犬「人間になりました」 男「そのようですね」(74)

犬「しかも、ご主人様の大好きな幼女です」

男「興奮せずにはいられませんね」

犬「早速挿入しますか?」

男「人としての恥じらいに欠けているように思えて仕方が無いです」

犬「獣ですので」

男「ならしょうがないですね」

犬「しょうがないです」

犬「それで、どうしましょうか」

男「散歩にでも行きましょうか」

犬「折角目の前に裸のようじょがいるというのに散歩ですか」

男「嫌ですか」

犬「大喜びです」

犬「……服は嫌いです」

男「人は全裸で出歩くと捕まるのです」

犬「着たくないです」

男「散歩はやめますか」

犬「このしっぽのアグレッシブさを見て、よくもそんな酷いこと言えますね」

犬「……とても、気持ち悪いです」

男「こんなこともあろうかと、以前買っておいた服が役に立ちました」

犬「普通、こんなことは起きません」

男「男はいつでも1%の奇跡を待っているんです」

犬「あまりのかっこよさにめまいがしてきました」

犬「外に出ました」

男「暖かくて気持ちいいですね」

犬「わけもなく駆け出したくなります」

男「対抗心が芽生えます」

犬「人としての矜持を捨てないでください」

犬「公園です」

男「散歩中の奥様方がたくさんいます」

犬「よその犬と挨拶してきます」

男「その間に奥様方から奇異の視線に晒されます」

犬「こんにちは。こんにちは。こんにちは」

男「違います。誘拐とかじゃないです。首輪はお洒落です」

犬「ご主人様に抱きかかえられて家に帰り着きました」

男「流石にリードの言い訳が思いつきませんでしたから、苦肉の選択です」

犬「言い訳せずに逃げたりしたら、通報されるんじゃないですか」

男「夜逃げも視野に入れる必要がありそうです」

犬「それより、お腹が空きました」

男「奇遇ですね、私もです」

犬「今日のご飯はなんですか。ぬらぬらしてるのが好きです」

男「ウェットタイプのことを言っているのですか」

犬「ぬらぬら」

犬「……白い、ホカホカしているものが眼前にあります」

男「人になったことだし、試しにご飯を食べてみましょう」

犬「もがもが」

男「当然、箸は使えませんよね」

犬「熱いっ、口の中が熱いっ」

犬「虐待を受けました」

男「言いがかりです」

犬「まだ口の中が熱いです」

男「水を飲みなさい。ほら、コップです」

犬「いつもの容器が空です」

男「ようじょが四つん這いで水を飲む様を見ていろ、と言うのですか」

犬「ぴちゃぴちゃ」

男「他者の目があれば確実に通報されています」

犬「……ふぅ。少し口の中がすっきりしました」

男「それは何よりです」

犬「あの熱いのはもういいです。ぬらぬらをください。ぬらぬら」

男「ぬらぬらではなく、ウェットタイプのエサです」

犬「ぬらぬら」

犬「……カリカリの方です」

男「ウェットフードは高いのです」

犬「……食べます。食べますけど」

男「その恨みがましい目をやめなさい」

犬「ぬらぬら……」

犬「げふー。満足です。げふー」

男「じゃあ、今度は私の番です」

犬「ご主人様がぬらぬらを食べるんですか。とてもずるいです」

男「人は犬のご飯を食べません」

犬「おいしいですよ?」

男「……少し、興味が出てきました」

男「騙されました」

犬「おいしいですよ?」カリカリ

男「もう騙されません。普通に料理を作ります」

犬「普段は神秘のベールに包まれた箇所に、興味深々です」

男「冷蔵庫に入らないでください」

犬「ささ寒いです」ガチガチ

男「冷蔵庫は住居ではなく、食品を保管する場所です」

犬「ささ寒いです」ガチガチ

男「抱っこすることで体温を分け与えます」ダキカカエー

犬「ようやく人心地つきます」シガミツキー

男「料理を開始です」

犬「その様をご主人様の背にしがみついて拝見します」

男「手馴れた様子でキャベツを千切りします」

犬「寒さで思わず出てしまった鼻水をご主人様の肩に垂らします」

男「それに気を取られて包丁で指を切ります」

男「ちょっと指から血が出ています」

犬「申し訳なく思います。犬なのにご主人様の邪魔をしてしまい、大変申し訳なく思います」ペコペコ

男「泣かなくていいです」

犬「ぐすぐす。せめてものお詫びに、舐めます」

男「何やら嫌な予感がします」

犬「ぺろぺろ、ぺろぺろ」

男「指でしたか。流石に邪推のし過ぎでしたね」

犬「お望みとあらば、ご主人様のちんちんも舐めます」

男「嫌な予感が的中です。お望んでません」

犬「ご主人様のちんちんは、ぬらぬらですか?」

男「いいから指を舐めてください」

犬「ぺろぺろ、ぺろぺろ。どうやら血は止まったようです」

男「感謝することしきりです。これで料理を再開できます」

犬「今度はご主人様に触れずに、静かに見守ろうと思います」

男「ようじょの柔肌が離れていくことに静かにショックを受けます」

犬「いつものご主人様に安心しました」

男「しかし、ようじょの舌使いを糧に、どうにか力を振り絞って料理を作ります」

犬「それを後ろから応援します。ふれーふれーご主人様ー」

犬「黒焦げの何かがお皿に乗っています」

男「ようじょのあどけない応援に気を取られ、このざまです」

犬「ロリコンはだめですね」

男「まったくです」

犬「あんな黒い物体を食べてしまうご主人様には脱帽です」

男「炭の味でした」

犬「じゃあ、ご飯も食べ終わったようだし、ブラシで毛をといてください」

男「犬用のブラシしかないのですが」

犬「犬なので大丈夫です」

男「元犬で現人なのでダメです。人用のブラシを買いに行きましょう」

犬「むう」

男「近所の巨大ドラッグストアにやってきました」

犬「見慣れぬ景色にやや興奮気味です」

男「普段の散歩ルートから離れていますからね」

犬「そして化粧品の匂いに顔をしかめます」

男「犬には少々きついかもしれませんね」

犬「さあ、お遊びはこの辺にして、ぬらぬらを探しましょう!」

男「ブラシを買いに来たのです」

犬「むう」

男「ついでに夕食の材料を買って行きましょう」

犬「ブラシを買いに来たと言ったのに。ぬらぬらはダメと言ったのに」

男「昼は炭だったから、晩は食べられるものがいいですね」

犬「ぬらぬら……ぬらぬら……」

男「……1つだけですよ?」

犬「っ! だからご主人様は好きなんです!!」ダキッ

男「ようじょに大きな声でご主人様と呼ばれたうえに抱きつかれ、あっという間に大ピンチです」

犬「ご主人様に抱きかかえられ、さっきとは別に大きな店にやって来ました」

男「ぜー……ぜー……。いいですか、外では私のことをご主人様と言ってはいけません。捕まります」

犬「じゃあ、何と呼べばいいですか?」

男「……お、お兄ちゃん?」

犬「ご主人様は業が深いです」

犬「まあ、私は所詮飼い犬なのでご主人様には逆らえません。了解しました、お兄ちゃん」

男「ご主人様もいいが、お兄ちゃんもいいですね」

犬「よくよく観察してみれば、お兄ちゃんは気持ち悪いかもしれません」

男「気づかなかったのですか」

犬「ご主人様補正で気づきませんでした。でも大好きなのは変わりませんよ、お兄ちゃん」

男「お兄ちゃんという響きに、私の右脇腹にある浪漫回路がうなりをあげています」

犬「やっぱり気持ち悪いです」

犬「ここでブラシとぬらぬらを買うのですか、お兄ちゃん?」

男「そうです。そして事あるごとに私をお兄ちゃんと呼んでください」

犬「ご主人様でなければとうの昔に逃げていますが、了解しました、お兄ちゃん」

男「じゃあ行きましょうか、妹よ!」

犬「犬です」

男「ノリが悪いですね」

犬「犬にノリを求めないでください」

犬「やっぱりここも匂いが強くて辟易します」

男「化粧品は犬の天敵ですね」

犬「でも、ぬらぬらのために我慢します。偉いですか、お兄ちゃん?」

男「ああ、可愛いぞ妹よ!」ナデナデ

犬「犬です」

男「なかなか夢を見させてもらえません」

犬「犬がようじょになっただけで満足しませんか」

男「人の欲求は果てないものです。そして、男は夢を追い続けるものです」

犬「あまりのかっこよさに震えが止まりません」

男「だから、『お兄ちゃん、大好きですにゃん♪』と言ってください」

犬「ご主人様がまさかの猫派です」

男「元々猫派なんです。捨てられてたお前を偶然拾っただけなんです」

犬「ショックのあまり泣きそうです。もうすぐ泣きます。泣きます。ひんひん」

男「でも、お前と一緒にいるうちに、犬が猫と同じくらい好きになりました。それで許してはくれませんか」ナデナデ

犬「ぐすぐす……分かりました。許します」

男「ほっと胸をなでおろしました」

犬「ぬらぬら二個で手を打ってあげます」

男「うちの犬が交渉を覚えました」

犬「~♪~♪」

男「うちの犬がウェットフードを両手に持ってご機嫌です」

犬「こんなに嬉しいのは今日のお昼の散歩以来です」

男「割と近い過去でしたね」

犬「しっぽの勢いも留まるところを知りません」ブンブン

男「はは、本当ですね。……いま気づきましたが、普通にしっぽがありますね」

犬「犬ですので」

男「もしかして、私が奇異の視線に晒されていたのは、私の挙動不審さが原因ではなく、そのしっぽ、そしてそのイヌミミのせいだったのではないでしょうか」フニフニ

犬「ミミを触られて少し恥ずかしいです」

男「とりあえず、私の帽子でイヌミミを隠しましょう」カブセカブセ

犬「服犬にするだけで飽き足らず、さらにアクセサリーをつけるのですか、お兄ちゃん」

男「我慢してください。全てはお前のためなんです」ナデナデ

犬「帽子の上からなでられても、感触が届きません……」

男「我慢してください」

犬「犬の喜びの9割以上を占める欲求を我慢しろとは酷い話です。正直泣きそうです」

男「そのグラフおかしくないですか」

男「次にしっぽですが、どうしましょうか。スカートの中に隠しても、しっぽが動けばばれてしまいますし」

犬「頑張ってしっぽを振らないようにします。努力します」

男「ふむ。……犬はいい子だね、可愛いね」頬ナデナデ

犬「う、動きません。しっぽを動かしません」ブンブン

男「動いてます」

犬「だって、あんなことされたら喜んじゃいます。無理です。……ずるいです、お兄ちゃん」ブンブン

男「いけない、ちんちんが勃ちそうです」

犬「あっ、お兄ちゃんが気持ち悪い!」ピタッ

男「お、しっぽが止まりましたね」

犬「……わざとあんなこと言って、しっぽを止めたのですか?」

男「いや、純粋にお兄ちゃんという響きにちんちんが勃ちそうになっただけです」

犬「重ねて言いますが、お兄ちゃんは気持ち悪いです」

男「しっぽの制御に成功しましたし、買い物を続けましょう」

犬「ぬらぬらは既に確保済みです。早く帰りましょう」ダキツキッ

男「ブラシと私の食材がまだです。そう急かさないでください」

犬「本当にぬらぬらはおいしそうです。……じゅるり」

男「涎が垂れていますよ」

犬「大丈夫です、ぬらぬらにはかからないよう細心の注意を払っています」

男「私の腕に抱きついているためか、腕に全部かかっています」

犬「本当ですね」

男「明らかな他人事です」

男「ハンカチで涎を拭きました。そしてブラシも発見しました」

犬「ここは化粧品売場が近いので鼻がひんまがりそうです。ふがふが」

男「鼻声もまた萌えますね」

犬「隙あらば気持ち悪いですね」

男「兄としてのたしなみです」

犬「お兄ちゃんは兄ではなくご主人様です。便宜上、お兄ちゃんと呼んでいるだけです」

男「鼻声でのお兄ちゃんはまた格別ですね」

犬「レベルの低い犬ならもう逃げ出しています」

男「詳しく見るのは初めてなのですが、ブラシにも色々種類があるのですね」

犬「噛みごたえがあるのがいいです」

男「そんな観点で選んでいません。そもそも、噛んではダメです。そういえば、犬用のブラシも三代目ですね。ブラッシングが嫌いなのですか?」

犬「ごしごしされるのは好きです。お兄ちゃんに体を触られるのはたまりません」

男「それ以上はいけない」

犬「ブラシを噛むのは、趣味です。犬としてのたしなみです」

男「犬用の噛むおもちゃを以前買ったと思いましたが、どうしてそれを噛まないのですが」

犬「犬としての沽券に関わるからです。どうして与えられたものを喜び勇んで受け取らなくてはならないのですか。獣としての本能が与えられるのを座して待つのではなく、奪え、と囁くのです」

男「なるほど、思ったよりしっかりした考えを持っていたのですね」

犬「あと、ゴム臭いから嫌です」

男「そっちが本音ではないのでしょうか」

犬「噛むとおえってなります。バナナマンの日村と同じ症状です」

男「いやに詳しいですね」

犬「お笑いのdvdを見るのは構いませんが、一緒に見る相手がいつも犬たる私だけというのはどうかと思います」

男「思わぬ所で友達がいないことを露見させられてしまいました」

男「ふむ……値段は犬用のブラシとそう変わらないのですね」

犬「こちらの方が少し安いようです。よし、差額でぬらぬらを買いましょう!」

男「買いません」

犬「巧みな誘導のつもりでしたが、失敗しました。しょんぼりです」

男「もう既にふたつ買ったじゃないですか」

犬「そうでした。喜びが湧き上がります」ブンブン

男「しっぽに気をつけましょう」

犬「はや、はやや」ピタッ

男「あっ、可愛い!」

犬「あっ、気持ち悪い」

男「感情の発露が禁止されているようです」

犬「私と一緒ですね、お兄ちゃん」ブンブン

男「しっぽ」

犬「あぅ」ピタッ

男「適当なブラシを買ったので、次は私のご飯を買います」

犬「お兄ちゃん、私もそれ押したいです」

男「カートですか。まあ、何事も経験です、やってみなさい」

犬「ころころ、ころころ」

男「おお、初めてにしては上手ですね」

犬「ころころ、ころころ」フンス

男「褒められたことに気を良くするのはいいけど、スピードをあげないでください」

犬「ころころ、ころ……!!?」

男「見失いました」

犬「お、お兄ちゃん? どこですか、お兄ちゃん? 隠れるのはよくないです、よくないです」

男「未だに見つかりません。神隠しに遭ったと考えるのが妥当でしょうか」

犬「鼻! そうだ、私には鼻がある。くんくん、くんくん!」

男「しかし私は神を信じていないのでその案は捨てます。どこに行きましたか、私の犬」

犬「……今日ほど化粧品を憎く思ったことはないです」

男「何やら前方にしょんぼりしたようじょを発見しました。あのようじょには見覚えがあります。おうい、おうい」

犬「……? !!!」

男「やっと見つかりました。探げふぅ」

犬「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん!!!」

男「ぜ、全力で突撃するものではないです。内蔵が飛び出るかと思いました」ナデナデ

犬「私を置いていってはダメです! もう二度と会えないかと思ったじゃないですか!」

男「置いていったのではなく、置いていかれたのです」

犬「なんでもいいです。あのころころはとても危険です。もう近寄りません」

男「カートは悪くないと思います」

犬「お兄ちゃんがころころの味方をします。やはりあのころころは悪です。いつか痛い目を見せてやります」

男「近い将来、この店に弁償しなければならない気がします」

男「あの。犬。あの」

犬「なんですか、お兄ちゃん?」ムギュー

男「もう少し離れてもらわないと、歩きにくいのですが」

犬「嫌です。また離れ離れになるなんてコリゴリです」

男「店内で少し迷子になっただけで、少々大げさかと思いますが」

犬「あと、ころころを監視しておく必要もあるのです。今度はお兄ちゃんを連れ去ってしまう危険もあるのです」

男「さっきのは、お前がスピードを出し過ぎただけです」

犬「お兄ちゃんがころころをかばう……これが三角関係というやつですか?」

男「カートが自我を持ち、女性形態(小学生、あるいは中学生程度の凹凸が望ましい)になれるならその関係は成り立ちます」

犬「お兄ちゃんはブレませんね」

犬「これほど言ったのに、未だにお兄ちゃんはころころを押しています」

男「カゴを持ち歩くのは面倒ですからね」

犬「しかも、私の大事な大事なぬらぬらをその中に入れています。一瞬も目を離せません」

男「おや、犬用のおもちゃがたくさん売ってますよ」

犬「……!! でもころころが、ああ、でもこれ噛みたい。あっ、こっちの動く!」

男「ああカートが私を連れ去ってしまう」

犬「お兄ちゃんが!!!!?」

犬「ぜーぜーぜー……」シガミツキッ

男「ごめんなさい嘘です」

犬「お兄ちゃんはもうころころに近寄ってはダメです! 禁止です!」

男「ちょっとした冗談で面倒な事になりました」

犬「こんな酷い冗談はなしです。あんまりです。泣きそうでした」

男「ごめんなさい」ナデナデ

犬「……お兄ちゃんだから許します。特別です」ブンブン

男「しっぽ」

犬「うわわ。帽子の上からなでられたから、大丈夫と思ったのに」ピタッ

男「帽子をとった上でなでると、どうなるのでしょうか」

犬「…………」キラキラ

男「熱い視線を送っているのに申し訳ないですが、外ではしませんよ」

犬「再び泣きそうです」

男「それで、カートはどうすればいいでしょうか」

犬「私が我慢して押します。一時休戦です。苦肉の策です」

男「なるほど。頑張る犬に、特別におもちゃをひとつ買ってあげましょう」

犬「あまりのことに、しっぽがはち切れんばかりの勢いです」ブンブンブンッ

男「しっぽが他のお客さんにばれたら即座にこの店から逃げますからね」

犬「とまれー、しっぽとまれー。……止まりません」ブンブン

男「困りましたね。このままではいつばれるか気が気でないです」

犬「悲しいことを考えてしっぽを止めます。うーんうーんうーん」ブンブン

男「私も手伝いましょう。私は犬なんて嫌いです」

犬「嘘でも泣いちゃいます。ひーん」ピタッ

男「ああごめんごめんなさい。本当は大好きですよ?」ナデナデ

犬「ぐすぐす……」ブンブン

男「元の木阿弥です」

犬「頑張ってしっぽを止めました。偉いですか? 褒めますか?」

男「褒めたいですが、褒めると再び動いちゃうだろうから褒めません」

犬「それなら我慢します。家に帰ってから改めて褒めてもらいます。この我慢の分も褒めてもらいます。たぶん、ものすごく褒められます。なでなでされまくりです」ブンブン

男「想像だけでしっぽが動いてます」

犬「……ままなりません」ブンブン

男「いっそ、おしりにバイブをつっこんでいると喧伝し、それが猛威を奮っていると周囲に勘違いさせる方向で行った方がいいのでしょうか」

犬「安心と信頼のお兄ちゃんクオリティーです」ピタッ

男「犬に任せるとしっぽの無限ループに陥るので、私が適当なおもちゃを選びました」

犬「お兄ちゃんはセンスがないです。どうしてトラのぬいぐるみを選ぶのですか。怖いです」

男「ものすごく可愛らしくデフォルメされているのですが」

犬「奴らの獰猛さを侮ってはいけません。たとえどれほど可愛くよそおうとも、普通の生き物なら指先ひとつでダウンしてしまいます」

男「ぬいぐるみの話ですよ?」

犬「私は途中から北斗の拳の話になってしまいました。ほあたー」ペシペシ

男「……それで、結局このおもちゃは嫌なのですか」

犬「怖いですが、恐怖を克服するのも生物としての勤め。これでいいです、がんばります」

男「偉いですね」ナデナデ

犬「ああ、しっぽが。またしっぽが。こうなったらトラの恐怖で相殺です。がおーがおー」ブンブン

男「どう見ても楽しそうに遊んでます」

<アリガトーゴザイマシター

犬「たくさん買いましたね。袋が重そうです」

男「明日の分も買いましたからね。そう毎日行くのは面倒です」

犬「私もお手伝いします。ぬらぬらが入ってるのはどの袋ですか?」

男「結局それですか。まあ、そう言うと思ったのですが。はい、どうぞ」

犬「ぬらぬら! あっ、トラのぬいぐるみも! ……あれ、他には何も入ってませんよ?」

男「さあ、早く帰りましょう。あまりもたもたしていると日が暮れてしまいます」

犬「…………。あの、お兄ちゃん?」

男「はい、なんですか?」

犬「……だっ、大好きです!」

男「ようじょに告白されました。もう死んでもいいです」

犬「折角気合を入れて言ったのに、何もかもが台無しです」

男「冗談です。私も大好きですよ?」ナデナデ

犬「軽いです……。こっちとしては一世一代の告白でしたのに」

男「ふむ。……ええと、これくらい好きです」チュー

犬「……!!? お、おおお、お兄ちゃん!?」

男「か、風が強くなって来ましたね。早く帰りましょう、ええ帰りましょう」

犬「舌! 舌が入ってません! もっと舌をからませあうやつがいいです! でもさっきのもドキドキしていいです!」

男「夕食時のスーパーの近くは人がいっぱいなのですよ!?」

犬「お兄ちゃんに抱っこされて疾走するのは至福です♪」


おわり

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