【登場人物】
東方仗助……高校生。提督。物体を『なおす』スタンド:【クレイジー・ダイヤモンド】を使用する。古臭……個性的なリーゼント。
加賀……艦娘。正規空母。元一航戦の突然歌いだす方。表情の変化しないクールな顔の下は激情家。
山城……艦娘。戦艦。幸が薄そうなセミショートの女性。実際豊満である。姉命。
大井……艦娘。改装して重雷装巡洋艦。癖のある茶髪のロング。実際豊満である。北上命。
卯月……艦娘。駆逐艦。赤い髪を伸ばしたいたずらっ子。平坦である。
天龍……艦娘。軽巡洋艦。片目に眼帯を付けた不良風少女。実際かなり豊満である。世界水準を超えている。
空条承太郎……もう一人の提督。仗助が知る彼と異なり、高校生の姿である。五秒間この世の時を『止める』スタンド【スタープラチナ】を操る。
前スレ:仗助「艦隊これくしょんンンン~~~~?」
仗助「艦隊これくしょんンンン~~~~?」 - SSまとめ速報
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(これまでのあらすじ)
ゲームへの着任を試みて眠りについた東方仗助は、突然鎮守府の提督となっていた。
個性的な艦娘と交流を続けるうちに、元の世界の知人である空条承太郎と出会うことになるが――演習で目にした彼は、己が知るはずの年齢を大きく下回っていた。
その後、恐ろしい深海棲艦レ級を辛くも撃破し、引き換えに日常を謳歌していたが……。
承太郎の艦隊の艦娘、正規空母:瑞鶴という少女から街の案内の申し出を受け、街に出る仗助。
そこで出会った『ジョニィ』というアメリカ人の青年に、『魂か』『同じぐらい大切なもの』を賭けた、ギャンブルを持ち掛けられた――。
ジョニィの持つ、未知なるスタンド能力と『回転の技術』。仗助に勝つ手段は残されているのだろうか?
「……」
仗助が、無言で動く。
あとはただ、結果を開示する。それだけしかない。最早、如何なる読み合いも凌ぎ合いも意味をなさない審判の時間。
ことここにきて騒いだとしても、まな板に打ち上げられた魚よりも無残を晒すのは必至。
だからこそ、ここから不服を申し立てたり、あるいは無効を主張したりするのはとても勝負者としては有るまじき見苦しい態度にしかならない。
故に無言。故に沈黙。
だとしても――
「……どうしたんだ、それ」
ジョニィが首を傾げた。
視線の先には、積み上げられたガムシロップとミルクの塔を脇に追いやって――そのまま両手を開いて晒した東方仗助。
見ようによっては、保安官の目の前で『無抵抗』を証明する市民のそれか。
「いや……かかってるチップがチップだからよぉ~~~~~~~~~」
頬を掛けるのなら、掻きながら呟くであろう仗助の言葉。
僅かに顔を背けて、されど指の股まで開いてさらに続けた。
「『イチャモン』とかつけられねーように、身の潔白を証明しとかねーとなんねーッスからね」
しかしそんな彼の言葉に、ジョニィは何も返さない。
そろりと……仗助の指がナプキンの端を摘まんだ。無論の事一切――スタンドを発現するような、不審な素振りなどはない。
川べりに落ちているグラビア雑誌の袋とじに小学生がそうするように。
ただ、そろりと……紙の端を持ち上げていく。さながら闘牛に対するマタドーラ。
そして――――ナプキンが開かれた。
「な……ッ」
零れた、驚愕の声。
その主は――――東方仗助、
「『鳩が尻にコインぶつけられた』みてーに驚いてどーしたんスか?」
――――ではないッ!
驚いたのは、ジョニィという青年であった。
「コインは『裏』みてーだぜ。見ての通りよォォォォォ~~~~~~~~~~~~~~ッ!」
当の彼自身は、まったく不敵な笑みを浮かべて。
対するジョニィが驚愕に目を見開くのを尻目に――――テーブルに明らかに示された、『裏』のコインを満足げに眺めていた。
「どーやら、賭けは俺の勝ちみてーっすね」
「……」
「もう一度言わせて貰いますよ! 勝ったのは、俺の方だ! この場合は! 改めてな!」
「……グッド」
第四回戦:●ジョニィ VS ○東方仗助――――チップ七枚を獲得。
(……グレート)
おとなしくジョニィが手を叩いてから差し出したチップ。
計『十四個』となった――――つまり初めに配られたそれよりも一つミルクが増えたそれ。テーブルに、好き勝手な面を晒す。
眺めつつ、仗助は内心嘆息した。
(正直、俺としても『賭け』だったけど……どうやら上手く行ったみてーで何よりッスね)
途中、いくらかの予想外の展開はあったが――――それでもやはり、『依然変わりなく』『必勝法』を実行できた。
必勝法とはすなわち――ジョニィが勝ちを確信したそこ、仗助の策を潰したそのところで打ち込む楔。
(コインをあそこまで弾き飛ばしたのは、『取りに行くその間にコインを加工するため』でも『ガムシロップに細工する』ためでもねえ……)
道路の先を目で追いながら、仗助は頬の汗を拭う。
そう。賭けだ。いずれにしてもギャンブルであり、いずれにしても困難な道だった。
最後の仕掛けというのも、本当は内心で『失敗』への不安を押し殺していた。決して彼とて、演技ではなかったのだ。
(瑞鶴さんの言葉が本当なら……そしてあんたの言うように『コインで妖精に頼みごとができる』なら……)
ジョニィの言葉に偽りがあるか?
……それはないだろう。
詐欺師が付く嘘とは、『僅かな嘘以外のすべてが真実で成り立つもの』か『すべてが想像もつかない大きすぎる嘘』。
この街にいるのは――今は人でなく、『妖精』。
そして、手元にあるのは妖精に頼みごとができる『コイン』。
(賭けの時にコインを持ち上げる事ができるように……『持ち上げて』『一時的に裏向きにする』っつーのを妖精さんに頼み込むために……)
仗助が行ったのはただ一点――――仕掛けはすべてその為に。
そのまま倒せるならばよかった。だが、目の前のポーカーフェイスの青年は、そう一筋縄で行くような人間の筈がない。
だからこそ実に単純に。
攻撃は『相手に潰させて油断させる為に』。そして、何よりも、『時間を稼ぐ』為に。
(仕掛けさせてもらったぜ……)
仗助の仕掛けに応じてコインの存在を知った妖精が――このテーブルまで来るための時間を。
あとはナプキンを持ち上げてから、『頼んだ』通りに……。
何度も、『ジョニィが賭けを外す方』と『頼んだ』ように――――それが実行される隙を作るだけだった。
(『空いた家屋にいるはずの妖精さんにコインの存在を知らせるため』に、『依然変わりなく』、最初からよォ~~~~~~~)
胸を撫で下ろした仗助は、改めてジョニィを見やった。
何度も表が出る事を確定させた――――運命の輪の『回転』を司るように、決まり切った事として物事を行う恐ろしいスタンド能力。
加えて、バラエティ番組も驚くほどの超常的な回転の『技術』。
そして何よりも――圧倒的なポーカーフェイスと、冷静さ。
「それで、どーするんスか? もう一度やるっつーなら相手になるけどよぉ~~~」
内心の冷汗を押し殺しながら、仗助は聞いた。
もう一度――同じ事を行えと言われても、不可能に近い。
あれが一度であったからこそ、初めて突き立てる事が出来た『牙』。
二度目は通用しないだろう――――としても、
(瑞鶴さんを人質にとってるっつーんなら、文句なく叩きのめして……負けるつもりはさらさらねーぜ)
覚悟はあった。
問題なく敵をブチのめして、二度とスタンド能力を悪用などさせはしないという覚悟が。
……が。
「……いや、その必要はないみたいだ」
ジョニィが振り返ったそちらには――特徴的な帽子を、両脇で髪をまとめた上に乗せた少女。
そう、あまりにも特徴的。
帽子の鍔と、前面しか残っていない。
見ようによっては、西洋の甲冑騎士のバイザーにも見えるような外見だが……。
(じょ、承太郎さんstyleッスかァ~~~~~~~~? あの帽子ィィィィ~~~~~~~~?)
それより何より、仗助は驚いた。
というか、(流行ってるんスか、実はアレ……あんなブッ飛んだ外見なのに、マジな話にィ~~~~~!?)――いろいろそのセンスに驚愕した。
承太郎を巌をするなら、少女は板やあるいは甲板というぐらいに体躯が違いすぎるにしても……。
まさかここに来て、何よりも衝撃的だった。あんな不可思議なファッションをする人間が、この世に二人といるとは。
「浜風、浦風が探しとったよ? ……あと潮と照月にも土産買ってかんと」
「……」
待ち人来たれり――という奴だろう。
つまりは真実、ジョニィという青年は待ち合わせをしていたのだ。本当に。
仗助がマジマジと眺めてみても、
「え、ウチどうかしたん? いややわぁ~、いくら男前さんでもそんなにマジマジ見つめられてもウチどないしよう~」
「……体系が珍しいんじゃあないのか」
「…………ジョニィ、今、ウチの体の事なんつった?」
「他に二人といなくて貴重」
「せやろせやろ? へへー、独特のシルエットやろ?」
「かなり。少なくともそんな…………は見た事がなかった。今まで」
「え、なに? なーんか色々聞こえへんやけど、なにぃ~?」
「君のような人に今まで出会った事がない」
「そうやろそうやろ? いやぁー、ウチの事そんな風に思うてくれてるん? これモテ期かも~。困るわ~」
漫才を繰り広げる始末だ。
なんというか、その子供のような体同様……邪気がない。
つまり、東方仗助や瑞鶴を害そうという雰囲気が――この少女にはないのだ。
まるっきり棒読みで話すジョニィと、矮躯の少女相手に仗助はすっかりと毒気が抜かれた気分となり……
「えっと……あの、魂とか賭けるっつーのは……」
「盛り上げる為とは言ったけど……それがどうかしたのか、ヒガシカタ・ジョースケ」
「……いや、なんでもねーッス。なんでもね」
つまり――ほとんど独り相撲だった、という事だろうか。
瑞鶴は、それこそ、なにかたまたま時間が――妖精さんがいないとか、お花を摘みに行っているとか――――かかって。
ジョニィに、瑞鶴をどうにかする力はなかった……と。
「それじゃあ、これ……コーヒー代とコイン。ここに置いておくよ」
ジョニィがそう言い残してテーブルに硬貨を置いておくその時も。
仗助は、ただ肩を落として椅子に腰かけ、見送る事しかできなかった。
「……マジにグレートっすよ、こいつぁ」
「ゴメンゴメン、お待たせ! ちょっと昔の先輩にそこで会っちゃって――――、……仗助?」
「……」
それから数分後。
何事もなく、ストローを突き立てられたプラスチック容器を両手に瑞鶴が、駆け戻ってきた。
ホッと安心の吐息を吐き出しつつ――――同じぐらい、ドッと疲れが滲みだす。
自分は、何をしに来ていたのだろうか。
仗助としても――ここまであまりに濃密な、それこそ何か月にも及ぶ戦闘を行ったような緊張感と共に、頭を垂れるしかない。
「あ、あのさ」
「……なんスか、瑞鶴さん」
「実は今日、付き合ってもらったのは……この間のお詫びもあるんだけどね」
「?」
「実はその……提督の事を知ってるなら、あの人がどんなのが好きかなって……い、いや別に贈り物がしたいわけじゃないけどお世話になってるだけだからね!?」
「あー」
「教えてもいいっすけど……その代わり俺にも教えてくれないッスか」
「何?」
「実は――」
◇ ◆ ◇
知っているだろうか。近世のフランスの話だ。
国家への反逆――――国王の暗殺を企てた平民の男がいた。
そんな彼に国の貴族は憤慨し、そして相応の見せしめと刑罰の用意を求めた。
時の処刑人がそんな言葉に応えて用意したのが『車裂きの刑』。
四肢を馬に固定して、それぞれ異なる方向に向けて走らせ体を引きちぎる――そんな残虐極まりない、処刑方法である。
(天龍……提督……終わったっぴょん……)
注:ただし主にうーちゃんの体が。
そう呟きたくなるほど――――というか、処刑に関する豆知識とか思い出しちゃうほど。
卯月は焦燥していた。
自分より体格の勝る大井と山城が、それぞれ魚雷と主砲片手に「泥棒猫殺すべし」と物陰から飛び出そうとするのを止める事幾星霜。
もう、体が限界を迎えていた。というか心が先だった。
もうゴールしちゃっていいんじゃないかな――なんて手綱を離そうとしなかった自分を褒めてやりたい。殊勲賞だと思う。うーちゃん頑張ったっぴょん。
全身を汗まみれにして、制服をその小さな体に貼り付けて肩息を吐く卯月は、どう控えめに見てもまな板の恋とどっちがマシかという話だ。
なおこの場合のまな板は、別に仗助が出会っていた少女とは関係ない。
卯月の方がマシだが、似たり寄ったりなのだ。
そんな獰猛な、艦娘二名は置いておこう。
卯月が泣きついて、宥めすかして、怒って、泣き叫んで、懇願して漸く自分たちの行為が仲間を害する事(主にうーちゃんが脱臼する)と理解して貰えた。
なので今は、髪を一房口に加えながら提督とその付近をにらみつけるだけで留まっている。
かなり平和だろう。視界に納めなければもっと平和だ。うん、この海は静かで平和って事でいいんじゃないかな。きっと。
そして、残る艦娘といえば――
「……加賀さん、どうしたっぴょん?」
丁度地面から、掌ほどの飛行服の妖精を拾い上げていた。
偵察にでも行かせていたのだろうか。
それはちょっと約束と違う。三日分の昼飯のおかずで手を出すなと手を打ったんだから、違反ではないか。卯月は訝しんだ。
「……なんでもありません」
だけど、声色はどことなく穏やかで――何かをやり遂げたかのように満足気。
ほんの少し、頬が緩んでいるようなそんな表情を眺めて、卯月は結局指摘を取りやめた。
「さて、帰ります。提督の事なら、心配いりません」
おまけにそんな言葉が飛び出して皆が鎮守府に戻るとなったときは、余計な事言わなくて本当によかった――と平坦な胸を撫で下ろした。
鎮守府に戻って――卯月は、彼女は憔悴していた。
ともすれば以前戦った、戦艦レ級よりも強敵であった。話がちゃんと落ちに着くまでかかった執筆時間とかそういう意味でなくて。
なので、まっすぐ部屋に戻って寝た。爆睡だった。
二時間ぐらい寝て、起きて、「うーちゃんすっごく頑張ったっぴょん」と呟いて泣いた。それからまた泥のように寝た。
それから――――ああそうだな、何も食べてなかったな、昼飯もまだだったな、司令官はどうしたかな、なんて執務室を覗いたその時だ。
卯月は驚愕した。
「さすがに気分が高揚するわ」
「いやあ~、色々家具とか迷ったけど……やっぱりこれで正解みたいっすね~~~~~! 何よりだっつーかよぉー!」
「流石提督ですね! だ、だから次は私と一緒に――」
「……提督、山城はここに待機しています」
「…………。あれ~? どうして、もう一本のマイクを奪ってるんですか? しかも私の提督の隣に……」
「は?」
「は?」
「次、歌わせて貰います」
「いやー、実際やばいぜ……歌声、世界水準超えてやがるな」
おお、何たる末法的惨状だろうか! 酷い!
色とりどり、豪華にテーブルに並べられた料理。
……の、残骸。
主に下手人は卯月にも思い当たる。というかほかに誰がいるだろうか(反語)。
そして――皆で輪を囲んだその先に、所謂軍隊的な執務室には全く場違いであり、不揃いであり、不都合な代物。
「カラオケ……流石に気分が高揚します」
(は?)
マイクを片手に加賀がほほ笑んだ。卯月は眉を寄せた。
「提督、これもおいしいですよ? ほら、ね? ほら」
(は?)
仗助の隣で、皿に乗せた大虐殺の僅かな生き残りの料理を口に運ぼうとする大井。卯月は思わず拳を握った。
「提督、今日は私頑張ったんですが……一緒に、歌ったりは……」
(は?)
頑張ったって、卯月の上腕二頭筋と大胸筋と広背筋を限界値にする作業だろうか。卯月は訝しんだ。
「いやあ、たまに掃除とかするとすっきりするよなー。やっぱ散らかってるとよぉー」
(それはいい)
それでやけに部屋が整っていたのか。不良らしい外見と大違いすぎる。真面目か。
ドアを開けたそこに立ち尽くす卯月に――何の気なく視線を伸ばした仗助が、気づいた。
「お、卯月。おめーどうしたんだ? 起こそうとしても起きねーし、結局『ごちそう』もみんなで食っちまったんだけどよぉ~」
「気分が高揚しました」
「……」
卯月の手に、力が籠る。
少し念じてみれば――――なるほど、単装砲が掌の内に発現するではないか。
「卯月……?」
「……」
「卯月、おめー……」
全員の視線が集まるそこ――単装砲を片手に、卯月は頭を下げた。
許せぬ。
何たる民主主義的少数派への虐待行為だろうか。数の暴力だろうか。胸が豊満なのはそんなに偉いのか。一人だけマイノリティ。
「ドーモ、カンムススレイヤーです。……流石のうーちゃんも我慢の限界っぴょん! そこに直れッ、ぴょん!」
←To be continued....
次 回 予 告
「肝試しィィィ~~~~~~~?」
「……自然を装って提督に抱き着く、抱き着くのよ大井! そうよね北上さん!」
「あの、その…………ここは…………その、私の…………」
「オレもよぉー、一応考えてはいるんだぜ? ちゃんと、だけど」
「……あなたが新しい艦娘? 航空母艦、加賀です」
「こいつはひょっとして……中々にヘヴィな状況って奴っすか……この場合」
【天龍は肝試しがお好き? その1】
【幕間】
「……それで、うちに頼んでまであーんな茶番仕掛けてどうしたん?」
「『合格』だったよ。気に入った。見かけの割に強かで計算できるタイプみたいだ、ヒガシカタ・ジョースケは」
「そらま、ならええんやけど……」
「……」
「それにしても」
「あー、瑞鶴の奴引き留めるために苦労したわー」
「……」
「肩凝ってもーたなー。痛いなー。岩みたいに」
「……」
「ジョニィジョニィ、『お好み焼き』」
「気に入ったッ! 身近にある鉄板を使うところがすごくイイッ!」
「聞こえてるやないか! それになにやらすんや、ジョニィの阿保!」
というわけで長らくかかりました。お待たせして申し訳ありません
重大な誤字が発見されました
>>14
×(天龍……提督……終わったっぴょん……)
○(天龍……司令官……終わったっぴょん……)
アオバ=サンがケジメされます
信者の方に「新スレあったの気づかなかったけど荒らしてくれたから気がつけたわ」と感謝されたので今回も宣伝します!
荒らしその1「ターキーは鶏肉の丸焼きじゃなくて七面鳥の肉なんだが・・・・」
↓
信者(荒らしその2)「じゃあターキーは鳥じゃ無いのか?
ターキーは鳥なんだから鶏肉でいいんだよ
いちいちターキー肉って言うのか?
鳥なんだから鶏肉だろ?自分が世界共通のルールだとかでも勘違いしてんのかよ」
↓
鶏肉(とりにく、けいにく)とは、キジ科のニワトリの食肉のこと。
Wikipedia「鶏肉」より一部抜粋
↓
信者「 慌ててウィキペディア先生に頼る知的障害者ちゃんマジワンパターンw
んな明確な区別はねえよご苦労様。
とりあえず鏡見てから自分の書き込み声に出して読んでみな、それでも自分の言動の異常性と矛盾が分からないならママに聞いて来いよw」
↓
>>1「 ターキー話についてはただ一言
どーーでもいいよ」
※このスレは料理上手なキャラが料理の解説をしながら作った料理を美味しくみんなで食べるssです
こんなバ可愛い信者と>>1が見れるのはこのスレだけ!
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」 【仮面ライダードライブSS】
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」 【仮面ライダードライブSS】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456676734/)
【幕間】
――国。
国と聞いて、果たして何を連想するだろうか?
とある超大国だろうか? それとも、中世のお伽噺? 或いは、保守的と移民排斥?
とにかく、国だ。
国というのは壊れがたく、何より強大であり、そしてその国民にとっては誇り高きものである。
そう。国なのだ。
彼女はそんな、国の名を関する、誇り高き船であった。
……であるがゆえに。
「やかましい――――ッ! このナチ公がぁぁぁぁ――――――ッ」
「はぁぁぁぁあ!? ナチスゥゥゥゥ~~~~~~~!? ナ・チ・スですって~~~~~~ッ」
「おめー以外誰がいるっつーんだよぉ! だ・れ・が!」
断じて、こんなところで腐るのは許されないのである。
「私は誇り高きドイツ海軍なのよ! ドイツ海軍ッ! ナチスみたいな誰も彼も屍肉漁りしか能がないハゲ鷹どもなんかと一緒に――」
「てめー、ナチスが全員『屍肉漁りしか能がないハゲ鷹』だとぉ~~~~~~ッ」
「な、何よ! 悪い!?」
……ああ、もう。
黙らないかなコイツら。
というか海の藻屑にならないかな。
なれ。いや、してやる。
心底いい思い出のない国の名前を並べて口論する異人を見やれば溜め息が出る。
片や戦勝国であり、片や彼女のドテッ腹に忌まわしきものを叩き込んでくれたクソッタレの敗戦国だ。
どっちもわりと嫌いだ。
更にここに片方がおちゃらけ野郎である事と、片方が常にドヤ顔高飛車女である事を追加してみよう。
嫌いという言葉で済ませる方がむしろ心優しい事となる。
「……はぁ」
溜め息と共に眼鏡を押し上げる。
一体いつまでこの不毛な議論は続くのだろうか。
多分、誰かが――主にジンツーやミョーコー――というかその二人だけ――が止めに入るまで続くだろう。
笑顔で人を黙らせる、という場面は初めて見た。
この先二度と見ることはないだろう。二度も見たいと思わない。
……などと考えていたのが悪かったのだろうか。
溜め息を聞かれてしまった。そこに来て漸く、存在の確認がされたらしい。
唸り合ってた二匹の眼光が照準された。
なので、言っておこう。こういうのは前もって言うのが重要なのだ。
「私に振らないで貰えます? 暇じゃないので」
そう。主に誰か二人の所為で。
「『暇』じゃないィィィ~~~~~~?」
「『誰かと違って』的な意味に聞こえるんだけど、気のせいじゃねーよなぁぁ~~~~~~?」
……良く判ったな。
と、答える代わりに自然と溜め息が漏れた。
どこぞの誰かが戦艦の癖に魚雷まで発射する所為で資源がカツカツなのと、どこぞの誰かが書類を読み進めない所為で整理がかっつかつなのだ。
ある駆逐艦が怒号を散らして追いたてているから、辛うじて鎮守府も回っているというもの。
……作戦指揮は悪くないが、所掌の事を遣りたがらない指揮官なのだ。つまり書類が溜まる。
「ビス子よぉ~~~~~~なんか感じ悪くねーン、こいつ」
「ビス子じゃない! だけど、ええ、そうね、Admiral……彼女は協調性が足りてないんじゃないの?」
……コイツらだけには言われたくない。
というかお前ら実は仲いいだろ。
耳打ちし合って。しかも聞こえてる。絶妙に聞こえる声出しやがって。ちくしょう。
「……それで、元の話はなんなの?」
深く深く溜め息が出る代わりに、助け船を出す事にした(艦娘だけに)。
元はと言えば、このどこかの国の高飛車戦艦サマが提督の元に報告を持ってきた。
それがいつのまにかナチだナチじゃないだどーだこーだという話に刷り変わっていたのである。
「……ああ、そうね。Admiral! 演習の相手よ」
「演習ぅぅぅ~~~~~~?」
「そう、この中から演習の相手を選びなさい?」
ふふん、と背を反らして髪を掻き上げる魚雷発射可能戦艦。
タブレット……というものを渡された提督はというと、思いっきり眉を顰めた。
仕事をしたくない、という意味の顔ではない。
「ビス子ちゃ~~~ん、これもう見たりしてる~~~?」
「ビス子じゃないわ! ビス子じゃ! ……で、何かしら?」
「これよこれ、この演習相手のし・ゃ・し・んンンン~~~~~~」
「写真……?」
ふむ、とクラッカーの間にクリームソースを挟んだ菓子のようなアダ名をつけられた戦艦がタブレットを覗き込む。
「リュー……ジョー……? 珍しいわね。うち以外に駆逐艦を秘書艦にするなんて」
「そっちじゃなくて下よ、下」
「あら」
と、口に手を当てた。
……それほどまでに衝撃的なものでもあったのだろうか。
「いい男じゃないの。中々、ワイルドな感じで」
と、まじまじと身を乗り出して眺めるビス子……改め戦艦ビスマルク。
よほど気に入ったのか、タブレット画面を食い入るように眺めている。
……最も彼女の場合、『男が格好いいから御近づきになりたい』というよりも『自らの美的感覚にそぐっていたので評価している』という意味合いが大きいだろう。
「そぉ~~~かぁ~~~~~~? こーゆー奴は先祖代々ロクデモナイ事をしてると思うぜ~~~~~~? 面に出てる気がするのよねーン」
「そうかしら……?」
「間違いなく全うな仕事じゃあねーぜ。どんな育て方をしたらこんな顔になるんだ? きっとロクでもないじーさんが甘やかして育てたに違いねーと思うのよねー」
「うーん……」
と、提督がくしゃみ。誰かが噂しているのだろうか。
「おっと……でもねーんだよ。その下よン、その下」
「その下……?」
と、更に二人の視線が下がり……制止した。
一体何が映っていたのだろうか。ひょっとしたら、猫や犬や亀が提督をしていたのか? それとも、オランウータンとか?
「……ビス子、一つばかし聞きてーんだけど」
「Bismarckよ。……それで、何かしら?」
「『それ』……お前の国の発祥だったよなぁー?」
「……ええ。『これ』は私の国が始まりよ」
「……」
「……」
「『それ』って……頭の上に乗せるものだったか? それとも俺の記憶違いとかいうヤツ?」
「……食べ物よ。列記とした」
それから、暫し沈黙。
タブレットを眺めたまま、二名が停止する。
…………食べ物? ドイツ発祥の? ザウアークラフトとか?
それともポテトを蒸して潰しただけの豚の餌の事だろうか。或いは何の捻りもなくただ腸にミンチ肉を詰めて焼いただけのものだろうか。
提督にしてもビスマルクにしても食が憐れな国の出身だ。
パスタがない国はこれだから駄目だという奴だ。そりゃ、頭の上にも乗せたくなるかもしれない。
世の中には砂糖で豆を煮て潰した中身のパンに頭を埋め込んだものが居ると言うし、特に不思議でもないだろう。多分。
それにしても……一体……。
「ふ、普通……普通の神経してたらよぉー」
「や、止めなさい……Admiral」
くつくつと。
「普通の神経してたら……こんな……」
「やめて。それ以上は、絶対、言わない、で……」
噛み殺されていた笑いが。
「頭の上に『ハンバーグ』乗せるか普通ゥウ~~~~~~~~~~~~!?」
――――噴火した。
「なんでコイツ惚けた顔の上に『ハンバーグ』乗せてるのよ~~~~~~ン!」
「やめて! やめなさい! やめなさいAdmiral!」
「Oh,NO! 東洋人にはハンバーグを頭に乗せるものって伝わっちまったっつーのォ!? コレェ!?」
「やめ……っ、っク……やめッ、やめなさい!」
「マジにコイツはど~~~~~~かしてるぜ! 熱くねーのぉ~~~~~~!?」
「だから、やっ、やめなさい!」
「そ・れ・と・もぉ~~~~~~! ハンバーガー作ろうとして『パン』がなくて仕方なくっつーのォ~~~~~~!?」
「やめっ、ちょ、やめっ! やめな、やめなさい!」
腹を抱えて、とはこの事だろうか。
思いっきり画面を指差して、震える手で支えたタブレット向かって爆笑を続ける二名。
……頭の上に? ハンバーグ? 一体……一体何が起きてるというのか?
「親がどーしたらこんなハンバーグ乗せる教育に行き着くっつーのよ! コイツの親の顔が見てみてーぜ!」
と。
ひとしきり笑って、死ぬほどくしゃみを漏らしてから……絶叫者二名は笑顔の神通と妙高に連行されていった。
……そんな体力があるなら鍛練をしよう、という意味なのだろう。
ごく自然に提督が艦隊運動に加えられているのはともかくとして。まぁ、慣れた。
……さて。
古くからの言い伝えにこんな諺がある。ある事はあるのだ。
しかし、それにしても。
それにしても――――なんというか。
「……はぁ」
全ての道はなんとやら――――というが。
……何もこんなお馬鹿な鎮守府の道まで通じなくてもいいのではないだろうか?
戦艦Romaは片息を一つ、タブレットを拾い上げて憂鬱そうに眼鏡を上げた。
なお。
「……ハンバーグ? これが?」
なんというか。
「……言うほど悪くない髪型だと思うけど。いや、むしろ……」
その後、やたらと提督のくしゃみが止まらなくなるという理由で、件の『彼』についての話題が出される事は激減した。
――了
お待たせしました
年末~年度末、忙しい、イベント、できない
かゆ、うま
現状
【仗助くんと愉快な仲間たち】
東方仗助
秘書艦:加賀
・大井
・山城
・天龍
・卯月
【星屑十字軍】
提督:空条承太郎
秘書艦:瑞鶴
・比叡
・島風
・那珂
・利根
【きょういの格差艦隊】
提督:ジョニィ・ジョースター
秘書艦:龍驤
・照月
・浦風
・浜風
・潮
【ジョセフと愉快な仲間たち】
提督:???
秘書艦:霞
・神通
・妙高
・Bismarck
・Roma
【天龍は肝試しがお好き? その1】
「苦情っスか~~~~~~?」
長椅子に腰掛けて卯月の飲むコーヒーは苦い。
いや、コーヒーは元々苦いものだけど。
「ええ。妖精から苦情が寄せられています」
「苦情言うンすねー、妖精さんも」
繰り返すが飲むコーヒーは苦い。別に煮立てすぎたワケでも、イカスミを入れられたワケでもない。
ちなみにイカスミは生臭い。あまり苦くない。墨なのに。
「ええ。だから働かせすぎないで下さい」
「…………それ、加賀さんが言うンすかぁ~~~~~~~~~~?」
「……何か?」
「い、いや何でもねーッスよ! 何でも!」
「……そう」
何故、苦いか。
それは単純である。
執務机に腰掛けて、秘書艦である加賀と会話するダサ……古くさ…………げふんげふん、古典的なリーゼントとポンパドールの司令官の所為ではない。
いや、厳密に言うと司令官の所為だった。
司令官の“おやつ”がどちらがいいかと、卯月の頭の上で冷戦が繰り広げられるからである。
山城が正気を疑う瘴気を発し、大井が言い様のない笑顔で良いように居直る。
片やお彼岸のお墓の前にでも備えるのではないかという和菓子であり、もう片方は街に出て購入してきたケーキである。
つまりいつもの事だった。いつもコーヒーが苦い。
(……うーちゃんはもうツッコミしないっぴょん)
卯月は『ご自由にお取りください』とテーブルの上に置かれた胡椒せんべいを取り出してかじる。
こしょうの香りが染み付きそうだ。
「……それで、苦情ってのは一体なんなんスか?」
「まず一件……『先日、とある戦艦に提督の寝顔の撮影を依頼(依頼とは言ってない)されました。助けてください』」
「……」
おい戦艦一人しか居ねえぞおい。
「二件目……『先日、とある重雷装巡洋艦に提督の寝顔の撮影を依頼(依頼ならよかった)されました。助けてください』」
「……」
おい重雷装巡洋艦一人しか居ねえぞおい。
というかお前ら実は仲いいだろ。ズッ友ならぬジョッ友か。
仗助……じょうじょ……ジョジョを眺め続ける仲間か。ジョッ友か。
(――ハッ!? うーちゃんはもうツッコミしないっぴょん!)
思わず煎餅を勢いよく頬張りすぎて、むせた。
「三件目……『先日、とある駆逐艦にデザートをカツアゲされました。取り返してください』」
「……」
「ひゅ、ひゅー♪」
駆逐艦なんてこの世に一杯いるよね。
「なんつーか、もぉ~~~~ちょっと『マトモ』なお悩み相談はねーんスかぁー?
これじゃあ、新聞の投稿欄に悪戯書き放り込んで批評させるよりも『どーしようもねー』モンっすよ」
……よ、よし。どうやら妖精からの悪戯と思われたらしい。セーフだ。
思わず胸を撫で下ろして、静かに嘆息。ちょっと引っ掛かった胡椒煎餅に噎せた。
「……デザートの件は後で私がやるとして」
ですよねー。
「四件目……『幽霊が鎮守府内に出ます。こわいです。なんとかしてください』」
「……幽霊ィィイ~?」
「……」
「幽霊って、あの『ユーレー』っスか? 足がなくて、宙に浮いてて、勝手に物を動かしたり音を鳴らせて驚かせるって……あの?」
「……【スタンド】も幽霊みたいね」
そのまま、「そういえば幽霊には知り合いがいた」とか「ものは動かしてなかったかも」とか「デザートは多目に受けとります」とか、そんなやり取りをしたのちに。
……いや、かなり聞き捨てならない言葉が混じってたが。
「……流石に普通なら気にしないんスけど、幽霊には少し覚えがあるというか、なんというか」
「そう」
「この苦情を持ってきた妖精さんってどこにいるんスかね?
……というか、そもそも妖精さんって文字とか書けるんですか? あんなにちっこいのに?」
確かに。
言われてみれば、人間が『大判新春書き初め』をするようなサイズ比であろうか。
それを一枚分書き上げて折り畳むというのは、些かな重労働という気もしなくもない。卯月ならゴメンだ。
……と。
「ああ、悪いな提督。それ、オレのだ」
眼帯の不良風艦娘、天龍が手を上げた。
……なんたる事だろうか。まさか、度重なる戦闘のストレスに天龍の精神は偽りの妖精の記憶でも蘇ってしまったというのか。
いや、まぁ、流石にそれはないとしても……。
せっせと天龍が妖精めいた丸文字の筆跡を刻んでるとなると、それはそれでうすら寒いものがある。
「『これ』……本当に天龍……おめーが書いたのかよ」
「んー? フフッ、オレが妖精の世話を焼くのは意外だったか?」
「いや……」
雑そうでいて、どことなくファンシーな文字。
そう。だからこそ、司令官である東方仗助も、秘書艦である加賀もそれが『妖精から送られたもの』と判断したのだ。
つまり……
「随分と、そのぉー……『カワイイ』感じで書くんだな、その……おめー……」
「う、うるせえ! オレは妖精さんからの手紙……それっぽく書いただけだ! あいつらからみたいに! 可愛くなんかねえ!」
恰かも不本意そのものと腕を組んで顔を背ける天龍と、実際ただ関心したと手紙をマジマジと眺める仗助。
他方の加賀は、熟練のギャンブラーがチップを毟り取るように、卯月の目の前から胡椒煎餅を没収していた。
実際この正規空母容赦せん!
「んで、この手紙を全部おめーが書いたとして……どーゆーつもりなんだよ
、こいつぁー」
「ああ、それは――」
眠気、限界。近い内に続きをまた
お待たせしました。今夜です
4部のアニメグレートっすね
お待たせ。ゆるりと
「一応よぉ、妖精も一緒に戦ってるだろ? だったらなるべく気持ちよく戦って貰いてーと思わねーか?」
「気持ちよく……っすか?」
「ああ、……今は昔と違うんだ。油よりも兵隊の方が安いとか、そんな事も言いたくねえ」
「天龍、おめー……」
「少し思っただけだぜ。少し……少しだけどな、少し」
何となく気まずそうに、目線を反らしてボリボリと頬を掻く天龍。
心なしか頬が染まり、渋いものでも口にしたかの如く唇を波立たせる。
それを見た仗助も……暫しの沈黙の後、よっしゃと手に拳を打ち付け立ち上がった。
「グレートだぜ、天龍! そうと決まれば、とっとと問題解決するしかねーよなぁ~! 早けりゃ早い方がイイ!」
「……いいのか、提督?」
「なーにしおらしくしてるんスか! んなのおめーのキャラ『らしくね』ーってモンじゃあねーかよぉー!」
「ああ、だな! そうと決まれば――」
立ち上がった二人の視線の先――突き出された加賀の手。
というより、襟首を捕まえられた卯月。
「やりました」
「……グレート」
「……世界水準軽く越えてやがるぜ」
まさかのスピード解決。
可愛そうだけど、妖精からカツアゲされたデザートはこの先加賀に上納されるのだろう。
そんな目で見送った仗助と天龍だ。
……ともかく、これで一件は解決したが一件落着とはいかないところ。
「んで、次は寝顔の撮影、っと……」
「……おう」
「……」
「……」
「……これよぉー、天龍」
「……な、なんだ?」
「パスしちゃあいけねえかなぁー。パスするっつーのもこの場合は悪くないと思うんだけどよぉ~……」
「……お、おう。ま、まあ話せばすぐわかるからな」
見つめ合って何度も首を動かす二人。
戦艦と重雷装巡洋艦はこの鎮守府に二人とおらず、そのどちらに対しても触れる事はかなりなんか死を意味した。
流石に仗助も、
(何となく好感持たれてるっつー感じだから『ムゲ』にするのもどーかって話だけどよぉ――――)
大井と山城からの好意は自覚していた。
流石にあれだけモーレツに世話を焼かれればその意味も分かるし、こう見えても東方仗助は『モテる』。
自分に対してアピールをしてくる女子には覚えがあるのだ。
……とは言っても、
(流石に俺の寝顔を撮って集めるっつーのは、ちょっぴり薄気味悪いっつーか……。
そもそも『寝顔』なんて撮って何がどーなるっつーんスか? スタンドに閉じ込めるつもりでもねーんだから)
あくまでも、常識の範囲内で。
健全に女の子にはしゃがれるのに慣れているのであって、
だからそこから彼女を作ろうと躍起にもなっていないし、ましてや寝顔を集めるなんてのは人知の外である。
ただ、何となく実際怖い。直接問いかけるのが憚られるほどに。
「つーと、残りはこの……」
「お化けっすかぁ~~~? 実は俺、あんま『お化け』とか『吸血鬼』とか得意じゃあねーんだよなぁ……薄気味悪くて」
「スタンド……? ってのもオレが聞く分じゃお化けみてーなもんだけどな」
「『スタンド』は『スタンド』……『お化け』は『お化け』だぜ、天龍」
「そうかぁ~~~~~~?」
残りはどれも、乗り気がしない。
とは言っても――――天龍の言う事は至極尤もであるのだ。
街を守っている艦娘たちにも、その艦娘を助ける妖精たちにもなるべく憂いなく戦って貰いたいのが本音。
となれば、
「……一丁、やるしかねーみてーだなぁー。お化け退治、って奴をよぉ~~~」
消去法で、解決する事件は決まっていた。
「フフ、怖いか?」
「そーゆーおめーは怖くねーんスか? お化けとか、亡霊とか……」
「何言ってんだ、提督! オレたちは一度沈んだ船だぜ? 今更お化けとか言われても、それがどーしたって感じだろ?」
「ああ、なるほど」
言われれば尤もだ。
天龍らは皆、前の大戦で――――仗助が生まれるより遥か昔の大戦で沈んだ船の記憶を引き継いだもの。
オカルトだ、不思議だという話は的外れすぎる。
ところで、
(……実際そこんとこ、どーなってるんだ? いまいち艦娘っつーのが何かよく判らねーんスけど)
ここに来て仗助も、僅かな疑問を持った。
天龍らがいかにこうして今を生きていて、そして、人の姿を取っているのか。
顎に手を当てて、思案顔の仗助。
その辺りの事でも問いかけてみようかとすれば、拳で手を打つ天龍。
振り返った先は、卯月と加賀。
「つーワケで幽霊退治、っつーか肝試しでもやってやるとして……フフ、怖いか?」
「うーちゃん、パスだっぴょん」
掌をひらひらと、卯月が首を振る。
「あん? なんだぁ? やっぱり、外見らしくブルっちまってんのかぁ~? 卯月よぉ~」
「まさか。うーちゃん幽霊なんか怖くないぴょん」
平然と答える卯月の目は冷めていた。
外見が子供なだけに、なんとも可愛げがないというか……なんというか……。
だが、怖くないというなら何故――
「……罰掃除でっす」
「あ」
「もー、ひどいっぴょん! うーちゃんカツアゲなんてしてないっぴょん。ほんの少し、いらないならデザートを分けてくれないかなーって」
「……出口塞いで、か?」
「……た、たまたまそっちが出口だっただけでっす!」
あからさまに口笛を吹く卯月に、仗助は苦笑。
今回は卯月は抜きだ。正確に言うと前回も卯月は抜きだったのだが――――それはまぁ良いとしよう。
なお、
「天龍ー、大井さんと山城さんはどーしたんだ?」
「あの二人は…………っかしいな。どこ行ったんだ?」
いつのまにか、二人は消えていた。
つい先ほどまで、お茶請けで言い争っていたというのに……だ。
なお、部屋の外、
「肝試しィィィ~~~~~~~?」
耳打ちに、声を上げた大井。
二人は退避していた。決して幽霊が怖いとか、怨霊を気にして……ではない。
妖精さんからの苦情を察知した二人は部屋の外に脱出していたのだ! 九秒の時点で!
そして、注目したのは、部屋を出る直前に耳にした最後の苦情であった!
「……静かにしてください。提督たちに聞こえるわ」
「あ、はい」
ふふふ、と暗い笑みを浮かべた山城。
その瞳に……漆黒の炎が点る。その様はどこか鬼めいて怖い。
「いい……よく考えて? このままなら確実に『確かめる』……そして幽霊騒ぎと言ったら……」
「き、肝だめし……ッ」
ごくり、と鳴る大井の喉。頷く山城。
「そこで…………もしも、ただ確かめるだけじゃあ詰まらない……『肝だめしもしよう』と言ったら……」
「な、なるほど……。でもなんで私に……?」
「一人なら反対されるかも知れないわ…………でも、二人…………少なくとも二人集めたなら……」
加賀はそういうお遊びに反対するだろう。
卯月もきっと、他人を驚かす仕掛けならともかく、自分が仕掛けられるのは嫌がるかもしれない。
だが、残る仗助と天龍は恐らく中立。むしろ、激しい熱意を向ければ賛成になるだろう人間たちだ。
となれば、
「ひ、必勝法……!」
ざわ、ざわ……と空気が揺れる。
「わ、私は…………その、別にねーさま一筋だから提督はどうでもいいですが……あくまでも興味として……」
誰に対してか、というか目の前にいる大井に対して、今さらながら取り繕う山城。
何の言い訳か。
かなり強く病んでいる風でいながら、表面的には思い出した風に虚勢を張るタイプだった。めんどくさいタイプだった。
頬を掻く大井は――――それに対して、
「……自然を装って提督に抱き着く、抱き着くのよ大井! そうよね北上さん!」
やはり小声で拳をグッと握り締める。
もう一人の、向けるべき好意の対象――北上――がいない分、大井は妙に前向きにオープンになっている。
北上がいる手前、或いは提督へと懐疑的な態度を長く続けてしまったならその手前――恥ずかしくて表には出さないが――。
北上はここにおらず、仗助へと強く当たった時間は殆どなかった。
故に――
(肝だめし……ええ、肝だめしよ! 肝だめし!)
大井には、好意を取り繕って誤魔化すという発想はなかった。
あるのはただ、
(ここで提督の心に魚雷を撃ち込むのよ! どんな手を使っても、重雷装巡洋艦は頼りになると!)
勝利して、支配する――――ただそれのみ!
俯き加減に、「べ、別に提督は」とか「私にはねーさまが」とか「そう、これはあくまでもねーさまのため」とか呟く山城と――
「気絶させて……布団に……」とか「お姫様抱っこ……海にさえ出れば艤装のパワー」とか「薬をカレーに……」とか笑う大井。
そこへ、
「おっ、大井さんに山城さん。こんなところに居たんスか? これから――」
「ご、ごめんなさい提督! 少し考え事が!」
「……あ、そーっすか」
んじゃあしょうがないかと、天龍と共に連れだって歩く仗助。
その背中が遠ざかっていく中も――――二人は妄想相手に顔を青くしたり、赤くしたりしていた。
「そう……あくまでもその、山城はねーさまが…………だからこれは……」
「そうよ……そうですよね、北上さん! ええ!」
そして、天龍と仗助が後にした執務室――――。
「……加賀さんはよかったっぴょん?」
床掃除を行う卯月が顔を上げた。片手にはロールクリーナー。
「……何がですか?」
「いや、司令官たちと『肝試し』に行かなくて」
――ぴくり。
肝試し、その言葉の部分で加賀の眉が動いた。僅かな強張り。
常人なら見逃してしまうだろうそれにも――――しかし悪戯が三度の飯より好きな卯月、最近はできてないが、見逃さなかった。
「もしかして加賀さん、幽霊が怖いんじゃ――」
「何も出なかったわ」
「え……?」
「何も出なかったわ」
「……」
「何も出なかったわ」
「あっはい」
「それに――」
と、区切って扉を見やる加賀。
卯月も黙ってそれを辿り――それから首を捻る。
「扉がどうかしたっぴょん? 扉に挟まれたら別の世界に行くとか――」
「すぐ判るわ」
そして、ぱたぱたと近付く足音。
物静かというよりは元気、或いは慌て者、それか幼いか。
卯月には聞き覚えがない――そんな足音。つまりは、新しい艦娘。
余り大きなものを動かす音ではないので、低速の戦艦ではない。つまり、こう火力の艦娘ではない。
果たして――勢い良く開かれたドア。
「……あなたが新しい艦娘? 航空母艦、加賀です」
加賀が、奥ゆかしくお辞儀。
それに答えた艦娘は、後頭部で括った薄紫髪を揺らして、勢いよく頭を下げて手を上げた。
「ども、青葉です!」
ここまで
六人目
>定禅寺通(じょうぜんじどおり)は、仙台市青葉区にある「杜の都・仙台」を象徴する並木道の1つであり、同市で開催される都市イベントの会場となることも多い道路である。
>杜王町定禅寺1の6(東方宅の住所)
すげえ偶然
お仕事ゴタゴタで書き溜めがありませんがボチボチ明日にでも投下します
おまたせしました
コンクリート敷きの路面が太陽を反射して白く焼き付く。
蒲鉾型の工廠や倉庫を並べた海沿い――自慢のリーゼントを撫でつける海風に目を細めながら、
仗助は猟犬がそうするように顎を傾け鼻を立てて辺りを見回す。
海は静かだ。穏やかに波打っている。
「おい天龍……本当にユーレーなんて出るのかよ、これ」
「オレはそう聞いてっけどなぁ……」
二人で肩を並べて、倉庫街の方を見る。
整えられた植林と繁み。軍事施設の中にはしばしばこうして緑が見られる。
「実のところ言うとよぉ~~~~、提督」
「んだよ天龍」
「それが、どうにも『ハッキリ』しねーんだよなぁ」
困った風に、後頭部を掻きながら。
「ハッキリしない……? 幽霊がいねーっつーことッスか、そいつぁ」
「いや、なんつーか……」
歯切れ悪く俯く天龍。
んー、と首を捻りつつ、二人は歩き出した。
「幽霊を見たって話はこう……妖精の奴らから聞いてはいるんだけどよぉー」
「形がはっきりしねーんスか?」
「姿というか……場所というか……」
「それ、マジな話は実は見間違いだってのじゃねーのか?」
「いや……」
木陰を進む。
仗助の記憶では確か……この先は、慰霊碑になっていた。
このSSまとめへのコメント
更新してなくて荒らされとるがな、、、