「――だって、私が涙を見せたら……皆が不安に……ヒック、うう……」ポロポロ

ダージリン「……ねえミカさん?」

ミカ「……何かな?」

ダージリン「ここは戦車道の試合会場でもないし、私達は同じ戦車道チームのチームメイトでも無いわよね?」

ミカ「そうだね……」

みほ「グスッ……お二人とも何を……?」ポロポロ


ダージリン「だったら――」ギュッ

ミカ「……」スッ

みほ「――!」

ダージリン「今この時――この場所でだけは、涙を我慢しなくてもいいじゃなくて……?」ギュッ

みほ「で、でも――」////

ミカ「虚勢を張らなくちゃいけない相手は今ここには居ない……それに多少の声なら、きっとこの音色がかき消してくれるさ……」ポロロン

みほ「う……うう……ううう……」ヒック


ダージリン「……優しすぎるというのも考えものね?」

ミカ「……そうかい?」

ダージリン「ええ……周りに気を使いすぎてしまう故に、自分の中で気持ちを抱え込み過ぎてしまう……きっと仲の良い友人にも――友人だからこそ、こうした弱みは見せられなかったんじゃないかしら?」ポンポン

ミカ「……少しは君みたいに自由に生きた方が、人生を楽しめる――と?」ナデナデ

ダージリン「あら、貴方には言われたくないセリフね?」クスッ

ミカ「違いない……」フフッ

ダージリン「――今は好きなだけ泣きなさいな?どうせ私達は短期転校の身。これからずっと毎日顔を合わせるわけでもないんだから、気兼ねなんてすることないのよ?」

ミカ「頑張り屋の隊長さんにも、たまの休息は必要だからね……思う存分気持ちを吐き出すといい……」ポロロン

みほ「グスッ……はい……」////



――――短期転校最終日:大洗女子学園校門前にて


みほ「お二人とも、数日間お疲れ様でした」

ダージリン「ええ。皆さんも本当にありがとう……」

華「いえ、こちらこそ……」

沙織「何だか連日お茶会ばかりしていた気がする……」

優花里「ですね~日替わりで色んなチームとお話出来ました♪」

ダージリン「ごめんなさいね、私に付きあわせちゃって」

みほ「いえいえっ、私達もお二人に色んなお話が出来て楽しかったです!」

ダージリン「そう言っていただけると嬉しいわ」

みほ(でも結局、最初にウサギさんチームに会いに行った理由は聞けなかったな……)


華「……でも本当によろしいんですか?余った茶葉を頂いてしまって」

ダージリン「ええ。元々そのつもりだったし……これを機に紅茶派の人間が増えてくれることを願うわ……どこかチームの隊長さんは紅茶を飲んだことすら無いみたいだったし」

優花里「えっ、そんな人もいるんですか?」

ミカ「学校によってはコーヒー派の方が多い所もあるみたいだからね?」

みほ(……そういえばお姉ちゃんもコーヒー派だったっけ)

沙織「へ~そうなんですか。……麻子もコーヒー飲めばいいのに、眠気覚ましになるよ?」

麻子「とっくに試した。あれは苦いだけで全然効かん……甘いケーキには合うんだがな……」

沙織「アハハ……そうなんだ……」


ダージリン「フフフ……そうだ、みほさん……?」チョイチョイ

みほ「……?はい」テクテク

ダージリン「あの夜の事は、私達三人だけの秘密――ね?」コソッ

みほ「ふえっ!?そ、それは……」////

沙織「えっ何!『あの夜のこと』って!?」グイッ

優花里「に、西住殿っ!お二人と一体何を!?」ズザザッ

ダージリン「それは……秘密よねぇ?」チラッ

ミカ「フフフ、そうだね……少しの秘密は人生を面白くするスパイスだよ?」クスッ

みほ「ダージリンさん、ミカさん……」////


沙織「ななな、何で赤くなるの!?みぽり~んっ!!」

優花里「説明してくださいっ!西住殿!!」

みほ「えぇっと……そのぅ……」アセアセッ

ダージリン「フフフ、それではみなさん、ごきげんよう……」ヒラヒラ

ミカ「縁が有ったらまた……」ペコッ

ダージリン「……あら、縁とは自分で作るものではなくて?受け身のままでは、出会いの機会を逃すわよ?」

ミカ「……それもまた人生さ」ポロロン

ダージリン「そうとは言うけれど――」

ミカ「じゃあ君は――」


麻子「……行ってしまったな」

華「ええ……」

ギャーギャー

ワーワー

麻子「……最後の最後にとんでもない爆弾を残していったな……」

華「ですね……」

沙織「みぽりーんっ!!」

優花里「西住殿ーっ!!」

みほ「な、何でもないよぉ~~っ!!」////


おわり



おまけ


――――翌日:聖グロリアーナ女学院にて


ダージリン「~~♪」カチャカチャ

アッサム「……で、何でダージリン様自ら紅茶の用意をしているの?」

オレンジペコ「……なんでも、久々に自分で淹れてみて『紅茶を振る舞う側の楽しみ』を思い出したとかで……」

アッサム「ダージリン様らしいというかなんというか……」

ローズヒップ「なんにせよ、ダージリン様の淹れるお紅茶を味わえるまたとない機会ですわ!」グッ

アッサム「ええ、そうね……」

ガチャ

ダージリン「……さ、皆。出来たわよ?スコーンを添えて……どうぞ?」コトッ


ローズヒップ「頂きますわ!!――――って、熱いですわっ!?」ビシャッ

アッサム「もう、急いで飲むからよ……」ゴシゴシ

ローズヒップ「うう……つい、ダージリン様が淹れてくれたお紅茶を早く飲みたくて……」シュン

アッサム「それでこぼしてしまったら元も子もないでしょう……ふぅ、では頂きます」カチャ

オレンジペコ「じゃあ私も…………はぁ~美味しいです」カチャ

ダージリン「……」ジー

オレンジペコ「……ダージリン様?」

ダージリン「……こんな言葉を知っていて?『愛とは、お互いを見つめ合うことではなく、共に同じ方向を見つめることである』」

オレンジペコ「フランスの作家、サン・テグジュペリの言葉ですね?」

ダージリン「…………」

オレンジペコ「…………ダージリン様?」


ダージリン「はぁ……やっぱり紗希さんの方が反応が新鮮だったわ……」シュン

オレンジペコ「……はいぃ?」

ダージリン「コホン、何でもないわ。……それにしても、今の受け答えといい、貴方もこの1年で随分と成長したわねぇ?」

オレンジペコ「何ですか突然……もし私が成長したというのならば、それはダージリン様のおかげかと思います。色々と鍛えられましたから。紅茶の事も、戦車道の事も……」

オレンジペコ「格言の事も――」ボソッ

ダージリン「ペコ……?」

オレンジペコ「いえ、なんでもありません……」

ダージリン「そう……?でも『戦車道』ね……そういえばペコ、大洗のM3リーのチームを覚えていて?」

オレンジペコ「はい。確か『ウサギさんチーム』とかいう……」

ダージリン「ええ、そう……貴方と同じ、1年生だけで構成されたチームだそうよ?――この意味がわかって?」


オレンジペコ「…………来年、再来年も全国大会に出てくる――ということですね?」

ダージリン「さすが察しが良いわね。そう……なかなか手強いわよ?彼女達……」

ローズヒップ「そうですか?乗員の練度もそれほど高くないみたいですし、あまり脅威は感じませんでしたけれども?」

アッサム「車両スペックもさして高いわけではないですし……」

ダージリン「確かに、データ上では特筆するものは無いチームだけれど……決勝戦でエレファントとヤークトティーガーを屠った件を忘れてないかしら?」

アッサム「……確かに」

ダージリン「一度会ってみて改めて分かったのだけれど、発想の柔軟性に関してはおそらく大洗女子でも随一よ?定石通りの戦いをしていると足元を掬われかねないわ」

ローズヒップ「まぁこの間の試合でも、まさか観覧車を転がしてくるとは思いませんでしたわ……」

アッサム「まさかダージリン様、わざわざそのために大洗に……?」


ダージリン「偵察――というわけではないのだけれどね、一度直接会ってみたかったのよ。春の練習試合の時は試合放棄していた子達が、この短期間にあそこまで成長するんですもの……気にならないと言ったら嘘になってしまうわ」

オレンジペコ「成る程……ですがご安心ください。私も『オレンジペコ』の名に恥じぬよう、精進させて頂きます!」

ダージリン(名に恥じぬように――ね……)

ダージリン「――――ペコ、貴方にだけ聖グロリアーナの伝統に則らずに、紅茶の『銘柄』ではなく『等級』の名前を贈った理由、覚えているかしら……?」

ローズヒップ「え、そうだったんですの……?」

アッサム「しっ!大事な話なんだから口を挟まないの……」

オレンジペコ「……はい。『貴方の戦車道は未知数。これからどんな成長を遂げるかわからないから』……ですよね?」


ダージリン「……そう。来年、再来年と貴方が成長したら、私〈ダージリン〉のような戦いをするようになるかもしれないし、アッサムのような戦いをするようになるかもしれない……」

アッサム「……」ニコッ

ダージリン「…………ローズヒップのようになるかもしれない」

ローズヒップ「ダージリン様、どうして今一瞬溜めましたの!?」

ダージリン「コホン、とにかく!貴方はどんな風にも成長し得るの。だからもしこの先、自分の戦い方を確立した時には、好きな名前を名乗るといいわ。……何なら私の名を継承してもいいし」

オレンジペコ「…………お言葉ですがダージリン様、私が今後どのような戦い方を身につけようと、この名を変える気はありません」


ローズヒップ「何を言っているんですのっ!?それでは聖グロリアーナの伝統が……」

オレンジペコ「『伝統とは形を継承することを言わず、その魂を、その精神を継承することを言う』」

ローズヒップ「――!」

オレンジペコ「……もちろん、代々受け継がれてきた聖グロリアーナ精神を否定するわけではありません。ただ、私はこの学校に入学してからずっと『オレンジペコ』として戦ってきました。……ずっとこの名前と共に切磋琢磨して来たんです。だから――」

アッサム「卒業するまでは、その名でいたい――と……?」

オレンジペコ「はい。伝統的な名前ではないかも知れませんが、心の中にはしっかりと我が校の精神が受け継がれています!それに……」

ダージリン「それに……?」

オレンジペコ「結構気に入ってるんです。ダージリン様に頂いた『オレンジペコ』という名前の響きが♪」

ダージリン「……そう、なら仕方ないわね」フッ

オレンジペコ「はい。仕方ないんです♪」ニコッ


アッサム「……一本取られましたね?」

ダージリン「ええ……まさかペコに格言で意趣返しをされるとは思わなかったわ」

オレンジペコ「恐縮です……」

ダージリン「……正直、貴方がどんな名前を考えるか楽しみにしていた所もあったのだけれどね?」

オレンジペコ「アハハ……それは申し訳ありません……」

ダージリン「うふふ……いいのよ。なんだったら『昆布茶』とかでも良かったのに?大洗に行った時、美味しい昆布茶を淹れてもらったのよね♪」

オレンジペコ「……いえ、流石にそれは遠慮させていただきます」

ダージリン「そう?残念……」シュン

アッサム(どこまで本気なんだろうなぁ……)



おまけ2


――――同日:大洗女子学園戦車倉庫にて


みほ「これで短期転校期間は終わったんだよね……?」

麻子「黒森峰、サンダース、知波単、プラウダ、アンツィオ、継続に聖グロ……これで全部なはずだ」

優花里「いや~大変な日々でしたね~バレーに明け暮れたり、合同学園祭の計画を練ったり……」

華「でも、とても充実していました。他校の皆さんとの仲を深めることも出来ましたし……」

みほ「うん♪」

杏「あ~いたいた、西住ちゃ~ん!」ヒョコッ

みほ「会長!?どうしたんですか?」

杏「いや~探してたんだよ。見つかってよかった~」

沙織「まさか、また何か頼み事でも……?」

杏「うん、実はその『まさか』なんだよね~」

沙織「やっぱり……」


杏「まあまあ、また学食の食券あげるからさ~」

優花里「またですか!?」

華「まぁ、貰って困るものでは無いですけれど……」

麻子「――で、今度は何をさせられるんだ?」

杏「アハハ、そう構えないでさ。実は後もう一人だけ、短期転校者の案内役をお願いしたいってだけだからさ?」

みほ「もう一人……?」

杏「そう!実はもうそこに来てもらってるんだよね~。お~い、入ってきて~」

ガラッ

みほ「――――!」

麻子「なるほど……」

華「そういうことですか……」

杏「いや~本人から『どうしても一度通ってみたい』って希望が有ったからさ~心優しい我が生徒会としては受け入れない訳にはいかないでしょ?」

沙織「『心優しい生徒会』ねぇ……」

杏「んじゃあそういう訳で、宜しく~」ヒラヒラ

優花里「ああ!行ってしまいました……」

沙織「……でもま、そういう事ならしかたないね?」

みほ「うん!……では改めて――ようこそ、大洗女子学園へ!」

あんこうチーム「「「私達は、あなたを歓迎いたします!」」」

愛里須「――うん♪」



おわり



以上です。ありがとうございました。

さて、9日からの西住姉妹のポストカード目当てにまた劇場に行かないと(歓喜)

フィルムは瞬殺だったようで結局貰えずじまい……水戸の劇場なんだから、
もう少し数用意してくれててもよかったのに……

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