男「自分が開いた店とはいえ売れないパン屋だな」
男「お陰で俺は2ヶ月もの間風呂にさえ入っていない」
男「そして人々からは不潔な店だと言われる始末だ」
男「これでは儲からない、すぐに店を畳んだほうがいいのは分かってる」
男「それでも・・・」
フッ
男「え?停電?」
男「でも街灯は付いてるぞ」
男「俺の店だけが・・・停電?」
男「まさかガスに続いて電気まで止められるとは・・・」
男「これからどうやってパンを焼けと言うんだ」
男「ガスが止まってからは電磁調理器を使っていたがこれからはそれもできない」
男「しかもそれだけじゃない」
男「冷蔵庫も扇風機も看板のライトさえ使えなくなった!」
男「別に看板は電飾じゃなくていいし扇風機なんか無くても隙間風はいくらでも入る」
男「しかし冷蔵庫は無いと困るんだ」
男「どうしても常温保存できない物があるのに!」
男「今日は金曜日、時間は・・・午後4時か」
男「そろそろあの子が買いに来る頃だな」
少女「ううっさぶ・・・」
少女「今日は店やってるかな」
少女「ん?・・・あれ?」
少女「電気ついてないってことはまさか」
少女「閉店、夜逃げ!?」
少女「いやまさかそんなハズはない」
少女「だってベランダに洗濯物があるし」
少女「夜逃げするのにわざわざそんな物を干していくはずがない」
少女「あっ・・・ひょっとして孤独死・・・」
少女「一応中をのぞいてみるか」チラ
パッ
少女「電気が付いた!」
少女「といっても豆電球で照らしているようなごく小さな明かりが奥のほうから」
少女「あの光はきっと懐中電灯の光だ」
少女「泥棒でも入っているのだろうか」
少女「いやさすがにそれは無いか」
少女「こんな寂れた店から盗める物はまず無いだろう」
少女「そいじゃ気を取り直して」ガチャ
男「安心してください、まだやってますよ」
少女「何で電気付いてないの」
男「まだ明るいからだよ」
少女「止められたんでしょ」
男「そうだよ、よく分かったね」
少女「売れない?」
男「相変わらず」
少女「じゃあ今日は500円出すからロールパン8個ちょうだい」
男「500円もいらないよ」
少女「いくらだったら売ってくれる?」
男「タダでいいよ」
少女「お金欲しくないの?」
男「うっ・・・そりゃ欲しいけど」
少女「ね、だから500円で8個ね」
男「うん」
男「はいどうぞ」
少女「ありがと」
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