渋谷凛「長女」大石泉「次女」佐城雪美「三女」橘ありす「四……って逆です!」 (66)

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(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1449663632/))

の続きですが、読まなくても話は理解できるんじゃないかなと思います
土日使って終わらせられればいいかなー程度のゆっくり進行です

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1449922587

≪コミュニケーション≫


雪美「………」ジーー


凛「………」


雪美「………」ジーー


凛「………」チラ


雪美「………!」プイッ


凛「………」

凛「………」

ありす「凛さん、凛さん」トントン

凛「なに?」

ありす「怖がられていませんか」

凛「誰に」

ありす「雪美さんに」

凛「根拠は」

ありす「凛さんが視線を向けた瞬間、雪美さんがあわてて目を逸らすからです」

凛「……でも雪美ちゃん、誰が相手でも似たような反応じゃない?」

ありす「……ですね。なんだか話しかけにくいです」

凛「人見知り、なのかな」

ありす「かもしれません。先日事務所に来てから、Pさん以外とはほとんど話してないみたいですし」

凛「むしろプロデューサーはどんな魔法を使ったんだろう」

ありす「魔法なんてあるわけないじゃないですか、非科学的ですよ?」

凛「……上から目線でピントのずれた答えを返すありすはかわいいと思う」

ありす「な、なんですかその優しい目は!」

ありす「こほん。とりあえず、凛さん。雪美さんに話しかけてみてください」

凛「え、私?」

ありす「じーっと見られっぱなしだと、気になって仕方がありません」

ありす「こういう時こそ、お姉さんが先陣を切るべきです。一番槍です」

凛「そうなのかな」

ありす「そうです」

凛「でもさ。ありすが普段頼ってるお姉さんって、私じゃなくて泉だよね」

ありす「………」

ありす「こ、ここ一番で頼れるのは、年上の凛さんかと……」

凛「ふーん」

ありす「え、えっと。あとは……最初に怖い人で慣らしておけば、後に続く私がやりやすく」ボソリ

凛「ふーーーん。そんなこと考えてるんだ……」ジロ

ありす「あ、いえ、違いますっ。今のは言葉のあやというかなんというか」アタフタ

ありす「とにかく、その、あの」アワアワ

凛「………」

凛「……なんて、ね。いいよ、ちょっと声かけてみる」

ありす「え? あの、怒ってないんですか」

凛「ありすの面白い顔が見られたから許してあげる」ニヤリ

ありす「お、おもしろっ……あぅ」

凛「ふふっ」

雪美「………」チラチラ

凛「雪美ちゃん」

雪美「………!」

凛「(とはいったものの、何を話そう)」

雪美「………」ソワソワ

凛「えっと……雪美ちゃんは、猫、飼ってたよね」

雪美「………」

凛「……雪美ちゃん?」

雪美「………うん」

凛「(この反応の遅さは……単純にゆっくりなだけなのか、それとも話しかけるなというサインなのか)」

凛「猫、好き?」

雪美「………好き」

凛「そう。私は犬を飼ってるんだけど、やっぱりペットってかわいいよね」

雪美「………うん」

雪美「猫……かわいい……」

凛「犬もかわいいよ。うちの犬、ハナコっていうんだけど――」

10分後


泉「ただいま……ん? どうしたの、ありすちゃん」

ありす「あ、泉さん。おかえりなさい」

泉「うん。それで、じっと何を見て……」



凛「ハナコはね、甘えたくなるといつの間にか私のそばまでやってくるんだ。すりすりしてきてかわいいよ」

雪美「………ペロも、甘えてくる………かわいい」



泉「へえ、仲良さそうね。雪美ちゃんがプロデューサー以外にああいう顔するの、初めて見たかもしれないわ」

ありす「どうやら、動物関連の話題を出せば会話が弾むようです」

泉「なるほど。それでありすちゃんは、タブレットで猫の情報収集中というわけ」

泉「雪美ちゃんと仲良くなりたいのね」

ありす「……職場における円滑なコミュニケーションのためです」

泉「初めての年下の仲間だから、張り切ってるのね。頼れるお姉さんになれることを期待しているわ」

ありす「だ、だから、そういうのじゃありませんってば!」

泉「はいはい。わかってるわかってる」ニコニコ

ありす「……泉さんはいじわるです」



≪コミュニケーション≫ おわり

こんな感じで短い話を何本か重ねていく予定です
次の投稿は多分夜中だと思います

≪クッキングタクティクス≫


ありす「できました。橘流イチゴパスタ、バージョン3.5です」

P「いつの間にそんなにバージョンアップを重ねたんだ」

ありす「成長期なので、常に進歩を続けているんです」

P「なるほど」

P「ちなみに、今までのイチゴパスタが生み出した功績だが」

P「バージョン1は料理番組の収録で披露し、試食した他の事務所のアイドルの意識を数秒奪った伝説を残した」

ありす「柚さんには申し訳ないことをしました」

P「その後練習して完成させたバージョン2は、急用ができた俺のかわりに凛が食べて」

ありす「『まずっ』と言われましたね。ストレートにグサッときました」

P「凛はファストボールオンリーだからな」

P「そして今日、バージョン3.5のお披露目というわけだ」

ありす「今回は自信があります」

P「毎回聞いてる気がする」

ありす「I have confidence.」

P「ありすは賢いな」

ありす「それほどでもありません」フンス

ありす「では早速試食のほうを」

P「そうだな。今回は順番的に泉が食べる番――」


泉「残念、私今うどん食べてるの」

P「貴様、この状況を読んでいたのか!?」

泉「読むもなにも、さっきまでありすちゃんの料理を手伝っていたのは誰だと思う?」

ありす「いろいろと参考にさせてもらいました」


凛「泉、料理できたんだ」

泉「意外ですか?」

凛「うーん……ごめん、そうかも」

泉「こう見えても、弟に作ってあげたりしてるんですよ。それほど手際がいいわけでもないですけど」

ありす「でも、泉さんのアドバイスはわかりやすかったです」

泉「私もありすちゃんも分量を正確に意識するタイプだから、型がうまくはまったんだと思う」

P「……ということは、今回は味は大丈夫なのか?」

泉「味見はしておいたわ」

P「結果は?」

泉「それは食べてのお楽しみ。目の前にあるんだから、とっと味わえばいいよ」

P「意地悪な回答だ……泉が素直じゃない子に育ってしまった」

泉「そんな、不良になったみたいに悲しまなくてもいいんじゃない?」

ありす「Pさん……食べて、くれますか?」

P「……わかった。ここまで用意されて断るのも、プロデューサーとしての矜持に反する」

P「いただきます……っ!」グワッ

凛「そんなに気合い入れる意味はあるの?」

P「やかましい」パクッ

ありす「………」ドキドキ

P「………」モグモグ




P「……あれ、普通に食える?」

ありす「!」パアァ

泉「だから言ったじゃない。お楽しみって」

P「パスタというよりスイーツの類だが、そういう物として受け入れれば全然イケるな!」

凛「ふーん、おいしいんだ。ありす、私も一口もらっていい?」

ありす「どうぞ」

凛「ありがとう」パク

P「か、間接キス……」ポッ

凛「プロデューサー、気持ち悪い」

P「すまん、冗談だ」

凛「……うん、悪くないかな。なかなか」

泉「よかったわ。凛さんからも高評価で」

ありす「はい」


P「いや、しかしありすの料理がここまで上達するとはな。よくやったな!」

ありす「よかったです……あ」

ありす「ま、まあ、私がちゃんと練習を重ねればこんなものです」

泉「えらいえらい」ナデナデ

ありす「ちょ、泉さん! また私の頭を……クセになってませんか!?」

泉「うーん……そうかも」ナデナデ

ありす「も、もう……」

凛「と言いつつ、まんざらでもなさそうな顔だけど」

P「そういえば、凛は料理できるんだっけ?」

凛「私? まあ、できるといえばできるし、できないといえばできないくらいかな」

P「微妙だな……最低限ってことか」

ありす「もしかして、私のほうが上ですか」ワクワク

凛「どうだろう……」

泉「なら、ここで作ってみんなに食べてもらうのはどうですか?」

P「お、いいなそれ。俺も現役女子高生の手料理を食べてみたい」

凛「じゃあ、プロデューサー以外には今度作ってみるね」

P「ちょっと待って。なんで俺だけ仲間外れなんだ」

凛「言葉の端々から期待がにじみ出てるから。ハードル上げられると嫌なんだ」

P「わかった。じゃあ全然まったく塵ひとつも期待しないから」

凛「それもそれで作ってあげる意味がない気がしてくるな……」

P「面倒くさいやつだな!」


ありす「また夫婦漫才はじめてる……」

泉「伝統芸能っていうのかな、こういうの」

後日


凛「簡単だし、オムライスにするね」


泉「あれ……凛さん、分量はからないんですか?」

凛「てきとうでいいんだよ。作り慣れてる料理なら」


ありす「あの、火が強すぎませんか?」

凛「こっちのほうが速く作れるし。そのぶん速く混ぜれば大丈夫」

ありす「私たちとは料理のやり方が違うようです……」


凛「はい、完成。今日はうまく卵で包めたよ」

ありす「……おいしい」パクパク

泉「凛さんは感覚派ですね。スピーディーに作れるのは羨ましいです」

凛「普段作らない料理なら、私だってちゃんとレシピ通りにするよ。それに、オムライスはケチャップである程度味ごまかせるしね」

ありす「というか、普通に料理できるじゃないですか。あの微妙な反応はなんだったんですか」

凛「いや……はっきり『できる』と言っちゃうと、どんな料理も自由自在にお手の物って感じのイメージがついちゃうかと思って」

泉「そこまで考えませんよ、普通は」

凛「やっぱりそうだよね。ふふ」


P「(料理中のポニテ凛……実にいいな!)」グッ

凛「雪美ちゃん。プロデューサーのぶんも食べていいよ」

雪美「………ありがとう」

P「待て待て待て!」


≪クッキングタクティクス≫ おわり

ぼちぼち寝ます
SSを書くときは原作や他の方のSSを読んでキャラを把握していくのですが、凛に関しては一周回って原作に近い性格のものがSSでは珍しいような
なかなか愉快な現象が起きてますね

≪甘えたいお年頃≫


雪美「………P」

P「雪美か。どうしたんだ?」

雪美「………」ポフッ

P「おう、いきなりくっついてくるのか」

雪美「……私とP……一緒……」

P「ああ、一緒にトップアイドル目指して頑張ろうな」

P「でも、腕をつかまれるとキーボードを叩けないから、つかむなら肩とかにしてくれ」

雪美「………わかった」

ありす「………」ジーーー


泉「ありすちゃん、ずっと羨ましそうに見てる……」

凛「甘えたいなら素直にそうすればいいのに。まだ小学生だし、見た目的にもセーフだと思うけど」

泉「さすがに私達がプロデューサーにベタベタするのはアウトですからね」

凛「うん。小学生なら、ギリギリ微笑ましいのラインで済む」


ありす「……誰も甘えたいだなんて言ってません」

凛「あ、聞こえてたんだ」

泉「素直にならないと、プロデューサーのほうからは近づいてきてくれないわ」

ありす「だ、だからそういうことでは……」

泉「なら、そうね……私もプロデューサーに甘えてみたいから、ありすちゃんが先にお手本見せてくれない?」

ありす「えっ?」

泉「私のために、やってくれない?」

ありす「泉さんのために……わかりました。泉さんのために、行ってあげます」

泉「よろしくね」

ありす「はい。泉さんのために、ですけど」スタスタ


凛「……うまいね、泉」

泉「要はきっかけが欲しいだけに見えたから。次は、きちんと自分の意思だけで向かってほしいですけど」

ありす「Pさん」

P「ありすか。なんだ?」

ありす「え、えっとですね。その……」

P「あ、ひょっとしてありすも雪美みたいに甘えたいとか?」

ありす「なっ!?」ビクッ

ありす「そ、そんなわけないじゃないですか!」

P「ははは、そうだよな」

ありす「まったく、そうですよ」


ありす「(し、しまったーっ!)」


凛「バカ……」

泉「先手を打たれて、とっさに強がりが出ちゃったか」ハァ

P「それで、何か用か?」

ありす「あ……あの……」

ありす「(ここはお二人に助けを求めるしか)」チラ


凛「………」カキカキ

泉「………」カキカキ

ありす「(ん? 紙に何か書いている……?)」




凛の紙「ガンガンいこうぜ」

泉の紙「バッチリがんばれ」

ありす「(なんでドラクエの作戦風なんですか!?)」

ありす「とにかく、もっと押せということですよね……」

P「どうした」

ありす「い、いえ。なんでもないです」

ありす「……その。なんといいますか、たいした用ではなくて。本当に、Pさんにとってはきっと取るに足らないようなことで、むしろ迷惑なのかもしれなくて」


泉の紙「おちついて深呼吸! すー、はー!」


ありす「……っと。すー、はー……落ち着きました」


凛の紙「最初は肩でももんであげれば、自然に触れられるよ」


ありす「なるほど」

P「ありす?」

ありす「Pさん。肩、こっていませんか」

P「ん? ああ、そうだな。やっぱり同じ姿勢でいるとだんだん身体が硬くなっちゃって」

ありす「だったら、私が揉んであげます」

P「お、いいのか?」

ありす「はい。最近マッサージのやり方を勉強したので、少し試してみたいんです」

P「そうか。じゃあお願いするかな」

ありす「(やった)」

ありす「では――」


雪美「………」

ありす「……一緒に、揉みますか?」

雪美「………」コクリ

ありす「なら、雪美さんは左肩をお願いします」

P「二人でやってくれるのか? いやー、プロデューサー冥利に尽きるなあ」




泉「とりあえず、なんとかなったみたいですね」

凛「そうだね。なんか肩揉んだだけで満足しちゃいそうな気もするけど」

泉「満足できるなら、それはそれでいいと思います」

凛「……かな」フフッ

泉「でも……」



ありす「雪美さん。一般的に猫と呼ばれるのは、ネコ目・ネコ亜目・ネコ科・ネコ亜科・ネコ属・ヤマネコ種・イエネコ亜種に分類される小型哺乳類、イエネコのことなんですよ」

雪美「………???」


泉「猫の話で仲良くなろうとするのはいいけど、それはちょっとベクトルが違うような」

凛「今のセリフよく覚えてたね、ありす……」



≪甘えたいお年頃≫おわり

≪伊達メガネ≫


凛「おはよう」

泉「凛さん、どうしたんですか? その眼鏡……」

ありす「視力が落ちたんですか」

凛「ううん。この前ローカルの眼鏡屋のCMに出たんだけど、その時にこれをもらったんだ」

凛「度は入ってないよ」

泉「つまり伊達眼鏡ですか」

凛「そうだね」

ありす「フレームの色は青ですか。凛さんらしいです」

P「おはようー。おう、その眼鏡似合ってるな、凛」

凛「ありがとう」

P「いつもより知的に見えるぞ」

凛「じゃあいつもは?」

P「強そう」

凛「なにそれ……」

泉「でも、印象が変わるというのは事実ですね」

ありす「眼鏡は変装の道具としてもよく使われますからね。私達も、もっと有名になってきたら、街を歩く時にお世話になるかもしれません」

P「凛の場合は、眼力が軽減される感じだな」


P「というわけで、知的でクールなお姉さんっぽい演技をひとつ」

凛「え、なにその流れ」

泉「面白そう……」

ありす「右に同じです」

凛「アンタ達まで……」

泉「たまには、プロデューサーのノリに合わせるのもいいかな、と」

凛「まったく……考えるから少し待って」

凛「……知的でクールなお姉さん、か」ムムム

凛「……こほん」



凛「お姉さんの胸に、溺れてみる……? うふっ♪」ウインク

P「………」チラッ


P「溺れるほどのボリュームがないので結構です」

凛「本当の意味で溺れさせたいと思った」

ありす「静かな怒りを感じます……」

泉「クールね」

凛「せっかくやってあげたのに……私もうやらないから。ほら泉、パス」

泉「わ、ちょっと、勝手に眼鏡かけさせないでください」

P「おー、眼鏡バージョンの泉もかわいいな」

ありす「大人っぽいです」

凛「うん、似合う」

泉「……そうですか?」

凛「というわけで、次は泉が知的でクールなお姉さんの演技をする番」

P「完全に巻き込む気だな」

泉「まあ……私もプロデューサーと一緒にけしかけた以上、断りはしないわ」

泉「………そうね」ウーン

泉「こほん」



泉「お姉さんの胸に、溺れてみる……?」←胸を押し上げながら

泉「お、同じセリフしか思いつかなくて……」

P「………」

ありす「………」

凛「………」

泉「あの、何か反応してくれないと」



凛「ずるい」

ありす「ずるいですね」

P「すばらしい」パチパチ

泉「ええぇ……?」



≪伊達メガネ≫おわり

≪約束しよう≫


とある休日


P「たまには街をぶらぶらするのもいいな……」

P「ん? あの後ろ姿は……」

??「………」

P「泉じゃないか。何してるんだ?」

泉「あっ……プロデューサー」

P「ああ、プロデューサーだ」

泉「……私だって、すぐにわかった?」

P「? どういう意味だ?」

泉「ほら。一応、試しに変装してみたつもりなんだけど」

P「変装……確かに、眼鏡に帽子に髪型に、結構いつもと違うな」

泉「いろんな角度から見られることを考えて、論理的にばれない変装を心がけたわ」

泉「プロデューサーには、すぐに見破られたみたいだけど」

P「ま、俺は泉のプロデューサーだからな。このレベルなら、たいていの人間は騙せるはずだ」

泉「つまり、あなたが特別に嗅覚が鋭いだけ、と。そう言われると、少し安心」

P「それで、街に出てきた理由は? 変装の具合を確かめるためか」

泉「それもあるけど、本命はパソコンの周辺機器。ちょっと見て回ろうと思って」

P「なるほど。暇だからついていっていいか?」

泉「いいけど……面白いことなんてないよ?」

P「いいんだよ。プライベートの泉の姿が見てみたいだけだから」

泉「そういうことなら……いいわ。店はすぐそこだから、ついてきて」

P「わかった」

泉「(一種のデート……なんて、自意識過剰かな)」

ちょっとセカイの鍵を勝ち取るために戦ってくるので中断します

泉「なかなかの収穫だったわ」フフ

P「………」

泉「どうしたの?」

P「いや、なんか……もっと興奮するものかと」

P「『ああっ、こんなところにこれだけの逸品が!』とか『こ、これは宝の山だわ! むはーっ!』みたいな感じを期待してた」

泉「むはーってなによ……別に私、そっち方面にはオタクじゃないし」

P「まあ、テンション上がってる泉を見たかったってだけだよ」

泉「それならライブでいくらでも見られるのに」

P「あ、自分でも気づいてたのか。ライブ中のテンションの高さは」

泉「あとで思い返せばすぐにわかるわ。ロジックでもなんでもなく、心が昂ぶっている瞬間があるって」

P「そうだな。凛やありすだって、ライブ中は興奮してるから……お」

泉「?」

P「あそこ、ゲームに試遊台があるな。二人対戦できるみたいだし、やっていくか」

泉「いいけど……」

P「よし、負けないからな」

FINISH!


P「また俺の勝ちだな」

泉「む……プロデューサー、本当にこのゲーム初見?」

P「もちろん。初めてやるリズムゲームだ。うまく操作すると画面上のキャラがかっこよく踊ってくれるんだな」

泉「やっぱり、ダンスは苦手だな……でも、ゲーム上でなら突き詰めていけば勝てると思うんだけど」

P「しかし、試遊台を長時間独占するわけにもいかないからなあ」

泉「……決めた。私、このゲーム買う」

P「おお、マジか」

泉「うん。面白そうだし、プロデューサーに負けっぱなしなのは、なんとなく嫌だから」

P「負けず嫌いだな」

泉「そうでもないよ。私が張り合う相手なんて、あなた以外にはさくらと亜子くらい」

P「ふーん、そうなのか……今の言葉、突き詰めると結構うれしい意味にとれる気もするが」

泉「……どう受け取るかは、プロデューサーの自由にしておくわ」

しばらく経って


P「うまいな、この店のたい焼き」モグモグ

泉「そうね。今度みんなにも紹介しておこうかな」ハムッ

P「………」

P「泉。休日中に悪いんだけど、ちょっと真面目な話、してもいいか」

泉「……どうしたの、急に」

P「普段はなかなか聞けないことだからな。ちょうど二人きりだし、いい機会だと思って」

泉「……聞くわ」

P「泉は……アイドル、いつまで続けるつもりだ?」

泉「………」

泉「それ、夢に向かって日々頑張っている中学生に聞くこと?」

P「普通の中学生には聞かない。泉だから聞いている」

P「考えてないわけじゃないだろうから」

泉「………はあ。さすがプロデューサー、なのかな」

P「実はエスパーなんだ」

泉「それは嘘」

P「場を和ませようという心意気の冗談だ」

泉「そもそもあなたの質問でこういう雰囲気になったんでしょう」

泉「………」

泉「正直な話をするとね。友達づきあいってだけなら、多分あと半年くらい頑張ったらやめてたんじゃないかなと思う」

P「確か、さくらと亜子に誘われてウチに来たんだよな」

泉「うん。何かやる時は、たいてい三人一緒だったから」

泉「……でも。極論を言えば、私だけがアイドルをやっていなくても、関係が切れてしまうわけじゃない……と、思う」

P「まあ、君達の友情はそんなものじゃ壊れないだろうな」

泉「ふふ、そう言われるとうれしいわ」



P「やめていたっていうのは、やっぱりプログラミングの勉強のためか」

泉「ええ。そっちも、私にとっては頑張りたいことだったから」

泉「脳が若いうちにしっかり学んでおかないと、間に合わなくなるかもしれないでしょう?」

P「俺はそういう話に関してはさっぱりだが……まあ、君が言うんならそうなんだろうな」

P「……けど、今までの話しぶりだと、途中で事情が変わったんだな」

泉「うん。友達に誘われて始めたアイドル活動が、思っていたよりもずっと、ずっと魅力的で……やめるにやめられなくなっちゃった」

泉「もっと歌って、踊って、たくさんのファンに囲まれて、ステージの上で輝きたい――今は、その想いが強いわ」

P「それは、泉をプロデュースしている人間も喜ぶだろうな」

泉「そうね。きっとうれしそうな顔で笑っていると思うわ」

P「とりあえず、泉の気持ちはわかった。教えてくれてありがとう」

P「今は、アイドルを中心に考えているってことだな」

泉「そんな感じ」

P「そうか」

P「……けど、人生でアイドルをやれる時間は限られている。たいていの女の子は、20代後半にもなれば賞味期限がやってきて、30を越えて続けられる人はまれだ」

泉「例外はいるけれど、ね」

P「でも、大半はそうだ。だから俺は、泉にもうひとつの道……プログラミングも、諦めてほしくないと思う。輝ける才能があるんだからな」

泉「プロデューサーの立場でそんなこと言っていいの?」

P「俺は確かにプロデューサーだけど、泉達の保護者でもいるつもりだ。だから、そこも真剣に考えるさ」

泉「……優しいわ、プロデューサーは」

P「そうかな」

泉「私はそう思うから」

泉「だから……優しいプロデューサー。ひとつ、約束して」

P「約束?」

泉「ええ」

泉「アイドル活動とプログラミング。私に二兎を追ってほしいのなら……まずは」



泉「私を……私達を、なるべく早く、トップアイドルにまで連れて行ってね」

P「………」

泉「ふふっ。どう、約束できる?」

P「……ああ、もちろん」

P「泉の夢、両方叶えてやろうじゃないか!」

泉「……うん!」

翌日


凛「おはようございます」


ありす「………」ズーン

凛「……どうしたの、この世の終わりみたいな顔して」

ありす「……昨日、街を歩いていたんです」

凛「うん」

ありす「そうしたら……見たんです」

凛「見たって、なにを」

ありす「Pさんが、女の人と一緒に仲良く歩いている姿を……」

凛「へえ、プロデューサーが? なんだ、ちゃんとやることはやってるんだ」

凛「たくさんアイドルをプロデュースしてて忙しそうだったけど、ちょっと安心したな」

凛「それで、相手はどんな感じの人だったの?」

ありす「………」

ありす「おそらく、中学生か高校生くらいの人かと……」

凛「………」

泉「おはようございます」

凛「緊急会議だよ、泉。私達のプロデューサーが最悪刑務所送りになる前になんとかしないと!」

泉「……はい?」


P「おはよう、みんな」ガチャリ

雪美「………おはよう」←Pに肩車されながら

凛「や、やっぱり年下好き……!」

ありす「ろりこん……」

P「……なんなんだ?」

泉「さあ……?」


この後、無事に誤解は解けましたとさ


≪約束しよう≫おわり

おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
雪美ちゃんの出番少なくてごめんなさいなんでもしまむら

晶葉とかしきにゃんとかはもう自分で研究やってるだけでどうにでもなりそうだけど、泉についてはこれからいろいろと学んで才能をさらに磨いていく段階に見えるというのが私の印象です
だがそこがいい

このシリーズの続きを書くかどうかは未定です

以下過去作宣伝
一昨日書いたやつ:二宮飛鳥「だるい」 佐藤心「だーるい」

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