葛葉ライドウ「…八十稲葉から依頼?」(127)
~ 帝都 名もなき神社 ~
…カランカラン…カランカラン…
…パンパン…スッ…
ヤタガラスの使者「お久しぶりですね、14代目葛葉ライドウ…」
ヤタガラスの使者「あなた宛に依頼が来ています…これから八十稲葉に向かって下さい。」
ライドウ「八十稲葉…聞いた事のない地名だな…」
ヤタガラスの使者「それはそうですよ…八十稲葉は…未来のこの国のとある地方の地名なのですから…」
ライドウ「…なんと!…しかし未来になどどうやって行くのだ!?」
ヤタガラスの使者「築土町の異界にあるアマラ回廊を使えば可能です。」
ヤタガラスの使者「…ただ、かなりの危険が伴うのも事実…」
ヤタガラスの使者「…故にこの依頼を受けるか受けないかはあなたに任せます。」
ライドウ「では喜んで引き受けよう。俺も葛葉の端くれ…この国の守護者たる悪魔召喚士だからな…」
ヤタガラスの使者「…分かりました…。」
ヤタガラスの使者「…それではあなたにこの者を同行させましょう…」
???「久しいな…ライドウよ…何だその顔は?よもや我の事を忘れたのではあるまいな…??」
〉忘れた…。
いや、覚えている。
ライドウ「…俺に言葉を話せる猫の知り合いなどおらん…」
ゴウト「…友達甲斐のないヤツめ…まぁよい、我は業斗童子、ナリはこんな格好だが、我も葛葉の端くれよ…」
ライドウ「あぁ…良く知っている…」
ゴウト「おい…ならば最初からそう…まぁ良いわ…今後ともヨロシク頼む。」
ライドウ「あぁ…それでは行こうか…。」
ゴウト「うむ。」
ヤタガラスの使者「それではお二人とも…気を付けて…」スッ…
ライドウ「あぁ…」
ゴウト「何、心配はいらん…我もついているからな…」
~ 八十稲葉 神社 ~
ライドウ「…何とか着いたな…。」
ゴウト「流石のお前でも、アマラ回廊の強力な悪魔には手こずらされたな…」
ライドウ「あぁ…。さて、依頼書によると依頼人との待ち合わせはここのようだが…」
…ザッザッザッ…
???「あなたが、14代目葛葉ライドウさん…ですか?」
ライドウ「…そうだが…貴殿は??」
直斗「僕は白金直斗…あなたと同じ探偵です。」
ゴウト「ライドウ…!…こやつは…!!」
ライドウ「あぁ…!!」
俺と雰囲気が似ている
〉俺の服装真似するな…
ライドウ「俺の服装を真似するな!」
直斗「あなたは…何を言って…。」
ライドウ「冗談だ…気にするな…それより依頼の内容を詳しく聞かせてくれ…」
直斗「はい…僕があなたに依頼したいのは……」
~ 白鐘邸 ~
ライドウ「なるほど…事情は分かった…“マヨナカテレビ”か…」
ゴウト「ふむ…また面妖な話だな…」
直斗「…!!猫が喋った!?」
ゴウト「ほう…我の声が聞こえるか…普通の人間には聞こえんのだがな」
ライドウ「…これはゴウト、俺の助手みたいなものだ…」
ゴウト「我を助手扱いするな!…ふぅ…我は業斗童子…ゴウトとでも呼んでくれ…」
直斗「は…はい…よろしくお願いします。」
ゴウト「うむ…こちらこそよろしく頼むぞ。」
ライドウ「そういえば…直斗殿…貴殿は何故俺に依頼を?」
直斗「直斗でいいですよ…実は依頼を出したのは僕じゃないんです。」
ゴウト「…ほう…では誰が?」
直斗「僕のおじいちゃんです…今度の事件は危険過ぎるから強力な助っ人を呼んでおいたって…」
直斗「…それで僕は商店街の神社に行くように言われたんですよ…」
ライドウ「そういうことか…」
ゴウト「ライドウ…今度直斗の祖父と話してみる必要があるな」ボソボソ…
ライドウ「あぁ…そうだな、直斗の祖父が何者なのか俺も気になる…」ボソボソ…
直斗「…?…あの…二人とも??」キョトーン
ライドウ「いやすまぬ…気にしないでくれ…」
ライドウ「ふん…これが“てれび”という物か…」
直斗「はい…その黒い画面に映像が写し出されて、横のスピーカーから音が出るんですよ…」
ライドウ「どれどれ…」
…スッ……ズブッ…
ライドウ「…!…手が!!」
直斗「!?」
ゴウト「!?」
ライドウ「ぐっ…抜けん…!!…何だ!…吸い込まれる!?」
直斗「ライドウさん!」
ゴウト「おい!ライドウ!!」
ライドウ「来るな!二人とも!!…巻き込まれるぞ!…うわぁっ!!!」
…ズルズルズル…ズブン…
ゴウト「ライドウが…」
直斗「テ、テレビに飲み込まれた!?」
― テレビ内の世界 ―
~ 商店街 ~
…ヒュウゥーッ…スタッ…
ライドウ「ぐっ!…入口から随分と落ちてきてしまったが…」
ライドウ「先程直斗と待ち合わせをした商店街にそっくりな景色だな…それにしても…」
景色が全体的に暗い…
空が夕焼けの様に真っ赤と黒い陰の様な縞模様に覆われている…
そして何やら視界を奪う不気味な黄色い霧が出ている…
ライドウ「あの霧は…“よくないもの”だ…」
この世界について景色を眺めながらあれこれ考察していた時だった…
ライドウ「…!…何かが来る!!」
周囲の景色に所々歪みが生じて、そこから異形のモノが現れた!
シャドウ「………ッ」
丸い球状の体に大きな口があり、そこから長い舌をだらしなく垂らしている。
その体はまるで影を集めて作られたかのように黒一色だ。
異形の者達はふらふらと宙に浮きつつも徐々にライドウ目がけてにじり寄ってくる…。
ライドウ「話が通じる相手では無さそうだな…」
彼らと一戦交える事にしたライドウは、自身が纏っている漆黒の外套の内側に手を伸ばし、
銀色の“召喚管”を二本取り出した。
それは一本につき一体、彼と契約を結んだ“悪魔”…“仲魔”が納められている代物だ。
ライドウは銀の管を胸元に掲げ封を解き放った!
ライドウ「…!?」
…だが何も起こらない…。
ライドウ「…!?」
ライドウは再び外套を捲り、召喚管を確認した…。
どの管も見た目は何ともないが、魔力が感じられない…
ライドウ「どういうことだ…?」
愕然とするライドウ…しかし数ある管の中から、微量な魔力を放っている一本を見付けた…。
ライドウ「これは…メタトロンの…!!」
彼は大天使メタトロンの召喚管を取り出し、封を解いた!
ライドウ「来いッ!…メタトロン!!」
メタトロン?「ぷっはぁ~…やぁっと出られたよ~…久しぶりだねっ!らいどー!」ヒラヒラ
召喚には成功したが…
ライドウ「…」
メタトロン?「ちょっとちょっとぉ~!もっと喜んでくれてもいいでしょ~!」プン!
ライドウ「……。」
やけに小さい…ような…
メタトロン?「んもぅ!もしかして私のこと忘れちゃったの~?ひどいよ!らいどー!」ウルウル…
ライドウ「…モー・ショボー…なのか…?」
モー・ショボー「えへへ~あったり~!…モー・ショボーちゃんだよっ!深川町以来だねっ!」ダキツキッ…ピト…
ライドウ「何がどうなってるんだ??」
モー・ショボー「う~んとね…正直私もわかんない…」
ライドウは軽く頭を抱え込みたくなった…。
モー・ショボー「魔力はかなり弱っちゃったけどぉ~、…覚えた術はちゃんと使えるんだよっ!」
ライドウ「それは本当か!」
モー・ショボー「うんっ!…だからほめてほめて~」ニパッ
ライドウ「あぁ…いい子だ…」ナデナデ
モー・ショボー「えへへ///らいどーの手、あったか~い」パタパタ…
そんなやりとりをしている内にも異形の者達はジリジリと距離を詰めてくる…
ライドウ「お互い積もる話もあるが、まずは奴らをなんとかしないとな…」
ライドウ「やれるか?」
モー・ショボー「うんっ!いつでもいけるよっ!!」
羽の生えた少女はライドウに満面の微笑みで応えた後、
正面から近付く敵ゆっくり振り返る。
正面に敵の姿を捉えた少女は、先程とは全く違う、背筋が凍りつくような笑みを浮かべ、
無邪気な声色で喋り出した。
モー・ショボー「ねぇ…らいどー。あいつらみ~んなぶっ殺しちゃっていいんだよねっ☆」ギラッ
ライドウ「あぁ…構わん。」
モー・ショボー「んっふふ~…じゃあ…全部殺っちゃおっと☆…いっくよ~」ニヤリ
少女はゆっくりと息を吸い込み出した…
モー・ショボー「真空刃!…ふうぅ~~ッ…!!」ビュオォォ…!
少女が胸いっぱいに吸い込んだ空気を吐き出すと真空波を含んだ強烈な突風が巻き起こった!
シャドウ「ギギッ!?」ブシュッ!
少女の正面にいた球状の怪物は全身をザクザクと斬り刻まれ霧散した。
モー・ショボー「まだまだいくよ~!ふうぅ~~…ッ!!」ゴオォォ…!
少女は再び、かまいたちが生じるほどの猛烈な疾風を吐き出し、辺り一面を薙ぎ払った!
シャドウ「ギッ!…ギィ…!!」ブシャア!
少女を中心として発生した嵐によって異形の怪物達はことごとくその身を八つ裂きにされ消え去っていった…。
モー・ショボー「みんなもう壊れちゃった…つまんないの~…なんかよっきゅうふまんだよぉ…」パタパタ…
少女は不満気に呟いた。
モー・ショボー「ねぇねぇ!らいどー!ちょっと遊ぼーよ」ワクワク…
ライドウ「遊びに来たわけじゃないんだ…それに出口を探さないいけない…」
モー・ショボー「…もぅ!相変わらずマジメさんなんだから…」
モー・ショボー「でも…そんなとろもカッコイイよ…///」ポッ
ライドウ「…置いて行くぞ…」スタスタ…
モー・ショボー「や~ん!まってぇー!!」パタパタ…
ライドウの口調ってこうだったかな?web漫画とかの外伝読んでないからわからないけど
とりあえず期待
~テレビ内商店街 酒屋前~
ライドウ(しかし何なんだここは…巫蟲るつぼのような幻覚?…いや異界のようなモノか??)スタスタ…
ライドウ(…あるいは結界か…もっと別の…)スタスタ…
モー・ショボー「ねぇらいどー!…らいどーってば!」グイグイ…
ライドウ「…なんだ?俺は今、色々と考え事をしているんだ…ちょっと静かに…」
モー・ショボー「やだやだー!構ってよ~!もっとなでなでしろ~!!」パタパタ…フリフリ…
???『ち…違う!お前なんか…お前なんか!!』
ライドウ「…!…人の声…!?」
???『…俺じゃねぇ!!』
モー・ショボー「あの建物の中から聞こえてくるよ!」
>>18
超力兵団とアバドン王に出てくる異世界のライドウの口調がベースなんだ…
小説とか呼んだことない…違和感があったらすまぬ…
ああ、じゃあライドウじゃなくて雷同(漢字忘れた)って表記すればいいんじゃないかな
期待支援
>>21とりあえず本編の顔に傷のない方の雷童というこでご容赦を…
~ テレビ内 小西酒店 ~
ライドウ「これは…!?」
モー・ショボー「おんなじ人が…二人??」ほぇ…
??『クク…ハッハハハ!!…そうさぁ!…俺はお前なんがしゃない!俺はァ…俺だァ!』ゴゴゴゴ…
???「はぁはぁ…何だよ…何なんだよこれ!?」ゼェゼェ…
ライドウ「危ない!」
ライドウは呆然と立ち尽くす少年を抱えて左後方に飛び退いた。
???「うぁッ!!」
…ガシャン!…バリーン!…
先程まで少年がいた場所に棚に積まれていた酒瓶が降り注いだ。
ライドウ「君…しっかりしろ!」
???「うぅ…!…化け物じゃない!?…あんた…人…なのか…?」
実は化け物なんだ…
〉あぁ!俺は人間だ…!
ライドウ「…あぁ!俺は人間だ!…俺の名は葛葉ライドウ…君は??」
陽介「あ…あぁ。俺は花村陽介…ってかそんなことよりあんたも逃げねぇとヤバイって!!」
陽介はこの世界に来たいきさつをかいつまんでライドウに伝えた…。
大好きな先輩が殺害され、その犯人を探していたこと。
学校が終わり、今日も犯人を探しに出かけるために家を出ようとしたこと…
気が付けば何故かこの世界に居て、化け物から逃げてここへ駆け込むと“もう一人の自分”がいた事を…。
陽介「…それでさ、そいつがあんまりにも見透かしたようなこと言いやがるから…」
陽介「ついカッっとなって俺…お前なんか俺じゃねぇ!…って言ったら…」
シャドウ陽介『あぁそうさ!俺はもうお前とは違う!』
シャドウ陽介『俺は退屈だったんだよ!こんな田舎に来るハメになって…商店街の人からは疎まれて…大好きな先輩にまで嫌われてさぁ…』
陽介「…!…ち、違う…やめろ…やめてくれぇ…!!」ガタガタ…
シャドウ陽介「ウゼェウゼェウゼェ!…全部ウゼェんだよ!!…だから俺が全部ぶっつぶしてやるんだよ!!」
シャドウ陽介「そんでさぁ!…お前もぶっつぶして俺が本物になってやるよォ!!!!」
モー・ショボー「来るよ!らいどー!!」
ライドウ「あぁ…いくぞ!」ジャキッ
陽介「いくぞって…どうやって戦うんだよ!?…ってかその女の子空飛んで…!??」
モー・ショボー「あれ?あなたも私が見えるの?…もしかしてあなたもサマナーさん??」
陽介「サマナー??」
ライドウ「集中しろ!話は後だ!!」
モー・ショボー「はーい!」
シャドウ陽介『うおおぉぉぉーッ!!!』ズズズズ…
もう一人の陽介の咆哮を合図に黒いドロドロとした影のようなものが彼に集まっていく…
陽介「…!?」
そして背中から人間の上半身を生やした大きな蛙の姿の怪物に変貌した!
シャドウ陽介『我は影…真なる我…』
シャドウ陽介『退屈なモンは全部…ぶっつぶしてやるッ!!』ゴゴゴゴ…
ライドウは腰の鞘から刀を抜いて構えた…
モー・ショボー「ね~ね~、らいどー!アレやろうよア・レ・っ!」ゴゴゴ…
…モー・ショボーは何かを繰り出そうとしている!…
ライドウ「連携か…。いいだろう…まずは小手調べだ!」ゴゴゴ…
……「「疾風忠義突ッ!」」……
シャドウ陽介『!?』
怪物と化したもう一人の陽介に風を纏った電光石火の乱れ突きが襲いかかった!
シャドウ陽介『ぐあぁぁ…!』
陽介「やったか!?」
シャドウ陽介『…なぁ~んてな!…効くわけねぇだろ!バ~カ!!』ククク…
モー・ショボー「うそ!?何で??」
ライドウ「疾風は効かんらしいな!…お前は陽介を守れ!…ヤツは俺がなんとするッ!」
モー・ショボー「うぅ…ごめんね、らいどー…」
ライドウ「気にするな…お前のお陰でヤツの特性は大体分かった。」
シャドウ陽介『おいおいおい!お前…もしかして俺に勝てるつもりになってんのかよ?』
ライドウ「元よりそのつもりだが?」
ライドウは左手で腰のホルスターからリボルバー式の拳銃、コルトライトニングを取り出し、弾丸を放った!
…ドドン!…ドン!…ドンドン!…
シャドウ陽介『ぐッはァ…!!』ブシュ!
弾倉に込められた鉛球を全弾腹にぶち込まれた怪物は思わず退け反った…
今が好機と見たライドウは一気に距離を詰める!
シャドウ陽介『ナメんなァ!!』ビュオォォ―ッ!!
怪物は凄まじい衝撃波を放った!!
陽介「避けろ!葛葉ァッ!」
全力疾走する今のライドウは回避行動をとれない!
…直撃か?
…ドゴッ!…シュイィーン…
モー・ショボー「ふっふ~ん!ぜんぜんきかないよ~だ」ベー…
シャドウ陽介『き…吸収しやがった!?』
モー・ショボー「わたしはと・く・べ・つだからね~…さぁ!あとは仕上げだよっ!らいどー!」フレーフレー!
ライドウ「あぁ!良くやった!!」ダッダッダッ…!!
モー・ショボー「えへへ…ほめられちった///」イヤンイヤン
シャドウ陽介『く…来るな…来るなぁーッ!!』
ライドウ「―ッ!」
ライドウはうろたえる怪物に流れるような斬撃を浴びせていく。
…ザンザンザンザン!…
シャドウ陽介『ぐ゙ッ…あぁ…があああぁぁぁぁッ』
目にも止まらぬ斬撃の猛攻を受けた怪物は、
大小様々な大きさの光の粒を撒き散らしながら弾け飛んだ…
ライドウ「…フン」チャキンッー
その眩い光を背に受けライドウは静かに刀を鞘に納めた…。
モー・ショボー「きゃ~!カ~ッコイイぞ~!らいどー!!」キャッキヤッ…
陽介「葛葉…何者なんだ…お前??」
ライドウ「俺か?俺は…見ての通りの学生だ。」
モー・ショボー「ねぇねぇ…ちょっと…あ、あれ!」パタパタ…
シャドウ陽介『…』ユラ…
少女が指さす方には元の姿に戻ったもう一人の陽介が立っている…。
ライドウ「…しぶといな」バッ
陽介「待ってくれ!葛葉!…あれは!…あれは間違いなく俺だ!」バッ
ライドウ「…」チャキ…
ライドウは再び鞘から抜いた刀を元にもどした…。
陽介はもう一人の自分に向かって歩き出す…。
陽介「そうさ…俺は…ッ」
そして苦しい胸の内を誰にともなく語りだした…
そして苦しい胸の内を誰にともなく語りだした…
自分の父がオーナーを務める百貨店が地元商店街の経済を圧迫し、
商店街の人々から疎まれ、これ以上嫌われないようにと人の目ばかり気にして行動していたこと…
また、大好きな先輩である小西の実家の酒屋も経済的に困窮し、
やむを得ず商売敵の百貨店でアルバイトをしていたこと…
そんな小西を見かねて影から彼女の支えになろうとするも、
人目を気にするあまり中途半端な立ち回りしかできなかったこと…
そしてその中途半端な立ち回りが結果的に彼女の心を苦しめる事にしかならなかったことを…
陽介「だからッ!…小西先輩を殺したヤツを捕まえたら…何もかも中途半端な自分も…」ブルブル
陽介「先輩の無念を晴らせたら…こんな俺でもヒーローになれんじゃねぇかって…ッ!!」ボロボロ…
キリは悪いが今日はこの辺で…
続きはまた明日…
陽介「ホント、何もかも中途半端すぎてダッセーよなぁ…俺…」ポロポロ…
ライドウ「顔を上げろ、陽介…男たる者、簡単に泣くものではない…」ガシッ
陽介「…葛葉?」グス…
ライドウ「中途半端の何が悪い…欠点のない完璧な人間などどこにいる…」
ライドウ「中途半端であろうがなんであろうが、それもお前だ…」
ライドウ「…ならばそれを受け入れた上で、お前らしく小西殿に誇れる人間になってみせろ…!」
陽介「…ッ!…あぁ…そうだな…そうだよな!」
陽介「お前のおかげで何かこう…心のつっかえが取れたような気がするよ…ハハッ…ありがどな…葛葉」
ライドウ「気にするな…それより出口を探さないとな…」
陽介「あー…そういや、すっかり忘れてた!…俺らこっから脱出しないといけないんだよなぁ…」
???「そ、そこに誰かいるクマ?」ヒョコ…
声がした方を見ると大きな熊の縫いぐるみが立っている…
ライドウ「…!…お前こそ何者だ?」スッ…
クマ「クマは名前は“クマ”クマ。」
陽介「まんまかよ!?」
クマ「それよりキミたちこそ何者クマ?」
ライドウ「俺は葛葉ライドウ…学生だ…」
陽介「俺、花村陽介…ってかお前…クマ…だっけ?…こっから出る方法知んない??」
クマ「知ってるクマよ…ただし条件があるクマ!」
陽介「マジで!?じゃあ早速出口に案内してくれよ!」
ライドウ「…しかし、条件とは?」
クマの言う条件とは…
最近テレビの中に人が良く入り込むので原因を探って欲しいこと…。
そして自分自身が何者なのか…どこから来たのか一緒に探して欲しい…ということだった。
ライドウと陽介はクマと約束を交し、彼が用意してくれた出口から脱出した…
~ ジュネス 家電売り場 ~
気がつけば二人は大型テレビの前にいた…
陽介「まさかここに繋がってたとはなぁ…」
葛葉「ここは…?」
陽介「ジュネスっつう百貨店。さっきちょうど話してたじゃん」
陽介「…にしても、今日は色々あったなぁ…向こう側でお前が来てくれてなきゃ、今頃は…」ブルブル
陽介「あ~!考えたら怖くなってきた!!…ホントありがとな!…葛葉!」ガシッ
ライドウ「気にするな…困った時はお互い様だ」ガシッ
硬い握手を交し、フードコートで少し世間話をした後、二人は別れる事にした。
陽介は自宅へ帰る為に。
ライドウは白鐘邸へ自身の無事を報告する為に…。
~ 八十稲葉郊外 白鐘邸 ~
― 夕方 ―
ライドウは白鐘邸に着くと今日の出来事の詳細を説明した。
直斗「そんなことが…にわかには信じられませんが…いえ…僕も実際にあなたがテレビに吸い込まれるのをこの目で見ましたし…」
直斗「…全て事実…なんですよね…」
ライドウ「あぁ…この事件…明らかに大きなウラがある…俺が呼ばれたのは正解だったな…」
直斗「そういえばライドウさんはその、過去の…世界から来たんですよね?」
ライドウ「あぁ…そうだが…」
直斗「最初、おじいちゃんからそう聞かされた時は冗談か何かかと…」
ライドウ「それは当然の反応だ…普通ならこんな話は信じられまい…だが、少しは信じる気にはなったか?」
直斗「はい!」
ライドウ「そうか…では改めて…直斗、二人で協力してこの事件を解決するぞ!」
直斗「はい!頑張りましょう!」
直斗「あ!それとおじいちゃんからライドウさんへ伝言があります」
ゴウト「ライドウに伝言?」
直斗「はい!自分はしばらく家を空ける、と…」
ライドウ「…。そうか…」
直斗「それからこの家の空き部屋を自室として使ってくれとの事です…」
ライドウ「それは有難いな…」
直斗「そして、明日から学校に行けとの事です…」
ライドウ「…なんだと!?」
ゴウト「こういう経験も大事だぞ?ライドウよ…」ニヤ
ライドウ「…。」
~ 白鐘邸 ライドウ自室 ~
― 夜 ―
ライドウ「学校…か…」
ゴウト「今までまともに通えていなかったのだから、いい機会ではないか」
モー・ショボー「えー!やだよー!らいどーが構ってくれる時間が減っちゃうよ~」ボンッ
ライドウ「勝手に出てくるな…管に戻れ」
モー・ショボー「むーッ! ――― のケチ~!!」ムゥッ
ライドウ「俺をその名で呼ぶな…、ん?…そう言えばお前はどうして俺の真名を…??」
モー・ショボー「…!…そ、それは、ほらアレだよアレっ!…あははは…おやすみっ!」ポンッ!
ライドウ「お、おい!」
ゴウト「大方、我がお前の真名を呼ぶのを聞いたといったところだろう…」
ライドウ「…そう、だったか…?」
ライドウ「まぁいい、今日はもう寝るとしよう」
― ???? ―
イゴール「ようこそ…ベルベットルームへ…私はこの部屋の主、イゴールと申します」
マーガレット「私はイゴール様の助手のマーガレットと申します…お客様はここへ来られるのは初めてですね…」
…え?何ここ?ベルベットルーム??…
イゴール「左様…お客様からは大いなる力が感じられます…あなたはここに来る資格をお持ちなのです…」
…しかく?わたし、そんなのもってないよ??…
イゴール「いいえ…あなたは確に持っています大いなる“ワイルド”の力を…」
…わいるど?そんなの知らないよ…
イゴール「今は分からなくても良いのです…」
イゴール「しかし、この先あなた方に降りかかる災いに対抗するために必要な力です」
…さっきからなんのことかさっぱりだよっ!…
イゴール「契約は果たされました…それではまたどこかでお会いしましょう…」
…ちょっと!まって!まってよぉ~!!…
― 翌日 朝 ―
~ 八十神高校 二年教室 ~
諸岡「…え~、今日は転校生が来ている…ほれ、入ってこい。」
…ガラッ…
陽介「…ッ!」
転校生「…一身上の都合で弓月の君高等師範学校から転校してきた、葛葉ライドウだ…今後ともよろしく…。」
諸岡「…だそうだ、何でも東京から越して来た落ち武者だが…みんな仲良くしてやるんだぞ!」
誰が落ち武者だ!
〉誰が鋭いモミアゲだ!
ライドウ「誰が鋭いモミアゲだ!」
諸岡「な、何を言っとるのかね君は…これだから都会育ちの若者は…」ブツブツ
諸岡「とりあえず席に着きなさい!」
ライドウ「あぁ…。」
…ツカツカツカ…ガタ…スッ…
陽介「こんな偶然ってあるんだな!今日から同じクラスか…よろしくな葛葉!」ニッ
ライドウ「あぁ…よろしく頼むぞ…陽介。」
千枝「なになに?二人とも知り合いなの??」ズィ
諸岡「こら!そこッ!静かにせんか!!」
千枝「やっば!」バッ
陽介「葛葉…昼休みに屋上に来てくれ、話があるんだ」バッ
ライドウ「…?…あぁ、構わんが…」
陽介「詳しくはまた後で!」サッ…
― 同日 昼休み ―
~八十神高校 屋上~
四月の暖かい日射しを浴びながら、ライドウと陽介は屋上で昼食を摂っていた。
陽介「…モグモグ…なぁ、葛葉…昨日は適当に誤魔化してたけど、お前、ただの高校生じゃないよな?」モグモグ…
ライドウ「そんなことはないぞ…ムグムグ…見ての通り、俺はお前と同じ高校生だ…」モグモグ…
さて…どう誤魔化したものか…。
そんなことを考えながらライドウは梅干し入りのおにぎりを手に取ろうとした…。
ライドウ「…む?」
だが彼の手が掴もうとした所には何もなかった。
モー・ショボー「えへへぇ~…隙あり~!いっただきま~す!」モグモグ…
モー・ショボー「…!…うわ!何これ!?しゅっぱいよ、らいどー!?」ジタバタ…
陽介「…普通の高校生はこんな空飛ぶ女の子を連れてないと思うぞ…?」ジー
ライドウ「…」
ライドウは軽く頭を抱えた…
モー・ショボー「…ふぇ?」パタパタ…
モー・ショボー「どーしたの?らいどー?あたま痛いの?」アセアセ…ナデナデ…
ライドウ「あぁ…お前のせいでな…」
心配そうな面持ちの少女に頭を撫でられるライドウはすこぶる仏頂面だ。
突然現れたこの無邪気な少女のお陰で誤魔化しきれなくなった彼は、
過去から来たことはふせて自身の身の上を陽介に簡単に説明した…。
陽介「…悪魔召喚士(デビルサマナー)…?」ジー
ライドウ「その名の通り契約を結んだ悪魔を召喚し、その力を行使する者のことだ…」
ライドウ「そして俺は怪異専門の探偵でな…ある御人からこの町で起こっている“マヨナカテレビ”という怪現象の解決を依頼されて来たんだ…」
陽介「お前…やっぱただ者じゃなかったんだな…!…じゃあそのコは…その、悪魔…なのか?」ジー
モー・ショボー「うん!わたしモー・ショボーっていうの!よろしくね!ニンゲン!…え~とぉ…たしか、よーすけだっけ??」パタパタ…
陽介「あ、あぁ…よろしくな…」
陽介「…にしてもすんげー高校生もいるもんだなぁ…とても同い年だと思えねぇよ…」
ライドウ「まぁ、な…」モグモグ…
しばらく食事をする事も忘れて呆けていた陽介は思い出したように口を開いた。
陽介「そうだ!あんまりの事ですっかり飛んでたけど…俺、お前に聞いて欲しい事があるんだ!」
陽介は矢継ぎ早に話出した…。
もう一人の自分と向き合って改めて小西早紀を殺害した犯人を追う決意をしたこて…
昨日帰宅した後、テレビの画面を触ると手が吸い込まれそうになったことを…
陽介「この変な力を手に入れたのも何かの縁だと思うんだ…だから俺もお前の手伝いをさせてくれ!」
ライドウ「…危険だぞ?…それにお前が探している連続殺人犯と俺が担当している事件は関係ないのではないか?」
陽介「ぜったい関係あるって!!」
ライドウ「何を根拠に…」
陽介「それは…」
陽介は、自身が二つの事件は何らかの関係があると思う根拠について喋り出した…。
4月12日に殺害された山野アナと数日後に殺害された小西早紀…。
両者の遺体が発見された状況に明らかな共通点があること…
そして昨日、テレビ内の世界でライドウが駆け付ける直前に、
殺害されたはずの小西早紀の声をハッキリと聞いたことを…。
陽介「…だから俺はこの二つの事件は間違い無く繋がってると思うんだ!」
ライドウ「ふむ…なるほどな…」
ライドウ(確かに何らかの関係があるかもしれない…謎の怪現象に…連続殺人事件…か…)
ライドウ(まさか直斗が依頼された殺人事件とも関係しているとはな…今日帰ったら彼にも話すか…)
陽介「なぁ…頼むよ葛葉!…このとおりだから!!」バッ
ライドウ「…協力してくれるのは構わないが、絶対に無茶はするなよ。」
陽介「…!…あぁ!ありがとな!…ライドウ!!」ガバッ
???(…何かスゴいこと聞いちゃったな~…まさか葛葉君にそんな秘密が…)ソーッ…
ライドウ「それはそうと…だ。…いつからそこにいるのかは知らんが…そろそろ出て来たらどうだ?」
???「!?」ギクッ
陽介「どうしたんだよ、ライドウ?」
しばらくすると屋上入り口から一人の少女が姿を現した。
陽介「…!…里中!?」
千枝「あ…あはは…ごめんッ!…盗み聞きするつもりはなかったんだけど…」
ライドウ「…」
現れた少女はライドウと陽介の会話をほぼ全て聞いてしまったことを素直に白状した。
ライドウ「…まぁ聞いてしまったものは仕方ない…」
…ライドウの寛容さが上がった♪…
千枝「あはは…ごめんね葛葉君…」
モー・ショボー「むぅ!らいどーになれなれしくするなニンゲンっ!」プン!
千枝「おぉー!これが噂の悪魔っ娘かぁ!よ~しよしよし…」ワシャワシャ…
モー・ショボー「えへぇ~、なでなで///…じゃなくて!子供扱いするなっ!!」プンプン!
千枝「ごめんごめん…じゃあ仲直りしよっ!…そうだ!この肉ガムをあげる!」テレッテー
モー・ショボー「なにそれ?おいしいの??」ワクワク…
陽介「おいおい!…そんな変なモンあげんなよ!!」アセアセ
千枝「変なもんとは何よ!…これ中々いけるんだから!!」
モー・ショボー「らいどー、らいどー!おやつもらっちった!!」ニコニコ…
ライドウ「あぁ…ちゃんと礼を言うんだぞ」
モー・ショボー「うんっ!ありがとね!ちえ!…あ!これおいしいよ!!」モグモグ…
陽介「うそだろ…」
ライドウ「しかし…二人ともこいつの姿が見えるんだな…」
陽介「え?」
千枝「普通に見えるけど?」
ライドウ「普通の人間の目には悪魔は見えないんだが…」
モー・ショボー「そういえばそうだよね…二人ともサマナーなの?」ほぇ…
陽介「いや…俺はちがうぞ?」
千枝「あたしも…」
ライドウ「二人には何らかの素養のようなものがあるのかもしれんな…」フム…
モー・ショボー「ふあ~ぁ…おなかいっぱいになったら、なんか眠くなってきちゃったよぅ…」ポンッ!
少女は欠伸をすると、その姿を小さな光の玉に変え、
ライドウの外套に潜り込んだ。
千枝「何、今の!?手品!??」ビクッ
陽介「なんか改めてスゲーよなお前って…」
ライドウ「…」
しばらくして聞こえてきた予鈴によって三人は屋上を後にした。
~ 八十稲羽 白鐘邸 ~
― 夜 ―
ライドウは夜になって帰宅した直斗にお互いが担当している事件が関連している可能性があることを伝えた。
直斗「そんなことが…」
ライドウ「あぁ…それより直斗…その制服は…」
直斗「そう言えば話してませんでしたね…僕も八十神高校に一年生の生徒として通っているんですよ…」
直斗「…探偵であることは伏せてますけどね…」
直斗「それよりライドウさん!これを!」スッ
直斗は小さな紙袋をライドウに手渡した。
直斗「プリペイド式のphsですよ。持っていた方が便利でしょうから…」
ライドウ「プリペイド?…ぴーえいちえす…??」
直斗「はい…要するにこれは電話です」
ライドウ「電話…これがか??」
直斗「使い方はこんな感じです…」
直斗はphsの使い方を説明した。
直斗「僕の連絡先は既に入っているので何かあったらいつでも呼んで下さい。」
ゴウト「ふむ…何とも便利な世の中になったものよ。」
ライドウ「わかった…ありがとう直斗。」
直斗「いえ…どういたしまして」
ライドウがぎこちない手でおっかなびっくりphsを操作していると外套の中の召喚管を落としてしまった。
…ボンッ!…
モー・ショボー「よっと!…呼んだ~?…らいどー」キョトン…
直斗「うわっ!…何なんですかこれ!?…ライドウさん!?」ビクッ
ライドウ「すまない直斗…、これは…」
ライドウは自分のことを改めて直斗に説明した…
直斗「そ、そうですか…おじいちゃんから聞いてはいましたが…これが…悪魔…」ジー
モー・ショボー「わたし、モー・ショボー。よろしくね!」
直斗「は…はい!…よろしく…」
ライドウ「…直斗もこいつの姿が見えるのか…」
直斗「えぇ…みたいです…確か普通の人間には見えないんですよね…」
ゴウト「その通りだ…。まぁごく稀に見える人間もいるが…。直斗も悪魔が見える資質があるのやもしれぬな…」
直斗「僕に…悪魔が見える素質が…」
ライドウ(直斗もか…。悪魔が見える人間が身近にいすぎる気がするな…)
ライドウ(…偶然…か?)
直斗「ライドウさん…?」
ライドウ「いや…何でもない…俺は部屋に戻る。」
直斗「…?…はい…おやすみなさい。」
~ 白鐘邸 ライドウ自室 ~
― 午前0時前 ―
ライドウ「先ほどから何やら雨が降って来たな…」
ゴウト「ライドウよ…覚えているか…件の“マヨナカテレビ”の事を…」
ライドウ「あぁ…雨が降る日の深夜0時に何も映っていないテレビに“何か”が見えるんだったな…」
ゴウト「幸いにも今宵は条件を満たしている…もうすぐ午前0時だ…」
ゴウトが言い終わり、部屋の時計の短針はちょうど12時の位置に止まった時だった…
…ザ…ザザザ…ザザ…
ライドウ「これは…!?」
電源を入れてもいないはずの部屋のテレビに突然“何か”が映った!
写し出されたそれは人影のようだが、
映像と音声の乱れが激しく、イマイチよく分からない…。
ゴウト「ライドウ…!」
ライドウ「今のは一体…??」
― 翌日 朝 ―
~ 八十神高校 二年教室 ~
陽介「なぁ、ライドウ…見たか?昨日のマヨナカテレビ?」
ライドウ「あぁ…」
陽介「やっぱ見たか!…テレビに映ってたヤツってさぁ…昨日学校休んでたうちのクラスの天城に似てたような…」
ライドウ「天城…??」
千枝「はぁはぁ…雪子!…そんな!…今日も来てないなんて!?」ゼェゼェ…
陽介と件の怪現象について話していると、真っ青な顔をした千枝が教室に飛込んできた…
陽介「ど、どうしたんだ里中?」
ライドウ「何かあったのか?」キリッ
千枝「花村!…葛葉君…」
千枝は一つ思案した後、二人の手をつかんで教室の入口へ歩き始めた。
陽介「ちょ!…何なんだよ里中!?」
ライドウ「どこへ行くつもりだ…?」
千枝「いいから!…二人ともちょっと来て!!」
~ 八十稲羽 商店街 ~
千枝は道すがら昨日のマヨナカテレビに雪子の姿がはっきりと見えたことを二人に伝えた…
千枝「昨日から雪子に連絡がつかないの!…家の人に聞いても分からないって…」
千枝「それに昨日の話だと、マヨナカテレビに映った人は死んじゃうんだよね!?」
ライドウ「落ち着け…まだ確実にそうと決まった訳では…」
千枝「でも!雪子はテレビの中かもしれない…お願い!雪子を助けたいの!」
千枝「二人はテレビの中に入れるんでしょ??あたしも連れてって!」
陽介「なぁ…ライドウ!俺からも頼むよ!」
千枝「花村…!」
ライドウ「…分かった…ただし危なくなったら直ぐに戻るんだぞ?」
千枝「葛葉君…ありがとう!」
~ ジュネス 家電売り場 ~
陽介「なぁ…なんでわざわざここのテレビから…」
ライドウ「ここ以外の場所から入ったとして…」
ライドウ「知らない場所に出てしまったら帰れなくなる恐れがあるからな…」
陽介「それもそうだな…」
ライドウ「ではいくぞ…二人とも、準備はいいか?」
陽介「あぁ!いつでもいいぜ!!」
千枝「あたしも!」
ライドウ「よし!」
…ズズズ…ズプン…
~ テレビ内 広間 ~
千枝「ここが…テレビの中の世界…」
クマ「また会ったクマね!センセー!ヨウスケ!」
陽介「なんだよ…その“センセー”って…つか俺は呼び捨てかよ!?」
クマ「センセーはクマのお願い聞いてくれたし、シャドウも倒しちゃうスゴイ人だからセンセークマ!」
千枝「しゃべった!?」ビクッ
クマ「およ?今日は見慣れない子も一緒クマね…」ジー
ライドウ「それよりクマ…今この世界に俺たち以外の人間が入り込んでないか?」
クマ「さっすがセンセー!良く分かったクマね!」
ライドウ「…!…いるのか!…早速だが案内してくれ!」
クマ「わかった!…案内するからついて来てクマ!」
~テレビ内 雪子姫の城~
目の前には童話に出て来るような城がそびえ建っている…。
クマ「着いたクマよ。」
千枝「雪子…。雪子~!!」ダダッ…
陽介「待てって里中ァ!」
ライドウ「急いで後を追うぞ!」
クマ「二人とも待つクマ!…」
クマはメガネを取り出して二人に渡した…
陽介「おぉ…スッゲー!…景色が良く見える!!」
ライドウ「俺は集中すれば普通に見えるからいらないんだが…とりあえずもらっておこう…」
~ 雪子姫の城 回廊 ~
ライドウと陽介は先行する千枝を追って走っていた…。
陽介「ったく!里中のヤツ!どこまで行ったんだよ!」
そんな彼らの前方の床から異形の怪物が現れた!
ライドウ「…!…陽介!…俺の後ろに…」
陽介「いや…たぶん大丈夫だ…」ゴゴゴゴ…
ライドウ「お前…何を言って…!?」
陽介の胸元に光るカードのようなものが現れ…
陽介「来いッ!ジライヤ!」
― カッ! ―
彼はそれを手に取り、人型の何かを召喚した!!
ジライヤ「…ッ!」ビュオォォッ!
シャドウ「…ギィィ…!」ブシャア!
陽介にジライヤと呼ばれたモノは怪物達を疾風で薙ぎ払った!
ライドウ「陽介…お前、それは…!?」
陽介「何かさ…声が聞こえたんだ…ペルソナ、って言うらしい…」
ライドウ「ペルソナ…」
ライドウ(これは…紛れもない悪魔召喚…。だが何かが違うような…)
陽介「そんなことよりだ…ライドウ!今は里中を追わねぇと!」バッ!
ライドウ「そうだな!」バッ!
…ダッダッダッダッダッ…
先を急ぐ二人の目の前に大きな扉が見えて来た…
陽介「はぁ…はぁ…まだ追い付かねぇのかよ…」ゼェゼェ…
ライドウ「無駄口を叩くと余計に息が切れるぞ…」
陽介「こんだけ走って息一つ乱れないって…どんな体してんだよ?」
千枝『…やめて!…やめてよぉ!あたしは…あたしは…』
千枝?『…隠しても無駄よ…可愛い雪子…あたしがいないと何にもできない雪子…』
千枝?『…友達面してつるんでたのも自分のちっぽけな自尊心を満足させる為なんだよねぇ?』
ライドウ「あれは…千枝の声か!!」
千枝『あんたなんか…あんたなんかァ…ッ!!』
陽介「やめろおぉ!里中ァ!!」
…―あたしじゃないッ!!!―…
…………………。
~ 雪子姫の城 大広間 ~
観音開きの大扉を開けて広間に入った二人の目には…
顔面蒼白でヘタリ込む千枝と、
今まさに異形のモノに姿を変えていくもう一人の千枝の姿が飛込んできた。
シャドウ千枝『我は影…真なる我…』ズズズ…
シャドウ千枝『アッハハハハハ…アナタ達にもキッツ~イお仕置きしてあげる!!』ドン
ライドウ「陽介!」ゴゴゴゴ…
陽介「あぁ!!」ゴゴゴゴ…
二人「「…来いッ!」」
― ボンッ! ―
― カッ! ―
ライドウ「モー・ショボー!」
陽介「ジライヤッ!!」
モー・ショボー「んっふふ~!早速だけど手加減しないよ?…死んじゃえっ!ふうぅ~~…ッ!!」ゴオオォォ!
少女は強烈な疾風を吐き出した!
シャドウ千枝『ギャアアァッ!!』
真空波に斬り刻まれた怪物は思わず体勢を崩す…。
陽介「チャンスだ!」
>yes
no
ライドウ「たたみかけるぞ!」カッ
陽介「あぁ!いくぜ!ライドウ!!」
身動きがとれない怪物にライドウとジライヤは猛烈なラッシュを追撃を仕掛けた!
シャドウ千枝『ぐッ!?…よくも…よくもおぉぉッ!!』
起き上がった怪物は壁を背にヘタリ込む千枝に向かって凄まじい冷気を放つ。
陽介「危ねぇ!里中ァ!」
……ドンッ!……
陽介「うああぁッ!」
陽介はジライヤを千枝の前に立たせ、彼女をかばった。
ライドウ「陽介!」
陽介「…俺なら…ぜぇ…ぜぇ…平気だ…ライドウは…アイツを…ッ!!」ガクッ
外傷こそ無いものの、陽介は胸を押さえてうずくまり、
脂汗を流しながら肩で荒い呼吸をしている。
ライドウ「それのどこが平気だ!?」
モー・ショボー「らいどー!ここはわたしにまかせて!」スッ…
モー・ショボーはライドウの胸元を指さした。
それに従ってライドウは外套の内側に目をやった…
そこにある複数の召喚管の内の一本が光っている…
ライドウ「…ティターニアの管が!?」
モー・ショボー「らいどー!」
ライドウ「分かった!」
ライドウは召喚管の封を解き放った。
放たれた幾重の光の筋が羽の生えた少女に集まっていく…
ライドウ「おい!…大丈夫なのか!?」
モー・ショボー「うんっ!平気だから見てて…えいっ」パア…
少女が陽介に向けて手をかざすと彼は穏やかな光に包まれた。
陽介「はぁはぁ…!?…あれ?…胸の痛みが??」スクッ…
苦しそうにうずくまっていた陽介は何事もなかったかのように立ち上がった。
ライドウ「それは…ティターニアの癒しの術か!?」
眠いのでこの辺でオチます…
モー・ショボー「どう?…すごいでしょ~!後でいっぱいよしよししてねっ!」ニパッ!
モー・ショボー「いたいのなおった?…よーすけ?」パタパタ…
陽介「あぁ!バッチリだぜ!…サンキューな!!」ニッ
ライドウ(モー・ショボーの属性が疾風から技芸に変わった!?)
シャドウ千枝『だったらもう一回…!』ズズッ…
陽介「させるかよ!…こいつはさっきのお返しだ!!…くらいやがれッ!!!」カッ!
再び千枝に襲いかかろうとする怪物の前に、陽介のジライヤが立ちはだかった…
ジライヤ「―ッ!」ビュン!
…ガッ…ドゴッ…バキィ!…
顔面…下っ腹…胸…顎…
ジライヤは風を纏った拳で執拗に怪物を殴りつける。
シャドウ千枝『あ゛あぁぁぁぁッ!!』
たまらず倒れ込んだ怪物は全身から、
ドロドロした影のようなモノを吹き出して元の姿に戻った…。
千枝「…!…は、花村…葛葉…くん…」ヨロ…
我に返った千枝は震える足を押さえながら立ち上がった…
ライドウ「大丈夫か?」
千枝「うん…ありがと…」
陽介「つかまれ…里中。」
千枝は二人の肩をかりて、もう一人の自分の前に立った。
千枝「あんたは…やっぱりあたしなんだよね…」
シャドウ千枝『…』コクッ
千枝「あたしってさ…汚いよね…」
千枝はもう一人の自分に向かって親友である雪子な対する思いを語り出した…
雪子とは幼い頃からのかけがえのない親友であること…
しかし、自分とは違い人見知りでおしとやかで女らしく、
その上家柄も良い彼女に対して、
いつからか嫉妬するようになったこと…
そして、最近ではそんな彼女の保護者を気取ってどことなく優越感に浸っていたことを。
千枝「あたしってホント嫌な女だよね…どの口で雪子に親友だ、なんて言ってんだか…」ハァー…
陽介「里中…」
ライドウ「人と人との関係など所詮そんなものだ…良い方へも悪い方へも簡単に移りゆく…」
千枝「……。」
ライドウ「だが、変わりゆく中で確かに変わらぬものもある…」
ライドウ「優越感に浸って…それをひどく後ろめたく思っていたのは…」
ライドウ「今も変わらず彼女を大切だと思っているからに他ならないのではないか?」
千枝「…!!」
ライドウ「その証拠にお前は彼女の為に危険も省みず助けようとした…」
ライドウ「千枝…お前には彼女の親友を名乗る資格がある!」
千枝「葛葉君…」ウルウル…
陽介「ライドウ…」
千枝は涙が溜った目を隠しもせず今一度自分の影と向き合った。
千枝「…そうだよね…雪子の親友だっていうなら…あんたから目を反らしちゃダメだよね!」
千枝「あんたは…あたしの一部だ…」スッ
シャドウ千枝『』ニコ
千枝に抱き締められた彼女の影は穏やかな微笑みを残して、
あるべき場所へと還った…
千枝「さ~て…んじゃあこのまま雪子を助けに…!?…」フラッ…
陽介「おっと…無理すんなって!」ガシッ!
ライドウ「そうだな…一旦退きかえした方が良いだろう…」
一同は疲労が激しい千枝を連れて退却することにした…
ライドウは二人と雪子の救出を約束し、
別れ際にそれぞれの連絡先を交換して家路に着いた…
そして白鐘邸で直斗と互いの捜査状況の確認をして自室へ向かった…
~ 白鐘邸 ライドウ自室 ~
ライドウ「お前のあの力はなんだったんだ?」
モー・ショボー「むむっ?らいどーってば珍しくわたしに興味深々?…じゃあなでなでしてくれたら教たげるっ!」キラキラ…
ライドウ「…」ナデナデ…
モー・ショボー「えへへ///…実はわたしもよくわかりませんっ!」フンス!
ライドウ「あのなぁ…」ペシッ
モー・ショボー「うぅ…、ほんとに良くわかんないんだもん…ただ…」
ライドウ「…ただ?」
モー・ショボー「何かこう…声みたいなのが聞こえたの…」
ライドウ「声…」
モー・ショボー「そう…誰かの声。」
ライドウ(確か陽介も似たような事を言っていたな…)
気になる事が増えたものの今日は体をゆっくり休める事にした。
― 翌日 午後 ―
~ ジュネス フードコート ~
そこにライドウ達の姿があった。
ライドウ「では千枝の親友を助けに行くか…」ガタッ
陽介「あぁ!」ガタッ
千枝「うん!…行こっ!」ガタッ
三人が席をたとうとしたその時…
モー・ショボー「ちょっと待って!らいどー!」ボンッ!
三人の前に唐突に悪魔の少女が現れた。
ライドウ「一般人には見えないとは言え、管から勝手に出てくるな…」
モー・ショボー「昨日、いいわすれてたことがあるの!」
ライドウ「言い忘れていたこと…?」
モー・ショボー「うん!…ちょっと見てて!…それっ!」ボワンッ!
少女は煙に包まれた。
煙が消えると少女は短い黒髪になった。…しかしそれ以外の変化は無い…
ライドウ「これは…技芸属の力か!?」
モー・ショボー「うんっ!この姿だと、こんな事もできるよ!」スッ…
…トテトテ…テクテク…
モー・ショボー「こんにちわっ!」ニパッ
おばあさん「あらあら…お嬢ちゃん、こんにちは!」ニコッ
ライドウ・陽介「「…!?」」
千枝「おぉー!…何か微笑ましいねぇ~」ホノボノ…
ライドウ「なるほど…その姿だと人に見えるようになるんだな…」
モー・ショボー「そうだよ!…違うものに化ける“擬態”はさすがにできないけどね~」ボンッ!
人目につかないように注意しながら少女は元の姿に戻った…。
千枝「よく分からんけど、なんかすっごいね!」ナデナデ…
モー・ショボー「えへへ…もっとほめてほめて!」パタパタ…
ライドウ「すっかり話がそれたが…そろそろ行くぞ…」
千枝「おー!!」
~ テレビ内 雪子姫の城 入り口 ~
クマ「はい、これ!チエチャンの分も作ったクマ~!」スッ
千枝は黄色い眼鏡を受け取った。
…スチャッ!…
千枝「ありがと!…おぉ~、何これ!景色が良く見える!!」キョロキョロ…
クマ「それは良かったクマ!…でもセンセーは相変わらずクマのメガネかけてくれないクマね…」シュン…
ライドウ「すまんな…どうも眼鏡をかけると目が疲れるんだ…」
ライドウ「それに俺はその眼鏡がなくても集中すれば見えるからな…」
クマ「それなら仕方ないクマね…クマはここで皆の帰りを待ってるクマ!」
陽介「さて、と!…んじゃあ天城のところに行くか!」
~ 雪子姫の城 f5回廊 ~
三人は雪子の元へ急いでいた。
クマ『気を付けて!何かが近づいてるクマ!』
ライドウ「この声はクマか?」
クマ『クマもみんなの力になるクマ!それよりシャドウが来るクマよ…センセー!!』
クマの言葉通り、回廊の壁から複数の怪物…シャドウが姿を現した。
陽介「来やがったな…」スッ…
ライドウ「…」チャキ…
千枝「二人とも…あたしに任せて…」ゴゴゴ…
千枝の手には陽介の時と同様にカードが握られている…
― カッ! ―
千枝「来て!…トモエ!」
トモエ「…!」
…ヒュッ!…ズバズバッ!…
千枝に呼び出されたトモエはナギナタでシャドウ達を撃退した。
クマ『チエチャンすごいクマ~!』
陽介「里中…お前!?」
千枝「どう?これがあたしの力よ!」ニッ
ライドウ「ペルソナ…か」
ライドウ(…この世界で自分と向き合った者には異能の力が身につくのか…??)
千枝「それより急ぐよ!…雪子が待ってる!!」ダダッ…
陽介「…だな!」ダダダッ…
ライドウ「…」ダダッ…
~ 雪子姫の城 最上階 ~
モー・ショボー「だいぶ奥まできたね~」パタパタ…
クマ『この先に人の気配がするクマ!』
ライドウ「この扉の向こうか…」
クマ『…それと、近くに似たような気配がもうひとつあるクマね』
陽介「…!…それってまさか…もうひとりの天城も一緒ってことか!?」
千枝「そんな…雪子ッ!!」バッ
千枝は目の前の大扉を開け放った。
~ 最上階 大広間 ~
そこにはドレス姿と和服姿の少女が対峙している…
シャドウ雪子『アハハハ!…何が伝統よ!家柄よ!あんな旅館なんて、クソくらえなのよォッ!』
雪子「…!!…なんてこと!!」
千枝「雪子!!」バッ
雪子「千枝!?」
陽介「天城!…あれは…やっぱりもう一人の!!」
モー・ショボー「ねぇらいどー…今のうちに殺っちゃう?」ギラッ
ライドウ「待て…」スッ
シャドウ雪子『ウフフフ…私を連れだしてくれる王子様が三人も…』ニヤ…
千枝「三人って…あたし女なんだけど…」
シャドウ雪子『いいえ…千枝は私の王子様…』
雪子「…やめて!」
シャドウ雪子『千枝は私にないものいっぱい持ってて…』
シャドウ雪子『な~んにもできない私をいつだって守ってくれる…』
雪子「いいかげんなこと言わないで!」
ライドウ「…。」
シャドウ雪子「隠しても無駄よ…私は、あなただもの…」
雪子「違うわ!…あなたなんて…あなたなんて…ッ!!」
陽介「おい!天城!!」
千枝「…!…ダメ!雪子ッ!!」バッ!
―…私じゃないッ!!…―
…………………。
シャドウ雪子『キャハハハハ…そう!…私はァッ!…私よ!!!』ズズズズ…
もう一人の雪子は黒い靄を取り込んでいく…
陽介「やっぱこうなっちまうのかよ!?」ザッ
ライドウ「話し合いでの解決は失敗か…」スッ
そして赤い大きな鳥の化け物に姿を変えた!
シャドウ雪子『我は影…真なる我…』ズズズズズ…
シャドウ雪子『アナタ達はワタシにふさわしい王子様か試してあげる!!』ドン
雪子「千枝!私…私!!」ガチガチ…
千枝「いいの、雪子…」ニッ
千枝は動揺のあまり震えている雪子の肩を抱いた…
千枝「あたしもね…雪子に言わなきゃいけないことがあって…ここまで来たの…」
そして巨大な鳥の姿になったもう一人の雪子に向き直り睨みつけた。
千枝「だからまずは…ここでアンタを止める!」キッ!
ライドウ「いくぞ…」チャキ…
シャドウ雪子『…フフフ…』バサッ
怪物がその羽を広げ、小さな王子のような姿のシャドウを呼び出した…
小さなシャドウ「…」
ライドウ達はそちらには目をくれず鳥の怪物に攻撃を集中させた…
小さなシャドウ「ギヒヒ…ッ」パァ…
しかし、呼び出された小さなシャドウが怪物の傷を癒してしまう!
千枝「もう!…なんなのよ!アイツ!!」キッ!
陽介「まずはあっちをなんとかしねぇと…!」ダダダ゙ッ!
シャドウ雪子『そう簡単にやらせないわ!…まとめて焼き払ってあげる!!』バサッ!バサッ!
赤い鳥の化け物は自身の羽をはばたかせた…
巻きおこった突風に乗って無数の紅色に輝く羽が飛んでくる…
それらは部屋の壁や床、天井に触れると熱波を伴った爆ぜた。
千枝「きゃあぁッ!」
陽介「うおッ!!」
ライドウとモー・ショボーはそれを難無く避けるもジライヤとトモエは直撃を受けた。
ライドウ「…くッ!」
ライドウは踵を返し苦しそうな二人に駆け寄った。
シャドウ雪子「次は耐えられるかしら…?」バサ…
怪物は再び羽をはばたかせる…
千枝「それがどうしたってのよ!!」ダッ!
迫り来る無数の紅蓮の煌めきに向かって千枝は走り出す…
ライドウ「待て!千枝!!……ッ!?…これは……、モー・ショボー!!」
モー・ショボー「ふぇ?」
ライドウはふいに胸元から魔力の反応を感じとり、
外套の中で輝きを取り戻した紅蓮属ヒノカグツチの管の封を解いた。
管から解き放たれた光は悪魔の少女に集まっていく…。
モー・ショボー「これは…。あ~、そういうことかぁ…わかったよ!らいどー!」カッ
光を纏ったモー・ショボーが何やら詠唱を始めるとライドウ達は赤色の障壁に包まれた。
再び嵐のような爆発の連鎖がライドウ達を襲ったが、
彼等を包む障壁が熱波を相殺した。
その間にも千枝は怪物の元へ全力で疾走する。
小さなシャドウ「ギヒヒ…」スッ
そんな千枝の前に主を守るかのように小さなシャドウが踊り出た。
千枝「邪魔ァ…すんなあァッ!!」
千枝は飛び出してきたシャドウに対して駆け抜けざまに全体重をのせた強烈な回し蹴りをくらわせた!
小さなシャドウ「…ッ!??」
そしてそのままシャドウの腹にめり込んだ足を振り抜くと、
小さなシャドウは吹き飛ばされて壁に激突し、動かなくなった。
シャドウ雪子『やるわね…でもまだまだよッ…!』バッ!
怪物は動きが止まった千枝に火球を放った。
千枝「…!!!」
千枝は思わず顔を伏せる…。
だが、放たれた火球は千枝に触れることはなかった。
後ろから追い付いたライドウが刀で斬り払ったからだ。
ライドウ「無茶しすぎだ…」
千枝「葛葉君…」
ライドウ「だがよくやった…後は任せておけ…」チャキ…
…ドン!…ドドドドンッ!…
シャドウ雪子『きゃあッ!』ドサ
ライドウの銃撃を受けた怪物は体勢を崩して床に叩きつけられた。
彼は、起き上がろうと必死でもがく怪物に刀を振り下ろす…
シャドウ雪子『嫌ああぁぁぁぁぁッ!!!』
刀に胸を貫かれたもう一人の雪子は、
取り込んだ影を撒き散らしながら元の姿に戻っていった。
雪子に迫った危機は去り、しばらくすると、
落ち着きをとり戻した彼女は皆に頭を下げた。
雪子「本当にありがとう…千枝、花村君……」
そこまで言って彼女の中で当然の疑問が浮かび上がってきた…
雪子「その…あなたは?」
陽介「あ~、そういやそうだったな…天城、こいつは…」
ライドウ「俺は葛葉ライドウ…おとといから八十神高校に通っている…」
千枝「葛葉君は雪子が休んでる時に転校してきたの!…ちなみにあたしらと同じクラスだよ!」
雪子「そうだったんだ…ありがとね…葛葉君」
ライドウ「あぁ…それより千枝…雪子に話したい事があるのだろう?」
千枝「う…うん…。」
なんとなく気恥ずかしそうにしている千枝を見てライドウは扉に向かって歩き出した。
ライドウ「二人でゆっくり話すといい…俺達は扉の外で待っている」
そう言い残して彼は広間を後にした。
少し間をおいて陽介もライドウに続いて広間から出ていった。
…ガチャ…ギィ~…バタン…
千枝「お待たせ~!」ニッ
雪子「ごめんね二人とも…遅くなって…」オズオズ…
陽介「や~っと出て来たか…こっちゃあ待ちくたび…」
ライドウ「構わん…それほど大事な話だったんだろ…」
雪子「葛葉君…」
……スタスタスタ……
ライドウは腕組みを解いて階段の方へ向かっていく…
千枝「あ…葛葉君…待って!」アセアセ…
ライドウ「…先行して雑魚を掃除してくる…お前達は疲れているだろうからな…」
ライドウは振り返らずそう答え、漆黒の外套をたなびかせながら階段を下った。
雪子「…葛葉君ってなんか…かっこいいね」
千枝「そうだね~…“誰かさん”と違って大人な感じだしねぇ」ジトー
陽介「な、何だよ…二人してこっち見て…」
千枝「べっつに~」ニヤニヤ…
陽介「…ったく!…ちょっと休憩したら俺らも入口に向かうぞ!」
千枝「はいよ~。」
千枝「花村も…ありがとね!葛葉君を説得して、一緒に来てくれて…」
陽介「…おう…」
~ テレビ内 入口広間 ~
クマ「みんな無事で良かったクマ!…これはクマからのささやかなプレゼントクマ!!」スッ
陽介「おい!ちょっと待て!お前それ…どう見ても鼻眼鏡だろ!!」
雪子「…どう?似合う?」スチャ
千枝「かけんのかよ!?」ズビシ!
雪子「面白いよ、これ…!…そうだ!葛葉君…これかけてみて」スッ…
千枝「ゆ、雪子!?…葛葉君…嫌だったら別にかけなくてもいいからね?」アセアセ
ライドウ「…レンズがない…伊達眼鏡か…」スチャ…キリッ…
陽介「気になるとこそこかよ!?」
陽介「ってか鼻眼鏡かけても伊達男だなお前は…」
千枝「あはは…葛葉君はモトがいいからねぇ~」
雪子「伊達眼鏡の伊達男…プッ…プフ…あはははははは!」
陽介「あ、天城?……何これ??」
千枝「出た!!雪子の大笑い!」
ライドウ「…。」
ライドウ達は雪子を救出した後、ジュネスのフードコートで休憩してから、
彼女を家まで送ることにした。
― 夕方 ―
雪子の実家である温泉旅館に着いたライドウ達には、彼女を助けてくれた礼として、
女将から懐石料理がふるまわれた上に温泉にも入らせてもらった。
― 夜 ―
~ 八十稲羽 商店街 ~
陽介「じゃあ俺もそろそろ帰るわ」
ライドウ「そうだな…すっかり遅くなってしまった。」
ライドウはphsを取り出し時間を確認した。
画面右上に10:17と表示されている…
千枝「うん!二人ともまたね~」
ライドウは二人と別れて家路についた。
~ 八十稲羽 河川敷き ~
モー・ショボー「まっ暗だね~…」パタパタ…
ライドウ「あぁ…」
ライドウはふと夜空を見上げた。
ライドウ「今日は新月か…」
???「左様…今宵は新月…このような夜に、我に出会ったことを幸運に思え…人間…」
ライドウの何気無い呟きに対して背後から返事が返ってきた。
ライドウ「…何者だ?…姿を見せろ。」
ライドウが振り向くと声の主は暗闇の中からその姿を現した。
モー・ショボー「ひぃ!…死神!?」ゾクッ!
ライドウ「貴様…ホワイトライダー…!」
ホワイトライダー「ほう…我を知っているか…いかにも…我は魔神ホワイトライダー…」
体中に目玉が付いている不気味な白馬に跨った髑髏の騎士は手にしている剣を掲げた!
ホワイトライダー「我が使命に基づきお前のその命…刈り取ってくれようぞ…」ジャキッ!
ホワイトライダー「だが我も鬼ではない…お前が連れているその悪魔の命を差し出すと言うなら…見逃してやらんでもないぞ…?」
モー・ショボー「…!…ら、らいどー…」ガタガタ…
ホワイトライダー「お前にとって悪い提案ではあるまい…」
どうぞ…。
〉断る!
ライドウ「生憎だが…俺は自分のモノを簡単に他人に触らせたりしないタチでな…」
ライドウ「…ましてやこいつの命は貴様にくれてやるほど安いものではないッ…!」
モー・ショボー「らいどー…」ウルウル…
ライドウは恐怖に震える少女の前に悠然と進み出た。
ホワイトライダー「…愚かな…」
ライドウ「愚か者は貴様の方だ…」
ホワイトライダー「…何?」
ホワイトライダー対策…虫かごとトリモチか?
支援
ライドウ「貴様は力の差というものも分からぬのか…」
ライドウは学生帽を深くかぶり直して白い死神ににじり寄る…
ホワイトライダー「…ッ!!」
目の前の男の学生帽から覗くその双眸は、尋常ではない色をたたえている…
ライドウ「死にたいのならかかって来い…その安っぽい命、貰い受けてやろう…」
ライドウ「命が惜しいのならここから去れ…背を向ける者を追ったりはしない…」
ライドウ「さぁ…好きな方を選べ…」ゴゴゴ…
ライドウは“好きな方を選べ”と言ったが死神に選択の余地は無かった…
ホワイトライダー「……。」スッ…
黒ずくめの男の常軌を逸した迫力に負けた死神は無言で去った。
死神が去ると辺りを覆う暗闇が少し明るくなった…
>>115
運喰い虫出すと自然とシナドが絡んできて考えてたストーリーが変ってしまうから却下したんだ(泣)
…悪しからず…
モー・ショボー「ゔえぇ~ん!ごわがったよ゙~!らいどー!!」ダキツキッ…ギュ…
ライドウは泣きじゃくる少女の頭を撫でながら落ち着くのを待った。
……………。
ライドウ「落ち着いたか?」
モー・ショボー「うん!…ありがとっ!」ニコッ
ライドウ「では帰るか…」ザッザッザッ…
モー・ショボー「うん!」ヒョコヒョコ…
少女は夜道を歩き出したライドウに従い後を追う。
モー・ショボー(えへぇ…“俺のモノ”って言われちった…///)イヤンイヤン
ライドウ「何か勘違いしているようだな…」
モー・ショボー「ふぇ!?読心術!?」ギク!
ライドウ「そうではないがお前の考えていそうな事くらい大体分かる…」
モー・ショボー「そっか~…らいど―ってばそんなにわたしのこと大事にしてくれてるんだ~!」キャッキャッ
ライドウ「………」ザッザッザッ…
モー・ショボー「あ~ん!まってよらいどー!!」パタパタ…
~ 白鐘邸 ライドウ自室 ~
ゴウト「何!?魔人と遇っただと!?」
ライドウ「あぁ…何らかの要因でこの土地の運気が低下しているのかも知れん…」
ゴウト「ふむ…この八十稲羽の人々に特に変わった様子は見られないが…」
ライドウ「ではなぜ魔人が…」
モー・ショボー「……」
ゴウト「また厄介事が増えたな…」クシクシ…
ライドウ「そうだな…やはりこの事件、一筋縄ではいかんようだ。」
モー・ショボー「………」
ゴウト「まぁ今は考えても仕方あるまい。後々調べるとしよう…今日はもう休め。」
ライドウ「あぁ…そうさせてもらう」
ゴウト「ほれ!小娘、お前もだ…」
モー・ショボー「…は~い」ボンッ!
今日はここまでにしときます…。
― 翌日 日曜日 朝 ―
~ ジュネス 衣類品売り場 ~
現代社会において、普段から上下学生服に外套の全身黒ずくめでは、
探偵として流石に目立ってしまうという直斗の指摘を受け、
ライドウは渋々、普段着用の服を買うことにしたのた。
ライドウ「どうだ?」ガチャ…
直斗「…まぁ、これなら…いいんじゃないですか…」
モー・ショボー「うんうん!…らいどーは何着てもカッコイイね!」キラキラ…
試着室から現れたライドウは学ランのように襟の高いミリタリージャケットとポケットの多いカーゴパンツに身を包んでいる。
ライドウ「この服なら収納が多くて何かと便利だ。」
ようやく決まった普段着に満足気なライドウだが、
それらの色は残念な程に黒一色だった…
直斗(黒から変えるつもりはないんですね…)
…あと学生帽を脱ぐ気もないらしい…。
直斗はこの日、ライドウの妙なこだわりと頑固な一面を知った…。
― 同日 午後 ―
~ 八十稲羽 商店街 ~
買い物をして直斗と別れた後、ライドウはゴウトを伴って町の様子を探っていた。
ゴウト「やはり変わった様子はない…魔人の出現は偶然…か?」
ライドウ「だといいんだが…」
ゴウト「ふむ……。…ん?…あれは…。」
ライドウはゴウトの視線の先に目を向けた。
ゴウト「なぁライドウよ…何故だろうな…我は別の意味で嫌な予感がしてならぬのだが…」
ライドウ「それは奇遇だな…俺もそんな気がしてならない…」
その嫌な予感の元凶はやけにカクカクとした動きで二人に近付いてくる…
メイド「あのー、すみません、うぉまえらに道をお尋ねしやがりたいのですが…」
ゴウト「逆に聞きたいのだが、…お前、ヴィクトルのところのイッポンダタラであるまいな?」
メイド?「…!…うぉ…うぉ…うぉれに中の人などいなぁアァい!!」クワッ!
メイド?「正体バレは強制悪魔合体の刑イィッ!!ヴィクトルいけない愛のムチぃいぃ!!!」ガクガク…ブルブル…
ゴウト(やはりか…大方あのマッドサイエンティストの妙な実験に付き合わされてこの時代に飛ばされたといったところか…)ヤレヤレ…
ライドウ「どうでもいいが、擬態の術が解けかけているぞ…」ジー
メイド?「うぉ…うぉれを見るなァ!!…穴が開いてしまうぅ!!!…汁が…穴から汁があぁぁあああ!!!」アセアセ…
ライドウ「…」
とりあえずこの怪しい人物が落ち着くのを待つと、鍛冶屋を探していると言うので、
商店街の金属細工店“だいだら.”を紹介してやった…
メイド?「うぉまえらいいヤツだなぁ!!…しかしうぉれはなぜこんな格好を強いられなければならないぃぃぃッ!!!」
ゴウト「…嫌なら自分でやめればいいものを…」
ライドウ「案外あの格好を気にいっているのかもしれんな…」
ゴウト「!?」
― 数日後 四月末 朝 ―
~ 八十神高校 二年教室 ~
…ガラッ……
千枝「…!…雪子!」ガタッ
陽介「天城!」
雪子「お…おはよう…心配かけてごめんね」
事件の後しばらく体調を崩していた雪子が登校してきた。
ライドウ「気にするな…それより元気そうでなによりだ…」
雪子「葛葉くん…」
千枝「あっ!そうだ!雪子…あのね…」スッ…
諸岡「一時間目の前授業を始めるぞぉ~…みんな席に着きなさい!」ガラッ
千枝「もぅ!…タイミング悪いなぁ…」ボソ…
陽介「シッ!モロキンに聞こえるぞ…!」スッ…ガタッ…
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