鳴上「月光館学園か」有里「八十稲羽?」(1000)

・ペルソナ3、ペルソナ4のクロスSSです。

・原作との設定矛盾がいくつか出るかも。

・番長は鳴上悠、キタローは有里湊。

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>すっかり春めいて暖かい……。

>電車はゴトゴトと進んでいく。

鳴上「……結局、一緒に過ごせたのは一週間くらいだったな」

>八十稲羽での生活が終わり、一年ぶりに再会した両親は、また海外へ飛び立って行った。

>両親が次の転校先として提示したパンフレットには、いつか見た学校名が大きく記されていた。

鳴上「月光館学園か」


【2012/3/某日 晴れ】


『……次は、巌戸台、巌戸台です。モノレールご利用の方は……』

鳴上「ここか」

>人が溢れている。

鳴上「やっぱり八十稲羽とは違うな……」

>改札を抜け、駅を出る。

>まずは寮に向かわなければ……。

鳴上「……こっち、か」

>地図の通り進む。

>しばらく歩くと、それらしい建物が見えてきた。

鳴上「思っていたよりずっと立派だな」

>寮を眺めていると、荷物が歩いてきた。

鳴上「ダンボールが歩いている」

鳴上「……都会だな」

?「……あの」

>荷物が話しかけてきた。

?「すみませんが、そこ、退いてもらえますか?あ、それともうちの寮に何かご用でしょうか?」

>荷物の向こうに小柄な少年がいる。

>中学生くらいだろうか。外ハネの茶髪が印象深い。

鳴上「あ、入寮予定の者なんだが、手続きとかはどこですれば」

?「そうなんですか?えーと、手続きなら入ってすぐに受付がありますからそこで出来ると思いますよ!では!」

>少年は大きな荷物を持ったまま寮の中へ入っていった。

>彼も寮生だろうか。

>……とりあえず、手続きを済ませよう。

鳴上「ふぅ」

>一通りの手続きを終えた後、部屋をあてがわれた。

>……やはり思ったより立派だ。

鳴上「流石都会」

>今日は寮内の把握をしておこう。

>部屋を出て玄関前に行くと、荷物の少年がいた

?「あ、また会いましたね。これからよろしくお願いします、先輩」

>少年は笑顔で挨拶してくれた。

鳴上「ああ、よろしく。君は……?」

?「僕は月光館学園中等科の天田乾って言います。えと、高等科の先輩ですよね?」

鳴上「高等科三年に転入になる、鳴上悠だ。天田も寮生なのか?」

天田「ええ、まあ。鳴上先輩はこれから何か予定でも?」

鳴上「いや、寮内を見て回ろうかと思っていたんだが」

天田「そうですか。良ければ案内しますよ?」

鳴上「良いのか?」

天田「ええ、ちょうど用事も終わりましたし。って言っても大した物はありませんけど……」

>天田に寮内を簡単に案内してもらった。

>外から見たより広く感じる。

>浴場、ラウンジ……。

天田「……っと、こんな所ですね。どうですか?」

鳴上「立派な寮だな」

天田「そうでしょうか?どこもこんなものだと思いますけど……って、他は知らないんですけど」

>天田は笑っている。

天田「転入ってことは、先輩はこの街に来るのは初めてなんですか?」

鳴上「いや、以前一度来たことはある。前の学校の時に」

天田「あ、そうですか。せっかくだから春休みの内に街を案内しようかと思ったんですけど」

>天田は少し残念そうだ。

鳴上「良ければ、頼めるか」

天田「わ、本当ですか?じゃあ、しばらくは荷解きとかいろいろあるでしょうから、今週末でどうです?」

>天田と街を回る約束をした。

>……嬉しそうだ。

鳴上「どうして初対面の俺にそんなにしてくれるんだ?」

>天田は何故か驚いたような顔をした。

天田「あれ、なんででしょう。……何となく、先輩って昔から知ってるような気がするんです。誰かに似てるのかな。不思議ですけど」

>天田は照れたように笑っている。

天田「じゃあ、週末部屋まで行きます。今日はお疲れでしょうから、早めに休んだ方がいいですよ。それじゃ!」

>確かに、少し疲れている。

>部屋に帰って、今日はもう寝よう。

>天田乾と知り合いになった。



【2012/3/31(土) 晴れ】


天田「鳴上先輩、天田でーす。起きてますかー?」

>扉を叩く音がする。

>約束していた町内案内をしてくれるらしい。

鳴上「おはよう。いい天気だな」

天田「ですね。えっと、どうしましょう」

鳴上「そうだな、まずはいろいろ買いたい物もあるから……」

天田「あ、だったら商店街ですね」

>天田と商店街を回った。

昼過ぎ

天田「ふぅ……ちょっと疲れましたね」

>あれだけ張り切って案内してくれれば、疲れもするだろう。

天田「何か食べますか?えっと、ファーストフード大丈夫ですか?」

鳴上「ああ、好きだ」

天田「じゃあワイルダックでいいですかね。こっちです」


【ワイルダック・バーガー店内】


天田「思ったより空いてて良かったですね。先輩何にしました?」

鳴上「面白そうな新メニューがあったからそれにした」

天田「……すごい色してますね、それ」

>天田とハンバーガーを食べた。

天田「商店街はこんな所です。後はポロニアンモールとかだと色々遊べますよ」

鳴上「なるほど……しかし助かった。ありがとう、天田」

天田「いえいえ、全然です。午後からどうしましょうか。お疲れならもう引き上げます?」

鳴上「そうだな……今日は帰ろう。ポロニアンモールはまた明日でいいか?」

天田「そうですね、僕も疲れちゃいました。じゃあ、明日はポロニアンモール案内ってことで」

>天田と二人で寮に帰った。

>天田と少し仲良くなった気がする。

鳴上「ふぅ」

>慣れない土地を歩きまわって少し疲れた。

>早めに寝る事にしよう……。



【同日 23:59】


>目を覚ますと、まだ夜だった。

>今日買った時計を見る。

>どうやら深夜に目が覚めてしまったようだ。

>時刻はそろそろ0時を迎えようとしている。

鳴上「妙な胸騒ぎがする」

カチッ

>時計の針の音がした。

>日付が変わったようだ。

鳴上「!?」

>凄まじい違和感が辺りを包んでいる。

鳴上「これは……まるでテレビの中みたいだ」

>嫌な予感がする……。

>窓の外は青緑に染まっている。

>月以外に光る物が無いようだ。

鳴上「そうだ、他の生徒は……」

>部屋の扉を開ける。

>隣室の扉をノックした。

>……反応がない。

鳴上「鍵は……かかってないな」

>ノブを回す。

鳴上「なんだ、これは……!?」

>室内にはあるはずの生徒の姿は無かった。

>ただ……棺桶のようなオブジェが一つ。

鳴上「他の部屋はどうなんだろう」

>自分の立てる音以外無音の世界に、もうひとつ足音が聞こえる事に気付く。

>どうやら走っているようだ。

鳴上「何者だ……」

>警戒態勢を取る。

>足音のする方へ向かう……。

>相手も足音を潜めた。

>……近付いて来る。

天田「!」

鳴上「!」

>足音の正体は天田だった。

鳴上「天田、無事だったか!」

天田「先輩……先輩がなんで?」

>天田は何かに驚いているようだ。

鳴上「どうかしたのか?」

天田「いえ、なんでも……っ先輩!!」

>天田に突き飛ばされた。

鳴上「っ……どうし……!?」

>さっきまで立っていた位置に黒い水溜りができている。

>……水、ではない。

鳴上「影だ……!」

>仮面を着けた影が盛り上がり、物理的な形を為そうとしている。

天田「先輩は下がっていてください、ここは僕が!」

>天田はポケットから拳銃のような物を取り出した。

鳴上「天田!危ない!」

>天田の真上、天井から同じように黒い影が染み出してきている!

天田「えっ……あっ!」

>上から落ちてきた影を躱したものの、持っていた拳銃を弾かれてしまった。

>拳銃が廊下を滑り足に当たる。

天田「先輩!それを僕に!」

>誰かの声が聞こえる。

>これは、シャドウだ。

>シャドウを倒せるのは……。

「ペ」

「ル」

「ソ」

「ナ」

>こめかみに銃を当て、引鉄を……引いた。

鳴上「イザナギ!」

>人型のエネルギーが心から湧き上がる。

>ペルソナ『イザナギ』を召喚した。

天田「先輩も……」

>イザナギが剣を振るい、シャドウは真っ二つに切り裂かれた。

天田「ペルソナ使い……」

>返す刀でもう一体も切り裂いた。

鳴上「ひとまず、これで良いか……!?」

>何故か、意識が遠のく……。

>とにかくシャドウは倒せたようだ。しばらくは安全だろう……。

天田「先輩?先輩!せんぱ……」

>天田の声が遠くなる。

>…………。


【???】


?「おやおや、またあなたでしたか」

>この声は……。

イゴール「ようこそ、我がベルベットルームへ……などという口上は最早不要ですかな」

>気が付くと、何度も通ったベルベットルームにいた。

>イゴールの隣には、見知らぬ女性が立っている。

鳴上「マーガレットじゃ、無い?」

>女性は会釈した。

?「エリザベスと申します。マーガレットは私の姉にあたります。以後、お見知りおきを」

>よく見るとベルベットルームの様子もいつもと違う。

鳴上「エレベーター……か?」

イゴール「やはり、と言いますか。お客様は随分と奇妙な運命を辿られるようだ。ここに来られたということは……わかりますな?」

>イゴールはカードをシャッフルしながら言った。

鳴上「俺の、ワイルドの力……」

エリザベス「それを振るう機会が訪れたという事でございます。お客様はこれより、新たな地で新たな絆を紡ぐ事になるでしょう。」

鳴上「コミュニティ……絆の力か」

エリザベス「左様でございます。既に一人、心を繋いだ方がいらっしゃる様子……」

>『No.05 法王 天田乾』のコミュを手に入れた。

>『No.05 法王 天田乾』のランクが1になった。

イゴール「この地でかつて起きた事……そして、あなたの身にかつて起きた事……よくよく変わった星の下におられる。いや、今回に限って言えば……」

>イゴールがタロットカードをめくる。

イゴール「あなただけが数奇なる者とも言い難いかもしれませんな」

>13……死神のカードだ。

イゴール「さて、そろそろ目を覚まされた方が良い。事は既に始まっている。では、これをお持ちください」

>イゴールが何かを差し伸べる。

>契約者の鍵を手に入れた。

イゴール「再び見える日をお待ちしておりますぞ」

エリザベス「……では、上へ参ります」

>エレベーターが上昇を始める。

>エリザベスと知り合いになった。

>…………。



【2012/4/5(木) 曇り】


>目覚めると、白い天井が目に入った。

>ここはどこだろう。寮とも違うようだ。

看護婦「あら?あらあら大変。先生、先生?」

>今のは……どうやらここは病院らしい。

>医師が慌ててやってきた。

医師「ふむ……異常ない。ただの過労のようだね。引っ越してすぐで疲れていたんだろう」

>医師はにこりと微笑んだ。

医師「まあ今日一日は様子を見て、それから寮に帰りなさい。明日から学校だろう?良いタイミングで目覚めたね」

>学校……今日は何日だろう。

看護婦「今日は4月5日。あなたが運び込まれたのが4月1日だから、丸々4日間目を覚まさなかったのよ?」

鳴上「そんなに、ですか」

医師「まだ目が覚めたばかりなんだから、無理に会話しなくてもいいよ。じゃあ、後でまた検査に来ますから、ゆっくりしておいて」

>医師と看護婦は連れ立って出ていった。

>入れ替わりに見覚えのある顔が入ってくる。

天田「やっぱり。先輩、起きたんですね。僕のこと覚えてますか?」

鳴上「天田だろ。見舞いにきてくれたのか」

>天田は笑って頷いた。

天田「と、言っても何も持ってきてませんが……。さて、先輩。意識ははっきりしてますか?」

>ベッド脇の椅子に座ると天田は真剣な顔になった。

鳴上「体はだるいが頭は大丈夫だ。どうかしたのか」

天田「良かった。先輩にお知らせがあります。先輩の部屋が移動になりました。これからはあの男子寮ではなく、分寮に寝泊まりしてもらいます」

鳴上「分寮?聞いた事が無いけど、そんな物があるのか」

天田「ええ、封鎖されていましたから。今日までに清掃も済んでいるはずです。」

鳴上「なぜ移動に?」

天田「……先輩は、あの夜の出来事を覚えていますか?」

鳴上「あの夜……俺が、倒れた時か」

天田「はい。原因は、あの現象です。詳しくは、分寮に移動してからになりますが……」

鳴上「わかった。分寮へはどう行けばいい」

天田「あの人が迎えをよこすと言っていたので、恐らくは今夜あたり迎えの人が来ると思います」

鳴上「そうか……ふぅ」

天田「やっぱりまだお疲れみたいですね。お話は寮で。では、失礼します」

>天田は一つ頭を下げると病室を出ていった。

>……眠い。

>体がかなり鈍っているのを感じる。

>少し眠ろう。



【同日 夕方】


?「失礼します。鳴上悠というのはあなたですか?」

>名前を呼ばれて目が覚めた。

鳴上「はい、俺ですが」

>金髪の女性が病室の入り口に立っている。

?「私はアイギスと言います。鳴上さんをお迎えにきました」

>彼女が天田の言っていた迎えだろうか。

アイギス「鳴上さん、歩けますか?」

>体を起こしてみる……。

鳴上「なんとか。長距離ですか?」

アイギス「いえ、それほどでもありません。どうしても辛いようでしたら……」

鳴上「いや、なら大丈夫です。行きましょう」

アイギス「それでは、ついてきてください」

>そう言いながら、こちらを凝視している……。

鳴上「あの、何か?」

アイギス「あっ、いえ、何でもありません。ごめんなさい。えっと、では、行きましょう」

>何故か動揺している。

>アイギスと共に分寮に向かった。

アイギス「……」

鳴上「……」

アイギス「あの」

鳴上「……はい」

アイギス「あっ……なんでもナイ、です」

>空気が重い……。

>快く思われていないのだろうか。

>無言のまま、分寮への道程を歩いた。



【巌戸台分寮】


アイギス「ここです」

>随分と古めかしい建物だ……。

アイギス「鳴上さんをお連れしました」

>アイギスが玄関を開けた。

>追従して寮内に入る。

天田「あ、先輩。大丈夫でしたか?」

鳴上「ああ。少し疲れたけど」

天田「良かったです。あ、僕もまたこの寮で暮らす事になったんですよ。言い忘れてましたけど」

>天田は嬉しそうに笑っている。

?「到着したか。病み上がりですまないな」

>階段の上から声がした。

>紅い髪の……知らない女性だ。

?「君が鳴上悠か。私は桐条美鶴。君の話は天田から聞いたよ」

鳴上「俺の話?」

美鶴「ああ。……どれ、到着してすぐだが面子も揃っている。少し話そうか」

鳴上「あの夜の話ですか」

美鶴「そうだ。だが、まずは自己紹介とこれまでの話をしておこう」

>美鶴は全員の顔を見回した。

美鶴「さっきも言ったが、私は桐条美鶴。かつてこの寮で暮らしていたメンバーの一人だ。今は大学に通っている。よろしく」

天田「えっと、僕は天田……って、それは知ってますよね。実は、僕も以前この寮で暮らしていました。改めて、よろしくお願いします」

鳴上「そうだったのか。ええと、じゃあアイギスさんも……?」

アイギス「私も以前はここに住んでいました。少しの間だけでしたが」

美鶴「この面子で集まってもらった理由は察しがついたか?」

鳴上「……この寮は、普通の生徒とは少し種類の違う生徒が集められていた、と考えていいでしょうか?」

美鶴「そういうことだ。ここはかつて、君と同じ……ペルソナ使いがある目的で共に暮らしていた寮だった」

美鶴「その目的を果たし、以降は使われていなかったのだがね。どうやら、再び事件が起こってしまったらしい」

鳴上「再び?」

美鶴「そうだ。君の体験したあの時間……一日と一日の狭間にあり、一般人には認識すら出来ない隠された時間。『影時間』が再び始まったんだ」

鳴上「『影時間』……」

美鶴「『影時間』にはあらゆる物の活動が止まる。それは人間とて例外ではない。普通の人間は、棺桶のような形になり象徴化してしまう。その間は意識も無いし記憶も無い。体感する事すら出来ないんだ」


鳴上「なるほど、それで……」

美鶴「その中で動ける物は二つ。影時間を引き起こしている張本人である『シャドウ』と、私達『ペルソナ使い』だ」

鳴上「事件を解決出来るのはペルソナ使いだけ、ということですね」

美鶴「そう。その為に集まったのがここにいる天田・アイギスを含めた仲間たちだ。名を『特別課外活動部』と言った」

鳴上「天田もそうなのか?」

美鶴「はい、一応は。当時は小学生でしたけどね」

美鶴「そして、紆余曲折を……本当に、色々な試練を越えて、我々は事件を解決させた。影時間は消滅し、一件落着と思っていたんだ」

天田「それが……あの日、3月31日。先輩も御存知の通り」

鳴上「また、始まった……」

美鶴「そうだ。私にもはっきりわかった。あれは間違いなくあの時と同じ影時間だ」

アイギス「私もわかりました。それで、美鶴さんに相談したんです」

美鶴「そうしたら次の日、天田から連絡があってな。新しいペルソナ使い……つまり、君の事を聞いたわけだ」

鳴上「俺の話っていうのはそういう事だったんですね」

美鶴「そうだ。そしてペルソナ使いである君に頼みがある。我々と協力して」

鳴上「事件を解決する?」

天田「昔のメンバーは今別々に生活していますから、すぐ動ける戦力は今ここにいる4人だけらしいんです」

美鶴「とにかく人手が必要になると思う。学校も始まるし、厳しいとは思うが……」

鳴上「……影時間を放っておくと、どうなるんですか?」

アイギス「……シャドウは、人を襲います。シャドウに襲われ、影を奪われてしまうと、喋る事すら億劫な『影人間』という症状に陥ってしまいます」

美鶴「そして、影時間はこの街だけではない。全世界で同時に起こっている。早急に解決する事が求められるんだ」

>美鶴は真剣な眼差しでこちらを見ている。

>天田も、アイギスも同じだ。

鳴上「わかりました。いえ、むしろ協力させてください。これからよろしくお願いします」

美鶴「!……ありがとう。こちらこそよろしく頼む」

天田「何となく、先輩ならそう言ってくれそうな気がしてました」

アイギス「……」

>アイギスも無言だが少し嬉しそうに見える。

鳴上「ところで、なんですが」

美鶴「どうした?質問なら聞くぞ」

鳴上「その、一度解決した事件なら原因もわかったんじゃないですか?それとも今回はまた違うんですか?」

>……全員が黙ってしまった。

鳴上「……あの」

美鶴「いや、はっきり言えば前回の原因はしっかり判明している。だが今回に限っては……」

鳴上「わからないんですか?」

アイギス「……以前の事件は、ある人が自分の命を賭けて原因となる存在を封印する事で終わりました」

美鶴「だから、同じ原因とは考えにくい。というより考えたくないんだが……」

アイギス「その封印に手を掛ける存在にも、私達は一度打ち勝ちました。ですから、同じ原因であるとはやっぱり思えません」

鳴上「なるほど……前回の原因って何だったんですか?」

アイギス「影時間を作るのはシャドウです。シャドウが多く集まると、時間と空間に干渉する力が集まり特別な時間と空間が生まれます」

美鶴「その時間側面の結果が影時間だな」

アイギス「そのシャドウが集まる理由は、月があるからです」

鳴上「月?というと、あの、空にある……?」

美鶴「ああ。あれは世間で言われているようなただの衛星ではない。あれは、全ての人間に死を……滅びを与える存在だ」

アイギス「名を『Nyx』と言います」

天田「……簡単に言うと、シャドウの親玉みたいなものです」

鳴上「シャドウはそれを求めて集まってくる、と?」

美鶴「そういう事だ。Nyxの復活が近付くと爆発的に増えるらしい。その結果影時間が生まれ、影人間が生まれる」

鳴上「とりあえず、一通りはわかりました。で、俺達は何が出来るんですか?」

美鶴「正直な所、今具体的な対策は無いんだ。今の我々に出来る事は、変化を待ち、原因を突き止める為に動く事だ」

天田「後手後手ですね……。気分のいい話ではないですけど」

鳴上「と、なると俺達はここに待機して、各々都合のいい晩に街を回ってみるとか」

美鶴「そのぐらいだな。とにかく鳴上はまずここの生活に慣れる事だ」

アイギス「私達もここに暮らしますから、何かあったらいつでも聞いてくださいね」

天田「なんか、懐かしいですね。ここでこうやって話すのも」

美鶴「そうだな。影時間の事以外は自由にしてくれて構わない。君は今年が高校生活最後の一年になるんだろう?ここでの生活を満喫するといい」

>皆と談笑した。

>『No.00 愚者 特別課外活動部』のコミュを手に入れた。

>『No.00 愚者 特別課外活動部』のランクが1になった。


美鶴「さて、鳴上。君の部屋に案内しよう」

>美鶴に連れられて、二階一番奥の部屋に行った。

美鶴「荷物の搬入は済んでいる。それと、清掃はしたが今まで使われていなかったからな。少々埃っぽいかもしれないが」

鳴上「そのくらいなら別に平気です」

美鶴「そうか。……」

>美鶴はこちらを見ている……。

鳴上「あの、何か?」

美鶴「いや、その……何でも、無いんだが」

鳴上「……?」

>美鶴から寂しいような、嬉しいような複雑な視線を向けられている。

美鶴「うん。何でもないんだ。悪かったな。では、これからよろしく頼む。今日のところは影時間の探索も無しにしようと思うから、ゆっくり休んでくれ」

>美鶴は去っていった。

>そう言われて随分疲れている事を自覚した。

>……今日はもう寝よう。

>部屋には確かに荷物が運び込まれている。

>ベッドに倒れこんだ……。

>明日から学校だ……。

>『No.03 女帝 桐条美鶴』のコミュを手に入れた。

>『No.03 女帝 桐条美鶴』のランクが1になった。

今日はここまで。また後日。



もう一つ鳴上が月光館学園に行くSSあるから負けないように頑張れ

>>15 読んでます。面白いね……勝ち負けはともかく、頑張ります

補足を追加

・番長とキタローはそれぞれ全ステマックスの超人状態

・番長はP4本編真エンドから現在へ

・3勢はP3本編から後日談を経て現在へ、P3P要素無し

・P4U関連は出ません

では、本日分。

【2012/4/6(土) 晴れ】


アイギス「鳴上さん、朝です。起きてください」

>扉を叩く音で目が覚めた。

鳴上「おはようございます。何か用事でも?」

アイギス「いえ、ただもう私しか寮にいないので、初日から遅刻しないように起こしに来ただけです」

鳴上「……ありがとうございます」

アイギス「皆さん既に出掛けられたので、学校までの案内も私がします。早めに準備して降りてきてください」

鳴上「わかりました。わざわざすみません」

アイギス「では」

>やはり、何か冷たいような気がする……。

>着替えをして一階に降りた。

鳴上「お待たせしました」

アイギス「もう大丈夫ですか?では行きましょう」

鳴上「あ、はい」

>朝食をどうするか考えながら寮を出た。

鳴上「……」

アイギス「……」

>道中、アイギスはずっと無言で隣を歩いている。

鳴上「あの……」

アイギス「なんでしょう」

鳴上「いや、アイギスさんって海外の方なんですか?」

アイギス「……」

鳴上「目も青いし、金髪だからそうなのかなと」

アイギス「私は、桐条グループに作られた対シャドウ用の兵器です」

鳴上「えっ」

アイギス「元々はただの機械だったのですが、シャドウと戦う上でペルソナは必須ということで、ペルソナの素……心を人為的に与えられた、言うなればロボットです」

鳴上「でも、そんな風には……」

アイギス「では、これを」

>アイギスは突然、ワンピースの肩紐を外した!

鳴上「な、アイギスさ……!」

>露出したアイギスの関節部分は、確かに複雑に組まれた金属が見えている。

アイギス「納得できましたか?」

鳴上「確かに……しかし、すごい技術ですね。流石都会」

アイギス「都会は関係ないと思います」

鳴上「あ、はい……」

アイギス「……」

>アイギスはまた無言になってしまった……。

鳴上「……あの」

アイギス「……いけません、ね」

鳴上「え?」

アイギス「あなたを見ていると……話していると、なんだか誰かを思い出しそうで、つい距離を置こうとしてしまいます」

鳴上「誰か、ですか」

アイギス「そう、とても大事な誰かです。今は、どうやっても会えない誰か。私の大切な、誰かを……」

鳴上「……」

アイギス「あなたは、彼に似た空気を持っています。それで、そういう風に思ってしまうのでしょう。ごめんなさい」

鳴上「いや、別に謝るような事は」

アイギス「なんだか気を遣わせてしまいましたね。……これからは、ちゃんと普通に応対します。あの、改めて、よろしくお願いしますね」

>アイギスは微笑んでいる。

鳴上「……やっぱり、機械には見えませんね」

アイギス「先程確かめたでしょう?」

鳴上「いや、機械がそんな笑顔をするとは思えなくて」

アイギス「そ、そうですか?」

鳴上「ええ。凄く綺麗な」

アイギス「鳴上さんは、やっぱりあの人と似た雰囲気がありますね……女たらしっぽい所とか」

鳴上「え!?」

アイギス「冗談です。さ、そろそろ学校です。遅刻しないように気をつけてくださいね」

>アイギスと笑って別れた。

>アイギスと少し仲良くなった気がする。

>『No.07 戦車 アイギス』のコミュを手に入れた。

>『No.07 戦車 アイギス』のランクが1になった。



【月光館学園 高等科 3-A教室】


>担任教師に案内されて、これから所属するクラスに行った。

鳥海「はーい、静かにー。なんと今日は転入生がいまーす」

>教室はざわめいている。

鳥海「男子は嘆け女子は喜べー、イケメンだぞ。そんじゃ、入ってきてー」

>教室に入る。

>女子のざわめきが心なしか大きくなった気がする。

鳥海「じゃ、軽く自己紹介しちゃって」

鳴上「周防達哉です。将来は刑事になろうと思っています。これから一年よろしくお願いします」

鳥海「……君、鳴上君よね?私の書類が間違ってたのかしら」

鳴上「いえ、冗談です。鳴上悠です。高校生活最後の一年、皆と同じクラスで過ごす事になりました。いろいろ面倒をかけると思いますがよろしく」

>冗談はウケなかった……。

鳥海「……なんか、面白い子ね。えーと、じゃあホームルーム始めるよー。まずは……」

>これからの学校生活について説明を受けた。

男子生徒「なあ、鳴上君ってあれだよね。男子寮から移動になったっていう」

鳴上「良く知ってるな」

男子生徒「ああ、俺も寮生だから。でさ、今分寮に住んでんだろ?あそこってなんで閉鎖されてたの?」

鳴上「さぁ……俺も良くは知らないんだが、桐条って人がいろいろあったって言ってたよ」

男子生徒「桐条……って、桐条美鶴さん!?」

鳴上「本当に良く知ってるな。その通りだ」

男子生徒「マジかよ……俺ファンなんだよあの人。なぁ、今度分寮遊びに行っていいか?」

鳴上「……止めといた方が」

鳥海「こらそこー、転入初日から無視とはいい度胸だ。ちゃんと話聞いときなさいよー」

>クラスの皆とは上手くやっていけそうだ……。



【巌戸台分寮】


>まっすぐ寮に帰ってきた。

天田「先輩、おかえりなさい」

>天田が犬を連れている……。

天田「あ、この犬はコロマルって言います。こう見えても元特別課外活動部の一人……一匹?なんですよ」

鳴上「犬のペルソナ使いか」

天田「あれ、驚きませんね」

鳴上「まあクマのペルソナ使いがいるくらいだからいるかもと思って」

天田「クマの……?その辺りのお話は、また皆揃ってから聞かせてください」

コロマル「ワン!」

>コロマルと知りあった。

>部屋に荷物を置いた。

>コロマルの様子が気になる……。

>ちょっと見に行こう。

>ラウンジに降りると、見知らぬ女性がコロマルを撫でていた。

?「おー、コロちゃんは変わらないねー。天田くんはこんなに大きくなったのに」

天田「成長期ですから、そりゃ成長しますよ」

?「いいねー成長期。私ももうちょっとこう、ねー……」

天田「あ、先輩。どうかしましたか?」

?「ん?誰……!?」

>女性は驚いたようにこちらを見ている。

鳴上「いや、コロマルにちゃんと挨拶しておこうと思って……」

天田「あ、ゆかりさん。紹介します。こちらが新しく協力してくれる事になった鳴上悠先輩です」

天田「で、先輩。この人は元特別課外活動部の……」

?「岳羽ゆかり。そっか、君が例の……」

鳴上「どうも」

岳羽「ふーん……確かに信用出来そうだね」

天田「でしょう?」

鳴上「ええと、何故……?」

岳羽「んー、なんとなく、かな。うん。とにかくよろしくね!」

>元特別課外活動部の面々は、自分の向こうに誰かを見ている気がする……。


鳴上「よろしくお願いします」

岳羽「私、今大学通ってるんだけど……ま、いろいろと忙しくってさ。そこまで頻繁に協力は出来ないと思うけど……」

天田「仕方ないですよ。あの時とはやっぱり事情が違うし……」

鳴上「そういえば、特別課外活動部のメンバーって何人くらいいるんですか?」

岳羽「ん?そうだねー、ちょっと待ってね。えーと、まず誰に会ったのかな」

鳴上「天田と、桐条さんと、アイギスさんと……それとコロマルと、後、今岳羽さんに」

岳羽「そっか。それじゃ残りは……三人かな」

鳴上「じゃあほとんどのメンバーはもう会ったって事ですね」

天田「そうなりますね。ええと、後は真田さんと、風花さんと……」

岳羽「あの馬鹿ね。……名誉部員、みたいなのなら、他にもいるけどね」

鳴上「名誉部員?」

岳羽「永久欠番みたいなものかな。……や、ごめん。忘れて」

天田「……」

鳴上「……で、岳羽さんは今大学通いが忙しくて」

天田「風花さんと順平さんもそうでしょうね」

岳羽「風花はともかく、あいつなら喜んで帰ってきそうだけどね……」

鳴上「それで、真田さん?はどうなんですか」

アイギス「真田さんは今武者修行でどこかに飛んでいるらしく、連絡がつかないそうです」

>アイギスも部屋から出てきたようだ。

岳羽「アイギス!久しぶりー、元気だった?」

アイギス「お久しぶりですゆかりさん。ゆかりさんもお元気そうで何よりです」

鳴上「武者修行?」

アイギス「ええ。何やら世界中の獣を倒してみせる!とか」

岳羽「あの人、まだそんなことやってるんだ……」

天田「……ですね」

>皆と談笑した。

>岳羽ゆかりと知り合いになった。


岳羽「っと、そろそろ帰らないと。また来るから、皆も頑張ってね!」

天田「桐条さんもそろそろ帰ってくると思うんですけど……」

岳羽「先輩とはいつでも連絡取れるからいいのいいの。あ、そうだ。鳴上君。良ければちょっと見送ってくれるかな?」

鳴上「俺ですか?」

岳羽「そ、君。良ければ、だけどね」

鳴上「ああ、構いませんよ。じゃあ、ちょっと出てくる」

天田「いってらっしゃーい」


【巌戸台分寮前】


岳羽「……ごめんね、わざわざ出てもらって」

鳴上「いえ、構わないんですが……どうしてですか?」

岳羽「さっきさ、ちらっと言ったじゃん。名誉部員ってヤツ」

鳴上「ああ、確かに」

岳羽「聞いて無かったっぽいからさ。一応教えとこうと思って」

鳴上「天田のいる前では言い難い事なんですか?」

岳羽「ていうか、本当は私も言いたくない事……かな。でも、知らないでいるのも良くないと思う。何となくだけどね」

岳羽「……えっとね。前の事件で、部員は本当は10人いたの」

鳴上「それじゃ、残りの二人は」

岳羽「もう、会えない人と……死んでしまった人」

鳴上「死ん……」

岳羽「君が事件に挑もうとしてるのは知ってる。けど、わかってるのかなって思って。軽く無いんだよ?」

鳴上「……けど、俺達がやらないともっと多くの人が苦しむ事になるんですよね?」

岳羽「だからって、君が頑張る必要は無いかもしれない。そんな風に考えた事は無い?」

鳴上「ありません。もし仮に、俺が……死んでしまうような事になっても。そうしなければ、仲間や……皆を守れないなら」

岳羽「それで残された方の気持ちは?」

鳴上「えっ……?」

岳羽「君が死んだら、君が守りたかった仲間はどう思うの?」

鳴上「……それは」

岳羽「……ごめん、意地悪いね。でも、きちんと考えて欲しかったの。なんて言えばいいのかわかんないけど……」

岳羽「命のこたえ、とでも言うのかな。君はそれを考えなきゃいけない状況にあるんだと思う」

鳴上「命の、こたえ……」

岳羽「なんて、変な事言っちゃったね。でも、覚えておいて。君の命は、決して軽くない。仲間を守りたいと君が思うように」

鳴上「仲間も、俺を守りたいと思っている……」

岳羽「そ。だから、一人でなんとかしようとか、絶対思っちゃ駄目だよ?」

鳴上「ありがとうございます」

岳羽「え、お説教してお礼言われたの、生まれて初めてかも」

鳴上「俺を心配してくれてるんですよね?だったら、やっぱりありがとうと」

岳羽「もう、やめてよ。なんか照れちゃうからさ。うん、そんだけ。でも忘れないでね」

鳴上「しっかり覚えておきます。命のこたえ」

岳羽「……君ならきっと見つかるよ。君だけの答えが。頑張ってね」

>ゆかりは手を振って去って行った……。

>『No.06 恋愛 岳羽ゆかり』のコミュを手に入れた。

>『No.06 恋愛 岳羽ゆかり』のランクが1になった。

コロマル「ワン」

>どこから出てきたのか、隣にコロマルがおすわりしている。

鳴上「聞いてたのか」

コロマル「ヘッヘッヘ」

>……何となく、しっかりやれよ、と言われている気がする。

鳴上「ああ。ありがとう。コロマルもこれからよろしくな」

>『No.08 正義 コロマル』のコミュを手に入れた。

>『No.08 正義 コロマル』のランクが1になった。

【同日 夜 巌戸台分寮】

>そういえば、結局名誉部員がどういった人物なのか聞いていない。

>……気は引けるが、美鶴辺りに聞いてみよう。

>ラウンジに行くと、アイギスと美鶴が何やら悩んでいる。

鳴上「どうかしたんですか?」

美鶴「……ああ、君か。いやなに、ちょっとした思考クイズだ」

鳴上「クイズ?」

アイギス「実際の所、現在原因の究明は不可能と言いましたが、仮説はいくらか立つと思ったんです」

美鶴「だから、アイギスといくつか適当な仮説を組んでみたが……」

鳴上「どうだったんですか?」

美鶴「しっくりくるものは無いな。やはり事が起こらねば動きようが無いか……」

鳴上「そのクイズ、混ぜてもらってもいいですか?」

美鶴「新たな頭脳は歓迎するぞ。さて、どこまで言ったんだったかな」

アイギス「まず、原因がNyxの復活であった場合、としましょうか」

美鶴「うん。何故復活したのか」

アイギス「考えたく無いけれど、封印が解かれた」

美鶴「とすれば、何故?」

鳴上「少しだけ聞きましたけど、封印を解こうとしていたモノは倒したんでしたよね?」

アイギス「はい、それは間違いありません。とはいえ、あれは倒したからといって消え去るようなものではありませんが」

美鶴「人の深層心理の負の部分……その塊のような存在だからな。人がいる限りまたいずれ復活するだろう」

鳴上「とは言っても、一度は散らしたんですよね」

美鶴「そうだな。だから今しばらくは大丈夫だと思っていた」

鳴上「……それって、他の要素では駄目なんですかね?」

アイギス「どういう事ですか?」

鳴上「ええと、例えば、深層心理の負の部分っていうとシャドウもそうですよね?だから、大量のシャドウを従える存在とか」

美鶴「なるほど、ペルソナ使いならぬシャドウ使いのような存在がいれば可能かもしれんな」

鳴上「で、そういう存在が封印に攻撃を仕掛けるとか……」

アイギス「不可能では無いと思いますが、はっきり言うと難しいかと」

鳴上「何故です?」

アイギス「あの封印も、深層心理が至る場所も、ある力が無いと辿り着く事すら出来ないからです」

鳴上「ある力というと?」

アイギス「アルカナの力……それも、何にでも姿を変えるけど、何にも属さない力。それは、『ワイルド』と呼ばれる力」

鳴上「ワイルド……!?」

アイギス「その力があれば、様々なアルカナ……人の心の力の象徴を一つ所に集める事が出来ます。その力は時に奇跡を起こす」

美鶴「鳴上は知らないかもしれないが、私達のようにペルソナを一人一体ではなく複数体所持し、しかも自在に付け替える事が出来る人間が稀に存在するんだ」

鳴上「あの……」

アイギス「かつては私もその力の持ち主でした。しかし、ある一件を機に二度とその力を振るう事は出来なく……」

鳴上「俺、出来ます」

美鶴「何がだ?」

鳴上「ペルソナの付け替え」

アイギス「……は?」

鳴上「ですから、ベルベットルームって所でワイルドの力を持っていると言われた事もあるし、ペルソナを付け替える事も出来ます」

美鶴「……どう思う、アイギス」

アイギス「ベルベットルームというのは、ワイルドを持つ者だけが入れる特別な部屋の事です。ワイルドで無ければ知りうる情報では無いかと」

美鶴「そうか……鳴上!」

鳴上「はい」

美鶴「そういう事は、最初に言え……」

鳴上「はい……」

美鶴「しかし奇縁だな。とんでもなく希少な存在を三人も知る事になるとは」

アイギス「鳴上さんの、彼に似た空気もそのせいかもしれませんね」

美鶴「やれやれだ。全く君には驚かされる」

鳴上「すみません。……で、思ったんですが」

アイギス「なんですか?」

鳴上「ペルソナは心の力ですよね」

美鶴「そうだな」

鳴上「シャドウは心から発生する負の力ですよね」

アイギス「そうですね」

鳴上「ペルソナとシャドウって、形が違うだけで同じ力じゃないですか?」

美鶴「確かにそういう見方も出来るな」

鳴上「じゃあ、ですよ。ワイルドの力で、シャドウ……でなくともペルソナを大量に所持したとすれば」

鳴上「人類の深層心理の塊、を一人で作り出す事が出来るんじゃないですか?」

美鶴「……」

アイギス「……」

鳴上「いや、俺じゃないですよ?」

美鶴「……疑っているわけじゃない。驚いているんだ」

アイギス「確かに、そういう考え方もできますね」

鳴上「飽くまで仮説にすぎないけど、もし他にワイルドの力を持った存在がいるとすれば……」

美鶴「まあ、滅多にいるものでも無いが、その可能性はあるな」

アイギス「といっても、本当に仮説に過ぎません」

美鶴「今のところは何も起こっていない。結局は『可能性はある』程度の話だな」

鳴上「まあそうですね……。あ」

美鶴「今度は何だ。もう大抵の事は驚かんぞ」

鳴上「俺、もう一人ワイルド能力者に心当たりあります」

美鶴「なん……だと……」

鳴上「多分、無関係だと思いますが……一応、調べてみていいですか?」

美鶴「好きにしてくれ……色々と衝撃が大きすぎて、頭の中が飽和状態だ」

アイギス「鳴上さん……そういう重要な事は……」

鳴上「いや……なんか、すみません」

>ワイルド能力……まさか、ここでその話が出るとは思わなかった。

>さて、彼女に会う必要がでてきた。

>今度、ベルベットルームに向かおう。

>マーガレットの妹、エリザベスに会いに……。


【2010/3/5 晴れ】


>……目を閉じますか?

>…………。

一旦ここまで。時間あればまた後で投下に来ます。

本日後半を投下。


【???】


?「随分と、お久しぶりですな」

>声が聞こえる……。

>目を開けると、青い部屋の中にいた。

イゴール「あなたは命のこたえに辿り着いた。しかし、再びこうしてここにいる」

>今までのベルベットルームと違い、リムジンバスの中のような様相をしている。

イゴール「あなたほどの客人でさえ、自らの命すら思うようにいかぬという事でしょうかな。とにかく、再会を祝して……」

>イゴールは何かを差し出す……。

>契約者の鍵を手に入れた。

「その人は?」

?「私はマーガレットと申します。あなたのお手伝いをさせて頂いていた、エリザベスの姉にあたります」

>どうでもいい……。

マーガレット「これより、再びあなたを現実へとお連れします。そこで、あなたは新たな絆を築き、力を得る事でしょう」

イゴール「再び我々に見せていただきたい。そのお力と、生命とは何なのか……そのこたえを」

>意識が薄れていく……。

>僕を、呼ぶな……。

【2012/4/1(日) 晴れ】


?「おい、おいアンタ!大丈夫かよ!おい!」

>騒々しい声が聞こえる。

?「あ、目開けた。聞こえてるか?おーい」

「……誰?」

?「通りすがりのモンだよ。自転車で走ってたら、たまたまアンタが倒れてるの見かけてさ。大丈夫か?」

>体が酷く重い。

「少し、寝かせて……」

?「寝るって、あ、おいアンタ。おい、おーい!」


【稲羽市立病院】

>……暖かい風を感じる。

「……ここは」

>辺りを見回すと、どうやら病院の一室のようだ。

>ベッドの隣に茶髪の男が座っている。

?「あ、気がついたか!良かった……今先生呼んでくっから!」

>男が立ち上がろうとする。

「いや、いい。それより、少し話を聞かせて」

?「いや良くねえって。……まあ、じゃあちょっとだけな」

「まず、君は誰?」

?「俺か?俺は花村陽介。八十神高校3年だ。見たとこアンタも同じくらいだろ?」

「……八十神?ここは、何て街?」

陽介「おいおい、マジかよ……記憶喪失ってヤツ?それとも超ワケありとか」

「どっちかというとワケあり」

陽介「げ、マジで。……いや、ワケありでも関わっちまったもんは仕方ねえ。ここはな、稲羽市。八十稲羽ってトコ。もう一つ言えば、この建物は稲羽市立病院。わかった?」

「八十稲羽?」

陽介「ほんとに知らなかったのかよ……まあ、いいや。先生呼んでくっから、待ってろよ!あ、ところでアンタ、名前もわかんないとか言う?」

「いや、名前はわかるよ」

陽介「ほー、なんてぇの?」

「僕は有里。有里湊」

陽介「有里な。よろしく。じゃ、行ってくるわ!」

>陽介は騒がしく出ていった。

>どうやら、本当に現実に戻ってきてしまったらしい。

>なら、大いなる封印はどうなったのだろうか。

>嫌な予感がする……。

>というか、自分の戸籍やその他はどうなっているんだ……。

>この病院の支払は……。

>……どうでもいい、か。

>栄養失調と過労と診断された。

>最中話を聞いたのだが、今は2012年らしい。

>あれから二年以上が経っている……。

>何故、ここにいるんだろうか……。

>……眠い。

>体がまだ本調子ではないのを感じる。

>とにかく、今は寝よう。


【2012/4/2(月) 晴れ】


>もう昼過ぎだ。

>体に生気が戻ってきたのを感じる。

陽介「ういっす。お見舞いに来たぜー」

有里「なんでわざわざ?」

陽介「いや、一応さぁ、俺が第一発見者なわけじゃん?その後とか気になるじゃん?」

有里「なるほど、ありがとう」

陽介「どういたしましてっと。で、どうよ」

有里「何が?」

陽介「いや、ワケありって言ってたろ?なんかさ、こうして関わったのも何かの縁だし、力になれる事あったらなって」

>確かに、このままでは色々と困る。

>……正直に話すより、記憶が無い体で誤魔化した方がいいかもしれない。

有里「それが、名前以外何も思い出せなくて……」

陽介「マジかよ……ワケありって言ったじゃねえか……」

有里「記憶喪失もワケありだと思う」

陽介「そりゃそうか。んー、ただなぁ。そうなると俺なんかじゃなくて、もっとちゃんとした大人に相談した方がいいんじゃねえか?」

有里「そうだね……」

陽介「悪いな、力になってやれなくて……」

有里「いいよ。そう言ってくれただけでありがたい」

陽介「そっか。他のことならさ、何でも聞くから何でも言ってくれよ!」

>陽介から嘘偽りの無い思いやりを感じる……。

有里「どうして良く知りもしない僕の為に?」

陽介「え?だから、まあ何かの縁だと思って……」

>じっと見つめてみた。

陽介「……だぁーっ!もう!わかった、正直に言う!」

有里「僕のこと好きなの?」

陽介「そういうんじゃねえよ!気持ち悪いっ!……有里さ、俺の親友になんか似てんだよ。だから、なんつーか、まあろいろしてやりたくなるわけ」

有里「そうか。ありがとう」

陽介「ま、そういうわけだからよ。何でも言えよな。まだ退院出来ないんだろ?」

有里「もう少しいることになりそうだね」

陽介「入院中暇だと思うから、俺も暇な時は遊びにくるからさ。あ、有里の力になってくれそうな人も探しとっから。早く体治せよ!」

有里「わかった。じゃあゆっくり休ませてもらうよ」

陽介「そうしろそうしろ。じゃ、また明日も来るわ!明日は友達も連れてくっかもしんねー」

有里「なるべく静かにね」

陽介「わーかってるよ。んじゃ、またな!」

>陽介と少し仲良くなった。

>心の中に新たな力を感じる……。

>『No.19 太陽 花村陽介』のコミュを手に入れた。

>『No.19 太陽 花村陽介』のコミュランクが1になった。

>どうやら、新たな絆が育まれたらしい。

有里「これが、マーガレットの言ってた……」

有里「新たな絆か」

有里「……これからどうしよう」

>まだ眠い。

>時間は早いが寝る事にする……。

後半は短いけどここまで。
役者は徐々に集まって来ました。
また後日。

コミュは原作と同じ人もいれば違う人もいます。
アルカナの意味が良くない物もあるわけですが、基本的には良い意味とかなんとなくなイメージでやっとります。
まあ捉え方によって色々ということで。
では本日分。



【2012/4/3(火) 曇り】


>午前中は少しリハビリをした。

>体が本調子に近づいて来ているのがわかる……。

陽介「よっ!今日も来たぜー!」

>陽介が騒がしく病室に入ってきた。

陽介「……なんだよ、なんでそんな顔なんだよ」

有里「なるべく静かにね」

陽介「え、俺そんなに騒いでなくない?」

有里「……」

陽介「すんません、マジで……」

有里「わかってくれたらいいんだ」

陽介「はい……っじゃなくて!今日は入院生活で潤いの無い有里の為にだなぁ、なんと女子を連れてきたんだぜ!」

>……さっきから、病室の入り口からちらちらこちらを伺っているのがそうだろうか。

>とりあえず会釈しておこう。

陽介「っつーわけで入って来いよ二人共」

?「こ、こんにちわー」

?「はじめましてー……」

陽介「何でちょっと緊張してんだよ」

?「いや、だってさぁ……」

?「ねぇ……」

陽介「……あ、そう。えーと、紹介するな。こっちのお淑やかな方が」

?「あ、天城雪子って言います。有里くん……さん?よ、よろしくね」

陽介「天城の家は旅館なんだぜ!若女将ってヤツ!すごくね?」

有里「そうだね」

陽介「リアクション薄いな……で、こっちのガサツな方がー」

?「誰がガサツな方よ誰が。そりゃ雪子に比べたらちょーっと大雑把かなーって所あるけどさぁ」

陽介「まあこんな感じでガサツなのが里中千枝。二人共俺の同級生。どうよ!」

>陽介は何やら自慢気だ……。

有里「天城さんと里中さんか。二人は花村くんの恋人なの?」

陽介「いやいやいや!そんなんじゃないって!」

千枝「花村と恋人はねー……ちょーっと在り得ないかなぁ」

天城「え?恋人?なんで?そう見える?ただのお友達だよ?」

陽介「うん。軽ーく傷ついたよ俺。まぁ、確かに恋人とかそういうんじゃないけどさぁ……言い方っていうかさぁ……」

>……陽介が落ち込んでしまった。

有里「何か、ごめん……花村くん」

陽介「いやぁ、慣れてるよ、こういうの。はは……っと、後さ、俺の事呼ぶ時さ、くんとかそういうのナシにしてくんね?」

有里「どうして?」

陽介「なーんかむず痒いっつーの?もっとフランクにさ、花村ーとか、陽介ーとか。そんな感じでいいからさ」

有里「じゃあ、陽介」

陽介「そう、そんな感じで。別に年上ってわけでもねーし、そのくらいが丁度いいって」

>二年間存在していなかったから同い年くらいだと思うが、一応生まれは自分が先だ……。

>……どうでもいいか。

千枝「そうそう。花村なんて花村で十分だよ。花村だし」

陽介「里中はもーちっと気使ってもいいんだよ?」

天城「この二人はとっても仲良いんだ。いっつもこんな感じ」

有里「へぇ」

>三人と話をした……。

陽介「っとぉ、こんな時間か。実は俺今日バイト入ってるんだわ。そろそろ行かねーと」

有里「ああ、それじゃ」

陽介「里中と天城はどうする?もうちっと有里に潤いチャージしとく?」

千枝「なにソレ……まぁ私は暇だからいいよ」

天城「私も、今日はもう少し時間あるから」

陽介「おう、じゃあまたな皆!……有里って、女に手早そうだから気をつけろよ?」

有里「そう見える?」

千枝「誰かと違って物静かでかっこいいしねー有里くんは」

陽介「うっせ!」

>陽介は二人をおいて帰ってしまった。

>今まで普通だったのに、陽介がいなくなった途端無言になってしまう……。

>二人共、何か落ち着かないようだ……。

有里「そういえば二人共、どうして来てくれたの?」

千枝「え?いや、私は花村に誘われて……」

天城「私は千枝に話聞いて……」

有里「ふぅん、そっか」

天城「迷惑、だった?」

千枝「お騒がせしちゃったかな……?」


有里「そんな事ない。ありがとう」

>感謝の気持を込めて微笑んでおいた。

千枝「……っ」

天城「……ぅ」

>二人は顔を見合わせた。

有里「……?」

千枝「あぁ、いや、何でも!何でもないから!」

天城「そそそうだよね!なんでも無い!」

有里「そう?」

千枝「うん、何でも無いよ!……でも、ほんとだねー」

天城「花村くんの言った通りだったね」

有里「女に手が早いって?」

天城「ああ、そうじゃなくって」

千枝「ちょっと前までさ、この街に住んでた友達がいたんだよね。今は引っ越しちゃったんだけど」

有里「ああ、その人に」

天城「うん。有里くんが何となく似てるんだ、って花村くんに聞いたの」

千枝「全然違うんだけどねー。なんていうんだろ、雰囲気?空気?がね」

天城「彼にそっくりだね」

有里「二人はその彼の事が好きなの?」

千枝「うぇ!?な、何言い出すの今度は!?」

天城「有里くん、そういう話題好きなの?」

有里「いや、別に。二人をからかうのが面白くて」

天城「それって酷くない?」

千枝「ねー……」

>言っている事と裏腹に二人は笑っている。

>里中千枝、天城雪子と知り合いになった。

>『No.18 月 天城雪子』のコミュを手に入れた。

>『No.11 剛毅 里中千枝』のコミュを手に入れた。

>『No.18 月 天城雪子』のランクが1になった。

>『No.11 剛毅 里中千枝』のランクが1になった。

>……今日はすこしはしゃぎ過ぎた。

>体がだるい……。

>今日も早めに寝る事にした。



【2012/4/4(水) 晴れ】


>体の訛りは随分と取れてきた。

>そろそろ退院できそうな気もする。

>今日は、警察の人が聴取に来るらしい。

>……記憶を無くした人間が街に倒れていたら、やはり事件性が疑われるのだろう。

医師「この患者です」

?「……どうも。先生は外してもらっても構いませんか?手荒はしませんので」

医師「まだ体調が完全とは行きませんので、あまり長時間は……」

?「理解しています」

医師「でしたら、どうぞ」

有里「……刑事さんですか?」

?「ああ。堂島という。よろしく」

有里「堂島さんですか。僕は何を聞かれるんです?」

堂島「まず、君の名前を聞かせてもらおうか」

有里「有里湊です」

堂島「有里君。君、記憶が無いそうだね」

有里「ええ。一般常識なんかは覚えてるんですが、自分の事となると……」

堂島「……ふん。まあそういう話は俺にはよくわからん。だから、率直に聞く」

有里「どうぞ」

堂島「君は何かの事件に巻き込まれたんじゃないか?」

有里「……」

堂島「心配しなくても、君に何かの嫌疑が掛かっているわけじゃない。これが俺の仕事だからやってるだけでな」

有里「はっきり言えば、覚えていません。が、何かの事件に関わっていたのなら、こんな風にゆっくり入院出来るものでしょうか」

堂島「そりゃわからん。単純に事故で打ち所が悪かったとか、そういう話かもしれん。何度も言うが、俺は仕事だからやってるだけだ」

有里「何だか乗り気じゃ無さそうですね」

堂島「……やりがいのある仕事ばかりじゃないって事だ。所で、君はいつ退院なんだ」

有里「明日にでも退院出来るとは言われています」

堂島「だが、記憶が無いんじゃ身寄りも無いだろう。どうするつもりだ?」

有里「……」

堂島「考えがあるわけじゃ無さそうだな」

有里「僕の事を知っている人が現れれば、その人を頼ってもいいかも、と思っているんですが」


堂島「実はな、君の友達がいろいろ手を打ってくれてるんだ」

有里「友達……?」

堂島「ああ。花村陽介って言えばわかるか」

有里「陽介が?」

堂島「ネットや何やで君の知人を探しまわってるらしい。今の所ヒットは無さそうだがな」

有里「陽介……」

堂島「……で、だ。行く宛がないわけだろ?」

有里「少なくとも今しばらくはそういう事になります」

堂島「……良ければ、家で暮らさないか」

有里「え?」

堂島「別に監視しようってわけじゃない。ただ、どこも行く宛が無いならと思ってな」

>堂島は嘘を言っているようには見えない。

有里「ありがたい申し出ですが、良いんですか?」

堂島「ああ。唐突で驚いたか?」

有里「ええ、かなり」

堂島「まぁな。俺も驚いた」

有里「どういうことです?」

堂島「なんだか君を他人と思えなくてな。不思議な話だが」

有里「本当にお世話になっていいのなら、是非お願いしたい話ですが」

堂島「わかった。君が良いなら細かい事は俺がやっとく。なるべく早い退院を頼むぞ」

有里「……わかりました。あの、本当に有難うございます」

堂島「いいから、今日はもう休め。後は任せろ」

>堂島は病室を出ていった。

>とんとん拍子に事が進む……。

>これも、似ている彼のおかげだろうか。

>感謝しないといけないな……。

>とにかく、早く退院するようにしよう。

>堂島遼太郎と知り合いになった。

>堂島家で暮らす事になった。



【2012/4/6(木) 晴れ】


>とりあえず、退院していいと言われた。

>まだ通院の必要はあるらしいが……。

>元々怪我でも病気でも無いのだから、入院期間は短くて当たり前か。

>堂島さんが迎えに来てくれた。

堂島「随分早い退院だったな」

有里「まだ通院しろってしつこく言われましたけどね」

堂島「まぁ、いいさ。支払いは立て替えておいたから」

有里「……何から何まで」

堂島「いい。早速、家に案内するぞ」

>堂島さんの運転で、これから住む家に向かった。


【堂島宅】


堂島「ここだ」

>普通の民家だ。

堂島「部屋は……あいつには悪いが、あいつの部屋を貸してもらうか」

有里「あの……」

堂島「さて、と。今日から俺がお前の保護者だ。ちゃんとした自己紹介がまだだったな。俺は堂島遼太郎。稲羽署で刑事をやってる」

有里「はい、よろしくお願いします」

堂島「で、だ。俺はまだ仕事がある。だからお前につきっきりになってるわけにもいかない」

有里「はぁ……?」

堂島「夜には帰れると思うが……後の詳しい事は菜々子に聞くといい」

有里「菜々子って……」

堂島「娘だ。じゃ、また夜にな」

有里「ど、堂島さん?あ……」

>堂島は車で去っていった。

>……仕方ない、入るとしよう。

>玄関を開けた。

>……視線を感じる。

>奥の部屋から、小さな女の子が覗いている。

有里「……あの」

?「湊……さん?」

有里「あ、はい」


>どうやら彼女が菜々子のようだが、とても緊張しているようだ。

有里「君が、菜々子ちゃんだね?」

菜々子「そう、です」

有里「堂島さ……お父さんからお話聞いてるかな?」

菜々子「聞いてる。お兄ちゃんがこれから一緒に住むんでしょ?」

有里「うん。これからお世話になります有里湊です。よろしくね」

>できる限り優しく微笑んでみた。

>菜々子が部屋から出てきてくれた。

菜々子「よかった……菜々子、こわいお兄ちゃんだったらどうしようかと思ってた」

有里「怖くないよ?」

菜々子「うん!菜々子わかるよ」

有里「そっか、ありがとう。ええと、それで……」

菜々子「あ、そうだ。お兄ちゃんのお部屋教えるね」

>菜々子が袖を引っ張ってくる。

>どうやら、部屋は二階らしい。

菜々子「お兄ちゃんの部屋だけど、湊お兄ちゃんに貸してあげるんだって」

有里「お兄ちゃん?」

菜々子「菜々子の大好きなお兄ちゃんだよ。今はお引越ししちゃっていないんだけど、また遊びにくるんだって」

有里「そうなんだ。じゃあお兄ちゃんのお部屋、しばらく借りるね」

菜々子「湊お兄ちゃんだったらいいよ!これからよろしくおねがいします」

>堂島菜々子と知り合いになった。

>菜々子と遊んで過ごした……。



【同日 夜 堂島宅】


>堂島さんが帰ってきたようだ。

菜々子「お父さんおかえりなさい!」

堂島「ただいま。湊、菜々子とは話したか」

菜々子「湊お兄ちゃん、遊んでくれたよー」

堂島「そうか、良かったな。湊、お前、まだ生活用品何も無かっただろ」

有里「あ、はい」

堂島「明日、菜々子の学校が始まるから、菜々子が帰って来てから一緒に買い物に行くといい」

菜々子「お買い物?」

有里「でも、僕無一文ですよ」

堂島「知ってるよ。ほら」

>堂島から小遣いをもらった。

堂島「いろいろ必要な物もあるだろう。無駄遣いはするなよ」

有里「……何か、すみません」

堂島「謝らなくていい。どうしても心苦しいなら、その内バイトするなりなんなりで返してくれればいい」

有里「はい、ありがとうございます」

菜々子「お買い物だったらジュネスがいいなぁ」

有里「ジュネス?」

菜々子「エブリデイ・ヤングライフ・ジュネス♪」

>菜々子と買い物に行く事になった。

>堂島の確かな優しさを感じる……。

>『No.12 刑死者 堂島遼太郎』のコミュを手に入れた。

>『No.12 刑死者 堂島遼太郎』のランクが1になった。

>その晩は、三人でいろいろな話をした……。

とりあえず一旦終わり。
今日もまた後で時間あれば投下しに来ます。

>>19 曜日が金曜の間違いでした。 >>51 日付が4/6では無く4/5でした。
本日後半部を投下します。



【同日 23:55】

>例の彼の部屋で眠る事になった。

>なんとなく、眠れない。

>体力が回復してきているからか、今まで寝過ぎだったからか……。

>もうこんな時間だ。

>もう来ないとわかっていても、この時間になると少し身構えてしまう。

>……。

>日付が変わる。

>もう、寝よう。

カチッ

有里「……」

>悪い方の予想が当たった。

有里「僕がこうして生きてるって事は、封印が解けたって事なんだろうけど」

有里「やっぱりまたか……『影時間』」

>さて、どうしたものか……。

>異変の中心を探る必要がある。

>……明日にしよう。

>今日は、眠る……。


【2012/4/6(金) 晴れ】


>朝、早く目覚めたので家事を済ませておいた。

>ただ世話になるだけ、というわけにもいかない。

菜々子「湊お兄ちゃん?」

有里「おはよう、菜々子ちゃん」

菜々子「菜々子でいいよぉ。お兄ちゃんご飯作ってくれたの?」

有里「うん、簡単で悪いけど」

菜々子「すごい、湊お兄ちゃんお料理できるんだ!」

有里「そんなに驚かなくても……」

菜々子「お父さん全然出来ないんだよ」

有里「まぁ、男の人はそういう事もあるんじゃないかな」

菜々子「でも、お兄ちゃんも湊お兄ちゃんもお料理できるよね?」

有里「趣味みたいなものだよ」

堂島「おはよう。なんだ、二人とも早いな」

有里「おはようございます」

>学校へ行く菜々子と、仕事へ行く堂島さんを見送った。

>さて、昼までに掃除くらいはしておこう……。



【同日 昼過ぎ】


菜々子「ただいまー」

有里「あ、お帰り」

菜々子「あ、湊お兄ちゃん。今日ジュネス行くんだよね?」

有里「それがジュネスの場所、わからないんだよね」

菜々子「大丈夫だよ!菜々子覚えてるから!」

有里「じゃあ、案内頼めるかな?」

菜々子「うん!準備するねー」

>菜々子とジュネスに行く事にした。


【ジュネス】


有里「ああ、ジュネスってこういう……」

菜々子「エブリデイ・ヤングライフ・ジュ、ネ、ス♪」

陽介「おお?有里じゃねーか!聞いたぜ、堂島さんとこに世話になるんだってな!」

有里「陽介。なんでここに?」

菜々子「ジュネスのお兄ちゃんこんにちわー!」

陽介「おーう菜々子ちゃんこんにちわー!なんでって、ここ俺の親が経営してんだよ。だからまあバイトっつーか手伝い?」

有里「なるほど、それで」

クマ「クマー!ナナちゃんいらっしゃいクマー!」

菜々子「あー、クマさんだー!湊お兄ちゃん、菜々子クマさんと遊んでていい?」

クマ「ヨウスケー、ナナちゃんと遊んできていいクマかー?」

有里「いいよ、行っておいで」

陽介「あんまり無茶すんじゃねーぞ」

菜々子「わーい!クマさん遊んでー!」

クマ「今日は何するクマー!?」

陽介「……ったくアイツは無駄に元気いーんだから」

有里「今の着ぐるみ、陽介の同僚?」

陽介「あー、そんなようなもんだ。で、今日はどうしたよ」

有里「僕生活用品何も持ってないから」

陽介「なんだ、普通に買い物ね。そうだ、菜々子ちゃんはクマに預けてよ、ちょっと話さねえか?」

有里「仕事はいいの?」

陽介「ああ、今日は正式にバイトで入ってるわけじゃねえんだ。だから大丈夫」

有里「そう。じゃあ別に構わないよ」

陽介「うち、フードコートもあんだよ。そこで話そうぜ!おばちゃーん!ちっと抜けんねー!」

おばちゃん「はいよー、いつもありがとねー!」



【ジュネス内・フードコート】


陽介「よっと、炭酸飲めるか?」

有里「大丈夫」

陽介「いやー、それにしても良かったな。とりあえずでも拠点が決まってよ」

有里「本当に……そういえば陽介、色々手を打ってくれてたんだって?」

陽介「ん?ああ、まあな。どれも成果なしだったけどよ。言ったろ?出来る事なら力になるってよ」

有里「気持ちが嬉しい」

陽介「へ、へへ。なんだよ、照れるじゃねえか」

>陽介は嬉しそうにしている。

陽介「……なんか、懐かしいな」

有里「何が?」

陽介「いや、前に住んでた友達とさ、よく集まったんだよ。ここで」

有里「僕に似てるっていう?」

陽介「そ。そのソイツとさ、他の仲間と一緒に集まってよ……」

有里「いいね……」

>陽介は、なんだかしんみりしているようだ。

陽介「……あ、そういやさ、有里ってオカルトとか得意?」

有里「オカルト?」

>陽介は雰囲気を変える為か、妙な切り出しで話し始めた。

陽介「おー。お前の情報収集にさ、結構遅くまでネットとかしてんだよ、最近」

有里「本当にありがとう」

陽介「や、それはいいって。でさ、最近、夜中に変な時間あるんだよな」

有里「変な時間?」

陽介「決まって丁度12時くらいか。PCが止まるんだよね」

有里「!?」

陽介「空気も何か変な感じだしさ、停電か?って思うんだけど、他の連中に聞いても停電なんて知らねーって言われるし……」

有里「月だけが光ってる?」

陽介「そうそう、周り全部真っ暗でさ……って、有里、もしかして知ってる?」

有里「……陽介は、一日が24時間じゃないって言ったら、信じる?」

陽介「え、いきなりだな」

有里「一日と一日の間に、ある特定の人種しか知る事が出来ない時間がある……って、どう思う?」

陽介「それって、どういう……」

有里「『影時間』。そう呼ばれてる」


陽介「待て、マテ待てまて。ど、どういうことなワケ?」

有里「陽介が感じた変な時間の説明をしてる」

陽介「いや、お前記憶無いんだったよな?なんでそんな詳細に覚えてんのよ」

有里「……それを話すには、凄く長くなる。だから、今は聞かないで欲しい」

陽介「……わかった。今は、な。いずれ話してくれるよな?」

有里「うん、いずれね。……とにかく、そういう時間が存在して。それを知覚出来る存在がいる」

有里「それが、ペルソナ使い」

陽介「ペルソナっ……!って、何で有里がそれ知ってんだよ!」

有里「やっぱり、陽介もペルソナ使いなんだね?」

陽介「俺もって、まさか有里も?」

>黙って頷いた。

陽介「マジかよ……信じらんねぇ。あのさ、マヨナカテレビ……って、知ってるか?」

有里「マヨナカテレビ?」

陽介「そっちは知らねんだな。有里の言った影時間みたいなもんでさ、まあそれに関する事件があったんだよ」

有里「それで、どうしたの」

陽介「ここに集まった仲間ってのは、その事件解決の為に結成した特別捜査隊の事なんだよ」

有里「それって……」

>特別課外活動部みたいなものだろうか。

陽介「仲間も皆ペルソナ使いで、ついこの間事件を解決したばっかりなんだ」

有里「……驚いたな」

陽介「こっちの台詞だっての。まさか仲間以外にペルソナなんて話するなんてよ」

有里「陽介。頼みがある」

陽介「なんだよ、改まって」

有里「影時間の発生は異常事態だ。そして、影時間は……人に害を成す。その解決の為に、力を貸して欲しい」

陽介「……マジ、なんだな?」

有里「マジだ。その仲間たちを、もう一度集める事は出来ないだろうか」

陽介「さっき言った、引っ越しちまった友達以外はすぐにでも集められるぜ」

有里「出来れば、一度話をしておきたい。学校も始まって忙しいとは思うけれど」

陽介「そうも言ってらんねえんだろ?わかったよ、話してみる」

有里「すまない。ありがとう」

陽介「水臭い事言うなって。行き倒れとそれを介抱した中だろ?」

>陽介は頼もしく笑っている。

>『No.20 審判 自称特別捜査隊』のコミュを手に入れた。

>『No.20 審判 自称特別捜査隊』のランクが1になった。

>影時間は復活したが、新たな地で新たな仲間を得た。

>きっと、対抗する事が出来るだろう……。

今日も短めですが本日はここまで。
二人が徐々に近付き始めます。

何故雪子が悪い意味の月?
『迷い』そして『謎』か…?
はっ!『笑いのツボ』が『謎』か!

番長とキタローの違い
番長
・無自覚たらし
キタロー
・確信犯たらし

では本日分。

【2012/4/7(土) 晴れ 巌戸台分寮】


>昨夜の美鶴とアイギスとの会話で思いついた事がある。

>ベルベットルームの入り口を探そう。

>……近くにあるはずだ。

天田「鳴上先輩。どうかしたんですか?」

鳴上「ああ。ちょっと出かけようと思って」

天田「そうですか。あ、そういえばポロニアンモールの案内、結局できてませんね……」

鳴上「ああ、色々あったからな……そういえば、あの辺りはまだ見てないのか」

天田「どうかしましたか?」

鳴上「ポロニアンモール、ちょっと行ってくる」

天田「あ、でしたら僕も……」

鳴上「いや、すぐ戻ってくると思うから。案内はまた今度頼む」

天田「そうですか?じゃあいってらっしゃい」

>ポロニアンモールへ行く事にした。


【ポロニアンモール】


>賑やかだ……。

鳴上「ここのどこかにあるといいが……」

エリザベス「……」

>視界の端に青い服が見えた。

鳴上「……?」

>よく確かめてみよう。

エリザベス「……」

鳴上「……」

>どうやら、見間違いでは無いようだ。

>ゲームセンターのクレーンゲームに熱中している青い服の女性……。

>ベルベットルームで出会った、エリザベスに間違いない。

エリザベス「!」

>あ……。

>掴んだはずのジャックフロスト人形が落ちてしまった。

>……大人としてあるまじき顔をしている。止めよう。

鳴上「あの、エリザベス……さん?」

エリザベス「?……あら、ごきげんよう」

>エリザベスはさらに五百円を投入しようとしている。

鳴上「それ、欲しいんですか」

エリザベス「いえ、ほんの戯れにございます」

>……。

>黙って百円を入れ、ジャックフロスト人形を取った。

エリザベス「……お上手ですね」

鳴上「いえ、何故かすごく取りやすい位置まで来ていたので……どうぞ」

>エリザベスはきょとんとしている。

鳴上「よく考えたらそこまで好きなキャラでも無かったので、差し上げます。どうぞ」

エリザベス「まぁ、そうですか?では、遠慮なく」

鳴上「……ええと、エリザベスさん。あなたは、ベルベットルームの……」

エリザベス「はい。ベルベットルームで主イゴールの補佐をしております」

鳴上「では、何故ここに?」

エリザベス「いけないのでしょうか?」

鳴上「いえ、そういうわけでは……」

エリザベス「すぐ帰れる位置なので大丈夫です。ほら、あそこに」

>指差した先には見覚えのある青いドアがある……。

鳴上「なるほど、確かに」

エリザベス「この後、タコ焼きを食べたらまた戻ります。……ところで、何か主にご用でも?」

鳴上「いえ、そういうわけではないんです。というか、用があったのはエリザベスさんで」

エリザベス「私に、でございますか」

鳴上「はい。……タコ焼きなら、俺が買ってあげますから、少しお話いいですか」

エリザベス「ええ、いつでも」

>……謎のタコ焼きを買った。

鳴上「……」

>エリザベスは嬉しそうにタコ焼きをつついている。

鳴上「ええと……」

エリザベス「お話、でございましたね。どうぞ」

鳴上「あ、はい。まず、エリザベスさんのお姉さんがマーガレットなんですよね?」

エリザベス「その通りでございます。それと、私の事はエリザベス、とお呼びください。たかが従者ですので」

鳴上「じゃあ、エリザベス。マーガレットはペルソナを自在に付け替える、ワイルド能力を持っていた」

エリザベス「はい。当然私もワイルド能力を所持しております」

鳴上「やっぱり、そうなんだな」

エリザベス「ええ。ですが、それが聞きたかったわけでは無いのでしょう?」

鳴上「……あなたは、いえ、あなたとあなたの主……イゴールは、この街で他にもワイルド能力を持った人物と関わった事がある」

エリザベス「はい、確かに」

鳴上「その人の話を聞きたい。……あなたから見た、彼の話を」

エリザベス「……彼は、酷い人でした」

鳴上「酷い?」

エリザベス「私の願いの尽くを受け入れ、叶え、それまで人形のようだった私に生きる事の意味を見出させ……」

エリザベス「その挙句、私では無い仲間を守る為、己の全生命を賭して奇跡を起こし、私の前から消えてしまったのです」

鳴上「……」


エリザベス「もしもう一度、いけしゃあしゃあと私の前に出てきやがりましたら……」

鳴上「出てきたら?」

エリザベス「メギドラオンでございます」

鳴上「……ええと、あの」

エリザベス「大いなる封印について、お察しになられましたか?」

鳴上「やっぱり、その人が自分の身を犠牲にして……って、何故それを?」

エリザベス「あなたは、もしその時が来たらご自身の身を捨ててでも、と考えていらっしゃる。違いますか?」

鳴上「……俺なりに、考えた結果なんだが」

エリザベス「それも一つのこたえだと、私は思います。自信をお持ちになってください」

鳴上「エリザベスは、もしかして俺にその話をする為に?」

エリザベス「何のことでしょう。今日の話はタコ焼きとこの人形のお礼です。他に意味はございません」

鳴上「そうか……ありがとう」

エリザベス「こちらこそ、ありがとうございます。……もしも、の話をしても?」

鳴上「ん?」

エリザベス「もしも、あの人が私の前に現れたら」

鳴上「メギドラオンなんだろ?」

エリザベス「ええ。もしいつもの様子でふらふらと現れようものなら。ですが、もし万が一、例えば誰かと関わり合う上で偶然出会う事になったら」

エリザベス「……その時は、仕方なく素直になってみようかと」

鳴上「……なるほど。よくわかったよ」

エリザベス「なによりでございます。あ、いけませんね。私ばかりが食べていては……はい、あーん」

>エリザベスにタコ焼きを食べさせてもらった。

>タコ焼きを完食すると、エリザベスは恭しく一礼し帰っていった……。

>『No.09 隠者 エリザベス』のコミュを手に入れた。

>『No.09 隠者 エリザベス』のランクが1になった。


【同日夜 巌戸台分寮】


>ラウンジでコロマルと戯れていると、美鶴が帰ってきた。

美鶴「いや、驚いた。あれだけ晴れていたのに、急に降りだしてきたぞ」

>美鶴の髪が濡れて頬に張り付いている。

>窓の外を見ると、確かに大粒の雨が降っている。

天田「桐条さん、天気予報見なかったんですか?今日の夕方から明日の朝まで、ずっと雨って予報でしたよ」

>とりあえず、バスタオルを渡した。

美鶴「ああ、すまない。助かる……そうか、うっかりしていた。私生活でも油断は禁物ということか」

アイギス「皆さん、お話したいことが」

>アイギスが皆を呼んだ。

美鶴「話というと、あの事か?」

アイギス「ええ、皆さんお揃いのようなので良い機会かと」

天田「あの事ってなんです?」

アイギス「最初の日、影時間が発生した3月31日……確かにお二人はシャドウに襲われた。でしたよね?」

鳴上「ああ、それは間違いない」

天田「僕も覚えてます。それがどうかしたんですか?」

アイギス「それから、鳴上さんは倒れ、天田さんも毎日は影時間を見回ってはいない。そうですね?」

鳴上「ああ。体調が完全に戻るまでは探索もお預けだって言われてる」

天田「僕も流石に毎日は……学校もありますし」

アイギス「私と美鶴さんは毎日見回りに出ていました。それで、思った事があります」

鳴上「毎日……言ってくれたら手伝ったのに」

美鶴「気にするな。私もアイギスも時間には融通が利くし、なにより経験者だからな。それで、思った事なんだが……」

アイギス「シャドウが、いないんです」

鳴上「え?」

天田「……そういえば、確かに。僕が見回った日も一体も……」

美鶴「あの日から毎日、影時間には街を一周するようにしていた。しかし、初日に君達が襲われて以降、誰かが襲われたという話も無いし、シャドウも確認できていない」

鳴上「でも、影時間はシャドウのせいで発生して、シャドウが徘徊する時間なんでしょう?」

アイギス「そのはずです。だから、何か変だと思って相談しようと」

天田「……どういうこと、なんだろう」

>アイギスと美鶴から奇妙な報告を聞いた。

>全員で話し合ったが、その後も結論は出せなかった……。


【深夜】


>眠れない。

>テレビの中でも無いのに、この事件は霧の中にあるようだ……。

>おかしな事が多すぎて、違和感を違和感が上塗りしているような感覚。

>……眠れない。

>!

>影時間だ。

>あれ以来、この時間帯は寝て過ごしていたから体感するのは久しぶりだ……。

>…………?


>また、違和感……なんだろう、これは……。

>窓ガラスに雨が当たって、月は見えないが……。

鳴上「雨が……?」

『影時間には、あらゆる物の活動が止まる』

鳴上「なんで、雨が……!?」

>影時間では月以外の光源が無い。

>影時間ではシャドウとペルソナ使い以外の音源が無い。

>なら、この窓を叩く雨の音と、本来煌々と輝いているはずの月を覆う雲は何だ。

鳴上「雨……雨?」

>雨。影時間の始まる時間。影時間中はずっとその時間だ。

>雨。夜12時。テレビ。

>マヨナカテレビ……!

鳴上「皆には話していない……誰も、気付いていないのかも」

>この部屋にテレビは無い。部屋を出て、ラウンジに降りる。

>古いブラウン管テレビだ。

「ザーザーザーザー」

>雨の音ではない。

>テレビのノイズだ……。

鳴上「……明日、陽介に連絡をしよう」

>電源が着くはずの無いテレビには、どこかの光景が映しだされている。

>真ん中にそびえる塔は、何か不吉な物に見えた。



【2012/4/7(土) 晴れ ジュネス内フードコート】


陽介「っし、皆良く来てくれた!」

有里「僕は有里湊。陽介から話は聞いてる……と思うんだけど、よろしく」

?「はいはーい!アタシ、久慈川りせって言います!有里さん、よろしく!」

?「あー……俺は、巽完二……ッス。有里さんって、いくつなんスか?」

有里「一応、18歳だよ」

完二「じゃあ先輩ってワケだ。よろしくお願いしゃッス!」

?「僕は、白鐘直斗です。有里さん、記憶喪失だと伺いましたが……?」

有里「ああ、アレは嘘。よろしく」

直斗「嘘?……まあ、それを含めてお話を聞かせてもらいましょうか」

千枝「私達はもう知ってるよね」

天城「で、有里くんが話って……?」

有里「うん。君達は、普段何時に寝てる?」

りせ「ヤダ、早速私生活チェック?有里さんったらもー」

陽介「いや、真面目な話な」

千枝「私は結構早いよ。10時にはもう眠くなっちゃうんだー」

完二「俺もッス。家手伝ったりすると結構疲れるんスよねー……」

天城「私も完二君と同じ感じかなー」

有里「完二君と同じ感じ?」

天城「……ぷふっ」

陽介「有里、そこはいーから」

りせ「私もそのくらいかも。仕込みとかいろいろあるから早めに寝るようにしてるよ」

直斗「僕はもう少し遅いですが……それでも11時には大体寝ています」

有里「……すごいな、皆。今時の高校生とは思えない就寝時間だね」

陽介「驚くとこそこかよ!」

有里「冗談はさておき。じゃあ皆、眠っている間に変な感覚を感じたりした事は?」

りせ「あ、アタシあるかも。なんていうんだろ、ぞわっ?ぶわっ?」

有里「りせちゃんはとてもビンカンなんだね」

陽介「お前って結構愉快なヤツなのな」

有里「冗談はさておき。陽介から、皆はペルソナ使いだって聞いてる。間違いない?」

直斗「……ええ。間違いありません。しかし、何故有里さんがペルソナの事を?」

有里「これから話すよ。……少し、長くなるかもしれないけど」

完二「構わねェッスよ。元々そのつもりで集まってンだ」

陽介「マジな話だっつって集まってもらったんだ。皆、ふざけてるようで覚悟はキメてるぜ」

有里「……そう。まずは、どこから話そうかな。うん、じゃあ『影時間』について……」

>今まで自分が辿ってきた経緯を説明した。

>……ただし、大いなる封印に全生命が必要であること、自分がその為に一度死を体験した事は伏せ……

>大いなる封印を行った際の副次的な作用で、時間と空間を跳躍したと伝えた。

完二「マジすか、それ……」

陽介「お前、ハンパじゃねーな……」

直斗「影時間とシャドウ……か」

りせ「なんか、マヨナカテレビに似てる、かも……」

千枝「人も、襲われちゃうんだよね……」

天城「でも、有里くんがこうして話してくれたって事は、私達に出来る事もあるんだよね?」

有里「出来る事なら協力して欲しい。今はまだ何も見えないけれど、この事件の真実を追えば、きっと終わらせる事が出来るはずなんだ」

陽介「真実は霧の中、か。まぁよ、俺は昨日話聞いてからそのつもりだぜ」

千枝「人助け、だしね」

天城「私達に出来る事があるなら、やらなくちゃって思える」

完二「そんな気味悪ィ話があったんじゃ、安心して夜も眠れねェ。俺ァやるぜ!」

りせ「なんか思い出すねー、去年の事!」

直斗「事件である以上、解決するのが僕の役目ですから」

有里「……ありがとう。でも、まだ具体的な解決策が見えたわけじゃないんだ。とりあえず、日替わりでパーティーを組んで街を見回るくらいかな」

直斗「そういえば、ずっと気になっていたんですが……クマ君はどうしたんですか?」

陽介「ああ、アイツさ、昨日までいたんだけど、急にいなくなってよ。多分テレビん中に帰ってるんだと思うけど……」

有里「テレビ?」

陽介「ああ、そっか。有里にゃまだ言って無かったな。昨日見たクマの着ぐるみがいたろ?アイツ、元々テレビん中の住人でよ。顔見せない時は大抵テレビん中に帰ってんだわ」

有里「ああ、マヨナカテレビ……」

>その日は、当番を決めて解散となった。

>マヨナカテレビ……聞いたことも無い話だが、少し引っ掛かる物がある。

>明日以降、少し聞いてみるべきかもしれない。


【商店街】


>この辺りだろうか……。

有里「あった」

>見覚えのある青い扉がある……。

>扉に手をかけた。

イゴール「ようこそ、我がベルベットルームへ……」

有里「あ、いたいた。マーガレット借りていいですか」

イゴール「……?どうぞ、お好きなように」

マーガレット「あの……?」

有里「話がしたいんだ」

マーガレット「情熱的なお誘いですこと……では主、少しの間席を外させて頂きます」

>マーガレットを連れて、ベルベットルームを出た。

有里「ふぅ」

マーガレット「お客様。私に一体どのようなお話が?」

有里「いや、特には無いんだ」

マーガレット「まあ」

有里「……僕と、昔の仲間との絆は切れ掛かっているね」

マーガレット「お気づきでしたか」

有里「自分の心の問題だからね。切れているというのも僕の側に問題があるみたいだ」

有里「……新しい場所で頑張って行こうって思うことが、前の場所を薄れさせる事になるなんてね」

マーガレット「人とはそうしたものでございます。しかし、正確には絆は切れているのではありません。強いて言うならば、待機状態と申しましょうか」

有里「それは、どういうこと?」

マーガレット「今の場所での絆が強く輝く為、以前の絆は見えにくくなっているのです。切れたわけではありません。未だ、強く強く繋がっていますよ」

有里「そう……そうだね。心っていうのも器用なもんだね」

マーガレット「そうですね。ところで、そのようなお話であれば、私を外へ連れ出す事も無かったのでは?」

有里「ああ、いや、それはおまけ。待機状態で存在しているとはいえ、今僕が新しく絆を繋げるのはここの住人だけだからね」

マーガレット「はあ……?」

有里「マーガレットとも、絆を育んでおこうかと思って」

マーガレット「まあ。嬉しいお話ですわ」

有里「マーガレットとの絆なら、強い力を得られる気がするんだ」

マーガレット「力の大小で友人をお選びになるのですか?」

有里「違うよ。絆を築きたいから選ぶんだ。きっと、マーガレットとなら強い絆で結ばれるだろうって、そういうこと」

マーガレット「……あまり、人をからかうのはおやめになった方がよろしいかと」

有里「本気」

マーガレット「……でしたら、またいずれ主に暇をもらいます。その時、存分に絆を深めるといたしましょう」

有里「ありがとう。頼りにしてる」

マーガレット「では」

>マーガレットはベルベットルームへ帰っていった……。

>『No.15 悪魔 マーガレット』のコミュを手に入れた。

>『No.15 悪魔 マーガレット』のランクが1になった。

有里「うーん、信じてもらえなかったかな。本気なんだけど」

>今日は、もう帰ろう。


【堂島宅 深夜】


>今日は少し夜更かしをしよう。

>出来るなら影時間をしっかりと感じておきたい。

>もし前回と違うならその差異を……。

>夕方から雨が降っている。

>この雨も、影時間になれば止む……。

>日付が、変わった。

有里「……!?」

有里「雨が、止まない?影時間は……いや、この感覚、確かめるまでも無い……」

有里「時計は動かない。辺りも一面真っ暗だ。ここまでは当たり前……」

>どうやら、今回の影時間はやはり様子が違うようだ。

>明日、陽介達と相談しよう。



【2012/4/8(日) 曇り ジュネス内フードコート】


陽介「よう、どうしたって?」

有里「連日すまない。けど少し聞いておきたい事があって」

陽介「例の話、だよな。いいぜ、何でも聞いてくれよ」

有里「ああ。君達が解決した事件……マヨナカテレビって言ったね」

陽介「そうだけど、それがどうかしたのかよ?」

有里「それについて詳しく教えて欲しい。もしかするとすごく重要かもしれないんだ」

陽介「……なるほど、な。よっしゃ、じゃあ詳しく教えてやるぜ!まず、マヨナカテレビってのはただの噂だったんだけどよ」

>PiPiPiPi……

>携帯の着信音?

>もちろん自分は持っていない。

陽介「っと、ワリ。電話だわ。えーっと……おー!相棒じゃねーか!」

有里「相棒……?」

陽介「わりい有里、ちょっと待ってな!おう、もしもし!久しぶりだなー、元気だったか!?」

陽介「そうそう、今な……んだって!?」

陽介「マヨナカテレビがまた映っただぁ!?」

有里「……!」

本日はここまで。
そろそろ合流かも?

はよ

>>87 お待たせしました。
では本日分。

陽介「どういうこったよ。……おう、おう……こっち?いや、多分誰も……そっか、前はこの街だけだったもんな」

陽介「おう、こっちでも確認してみるわ。なぁ、それって影時間ってのと何か関係あんのか?……ああ、そういやまだ言ってなかったな」

陽介「こっちに今すげえヤツがいんだよ。そいつと相談して……おう、いろいろやってみるわ。お前さ、GWにはこっち来るんだろ?」

陽介「そん時に色々擦り合わせてみようぜ。多分、そんなに頻繁に雨も降らないと思うし……お前はお前でやることあるんだろ?」

陽介「おう……気ぃつけろよ。じゃ、また何かあったら連絡するわ!」

有里「……相手は、例の彼かい?」

陽介「おう。やっぱマヨナカテレビの説明しなきゃなんねーみたいだわ。向こうで映ったんだってよ」

有里「詳しく」

陽介「まず、マヨナカテレビってのは雨の日の真夜中12時に映る、あるはずの無い番組の事だ」

有里「影時間と似てるね」

陽介「こっちはテレビさえありゃ誰にでも見れるんだけどな。で、その番組内容なんだけど、テレビの中に落とされたヤツによって変わるんだわ」

有里「落とされた?」

陽介「……まぁ、そこは話すと長い。内容は、主演になるヤツの心の暗い部分……シャドウってのが映っちまう」

有里「で、さっき彼から聞いた話では誰が映ってたの?」

陽介「それがさ、風景だけだったってんだよ。ちょっと今までと違うから、もしかして影時間関連かもって思ってさ」

有里「そうか……彼は影時間について知ってるの?」

陽介「なんか、知ってるみたいだったぜ。むしろ俺に『どこで聞いた?』って言ってた」

有里「……彼は、今引っ越して遠くにいるんだったね。今、どこに住んでるの?」

陽介「ああ、こっちと違って都会だぜ。たしか、月光館学園ってとこの寮に住んでるはず……って、あれ?」

有里「昨日、僕の話聞いてたよね」

陽介「ああ。そうか、すげえ偶然だな……有里の住んでたとこか」

有里「うん……でも、仲間のほとんどはもう卒業してるはずなんだ。誰から聞いたのかわからないけど……」

陽介「じゃあ、お前も行ってきたらどうだ?堂島さんにいつまでも世話んなってるつもりも無いんだろ?知り合いに会えるかも知れねえし」

有里「……いや、いいさ。僕はこの街で事態を解決する」

陽介「なんでだよ。せっかく……」

有里「いいんだ。堂島さんには悪いけど……僕は向こうに帰る気は無い」

陽介「……ま、深くは聞かねぇよ。有里は、俺なんかよりずっといろいろあったと思うしさ」

有里「ありがとう。そうしてくれると助かるよ」

陽介「でも、仲間なんだろ?いつか、顔だけでも見せてやったほうがいいんじゃねえの?心配とか、してると思うぜ」

有里「だろうね。けど、仲間に会っちゃうと……」

>決心が、揺らぎそうだから。



【商店街】


>そういえば、昨日少しだけ聞いた話では……

>あの久慈川りせという子はアイドルで、今は豆腐屋の手伝いをしているらしい。

>……よくわからないが、とりあえずもう少し話をしておこう。

有里「すみませーん……?」

>店内は地味なものだ……が、割烹着で忙しなく動きまわる少女は確かに場にそぐわない華やかさがある。

りせ「はーい……って、有里さん?どうしたの?」

有里「いや、本当に仕事してたんだね。ちょっと話出来ないかなと思ったんだけど……ごめんね」

りせ「本当にしてるよー。えっと、お話……ちょっと待っててね!」

>りせは奥に走っていった……。

>何やら声と足音が聞こえる。

>待っていると、私服に着替えたりせが出てきた。

りせ「お待たせ!ここじゃ邪魔になっちゃうから、どっか別で話そ!」

>りせに腕を引っ張られて連れて行かれた……。


【鮫川河川敷】


りせ「とりあえずこの辺!歩きながらでいいですか?」

有里「ああ、大丈夫だよ。そんなに大事な話ってわけでもないしね」

りせ「そうなの?なんかガッカリかも」

有里「いや、ちょっとりせさんと話がしたくてさ」

りせ「りせで良いですよお、年上なんだし」

有里「じゃあ、りせちゃん?」

りせ「んー……子供扱いはいやぁー……」

有里「……りせ?」

りせ「はいはい、なんでしょー」

有里「りせは、どうやって前の事件に関わったの?」

りせ「えっと……テレビに落とされた所を、先輩たちに助けてもらって、それからかな」

有里「そう。辛かった?」

りせ「え?」

有里「マヨナカテレビは、自分の見たくない部分を映すって聞いたから」

りせ「あ、あはは。最初はね、かなり辛かったです。有里さんは、すっごい機嫌が悪い時に、みんな消えちゃえー!って思ったり、しない?」

有里「まぁ、そういう時もあるよね」

>……無い。

りせ「うん、まぁ誰でもあるよね、そういう事。そういう、後から反省しちゃうような本音を目の前に並べられるの。それが辛くないわけないじゃんって感じ」

有里「そっか……」

りせ「でも、いいんだ。そのおかげで先輩たちと仲良くなれたし、ほんとの自分ってのも見つかったしね。逃げてばっかじゃ、やっぱり駄目だったんだと思う」

有里「……」

りせ「やだ、そんな神妙な顔しないでくださいよぉ。すっごく辛かったけど、乗り越えたんだから褒めてもらうとこでしょ?」

>これは、地顔だ……。

有里「うん。りせは強いんだね。すごいよ」

りせ「え、えへへ……なんか、嬉しいな」

>りせは照れたように笑っている。

りせ「有里さんだから言うけどね、あたし、先輩の事好きなんだよね」

有里「陽介?」

りせ「いや、それは無い。あ、有里さん、まだ知らないんだっけ。転校しちゃった先輩がいるの」

有里「話には聞いてる。その人が好きだったの?」

りせ「や、改めて言われると照れちゃうな……うん。好きだったっていうか、今でも好き。あの人は……って、語るような事でもないんですけどね」

有里「告白は?」

りせ「え?」

有里「ちゃんと言ったの?」

りせ「……いつか、離れ離れになっちゃうのわかってたから、言ってない。あたしアイドルだし、そういうのもどうなのかなって」

有里「そう……」

りせ「で、なんでこんな話しちゃったかというとですね」

有里「ん?」

りせ「有里さんと話してると、先輩と話してるような気分になるっていうか……浮気しちゃいそー」

有里「付き合ってないなら、浮気でも無いんじゃない?」

りせ「そ、そうなんだけど!あたしは純愛タイプだから、浮つかないの!ほんとは!」

有里「そう」

りせ「結構衝撃的なこと言ったつもりなんだけどなー……そういうとこも、何か似てる」

>りせは嬉しそうに笑っている。

りせ「……じゃ、そろそろ帰ります!またお話ししてくださいね!」

有里「うん。また会いに行くよ」

りせ「約束ですよ!」

>笑ってりせと別れた。

>『No.17 星 久慈川りせ』のコミュを手に入れた。

>『No.17 星 久慈川りせ』のランクが1になった。

>明日は彼に話を聞こう……。



【2012/4/9(月) 晴れ 商店街】


有里「しまった」

>そういえば、もう学校が始まっている。

>ここに来ても、完二に会うことは出来ないだろう。

有里「うーん……仕方ない、夕方にまた来よう」

>とりあえず、今は……

有里「白鐘さん、だっけ。見てないで話をしようよ」

直斗「なっ」

>建物の影から覗いていた直斗を呼んだ。

直斗「いつから、気付いていたんですか?」

有里「最初から。君は学校行かなくていいの?」

直斗「少し様子を見てから向かうつもりでした……全く、不思議な人ですね」

>直斗は観念したようだ。


【中華料理屋 愛家】


有里「座って喋れる所を他に知らなくて」

直斗「なら僕に案内させてくれれば良かったのに……」

有里「不満?」

直斗「いえ、別に不満は。で、何のお話ですか」

有里「白鐘さんは何をしてる人なの?」

直斗「は?」

有里「事件を解決させるのが役目って言ってたよね」

直斗「ああ、そういう事ですか。……探偵、ですよ」

有里「見た目は子供ってやつ?」

直斗「子供って、そう見えますか?」

>直斗は不満気だ……。

有里「いや、言ってみただけ。探偵だから、疑わしい僕を尾行していたわけだ」

直斗「……疑っているわけではありません」

有里「じゃあ趣味?」

直斗「趣味でもありません!」

有里「白鐘さんは……」

直斗「あの」

有里「ん?」

直斗「年上にさん付けで呼ばれるのは、少しむず痒いので」

有里「じゃあ白鐘ちゃん?」

直斗「いえ、そうではなく……って、ちゃん?」


有里「女性はちゃんだと思うんだけど、それともくんの方が好み?」

直斗「え、ぼ、僕が女ってわかってたんですか?」

有里「どこから見ても女の子だけど」

直斗「……直斗で」

有里「直斗ちゃん?」

直斗「呼び捨てで構いません!」

有里「直斗」

直斗「はい。それでお願いします」

有里「で、直斗は僕の事をどう思ってるの?」

直斗「……不思議な人だなぁ、と」

有里「具体的に」

直斗「ぐ、具体的に?ええと……」

有里「気になっちゃう?」

直斗「へ?」

有里「僕のこと」

直斗「まあ、気になっているといえばそうですね」

有里「そう、ありがとう」

直斗「……?」

有里「直斗も彼の事が好きなの?」

直斗「彼?」

有里「引っ越した先輩」

直斗「っ、なっ、ど、どうして今先輩が出てくるんですか!」

有里「なんとなく、勘で」

直斗「あ、ぅ、はぁ。僕はそういう事に興味はありません」

有里「でも僕のこと気になってるんでしょ?」

直斗「そういう意味じゃありません!」

有里「そうなの?」

直斗「そうです……有里さんと話していると、すごく疲れます」

有里「ドキドキする?」

直斗「ええ、まぁ……いや、だからそういう意味じゃないですから!」

有里「直斗をからかうのは面白い」

直斗「ああ、もう!好きにしてください……」

有里「うん。僕は直斗さえ良ければもっと仲良くなりたいと思ってるんだけど」

直斗「仲良く、ですか?」

有里「駄目かな」

直斗「いえ、駄目というわけでは……しかし、仲良くと言っても……」

有里「これから、事件を解決するにあたって、メンバーが親密になる事は必要だと思わない?」

直斗「確かに、そういう面から見れば有里さんは一番の新入りですから、他のメンバーと交流する必要はありますね」

有里「でしょ?だから直斗とも……」

>ぐっと身を乗り出して顔を近付けてみた。

直斗「……っ」

有里「仲良くなりたいな、と思って」

直斗「わ、わかりました!わかりましたからちゃんと座って下さい!」

有里「うん。じゃあ、捜査とか関係なく遊びに誘っても?」

直斗「か、構いませんよ。まあ、予定が無い時に限りますが」

有里「ありがとう。引き止めて悪かったね。学校は?」

直斗「そうですね、そろそろ行かないと。では、失礼します……有里さん」

>会釈をし、ズレた帽子を直すと直斗は席をたった。

有里「なんか、最近綾時みたいになってるな……僕……」

>『No.16 塔 白鐘直斗』のコミュを手に入れた。

>『No.16 塔 白鐘直斗』のランクが1になった。


【同日夕方 商店街】


有里「さてと」

>下校してきた完二を捕まえた。

完二「っと、有里サン。家の前でなにやってんスか」

有里「完二君と話がしたくて」

完二「あ、呼び捨てでいいッスよ。ええと、じゃあ荷物置いてくるんで、ちっと待っててくださいや」



【鮫川河川敷】


完二「なんでこんなとこなんスか」

有里「昨日りせに連れてこられて、割りといい場所だったから」

完二「あー、皆のとこ回ってんスね。ご苦労様ッス」

有里「やっぱり、メンバー皆と仲良くなりたいからね」

完二「そうッスね……」

>完二は黙ってしまった。

>……会話が続かない。

完二「……やっぱり、影時間ってヤツは、危ないんスよね」

有里「……そうだね」

完二「……この街の皆も、危ないッスか」

有里「……そう、だね」

完二「やっぱ、そうッスよね……」

有里「誰か、大事な人でも?」

完二「オフクロ……と、街のヤツら皆ッス」

有里「多いね」

完二「おかしいスか」

有里「いや、驚いてる。完二は良い奴なんだね」

完二「ヘッ、そうでもねえよ」

>完二は照れているようだ。

完二「自分の住んでる街……俺ぁここしか知らねぇから。この街くらいは守ってやりてぇなって思うんスよ」

有里「うん」

完二「いけすかねぇヤツも一杯いやがるし、けど同じくらい好きなヤツらもいるんス。だから……」

有里「うん」

完二「なんか、恥ずい事言っちまった気がすんなぁ……」

有里「いや、完二の事が良くわかったよ。今日はありがとう」

完二「な、なんスか。この程度で俺の事わかった気になんないでくださいよ!」

有里「そうだね。だから、また話をしよう」

完二「まぁ、暇な時なら。じゃ、俺ぁ帰りますわ」

>『No.14 節制 巽完二』のコミュを手に入れた。

>『No.14 節制 巽完二』のランクが1になった。

【堂島宅 夜】


>捜査隊のメンバーと話をした。

>残るは……

有里「転校した彼か……」

有里「なんとなく、接触するタイミングは選ばなければいけない気がする」

>彼はきっと鍵を握っている。

>そして、恐らくは彼にとっての自分も……。

有里「GW、ね」

>もし自分が港区に行って、恐らくは彼といるだろうかつての仲間達に出会ったとして……

有里「どんな顔すればいいのやら……」

>……寝よう。


【2012/4/8(日) 曇り 巌戸台分寮】


>昨夜のアレはまず間違いなくマヨナカテレビだが、今までのパターンとは随分と違う。

>とにかく、陽介に連絡しよう。

>携帯を取り出して、登録してある番号にかける……。

>呼び出し音が何度か鳴り、陽介に繋がった。

鳴上「陽介か?」

陽介『おう、もしもし!久しぶりだなー、元気だったか!?』

鳴上「ああ」

陽介『そうそう、今な……』

鳴上「聞いてくれ、陽介。マヨナカテレビがまた映ったんだ」

陽介『んだって!?マヨナカテレビがまた映っただぁ!?』

鳴上「間違いない」

陽介『どういうこったよ?』

鳴上「俺にもよくわからない。けど、昨日の12時、間違いなくテレビは映っていた。どこかの殺風景な場所に、バカ高い塔が立ってる映像だ」

陽介『おう、おう……』

鳴上「そっちでは誰か確認してないか?」

陽介『こっち?いや、多分誰も……そっか、前はこの街だけだったもんな』

鳴上「ああ、地域が関係あるのかもしれないと思って」

陽介『おう、こっちでも確認してみるわ。なぁ、それって影時間ってのと何か関係あんのか?』

鳴上「なんで陽介が影時間の事を?」

陽介『ああ、そういやまだ言ってなかったな。こっちに今すげえヤツがいんだよ。そいつと相談して……』

鳴上「すごい奴……とにかく、いろいろ確認してみてくれ」

陽介『おう、いろいろやってみるわ。お前さ、GWにはこっち来るんだろ?』

鳴上「今の所その予定だけど」

陽介『そん時に色々擦り合わせてみようぜ。多分、そんなに頻繁に雨も降らないと思うし……お前はお前でやることあるんだろ?』

鳴上「ああ」

陽介『おう……気ぃつけろよ。じゃ、また何かあったら連絡するわ!』

鳴上「わかった。頼んだぞ」

>陽介は影時間の事を知っていた……。

>すごい、奴?

>とにかく、他のメンバーにマヨナカテレビの事を説明しないと……。

>寮内を回ろう。


【ラウンジ】


>メンバーを集めて、マヨナカテレビについて説明した……。

美鶴「つまり、テレビの中限定の影時間……のようなものと考えていいのか?」

鳴上「そんな感じです」

アイギス「それが、昨夜映っていた。そして……」

美鶴「聞いた話の通りだとすれば、その塔とやらは間違いなくタルタロスだろうな」

鳴上「その、タルタロスについて説明してもらってもいいですか?」

美鶴「そうか、まだ言っていなかったな。タルタロスは、時間と空間に干渉するシャドウの力、その空間側面の現象だ」

アイギス「月……つまり、Nyxの復活の為の祭壇のような物だと考えてかまいません」

鳴上「……なんで、それがテレビの中に?」

アイギス「それは、わかりません……」

天田「あの、いいですか?」

美鶴「どうした?」

天田「仮説なんですけど……今、影時間中にシャドウが目撃出来ないんですよね?」

アイギス「確かにそうです」

美鶴「私のアナライズにも何も反応がない。見えないというより、いないという方が正しいな」

天田「で、テレビの中っていう別世界に……シャドウが集まるタルタロスがあった」


鳴上「俺が見た妙な塔がタルタロスだっていうなら、そういう事になるな」

天田「シャドウは、テレビの中にいるんじゃないでしょうか」

アイギス「……なるほどなー」

美鶴「その口癖も懐かしいな……しかし、ならば初日に君達が襲われた事はどう説明する?」

天田「初日は普通の影時間だったのかもしれません。それから、どういう原因かマヨナカテレビが映り始めて」

鳴上「外にいたシャドウたちがテレビの中へ移動した?」

天田「の、かもしれません。マヨナカテレビは雨の日しか映らないけど、それ以外の日にテレビの中の世界が存在しないわけでは無いんですよね?」

鳴上「ああ、それはそのはずだ……つまり、昨日雨が降ったから俺たちに見えたけど、実はかなり早い段階でテレビの中にタルタロスができていたってことか」

天田「今となっては確認する術はありませんけどね。そう考えれば、奇妙な事象に説明がつくんじゃないかと」

美鶴「なるほど……確かに在り得ない話ではないな」

天田「問題は、だからといってテレビの中に今すぐ飛び込んでいいのかって話だと思います」

鳴上「はっきり言って危険だし、どこに出るかもわからないからな……以前は、ナビゲーターがいたんだが」

アイギス「とにかく、次の雨を待つのが確実でしょうか。様子を見てから決めるということで」

美鶴「そうだな……と、そうだ。伝え忘れていた。今日、また入寮者が来るぞ」

鳴上「え?」

美鶴「夕方には着くと言っていたから、誰か迎えてやってくれ。私は少し出掛けなければならないから」

天田「わかりました。僕は一日寮にいますし」

アイギス「私もですね」

鳴上「俺も、一応挨拶くらいはしたいんで……」

美鶴「うん。それでは出かけてくる。夜には戻るから、後は頼んだ」

>入寮者……一体誰だろう。

【同日 夕方】


>部屋で明日の準備をしていると、扉がノックされた。

?「えっと、鳴上くん?いますか?」

>誰だろう……。

?「元特別課外活動部部員の、山岸風花って言います。良かったらお話しませんか?」

>どうやら、入寮者というのはこの人のことらしい。

鳴上「どうぞ、お入りください」

風花「えっ……し、失礼します」

>風花が部屋に入ってきた。

鳴上「椅子とか無いんで、良かったらベッドにでも座っててください」

風花「あ、はい……」

鳴上「で、お話というのは……?」

風花「ん?ううん、別に何か話があったわけじゃないの。この部屋に住んでるって聞いて、どんな人かなって思って」

鳴上「この部屋に?」

風花「私達がここに住んでた頃はね、ここも人が入ってたの。その人は当時のリーダーでね」

鳴上「ああ、話には聞いてます」

風花「だから、何か懐かしくなっちゃって。ごめんね、急におじゃまして」

鳴上「いえ、別に用事があったわけでも無いんで」

風花「そっか、良かった。もうここでの生活も慣れた?」

鳴上「まぁ、随分と。皆さんよくしてくれるし……」

風花「皆良い人だよ。そうそう、久しぶりに会ったら天田君があんなに大きくなっててびっくりしちゃった!もうすぐ私追い越されちゃうなぁ」

>風花はまるで昔からの知り合いに対するように話しかけてくる。

鳴上「山岸さん、良い人なんですね」

風花「ええっ、突然どうしたの?」

鳴上「いや、何となく。初対面の俺でもそんな風に話してくれるし」

風花「あっ、馴れ馴れしかった?ごめんね?」

鳴上「嬉しいです、そういうの」

風花「……やっぱり、ちょっと懐かしいんだと思う。この寮」

鳴上「いい思い出ばかりでは無いと聞いていますが」

風花「うん、それは、そう。でも、やっぱり楽しかったし……全体で見るといい思い出かな」

鳴上「……そうですか」

風花「そうそう、私、今大学生なんだけど、今度手続きして正式にここに住む事になると思うから。その時はよろしくね」

鳴上「え?今日入寮じゃ……」

風花「まだいろいろ終わってないの。学校に書類も出さないといけないし……今日はそろそろ帰ろうかなって思って」

鳴上「あ、そうですか……いろいろ、ありがとうございます」

風花「私は何もしてないよ。また皆の力になれるよう頑張るから、鳴上くんも頑張ってね!じゃあ、またね」

>風花は出ていった。

>『No.02 女教皇 山岸風花』のコミュを手に入れた。

>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが1になった。


>……なら、入寮者というのは誰だろう?

>天田にでも聞いてみよう。


【ラウンジ】


>玄関の外がなにやら騒がしい。

>様子を見に行こうか……。

>と、玄関の扉が開き、巨大な鞄が入ってきた。

?「いやー重いのなんのってこれが重いんだわ。おー、懐かしきかな巌戸台分寮!」

>鞄は男の持ち物のようだ。

>彼が入寮者なのだろうか。

?「お?お前、もしかして例のルーキー?」

鳴上「はい。この前転校してきました、鳴上悠です。よろしくお願いします」

?「いやー俺も先輩ってワケね!なんつーの?こう、嬉しくなるよなぁ!」

天田「何騒いでるんですか……って、順平さん!お久しぶりです!」

?「あ?誰だっけお前……って、もしかして天田か?おいおいこーんな小さかったのにどうした!?」

天田「皆して小さい小さい言うのやめてくださいよ。三年も経てばそりゃ成長しますって」

?「そりゃそうだな。おっとルーキー。自己紹介が遅れたな。俺は伊織順平。かつてこの分寮のエースだった男だ!」

鳴上「エース!?」

天田「まぁ、頼りにはなりましたよ。ええ」

順平「あれ?ちょっと、そこはお世辞でもさ、もっと持ち上げるトコじゃない?」

天田「エースは言い過ぎじゃないかな……」

鳴上「違うのか」

順平「まぁ、エースでは無かったかな……うん……」

鳴上「ええと、とにかく、これからよろしくお願いします」

順平「おう!えーと、俺の部屋って、前と同じでいいのかね」

天田「あ、そのはずですよ」

順平「じゃあ鳴上!悪いんだけど荷物運の手伝ってくんね?重くて重くてよ」

鳴上「ああ、じゃあ手伝いますよ」

順平「この後輩を使う感じ!いいねー青春だね!」

天田「ていうか順平さん、大学はどうしたんですか?」

順平「あ?通うよ。手続きとかする前にこっち来ちゃっただけ」

天田「ああ……そうですか……」

順平「その目はかつての先輩に向ける目じゃねえぞ……」

>順平の荷物を運んだ。


順平「なぁ、鳴上よ」

鳴上「なんですか?」

順平「お前、前のリーダーの話聞いたか?」

鳴上「……少しは」

順平「話によりゃ、お前もペルソナを付け替えられるんだってな」

鳴上「あ、はい」

順平「俺はあの時、あいつが選んだこたえは間違っちゃねえと思ってる」

鳴上「……」

順平「誰も望んでなくても、自分が望んだ結末を迎えたんだ。幸せもんだと思わね?」

鳴上「……はい」

順平「こういうのって、女にゃわかんねーのかもなー。もうゆかりッチには会った?」

鳴上「ああ、この前……」

順平「小言言われたろ」

鳴上「よく考えろと言われました」

順平「へへ、やっぱりな。んなこったろーと思ったよ」

順平「いいか鳴上。俺含め仲間の誰一人、誰かの犠牲で解決する事なんか望んでねーぞ」

鳴上「……」

順平「だけどな、それしか無えって時、それでいいって思った時、お前の命はお前のもんだ。好きに使え」

鳴上「もし、そうなったら……」

順平「ま、そうならねーようにすんのが一番だわな!俺も頑張っから。ガラじゃねーけど。ま、一つよろしく頼むわ!」

>順平と握手をした。

>『No.01 魔術師 伊織順平』のコミュを手に入れた。

>『No.01 魔術師 伊織順平』のランクが1になった。



【2012/4/9(月) 晴れ 夕方 巌戸台分寮前】


>授業が終わって、寮に帰ってきた所、妙な男に出会った。

>ボロボロのマントを体に巻きつけている。ちらちら見える所によると、どうやらマントの下は上半身裸のようだ。

>男は寮をじっと見ている……。

?「お前、月光館の生徒か」

>男に話しかけられた。

鳴上「はい、そうですが……」

?「この寮は閉鎖されていたと思ったんだが……何故普通に使われているんだ?」

鳴上「ええと、それは……」

>言い淀んでいると、二階の窓から順平が見ているのが見えた。

>何かジェスチャーをしている……。

>引き止めておけ?

鳴上「所で、あなたはここで何を?」

?「俺か?久しぶりに近くまで来たから、懐かしい場所を回ろうと思ってな。そうしたら閉鎖されたはずの寮が使われてるじゃないか。それで不審に思ってこうして見ていたわけだ」

鳴上「あれ、もしかしてあなた、ここに住んでいた……?」

>と、寮の玄関が凄まじい勢いで開かれた。

美鶴「明彦ォ!!」

?「み、美鶴!」

>美鶴の後ろでは、順平がこちらを伺っている。

美鶴「一体今までどこで何をしていた!こちらから連絡を取ろうにもどこにいるかすらわからない!あれほどいつでも連絡出来るようにしろと言っておいたのに!」

?「ま、待て!ちょっとヨーロッパの山に登っていただけだ!それよりどうした、何故お前がここにいる?」

美鶴「もしこのまま捕まらなかったら処刑する所だ!全く……全て説明する。中へ入れ!」

?「あ、ああ……」

>美鶴は男を連れて寮に戻った。

順平「まあこうなるだろうと思ってたけどよ」

鳴上「あ、順平さん」

順平「お前、今の人はまだ会って無かったろ」

鳴上「あ、はい。やっぱり、元……?」

順平「俺の一個上で桐条先輩の同級生。初代特別課外活動部部員、真田明彦。それが今の半裸マントだ」

鳴上「……変わった人ですね」

順平「まぁ、な。桐条先輩のカミナリが収まったら俺らも入ろうぜ」

>しばらく順平と二人で時間を潰した……。


>寮に入ると、落ち着いたらしく二人は何か話をしていた。

美鶴「ああ、君か。……見苦しい所を見られたな」

真田「お前は相変わらず俺にだけ厳しいな……」

順平「愛情の裏返しっすよぉー、ね、桐条先輩」

美鶴「お前が私を怒らせるだけだろう」

真田「……悪かった」

鳴上「真田さん、ですね。俺、鳴上悠って言います。今この寮に住んでて……」

真田「ああ、さっき全部聞いた。すまなかったな、この非常事態に」

美鶴「本当にな」

真田「で、一つ確かめておきたい事があるんだが、いいか」

鳴上「え?」

>真田が立ち上がり、拳を振った!

鳴上「……ッ!」

>速い!

真田「……目は、閉じなかったな」

>拳は顔スレスレでピタリと停止した……。

美鶴「明彦!またバカな事を……」

真田「バカなもんか。鳴上がもし度胸の無い男なら、戦いからは身を引いた方がいいと思ったまでだ」

鳴上「それで、どうでしたか」

真田「……なぜ、避けなかった?」

鳴上「なんとなく、止めてくれそうな気がしたので」

真田「ふん、度胸は合格だ。……見えてたようだし、目もいいな。十分だ」

順平「昭和のスポ根だぜ、こんなの……」

>『No.04 皇帝 真田明彦』のコミュを手に入れた。

>『No.04 皇帝 真田明彦』のランクが1になった。



【同日 深夜】


>真田はそのまま入寮する事になった。

>随分とメンバーが増えた……。

鳴上「山岸さんが合流して、多分、岳羽さんも……」

鳴上「これから、どうしようか」

>マヨナカテレビの中にシャドウがいるという仮説を確かめるために、パトロールを継続しつつも雨を待つ必要が出てきた。

>雨の日まで、何も出来ないのだろうか……。

鳴上「いや、あるぞ。出来る事」

鳴上「絆の力……シャドウと戦うなら、絶対に必要になるはずだ」

鳴上「一人一人ゆっくり話を聞いていこう。それで……」

>……とにかく、今日は眠ろう。

>早く雨が降る事を祈りながら……。

今日はここまで。
コミュ回収が終わったので、これからコミュを伸ばしていきます。
誰から攻めるか……。

あと、どうでもいいんですが100レス目が順平登場っていうのはなんとも言えませんね。

では、また後日。

専ブラから書き込みテスト。
本日分。



【2012/4/10(火) 晴れ 月光館学園】


>ロングホームルームだ。

>陽気のせいか、みんなどこかぼんやりしているようだ。

>……先生も、あまりやる気が無いように見える。

>教室内はざわついている。

鳥海「まぁねーこんな日はまったりしちゃうのもわかるけど、あんたら今年は大事な年よー。人生決まるんだからねー真剣に聞いときなさい」

>進路か……。

鳴上「本当なら、去年くらいには概ね決まってるもんだよなぁ」

>事件にかまけていた……というのは言い訳だろうが、八十稲羽での生活は慌しくも楽しすぎた。

>時折、このまま時間が止まってしまえばいいと感じるほど……。

鳴上「将来の自分か……」

>……驚くほどに想像出来ない。

>周りのクラスメイト達も、おそらくはっきりとは決まっていないだろう。

>しかし、漠然とでも自分の人生の形を決めようとしている。

>自分はどうだろうか。

鳴上「命のこたえ、か……」

>これもまた、その一つなのだろうか……。

>とりあえず、今は事件の解決を考えよう。



【同日 夕方 巌戸台分寮】


美鶴「君か。お帰り」

鳴上「あ、ただいま帰りました」

美鶴「学校はどうだ?もう慣れたか?」

鳴上「ええ。クラスメイトもいいやつばかりですよ」

美鶴「そうか。君は今年で卒業だ。しっかりエンジョイするように。それと、言っておくことがある」

鳴上「はい、なんでしょう?」

美鶴「山岸とゆかり……岳羽の入寮日が決まった。三日後、二人で越してくるらしい」

鳴上「そうですか。随分と人が増えましたね」

美鶴「ああ。これで磐石と言っていいだろう。それで、相談なんだが」

鳴上「俺にですか?」

美鶴「ああ。今後、事件を追う上で、パーティー単位での行動が出てくると思う」

鳴上「パーティー単位?」

美鶴「毎夜毎夜、全員が都合がいいとは限らないし、もし出るにしても残っておく人員も必要だ。何か行動を起こす時はそうだな……四人」

鳴上「なるほど、確かにそうですね」

美鶴「それで、君にその際のリーダーをお願いしたいのだが……」

鳴上「俺が、ですか」

美鶴「うん、もし本当にテレビの中が舞台となるなら、そこを熟知している君が適任だと思う」

鳴上「しかし、俺なんかでいいんですか?歳も皆さんより下だし、それに……」

美鶴「君がリーダーだと言って文句を言う者はいないだろう。それに、臨機応変にペルソナを付け替えることができる君の能力は、周囲に気を配るリーダーという立ち位置にぴったりだと思うが」

鳴上「でも……」

美鶴「不満か?」

鳴上「能力から言えば適任かもしれません。けど、納得がいかないというか……」

美鶴「君は、以前リーダーをやっていた彼に似ている。私だけじゃない。おそらくは皆そう思っている」

鳴上「……」

美鶴「信頼されているということだ。頼む。君にしか頼めない事なんだ」

>美鶴は深く頭を下げた。

鳴上「や、やめてください!わかりました、引き受けますから!」

美鶴「……押し付けたような形になってすまない。だが、君なら勤められると信じている」

鳴上「わかりました。できる限りやってみます」

美鶴「ああ。君にばかり負担がいかないように全員でサポートする。よろしく頼むぞ」

鳴上「はい……」

>美鶴に信頼されているのを感じる……。

>『No.03 女帝 桐条美鶴』のランクが2になった。

>やはり、皆は自分の向こうに以前リーダーだった男を見ている……。

>……。


【深夜】


?「君とこうして話すのも久しぶりだね」

「……」

?「……また、会いにくるからね」



【2012/4/10(火) 晴れ 堂島宅】


堂島「湊。ちょっといいか」

有里「どうかしましたか?」

堂島「菜々子に聞いたが、友達がずいぶんできたってな」

有里「ええ、みんな僕に良くしてくれて……」

堂島「そうか。それでな、友達と連絡取るのも不便だろうと思ってな」

>堂島は何かを投げた。

堂島「携帯。お前は身分証も無いし、俺の名義で登録しといた」

有里「そんな、いいんですか?」

堂島「前にも言ったろ?悪いと思うならいつか返してくれたらいい。お前の好みがわからなかったから、適当にシンプルなのを選んどいたがいいか?」

>折り畳み式の携帯電話だ。渋いブルーのボディがかっこいい。

有里「かっこいいと思います。ありがたく使わせてもらいますね」

堂島「ああ。じゃ、俺は仕事に行ってくる」

>堂島を見送った。

>携帯電話を手に入れた。

>まず誰の連絡先を手に入れようか……。

>そうだ、あの人にしよう。



【ベルベットルーム】


有里「というわけなんだけど」

マーガレット「と、言われても……」

有里「アドレス帳の最初の一件になって欲しくて。駄目かな?」

マーガレット「駄目というよりも、私は携帯電話を持っていないのです」

有里「あれ?でも確かエリザベスは電話で……」

マーガレット「あれは、主の電話でございます。本来私用に使う物ではございません」

有里「そっか。僕はマーガレットと色々話したかったんだけど……な」

マーガレット「……申し訳ございません」

有里「いや、マーガレットのせいじゃないよ。浮かれて先走った僕が悪かったんだ」

マーガレット「その、お客様。よろしければお客様の番号とメールアドレスを教えていただいても?」

有里「それはかまわないけど、どうするの?」

マーガレット「もし個人用の携帯電話を持てる事になったら連絡させていただこうかと」

有里「ありがとう。うれしいよ。じゃあこれ」

>マーガレットの為に番号とアドレスをメモして渡した。

マーガレット「では、いずれご連絡いたします」

有里「うん。わざわざごめん。じゃあ、またね」

>一時間後……。

>Pipipipi……

>電話だ。

>番号はまだ堂島とマーガレットにしか教えていない。

>……まさか。

有里「はい」

マーガレット『主に掛け合った所、私も個人用の電話を持たせていただける事になりました。メールも送っておきましたので登録のほどお願いいたします』

有里「そう、良かったね。登録しておくよ」

マーガレット『またいつでもご連絡ください』

>電話が切れた。

>……マーガレットは、とてつもなく扱いやすいんじゃないだろうか。

>とにかく、マーガレットの連絡先を手に入れた。

>『No.15 悪魔 マーガレット』のランクが2になった。



【同日 夕方 ジュネス】


有里「いるかな……」

陽介「お、有里!今日も買い物か?」

有里「ああ、いたいた。違うよ、今日は陽介に用事」

陽介「え?俺に?どうした、何か悩み事の相談か?」

有里「いや、そういう話は陽介にはしないと思う。堂島さんが携帯工面してくれたんだ。だから連絡先をと思って」

陽介「お前、段々俺の扱い覚えてきたね……ちょっと悲しいぜ……で、携帯ね。待ってろよ。ほれ」

有里「良ければ、ほかのメンバーにも教えておいて欲しいんだけど」

陽介「ああ、教えとく。そっか、お前学校も来れないもんな……連絡取りようがなかったんだな」

有里「学校ね。まぁ……僕は行かなくていいかなって思ってるけど。進路も関係ない身分になっちゃったしね」

陽介「あー、進路な。思い出させんなよなー、落ちるぜぇーくそ……」

有里「どうしたの?」

陽介「頭が悪いの!」

有里「……そっか」

陽介「ちょっと納得すんのやめてくんない?余計落ち込むんだけど」

有里「まぁ、まだ時間はあるよ」

陽介「勉強なー。事件もあるし、勉強なんかやってる場合じゃねーって言いたいんだけどなぁ」

有里「大事な時期だし、ちゃんとやらないと」

陽介「わーかってるよ!やりたくねえだけ!」

有里「せっかく先に進めるんだし、ちゃんと決めたほうがいいよ」

陽介「ああ……そうだよな、有里は普通の人生って選択肢、無くなっちまったんだもんな」

有里「……」

陽介「でもよ!せっかくこうやってまた生きてられるんだし、もしかしたら事件解決したらまた普通に暮らせるかもしんねーじゃん!」

有里「うん、そうだね」

陽介「そうなったらどうする?ウチで働くかぁ?有里、無愛想に見えて接客とか得意そうだし歓迎するぜ!」

有里「それもいいかも。けど……なんとなく、頼るならもっといい所がある気もする」

陽介「なぁにぃ、ジュネスの御曹司の俺以上の株があるってのかよ。どんなよ、それ」

有里「桐条グループの一人娘なんだけど」

陽介「桐条だぁ?桐条ってーと、あれか?あの世界規模の……」

有里「そう、それ」

陽介「……ほんっと、お前ってよくわかんねー」

有里「ただの知り合いだよ。一晩は共にしたけど」

陽介「え、ちょっと待って。有里さ、その辺詳しく教えて欲しいんだけど」

>陽介と他愛も無い話をした。

>『No.19 太陽 花村陽介』のランクが2になった。



【同日 深夜 堂島宅】


>メールが届いている……。

>捜査隊のメンバーからだった。

>各々個性豊かな文面で連絡先を伝えてくれた。

>……良い仲間だ。

堂島「ただいま……」

有里「あ、お帰りなさい」

堂島「まだ起きてたのか。夜更かしは関心せんぞ」

有里「すみません。頂いた携帯を弄るのが楽しくてつい」

堂島「……湊。聞きたい事がいくつかある」

有里「……なんでしょう」

堂島「お前、俺に隠してることがあるな?」

有里「そんな風に見えますか?」

堂島「……その事でとやかく言うつもりじゃない。そんなに警戒するな」

有里「……あります。確かに」

堂島「それも、かなりでかい事だ。違うか?」

有里「その通りです」

堂島「わかった上で引き取ったんだから、それでどうしたって話じゃない。ただ、俺は警官だ」

堂島「お前らの安全を守るのが仕事だ。わかるだろ?」

有里「そうですね」

堂島「最近、市内……いや、どこに行ってもそうだ。何か、気味の悪い違和感が付き纏う。いつかと似た感覚がな」

有里「……」

堂島「お前、何か得体の知れない事件に関わってるな?俺達の手に負えないような事件だ」

有里「堂島さん……」

堂島「俺が保護すると決めた以上、お前は俺の身内だ。事件を追うのはいいが、危ない真似は絶対にするな」

有里「気持ちはうれしいです。でも」

堂島「でもじゃない。お前が何か特別なのはわかる。だけど、そうじゃない奴らだって力になれるはずだ。色んな面でな」

堂島「俺だってその一人だ。身内が困ってるなら助けてやりたい。警官がどうこう以前にな。覚えとけよ」

有里「……しっかり、覚えておきます」


堂島「お前が来てから、菜々子の負担がずいぶん減ってる。助かってるよ」

有里「まぁ、お世話になるだけではどうかと思いまして」

堂島「ついでに言っとくぞ。菜々子の前で取り繕った態度をとらないでやってくれ」

有里「ええと……」

堂島「ああ見えて聡い子だ。気付いてるぞ。小さい子は苦手か?」

有里「苦手ではないですけど、菜々子ちゃんに嫌われたり、怖がられたりしないようにと」

堂島「そのせいで菜々子が気を遣ったら、そりゃ本末転倒じゃないか?」

有里「……まぁ、そうですね」

堂島「あれはあれで強い子だ。お前が悪い奴じゃないってのはわかってるし、本音で当たっても大丈夫だ」

有里「はい。気をつけます。すみませんでした」

堂島「いや……少々親馬鹿だったかな。まぁ、それだけだ。……今日はもう寝なさい」

有里「はい。……堂島さん」

堂島「どうした?」

有里「本当に、感謝しています。何から何まで、ありがとうございます」

堂島「……ん。おやすみ」

有里「おやすみなさい」

>堂島と語り合った。

>彼の事がわかった気がする。

>『No.12 刑死者 堂島遼太郎』のランクが2になった。

>さて、明日は誰に会いにいこうか……。

今日はまた短くなってしまいました。
コミュ伸ばしと、思うところ。

では、また後日。

っと、これからこいつのコミュを先に、とかこいつのコミュが見たい!って言ってくれれば対応します。
正直、自分でもどこから攻めるか悩んでいるので。
安価とまでは言いませんが、一応。

私情を挟めば最速美鶴MAXなんですが……。

再会再会って、皆再会楽しみにしすぎでしょう。
ということで本日分。



【2012/4/13(金) 曇り 巌戸台分寮】


>その日の授業を終えて寮に帰ると、ラウンジに風花がいた。

鳴上「こんにちわ」

風花「あ、鳴上君。おかえりなさい」

鳴上「今日入寮でしたっけ。荷物とかは……」

風花「あ、もう全部運んでもらったよ。これからよろしくね」

鳴上「はい、よろしくお願いします」

風花「ちょっと遅くなるけど、岳羽さんも今日中にはって言ってたよ」

鳴上「そうですか」

>……。

鳴上「じゃ、俺荷物置いてくるんで」

風花「あ、うん。……またね」

>部屋に入り、鞄を投げ出した。

鳴上「……八十稲羽に帰りたいな」

>誰かの代わりを務めたくてここにいるわけじゃない。

>それとも、気にしすぎているのだろうか。

>……。

>なんだか、酷く疲れた。

>少し、眠ろう……。


【同日 夜】

>部屋の扉を叩く音で目が覚めた。

順平「おい、鳴上!鳴上!寝てんのか?鳴上ー?」

鳴上「っ……はい、どうか、したんですか」

>中途半端な時間眠ってしまった。

>頭が痛い……。

順平「桐条先輩がラウンジ集合だってよ。さっさとしねーと後が怖いぜ」

鳴上「わかりました、行きます」

順平「おう、俺先に行ってるからな」

>……ラウンジに行こう。



【ラウンジ】


>ラウンジには既に皆そろっていた。

>いつの間にかゆかりも来ている。

>美鶴がこちらを見た。

美鶴「……来たな。皆にはまだ言っていなかったが、彼に今後の作戦の指揮権を与えようと思うんだが」

順平「え!?俺じゃないんすか!」

天田「順平さんは……無いと思います」

岳羽「……本人は、何て?」

美鶴「やってもいいそうだ。私からお願いした」

風花「うん、私はいいと思います」

真田「ま、適任じゃないか?定例みたいなもんだしな」

コロマル「ワンッ」

アイギス「私も、鳴上さんなら問題無いかと」

>全員賛成してくれるようだ……。

美鶴「決まり、だな。これより特別課外活動部の凍結を正式に解除する。そして、そのリーダーは……鳴上、君だ」

鳴上「……はい」

美鶴「さて、早速だが報告だ。今夜、雨が降るらしい」

>全員に緊張が走る。

天田「一応、天気予報で聞いてましたけど……」

順平「ついにっすか……」

真田「突入するのか?」

美鶴「いや、彼によるとテレビの中は非常に危険かつ不安定らしい」

鳴上「はい。どこに出るかもわからないし……」

美鶴「何も出来ないというのは口惜しいが、今夜は出来る限り観察するに留めたいと思う」

真田「何、戦闘は無しか」

鳴上「俺も同意見です。今はとりあえず情報を揃えて、俺の仲間からの連絡を待ちたいと思います」

岳羽「仲間って?」

鳴上「マヨナカテレビを解決した時の仲間です。一応、確認してもらうように言ってあります。テレビの中に詳しい奴もいるので」

美鶴「流石はリーダー、冷静で賢明な判断だ。任せた甲斐があるな」

鳴上「……なので、とりあえず今日はテレビに映る映像を見て、以前の事件との関連を調べて欲しいんです。俺は、良く知らないので」

風花「そっか、塔っていうのが本当にタルタロスかどうかもわかんないから」

鳴上「まずはその確認。それから、一応気付いたことがあれば聞きます。それで、何も無ければ……」

美鶴「装備を整えた上、突入ということになるな」

鳴上「はい。そうしたいと思います」

真田「ところで聞きたかったんだが、テレビの中に入るってのはどうやるんだ?」

鳴上「ああ、それは普通に歩いて……」

順平「え、それってこのサイズでもいけんの?」

>ラウンジにはブラウン管の小さいテレビしかない……。

鳴上「これでは、ちょっと……」

美鶴「その心配なら不要だ。明彦、そこの布を取ってくれ」

真田「これか?順平、そっち側を持て」

順平「……俺、わかっちゃったかも」

>ばさっ。

天田「うわっ、すごっ!」

岳羽「美鶴先輩、これって……」

風花「すごいですね……」

美鶴「このサイズなら一人と言わず四・五人並んで入れるだろう。搬入には苦労したがな」

>布で隠されていたのは巨大な液晶テレビだった……。

美鶴「サイズは問題ないな?」

鳴上「はい、これなら大丈夫だと思います」

美鶴「よし……他に確認することは?」

鳴上「とりあえず、現状はありません。後は、影時間まで待ちましょう」

美鶴「なら一旦解散だな。零時前にはまたラウンジに集合だ」

順平「うっし!腕が鳴るぜ!」

岳羽「突入無しだっつってんでしょー」

風花「私、少し寝ようかな……」

天田「あ、でしたら起こしましょうか?」

真田「頼りにしてるぞ、リーダー」

アイギス「なんだか少しワクワクしますね」

美鶴「アイギス、油断はするなよ」

>各々解散し、自由行動になった……。

>……。

鳴上「装備を整える、って事は、今日までに装備は揃えてないって事か」

鳴上「桐条さんは今日は本当に偵察だけのつもりなんだな……」

>ということは、皆戦いに赴ける装備は無いのだろう。

>……自分、以外は。

鳴上「……椿落とし」

>何か有事の際にと思って持ってきた武器だが……。

鳴上「俺だけは、テレビの中へ行っても戦う事が出来る」

>自分だけは……。

>時間が経つのが遅い。

>早く雨が降れ。早く影時間になれ。

>早く、早く。

>……。



【深夜】


美鶴「揃っているな」

鳴上「これから、おそらくは影時間になると同時にテレビがつきます」

岳羽「電源は切ってあるけど、それでも?」

鳴上「そもそも影時間内では電化製品は全て作動しないと聞いています。しかし、俺は間違いなくそれを見ました」

順平「やべー、ドキドキしてきたよ俺……」

天田「僕も、ちょっと……」

真田「冷静でいなければ生き残れんぞ」

美鶴「明彦」

真田「わかってる、今日は戦闘は無し、だな」

アイギス「本当に、映るのでしょうか……」

鳴上「……あと、数秒です」

カチッ

カチッ

カチッ

ガチン

>辺りを奇妙な感覚が包んでいく……。

美鶴「影時間、だな」

アイギス「けどテレビは……」

風花「あ、み、見てください!」

>電源を切ったテレビに砂嵐が映った!

順平「うおおマジかよ!」

岳羽「順平うるさい!」

>砂嵐が徐々に晴れていく……。

真田「これは……」

美鶴「間違いないな」

天田「タルタロスですね……」

>以前見た映像と同じだ。

>どこか、荒野のような場所に塔がそびえ立っている……。

鳴上「!そこに映っているの、シャドウじゃないですか?」

>塔の周囲、小さく映っている黒い影……いつか見たシャドウと似ている。

美鶴「確かに、そう見えるな」

風花「待ってください。ふぅ……久しぶりだけど……」

>風花は召喚機を取り出すと、自分の額に当てた。

風花「……ユノ!」

順平「おわっ!急にペルソナ出すなって!」

鳴上「これは?」

美鶴「山岸のペルソナは探知型だ。シャドウの反応を探る事が出来る」

鳴上「りせと同じタイプか……山岸さん、どうですか?」

風花「……!!やっぱり、そうみたいです。テレビの向こうから、大きいの、小さいの……無数のシャドウ反応があります」

美鶴「決まり、だな。リーダー、どうする?」

鳴上「……とりあえず、この映像を見てもらうっていう目標は達成しました。まだ何も準備が出来ていないので突入は次の雨の日でいいと思いますが」

美鶴「うん。ここにシャドウがいるとわかっただけでも良かった。明日以降、いつでもテレビに入ることが出来るように準備を進めよう」

鳴上「はい。とりあえず、今日の所は解散でもいいと思いますが」

美鶴「そうするか。と、いうわけだ。皆、明日に備えて休んでくれ。それから、装備に関してだが……以前と同じでかまわないだろうか?」

>美鶴とメンバーがいくつか打ち合わせをして、解散となった。

>早く、早く……。

美鶴「さて、君はどうする?」

鳴上「俺は、もう少し見てみようと思います。以前のマヨナカテレビと違う所があったらヒントになると思うので」

美鶴「そうか。……信用しているが、先走ったりはしないでくれよ。君はリーダーだ。皆に示しをつけなくてはな」

鳴上「わかってますよ。じゃあ、おやすみなさい」

>早く、早く……。

>……皆、ラウンジからいなくなった。

>大型テレビには、うろつくシャドウとタルタロスが映し出されている。

>一度部屋に戻った時に、椿落としはラウンジに隠しておいた。

>誰にも見つからなかったようだ。同じ場所にある。

鳴上「俺は……」

>テレビに手を触れる。

>指先が、手が、腕が、沈みこんでいく。

鳴上「……すみません」

>刀をぎゅっと握り、テレビの画面に向かって歩いた……。



【テレビの中】


鳴上「……見たままの場所に出るのか」

>そこは間違いなく、さっきまでテレビに映っていた荒野だった。

>シャドウがうろついているのも見える。

鳴上「霧はかかってないんだな」

>しっかりと周囲を確認することができる。

>周囲は一面の荒野で、タルタロスの他には建造物はおろか何一つ見つける事がは出来なかった。

鳴上「……さて、どうしたものか」

>前方から何かが走ってくる。

鳴上「シャドウか!?」

>椿落としを抜き、構える。

?「セーンセー!!!」

鳴上「この声は……」

クマ「センセー!会いたかったクマああああああああ!」

鳴上「く、クマ!なんでここにっ……!」

>クマのタックルでダウンしてしまった……。

クマ「センセー!センセー!ああー懐かしいお顔クマぁ!クマ寂しかったクマー!」

鳴上「落ち着け!」

クマ「ハッ!失礼したクマ!……あれ、ところで何でセンセイこんなとこにいるクマ?」

鳴上「またマヨナカテレビが映り始めて、その捜査だよ。それよりクマこそどうしてここに?」

クマ「クマはたまたまテレビの中に帰って来てたクマ。そしたら何かテレビの中がおかしくて、クマ出られんくなっちまったクマ……」

鳴上「そうなのか?」

クマ「これ、マヨナカテレビの時とは何か違うクマ。クマが出られんとか考えられんクマ……陽介達きっと心配してるクマ……」

鳴上「クマが出られない……ってことは、俺も出られないのか?」

クマ「わからんクマ。けど、多分……」

鳴上「……そうか」

クマ「どうするクマ?センセイ一回帰るクマ?試してみる?」

鳴上「いや、いい。それより、俺はアレを調べないと」

クマ「ああ、あの塔……アレ、一体何クマ?あの中、とんでもない数のシャドウがいるクマ……」

鳴上「シャドウの巣みたいな物らしい。クマは危ないから……」

クマ「いやクマ!センセイと一緒クマ!」

鳴上「……クマは、俺が帰って来た時すぐテレビから出られるようにここで待っててくれ」

クマ「いやクマ!いやーんクマ!一緒に行きたいクマぁ!」

鳴上「頼む」

クマ「……むー、センセイにそこまで言われちゃ仕方ないクマ。けど、絶対、絶対絶対帰ってくるクマよ!?約束クマよ!?」

鳴上「ああ、約束する」

クマ「じゃあ待ってるクマ。気をつけるクマよ!」

鳴上「ああ。じゃあ、行ってくる」

>背後からクマの応援が聞こえる……。

>クマに会えたのは嬉しい誤算だったが、クマもテレビから出られないとは……

>やはり、無謀だっただろうか。

>いや、それでも……。

>うろつくシャドウをかわしつつ、タルタロスへ向かった。


【タルタロス内部】


鳴上「今、四階か……」

>内部のシャドウを適度に倒しつつ、何とかここまで登ってこれた。

鳴上「たいした奴はいないけど、良く考えると一人でこんな長い間戦ったのは初めてだな……」

鳴上「やっぱり、無謀だったか……といっても、他に手も無し」

>とにかく限界まで登って、限界が来たら一度クマの所へ帰ろう。

>階段を見つけた。

鳴上「これで五階……と」

>五階は今までのような迷路では無く、大部屋が一つあるだけのようだ。

鳴上「ボス……か?」

>正面にもう一つ階段がある……。

鳴上「入り口は一つじゃなかったのか……俺の辿ったのとは違う道があるみたいだ」

>靴音が響いている。

>誰かが階段を上がってくる!

鳴上「……!」

>椿落しを構える。

>頭が見えた。

>あれは、人……?

?「君は……」

鳴上「お前は……」

?・鳴上「何者だ……!」

>マヨナカテレビとは何か。

>入った人間の深層心理から、自分の一面であるシャドウを生み出し、その願望を放送する物だ。

>今回の事件はそうじゃないのかと思っていたが……

>目の前の人物は、見た目こそ違えど本質的に自分と同じである事がはっきりとわかる!

鳴上「……シャドウか!」

?「なるほど、これが……」

鳴上「イザナギ!」

>ここに来る前にベルベットルームに行くべきだった。

>今使えるペルソナはイザナギしかない。

>だが、引く訳にはいかない……!

?「……まぁ、いいか。オルフェウス」

>イザナギの一閃を、腕を振るって逸らした物。

鳴上「ペルソナだと!?」

>シャドウがペルソナを使う?

鳴上「今までにないタイプか……!」

?「ごめん、どうやら探してたのは君じゃないみたいだ。悪いけど、眠ってくれないかな」

>相手の男が自分のこめかみに人差し指を突きつける。

>あれは、まるで……召喚機を使う時の……

?「タナトス」

>さっきまで対峙していたペルソナの内部から、食い破るようにして別の怪物が現れる。

鳴上「そんな……!」

>その圧倒的な力に、イザナギごと吹き飛ばされてしまった。

鳴上「ぐっ……あ!」

>胸にじくりと痛みが走る。

>怪物の持っていた剣が、左胸をかすったらしい。

?「歩けると思うけど……今日の所は帰った方がいい。僕も帰るよ」

鳴上「なっ、ま、待て……!」

?「加減はしたけど無理は禁物。心配しなくても……多分、また会える。じゃあね」

>男は階段を下りていった……。

>悔しいが、確かに余力は残っていない。

>あの男の言うとおり、引くしか無いだろう。

鳴上「く、そ……」



【2012/4/13(金) 曇り】


ザーッ……

キャスター『続いては、今日のお天気です。今日は、全国的に曇り空が広がり、夕方から夜の間に雨が降り出すでしょう』

キャスター『雨は夜通し降り続け、明日の朝方、やっとあがるようです。学校やお仕事の帰り道、濡れる事の無いよう傘を……』

プツン……。


【堂島宅】


>結局、皆の都合がつかなくて、今日まで誰とも過ごせなかった……。

堂島「じゃ、行ってくる」

有里「いってらっしゃい」

>今日も堂島を見送った。

菜々子「湊お兄ちゃんは今日どこかお出かけするの?」

有里「そのつもりだったけど、どうかした?」

菜々子「今日は夕方から雨が降るってニュースで言ってたよ?」

有里「そうなんだ……どうしようかな」

菜々子「菜々子は傘持ってくー。お兄ちゃんも濡れないようにね?風邪ひいちゃうよ?」

有里「うん。気をつける。ありがとう」

菜々子「えへへ、じゃあいってきます!」

>菜々子は学校へ行った……。

有里「雨、ね。さて、どうしようかな」

>皆は今日も学校だろう。

>しかし、雨が降るなら今夜はテレビを確認する必要があるかもしれない。

>とりあえず、陽介辺りにメールしておこう……。


【同日 昼 堂島宅】

>ん?

>陽介からメールだ。

『件名:特別捜査隊各員に告ぐ!
 本文:今夜マヨナカテレビが映る可能性アリ!都合のつくものは放課後ジュネス集合のコト!』

>……僕には送らなくて良い。

>放課後か。もう少し時間がある。

>そういえば、もし戦うとなると武器はどうなるのだろうか。

>交番で買えるはずも無いし……。

有里「あ、マーガレットにでも聞いてみよう」

>マーガレットにメールしておいた……。

>!

>返信が早い。

『件名:武器でございますか
 本文:一度お立ち寄りいただければ用意しておきます』

>……ジュネスに行く前に、一度寄った方がいいだろう。

【同日 夕方 ジュネス内フードコート】


>途中立ち寄ったベルベットルームで、ギムレットを手に入れた。

>昔使っていた武器だ……これなら問題無いだろう。

>どうやら、最初についたのは自分だったようだ。

千枝「ありゃ、有里くんが一番乗り?」

有里「ああ、里中さん。そうみたいだね」

千枝「じゃあ私は二番目っと。雨降ってきたねー……」

有里「朝聞いたんだけど、夜通し降るって」

千枝「うわっちゃー、傘持ってきてないよー。仕方ない、濡れながら帰るかなー」

有里「まぁ、夜通し降るって聞いたから集まってもらったんだけどね」

千枝「あ、そっか。マヨナカテレビ……」

有里「陽介が聞いた話だと、今までとは随分違うパターンみたいだね」

千枝「うん……どうなっちゃうんだろ。ちょっと怖いな」

有里「心配無いと思うよ。僕もいるし」

千枝「ええっ、有里くんって結構自信過剰なタイプ?」

有里「もし何かあっても、里中さんは守るってこと」

千枝「うぇえ!?ど、どういう意味でしょー?」

有里「え、そのままの意味だけど」

千枝「……守って、くれるの?」

有里「勿論。里中さんだけじゃない。一度は守った世界だ……もう一度だって守ってみせるさ」

千枝「……有里くんってさぁ」

有里「どうかした?」

千枝「いや、別に……」

有里「何か特別な意味だと思った?」

千枝「何でもないですー」

有里「命を張ってでも君だけは守る、なんてね」

千枝「有里くん、けっこー性格悪いよね……」

有里「そう?」

千枝「有里くんってさ、無表情だからわかんないけど、多分今楽しんでるでしょ」

有里「そう見える?」

千枝「見える」

有里「正確にはからかうのが楽しいんじゃなくて、顔真っ赤にしてる里中さんを見るのが楽しいかな」

千枝「もー、何それ。どういう意味?」

有里「さぁ?」

陽介「わりいわりい遅くなった!んあ?里中なんでそんな顔真っ赤なの?熱でもあんのか?」

千枝「花村うっさい!」

有里「そう、体調悪いんだって」

陽介「自己管理がなってねーなー」

千枝「うー……」

>皆が集まるのを待った。

有里「……さて。皆には一応聞いてもらってると思うけど、今晩例のテレビが映る可能性がある」

直斗「雨ですからね。夜通し降るらしいので、本当に映るとしたら今日は間違いなく映るかと」

完二「で、今日映ったらどうするんスか」

陽介「いきなり突入ってわけにもいかないだろ?」

有里「とりあえず皆に確認してもらって、それからどうするか考えようと思う。テレビの中に入るには何か必要な物とかあるの?」

陽介「普通のドアとかとおんなじだから、ある程度サイズが無いと入れねーな。そのくらいだ」

有里「皆はどこから入ってたの?」

天城「ここのテレビを使ってたんだけど……」

陽介「心配すんなって。ちゃんと使えるよ」

有里「じゃあ僕はここのテレビで見させてもらってもいいかな?」

りせ「でも有里さん、夜中にお家抜け出して大丈夫なの?」

有里「ほら、影時間だから。僕達以外は皆……」

完二「あ、なるほど」

直斗「……って、ちょっと待ってください。ここのテレビで見るという事は、テレビの中に入るつもりですか?」

有里「そうだけど」

天城「ちょ、ちょっとそれは無茶だよ!」

陽介「クマもいねーし、お前出てこれなくなるぞ!」

有里「そうなの?」

りせ「……有里さん、行くなら私も行くよ」

千枝「り、りせちゃん!まだどうなるかもわかんないのにそんな……」

有里「りせと行けば……帰って来れるのかな?」

りせ「うん。私のペルソナなら出口を作れるから」

有里「じゃあ、お願いしてもいいかな」

陽介「おいおい、じゃあ全員で行ったほうがいいって!危ないってマジで!」

有里「今日は戦闘が目的じゃない。僕がテレビの中を体験してみたいんだ」

直斗「じゃあ、別にその時じゃなくても……」

有里「マヨナカテレビが映っている間……つまり影時間の間、テレビの中も異質になってるかもしれない。その確認をしたいんだ」

完二「……これ、止めても聞かなそうな感じじゃねえか?」

りせ「心配しなくても大丈夫だよ。私が無茶なんてさせないもん!」

有里「うん。絶対に無茶はしない。信じて欲しい」

>皆は何とか納得してくれたらしい。

有里「とりあえず、明日また集合して各々気付いた事を話し合おう。陽介、今日の深夜……」

陽介「入れるようにしとくわ。仕方ねーな」

有里「ありがとう。じゃあ、とりあえずは解散って事で」

>皆と別れた。後でりせに詳しい話をメールしておこう……。

有里「あ、里中さん」

千枝「ほえ?なんでしょー」

有里「傘持ってないんでしょ?濡れるよ」

千枝「ああ、だいじょぶだいじょぶ。体だけは丈夫なんだ私」

有里「まぁここで買ったビニール傘なんだけど。良かったら貸すよ」

千枝「それじゃ有里くん濡れちゃうじゃん。いいっていいって」

有里「……妥協案。相合傘」

千枝「え!?いや……まぁ、いい、けど」

有里「家まで送るよ。はい」

千枝「じゃあ、えっと、失礼します……」

>千枝を送ってから自分も帰った。

>千枝が離れよう離れようとするので結局半身濡れてしまった……。

>『No.11 剛毅 里中千枝』のランクが2になった。


【同日 深夜 ジュネス内フードコート】


>大型テレビにはタルタロスと周囲を徘徊するシャドウが映っている……。

りせ「ほんとに、行くんだよね?」

有里「うん……大丈夫?」

りせ「うん、大丈夫。……ちょっとだけ、怖いかな」

有里「ごめんね。でも、危ない目には合わせるつもり無いから」

りせ「ふふ、頼もしいんだから。じゃあ、いくね?」

>りせと二人でテレビの中へ進んだ……。

>辺りは一面の荒野だ。

りせ「……うん、大丈夫。出られるよ。とりあえず一安心だね」

有里「りせ。僕はこれからあの塔を調べようと思う」

りせ「ええ!?危ない事はしないって言ったじゃない!」

有里「勿論僕だけだよ。それに、戦闘は極力避けるし……無理だと思ったら即逃げてくる。大丈夫、こう見えて僕は結構強いんだよ」

りせ「でも……」

有里「そんなに頼りなく見える?」

りせ「そうじゃない。そうじゃなくて……有里さん、自分の事軽く思ってる気がする」

有里「そんなこと……」

りせ「私達、仲間だよね?もう仲間だと思っていいんだよね?」

有里「それは……そうだよ」

りせ「だから心配なの。私達の為に何か、とんでもないことするんじゃないかって」

>……。

有里「心配ないよ。約束してもいい。僕は約束は守るんだ」

りせ「本当に、無茶しない?」

有里「うん。りせもサポートしてくれるんでしょ?だったら怖い物ないよ」

りせ「……わかった。全力でサポートする!だから約束して、危なくなったら……」

有里「即逃げる。じゃあ、よろしくね」

りせ「うん、がんばって!」

>りせに手を振ってタルタロスへ向かった。

>心配しなくても、まだその時じゃない。

有里「まだ、ね」


【タルタロス内部】


>道中、りせのサポートもあり、雑魚は適当にあしらって登ってこれた。

有里「ここが四階で……」

>目の前には登り階段がある。

有里「これで……五階」

>五階は大広間が一つあるだけのフロアのようだ。

>自分以外の誰かが、既にいる。

有里「君は……」

?「お前は……」

有里・?「何者だ……!」

>これが、話に聞くテレビの中のもう一人の自分……シャドウなのだろうか。

>確かに、本質として自分と同じであるという感覚がある。

>このフロアに入ってからりせの声も聞こえない。

有里「!?」

>突然、男がペルソナを召喚しけしかけてきた。

>シャドウがペルソナを使う……?シャドウではなく、人間、なのか?

有里「……まぁ、いいか。オルフェウス」

>相手のペルソナの攻撃を逸らす事に成功した。

?「ペルソナだと!?」

>相手も驚いている。

>やはり彼はシャドウでは無いらしい。

>しかし、この場を引く気も無さそうだ。

有里「ごめん、どうやら探してたのは君じゃないみたいだ。悪いけど、眠ってくれないかな」

>人差し指をこめかみに当てる……。

有里「タナトス」

>オルフェウスの内部からタナトスが現れて、相手をペルソナごと吹き飛ばした。

有里「歩けると思うけど……今日の所は帰った方がいい。僕も帰るよ」

?「なっ、ま、待て……!」

有里「加減はしたけど無理は禁物。心配しなくても……多分、また会える。じゃあね」

>男に背を向けて、上がってきた階段を降りた。

>今日は帰った方がいいだろう。

>これ以上彼と関わると、次はきっと余裕を持ってとはいかないはずだから。

というわけで本日分は終わり。
ほのぼの八十稲羽と、ギスギス月光館。
番長は大変だ。

では、また後日。

遅くなってしまいました。
P3P要素が無いと言ったな。

あれは嘘だ。

本日分。

有里「りせ、聞こえる?」

りせ『あ、有里さん!さっき一瞬有里さんの反応が無くなって……どうしちゃったのかと思ったよ』

有里「どうもそういうフロアだったみたいだね……。今からそっちに戻るから、道中ナビお願い」

りせ『りょーかい!しっかりナビゲートします!』

>タルタロスを抜け、りせの所へ帰った……。

りせ「お帰りなさいっ!……っ大変!有里さん!お顔お顔!」

有里「え?」

>りせが指差す辺りを触ってみると、想像と違う感触と痛みがやってきた。

>下顎から首筋にかけて、一本裂傷が出来ている……。

有里「受け損なったのかな。まぁ、深くないし大丈夫だと思うよ」

りせ「本当に、大丈夫なんですか?」

有里「うん。とりあえず、帰ろうか。手当てもしたいし」

りせ「わ、はい!ええっと……」

>やはり、早めに対処して正解だった。

>彼は、強い……。

>りせの力でテレビから出る事が出来た。

りせ「お疲れ様!傷は大丈夫?」

有里「血はもう止まってるし、大丈夫だよ。心配させてごめんね」

りせ「ううん、いいの。大丈夫なら良かった……」

有里「それじゃ、帰ろうか。送るよ」

りせ「えっ、ほんとに?じゃあ、お願いしちゃおっかな!」

>りせを家まで送った……。

りせ「ここまでで!わざわざありがとうございました!」

有里「こちらこそ。付き合わせちゃって悪かったね」

りせ「いいですよぉ、そんな……私ね、嬉しかったよ」

有里「ん?何が?」

りせ「有里さんが、仲間だって認めてくれて。なんか、有里さんって私達と距離ある気がしてたから」

有里「そう、かな」

りせ「そうですよー。昔の仲間と比べられてるのかなって思ってた」

有里「……そういうわけではないんだけどね」

りせ「でも、仲間だって言ってくれたよね?うそじゃないよね?」

有里「うん。りせも、皆も、今の僕にはとても大事な仲間だ」

りせ「……えへへ。それじゃ、有里さん!また明日ね!」

有里「うん。またね」

>りせと別れた……。

>『No.17 星 久慈川りせ』のランクが2になった。



【堂島宅】


有里「タルタロスがある以上、攻略しない訳にはいかない……なぁ」

>そうなると、やはり仲間達の力が必要になるだろう。

有里「……なるべく、危険な事はさせたくないんだけど、なぁ」

>最終的には自分が決着を付けるとしても、その過程で彼等を危険に晒すのは……

有里「意地でも協力しようとするだろうなぁ」

>りせの笑顔が頭を過ぎった。

有里「仲間、ね」

>なんというか、微笑ましい皆だ。

>さて、今日はもう寝よう……。

?「こんばんわ」

有里「……また、君か」

?「前は挨拶も出来なかったからね」

有里「名前は……ファルロス、だったかな?」

?「私は、あなた。だけど、ファルロスって名前はちょっとね」

有里「ああ、女の子だから」

?「そういうこと。私は……美奈子。よろしく」

有里「よろしく。とりあえず、今日は挨拶まで?」

美奈子「うん、また、会いにくるね。……そうそう、あなたが今日出会った彼」

有里「彼がどうかしたの?」

美奈子「あなたの因子を少し受け入れたみたい。元々似た部分のある二人だから……」

有里「すると、どうなるのかな」

美奈子「彼の所にも私が行けるようになったってこと」

有里「じゃあ、アフターケアは君に任せるよ」

美奈子「どうでもいい、から?」

有里「いいや。僕は女性以外の扱いはあんまり得意じゃないから」

美奈子「……呆れた」

有里「まぁそう言わず」

美奈子「保障はしないけどね。……そろそろ時間みたい。また、近いうちに」

有里「またね」

>……。

>寝よう。



【2012/4/14(土) 曇り 巌戸台分寮内ラウンジ】


美鶴「おい!おい鳴上!鳴上!」

>体を揺さぶられている……。

アイギス「美鶴さん、落ち着いて……」

鳴上「う、ぐ……」

順平「あ!気がついたみたいっすよ」

鳴上「……ここは」

>寮のラウンジだ……。

鳴上「っ……」

>体が痛い。

>確か、あの後何とかクマの所へ戻って……

鳴上「なぜ、ここに……」

美鶴「なぜ、はこちらの台詞だ……!」

>改めて周囲を見ると、特別課外活動部の面々に囲まれている。

鳴上「あ……」

美鶴「君は……私があれほど……!」

>美鶴はあまりの怒りに言葉を詰まらせているようだ。

順平「ま、まぁまぁまぁ!いいじゃないっすか、無事帰ってこれたんだし!」

アイギス「順平さん。今は任せましょう」

美鶴「君はリーダーであり、皆に示しを付けなければならない立場だと伝えたはずだ」

鳴上「……すみません、でした」

美鶴「すみませんで済む話か!」

真田「美鶴、その辺にしておけ。相手は怪我人だ」

美鶴「しかし……!」

真田「見てみろ。これが自分の仕出かした事をわかってない人間の顔か?」

美鶴「……もう、休みなさい。また今度話をする」

鳴上「本当に、すみませんでした……」

>やれやれというように順平と真田が部屋に戻った。

アイギス「大丈夫ですか?」

鳴上「はい……」

コロマル「クゥ~ン……」

鳴上「あれ、傷に包帯が……」

アイギス「風花さんが手当てしていたようです。ゆかりさんと交替であなたの様子を見ていたので、お二人はまだ眠っています」

鳴上「そうですか……皆さんには本当に迷惑を……」

アイギス「……とにかく、今は傷の養生を。お話はそれから」

鳴上「部屋に、行きます」

>アイギスを置いて部屋に帰った。

鳴上「痛っ……くそっ……」

>あの男は何者だろう。

>恐ろしい強さのペルソナだった……。

鳴上「……怒らせてしまった」

>さっきの美鶴の表情が浮かぶ。

>どう謝ればいいだろう……。

順平「おい、鳴上?ちょっといいか?」

鳴上「……すみません、少し傷が痛むので一人にしてください」

順平「まぁそう言わずにちょっと出てこいよ。真田先輩が呼んでんだよ」

>一体なんだと言うのだろう。

>部屋を出ると、順平と真田の他にもコロマルと天田もいた。

順平「寮内男子全員集合だぜ」

真田「よし、とりあえず歩けるみたいだな。神社に行くぞ、ついてこい」

>ぞろぞろと神社へ向かった……。



【長鳴神社】


真田「よし、ここならいいだろう。さぁ、鳴上。構えろ」

鳴上「え?」

順平「ちょ、ちょっと待ってくださいよ先輩。マジっすか?」

真田「なぜ冗談を言う必要がある」

順平「マジだわこの人……」

天田「鳴上先輩、がんばってください!」

鳴上「ちょ、ちょっと……」

真田「来ないならこっちから行くぞ」

>真田がステップを踏む!

鳴上「くっ、何でっ……!」

>勝手をした制裁だろうか。

鳴上「くそっ!」

>慣れない構えで拳を握る。

順平「なー天田、これ、どっちだと思う?」

天田「まぁ、いくら鳴上先輩でも無理でしょう。特に素手では」

コロマル「ふぁ~……」

>周りも見学に入ったようだ。

>……ああ、わかったよ。

鳴上「やってやる……!」

真田「その意気だ、いくぞ!」

>高速で迫る拳の壁を、時に逸らし時にかわして何とか対処する。

>しかし、こちらから反撃に転ずる事が出来ない!

>じりじりと追い詰められ……

鳴上「ぅ、ぐぅ……!」

>見計らったように渾身のストレート。

>これは、避けられない……!

>衝撃は来なかった。

>代わりに拍手が辺りに響く。

順平「いんやーすげえすげえ。あの真田先輩相手によくもったもんだ」

天田「流石って感じですねぇ。真田さんも、前よりずっと速くなってますね。すごいです」

鳴上「……?」

真田「どうした、そんな顔して」

鳴上「い、いや……」

真田「好き勝手したお前に鉄拳制裁を加えるとでも思ってたか?」

鳴上「……」

真田「お前は、俺より弱いな」

鳴上「……っ、得意な武器なら!」

真田「だが素手では俺が上だ。そうだろ?」

鳴上「それは……そうですけど」

真田「なのに、お前は俺に頼らなかった。何故だ?」

鳴上「……」

真田「俺達は仲間だ。仲間は助け合うもんだ。辛かったら手を貸してやる。立てなかったら肩を貸してやる。お前はもっと、俺達を頼っていい」

鳴上「真田さん……」

真田「が、やはり勝手をしたのは許せんな。一発いっとくか?」

順平「いや、先輩がいったらマズいっしょ」

鳴上「ありがとうございます」

真田「ふん、ただの気紛れだ。お前みたいな奴を見ると、幼馴染を思い出す……不器用な奴だったが、お前はそうじゃないだろ?」

鳴上「……はい」

真田「言いたい事はそれだけだ。俺は帰る。後は他の連中に任せる」

>真田は背を向けると去っていった……。

順平「アレ、照れてんな」

天田「ですねぇ」

鳴上「順平さん、天田。俺は……」

順平「あーみなまで言うな!とりあえず飯食いに行こうぜ!腹減っちまってよぉ」

天田「あ、いいですね。どこにします?」

順平「鳴上ってまだはがくれ行った事無いんじゃね?」

鳴上「はがくれ……?」

順平「っしゃ決まり!昼ははがくれラーメンだ!」



【駅前商店街「はがくれ」】


順平「知ってるか?友達と一緒にここの特製ラーメン食べると、ずっと友達でいられるんだってよ」

鳴上「ジンクスってヤツですか」

順平「まぁな。たまにはそういうのもいいじゃねえか。そこで、天田君からお話があります!」

鳴上「天田から?」

天田「あ、はい。……その、鳴上さん。今まですみませんでした」

鳴上「ど、どうしたんだ?」

天田「いえ、悩んでた事にも気付かなかったし……まず悩む原因になっていたのも僕達だと思いますし」

順平「お前、前のリーダーと色々重ねられてたんだって?それ気にして、今回先走ったんだろ」

鳴上「いや、その……確かに、そうですが」

天田「最初にあの人に似ているって言ったのは僕です。確かに似てるんですけど……やっぱり、鳴上先輩は鳴上先輩だと思います」

鳴上「天田……」

天田「ごめんなさい!許してください!」

鳴上「ちょ、やめろ天田!わかった、わかったから!」

天田「本当に許してもらえますか?」

鳴上「ああ。俺もちょっと、気にしすぎてたのかもしれないし……な」

順平「これで仲直りってわけだ。よし!ここは先輩の俺が奢ってやろう!」

天田「ほんとですか!?」

鳴上「ありがとうございます」

順平「いーってことよ!さ、食え食え!」

>三人でラーメンを食べた。

天田「じゃあ、僕はこれで……いくよ、コロマル」

コロマル「ワフ」

>コロマルは励ますような目でこちらを見ている。

鳴上「心配かけたなコロマル。もう大丈夫だ」

コロマル「ワン!」

>コロマルは天田の方へ走っていった……。

順平「最後は、俺だ。まあちょっと話そうぜ」

鳴上「はい」

順平「……悔しいんだけどよ、俺、あいつに勝ってるとこって一個も無かったんだわ」

鳴上「前のリーダーですか」

順平「そ。頭も良くて、勇気もあって、その上顔が良いと来た。どんな完璧超人だよってな」

順平「ま、そういう意味じゃお前も似たようなもんか。モテるだろ、お前」

鳴上「別に、そんなわけじゃ……」

順平「隠すな隠すな。あいつはさ、ふらふらしてるようでしっかりしてるっつーか、やっぱりふらふらしてるっつーか……不思議なヤツでさ」

鳴上「……」

順平「ペルソナの付け替えなんて反則みたいな能力あるし、その上女にモテやがる。同い年で同じ部で同じクラスで……とにかく意識したぜ」

鳴上「それで、どうしたんですか?」

順平「どうもしねーよ。俺が嫉妬して、ぶつけて、受け止められて。ああ、勝てねえなって思って、終わり」

鳴上「勝てない、ですか」

順平「俺の小さい嫉妬なんかすーぐ受け止めちまうんだぜ。そりゃ勝てねえって。……でも、俺にとっちゃそれだけだよ」

鳴上「俺にとっては?」

順平「これもなー、言うの悔しいんだけどよ。うちの部の女性部員、多分全員アイツに惚れてたぜ」

鳴上「全員ですか」

順平「おー、全員。惚れてたっつーか、惚れてるんだろうな。まだ。俺ら男と違ってさ、男女の仲って考えちまうとどうしてもな」

鳴上「……」

順平「その分、俺らよりアイツの事追っかけちまうんだよ。いなくなったのはわかってるのにな」

順平「だから、お前の中にあるアイツの面影を見た時……好きだった分、止められなかったんだと思うぜ」

鳴上「そうですか……」

順平「だからさ、あんまり気にしすぎんなって。俺が言うのも変だけど、お前、すげえいい男だと思うぜ。顔とかじゃなくて、もっとこう……なぁ?」

鳴上「そんなこと……」

順平「いーや、やっぱりモテるだろお前。うらやましいぜ畜生。ま、そういうわけだから、その内皆気付くって」

鳴上「俺は俺ですからね」

順平「言うじゃん。そういうこと。何ならアイツの思い出忘れさせてやれば?得意だろそういうの」

鳴上「得意じゃないですよ」

順平「うーん、俺が思うに、桐条先輩なんかはだな……」

>順平と他愛も無い話をしながら寮に帰った。

>……そうか。

>自分は、自分だ。

>『No.01 魔術師 伊織順平』のランクが2になった。

>『No.04 皇帝 真田明彦』のランクが2になった。

>『No.05 法王 天田乾』のランクが2になった。

>『No.08 正義 コロマル』のランクが2になった。

能動的に相手に関わる有里。
受動的にしか関われなかった鳴上。
事態を一変させるのは男の友情か。
誤解があるとアレなので言っておきますと僕は3メンバーの方が好きです。美鶴いるし。

では、また後日。

>>168
>>受動的にしか関われなかった鳴上
まて、番長好きなので言っておきたい。
小西 尚紀、長瀬 大輔、一条 康、海老原 あい、巽 完二、堂島 遼太郎、久慈川 りせ、中島 秀、小沢 結実または松永 綾音
それと話しかけると依頼をしてくる人たち。

俺の独断だけどゲーム内で主人公が能動的に関わった人たちだ。
これだけやって受動的にしかって何だおい。
さらに言えば弁当を作って学年などクラスに関係なく一緒にご飯を食べにいったり、家庭菜園まで作ろうとしてるんだぞ。

そもそも、番長は力は貰ったけど結局は自分というか仲間から突っ込んだわけで、キタローは呼ばれてきただけじゃねーか

>>178
このSS内でのことじゃねぇの?

ちらっと覗いたら誤解が生まれているようなのでちょろっと。

>>178 >>179の通り、SS内で現在自由に動けていないという意味です。
自分は原作の男前度で言うと番長が上だとは思ってます。

あと有里優遇の件ですが、優遇というわけではないですが、有里は常に鳴上の先にいるものとして書いてます。
二人とも主人公ですが、有里君は今回の件に少々造詣が深く、さらに知らない場所だろうと何だろうと気にせず進むタイプだと思ってますので
鳴上より手際よく、鳴上よりはっきりとした目的をもって、鳴上に背中で教えるキャラとして扱っているので優遇っぽい面が多く出ちゃってますね。
有里は先輩キャラ、みたいな感じで見てくれると有難いです。
性格に関しても、この二人、原作準拠にするとほっとくと何も喋らないのでかなりいじくってあるだけの事で、原作でこんな軽い面は出てません。
鳴上もかなりはっちゃけますし、有里は綾時要素がプラスされたようなもんだと思ってください。

美奈子ちゃんは誰とは言いませんがくせっ毛をポニテにまとめてる月光館学園の女生徒であると……
まあ、お察しの通りです。

本編投下はまた後ほど行います。
何か悪いイメージを抱かれたようで申し訳ありませんでした。

>>181
申し訳ありませんでした。
言い訳としては、>>168のみSSを読み終わってからだったので、カッとして書いてしまいました。
ごめんなさい。

ただ、アニメを見る限り鳴上はさらにはっちゃけてないでしょうか。
完二が女性陣テントに突っ込むのを行って来いと笑顔で送り出してたので。

私も全体的に、とくに女性陣のP3のキャラが好きです。でも、一番はスパッツの千枝ちゃんです。

>>182 謝るような話ではないですよ、こちらの伝達力不足です。
まぁ、飽くまで二次創作、下敷きとして原作があっても別物として見てください。
あと自分もスパッツは好きです。

歴代ペルソナのキャラが出てくるSSは別にありますね。
あっちは非常に面白いので肩身が狭いですが。

さて、とにかく本日分。



【同日 夕方 巌戸台分寮】


>自室に帰った……。

>皆に励ましてもらった。

>だが、これから上手くやっていけるのだろうか……。

風花「鳴上くん、ちょっといい?」

>風花が扉の向こうから声をかけている。

鳴上「はい、どうかしましたか?」

風花「ちょっとお話いい?」

鳴上「あ、じゃあどうぞ入ってください」

風花「うん。お邪魔します……」

鳴上「えっと、勉強机の椅子でよければどうぞ」

風花「ありがとう。……傷は大丈夫?」

鳴上「ええ、深くは無かったようで……あ、手当てしてくれたの、山岸さんでしたよね。ありがとうございます」

風花「ううん、いいの。昨日ね、鳴上くんをテレビから出した時に……」

鳴上「山岸さんが出してくれたんですか?」

風花「えっと、正確には私だけじゃなくて……クマくん、君のお友達でしょ?」

鳴上「クマに会ったんですか?」

風花「テレビの中からこっちに声をかけてたの。彼の協力が無かったら鳴上くんを助けられなかった」

鳴上「それで、クマはどうなったんですか?」

風花「私の力でも、彼はテレビから出て来れなかった……なんだか、取り込まれてるみたいに」

鳴上「そう……ですか」

風花「鳴上くんの事、ずっと心配してたよ。影時間が終わったらテレビが映らなくなっちゃって、話は出来なくなったけど……」

鳴上「クマ……」

風花「鳴上くん、もうあんな危ない事はしないでね?」

鳴上「はい……気をつけます」


風花「鳴上くん、私達と上手くやっていけるかなって思ってるんでしょ」

鳴上「い、いや、そんなことは……」

風花「ふふ、隠さなくて良いよ。……ちょっと、ついてきて」

>風花について寮の三階へ上がった。

鳴上「あの、この階って女子の……」

風花「しー、静かに……ほら、あそこ」

>廊下の端ではゆかりと美鶴がなにやら話している……。

岳羽「先輩もさぁ、もうちょっと言い方とかあるでしょ?」

美鶴「し、しかしだな……」

岳羽「そりゃ、鳴上君ってたまに彼にダブって見える時あるよ。だけど別人!わかってるでしょ?」

美鶴「それはわかっている。わかっているんだが」

岳羽「だが、じゃないでしょ。鳴上君は鳴上君。……私だって、もし彼が帰ってきたらとか考える事はあるよ。いろいろ、言いたい事も、一緒にしたい事もあるよ……」

美鶴「ゆかり……」

岳羽「だけど、それを鳴上君に求めちゃ駄目。忘れなきゃ、ってわけじゃないけど、お門違いってヤツだよ」

美鶴「う、うん。そうだな……」

岳羽「わかったらどうするんですか?」

美鶴「か、彼に謝罪を……」

岳羽「それから?」

美鶴「……心掛けを、改めよう」

岳羽「全く、心配かけないでくださいよ。あー、眠い……私、またちょっと寝ますね」

美鶴「ああ、すまない。手間をかけたな」

>どうやら自分の事らしい……。

風花「ね、わかる?」

鳴上「……はい」

風花「鳴上くんは失敗していいの。誰かが失敗しても、他の誰かが叱ってくれるし、助けてくれる。それが仲間でしょ?」

鳴上「山岸さん……真田さんにも同じことを言われましたよ」

風花「うそっ!?……なんか恥ずかしいな。先に言われちゃってるなんて……」

鳴上「いえ、ありがとうございます。なんか、吹っ切れました」

鳴上「俺は俺です。皆が求めるような、誰かの代わりにはなれない……でも、それでいいんですよね?」

風花「そういうことだね。じゃあ、これからもよろしくね!」

>仲間達から思いやりを感じる……。

>今なら皆を、胸を張って仲間だと言える。

>『No.00 愚者 特別課外活動部』のランクが2になった。

>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが2になった。

>『No.06 恋愛 岳羽ゆかり』のランクが2になった。


コンコン

鳴上「はい」

美鶴「私だ……少し、いいか」

鳴上「あ、今開けま……」

美鶴「いや、いい。そのまま聞いてくれ。……まず、昼間はすまなかった」

鳴上「そんな、落ち度があったのは俺です」

美鶴「確かにそうだが、私が君に言った言葉には、それ以外の感情が含まれていた。それを謝罪しておきたくて」

鳴上「別に、気にしてませんから。心配してくれたんでしょう?」

美鶴「そう、か。いや、それでもやはり謝らせてくれ。これまでの態度に君を不愉快にさせる部分があった事も含めて。本当に、すまなかった」

鳴上「……俺、そんなにその人に似てますかね」

美鶴「……時折、彼にダブって見える事がある。しかし、君は君だ」

鳴上「本当にそう思ってます?」

美鶴「……」

鳴上「俺、思ったんです。その人の思い出を忘れさせちゃえばいいんじゃないかって」

美鶴「忘れさせる……?」

鳴上「好きです」

美鶴「ッ……な、何を突然……!」

鳴上「桐条さん。いや、美鶴。俺じゃ駄目ですか」

美鶴「や……やめてくれっ……」

鳴上「ドア、開けますね」

美鶴「ちょ、ちょっと待て!まだ心の準備が……」

>ドアを開けた。

>美鶴は顔を真っ赤にしてうろたえている。

>……順平の部屋から、順平が顔を出している。

>順平に向かって親指を立てた。

美鶴「き、君の気持ちは嬉しい。だが、今私が見ているのは君の中の彼で、だから、その、とにかく今は……?」

鳴上「すみません桐条さん。少し、からかいました」

>順平がどこから持ってきたのか、ドッキリ大成功!と書いた紙を持ってこちらを見ている。

鳴上「あれを」

美鶴「……」

美鶴「……けいだ」

順平「いやー俺の作戦通りっつーの?見事に引っかかってくれて……」

美鶴「処刑だ!貴様らそこに直れ!」

順平「やべっ!鳴上、後任せた!」

鳴上「え、ちょっ!待ってくださいよ!」

美鶴「待て!」

>順平と二人で美鶴から逃げ回った……。


アイギス「……励まそうと思っていたんですけど、ね」

コロマル「ワン」

アイギス「楽しそうでなによりです。……良かった」

>『No.03 女帝 桐条美鶴』のランクが3になった。

>『No.07 戦車 アイギス』のランクが2になった。



【深夜】


?「やぁ、こんばんわ」

鳴上「ん……?」

>見知らぬ女性が部屋にいる。

鳴上「あれ、えっと……」

>女性は月光館の制服を着ている……新しく入寮する生徒だろうか?

鳴上「なんで、ここに?」

?「あなたが彼に会ったから」

鳴上「彼……あいつか?」

>タルタロスで出会ったペルソナ使い……

?「多分、そのあいつ。君の中に彼の一部が入ってる……って言えばいいのかな」

鳴上「俺の中にあいつが?」

?「ケガしたでしょ。それが通路。君と彼とはコインの裏表みたいなものだから、そこを通して両側が繋がってる……って感じ」

鳴上「確かに、あいつには俺と似た何かを感じた。……じゃあ、君はあいつの何なんだ?」

?「私は彼。鏡写しの君の、もっと奥の部分。名前は、有里美奈子」

鳴上「俺に何の用なんだ」

美奈子「強いて言えば様子見。君が落ち込んでやしないかと思って。けど、心配無かったみたいね」

鳴上「落ち込んでたさ。数時間前まで」

美奈子「仲間のおかげ、かな?順平やゆかりは元気?真田先輩は相変わらず?桐条先輩は無茶してない?」

鳴上「なんで知ってるんだ?」

美奈子「今は、まだ内緒。また会いにくるね。今日は、これでお別れ」

鳴上「お、おい。待って……」

>……いつもの、自分の部屋だ。

鳴上「なんだったんだ、一体」

>左胸の傷が少し痛んだ。

>『No.13 死神 有里美奈子』のコミュを手に入れた。

>『No.13 死神 有里美奈子』のランクが1になった。



【2012/4/14(土) 曇り ジュネス内フードコート】


陽介「俺から言えることはねーな!実際、前のテレビと違いすぎて何もわっかんねぇ」

完二「同感っス。違いを探そうにも共通点が少なすぎて何も言えねぇ」

千枝「私もよく……あれってほんとにマヨナカテレビなのかな?」

直斗「条件的には合致していますが……もしかすると、完全に別種の何かなのかもしれませんね」

りせ「中も全然違ったよ。もしかしたら出られないかもって焦っちゃった」

雪子「感じからして全然違ったよね……どうなんだろう……」

>特捜隊のメンバーは難しい顔をして相談している……。

>この空気の中言い出すのは非常に気が引ける発表を控えているのだが……。

有里「ところで、昨日入った時はいつもと違ったって言ってたよね」

りせ「うん、いつもだったら同じテレビから入ると決まった場所に出るんだけどね。昨日は、見たままの場所に出たし……」

有里「今から、テレビの中に入る事って可能かな」

陽介「でぇ、お前、そんなケガしといてまだやる気マンマン?」

有里「軽症軽症。それに、今度こそ入るだけ」

直斗「入ってどうするんですか?」

有里「テレビが映っている間だけ別の所に繋がるのか、それとももう常にあの場所に繋がってるのかが気になってね」

りせ「あ、確かにそうかも……ちょっと入ってみます?」

有里「うん。じゃありせ、また悪いんだけど……」

陽介「だぁーもう、お前は休んどけって!見てくるだけだったら俺が行ってくるよ!」

有里「陽介が?大丈夫?」

陽介「う、実はちっと不安……完二!ついて来てくれぇ……」

完二「お、俺っスか!いや、まぁ、いいっスけど。ほんじゃ、ちっと行ってきますわ」

有里「待ってるよ。りせ、気をつけてね」

りせ「わかってますって!じゃ、ちょっと見てきますね」

陽介「俺らにゃ一言も無しかよ!」

千枝「いーからさっさと行きなさいって」

>陽介と完二とりせはテレビの中へ入って行った……。


>と、すぐに出てきた!

有里「早かったね。首尾は?」

陽介「いや、どうもこうもねーわ。いつも通り」

りせ「いつもの部屋に出ちゃったよ……一応、周囲を探ってみたけど、昨日の場所へ繋がる道は無いみたい」

直斗「と、なるとやはり例の映像が映っている時のみ探索が可能となるわけでしょうか」

有里「みたいだね……それで、今日は僕から皆に伝えなきゃいけないことがあるんだ」

雪子「急にどうしたの?」

有里「この事件の捜査……やめよう。手を引こうと思う」

>……。

>全員が沈黙した。

陽介「はぁあ~!?おま、何言っちゃってんの!?」

有里「ふざけても無いし冗談でも無いよ。あの塔……タルタロスっていうんだけど、あの中はシャドウの巣になっている。危険すぎるんだ」

千枝「で、でも!私達だって一応シャドウとの戦いは越えてきたわけだし!」

有里「心配なんだ。わかって欲しい」

完二「俺ぁ納得いかねっス!じゃあ誰が解決するって言うんスか!」

有里「……昨日、タルタロスで知らないペルソナ使いに出会った。恐らく、彼もこの事件を調査している」

直斗「その人に任せるっていうんですか?」

有里「影時間絡みとなれば、僕の昔の仲間も手を打っていると思う。だから、皆は手を引いて……」

陽介「待てよ。昔の仲間って言ったな。それって、月光館のか?」

有里「そうだけど……あ」

陽介「昨日会ったペルソナ使いって男か?女か?」

有里「おと……女の人だったよ」

陽介「バレッバレの嘘つくんじゃねーよ!正直に言ってくれ。そいつってさぁ……」

>陽介が言った特徴は、全て昨日見た男と一致していた。


陽介「間違いねー……」

雪子「だったら、尚更調査続けないとね」

直斗「そうですね。あの人が関わっているなら協力し合わないと」

りせ「有里さんひどーい、内緒にしてたでしょ」

千枝「ま、やめる訳にはいかなくなっちゃったね」

完二「つーか有里さん、先輩とやりあったんスか。どっち勝ちました?」

有里「あのー……」

陽介「そいつ、間違いなく俺らの仲間だわ。アイツが戦ってんなら余計見てるだけなんて出来ねーよ」

有里「……どうしても?」

全員「どうしても!っス
         です」

有里「ああ、そう。それならそれで仕方ないね……昨日、結構痛めつけちゃったけど大丈夫かな彼」

完二「え!有里さん勝ったんスか!すげ、マジっスか!」

有里「強かったよ。勝ったと言ってもほら、僕もこんな傷付けられちゃったわけだから、分けってとこ」

陽介「さぁて、アイツに連絡しとかねーとなー。いろいろわかった事もあるし。お前の事も言っとくぜ」

有里「いや、僕の事は控えておいて。彼から他の人に伝わらないとも限らないし」

陽介「……しゃーねーな」

有里「君たちが仲間の事を大事にしてるのは良くわかった。だけど、どうやらまた雨が降るまで探索は出来ないみたいだ。だから、とりあえず……」

有里「それまでは、一切気にせず学生生活を営む事。例の彼との連絡くらいはとっても構わないけど、あまり掛かりきりになってもね」

陽介「だな!じゃーとりあえず今日は解散って事で!相棒には俺からメールしとくわ。有里もケガさっさと治せよ!」

>彼らの間に揺ぎ無い信頼関係を感じる……。

>『No.20 審判 自称特別捜査隊』のランクが2になった。

有里「……これは、急ぐ必要があるかな?」

>とりあえず、今日は帰ろう。

今回から天城雪子の台詞の前を「天城」から「雪子」に変更しました。
苗字で書かれているキャラと名前で書かれているキャラの差は収まりの良さだけなので深い意味はないです。
今日はまた後でもう少し投下するかも。

とりあえず、一旦終わり。

ちょっとだけ追加。



【2012/4/15(日) 晴れ 巌戸台分寮】


>そういえば、昨日いろいろありすぎて忘れていたが、陽介から連絡があったかもしれない。

鳴上「……来てるな」

>メールを読んだ……。

鳴上「あの場所は雨の夜しか入る事は出来ない……か。ん?何で陽介が俺がタルタロスにいた事を知ってるんだ?」

>陽介に返信しておこう……。

>今日は日曜だ、時間があればまた連絡があるかもしれない。

鳴上「さて、今日はどうしようか……」

>メンバーの誰かと出かけるてみようか。

鳴上「とりあえず、寮内に誰がいるか確かめよう」


【ラウンジ】


天田「あ、鳴上先輩。おはようございます」

鳴上「天田か、おはよう」

>そういえば……

鳴上「天田、ポロニアンモールに行く約束、覚えてるか」

天田「あ、覚えてますけど……先輩、怪我もしてますし、また今度で」

鳴上「大丈夫だよ。暇なら今日案内してくれないか」

天田「そうですか?それじゃ、一緒に行きますか」

>天田とポロニアンモールに出かける事になった……。


【ポロニアンモール】

天田「案内って言っても、先輩も何度か来てるみたいだしあんまりいらないですかね」

鳴上「まだ全部回ったわけじゃないし、出来たら簡単に案内してくれると有難いな」

天田「じゃあ、適当に回りましょうか」

>天田とゲームセンターで遊んだ……。

天田「あ、アレ……」

>天田はクレーンゲームの景品を見つめている。

鳴上「……なんか、前も見たなこの人形」

天田「僕クレーンゲームって苦手なんですよねぇ」

鳴上「よし、やってみよう」

天田「わ、頑張ってください!」

鳴上「む……あまりよくない位置だな」

ガタン

天田「あー……ドンマイです」

鳴上「いや、これは布石だ。ここに置くことで……」

ガタン

天田「……先輩、別にそこまで欲しくないんでいいですよ」

鳴上「もう少しで取れると思うんだ……」

>……。

天田「3000円ですか。高くつきましたね……」

鳴上「今日は、調子が悪かったな……」

天田「普段はどうなんですか?」

鳴上「普段なら二回か三回で取れるんだけどな」

天田「へぇー、上手いんですね!今度教えてくださいよ!」

鳴上「ああ、また来よう」

>天田にジャックフロスト人形を取ってあげた。

>……流行っているのだろうか。

天田「案内しようって思ってたのに、思い切り楽しんじゃいましたね。すみません」

鳴上「いいさ。楽しかったならなによりだ」

天田「先輩と遊ぶの、楽しいです。また誘ってくださいね!」

>天田とまた遊ぶ約束をした。

>天田と少し仲良くなった気がする……。

>『No.05 法王 天田乾』のランクが3になった。

【同日 夜 巌戸台分寮】

>……陽介から連絡があった。

>影時間の話を聞いた例のスゴイヤツの詳細は、今は明かせないらしい。

鳴上「……GWにこっちに来たときに全部話す、か」

>そういえば、GWに八十稲羽に帰る予定にしてあるが、それをまだ伝えていない。

鳴上「ちゃんと言っておかないとな」

>今日は、もう寝よう……。



【2012/4/15(日) 晴れ 堂島宅】


>陽介からメールだ……。

有里「クマは無事でいる……?ああ、あの着ぐるみの……無事だったのか」

>彼の為にも、皆が捜査をやめる事は無いだろう。

有里「天気予報じゃ、一週間は雨は無いってことだし……僕に出来ることは、皆と仲良くなる事くらいか」

>今日はどうしよう……。

有里「過去の経験からして、複数人の女性と同時に仲良くなる事は非常に危険」

>タルタロスに潜ったはいいが、誰一人として一言も喋らなかった時を思い出した。

有里「……ただし、男性は同時進行でも比較的安全、というか皆で遊ぶ事を好む人も多い、と」

有里「とりあえず、女性かな……」

>まずは、彼女の事を良く知ろう。

>千枝にメールした……。


【同日 昼 晴れ 堂島宅】


菜々子「湊お兄ちゃん、お客さんだよー」

>どうやら来たようだ。

千枝「よっす、有里くん……」

有里「わざわざ来てもらってごめんね、里中さん」

千枝「いやいや、全然いいんだけど、えと、何か、用かな?」

有里「用が無いと会いたいって言っちゃ駄目?」

千枝「や、そういう訳じゃ……」

有里「とりあえず、上がる?」

千枝「ふぇ?お、お部屋は早いんじゃないかなー?えっと、お話する?だったら商店街かどっかでいい?」

有里「ああ、そう?じゃあ、行こうか」



【商店街】


千枝「でさ、その時雪子が……」

有里「へぇ」

千枝「……あの、有里くん、もしかしてつまんない?」

有里「ん?どうして?」

千枝「いや、なんていうか、リアクションがさ。薄いなって思って」

有里「そうかな。普通に話してたつもりなんだけど……」

千枝「あはは、私の話なんか別に面白くもないから、当たり前かなー、なんて」

有里「ごめんね」

千枝「謝ることじゃないよ、こっちこそごめんね?」

有里「……もし、彼だったら、里中さんももっと話しやすかった?」

千枝「彼……って、ああ、あの人はね、私がどんな話をしても……」

有里「どうかしたの?」

千枝「いやぁ、良く考えたら有里くんと似たようなリアクションだったなーって」

有里「けど、彼と話す時はそんな風に気遣ったりしなかったんじゃない?」

千枝「あれ、確かにそうだね……なんでだろう」

有里「結局、僕はまだ里中さんにとって部外者って事かな?」

千枝「そ、そんなこと無いよ!ただ、彼の方が少し……包んでくれるっていうのかな。安心感みたいなのがあってね」

有里「そっか……僕じゃ駄目なわけだね……」

千枝「だ、だから!そういうんじゃないってば!……まぁ、まだ有里くんの事よくわかんないってのはあるのかも知れない」

有里「僕の事?」

千枝「うん。どのくらいまで身を任せて良い人なのかな、っていうか」

有里「彼ならどーんと行っても大丈夫だと思えたんだね」

千枝「うん、積極的に話しにノってくれたりするわけじゃないんだけど、不思議とね……って、何か変な事言わされてない?」

有里「変な事じゃないよ。里中さんが彼の事が大好きなんだなぁって確認しただけ」

千枝「大好きって……!だから、あんまりからかわないでよ、もう……」

有里「僕じゃ頼りないかな?」

千枝「へ?」

有里「僕じゃ、里中さんを包んであげられないのかなって」

千枝「……もうちょっと、お互いを良く知ってからじゃ駄目?」

有里「じゃあ、これから里中さんの事、ちょっとずつ教えてよ。僕の事も少しずつ教えるから」

千枝「うん。じゃあ、あの、よろしく……ね」

>千枝は手を差し出してきた。

有里「よろしくね」

>手を握り返した。

>……緊張しているのか、少し汗をかいている。

有里「汗」

千枝「う、言わないでよ、そういう事はさ……」

>千枝と色々な話をした……。

>千枝と少し仲良くなったようだ。

>『No.11 剛毅 里中千枝』のランクが3になった。

有里「……こっちでも、強敵だな」

千枝「何か言った?」

有里「いや、何も。家まで送るよ」

>やはり彼の存在はメンバーの中でかなり大きいようだ。

>もしかすると、これから絆を深める上で少し障害になるかもしれない……。

>千枝を家まで送って、自分も帰った。

意識し始めたお互い。
しばらくは二人ともコミュ伸ばし。
二人が会うとどうなるのでしょう。
答えは霧の中?

本日分は今度こそ終わり。
では、また後日。

>>210
あの・・・いきなりで悪いとは思いますが、そういう質問には答えないでくださいよ・・・

その辺の要素も込みで見てるんですから。
例えるなら推理小説でこれからの被害者を全員教えられてしまう位の酷さですよ

せめて
「鳴上君の事を忘れたりする訳ではなく、これから有里が彼らにとってかけがえのない仲間になる」
ぐらいで留めて欲しかったです。

>>211 っとー、またも申し訳ない。
書き方が悪かったと思うので弁明を。

先ほどのレスで最も重要なポイントは
「基本大筋以外は行き当たりばったりで書いてるので、どうなるかは自分でもわかりません」
の部分です。
まぁ、つまり、可能性としてあらゆるパターンが存在するけれど、現時点では未定という事になります。

事件の原因や解決策などは決定してから書いていますが、そこにいたるまでにどのキャラが重要な役割で、どのキャラがこう動いて、っていうのは考えてません。
勿論有里や鳴上がそれぞれ仲間達と打ち解けられるかどうかも含めて、自分にも不明です。

本来ならこういう質問は言葉を濁すのですが、原作があり、その原作で良い仲になったキャラもいるという事で、それ以外は見たくないという方もいると思います。
そういった点に配慮して返答する事にしました。
なので、実際ネタバレ要素は含まないようにしたつもりですが、そのようにするつもりであるとも取れる書き方だったのは落ち度だと思い、レスを重ねました。

さて、わずかな時間を見つけて投下。
かなり短いですが本日分。



【2012/4/16(月) 晴れ 堂島宅】


菜々子「湊お兄ちゃん、今日もお出かけ?」

有里「夕方からちょっと出かけようかなって思ってたけど?」

菜々子「そっか……じゃあ菜々子帰ってきたらちゃんとお留守番してるね」

有里「うん。じゃあいってらっしゃい」

>菜々子を見送った……。

有里「さて、と」

>少し、やり方を考える必要がある。

有里「まず、里中さんと仲良くなろう。ああいうタイプは月光館にはいなかったし……」

有里「彼の事は、また今度考えるとして。とにかく一人ずつ仲良くなっていこう」

>まだ焦るような段階では……メールだ。

『差出人:りせ
  件名:ずるーい!
  本文:昨日里中先輩とデートしたってほんと!?
     ずるーい、りせも有里さんと遊びたーい』

>文の最後にハートの絵文字がぴこぴこと輝いている。

有里「……まぁ、いいか」

>りせに返信しよう。



【同日 夕方 商店街】


りせ「有里さーん、お待たせっ!」

有里「学校お疲れ様」

りせ「ありがとーございます!あ、でもりせちょっと怒ってるよ?」

有里「どうかしたの?」

りせ「有里さん、里中先輩とデートしたって?」

有里「デートっていうか、少し話をね」

りせ「商店街をぶらつきながら?」

有里「なんでりせが知ってるの?」

りせ「有里さんの事は何でもお見通しです!……なんちゃって、実は完二が見てたんだよね、昨日。今日たまたま聞いちゃって」

有里「ああ、それで……」

りせ「あたしの事ほっといてデートとか酷いですよぉ!」

有里「ごめんね。お詫びに今日は付き合おうと思って」

りせ「えへ、冗談ですけどね!でも付き合ってくれるならトコトン甘えちゃおうかな。じゃ、いきましょー!」

>りせに手を引っ張られてどこかへ連れて行かれた……。



【辰姫神社】


りせ「はいっとーちゃく!」

有里「ここ……神社?」

りせ「神社ですね」

有里「ええと、りせは神社に何か用があったの?」

りせ「ふっふっふ……有里さんは知らないでしょうけど、ここの神社はすごいんですよ?」

有里「おみくじで良いのを引くとお金が拾えるとか?」

りせ「え、なんですかそれ。いやそういうんじゃなくて!絵馬があるでしょ?」

有里「絵馬?……ああ、確かに」

>たくさんの絵馬が吊られている……。

りせ「ここに願い事を書いた絵馬をかけとくと、なんと!願いが叶うんですよ!」

有里「ほう」

りせ「なので、あたしと先輩の願い事をここに書いちゃおう!って事で連れてきました」

有里「願い事ね。りせは何を書くの?」

りせ「あたし?あたしはねー……内緒!」

有里「じゃあ後で絵馬見るね」

りせ「えっ!ずるい!それ反則ぅ!えーと……願い事は、有里さんともっと仲良くなれますように、だよ」

有里「僕と?」

りせ「うん、せっかく知り合えたんだもん。もっとずーっと仲良くなりたいなって」

有里「それなら絵馬なんかに書かずに僕に言えばいいのに」

りせ「気分の問題!そういう有里さんは何て書くんですか?」

有里「僕は決まってるかな。影時間が早くなくなりますように、だよ」

りせ「……ま、そうですよね!今はそれが一番大事だもんね」

有里「不満なら、僕もりせともっと仲良くなれますようにって書こうか?」

りせ「言わせた感すごいからいいですぅ。有里さんらしくって良いと思いますよ」

>二人で絵馬を書いた……。

有里「……?りせ、なんで二枚も」

りせ「ん?あれっ、あれってもしかしてキツネ?」

有里「キツネ?犬じゃなくて?」

りせ「あんな犬見たことないですよ。キツネっぽかったんだけどなー……で、えっと、呼びました?」

有里「……いや、なんでもない」

>りせと仲良くなった気がする。

>『No.17 星 久慈川りせ』のランクが3になった。

>……?

>陽介からメールだ。



【2012/4/16(月) 晴れ 巌戸台分寮】


>GWの事を美鶴に相談しよう。

鳴上「桐条さん、ちょっと良いですか?」

美鶴「……なんだ」

鳴上「あの……からかったのは本当に申し訳ないと……」

美鶴「っ、ああ、それはもういい。で、何か用か?」

鳴上「ええと、GWってありますよね。その間、前に住んでた町に遊びに行こうかと思ってるんです」

美鶴「この大変な時に遊びに……いや、そうだな。それもいいかもしれないな」

鳴上「単に遊びに行くわけじゃなくて、仲間から話とか聞いてこれたらいいなって事で」

美鶴「なるほど、合理的だ。ここにいるだけではわからない情報も手に入るわけか。良いだろう、行ってきなさい」

鳴上「本当ですか?ありがとうございます!」

美鶴「そもそも善意で協力してもらっているんだ、君の生活をこれ以上拘束する権利は無いよ。楽しんでくるといい」

鳴上「はい、じゃあGWには寮を空けますね」

美鶴「だが、一つ条件がある」

鳴上「条件、ですか?」

美鶴「……言いたくは無いが、君には前科がある。また一人で何かしないとも限らない」

鳴上「……今回は、そのつもりはありませんが」

美鶴「それと、こちらと勝手が違う可能性があるからな。……そんな顔をするな、単に心配なだけだ」

鳴上「つまり、この寮の誰かを連れて行けと?」

美鶴「ああ。私から推薦する人物を一人。それから君の好きに一人選出して三人で旅行だ。友人と水入らずと行きたい所だろうが……すまないな」

鳴上「いえ、今が非常時だっていうのはわかってますから。それに、新しい仲間を紹介もしたいですし」

美鶴「そう言ってくれると心が痛まずに済むな。では、条件付だが許可を出そう。そろそろ学校に行かないと遅れるぞ」

鳴上「ありがとうございます!じゃ、行ってきます」

>GWに八十稲羽に帰れることになった!

>連れて行くメンバーを決めなければ……。

>それと、陽介に連絡を入れておこう。

とりあえずここまで。
夜中になればまた少し時間が出来るかもしれませんが、恐らくは……なので短いですがご容赦を。

というわけで、本日分は以上。
また後日。

まあNTR勘弁って気持ちはわかります。ので上述のようなレスをしておきました。
そこまで酷いものは出ないと思いますが、それに近い感覚を味わうかもしれません。

方向性として、FESに近い感じになるので、多数派に支持されるとはいかないかもしれないなと思っています。
みんな人間で、いろんな判断をする可能性がある。という事を念頭に置いて書いてます。

さて、そんなわけで本式に投下。
本日分その2。



【同日 夕方 堂島宅前】


『差出人:陽介
  件名:速報
  本文:GW、相棒が帰ってくる事が確定!向こうの友達も何人か連れてくるってよ!』

有里「……ややこしくなってきたな」

>何だか、他のメンバーとの間に少し壁を感じ始めた。

>これ以上仲良くなる事が難しい気がする。

菜々子「お帰りなさい!菜々子お留守番してたよ!」

有里「お疲れさま。誰か来たりした?」

菜々子「……お客さんは来なかったよ。湊お兄ちゃん、何か困ってるの?」

有里「ん?ちょっとね」

菜々子「そーなんだ……」

>菜々子は心配そうにこっちを見ている……。

有里「ちょっと、お友達と仲良くなりたいんだけど、中々上手く行かなくて」

菜々子「お友達と仲良くできないの?」

有里「いろいろ試してるんだけどね」

>何か違和感を感じる……。

菜々子「寂しい?大丈夫?」

有里「大丈夫、なんとかしてみせるから」

>……?


【夜】


美奈子「こんばんわ」

有里「ああ、君か……こんばんわ」

美奈子「今日は元気無いね」

有里「何か引っかかる事があってね……」

美奈子「仲間との事?」

有里「だと思う」

美奈子「忘れてることがあるんじゃないかなぁ」

有里「忘れてること……?」

美奈子「灯台下暗し、って言うでしょ?初歩的な事を見落としてるとか」

有里「そう……なのかな」

美奈子「自分で上手くやっているつもりの時ほど、肝心なことを忘れているものだよ」

有里「……」

美奈子「納得いかない?……次までに、答え合わせしておいてね」

有里「忘れている、こと……?」



【同日 昼 月光館学園】


鳥海「えーと、そろそろ全員書けたねー?回収するよー?」

>生徒達がプリントを提出していく……。

鳥海「ありゃ、鳴上くんはまだ書けてないか」

鳴上「すみません、すぐ……」

鳥海「あー、焦んなくていいよ。この紙はただの調査票だけど、人生考えるって大事だから。まぁ書けなかったら放課後残ってもらうけどねー」

鳴上「はい……じゃあ、放課後に提出します」

鳥海「はいよ。しっかり考えなさい」

男子「鳴上、まだ書けて無かったのな」

鳴上「ああ。お前は何て書いた?」

男子「とりあえず進学かなー。就職っつっても就職先も無いし。バイトしながら大学通って、その間に決めるよ」

鳴上「とりあえず、保留ってとこか」

男子「ま、そういう感じ。だってさ、人生決めろったって無理だろ?俺らちょっと前まで小学生だったんだぜ?」

鳴上「先の事なんて考え始めたの、つい最近だもんな」

男子「そーそー。これからさ、大人になった頭でじっくり考える時間作るためにも大学だな」

鳴上「……しっかり考えてるんだな」

男子「適当だよ適当。みんなそんなもんだと思うぜ」

鳴上「そうか……」

男子「……ま、先生の言うとおり、じっくり考えてもいいと思うぜ。本決定までまだ時間あるしさ」

鳴上「ああ、そうするよ」


【放課後 職員室】


鳴上「すみません、先生。時間がかかってしまって」

鳥海「はい、受け取りました。……進学、するの?」

鳴上「ええ、とりあえずそうしようかと」

鳥海「教師としては、とりあえずーなんて理由は認め辛いなー」

鳴上「まだ本決定では無いですし、本当にとりあえずって感じなんですけど」

鳥海「わかってるって。まぁ悩むよね。とにかく進学しとけば、まだ考える時間は作れる。そうでしょ?」

鳴上「俺、やりたい事とかあんまり思いつかなくて……」

鳥海「そうだねー、最近の学生は皆そんなもんでしょ。やりたい事やらせてもらえる世の中でもないしね」

鳴上「先生は、教師になりたくてなったんですか?」

鳥海「ないしょ。あ、そうだ。何ならその調子で周りの人に聞いてみればいいんじゃない?面白い話聞けるかもよ」

鳴上「なるほど……そうですね。聞いてみます」

鳥海「とりあえず今日は帰ってよし。またね」

>職員室を後にした……。

鳴上「進路、か……事件以外にもこんな強敵がいるとは……」

>進路の事……誰に聞こうか……。



【巌戸台分寮】


美鶴「君か、おかえり」

鳴上「あ、ただいま……」

美鶴「……?どうした、そんなに眉間に皺を寄せて」

鳴上「あ、そんな顔してます?」

美鶴「ああ。何に悩んでいるか知らないが、相談なら乗るぞ?」

鳴上「それが、進路の事でして……」

美鶴「……なるほど、時期だな。なるべく早くに決定してしまう事が望ましいか。ならこの寮には先輩達が沢山いる。話を聞くといい」

鳴上「先生にもそう言われたんで、そうしようかと。ところで、桐条さんはどうだったんですか?」

美鶴「私か?……いや、私の話はいいだろう。ああ、それと真田には聞くな。恐らくはおかしな方向の話になるから」

鳴上「ああ……それは、なんとなく」

美鶴「そうだな、ゆかりや山岸なら真面目に聞いてくれるだろう」

鳴上「そうですね、そうします。じゃあ、失礼します」

>さて、どちらに話を聞こう。

>悩んでいると、三階から誰かが降りてきた。

風花「あれ?鳴上君どうしたの?階段の前で……うわ、眉間に皺が……」

鳴上「ああ、山岸さん。よかった、ちょっと話いいですか」

風花「お話?いいけど……」

鳴上「立ち話も何ですんでどこか……」

風花「じゃあ、またお部屋にお邪魔してもいいかな?」

鳴上「ああ、どうぞ」


【自室】


鳴上「じゃあ、また椅子を……」

風花「あ、私ベッドでいいよ。鳴上君、椅子使って」

鳴上「一応上座があっちなんでどうぞ」

風花「この部屋、上座とかあるんだね……じゃあ、失礼して。ところで、お話って何?」

鳴上「今日、学校で進路希望調査っていうのを書いたんですよ。それで、俺、やりたい事とか思いつかないなって思って」

風花「あー、三年だもんね。遅いくらいか。でも、そういう事なら私の話ってあんまり参考にならないかも」

鳴上「どういうわけですか?」

風花「私、今は大学に通ってるんだけど……やりたい事があるわけじゃないんだ」

鳴上「あ、やりたい事を探す為の時間稼ぎみたいな」

風花「っていうんでも無いんだけどね。やりたい事がいくつかあって、それが決められなくて……迷ってる内に、期限が来ちゃって」

鳴上「とにかく進学って事にした?」

風花「そう。あれって、夏くらいにはもう決めとかないと駄目なんだよね。先生たちもそのくらいから色々手続きとかするみたいだし」

鳴上「夏ですか……」

風花「私はね、機械いじりが趣味で……」

鳴上「あ、何か意外ですね」

風花「変かな?」

鳴上「いえ、そういうわけじゃ」

風花「その方面かなって思ったんだけど、そういう仕事ってやっぱり男性が多くて。求人が少なかったんだよね」

鳴上「エンジニアとかだと女性には厳しいんですかね」

風花「そうみたい。で、もう一つの趣味が料理で、そっちの方面に進もうと思ったんだけど」

鳴上「あ、それはなんていうか、らしいです」

風花「そう?ありがと。でも、そっちは踏ん切りつかなくて……機械いじりはこれでもちょっとしたものだと思ってるんだけど」

鳴上「自信が無かったんですか?」

風花「うん。今でこそ趣味って言ってるんだけど、昔はほんっとに苦手でね……それもあって、中々決められなくて」

鳴上「今は、どうしようと思ってるんですか?」

風花「やっぱり、料理かなって思ってる。今は、普通の文系大学に通ってるんだけど。卒業したら調理師免許でも取ろうかなって」

鳴上「決まったんですね」

風花「うん。やっぱり好きなことしたいし、ね。鳴上君の趣味って何?」

鳴上「趣味ですか……釣りとかならしますけど」

風花「うーん、中々仕事にし辛い趣味だね……。そういうのだと難しいよね」

鳴上「でも、やっぱりやりたい事をやろうっていうのは凄くなんていうか、励ましになりました。ありがとうございます」

風花「そう?なら良かった。ごめんね、いい話できなくて」

鳴上「いえ、本当に……いつか、料理食べさせてくださいよ。俺も少し料理するんで興味あります」

風花「うん、いつかね。約束。じゃ、私はこれで」

>風花に一礼して別れた。

>風花と少し仲良くなった気がする。

>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが3になった。



【2012/4/17(火) 晴れ 夕方 ジュネス内フードコート】


陽介「よっ!どうしたよ、俺だけ呼び出したりして」

有里「悪いね、陽介。少し話がしたくて」

陽介「何、悩み事か?相談乗るぜ」

有里「実はそうなんだ」

陽介「あれ、マジなの?この前悩みなら俺にゃ相談しねーっつってたから冗談かと」

有里「マジなんだ。真剣に聞いて欲しいんだけど」

陽介「おう、マジなんだったら俺もマジで聞くぜ」

有里「僕の事、どう思う?」

陽介「あぁ?……そういうのは、ちょっと」

有里「どうして?真剣な相談なんだ」

陽介「うわぁ、身を乗り出すな!そ、そーゆーのは完二の担当だろが!」

有里「完二君が?人を見るのが得意とかなのかな」

陽介「え?ああ、あのー……あれか?俺の事が好きとかそういうんじゃないのか?」

有里「好きだよ」

陽介「いや、友達としてとかじゃなくて、こう……ライクじゃなくてラブみたいな?」

有里「陽介、そういう趣味なの?」

陽介「前に違うっつったろーが!……なんだ、有里は俺らからどう見られてるか気になってたのか」

有里「まぁ、そうだね」

陽介「へっ、そんな事気にしてないような顔してなー。可愛いとこあんじゃん」

有里「真面目に聞いてるんだ」

陽介「あー、そうだなー。俺から見たって事でいいんだよな?」

有里「うん、陽介から見て僕はどういう人間に見える?」

陽介「……正直に言うぜ?」

有里「それを聞きたいんだ」


陽介「変なヤツ、って感じだな。正直言うと……たまーに引く瞬間あるぜ。なんつーか、人の事探ってるような気がしてさ」

有里「そう、か」

陽介「いや、落ち込むことねーよ?なんつーのかな。俺、馬鹿だから上手く言えねーんだけど、俺らの事仲間だと思ってんのかな?みたいな瞬間あるぜ」

陽介「良い印象ねーっつったけど、そりゃ普通に友達として見てるって話でさ……俺以外の奴らがどう思ってるかわかんねーけど、ちょっと薄気味悪いっつーか」

有里「……まぁ、そうだろうね」

陽介「悪いな、なんか、上手く言えねーや。ただ、お前面白いと思うんだよ。面白いと思うし、多分良いヤツなのもわかってる。けど、なんだろな……安心できないっつーの?何か、こっちの事伺ってる感じがしてさ」

有里「嫌われてるのかな」

陽介「いや、嫌いじゃねーよ?それは皆同じだと思う。むしろ好きなんだけど、一線あるっつーかさ……」

有里「そっか……」

陽介「……なんか、ごめんな?」

有里「いや、正直に言ってくれてありがとう。わざわざ呼びたてて悪かったね」

陽介「や、いいって。まぁ、俺もさ……そんなにすんなりこの街に馴染んだわけじゃねーんだ。だから、何となくわかるぜ、有里の気持ち」

有里「……じゃあ、また何かあったら相談に乗ってくれる?」

陽介「ああ、絶対な!その内馴染めると思うぜ、皆良いヤツらだしさ」

有里「ありがとう。……またね」

>陽介に悩みを少し打ち明けた。

>陽介と親密になった気がする。

>『No.19 太陽 花村陽介』のランクが3になった。


【同日 夜 堂島宅】


菜々子「お帰りなさい……遅かったね」

有里「うん……」

菜々子「お友達とまだ仲良くできてないの?」

有里「……」

菜々子「お兄ちゃんとは皆仲良しだったのに……」

有里「お兄ちゃん、か」

菜々子「どうかしたの?」

有里「なんでもない。気にしないで」

菜々子「湊お兄ちゃんもかっこいいし優しいのにどうして?」

有里「いろいろ工夫してみてるんだけどね」

菜々子「くふう?なんでお友達と仲良くするのに工夫がいるの?」

有里「まぁ、いろいろあって……」

>何かが引っかかる。

菜々子「へんなの。菜々子、お友達と遊ぶ時に工夫なんてしてないよ。一緒に楽しく遊べたらいいなって思ってるだけだもん」

陽介『こっちの事伺ってる感じがしてさ』

有里「あ」

菜々子「どうしたの?」

>菜々子はまた心配そうにこちらを見ている。

有里「ありがとう、菜々子。何か、わかったかも」

菜々子「ほんとに!?良かった、じゃあみんな仲良しだね!」

有里「これからは、ね」

>部屋に入った……。

有里「ふぅ……僕は馬鹿か」

有里「焦りか、慢心か、人としての大事な部分をすっかり忘れてたのか……」

有里「人は、駒じゃない。彼らは、僕の力を増す為の道具じゃない」

有里「下らない……誰が障害になってる、とかじゃない。僕自身の問題じゃないか」

有里「もう一度、自分の気持ちを見直せ……僕は、彼らとどうなりたい?」

>特捜隊の仲間達の顔が浮かぶ。

有里「……GW、か」

有里「陽介に、彼の連絡先を聞こう」

というわけで昼のと合わせて一日分といった所でしょうか。
なんやかんやで上手く回り始めた鳴上。
ようやく絆の本当の深め方を思い出した有里。
そして長々とお待たせしました。
そろそろ、二人が出会います。

なんつって、予告っぽいことをしておいて今日はここまでです。
明日も投下できるかどうかわからないのですが、一応は毎日更新を目標にしているのでがんばってみます。
とにかく、また後日。

法事終わった!うおおおおお!

というわけでなんとかでっち上げた本日分。



【2012/4/17(火) 晴れ 巌戸台分寮】


>授業を終えて寮に帰って来た。

>進路の話をする為にゆかりを待とう。

鳴上「好きなことをする、か」

>自分のやりたい事を思い浮かべてみる……。

鳴上「さっぱりだ」

鳴上「あれ?じゃあ俺は空いた時間で何をしてたんだっけ」

>……友人達と遊んで、友人の悩みを聞いて、絵馬の願いごとをかなえて、知り合った大人達の悩みを解いて……。

鳴上「あ、あれ?」

鳴上「俺、自分の事何もやってない……?」

岳羽「ただいまー……って、鳴上君、そんな所で死にそうな顔してどうしたの?」

鳴上「あ、岳羽さん……ちょっとお時間いいですか?」

岳羽「可愛い後輩の頼みだしね。お姉さんなんでもやっちゃうよ?……なんて」

鳴上「あの、進路の話なんですけど」

岳羽「そっか。三年だもんね。どうするか決まったの?」

鳴上「決まらないから、先輩方の話を聞いて考えようと思って」

岳羽「なるほどね。で、何でそんなに顔してたの?」

鳴上「昨日、既に山岸さんに話を聞いてみたんです」

岳羽「あー、風花ってその辺しっかりしてそうだもんね。それで、どうだったの?」

鳴上「自分のやりたい事に向かうのが良いって」

岳羽「へぇ、そんな事言ったんだ。……らしいっちゃらしいね」

鳴上「それで、ちょっと考えてみたんですけど。俺、やりたい事って何も思いつかないんですよ」

岳羽「んー趣味とか、そういうの無いの?暇な日はこれ!みたいなさ」

鳴上「無いんですよ……俺、暇があったら他人の話聞くか他人のお願い聞くかしかしてなかったから」

岳羽「……なんか、どっかの誰かみたいね、それ。見覚えあるわ」

鳴上「改めて考えると、俺自分の欲っていうか、やりたい事って全然無くて……」

岳羽「なにそれ、どこの聖人君子よ……うーん、でも、楽しかった時とかさ、あるんじゃない?」

鳴上「仲間といる時は楽しかったです。けど、それってどうなんでしょう。俺自信の目的じゃないというか」

岳羽「確かに、友達と一緒にいたいっていうのはちょっと違うかもしれないねー。っていうか私もそこまでしっかり考えてるわけじゃないからなー」

鳴上「俺、やっぱり変なんでしょうか」

岳羽「君や私くらいの年齢でそこまで他人の事優先できる人っていないよ、やっぱり。良い事だと思うけど……そのせいで悩んじゃってるんだもんね」

鳴上「人生に目標が無いって気付いたら、酷い気分になりました。俺は……」

岳羽「進路の決定っていつまで?」

鳴上「多分、夏くらいには……一学期の終わり、くらいまでですね」

岳羽「まだちょっと時間あるじゃん。君のやりたい事探し、今からでも間に合うんじゃない?」

鳴上「俺の、やりたい事……」

岳羽「滅私奉公大いに結構だけど、たまには自分の事考えてもバチ当たんないと思うな。私なんか、いつも自分の事で手いっぱいだけど」

鳴上「……自分の事を考えるのが、こんなに難しいと思ってませんでした。他人の悩みならすぐにでも動けるんですけど」

岳羽「……ほんっと、どこまであの人に似てるんだか。それでいなくなっちゃった人もいるんだから」

鳴上「今、何か言いました?」

岳羽「ん?別に?とにかくさ、探してみようよ。自分の好きな事、やりたい事……きっと、すぐ見つかるよ。何かあったら付き合うしさ」

鳴上「そう、ですね。やってみようと思います。また悩んだら相談に乗ってくださいね」

岳羽「任せときなさいって。ほら、いつまでも辛気臭い顔してないの!」

鳴上「はい。ありがとうございました。……そういえば、興味本位で聞くんですけど」

岳羽「ん?どうかした?」

鳴上「岳羽さんって、料理とかしますか?」

岳羽「料理?あー。なんていうか、あんまり得意じゃない……かなー。どうして?」

鳴上「いや、山岸さんと話してる時に料理の話になりまして。寮内の他の人たちはどうなのかなって」

岳羽「あー、風花ね……ま、私はそんなに料理とかしないよ。なんかごめんね?」

鳴上「ああ、いえ。別に謝るような事じゃ……」

>ゆかりと話をした。

>ゆかりは自分に協力してくれるようだ……。

>『No.06 恋愛 岳羽ゆかり』のランクが3になった。



【2012/4/18(水) 晴れ 巌戸台分寮】


>今日は凄く疲れた……。

>寮につくなり倒れこんでしまった。

アイギス「……」

鳴上「う、……ん?」

>やわらかい……。

アイギス「あ、そのままで」

鳴上「アイギス……さん?」

アイギス「大丈夫ですか?帰ってくるなり倒れたりして……」

鳴上「ああ、そういえば……いえ、全部の授業に全力で取り組んでたら疲れてしまって」

アイギス「真剣なのはいい事です。ですが、あまり根を詰めすぎると」

鳴上「ですね。体で覚えました。あの、ところでこの体勢は……?」

>アイギスの声は背後から聞こえる。

>そして、自分は右耳を下にして「膝」と思しき物体に頭を乗せている。

アイギス「お疲れのようでしたから……」

鳴上「ありがとうございます。……本当に、機械とは思えませんね」

アイギス「褒め言葉と受け取っていいでしょうか?」

鳴上「ええ、褒めてます」

アイギス「それならありがとうございます」

美鶴「ただい……鳴上、何をしている?」

鳴上「いえ、どうやら疲れすぎて倒れてしまったらしく、ご好意に甘えさせてもらっています」

美鶴「そうか。それはいいが、あまり天田を困らせるなよ」

鳴上「はい」

鳴上「ええっ?」

天田「あのー……」

鳴上「天田の膝だったのか」

天田「ええ。アイギスさんが『疲れた人には膝枕』だっていうもんで……」

鳴上「……まぁ、ありがとう。そろそろ起きるよ」

天田「はい。それじゃ先輩、お大事に」

>……。

>冗談を言えるような仲になった……と考えておこう。

鳴上「しかし冗談抜きで疲れた……自分の得意な事、好きな事を見つけるのも容易じゃないな」

鳴上「授業に全力を出しても特に手応えというか、確信にはいたらなかったし……」

鳴上「はぁ……」

>しばらく、寝よう……。



【深夜】


>Pipipi……。

>電話だ。

鳴上「あ……もしもし」

『あれ以来だね。こんばんわ』

鳴上「っお前……!」



【2012/4/18(水) 晴れ 堂島宅】


>陽介に連絡しよう。

『件名:頼みがある
 本文:彼に協力を頼みたい。連絡先を教えてくれないか』

>……。

>返信を、待とう。


【同日 昼 堂島宅】


>メールだ。

>陽介からだろうか。

>……?

>一件じゃない。

『差出人:陽介
  件名:了解!
  本文:相棒にもお前の連絡先教えていいんだろ?とりあえず送っとく!
     あと、例の話な。まぁ、あんま悩むなよ!今度どっか遊び行ってぱーっと忘れようぜ!またな』

『差出人:里中
  件名:大丈夫?
  本文:花村から聞いた。何か悩んでるみたい?
     その、心配しなくてもいいよ、私は有里君好きだよ!
     あ、友達としてって意味だからね!勘違いしないように!そんでからかわないように!
     そういう時は肉!肉を食べて忘れるのだ!ガッツリね!』

『差出人:天城
  件名:何かあった?
  本文:有里君、ナイーブなところもあるんだね。ちょっと意外かも。
     何かあったら相談に乗ります。有里君の話も聞きたいし』

>……。

>陽介から洩れたようだ。

有里「……まぁ、いいか」



【同日 夕方 堂島宅】


>またメールだ。

>……そろそろ授業が終わったのだろうか。

『差出人:りせ
  件名:心配!
  本文:有里さん、花村先輩に相談したって?
     それって人選ミスだよ、私ならいくらでも聞くのに!
     不安にならなくても、りせは有里さんの事だいダイ大好き!だからね』

『差出人:完二
  件名:大丈夫スか?
  本文:俺、頭悪いし上手く言えないんスけど、有里さんはもう仲間だと思ってるっス。
     だから、何か引っ掛かるんだったら俺にも話し聞かせてください。
     とりあえずそんだけっス!今度また話しましょうや!』

『差出人:直斗
  件名:難しい話ですね
  本文:既に出来上がったコミュニティに入り込むことは難しいと思います。
     有里さんの場合、特殊な立場にいますし尚更です。
     ……あの時の、仲良くなりたいって言葉が嘘じゃなければ、僕にも話を聞かせてください。
     上手く力になれるかはわかりませんが、出来る限りの事はしたいと考えています』

有里「根こそぎ洩れてるじゃないか」

>陽介に悩み事を相談するのはやめた方がいいかもしれない。

菜々子「ただいまー……あ!湊お兄ちゃんが笑ってる!」

有里「おかえ……って、ん?ああ、本当だ」

>頬が緩んでいる……。

菜々子「どうしたの?何か良い事あった?」

有里「うん、ちょっとね」

菜々子「良かったね!みんな仲良し、でしょ?」

有里「そうだね。菜々子のおかげだよ」

菜々子「えへへ、菜々子何もしてないよ。湊お兄ちゃんががんばったんだよ」

>それから、菜々子と一緒に夕飯を作った……。



【同日 夜 堂島宅】


堂島「ただいま……っと」

有里「あ、おかえりなさい。菜々子ちゃんもさっきまで起きてたんですけど」

堂島「ん、そうか。……たまには早く帰って来たいもんだな」

有里「ご苦労様です」

堂島「ところで、何か良い事でもあったのか?」

有里「そう見えますか」

堂島「なんていうか、雰囲気でな」

有里「……今日、菜々子ちゃんに笑ってる所を見られました」

堂島「それがどうかしたのか」

有里「菜々子ちゃんに笑顔を向けた事は何度もあったはずなのに、まるで初めて見たみたいに」

堂島「はっは、だから言ったろう。アレはああ見えて聡いってな」

有里「顔で笑っただけだと見抜かれますか」

堂島「子供ってのはその辺敏感なんだろうな。しかし、そうか。そりゃ良かった」

有里「やめてください、何か恥ずかしいです」

堂島「前にも言ったが、お前はもう身内みたいなもんだ。最近じゃ家事も完璧だし、三人目の子供って感じだな」

有里「……」

堂島「お前は二人目の息子だよ、俺にとっちゃ……そういえば、一人目の息子が今度遊びに来るんだったな」

有里「あ、僕の部屋空けないといけないですかね」

堂島「兄弟仲良く寝るってのはどうだ?」

有里「流石にそれは……じゃあ菜々子ちゃんと一緒に寝ましょうか」

堂島「いや、駄目だ。駄目だそれは。駄目だ」

有里「何でですか」

堂島「お前は十年後、本気で嫁にもらいに来そうだからだ。それに、菜々子は先約が入ってる」

有里「……そう見えます?」

堂島「見える。お前は女は捕まえて逃がさないタイプだ。絶対そうだ。そんで割りと見境無いタイプだ。違うか」

有里「流石に小学生はちょっと……」

堂島「だから十年後なんだよ。何なら俺と一緒に寝るか?」

有里「遠慮します」

堂島「ふん、冗談だよ。まぁ、何とかしよう」

>堂島と話をした……。

>堂島から思いやりと信頼を感じる。

>『No.12 刑死者 堂島遼太郎』のランクが3になった。



【深夜】


有里「さて、と……」

>遅くなってしまったが、この時間なら確実に自室にいるだろう。

>陽介からのメールに書いてあった番号をプッシュする。

>……数度のコール音。

『あ……もしもし』

有里「……あれ以来だね、こんばんわ」

お互い、メンバーとは随分仲良くなってきたようだ。
じゃあ、次は?
あいつを見過ごすわけにはいかねえ。

というわけで本日分は終わり。
また後日。

肩こりがひどいです。

というわけで本日分。

『そう警戒しないで。陽介から話はいってるはずだけど』

鳴上「陽介から?何の話だ」

『あれ……おかしいな。まぁ、いいか。君、今月光館に通ってるんだってね』

鳴上「なぜお前がそれを知っている」

『本当に聞いてないみたいだね……ええと、もしかして君の仲間に桐条って人がいないかな?』

鳴上「桐条さんの事まで……」

『その人か、他の誰かに聞いてないかな。かつて影時間を解決した男の話』

鳴上「少しはな。だけどそれとお前が何の関係がある」

『その男の名前は聞いた?』

鳴上「いや、皆話すのを躊躇っているみたいで……だから、それがお前と」

『それが、僕だ』

鳴上「な……何を言っている」

『僕の名前は有里湊。以前特別課外活動部のリーダーを務めていた。今じゃこの世からいない者だけど』

鳴上「まさか、本当なのか?」

有里『本当さ。何なら聞いてみるといい。アイギスでも、風花でも、ゆかりでも、順平でも、真田先輩でも、美鶴でも、天田でも……』

鳴上「本当、なんだな……というか真田さんは先輩扱いなのに桐条さんは呼び捨てなのは何でだ」

有里『野暮は言うもんじゃないよ。まぁ、とにかくそういう男が僕。この前は悪かったね』

鳴上「いや……良く考えたら最初に仕掛けたのは俺だし、敵意が無いならこっちこそ悪かった」

有里『傷は大丈夫?』

鳴上「なんとかな。で、何故今になって俺に電話を?」

有里『……僕は今、八十稲羽の堂島という刑事に世話になっている』

鳴上「なんだって?堂島って、堂島遼太郎か?」

有里『君のおじさんだそうだね。……良くしてもらってるよ』

鳴上「そうか……不思議な縁だな。あんたを他人と思えなくなってきたよ」

有里『そういうわけで、僕こっちの女の子とっかえひっかえするつもりだから』

鳴上「そうか……いや待て。それは待ってくれ」

有里『冗談。本当は、君と話さなきゃいけない時期かなと思って、陽介に連絡先を聞いたんだ』

鳴上「俺と話?何の……」

有里『僕は君の昔の仲間を危険に晒すかもしれない』

鳴上「何故だ、あんたほどの力があれば……」

有里『これじゃ足りないんだ。仲間の協力が絶対に必要だ。だから、君の仲間達に協力を頼んだ』

鳴上「……事情を話せば、放っておく奴らでも無いな」

有里『そう、危険だと判断してやめようと言ったんだけどね。タルタロスで君に出会ったって話をしたら余計に火がついたみたいで』

鳴上「で、俺に何が出来る」

有里『僕と協力しよう』

鳴上「協力?そりゃ、構わないが……俺達で何が出来るっていうんだ?」

有里『君の事だから、もう随分と寮の仲間と仲良く……絆を深めたんじゃないかな』

鳴上「絆か。そうか、あんたも確か」

有里『やっぱり、君もそうみたいだね。ワイルド……何にも属さず、けれど何にでも変われる力。僕達のこの力がこれから不可欠になる』

鳴上「だが、世界のアルカナは……」

有里『もし今回の敵がNyxだったなら、僕達のどちらかが消えるしか無いだろう。あれは、戦って倒すようなものじゃない。だが、その役目は僕がやる』

鳴上「そうだ、あんたは一度その力を使って消えたはずじゃなかったのか?そう聞いてるぞ」

有里『僕は自分の全生命力を使って大いなる封印と化した。その封印が解かれて、僕に肉体が戻った……肉体に関しては心当たりが無いでもないけど、封印が解けた理由はさっぱりだ』

鳴上「封印が解けた時に、生命力が肉体に移ったと、そういうことか?」

有里『うん。僕にはこの手の用意が利きそうな人脈がいくらかあるから。あらかじめ用意してあったんだと思う』

鳴上「すごい話だな……。それで、具体的にはどうしたらいい」

有里『雨の日にだけ入れる、テレビの中のタルタロス。そこを攻略する必要がある』

鳴上「それはそのつもりだ。他には?」

有里『Nyx復活までに、世界……宇宙のアルカナを目覚めさせる必要がある』

鳴上「その、条件は?」

有里『……恐らく、何もしなくていいと思う』

鳴上「はぁ?」

有里『君は今まで通り、寮の仲間の為に心を砕き、尽力してあげて欲しい。そうして絆を深める事で僕達は強くなる』

鳴上「……わかった、やってみる」

有里『僕は君に迷惑をかけてはいないだろうか?』

鳴上「どうした、突然」

有里『僕は以前、仲間の為に全力を出した……その結果、彼らの中でとても大切な存在になった、と自負している。自惚れかもしれないけど』

鳴上「いや、間違いないだろうな。それがどうかしたのか」

有里『大切な存在になって、そして消えたんだ。彼らがどんな風に思ったか……今でもどこかに僕を追いかけたりしてやしないかと思ってね』

鳴上「……たまに、そう思う時はある。だけど、俺とあんたは違うじゃないか。俺は俺を認めてもらうだけだ」

有里『そうか……すまないね。君くらいの年頃なら年上の女性に囲まれて過ごせる寮生活は天国だろうに、僕のせいで……』

鳴上「いやいや、どういうことだ」

有里『美鶴なんか特に若い情熱を持て余さずにはいられないような存在なのに……僕の影があるせいでアタックも難しいなんて……』

鳴上「あんた、そんなキャラなのか……?」

有里『冗談だから呆れないで。でも、本心からすまないと思ってるんだ。君にも、仲間にも』

鳴上「大丈夫だ。あんたが思うより皆強いみたいだぞ」

有里『そうか。じゃあ君に任せていいかな?僕の事を忘れさせてあげて欲しい』

鳴上「……忘れさせる必要があるのか?」

有里『もう僕はいないんだ。何かの偶然で今こうして戻ってきたけど、またいつ消えるかわからない。だから、君の手で』

鳴上「……」

有里『なんなら手だけじゃなくてもいい。体のどこを使っても構わないから』

鳴上「何の話をしているんだ」

有里『美鶴はああ見えて押しに弱い。ゆかりは耳が弱くて、風花は敏感だからくすぐるみたいにすると』

鳴上「待て、聞きたくない。それ以上言うな」

有里『そう?……とにかく、頼んだよ。自分の仕事を投げてるようで悪いけど』

鳴上「……忘れさせるかはともかく、皆とは仲良くなるつもりだよ。仲間だしな」

有里『……用件は、それだけ。いつか会える日を楽しみにしてるよ』

鳴上「ああ、GWにはそっちに行くから、良ければその時に」

有里『らしいね。ああ、さっきの話の続きだけど、美鶴は声が大きいからなるべく』

鳴上「いや、聞きたくない。用事が済んだなら切るぞ!」

有里『あ、ちょ』

>電話を切った。

鳴上「有里か……なんていうか、イメージと違ったな」

鳴上「桐条さん、声大きいのか……」

>……。

>眠れるかな……。

>コミュニティが変化したのを感じる。

>『No.13 死神 有里美奈子』が『No.13 死神 有里湊』に変化した。

>『No.13 死神 有里湊』のランクが2になった。



【堂島宅】


>…………。

>電話を終えた。

有里「まぁ、冗談なんだけど……ちょっとからかいすぎたか」

>今頃悶々としているかもしれない。

有里「まぁ、彼に期待してるのは本当だし、ね」

>連絡先を登録しておこう。

>鳴上悠……か。

>頼んだよ。

>『No.10 運命 鳴上悠』のコミュを手に入れた。

>『No.10 運命 鳴上悠』のランクが1になった。

有里「しかし、困ったな。僕個人としてはこちらの彼らと仲良くなりたいんだけど、仲良くなると危険も増える」

有里「それに、こちらから関わらない限り接点もほとんど無いしね……どうしたものか」

>……まぁ、いい。

>もし向こうから関わってくる事があれば受け入れよう。

>そうじゃなければ……。



【2012/4/20(金) 晴れ 巌戸台分寮】


>コンコン。

鳴上「……はい」

風花「鳴上君?私」

鳴上「あ、山岸さん。どうかしましたか?」

風花「えっとね、この前言ってたでしょ?料理の話」

鳴上「ああ、はい」

風花「今日さ、お弁当作ったんだけど、お昼にどうかなって」

鳴上「本当ですか?是非いただきたいです」

風花「うん。じゃあこれ」

>ドアの隙間から弁当箱が差し出された……。

鳴上「……?どうかしたんですか?」

風花「いや、別になんでもないんだけどね。良かったら取りに来てもらえると助かるかな」

鳴上「まぁ、いいですけど……ありがたく頂きます」

風花「はい。帰ってきたら感想聞かせてね」

鳴上「わかりました……?」

>風花はそそくさと走りさっていった……。

鳴上「なんなんだ、一体……」


【昼休み 月光館学園】


男子「おー?鳴上今日弁当か」

鳴上「ああ。寮に入ってる先輩にもらったんだ」

男子「愛妻弁当ってかー。ちょっと見せてみ」

鳴上「あ、こら」

男子「うぉ、なんじゃあこりゃあ」

鳴上「これは……すごいな」



【夕方 巌戸台分寮】


鳴上「しかし……凄かった……」

>コンコン。

鳴上「はい」

風花「あ、山岸です。えと、お弁当、食べてくれました?」

鳴上「ええ、昼に……それで、ちょっと聞きたいことあるんですけど」

風花「あ、え、ごめんなさい!不味かったですか?」

鳴上「いえ、そういうわけではなくて。あの、ていうかドアから顔だけ出すのやめませんか」

風花「いや、その……私の料理なんかで喜んでもらえたか自信無くて」

鳴上「美味しかったです、本当に。見た目も綺麗だったし」

風花「ほ、ほんと?」

鳴上「ええ。それで、レシピとかいくつか教えて欲しくて」

風花「……お邪魔します」

鳴上「ええと、アレ。何て言うんですかね、あのハムの……」

風花「ああ、あれはね。一回お湯で……」

>風花と料理の話をした。

>話に夢中になっている内に、風花と並んでベッドに座っている……。

有里『風花は敏感だから……』

鳴上「……」

>自分のレシピ帳を眺めながら解説してくれている風花。

>今、首筋が無防備だ。

>ちょっとつついてみよう。

風花「でね、ほうれん草がうひゃぅっ!!」

鳴上「……」

>風花は涙目でこちらをじっと見ている。

風花「な、なんで……ひぃっ!」

>……。

風花「ちょ、やめっ……あはっ、だ、やぁっ!くふっ……ああぁん!」

>これは……

>楽しい!

鳴上「有里ありがとう」

風花「な、なんでっ!わたひっが、くすぐりよわ……あはははは!知って……んふふふふふふ!」

>その後、いろいろな部分をつついて遊んだ。

>……満足した。

風花「あ……は、ぅ……う、っふ、あぅ……」

鳴上「大丈夫ですか」

風花「だ、だいじょうぶじゃ、な……は……」

鳴上「すみません、つい……?」

>どこからか視線を感じる……。

鳴上「……あ」

>部屋のドアが少し開けられている。

鳴上「……順平、さん?」

?1「お、おい!バレたぞ!天田、お前!お前行け!」

?2「い、いやですよ僕だって!順平さん行けばいいじゃないですか!」

?3「覗きなんかするからだ。どれ、俺が……」

?1「アンタはいろいろ危ないから引っ込んでてくださいよ!」

風花「……?どうしたの?」

鳴上「何か、途中から見られてたみたいですね」

風花「えっ、やだっ!ほんとに?」

鳴上「えーと、どこから見てましたかね」

?3「いや、俺はついさっき来た所だ。順平と天田がお前の部屋に張り付いていたから」

?1「やっぱこの人駄目だ!場の空気ってヤツを読まねえ!」

?2「もう諦めて謝りましょうよ……」

順平「あー、その、鳴上。覗いてたのは、ほら、謝る。けどな。寮ってのはこう、規律の下になりたってるわけだろ?だから、まぁ、なんだ」

真田「不純異性交遊は関心しないな」

風花「へ、不純……?」

鳴上「天田、どの辺から見てた?」

天田「えーと、僕と順平さんが来た時は、ちょうど鳴上さんが山岸さんの上に覆いかぶさってギシギシしてる所でしたね」

鳴上「だ、そうです」

風花「ちが、違うんです!私、そんな事してたんじゃなくて!その、お料理の話を……」

順平「まぁ、若いもんな。咎めらんねーよ俺には!二人とも、お幸せにっ!」

真田「……美鶴には、黙っておいてやるからな」

天田「ええと、僕達何かとんでもない誤解してますか?」

>天田にだけは後で事情を話しておこう……。

風花「鳴上君、ひどいよ……」

鳴上「あ、すみません。ちょっと調子に乗りました」

風花「ちょっと?……まぁ、いいけど。内緒にしてね、くすぐり弱いの」

鳴上「……」

風花「内緒にしてね?」

鳴上「はい」

風花「今の間は……」

鳴上「なんでもありません」

風花「はぁ、疲れちゃった。お料理の話はまた今度ね。今日は部屋に戻ります」

鳴上「わざわざありがとうございました」

風花「そんな風に思うならもうくすぐらないでね……」

鳴上「すみません……」

風花「もうしないなら許してあげます。どう?」

鳴上「…………はい」

風花「……もうしないでね!ほんとだからね!」

鳴上「わかりました。またお話聞かせてください」

風花「はい。それじゃお疲れ様」

>風花はふらふらしながら帰っていった。

>何だかすごく充実した時間を過ごした……。

>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが4になった。



【2012/4/21(土) 晴れ ポロニアンモール】


鳴上「順平さん、遅いな……」

>順平が買い物に付き合えというのでポロニアンモールに来たのだが……。

鳴上「もう30分もこのままだ」

エリザベス「お客様」

鳴上「うわぁっ!……ああ、エリザベスか」

エリザベス「はい、エリザベスでございます」

鳴上「今日も遊んでるのか?」

エリザベス「いえ、今日は少々気になる事があって出て参りました」

鳴上「気になる事……?」

エリザベス「あなたのペルソナ……少し、変化しましたか?」

鳴上「ペルソナが?最近は使ってないけど、変化するような覚えは無い」

エリザベス「そうですか……ですが、あなたから彼と同じ感覚が流れてきます。何かあったのでは?」

鳴上「彼……有里か」

エリザベス「やはり、何かあったのですね」

鳴上「まぁ、いろいろとな」

エリザベス「以前、偶然見かけたら、という話をしたと思います」

鳴上「ああ、覚えてるよ」

エリザベス「あのような話をしたのには理由がございます。……私が、彼の為に用意しておいた器が消えました」

鳴上「器?」

エリザベス「私は以前、彼を救う為にいろいろな所を巡っておりました。その際、彼の失われた肉体の代わりを務める器として、新たな肉体を用意していたのです」

鳴上「……ああ、エリザベスだったのか。あいつの体を用意してたのは」

エリザベス「はい。主は何事か知っているようでしたが……あなたはご存知かわかりませんが、ベルベットルームというのは単一ではありません」

鳴上「こっちに来てから、どうも様子が違うなと思っていたんだが、別の部屋なのか?」

エリザベス「そういうことです。そして、その間を行き来できるのは我が主、イゴールのみ……」

鳴上「なるほど。つまり、どこかに有里が存在していて、しかしそれに会うことは出来ないと」

エリザベス「ですので確信が持てなかったのですが……どうやら、その様子だと」

鳴上「確かに、あいつは今生きている。居場所も知ることが出来たよ」

エリザベス「それは、どこに……?」

鳴上「以前俺が住んでた家だ。と言っても、かなり距離があるから……」

エリザベス「そのような暇は、流石に頂けないでしょうね……」

>心なしか、エリザベスは寂しそうに見える。

鳴上「すまない、あまり力になれなくて……」

エリザベス「仕方ありません」

鳴上「……でも、もしかしたらどうにかできるかも」

エリザベス「はて、どのような方法が?」

鳴上「有里をこっちに連れてくればいいわけだな」

エリザベス「はい、それならば問題無いかと」

鳴上「今度、鳴上に会う事になる。その時に連れてくれば……」

エリザベス「……」

鳴上「有里は何故かこっちに来るのを嫌がってるみたいだけど、何とかすれば何とかなる……とは思う」

エリザベス「お願いしてもよろしいでしょうか」

鳴上「期待せずに待っててくれ。相談してみるから」

エリザベス「はい。お待ちしておりますわ。……ありがとうございます」

順平「おーい鳴上!悪い、待たせちまったな……って、あれ?今ここに誰か……」

鳴上「気のせいじゃないですか?」

順平「あっれぇ、っかしーな……まぁいいや。行こうぜ!」

>エリザベスの頼み事を引き受けた。

>エリザベスに少し信用された気がする。

>『No.09 隠者 エリザベス』のランクが2になった。



【2012/4/22(日) 晴れ 巌戸台分寮】


>今日は寮にほとんど人がいない……。

>みんな出かけているようだ。

美鶴「おはよう。少し言っておかなければならないことがある」

>ラウンジに降りると、早々に美鶴に話しかけられた。

鳴上「どうかしましたか?」

美鶴「GWの遠征の件だが、君は一日二日は学校だな?」

鳴上「はい、なので三日から行こうかと思っていたんですが」

美鶴「そうだな。それで今週末、君に先駆けて私の選んだ人物を前乗りさせようと思う」

鳴上「はぁ、それは構わないんですが……誰なんですか?結局」

美鶴「それは当日のお楽しみだ。それで、それなりに長期の滞在になるわけだが、元住人として、宿泊地に丁度良い施設を教えてもらえないか」

鳴上「宿泊地ですか。旅館とかでもいいですか?」

美鶴「ああ。慰安も兼ねているわけだから、基本的に費用に糸目は付けん。どこかあるのか?」

鳴上「向こうの友達の家が温泉旅館を経営してまして、かなり老舗の良い旅館なんですが」

美鶴「ほう。名前は?」

鳴上「天城屋旅館っていうんですけど……たまにテレビにも出たりする、結構大きい所ですよ」

美鶴「そうか。連絡先はわかるか?」

鳴上「あ、はい」

美鶴「うん、これでいい。では、今週末から一人派遣するから、君はしっかりと授業を受けてから出立するように」

鳴上「わかってますよ、大丈夫です」

美鶴「ああ、そういえばもう一人、誰を連れて行くか決まったか?」

鳴上「あ、まだです。考えてなくて」

美鶴「そうか。まぁこちらが送る人員と被っても困る。何人か候補を用意しておいてくれ」

鳴上「わかりました」

美鶴「では、私は少し出かける。今日は寮に君一人だが、何か予定は?」

鳴上「特には無いんで、ごろごろしようかと」

美鶴「そうか。ではしっかり休むと良い。では、また夜にな」

>美鶴は出て行った。

鳴上「そうか、一人選ばないといけないんだった」

鳴上「……あ、俺以外の人も行くってこと、有里は知ってるのかな」

>一応、連絡しておいた方がいいかもしれない。

鳴上「今日の夜にでも電話してみるか」



【2012/4/21(土) 晴れ 堂島宅】


菜々子「湊お兄ちゃん、お客さんだよー」

有里「ん、ちょっと待って。はいはい、どなたで……」

千枝「おっす……エプロン?」

有里「里中さん……ああ、今ちょっとお昼作ってて」

千枝「有里君、家事とかするんだね。なんか意外。えっと、だったらお邪魔だったかな?」

有里「いや、もう終わるから。菜々子、あとお願いしていい?」

菜々子「はーい」

有里「それで……何か、用かな?」

千枝「や、用ってわけじゃないんだけどね。……よ、用が無いと会いたいって言っちゃ駄目かな?」

有里「いいと思う」

千枝「あ、あはは。その、さ。今日学校休みじゃん」

有里「土曜だからね。菜々子も今日はお休みだし」

千枝「うん。それでさ、良ければ、ちょっと出かけたりとかしない?」

有里「……」

千枝「あれ、駄目……かな?」

有里「いいよ。行こう。菜々子、里中さんと出かけるから。お留守番できるよね?」

菜々子「お兄ちゃんお出かけ?ん、わかった。いってらっしゃい!」

千枝「ごめんね菜々子ちゃん。お兄ちゃん借りるね」



【愛屋】


千枝「菜々子ちゃん、お昼一緒に食べたかったんじゃないかなぁ」

有里「なら帰ろうか?」

千枝「あ、ごめん。帰らないで」

有里「……菜々子なら、後でいっぱい構ってあげるから大丈夫だよ」

千枝「なんかすっかりお兄ちゃんだね。子供好きなの?」

有里「嫌いじゃない」

千枝「へぇー、そうなんだ……」

>……。

あいか「肉丼2つおまちー」

千枝「あ、きたきた。やっぱこれだよねー」

有里「すごいね、なんていうか」

千枝「ザ・肉!って感じでしょ。好きなんだー、これ」

>千枝は猛烈な勢いで肉丼を食べ始めた。

千枝「んぐ、ぁ。あー……えっと、どうか、しましたか?」

有里「いや、なんだろう。見てるこっちが元気になりそうな食べっぷりだね」

千枝「ご、ごめんね。なんか、品が無くて……」

有里「そんなことないけど」

千枝「あはは。ありがと」

有里「で、今日はどうして僕を?」

千枝「どうして、って?」

有里「何か用なのかなって思って」

千枝「だから、用とかじゃなくて……有里君、元気無かったら嫌だなって思っただけ」

有里「ん?ああ、陽介から聞いたんだっけ」

千枝「そ。何か、色々気にしてるっぽかったから、さ」

有里「ありがとう」

千枝「いやいや、いいって。まぁ私も暇だったし、ちょうどいいかなってさ!」

有里「里中さんの食べっぷりを見てたら元気出てきたかも」

千枝「それはあんまり見ないで、そして言わないで」

有里「僕の周りにそんな風に食べる人いなかったから、なんていうか新鮮。見てて飽きないね」

千枝「見てばっかいないで有里君も食べ……あれ?」

有里「終わった」

千枝「うっそ!何それ手品!?」

>グルメキングとの毎日に比べればこの程度物の数ではない。

千枝「ほんっと、謎多き男って感じ。何者なのよー」

有里「見たままだよ」

千枝「んー……見てもわかんない。諦めた!」

有里「諦めちゃうの?」

千枝「うん。私が見たってわかんないもん。だから、有里君に教えてもらうことにしました」

有里「僕が?」

千枝「嫌なの?」

有里「……そんなに嫌じゃない」

千枝「ちょっと嫌なのかな……まぁ、いいや!とにかく、一回友達になっちゃった以上私はしつこいからね!」

有里「そう」

千枝「そうなの。だから、これからまた遊び誘うよ?いい?」

有里「それは困るなぁ」

千枝「うぇ、ひどい」

有里「いや、僕の方から誘わせてもらおうと思ってたから」

千枝「……有里君さ、よくそういう事真顔で言えるよね」

有里「表情乏しいからね」

千枝「ん、でもわかった。じゃあ今度は有里君が誘ってね!待ってるから」

有里「うん。今日はありがとう。あ、送ろうか?」

千枝「今日は遠慮しとく。何か、予感がするし」

有里「予感……?まぁ、またね」

千枝「うん。またね!あいかちゃんお勘定!」

>千枝と別れた。

>千枝から仲間としての思いやりを感じる。

>『No.11 剛毅 里中千枝』のランクが4になった。

有里「……危なかった」

有里「こういうの、昔はあんまり経験出来なかったからな……」

あいか「お兄さん、顔緩んでるよ」

有里「だよね」



【堂島宅前】


有里「ん?あれは……」

雪子「あ、有里君。菜々子ちゃんが留守だっていうから帰ろうと思ってた所だったの、良かった」

有里「天城さんも僕に何か用?」

雪子「も?」

有里「いや、なんでもない。どうかしたの?」

雪子「有里君、悩みがあるみたいだったから、ちょっとお話出来ないかなって思って……」

有里「そっか。ええと、じゃあ部屋にでも……」

雪子「お、お部屋!?って、えっと」

有里「まぁ僕の部屋っていっても本当は鳴上君の部屋らしいんだけどね」

雪子「余計緊張しそうだからいい!ここで!」

有里「ここで?まぁ、僕はいいけど」

雪子「で、えっと、悩み事は大丈夫なのかな?」

有里「うん、一応自分の中で答えは出たよ。心配かけたね」

雪子「あ、そうなんだ……じゃあ、私押しかけちゃって悪かったかな」

有里「そんなことない。ありがとう」

雪子「そ、そう?全然役立ってない気もするんだけど」

有里「心の問題だからね。君達が僕を仲間だって思ってくれていること、心配してくれている事……言葉や行動からしっかり伝わってくるよ」

雪子「……有里君って、たまに凄く大人に見えるの。なんでだろうって思ってたけど、何となくわかった気がする」

有里「そうかな?」

雪子「うん。達観してるっていうのかな。私達もあの事件を通して成長したつもりだったけど、有里君はもっと遠く……何かを見てるような」

有里「まぁ、いろいろあったからかな。……本当に、いろいろ」

雪子「……でも、今は私達の仲間で、友達。だよね?」

有里「そのつもりだよ」

雪子「うん。だから、心配させてね。必要ないかもしれないけど」

有里「助かってるよ。本当に、助かってる」

雪子「それで、私の事もたまには心配して。困ってたら助けてね」

有里「……そうだね。仲間だもんね」

雪子「そうそう。えっと、じゃあ帰るね。また今度遊ぼうね」

有里「うん。ありがとう。またね」

>『No.18 月 天城雪子』のランクが3になった。

直斗「……なんだ、心配なかったみたいですね」

有里「心配かけて悪かったよ」

直斗「ひ、独り言、ですよね?気付かれてないはず……!」

>『No.16 塔 白鐘直斗』のランクが2になった。



【2012/4/22(日) 晴れ 堂島宅】


有里「……なんだろう、いやな予感が」

陽介「あーりさーとくーん!あっそびっましょー!!」

完二「うぉっ!あんた馬鹿じゃねえのか!?近所迷惑だろーが!」

菜々子「湊お兄ちゃーん」

有里「聞こえてるよ」

菜々子「菜々子、今日もお留守番ー?」

有里「ごめんね。ちょっと出てくるよ」

菜々子「わかった、ちゃんとお留守番してるからね」

陽介「よーう有里!元気か!?」

有里「陽介に、完二か。どうかしたの?」

完二「いや、花村先輩が釣り行こうぜっていうもんで……有里サン、悩んでたみたいだし気晴らしにどうかなっつったんスよ」

陽介「まーったり釣りでもしてよ、癒されようぜお互いさ」

有里「お互い?」

完二「なんかわかんねーけど凹んでんスよこの人も。さっきから空元気が目に見えて……」

陽介「まぁよ……有里も悩んでるのわかるけどさ……俺の悩みも聞いてくれよ」

有里「わかった、とりあえず行こうか。玄関前で騒がれても困るし」

完二「そっスね。行きましょーや」



【鮫川河川敷】


有里「よく考えたら僕釣具持ってないんだけど」

陽介「人数分用意してあるっつーの。ほれ」

完二「俺のもある……こういう無駄な用意の良さとか、他に生かせないんスかね」

陽介「うっせ!」

>三人で並んで釣りを始めた……。

有里「で、悩みって?」

陽介「おう……聞いてくれよ……俺さ、ほんとは昨日お前を励ましに行こうと思ってたんだよ」

有里「それはどうも。でも来てなかったよね?」

陽介「そーなんだよ!それがさ、俺一人で行くのもどうかなーって思って里中誘ったんだよ!そしたら断られちゃってさ……」

有里「なんて誘ったの?」

陽介「たまにはデートでもしねぇ?って……」

完二「それが嫌だったんじゃないスか」

陽介「まぁ、それに終わらねーんだよ。そんで、じゃあ仕方ねえ、駄目元で誘ったれって天城を誘ってみたんだよ」

有里「そっちはなんて?」

陽介「断るとかならいいんだよ。けど断り方が『花村君とデート?なんで?』だぜ!?意識されて無さ過ぎてよぉ」

完二「……まぁ、いつも通りじゃないスか」

陽介「まぁ、そうなんだけどさ……それで、ガックリきたから昨日は不貞寝してたわけよ」

有里「二人なら昨日会ったよ」

陽介「え!?マジで?どこで?」

有里「家に来たけど」

陽介「ああ……ああそうなんだ……へぇ……」

完二「そういや、俺も実は昨日有里さんとこ行こうとしてたんスよ」

有里「どうして?」

完二「何か、悩んでるって聞いたらほっとくのもどうかと思って……よ。ガラじゃねえけど」

有里「あれ、じゃあもしかして留守中に来てくれたのかな」

完二「あー、それが、あの……結局、行かなかったんス」

陽介「お前は何でだよ」

完二「な、なんでだっていいじゃないスか!別に!」

陽介「ははぁーん、アレだな?有里と二人きりで会うと、こう、ソッチ系な部分がメラメラっと」

完二「なんでそうなんだよ!?ブッ飛ばすぞコラァ!!」

有里「で、何で?」

完二「いや、実は……直斗誘ったんスよ。あいつも心配してたみたいだったんで。でも俺も断られちまって」

陽介「おっ!仲間仲間!」

完二「一緒にすんなっつの!……なんか、気になる人がいるからその人を調査するとか何とかで」

陽介「完二ィ……」

完二「な、なんだよ」

陽介「ま、気にすんなって。世の中色々だ」

完二「なんで俺慰める感じになってんだよ!」

有里「直斗なら家に来てたけど」

完二「あァ!?」

陽介「なんか、懐かしい感じするな……相棒がいた時もこんな気分だった……」

完二「……っスね……なんか……こう……」

陽介「女共酷すぎねーか!?なんで悠がいるとほいほい集まるのに俺らじゃ駄目なんだよ!!」

有里「そうなの?」

完二「いや、それは花村先輩だけっス。滅多に誘わないスけど、俺が誘ったらりせとか直斗は結構ノってくれるんで」

陽介「うっせ!うっせ!お前も敵だ完二!」

完二「うわ!水飛ばすなって!子供かアンタは!」

>楽しそうな二人を眺めた。

>二人と仲良くなった気がする。

>『No.19 太陽 花村陽介』のランクが4になった。

>『No.14 節制 巽完二』のランクが2になった。


【同日 夕方 堂島宅】


有里「ただいま」

菜々子「おかえりなさい!菜々子ちゃんとお留守番してたよ!」

>菜々子がじっとこっちを見ている。

有里「そっか、お疲れ様。菜々子は偉いね」

>頭をぽふぽふと撫でてやった。

菜々子「えへへぇ……」

>嬉しそうだ。

有里「さ、晩御飯の仕度しようか。菜々子も手伝ってくれる?」

菜々子「うん!」

>夕飯を作った……。



【夜】


>Pipipi……

>電話だ。

鳴上『もしもし』

有里「もしもし。どうかした?」

鳴上『どうもしないんだが、一つ報告がある』

有里「報告?」

鳴上『GW、俺がそっちに行くのは三日からなんだが……あんたの知り合いが来週末から前乗りすることになった』

有里「僕の知り合い……待って、君が来る前に来ちゃうの?」

鳴上『そういうことだ』

有里「それは……参ったなぁ。というか、一人で来るんじゃなかったの?」

鳴上『そっちに帰る時の条件でそうなってる。二人ほど連れて行かないといけないんだ』

有里「そういう事を言うのは美鶴か……。やれやれ、困ったことになった」

鳴上『何か不都合でもあるのか?メンバーから一人選出することになってるんだが』

有里「君が選べるの?」

鳴上『ああ、桐条さんの推薦する人と、俺が選んだ一人の三人でそっちに行く事になってる』

有里「……じゃあ、できれば君の選べる枠は男性にしてほしい。順平か、真田先輩か、天田か……何ならコロマルでも」

鳴上『そ、そうか?何だかわからないけど、そうした方がいいんだな?』

有里「あ……いや、やっぱりいいよ。好きに選んで」

鳴上『でも、何か理由があるんじゃないか?』

有里「たいした事じゃない。それに、君の休暇は君の物だ、好きにしなよ」

鳴上『わかった……じゃあ桐条さんでも問題無いんだな?』

有里「あ、待って。美鶴は勘弁してもらえないかな」

鳴上『冗談だ。なら、好きに選ぶけど……いいんだな?』

有里「いずれ、会う予定だったしね。誰が来てもかまわないよ」

鳴上『そうか。来週そっちに行くのは桐条さんの推薦する人らしいから、誰かはまだ教えてもらってない』

有里「そう。……宿泊先は?」

鳴上『俺の知り合いで……多分あんたも知ってると思うけど、天城って子がいる。その子の家がやってる旅館に二人は泊まる予定だ』

有里「逃れられそうに無いね。よし、いいさ。やってやる」

鳴上『何をやるのか知らないが、俺はあんたと同じ所に寝泊りする予定だ……短い間だがよろしく頼む』

有里「こちらこそよろしく」

鳴上『報告はそれだけだ。じゃあ、また』

>……電話は切れた。

有里「……まずい」

有里「美鶴の事だから、もしかするともしかするぞこれは……私の推薦する人物、とか言って自分で乗り込んで来かねない」

有里「僕がここにいることは知らないはずだ……知ってたら即連行されてただろうし」

有里「……ま、なるようになるか。他のメンバーなら怒られる事はないだろうし」

有里「そうなると問題は……」

有里「僕の、里心か」



【深夜】


美奈子「こんばんわ」

有里「やぁ、出たね」

美奈子「幽霊みたいな扱いはやめてよ。さて、どうする?」

有里「こんな街じゃ、逃げも隠れも出来ないだろうし、成り行き任せしか無いだろうね」

美奈子「いつもみたいに、どうでもいいって言わないの?」

有里「言えないんだ。自分でもびっくりしてるよ」

美奈子「……良かったね」

有里「何が?」

美奈子「別に。仲間に恵まれたなって思って」

有里「それは……そうだね」

美奈子「でも、遅かれ早かれ」

有里「そうだね。結局は会わなければいけなかったんだ」

美奈子「グズっても仕方ないよね」

有里「うん。覚悟できた」

美奈子「良かった。じゃあ、また」

有里「またね」

>美奈子の中に自分と違う何かを感じる……。

>ファルロスの時には無かった感覚だ。

>鳴上と繋がっている事が影響しているのだろうか……?

>『No.10 運命 鳴上悠』のランクが2になった。

ほのぼの日常系ペルソナ。

ただし穏当にいかないのがペルソナ。


というわけで本日分終わり。
では、また後日。

今日は二段階に分けての投下。
風花は可愛いけど自分は美鶴が好きです。愛してます。

というわけで、本日分その1。



【2012/4/25(水) 放課後 月光館学園】


鳴上「結局、誰と一緒に行こうかな……」

男子「どうした鳴上。デートの話か?」

鳴上「GWに寮の誰かと旅行行く事になったんだよ」

男子「寮の誰かって……桐条さんもか!?」

鳴上「ま、まぁ俺が選んでいいらしいからそれも可能だと思うけど」

男子「ええええあの桐条さんと旅行!?まぁじかよ……嘘だろ……」

鳴上「別に桐条さんと行くって決めたわけじゃ……」

男子「じゃあ他に候補いんのかよ。いいねー特別枠はよー」

鳴上「まだ迷ってるんだ」

男子「ふーん。ま、そろそろ帰るわ。またな」

鳴上「ああ。俺もそろそろ……」

男子「ってうげ、雨かよ」

鳴上「ほんとだ、降ってきたな……雨?」

>……急いで寮に帰ろう!


【巌戸台分寮】


アイギス「あ、おかえりなさい」

鳴上「アイギスさん、雨が……!」

アイギス「わかっています。というか、皆さん天気予報で見ていたようですが」

鳴上「……あ、そうですか」

アイギス「皆さんまだ帰ってきていませんが……この雨は、夜まで降り続くようです。恐らくは」

鳴上「今夜は、ついに突入ですか」

アイギス「そうなると思います。準備をしておいてください」

鳴上「はい……少し、眠っておきます」

アイギス「わかりました。夜にまた起こします」

鳴上「それじゃお願いします」

>今夜、再びマヨナカテレビが映るようだ。

>それに備えて、睡眠をとっておこう……。



【深夜】


美鶴「……揃っているな」

>ラウンジには寮内の全員が揃っている。

美鶴「前にも言ったが、ここにいる全員が突入するわけにはいかない。よって、ここからリーダーにパーティーメンバーを選んでもらう」

鳴上「はい。まず山岸さんは必須なので、申し訳ないですが毎回入ってもらいます」

風花「私は戦闘は出来ないから、疲労は皆ほどじゃないです……よっぽど連日で無い限り大丈夫だと思います」

鳴上「それに、俺以外に三人……ぐらいが丁度良いって話でしたよね」

美鶴「ああ。ほぼ半々にわける形だな」

鳴上「以前、俺が一人で入った時……中はまるでシャドウの巣でした。戦闘は不可避だと思います」

真田「だからこそ面白いんじゃないか」

鳴上「面白いかどうかはともかく、探索も勿論戦闘についても考えなければなりません。そこで、とりあえず全員のペルソナの性質と得意な戦い方なんかを教えてください」

美鶴「なるほど、その上でピックアップしていくわけか」

アイギス「わかりました。それでは私からでよろしいですか?まず私のペルソナは……」


【深夜 マヨナカテレビ内タルタロス】


鳴上「山岸さん、それじゃあお願いします」

風花「はい。……皆さんの反応、しっかり感知できてます。いつでもどうぞ」

鳴上「では、これからタルタロスの探索を始めます。準備はいいですか?」

美鶴「ああ。いつでも構わない。しかし、なんというか意外なメンバーだな」

天田「まさか僕が選ばれるとは思ってませんでした」

岳羽「私も同感。真田先輩悔しそうだったよ」

鳴上「皆さんから聞いた話を総合して、いろんな組み合わせを試していこうと思います。一度で攻略できるような代物でも無いようですし」

美鶴「君が物理攻撃、私が魔法攻撃、天田が即死攻撃、ゆかりが回復。そう考えるといい組み合わせだ」

鳴上「正確には俺は状況に応じて色んな役割を兼任する予定ですがね」

>さっきベルベットルームでペルソナを装備してきた……。

>これなら様々な状況に対処できるはずだ。

鳴上「前回、俺は五階まで登りました。そこまでは特に目立って強いシャドウは現れなかったので、今日はさらに上を目指したいと思います」

美鶴「やる気だな。では我々は君の指示に従う。行こうか」

天田「ふぅ……いい加減、腹括りました。やりましょう」

岳羽「まー仕方ないか。ほっとくわけにもいかないしね。行こっか!」

風花「皆さんがんばってください!」

>タルタロスの探索を開始した。

>皆には伏せているが、タルタロスの入り口は一つではない。

>もしかすると風花は気付くかもしれないが……。

>あの雨雲が広い範囲にかかっているなら、今夜予定より早い再会となるかもしれない。



【15F】


美鶴「……ふむ、好調だな」

天田「最初は鈍っててどうしようかと思いましたけどね」

岳羽「まぁ、一回通った道だしね」

鳴上「どうですか?内部構造に変化なんかは」

美鶴「はっきりと細部までは覚えていないが、そもそも形状が変わる事など頻繁にあったからな……」

鳴上「そうですか……」

美鶴「だが、覚えていることもある」

鳴上「何ですか?」

美鶴「それは……」

天田「あ、あれ階段じゃないですか?」

岳羽「ほんとだ、じゃあ次だね」

鳴上「あ、俺から行きます。待ってください」

美鶴「っ鳴上!待て!」

鳴上「え?……うわっ」

>突如、階段はシャッターのような物でふさがれてしまった!

美鶴「痛……大丈夫か」

鳴上「俺は大丈夫です……けど、これは……」

美鶴「分断されたようだな」

風花『鳴上君、桐条先輩、聞こえますか?』

鳴上「ああ、聞こえてます。向こうはどうなってますか?」

風花『良かった……シャッターの両側で声は届いてないみたいですね』

鳴上「ええ、何も聞こえてきません。どうしましょうか」

美鶴「といっても帰る道も無し、上に行くしか無いんじゃないか?」

風花『下のお二人には先に帰還するように言いましょうか……その場で待機も危険ですし』

美鶴「ああ。そうしてくれ。これより下の階なら彼らだけでも十分だろう」

風花『わかりました、伝えておきます』

鳴上「桐条さん、わかってたんですか?」

美鶴「何がだ?」

鳴上「だって、さっき俺に待てって」

美鶴「ああ、罠に気付いたわけじゃない。私が知っていたのは……」

風花『……上階にある反応の事でしょうか』

美鶴「そうだ。16F……第一層の終わり。そこには番人とも言うべき大型シャドウが待っている」

鳴上「つまり、この状況。俺達だけで……」

風花『大型シャドウと相対しなければなりません、ね』

美鶴「だから止めたんだ。万全な態勢で挑めるようにと」

鳴上「すみません……」

美鶴「いや、私が言うのが遅かった。こちらの落ち度だ……さて、どうする。といっても引く道は無しだが」

鳴上「行きましょう。そいつを倒せばこの階層が終わるなら、丁度一区切り。終わらせて帰った方が気分がいい」

美鶴「勝てるつもりか?」

鳴上「勝つつもりです」

美鶴「……頼もしいな。山岸、サポートを頼む。上階の様子はわかるか」

風花『はい。今スキャンします……?』

鳴上「どうかしましたか?」

風花『上階で、誰かが戦闘を行っています!シャドウじゃなくて人間……恐らくペルソナ使いです!』

美鶴「何……!」

鳴上「好都合だ、行きましょう。協力すれば、勝ちの目は増える!」

>上階へと走った……。


【2012/4/25(水) 堂島宅】


堂島「さて、そろそろ行かんとな。湊、じゃあ留守頼んだぞ」

有里「はい。それじゃ、いってらっしゃい」

菜々子「お父さん、今日雨だって」

堂島「ああ、そうか……折り畳み一本持っていっとくかな」

有里「菜々子、今日雨降るって?」

菜々子「うん、さっきテレビで言ってたよ。夕方から今日の夜半まで降り続くでしょうって」

有里「そう。……菜々子も、ちゃんと傘持ってくんだよ」

菜々子「はーい」

>今日は雨が降るようだ……。

有里「……一応、連絡しておくか」



【同日 夕方 ジュネス内フードコート】


陽介「ついに、って感じだなぁ」

有里「うん。で、勿論僕は今日も行くつもりなんだけど……この中で、手を引きたいって人は?」

>全員無言だ。

有里「陽介、里中さん、天城さんは今年大変でしょ?いいの?」

陽介「やーめろってそういう事言うの。自分達の事は自分達が一番良くわかってんよ」

雪子「出来る事があるならしたいって、前にも言ったでしょ?学校なら心配しないで、これでも結構優等生なんだ」

千枝「ま、私と花村はちょーっと危ないかなーってとこあるけどね……逃げてもいらんないっしょ」

完二「まーそういう事っスよ。先輩方は勿論、俺ら基本バカなんで」

りせ「バカはあんただけでしょ!……まぁ、私生活削ってこんな危ない事やってる時点で私もそっか」

直斗「と、まぁこんな感じです。有里さんも、本当はわかってて聞いたんじゃないですか?」

有里「……そうだね、何となくそんな気はしてたよ。じゃあ、今夜マヨナカテレビ内タルタロスに突入する。都合の悪い者は?」

全員「大丈夫(っス)
      (です)」

有里「とは言っても、全員が入る訳にはいかない。テレビから脱出する為にりせには来てもらわないといけないけど……」

直斗「確かに、万が一戻ってこれなかった時に全員が入っていては手詰まりですからね」

有里「だから、この内……三人だ。三人を探索隊として選ぼう。僕と、他に立候補者はいない?」

陽介「つってもよ、もしメンバーが偏っちまったら問題なんじゃねえの?中にゃシャドウがうじゃうじゃいるんだろ?」

有里「まぁ、そうだね。陽介がそこまで頭が回ると思ってなかったよ」

陽介「どんどん辛辣になってくねお前……。だからさ、お前選んでくれよ」

有里「僕が?」

陽介「テレビん中なら俺らの方が詳しいけどさ、タルタロス?ってーの?あれはお前のが得意だろ?」

有里「一回攻略してるしね」

陽介「だからさ、俺らが得意な戦法とかペルソナの属性、弱点……色々。お前に教えて、それで選んでくれよ」

有里「僕でいいの?」

千枝「意義なーし。有里君なら良い采配してくれるでしょ」

雪子「私もそれでいいと思うな」

完二「俺ぁ、いろいろ考えるの苦手なんで。任せるっス」

直斗「情報や選出の補佐はしますが、基本的にはそれで良いと思いますよ」

りせ「私も有里さんだったら良いよー」

有里「……わかった。それじゃ、早速色々教えてもらってもいいかな」

陽介「おう!まず俺のペルソナは……」



【深夜 マヨナカテレビ内タルタロス】


有里「さて、準備はいいかな」

陽介「おうよ!いつでも行けるぜ!」

千枝「ん、大丈夫!準備オッケーだよ!」

完二「おっしゃ!いっちょやってやんぜ!」

りせ「皆の反応、しっかりキャッチしてるよ!いつでもどうぞ!」

>ペルソナを複数体装備しておいた。

>各々、前回の事件で使用した武器を持っているようだ。

有里「いいみたいだね。……そうだ、前回鳴上君と会った話はしたよね」

陽介「おお、そういやそうじゃん。向こうでも雨降ってたら今日も来てるんじゃねえの?」

有里「その可能性は高いと思う。りせ、何かわかる?」

りせ「……シャドウと、皆の反応だけ。他に人はいないみたいだけど……」

完二「まだ入ってないとかっスかね」

有里「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。とにかく、僕達は先へ進まないとね」

千枝「進んでる内に会えるかもしれないしね!」

>だが、彼と出会うという事は……。

有里「嫌な予感がするなぁ……」

陽介「どうかしたか?」

有里「いや、何でもない。それじゃ、行こうか」


【15F】


りせ『みんないい調子だね!サクサク来てるよ!』

陽介「そりゃ前の事件に比べたらな」

千枝「ちょっと弱いよね、ここの敵」

完二「油断は出来ないっスけどね」

有里「さて、次で16階だけど……もし以前と同じなら、そこで第一層は終わりだ」

完二「一層……何階もあるんスか?」

有里「うん、とりあえず今日は一層の攻略で終わりたいと思う」

千枝「まだまだ行けるよ!とは……言い難いしね」

陽介「ちっと疲れたしな」

有里「じゃあ行こうか。上階へ」

陽介「よぉっし!さっさと行って終わらせようぜ!」

有里「待った、陽介。僕が先に……」

>陽介を追って階段に足を掛けると、突如背後に何かが落ちる音がした。

有里「……やられた」

陽介「うぉ!なんだこりゃぁ!おーい!里中ぁ!完二ぃ!」

有里「どうやら、こっちの声は届いてないみたいだね。向こうでも同じように呼んでるだろうから、多分どっちからも」

陽介「マジかよ……」

りせ『有里さん、花村先輩!私の声は聞こえてる!?』

有里「聞こえてるよ」

りせ『よかった!……けど、16階に大きいシャドウ反応があるの。そのまま進んだら……』

有里「やっぱりか……」

陽介「マジかよ!っつっても帰り道なんてねーぞ!どうするよ、有里」

有里「今までのレベルなら、間違いなく勝てるだろうね」

陽介「あ?ああ。そりゃそうだけど……お前、もう行く気マンマンじゃねえか」

有里「その為に来てるわけだし。それに、何でだろう。負ける気がしないんだ」

陽介「……わかった、付き合うよ。しゃーねーな!」

有里「ありがとう。りせ、サポートをお願い」

りせ『わ、わかりました!絶対勝ってくださいね!』

有里「そのつもりだよ」

>上階へ向かった……。


【16F】


有里「ここは迷宮無しの大部屋みたいだね」

陽介「ややこしくなくていいな。さて、例の大型シャドウってのは……」

りせ『来るよ、構えて!』

>部屋の中心に大きな染みがある。

>その染みが立体感を持ち始めた。

有里「陽介、大丈夫?」

陽介「へっ、自分の心配してろよ!」

>黒い染みは大きく盛り上がり、今では山のようになっている。

>四種の表情の仮面を手に持った、巨大化したマーヤのようなシャドウが現れた。

有里「戦闘中に音楽が聞けないと調子出ないな」

陽介「帰ったら、俺のお古で良けりゃやるよ……今は集中しろって。来るぜ!」

>シャドウが仮面の一つを装着し、咆哮を上げた!!

本日分その1終了。

嫌な予感は当たる予感。

後で、また来ます。

さぁ邂逅だ。

本日分その2。



【16F】


有里「ここは迷宮無しの大部屋みたいだね」

陽介「ややこしくなくていいな。さて、例の大型シャドウってのは……」

りせ『来るよ、構えて!』

>部屋の中心に大きな染みがある。

>その染みが立体感を持ち始めた。

有里「陽介、大丈夫?」

陽介「へっ、自分の心配してろよ!」

>黒い染みは大きく盛り上がり、今では山のようになっている。

>四種の表情の仮面を手に持った、巨大化したマーヤのようなシャドウが現れた。

有里「戦闘中に音楽が聞こえないと調子出ないな」

陽介「帰ったら、俺のお古でよけりゃやるよ……今は集中しろって。来るぜ!」

>シャドウが仮面の一つを装着し、咆哮を上げた!!

有里「りせ、解析お願い」

りせ『了解!ちょっと時間ください!』

陽介「っしゃーやるぜ!ペルソナァ!」

>突風がシャドウへと吹き荒ぶ!

陽介「どーだ!……へ?」

有里「効いてないみたいだね」

>シャドウは仮面をつけはずししている。

有里「じゃあこれはどうかな。オルフェウス!」

>火炎がシャドウに向かう……。

有里「これも効果なし、か」

りせ『相手シャドウの弱点わかりました!……けど、これって』

有里「どうかしたの?」

りせ『仮面……多分、仮面だよ!仮面で弱点と耐性が変わるみたい!仮面の色を良く見て戦って!』

陽介「良く見てったってよぉ!俺、そんなにいくつも属性無ぇって!」

有里「どうも僕向きの相手みたいだね」

陽介「弱点突くのは任せたぜ……て、どわぁっ!」

>陽介にシャドウの一撃が命中してしまった。

有里「陽介、だいじょう……ぶ……」

>陽介は誰かに受け止められている……。



【16F】


?「どわぁっ!」

鳴上「この声……?お、っと!」

美鶴「どうした、鳴上!……その男が戦っていた……」

鳴上「やっぱりあんたか、有里」

有里「……鳴上君。それと……」

美鶴「お前は……本当に、そうなのか?」

有里「久しぶりだね、美鶴」

陽介「いっててててて……って、この声は……」

鳴上「陽介」

陽介「うぉお!?あ相棒!マジで来てたのか!ひっさしぶりだなぁ!」

鳴上「挨拶は後だ。今はあいつを倒すぞ」

陽介「おうよ!行くぜ相棒!」

有里「美鶴。訳は後で話す。手伝ってくれないか?」

美鶴「……君との約束は信用出来ない。だが、今優先すべき事はわかる」

有里「美鶴らしいね。行こうか」

風花『この反応……嘘でしょ、まさか……』

鳴上「山岸さん、理由は後でだそうです。サポートお願いします」

風花『……はい!わかりました!全力でサポートします!』

りせ『この反応、先輩やっぱり来てたんだ!よーし、いっちょやったりましょー!』

鳴上「有里。こいつの弱点はわかるか」

有里「仮面を見て。赤の時は火炎が効かなかった。緑の時は疾風が効かなかった」

鳴上「入れ替わるのか。俺達向きだな」

有里「そうみたいだね」

鳴上「桐条さん、バックアップに回ってもらえますか」

美鶴「それは良いが……どうするつもりだ?」

鳴上「俺と有里で、なんとかしてみます」

美鶴「……なら、任せるぞ」

鳴上「行くぞ、有里」

有里「いつでもどうぞ」

>シャドウが仮面を付け替える。

有里「青」

鳴上「任せた」

有里「うん。オルフェウス!」

風花『あ、弱点です!』

鳴上「畳み掛けるぞ!」

有里「了解」

>総攻撃を仕掛けた!

有里「まぁ、この程度で倒せるとは思ってないけどね」

>シャドウはまた仮面を入れ替えている。

鳴上「緑か」

有里「どうぞ」

鳴上「イザナギ!」

りせ『すごい、また弱点にヒットだよ!』

有里「そろそろトドメかな」

鳴上「一気に終わらせる」

有里・鳴上「チェンジ」

有里「ノルン!」

鳴上「マハカーラ!」

有里「万物流転!」

鳴上「刹那五月雨撃!」

>シャドウが断末魔の咆哮を上げながら消滅していく……。

風花『すごい……』

陽介「俺らに手出させずに……」

美鶴「あのシャドウを仕留めた……」

りせ『二人とも、すごいコンビネーション……』

有里「お疲れ」

鳴上「そっちもな。さて、これで帰れるんだろうか」


【鳴上】


陽介「相棒!」

鳴上「陽介、久しぶり」

陽介「マジで来てたんだなー!くそ、ちょっと下に里中と完二もいんのによー」

鳴上「今日は会えそうにないな」

陽介「ま、もうちょいでGWだしな!ちゃんとした再会はそん時だ!へっへー、羨ましがるだろうなーあいつら」

鳴上「元気そうで良かったよ。そういえば、お前が言ってたすごいヤツって有里の事だったんだな」

陽介「ああ、あいつさ、この前八十稲羽でぶっ倒れてたんだよ。それを俺が助けてさ」

鳴上「そうか。どんなヤツだ?」

陽介「んー、掴み所は無ぇけど悪いヤツじゃねえよ。面白いしな」

鳴上「……そうか。有里の事は任せていいか?」

陽介「ま、お前も頻繁にこっち来れるわけじゃないだろ。任せとけよ、しっかり構ってやっから」

鳴上「ああ。今日のところは引き上げる……引き上げられたら、だけど。また今度な」

陽介「おう!……そういや、あのお姉様なにモンだよ。どこで捕まえたんだ?」

鳴上「あの人か?桐条美鶴って言って、桐条グループの令嬢なんだそうだ。今一緒に寮で暮らしてる」

陽介「なに!?一つ屋根の下か!ほんっと、お前は……今度紹介してくれよ!」

鳴上「それは別に構わないが……ああいう事になってるが、いいのか」

陽介「あん?……あいつらって、そういう仲なの?」

鳴上「詳しくは知らん。けど、そうなんじゃないかな」

陽介「勝ち目薄そーだな……」

鳴上「全くだ」

陽介「……どうする?」

鳴上「あまり見るもんでもないだろう」

>……そっとしておこう。

【有里】


美鶴「湊!」

有里「や」

美鶴「君が何故ここにいる。私の記憶では、間違いなく……」

有里「運が良かったのか、それとも悪かったのか。何でかこうして復活しちゃいました」

美鶴「理由は?」

有里「わかりません」

美鶴「……私と、ツーリングするという約束は」

有里「……」

美鶴「この……!」

>美鶴が右手を振り上げた!

有里「……っ」

美鶴「……何故、何も言わなかった……」

>美鶴はその手を振らず、その手を背中に回した。

>応えるように、こちらからも抱き締めた。

美鶴「こうして……話す事が出来る……触れる事が出来る……抱き締める事も出来るのに」

美鶴「何故、私に何も言ってくれなかった……!どんなに……どんなに私が……!」

有里「……ごめん」

美鶴「う……ぐ、す……あ……」

有里「ごめん。だけど、泣かないで……」

美鶴「どうして、ぐすっ。私の前に、以前と……ひぐっ、変わらずに……現れてしまうんだ……」

有里「……」

美鶴「忘れようと、忘れられなくてっ……何度も……」

有里「……ごめんね、美鶴」

美鶴「うあ……あぁぁ……」

>泣き続ける美鶴を抱き締め続けた……。

有里「……いつの間にか、僕の方が小さくなっちゃったね」

美鶴「ん……?あぁ、少し、背が伸びたんだ。これでもヒールを脱げばまだ君の方が高い」

有里「そっか。僕がいない間もちゃんと成長してたんだもんね」

美鶴「君は本当に昔のままだな。……恥ずかしい所を見せた」

有里「僕は美鶴の恥ずかしい所はいっぱい見てるから。それより、後ろの二人が問題じゃないかな」

美鶴「なっ……!」

陽介「あのー……」

鳴上「もう、落ち着きましたか?」

美鶴「あ、ああ。すまなかった。旧友に出会って懐かしさの余り取り乱してしまったようだ」

陽介「そっすか。旧友、ね。ただの友達なんすかねー」

鳴上「陽介」

陽介「ジョーダンだって。えーと、桐条美鶴さん?でしたっけ?」

美鶴「ああ。鳴上に聞いたんだな」

陽介「はい。俺、花村陽介って言います!こいつ、鳴上悠の親友で有里の命の恩人っす!」

美鶴「命の?それはどういう意味だ?」

有里「僕が帰ってきて、倒れてた所を助けてもらったんだ」

美鶴「そうなのか。みな……有里の恩人か。いつかきっちりとお礼をしなければならないな」

陽介「いやいやいやお礼なんてそんな!困ってる人を助けるのは当然ですから!」

美鶴「すばらしい心掛けだ。ブリリアントだな」

陽介「ブリ……なんすか?」

有里「さて、美鶴に少し言っておく事があるんだ」

美鶴「何だ?」

有里「ここで僕に会った事、内緒にしておいて欲しい」

美鶴「何故だ?皆、君が生きていると知れば喜ぶと思うが」

有里「でも、僕は一度消えたんだ。知ってるよね」

美鶴「……」

有里「だから、なるべく皆を引っ掻き回したくない。僕無しで上手くやってるなら特にね」

美鶴「そう、か……残念だ」

有里「すまない。けど、美鶴なら大丈夫だよね?」

>きゅっと手を握ってお願いした。

美鶴「っ、ああ。任せて欲しい」

陽介「さて、そんじゃ帰りますわ。美鶴さん、また会いましょうね!絶対ですよ!」

美鶴「ああ。またいずれ会おう。では」

有里「ていうか、帰れるのかな」

陽介「とりあえず、階段降りてみようぜ」

>美鶴と鳴上と別れた……。

陽介「よー」

有里「ん?」

陽介「美鶴さん、お前の事好きだったんじゃないのかよ」

有里「そうかもね」

陽介「……いいのかよ」

有里「良くないよ」

陽介「じゃあさ、もっとこう……あるんじゃねえの?」

有里「今の僕には、美鶴の想いに応える資格はないんだ」

陽介「……わっかんねーなー」

有里「僕だって、美鶴は好きだよ」

陽介「……ま、そんならいーや。いつか、な」

有里「うん。いつか、ね」

>階段を塞いでいた壁はきれいになくなっている。

陽介「よっしゃー!さくっと降りちまおうぜー!」

千枝「あ、有里君!と、花村。無事でよかった……」

完二「今の言い方は流石にひでーっスよ先輩……」

>タルタロスを降りた……。

りせ「二人ともずるーい!」

陽介「おわっ、なんだよいきなり」

りせ「なんで二人だけ先輩に会えるのよー!」

千枝「先輩?りせちゃん、それどういうこと?」

りせ「さっき、二人が上でボスと戦ってた時に、鳴上先輩と知らない女の人が来てて……」

千枝「うそっ、鳴上君来てたの!?」

陽介「もう帰っちまったけどな!元気そうだったぜ」

完二「マジかよ、俺も会いたかったぜ……」

千枝「そりゃズルイね……まぁ、元気だったならいいか!」

りせ「むー、GWには先輩と一杯遊ぶんだから!」

有里「皆、今日はお疲れ。帰って休んで、また何かあったら集まろう」

陽介「ひっさびさに戦ったから体イテーわ……」

千枝「鍛錬が足りないのよ、鍛錬が」

りせ「有里さーん、あの女の人誰?」

有里「昔の仲間だよ」

りせ「ええー?昔の仲間ってだけで会った途端に抱き合ったりするぅ?」

千枝「抱き合った?え、ちょ、ちょっと詳しく教えてくれない?」

陽介「あれ、なんだろう。さっきまで一緒に戦ってたのに急に凄い疎外感が」

完二「先輩……わかるっス……」


【ジュネス内フードコート】


陽介「っしゃー疲れたー!おし寝るぞ!」

直斗「お疲れ様です、で、どうでしたか?」

りせ「鳴上先輩も来てたよ!」

雪子「会ったの!?」

完二「花村先輩と有里サンだけな」

陽介「へへん、どうよ。羨ましいだろ?」

千枝「もう、どうせすぐ会えるんだからいいじゃん。鬱陶しいぞ花村!」

有里「さ、それじゃ皆帰ろう。お疲れ様。またね」

>今日はもう解散する事になった……。

【鳴上】


>二人は階段を降りていった……。

美鶴「……言わないでいてくれるか」

鳴上「何をですか?」

美鶴「先ほどの光景は忘れてくれと言っている」

鳴上「……好きなんですね」

美鶴「なっ……!」

鳴上「内緒にしておきましょうか。泣いてしまった事は」

美鶴「くっ、そ、そうしてくれ……」

鳴上「俺達も帰りますか」

美鶴「……ああ。通れるのだろうか」

>階段を降りてみると、シャッターはきれいに無くなっている。

鳴上「よし、じゃあ降りましょう」

美鶴「なんとか助かったな」

>タルタロスを降りた……。

天田「お帰りなさい!大丈夫でしたか?」

岳羽「ちょっと、桐条先輩どうしたんですかその顔!」

美鶴「顔?顔にダメージは受けていないが……」

岳羽「目真っ赤ですよ。何してたんですかもー」

風花「二人とも、お帰りなさい。それじゃ、テレビから出ましょうか」

天田「流石にくたびれましたしね」

岳羽「同文。疲れちゃった」

美鶴「山岸、頼む」

風花「はい。じゃあ、いきますね」

>……?

>風花が袖を引っ張っている。

風花「後で、事情聞かせてね」

>小声で言われたので、黙ってうなずいておいた。



【巌戸台分寮 ラウンジ】


天田「何とか無事戻ってこれましたね」

順平「おっ、お疲れさん!どうだったよ?」

岳羽「どうもこうもって感じ?」

真田「強敵はいたか?」

鳴上「ええ、デカイのが」

美鶴「……私は先に休ませてもらう。では、また明日だ」

アイギス「おやすみなさい。皆さん怪我はありませんか?」

天田「目立った負傷は無いですね」

風花「……鳴上君、ちょっと」

鳴上「あ、はい」

岳羽「……あれ?風花は?」

天田「鳴上さんもですね。もう部屋に戻ったんでしょうか」

順平「……あー、あれだろ。あの二人は」

真田「ふっ、元気なもんだな。若さか」

岳羽「あによ、それ……」


【自室】


鳴上「有里の事、ですね」

風花「うん。どうして彼があそこにいたの?」

鳴上「詳しくは俺もわかりません。けど、あいつはいなくなった後、俺が前に住んでた街に帰って来たみたいなんです。それで、俺の仲間と一緒に今回の件を調査してるみたいで」

風花「そう、なんだ……それで、タルタロスを登ってたんだね」

鳴上「はい。今まで連絡しなかった理由はわかりませんが……」

風花「それは何となくわかるの。私や、他の皆に気を遣ったんだと思う」

鳴上「気を遣うなら連絡するんじゃないんですか?」

風花「あの人はそういう人。いつも自分の身を投げ出して、他人の事ばっかり考えてた。無愛想で、無表情で……でも、すごくやさしい人」

鳴上「……山岸さんも、有里の事が」

風花「それは内緒。そっか、でもいいや。元気でいてくれるなら、それで」

鳴上「あ、それと、あそこで有里に会った事は」

風花「それも内緒だね。よし、じゃあ帰るね。鳴上君、おやすみ。お疲れ様でした!」

鳴上「あ、はい。おやすみなさい。お疲れ様でした」

>風花は出て行った。

鳴上「あ、そういえばこの前から、普通にベッドに並んで座るようになったな」

>……慣れてきたのだろうか?

>今日はもう、寝よう。

ちょっとずつ近付く人たち。
合流にはいたらず。

そろそろ、ゴールデンウィークです。

これで本日分は終わり。
では、また後日。

GW突入編。

では本日分。

【2012/4/26(木) 曇り 堂島宅】


>どうやら夕べ、特捜隊の皆からメールが来ていたようだ……。

>それぞれに労いの言葉を送ってくれた。

『差出人:陽介
  件名:お疲れ!
  本文:お疲れ!変な話だけど楽しかったぜ!
     なんつーか、やっぱすげえなお前。皆で相談したんだけどさ、リーダー任せていいか?
     皆もお前だったら大丈夫だって言ってるしよ。頼んだぜ!』

>知らない間に随分と信用されたものだ。

有里「リーダーね。また久しぶりの役職だ」

>陽介に返信しよう……。

『差出人:me
  件名:了解
  本文:僕でよければ。なるべく皆に負担がかからないように頑張るよ』

>……返信が早い。

『差出人:陽介
  件名:おう!
  本文:俺らもお前に負担がかかんねーように頑張るからさ!
     これからもよろしくな!』

>夕べの探索で、特捜隊のメンバーから信頼を得たようだ。

>『No.20 審判 自称特別捜査隊』のランクが3になった。

有里「こっちは、なんとか上手くいきそうだな……基本的にみんな良い奴だし」

有里「問題は、今週末にやってくる誰かの事か……」

有里「こうなると、むしろ美鶴に来てもらいたいな……知られる人数は少ないに越した事はない」

有里「……鳴上君に念でも送っておこう。自由にしろって言っちゃったし」

【2012/4/26(木) 曇り 巌戸台分寮】


>何か背筋がぞくりとして目が覚めた。

鳴上「なんだ、今の……誰か強烈に俺の事考えてたとかか?」

>とりあえず、着替えてラウンジに行こう。

美鶴「……ああ、おはよう」

鳴上「おはようございます。……ちゃんと眠れましたか?目、真っ赤ですよ」

美鶴「あまり、眠れなくてな……何、大丈夫だ」

鳴上「そうですか……そうだ、そろそろ教えてくださいよ。桐条さんが選んだ人」

美鶴「ん?ああ、そうだったな。そろそろ言っておかなければ、メンバーにも予定があるだろうから……」

美鶴「まあ、言ってしまえば簡単な話だ。もし君がテレビに入るような事になった時、絶対に必要なのは誰だ?」

鳴上「……皆さん頼もしいけど、絶対に必要となると、出る為の力ですね」

美鶴「そう、脱出する為の能力が必ず必要になる。そして寮内にそれを行えるのは一人しかいない」

鳴上「山岸さんですか。なるほど、良く考えればそうなりますね」

美鶴「ああ。君はもう選んだか?」

鳴上「……いえ、それはまだです。これから、皆さんにGWの予定を聞いて決めようと思います」

>……風花は、選ぶまでも無かったようだ。

美鶴「そうか。では、遅刻しないように。私は少し……眠ることにするよ」

鳴上「あ、はい。お大事に……」

>とりあえず、学校に行こう。


【夕方 巌戸台分寮】


鳴上「さて、じゃあ誰にしようかな……」

>ラウンジには順平とゆかりがいる。

順平「おう、おかえり!……なんだ?何か用か?」

鳴上「俺、GWに旅行行くんですけど知ってました?」

順平「ああ、寮空けるんだろ。聞いてる聞いてる」

岳羽「いいね、旅行。楽しんできなよ」

鳴上「その旅行に寮内の誰かを連れて行くって条件で了解を得てまして」

順平「は?何でよ」

鳴上「その、俺が一人で先走らないようにだそうです」

岳羽「あー……ま、ほんとは言いたく無いんだと思うよ。美鶴先輩でしょ、それ言ったの」

順平「おカタいねぇ、相変わらず。そんで、それで俺らに白羽の矢が立ったと」

鳴上「全員に予定聞いておこうと思いまして」

順平「そっか。ま、悪いけど俺ぁパスだ。予定あんだよ、GW」

岳羽「まぁたそうやって見栄張って……」

順平「ちげぇって!ほんと!マジであんの用事が!人に会うんだよ!」

岳羽「あ、そうなの?ごめん、なんか悔しくて言ってるのかと思った」

順平「ゆかりッチ、俺の事なんだと思ってんだよ……そういうわけだから、俺無理!」

鳴上「そうですか……岳羽さんは?」

岳羽「私?あー、予定は、別に無いんだけど……」

順平「何?ゆかりッチ予定無いの?俺にもあんのに?」

岳羽「うっさい。私、旅行ってあんまり好きじゃないんだよね。だから、出来たら他の人に頼んでくれないかな」

順平「あれ?屋久島ん時も京都ん時も言ってなかったじゃん」

岳羽「……嗜好が変わったのよ」

鳴上「そうですか。……残念です。じゃ、他の人達当たってみますね」

順平「悪いな」

岳羽「ごめんね?」

鳴上「いえ。それじゃ」

>次は誰にしようか……。

順平「なー」

岳羽「なによ」

順平「ゆかりッチ、鳴上の事嫌いか?」

岳羽「そうじゃなくて。……まだ、そういうの許せる程彼の事知らないってだけ」

順平「あっそ。面倒だねぇオンナノコは」

岳羽「……」



【二階】


>天田にも話を聞こう。

鳴上「天田、いるか?」

天田「はーい、何でしょう?」

鳴上「GW、予定あるか?」

天田「GWですか?……部活がありますね」

鳴上「あ、そうなのか。何部だ?」

天田「弓道と剣道とサッカーと……」

鳴上「お、多くないか?」

天田「あはは、助っ人で参戦してたらこんな感じに……」

鳴上「でも、そうか。忙しいんだな」

天田「どうかしたんですか?」

鳴上「いや、GWに旅行に行くんだが、一緒に行ってくれる人を探しててな」

天田「うわ、いいなぁ。僕も行きたいんですけどね」

鳴上「忙しいんだろ?なら仕方ないさ」

天田「そういえば、予定なさそうな人がいますけど」

鳴上「ん?……ああ」

天田「武者修行とか出かけそうではありますけどね」

鳴上「うーん……まぁ、後で聞いてみようか」

天田「すみません、同行できなくて」

鳴上「いいんだ。じゃ」

>……?

>どこからか視線を感じる。

鳴上「あ」

>階段から、アイギスがこちらを伺っている。

鳴上「アイギスさん。えーと、今の聞いてました?」

アイギス「何の事かわかりませんが、私はGWの予定ありませんよ」

鳴上「……ひょっとして、旅行行きたいですか?」

アイギス「……鳴上さんと、お友達の楽しい休日を、無理に割って入って邪魔するわけには」

鳴上「いや、そんな風に言わなくても。行きたいなら一緒にどうですか?」

>アイギスの顔が輝いた!

鳴上「……あ」

アイギス「鳴上さんがよろしいのなら、是非一緒に……」

鳴上「すみません。一人絶対に聞いておかなきゃいけない人を忘れてました。また後で!」

アイギス「あっ、鳴上さ……」



【三階】


鳴上「鳴上です。起きてますか?」

美鶴「……ああ。どうかしたか?」

鳴上「ええと、GWの旅行……桐条さんを連れて行くっていうのもアリですか?」

美鶴「私を?どうして?」

鳴上「……あいつが、いますし」

>……美鶴はしばらく無言だった。

鳴上「あの」

美鶴「確かに、彼には会いたい。しかし……自信が無いんだ」

鳴上「自信?何のですか?」

美鶴「彼にもう一度会って、その後普段通りに振舞えるのか。すんなり別れる事が出来るのか」

鳴上「……」

美鶴「昨夜のように、後ろ髪を引かれる思いをするのなら、私は……」

鳴上「桐条さん……」

美鶴「だから、気持ちはありがたいが他のメンバーにしてくれ。頼む」

鳴上「……わかりました。それじゃ、山岸さんとアイギスさんと行って来ようと思います」

美鶴「ああ。思う存分楽しんでくるといい」

鳴上「はい。許可してくださってありがとうございます」

美鶴「……用件はそれだけか?」

鳴上「はい。失礼します」

>結局、美鶴は顔を出さなかった。

>アイギスは不安そうに階段を見上げていた。

鳴上「桐条さん、都合が悪いようなので、一緒に行きましょうか」

アイギス「……!よ、よろしくお願いします!」

鳴上「出発は……そうですね、二日の夜に出れば三日の早朝には着くはずだから、フルに遊べると思うんですが。それでいいですか?」

アイギス「はい!了解であります!」

鳴上「……あります?」

アイギス「では、その日を楽しみにしておきますね!」

>アイギスと旅行に行く約束をした。

真田「俺には無しか」

鳴上「うわぁ!いつからいたんですか」

真田「天田に聞かれてな。GWに予定は無いのかと」

鳴上「ああ、でも今アイギスさんと……」

真田「そうか。だが俺も予定がある。どちらにせよ行けなかったから丁度いいさ」

鳴上「ちなみに、何を……」

真田「……ちょっと、山にでも登ろうかと」

鳴上「登山ですか?」

真田「山篭りだ」

鳴上「……ああ、はい」

>寮の皆に話を聞いて回った。

>心なしか、皆の態度が変わってきている気がする。

>『No.00 愚者 特別課外活動部』のランクが3になった。

美鶴「……いかんな。鳴上に心配をかけるわけには……」

美鶴「湊……」

>『No.03 女帝 桐条美鶴』のランクが4になった。

>そうだ、風花が向かう事を有里に連絡しなくては……まぁ、後でいいか。


【2012/4/28(土) 堂島宅】


>メールだ。

『差出人:鳴上
  件名:明日
  本文:山岸さんがそっちに向かって出立する。
     明日の昼過ぎにはそちらに到着するはずだ』

有里「来た……風花か。まぁ風花なら……」

>とりあえず、誰かに相談しよう。


【同日 昼 堂島宅】


菜々子「湊お兄ちゃん、お客さんだよー」

有里「来たね」

雪子「こんにちは……有里君が相談って、何かあったの?」

有里「うん、ちょっとね。まぁ、上がって」

雪子「あ、はい。お邪魔しまーす」

>リビングに上がってもらった。

有里「……実は、明日、僕の昔の仲間が来るんだ」

雪子「本当?良かったじゃない」

有里「うん、まぁ……」

雪子「あんまり乗り気じゃない、の?」

有里「というか……実際、どんな顔して会えばいいのかわからない」

雪子「うーん……」

有里「天城さんの家に泊まるはずなんだけど、山岸風花って人。予約とか入ってない?」

雪子「あ、入ってた!確かお二人様って聞いてるけど」

有里「うん。もう一人来るんだ。鳴上君と一緒にね」

雪子「先に山岸さんが来て、その後鳴上君ともう一人が来るのね」

有里「うん。風花はGWが終わるまで……一週間滞在予定みたい」

雪子「で、その間有里君は会わないつもりなの?」

有里「……いや、会う。つもりなんだけど。どうしようか」

雪子「えっ、何を?」

有里「……」

雪子「……」

有里「うーん……」

雪子「せっかくだからさ、皆で出迎えようよ」

有里「皆で?」

雪子「明日だったら皆お休みでしょ?だから、皆で駅まで行って、それから家に案内するの。どう?」

有里「何で、皆で?」

雪子「え。えっと、有里君の友達だったら、私達の友達も同然……かなって、思ったんだけど」

有里「……」

雪子「変、かな?」

有里「いや。じゃあみんなに連絡しようか」

雪子「うん。私も準備するね。明日のいつごろなのかな」

有里「昼頃らしいよ……天城さん、ありがとう」

雪子「へ?何が?」

有里「今更になって尻込みしてた。情けないね」

雪子「うーん、良く知らないんだけど、いろいろあったんでしょ?仕方ないと思うよ……そういうのって、わかる」

有里「結局開き直るしかないって事かな」

雪子「あはは、そうかも。前向きに行かなくちゃ。ね?」

>雪子のおかげで決心が固まった。

>鳴上にはまた迷惑をかけるかもしれない……が、やはり仲間達と再会する必要はありそうだ。

>『No.18 月 天城雪子』のランクが3になった。



【2012/4/29(日) 晴れ 巌戸台分寮】


風花「それじゃ、行ってきます」

美鶴「道中気をつけてな」

順平「お土産よろしくぅー!」

岳羽「一週間だっけ?長いねー」

風花「先に行って待ってるね、鳴上君」

鳴上「はい。良い所ですよ、八十稲羽」

風花「ふふ、楽しみにしてる」

美鶴「山岸不在の間、全員テレビに入る事は禁止とする。雨が降ってもだ」

真田「まぁ、出て来れないんじゃ仕方ないな」

天田「しばらく雨は無いって言ってましたし、多分大丈夫でしょう」

美鶴「さて、鳴上はあと二日間、きっちり学校に出てもらうぞ」

鳴上「はい。その後、アイギスさんと一緒に出ようと思います」

美鶴「わかった……アイギスは、なにやら張り切っているようだぞ」

鳴上「ええ、凄く楽しみみたいで……」

美鶴「しっかりエスコートするようにな」

>風花が八十稲羽に向かった……。

鳴上「さてと。俺はもう少しこっちか。今日は何をしようか……」

コロマル「ワンッ!」

>コロマルがこっちを見ている……。

鳴上「散歩でも行くか?」

コロマル「ワン、ワンッ」

>喜んでいるようだ……。

鳴上「よし、行こう」



【長鳴神社】


鳴上「神社……?神社に来たかったのか」

コロマル「ワン!」

>コロマルは境内を走り回っている。

鳴上「お気に入りみたいだな」

真田「誰かと思えば鳴上か。どうかしたのか」

鳴上「あ、真田さん。真田さんこそどうしてここに?」

真田「じっとしていては体が鈍るからな。ロードワークと、軽いシャドーでもと思って最近は良く来ているんだ」

鳴上「そうですか……やっぱり凄い体ですね」

真田「鍛えてるからな。触るか?」

鳴上「あ、じゃあちょっとだけ」

真田「こら、変な所触るな……」

鳴上「……硬い」

真田「そうだろ?」

>真田の筋肉を触らせてもらった。

真田「そうだ、鳴上。少し組み手でもしないか」

鳴上「組み手ですか?いいですけど……」

真田「心配するな。寸止めだ。スパーじゃなくて組み手だからな」

鳴上「わかりました。やりましょうか」

真田「お、乗り気だな。結構好きなのか?」

鳴上「以前一度負けてますから。負けっぱなしは好きじゃない」

真田「ふん、いい性格だ。よし、それじゃあ……来い」

鳴上「その前に確認いいですか?真田さん、ボクシングやってるんだと思いますけど、こっちは素人なんで……足もアリでいいですか?」

真田「ほう、蹴りに自信ありか?」

鳴上「まぁ、見様見真似ですが」

真田「武器以外なら何でも良い。それでも負けるつもりは無いがな。それじゃ、改めて」

鳴上「行きます……!」

>真田は頭を下げ、拳を上げた。

>正面から行っても勝ち目は薄い。それは前回わかっている。

>なら、狙うべきは……

真田「なるほど、そう来たかっ!」

>身を低くして横薙ぎに足を払う!

>真田は一歩下がって回避した。

鳴上「ボクシングでは下半身への攻撃はありませんでしたよね?」

真田「はっ、そういう台詞はな。不意を突かれて当たった相手にだけ……言えっ!」

>右の打ち下ろし。

>上体を捻って避ける。

真田「やるじゃないか。ギアを上げるぞ!」

>左、左、左、左。

>連打が止まらない。

鳴上「く、ぐ……!」

真田「どうした。最初の一発以降何も出てこないな!」

鳴上「好きで、固まってるわけじゃ……!」

>反撃に転じる隙が無い。

真田「折角許してやったんだ、足も使えばいいじゃないか」

鳴上「好き勝手言って……っ今!」

>連打に織り込んで来た少し大振りの右。

>一瞬出来た間隙を縫って大きく左へ体を回りこませる。

真田「なっ」

鳴上「使わせてもらいますよ、足」

>千枝との組み手で何度も見た蹴り。

>一撃で勝負を決める破壊力の、後ろ回し蹴り……。

>無防備な背中側からの攻撃。

>決まる……!

真田「おいおい、寸止めだと言っただろう」

鳴上「いっ……痛っ」

>足首に真田の左拳がめり込んでいる。

>上半身を捻り、アッパー気味のショートスイングブロー。

>攻撃に来た部位を拳で叩き落とす、パリングという技術。

真田「惜しかったな。だがとどめの一発、振りが大きすぎた。もう少しコンパクトに蹴っていれば決まってたかもな」

鳴上「蹴りをパリング出来るような人がいると思うわけ無いじゃないですか……」

>……痛かった。

真田「やらなければ、止まる勢いじゃなかった。……だが、やはり強いな。どこで覚えた」

鳴上「ああ、以前組み手してた相手から教わった……というか、見て覚えた技です」

真田「是非その師匠とも戦ってみたいもんだな」

鳴上「なんか、気が合うかもしれませんよ」

真田「そうか。まぁ今日のところは分けとしておこう」

鳴上「……一瞬、手抜きませんでした?」

真田「何の事だ?ま、まだまだ素手で負けるわけにはいかないな」

コロマル「ワンッ!」

真田「なんだ、見てたのか」

鳴上「コロマルはどっちの勝ちだと思う?」

>コロマルは尻尾を振って真田の方へ走り寄った。

真田「レフェリーは俺のようだな」

鳴上「……仕方ないですね、今回は負けでいいです。その内勝ってみせますよ」

真田「楽しみにしているぞ」

>コロマルの散歩をして、真田と組み手をした……。

>『No.04 皇帝 真田明彦』のランクが3になった。

>『No.08 正義 コロマル』のランクが3になった。



【2012/4/29(日) 昼 八十稲羽駅前】


陽介「はぁ……」

千枝「ちょっと、何でそんなに凹んでんのよ」

雪子「私が今日来る有里君の友達の話したら……」

完二「あー、アレっスね。また女かよぉ!って叫んでたんで」

りせ「……また、女の人なのぉ?」

直斗「女性の知り合いが多いんですかね」

有里「偶然だよ」

陽介「俺だってそういうスタイリッシュな青春謳歌してーよ……カミサマ……」

千枝「ほら、顔上げなさいよ」

陽介「うっせぇ!里中にゃわかんねーよ!この、なんつーの?置いてけぼり感っつーの!?」

千枝「はいはい。あ、電車来たよ」

有里「……時間的に、多分これだね」

りせ「どれ、どの人がそうなの!?」

直斗「一週間も滞在するなら、かなり大きい荷物を持ってるでしょうね。例えば、あんな風に」

風花「えっと……鳴上君の話だと、この駅で降りて……」

有里「風花」

風花「あ、はいっ……え?」

有里「久しぶり」

風花「あ……ありさ……」

陽介「……割と好みだ!お疲れさまでーす!ようこそ八十稲羽へ!」

千枝「ちょっと、陽介」

風花「……やっと、会えたね」

有里「うん。やっぱり、この前見てたんだね」

風花「うん、テレビの中で……でも、何となく半信半疑だった。これで、ようやく安心って感じ」

有里「そう。ごめんね、何も言わなくて」

風花「いいの。わかってる。わかってる、から……」

陽介「俺、このパターン前にも見たな……」

完二「先輩、ここは空気読みましょうや……」

風花「会いたかった……会いたかったよ、ずっと」

有里「うん。ほら、風花。汚れちゃうから」

風花「うん。……うん。でも、ごめんなさい、もう少しだけ……」

>風花は膝をついて涙を流した。

>黙って、風花の頭を撫でてあげた。

風花「有里君……有里君……!」

>…………。

有里「落ち着いた?」

風花「うん。ごめんね……ありがとう」

有里「というわけで、ここが八十稲羽だよ」

風花「うん。のどかな所だね……あ、あれ?」

陽介「……」

千枝「……あ、あはは」

雪子「……すごい、ね」

直斗「なんだか、見てるこちらが恥ずかしくなりますね」

りせ「……うーん、強敵カモ」

完二「あー、そのー、なんだ……」

風花「えっと、この人達は?」

有里「こっちで出来た仲間。……友達。ちなみにずっといたよ」

風花「……あ、あぅ、あの……」

千枝「ひ、久しぶりの再会ですもんねー!わかるっ!わかりますっ!」

りせ「そ、そうそう!感極まっちゃうよね!」

直斗「で、ですね。仕方ないと思いますよ」

風花「あ、うぅ、ご、ごめんなさい!恥ずかしい所を……」

陽介「なんでどいつもこいつも既に攻略済みなんだよ……」

完二「だからよ、アンタはちっと空気ってもんをよぉ……」

千枝「と、とにかく!ようこそ八十稲羽へ!歓迎します!」

風花「あ、ありがとうございます。えっと、とりあえず、旅館に案内してもらっていいかな?」

雪子「あ、その旅館家なんです」

風花「あ、そうなの?すごい、若女将ってヤツですか?」

完二「流石に一週間分となると荷物もすげえっスね。俺、持ちますよ」

風花「ありがとう。うわぁ、すごい体。鍛えてるみたいだね。かっこいい」

完二「そ、そうスか?へへへ……」

有里「とにかく、旅館に行ってから続きだね」

陽介「はぁ……」

>八十稲羽に風花がやってきた。

>これから一週間、騒がしくなりそうだ……。


【2012/5/2(水) 晴れ 月光館学園】


鳥海「さて、チャイムが鳴ったら四連休。この二日が無けりゃ九連休だったのに残念だったね。私も残念だったけど」

鳥海「遊ぶもよし勉強するもよし。ちょっとくらい羽目外しても全然構わないわよー。ただし、補導されるような事は絶対しないこと!」

男子「ありゃ自分の仕事が増えるの嫌がってんだな」

鳴上「言ってる事は正しいんだから良いんじゃないか」

鳥海「わかった?わかったら解散。また来週!じゃーねー」

男子「よっしゃ遊ぶぜー!鳴上は旅行だっけ?」

鳴上「ああ、四日間丸々な」

男子「豪勢な時間の使い方だよほんとに。じゃ、来週な!」

鳴上「またな」

>帰って八十稲羽行きの準備をしよう。



【2012/5/2(水) 晴れ 天城屋旅館】


風花「あ、それダウト」

陽介「うぇえ!?」

千枝「花村弱すぎ……」

>風花はすっかり馴染んでいるようだ。

陽介「っくしょー、山岸さんが強すぎんだよ。有里!頼む!仇討ってくれぇ」

有里「ん?僕?……いいよ、やろうか」

千枝「有里君強そうだもんねー」

有里「そうだな……さっきから風花は連勝してるし、ハンデって事で種目はこっちが決めていい?」

風花「ん、いいよ。何にする?」

有里「ポーカー」

陽介「お、渋いので来たな!」

千枝「まさにポーカーフェイスだしね。こりゃ強敵だわ」

風花「いくら有里君相手でも簡単には負けないんだから。いいよ」

有里「……それじゃ、もう一つ提案がある。このポーカー、面白くする為にあるモノを賭けよう」

風花「あるモノ?」

有里「脱衣ポーカー……って言えば、わかるかな」

陽介「脱衣ポーカー!?男のロマンじゃねえか!」

風花「脱衣って……嘘、本気で言ってるの?」

有里「僕は本気だ」

千枝「うっわ……流石にこれはちょっと……」

有里「逃げるの?」

千枝「逃げっ……だ、だって、脱ぐんでしょ?男は平気かもしれないけど、私たちはちょっと」

風花「……ここは、逃げません!やります!」

千枝「ちょ、山岸さん!?」

風花「里中さん。大丈夫。勝てばいいんだよ」

千枝「た、確かにそうだけど……」

陽介「なんだよ里中ー。いざとなったら意気地無しってか?ん?」

千枝「くっ……いいよ、やったろーじゃん!!」

有里「ルールは以下。最も強い役を揃えた者が負けた者を一人指定して、一枚脱がせる事が出来る。靴下は片方で一枚。アクセサリーなんかも一枚扱い」

風花「わかった。その代わり、イカサマは禁止。捨て札は全部伏せて出す事。こっちの条件も飲んでね」

有里「受けよう。じゃあ、ディーラーは誰が?」

風花「公平性を期す為に、ゲーム毎に順番にシャッフルしていって、その都度チェンジの順番を決める。それでどうかな?」

有里「グッド。さ、始めようか」

>脱衣ポーカー勝負が始まった。

>…………。

陽介「でさぁ……なんで俺がパン一なわけ?」

有里「言ったはずだよ、一番強い役を揃えた人が一人指定できるって」

陽介「毎度毎度ハッタリとポーカーフェイスで乗り切って、そんでなんで俺を指名すんだよ」

有里「女の子を脱がすわけにはいかないから……」

風花「結局一回も勝てなかったけどね……」

千枝「こっちがどんだけ揺さぶっても全然無視だし、逆にこっちが不安な時にいちいち煽ってくるし……強すぎるよ……」

陽介「なぁ、服着ていいか?」

有里「どうぞ」

陽介「うぅ……欲張って参加した俺がバカだった……」

風花「でも、楽しかったよ。あ、そうだ。明日鳴上君達が来るんだよね」

有里「あ、そうか」

千枝「いつ頃来るとか聞いてませんか?」

風花「夜移動して、朝早くに着くみたい。休み全部遊びたいんだって」

陽介「おー、楽しみだな。どうする、また出迎え行くか?」

千枝「あ、でも堂島さんと菜々子ちゃんが行くんじゃないかな」

陽介「あー、そっか。じゃあ邪魔すんのも悪いな。じゃ、荷物置いたらジュネス集合でいいか」

風花「有里君はその人たちと一緒に住んでるんだよね」

有里「今お世話になってるね」

千枝「じゃあお出迎えは有里君に任せよっか」

陽介「だな。俺らはその後ってことで。ファーストコンタクトは菜々子ちゃんに譲るか!」

有里「じゃあ彼に連絡とってみるよ。とりあえず脱衣ポーカーを続行しよう」

陽介「どうせまた俺が的じゃねーか!」

>明日、誰が来るのだろうか。

>……また、嫌な予感がする。



【巌戸台分寮】


岳羽「あ、おかえりー」

鳴上「ただいま。早いですね」

岳羽「大学生なんてそんなもんそんなもん。今日出発だっけ?」

鳴上「夜ですけどね。とりあえず準備しないと」

岳羽「男の子はそんなに荷物いらないんじゃないの?」

鳴上「まぁ、俺は前に住んでた家に荷物置いてあるんで……むしろ心配が別にありまして」

岳羽「あー、アイギスね……あの子、あれで結構抜けてるからねー」

鳴上「浮かれようが凄いんで、何かミスしてないかと」

岳羽「あはは、鳴上君わかってんねー。多分、何かやらかしてると思うから。備えはしといた方がいーよ」

鳴上「そういうわけなんで、失礼します」

岳羽「ん、しっかりねー」

>荷物を鞄に詰めた……。

鳴上「と言っても、本当に着替えくらいなんだよな」

>自分の準備は済んだ。

鳴上「……一応、アイギスさんの荷物もチェックした方がいいかな」


【三階】


鳴上「アイギスさん、います?」

アイギス「あ、鳴上さん。今開けます」

鳴上「あ、アイギスさん。今日出発ですけど荷物……は……」

>巨大なトランクが三つ並んでいる!

鳴上「それ、全部持っていくんですか」

アイギス「必要な物を全部と思うと、どうしても……」

鳴上「ちょっと待っててください。岳羽さーん!岳羽さーん!」

岳羽「なに、どうしたの、って……アイギス、あんたねぇ……」

アイギス「うぅ、あの、良ければ選別を手伝ってもらえませんか……」

鳴上「あんまり私物見ちゃうのも何なんで俺はこれで……」

岳羽「ん、とりあえずコレは任せといて。アイギス、ほらこっち!そこ座って!」

アイギス「夜までには終わらせますから、心配しないでくださいね」

鳴上「はい、じゃあ……」

>……色々と多難だ。

美鶴「……」

鳴上「あ、桐条さん……どうかしましたか?」

美鶴「ん、いや。別になんでも無いんだが……」

鳴上「やっぱり、一緒に行きますか?」

美鶴「いい。それは遠慮する。……本心では別だが」

鳴上「……あ、そうだ」

>エリザベスとの約束を思い出した。

鳴上「有里の意思次第ですけど、あいつ、こっちに連れてこれませんかね」

美鶴「何?それは……不可能ではないが。どうしてだ?」

鳴上「やっぱり、現状を皆さん知っておくべきかと。あいつは嫌がってるみたいですが」

美鶴「そういう男だからな。……交渉は、君に任せる。もし彼が認めたら、他の雑事は私がやろう」

鳴上「わかりました。では今夜出発します。ただ、あまり期待しないでください」

美鶴「あくまで彼の意思が優先か。そうだな、それがいい。旅行中、私達の事は忘れても良いから、羽根を伸ばしてきなさい」

鳴上「はい。あと、アイギスさんが荷物の選別に迷ってるようなんで、良ければ手伝ってあげてくれませんか」

美鶴「何?困ったものだな……アイギス。私も手伝おう」

>有里との交渉……難航しそうだ。

>約束した手前、最善を尽くそう。

>ん?

>メールだ……。

>有里に到着予定時刻をメールしておいた。

鳴上「あ、アイギスさんの話し忘れた」

>……まぁ、いいか。



【巌戸台駅】


鳴上「じゃあ、行ってきます」

アイギス「行って参ります」

美鶴「うん。気をつけてな」

天田「楽しんできてくださいね」

岳羽「私らしか見送り来れなくてごめんね」

鳴上「いや、別にそんなに長い別れってわけでもないし。ありがとうございます」

アイギス「鳴上さん!あの電車ですよ!」

鳴上「あ、それじゃまた月曜日に!行ってきます!」

>電車に乗った。

鳴上「これに乗って、途中で乗り換えになります」

アイギス「了解であります!」

>アイギスの目が輝いている……。

鳴上「……楽しいですか?」

アイギス「何故、そんな事を聞くんですか?」

鳴上「いえ、明らかに様子がおかしいので」

アイギス「ほ、本当ですか?おかしいな……」

鳴上「遠足に行く小学生みたいな顔してますよ」

アイギス「それは経験した事が無いのでわかりませんが、そんなにおかしいでしょうか?」

鳴上「アイギスさんって、そんな顔もするんですね。もっと冷静な人かと思ってました」

アイギス「……恥ずかしいです」

鳴上「いいんじゃないですか?俺は好きですよ」

アイギス「……」

>そういえば、向こうに有里がいる事を伝えていない……。

>どう言おうか……。

鳴上「アイギスさん、もし向こうに着いて、信じられないような人が出迎えてくれたらどうします?」

アイギス「何の質問でしょうか?」

鳴上「いや、深い意図は無いんですが」

>アイギスは何かを考えるように首を傾げている。

アイギス「……ああ!サプライズというヤツですか!?」

鳴上「……なんか、それでいいです」

>ある意味最高のサプライズには違いないし、そういう事にしておこう。

>八十稲羽へと向かった……。

GW突入編、本当に突入だけ。

とりあえず本日分は終わり。
では、また後日。

遅くなりました。

有里が脱衣ポーカーを提案した理由
1.陽介が絡んでくる事を見越して、最下位を陽介に任せる事で他のメンバーに油断を作るため
2.賭ける物を作ることで緊張と不安を煽り心理を読みやすくするため
3.ノリと勢い

この内どれかであることは確かです。
では、本日分。



【2012/5/3(木) 晴れ 堂島宅】


菜々子「お父さん、早く!」

堂島「待て待て、まだ時間あるだろう。もうちょっとゆっくり準備させてくれ」

有里「菜々子、楽しみみたいだね」

菜々子「うん!」

堂島「すまんすまん。じゃ、行くか」

>鳴上の出迎えに行こう。


【八十稲羽駅前】


堂島「で、何時だったかな」

有里「そろそろのはずですけどね」

菜々子「……」

>菜々子はうずうずしているようだ。

有里「まぁ、こんな早朝にここで降りる人はあまりいないでしょうから」

堂島「だな。電車が来ればわかるか……って、言ってたら来たな」

菜々子「お兄ちゃん、着いたかなぁ」

有里「んー……あ、アレじゃないかな」

>二人組みが歩いてきている。

>一人は銀髪、一人は金髪の……

有里「……ああ、そうきたか」

菜々子「お兄ちゃんだ!お兄ちゃん!」

>菜々子が走り出して鳴上に抱きついた。

鳴上「うわ!っと……菜々子、久しぶり」

>あちらでは二人が感動の再会をしている。

>そしてこっちでは……

アイギス「あなたは……誰ですか?」

有里「……久しぶり、だね」

堂島「ん?湊、お前……」

アイギス「……っ!!」

>アイギスは両方の手袋の指先を噛んで引っ張り、投げ捨てた。

アイギス「答えなさい!あなたは何者ですか!」

鳴上「あ、アイギスさん!待って……」

有里「君に銃口を向けられるのはこれで何回目かな?せっかく卒業式以来の再会なのに」

アイギス「何故、それを知って……本当に……?」

有里「僕は僕だ。ただいま、アイギス」

>アイギスに歩み寄り、そっと抱き寄せた。

アイギス「な、何故……どうして?本当に、あなたなのですか?」

鳴上「詳しくはまた説明します。とにかく、こいつは本当に有里湊ですよ」

アイギス「あ、あう……ううう……」

有里「アイギス、落ち着いて。煙が……」

鳴上「熱暴走だ……」

堂島「湊。俺にも説明してくれるか」

有里「……長くなりますよ」

堂島「……なら、全部終わってからでいい」

菜々子「お兄ちゃん、湊お兄ちゃんの事知ってるの?」

鳴上「ああ。陽介から話を聞いてたんだ」

菜々子「そっか!あのお姉ちゃんは?」

鳴上「お兄ちゃんが今住んでる所のお友達だよ」

菜々子「お姉ちゃんはどこに泊まるの?」

鳴上「ああ、そうだ。堂島さん、お久しぶりです」

堂島「他人行儀は無しだ。やり直し」

鳴上「はは。ただいま」

堂島「おかえり。で、あそこで煙吹いてる人はなんだったか」

鳴上「あ、アイギスさんです。ええと、天城屋に泊まる予定なんですけど」

堂島「じゃあ家に帰る前に送っていこう。それでいいだろ?」

鳴上「すみません、お願いします」

堂島「いいさ。湊、その人大丈夫か?」

有里「その内再起動すると思います。大丈夫ですよ」

堂島「そ、そうか。じゃ、行くとするか」

>八十稲羽に鳴上とアイギスがやってきた……。


【天城屋旅館】


有里「アイギス?着いたみたいだよ?」

アイギス「うう……はっ!ここは……」

鳴上「今日からしばらく泊まる旅館です。もう山岸さんがいるはずなんで」

有里「天城さんもいるから大丈夫だとは思うよ」

アイギス「ひ、一人で大丈夫です。お手数おかけしました」

堂島「フラフラしてるぞ、大丈夫か」

有里「大丈夫……だと思いますけど」

>アイギスを見送った……。

堂島「さて、そんじゃ我が家だな」

有里「今、鳴上君の部屋は僕が借りてるんだけど……」

堂島「ああ、そうだったな。悠、そういうわけでお前の部屋は今湊が使ってる。どこで寝る?」

鳴上「そうですね……菜々子、一緒に寝るか?」

菜々子「お兄ちゃんと一緒?」

堂島「冗談だ。お前はお前の部屋で寝ろ」

有里「あれ、それじゃ僕は?」

堂島「布団運ぶから一緒に寝たらいいだろう。それとも嫌か?」

鳴上「俺は構わないですよ」

有里「特に不満は無いです」

堂島「悪いな。正直言ってすっかり忘れてた。多少手狭だが、お前らなら平気だろ」



【堂島宅】


堂島「よし。荷物はそれだけだな?」

鳴上「ええ。そんなに持ってくる物もありませんでしたし」

有里「持とうか?」

鳴上「平気だ……ただいま」

菜々子「おかえりなさい!」

堂島「おかえり。どうだ、久々に帰ってきてみて」

鳴上「何とも言えない気分ですよ。懐かしいというか、なんというか」

堂島「はっは、そうか。荷物置いたら菜々子の相手してやってくれ。お前の事ずっと待ってたんだ」

鳴上「はい。あ、有里」

有里「ん?どうかした?」

鳴上「お前はこれからどうする?」

有里「んー……とりあえず、旅館行ってあの二人と少し話をしようと思う」

鳴上「そうか。多分その後皆で集まることになると思うけど、大丈夫か?」

有里「わかった。二人も連れて行っていいんだよね?」

鳴上「平気だろ。じゃあ行って来い」

有里「ん。菜々子の相手がんばってね」


【天城屋旅館】


有里「まさかアイギスとは」

>撃たれずに済んだのは本当に運が良かった。

有里「そう何回も狙われたらたまったもんじゃないな。……そういえば、堂島さんは耳から煙を吹く人間を見てもなんとも思わないんだろうか」

>……。

有里「まぁ、いいか」

雪子「あ、有里君。いらっしゃい、どうしたの?」

有里「忙しそうだね」

雪子「連休だからね。残念だけど、今日皆集まっても私行けないみたい。鳴上君には会いたいんだけど」

有里「その内連れてこよう。ええと、金髪で青い目の女の人が今朝来たよね?」

雪子「ああ、私が案内したよ。山岸さんのお部屋でよかったんだよね?」

有里「そう、ありがとう。じゃあちょっとその二人に会ってこよう」

雪子「はい。じゃあまたね」

有里「えーと……この部屋だ」

有里「おはよう。アイギスは……」

風花「あ、有里君。アイギスならそこで寝てる。何か処理限界が来ちゃったんだって」

有里「あ、寝てる?そう……」

>突然、アイギスが飛び起きた。

アイギス「湊さん!!」

有里「や」

アイギス「どうして、湊さんがここに?というか、何故生きて……どういうことですか?」

有里「原因は僕にもわからない。だけど、どうやら今生きてここにいる事は確かみたいだ」

アイギス「……偽者では?」

有里「僕は僕だ。言っただろ?」

アイギス「うー……うーっ……!」

有里「ああまた煙が……」

風花「ああ、駄目よアイギス、壊れちゃったらここじゃ直せないんだから」

アイギス「でもっ!湊さんは、あの時いなくなったはずで、でもまたここにいて、私が会いたくて、会えなかった人は、会えないから、諦めてっ……!」

アイギス「私は!こんなに変わりました。こんなに、人間らしくなりましたって、言いたくてっ……でも、応えてくれる人はっ!」

風花「アイギス……」

アイギス「あなたは私を狂わせる。おかしくなってしまうんです。あなたがいると、あなたがいないと、私は」

有里「アイギス、もういい」

アイギス「でも、やっぱり、無理、嫌、もうどこにも、行かないで、そばにいて、声を聞いて、声を聞かせて、私の、あなたの……!」

有里「僕は、ここにいる。君が今見ている場所に。手を伸ばせば、届く場所に」

アイギス「湊さ……ん……」

有里「ごめんね。これから一杯聞いてあげるから。許して欲しい」

アイギス「……嫌です」

有里「……参ったな」

アイギス「湊さんとの約束は信用できません。湊さんが私の声を聞いて、声を聞かせて、触れて、触れられて、そうやって、ずっと過ごして……」

アイギス「その時、許してあげます。それまでは駄目です」

有里「努力はしよう。とにかく、久しぶり」

アイギス「はい、お久しぶりです。……湊さん」

風花「ほら、アイギス。煙煙。落ち着いて、ね?」

アイギス「ありがとうございます。……ふぅ。でも、いい所ですね、八十稲羽」

有里「そうだね……良い人ばかりだよ」

風花「あ、そういえば。鳴上君のお帰り集会やるぞーって言ってたんですよね」

有里「うん。そのために二人を呼びに来たんだ」

アイギス「なんですか?それは」

有里「いつも集まってる場所があるんだけど、そこに友達が集まっていろいろするんだって」

アイギス「サプライズ!ですか?」

有里「いや、本人なんとなくわかってたみたいだけど」

アイギス「そうですか……残念です」

風花「じゃ、いこっか。アイギスも大丈夫?」

アイギス「はい。案内をお願いします」


【ジュネス内フードコート】


陽介「よーう有里。はやかっ……そこなお姉様は何者ですか?」

アイギス「はじめまして。私はアイギスと申します。鳴上さんと一緒にしばらくこちらに滞在しますので、よろしくお願いします」

陽介「こ、こちらこそ!俺っ花村陽介って言います!有里には仲良くしてもらってます!」

有里「皆はまだ?」

陽介「あん?おー、まだみたいだな」

有里「天城さんは今日旅館が忙しいみたい。参加できないって言ってたよ」

陽介「あー、まぁな。連休は仕方ねーよ。むしろいいんじゃねえか?繁盛してるってこったろ」

有里「そうだね。……あれ、アイギスは?」

陽介「山岸さんもいねーぞ」

有里「おかしいな……さっきまでここに……」

アイギス「これは……」

風花「あ、おいしそー」

陽介「女ってこういうとこで買い物モードに入んのはえーよな」

有里「見習いたいフットワークの軽さだね」

陽介「……とりあえず待つか。揃うの」

有里「そうだね」

>…………。



【堂島宅】


鳴上「元気だったか菜々子」

菜々子「元気だったよ!」

鳴上「そうか。良かった……心配してたんだ」

菜々子「お兄ちゃんいなくてちょっと寂しかったけど、湊お兄ちゃんがいたから平気だったの」

鳴上「有里は良く遊んでくれるのか?」

菜々子「菜々子の代わりにお料理もお掃除もしてくれるんだよ」

鳴上「へぇ、意外だな」

菜々子「いろんなお話してくれるし、やさしいし、本当にお兄ちゃんみたいだった」

鳴上「そっか……お礼言わないとな」

菜々子「お兄ちゃん、今日からいつまでいるの?」

鳴上「日曜日までいるけど、日曜日の昼には帰らないといけないかな」

菜々子「そうなんだ……次は?次はいつ来れる?」

鳴上「んー、次はまたちょっと先かな。夏休みになったらもっと長い間いられるんだけど」

菜々子「そっかー……」

鳴上「そんな顔するな。寂しかったら電話してきてもいいから」

菜々子「ほんと?いいの?」

鳴上「菜々子からの電話ならいつでもいいぞ」

菜々子「やった!じゃあ今度電話するね!」

>ん?

>……メールだ。

『差出人:里中
  件名:おーい
  本文:みんな揃ってるよー!』

鳴上「菜々子、お兄ちゃんちょっと出かけないといけないみたいだ」

菜々子「……行っちゃうの?」

鳴上「ごめんな、帰ってきたらまたお話しよう」

菜々子「うん……」

堂島「こらこら菜々子。悠を友達にも貸してやれ」

菜々子「わかった、お留守番しとくから……ちゃんと帰ってきてね」

鳴上「ああ。ちゃんと帰ってくる。約束な」

菜々子「うん。じゃあいってらっしゃい!」

>ジュネスへ行こう。

有里「……っと、自己紹介はこんなものかな」

アイギス「皆さんよろしくお願いします」

りせ「あのー、アイギスさん?」

アイギス「はい、なんでしょう?」

りせ「えっと……その耳って、どうなってるんですか?」

アイギス「どうとは?」

有里「あ、言ってなかったね。アイギスは……」

風花「機械なんです。わかりやすく言えばアンドロイドとかロボットになると思います」

陽介「えぇ!?あんな美人さんが……ロボット!」

千枝「うっそ……凄い時代になったもんだね……」

直斗「僕は以前同式の物を見た事があるのですが……やはり、信じられない技術ですよね」

完二「う、嘘だ!俺ぁ騙されねえぞ!田舎モンだからってバカにしてんだろ!」

アイギス「そんなつもりは無いし、本当なんです……」

陽介「完二ィ!アイギスさん辛そうだろ!謝れ!」

完二「お、俺っスか!?あ、あの、なんか……すんませんっした……」

アイギス「いいんです。わかっていただけたなら……」

陽介「天使だぜおい……機械仕掛けの天使が舞い降りたぜ……」

有里「あとは鳴上君を待つだけか。連絡してみた?」

千枝「あ、私がやっといたよー。多分そろそろ来るんじゃないかな?」

陽介「って言ってたら来たんじゃねえか?」

りせ「せんぱーい!ひさしぶりー!」

鳴上「皆来てるな。悪い、遅くなって」

陽介「菜々子ちゃんと遊んでたんだろ?ならしゃーねーって。俺らよりずっと待ってただろうからな」

りせ「私だって待ってたもん!」

千枝「……私だって、会いたかったよ」

直斗「ぼ、僕も……ですね」

完二「そんなん言ったら俺だって会いたかったっつーの!お久しぶりっス!」

鳴上「ああ。久しぶりだな。皆元気そうで良かったよ」

陽介「俺はこの前会ったけどな」

アイギス「鳴上さん、湊さんがこちらにいる事知ってたらしいですね」

鳴上「あ、はい。説明するタイミングが無くて」

アイギス「……まぁ、いいです」

風花「あと天城さんがいたらよかったんだけどね……」

直斗「それは仕方ありませんよ……」

鳴上「なんか、山岸さんが知らない間に随分なじんでますね」

陽介「いいお姉様だぜ山岸さん。っと、そうだお姉様で思い出したんだけどよ、お前この前の桐条さんとも同じ寮なんだろ?」

鳴上「ああ、そうだけど」

陽介「で、機械仕掛けの天使アイギスさんと?癒し系山岸さんとも?」

鳴上「そうだな」

陽介「しんっじらんねぇ……俺が一切女っ気の無い生活してる間にそんな事になってるヤツがいるってのが……」

りせ「私だって負けてないモン!アイドルだよアイドル!」

陽介「そ、そうだよな!りせちーは俺寄りだよな!」

りせ「え?まぁ先輩は……普通かな」

陽介「普通!?」

有里「僕も昔はそんな寮で住んでたんだよ」

陽介「あーあー聞きたくねぇ!」

鳴上「陽介だって、里中や天城と仲良くやってたんじゃないのか」

完二「そうっスよ。別に女っ気無いってわけでもねーでしょ」

陽介「天城はともかく、里中はなぁ……」

千枝「あ、何?蹴られたいって?」

陽介「だって……なぁ?」

千枝「そりゃねぇ、こっちだってアイドルのりせちゃんや雪子に比べられたらたまんないっつーのよ!」

有里「直斗を忘れてる」

直斗「いっ、いえ、女性的な魅力という話では僕は……」

鳴上「直斗は可愛いぞ」

有里「直斗は可愛いよね」

完二「先輩方……ついてくっス!俺、二人についていくっス!」

千枝「私にはフォロー無しなのね……」

風花「そんな事ないよ。里中さん、可愛いと思う」

アイギス「私も、とても可愛らしい方だと思いますが」

千枝「あはは、ありがとうございます……」

有里「さて、けど天城さんがいないのはやっぱり寂しいね」

鳴上「俺達で旅館行ってもいいけど……忙しいなら迷惑だな」

千枝「……あ、電話。って雪子からだ。ちょっと待っててね」

>……。

千枝「もしもし?雪子?どうかしたの?……うん、うん。ああ、うん。えーと、今みんないるよ。うん、じゃあ希望者だけってことで。うん。わかった!」

陽介「何てよ?」

千枝「今日団体さんが宴会で入るから人手が足りないんだって。で、まあ今日手伝ってもいいよって人は良ければ手伝いに来て欲しいって」

鳴上「大変だな。よし、なら行こう」

有里「なら、僕も手伝おうか」

りせ「二人行くなら私も手伝う!」

完二「力仕事もあるんスかね。だったら俺も役立てるかもな」

直斗「裏方ならやらせてもらいます」

陽介「っし、んじゃ天城んとこ行くか!」

>雪子の手伝いに天城屋旅館へ行こう。



【天城屋旅館】


雪子「千枝ごめんね、皆にも悪いんだけど……って、皆来てくれたんだね」

鳴上「忙しいんだろ?」

雪子「うん……ああ、でも山岸さんとアイギスさんにまで手伝いさせられないです!お客様なのに!」

風花「そんなの気にしないで……って訳にもいかないんだろうけど。出来る事だけでいいからやらせてもらえない?」

アイギス「何でもやります!」

有里「アイギスは座ってて」

鳴上「アイギスさんは座っててください」

アイギス「……でしたら、お部屋で待ってます」

有里「……鳴上君もわかったんだね」

鳴上「ええ。あの人は気合いを入れれば入れる程駄目になるタイプです」

完二「力仕事なら任せてくださいや!」

直斗「あまりお客さんの前に出る仕事は得意では無いですが……」

陽介「困った時はお互い様ってな!」

雪子「……うん、わかった。ありがとうね。えーと、それじゃ完二君は奥で荷物運んで、千枝は着替えて。それから山岸さんは……」

有里「キビキビしきるね」

鳴上「見習いでも本職だからな」

雪子「有里君と鳴上君はお風呂の掃除お願い。夕方には準備済ませないといけないから、急いで!」

>雪子がパンパンと手拍子を打つと同時に、それぞれは仕事についた……。

有里「温泉なんだね」

鳴上「ああ。広いぞ」

有里「温泉か……僕、実は温泉好きなんだよ」

鳴上「俺もだ。営業終わったら天城に頼んでみようか」

有里「いいね。混浴だと尚いいんだけど」

鳴上「ロマンだな」

有里「ロマンだね」

>……。

鳴上「なぁ、有里」

有里「どうかした?鳴上君」

鳴上「ああ、それもなんだが。君付けはやめてくれないか。歳で言ったら俺の方が敬語使う側なわけだし」

有里「じゃあ、悠って呼んでもいいかな」

鳴上「ああ。俺も湊って呼んでいいか?」

有里「どうぞ。で、何?」

鳴上「湊、俺が帰る時に一緒に来ないか?」

有里「……寮に、戻れってこと?」

鳴上「別にずっといろってわけじゃない。ただ、あっちの仲間にも顔見せするべきだと思うんだ」

有里「……」

鳴上「今のところ、桐条さんと山岸さん、アイギスさんの三人か。全員、お前に会いたかったって言っただろ」

有里「そうだね」

鳴上「お前が何を考えているかは知らない。だけど、会いたいって言ってる人がいるんだ。会ってやってもいいんじゃないか」

有里「でも、僕は過去の遺物だ。君は勿論、寮の皆が前に進むことの妨げになるんじゃないかって思うんだけど」

鳴上「それでも、だ。だってお前は今ここにいる。もうどこにもいない存在じゃないんだ」

有里「……実を言うと、そろそろ会いに行かなきゃなって思ってた」

鳴上「それじゃ、いいのか?」

有里「数日だけ、ね。今僕には新しく仲間が出来た。君が向こうに居続けるなら、僕がこちらに残る必要があるように思う」

鳴上「それはどうしてだ」

有里「二つのチームが繋がるためさ。繋がっていれば協力できる。今回の事件、そうすることでしか終わらせられない……そんな気がするんだ」

鳴上「俺は、向こうで学校があるからな……じゃあ、数日ならいいんだな」

有里「うん。流石に逃げてばかりもいられないからね」

鳴上「ありがとう。俺は約束を守れそうだ」

有里「何の事かわからないけれど、それならよかった。君を嘘吐きにせずに済んだ」

鳴上「そういえば、湊の約束は信用できないってなんで言われてるんだ?」

有里「……いろいろ、あったんだよ。リバースしたりね」

鳴上「そ、そうか……大変だな」

有里「うん……」

>風呂掃除を終わらせた。



【天城屋旅館 風花、アイギスの部屋】


風花「お疲れ様。あとは本職に任せちゃっていいみたい」

アイギス「……結局、何のお手伝いも……」

完二「思ってたよりきついっスね……いやすげえわ」

陽介「なー。体力持たねえって」

有里「僕らは比較的楽だったね」

鳴上「ああ。ただの掃除だったしな」

陽介「女性陣は今何やってんのかね」

完二「あー、さっき見た感じ料理運んだり会場セッティングしたりしてるみたいっスよ」

風花「あれはあれで大変そうだよね……」

有里「あれ?じゃあ風花は何してたの?」

風花「私は軽くお掃除しただけで追い出されちゃった。お客様だからって」

鳴上「客商売の矜持か……いいな」

有里「プロだね」

>少し休むことにした……。

千枝「うっひゃー、しんどー!やっぱり慣れない事すると疲れるねー」

りせ「でも手際よかったですよぉ」

直斗「ふぅ……何とか終わらせられて良かったですね」

陽介「おーう、お疲れーぃ」

完二「な、直斗、そのカッコどうしたんだよ」

直斗「あ、制服らしくて。和服、余り得意じゃないんだけど……」

有里「いい」

鳴上「いいな」

完二「いいっスね」

風花「こうして見ると、やっぱり女の子なんだね」

雪子「お疲れさまー!すっごい助かった、ありがとう!」

千枝「全然手伝いになったの?って感じだったけどねぇ」

雪子「ううん、そんなこと……あ、良かったら晩御飯食べてって。それからお風呂、入りたい人は入ってもらってって」

有里「温泉!」

鳴上「いいのか?」

雪子「バイト代替わりにって。そんな事くらいしかできないけど……」

有里「混浴は?」

雪子「え?」

有里「混浴……」

雪子「えっと……ごめん、家は混浴じゃない……んだ……」

有里「そう……」

陽介「まーまーまーいいじゃねえか!温泉だぜ温泉!俺着替え取ってこようかな!」

雪子「あ、浴衣だったらあるよ?」

陽介「つっても泊まるわけじゃねえし、着替えて帰んねーとさ」

有里「浴衣……?」

千枝「あー、そうだね。じゃあ着替え取りに帰って再集合?」

鳴上「待て、里中。天城、浴衣は明日返すって出来ないか?」

雪子「え?それは出来るけど……どうしたの?」

有里「浴衣で着替え取りに帰ればいいんじゃないかな」

完二「浴衣で街中歩くんスか?」

鳴上「陽介、完二、ちょっとこっちへ」

有里「……ここで解散したら……浴衣姿が……」

陽介「あ!なるほど……つまり……」

完二「くっだらねぇ、アンタらだけで企んどけよ……」

鳴上「直斗もだぞ……」

完二「……くっ……しゃーねーか」

千枝「まるっと聞こえてんね」

りせ「いいんじゃない?私も浴衣着たいし」

風花「私達は元々ここに泊まってるしね」

鳴上「と、いう事で協議の結果、浴衣に着替えた後解散、明日返却するという事になったがいいか?」

雪子「うん、わかった。じゃあお風呂の準備まだだから晩御飯にしよっか」

陽介「楽しみだな!いろいろ!」

完二「っスね!」

千枝「男ってさぁ……」

風花「あはは……」

>……。

雪子「元々大人数で使う部屋じゃないからちょっと狭いけど我慢してね」

陽介「いやぁ十分十分!さー食おうぜ!」

雪子「あ、山岸さんは一応お酒もありますけど……」

風花「あ、私お酒はあんまり……」

りせ「ねぇ先輩?私ちょっと飲んでみたいなー……?」

雪子「ええ?でも……」

完二「こら、無理言うんじゃねーよ。未成年に酒飲ませたっつったら色々問題だろうが」

りせ「むー、じゃあ山岸さんにちょっと分けてもらうもん!」

直斗「山岸さんも今断ろうとしていたような……」

風花「ふふ、いいよ。でもちょっとだけね?」

りせ「やったぁ!山岸さんありがとー!」

陽介「なになに?酒?俺もちょっともらっていいかな!」

風花「んー、じゃあ天城さん、お酒とあとお水多めに持ってきてもらえる?」

雪子「あ、はーい。わかりました」

鳴上「豪勢だな」

有里「料理か……思い出すな……」

鳴上「何をだ?」

有里「昔、風花の料理を食べた事があってね……」

鳴上「ああ、湊もか」

有里「悠も?」

鳴上「ああ。美味かったぞ」

有里「……君は、本当にすごいんだな」

鳴上「?」

雪子「はい、どうぞ。一応人数分コップも持ってきたよ」

風花「ありがとう。えーと、じゃあ皆で飲む?」

完二「俺ぁいいっス、あんま得意じゃないんで」

直斗「僕も遠慮させてもらいます。……いろいろ、嫌な予感がするので」

りせ「んもーう子供なんだからぁ。山岸さん!ささ、一杯」

風花「ん、どうも。じゃあご返杯」

りせ「あ、水割り?って、そんなちょっとですかぁ?」

完二「飲ませてもらえるだけありがたいと思えっての」

りせ「ぶー、そうやって子供扱いしてー!こんなのほとんど水じゃない!」

直斗「ああ、一気に……」

りせ「水みたいなもんよー!らいたいねぇ、このくらい飲んらくらいれ酔ったりしないっての」

風花「あれ?おかしいな、酔うほど入れてないんだけど……」

りせ「酔ってらいれすー!」

鳴上「俺もちょっと飲んでみたい」

風花「ん、どうぞ」

鳴上「ありがとうございます」

風花「えっと、他には?」

陽介「俺俺!俺もー!」

千枝「わ、私もちょっと……」

雪子「私も飲んでみたいかも」

完二「あーあ、知らねぇぞ俺」

直斗「巻き込まれない内に退避した方がいいかもしれませんね」

風花「有里君はどうする?」

有里「僕は割らなくて良い」

風花「まぁ、一応同い年だもんね……はい」

有里「ありがとう」

アイギス「わ、私も……」

風花「アイギスってお酒飲んで大丈夫なの?」

アイギス「えぅ、わかりません……」

風花「また熱暴走しないとも限らないから、気分だけって事で……ほんのちょっとだよ」

アイギス「ありがとうございます!」



【夜 天城屋旅館 風花、アイギスの部屋】


雪子「あっはっはっはっはっは!」

陽介「なんつーか、よぉ……こう、ぐぁーっと熱くなる恋っつーの!?してみたいわけよ俺は!なぁ完二!聞いてっか完二!」

完二「ああ、もうウゼェ……」

千枝「私だってねぇ、私だって女の子だっつーの!いろいろさ、してみたいっての!女の子らしーこととかさ!」

りせ「あれぇ~また胸成長したぁ?ずるーい」

直斗「久慈川さん、やめ……ああもう!」

アイギス「ぽかぽかする、でありましゅぅ」

鳴上「皆、酔ってるのか?」

りせ「酔ってないれすってばぁ~」

鳴上「そうか。なら良い」

りせ「あぁ、そーだあれやりましょーよ!いつかみたいにぃ、王様ゲーム!」

完二「ああ!?んだそりゃ。やってらんねーって!酔っ払い同士でやってろ!ほら、行くぞ直斗!」

直斗「わ、は、はい!」

鳴上「雪子、割り箸」

風花「マジックあるよー、これで印つけて」

有里「あれ。もしかして風花も酔ってる?」

風花「私、お酒本当に苦手で。今かなり気持ち良いかも?」

有里「あ、そう……まぁ、どうでもいいか」

りせ「参加者はぁ~?王様は参加者誰でも好きにしていいんだよ~」

陽介「誰でも!?マジか!やるやるぅ!」

雪子「私もやるー!」

りせ「あれ~?里中先輩はぁ~?」

千枝「私はちょっと……」

りせ「駄目れーす。この場の全員強制参加なのだぁ~!」


有里「あれ、それって僕も入ってる?」

鳴上「勿論だ」

有里「じゃあそこでぐったりしてるアイギスは外してあげてよ。僕と風花が入るから」

りせ「ん~?このくらいでダウンしちゃうなんて情けないなぁ~。ま、いいでしょー。はい、人数分できたー!」

鳴上「くじは俺が持とう。よくシャッフルして……さぁ、引け」

千枝「もー、仕方ないなー」

陽介「王様こいっ!」

りせ「えーい」

風花「あはは、これかな?」

雪子「こーれっ!」

有里「はい」

鳴上「残ったのが俺か。さて……」

りせ「王様だーれだっ!」


【王様ゲーム 第一回戦】

たのしいやそいなば おうさまゲームへん

という事でガチ王様ゲーム直前で本日分は終わり。
SSWikiって書いた方がいいんですかね?原作キャラだけだしいらないかな?

とにかく、また後日。

たのしいやそいなば おうさまゲームへん
第二話
たのしいやそいなば みんなでおふろへん

王様ゲーム編はMass Destructionを聞きつつ読むとP4Aな気分かもしれません。


違うかもしれません。
というわけで本日分。



【王様ゲーム 第一回戦】


「王様は……」

>かつて誰かが召喚機をそうしたように、割り箸を回転させ、こめかみに突きつける。

有里「僕だ」

>王様ゲーム、その始まりの一戦。赤いラインの入った割り箸は有里の手に渡った。

有里「といっても最初だし、軽くジャブからいこう」

>全員が次の言葉を待つ。王の命令は絶対であり、参加者に拒否権は無い。

>……有里の言葉一つで彼等は様々な物を捨てねばならない。

有里「……2番が1番の椅子になる。これでどう?」

>一度確認した番号を再度見る。

>椅子になる者、2番を引いたのは……

鳴上「俺だ」

>鳴上だった。

鳴上「俺に座るのは誰だ?」

雪子「あ、私だ」

りせ「あー、いいなぁ~!」

>りせが羨望の眼差しを向ける。

>手を上げたのは雪子。

雪子「じゃ、失礼して……ごめんね、重くない?」

鳴上「むしろいい」

>四つん這いになった鳴上の背中に雪子が体重を預ける。

>一種背徳的でもある行為だ。

りせ「は、早く!次やろっ次っ!次は王様引いちゃうから!」

有里「悠はもう1ゲームそのままね」

鳴上「キングの言う事は絶対だ……屈辱だが甘んじて受けよう」

風花「鳴上君、むしろ嬉しそうじゃない?」

陽介「気持ちはわかるぜ、悠……!」

有里「じゃあ、次は僕がくじを混ぜよう。……さぁ、引いて」

りせ「次こそは!」

雪子「鳴上君はどうやって引くの?」

鳴上「問題ない。届く」

風花「人間椅子って、なんかいやらしいね」

千枝「変な命令されたくなけりゃ王様になれってことね!」

陽介「そういうこ……とっ!これだぁ!」

有里「じゃあ残りが僕と。さて……」

陽介「王様だーれだっ!」



【王様ゲーム 第二回戦】


「王様は……」

>皆が固唾を呑んで自分の割り箸を見る。

陽介「俺だぁあああああ!」

>高々と掲げられる勝利の割り箸。

千枝「うげ、花村かぁ。変な事言わないでよ」

りせ「あーんまた引けなかったぁ」

陽介「へへへへ……行くぜ!相棒!」

鳴上「俺は関係ない」

>陽介は懸命に命令を考える。

>如何にすれば美女揃いの女性陣と美味しい思いが出来るか……。

陽介「っしゃ決まった!4番が王様に『大好き』って言う!言って!お願い!」

千枝「うわ、何それ……」

雪子「4番誰~?」

風花「あ」

陽介「山岸さん!?山岸さんなの!?」


鳴上「俺だ」


>雪子の尻の下で四つん這いになっている鳴上が割り箸を掲げた。

陽介「お前かよ!!」

風花「ごめんなさい、見間違いだった」

鳴上「陽介……大好きだ」

陽介「……おう」

風花「これ……結構アリだと思う」

りせ「花村せんぱいも黙ってたらかっこいいしね~」

千枝「アリって何が?」

雪子「だからぁ、花村君と鳴上君がね……」

陽介「って、女の尻に物理的に敷かれてる男に言われても嬉しくねーっつの!ちくしょ、ミスった!」

千枝「はーい次いきまショー」

りせ「お、里中せんぱいもノってきたにゃ?」

陽介「じゃ、次は俺がくじ持つわ……ほら、引けよ」

鳴上「俺はもう良いんだろ?」

有里「うん」

風花「心なしか残念そう?」

雪子「皆引いた?それじゃ、王様だーれだ!」

【王様ゲーム 第三回戦】


「王様は……」

雪子「私ー!」

りせ「くじ運無いぃ~……」

千枝「雪子だったら安心かな?」

>雪子は割り箸を唇に当てて何か考えている。

風花「天城さんってやっぱり色気があるよね、しっとりした感じ」

りせ「流石にその方面だと勝てないカモ……」

雪子「決まった!」

>不意に立ち上がり決めポーズ付きで宣言する。

雪子「えっと~、6番が王様のほっぺにちゅー!」

千枝「ええ!?」

陽介「何っ!?」

>陽介が何度も自分の割り箸を確認する。

千枝「6番私だ……」

雪子「なーんだ、千枝なのぉ?」

千枝「なによ、嫌なの?」

雪子「んーん。じゃあ、はい。どーぞ!」

有里「陽介、良く見ておくんだ」

陽介「わかってるぜ、見逃すもんかよ!」

鳴上「顔真っ赤だな」

千枝「うー、……はい!」

>一瞬頬に触れるか触れないかですぐに唇を離す千枝。

雪子「ええ?今ちゃんとちゅってした?もっかい!」

千枝「やったって!そんな何回も……恥ずかしいっての!」

鳴上「里中」

有里「王様の命令は」

雪子「絶対だよ?」

千枝「あーもう、わかったってば。じゃ、もっかいイクね?」

>今度はゆっくりと、雪子の頬にかかる髪をかき上げて……。

千枝「……ん」

雪子「ふふ、くすぐったい」

千枝「はい、終わり!ちゃんとやったかんね!」

鳴上「アリだな」

有里「アリだね」

陽介「あれ?里中って意外と……」

風花「良い物見たし次行こっか」

雪子「じゃあ次私がくじ持ったらいいのかな。……はい、どーぞ!」

りせ「次こそ引く!絶対引くんらから!」

風花「あはは、それじゃ王様だーれだ?」



【王様ゲーム 第四回戦】


「キングは……」

鳴上「俺だ」

>割り箸をゆっくりと目の前に持ち上げ、振り下ろす。

鳴上「命令は決まっている……さっき陽介の命令を聞いて思いついた」

>一拍置いて、全員の注視を待つ。

鳴上「女性陣は王様に『大好き』と」

陽介「待て!番号使え番号を!」

有里「陽介」

陽介「あんだよ!」

有里「王様の命令は……絶対なんだよ」

陽介「そんなんアリかよぉ!」

鳴上「キングが言う以上、アリだ」

>女性陣はお互いに顔を見合わせている。

千枝「な、鳴上君に?」

雪子「流石にちょっと恥ずかしいね」

風花「ちょっと、ね」

りせ「ふふん、みんなぐずぐずしてたら私が全部もってっちゃうんだから!せーんぱいっ」

>りせが鳴上の前に座る。

鳴上「最初はりせか」

りせ「うん。えっと、そのね……先輩!だーい好きだよっ!」

雪子「ああ!それはずるい!」

陽介「りせちー大胆だな!」

千枝「ほっぺにちゅーはさっきの命令でしょ!」

りせ「じしゅてきにやるのはいーの!悔しかったらやってみたらいいじゃない?」

雪子「じゃあ私は逆のほっぺもらうね」

>雪子が鳴上の右側に座り、鳴上の右手を両手で包むように握る。

雪子「鳴上君……大好き、です。ん……」

りせ「あー!私手は握ってない!」

雪子「悔しかったらやってみればぁ?あ、でもりせちゃんのターン終わっちゃったかぁ」

りせ「あんなこと言ってぇ!」

千枝「……」

>千枝が左側に座る……。

千枝「あ、あの、鳴上君。その……」

鳴上「恥ずかしがらなくていい。キングの命令だからな」

千枝「そ、そうだね。じゃあ……えっと」

>鳴上の左腕を抱くように抱えて、密着する。

千枝「大好きです……し、失礼して……」

>前髪を上げると、鳴上の額に一つキスをした。

雪子「あー!」

りせ「あー!」

風花「あれ、私の番かな?」

鳴上「どうぞ」

雪子「あんな密着して!千枝ずるいよ!」

りせ「おでこは思いつかなかった……先輩やるぅ!」

千枝「恥ずかしいからあんまり言わないでってば!」

>女性陣は盛り上がっている。

風花「今、あの子達見てないよね?」

鳴上「みたいですね」

風花「……ちょっとからかってみようか。あ、その前に命令だったね。鳴上君」

鳴上「あ、はい」

風花「大好きです。んしょ」

鳴上「ちょっと、山岸さ」

>鳴上と風花の顔が近付く……。

千枝「ん……?あー!」

りせ「ちょ、山岸さん何して……えー!?」

雪子「それは駄目!流石にそれは駄目です!」

陽介「……」

有里「へぇ」

風花「だって、皆があんまり大胆だから残ってる場所が思いつかなかったの」

千枝「だ、だからってそんな、本人は良いって言ったんですか!?」

鳴上「……」

りせ「何でちょっと照れてるの!?ねぇ!先輩!」

陽介「何か酔い覚めてきたわ」

有里「まぁ元々酔うほど飲んでなかったしね」

>女性陣が大荒れなので、王様ゲームは自然と終了になった……。

完二「そろそろ落ち着いたか?」

直斗「まだ騒いでるみたいです。あ、巽君」

完二「あ?どうしたよ」

直斗「いや、助けてくれてありがとうございます」

完二「別に助けたっつーか、まぁお前しか冷静そうなヤツがいなかったからよ」

直斗「それでもありがとう……あ、そろそろ落ち着いたかな?」

完二「おお、みてーだな。……ま、お前が困ってんの見たくねぇしよ」

直斗「今何か……?」

完二「何でもねーよ。ほら、もどんぞ」

直斗「そうですね。お風呂の準備も出来たみたいですし」

完二「……っしゃぁ!」


【浴場】


陽介「ふぃー癒されるぜー。体も心もよー」

完二「なんでアンタは何かある度に心に傷負うんスか」

陽介「なんつーかさ、あいつらだよ。あいつらと比べるとさ……俺って、ちっぽけだなぁって思う瞬間がね……」

完二「そんな壮大なスケールで悩むことでも無いだろ……」

陽介「……そういや、お前何で満足そうな顔して帰ってきたんだ?」

完二「あァ!?誰がいつんな面したよ!?」

陽介「いや、直斗と二人で帰って来た時……あ、何かあったな!?」

完二「べ、べ別に何もねーっつんだよ!キュッと締めんぞ!?」

陽介「その反応が怪しいっつんだよ!吐け!何した!お父さん許しませんよ!」

完二「テメェの息子になった覚えはねぇっつんだよ!」

鳴上「二人とも騒がしいぞ」

有里「温泉は……静かに楽しむものだ」

陽介「あ、悪ぃ……」

完二「すんまセん……」

陽介「あの二人ってよぉ……」

完二「妙にコンビネーションいいっスよね……」

有里「……いい湯だね」

鳴上「ああ」

>……。

陽介「あー気持ちよかった!いやいいな温泉」

完二「そっスね」

陽介「俺あがるけど、お前らどうする?」

完二「あ、俺もそろそろのぼせそうなんで」

陽介「お前、俺が着替えるの見るつもりだろ」

完二「なわけねェだろ……」

有里「僕はもう少し」

鳴上「俺ももうちょっと後で出る」

陽介「そうか。んじゃごゆっくり~」

有里「悠、さっき酔って無かったよね?」

鳴上「最初はちょっと気持ちよかったんだがな」

有里「まぁ、あの量じゃね……」

鳴上「湊こそ全然だったな」

有里「あ、気付いて無かった?僕飲んでないよ」

鳴上「あれ?でも普通に……」

有里「飲み終わった風花のコップと入れ替えておいたんだけど、どうも風花は気付かなかったみたいだ。あれ?私今飲んだのになって顔しながらもう一杯いってた」

鳴上「なんでそんな事を」

有里「……彼女はあまり本音を出さない人だからね。お酒の力で少し後押ししてあげようと思って」

鳴上「へぇ。それで収穫は?」

有里「それなんだけどね。最後のアレ、どうだったの?」

鳴上「何がだ?」

有里「僕からじゃ良く見えなかったんだけど、風花との、ほら」

鳴上「ああ、アレか。アレはな……」

りせ「温泉温泉~」

雪子「あ、りせちゃん、足元気をつけて」

千枝「うー、なんか頭痛い」

直斗「気のせいでは?酔うほどの量飲んでませんよ」

風花「プラシーボってヤツかな?雰囲気に酔うとか」

鳴上「!?」

有里「今、陽介達出ていったよね?」

鳴上「ああ。まだ入ってるって伝えてくれると思ってたが」

有里「陽介だからね……」

鳴上「どうする」

有里「隠れられるような所は……この岩の裏にいよう」

鳴上「それで大丈夫なのか」

有里「昔は処刑されたけど、今日はそうは行かない」

鳴上「何かわからんが急げ!」

りせ「ひろーい!」

千枝「雪子んとこのお風呂、久しぶりだね」

雪子「そうだねー……あ、山岸さん、さっき言ってたの教えてください」

直斗「さっき?何かあったんですか?」

りせ「山岸さんってば、鳴上先輩にちゅーしたんだよちゅー!」

直斗「な、ええっ!?」

風花「ふふふ、違うの。フリだけ。ちょっと顔が近くて恥ずかしかったけどね」

雪子「なんだ、そうだったんですね……」

りせ「本当ですかぁ?」

風花「うん、本当」

有里「本当なの?」

鳴上「ああ」

風花「でも、みんなおかしかったー。すっごい慌てちゃって」

千枝「あ、あれはびっくりしちゃっただけですって!」

風花「そういうことにしとこっかな。でも、私はフリだけど皆はほんとにしてたよね?」

直斗「く、詳しく聞かせてください!」

>バチャン

風花「ん?」

鳴上「湊、お前……!」

有里「しまった」

千枝「あれ、私達以外に誰かいるのかな?」

雪子「お客さんはいないと思ったけど……」

りせ「え、まさか覗き?アイドル的にまずいかも……」

風花「あ、なんか前もこんな事あった気が……」

鳴上「ど、どうする」

有里「落ち着くんだ……落ち着いて彼女達の探索をやり過ごす。その後、彼女達があがったのを確認して僕達もあがろう」

鳴上「それでいいのかはわからんが、それしかないような気もするな」

有里「水音を立てないように集中するんだ……いくよ」

りせ「あ、先輩と有里さんの服あるよ」

有里「!?」

千枝「うそっ!てことは今二人いるの!?」

鳴上「おい」

有里「この命、天に預ける……!」

鳴上「お、おい。何天運に賭けてるんだ。何か策は無いのか」

有里「どうでもいい」

風花「服があるって事はまだ中にいるよね」

雪子「それで隠れられそうな場所っていうと、あの裏とかかな?」

りせ「んー、でもあの二人なら別に見られてもいいカモ」

直斗「冗談じゃない、恥ずかしいですよ!」

風花「えっと……有里君、鳴上君。いるんなら返事して?」

有里「……にゃーお」

雪子「あれ?キツネ?」

鳴上「猫だろ!……あ」

有里「悠……」

風花「あのー、ごめんね?入ってるの気付かなくて……」

有里「いや、こっちこそ」

風花「私達一回出てタオル巻いておくから、その間に出てもらえるかな?」

鳴上「あ、はい。すみません」

りせ「えー、先輩達とお風呂……」

千枝「む、無理無理!恥ずいって!」

風花「大丈夫?ん、はい。今のうちにどうぞー」

>……。

鳴上「窮地は脱したな」

有里「つれてきたのが風花でよかった」

鳴上「誰だったら駄目だったんだ?」

有里「美鶴」

鳴上「ああ……」

風花「二人とも、着替えた?」

鳴上「はい、一応」

有里「どうかしたの?」

風花「うん、私の服の横にチューブがあると思うんだけど、よかったら取ってくれない?」

鳴上「ああ、これですか?」

風花「うん、いつも使ってる洗顔料なんだけどね。それじゃないと荒れちゃって」

鳴上「えーと、あんまりそっち行くとアレなんで、投げていいですか?」

風花「え?タオル巻いてるから平気だよ?」

鳴上「いや、他の連中が見えちゃうんで。位置的に」

風花「あ、そっか。ん、じゃあ投げて」

鳴上「はい。よ、っと」

風花「ありがとー……あっ」

>風花の手から洗顔料のチューブが滑り落ちる。

有里「あっ」

>タオルを抑えていた手でキャッチしようとした為、バスタオルが落ちる。

アイギス「すみません風花さん、どうやら寝てしまっていたようで……」

>アイギスが目を覚まして脱衣所に入ってくる。

風花「ひぁっ……!あ、あの、見えてないよね!?」

有里「う、うん。全然」

鳴上「そうだな、一瞬しか」

アイギス「……あなた達は、駄目です」

鳴上「お、落ち着け」

アイギス「唸れ、パピヨンハート!」

有里「ああ……結局こうなるのか……」

>…………。



【天城屋旅館 風花、アイギスの部屋】


鳴上「生きてるか、湊」

有里「なんとか、悠」

陽介「悪い悪い、お前らまだ入ってるって言うの忘れちまってたわ」

完二「そのせいで酷い事になったみたいっスよ」

鳴上「いいさ、ただの事故だ……」

有里「事故だし仕方ないね……」

陽介「お、帰って来たんじゃねーか?」

りせ「いやーいいお湯だった!」

千枝「ほんと。やっぱいいねー温泉ってさ」

雪子「皆すっきりした?」

直斗「ええ、随分リフレッシュできました」

風花「もう、アイギスったら。危ない事しちゃ駄目よ?」

アイギス「申し訳ありません……」

完二「おお……」

陽介「なんつーか、風呂上りっていいよな」

有里「体温が上がり上気した肌と、水分の残る髪」

鳴上「芸術だな」

アイギス「あ、すみませんお二人とも……あれはただの事故だったと言われて……」

有里「いいよ、慣れてるし」

鳴上「大丈夫ですよ、慣れてますし」

風花「それはそれでどうして慣れてるの……?」

陽介「さて、とりあえず目的は達されたわけだけどどうするよ?」

鳴上「あ、俺はそろそろ帰る。菜々子と約束してるんだ。随分遅くなってしまったし」

有里「じゃあ僕も帰ろう。皆はどうする?」

陽介「そんじゃ俺らも適当に解散すっか」

りせ「私達はちょっとガールズトークしてから帰るね。ねー山岸さん」

完二「そんじゃ俺も帰っかな」

鳴上「じゃあ、皆また明日」

千枝「ん、また明日!」

雪子「またね」

直斗「お疲れ様でした」

>皆と別れて帰った……。

有里「菜々子は何て?」

鳴上「ああ、俺がいなくて寂しかったけど、お前がいたから平気になったんだってさ」

有里「そう。変わった子だね」

鳴上「気に入られてるみたいだぞ。ありがとうな、俺がいない間」

有里「こちらこそ。こっちの皆には本当に世話になってるよ」

鳴上「明日は、何しようか……」

有里「明日は明日考えようよ」

鳴上「それもそうだな……」


【堂島宅】


鳴上「ただいま」

有里「ただいま」

菜々子「おかえりなさい!菜々子待ってたよ!」

鳴上「遅くなってごめんな」

堂島「おう、布団上げといたからいつでも寝れる……なんで浴衣なんだ?」

有里「いろいろあって、旅館でお風呂いただきまして」

堂島「そうか。明日も休みだからって菜々子あんまり遅くまで起きとかせるなよ」

鳴上「わかってますよ」

有里「菜々子、じゃあ悠お兄ちゃんに遊んでもらう?」

菜々子「湊お兄ちゃんと三人がいい!」

鳴上「だそうだ」

有里「……じゃあ、そうしようか」

菜々子「やった!」

鳴上「菜々子は俺と湊どっちが好きだ?」

菜々子「えー……うーん……」

有里「君は酷な質問をするね……」

菜々子「どっちも大好きだよ?それじゃ駄目なの?」

鳴上「いや、いいんだ。それで」

有里「……」

菜々子「あ、湊お兄ちゃんまた笑ってる。菜々子変な事言ったかなぁ」

鳴上「へぇ、湊はそんな顔で笑うんだな」

有里「変な顔かな?」

鳴上「いや。いい顔だ」

>菜々子と遅くまで遊んだ……。



【自室】


鳴上「変な気分だな」

有里「何が?」

鳴上「いや、こうして二人で同じ部屋で寝る事になるとは」

有里「そうだね、不思議といえば不思議だ」

鳴上「……なぁ」

有里「ん?」

鳴上「あの寮のメンバーで、お前と……その、特別な関係だったのって誰だ?」

有里「皆さ。大切な仲間だよ」

鳴上「そうじゃない。その、男女の仲というか」

有里「……聞きたい?」

鳴上「まぁ、皆の反応を見たらちょっと気になるな。どうなんだ?」

有里「例えば、恋人っていう意味なら……誰もいない。僕と彼女達には、具体的な事は何も無かった」

鳴上「そうなのか?」

有里「うん。でも、好きだったっていうなら……あの寮にいる、アイギス以外の女子は、皆僕の事を好きだったと思う」

鳴上「すごい自信だな」

有里「というか、実際言われたからね」

鳴上「けど、恋人じゃないんだろ?フったのか?」

有里「そういうわけじゃないけど……僕は誰かを選べなかったから」

鳴上「陽介辺りが聞いたら激昂しそうな話だな」

有里「それは君だってそうじゃないの?」

鳴上「俺はそんなにモテた事無いぞ」

有里「……あ、そう。でも、もしだ。自分の道と誰か他人を選ばなければならない時、君はどうする?」

鳴上「どういうことだ」

有里「僕は、彼女達は勿論、仲間達は皆好きだ。大好きだ。けれど、一緒に暮らしていくなら、自分の進む道を歪めなければならない」

鳴上「そうか?」

有里「他人の道と自分の道は決して重ならない。そこには既にお互いが立っているから。だから、もし同じ道を行こうとすれば、自分か相手の道を歪ませる必要があるだろう」

鳴上「……俺は、そうは思わない。相手に近付こう、寄り添おうって時は歪めるんじゃなく歩み寄るって言うんだ」

有里「僕にとっては同じ事さ。彼女達と出会ってから一年も無かった。彼女達に好意を伝えられた時には僕のこたえは見つかってたんだ」

鳴上「命のこたえ、か」

有里「そう、僕という物語の締め括り。大好きだったから、守る為に自分を捧げようと思った。それが彼女達を傷付けるとわかって。そんな僕が誰を選べるっていうんだ」

有里「自分の考える一番のフィナーレを飾ったのに、何故か僕はここにいる。これはおまけか?違う、蛇足だ。僕の今は、あの時の僕からすれば蛇足でしかない」

鳴上「……お前は凄いよ。けど、そんな風に言うのはやめろ」

有里「……わかってるさ、本当は。でも、僕は少なくとも納得して命を終えたんだ。それを引き摺り出されて……良い気はしない」

鳴上「これからだろう、お前も、俺も。前回はお前が納得しても、皆が納得できるこたえじゃなかった。もう一度だ。チャンスだと思えよ」

有里「……君に、かっこつけて退場して、また舞台に上がる時の気まずさがわかるかい?」

鳴上「だから、もうかっこつけなくていい。前はお前にしか出来なかったとしても、今は俺がいる。……付き合うさ、これも縁だ」

有里「悠……なら、足掻くよ?みっともなく、無様に」

鳴上「ああ、いいさ。俺だってそうする。手段を選べるような立場じゃないんだ、本当は」

有里「……ところで、強いて言えば彼女達と特別な関係だったのは確かだよ」

鳴上「つまり、どういうことだ?」

有里「誰も選べない代わりに、皆の想いになるべく応えようとしたからね。それはいろいろあったさ」

鳴上「だから、どういうことだ?」

有里「それは……一緒に部屋で長い時間を過ごした、とか」

鳴上「なんだ、一緒にいただけか」

有里「……君は、鈍いというか純というか、今時珍しいタイプだね」

鳴上「そうかな」

有里「陽介の方がからかい甲斐がある」

鳴上「そりゃ、悪かった……メールだ」

有里「あれ、僕もだ」

>……。

有里「どうも、明日の予定は決まったみたいだ」

鳴上「俺もだ。また菜々子は留守番か……」

有里「じゃあ明日は別行動だね」

鳴上「ああ。じゃあ寝るか……流石に少し疲れた」

有里「移動も長かっただろうし、今日は一仕事したしね。……おやすみ」

鳴上「ああ、おやすみ……また明日な」

>『No.10 運命 鳴上悠』のランクが3になった。

>『No.13 死神 有里湊』のランクが3になった。

美奈子「……今の内に、考えておかないといけないよ」

美奈子「自分、誰か、隣にいる彼。誰を信じて、誰の為に動くのか……」

美奈子「選ぶ時は、きっと来る。きっと、ね」

たのしいやそいなば いちにちめ おわり

つぎは→たのしいやそいなば ふつかめ

連休最後まで楽しい八十稲羽で済めばいいけど。
済むかなあ。済まねえだろうなあ。

ということで本日分は終わり。
では、また後日。

今更だけど主人公ズはサークルクラッシャー的要素満載なのに、むしろ結束を高めるんだから凄い

というわけで本日分。



【2012/5/4(金) 晴れ 天城屋旅館】


鳴上「お待たせしました」

風花「あ、おはよう。ごめんね、朝から……お友達ともっと遊びたいと思うんだけど」

鳴上「いえ、それは構わないんですけど、アイギスさんは?」

アイギス「もう準備は出来ています!」

風花「だって。じゃあ、今日はお願いします」

アイギス「お願いします」

鳴上「はい。それじゃ行きましょうか」

風花「私は一応一通り案内してもらったんだけどね」

鳴上「あ、そうですか。じゃあどこから行きましょうか……」

風花「商店街とかでどうかな?」

鳴上「俺が言うのも変ですけど、他に見るような所無いですしね」

アイギス「では早速行きましょう!」

>アイギスと風花を連れて町内案内をしよう。


【商店街】


鳴上「ええと、じゃあまず南側から……」

風花「南側と北側に別れてるんだよね」

アイギス「はー、そうなのですか?」

鳴上「ええ。南側には俺がよくお世話になった店が一杯あるんです」

>アイギスは珍しそうに周りを眺めている。

鳴上「ここがだいだらぼっち……あの点はぼっちって読みます。親父さんがアートを作ってるんです」

アイギス「アートですか。……アート?」

>店先には鎧兜からジェラルミンの盾、何故か革靴まで様々な物が置いてある。

アイギス「アートとは難しいのですね……」

鳴上「親父さんが手に入った素材で即興で作ってるらしいんで、素材によって色んな物が……」

風花「あんまり大きい声では言えないんだけど、普通に刃物とかも置いてるんだって」

アイギス「……ああ、つまり交番ですか」

風花「そういう事みたい」

鳴上「かなりお世話になりましたね。次行きましょうか」

>……。

鳴上「こっちが、四六商店。まあ薬屋みたいなものです」

アイギス「ヒットポイント回復するなら」

風花「傷薬に宝玉でー」

鳴上「……?」

アイギス「どこで聞いたかわからないけど、妙に耳に残っている薬局のテーマソングです」

風花「ね。知らない間に覚えてたの」

鳴上「そうですか。ここはおばちゃんが良い人で、探索用に変な薬ばかり買っていく俺の事を心配してくれたりもして」

アイギス「人情ですね!すばらしいです!」

鳴上「あと、雨の日はわざわざ買いに来る人もいないって事で割引に……いや、これは知ってもしょうがないですかね」

風花「私達こっちに住んでないしね」

鳴上「じゃあ、次……」

>……。

鳴上「ここが、四目内書店。あ、今日もだ……」

アイギス「平積みの一冊だけが残っていますね」

鳴上「俺が来る時はいつもこんな感じなんです。何故か」

風花「けど、色んな本あるよ。品揃えが多いってわけじゃないけど、こだわりがあっていい感じ」

鳴上「ええ、どれもいい本ですよ。精神的に成長しそうな」

アイギス「是非読んでみたいですね」

風花「また今度ね」

>……。

鳴上「えーと、ここが愛家です」

アイギス「食べ物屋さんですか?」

風花「中華料理屋さんだって」

鳴上「里中が常に欲している肉丼はここのメニューです。出前もあります」

アイギス「……」

>アイギスはわかりやすく物欲しそうにこちらを見ている。

風花「お昼にね、アイギス」

アイギス「わかりました!」

鳴上「ここも、雨の日は特別メニューが出たりします。すごいですよ」

風花「へぇ、食べてみたいかも」

鳴上「山岸さんじゃちょっと厳しいかも……」

風花「え?どうして?」

鳴上「まぁ、いろんな意味で。次行きましょう」

>……。

鳴上「で、ここが……良かった、まだ惣菜大学だ」

風花「まだ?」

鳴上「店主が趣味でやってるらしくて、定期的に店の種類が変わるんです」

アイギス「それはまた……不思議な話ですね」

鳴上「ここのビフテキ串っていうのが結構人気ですね」

アイギス「ビフテキ?」

風花「ちょっと買ってみる?」

アイギス「いいんですか!?」

風花「うん、じゃあ一本ずつもらおうか」

>……。

風花「正直、お肉硬かったけど……なんだろう、美味しくないんじゃなくて、妙に癖になるかも」

アイギス「やわらかくて美味しかったですよ?」

鳴上「……やっぱり、個人差あるのか。えっと、で、ここが辰姫神社です」

アイギス「神社ですか」

風花「あ、ここが噂の」

鳴上「噂?」

風花「うん。りせちゃんに教えてもらったの。絵馬に書いた願い事が必ず叶うんだって」

鳴上「……へぇ。スゴイデスネ」

風花「あれ、どうかした?」

鳴上「いや、別に。じゃあ何か書いていきます?」

風花「んー、恥ずかしいから今度一人で来ます」

アイギス「あ、あれなんですか?」

風花「あれ?あ、狐じゃない?」

アイギス「初めて見ました」

>狐に手を振っておいた……。

鳴上「じゃあ、次は北側行きますか」

風花「北側にはりせちゃんと完二君のお家があるんだよね」

鳴上「ええ。ただ、店としてはあんまり用事がある方じゃないので……」

風花「あれ、そうなの?」

鳴上「まぁ、行ってみましょう」

>……。

風花「ああ、これは、確かに……」

鳴上「時流には勝てないというか、結構なお店が店じまいしてて……」

アイギス「少し寂しいですね……」

鳴上「それで、ここが完二の実家です」

風花「巽屋……染物屋さんなんだ」

アイギス「はぁー、綺麗ですねー」

鳴上「かなり有名らしいですよ。天城屋にも卸してるとか」

風花「お値段もそこまでしないし、お土産に買って帰ろうかな」

鳴上「ああ、いいかも知れませんね」

完二「あ、誰かと思ったら先輩方っスか」

鳴上「完二。おはよう」

完二「はよっス。家に何か用スか」

風花「うん。寮の皆にお土産買って帰ろうと思って。これ、誰が染めてるの?」

完二「今はお袋っス。昔は親父だったんスけどね」

アイギス「すごく綺麗です。お母様は見事な腕前なんですね」

完二「……へへ、で、どんな人に買うんスか」

風花「あ、うん。女の人が二人で、男の人が……」

>……。

風花「完二君、安くしてくれて良かったね」

アイギス「本当に綺麗……これが職人のワザというヤツですか」

鳴上「大量生産じゃ無理だって言ってましたね。で、ここがマル久豆腐店」

風花「りせちゃんのお家だね。今はお祖母さんがやってるみたい」

アイギス「お豆腐ですか」

りせ「あ、先輩達来てたんですか」

鳴上「ああ。二人の案内をな」

りせ「へぇ~……山岸さん!」

風花「へ、な、何?」

>りせはウィンクしながら親指を立てた。

りせ「頑張ってね!」

風花「あ、あはは。ありがとう……?」

りせ「敵に塩を送るってヤツですよ!私は年月っていうアドバンテージがありますからー」

アイギス「正々堂々、立派です」

鳴上「……?まぁ、後は酒屋とかガソリンスタンドとか……俺は使わない店なんで」

アイギス「なるほど、わかりました!」

鳴上「遊ぶ時は大体沖奈……結構距離はありますけど、別の市まで出かけたりしますね」

風花「もっと時間があったらそっちも行ってみたいね」

鳴上「今日は町内って事で。……あと行く所と言うと」

りせ「先輩、鮫川は?」

鳴上「ああ、あそこも一応見せておくか」

>……。

鳴上「というわけでここが鮫川です」

アイギス「川!ですね!」

鳴上「アイギスさん、良ければ釣りします?」

風花「あ、さっき取りに行ってたのって……」

鳴上「はい、釣具です。ここ、月一で釣り大会とかやってるんですよ」

アイギス「良いのですか?」

鳴上「セッティングできます?」

アイギス「良ければお願いしたいです」

鳴上「じゃあちょっと待ってくださいね……はい、どうぞ。あんまり振りかぶると変な所引っ掛けるんでほどほどに」

アイギス「では爆釣目指して頑張ってきます!」

風花「行っちゃった。元気だね」

鳴上「ですね。そういえば、さっきりせに言われてたのは何なんですか?」

風花「え?ああ、夕べね。いろいろお話してから解散したんだけど、その時にちょっとね」

鳴上「そうですか」

>……。

>風花は黙ってアイギスを眺めている。

>……何か言い出そうとしているようにも見える。

>迷っているようなら、言い出すのを待とう。

風花「……鳴上君、昨日はごめんね」

鳴上「え?」

風花「ほら、王様ゲームの時の……」

鳴上「ああ、アレですか。別に謝るような事は」

風花「駄目だよね、あんな風にしちゃ。……私達が最初に会った日、いつか覚えてる?」

鳴上「ええと……先月の何日でしたっけ……」

風花「八日。久しぶりに寮に帰った日」

鳴上「ですか。まだ一ヶ月も経ってないんですね。毎日どこかで顔を合わせてたからか、随分長い間一緒にいたような気がしてますけど」

風花「私もそう。何だか、ずっと前から知り合いだったみたいに思えるんだ」

鳴上「馴染めてますかね、俺」

風花「少なくとも私には、ね」

鳴上「なら良かったです。……しかし、逆に言えばもう一ヶ月ですか」

風花「そうだね……一ヶ月で、こんなに印象が変わるものなのかな」

鳴上「短いようで長くて、長いようで短い時間ですね。場合によっては180度変わる事もあるんじゃないですか」

風花「鳴上君は、誰か大きく変わった人はいる?」

鳴上「特には……まだ何か、俺には全部見せてくれてない人もいますけど」

風花「それはゆっくりね。……例えばさ、昔好きだった人が忘れられなくて、その人に似た人を好きになっちゃったって人がいるじゃない?」

鳴上「え?」

風花「例えば、の話ね。最初は、昔好きだった人の面影を追ってて、でもいつの間にか、そうじゃなくなってて……」

鳴上「……」

風花「そんなの関係なしに、その人の事が好きだってある日気がついて。そうなるまでの時間って、一ヶ月じゃ短いかな?」

鳴上「人を好きになるのに、時間なんて関係ありませんよ」

風花「そうかな。そう、だよね……もし、それが私が鳴上君に思った事だって言ったら、どうする?」

鳴上「なっ、ええ?」

風花「……冗談。駄目だね、年下をからかって困らせちゃ。ごめんね?」

鳴上「びっくりさせないでくださいよ……」

風花「ごめんごめん。似合わない事しちゃった。でも、私みたいな子じゃドキドキもしないか」

鳴上「……いや、かなりキましたけど」

風花「あ、アイギスどうしたんだろ」

鳴上「ん?あ、根掛かりしてんるんじゃないかな。アイギスさん、あんまり引っ張らないで」

風花「……駄目だ、よね」

>アイギスと風花を町内案内した。

>どうやら楽しんでもらえたようだ。

>『No.07 戦車 アイギス』のランクが3になった。

>風花から感じる感情が特別なものに変化しているような気がする。

>……気のせいだろうか?

>『No.02 女教皇 山岸風花』のランクが5になった。

風花「あ、そうだ。鳴上君。お昼から何するか聞いてる?」

鳴上「いや、聞いてませんが。何かあるんですか?」

風花「うん、あの子達がお料理教えてって言うから、皆でお料理しよっかって話してたんだけど」

鳴上「……!」

アイギス「そういえばそろそろ時間でしょうか」

鳴上「俺は、料理はある程度できるんで参加しなくてもいいですかね?」

風花「鳴上君には是非審査員として参加して欲しいって言われてるんだけど……」

鳴上「……わかりました、行きましょう」

>風花の料理教室が行われるらしい。

>……胃が痛くなってきた。


【2012/5/4(金) 晴れ 堂島宅】


菜々子「湊お兄ちゃん、お客さーん」

有里「来たね」

>玄関には菜々子と千枝が立っている。

有里「や」

千枝「あ、おはよう……」

>千枝は少し元気が無いように見える……

有里「どうかしたの?」

千枝「いや、どうってわけじゃないけど……」

有里「……じゃあ、出かける?」

千枝「あの、鳴上君……出かけてるんだよね?」

有里「悠なら今風花とアイギスの所だけど」

千枝「そ、そっか……じゃあ、あの、良かったら……お部屋にあげていただけませんでしょーか!?」

有里「そんなに気合入れて言わなくても。良いよ、あがって」

千枝「う、うん。お邪魔します……」

有里「悠の荷物もあるからちょっと狭いけど。どうぞ」

千枝「……すぅー、はぁーっ……失礼、します」

有里「好きなように座って。お茶持ってくるから」

千枝「あっ、いい!いいから!お構いなく!」

有里「そう?じゃあいいけど……」

千枝「……」

有里「……」

>……?

>緊張しているのだろうか、挙動不審だ……。

有里「里中さん」

千枝「あ、はい……じゃなくて。あの、前から言いたかったんだけど、その里中さんってのやめない?」

有里「どうして?」

千枝「いや、一応年上……みたいだし。なんか距離あってやだなーって」

有里「そう。じゃあ何て呼ぼうか」

千枝「もっとこー、フランクな感じで!雪子みたいにさ、千枝ーって呼んでくれてもいいから」

有里「それじゃ、これからそうするよ」

千枝「……」

有里「……」

>……やはり、様子がおかしい。

>何か言い出し難い事でもあるのだろうか。

有里「千枝」

千枝「ひゃいっ!」

有里「……?」

千枝「ち、違くて。急に名前で呼ばれたからびっくりしただけ!」

有里「だって千枝がそうしろって」

千枝「ごめん、だけどちょっとワープしすぎた。里中くらいに戻って、ドキドキするから」

有里「じゃあ、里中?」

千枝「えと、なんでしょー」

有里「どちらかというとなんでしょーはこっちの台詞なんだけど」

千枝「そ、そうだね……ごめん……」

有里「謝るような事じゃ無いけど。本当にどうしたの?」

千枝「いや、話があるっていうか……」

有里「悩み事?僕で良ければ相談に乗るよ」

千枝「うん、悩みっていえば悩み。……その、有里君って好きな人とかいる?」

有里「いるよ」

千枝「あ、そうなん……だ」

有里「昔の仲間も、今の仲間も、菜々子も堂島さんも、皆好きさ」

千枝「いや、そういうんじゃなくてさ。好きな女の子っていうか、いいなって思う子とか、いないの?」

有里「あ、恋愛の悩み?」

千枝「まぁ、そうなんだけど……好きな人がいてね。その人の事がずっと好きで、今でも好きなんだけど。同じくらい好きな人が出来たの」

有里「恋多き年頃なんだね」

千枝「年頃、なのかな。この人より好きになる人なんて出てくるのかなーって思ってたんだけどね。その人よりもずっと短い時間で、同じくらい好きになった人がいて」

有里「……」

>思ったより早く、決断の時が来たかもしれない。

>ここで選択肢を誤ると、後々様々な影響が出るだろう。

>……きっと、皆に嫌われるかもしれない。

>しかし、それでも……

千枝「これって、変なのかなって。他の皆には相談出来ないけど、有里君なら経験豊富っぽいしさ。何かいい案だしてくれないかなって」

有里「そうだな……人間の感情なんて、簡単に揺れ動く物だよ。だから、何も変な事では無いと思う。ただ……」

千枝「ただ?」

有里「それは、気の迷いが起こりやすいって事でもあるんだ。短い時間の間に好きになったのなら、勘違いって事もあると思う。その人の事は良く知ってるの?」

千枝「ううん、あんまり……秘密にしてる事が多いみたいで」

有里「だったら、それは勘違いだよ。よく知ってる人を好きになるならともかく、ちょっと話をしたくらいで好きになるなんて、気の迷いとしか思えない」

千枝「そんなこと……!」

有里「無いって言いきれる?今こうして語っている僕を見て、少し印象が変わったんじゃないかな?冷めてる所はあるけど、そんな風に言う人だと思わなかった……みたいに」

千枝「……っ!」

有里「そんなものなんだよ、他人に対する評価なんて。正しく下すには長い時間が必要だ。会って短いのなら……断言しよう。気の迷いだ」

千枝「やっぱり、そうなのかな……」

有里「きっと、そうさ。以前から好きだった人を取るべきだと思うけどね」

千枝「……変な事相談してごめんね。忘れて、さっきの話」

有里「……」

千枝「あ、そーだ!お昼からさ、山岸さんに料理教えてもらうんだ!良かったら審査員って事で有里君も来てよ!」

有里「そう。じゃあ行かせてもらおうかな」

>すまない。すまない。すまない。すまない。

>何度謝っても謝り足りない。

>自分さえいなければ、自分さえ来なければ、もっと早く事件を解決していれば、自分なんかが。

>わかっていたはずだ。知っていたはずだ。

>あの頃ならば、ただ力を増す為の踏み台で済んだ。

>今では、自分にとって無くす事は余りに惜しい存在になってしまっている。

>今、君に応えると、君はきっともっと悲しむ事になる。

>あの子のように。あの人のように。彼女のように。

千枝「……私、一回帰るね。また、後で」

有里「うん。気をつけてね」

>すまない。ごめん。悪い。許してくれ。

>千枝は部屋を出て行った。

>すまない。すまない。すまない。

>こんこんっ

有里「まだ何か?」

菜々子「菜々子だよ?」

有里「ああ、菜々子か。入っておいで」

菜々子「お姉ちゃん、泣いてたよ?ケンカしたの?」

有里「……ああ。ちょっとね。お兄ちゃんがからかっちゃったんだ」

菜々子「うそ。湊お兄ちゃんも泣きそうな顔してるもん」

有里「嘘じゃない、本当さ。後で謝っておくから、菜々子は心配しなくていいんだよ」

菜々子「ちゃんと許してもらってね?お兄ちゃんとお姉ちゃんがケンカしてるの、菜々子嫌だもん」

有里「そうだね。ちゃんと謝るよ」

>謝った所で、謝りきれる物でもないが。

>千枝との間に軋轢が出来てしまった。

>『No.11 剛毅 里中千枝』のコミュニティがリバースになってしまった。


【天城屋旅館 厨房】


鳴上「なんだ、有里も来たのか」

有里「里中さんに呼ばれてね」

陽介「来たくなかったぜ、俺は」

完二「まぁ……俺もっス」

有里「あの四人はそんなに酷いの?」

陽介「直斗はそうでも無いんだけどな。後の三人が酷いの何のって」

有里「そう……風花も酷いものだったんだけどね」

鳴上「いや、山岸さんは上手いぞ」

有里「本当に?」

鳴上「ああ。俺も少し料理はするが、足元にも及ばない」

陽介「マジかよ。お前って結構上手いじゃん?」

鳴上「まぁ、それなりにやる方だと思ってたんだが。流石に本職を目指す人は違うみたいだ」

完二「本職って、料理人とかっスか……って、有里サンなんでそんな顔してんスか」

有里「信じられなくて……あの風花が料理を仕事に?」

鳴上「学校を出たら調理師免許を取りたいらしい。そんなに驚く事か?」

有里「いや、よく考えたら結構上達してたから……おかしい話ではないのか。いや驚くけど」

完二「今日は何作るかって聞いた人いねえんスか」

陽介「じゃがいもとか人参とかあったぜ」

鳴上「牛肉と玉ねぎも見た。肉じゃがとかかな」

完二「え、マジっスか。肉じゃがって唐辛子とか入れるもんなんスか?」

有里「ま、まぁ入れても……いいんじゃない?」

完二「蜂蜜とか酢とか、あとなんつーんスか?あの、ほら。食器洗う時とかに使う粉」

鳴上「重曹か?」

完二「そうそう、それっスよ。それとか用意してたみたいっスけど」

有里「……いやな、よかんがする」

陽介「へぇ、奇遇だな。俺もだよ」

鳴上「山岸さんがちゃんと監修してくれれば大丈夫だろう」

完二「信じるしかねェな……」

>……。

りせ「いやーこれは上手く出来たでしょ!」

雪子「山岸さん、どう思いますか?」

風花「う、うん。えっと……うん」

千枝「いや、でもまだマシな方だと思うんだけどなぁ」

直斗「何故そうなったのかわからない部分がありますがね……」

鳴上「あ、出来たみたいだ」

陽介「マジで肉じゃがだな。……肉じゃが、か?」

完二「三つくらいは肉じゃがなんスけどね」

有里「赤い肉じゃがと青……?い肉じゃがと、あとは一見普通の肉じゃがと……」

鳴上「あれ、そういえばアイギスさんは?」

風花「一口ずつ味見するって言って、今機能不全に……」

有里「……どれを食べるか、じゃんけんで勝った人から選ぼうか」

りせ「あ、それテレビの企画みたーい!じゃあ、誰がどれ作ったか内緒ね!」

鳴上「行くぞ……最初はグーだ」

陽介「お、おう。ぜってー負けねぇ!つーか負けらんねぇ!」

完二「っしゃオラァ!行くぜ!」

「最初はグー!ジャン、ケン……ポン!」

鳴上「トップだ!」

陽介「くっそぉ!まぁ、まだだ!」

完二「見た目的にセーフティなのが後二つは残る計算っスからね!」

有里「さぁ、選んで」

鳴上「これだ」

>普通の肉じゃがだが、他の物と違い刻んだ生姜と千切ったこんにゃくが入っている。

りせ「さーて、誰のでしょーか!」

陽介「りせちーのじゃねーな」

完二「それは間違いないっスね」

鳴上「いただきます……ん?」

有里「どうかしたの?」

鳴上「いや、美味い。美味いぞ、これ」

風花「ありがとう。それ、私のね」

陽介「ぐっわあああやられた!大本命抜かれちまったよおい!」

風花「変にアレンジするのもどうかと思って、シンプルにしてみたんだけど……」

鳴上「美味しいです。よく味も入ってるし」

風花「先生役が美味しくなかったら悲しかったから、美味しく出来て良かった」

陽介「っしゃ次行くぞ次!次には抜けたい!」

完二「せーの、最初はグー!」

有里「ジャンケン……ポン」

完二「もらった!次俺ェ!」

陽介「ジャンケン弱え俺!」

完二「えーと、でも後肉じゃがらしい肉じゃがは二つか。どっちにすっかな……こっちだ!」

直斗「あっ……」

りせ「あ、こら!反応したらわかっちゃうじゃん!」

陽介「ってことは」

完二「直斗のか、コレ」

直斗「失敗はしてないはずですけど……自信は無いので、おすすめは出来ませんよ」

完二「いや、これでいい。つーかこれがいい。もらうぜ」

直斗「は、はい……どうぞ」

完二「……うん、美味ェ。なんつーんだ?シンプルな味っつーか。だからこそ美味ェっつーか」

直斗「良かった……お粗末さまでした」

陽介「俺思ったんだけどよ。今山岸さんと直斗のが消えたわけだな」

有里「となると、残りはりせと里中さんと、天城さんのになるのかな」

千枝「……」

陽介「わかった。俺も男だ。有里、先に選べよ」

有里「いいの?」

陽介「よく考えりゃ、あいつらの料理知らねんだもんな。そんなんで選べったってわかんねえだろ。だから、俺が犠牲になる」

りせ「犠牲って何よ犠牲って」

有里「陽介……ありがとう」

完二「つっても、どれ行くのが正解なんスかね……」

鳴上「事前情報を知らずに行くなら、まず見た目が普通の……」

有里「僕は、これをもらうよ」

陽介「有里!お前、それ……」

有里「良いんだ。僕の為に陽介が苦しむ事は無い。僕はこの……青い肉じゃがを食べる」

千枝「私の」

有里「え?」

千枝「それ、私のだから……嫌なら、食べなくてもいいよ。いろいろ失敗しちゃったし」

有里「そう。でも食べる」

千枝「あ、だからっ!」

有里「……これ、見た目がどうしてこうなってるのかわからないけど、ちゃんと肉じゃがの味はするね」

千枝「……っ、私も、わかんないの。何でかこんな色になっちゃって」

有里「見た目は独創的だけど、味は悪くない。美味しかったよ」

千枝「そんな、気ぃ遣ってもらっても……」

有里「いや、本当に。ほら」

完二「もごっ!何しやが……ほんとに肉じゃがじゃねえか……」

陽介「逆に不思議だな……」

千枝「……」

りせ「じゃあ花村先輩も選んじゃって!ほらほら!」

雪子「私、今回はちょっと自信あるんだ。どうぞ」

陽介「……天城を信じて!こっちだ!」

りせ「ちょっとぉ、何で私のが残るわけ?」

完二「……見た目の問題じゃねえか?」

陽介「いただきまー……うっ」

鳴上「どうした陽介!」

陽介「苦ぇ!なんでだ、すげえ苦ぇよ!科学的な苦さだよこれ!」

雪子「あれ?おかしいな……」

風花「私が見てない間に、重曹入れちゃったみたいなの……」

完二「アレほんとに肉じゃがに使ったんスか!」

りせ「むー、残った私のは全員に食べてもらうからね!ほら、ありがたく食べなさいよ!アイドルの手料理!」

有里「見た目が辛い」

鳴上「匂いも辛いぞ」

陽介「つーか辛ぇよ」

完二「どう考えても辛ェだろ」

りせ「いいから!ほら!」

>……。


【堂島宅】


鳴上「痛いな」

有里「痛いね」

堂島「どうした、二人とも。マスクなんかして」

有里「空気の流れが沁みるんですよ」

堂島「……?そうか。ああ、二人ともニュース見たか?」

鳴上「いえ、今日は」

堂島「折角の連休なんだが、明日は雨だそうだ。明後日までは続かないって話だが、夜まで降るってよ。出掛けるにしても外で遊ぶのは無理だな」

鳴上「雨、ですか」

有里「わかりました」

堂島「悠は雨男なのかねぇ。ま、気になるなら自分達でも確認しとけ」

有里「わざわざありがとうございます。後で見てみます」

>明日、雨が降るらしい。

>それも夜まで……

>明日は、忙しくなりそうだ。

前向き後ろ向き。
仲違いもあるさ、人生だもの。

そして雨が降る。

というわけで本日分は終了。
では、また後日。

遅くなりました。

一途である事は美点ですが、以前好きだった人をずっと好きで居続ける事は賢く無いし幸せでもないと思います。
忘れるのではなく、思い出にしてしまう事も生きていく上で必要な事で、そういう事が出来るって事が大人になるって事だと思います。
そうやって思い出にしたはずの人がある日帰ってきたら、どれ程迷う事でしょうか。
飲み込んだ想いが胃液のようにせり上がり、どこかに吐き出さないと破裂してしまいそうになる。
そういう悩みとか、いろいろあるんじゃないかな。
自分にはわかりませんが。

さて、本日分。



【2012/5/5(土) 雨 天城屋旅館】


陽介「降っちまったなぁ、雨」

鳴上「そうだな……」

完二「折角先輩が来てくれてんのによぉ。空気読めっつーんだよ天気もよ」

直斗「天気は仕方ないですよ……それより、問題は今晩です」

有里「だね。恐らく、またテレビにタルタロスが映るだろう」

雪子「また突入だね」

鳴上「今回はどうする。誰か体調が悪いとか……」

千枝「あー、私、無理かも」

陽介「なんだよ、元気が取り得じゃねえのかよ里中」

千枝「うっさい。アレって、色々違うけどマヨナカテレビなんだよね?」

直斗「恐らくは、ですがね。まだ誰のシャドウも出ていないからわかりませんが」

千枝「だったら、やっぱり無理だわ。ごめん、今日は外して?」

有里「……仕方ないね。じゃあ今日はどうしようか」

鳴上「俺は行く。有里はどうする」

有里「僕も行こう。と、なると後二人かな」

りせ「……ごめん、私も今日はパスさせてもらうね」

完二「あんでだよ?どっか悪いのか?」

りせ「いや、そういうんじゃないけど。ちょっと、さ」

陽介「どうしちゃったんだよ皆……」

風花「りせちゃんの役目は私がするから、心配しなくていいよ」

りせ「ごめんなさい、迷惑かけて。じゃあ、お願いしますね」

雪子「じゃあ私も今日のところは……」

直斗「……ああ、なるほど。では、僕も」

完二「どうしたっつーんだよ皆!何かあんのかよ!あるんだったら言えって!」

雪子「えっと……ごめん、今は言えない。いつか、ちゃんと話すから」

陽介「……まぁ、しゃーねーか。だったら俺行くぜ」

完二「俺も行きますよ。女共は何か妙な空気だしよ」

アイギス「私は……すみません。私も今日は……」

鳴上「アイギスさんも……?」

有里「まぁ、いいじゃないか。仕方ないよ……今日は僕達で行こう」

>何か不穏な気配だ……。

>とにかく、準備をしなければ……。

>夜、ジュネスに集まろう。



【同日深夜 ジュネス内フードコート】


陽介「っしゃ!そんじゃ行きますか!」

鳴上「準備はいいか」

完二「いつでもこいっスよぉ!」

有里「前回の感じだと、道中は余裕があると思う。だから今日は二層を攻略してしまおう」

風花「無理はしないでね」

鳴上「それじゃ、行くぞ」

>テレビの中へ入った……。

風花「……」

有里「さてと。行こうか」

クマ「うおおおおおお!センセー!」

鳴上「このパターンはっ……危ないっ!」

>着ぐるみのタックルをすんでの所でかわす。

クマ「いたたた……センセイしどいクマ……」

陽介「おお?クマじゃねーか!ほんとにこっちにいたんだな!」

クマ「おお!?よーチャンクマ!元気だったクマか!?」

陽介「こっちの台詞だっつの。まぁ元気そうで良かったぜ!」

クマ「あ!あん時のオネエタマもいるクマ!」

風花「こんばんわ、クマ君」

完二「え、いつ知り合ったんスか」

風花「前にちょっとね」

鳴上「そういえば、前回の探索じゃいなかったな。どうかしてたのか」

クマ「寝てたクマ」

陽介「そうかよ……そうだ、クマ。お前も来るか?」

クマ「どこ行くクマ?」

陽介「あそこだよ、タルタロスってヤツ」

クマ「え!い、嫌クマ!あそこすっごい怖いクマ!クマ行きたく無いクマ!」

完二「怖いって……どうしたよ、テレビん中だったらお前の庭みてーなもんだろ」

クマ「ちゃうクマ!ここ、いつもの場所じゃないクマ。特にあの高いの、とんでもない匂いするクマ」

有里「どういうこと?」

クマ「怖いモノ近付いて来てるクマ!ていうかアンタ誰クマ?」

鳴上「俺達の新しい仲間だよ。湊、こいつはクマ。テレビの中に住んでる……」

有里「話だけは聞いてたよ。そうか、君が……」

クマ「クマはクマクマ」

風花「怖いモノって、どのくらい近付いてる?」

クマ「見りゃわかるクマ!あれクマ!」

>クマの指差す先には煌々と月が輝いている。

有里「やぁ、久しぶりだね……綾時」

鳴上「綾時……?」

有里「ちょっとした知り合いさ……でも、確かに月がかなり大きく見えるね」

クマ「アレ、ちょっとずつ近付いて来てるクマ」

風花「前回見た時から比べるとかなり接近してるみたい」

クマ「クマよくわからんけどわかるクマ。アレが、あの高いののテッペンにかかった時、凄い事んなるクマ!」

有里「タイムリミットはそこか。……なら、急ごう。あの高さならまだかかりそうだし」

風花「一応、今の高さ覚えとくね。……それじゃ、サポートします。気をつけて」

陽介「今度こそ行くぜー!クマ、お前は怖えなら留守番しとけ!」

クマ「言われんでも留守番するクマ!」

完二「っしゃ!やったらァ!」


【第二層】


陽介「確かに、一階前とは雰囲気違うなぁ……これが階層の区切りってわけね」

有里「そう。っと、早速来たよ」

完二「サクっと始末しちまいましょうや!」

鳴上「ああ、行くぞ!」

>……。

完二「なんつーか、やっぱたいした事無いっスね」

鳴上「だが、まだまだ上はある。油断するなよ」

陽介「ヤル気だねぇ、あの二人……なぁ、有里」

有里「ん?」

陽介「お前さ、里中と何かあった?」

有里「……何も?」

陽介「ちっ、普段とんでも無く読み辛い顔してんのに、こういう時は顔に出てんだよ」

有里「陽介には関係無い話だよ」

陽介「そりゃお前らの間に何があろうと俺ぁ知ったこっちゃねえよ。けどよ、今日の空気。あんな風になんのはごめんだっつってんの」

有里「……」

陽介「だんまり決め込むのもいいけどよ。俺らそんなに頼りねぇか?」

有里「いや、そうじゃなくて」

陽介「そうだっつってんだよお前は!もっと俺ら信用しろよ!頼れよ!」

完二「ちょ、どうしたんスか二人とも」

鳴上「陽介」

陽介「止めんな!前から気になってたんだよ。何でもかんでも自分ひとりでやろうとしやがってよ。この事件だって、締めんのは自分だと思ってんだろ?」

有里「……」

陽介「黙ってねぇで何とか言えよ。気にいらねぇんだよ!」

有里「すまな……」

陽介「謝れっつってんじゃねぇよ!!俺は!お前が!俺らの事を物の数にも思ってねぇんじゃねえかって!それが気に入らねぇっつってんだ!」

鳴上「やめろ、陽介。湊も、黙ってないで正直に言ってくれ。お前はどう思って黙ってるんだ」

有里「……僕の問題は、僕が解決する。それだけだ」

陽介「だからっ……!?」

完二「うわ、先輩!それマズイっスよ!」

>有里の体が宙に舞った。

有里「っ……酷いな。シャドウにやられるよりよっぽど痛かったよ」

鳴上「良くわかった。陽介の言いたい事も俺の言いたい事も何も伝わってないのがな」

陽介「相棒……」

鳴上「湊。聞いてくれ。お前のその判断は、お前なりの気遣いなんだろう」

有里「……そうとも言うね。君達に迷惑をかけたくない」

鳴上「それが間違ってるんだ。……陽介」

陽介「何だよ、いいとこ持って行ってよ。あのな、有里。お前がそう思ってんのは薄々気付いてたよ。けどな、それが俺らをちゃんと見てねえっつってんだわ」

有里「どういうこと?」

陽介「だぁから。そのくらいの事で迷惑だなんて思うわけねえだろ。お前や相棒ほど、他人の荷物抱えてはやれねえけどよ。仲間の重たいモンくらい一緒に持ってやれるっつーの」

有里「でも……」

陽介「でももクソも無ぇって。つーかさ、仲間の為に何かすんのは迷惑って言わねぇと思うんだよな。お前はその辺履き違えてると思うんだわ」

鳴上「それが、仲間だし信頼ってものじゃないのか。湊が今までどうやって生きてきたかはわからない。けど、俺達はそう思うんだ」

完二「ったくよぉ。アンタら、そんな野蛮なやり方しか知らねェのかよ」

有里「……ごめん」

陽介「わ、わかりゃいいんだよ。それより、大丈夫か?漫画みてーな吹っ飛び方してたぜ」

有里「痛かったよ、凄く」

鳴上「悪かった。つい、な」

有里「いや、これは自戒として受け入れよう。みんな、悪かった……確かに、僕と里中さんの間に少しあったのは事実だ」

陽介「まぁそりゃわかってんよ。で、どうしたんだよ」

有里「でも、これは僕と里中さんの問題だと思う。皆の手を煩わせるとか、そういう事じゃなくて。僕が、解決したい。いいかな?」

陽介「最初っからそう言や良かったんだよ……」

完二「なんつーか、殴られ損っスね」

鳴上「……すまん」

有里「いいから。さ、先へ進もう」

風花『……大丈夫?』

陽介「うわっ、そうだ山岸さん聞いてたんだった!」

鳴上「聞かれてるとわかったらちょっと恥ずかしくなるな」

風花『ご、ごめんね。いつ声かけようかと思って……』

完二「さっさと行きましょうや。有里サンもわかってくれたみてえだし」

鳴上「そうだな、先は長そうだ。行こう」

>……。


【39F】


陽介「流石に……疲れてきたぜ……」

完二「まだっスかぁ、三層はぁ」

有里「お疲れ様。この上に……恐らく、番人の大型シャドウがいる」

風花『うん、上階に大型シャドウの反応感知。間違いないみたい』

鳴上「よし……深呼吸三回。いくぞ」

陽介「っしゃあ、終わらせてやんぜ!」

完二「やっちまいやしょうぜ!」

有里「ふぅっ。さ、行こうか」


【40F】


鳴上「ここも、やっぱり大部屋だな」

有里「迷路を回るよりは随分楽だと思うけどね」

陽介「有難えもんだよな」

完二「あ?ありゃなんだ……?」

>マネキンだろうか……。

陽介「人形が、三つ?」

完二「真ん中が女で、横の二つが男って感じっスね」

鳴上「攻撃か?」

有里「風花、シャドウは?」

風花『その辺りにいるはずなんだけど……』

陽介「っと、こいつか!」

>空中に浮かぶ巨大な手首が三つ現れる。

鳴上「なんだ……?」

>手首はそれぞれ人形を掴むと、何やら動かし始めた。

陽介「……こっちに手振ってんぜ」

有里「これ、まるでアレみたいだね」

完二「ああ、人形劇みたい……っスね」

>男の人形がそれぞれ別の方向を向いて立っている。

>女の人形は両者の間をうろうろと歩き始めた……。

完二「これ、もしかして三角関係ってヤツっすかね」

陽介「そうか?それだったら男同士にも何か動きあるんじゃね?」

鳴上「確かに、これは女の方がうろうろしてるだけだな」

>女の人形はどっちつかずうろうろし続けている……。

完二「はっきりしねェなぁ。どっちかに決めりゃいいのに」

陽介「って、何入れ込んでんだよお前」

>女の人形が片方の男に抱きついた!

陽介「お!そっちにすんのか!」

完二「アンタも見入ってんじゃねェか」

鳴上「……見ろ!」

>抱きつかれ無かった方の男の人形が、関節毎にバラバラになり崩れていく……。

陽介「うわぁ」

完二「ひっでェ話だわ……」

風花『……はっ、う……』

有里「風花?」

>人形を持っていた手がそれぞれの人形を放した。

>全ての人形が同じように崩れ、その残骸を手は叩き潰した!

鳴上「来るぞ!」

有里「風花、解析お願い」

風花『あ、えっ!』

陽介「三体とか聞いてねぇって!」

>手の一つから炎が巻き起こる。

>他の一つからは冷気が吹き荒ぶ。

>残りの一つからは電撃が迸る。

>三体はそれぞれ別の属性を使うようだ。

鳴上「右の火のヤツは湊!頼んだ!」

有里「電撃のヤツは陽介、お願い」

完二「俺と先輩は冷たいヤツっスね!」

陽介「オッケー、真ん中のだな!いや、待った!今右と入れ替わったぞ!」

完二「あぁ!?じゃあ俺はどっちやりゃいいんだよ!」

鳴上「落ち着け!」

有里「風花、リアルタイムで属性ごとに指示を……」

風花『あ、はい、今解析を……』

鳴上「詳しい解析は後回しでいいです!属性だけ伝えてください!」

風花『えっ、あの、わ、私……』

陽介「どわっ!こいつ火のヤツじゃねえか!」

完二「先輩!何やってんスか!」

有里「風花!」

鳴上「山岸さん!」

風花『あ、アナライズが……まだ……』

有里「……悠」

鳴上「ああ。山岸さんの様子がおかしい。俺達に出来る事は……」

有里「弱点とか関係無しに、目の前の敵を倒す事」

鳴上「陽介!完二と協力して戦え!」

有里「二人がかりで一体を仕留めて」

陽介「おお?おうよ!行くぞ完二ィ!」

完二「うっしゃ喰らいやがれェ!バスタアタァック!!」

鳴上「さて、俺達は」

有里「一対一だね」

鳴上「信用するぞ」

有里「同文。行こうか」

鳴上「ああ!」


【タルタロス エントランス】


風花「私……私は、そんな……」


【40F】


陽介「そろそろ落ちろっつーの!でぇりゃあ!」

完二「うるぁあ!」

>手が崩れて消えていく……。

陽介「っし片付いた!相棒は!?」

鳴上「ジオダイン!」

>電撃に包まれて、もう一つの手も消滅した。

完二「流石先輩だぜ!」

鳴上「そっちも片付いたか……ぐっ」

陽介「どうした!?どっかやったか!?」

鳴上「かすり傷だ。それより湊は……」

タナトス「グォオオオオオオオオ」

完二「終わってやがる……」

陽介「すげ……服も乱れてねぇよ」

鳴上「流石に湊は頭一つ抜けてるな……」

有里「悠、陽介、完二。無事で良かった」

鳴上「そっちもな。……さて、どうしたものか」

陽介「階段は上がれるようになってんぜ。帰ってもいいんじゃねえか?」

有里「皆疲れてる。帰る事にしようか」

鳴上「そうだな。山岸さん、大丈夫ですか」

風花『あ、その、私……ごめんなさい。大丈夫、です』

有里「帰り道のナビは出来るかな?」

風花『そのくらいなら。役に立たなくてごめんなさい……』

陽介「ま、調子悪い時くらいあるっしょ!そんな気にする事ないっすよ!」

完二「出来たらこういうデカイのとやる時ゃ勘弁してもらいたいっスけどね」

風花『ご、ごめんなさい……』

完二「じ、冗談っスよぉ!」

有里「それじゃ帰ろう。今日はここまでだ。お疲れ様」


【タルタロス前】


クマ「みんな!無事だったクマか!?」

陽介「この野郎ほんとに最後まで留守番してやがったな」

クマ「クマ行かんって言ったクマ。ていうか行けんクマ」

完二「行けんってどういうことだよ」

クマ「あん中にいると、クマおかしくなりそうクマ……だから入れんクマ」

鳴上「特別な何かがあるんだろうな……クマ、無理に入るんじゃないぞ」

クマ「やっぱりセンセイはわかってるクマ!」

陽介「俺はわかってねーって言いたいのかよ!まぁいいや、クマ、帰んぞ!」

クマ「……それも出来んクマ」

陽介「何でだよ、んなに危ねーなら出てくりゃいいじゃねーか」

クマ「何でかわからんけど、あの高いのから離れられないクマ……ほんとはクマも外に出たいクマ……けど、離れたらいかん気がするクマ……」

有里「そう感じるのなら、理由があるんだろう。陽介、仕方ないよ」

陽介「……じゃあ、無茶すんなよ。また雨降ったら来るからよ」

クマ「わかったクマ!クマ待ってるクマ!」

鳴上「じゃあ、山岸さん。お願いします」

風花「……」

鳴上「山岸さん?」

風花「あっ、は、はい。出口作ります」

有里「……?」


【ジュネス内フードコート】


陽介「ふぃー何とか終わったー。腰打ったぜくそ……」

完二「しっかしまだまだ上があるって、あの塔どんだけ高いんだよ……ウンザリするぜ」

有里「まぁそう言わず。攻略しないと色々困る事になるんだよ」

鳴上「やるしかないな」

千枝「……お帰り」

陽介「あれ、里中じゃん。お前今日来ないっつってたのにどうしたんだよ」

千枝「うん。ちょっとね。有里君、今話いいかな」

風花「……千枝ちゃん。大丈夫なの?」

千枝「はい。心配しないでください」

風花「ならいいけど……」

千枝「じゃあ、有里君借りるね。皆はもう帰って」

陽介「そりゃ帰るけどよ。お前本当に大丈夫かよ?」

千枝「だーいじょぶだって。花村も言ってたじゃん。元気が取り得だーって」

陽介「……ま、そりゃそうか。じゃあ帰るぜ。有里はちゃんと送っとくように」

完二「普通それって男が女にするとこなんじゃねースか?」

千枝「あはは……ほら、鳴上君も疲れたっしょ?帰って寝た寝た!」

鳴上「ん、ああ……。山岸さん、送ります」

風花「あ、いい。私、一人で帰れるから。ありがとうね」

鳴上「そうですか?それじゃ……里中、あんまり無理すんなよ」

千枝「大丈夫だってのに、皆心配性なんだから。じゃ、おやすみ!」

有里「……で、話って?」

千枝「うん。有里君、また私の事里中さんって呼んでたよね。どうして?」

有里「呼び捨ては馴れ馴れしいかなと思ってね」

千枝「そっか……今日ね、皆でテレビ見てたんだ」

有里「皆で?」

千枝「そ。今日参加しなかった皆で。有里君たちが戦ってるのも見てたよ」

有里「今日のは映ってたのか……」

千枝「人形劇、どう思った?」

有里「人形劇?……ああ、あれは……別に、何とも」

千枝「そっか。あのさ、昨日した話、覚えてる?」

有里「覚えてるよ」

千枝「あの話さ。もしかしたら違うのかもって思って。もっかい聞いても同じ答えなのかなって思って」

有里「……どうして?」

千枝「あの人形劇見て思ったの。選ばれなかった男の人形が崩れちゃったでしょ。あ、現実にもこういう事あるんじゃないかなって」

有里「現実の人間は崩れたりしないよ」

千枝「肉体的にっていう意味じゃなくて、精神的に?っていうのかな。仲間とか友達との関係もいろいろ変わるだろうし。その辺を心配して、あんな事言ったのかなって」

有里「……」

>千枝に手を握られた。

千枝「冷たい手してるね」

有里「体温が低くてね」

千枝「知ってた?手が冷たい人は心があったかいんだって」

有里「へぇ」

>千枝は泣きそうな顔をしている。

>そんなに見ないでくれ。

>……お願いだから、そんな目で見ないでくれ。

>氷も溶かしそうな視線で僕を見るな。

>決心が氷解する。矜持が揺らぐ。

>僕は……

千枝「こうして、手を握ってるだけですごくドキドキして、だけど落ち着く人なんだよ。それでも、やっぱり勘違いなのかなぁ」

>やめてくれ。

>これほど言葉を出すのが辛いとは思わなかった。

>喉は他人の物のように震えようとしない。

>舌はからからに渇いて上顎にくっついて離れない。

>それでも、言わなければならない。

有里「勘、違い……だよ。きっと、その男は君が思っているような、そんな奴じゃない。勘違い、気の迷いだ」

千枝「そっか……」

>言った途端、足から力が抜けそうになって危なかった。

>虚無感が全身を包み、目の前が暗く落ち込んだ。

>ユルシテクレ。

>頭の中で一度だけ謝って、また平静を取り繕う事にした。

千枝「……先に謝っとく。ごめん」

>ぱぁん。

>音が強烈に響いて、その後左頬が熱くなった。

千枝「私が好き勝手言って、私の勝手で叩いた。本当に、ごめん。もうしない。話はそれだけだから……おやすみ」

>千枝は踵を返すと走り去った。

有里「……今日は殴られてばかりだな」

>口から出たのは、千枝を呼び止める為の言葉でも、謝罪の言葉でもなく、ぼんやりとしたからっぽの言葉だった。

>その声は、空気に混ざってその場で消えた。

>千枝との軋轢が決定的な物になった。

>『No.11 剛毅 里中千枝』のコミュニティがブロークンになってしまった。

マヨナカテレビ。
人の見たくない部分を映すテレビ。
最悪の想像を映すテレビ。
そこは、そういう場所。忘れてたけど。

女性陣のボイコットは、別に女の子の日とかじゃありませんでした。

というわけで短くなったけど本日分は終わり。
では、また後日。

NTRやめてよ!心が痛くなるでしょ!

というわけで本日分。



【2012/5/6(日) 曇り 堂島宅】


>GWも今日で終わりだ……。

堂島「あっという間だったな」

鳴上「ええ、本当に」

菜々子「お兄ちゃん帰っちゃうんだよね……」

鳴上「ごめんな。一学期が終わったらまた来るから」

菜々子「大丈夫だよ、待ってるから。がんばってお勉強してきてね」

堂島「何時に出るんだ?」

鳴上「なるべく遅くに出ようと思ったんですが、明日の準備もあるし昼には出ないと……」

堂島「……そうか。道中、気をつけろよ」

鳴上「はい。それから……」

有里「僕も悠について行こうと思うんです」

堂島「湊もか。どうしたんだ」

有里「向こうに、僕の知人がいるようなので……」

菜々子「湊お兄ちゃんも行っちゃうの?」

有里「うん。ただ、向こうの知人に会った後も、また帰ってきてもいいでしょうか。……堂島さんには、迷惑をかけますが……」

堂島「何度も言わせるな。お前はもう身内だ。お前がいないと菜々子も寂しがるし……洗濯も掃除も誰がやるんだ」

有里「……ありがとうございます。菜々子、僕はすぐに帰ってくるから。その間だけ堂島さんをお願いするよ」

菜々子「お父さんの事なら心配しないで、菜々子ちゃんとするから」

堂島「おいおい、子供みたいな扱いはやめてくれ。二人とも、気をつけてな」

鳴上「はい。じゃあ、これから友達に会ってきます」

堂島「ああ。また駅まで見送りに行くよ」

菜々子「菜々子も行くよ!」

有里「ありがとうございます。じゃ、行こうか、悠」



【ジュネス内フードコート】


陽介「おう、集まってんな」

有里「あ、天城さんまで来てくれたんだ。忙しいって言ってたのに」

雪子「今日で連休も最終日だし、ちょっと時間できたから。気にしないで」

完二「はぁーもう帰っちまうんスねぇ……もっと時間ありゃ良かったのに」

直斗「こればかりは仕方ありませんね。最後まで僕達といてくれる事に感謝しましょう」

りせ「あーあー、次は夏だっけ?それまで待てないー」

鳴上「そういえば、里中はどうしたんだ」

雪子「千枝は……その……」

りせ「今日はちょっと来辛いのカモ……」

有里「……」

鳴上「何かあったのか?」

有里「実は」

風花「遅くなってごめんね……あれ、どうかしたの?」

アイギス「何やら空気が重い気がします」

千枝「どしたのよ、遅刻したから怒ってんの?」

雪子「千枝!来たんだ!」

千枝「な、何よ。鳴上君が帰っちゃうんだからそりゃ来るでしょ」

鳴上「あ」

有里「そういえば」

風花「え?」

有里「言ってなかったんだっけ、皆には」

鳴上「そういえばそうだったな。……ていうか、桐条さんにも言ってないぞ」

有里「電話、早く」

鳴上「あ、ああ。すぐに連絡しよう」

陽介「何だよ二人で。何かあんの?」

有里「詳しい話は後でする。命がかかってるんだ」

完二「命が!?」

鳴上「あ、もしもし。鳴上です」

美鶴『桐条だ。何かあったのか?』

鳴上「ええと、連絡が遅くなったんですが……」

有里「代わって」

鳴上「ん?ああ……すみません、とにかく一度電話代わります。詳しい話はそっちから」

美鶴『何だかわからないが、手短に頼む』

有里「手短でいいの?」

美鶴『みな……!ど、どうかしたのか?』

有里「うん。僕も帰ることにしたから」

美鶴『な!?そ、そうか。それは良かった。なら部屋を用意しないと』

有里「いや、それはいい。帰るといっても数日だけでいいんだ。その間はよろしく」

美鶴『何?ではまたそっちに戻るのか?』

有里「そのつもり。悠……鳴上がそっちにいなきゃいけないわけだから、僕はこっちから事件に挑もうと思って」

美鶴『…………』

有里「美鶴?」

美鶴『いや、なら仕方ないな。では、数日こちらに滞在する事になるのか?』

有里「そうするよ。その間に、皆に顔を見せて……こっちで知った事と今の現状を話す」

美鶴『そうだな。そうしよう。……時間に余裕があれば、私にも付き合ってくれ』

有里「今の僕は特に何の身分も無いから時間はたっぷりある……付き合うよ、いくらでも」

美鶴『そうか!……ええと。こちらに来るという事は、皆に伝えても構わないな?』

有里「うん。もう隠しても仕方ないし」

美鶴『……君は今、八十稲羽にいるんだったな?』

有里「そうだけど、どうかした?」

美鶴『聞き覚えのある名前だと思って。そちらの仲間達というのは高校生か?』

有里「そうだね」

美鶴『ということは、八十神高校の生徒か』

有里「良く知ってるね」

美鶴『去年、月光館に研修旅行で訪れたのが八十神高校の生徒だったんだ。その時、伏見に演説文を考えるのを手伝ってくれと……いや、今はそれはいいか』

有里「去年の何年生?」

美鶴『一、二年生だったと思うが』

有里「じゃあ多分、皆入ってるね」

美鶴『ふむ……よし、ではこうしよう。八十神高校には、研修と交流という名目を通達しておく。一応授業は受けてもらうが、そちらの仲間達から何人かこちらに連れてきてくれ』

有里「いいの?」

美鶴『お互いを知る事が交流の第一歩だろう。まぁ、来たがらないようなら構わない。飽くまで立候補者だけだが』

有里「世話をかけるね。じゃあ、話しておくよ」

美鶴『人員が決まったら学年と名前を教えてくれ。その時点から手続きに入る……もっと早くに言ってくれていれば、余裕もあったのだがな』

有里「こっちでもいろいろあってね。それは本当に申し訳ない。お詫びに何かしようか?」

美鶴『気にするな。このぐらい何の手間でもない。では、今日帰ってくるんだな?』

有里「うん、夜にはそっちに着くと思う」

美鶴『では、鳴上達と一緒に気をつけて帰ってきてくれ……待ってる、から』

有里「了解。じゃあ悠に電話戻すね」

鳴上「ん、というわけです。連絡遅くなってすみません」

美鶴『いや、いいさ。良くやってくれたな。君に任せて正解だった……君も、気をつけて帰ってくるように』

鳴上「はい。それじゃ、失礼します」

陽介「聞こえてんぞ」

雪子「有里君も一緒に行くんだ」

鳴上「ああ。向こうには知り合いも多いし……顔を見せておくべきだと思って俺が言った」

有里「というわけだから僕も数日留守にするよ。その間、雨が降ってもテレビには入らないようにね」

風花「私も初耳なんだけど……」

アイギス「私もです」

鳴上「すみません、実は初日からそういう事に決めてはいたんですが」

有里「忘れてたね、言うの。……それから、君達は皆八十神高校の生徒で良かったよね?」

完二「そうっスけど、それがどうかしたんスか」

有里「去年、港区に修学旅行で行ったんだって?」

鳴上「ああ。二学年合同でな」

有里「もう一回行きたい人ー」

陽介「は?」

雪子「ええ?」

有里「桐条財閥のご令嬢で、勿論月光館にもかなりの影響力がある人がさっきの電話の相手でね。君達が望むなら、研修旅行って名目で連れて来ても良いって言われてる」

陽介「うおーマジかよ!都会!都会!」

直斗「急な話ですね……僕は遠慮させてもらいます」

完二「あー、俺もちっとそういうのは……」

陽介「何だよノリわりーな!都会だぜ!?」

完二「アンタと違って真面目に家の手伝いとかやってんだよ俺は」

直斗「流石に急過ぎて予定が……」

陽介「じゃあ、天城!お前どうするよ!」

雪子「私も、急な話だし……完二君と同じで家の事とかあるから」

りせ「同文……私も行きたいんだけどね……あ!」

千枝「な、何?何でこっち見てるの?」

りせ「いや、チャンスじゃないかなって思って」

千枝「チャンスったってさ……」

りせ「ああもう、女子集合!こっちでちょっと話そ!」

鳴上「……何ですか、あれ」

風花「ちょっと、ね」

アイギス「女の子には色々とあるのです」

陽介「なー寂しい事言わずに行こうぜー」

完二「無理なモンは無理!」

有里「もうちょっと早くに言っておくべきだったね」

陽介「全くだぜ……」

雪子「……だから、ね、がんばって?」

陽介「お、会議終わった」

りせ「里中先輩がついて行きたいそうでーす」

直斗「……まぁ、半ば無理やりですが」

千枝「……ごめん、よろしく」

有里「行きたく無いなら無理に行かなくても」

千枝「いや、行く。ってことで、お世話になります!」

風花「はい、またしばらくよろしくね」

アイギス「ファイトですよ!」

鳴上「何だかわからないが、陽介と里中か。有里、連絡頼む」

有里「うん。二人とも三年だよね」

陽介「おう!で、いつ帰るんだっけ?」

鳴上「これから」

千枝「だよねー」

陽介「こうしちゃいらんねえ!俺帰って準備してくるわ!」

千枝「私も、色々準備してくるね。また後で!」

りせ「有里さん、ちょっと」

有里「ん?僕?」

雪子「お話があるの」

直斗「……僕は知りませんよ」

有里「……話って?」

りせ「里中先輩の事。昨日、いろいろあったみたいですね」

有里「まぁ、ね」

雪子「ねぇ、正直に言って。有里君は千枝の事嫌いなの?」

有里「……」

雪子「絶対、本人にも他の人にも言わないから」

りせ「私たちにだけ、正直な気持ち教えてよ」

有里「好きだよ」

りせ「……聞いといて何だけど、複雑な気分かも」

雪子「その好きって、友達としての好き?」

有里「そうだね」

雪子「それが……その、恋人にしたいって好きに変わる事って、有り得ない?」

有里「有り得ないって話じゃない……と、思う」

りせ「……まぁ、後は本人に任せるしかないんじゃない?」

雪子「そうだね。私達が出来る事はもうない、か」

有里「やっぱり、気を遣わせちゃってるみたいだね」

雪子「当たり前です。あんなに元気無い千枝見たことないよ」

りせ「まぁね、色々あるのはわかるけど……多分、はっきり決着付けば、ね」

雪子「うん。吹っ切れると思う。千枝はそういう子だから」

りせ「だから、後はお任せします、有里さん!」

雪子「どんな形でも、ちゃんと答えてあげて?ああ見えて、すごく臆病なトコロあるから……」

有里「……努力は、しよう」

りせ「話はそれだけです!」

雪子「……ごめんね、変な事言って」

有里「いや……」

>彼女達に求められている事は、自分が今もっとも避けたい事だ。

>しかし……。



【八十稲羽駅前】


堂島「随分大所帯になったな」

鳴上「いろいろとありまして」

陽介「間に合ってよかったぜ……」

千枝「いやほんとに。危なかったよ」

風花「陽介君、荷物が多いんだよ」

アイギス「……笑えないですが」

有里「じゃあ、行って来ます」

鳴上「また来ます……菜々子も、またな」

完二「花村先輩、向こうで先輩達に迷惑かけちゃ駄目っスよ」

直斗「いくら先輩でも、流石にそこまで心配する事は無いでしょう……」

陽介「やめろよ、辛くなるだろ……」

雪子「千枝、しっかりね」

りせ「里中先輩、がんばってー」

千枝「ちょ、やめてって。ほんとに」

菜々子「電車来ちゃったよ!」

鳴上「ああ、ほんとだ。それじゃ、お世話になりました!」

堂島「またな」

有里「すぐ帰ってきますから、あんまり菜々子困らせちゃいけませんよ」

堂島「はは。努力はするよ」



【電車内】


陽介「ああ、そういやコレ」

有里「僕に?」

陽介「おう。忘れてたけどよ、前にタルタロス登った時に言ったろ。俺のお古だけど」

有里「mp3プレイヤー……ヘッドホンもいいの?」

陽介「なんだ、イヤホンの方が好みなタイプ?」

有里「いや、ヘッドホン派。ありがとう」

陽介「とりあえず、俺セレクションで適当に曲入れてあっから。気に入らなかったら入れなおしてくれよ」

有里「うん。聞かせてもらうよ」

>……。

>風花はどこか気まずそうにしている。

>千枝はずっと景色を見ている。

>有里は音楽を聴いている。

陽介「遠いよな、やっぱりさ!来る時どのくらいかかりました?」

アイギス「あっという間でしたよ。ワクワクしてたら着いてしまいました」

陽介「アイギスさんって結構こういうの楽しむタイプっすか?」

アイギス「自覚は無かったのですが、どうやらそのようです」

>……陽介が無理に盛り上げようとしているが、ノっているのはアイギスだけだ。

>どうしてこうなった……。

>……寝よう。



【巌戸台駅前】


陽介「いんやぁ流石に距離あるなぁ。体パキパキだぜ」

鳴上「ええと、誰か来て……いたな」

美鶴「鳴上、有里、山岸、アイギス。お帰り。それから……君は以前会ったな。花村君だったか。それから、こちらが里中さんかな?ようこそ」

花村「お久しぶりっす!お世話になります!」

千枝「あ、は、初めまして。里中千枝って言います。よろしくお願いします」

美鶴「うん。長旅ご苦労、疲れただろう。車を用意してある。乗ってくれ」

>……。

陽介「……って、リムジンかよ」

千枝「運転手付きだったよ……」

鳴上「ちょっと慣れてる自分が嫌だ」

有里「心配しなくても、その内この世に驚く事は無いって思えるようになるよ」

風花「いや、それはそれでどうかと思う……」

アイギス「美鶴さん、今日は皆さんいらっしゃるんですか?」

美鶴「寮にはいるぞ。それから、花村に里中。君達の部屋だが……ホテルを用意してもいいが、どうする?」

陽介「ホテル……どのランクなんだろな、この場合」

千枝「あの、寮内に空き部屋とかってありませんか?無ければいいんですけど……」

美鶴「ああ、確かに寮に住めれば色々と都合がいいんだが……生憎と空き部屋は無くてな。相部屋でよければいくらか都合できるが」

有里「僕の部屋は今どうなってる?」

鳴上「俺が使わせてもらってるぞ」

有里「じゃあ、また一緒に寝るとしようか」

美鶴「狭くないか?」

鳴上「いや、俺は気になりませんし」

有里「同じく」

美鶴「なら、君達は二人であの部屋を使ってくれ。……とにかく、今日は寮の皆に花村と里中を紹介しよう。それから考えるか」

有里「相部屋になりたい人がいるかも知れないしね」

鳴上「気が合いそうな人もいるしな……なんとなく」

美鶴「そういうわけだ。まずは寮に来てもらおう」

陽介「ういーす!」

千枝「わかりましたー」

>……。

陽介「おー……なんつーか、アレだな」

千枝「お、趣がある?感じだよね」

美鶴「寮の建物がかなり古い物だからな……内装は普通だ、心配しなくていい」

有里「外観はこうだけど、中には凄い部屋もあるんだ。何故か一部屋だけ間取りの広い部屋が」

美鶴「よ、よせ。私だって好きであんな部屋にいたわけでは……」

天田「あ、帰ってきたんですね!お帰りなさ……」

有里「や、久しぶり」

天田「本当に、帰ってきてたんですね。有里さん」

有里「皆変わったなぁと思ってたけど、君が断トツだね」

天田「成長期ですから。お帰りなさい。今皆呼んで来ますね……?あの、そちらのお二人は?」

風花「以前鳴上君と一緒に戦ってた仲間なんだって。勿論、ペルソナ使い」

天田「ああ、例の……よろしくお願いします!」

陽介「元気いいな!よろしく!」

千枝「よろしくね」

美鶴「さて、それじゃ入ろう。天田、ラウンジに皆を集めてくれ」

天田「わかりました、ちょっと待っててくださいね」

>……。

岳羽「風花、お帰りー。どうだった?」

風花「うん。楽しかったよ、色々。お土産も買ってきたんだー」

コロマル「ワンッ」

アイギス「コロマルさん、ただいま帰りました」

真田「こいつらが例の……中々、頼もしそうな顔じゃないか」

美鶴「それでは正式に紹介する。彼等は以前鳴上と共に戦ったペルソナ使いだ。彼が花村陽介。彼女が里中千枝」

陽介「よろしく頼んます!」

千枝「えと、よろしくお願いします」

美鶴「そして……」

有里「僕だよ」

真田「……この目で見てもまるで信用できんな。本当に有里なのか?」

有里「僕もよくわかってないですけど、そうみたいですね」

真田「その人を食った態度も変わらずか。よく戻ってきたな」

岳羽「あの、さ。……まぁいいや。お帰り」

有里「ただいま、ゆかり」

美鶴「それぞれ自己紹介してやってくれ。もしかしたらこの中の誰かと相部屋になるかもしれない。数日間だけだがな」

順平「ういーっす、たっだいまー」

有里「あ、お帰り」

順平「おう、有里。今日は早えな」

順平「……ってうわぁ!なんでこいつがいんだよ!え、そんで誰君ら!?」

美鶴「……言っておいたはずだが」

順平「え、何がっすか?」

>……。

順平「最初はな、俺もテンション上がったよ。けどな、気がついたら女性陣みーんな有里の事目で追ってんの。やってらんねえって」

陽介「わかるっ!その気持ちわかります!」

真田「なるほど、カンフーをな」

千枝「ほとんど自己流なんで自慢できるような物じゃないですけど」

鳴上「皆、馴染むの早いな」

有里「似た者同士ってことじゃない?」

美鶴「さて、それではそろそろ二人の宿泊先を決めなければいけないんだが……どうする?」

陽介「俺!俺順平さんと相部屋がいいです!」

順平「おう!泊まれ泊まれ!がんがん泊まってけ!」

美鶴「両者良いようだな。里中はどうする?」

有里「美鶴の部屋だったら余裕あるんじゃない」

美鶴「まぁ、確かにそうだが。里中、それでいいか?」

千枝「あ、全然構わないです。よろしくお願いします」

美鶴「なら、荷物を運び込もう。GWも今日で終わりだ。皆それぞれ明日からの準備をして早めに寝るように。では、解散しよう」

岳羽「有里君、ちょっと話あるんだけどいい?」

有里「ん、構わないよ」

美鶴「あ、湊。私も話が……」

有里「どうかしました?」

美鶴「いや、また今度聞こう。私だけが君を独占する訳にもいくまい」

有里「そう?じゃあゆかり、話なら聞くよ」

岳羽「あ、うん。部屋、来てもらえる?」

有里「いいよ、行こうか」



【ゆかりの部屋】


岳羽「……聞いた時は、びっくりしたよ。帰って来たって、何で?って思って」

有里「僕のも良くわからないんだよね」

岳羽「そうなんだ。……ねぇ、有里君は、何で連絡くれなかったの?」

有里「ん?」

岳羽「一ヶ月くらい前から戻ってきてたって聞いた。なら何でかなって」

有里「……君達に、思い出させたくなかったからね」

岳羽「はぁ?何それ、どういう意味なわけ?」

有里「僕は消えた、終わったものとして、先を見て欲しかったから」

岳羽「相変わらずよくわかんないね、君は……。その自己満足で終わらせるとこも変わってない」

有里「そうかな?」

岳羽「そうだよ。私なんかあの後酷い目にあったんだからね。ていうか、酷い事しちゃったんだけど」

有里「……ごめん」

岳羽「謝れって話じゃないんだってば。相手の事考えすぎるのもどうなのかなっていうか。そういう事」

有里「ゆかりは難しい事を言うね」

岳羽「君がいない間に大人になったんだよ。三年もほったらかしてるから」

有里「そうだね、惜しい事をしたかな」

岳羽「大人になったんだよ。なっちゃったんだよ。君が帰ってこないから、私だけ」

有里「……」

岳羽「今更帰ってきてどういうつもりなの?忘れて、これからは前を向こうって思ったのに、今更」

有里「だから、何も言わなかったんだ」

岳羽「……なんて、ね。冗談」

有里「ゆかり、僕は……」

岳羽「あー、言わないで。真面目な話苦手だからさ。とにかくお帰り。それが言いたかったの」

有里「……ただいま。これからまたよろしく頼むよ」

岳羽「うん、よろしく。ごめんね、時間取らせちゃって。何日くらいいるの?」

有里「用事が無くなったら帰るけど……何か、色々あるみたいだから。一日や二日では帰らないかな」

岳羽「そうなんだ。その内私にも付き合ってよ、久しぶりにさ」

有里「うん、いつでも。それじゃ、おやすみ……また明日」

岳羽「……ばか。今更だよ、ほんとに」



【鳴上の部屋】


鳴上「よく考えたらベッド一つしかないぞ」

有里「布団……って、土足だよね、床はまずいか」

鳴上「……」

有里「……」

鳴上「いや、流石にそれは」

有里「僕は平気だけど」

鳴上「狭いぞ」

有里「くっつけば平気じゃない?」

鳴上「暑くないか?」

有里「僕、体温低いよ」

鳴上「……」

有里「……」

鳴上「どうする」

有里「美鶴の部屋にでも……いや、里中さんがいたっけ。流石にまずいな」

鳴上「いや、桐条さんだけでもまずいだろう。どうしたもんか」

有里「陽介と順平のとこはどうしてるんだろう」

鳴上「見に行ってみるか」

>……。

有里「僕だけど、ちょっといいかな……?」

陽介「流石に狭いっすよ!これ狭いっすよ!」

順平「いける!俺達ならやれる!」

陽介「ちょ、どこ触って、アッー!」

鳴上「……そっとしておこう」

有里「どうでもいい」

鳴上「でも、ここは一つのベッドで寝ようと奮闘してるみたいだな」

有里「僕はそんなに体大きい方じゃないから平気だと思うけど」

鳴上「気分的に微妙だ」

有里「じゃあ椅子で寝ようか?僕、寝るの得意だよ」

鳴上「なんだその特技」

有里「膝枕さえあればどこででも寝れる」

鳴上「そうか……」

有里「どうする?」

鳴上「湊がベッド使えよ。俺は……ラウンジででも寝ようか。この時期だし風邪はひかないだろ」

有里「今は君の部屋だから、君が使うと良い。なら僕がラウンジに行くよ」

鳴上「いや、俺が」

有里「いや、僕が」

鳴上「……一緒に寝るか」

有里「ごめんね?」

鳴上「いいさ。明日桐条さんに言って何か考えてもらおう」

有里「そうしようか。じゃあ、どうぞ」

鳴上「こっちを向くなこっちを。お前の胸で寝る気はない」

有里「冗談だってば。おやすみ」

鳴上「ん、おやすみ」



【2012/5/7(月) 晴れ 巌戸台分寮】


風花「おはよう、もう時間だよ?起きてる?」

鳴上「あ……おはようございます」

風花「有里君も起きてる?」

鳴上「おい、湊……駄目だ、まだ寝てます」

風花「しょうがないな……開けても大丈夫?」

鳴上「あ、はい。どうぞ」

風花「おじゃましま……」

鳴上「ほら、起きろって。山岸さん起こしてくれてるぞ」

有里「風花……?」

風花「な、え、ご、ごめんなさい!何も見てないから!」

>風花は慌てて部屋を出て行った。

有里「おはよう、風花……ってあれ。いないけど」

鳴上「なんだかわからんが逃げられた」

有里「ああ、そう……おはよう、悠」

鳴上「おはよう。俺は学校に行かなきゃならないから……」

有里「僕は……そうだな。美鶴にでも話を聞いてみよう。そういえば、陽介と里中さんも授業受けろって言ってたっけ」

鳴上「連れて行った方がいいのかな」

有里「それも美鶴に聞くしかないね」

鳴上「とにかく着替えよう。さ、早く起きろ」

有里「うん……ふわぁ、あ」

>……。

岳羽「二人ともおはよう……あのさ、私ってそういうのに差別的な感情無いからね」

鳴上「何がですか?」

有里「何が?」

岳羽「いや、だって……有里君、趣味変わった?」

有里「そう言われればそうかもしれないね」

岳羽「あ、そー……ま、そんなことで付き合い方変えたりしないから安心して!じゃ、またね!」

>ゆかりはそそくさと逃げていった。

鳴上「何だ?」

有里「さぁ」

>甲高くヒールの音が響く。

鳴上「あ、桐条さん」

有里「おはよう、美鶴」

美鶴「……話がある、座れ」

鳴上「どうかしたんですか?」

美鶴「どうもこうもない!君達、今朝の話は本当か?」

有里「今朝?」

美鶴「山岸が伝えてくれた。……その、だ、抱き合って……寝ていたそうだな」

鳴上「……あ」

有里「確かに」

美鶴「どういう事だ。話によっては処刑も辞さないぞ私は」

鳴上「いや、その。俺達相部屋でとは言ったものの、寝るスペースを考えて無かったんですよ」

有里「土足で歩く場所に布団は敷けないしね」

美鶴「それと何の関係が……」

鳴上「だから、同じベッドで寝ようかと。それだけです」

有里「二人で寝るには狭かったしね」

美鶴「ああ、なんだ、そういうことなのか……私のベッドだと余裕があったから気がつかなかった。山岸も勘違いしていたんだな。すまない、つい……」

有里「つい、何だと思ったの?」

美鶴「な、何でもない!何でもないったら……」

鳴上「山岸さん、寮中に言いふらしてますね」

美鶴「後で弁解しておけ。さて、話はそれだけじゃない。むしろこっちが重要だ」

有里「僕らの話?」

美鶴「有里には後でいろいろ話がある。鳴上は急を要するぞ」

鳴上「何でしょう?」

美鶴「うん。まだ準備をしているが、里中と花村を学校まで連れて行ってやってくれ。彼らは君のクラスで授業を受ける」

鳴上「わかりました……で、何でそれが急を要するんですか?」

美鶴「時計を見ればわかる」

有里「そろそろ遅刻ぎりぎりだね」

陽介「やめてくださいって!マジで!そのノリはやばいですって!」

順平「いや、夕べのお前……可愛かったぜ?」

陽介「気持ち悪っ!」

順平「なーんだよノリ悪いなー。わぁったよもうやめるっつの」

鳴上「順平さん、陽介。おはようございます。それで陽介。お前も授業だそうだ」

陽介「何、どゆこと?」

美鶴「君達は交流を兼ねた研修という形で来てもらっているから、月光館の授業を受けてもらう事になっているんだ。そして、登校時刻はそろそろだ」

陽介「勉強するんすか!うわー聞いてねぇし!」

美鶴「受験生だろう?しっかりやっておけ。卒業生の私が言うのも何だが、月光館は中々ハイレベルだぞ」

陽介「まぁ、ただ都会で遊ぶだけってわけにもいかねえか。準備してきまーす!」

美鶴「制服と教科書などは用意してある。荷物と一緒に運んだはずだ」

陽介「ああ、アレっすね。急いで取ってきます!」

順平「よう、二人ともおはよーさん」

有里「おはよう」

千枝「すみません桐条さん、遅くなっちゃって……まだ時間大丈夫ですか?」

美鶴「ギリギリだがな」

鳴上「こっちの制服も似合ってるな」

千枝「え?そ、そう?」

順平「おーいいねぇ!千枝ちゃんだっけ?中々いいモン持ってるよ君!」

千枝「あはは……」

陽介「おまたせー!って、里中……なんか、顔いつもと違わね?いじった?」

千枝「アンタはほんとに……」

鳴上「それは後にしろ。時間無いし、急いで学校だ」

有里「いってらっしゃい」

順平「授業は真面目に出ろよ!」

美鶴「気をつけてな」


【ラウンジ】


美鶴「さて、湊。君には聞きたい事がある」

有里「わかってる事ならなんでも答えるよ」

美鶴「いや、そうじゃない。君、最後は……高校二年だったな」

有里「そうだね、あの年を終わらせて……」

美鶴「で、だ。君は今こうして戻ってきたが、今の所戸籍も何も無いわけだな?」

有里「そうだね。死んだ事になってる……んだよね?」

美鶴「ああ、そうだ。……話というのはそこなんだ。もし君にその気があるのなら、正式に戸籍を取ってもいいと思う」

有里「美鶴が身元を保証してくれるってこと?」

美鶴「私が、というより桐条が、だな。そして、もっと言うなら。君を学校に通わせる事も出来る」

有里「学校に?」

美鶴「ああ。君が八十稲羽にいたいと言うのなら八十神学園になる。試験は受けてもらうが……私の知る君の学力なら余裕を持って編入できるはずだ」

有里「……」

美鶴「煩わしい事か?それとも、またどうでもいい、とでも言うのか?」

有里「いや、非常に魅力的な申し出で戸惑ってる」

美鶴「珍しいな。君がそこまで乗り気になるとは……まぁ、これから事件を解決し、その後の生活も考えねばならない。そうなったら、今の状態では厳しいだろうと思って」

有里「美鶴……」

美鶴「ど、どうした?」

有里「ありがとう……」

美鶴「べ、別にそんなに感謝されるような事は……私が君にもらった物に比べれば、これくらいの事……」

有里「本当に感謝してるから言ったんだ」

美鶴「その、少し照れる……そ、それから、君の生活面だが。一応生活費を工面する事も出来るが、どうする?」

有里「……今、世話になっている家を出るつもりは無いから、そこに入れる事になるかな」

美鶴「そうか。では、そちらも手配しておく」

有里「こんな、こんなに甘えてもいいのかな?」

美鶴「構わない。君が私に甘えているんじゃなく……私が君にもらった物を返しているだけなんだ。君にしてもらったことの恩返しをしているだけだ」

有里「……」

美鶴「君の性格上、素直に受け取ってくれると思っていなかったが……わた、私が湊にしてあげたいから……してるんだ」

有里「ありがとう……」

美鶴「もうわかったから、頭なんて下げないで。じゃあ、早速色々と準備するから……う、わっ」

有里「本当に、感謝してる……上手く言葉が出ないくらいに」

美鶴「わ、わかった。わかったから……離してくれ。そんな風に、密着されると……」

有里「あ、ごめん……」

美鶴「……ふぅ。後は任せてくれ。こちらで如何様にもするから。君は、今日一日好きにしてくれていい」

有里「うん。……美鶴がいて良かったよ」

>どうやら陽介達と学校に通えるようだ。

>まさかそんな事が出来るとは思ってもいなかった……。

>ありがたく、世話になろう。

まさかの逆パターンで分寮へ
美鶴の部屋はとにかくスケールが違う。

そして、SSの内容とは一切関係なくあと30分ほどで記念すべき日です。
そう、桐条美鶴の誕生日。おめでとう美鶴。愛してる。

というわけで本日分は終了。
では、また後日。

(今更気付いたけど2012年5月時点で風花まだ19歳ではないだろうか。お酒駄目じゃん)

美鶴戦は間合いを詰める事が重要です。
D攻撃は先端しか判定が無いのでQEや空ダで透かせれば隙だらけの美味しい技です。
ガードしてしまうと引き寄せから美鶴の距離なので、出来る限り避けたい所。
といってもDの間合いはBドロアの間合いでもあるので読み合いにはなりますが・・・。

あとP4Uの美鶴はペルソナ覚醒後なんでアルテミシアです。

というわけで本日分。



【月光館学園】


鳥海「えーと、何か連休最終日に急に呼び出されたと思ったら数日間研修生を受け入れてくれって言われたんで紹介しまーす……」

男子「先生、相当キてんな……」

鳴上「悪いことしたな……」

男子「まぁた鳴上関連かよ。お前どんな生活してんだよ」

鳴上「大体はお前と同じだよ」

男子「嘘をつけ嘘を」

鳥海「えーと、男の方が花村陽介君でー、女の方が里中千枝さんでーす。みなさんしばらくの間ですが仲良くするよーに。はいホームルーム終わり!」

陽介「ご紹介に預かりました花村陽介でぃっす!短い間だけどよろしくなっ!」

千枝「あ、里中千枝です。以前一度来た事があるんですけど、やっぱり綺麗な学校でびっくりしてます。短い間ですが、一緒に勉強させてもらいます。よろしく」

男子「……なあ」

鳴上「どうした」

男子「お前の周り、女子比率高くね?」

鳴上「半々くらいだと思うが」

男子「ちょっと正確に計算してみ」

鳴上「……ろ、6:4?」

男子「まぁ比率はそんなもんだとしよう。ただお前の周りの女子みんな可愛いんだよ。それずるくねえか?」

鳴上「可愛く無い女子なんていないだろ?」

男子「お前何言っちゃってんのこわい」

鳴上「?」

男子「いいよわかったよ、お前と俺は住む世界が違いすぎるってことがな!」

鳴上「……?」

男子「心底不思議そうな顔しやがって!今に見てろよ!お前より先に彼女作ってやるからな!」

陽介「ういーす悠。そこの彼は何者?」

鳴上「俺より先に彼女を作るクラスメイトだ」

陽介「あー、アンタ、良く知らないけどやめといた方がいいぜ。この天然スケコマシにゃ勝てねーって。経験済みよ」

男子「花村君だっけ、何か君とは仲良くやれそうな気がするよ……一緒に可愛い女子ランキング作ろうぜ……」

陽介「興味深いデータだな。是非参加させてくれ」

鳴上「授業は真面目に受けろよ」

>……。



【昼 巌戸台分寮】


順平「お、いたいた。有里、ちょっとツラ貸せよ」

有里「ん?順平、学校は?」

順平「ばーか、俺ぁ無敵の大学生様だぜ?毎日フルに出なくてもいんだよ」

有里「ああ、そっか。大学生になったんだもんね」

順平「おおよ。これでも真面目に通ってんだぜ。だから単位も余裕あんだよ」

有里「それで、何か用?」

順平「久々に会ったダチが話しよーぜっつってるだけじゃねーか。まぁここでいいか」

有里「友達……ね」

順平「いや、そりゃよ。悪かったよ……いろいろ。でも俺も大分大人になったからさ」

有里「冗談だよ。僕も順平の事は友達だと……なんなら親友だと思ってる」

順平「そこまで言われると照れんな……そうだ、俺さ、今何の大学通ってると思う?」

有里「さぁ……順平って文系だっけ?」

順平「そうだったんだけどな。まぁ、あんな事あって……ラスト一年、もう鬼のように勉強勉強でよ。なんと!医学部!」

有里「すごいじゃないか」

順平「……には落ちたから薬学部なんだけどな。ほら、さ。助けたかった奴もいたし……俺にも何かできねーかなって思ってよ」

有里「あの順平が真面目に人生を考えてたなんて、そこが驚きだよ」

順平「お前そんなキャラだっけ?三年ぶりだからわかんなくなってんのかね」

有里「ごめん、ちょっと浮かれてて」

順平「そうか。……なぁ」

有里「ん?」

順平「お前さ、後悔とかしたか?」

有里「何の話かな」

順平「とぼけんなって。お前はそんな察し悪い奴じゃねえだろ。あの時だよ」

有里「……まぁ、あの時は後悔なんてなかったけどね。今帰ってきて、ようやく後悔が募ってる感じ」

順平「なんでよ。やりたいようにやったんじゃねえの?」

有里「皆、悲しんだだろ?」

順平「ああ、そりゃ凄かったぜ。特にアイギスとゆかりッチがな……で、後悔した有里君はどうすんだ、これから」

有里「今回の事件もきっちり終わらせるつもりだよ」

順平「今回の事件こそ、だろ?後悔無い様に。……あん時はさ、足引っ張ってばっかだったけど、今ならちっとは力になれっから」

有里「前も助かったよ。あてにしてる」

順平「おう、この順平様に任せとけって!……もう、黙っていなくなんなよ。見たくねえし、あんなの」

有里「……悪かった」

順平「わかりゃいい。じゃ、また後でな!ガッコは無くても忙しいんだ俺ぁ」

有里「またね」



【放課後】


陽介「完璧だ……」

鳴上「珍しいな、そんなに授業が良くわかったのか?」

男子「間違いない、完璧だな。加点方式で微に入り細に穿ち作り上げた可愛い女子ランキング……このクラスは完全に出来あがったと言っていいだろう」

鳴上「なんだ、そんな事か」

陽介「何だとは何だ!そりゃお前みたいに自然と可愛い子がいる環境に入り込む能力がありゃ俺だってこんな事してねえよ!」

男子「そうだそうだ!一人くらい紹介しろ!」

鳴上「いや、俺の一存でそういう事は……」

男子「へーんいいもんねー俺は陽介とこのランキング見て悦に入るもんねー。どうよ、この辺り」

陽介「んーそうだな、一つ疑問があるとすれば、里中の位置上過ぎじゃね?」

男子「は?」

陽介「え?」

男子「お前……お前まさか……」

陽介「い、いや、だってアイツあれだぜ?人の事さんざ文字通りの踏んだり蹴ったりの男女だぜ?」

男子「っはぁー陽介。陽介よぉ。お前だけは俺の味方だと思ってたのによぉ」

陽介「いやいやいや!お前アイツの事知らないからそんな事言えんだよ!なぁ相棒!」

鳴上「いや、里中は可愛いだろ」

陽介「……まぁな、見た目だけだったら全然アリだよ。ただ俺にだけやたら辛辣なんだよな……」

男子「愛情の裏返しって奴じゃねえの?」

陽介「マリア様より深い愛でも裏返さねぇとああはなんねーぞ」

鳴上「そういえば、里中今日雰囲気違うな」

陽介「あ、それ俺も思った。制服違うからかね」

男子「女子に囲まれてて良く見えん……くそ、どけランクB-共!」

鳴上「あ、そういえば俺有里連れて行く所あったんだ」

陽介「お、出掛けんの?」

鳴上「ちょっと人に会わせにな。そろそろ帰ろうと思うんだが」

陽介「んじゃ帰っか。今日は有意義な一日だったぜ!」

男子「明日からは別クラスだ!陽介が帰る前に完成させようぜ!」

鳴上「里中ー、帰るぞー」

女子「えー?里中さんって鳴上君の知り合いなの?」

千枝「ああ、うん。鳴上君の転校前の学校で一緒だったんだ。っと、じゃごめんね!また明日!」

女子「ばいばーい……いいなー……」



【夕方 巌戸台分寮】


鳴上「ただいま……湊いるか?」

有里「ん、どうしたの?」

鳴上「ちょっと会わせたい人がいるんだ。付き合ってくれないか」

有里「……何か、嫌な予感がするんだけど」

鳴上「そう言うな」

有里「わかった、行こう。ところで、陽介は何してるの?」

陽介「なー言ってみ?ほれ恥ずかしがらずによー」

千枝「うっさい。何なの朝からずっと……」

鳴上「ああ、里中の印象がいつもと違うのは何でかって言ってて。俺もなんとなく違う気がするんだがどこが違うのか……」

有里「ああ、なんだ。そのことか。里中さん、ちょっと」

千枝「……何?」

有里「うん、やっぱりそうだ。里中さん、今日化粧してるよね」

陽介「ん何ぃ!?里中が化粧!!」

鳴上「それでちょっと感じが違ったのか」

有里「朝見た時から思ってたんだ」

千枝「そんな、ちょっと見たらわかるくらい変?」

有里「いいや。化粧って言っても薄くファンデーション塗ってるくらいだよね?あとグロス?かなり自然に出来てると思う。ナチュラルメイクってヤツ」

陽介「はー気付かんもんだな。こりゃ騙されるわ」

鳴上「というか詳しいな、湊」

有里「そうでもないよ……でも、せっかく肌も唇も綺麗なのに。ちょっともったいないかも」

千枝「べっ、別にいーでしょ何でも。初日だからちょっと気合い入れただけだって。ウケ悪かったみたいだから明日から普通に……」

鳴上「そんな事無いと思うけどな」

有里「そうだね、ただファンデーションをもう一つ明るい色にした方が里中さんらしいかも」

千枝「いいって。下手だし時間もかかっちゃうし、明日から普通にする」

陽介「そーそー、あんまり慣れない事してると大怪我するぜ?」

千枝「……っ、花村死ねっ!」

陽介「あいたぁ!……いつものノリでからかっただけなんだけどな……」

有里「走って部屋行ったみたいだね」

鳴上「里中はすっぴんで十分可愛いのにな」

有里「化粧品はあくまで足りない部分を補う物だからね。里中さんくらい元が良いとしなくてもいいと思うんだけどね」

陽介「後で謝っとこ……」

鳴上「そうしろ。じゃあ、行くぞ湊」

有里「嫌だけどね……」



【ポロニアンモール】


鳴上「ここで待ってろ」

有里「い、嫌だ!」

鳴上「どうした、そんなに嫌がらなくてもいいじゃないか」

有里「この予感は美鶴の比じゃない!命に関わるヤツだ!僕は帰る!」

鳴上「お前がそんな風になるって一体……」

エリザベス「誰から逃げようとしているのでしょうか?」

鳴上「うわっ!ああ、エリザベス。約束通り連れてきたぞ」

有里「……や、やぁ」

エリザベス「お久しぶりでございます」

有里「そうだね……」

エリザベス「……今まで、何をなさっていたので?」

有里「いろいろとね」

エリザベス「何故、私に何もおっしゃらなかったので?」

有里「……いろいろと、ね」

エリザベス「メギ」

鳴上「待った!それはまずい!」

エリザベス「冗談でございます。あなたの事ですから、何か余計な気回しをしていたのでしょう……容易に想像できます」

有里「仲間にも散々言われた。悪かったよ」

エリザベス「わかれば良いのです。……よく、戻ってきてくれましたね」

有里「……僕は何もやってないよ。君が尽力してくれたんじゃないかと思ってるんだけど」

エリザベス「私の力では遠く及びませんでした。何か慮外な事態があったのだと思います。とにかく、今は貴方が帰ってきてくれた事が嬉しい……」

有里「ん、ただいま」

>エリザベスの顔と湊の顔が近付いて行く……。

鳴上「そっとしておこう」

>エリザベスがこちらに手を振っている。

鳴上「ん?……ア・リ・ガ・ト・ウ?」

>手を振り返しておいた。

>……二人をそっとしておいて、寮に帰ろう。

>『No.09 隠者 エリザベス』のランクが3になった。



【夜 巌戸台分寮】


陽介「だからぁ、この線が重要だと思うんすよ!」

順平「あえて崩すって事の意味がわかんねーのかお前は!」

陽介「崩したら意味無いじゃないっすか!」

真田「そうだな、もっと引き締めるべきじゃないか?」

天田「真田さんのソレは筋肉の話ですよね」

岳羽「……あれ、何の論争なワケ?」

鳴上「女性の体で一番美しい曲線はどこかだそうです」

岳羽「なんでそんな話してんの?」

鳴上「陽介が授業中に作ったクラスの女子ランキングを見た途端、順平さんが語り始めて……」

岳羽「変わってないねー、あいつも……鳴上君はそういうの興味ないんだ?」

鳴上「無くは無いですけど。基本的に女性に上下ってつけるべきじゃないと思うんで」

岳羽「へぇー紳士的。じゃあさ、あえて言うなら女の人の体でどこが好きとかないの?」

鳴上「全部」

岳羽「ん?」

鳴上「全部……ですかね」

岳羽「あ……そーなんだー……へぇー……」

風花「あ、鳴上君。今朝はごめんね、勘違いしちゃって……」

鳴上「いや、いいんですけど。……やっぱり良くは無いです。勘弁してください」

風花「ご、ごめん……あれ、そういえば有里君は?」

鳴上「あいつは……今日は帰ってこないかもしれないですね」

岳羽「え、何かあったの?」

鳴上「いや、心配するような事ではないんですが。まぁ、その、いろいろと……」

岳羽「ふーん。ま、いいけど」

風花「そういえばゆかりさん、コンビニで見かけたから新作のお菓子買ってきたんだけど一緒にどう?」

アイギス「是非ご一緒させていただきたいです」

岳羽「うわ、アイギスあんたどっから出てきたのよ」

アイギス「お菓子……」

鳴上「ははは……」

>『日常』を感じる。

>久しぶりに寮の皆と過ごした。

>『No.00 愚者 特別課外活動部』のランクが4になった。



【深夜 鳴上の部屋】


有里「……ただいま」

鳴上「遅かったな」

有里「ちょっと色々。あれ、これどうしたの」

鳴上「最初は別に寝場所用意してくれる予定だったんだが」

有里「悠、もしかして言った?」

鳴上「……」

有里「僕が女の人と会ってるとか言ったね?」

鳴上「……うん」

有里「しかも美鶴に」

鳴上「すまん」

有里「そしてアイギスも同意してゆかりも不機嫌になって、危うくもっとおかしな所に寝かされる所を風花がなだめてくれてここに落ち着いたね?」

鳴上「良くわかるな」

有里「まぁね。しかし、屋内で寝袋か……」

鳴上「俺のせいだし俺が使おうか?」

有里「いや、言ってみたものの別に寝場所に拘りはないんだ。汚れなければとりあえずおっけー」

鳴上「そうか。……なぁ、湊」

有里「ん?」

鳴上「里中とのこと、ちゃんと解決するんだよな」

有里「……うん」

鳴上「今日もやっぱりちょっと様子おかしかったから。ゆっくりでいいけど、頼んだぞ」

有里「わかってるよ。それより、悠の方こそ風花はどうするの?」

鳴上「山岸さん?何がだ?」

有里「あれ、気のせいかな……まぁ、いいか。君は僕みたいにならないように、なるべく何も見落とさずに進むんだよ」

鳴上「よくわからんが覚えとく。さて、今日はもう寝るか」

有里「そうだね。おやすみ……」


美奈子『助けて!』


鳴上「!?」

有里「今の、聞こえた?」

鳴上「ああ。……そういや、聞きたかったんだが。美奈子さんって何者なんだ?」

有里「さぁ……実の所僕にも良くわかってないんだ。とにかく……」

鳴上「近いうち、雨が降りそうだな」

有里「そんな気がするね」

鳴上「……寝るか」

有里「……そうだね」



【2012/5/8(火) 雨 巌戸台分寮】


鳴上「翌日か……」

有里「随分と気が早い事だね」

鳴上「どうする?昨日の事は……」

有里「そもそも僕らにしか見えないし聞こえない以上、説明しようが無いんじゃない?」

鳴上「まぁそうか……今夜、どうする?」

有里「とにかく学校でしょ?帰ってきてから相談しよう。皆でね」

鳴上「そうだな……有里は今日どうするんだ?」

有里「今日か……うーん、予定自体は無いんだよね。どうしようか」

鳴上「暇そうな人がいたら良いんだが……皆一応学生だしな」

有里「とりあえず留守番しておくよ。君達が帰ってくるのを待ってる事にする」

鳴上「わかった、それじゃ行ってくる。何かいる物とかあったら買ってくるぞ?」

有里「特に無し」

鳴上「了解。じゃあ夕方にな」

有里「ん、また」

>雨が降ってきた……。

>天気予報はチェックしていたのだが、どうやら外れてしまったようだ。

>……。


【月光館学園】


鳴上「陽介、里中。今日は早く帰るぞ」

陽介「ああ、まっさかこっちにいる間に雨降っちまうとはなー」

千枝「どうするんだろう、やっぱ入るのかな……やだな」

鳴上「どうするかは帰ってから相談しよう。とにかく待機だ」

陽介「まだ俺こっち来て全然遊んでねーのにさー。続いたら嫌だな、この雨」

鳴上「そうだな……」

>授業を受けよう。



【昼 巌戸台分寮】


アイギス「あ、湊さん」

有里「ああ、アイギスはいたのか。雨だね」

アイギス「ええ。天気予報では昨日まで晴れだったんですがね。今夜も映るでしょうか」

有里「映るだろうね」

アイギス「……」

有里「……?」

アイギス「あの、おかしな事を言いますが……湊さんは里中さんの事が好きなのですか?」

有里「……うん」

アイギス「……私の事は、どうですか?」

有里「好きだよ」

アイギス「男性の好きというのは、いくつもあるものなのでしょうか」

有里「ん?どういうこと?」

アイギス「湊さんは、四股をしているという噂を昔耳にしました」

有里「誤解だ」

アイギス「わかっています。あなたは誰とも特別な関係に無かった……ですよね」

有里「……」

アイギス「最後の一線を越える事を躊躇っていたんですね。今となってはそれもわかります」

有里「そうだね。あの頃の僕は……」

アイギス「ですが、皆さんの事を好きだったのですよね?」

有里「……ああ。それは間違いないよ」

アイギス「難しいですね。好きだから選べなかったのか、好きだから選ばなかったのか……私には、まだわかりません」

有里「アイギスは随分と人間に近付いたんだね」

アイギス「自分でも驚くほどにです。私は、きっと貴方を好きだった。今ならはっきりわかる」

有里「今はどうなの?」

アイギス「よく、わかりません。里中さんを応援したい気持ちもあるし、それを見て少し気分が悪い自分もいる……なんでしょうね、これは」

有里「……里中さんとの事、聞いたんだ」

アイギス「ええ、あの日……マヨナカテレビが映った日、私達は里中さんのお話を聞きました」

有里「そっか」

アイギス「私は……どうしたらいいのか、迷っています」

有里「僕もさ」

アイギス「湊さんを……自分の物にしたいという感情があります。しかし、里中さんも大事な友人として失いたくないと思っています」

アイギス「どちらを選べばいいのか……私には、わかりません」

有里「ごめん、アイギス。それは僕にもわからない。僕の悩みも君と同じだ」

アイギス「このカイショーナシ」

有里「どこで覚えたの、それ」

アイギス「順平さんが言ってました。湊さんはユージューフダンのカイショーナシだそうです」

有里「否定は出来ない」

アイギス「ですが、私は違うと信じています……あなたの道は、あなたが決めて」

有里「……ありがとう、ちょっとだけ頭の中の霧が晴れた」

アイギス「私のためでもあり、里中さんのためでもありますから」

有里「はは、そうか。さて、今日は突入だろうから、アイギスも準備しておいて」

アイギス「任せてください」

>今更こんな事で悩むとは思わなかった。

>……自分が一番子供なんじゃないか?

>今夜の準備をしよう。


【放課後】


鳴上「よし、じゃあ帰ろう」

陽介「……」

千枝「……」

鳴上「どうした、二人とも」

陽介「昨日は真面目に受けてなかったからわかんなかったんだけどよぉ」

千枝「私も、昨日は皆に構ってもらっててあんまり意識しなかったけど……」

陽介「ここの授業難しくねえか?」

鳴上「そうか?」

千枝「そりゃ、鳴上君は私らとは違うからさ……」

鳴上「……受験、大丈夫か?」

陽介「自信無くすわ……」

千枝「私は元から無かったけどね……」

鳴上「今日の所は忘れろ。まだ一学期だし、勉強すればいい。それより今夜の話だ」

陽介「おう、そうだな……」

千枝「とりあえず帰ろっか……」

鳴上「……今度は勉強会だな」

>今夜の準備をしなければ……。

家出した肉親の探索に出ていて本日分かなり短くなっております。
自分の連続稼働時間が40時間を越えているので頭も回りません!

さて、そんな事とは関係なく、劇中にカンフル剤が投下されようとしています。
助けて、の意味とは?

なんとかでっち上げたのでとりあえずここまで。
では、また後日。

ちょっと早めにこんばんわ。
脱走した野郎はとっ捕まえましたので本日から通常営業です。

エタったりしないよ!やるよ俺は!

というわけで本日分。



【夜 巌戸台分寮】


美鶴「そろっているな。では、あり……っと、今は鳴上だったな。すまない。リーダー、今日の作戦を」

鳴上「はい。この雨は明日まで降り続くそうです。明日の夜まで降っているかはわかりませんが……なので、やはりマヨナカテレビに突入を」

有里「メンバーは、まず僕と悠。それから風花には入ってもらう」

風花「あの、でも私……」

鳴上「どうかしましたか?都合が悪いなら今日は見送りでも……」

風花「あ、いや。大丈夫です。ごめんなさい」

有里「……?ええと。それから二名選んでの四人パーティーでの探索にしたいと思います」

鳴上「で、そのメンバーなんですが。まず陽介と里中は除外したいと思います」

陽介「あれ?なんでよ」

千枝「……私は、ちょっとありがたいかも。あんまり調子よくなくてさ」

鳴上「単純に、慣れない環境だし。もし明日以降に疲れが残ってもよくないかと思って」

有里「それに、君達以外にも頼れる仲間はたくさんいる。安心して待っていてくれ」

真田「よし、じゃあ今回は俺が行こう」

鳴上「そうですね、真田さんと……」

アイギス「私も行きます。今回はまだ戦っていないので」

有里「やる気だね。じゃあ真田先輩とアイギス、それに僕と悠で……あ」

美鶴「どうかしたのか?」

有里「ええと、この中で誰か、誰かがテレビに入ってる間、マヨナカテレビを見ていた人はいない?」

千枝「あ、前回は私達が……」

有里「そう。僕達の探索の様子が映っていたんだってね」

千枝「探索じゃなくて、大きいのと戦う時が映ってたよ。あの大部屋の階に入った時から」

鳴上「ああ、そうだったのか?他に見た人は?」

>……全員、それぞれに顔を見合わせている。

順平「メンバーに選ばれなかった時はテレビはつけちゃいたけど、適当に過ごしてたからな……」

有里「前回だけだったのかもしれない。けど、今日はテレビを注視しておいて欲しい。何かが映るかもしれないから」

美鶴「そうだな。では残ったメンバーで見てみる事としよう」

鳴上「それじゃ、一旦解散して、また後で再集合とします。疲れがある人や、明日に重要な予定がある人はそのまま休んでくれてかまいません」

陽介「俺、ちっと勉強しようかな……」

順平「お、勉強か?先輩に任せとけって。教えてやっから」

千枝「私はちょっと疲れたから……今日はパスして寝させてもらうね」

岳羽「あ、私も今日はパスしていいかな。ちょっと……体調が、ね」

天田「僕は元気なので、テレビの確認しときます」

美鶴「私もそうしよう」

真田「腕が鳴るな、やっと俺の出番か」

アイギス「風花さん、調整を手伝ってもらってもいいでしょうか?」

風花「ん、わかった。じゃあ部屋でね」

鳴上「湊、ちょっと」

有里「わかってる」

>……。

鳴上「で、どう思う?」

有里「助けて、ね。彼女は……彼のような物だと思っていたんだけれど」

鳴上「彼?」

有里「以前の事件の時、僕の内側にいた人格。本質的に僕と同じだから、言ってみれば僕のペルソナのような存在」

鳴上「だけど、それなら俺の所に来れた理由は何だ?」

有里「彼女本人が言っていたのは、僕と接触……物理的にも精神的にも、だと思うんだけど。接触した時に、僕の因子の一部を君が受け入れたからだと」

鳴上「因子……ああ、もしかしてあの怪我した時に」

有里「そう。タナトスの一部が君の中に残ったからだと思ったんだけど。どうやら、それで済まないようだね」

鳴上「確かにあの人からはお前に似た何かを感じたが……湊はどう思うんだ」

有里「そうだね、彼女と僕は似ている……けれど、どこか決定的に違うようにも思う」

鳴上「そして、助けて……か」

有里「今日は三層だったよね」

鳴上「ああ。出来たら四層まで行きたいが」

有里「うん。そこの番人が……もしかするといつもと違うのかもしれない。とにかく進んでみるしかないね」

鳴上「……なぁ、もしあの人がその番人だったらどうしたらいいんだ?」

有里「怖い事を言うね……まず無いと思いたいけど……敵である以上」

鳴上「そうだよな……とにかく、見に行ってみるしかない。か」

有里「さ、準備だ。何なら少し寝る?起こすよ」

鳴上「そうするか。頼んだ」

有里「それじゃ、また後で」



【深夜】


真田「よし、行くぞ」

アイギス「作戦開始であります」

鳴上「じゃあ、テレビの方お願いします」

天田「わかってます、しっかり見ておきますね」

美鶴「気をつけてな」

コロマル「ワン!」

風花「それじゃ、行ってくるねコロちゃん」

>……。


【テレビ内】


クマ「ムムム!来たクマね!」

鳴上「今日は走って来なかったな」

クマ「たまたま近くにいたクマ。およ、そこなお兄さんは何者だクマ?」

真田「おい、何だこいつは」

有里「クマだそうです」

真田「俺の知っているクマとは違うな……」

クマ「失礼な!クマはクマクマ!」

アイギス「可愛いですね」

クマ「クマ!?クマもてもてクマか!?」

鳴上「クマ。悪いが、今日は急ぐんだ。確実に先に進みたいからな……お前はどうする?」

クマ「うーん、やっぱり入れんクマ。あん中に行くと、前にクマの影が出た時みたいになりそーで……」

有里「シャドウ、か。まぁ留守番しておいてもらおうか」

クマ「クマ応援してるクマ!がんばってクマ!」


【タルタロス 第三層】


風花『準備できてます、いつでもどうぞ』

真田「雑魚はどうする」

鳴上「回避できる物は回避して進みましょう。何があるかわからないので」

有里「そうだね、体力は温存しよう。今日は三層をクリアしたい」

アイギス「極力戦闘を避けて進むのですね、了解であります」

>……。

鳴上「これで何階だ?」

有里「63。ここまでに戦闘は7回だね」

真田「戦闘回避とは、作戦上仕方ないとは言え……少し、物足りんな」

風花『……』

有里「僕の記憶が確かなら、次で三層は最後だ。準備はいい?」

アイギス「いつでもいけます!」

真田「ボスとは戦うんだろ?ようやく本領発揮という所か」

鳴上「よし、それじゃ確認お願いします」

風花『えっ、あの、何でしょう?』

真田「上階の敵影だ。聞いていなかったのか?」

風花『ご、ごめんなさい……今感知します』

鳴上「山岸さん、やっぱりちょっと変だな」

有里「前回の終わりからだね。どうかしたのかな」

アイギス「少し、心配ですね」

風花『上階、反応ありません。大型シャドウはいないみたいです』

真田「何?いないのか?」

鳴上「いない、か」

有里「どういうことなんだろう」

アイギス「とにかく、行ってみませんか?」

真田「そうだな、行ってみるか。見ればわかるだろう」

鳴上「64階……やっぱり大部屋だ」

有里「風花、本当にシャドウはいないの?」

風花『そのはずで……』

真田「待て!あれを!」

>タルタロスの天井に張り付くように、巨大な繭のような物がある。

鳴上「なんだ、あれは……」

有里「風花、わかる?」

風花『……多分、シャドウとは別の物です。シャドウ反応、変わらずありませ……』

風花『っいや!ごめんなさい!今すぐその下を離れて!それ、シャドウです!!』

有里「アイギス!」

アイギス「は、はい!」

真田「デカいな。倒し甲斐がありそうだ!」

鳴上「山岸さん、どうしてわからなかったんですか?」

風花『ご、ごめんなさい』

鳴上「いや、責めてるわけじゃ……」

有里「喋ってる間に、繭が孵りそうだよ。構えて」

鳴上「全員戦闘準備!」

>繭が何かの重みでゆっくりと撓んでいく……。

>それは地響きを立て、タルタロスに着床した。

アイギス「これは……」

鳴上「赤ん坊、か?」

有里「というより、胎児って感じだね」

真田「これが、戦うのか?」

シャドウ「オギャアアアアアアアアアアアアアアア」

>耳を劈く高音で、シャドウが産声を上げる!

真田「戦うしか無さそうだな!」

アイギス「余り気分が良くありませんが……」

鳴上「仕方ない……か。ペルソナ!!」

有里「風花、解析を」

風花『は、はい!すぐに!』

>シャドウがゆっくりと立ち上がる。

シャドウ「ギャアアアアアアアアア」

>泣き叫びながら、その手で薙ぎ払った。

真田「ぐぁ、カエサル!!」

>真田がペルソナの力を借りてなんとか踏みとどまる。

鳴上「真田さん!」

真田「問題ない。が、この敵は……」

有里「赤ん坊でも、これだけサイズがあれば強敵か」

アイギス「赤ちゃん……ごめんなさいっ!アテナ!」

>アテナの突進が胎児に突き刺さる。

シャドウ「ウェエエエアアアアアア」

アイギス「あああっ!」

鳴上「なんて泣き声だ……!」

有里「頭が割れそうだ……風花、早く……!」

風花『はい、その、ご、ごめんなさい。反応が上手くつかめなくて……こんな事、今まで……』

有里「仕方ない、無理にでも終わらせるしか……タナトス!!」

タナトス「ルォオオオオオオオ!」

真田「出たなタナトス」

鳴上「やれ!湊!」

タナトス「ガォオオオオオオオオオ!!」

>一閃。

>今までのシャドウなら、それだけで沈んで来たが……。

有里「駄目、か……!?」

鳴上「湊!?どうした!」

真田「見ろ、鳴上!」

アイギス「有里さんのペルソナが……!」

風花『……タナトスの反応消滅!どうなってるの!?』

鳴上「無事か、湊!」

有里「大丈夫だ……けど、どうやら持っていかれたらしい」

鳴上「持って行かれたって……」

真田「おい、冗談だろう?」

>胎児の手にはいつの間にか剣が握られている。

アイギス「あの剣は……」

有里「僕の、タナトスだ」

シャドウ「ウェエエエエエエエエエ」

>剣を力任せに薙ぎ払う。

>それだけだが、十分な破壊力を誇っている。

真田「そう何度も、耐えられる物じゃないぞ!」

アイギス「オルギアを……でも、それで仕留められなかったら……」

有里「一つ、思いついた事がある。悠、アレを落とす自信は?」

鳴上「無い、が、他にやる事も無いしな」

有里「アイギス、オルギアを。僕と一緒にアレを撹乱するよ」

アイギス「は、はい。しかし……」

有里「いいから。僕を、悠を信じて」

アイギス「……はい!リミッター、フルブレイク!」

有里「オルフェウス!」

>アイギスが機銃を掃射しながら辺りを動き回る。

>オルフェウスは火炎でそれを追う動きを阻止する。

有里「こうやって邪魔していれば……」

シャドウ「ウァアアアアアアアアアア」

有里「そう、僕を狙う。チェンジ。ハヌマーン!」

>ペルソナを切り替える事で何とか一撃耐え切った。

>が、既に次の一撃に移ろうとしている。

有里「アイギス!」

アイギス「はい!アテナ!!」

>アイギスのペルソナが上空へ突進する。

>その盾の上には、鳴上が乗っている。

鳴上「何度か死ぬかと思ったが……ここで、決める!イザナギ!!」

>赤ん坊の真上から、鳴上の声に驚き上を向いたその顔の中心に向かいイザナギが突進する。

シャドウ「ウギャアアアアアアアアアアアア」

鳴上「通……らない……!」

>赤ん坊に間違いなく突き刺さったイザナギの剣。

>しかし一定以上刃が進む事は無かった。

鳴上「これじゃ駄目だ。このまま行ってもこいつを倒す事は……」

真田「なるほど、俺はここにいればいいわけだ」

>赤ん坊の背中側、鳴上を見上げているその死角に真田が立っている。

真田「決めろ鳴上!手伝ってやる!カエサール!!」

>カエサルの持つ地球儀に、吸い寄せられるような力を感じる。

>落下する鳴上が、そこに引き寄せられてさらに加速する。

鳴上「喰ら……えぇ!!」

>イザナギと鳴上、両者による串刺し二閃。

>赤ん坊の体が罅割れ、崩れていく……。

鳴上「ぐっ、がはっ!」

真田「着地失敗か。大丈夫か」

鳴上「いたたた……まぁ、なんとか。それより、アイツは……」

アイギス「心配ありません。もう……」

有里「お疲れ。よくがんばったね」

>赤ん坊の全身に亀裂が入り、最早動くことは無くなった。

鳴上「……?なんだ、アレ」

有里「え?」

>赤ん坊の体の内側、亀裂から淡い光が放たれている。

アイギス「……もしかして」

真田「おい、冗談だろう」

風花『シャドウから強力な反応が出ています!危険です!』

鳴上「まさか、自爆!?」

有里「やれやれ、どこに逃げようか」

>光が強まっていく……。

アイギス「私が止め……くっ」

有里「オルギアの反動か。困ったな」

鳴上「落ち着いてないで何か考えろ!」

真田「俺達のペルソナでどうにかできるのか?」

鳴上「くそっ!」

>赤ん坊からの光が一際大きくなり、辺りが目も眩むような光に包まれる……

有里「駄目、か」

>……。

鳴上「……あれ?」

>光が収まって後、そこはさっきまでと同じような静寂に包まれていた。

有里「何とも無かった、のかな?」

真田「少なくとも体に被害は無いな」

風花『反応消失……いや、まだ小さい反応が……?』

有里「あ、あれじゃない?」

鳴上「あれ?」

>さっきまで赤ん坊の体があった場所に、一人の人間が倒れている。

真田「人か?」

鳴上「何でここに……」

有里「……悠、あれ、見覚えない?」

鳴上「なんで見覚えが……あ」

「う、ぅん……ここ……」

有里「立てる?」

美奈子「……湊に、悠。良かった、また会えたね」

真田「……は?」

アイギス「……え?」


【2012/5/9(水) 曇り 巌戸台分寮】


美鶴「起きろ、鳴上、湊。あの子が目を覚ました」

鳴上「あ、おはようございます……起きましたか」

美鶴「ああ。これから少し聴取をする。君達にも立ち会ってもらいたい」

有里「ん……おはよう。寝起きに美鶴の顔はよく目が覚めるね」

美鶴「な、なんだそれは」

有里「ん?いや美人だなと思って」

美鶴「今はそういう冗談を聞いている暇は無い。鳴上、少し遅刻するかもしれないがいいか?」

鳴上「大丈夫です。行きましょう」

有里「さて、何が出るかな」



【辰巳記念病院】


美鶴「さて、まずは君の名前を聞かせてもらおうか」

美奈子「有里美奈子、歳は……17?かな。享年でいうとそうなります」

美鶴「享年で言うな。まず死んだ人間は私と会話できない。あまり悪ふざけを聞きたい状態じゃないんだ」

美奈子「でも、湊だって死んだのに今そこにいるでしょ?」

有里「まぁね」

美鶴「湊の事を知っているのか?」

美奈子「笑顔から寝顔まで」

美鶴「なっ……どういう関係だ!」

有里「美鶴。今はそうじゃない」

鳴上「あなたは時々俺の夢に出てきた人と同一人物ですか?」

美奈子「ああ、敬語いいって。知らない仲じゃなし。質問の答えはイエスだよ」

鳴上「だそうだ。湊、どう見る?」

有里「まず間違いないね。僕の中から何かが抜け出た感覚は昨日味わった。ペルソナを抜かれたのかと思っていたけど……」

美奈子「ごめんね。でも、体を作るのに必要だったから……」

有里「体を?どうやって?」

美奈子「シャドウの中には精神体を食べる物がいるのは知ってるよね?」

有里「食われた人間は無気力症に陥る。そうだったね」

美奈子「うん。けど、特殊なパターンとして……精神のエネルギーをそのまま自分の構成に使うシャドウもいるの」

鳴上「つまり、どういうことだ?さっぱりなんだが」

美奈子「つまり、あの赤ちゃんは私のエネルギーで体を作ってたって事。その意識が無くなった時、赤ちゃんを構成していたエネルギーが指向性を失う」

鳴上「あの光がそうか」

美奈子「そう。普通は赤ちゃんの内部で、基となった精神はぐちゃぐちゃに攪拌されて意識なんて残らないんだけど」

有里「あの赤ん坊は文字通り赤ん坊だったわけか。君一人のみを使って体を組み立てていた」

美奈子「だから、私の意識はあった。そして無指向のエネルギーを一つの座標に収束させるのは意思の力。私ははっきりとした自意識を持って、この体を結び上げた」

鳴上「なんか、壮大な話だな。だけどこうしてここにいる事は事実だし」

美奈子「経過はそういうわけで、結果は見ての通り。助けてって言った時は実はまだ君達の所にいたんだけどね。騙すみたいになっちゃってごめんね」

有里「いや、君はわかってたんだろう?昨日のシャドウが生まれるのが。君の意識は僕達よりシャドウに近い所にあった。そこから見ていたんだね?」

美奈子「流石に経験者は違うね。そして、何とか肉体が欲しかった私は二人に声をかけた……」

鳴上「そもそもあんたは何者なんだ?どうして湊の中にいた?」

美奈子「私は、湊のもう一つの可能性。別の世界から来たって言えばいいのかな。平行世界ってわかる?」

有里「パラレルワールドってヤツだね」

美奈子「うん。私は湊とよく似てて、だけど違う存在。位置で言えば隣の世界から来た事になる」

鳴上「そんな事が可能なのか?」

美奈子「悠は知らないかもしれないけど、それが可能な場所があるの。全ての世界の根底にあるもの。人の生まれ、帰る先……集合的無意識」

有里「あの場所において、意識は形になる。そうか、全ての可能性の出発点なら……しかし、どうやってそこに?」

美奈子「湊と同じ。私も、自分の生命力を代償に、アレを封印しようとした。ところが、ついた先では既にがっちり封印されてる。さて何故でしょう?」

鳴上「待て待て待て。集合的無意識とかって話がなんで今出てくるんだ。今はそういう哲学的な話じゃ……」

有里「悠、心理学に造詣は?」

鳴上「少しな」

有里「じゃあ考えてみようか。ペルソナ……シャドウ……その全ては人の心の生み出したものだ」

美奈子「私達人間の深層心理に存在する力。その源とも言える場所はどこだと思う?」

鳴上「……そう、なのか」

有里「実際行って見てくるのが早いんだけどね。難しいから却下で」

美奈子「とにかく、私がそこに行った時には既にNyxは封印された後だった。というより、ほとんど時を同じくして湊が封印しちゃってたわけね」

有里「その後、君はどうなった?」

美奈子「私のエネルギーは湊、君の補填に使われるようになった。結構ボロボロになったりしてたからね。その内、湊と私は……」

鳴上「一つになった、と」

美奈子「それからは、二人も知ってるよね。湊の体と精神に住んで、時々アドバイスしたりしてたんだよ」

有里「いろいろどうも。で、今肉体が必要になった目的は……」

美鶴「待て、待ってくれ。私を置いて話を進めるな。つまり、この子と君達は知り合いだったのか?」

美奈子「向こうじゃ私と美鶴先輩もね」

美鶴「なに、私もいるのか」

美奈子「私が湊の代わりにいる以外、ほとんど同じだと思う。というわけで、こっちでもよろしくね」

美鶴「ああ、よろしく……じゃなくて。だから、ええと……」

鳴上「俺達に対して害意とかは無いんだろ?」

美奈子「ん、そうだね。元々守りたかった物だし……私の目的っていうのも、そんなに難しい話じゃないよ」

有里「是非聞きたいな。それ次第で美鶴の態度も変わるだろうし」

美鶴「そうだな。昨夜からの検査で君に影時間の適正、そしてペルソナ能力がある事はわかっている。本当に敵意が無いのなら是非戦力として欲しい所だ」

美奈子「美鶴先輩はどこでも変わらないねぇ。うん、じゃあ私の目的を発表します。えー私は……」


美奈子「色んな物を、終わらせに来たの」

2012/5/9 現在の状況

鳴上
『No.00 愚者 特別課外活動部』ランク4
『No.01 魔術師 伊織順平』ランク2
『No.02 女教皇 山岸風花』ランク5
『No.03 女帝 桐条美鶴』ランク4
『No.04 皇帝 真田明彦』ランク3
『No.05 法王 天田乾』ランク3
『No.06 恋愛 岳羽ゆかり』ランク3
『No.07 戦車 アイギス』ランク3
『No.08 正義 コロマル』ランク3
『No.09 隠者 エリザベス』ランク3
『No.13 死神 有里湊』ランク3

有里
『No.10 運命 鳴上悠』ランク3
『No.11 剛毅 里中千枝』ランク4(ブロークン)
『No.12 刑死者 堂島遼太郎』ランク3
『No.14 節制 巽完二』ランク3
『No.15 悪魔 マーガレット』ランク2
『No.16 塔 白鐘直斗』ランク2
『No.17 星 久慈川りせ』ランク3
『No.18 月 天城雪子』ランク3
『No.19 太陽 花村陽介』ランク4
『No.20 審判 自称特別捜査隊』ランク3

千枝、風花不調
有里美奈子実体化

終わりまで あとXX日

産まれたのは知った顔。
敵かな?味方かな?

どちらにせよ、終わりはどんどん近付いて来ている。

えー、次回から色々変わるかもしれません。
書き方とかいろいろ。

今日は展開の都合上短めだけどここで終わり。
では、また後日。

普段は服着てるけど戦闘になると脱ぐ
そんな裸マント先輩が私は好きです。

というわけで本日分。



【巌戸台分寮】


美鶴「湊。今日は誰か先約が入っているのか?」

>ラウンジでぼんやりしていると美鶴に話しかけられた。

有里「いや、別に。何か用?」

>美鶴はライダースーツを着ている。
>……ちょっと見ない間に体もまた成長して……。

美鶴「なんだ、あまり見るな……用が無いなら付き合ってくれないか?ほら」

有里「あ、それ……」

>いつか見た覚えのある鍵だ。

有里「後ろでいいかな?」

美鶴「ああ。そのつもりで誘っている。どうだ?」

有里「喜んでご一緒するよ」

>……。

>風が気持ち良い。
>これは、美鶴が気に入るのも良くわかる。
>まるで、悩み事や自分の体も全て、風が持ち上げて吹き飛ばしてくれるような感覚だ。
>運転する美鶴を見てみる。
>ヘルメットで顔は見えないが、なんというか、キマっている。
>こうして信頼できる相手にただ身を任せるというのも悪くは無い。

>……。

美鶴「ふぅ。どうだ?」

有里「ん、気持ちよかった……もっと早くに教えてくれれば良かったのに」

美鶴「そうか、すまなかったな。まぁ当時は忙しかったし、許してくれ」

>美鶴は笑っている。
>ああ、やっぱり美人だ。
>惜しい事をしたかな……。

美鶴「ほら、ここからだと景色がいいだろう。たまに、ここに来て街を見下ろすんだ。そうすると、自分の悩みが凄く小さく思えて、気が楽になる」

有里「まだ悩むことが?」

美鶴「君からもらった勇気も底をついてな。……それなりに、上手くはやっているよ。ただ、それだけだ」

>少し寂しそうな横顔。
>ちょっとだけ胸が痛む。

有里「大変だね、相変わらず」

美鶴「別に、普通に過ごしていても悩みなんて尽きないものだ。それに一番の悩みは、君がいない事だった」

有里「僕が?」

美鶴「ああ。私は……駄目なんだ。君がいないと。いなくなってあらためて思い知った」

有里「そんなこと……」

>美鶴はゆっくりと首を振る。
>赤い髪が動きにつられて流れた。

美鶴「本当は、頭も良くないし、魅力的でもなければ勇気も無い。そういう人間なんだ、私は……君がいなければ、つまらない事でくよくよ悩んで、一歩も前に進む事ができない」

有里「そんな事ないよ。美鶴は、僕がいなくても十分やっていける。僕はそれを知ってる」

美鶴「通用しないか。たまには甘えてみたかったんだがな。確かに、君がいなくともなんとかやっていけていたさ。それも、君が帰ってくるまでの話だ」

有里「僕が?」

>何かを言おうとして、また口を閉じる。
>それを2、3度繰り返してようやく言葉が見つかったようだ。

美鶴「君に言うと、怒られるかもしれないが……君が帰ってきたのを知ってから私は君に頼る事ばかり考えている。逃げ場にしようとしている」

有里「……帰って来ない方が良かったかな?」

美鶴「そんなこと、ない。だけど……私の中で、君はそのくらい大きいんだ。許して……」

有里「美鶴……」

>美鶴や、特別課外活動部の他のメンバー。
>それと、八十稲羽の皆。
>どこか、凄く大きい違和感を感じていた。
>それは多分、ここだ。
>悠の存在は彼らの中でとても大きい。
>しかし、いなくなってもある意味平気なのだ。
>彼等は自分の足で立つ方法を知っている。
>それは、誰かに教わったのか……あるいは、テレビの中でのシャドウとの相対がそれを学ばせたのか。
>とにかく、自立する事が出来る……そして、それを抑え付ける存在も無い。
>こちらの皆が弱いとか、劣っているという話では無いと思う。
>単に機会の有無、背負っている荷物の重さの問題だ。
>特に美鶴は、他の誰よりも荷物が重い。

有里「美鶴。僕は君の逃げ場にはなれない。本当はわかっているはずだよ」

>酷かもしれない。
>けれど、はっきりと言っておかなければならない。
>もしまた僕がいなくなっても、歩いていけるように。
>美鶴は恥ずかしそうに微笑んで、それから俯いた。

美鶴「……ああ。そうだな。私は私で、君は君だ……逃げた先に、解決策は落ちていない。私は誰よりもそれを知っている。でも……」

>美鶴の指が顔に触れる。

美鶴「君から、勇気をもらってはいけないだろうか?私の……私が、少しでも大人になれるように。手助けをしてほしい……駄目か?」

>ゆっくりと、顔を引き寄せて。
>僕は美鶴の唇に一度目をやり、一度微笑んで、応じるように目を閉じた。

>……。

有里「そういえば、美鶴も大学生でしょ?今日学校は?」

美鶴「ん、ああ。……一日くらい、いいだろうと思って」

有里「サボり?美鶴、変わったね」

美鶴「駄目かな……?」

有里「いや、今の方が好きだ」

美鶴「……そう、か。さて、そろそろ帰るか?」

有里「そうしようか。それとも、もうちょっと補充していく?」

美鶴「ばっ、からかわないでくれ……」


【夕方 巌戸台分寮】


有里「……ふぅ。……ふぅぅ……」

>やってしまった……。
>どうして僕はこう一途に生きるって事が出来ないんだろうか。

有里「いや、でも今日のは……僕のせいじゃなくないか?」

>……いや、僕のせいだろう。馬鹿か。

有里「かいしょーなしのゆーじゅーふだんか……」

>里中さんの想いに応えようと思っていたのに、他の女の子も気になるとは……。

有里「しかし……求められると応じずにはいられない……なんて事だ……」

>試しに想像してみると、ゆかり、風花、美鶴、里中さん、天城さん、りせ、直斗、エリザベス、マーガレット……菜々子。誰から誰まで全部受け入れてしまいそうな気がする。

有里「菜々子はまずいだろう、菜々子は……陽介とか順平辺りに言ったら即怒られそうな悩みだ」

>相談できそうな相手は……。

天田「どうしたんですか、頭抱えて」

有里「ああ、乾……丁度いい、聞いてくれないか」

天田「悩み事ですか?僕でよければ」

>乾か……話を聞いても怒る事は無さそうだが、解決できるだろうか……。

有里「乾がそうだったらって思って聞いて欲しい。まず、誰か女の子に告白されるだろう?」

天田「有里さんも恋愛で悩むんですね……僕なんかで力になれるかわからないけど、聞きますよ」

>乾はにこりと微笑んだ。
>その笑顔の何と頼もしい事か。

有里「ありがとう。で、その子以外にも好意を寄せられていたとして。告白された子以外の子と仲良くするのってどうなんだろう」

天田「うーん……そうですねぇ……告白されたって、返事はどうしたんですか?」

有里「えーと、はっきり告白されたわけじゃなくて、示唆された程度で……返事は濁したんだけど、ある意味はっきり断ったというか」

>乾は顎に手を当てて唸っている。
>こんなに真剣に悩んでくれるとは……。

天田「難しいんですが、まず何で断ったんですか?」

有里「何でって、それは……」

天田「その人の事が好きじゃなかったから?」

有里「いや、好きだよ」

天田「だったら何故?」

有里「えーと……なんというか、応えてしまうと余計辛い思いをさせやしないかと」

天田「それで、他に好意を寄せてくれている女の子は好きなんですか?」

有里「……そうだね、好きだ」

天田「で、そっちは普通に仲良くしてると」

有里「うん」

>一瞬あきれたような顔をされた。
>見逃さなかったぞ僕は。
>その後、乾は慎重に言葉を選んでいるようで、眉間に皺を寄せている。

有里「あの……」

天田「ええと、すごく失礼な事を言ってしまうかもしれませんが、いいですか?」

有里「どうぞ。そういう率直な言葉が聞きたいんだ」

天田「えー……あの、普通に考えて、ですよ。最低……ですよね」

>頭の中に風花の声が響いた。
>弱点にヒット、と……。

天田「あ、その、すみません。僕なんかが……でも、それほんとに良くないと思うんです」

有里「そうだね……誰彼構わず仲良くするのは良くないね……」

天田「いや、そうでなく。……それも確かにまずいとは思いますけど。今の話だと、告白してくれた人は拒絶しておいて、他の人には気を持たせてるって事になりますよね?」

有里「……ああ、なるほど」

天田「本当に誰彼構わずならいいんですけど、そこが微妙に引っ掛かって。中途半端なんじゃないかなあって思ったんですけど……」

>なるほど、この罪悪感の原因はそこにあったか。
>というか、それを中学生に言われるのもどうなんだ。

天田「見た所、まだどうしたらいいか決まっていないというか、角を立てずに誰かを選ぶ方法を探しているようですけど、それって無理だと思うんですよね」

有里「うん……」

天田「なので、それなら全員ちゃんと見つめ直した上で考えるとか……もし、根本的に言ってる事が間違ってたらすみませんけど」

>不安そうな顔でこちらを伺う乾の後ろに後光が見えた。

有里「というか、何で僕はそんな人として当たり前の事に気付かなかったんだ!」

天田「えっ!ちょ、そこまで言わなくても……」

有里「ありがとう、乾。おかげでちょっと楽になったよ。……自分で自分の事っていうのは、驚くほど見えない物なんだね」

天田「は、はぁ……良かったです」

>そう、決められないならもっと材料を集めればいい。
>何も決めずにうろつくばかりなのが一番いけないんだ。
>里中さんに……ちゃんと伝えないと。
>帰りを待とう。



【放課後 月光館学園】


>曇り空が気分を暗示しているようだ。
>今一つすっきりしない感覚に覆われている。
>授業にも全く身が入らなかった。
>美奈子か……。
>彼女は本当に味方なのか?

陽介「……なー。なーおい。なー悠ってばよぉ」

>ふと我に帰ると、陽介が顎を肩に乗せている。

陽介「何悩んでんだよ。大丈夫かよ?」

鳴上「ああ、ちょっとな……」

陽介「大丈夫ならいいけどよ。そーだ、今日遊び行こうぜ!俺らそろそろ帰んないといけないだろ?だからさ、ぱーっとこう、な!」

鳴上「耳元で言わなくても聞こえてる。そうだな、じゃあ里中も誘うか」

陽介「お、いーね。皆で行こう皆で。で、その里中は……」

>里中の席に目をやると、机に突っ伏してぐったりしている。

陽介「ありゃ今日の授業も全くわかんなかった時のアレだな」

鳴上「陽介は今日は大丈夫だったのか」

陽介「順平さんがマジで教えるの上手くてよ。なんつーか、勉強できない人間を良くわかってるっつーか。引っ掛かるとこ全部把握してんだよな。おかげでスラスラよ」

鳴上「意外な才能だな」

陽介「人間見た目じゃわかんねーもんだな」

鳴上「その言い方は失礼だろ」

>話しながら里中の席へ移動して肩を叩く。

鳴上「里中」

千枝「ふぁい……なんれしょー……」

鳴上「……いや、この後遊びに行かないかって言いに来たんだが」

千枝「あぁー……うん、いいよ……ちょっと待ってね……」

>顔を上げて、両頬をパンパンと張る。
>……少し、叩きすぎじゃないだろうか。

千枝「うぁっ……くらっとキた……ふぅっ!ん、オッケー!んじゃ行こっか!」

陽介「悠はどっか良いとこ知ってんだろ?」

鳴上「まぁ、とりあえずあそこだろうな」


【ポロニアンモール】


陽介「っしゃゲーセン行こうぜゲーセン!」

千枝「あ、カラオケとかあるんだっけ。久々に行ってみたいなー」

>陽介と里中は周りをきょろきょろと見回している。
>別に地元民ではないのだが、少し誇らしい気持ちになった。

陽介「……あれ?」

>陽介が何かを見つけたようで、動きが止まる。
>里中もそっちを見て、驚いたような顔をしている。

鳴上「どうし……ん?」

>二人の視線の先には一人の女性がいる。
>たこ焼きを頬張りながらクレーンゲームの景品を眺めているその姿は……

鳴上「美奈子、何でここに?」

>間違いなく、病院にいるはずの有里美奈子だった。

美奈子「お?悠こそどうしたの?」

鳴上「いや、俺は遊びに来ただけなんだが。美奈子はまだ入院してるんじゃなかったのか」

美奈子「えー、だって特に異常ナシって言われちゃったし。美鶴先輩に聞いたら出て良いよって言われたからー」

鳴上「桐条先輩が?本当なのか?」

美奈子「うん。私の事はいいから湊とドライブでもしてきなよって言ったら許可が出た」

鳴上「……心得てるな。ていうか、お前そんなキャラだったか?」

美奈子「今までは湊の体にいたからねー。引っ張られて湊っぽくなってたのかも。ほら、言うじゃない?精神など肉体の玩具にすぎないってさ」

鳴上「そういうものか……というか、お金持ってたのか」

美奈子「先輩がくれた」

鳴上「ああ、そうか……じゃあ美奈子も混ざるか?」

美奈子「いいの?」

鳴上「二人がよければな。どうだ?」

陽介「俺はぜんっぜん構わねぇ!美奈子ちゃん、よろしく!」

千枝「私もいいよ。美奈子さんだっけ、よろしくね」

美奈子「ん、よろしく!で、どこ行くか決まってるの?」

鳴上「いや、これから適当に回ろうかと思ってた」

美奈子「だったら任せて!ポロニアンモールに入り浸った時間なら負けないんだから」

陽介「なんだかわかんねえけど頼もしいな!」

千枝「こんな元気な子だったんだ……ちょっと意外」

美奈子「ほらほら三人とも、行くよー!」

>美奈子は元気良く先導していく。
>……陽介も里中も楽しそうだ。
>とにかく、ついて行こう。

>……。

千枝「あっちょー!」

美奈子「千枝すごーい!新記録!」

陽介「うげっ、俺より大分上だな……足技専門じゃなかったのかよ」

千枝「クンフーが足りんよ花村!」

>千枝がパンチングマシーンで記録を出したようだ。
>挑戦してみる事にしよう。

千枝「お、鳴上君やる気だね?」

陽介「男の意地見せてやれ悠!」

美奈子「陽介はさっき負けたじゃん、あっさり」

鳴上「行くぞ……ふっ!」

>ぱかーん。
>軽い音が響いて、ミットを支えていた支柱が折れた。

陽介「あー!」

鳴上「い、いや俺はただ……」

千枝「でもすごいね、これって壊れるもんなんだ……」

美奈子「悠すごーい」

店員「ちょっとお客さん困りますね」

鳴上「ち、違うんです、これは……」

>……。

鳴上「平謝りしたら許してもらえた」

陽介「流石の伝達力だな相棒」

千枝「誠意って大事だね……」

美奈子「私その間にフロスト人形一杯手に入れたんだけど、これ欲しい人いない?」

陽介「美奈子ちゃんクレーンゲーム上手いんだな。一個もらっていい?」

千枝「じゃあ私も一個」

美奈子「はい、どーぞ。んじゃ次はやっぱアレだね!」

>……。

美奈子「カラオケです!」

>美奈子は既にタンバリンを持ってスタンバイしている。

千枝「最初の一曲は恥ずかしいから私パスで……」

陽介「あ、ずりーな、俺だってちょっと恥ずいっつの」

鳴上「美奈子は歌得意なのか?」

美奈子「え?うーん、それなり……だけど、いっつも一人カラオケだったから人に聞かせるの恥ずかしいかも」

>仕方ない、ここは……。

鳴上「俺が行こう」

陽介「お、悠か!何歌うんだ?」

美奈子「タンバリンは任せて!ヘイヘイ!」

>『疾風ザブングル』

千枝「……花村、知ってる?」

陽介「いや、俺はちょっと……」

鳴上「……すぅっ、疾風のよぉおにいいい!」

美奈子「ざぶんぐるー!ざぶんぐるー!」

陽介「おお、あの二人の間では成立している……」

千枝「やっぱ、変わってるね……」

>……。

陽介「曲はわかんねーけど妙に熱かったな!」

千枝「じゃあ、次私行こうかな」

美奈子「千枝がんばれー!」

鳴上「何歌うんだ?」

千枝「んー、これ、かな?」

>『Reach out to the truth』

陽介「里中なのに結構いい趣味してんな!」

千枝「うっさい!……よし、と。Now I face out I hold out」

>……。

美奈子「ひゅー!千枝やるじゃーん!」

陽介「お前って結構歌上手いのな」

鳴上「ああ、良かったな」

千枝「照れるから!やめてって!」

陽介「じゃあ次!次俺な!」

美奈子「陽介は何歌うのかな?」

陽介「そうだなー、これ!とかどうよ!」

>『Breakin' through』

鳴上「どっかで聞いたような曲だな」

陽介「いくぜー……感情に抗うなよぉ!その足を止めんな!」

>……。

千枝「普通だったね」

鳴上「普通だな」

陽介「何だよそれ!酷くね!?」

美奈子「よーし、それじゃ満を持して私が……」

>『Wiping All Out』

鳴上「!!」

陽介「どうした相棒、急に立ち上がって」

鳴上「ダブルマイクだ!行くぞ美奈子!」

美奈子「おっけー!」

鳴上「Been a little but I'm still battling moving fast while you's just pratting no time for me no tangiling hit you in the spot with no angle end」

美奈子「I'm not princess nota cutie girlfriend oh no don't you know?」

>……。

陽介「お前ら、何なんだよ……」

千枝「いろいろ凄かったね……」

鳴上「美奈子」

美奈子「悠」

>美奈子と堅い握手を交わした。

陽介「何かが出来上がったな、あそこで」

千枝「割とおいてけぼりなんだけど」

美奈子「さてと。千枝、この後何か予定は?」

千枝「え、私?特にないけど……」

美奈子「ちょっと話したい事あるんだ。よかったらコーヒーでも付き合ってよ」

千枝「あ、うん。いいけど」

美奈子「そういうわけだから男子は帰った帰った!あんまり遅くまで遊んでると美鶴先輩に怒られるよ!」

>美奈子はしっしっと俺達を追い払おうとしている。

陽介「なんだよー、しゃあねえなぁ。俺らは男同士、楽しく帰るか!」

鳴上「そうだな、本当に怒られかねない。帰ろうか」

美奈子「またねー」

千枝「また後でね」

>気がつくと随分遊んでしまった。
>寮に帰ろう。


【夜 巌戸台分寮】


>ラウンジには何故か頭を抱えている湊がいた。

陽介「なぁ、アレ……」

鳴上「そっとしておこう」

陽介「いや、そういうわけにゃいかねーって。帰る日決めねーと」

鳴上「そうだった……あー、み、湊?」

>湊は一瞬こちらを見て、ため息をついた。

有里「おかえり。里中さんは?」

陽介「ああ、美奈子ちゃんと女子会中だってよ。あのさ、俺らいつ八十稲羽帰るよ?そろそろ用事も済んだんじゃねえの?」

有里「まぁ、一通りはね。そうか……そろそろ帰らないとね」

鳴上「寂しくなるな」

有里「また来るさ。それに、悠もまた八十稲羽に行くんだろ?」

鳴上「そのつもりだ」

有里「じゃあいいじゃないか。……そうだ、里中さんが帰ってきたら教えてくれないか」

陽介「あ?どしたのよ」

有里「少し話がね」

>湊は困ったように笑っている。
>……また、しばらくの別れになるのか。

陽介「じゃあ俺またちょっと勉強するから。帰る日取り決まったら教えてくれよ。んじゃな」

鳴上「ああ。湊は……」

有里「悠の部屋にいてもいいかな」

鳴上「ん、俺はまだしばらくラウンジに居ようと思うから、里中が帰ってきたら伝えとくよ」

有里「お願いするよ。それじゃ」

>……。

>玄関が開いた。

鳴上「あ、おかえりなさい」

美鶴「ああ、君か。ただいま」

美奈子「たっだいまー」

千枝「ただいま」

>何故か桐条さんが一緒に帰って来た。
>どこで合流したのだろう?

美鶴「寮の前でたまたま一緒になってな。そうだ、有里はどこにいる?」

鳴上「湊なら俺の……湊の部屋だと思いますけど」

美鶴「里中が話があるそうでな」

>桐条さんと美奈子は愉快そうに笑っている。
>里中は……アギが出そうな程真っ赤だ。

鳴上「湊も話があるって言ってましたよ。丁度いいんじゃないですか?」

千枝「えっ!それって……」

美奈子「チャンス!ほら早く行った行った!」

千枝「あっ、うん。鳴上君、ありがとね!ちょっと行ってくる!」

美鶴「若いというのは良いものだな……」

美奈子「美鶴先輩だって十分若いですよね?」

美鶴「私は少し落ち着きすぎてしまったよ。彼女のようなまっすぐな感情はもう持てないだろう」

美奈子「へぇ~?ところで、今日湊と何してたんですか?」

>今度は桐条さんの顔が真っ赤になった。

鳴上「おお、すごい。一瞬で真っ赤に」

美鶴「べ、別に何もしていない!ただ、少し走るのに付き合ってもらっただけだ!」

美奈子「ふーん。じゃあ首の赤いのは虫刺されか何かですかねー。山に行くなら気をつけないと駄目ですよー」

美鶴「なっ!どこだ!」

美奈子「嘘ですよ、湊は痕残したりしないでしょ?」

美鶴「なん、うぅ……何故知っているんだ……」

美奈子「勘ですよ、勘」

>今頃部屋では湊と里中が何か話をしているだろう。
>目の前の二人は妙に盛り上がっているし……微妙に居場所が無い。

鳴上「陽介の所でも行くか……」


【順平の部屋】


陽介「っつぁー!わっかんねー!順平さんちょっとこれ見てくださいよ!」

>どうやら陽介は本当に勉強しているようだ。
>順平さんが笑いながら答えている。

鳴上「すみません、鳴上です。ちょっといいですか?」

順平「おー、どした。まぁ入れよ」

鳴上「失礼します……女性陣が妙に盛り上がってて居場所が無くて。そんで本当に勉強してたんだな」

陽介「やってるっつーの!マンツーマンよ!」

鳴上「陽介から聞きました。順平さんは教えるのが上手いらしいって」

>順平は照れたように笑っている。

順平「ま、俺くらい頭が良いとよ、人に教えんのもそりゃ上手くなるわけよ」

陽介「悠、違うんだってよ。この人、元々成績悪くてさ、そっから猛勉強して今の大学入ったから、同じくらいのレベルの奴が引っ掛かる所は大体わかるんだってさ」

鳴上「ああ、そういう事だったのか」

順平「陽介!それは黙っとけっつったろ!……いや、その通りなんだけどよ」

鳴上「でも、勉強したことをちゃんと活かせてるのは凄いじゃないですか」

順平「そうでもねーよ。……そういや、お前、進路どうすんの?」

>進路。
>正直、忘れて……いや、忘れてはいなかったが、頭の隅に追いやっていた。

陽介「俺はとりあえず進学して、それから経営とか勉強しようかなって思ってるんすけどね」

順平「経営?なんか意外だな」

陽介「家がショッピングセンターやってんすよ。だからまぁ、継ぐってわけじゃねーけど手伝いとかにも活かせるんじゃねえかなって」

順平「なるほどなー、それもアリだよな。で、鳴上は?」

鳴上「俺は……実は、まだ決まってないんです」

順平「へぇ、お前がね。意外っちゃこれも意外だな」

陽介「お前だったら大学どこでも行けるだろ?それとも何か理由あんの?」

鳴上「俺、やりたい事とか目標って無いんですよ。それでどうしようかなって悩んでて」

>……。
>二人とも黙ってしまった。

順平「まぁ、そうだな。適当に進学とか言わないだけ真面目っつーことかね」

陽介「お前って、しっかりしてる割に妙なとこで躓くよな。進路決定いつよ」

鳴上「夏だって言ってたから、今学期中には決めないといけないみたいだ」

順平「あと二ヶ月くらいか?どうすんだよ」

鳴上「ええと……どうしましょうか」

順平「どうしましょうか、じゃねえって。……あー、わかった。教えてやるよ、色々」

鳴上「え?」

順平「教えてやるっつってんの。俺も進路迷いに迷ったから、色々資料集めたりしたんだよ。だから、その辺教えてやる」

>順平さんが未だ紐解いていない荷物をあさって取り出したのは、様々な会社・大学のパンフレットだった。

陽介「うわ、ジャンル問わずって感じっすね」

順平「色々あってな。まぁ迷走してたんだけど。大学のパンフも会社のパンフも今年のだ」

鳴上「なんで持ってたんですか?」

順平「もしかしたらもっと俺のやりたい事に近い場所があるかもしんねーって思って、毎年調べてんだよ。だから、これは最新版」

陽介「はぁー真面目に考えてんすね。これまた意外」

順平「お前はいちいち失礼な奴だな……これやるから。他に話とか聞きたかったらいつでも聞く。だから、しっかり決めろ。自分の人生だろ」

鳴上「順平さん……」

陽介「順平さん……」

順平「似合わねーことやらせんじゃねえって。ほら、陽介はとっとと勉強しろ!」

>順平さんは照れているようだ。
>陽介は笑いながら勉強に戻った。

鳴上「ありがとうございます。早速読ませてもらいます」

順平「おう……がんばれよ」

>順平さんにお礼を言って部屋を出た。
>順平さんに対する見方が少し変わった。
>『No.01 魔術師 伊織順平』のランクが3になった。


【鳴上の部屋】


>コンコン。

有里「悠ならラウンジだよ」

千枝「うん、知ってる。じゃなくて、有里君に用なんだけど」

有里「あ、里中さん。丁度良かった、僕も話がある。えーと……とりあえず、入って」

>ガチャ。
>里中さんが無言で部屋に入ってくる。
>いつかのように一つ深呼吸すると、ベッドの端に座った。

有里「……この距離は何かな」

千枝「……これ以上は恥ずかしいから、ここでいい」

有里「そう……」

千枝「……」

>気まずい沈黙だ。
>駄目だ、恥ずかしい。
>顔に出さないので精一杯だ。
>小学生くらいまで戻った気分だ。

千枝「あの、さ」

有里「……ん?」

>タイミングを逸した。
>先に切り出されてしまったら仕方が無い……とにかく話を聞くことにしよう。

千枝「この前から、ちょっと態度悪かったよね私。まず、ごめん」

有里「いや、そんなこと……」

>いつもならぽんぽん出てくる気の利いた台詞が出てこない。
>フェロモンコーヒー不足か……?

千枝「前にさ、話したじゃん。好きな人が出来たんだって」

有里「うん」

千枝「あれね、有里君の事だったんだよ……気付いてると思うけどね。
   前の日にさ。私達と山岸さん、アイギスさんで残って話てたでしょ。そこでさ、そういう話になって……私が、ちらっと言っちゃったんだよね。
   もしかしたら、有里君の事……好きなのかも。ってさ。そしたら皆に応援されて。それで、次の日……」

有里「僕の所に来たんだね」

千枝「そういうこと。で、まぁ……あんな風に言われると思ってなくて。ちょっと期待しちゃってたのかな。
   動揺して、逃げちゃって。それから、あのテレビ……人形劇を見て、もしかしたらって思って。また思い直して……。
   一人であたふたして、有里君にも皆にも迷惑かけて……ほんと、ごめん」

>里中さんはもう泣き出しそうになっている。
>ああ、自分のなんと情けない事か。
>泣きそうな女の子を助けることもできないとは。

千枝「で、さ。嫌いに……なろうとしたの。あんな酷い事言う人なんてって思って。けど、わかっちゃったんだよね……あれも結局、有里君なりの気遣いなんだなって。
   それからもさ、私がいちいち冷たくしようってしてるのに、お構いなしで……正直、困っちゃった」

有里「……ごめんね」

千枝「謝る事じゃないって、全然。……嬉しかったんだもん、私。そのせいで……そのせいで、ね」

>潤んだ瞳がこっちを見つめている。

千枝「嫌いになんてなれないなって。わかっちゃったんだ」

>これ以上、一言だって喋らせちゃいけない。
>彼女にこれ以上無理をさせちゃいけない。
>今、目の端に溜まっているあれを零れさせちゃいけない。
>言うなら、今だ。

有里「僕も謝る事があるんだ」

千枝「え?」

有里「あの時……僕はいらない気遣いをした。いや、気遣ったフリをして、逃げた。里中さんと、特別な関係になる事から。
   浸っていたんだ、悲劇のヒーローに。誰かを選ぶと、どこかで切れる物がある。それを知っていたから」

千枝「有里君……?」

有里「僕はこう見えて……女性と交際をしたことがない。告白された事はあっても、それを受けた事は無い。皆と特別な関係になりながら、それを言葉にした事は無い。
   何故か。逃げていたんだ。事実を作ってしまうと、どこかで悲しむ人がいそうで、誰かに嫌われてしまいそうで。
   怖かったんだ。だから八方美人、皆に同じように尽くした。それがどれだけ……相手を馬鹿にしているか、考えもせずに」

千枝「……」

有里「里中さん。……千枝、でいいかな」

千枝「うん、どうしたの?」

有里「僕は、はっきり言ってこの手の話題には弱い。いろんな面でね。だから、今君に応える事は出来ない……だけど。
   いつかは選ぶ。誰かを、きっと。申し訳ないけれど、それは千枝じゃないかもしれない。けど、今までみたいに逃げたりしない。
   その時まで……今までどおり、友達でいてくれませんか」

千枝「有里君……あのさ。一個だけ、またわがまま聞いてもらっていいかな?」

有里「何でも聞くよ。何がいい?」

千枝「一回だけ、ぎゅって、その……して欲しいんだけど」

>……零れた。
>だけど、千枝は笑っている。

有里「いくらでも。ほら」

千枝「……えへへ。じゃあまた友達から、よろしくお願いします」

>耳元で千枝の嗚咽が聞こえる。
>緊張の糸が切れたのか、泣き出してしまったようだ。
>千枝をずっと抱き締め続けた……。

>千枝との関係が元に戻った。
>『No.11 剛毅 里中千枝』が正位置に戻った。
>更に、千枝と正面から向き合ったことで、信頼が深まったようだ。
>『No.11 剛毅 里中千枝』のランクが5になった。

仲直り。
意外と出来る先輩。
結局女たらし続行。

密度上げてみたけどもしかして読みにくいかな・・・読みにくかったら戻そう。

というわけで本日分は終わり。
では、また後日。

うむ、出ると思ったNTR話。

えっと、丁度いいのでここらで以前見たレスのお話を。
全員攻略するのが大前提なの?というレスですね。
攻略、というのが仲良くなる事なら、目標としてはそうです。
ですが、男女の関係になることを攻略とするならそれは違います。
コミュメンバーは全員それぞれの作品の主人公に非常に大きな好意を抱いています。
じゃあなんで今傾いてる奴いるんだよって話になると、それはフィーリングであったりタイミングであったり。
要するにたまたまその人がどちらかの主人公に合っているというだけの話です。
なので、別に全員くっつけようとかしてるわけではないです。

長々と言い訳しましたが、不愉快に思われるのは覚悟の上というか、自分に技量が無いだけの話ですんで。
救いとしては別にお金を取っているわけではないという点でしょうか。
どうしても気に入らないという方は、この作者下手すぎるから読むのやめるってやめてもらうしかないです……。
せっかく見てもらったので、最後まで読んで欲しいですけど。

長々と語りましたが、それでは本日分。



【2012/5/10(木) 晴れ 巌戸台分寮】


>起きたが、湊はいない……。
>もう起きていたようだ。
>ラウンジにでもいるのだろうか。行ってみよう。

陽介「お、相棒。今日は俺のが早かったな!」

千枝「あ、おはよー」

美鶴「おはよう。君は規則正しい生活を送っているんだな。感心する」

有里「おはよう。……帰る日が決まったよ」

鳴上「おはようございます。なるほど、それで皆集まってると」

>陽介は露骨に残念そうにしている。

陽介「もうちょい遊びたかったぜー。雨降らなきゃもうちっと色々あったんだろうけど」

千枝「仕方ないでしょ、天気ばっかりは。諦めなさいって」

美鶴「残念だったな。また連休には遊びに来るといい。歓迎しよう」

陽介「マジっすか!……あ、でも俺勉強しねーとだしな……」

有里「あ、そうだ。僕も学校通う事になったから」

陽介「お、マジか!大学?」

有里「いや、最後に通ったのが高二だから、陽介達と同級生。よろしく」

美鶴「そういうわけだ。君達、また有里をよろしく頼む」

千枝「あ、桐条さんが手配してくれたんですか?」

美鶴「ああ。少し伝手を使っただけだから、世話という程のものでもないが」

千枝「ありがとうございます!」

鳴上「何で里中が言うんだ」

千枝「へっ?あ、つい……いいじゃん、別にさ!」

有里「で、僕達は明日学校終わったら帰ることにしたから」

鳴上「明日か……丁度週末だしな」

>明日、学校から帰ったら三人は八十稲羽に帰ってしまうらしい。
>という事は、実質今日が最後の日となるわけか……。

陽介「おいおい、なんつー顔してんだよ悠。何も一生の別れってわけじゃ無いだろ?」

千枝「あはは、ほんとだ。また会えるじゃん、ね」

美鶴「そうだな、明日の夜には出立するとして……今夜、送別会でも開くか。都合の良い者に集まってもらおう」

有里「いいね、最後の夜だし、皆で騒がしくお別れといこうか」

>最後の夜。
>確かに、もう会えないわけではない。
>しかし、何故だろう。
>二度と、同じように会えないような、そんな予感がする。

有里「悠。それは仕舞っておこう。……大丈夫さ、きっと」

>いつの間にか湊が隣に立っていた。
>湊も同じように感じているのだろうか。

鳴上「そう、だな。よし、それじゃ今夜は楽しもう。俺、学校の準備してきます」

陽介「っと、もうそんな時間かよ。俺も荷物取ってくるか」

千枝「あの桐条さん、ちょっと……」

美鶴「ん?……ああ、なるほど。いいさ、手伝おう」

>とにかく、今夜が湊たちと過ごす最後の夜だ。
>……悔いの無いように過ごそう。



【月光館学園】


男子「おーい、もう帰っちゃうのかよ。マジで?」

陽介「ああ。ランキングの完成を見れねーのが心底残念だけどよ……」

男子「俺達……また、会えるかな」

陽介「お前が可愛い女子を追い続けてれば、いつかな」

男子「陽介……!」

陽介「泣くんじゃねえって。俺達、離れても友達だろ?」

>前の席では茶番が繰り広げられている。

鳥海「はーい席着いてー。全くこのクラスはどうかしてるわよ、ほんとに。えー、鳴上君に始まり研修生を受け入れ、さらにこの中途半端な時期に転校生です」

男子「転校生?女子かな」

陽介「俺が帰る直前に女子だったら泣くぜ?」

>どうやら転校生が来るらしい。
>……転校生?

美奈子「どーもー、有里美奈子って言います!親の都合でこっちに越してくる事になりました!これから一年も残ってないけど、皆さんと仲良くやれたらなーって思います!よろしく!」

陽介「なぁ」

鳴上「ああ」

男子「またお前らの関係者かよ……」

鳴上「どうやら、そうみたいだ……」

鳥海「席は鳴上君の隣ねー。もうその辺だけで新クラスとか作っちゃえばいいんじゃないのってくらい新人ばっかね」

>美奈子が鞄をぷらぷらしながらやってくる。

美奈子「やっ!悠、これからよろしくね!」

鳴上「……ああ、よろしく」

男子「有里さん?だっけ。よろしくね」

美奈子「美奈子でいいって。よろしくぅ!」

>美奈子が月光館学園に通う事になった。
>恐らくは桐条さんの手引きだろうが……
>いろいろと、大丈夫だろうか。
>……。


【昼 鳴上の部屋】


>この不思議な感覚。
>まるで、初めてこの寮を訪れた時のような……。
>あの感覚は何なのだろうか。
>何かが近寄ってくるような、何かに行き当たったような。
>探していた物が、すぐ近くで見つかったような。これだったか、と唸るような、そんな感覚。
>あれ以来、この感覚とは随分ご無沙汰だった。
>それは、僕が渦中にいた為か、何か別の理由か。
>ともかく、はっきりとわかる。
>事件は始まっていなかった。
>美奈子が肉体を得たからか、様々な切欠のどれかが当たったのか、本当の部分が動き始めた。
>これからこの事件がどんな顔を見せるのか。
>それ次第では……。

>コンコン。
>物思いに耽っていると、扉がノックされた。

岳羽「あ、私。今いい?」

有里「ああ、ゆかり……どうかした?」

岳羽「どうかしたっていうか、ちょっと話せない?」

有里「ん、ちょっと待ってね」

>身支度を整える。
>丁度少し歩きたかった所だ。
>ゆかりと出掛けることにしよう。

有里「お待たせ。良かったらちょっと出ようか」

岳羽「あ、うん。じゃあどこ行く?」

有里「コーヒーでもどうかな?」

岳羽「わかった。じゃ、行こっか」



【シャガール】


>改めて見ると、ゆかりも、やはり大人になったという事だろうか。
>以前より落ち着いた格好をしている。
>……。

有里「置いていかれた気分だな」

岳羽「は?何が?」

有里「いや、皆変わってるからさ。今更だけど、差がついちゃったなって」

>自嘲気味に笑う。
>そんな事を言ってもどうしようも無いのはわかっている。
>なにより、僕が勝手にやったことだし。

岳羽「ていうか、やっと追いついたって感じじゃない?君さ、やっぱり抜けてたもん、私達の中じゃ」

有里「僕が?」

岳羽「うん。なんていうのかなぁ。一番大人だったっていうか、色んな部分で現実をしっかり見てたっていうか」

有里「……そうかな」

岳羽「むしろ、ちょっと子供になった?最近見てるとそう思うんだけど」

>ゆかりは笑った。
>……そう言われれば、そんな気もする。

有里「そうかもしれないね。あの頃、僕には色んな物が足りなかったから。それを皆が埋めてくれて、やっと年齢相応になれたって所かな?」

岳羽「滅多に笑わなかったし、感情とかってあるのかな?って思うくらい仏頂面だったしね。今はそれなりに表情豊かって感じ」

有里「自覚は無いんだけどね。人に言われるとそうかなって思う」

岳羽「昔も別に感情無いわけじゃなかったけどね。それに気付くのに結構時間かかったけど。あの仏頂面の奥で色々考えてるんだなって」

有里「そう?結構適当だったんだけど」

岳羽「そういう人をからかう感じも、慣れたらむしろ気持ちよくってさ。……知らない間に、凄く居心地良くなっちゃってたよ」

>そう言うと、懐かしむように目を細めた。
>僕にとってはつい最近の出来事だが、彼女にとっては三年も前の話だ……。

岳羽「……帰っちゃうんだね。どうして?」

有里「どうして、って……悠は学校があるから、こっちに居なきゃいけない。だから、僕が向こうに行かないと」

岳羽「こっちに居ても協力は出来ると思うんだけど?」

有里「そうかもしれないけど……」

岳羽「私は、居て欲しい。君とまた一緒に居たい」

有里「ゆかり……」

岳羽「なんて、言っても聞かないよね。君、私の言う事素直に聞いてくれた事ないし」

>ゆかりは寂しそうだ。

有里「予感がするんだ。今回、きっと僕だけでは解決できない。あの時、皆がいてくれても、皆が納得するこたえに手が届かなかった」

岳羽「皆が幸せになるこたえ……ね」

有里「でも、今度は違う。悠がいる、悠の仲間がいる。それと僕もいる。ゆかりや、仲間がいる。皆で力を合わせれば、きっと」

岳羽「やっぱ、変わったね。昔はそんな風に熱く言うタイプじゃなかったのに」

>言われて、少し恥ずかしくなる。

有里「……決めたんだ。かっこつけるのはやめようって。みっともなくてもいいから、余力なんて残さずやってやろうってね」

岳羽「いいんじゃない?その方がかっこいいよ。惚れ直すかもね」

有里「それは有難いね……そうだ、今日僕らの送別会してくれるらしいんだよね」

岳羽「あー、美鶴先輩が張り切ってたよ。帰って手綱握った方がいいかもね」

有里「放っておくとどうなるかわからないからね。じゃあ、帰ろうか」

岳羽「ん。あ、私出すよ」

>財布を取り出そうとすると、ゆかりに制された。

有里「でも……」

岳羽「いいからいいから。たかだかコーヒーだし。お姉さんに任せときなさいって」

有里「同い年だろ?」

岳羽「三年前まではね。今は私が上って事で」

有里「……ゴチです」

岳羽「よしよし。素直が一番だよ。ね?」

>ゆかりは随分と大人になっていたようだ。
>言葉の端々に余裕を感じる。
>ほんの少し、悔しかった。
>……寮に帰って、送別会の準備をしよう。



【放課後 月光館学園】


美奈子「ふぃー終わったー」

陽介「美奈子ちゃんも出来る派かよぉ……」

美奈子「伊達にDHA摂ってないって」

鳴上「DHAって本当に効果あるんだな」

陽介「そういやさ、美奈子ちゃん今夜の話聞いた?」

美奈子「ああ、送別会だっけ?……出ていいのかな」

鳴上「いいんじゃないか?美奈子も寮に住むなら仲間だろ」

美奈子「うん……うん。そんじゃ私も出席しようかな!折角会えたのにすぐお別れでちょっと寂しいけどね」

陽介「また会いに来るって。帰りに何か買って帰った方がいいのかね?」

美奈子「いや、発案美鶴先輩でしょ?多分……」

鳴上「ああ、そうだろうな……」

陽介「そりゃ期待できんじゃねーの!?」

美奈子「引くと思うよ」

鳴上「ありそうだな」

陽介「えぇ……」

>とりあえず、寮に帰って準備をした方が良さそうだ。
>桐条さんに任せていると……。
>急ごう!


【夕方 巌戸台分寮】


美鶴「早かったな、お帰り」

鳴上「ええ。急いで帰って来たので。今夜の送別会、何か必要な物とかありませんか?」

美鶴「私が準備しようと思っていたんだが、余程楽しみにしているんだな。なら君達に準備を任せてもいいか?」

>桐条さんは笑っている。
>何か勘違いされているようだがまぁそれはいい。

陽介「そんじゃ準備すっか。買出し行ってくるわ!」

千枝「あ、私も行く!何かいる物ある?」

美奈子「適当に揃えてきてよ、センスに任せる!」

鳴上「同じく。ちなみに桐条さんが用意しようとしてたのって……?」

美鶴「ん?いや、どこかホテルでも借りようかと……」

鳴上「折角だし寮でやりましょうよ、良い思い出になりますよ」

美鶴「そうか?ならそうしよう。飲み物くらいは私に任せてもらってもいいか?」

美奈子「どうしよう、悠」

鳴上「流石に飲み物くらいは平気だろう。陽介達も買ってくるだろうし、そこまでおかしな事にならないと思うが」

美奈子「じゃあ飲み物はお願いしますね!ラウンジ、ちょっと掃除したほうがいいかな?」

鳴上「手伝うよ」

岳羽「ただいま……おー、やってるやってる」

>ラウンジは綺麗に片付けられ、いつもと違う大きな机が置かれている。

鳴上「おかえりなさい。今準備してるんで、もう少しして皆帰ってきたら始められますよ」

美奈子「あと美鶴先輩が今飲み物調達に行ってるんだけど……」

岳羽「あ、嫌な予感するからちょっと待ってて」

>ゆかりは携帯を取り出すと電話をかけた。

岳羽「あ、もしもし先輩?私……うん、その話なんだけど。うん。うん。……いや、駄目でしょ。ていうかアルコール無理じゃんあの子ら。もー、多分そうだろうと思ったよ……」

有里「手伝うよ」

鳴上「助かる」

有里「送別会ね。……悠。こっちの仲間は好き?」

鳴上「なんだ、突然。そりゃ好きだぞ、皆良い人だし……どうかしたのか?」

有里「ならいいんだ。少し気になったものだから。それに……」

陽介「買い出し終わり!いやー重いのなんのってよー」

千枝「あんたそんなに持ってないっしょ。私がほとんど持ってんじゃん」

陽介「こういうのは頭脳派の俺には向いてねーんだよ」

鳴上「おかえり。セッティングも出来たから後は人だけだな」

>不思議な感覚は嫌な予感に姿を変えつつある。
>恐らくは悠もそれを感じているはずだ。
>誰かに伝えておくべきだろうか……。

有里「いや、やめておこう」

>予感は予感で終わらせるのが一番良い。
>まだわからない。
>僕達なら、変えられるかもしれない。

>さぁ、送別会だ。


【夜】


美鶴「明日、有里、花村、里中の三名が八十稲羽に帰る。一応、明日も見送りに行く予定だが、予定のある者もいるだろうということで……」

有里「今夜、僕達の送別会をしてくれる事になりました」

千枝「短い間だったけど、お世話になりました!良ければまた遊びに来させてください、楽しかったです!」

陽介「俺……もっといたかったっす……皆さん本当に……良い人ばかりで……ふぐぅ!」

順平「泣くな!泣くな陽介!強く生きろ!」

岳羽「すっごい茶番くさいんだけど……」

アイギス「感動の別れですね……」

天田「なんだかんだ賑やかでしたから、寂しくなりますね」

真田「賑やかというか、騒がしかったというかな」

風花「鳴上君もちょっと寂しい?」

鳴上「まぁ、少し……」

>ラウンジには寮内の全員が揃っている。
>皆、何だかんだで楽しそうだ。
>……美奈子がいない。

鳴上「なぁ、湊」

有里「ん?」

鳴上「美奈子見かけなかったか?」

有里「あれ……確かに、いないね。どうしたんだろう」

鳴上「俺、ちょっと探してくる」

有里「ん、任せた」

>と言ってもどこにいるのか見当もつかないが……。
>準備していた時は寮内にいたのだから、恐らくまだ寮内にはいるだろう。

鳴上「……あれ、あの部屋って何だっけ?」

>そういえば、入った事の無い部屋がある。
>……今なら、誰も見ていない。

鳴上「……美奈子、いるか?」

>扉を開けると、電子機器特有の作動音が聞こえた。

鳴上「なんだ、これ……」

>部屋の正面にはモニターがあり、そこに送別会の映像が映し出されている。

美奈子「あら、見つかっちゃった。やっほ」

>モニターの前の椅子には美奈子が座っている。
>どうやらここから送別会を眺めていたようだ。

鳴上「おいおい、これって……」

美奈子「そう、カメラ。昔の名残りで、寮内の色んな所や各々の部屋についてるの」

鳴上「お、俺の部屋もか!?」

美奈子「そうだね。まぁ今は必要も無いし、誰かが触った様子も無かったから。心配はいらないと思うけど」

>気付かなかった……。

鳴上「で、何でお前はここでそれを使ってるんだ」

美奈子「……楽しそうだったから、ついね」

鳴上「楽しそうって、じゃあ参加すればいいだろう」

>モニターの中で、陽介が里中に尻を蹴り上げられている……。

美奈子「ん?うん……そうなんだけどね」

鳴上「居辛いなら、俺が一緒に……」

美奈子「そういうんじゃなくてさ。仲良くなっちゃうと、辛いじゃん。別れるのが」

鳴上「……別に、今生の別れってわけじゃないだろ?」

美奈子「もし、今生の別れだったらどうする?」

>美奈子は笑っている。
>その表情の奥に別の感情を感じるが、読み取る事が出来ない。

鳴上「ただ、帰るってだけじゃないか」

美奈子「悠。わかってるんでしょ?」

鳴上「……」

美奈子「多分、見た所湊も……ここで別れたら、次に会う時は今までのお互いとは違うかもしれない。そう思うんでしょ?」

鳴上「そんなことは……」

美奈子「嘘。予感がある。私には嘘は通じないよ……あなたの中にもいたんだから」

鳴上「……確かに、漠然とだけど嫌な予感がある。だけど、だからってどうしようも無いじゃないか。俺は湊を、八十稲羽の仲間を信じてる。きっと、また変わらずに」

美奈子「ねぇ。それだけじゃないでしょ?その嫌な予感。どこから来るのかわかってるはずだよね?」

>美奈子の言葉は常に急所を抉る様に飛び込んでくる。

鳴上「……湊」

美奈子「そう。湊。彼の存在が君と仲間達の関係を別な物に変えようとしている」

鳴上「でも、そんな事が……」

美奈子「その予感、取り除くことも出来ると思わない?例えば、君が湊を……」

鳴上「いい加減にしろ。俺は信じてる。湊も、仲間達も。美奈子、正直に答えろ。お前は俺達の……」

美奈子「敵じゃない。病院で言ったよね?私はこの事件を……それに纏わる色んな物を終わらせる為に来た。これも、その一つ」

>美奈子は笑っている。
>彼女の整った容姿が、今は不気味に見える。
>俺は誰を信じるべきなんだ……?

鳴上「……敵じゃない、というのは信じる。だけど、俺は湊に何もしない。あいつも、信じる」

美奈子「……ふぅん」

>美奈子の笑顔が消えた。
>しかしすぐに、いつもの人懐っこい笑顔に戻った。

美奈子「えへへ、変な事言っちゃった。でも、忘れないで。いつかその時が来るかもしれない」

鳴上「来ないさ。湊と戦う日も……お前と戦う日も」

美奈子「そうだったらいいね。よし、電源オフ!悠、一緒に居てくんない?新参だから居辛くてさぁ」

>緊張が一気に解けて、ため息が出た。

鳴上「俺よりよっぽど馴染んでおいてよく言うよ。……そういや、美奈子の部屋ってどこなんだ?」

美奈子「あ、それ聞いちゃう?……実は、三階が埋まってるらしくて。二階に部屋もらったんだけど」

鳴上「二階って、男子階だろ?」

美奈子「うん。まぁ、変な事してくる人いないでしょって事で」

鳴上「それはそうか。じゃあ行くか」

美奈子「はーい!ごめんね、面倒かけて」

>美奈子と送別会に戻った。
>湊は何時も通りに見える。
>……帰るまでに、少し話をした方がいいかもしれない。



【鳴上の夢】


>これは、夢だ。
>どれだけリアルでも、何となく夢なんだなとわかる時がある。
>今が、そうであるように。
>ここはタルタロスか。
>体が思ったように動かない。
>どこかを目指してひたすら登っていっているようだ。
>いつもある迷宮は無く、大部屋の階と後は螺旋階段……。
>夢の中の俺は疲れを知らない。
>それよりも強い意思に押され、高い高い塔を登っていく。
>途中、何度も倒れた。
>登り疲れたわけじゃない。
>途中の大部屋に、俺を妨害する人がいるからだ。
>知っている人だと思う……が、判然としない。
>何度も止められ、その度に一つ上の階で目覚める。
>そしてまた登る……。
>もう少しで、目的の場所だ。
>そこには、あいつがいる。

「湊……!」


【2012/5/11(金) 晴れ 巌戸台分寮】


>最悪の目覚めだった。
>ぐっしょりと寝汗をかいている。

有里「おはよう。良く眠れたみたいだね」

>湊が軽口を叩く。

鳴上「ああ……お互いな」

>湊の顔色は最早壮絶な程だ。
>恐らくは俺の顔も同じように引きつって土気色に違いない。

有里「覚えてる?夢」

鳴上「いや……なんだろうな。最悪な夢だったが」

有里「僕も。……気分が悪い」

>とにかく着替えよう……。

>……。

陽介「はぁー今日でここともお別れかー……つれー!」

千枝「あ、二人ともおはよ……うわっ!どうしたのその顔!」

美奈子「二人とも惨殺死体みたいな顔してるね」

陽介「美奈子ちゃん、その例えは流石にナシだわ」

>高校生組がラウンジに集まっている。

鳴上「おはよう。ちょっと夢見が悪くてな」

有里「まぁ平気だよ。おはよう、皆」

陽介「相棒そんなんで学校行けんのかよ。休むか?」

千枝「有里君も、何だったらまだ寝てた方がいいんじゃない?」

鳴上「いや、大丈夫だ。そろそろ時間だし行こうか」

有里「いってらっしゃい。僕も今寝る気にはならないから……何かしてようかな」

美奈子「だったら昨日の片付けが残ってるよん」

有里「……仕方ない、やるか」

鳴上「それじゃ有里、行ってくる」

陽介「夕方にまたな!」

千枝「帰りの準備とかしといた方がいいよね?」

美奈子「せっかく会えたのになーもうお別れかー」

鳴上「美奈子、それ何回目だ?」

>有里に見送られながら学校に向かった。


【巌戸台分寮 ラウンジ】


真田「片付けか、手伝うぞ」

有里「あ、真田先輩。良いんですか?」

真田「お前一人にやらせるわけにもいかないだろ?他の連中は帰ってきてから片付けるつもりだったようだが……」

有里「あれ?真田先輩って今……」

真田「大学は休学中だ。元々トレーニングの旅の途中だったからな」

>トレーニングの旅とは一体……。

真田「昨夜は楽しかったか?」

有里「あ、ええ。お蔭様で」

真田「そうか……帰るんだな、今日」

有里「そうですね」

真田「……」

有里「……」

>そのまま、無言で片付けを終えた。

有里「……ふぅ」

真田「どうした、疲れたか?」

有里「いえ、昨夜余り眠れなくて」

真田「そういう時は体を動かせ。不安な時はとにかく動く、これに限る」

有里「はは……」

真田「笑うなよ、本当だ。迷った時にでも思い出せ」

>どうやら真田は何かを伝えようとしているらしい。
>……もしかして、励ましてくれているのだろうか。

真田「無茶に中身を伴わせる必要は無い。無茶は無茶で良いんだ、壁に穴くらいは開く。それに、無茶について来てくれる仲間だっているだろう、お前には」

有里「似合わないですよ、先輩」

真田「まぁ、俺から出せるのは口ぐらいだからな。餞別代りだ」

有里「有難く頂戴します。……無茶に付き合わされる側はたまったものじゃないんですが」

真田「それでも、お前は大丈夫だったじゃないか」

有里「そういえばそうですね。……じゃあ、少し眠ります。夕方には帰りますんで」

真田「ああ……またな」

有里「ええ、いつか」

>部屋に戻って休もう。
>悠のベッドを使わせてもらう事にしよう……。


【月光館学園】


鳥海「えー、研修って事で来てた花村君と里中さんが今日でお別れになるそうです。皆別れを惜しむように。以上」

男子「先生のホームルーム、日に日に短くなってないか」

鳴上「だな」

陽介「えーというわけで、今まで五日間?今日で五日?楽しかったです!またこっち来る時あったら遊んでくれな。今までサンキュー!」

千枝「皆仲良くしてくれて、本当に嬉しかったです。えっと……また、遊びに来る事もあると思うので、その時は構ってやってください。ありがとうございました!」

>陽介と千枝が挨拶を終えて席に戻ってきた。

男子「帰っちゃうのかー寂しいなーちくしょー」

陽介「俺だって寂しいっつーの。でもいつまでもこっちいるわけにもいかねんだよ」

男子「わかったよ……仕方ないもんな……じゃあ帰る前に一つ頼み聞いてくれよ」

陽介「お、何だ?親友の頼みだ、なんだって聞くぜ?」

男子「里中さんのメアドを教えてくれないでしょうか」

陽介「お前もブレないね……待ってろ、本人に聞くから」

>どうやらメールを送っているようだ。

陽介「お、返信はえー」

男子「オッケーか!?」

鳴上「勝手に教えたらぶっ飛ばすよ!……か」

陽介「悪い……お前の期待、応えらんねーわ」

男子「ちくしょう!なんだってんだよ!」

鳴上「……」

>『前の席の男子が里中のメアドを知りたがってるんだが、教えても大丈夫か』と
>……来た来た。

鳴上「おい、里中のアドレス」

男子「何っ!?いいのか鳴上!」

陽介「あーあ知らねぇぞ悠。蹴りあげられんぞ?」

鳴上「ほら」

陽介「何々?『別にいーよ』……」

男子「……陽介、後で購買のパンおごってやるよ」

陽介「おう……おう……さんきゅーな……」

>騒がしかった一週間も今日で終わりか……。
>やっぱり寂しい。

>……。

陽介「っしゃ終わったー!相棒、俺と里中アレがあるから先帰るわ!」

鳴上「ああ、帰りの準備か。俺もすぐ帰るけど、時間無いなら急いで帰った方がいいな」

陽介「行きがギリギリだったからな。そういうわけだから、後でな!おい里中!急ぐぞ!」

千枝「あ、ちょっと!じゃ、また後でね鳴上君!」

鳴上「ああ、後で……おい、美奈子?」

美奈子「んん?なに?」

鳴上「昨日あんまり寝てないのか?一日中寝てたな」

美奈子「バレた?眠くってさ……。授業終わった?」

鳴上「終わったよ。帰ろう」

美奈子「ん、帰って見送りいかないとね……よし、帰ろっか!」

>美奈子と帰って、湊たちを見送ろう……。



【巌戸台駅】


有里「それじゃ、お世話になりました」

陽介「くそっ……美女五人と同じ屋根の下……悠ぅ~変わってくれよぉ!」

千枝「……バッカじゃないの?あの、色々お世話になりました」

美鶴「ああ。帰るまで気を抜くなよ。家に帰るまでが旅行だぞ」

順平「陽介ー、帰ってもちゃんと勉強しろよー」

陽介「任せといてくださいよ、気が向いたらしますって!」

岳羽「千枝ちゃん、これあげるね。がんばって!」

千枝「えっ、ほんとですか!?うわ、ありがとうございます!が、がんばります!?」

>皆思い思いに別れを告げている。

陽介「お、電車来たぜ。これだろ?」

千枝「そうだね。じゃあほんと、お世話になりました!楽しかったです!」

美鶴「またいずれ会おう。今度は私もそちらにお邪魔したいな」

順平「そん時ゃ俺も行くぜ!待ってろよ!」

岳羽「私も連れてってもらおうかな。それじゃ、またね!」

>三人が電車に乗り込んでいく。
>……。

鳴上「湊!」

>最後のチャンスだ。
>ここで何か伝えておかなければならない。

鳴上「湊、お前は……」

>言いかけた所を手で制される。

鳴上「湊……」

有里「……ガラじゃないんだけど」

>湊はぽりぽりと頬を掻いて、それからしっかりと俺の眼を見て言った。

有里「信じろ」

>その言葉には『僕を』も『仲間を』も入っていなかった。
>しかし、それだけでしっかりと伝わった。
>……大丈夫。俺達は、大丈夫だ。

鳴上「……またな」

有里「うん。また」

>湊が電車に乗る。
>これで、またしばらくは会えないだろう。
>だが、どこか安心して見送る事が出来た。
>『No.13 死神 有里湊』のランクが4になった。

>振り向くと、美奈子が笑っていた。

鳴上「……どうかしたか?」

美奈子「別に。嬉しくってさ。……さ、帰ろう!」

>美奈子に強引に手を引かれて、寮への道を歩いた。


>……次の日の朝、影時間が無くなった事を知らされた。



【夜 八十稲羽駅前】


陽介「うぉーなつかしの八十稲羽!っつっても一週間も経ってねぇけどな」

千枝「帰って来たーって感じだね」

有里「さてと、それじゃここで解散といこうか?」

陽介「そうだなー。お、そういやお前来週から同級生だろ?」

千枝「あ、そうだったね。制服とかどうなってんの?」

有里「美鶴に聞いたら堂島さんの所に送ってあるそうだから、月曜から本式に八十神高校の三年生だね」

千枝「そっか。楽しみだね!」

有里「そうだね……っと、どうやらお迎えみたいだ。じゃあ、また」

>駅前に車が止まって、菜々子が降りてきた。
>堂島さんも続いて降りてくる。

菜々子「湊お兄ちゃんおかえり!ちゃんとお留守番してたよ!」

有里「ただいま。良く出来たね」

>菜々子の頭を撫でてやりながら、堂島さんに一礼した。

有里「ただいま帰りました。わざわざ迎えに来ていただいて……」

堂島「構わんさ。それじゃ帰るか。そうだ、荷物も届いてたぞ」

有里「ああ、そうですか。どうも高校に通える事になりまして」

堂島「良かったじゃないか」

有里「それから、僕の生活費も工面してくれる先が見つかったので……家賃代わりにお納めしたいんですが」

堂島「ん?そんなもんいい。お前はその分働いてくれてるだろ」

有里「でも、学校に通い始めたら家事をする時間も……」

堂島「……そうだな。ま、お前の気が済むなら受け取るよ。ほら、そういうのはいいから乗れ。疲れただろ」

有里「すみません……ありがとうございます」

>堂島さんの運転で家に帰ることになった。

有里「……」

菜々子「湊お兄ちゃん、何か面白い事でもあったの?」

>膝の上から菜々子が聞いてくる。

有里「いや、悠と別れた時にね。彼が面白い顔をしてたものだから」

菜々子「お兄ちゃんが?」

有里「うん。……あれは、良い顔だった」

>別れ際の悠の顔が浮かぶ。
>しっかりとした信頼に満ちた顔だった。
>あれが自分に向けられた物だと思うと、少し愉快になる。

有里「誰かから信頼されるのって、こんなに嬉しい事だったかな。……久しぶりすぎて、忘れてるだけか」

>菜々子は不思議そうに僕を見ている。
>また、頭を撫でてやった。
>『No.10 運命 鳴上悠』のランクが4になった。


【堂島宅】


>部屋には制服と教科書が置いてあった。
>確かに、陽介が着ていた物と同じだ。

有里「実感が沸いてきた……」

>学生生活、特に楽しいと思った事は無かったが……。

有里「あのメンバーと一緒なら楽しいかもしれないな」

>少し顔が緩む。
>……ゆかりに言われた事を思い出す。
>子供っぽくなったというより、もしかすると……。

有里「僕、今結構幸せなのかもしれない」

>言ってから照れくさくなって一人で笑った。
>幸せ。
>そういえば昔はそれなりにそんな感覚もあった気がする。
>それこそ大昔、せいぜい5歳か6歳までだが。
>……あの夜以降、確かに感情の触れ幅は小さくなっていた。
>当時は一切自覚が無かったが、今にして思うとはっきりとわかる。
>あの頃の自分は異常だった。
>滅私の極みとでも言おうか。
>けれど今は違う。
>ちょっとした事で、笑ったり焦ったり。
>それが嬉しくて仕方が無い。
>ようやく、人間になれたような気分だ。

有里「教科書か……ちょっと読んでみようかな」

>まずは現国か……。

>……。

有里「あ、まずい。ちょっと読みすぎた」

>気がつくと、時計が随分と進んでいる。

有里「読破って、ちょっと読むのレベルじゃないよね……あ、れ?」

>違和感。
>浮かれすぎて何かを見落としたか?
>もう一度、時計を確認する。

有里「……1時。1時、だって?」

>思い返す。
>さっきまで卓上スタンドの明かりで教科書を読んでいた。
>つまり、ずっとスタンドは着いていたという事になる。

有里「影時間には、電気も届かない。はずだろ?」

>……まずい予感がする。
>まず悠に、それから美鶴に、それから陽介達に。
>とにかく、メールしておこう。
>早く返事が来る事を祈って。

さよなら巌戸台。
ただいま八十稲羽。

そして急展開。

ここで本日分は終わり。
では、また後日。

おわっ!やばい!かなり重大なミスに気付いた!ていうか大分前からミスってた!

えーと、現在のタルタロス探索進捗状況が64F(三層)クリア、四層へとなっておりますが。
これ間違いです。三層は114Fなので、前回二層クリアから間違ってることになります。
ええと、前回探索で64F到達し、美奈子発見は114F……のつもりだったんですけど。

とりあえず、現在三層までクリア、次から四層……って事でお願いします。
申し訳ないです。

むむむ、休日の方が忙しいぞ・・・?

というわけで、あんまり量内ですが本日分。



【2012/5/12(土) 晴れ 巌戸台分寮】


>……?
>起きたと同時に、携帯にメールが何件も入っているのを確認した。
>どうしたというんだろう。

鳴上「……昨夜の影時間?」

>眠っている間に何があったのだろうか。
>湊、それから八十稲羽の皆……。
>文面から只事でない事だけが伝わってくる。

鳴上「誰かに聞いてみようか……」

>とりあえず、桐条さんだろう。
>ラウンジかな……。

美鶴「そろそろ起きてくる頃だと思っていたよ」

>ラウンジには課外活動部の面々が集まっている。

鳴上「その、すみません。昨夜は割りと早くに寝てしまって……状況が良く」

真田「気にするな。ここにいる全員、状況は飲み込めていない」

>真田さんが皮肉っぽく笑う。

鳴上「……何があったんですか?」

>誰も答えない。
>一拍置いて、アイギスさんが口を開いた。

アイギス「何かあった、のではありません。何も、無かったんです」

鳴上「それは、どういう……」

美鶴「昨夜の12時、私はいつものように影時間の訪れを待って起きていた。しかし、時計の針は12時からすぐに12時1分を指した」

鳴上「え?」

美鶴「本来なら、というのもおかしな話だが。ここ一ヶ月、毎日訪れていたはずの影時間が、昨日は無かったんだ」

鳴上「まさか……」

アイギス「間違いありません。私も確認しています」

岳羽「私もそう。私の場合はたまたまだったんだけどね……」

順平「どうなってんだよ、これ。もう解決したのか?事件は終わったってのかよ」

天田「勝手に解決するなら、僕達がやってた事ってなんだったんでしょうね」

>全員が納得いかない表情を浮かべている。
>勿論俺もそうだ。
>この事件がそんなに簡単に終わるなら、俺達は何の為に……。

美鶴「……とにかく、様子を見るより他無いだろう。ここで終わってくれれば一番だが」

鳴上「ですね。これから何事も無ければいいんですが……」

順平「でもよ……何も無かったら、俺達どうなるんだ?」

岳羽「どうなるって……いつも通りに、学校通えばいいんじゃない?」

真田「ここにいる理由が無くなる以上、解散になるだろうな」

風花「……ですか、ね」

>……。

美奈子「おっはよーん。……あれ。皆どうしたの?」

鳴上「ああ、おはよう。いや、ちょっとな……」

美奈子「ん?ふーん……まぁいいけど。昨夜の話でしょ?」

鳴上「なんで知っ……そうか、美奈子もペルソナが……」

美奈子「私を誰だと思ってんの?で、影時間が無くなったから事件も終わったんじゃないかって?」

鳴上「聞いてたんじゃないのか、最早」

美奈子「勘だよ、勘。でも、もし全部普通に戻ってるとしたら、何か足りない物あるんじゃないかなあ」

鳴上「足りない物……?そうか」

>もし事件が終わったとすれば、テレビの中も正常に戻っているはずだ。
>そして、正常になっているならば。

鳴上「クマだ。あいつが戻ってきてたら……」

風花「クマ君?……そっか、テレビの中が普通になってたら、あの子も出てこれるはずだもんね」

鳴上「出てこなくても、テレビの中が元に戻ったならいつでも会いにいけるはずです。ちょっと、見てきま……」

>……?

鳴上「あれ?」

>手が、液晶に触れる。
>触れる?

鳴上「嘘だろ……」

>液晶に触れる事が出来る。
>今まで、そこにはテレビの中との境界面があった。
>しかし、今触れている硬質のこの面は……。

鳴上「テレビに入れない……!?」

順平「はぁ?冗談だろ、だってお前いつもこうやって……」

>順平さんがずんずんと歩いてテレビにぶつかった。

順平「えでっ!……あれ?」

風花「ちょ、ちょっと待ってください。本当に……?」

>山岸さんの手も、液晶を通り抜ける事は無かった。

鳴上「……ちょっと、向こうの仲間にも連絡してみます!」

美鶴「頼む。これは……どっち、なんだ?」

>メール……いや、電話だ。
>急いで連絡を取ろう。


【ジュネス内フードコート】


陽介「どーいう事だよ、これ……」

有里「さぁ……今の所は何とも」

直斗「確かに、昨夜影時間はありませんでした。それは確認しています」

千枝「私、帰ってすぐ寝ちゃったからなぁ……」

完二「俺も起きてたけど気付かなかったぜ……」

雪子「けど、影時間が無くなったってことは……」

りせ「もう事件は終わりって事?」

>皆に連絡してジュネスに集まってもらった。
>昨夜、確かに影時間は来ていなかった……。
>しかし、事件がこれで終わったとはとても思えない。

直斗「これで終わりなら、それはそれでいいんですけどね……」

有里「僕にはそうは思えない。こんなに簡単に片付くような事じゃないはずなんだ」

完二「ま、スッキリとは来ねぇな……」

陽介「つっても、俺らに出来る事って……なんだ?」

>……。
>全員が黙ってしまった。

有里「とにかく、今は様子を見るしか……」

>Pipipi……

有里「ごめん、電話だ。……悠からだ!」

>向こうで何か進展があったのだろうか。

有里「もしもし」

鳴上『湊か。お前のメール見たぞ』

有里「そう。それで、どうだった?」

鳴上『どうもこうもない。何かあったなら解決しようもあるが』

有里「何も無い事に関して、僕らは無力だ。でも、連絡してきたって事は何かあったんだろう?」

鳴上『そうだ。お前、テレビの中は入れるか?』

有里「え?それは普通に……」

鳴上『いいから試してみてくれ』

有里「……」

>恐る恐る、テレビに触れてみる。
>……通らない。

有里「これは……陽介」

陽介「どうした?何かあったのか?」

有里「そこから走ってテレビの中入ってみて」

陽介「何で走る必要が……」

有里「いいから、頼む」

陽介「なんだってんだよ……いくぜ?せーのっ」

>陽介が漫画のようにテレビにへばりついた。

陽介「……あれっ?おい、ここテレビの中じゃねえよな?」

千枝「いや、当たり前でしょ。え、って、どういうこと?」

直斗「テレビの中に……」

雪子「入れない?」

有里「悠の言いたい事はわかったよ」

鳴上『もしかしてと思ったが、そっちも駄目か……』

有里「どう見る?」

鳴上『さぁな……俺もそれが聞きたくて電話したんだ』

有里「……影時間に関しては僕のほうが詳しいかもしれない。けど、テレビに関しては君が専門だろ?」

鳴上『異常事態だ。それだけはわかる。けど、今の状況じゃ手が出せないのも事実だ』

有里「手詰まり……か」

鳴上『とにかく、様子見しかないみたいだな。また何かわかったら連絡する』

有里「こっちも。じゃ、また」

>電話を切った。
>テレビに入れない。
>影時間が来ない。
>世界は平和になった。
>……そんなはずは、無い。
>これは更なる異常事態の始まりだ。
>それはわかる、わかるが……。

有里「……見ての通り、もうテレビの中には入れないみたいだ」

りせ「じゃあ、もう事件を追うって事も出来ないの……?」

有里「そうなるね。……ただ、これは終わりじゃない。それは何となくわかるんだ」

直斗「しばらくは様子を見ましょうか。テレビにも入れないんじゃ僕達に出来る事は……」

有里「油断は出来ないけど、基本的には日常生活を楽しんでもらってかまわないだろうね。ふぅ……」

千枝「大丈夫?」

有里「ああ、平気。少し……いや、なんでもない。さ、今日は解散にしよう」

陽介「そうだな……帰るか」

完二「どうなんのかね、これから……」

りせ「なんか、不安カモ……」

雪子「そうだね、何ていうか……怖い、かな」

千枝「何も出来ないっていうのもね……」

>皆は不安そうにしていた……。
>無理も無い、正直な話僕も不安だ。
>その中で一人だけ、少し様子の違う人がいる。

有里「直斗は帰らないの?」

直斗「あ、いえ、帰ります……けど。少し気になる事があって。そうだ、有里さんもよければ付き合ってもらえませんか?」

有里「構わないけど、何を?」

直斗「検証です。今までと……これからの」

>流石に探偵だけの事はある。
>目前の事態を見つめつつも、しっかりとまとめようとしているようだ。
>……頼りになる。

有里「それじゃ、わかってる事は何でも言うよ。何から始める?」

直斗「まず、影時間について。影時間とはどういう物ですか?」

有里「……月が近付いた時、それに惹かれてシャドウが集まってくる。その時、折り重なったシャドウの力は時間と空間に作用する」

直斗「その時間側面の現象が影時間、でしたね」

有里「そう。そして空間側面が、あるはずのない塔の出現。タルタロスだ。じゃあ今度は僕から。マヨナカテレビってなんだろう?」

直斗「マヨナカテレビは、ある存在によって管理される、テレビの中の世界において異物が入り込んだ際に発信される番組です」

有里「異物。人間、か。そして、その人の心の暗い部分を投影した存在が現れる」

直斗「それが、シャドウ。ここで気になるのが、シャドウの持つ力です」

有里「僕の言った通り、シャドウの集合が影時間の引き金となるのなら、ここ八十稲羽で同様にシャドウが集まった時も」

直斗「影時間が始まってもおかしくなかったはず。けれど、それは起こりませんでした」

有里「何故?」

直斗「原因はわかりません。僕達が適宜排除していったからかもしれないし、数が足りなかったのかもしれない」

有里「聞くところによると、自然発生したシャドウだけだったらしいからね。集まってくる、というのとは違うんだろう」

直斗「そうですね。シャドウを集める存在……月、でしたか。それがありませんでしたから。そう考えると納得できます。しかし」

有里「今回、確かに月はあった。テレビの中にね。そして、数多のシャドウ……」

直斗「そこなんです。月はテレビの中にあったと言います。ですが、その時テレビの外にも月はあるはずでは?」

有里「……まぁ、確かに。雨の日しか映らないから気にして無かったけど、おかしな話だね」

直斗「それとも、雨の日だけテレビの中に月が入りこむと?それよりは、こう考えた方が自然ではないでしょうか」

有里「テレビの中の月と、普段見ている月は別物である」

直斗「そうです。そうなると、もう一つ辻褄が合わない事が出てきます。有里さんの存在です」

有里「僕の?」

直斗「ええ。以前聞いた話では、その月を人の手が届かないように封印し、その際に有里さんはこの時間に……という話でしたね?」

有里「そうだよ」

直斗「……すみませんが、調べさせてもらいました。有里さん、三年前に死亡扱いになってますよね?そして、遺体は火葬されている」

有里「……」

直斗「その封印、もしかすると……文字通りの、命がけだったんじゃないですか?」

有里「……その通り。流石だね」

直斗「心配しなくても、他の人に言うつもりはありません……無用に気を遣わせるだけでしょうから」

有里「助かるよ。それで、僕がここにいる事に何の疑問が?」

直斗「はい。それを調べた時、有里さんはその命を使い封印を果たしたものと仮定しました。まず間違いありませんね?」

有里「その通り。命というより、魂を使ったというべきかもしれないね」

直斗「その言葉で、尚の事違和感が増しました。では、今ここにいる有里さんの魂は?」

有里「だから、封印が何らかの原因で解けて……」

直斗「肉体に関しては僕も良くわからないのですが、開放された魂が宿った、そういうことですね?」

有里「そうだろうね。だから、月がまた近くに……?」

直斗「気付きましたか。僕自身、突飛すぎて信じられなかったんですが……まぁ、ペルソナやシャドウの事を考えると有り得ない話ではないかと思いまして」

>なるほど、確かにそうだ。
>むしろ、何故今まで気付かなかったのだろう。

直斗「つまり、月は―――」

>僕がここにいるということはそういう事なんだ。
>で、あるなら。
>あそこにあったアレは一体……。

>……。

直斗「……結局、今の事態を解決する案には至りませんでしたね」

有里「そうだね……まぁ、焦っても仕方ない。しばらくはゆっくりさせてもらうとしようよ」

直斗「そうですね……」

>同意しつつも、未だ何かを悩んでいるような直斗。
>前から思っていたが……。

有里「直斗、睫長いね」

直斗「はぇ?何ですか、急に」

有里「綺麗な顔してるなって思って。あ、そういえば何でいつも男装なの?」

直斗「え、あ、その……趣味?です」

有里「そうなんだ。いつか普通に女物着てるのも見てみたいな」

直斗「い、嫌ですよ恥ずかしい」

有里「あれ、駄目か……まぁ、その内見せてよ」

直斗「まぁ……その内には」

>どうやら照れているだけのようだ。
>是非見たいのでこれからもちょくちょくつついてみよう。

直斗「でも、意外でした」

有里「何が?」

直斗「いえ、有里さんは……こういった事態になったら、一番に手を離しそうに思っていたので」

>申し訳無さそうにそんな事を言われた。

有里「諦めがよさそうって事かな?」

直斗「というより、あまり興味が無いのかなと。無理なら無理で……どうでもいい、とでも言いそうだったので」

有里「……やめたんだ、そういうのは」

直斗「そうですか。……そういう姿勢には、好感が持てます」

有里「それはどうも。なら今度女物を……」

直斗「それとこれとは話が別です!……そろそろ、帰りますね。ではまた」

>ぺこりと一礼して立ち上がった直斗にひらひら手を振った。
>ちょっと、見直された気がする。
>『No.16 塔 白鐘直斗』のランクが3になった。

>……。

鳴上「やっぱり、あっちでもテレビには入れないようです」

美鶴「そうか……我々に出来る事はもう無い、と」

岳羽「悩んでても仕方ないかも知れないですね……」

順平「しばらく様子見だろ、しょーもねー。んじゃ、俺用事あるんで。しっつれいしまーす」

美鶴「そうだな。解散にしよう。……ただ、油断が許される状況ではない、それを忘れないように」

>……何も出来ない。
>今までそれなりに気合いが入っていた分、抜けた時の反動も大きいのだろう。
>油断はするな、と言った桐条さん自身も、少し抜けているのが見て取れた。

鳴上「どうしたもんかな……」

美奈子「いいんじゃない?いい機会だし、普通に学校生活送れば。案外楽しいかもよ」

鳴上「そりゃ、そうかもしれないけど……途中で放り出すみたいで気分が悪いんだ」

美奈子「何も出来ないんだから仕方ないじゃん。それに、君みたいに思ってる人ばっかりじゃないみたいよ」

>美奈子が指差す先には山岸さんが座っている。
>……心なしか、安堵しているようにも見える。

鳴上「……?」

美奈子「ま、頑張ってねー。私はもうちょっと寝る……眠くてさ」

>美奈子はひらひらと手を振りながら去っていった。
>頑張れと言われても……。

鳴上「あの……」

風花「あ、はい。どうかした?」

鳴上「いえ、どうもしないんですけど。山岸さんこそ、どうかしたんですか?」

風花「私?何で?」

鳴上「いや、何ていうか……複雑そうな顔してたので」

風花「あはは、お見通しか」

>山岸さんは眉根を寄せて笑っている。

風花「……今日、時間あるかな?」

鳴上「あ、はい。ありますけど」

風花「良かったら、ちょっと付き合って欲しいの。話したい事があって」

鳴上「……?はい、じゃあ……」

>山岸さんと話をする事になった。
>……どうしたのだろうか。



【シャガール】


>……。
>山岸さんはずっとコーヒーを飲んでいる。
>話があると言われた手前、こちらから話を振るのも気が引けて、俺も黙っている。
>気まずい沈黙が、続いている。

風花「……ごめんね、何か……」

鳴上「え?いや……別に……あの、話って……?」

風花「うん。気付いてると思うけど、私……最近調子悪いんだよ、ね」

鳴上「まぁ、何となくは……その事ですか?」

風花「うん……」

>それだけ言ってまた黙ってしまった。
>確かに、最近どうも上手くいっていないようだが、それと俺に何か関係があるのだろうか……?

鳴上「あの……それで、俺に出来る事とか」

風花「あ、うん……えっとね。体の調子が悪いってわけじゃなくて、心の……気持ちの問題なんだと思う」

鳴上「ペルソナは心の力ですからね。何か悩み事ですか?」

風花「ちょっと、ね……鳴上君って、誰か女の人と付き合った事ってある?」

鳴上「は?」

>予想外の質問に驚いて、気の抜けた答え方をしてしまった。
>真面目な話なのだから、真面目に聞かないと。

鳴上「いや、無いです。それがどうかしましたか?」

風花「ええ!?そうなの?」

鳴上「そんなに驚かなくても……」

風花「ご、ごめん。でも、意外だったから……うん、そっか。うん……」

>今度は何かに納得するように一人でうなずいている。
>俺の交際経験が何の関係があるんだろうか……?

鳴上「ええと、それがどうかしたんですか?」

風花「じゃあ、一般的な見解で答えて欲しいんだけど、いい?」

鳴上「はい。どうぞ」

>大きく深呼吸している……。

風花「……二人の男の人を好きになって、どっちか片方を選べなくて、それでオタオタしてる女の子って、どうなのかな」

鳴上「二股って事ですか?」

風花「違うの、そうじゃなくて……どっちと付き合ってるとかじゃなくて、ただ好きなだけ」

鳴上「ああ、そういう……良いんじゃないですか?別に」

風花「そうかな……もっと、詳しく言うとね。一人は、以前好きだった人。もう会えなくなっちゃって、忘れようって思って。でも、また帰ってきちゃって」

鳴上「……?」

風花「その時には、もう別に好きな人がいて。でも、帰ってきたら、やっぱり好きだなって思って……それで、どっちにしよう、なんて悩んでる」

>山岸さんは視線を落として黙り込んだ。
>……何となく、覚えのある話だ。

鳴上「でも、悩むだけなら自由だと思いますけど」

風花「自分勝手じゃない?どっちにも申し訳ないっていうか」

鳴上「……まぁ、一般的には、酷い女って言うのかもしれませんね」

風花「だよ、ね……」

鳴上「いや、飽くまで一般的にですよ。ていうか、それでどっちもにモーションかけてるとか、そういう事はあるんですか?」

風花「そういうわけじゃ、無いんだけど。……納得いかなくて。私の中で」

鳴上「だったら一般的にも何とも言わないと思いますけど……それ、俺に何か出来るんですかね?」

>ふと口をついて出た言葉だった。
>しまった、と思った時にはもう遅い。
>山岸さんは打ちのめされたような表情をしている。

鳴上「あ、その……」

風花「そう、だよね。ごめんなさい。あの、お金私が出しておくから。ゆっくり飲んでから帰っていいからね」

>自分が飲み終えていないのに、慌てたようにして席を立った。

鳴上「いや、あの……!」

>引き止める言葉が上手く出なくて、そのまま立ち去られてしまう。

鳴上「くそっ……馬鹿か、俺は」

美奈子「へっただねー、悠は」

>席の背もたれごしに声がした。

鳴上「美奈子、いつから……」

美奈子「最初から。内緒で見に来てたんだけど……どうすんのよ」

鳴上「どうするったって……」

美奈子「一回拗れたら修復大変なんだから。経験者はかく語るってね」

鳴上「俺、謝って……」

美奈子「もー、どんだけ鈍いのよ。今行ったって駄目だって。……そうねー、しばらく避けられると思うから、その後かな?」

鳴上「……でも」

美奈子「いいから、言うとおりにしときなって。女の子には心の準備が必要なのよん。とりあえず、コーヒー代悠がもってね」

鳴上「あ、ちょ、おい!」

>美奈子は伝票を渡すと帰っていった。

鳴上「どうすりゃいいんだ……」

>山岸さんに酷い事を言ってしまった。
>……ちゃんと、謝ろう。
>『No.02 女教皇 山岸風花』のコミュがリバースになってしまった。



【夜 堂島宅】


菜々子「湊お兄ちゃん、まだ起きてるの?」

有里「うん、もうちょっとね」

菜々子「そっかぁ。菜々子もう寝るね」

有里「ん、おやすみ」

菜々子「おやすみ……」

>随分眠かったのだろう、菜々子はふらふらと部屋に戻った。

堂島「寝たか」

有里「みたいですね」

堂島「……どうだった、向こうは」

>僕はまだ起きている。
>堂島さんに説明する事がたくさんあるからだ。

有里「ええ、楽しかったです。……どこから、話しましょうか」

堂島「全部だ。……と、言いたい所だが、それじゃ俺の方が混乱しちまいそうだ。まず、お前は結局何なんだ?」

有里「漠然とした質問ですね。僕は……死んだ人間です。ある理由で。しかし、何の因果かおまけをもらったと」

堂島「冗談に聞こえるがな」

有里「これが、冗談じゃないんですよ」

堂島「だろうな。そんな顔じゃない。で、そのお前は何が出来る」

有里「事件の解決が出来ます」

堂島「事件ったって、俺の知る限り何も起こってないぞ」

有里「でしょうね。ですが、その内起こります。必ず、起こります。それはわかるんです」

堂島「……ちっ。とんでも無い拾いもんだ、お前は」

有里「すみません」

堂島「いや、いい。で、お前はこれからどうするんだ?」

有里「……あれ、もっと突っ込んで聞かないんですか?」

堂島「なんでだ?」

有里「いや、だって……あからさまに胡散臭いじゃないですか」

堂島「……信じるさ。俺にも予感がある。なんだろうな、只事じゃない気がするんだ」

有里「刑事の勘ですか?」

堂島「そうだな。前にもこんな事があった。その時は、悠がお前のように事件解決に走ってたんだが」

有里「だから、信じてくれると」