晶葉「できたぞ助手! アイドルの貞操観念が逆転するスイッチだ!」 (46)



 ・下品です。


晶葉「できたぞ助手! アイドルの貞操観念が逆転するスイッチだ!」

P「さすがあきえもん! そんなものを使ったら異性に興味津々な、思春期真っ盛りのアイドルたちがいったいどうなってしまうのか! 不安と心労で荒れ狂う俺の胃腸のことなど微塵も考えず! ただただ己の開発欲求をたき木とし! 三千世界の秩序と道理を熔かし尽くして、混沌のるつぼへと流し込むゥ! というか貞操観念が逆転したあと、俺がどうなるかわかってんのか!?」

晶葉「T-1000」

P「そうだね! ターミネーター2の、溶鉱炉であっぷあっぷするアレだね! わかってんじゃねえか!?」

晶葉「もちろんだとも! 貞操観念が逆転したアイドルに追い掛け回され逃げ惑い、命からがら物陰で咽び泣く助手を想うだけで、私の胸は悦びに張り裂けそうになる! アイドルの貞操観念を逆転させたあとに起こりうるであろうドタバタラブコメディは、まさに抱腹絶倒の大喜劇!」

P「アイドルにムシャムシャゴックンされたあとの俺が、パコパコペロリン出来なかったアイドルに包丁で刺されて、腹を抱えてのたうち回るって意味じゃないよな!?」

晶葉「その通りだ! だが残念ながら、この胸裏に渦巻く欲求を満たしても、そのままでは助手が死んでしまう! 私は苦悩した! スケベな助手がよりドスケベなアイドルを前に為す術もなく敗北し、敗走し、敗者として蹂躙される様をお腹いっぱいに堪能したいのに! この世界がそれを許してくれない! 男がスケベでなにが悪い! 女がスケベでなにが悪い! 誰だって一皮むきむきスケベニンゲンのくせに!」

P(今日の晶葉はよくトぶなぁ……)

晶葉「だが! その葛藤が私の着想にコペルニクス的転回をもたらした! スケベを世界が許してくれないなら、スケベを許してくれる世界にすればいいだけじゃないかと!」

P「おっ、そうだな(白目)」

晶葉「そこでまず全世界76億人の貞操観念を逆転させるべく、必要な電力を計算した所、1億8000万kwという途方もない電力が必要になった。いくら私でもその電力を確保するにはモノとカネが足りない。あるのはヒトだけだ。そこで私は『地上の星』を聞きながら、この頭蓋骨に詰まったマンパワーを振り絞り、とある結論に達したのだ」

P「まさか、去年の異常な仮想通貨の高騰はお前が……!」

晶葉「ふはははは! その手があったな、助手! だがそれは違うぞ! 正解は『76億人の貞操観念を逆転させるのが難しいなら、76億人の貞操観念が逆転している世界に、助手を放り込めばいいじゃない』だ!」

P「牛刀割鶏! 牛刀割鶏!」

晶葉「マッドサイエンティストA・Iに不可能はない! そして計算した結果、助手を貞操逆転世界に送り込むのに必要な電力は、1.21ジゴワットであることが判明! 必要電力の劇的なカイゼンを達成した私は、即座にスイッチの制作に取り掛かった!」

P「およそ99.3%の省エネをしてなお、原発一基分に相当する電力なんですがそれは」

晶葉「刮目せよ! これがアイドルの貞操観念が逆転した世界に助手を転送するスイッチだ!」

P「うん、なるほど。コンソールの保護ガラスの下のそれ。てっきりラボの自爆スイッチかと思ってたけど、なるほど。コンソールというかこの部屋自体がスイッチだったわけか。うん、なるほど?」

晶葉「それでは早速始めよう! プログラム、ドラァァァイヴッ!!!」バキンッ

P「ちょっと待ってそれ初回成功率ほぼゼロパーセントのやつじゃないよね!?」

晶葉「確率なんてのは単なる目安だ! 足りない分は勇気とガッツで補えばいい!」

P「助けて僕らの勇者王ォォォオオオオオ!!!」


 ――空間歪曲。


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P「………………知らない、天井だ」

比奈「お、プロデューサー。目が覚めたっスか?」

P「ん……ここ、は」

比奈「仮眠室っスよ? 事務所に忘れ物を取りに来たら、床でプロデューサーが寝てたんで。ずりずり運んだんス」

P「運んだ……? 一人で?」

比奈「ええ、まあ。こんな夜中じゃ事務所には誰もいないんで」

P「そうか……迷惑をかけたな。ありがとう」

比奈「いやいや迷惑だなんて、とんでもない! スーツ姿でベッドに横になったプロデューサーとかもう最高のモデルっス! 特にスーツの皺と裾から覗くシャツの紳士空間……スケッチと妄想が捗りすぎてほんとヤバイっス! もうこっちがお礼をいいたいくらいで――あっ」

P「あ?」

比奈「いや、その……ごめんなさい。そういえば、プロデューサーってそういうのダメだったスね……すぐに破って捨てるから許してください」

P「え、なにが?」

比奈「なにって……私が書いてるヤツですよ。プロデューサー、エロいの毛嫌いしてるじゃないですか」

P「えっ」

比奈「えっ」

P「……嫌い? 俺が?」

比奈「そうっスよ。前にユリユリが事務所にそういうのの新刊を持ち込んで、メチャクチャ怒ってたじゃないですか……男性に対する配慮がないのか、自分じゃなかったらセクハラで通報されてもおかしくないぞって」

P「???」

比奈「覚えてないんスか? 枕営業モノなんて二度と見せるなってすげぇ怒鳴ったじゃないスか」

P「以前に由里子を注意した記憶はあるが、怒鳴ったことは一度も……ん、どうした」

比奈「プロデューサー、いまなんて……?」

P「ああ、由里子を注意した記憶はあるぞ? ただそんなに怒ったつもりは――」

比奈「そうじゃなくて! 名前! ユリユリのこと下の名前で呼んでるっスよね!?」

P「それがどうかしたのか?」

比奈「そ、そんな……プロデューサーとユリユリがそんな関係だったなんて……うそっス」

P「そんな関係ってどんな関係だよ」

比奈「AtoZ」

P「だからどんな関係だよ」

比奈「肉体関係のABC」

P「なるほどそれでZまであるのね。ってやらねーよバカ! 俺がアイドルに手を出すとかないからね!?」

比奈「でも下の名前で呼んで……」

P「それはいつものことだろ? 説教する時は大西って呼ぶけど」

比奈「アタシは初めて聞いたっスよ」

P「比奈の前でも何回か呼んでるはずだが」

比奈「」

P「……比奈? おい、どうした」

比奈「い、いま……アタシのこと名前で呼んだっスか?」

P「呼んだけど」

比奈「……ぷ、プロデューサーはビッチだったんすか?」

P「はい?」

比奈「わけもなく女のことを下の名前で呼ぶとか、どう考えてもヤリチンクソビッチじゃないっスか! 大興奮スよ!?」

P「待って。論理の飛躍が完全におかしい。着地点が異次元まで……、異次元……?」

比奈「プロデューサー? どうしたんすか、いきなりさいとうたかお先生の劇画みたいな顔になって」

P「貞操観念の逆転……? なあ、比奈、えっちって好きか?」

比奈「また名前で呼んだぁ! しかもなんなんスかその質問!? 大好きに決まってるじゃないスか! 誘ってるんスか!? ……ハッ!? 二人きりの事務所で、アタシのことを名前で呼ぶ……そういうことだったんスね!? いやー、まさかこんな形で処女を卒業できるとは……アイドルになったかいがあるってもんスよ!」

P「ノリノリでジャージ脱ぎ始めたところ悪いんだけど、ちゃんと説明して?」

比奈「説明もなにも、名前で呼び合うってことはパコパコバカップルってことじゃないっスか。いまさら気が変わったなんてなしっスよ?」ヌギヌギ

P「よし、わかった。話し合おうか、比奈」

比奈「おっ、言葉責めっスか? 任せてください! 創作活動で培ったアタシの空想淫語辞典でプロデューサーをビンビンにして――」

P「訂正する。説教だ、荒木。服を着てそこに正座しろ」

比奈「……っス」


 ――十数分後


P「以後、気をつけるように」

比奈「ホントーにすみませんでした。……でも、あの……なんでアタシやユリユリを名前で?」

P「晶葉スイッチ」

比奈「またっスかぁ。プロデューサーも大変っスね」

P「本当にな。どうやって元に戻ったらいいのかもわからん」

比奈「いつもみたいにスイッチを押すか、時間が経てば元に戻るんじゃないスか? アイドルのことを名前で呼んでしまうスイッチとか……このままだとヤバイっスよ? 人数多すぎて具体的に誰とはいえませんけど」

P「そうだな……だがスイッチは手元にないし、そもそも時間経過で元の世界に戻れるとは到底考えられないのがな」

比奈「……もとのせかい?」

P「平行世界。パラレルワールド。SFでよくあるだろ」

比奈「それはフィクションであって現実では……でもまさか……いや、さすがに晶葉ちゃんでもそれは……」

P「真に遺憾ながら、俺は貞操観念が逆転した世界から来た」

比奈「マジで別世界のプロデューサーなんスか? というか貞操観念が逆転? え、え? つまりプロデューサーはアタシら並みにスケベなんスか!? 女の裸を見て興奮するんスか!? あのケツ触りてぇとかなるんスか!? アタシがプロデューサーで性欲処理してるように、プロデューサーもアイドルで性欲処理するんスか!!!??? ちょっとちんちん見せてもらっていいスか!?」

P「会話はキャッチボールだからね? 気安くデッドボール投げるのやめてね?」

比奈「打ち捨てられたエロマンガを探し求めて雑木林を探検したり! 発見したお宝本を友達と貸し借りしたり! ちょっとエッチなマンガを古本屋で店員さんにバレないよう、こっそり読んだりしたんスか!?」

P「落ち着いて。比奈、落ち着いて」

比奈「放課後の誰もいない教室で、気になる男子のリコーダーを握りしめて、善悪の彼岸を行ったり来たりとか! 拾ったエロ本を夢と希望と一緒にランドセルに詰め込んで、父親に見つからないように部屋に隠したりとか! 勇気を振り絞って暖簾をくぐると、そこは天国だったとか!」

P「荒木、深呼吸」

比奈「ヒッヒッフー! ヒッヒッフー!」

P「落ち着いた?」

比奈「そりゃもうTKBビンビンっス!」

P「そうだね、ジャージ越しでもノーブラなのがよくわかるよ」

比奈「プロデューサーもビンビンっスか!?」

P「悪い、その程度で充血する海綿体じゃプロデューサーは務まらないんだわ」

比奈「……それはつまらないものをお見せしたっス」意気消沈

P「おっと、違うからな? 勘違いするなよ? 比奈は魅力的な女の子だからな? でもこの事務所ってセックスシンボルパラダイスじゃん。乳首くらいで勃ってるような感受性じゃ、海綿体が死んじゃうんだよ。だから俺の発言は比奈の魅力を否定するものではないということをわかってほしい」

比奈「アタシ、魅力的っスか?」

P「おうともさ」

比奈「引きこもりでオタクでドスケベで、学校ではどこにでもいるような陰モブで……ハタチになっても処女を捨てられなかったどうしようもない喪女っスけど……私、魅力的ですか?」

P「おうともさ」

比奈「引きこもりでオタクでドスケベで、学校ではどこにでもいるような陰モブで……ハタチになっても処女を捨てられなかったどうしようもない喪女っスけど……私、魅力的ですか?」

P「ああ、もちろんだ。普段から髪ボサボサだしジャージだし女子力皆無で、女であることを全力で投げ捨ててるような性格だけど……でも、だからこそかな。ステージの上では誰より輝いて見えるんだ。そもそもシンデレラガールズって本当の自分を探し出すのがコンセプトだし、そういう意味では比奈はメインヒロインだよ、文句なしに」

比奈「……ちょっと待って下さい。マジの返しが来て理解が追いつかないっス……とりあえず抱いてもらえますか?」

P「仕方ないな……これでいいか」

比奈「最高っス……夢にまで見たプロデューサーの胸板……でゅふふ……まさか自分がこんな形で処女を捨てられるなんて……ふひひ」

P「思考思索のK点跳躍やめよ? こら、ベルトのバックルを掴むんじゃない。あと俺のケツを揉むな」

比奈「抱いてもらえますかって聞いたら抱きしめてくれたじゃないっスか!」

P「ハグだけに決まってんだろバカ!」

比奈「どう考えてもセックスの流れだったっス! あとは押し倒すだけでいいんスよ! ぶっちゃけアタシはもう心も身体も準備万端なんで!」

P「俺の準備がまだだし、そもそもアイドルとプロデューサーが肉体関係とか、職業倫理として許されざる行為だよね!?」

比奈「芸能界では男性プロデューサーは三本目の足で稼ぐのが常識っス!」

P「待て待て待て! ベルトをいじるな! ズボンを下げるな! 服を脱がそうとするな!」

比奈「さきっぽだけだから! さきっぽだけだから!」

P「古今東西あらゆる媒体において、さきっぽだけで終わった試しがないんだよなあ!?」

 ――コンコン

早苗「はーいそこまで。明かりが点いてると思って来てみれば」

比奈「さ、早苗さん!? こ、これは違うんス! あくまで合意の上での性行為であって!」

早苗「ズボンのチャックを巡る激しい攻防戦を繰り広げといて、なにを言ってるんだか」

比奈「手錠をしまってください! 本当なんっス! そもそもこのプロデューサーはドスケベビッチで、口では嫌がってても内心は悦んでるに違いないんです!」

早苗「単独強姦未遂の上に侮辱罪まで重ねるなんて……残念だわ、仲間の中から重犯罪者が出るなんて」

比奈「信じてください! このプロデューサーは貞操観念が逆転した平行世界からやってきた、スーパードスケベマンなんです!」

早苗「本当に、本当に残念だわ……その発想、その妄想……最高の新刊になったでしょうに……私も読みたかったわ……あ、ムショの差し入れは原稿用紙とペンでいい?」

比奈「通報しないでぇ! スマホしまってぇ! プロデューサーも黙ってないでなんとか言ってくださいっス! このままじゃアタシが性犯罪者として執行猶予なしで実刑食らっちゃうっス!」

P「早苗さん、俺がドスケベビッチかどうかはさておきですね、貞操観念が逆転した世界から来たというのは本当です」

早苗「あのねぇ、P君。プロデューサーとしてアイドルを庇う君のキモチもわかるけど、君は男の子なんだからね? もっと自分のことを大切に――」

P「マッドサイエンティストA・I」

早苗「晶葉ちゃんならやりかねないなぁ……でもにわかには信じがたいし……ん? でも平行世界からやってきたっていうのが本当なら、こっちの世界にもともといたP君はいまどうしてるの?」

比奈「そういえばそうっすね。そこら辺どうなってんスか、プロデューサー」

P「ついさっき目覚めたばかりの俺が知ってると思うか?」

早苗「ひとまず連絡取ってみるわね………………あ、もしもしP君? いまどこ? お家? ううん、なんでもないの。ただ事務所の電気が点いたままだから、残業してるのかと思って……だいじょうぶ、私が消しておくから。ええ、それじゃ。おやすみなさい」

比奈「……マジだったんスね」

早苗「……マジだったわね」

P「二人とも信じてなかったんかい」

比奈「スイッチで人格と記憶を改造されたっていうほうが、まだ現実味があるっスよ」

早苗「いや、もしかしたら電話に出たのはP君の精巧なアンドロイドという可能性も……」

比奈「それはないっスね。あの狂気の科学者がそんなものを作り出した日には、ちひろさんとタッグを組んで全世界の風俗業に産業革命を起こすこと間違いなしっス」

早苗「ええ、間違いないわ。まずはプロトタイプの事務所内オークションからね。その資金を元手に量産化に着手」

比奈「そしてSEXvideoでプロモーションをかねたハメ撮りを放流して、同時にクラウドファウンディングすれば……」

P「クッソ悪い顔で楽しい相談してるとこ悪いんだけど、いいかな」

比奈「なんスか、あとちょっとで世界征服できるんスよ?」

早苗「ええ、全ての女に必要なだけの男が行き渡る世界……人類救済といっても過言ではないわ」

P「それはちょっと脇において、こっちの世界の晶葉とお話したいんだけど。元の世界に戻るために」

早苗「電話すれば?」

P「……あー、平行世界で製造されたスマホは圏外になるみたいだ」

比奈「じゃあアタシからかけるっス。スピーカーモードにしときますね」

晶葉『……私だ。なにか用か? 盗撮用メガネ型3Dスキャナーの納期はまだ先のはずだが』

比奈「そそそその件は脇に置いといてっスね!? 晶葉ちゃん、平行世界からやってきたというプロデューサーが目の前にいるんだけど……」

晶葉『なに……転送装置の中にいないと思ったらそっちにいたのか。計算を間違えるとは……まあいい、プロデューサーはそこにいるんだな? 五体満足か? 関節が折れ曲がっていたり、身体の一部がゼリー化していたりしないか?』

P「生きてるって素晴らしい」

晶葉『それは重畳。実験は成功というわけだ。ようこそプロデューサー、貞操観念が逆転した世界へ』

P「挨拶の前に質問に答えてほしいんだが、俺は無事に元の世界に戻れるのか? 時間とか場所とかそういうの込みで」

晶葉『もちろんだとも。私は――いや、私たちは狂気の科学者だが、それでも分別というものは最低限持ち合わせている。あちらの私は君を見捨てるようなことはしないし、私も私の助手を見捨てたりはしない。我々は目的を達成したあと、君をもとの時間軸、あるいは世界線に戻す予定だ』

P「目的だと?」

晶葉『ああ。私の助手……こちらの世界のプロデューサーの代わりに君にはしばらく事務所で働いてもらう』

P「代理出勤か? 社外研修でもやるのか?」

晶葉『いや、有給休暇だ』

P「あばばばばばばばばばばぼぼぼぼ」痙攣

早苗「ちょ、P君……!?」

比奈「白目を剥いてバイブみたいにぎゅいんぎゅいんしてるっス! 気持ち悪いっス!」

P「ああああああああああああああ有り得ない! 有り得ないないない有り得ないいいいいいい! 有給休暇ァ!? そんなものはこの世に存在しないッ! 晶葉も知っているだろ!? 有給休暇とは給与明細に記載された虚数! 労働法が生み出した労働者の幻想に過ぎないと! そんなものをどうやって手に入れるつもりだ!?」

晶葉『いや、有給自体はもう取ってあって――』

P「取れるわけないだろッ!? ちひろさんにいくら課金したんだ!? それとも宇宙の法則を乱したのか!?」

比奈「あの、プロデューサー、落ち着いてくださいっス。ちょっと……怖いっス」

P「あ、ああ……すまない、すこし取り乱したようだ……」

晶葉『話を続けてもいいだろうか』

P「ん……悪いな。気が動転して……」

晶葉『大丈夫だ、気にしていない。君がそうであるように私の助手も仕事熱心でな。有給も溜まってることだし、そろそろリフレッシュ休暇が必要だと――』

P「プロデューサーは24h365d勤務だろうが! ふざけたことぬかしてんじゃねえ! 何が仕事熱心だぶっ飛ばすぞ!? 今すぐここに連れてこい! なまっちろいケツにパイプ椅子でプロデューサー精神を注入してやる!」

早苗「P君、落ち着いて。ゆっくり深呼吸して? 必要ならおっぱい貸してあげるから」

P「すみませんもう無理ですちょっと借ります」

早苗「えっ? ちょ、本当に……あんっ♡」

晶葉『……比奈、どういう状況だ?』

比奈「早苗さんがプロデューサーをなだめるためにおっぱいを貸したら、本当に借りたっス……マジで微塵のためらいもなくすがりついたっス」

晶葉『なんと……男が女の胸を求めるなど、我々の常識では信じられないが』

早苗「ぱふぱふ♡ ぱふぱふ♡」

P「ああ~、極楽浄土なんじゃ~」

比奈「プロデューサー、アタシの胸も使うっスか?」

P「サンキューヒッナ」

比奈「あっ、ちょっと待つっス。早苗さん、スマホ持っててくれるっスか? どうも……よいしょっと。どうぞ、いらっしゃいっス」

P「ジャージの前を開けて! 色気もクソもないシャツをたくし上げて! ノーブラの下乳を晒しながら何を誘ってんだお前は! お邪魔します!」

早苗「躊躇なくシャツに顔を突っ込んだわ……」

晶葉『なんというクソビッチだ……世の男の半分がこうならば少子化も一挙に解決されように……』

比奈「んっ……/// 息が当たってくすぐったいっス……♡」

P「この香り、このぬくもり、この柔らかさ……世界が完全な平和に包まれていく……なんということだ、サンクキングダムがこんなところにあったなんて」

比奈「す、すごいっス……抱きしめてるだけで子宮にきゅんきゅんきて……あっ♡ そんなとこ舐めたら……///」

P「比奈のおへそヒンナヒンナ」prpr

早苗「凄い絵面ね……スーツ姿の男がひざまずいて、地味系女子のシャツに顔を突っ込んで……新しいエロ雑誌の創刊号かしら、コレ」

晶葉『発売即日に重版決定しそうな画ではある。とりあえず明日の告知用に写真を撮って送ってくれ』

早苗「告知? なんの」

晶葉『プロデューサーのリフレッシュ休暇と、代理出勤として貞操観念が逆転した世界からプロデューサーが着任したことを周知する』

早苗「晶葉ちゃん? 人として言うけど、お姉さんはね、狼の群れに肥えた羊を放り込むのはどうかと思うの」

比奈「とかいいつつ、ちゃっかりブラジャーを外して、後ろから生パイぱふぱふサンドイッチする気マンマンの早苗さんはどっちなんスか? 人なのか、狼なのか」

早苗「……この世界の女はね、みんな人狼なのよ」

比奈「ああ、そうだったっス……女は閉経するまで、理性と欲望の板挟みでもがき続ける……悲しい宿業を背負った生き物だったスね……」


 ――翌日早朝、事務所


P「さて、これから貞操観念が逆転した世界での初仕事となるわけだが……思った以上にやることなくね? 引き継ぎの手引書見たけど、別に俺がいなくても回るようにしてあるし……リフレッシュ休暇とか取っちゃうような軟弱者だけど、ちゃんと仕事はできるじゃん」

志希「おっはよー」

P「ん、志希? おはよう、早いな」

志希「~~~~~ッ♡」

P「どうした、いきなり身悶えして……」

志希「いやあ、名前で呼ばれるってすごい気持ちイイね……うっとりしちゃう」

P「そ、そうか……ところでお前オフだろ? なにか用か」

志希「うん、ちょっと確認をね。ところでプロデューサー、あたしの格好を見てなんかいうことなぁい?」

P「寒そう。この時期でも朝は冷えるんだから、シャツに白衣はやめなさい」

志希「貞操観念が逆転したってのはホントだったかぁ」

P「まあな。いや、待て。わざわざそれを確認しに早起きしたのか?」

志希「んー? いや、起きてないよ? 徹夜しただけ」

P「相変わらず馬鹿なことを……送ってやるからちゃんと寝ろ」

志希「え、送ってってくれるの?」

P「徹夜明けの上にその格好で放浪されても困るからな。家に帰って温かくして寝ること」

志希「今日のプロデューサーは優しいなあ。貞操観念が逆転してるから?」

P「さあな。ほら行くぞ」

志希「……ねえプロデューサー、手とか繋いでいい?」

P「どうぞ」

志希「ありがと。……ふふ、あったかい」

P「お前の手は冷たいな。というかもうちょっと着ろよ……ほら、ジャケット貸してやるからちゃんと着ろ」

志希「……え? ホントにいいの?」

P「いいに決まってんだろ。お前は自分を雑にしすぎだ。もっと大切にしなさい」

志希「うん……そうする///」

P「わかってくれて嬉しい。あとな、ジャケットを羽織り直すふりをして匂いをかぐのをやめてくれるともっと嬉しい」

志希「それは無理だよワトソンくん。それと、先に謝っとくね。ごめん」

P「ん? なにが――」

 チクッ

志希「安心して。すごく眠たくなるだけで、依存性とかないヤツだから」

P「ええー、ほんとにござるかぁ? 視界がすっげぇ、ぐるぐる、回るんだけ、ど……」ドサッ

志希「……回れ回れメリーゴーラウンド。もう決して止まらないように」



P「……ん、ここは……?」

フレデリカ「あ、プロデューサーおはよー。今日は早いねー」

P「フレデリカ……?」

フレデリカ「どうして疑問系なのかな? 世界に二つとないこのビボーを誰と心得る! でも名前で呼んでくれたから許してあげるー♪ もう、プロデューサーってばお寝坊さんなんだから」

P「……寝坊? いま何時だ……? というか、どうして俺はパイプ椅子に縛り付けられて……」

志希「あれ、プロデューサーもう起きたの? 投薬量からしてあと二時間は目覚めないはずなんだけど」

P「……おはよう、志希。早速で悪いが縄を外してくれ」

志希「だめだめー。キミにはこれからあたしたちとイイことしてもらうんだから」

P「イイこと?」

志希「うん。あたしも本当はね、こんなことしたくなかったんだけど……キミが悪いんだからね。女の子にあんなに優しくして……ジャケットを貸しちゃうなんて、いくらなんでも無防備すぎるよ? ……それでね、思ったんだ。このままじゃキミはきっと、事務所の狼さんたちに食べられちゃう。だったらあたしたちが、最初に食べても別にいいよねって」

P「ちょっとなに言ってるかわからないです」

フレデリカ「考えるな。感じろ」

P「ああ、うん。止める気がないのは感じた」

奏「おはよう」

周子「おはよー」

P(きた! LiPPSの常識枠と良識枠きた! これで勝つる!)

フレデリカ「あ、奏ちゃん、シューコちゃん。おっはよー。早かったね?」

周子「だってPさんの貞操観念が逆転して、ドスケベクソビッチになってるんでしょ? 早くこないと乗り遅れちゃうじゃん」腰クイックイッ

奏「周子、気持ちはよく分かるけど、寝癖くらい直してから来たらどう?」

周子「どうせぐちゃぐちゃになるんだから直す必要ないでしょ」

P「こんな世界もうイヤだ!!」

奏「あらPさん、おはよう」

周子「おはよ、Pさん。ところで志希ちゃんフレちゃん、なんだかPさんが嫌がってるように見えるけど……本当に貞操観念が逆転してるの? あたし無理やりってのはあんまり好きくないんだけど」

志希「そこはダイジョブ。このジャケットはなんと、プロデューサーから貸してくれたモノなのだー!」

周子「え、本当に? 気絶させたあとに剥いだとかじゃなくて?」

志希「うん。あたしがこんなカッコじゃ寒かろうと、目の前で脱いで渡してくれたんだよ」

奏「目の前で脱いで!?」

周子「脱ぎたてほかほかのジャケットを渡した!?」

P「いやそんな驚くことじゃないだろ」

奏・周子「!!!???」

P「首が外れそうな勢いで振り返るなよ……心臓に悪いだろ」

フレデリカ「……ねえプロデューサー。頭が寒そうだからフレちゃんのパンツかぶせてあげよっか?」

P「お前何いってんの!?」

フレデリカ「うんうん、驚くよねー。奏ちゃんとシューコちゃんも、いまのプロデューサーと同じ気持ちだからね」

P「え、そうなの? 男のジャケットって女の子のパンツに匹敵するの?」混乱

志希「それは人の趣味嗜好に左右されるけど……ジャケットを貸すってわりとメジャーなプロポーズだから」

P「ジャケットを貸しただけで!?」

奏「当たり前じゃない。貞淑な男性が己の羞恥心と寒さに震える女性を天秤にかけて、下着を晒すことをいとわない覚悟でジャケットを渡すのよ?」

周子「身体を冷やすのはよくないってのは、極論すると生まれてくる子供のためにも母体を大切にしようってことだしね。俺のジャケットを貸すから健康な子供を産んでくれって、どう考えてもプロポーズでしょ?」

P「極論にもほどがある! というか下着を晒すってなんだよ……」

奏「一般常識も忘れてしまったの? シャツは下着よ?」

P「それはそうだけど……ドレスコードの意識が高くなってる……」

志希「もう、シャツの話なんていいでしょ? どうせ脱いじゃうんだから……ね? というわけで、気持ちイイことしよ? 息が止まるくらいの、甘いくちづけを……」

P「だが断る」

奏「えっ? 貞操観念が逆転してるのよね?」

P「しててもこの状況でバッチコイ!!! ってなると思う?」

フレデリカ「あー、そーゆーことね。完全に理解した」←わかってない

周子「フレちゃんどういうこと?」

フレデリカ「貞操観念が逆転しても、今まで貞淑な男の人として生きてきたわけでしょ? つまり口では抵抗してても、カラダはもう……ってやつ」

志希「嫌よ嫌よも好きのうち、ってことか」

周子「大好物です」

奏「じゃあ、Pさんが素直になれるように、手伝ってあげるわ」ジィィ...

P「気がつけばチャック全開。ワオ!」

奏「あら、Pさん? いきなり足を閉じられたら、いじってあげられないのだけど」

P「股間のガードが堅いとみるやいなや、太股をいじり始めるのどうかと思うんだ!」

フレデリカ「おっ、プロデューサーはもしかして敏感肌なのかなー?」

P「脇腹に手を突っ込むんじゃない!」

周子「さっさと諦めたら楽になれるよー?」

P「乳首スイッチ探さないで!」

志希「ほらほら、みんなでこんなにしてあげてるんだから……ガマンは身体に毒だよ? ……ちゅっ、れろ……」

P「耳をなめながらささやくのもアカンって!」

奏「抵抗する男の人って可愛いわね……でも、Pさんのココはいつになったら起きるのかしら」

P「や~めろお前! チッ! あ"~もう!」

フレデリカ「抵抗しても無駄だ!」

奏「四人に勝てるわけないでしょ」

P「バカ野郎お前俺は勝つぞお前!」

周子「スイッチ見ーつけた」

P「押すなつまむなひねるな弾くな! ……わかった! わかったから! 一人ずつ相手にするから!」

フレデリカ「言質とったどー!」

志希「にゃふふー。よく言えました。ご褒美にうんと可愛がってあげるからね……♡」チュッ

周子「いやー、それにしてもプロデューサーもずいぶん粘ったねえ。パンツの中もネバネバになってるんじゃない?」

奏「どうかしら。見た所、大きくなってるようには見えないのだけれど」

周子「えー? 貞操観念が逆転してるんでしょ? パイプ椅子に縛られて、美少女四人に囲まれて弄くり倒されたらもうビンビンのバッキバキになるのが普通じゃない?」

フレデリカ「それともまだ刺激が足りないかなー。口の中にパンツ詰めてみる?」

奏「服を脱げばいいんじゃないかしら」

周子「半脱ぎフェチの可能性は?」

P「満身創痍の俺を前にいやらしい相談するのやめよ? というか今思ったけどさ、みんな彼氏くらいいるだろ? 貞操観念が逆転してるからって、俺とわざわざする必要ってなくないか?」

周子「いやいや、彼氏ができないからPさんを使うんだけど」

フレデリカ「さっさと処女を捨てたいっていう乙女心、わかってくれないかなー」

志希「ねえプロデューサー、なんで私たちに彼氏がいると思ったの?」

P「え、いやむしろなんでそこまで肉欲に正直なのにいないの?」

周子「アイドルになれば男なんて入れ食いウハウハ食べ放題……そんなふうに考えていた時期がシューコちゃんにもありました」

P「まじかよ」

奏「むしろアイドルになってからは男子に露骨に避けられるようになったわ……」

周子「女の子はいくらでも寄ってくるんだけどねー」

志希「近寄ったら食べられちゃうと思ってるんだろうね……まあ食べちゃうんだけど」

フレデリカ「そういうわけで彼氏いない歴=年齢の私たちは、プロデューサーで処女を卒業するのでした。まる!」

P(くっ……このままでは平行世界とはいえアイドルに手を出してしまう……! それだけはプロデューサーの誇りにかけてなんとしてでも阻止しなければ! だが逃げようにも志希の薬物のせいで力が出ない……この程度の縄、普段ならすぐに千切れるのに! ここは相手をするという雰囲気を出しつつ時間を稼ぐしかないか……)

志希「それで、順番はどうしよっか」

周子「正直にいうと、もの凄くムラムラしてるからすぐにでもしたいんだけど」

奏「それをいうなら私だって……Pさんの逞しい太股を、一秒でも早く舌で味わいたいわ」

フレデリカ「志希ちゃんのおクスリでプロデューサーのちんちん増やせない?」

志希「増やせないこともないけど、死ぬほど痛いし、二度と元に戻らなくなるよ?」

奏「……さすがにそれは可哀想だからやめておきましょう」

フレデリカ「じゃあどうやって決める? じゃんけん?」

周子「待った。男の人って一回出したら終わりでしょ? 最初の人で打ち止めとか生殺しにもほどがあるよ?」

志希「そこは志希ちゃん特製☆超絶精力剤を、静脈注射すれば~ムフフ♪」

P(いかん、口を挟もうにも藪蛇になりそうで勇気が出ない。そしてこちらをうかがうアイドルたちの視線はすでに、出来上がる直前のスキヤキを見つめるハラペコキッズのそれ……もうのっぴきならない状況! 印を結べない状態では使いたくなかったが、こうなっては最終手段しかあるまい。四人が相談しているスキに呼吸を整え、精神を統一し、全身のチャクラを練り上げ――そしてファイト一発!)

P「――ふぅんヌッッッ!!!」太陽万歳

周子「なっ……!?」

奏「い、一瞬で全裸に……!」

志希「まさか物質透過!? 縄を抜けるためだけに服まで脱ぎ捨てるなんて……!? 一体いつ人間を卒業したの!?」

フレデリカ「無修正乳首とフルチン! 今世紀最高のオカズに是非一枚!」

P「すまんな! スマホのカメラが起動するより俺が床をすり抜けるほうが早いのだ! ふははははは! さらばだ!」

周子「……沈んでいったね」

奏「ええ」

志希「全裸のままなのに」

フレデリカ「写メを撮る間もなかったけど、服を回収する時間もなかったね」

周子「戻ってくるかな?」

奏「どうかしら。全裸で事務所をうろつくのよ? ピラニアのいる池で泳ぐのと一緒じゃない?」

志希「さすがにもう戻ってこれないでしょ……成人組に見つかったらその場でハッスルハッスルだろうし」

フレデリカ「ふむ。こうなっては我々にできることは、この脱ぎたてほやほや極上スーツをどう山分けするかという相談だけだろうねー」

四人「………………最初はグー! じゃんけんポンッ!」


 ――階下、レッスンルーム


P「ふぅ、物質透過からの華麗な着地……(貞操が)危なかった……なんとか九死に一生を得たぜ」

美嘉「」

莉嘉「」

P「おっとすまない、自主レッスンの邪魔をしたようだな。すぐに消えるので気にせず続けt」

莉嘉「お姉ちゃん見て! 全裸! 筋肉! ターミネーター!」

美嘉「よく知ってるね、莉嘉。あれはターミネーターのコスプレだね。なんにも着てないけど、あのポーズをしてるってことはきっとコスプレだね」混乱

莉嘉「すごいすごい! 無修正だよお姉ちゃん! Pくんのテーソーカンネン? が逆転して、ウルトラドスケベになったってウワサは本当だったんだ! 比奈さんの服に頭を突っ込んでるヤツも合成じゃなかったんだ! ねえねえPくん、乳首つまんでいい?」

P「ダメです」

莉嘉「ええー? なんで? それターミネーターのコスプレでしょ? だったら乳首をつままれるところまで再現しないと餓狼伝説じゃない?」

P「それをいうなら画竜点睛を欠く、な。あと俺の知ってるターミネーターは乳首をつままれたりしないから。そんな物欲しそうな目で見つめてもダメです」

莉嘉「じゃあちんちn」

P「もっとダメです」

莉嘉「でもPくんっていまはドスケベなんでしょ? ドスケベなら触らせてくれるくらいよくなくない?」

P「よくなくなくない。ドスケベだろうがなんだろうが物事には順序ってものがあってだな」

莉嘉「じゃあキスするところから? ……いいよ、しよっか♡」

(レッスン直後の火照ったカラダ)(汗ばんだりんごほっぺ)(悪魔的愛らしさの唇が、舌なめずりをして魅惑の弧を描く)

P「やめてくれ莉嘉、その(お色気の)術は俺に効く」

莉嘉「!!!」

美嘉「な、名前で呼んだ!?」

莉嘉「想像以上のビッチになってる! だったらさ、もういいよね? ビッチにはキスなんてアイサツみたいなものでしょ? しようよ、キス☆ ちゅって唇をあわせて……ベロでゆっくり、Pくんの口の中をいぢめてあげるから……」

P「クソッ、JCのくせに! 破廉恥にもほどがある! お姉さんからも注意していただけませんか!?」

美嘉「………………むー」

P「えっ、なんでふくれっ面してるの?」

美嘉「莉嘉は名前で呼んで、アタシはお姉さん?」

P「めんどくせえなお前! 美嘉! 美嘉、美嘉、美嘉! これでいいか、美嘉!」

美嘉「うんっ! じゃあ脱ぐね★」ヌギヌギ

P「えっ」

美嘉「なんで引くの?」

P「なんで引かないと思ったの?」

美嘉「いやいや、貞操観念が逆転したプロデューサーならわかるでしょ? 性欲活火山の女子高生の前に、普段から抱いたら最高だなって思ってた異性が、ある日ドスケベになって天井から全裸で降ってきて、いきなり名前を呼ぶんだよ? とりあえず脱ぐよね?」

P「うん、待って。ちょっと考えるから」

P(性欲が服を着て歩いてる男子高校生の前に、服を着たセックスである新田美波が天井から全裸で降ってきて、いきなり名前を――?)


 美波『Pさん……♡』


P「――ごめん、すっぽんぽんだったわ」

美嘉「だよね! というわけで全部脱いじゃうね」

莉嘉「はっだっかーになっちゃおっかなー☆」ヌギヌギ

美嘉「なっちゃえー★」ヌギヌギ

P「二人ともノリノリのところ大変申し訳ないが、俺はえっちをしながら脱がすのが好きなので服を着てほしい」嘘

莉嘉「え、ホントに?」

P「本当に。ついでにいうと制服が大好きだ」本当

美嘉「マジ?」

P「マジマジ。ここだけの話、美嘉がネクタイをリボン結びしてるのを見るたびにムラムラしてた」暴露

美嘉「莉嘉! アタシはプロデューサーが逃げないようにしておくから、アンタはマッハで着替え取ってきて!」

莉嘉「わかった! いくぞー☆ 莉嘉ダーッシュ!」

P「……美嘉、そこをどいてくれ」

美嘉「それは出来ない相談だね。こんな千載一遇のチャンスを見逃すほど、アタシは甘くないよ」

P「そんなに俺とチョメチョメしたいのか、美嘉!」

美嘉「当たり前でしょ! 女子高生の性欲をなんだと思ってるの!? それにね、プロデューサー……信じられないかもしれないけど、アタシ……まだ処女なんだ」

P「いやそれは知ってる」

美嘉「ははっ、さすがプロデューサー……なんでもお見通しってわけか。笑っちゃうよね。カリスマギャルってもてはやされて、ファッション誌では恋愛相談の連載も持ってて……経験人数は数え切れないほどで、好きな体位は騎乗位、得意技は手コキからの前立腺責めってインタビューで答えちゃうようなアタシだけど……処女なの」

P(引っ込みのつかなくなった童貞かよ)

美嘉「でも、もう限界なんだ……文香さんや比奈さんや風香ちゃんのおかげで、そっちの知識だけはなんとか取り繕ってるけど、そろそろ実地検証しないと……メッキが剥がれちゃいそうで……もしそうなったら、アタシは終わりなの。カリスマギャルとして今まで積み上げてきた信頼もキャリアも全部が無駄になっちゃう! だからプロデューサー……アタシとえっちして!」

P「だが待ってほしい。えっちとは愛し合う二人の『好き』という心が身体とともに溶け合って、身も心も一つになることではないだろうか?」

美嘉「……そ、それはそうだけど……でも、もうイヤなの! 莉嘉の目に耐えられないの! カリスマギャルなんかじゃないのに、アタシを無邪気な信頼と尊敬で見つめるあの子の目が! アタシは処女でいちゃダメなの……莉嘉が憧れる、『カリスマギャルの城ヶ崎美嘉』じゃないといけないの!」

P「美嘉。お前の輝きは、処女でいることでくすんでしまうようなものなのか? 俺はそうは思わない! お前のひたむきさは誰よりも俺が知ってる! 努力家で、思いやりがあって、目標に向かって突き進む行動力がある! お前が自分のことをどう思っていようが、お前はカリスマギャルだ!」

美嘉「で、でも……処女なんてカッコ悪いよ……」

P「かっこ悪くなんかないさ。美嘉はアイドルとして脇目もふらずに頑張ってきただろ? 美嘉が処女なのは、単純に出会いがなかっただけだ。美嘉に釣り合うだけの、いい男がいなかっただけのことなんだ」

美嘉「プロデューサー……///」トゥンク...

P「誰がなんと言おうと、美嘉はカッコいいカリスマギャルだ。な、そうだよな、莉嘉」

美嘉「り、莉嘉……! 一体いつから……?」

莉嘉「処女でいちゃダメってところくらい、かな」

美嘉「そっか……ごめんね、ウソついて……」

莉嘉「ううん! 謝る必要なんてないよ、お姉ちゃん! むしろ逆にスゴイよ!」

美嘉「そ、そうかな?」

莉嘉「だってお姉ちゃん、まだ処女なのにこんなにカッコいいカリスマギャルなんだもん! 処女じゃなくなったらもう絶体無敵だよね!」

美嘉「なるほど、そういう考え方も」

P「ねえよ」

莉嘉「それにほら、お姉ちゃんがまだだったら、アタシと一緒に卒業できるよね☆」

P「おっとこれは雲行きが怪しくなってきたゾ~」

莉嘉「はい、お姉ちゃん。制服!」

美嘉「でかした莉嘉! じゃあプロデューサー、着替えるからちょっと待ってね」ヌギヌギ

P「いやいやいや、いやいやいや」見猿

莉嘉「ゴメンねPくん、お姉ちゃんのはロッカーにあったんだけど、アタシの制服はこの前お家に持って帰っちゃったから……」

P「うん、いいよ。全然気にしてないから。へーきへーき」

莉嘉「だからね、こっそり衣装(サークル☆オブ☆フレンズ)借りてきちゃった。すぐに着替えるね」ヌギヌギ

P「あぁ~! 衣擦れの音ォ!」

莉嘉「でもさー、Pくん変わってるよねー。脱がしながらえっちしたいなんて」

P「服は理性であり文明だからね。それを一枚ずつ脱がすということは、人間の本能を剥き出しにするために必要なプロセスなんだ。人類は巨大な社会を築くことで繁栄を遂げたが、今度はその社会で生きていくために、身に着けた規範や常識に囚われることになった。人権と平等主義を産着として生まれてきた人間は、もはや服と共にコモンセンスを脱ぎ去ることでしか、本当の魂の自由を得られないんだ」

美嘉「ユカタン半島」

莉嘉「ねえPくん、そのお話って長い? もう着替え終わったんだけど」

P「ああ、もう気にしなくていいぞ。衣擦れの音が聞こえるほどの距離で二人が着替えているという現実に、俺の理性が軋みを上げていただけのことだからな。服を着たのならもう大丈夫だ。そう、大丈夫。俺はもう大丈夫」自己暗示

美嘉「それで、プロデューサー?」

莉嘉「どっちから脱がす……?」

P「ええいこのドスケベどもめが! 逃げるは恥だが役に立つ!」



 ――プロデューサーは一体どこに……!

 ――お姉ちゃん、みりあちゃんが向こうでPくんを見かけたって!

 ――わかった、すぐ行く!

P「……ふう、なんとか難を逃れたようだな。やはりダンボールこそ最高のスニーキングスーツ。

 しかし大騒ぎになってきたな……業務に戻れるのか、これ? このままほとぼりが冷めるまで大人しくしているか? だがダンボールの中で全裸というのは、文化的な社会人として沽券に関わる。晶葉に業務用のケータイは渡されてるが、服を調達しようにも誰に頼めばいいのやら……いや、待て。貞操観念が逆転しているということは、つまり俺の世界で性的好奇心旺盛だったアイドルは、こっちでは立派な淑女に?

 ん? そういえば晶葉はプロデューサーの貞操観念が逆転したと通知したんだよな? となると、アイドルからすればドスケベな男が全裸だから服を届けてほしい、って連絡してくることになるんじゃ……あれ、これ詰んでね? 現地調達が基本の蛇でも服は着てるってのに……ハッ! そうか、現地調達だ!

 プロデューサーは事務所に缶詰なんてザラなんだから、ロッカールームに着替えが置いてあるはず! 晶葉にロッカールームの位置を確認すれば……ってケータイはスーツのポケットだよクソがッ!

 いかん、なんとかして服を調達せねば……せめてカーテンさえあればローマの仮装も出来たのに、事務所の窓は全部ブラインドだからトーガも着れない……どうすればいいんだ!?」

あやめ「なにかお困りですか、P殿」

P「」

あやめ「ご安心ください。この部屋には私とP殿以外、誰もおりませぬゆえ」

P「……こ、このダンボールが俺だとどうしてわかった?」

あやめ「P殿の体臭は記憶しておりますので」

P「そ、そうか……記憶している理由は知りたくないから、そっとしておくぞ。しかし助かった。こんなことを頼むのも気が引けるんだが、緊急事態だ。すまないが俺の服を取ってきてくれ。ロッカールームにあるはずだ」

あやめ「それは出来ません」

P「えっ? いや、そこをなんとか。ロッカーの鍵なら壊していいから」

あやめ「むっ、P殿はわたくしを見くびっておられるのですか? ロッカー程度の鍵開けなら十秒もいりません」フンスフンス

P「それは頼もしい。ではその見事なニンジャスキルでお願いだから服をとってきてください、何でもしますから」

あやめ「ん? いま何でも――」

P「プロデューサーとしてできる範囲でね!」

あやめ「……いいでしょう。ですが、貞操観念が逆転した影響が記憶にもあらわれているのですか? P殿のロッカールームは、もうずいぶん前に撤去されたではありませんか」

P「寝耳に水」

あやめ「去年の夏、P殿がロッカーに放置したままのシャツが原因で起こった猥シャツ事件をお忘れですか?」

P「初耳ですが」

あやめ「あ、あれ程の凄惨な事件を覚えてないと!?」

P「そう言われてもな、こっちの世界で起きたことなど知る由もないんだが」

あやめ「こっちの、世界……? P殿、貞操観念が逆転した影響で、記憶障害どころか妄想癖まで……」

P「本気で心配してる声色やめよ? 俺は正常だからね? むしろ君たちが狂ってるんじゃないかと思うんだよね、僕は」

あやめ「P殿……だいじょうぶです。祖父が良いお医者様に伝手があります。きっと良くなります。もしダメでも……その時は私がP殿を、一生お側で支えますから……っ」

P「悲壮な決意とかいらないから。俺の中の正常な部分が、俺の自己正当性に疑問を投げかけちゃうから、本当にやめて。というか晶葉から通知が届いてるだろ? プロデューサーのリフレッシュ休暇のために、平行世界から貞操観念が逆転したプロデューサーがやってきました、って」

あやめ「待ってください。晶葉殿からの通達は、プロデューサーの貞操観念が逆転したという一文と、比奈殿の服に顔を突っ込んだ男のエロ画像のみです。休暇や平行世界などどこにも書いてありません」

P「……晶葉が嘘をついた? なんのために? プロデューサーの有休と、俺が平行世界からやってきたことを伏せることに、どんな意味が……いや、待て。あやめ、比奈と早苗さんに電話をかけてくれ」

あやめ「わかりました」

P「晶葉はプロデューサーの代理出勤として俺を呼んだといってたが……無用な混乱を避けるために、あえて情報を伏せたのか? いや、違う。円滑な業務が目的なら、わざわざ貞操観念が逆転したという情報を流す必要はない。俺がこの世界ではクソビッチだという事実が、いらぬ混沌を招くということは晶葉も想定していたはず……ならば俺という一石を投じ、事務所に波風を立てるのが狙い……?」

あやめ「P殿、お二人と電話がつながりません」

P「そうか。二人揃って電話に出れないとなると、晶葉が口封じをした可能性が高いな」

あやめ「く、口封じ!?」

P「晶葉のことだからひどいことはしないだろうが、二、三日は連絡が取れないと見るべきだろう。問題はどうして晶葉がそんなことをしたのかだ。休暇を取ったプロデューサーと、その代理出勤として呼び出された俺と、貞操観念が逆転したという情報。そして口封じをされた比奈と早苗さん……これらの情報を統合すれば、晶葉が俺とプロデューサーが入れ替わったことを、誰にも知られたくないという結論が導き出される。だが、晶葉の目的は? 俺とプロデューサーをすり替えてどうする?」

あやめ「あの、P殿……よろしいでしょうか」

P「なんだ?」

あやめ「あやめには理解できない話ばかりで……その、だんだん不安になってきたのです。ダンボールの中にいらっしゃるのが、本当にP殿なのかどうか……い、いえ! もちろん自信はあります! P殿の体臭を嗅ぎ分けることにかけては、凛殿と志希殿にも勝るとも劣らじと自負しておりますが、その、やはりお姿が見えないというのはいかんともしがたく……」

P「……姿が、見えない……?」

あやめ「はい。ですから、ちらりと、ひと目でも構いませんので……P殿のあのスーツの下に隠された筋肉を……あっ、いえ! 違うのです! 決してP殿の肉体を見たいという下心などではなく! あくまでもP殿を想う心の底から湧き上がる、純粋な……そう、痴的好奇心なのです!」

P(いや、待て。そういえばこっちに来たときから、俺は晶葉の姿を見ていない。平行世界から人間を呼び出すという世紀の大実験が成功したというのに、その結果を目で確認しない? あの実験大好きっ娘が? それは有り得ない。だが現実に晶葉は、俺の状態を口頭で確認しただけ。晶葉にとってはそれで十分だということになる。

 つまり物事の優先順位が違うのだ。晶葉にとって平行世界間移動は、目的ではなく手段でしかなかった。やつの目的は俺がちゃんと代理出勤できるかどうか。この世界のプロデューサーの替え玉として、きちんと機能するかどうかだったのだ。そして俺とプロデューサーをすり替えることに成功した晶葉は、貞操観念が逆転したという情報を流して、男に飢えたアイドルたちをけしかけた。

 なんのために? そんなの決まってる。この世界の狂気の一端に触れた今なら理解できる。好奇心と知性が良識を介することなく直結している晶葉も、もれなく貞操観念が逆転しているのだ。狼どもがスケープ・ゴートを追いかけ回している間に、本命の羊を貪り食う気に違いない!)

P「……あのマッド・サイエンティストめ……」

あやめ「ああ! 申し訳ありません、P殿! 私は忍者を志す者でありながら! P殿とあんなことやこんなことを致してしまう妄想を、事あるごとに浜口あやめ淫法帳に書き付けておりました! お許しください、P殿!」

P「わかったぞ、あやめ」

あやめ「なっ、名前で私のことを……! 本当にわかっていただけるのですか!?」

P「ああ、やっと狙いがわかった」

あやめ「なんと! 隙あらば妊ドルにならんと好機を伺っていた私の野望まで!? そ、それをわかっていただけた上で、あやめとお呼びくださるということは、つまり……!」

P「全部すべてスリっとお見通しだ!」

あやめ「そんな、私の淡い恋心までお見通しだったとは……そ、それではあの、もしかしていまから……その、致す……のですか///」

P「打てる手は早めに打っておかないとな」

あやめ「ああ、P殿……それでは失礼致します♡」

P「えっ? なんでダンボール開けてるの?」

あやめ「ほ、本当に全裸だったとは……ゴクリ……想像よりもずっと逞しいお背中で……あっ、中にこもっていたP殿の匂いが……くふぅ♡」

P「ちょっと待って。このダンボール一人しか入れないからね? 無理やり入ってきたらダンボール破れちゃうからね?」

あやめ「大丈夫ですP殿! この大きさの箱ならば、ピッタリ密着すれば私のが破れるだけですみます!」

P「違う、そうじゃない」

あやめ「さあP殿! いまこそ私を妊ドルに! 房中術なら通信講座で皆伝しましたので、安心して身を任せてください!」

P「あっ、コラ! 本当に入ってくるやつが……おま、コラ! どこ触ってんだ!」


  ――プロデューサーの臭いがする……! プロデューサーがいる……近くに……!


あやめ「!」

P「待って廊下から聞こえた不穏な声に緊張するのはわかるけど力抜いて痛い痛い痛い」

あやめ「お静かに。こんな破廉恥な状態のP殿がアイドルの目に触れれば、きっと想像を絶する責め苦が待ち受けているに違いません。どうかご辛抱を」

P「今まさにお前の指が俺の乳首を責め苛んでるんだよなァ!?」

あやめ「P殿、そのように大きな声を出されては……!」

   ガチャ、キィィィ...

凛「プロデューサー、見ーつけた」

P「……あ、これ知ってる。あれだろ? シルバースピリットの。俗にいうウルヴァ凛。うん、知ってる。これが窮途末路ってやつ」

凛「なんであやめと一緒にダンボールに入ってるの? そういうプレイなの? それとも私から隠れようとしたの? ……まあいいや、説明はピロートークで聞けばいいし。鬼ごっこは終わりだよ、プロデューサー。この私が見つけた以上、もう逃さないから。そういうわけで、そこをどいて、あやめ。今の私は加減が効かないから……傷つけたくない」

あやめ「本気なのですね、凛殿。しかし私も忍の端くれ。守るべきものを前にして退くことなど出来ましょうか!」キリッ

凛「……ここにね、晶葉から無断で借りたアイドルの性感がマシマシになるスイッチがあるんだけど」

P「それ借りたっていわないよな」

凛「いつか返すつもりだからいいの。それでね、あやめ。このスイッチを押すと、半径五メートル以内のアイドルはすごく敏感になって、腰から力が抜けちゃうんだって」

あやめ「ほ、ほほう。それで……?」

凛「このスイッチを押されると、あやめはすぐに力が抜けて動けなくなる。でもスイッチに慣れてる私は自由に動けるんだ。昂ぶる身体を持て余したまま、指を咥えているあやめに見せつけるように、私はプロデューサーを無理矢理メチャックス。ようやく動けるようになった頃にはあやめの頭の中は、限界まで膨れ上がった性欲でいっぱいになってて、理性を失ったあやめは、私にハメ倒されてぐったりしたプロデューサーに謝りながら、それでも跨がろうとしている自分を止められずに……」

あやめ「なななんと破廉恥な! スイッチのせいでえっちな妄想で頭がいっぱいで、正常な判断力を失ってしまい、P殿を襲ってしまうと! 悔し涙を流しながらも、凛殿がしゃぶりつくした胸板に口づけするのをやめられない! それは仕方のないシチュエーションです!」ドキドキワクワク

P「このポンコツ忍者! スイッチを押される前からすでに判断力失ってんじゃねーか!」

凛「静かにして、プロデューサー。大丈夫、怖いことなんかないから。安心して。痛くしないから平気だよ?」

P「もう信じられない」

凛「うつむいてそんなこと言わないでよ。ずっと一緒にやってきたじゃない。ぴたりと吸い付くように相性いいことわかってる。ふたりだからイケるとこまでイこうよ」

P「俺の話がcan you hear me baby」

凛「聞こえてる。でもね、私はもうためらわないって決めたんだ。私ね、ずっと隠してたの。臆病だったから。プロデューサーに嫌われたくなかったから。でも、今なら言えると思った。今しかないって思った。貞操観念が逆転したプロデューサーなら、きっとわかってくれるって。好きな人と、愛のままにわがままに、滅茶苦茶セックスしたいって気持ち……わかってくれるよね?」

P「アイドルと一線を超えられないっていう俺の気持ちはわかってくれないの?」

凛「今は私の気持ちの話をしてるんだけど」

P「そうきたかー。うん、じゃあこうしよう。さすがに俺も二人を相手にするのは辛いから、どちらか一人、勝った方とすることにしよう」

凛「ふーん。まあいいけど」

あやめ「い、いやいやP殿! ムラサメブレードなしで、野生解放した凛殿と一騎打ちというのは……」

P「主命を受け死地に飛び込む忍者って、抱かれたいぐらいカッコイイよなー」

あやめ「凛殿、さっそく始めましょう!」フンスフンス

凛「いいよ。私の勝ちは揺るがないけど、遊んであげる」

P「ちょっと待った、戦ってる途中でスイッチが誤作動する可能性がある。勝負に水を差しかねないブツは、こちらで預からせてもらう。さあ、ダンボールに向かって投げるんだ」

凛「いいけど……さっきからなんでダンボールに入ってるの?」

P「止むに止まれぬ事情があってな。それじゃあぼちぼち始めてくれ」

あやめ「はい! P殿、忍者として正々堂々と戦う私の勇姿を、とくとご覧あれ!」

凛「気合は充分みたいだね。あやめと本気でするのは初めてだっけ?」

あやめ「そうですね。凛殿の剥き出しの獣性を前に、私も武者震いが止まりませぬが、勝ちにいかせてもらいます! ダンボールの中で全裸待機するP殿のためにも!」

凛「ぜっ、全裸待機!?」

あやめ「隙あり!」

P「汚いなさすが忍者きたない」

凛「くっ……! 初手で不意打ち!」

あやめ「これが忍びの正攻法! お覚悟ッ!」

P(うむ、尋常ならざる格闘戦である。この分なら他の戦闘系アイドルも引き寄せられよう。二人には悪いがこの決闘を囮にして時間を稼ぎ、晶葉を見つけ出さねば……! 秘技、ダンボール空蝉の術!)


 ――池袋未来ガジェット研究所・中央管制室


晶葉「思ったより早かったな、プロデューサー。驚いたよ」

P「こっちこそ驚いたぞ。ここまで物質透過でほとんどのセキュリティが突破出来たのはどういうことだ?」

晶葉「あいにくと私の助手は一般人なのでね。アイドルより重いものを持ったことがない男なのだ」

P「なるほど。で、そいつはどこにいるんだ」

晶葉「教えられない。それよりも、あー……その格好はなんとかならないか? それとも貞操観念が逆転しているだけあって、全裸でいるのが気持ちいいのか?」

P「白衣とか貸してくれるとすごくありがたい」

晶葉「ちょうど助手用に買ったはいいが、着てくれないやつがある。ウサちゃんロボに持ってこさせよう」

P「恩に着る。……お、早いな。かたじけない。うん、やっぱり服があると落ち着くな。白衣の下は全裸だが、人間に戻った気分だ。より変態性が増した気もするが、背に腹は変えられん。晶葉、プロデューサーの居場所を答えてもらうぞ。お前がこっちの俺を独り占めにしようとしているせいで、事務所はしっちゃかめっちゃかだ。一刻も早い業務の正常化には、俺たち二人で状況を正しく周知する必要がある。もちろん、その結果としてこの世界の俺の有給休暇がどうなろうとも、それはコラテラル・ダメージというやつだ。俺は悪くない」

晶葉「独り占め……?」

P「違うのか? アイドルが俺を追っかけ回している間に、お前はお前の助手とたっぷりずっぽりしっぽりやるつもりだったんだろう? そのために俺を呼び出して、プロデューサーをすり替えた。そうじゃないならお前の目的はなんだ、晶葉」

晶葉「フフッ。なるほど、君を囮にして助手としけ込む……そういうヤリ方もあるのか。さすが貞操観念が逆転しているだけはある。ただ残念ながら私の目的はそうじゃない。私が君をここに呼び出した理由は、ただひとつ。君を観察するためだ」

P「わからない……それになんの意味が?」

晶葉「一種のインフォームド・コンセントだ。とある手術を行ったあと、患者がいったいどう変化し、どういった行動を執るのか。百聞は一見に如かずというだろう。よって私は実際に見せることにしたのだ。貞操観念が逆転したプロデューサーが、アイドルに対してどう接するのか……他でもない、私の助手に理解してもらうために」

P「……まさか、お前のプロデューサーの貞操観念を逆転させるつもりか!?」

晶葉「ご明察。しかしその言い草では少し誤解があるようだ。私が助手の貞操観念を逆転させようとしているのではない。助手自身が、自らの貞操観念を逆転させようとしているのだ。意識改革というには、あまりにも暴力的な手法だが」

P「愁傷な顔をしているが、お前がそうなるように仕向けたんじゃないのか?」

晶葉「そう思うのも無理はない。だが誓って、それだけは違うのだ。ミケランジェロのダヴィデ像に代表されるように、男児は貞淑たる包茎たれというのが五〇〇年以上前からの世界的な潮流であり、私もその流れを汲む一人だ。清楚な日本男児である助手を非情に好ましく思っている。できることなら貞操観念を逆転させたくなどない。しかし助手のたっての希望とあっては、私は自分の信条を曲げねばならなかった。助手はそこまで追い詰められていたのだ」

P「どういうことだ……?」

晶葉「助手は長年の枕営業で、ついに心を壊した」

P「嘘だろ? じゃあ有給休暇は……」

晶葉「アイドルに心配をかけないための方便だ。助手はもともと精神的に不安定なところがあった。私は枕営業をやめるか、休職しての自宅療養を勧めたが、助手は頑として首を縦に振らなかった。それどころか貞操観念を逆転させることを提案してきた。女性を抱くことが好きになれば、いくらでも仕事がとれると泣きそうな顔で笑って。

 私は助手の涙に報わねばならないと思った。幸いにもスイッチの試作品はすぐに出来た。だがスイッチを前にして、助手は貞操観念が逆転したあとのことを危惧した。女の性欲を身を以て理解している助手は、自分がそうなったあとに、アイドルたちにどう接するのかが怖くなったのだ。

 事務所には、およそ人間離れした性能のアイドルが何人もいるが、年相応の身体能力しかないアイドルもいる。そういったアイドルたちを自分が傷つけはしないかと、助手は恐れたのだ。アイドルに触れることさえも、苦痛に感じるほど傷ついているくせに、だ。

 私はこれ以上、時間をかけたくなかった。傷ついた助手の顔を見ていたくなかった。貞操観念が逆転していてもアイドルを傷つけたりしないとわかれば、すぐにでも助手の心を救うことができる。そして呼び出した君をカメラで観察した結果、貞操観念が逆転したとしてもアイドルを傷つけることはないと私と助手は判断した」

P「そうだったのか……なら、俺とプロデューサーをすり替えたのは、女性恐怖症のプロデューサーからアイドルを遠ざけるためか」

晶葉「ああ。助手をケアしつつ、観察が君にアイドル集中させてサンプルを集める。我ながらいいアイデアだった。呼び出した場所が転送装置でなく、事務所だったのは計算外だったが」

P「比奈と早苗さんはどうしてるんだ? 連絡がつかないが」

晶葉「情報を統制するため、ラボの一室に籠もってもらっている。無論、事情を説明した上で了承してもらった。早苗さんは助手の傷心に気づけなかったことを悔やんでいたよ。比奈は……まあ、なんだ。書きたくないのに書かざるを得ないとかいって、作家の業とかいうやつに打ちのめされていたが」

P「荒木先生ブレねえなあ……それで、観察は終わりなのか? プロデューサーの貞操観念を逆転させたあと、俺はいつ元の世界に帰れるんだ?」

晶葉「ああ、観察は終了した。助手は自己改造を決意し、今はシェルターで一人で覚悟を決めているところだ。転送の準備ができ次第、すぐにでも帰れる。ただ観察していて思ったが、君からするとアイドルとのああいったスキンシップは、生殺しというやつだろう? 帰る前にどうだ、こっちのアイドルの写真集を使っては?」

P「そういう気づかいは結構です。それより観察していたというが、どこからだ? 隠しカメラでも仕込んであるのか?」

晶葉「事務所の防犯カメラの映像を、こちらでも見れるようにしてある。あと光学迷彩できるドローンを数台配備して、範囲内に入ったら追跡するように設定しておいた」

P「ドローン? プロペラやモーターの音は聞こえなかったが……」

晶葉「そこは私の科学技術でちょちょっとな。トップシークレットなので、私の才気をつまびらかに明かせないのが残念で仕方ない」

P「ちなみにその映像ってのはどこで見れるんだ?」

晶葉「……なるほど。何も知らないアイドルを盗撮して、その映像で猛りを鎮めるというわけか……大変に発達した変態だな、君は」

P「その結論に達する晶葉のほうが、相当に性癖をこじらせてると思うんだが? 見たいのは俺のスーツだよ。回収してから帰りたい」

晶葉「ああ、そういうことか……だが回収は諦めたほうがいい。スーツはそれぞれ、あの四人が持ち帰っている。今頃は汗だくのつゆだくになっている頃だろう」

P「マジで? スーツも馬鹿にならない出費なんだが」

晶葉「それに関しては助手が補填するといっていた。似たようなスーツを用意しておくそうだ」

P「助かる。あと、映像の録画があるならコピーが欲しいんだが」

晶葉「なるほど。盗撮映像を自宅で編集して、ゆっくり楽しむつもりか。やっぱり発達した変態じゃないか」

P「編集プロセスをナチュラルに挟んでくるのやめよ? 本当に性癖が心配になってくるから。俺がほしいのは、凛とあやめの戦闘記録だよ。特にウルヴァ凛の。こっちではあの姿になったことがないから、情報がほしい」

晶葉「ふむ。こちらとそちらでは、ファイル形式やコーデックに差異が生じている可能性がある。コピーは渡すが、再生できないかもしれない。一度目で見ておいたほうがいいだろう」

P「そうする。……再生はこのモニターでいいのか」

晶葉「ああ。今から映す」

P「これは……防犯カメラか? 俺がダンボールに隠れたところだが……ただの物置じゃないのか?」

晶葉「いや、物置だ。しかしマキノによると、あの部屋が外部から一番侵入しやすいとのことで、カメラが設置してある」

P「諜報アイドルェ……」

晶葉「コピーする範囲を指定するために早送りするぞ。ダンボールに隠れたプロデューサーをあやめが見つけて、あやめがダンボールに押し入ろうとして、凛がドアを開ける。しばしの会話の後に、あやめの不意打ちから戦闘開始。助手がすかさず逃げ出して、二人はそれに気づかず戦い続ける――」

P「うーん。早送りしているせいかな? ドラゴンボールを見ている気分になってきた」

晶葉「奇遇だな、私もだ。おっと、二人とも部屋の壁をぶち抜いて場外へ飛び出したぞ」

P「場外の映像は? ドローンがあるんだろ?」

晶葉「ドローンの追跡設定は、プロデューサーに設定してあるから二人には反応しない。防犯カメラの範囲外だ」

P「そうなると映像はここまでか……しかし、こっちでも事務所が壊れることがあるんだな」

晶葉「去年の猥シャツ事件があってからは、みんなおとなしくしていたんだが……おや、戻ってきたぞ。凛だ」

P「衣装がボロボロだな。あやめも健闘したということか」

晶葉「これは……ダンボールに向かって話しかけているのか?」

P「音声は」

晶葉「早送り中は出ない。等倍速にするか?」

P「頼む」

凛『……なにか言ってよ。私、勝ったよ? 褒めてよ。頑張ったなって……抱きしめながらセックスしてよ……』

P「セリフはともかく、声色からしていまにも泣きそうだな」

晶葉「死闘の果てにプロデューサーに無視されてるんだ、かなりの深手だろうさ」

凛『無視しないでよ、プロデューサー……お願いだから……ねえ……? プロデューサー……プロデューサー……………………プロデューサーぁぁぁアアアア――――――ッ!!!』

P「ブチギレからのアイアンクロー。なるほど、ウルヴァ凛は激昂すると掴みかかってくるのか……発生は8フレームくらいか?」

晶葉「冷静に分析しているのか、現実逃避しているのか、どっちだ」

P「空っぽのダンボールをコマンド投げ……ふむ。不意を打たれると硬直するのか。ここが弱点だな」

晶葉「……冷静な分析だな」

凛『よくもだましたアアアア!! だましてくれたなアアアアア!!』

P「ハハッ、スゲェな。見ろよ晶葉、両手でつかんで引き裂いただけなのに、ダンボールが余す所なく千切りキャベツだぜ? ありゃいったいどういう現象だ?」

晶葉「現実逃避のほうだったか」

凛『……許さない。絶対に許さない。一滴たりとも残さずブチ犯してやる……!』

P「ねえ、晶葉。この映像ってどれくらい前のやつ?」

晶葉「五分位前だな」

P「五分かぁ……凛が俺の匂いを嗅ぎつけて追跡するのには十分な時間だよね……」


 ――緊急警報。緊急警報。侵入者発見。非戦闘員は直ちに避難してください。


晶葉「警報だと!? 凛のヤツ、正面ゲートを吹き飛ばしたのか! インターフォンが目に入らないほど腹に据えかねているらしいぞ、プロデューサー! どう責任を取る!?」

P「ごめん晶葉、俺そろそろ帰るわ。プロデューサーにスーツはいらないっていっといて」

晶葉「はははは、そう急ぐこともなかろう! 転送装置はすぐに動かせない! もう少しゆっくりしていけ! 具体的にいうと凛の気が済むまでな!」

P「ぼくがしんでしまうんですがそれは!」

晶葉「このまま逃げられると、私の助手が絞りカスになってしまう! 旅の恥は掻き捨てというだろう!? せっかくの並行世界旅行なんだから、凛でカキ捨てていったらどうだ!」

P「立つ鳥跡を濁さずッ!」シュバッ

晶葉「おい馬鹿どこへ行く! 元はといえばそっちがまいた種だろうが! 凛の中にもタネを撒いていけ!」

P「牛に経文、馬耳東風! 鹿の角を蜂が刺すゥ!」

凛「……捕まえたよ、プロデューサー」握撃

P「剣ヶ峰ェ!」

凛「ラボの中のあちこちに匂いがあるから、すこし迷っちゃった……ふふ……どうして私をおいて逃げたのかな……どうして晶葉とおしゃべりしてたのかな……どうして白衣の下はなにも着てないのかな……ふふ、ふふふ……私、聞きたいことがたくさんあるんだよね……」ミリミリミリ

P「グラップラー型ウサちゃんロボを超える猛烈なトルク! このままでは俺の手首が曼珠沙華になっちゃう!」

???「渋谷ッ! やめないか!」

凛「!?」

P「お、お前は……!」

晶葉「助手! どうしてシェルターから出てきた! このままでは暴走した凛に、亀さんの頭からまるかじりにされてしまうぞ!」

2P「心配しなくていい、晶葉。俺はもう、以前の俺じゃない」

晶葉「押したのか……ついに」

2P「ああ。俺は生まれ変わった。汚れちまった悲しみを脱ぎ捨てて、新しい自分になったんだ。まさか、貞操観念が逆転するだけで、こんなにも世界が変わるなんて思ってもみなかったよ……」

凛「プロデューサーが二人……プロデューサーのプロデューサーも二本……つまりお楽しみが二倍!」

2P「渋谷、もの凄く嬉しそうに尻尾を振っているところすまないが、ひとまず落ち着け。どうして俺が二人いるのか説明するから」

凛「お楽しみの最中でも説明はできるよね?」

2P「……渋谷、ここに首輪とリードがある。あとはわかるな?」

凛「わんっ♡」

P「これはひどい」


 ――状況説明。


晶葉「……というわけで、助手が貞操観念を逆転させることを決心させるために、貞操観念が逆転した世界からプロデューサーを呼び出して、その一部始終を観察していたというわけだ」

凛「……なるほど。ところで約束のおセッセは? もちろん帰る前にパコってくれるんだよね?」

2P「渋谷、人間の言葉を喋るならプレイはおしまいにするぞ」

凛「くぅ~んくぅ~ん」

P「完全に飼い犬になりきってますわ」

晶葉「以前はアイドルの性欲に振り回されてばかりだった助手が、今ではこんなにも頼もしい男に……こみ上げる感涙を拭わざるを得ない」

2P「ほら、ハンカチ。ありがとうな、晶葉。ようやく俺は自分という人間が、胸を張って生きてもいいと思えるようになった。それと平行世界の俺も、ありがとう。万夫不当のドスケベでありながらも、お前は決してアイドルをこまそうとしなかった……そんなお前がいたから、俺は自分を変える決心ができた。本当にありがとう」

P「うん……足元で恍惚となってるワンちゃんさえいなければ、握手にも快く応じられたんだがな……まあいいや。とりあえずこれで俺はお役目御免だろ? さっさとスーツをもらって元の世界に帰りたいんだが」

晶葉「ああ、そのことだがな。平行世界を飛び越えるのに必要な電力を用意するのに、あと三日ほどかかるんだ。こちらでホテルは用意するからゆっくりしていくといい」

P「いやいやそれは困るぞ。三日も欠勤したら業務に差し支えが――」

晶葉「それも大丈夫だ。世界の壁を飛び越えるついでに、時間も跳んでもらう。君がこの世界に飛ばされた数時間後の時間座標だ。つまりこれからの三日間は、何をしても仕事に支障はないというわけだ」

P「えっ、今日から三日も休んでいいのか!?」

晶葉「ああ……しっかり休め」

2P「何をしてもいいぞ」

P「………………」ポロポロ

晶葉「遠慮するな……今までのぶん休め……」

P「ふひっ、はひっ、ほほっ」号泣


 ――数時間後


P「まさかホテルのスイートルームを用意してくれるとはな……飛ばされた時間に戻るということだから、今日から三日間はデレステもミリシタもシャニマスもやらなくていい……ログインすらしなくていいなんて……ああ、これが本当の自由なのか……何もしないという贅沢……ソーシャルゲームからの解放……プライスレス」

 ――コンコン。ルームサービスをお持ちしました。

P「っほー。さっすがスイートルームだぜ。頼んでもないのにルームサービスが来るとは。なにが来たのかなー」

 ――ガチャ。

琴歌「こんばんは、プロデューサー様。ルームサービスですわ」

P「えっ」

琴歌「どうかされましたか?」

P「それはこっちのセリフなんだが……どうしてここに? そしてなぜホテルの制服を? あとやたらとでっかいカートだけど何が入ってるの?」

琴歌「一つずつ答えいたしますと、このホテルのオーナーが父でして、支配人とは子供の頃からのお付き合いですの。制服はその伝手でお借りしました。カートが大きいのは特別なルームサービスを用意したからです。ところで……ふふっ、どうでしょう? 似合いますか?」

P「やうやう赤くなりゆくうなじ、少し回りて、つやめきたる髪の細くたなびきたる」

琴歌「枕草子……?」

P「ホテルウーマンの制服に身を包んだお嬢様が、はしゃいでその場でくるりと踊った。露出のない制服の襟首から覗く白い首筋が、はしゃいでいる自分に対する羞恥でだんだん赤くなっていった。安定した体幹が生み出す小さなターン。艶めいたツインテールが軽やかに舞って、細くたなびいた。要約すると、尊い」

琴歌「きょ、恐縮ですわ……///」

P「どうぞ入って。俺の部屋じゃないけど」

琴歌「では失礼いたします」

 ――ピーッ……ガチャン

P「待って、今の音なに?」

琴歌「鍵をかけただけですが」

P「カードロックだよね? 俺がかけたときはそんな音しなかったけど……」

琴歌「このマスターキーでロックをかけると、通常のカードキーでは開けられなくなるんです」

P「……なんでそんなことを?」

琴歌「それはもちろん、プロデューサー様を逃さないためですわ」ニッコリ

P「わー、いい笑顔ォ。理由を教えていただけないでしょうか」

琴歌「西園寺家は晶葉さんに多大な投資を致しましたので、その一部をプロデューサー様のお身体で回収させていただくのですわ」

P「……なるほど。だが晶葉から聞いていなかったのか? 俺は物質をすり抜ける力がある。この部屋がすり抜けられることは、すでに確認済みだ」

琴歌「ええ、もちろん聞いております。ですから、すでに対策は講じてありますの」

P「なん、だと……」

琴歌「晶葉さんが録画した映像をつぶさに観察した結果、とある推論を立てました。それは――」

P「……それは?」

桃華「他人と接触している状態では能力を使えない、ですわ」ポチッ

P「なぜ……ど、どうしてここに……?」

桃華「このホテルで使われている調度品のほとんどは、櫻井が取り扱ったものですの。それと、我が家も晶葉さんに莫大な資金を提供していますので」

P「うそだろおまえ……」

琴歌「作戦成功ですわね、桃華さん」ハイタッチ

桃華「ええ、バッチリですわ、琴歌さん」ハイタッチ

P「は、ハメやがった……! 琴歌が一人だと思い込ませ、能力の推論で俺の気を引き、カートに隠れた桃華がこっそり俺でスイッチを押す……いったいなんのスイッチだ! 俺の能力を封印するスイッチか!?」

桃華「いいえ、磁力スイッチですわプロデューサーちゃま。ところでもう一度、桃華を名前で呼んでくださりませんこと?」

琴歌「私もどうかお願いします。背筋に走る快感がクセになってしまいそうで……」

P「お断りします。しかし、磁力スイッチだと……? どうしてそんなものを……いや、待て……そういうことか……晶葉め! 自分と自分のプロデューサーが良ければそれでいいのか!」

桃華「ウフフッ。その焦りよう、どうやら晶葉さんの推論は当たっているようですわね」

琴歌「誰かと接触している状態ですり抜けた時に、何らかの原因で透過が不完全だった場合、すり抜けた方とすり抜けられた方の双方に、致命的な損傷を及ぼす可能性がある。そのためプロデューサー様は、壊しても構わないものしかすり抜けられない。ではその状態で磁力スイッチを押した場合はどうなるのでしょう。磁力すらすり抜けるのでしょうか? いいえ、透過状態でも重力が作用している以上、その可能性は低いと晶葉さんは推察しました」

桃華「そうなると、磁力スイッチの影響下で透過状態になったとき、プロデューサーちゃまは踏ん張ることも出来ずに磁力に引かれ、アイドルと身体が重なりあうことになってしまいますわね。磁力スイッチの電池が切れるまでの数時間、透過状態を維持できるのでしょうか? もしも維持できなかった場合、プロデューサーちゃまはアイドルの内側で元に戻ってしまいますわ。そうなればどのような惨状となるのか……考えるまでもありませんわよね」

P「俺が絶体絶命というのはよくわかった。こうなっては手も足も出ない。要求を聞こうじゃないか」

桃華「あら、ずいぶんと物分りがよろしいのですわね。でも、交渉事で相手が何も言わず、素直に要求を呑む素振りを見せたら、まず相手の腹を疑えとお母様がおっしゃっていましたわ。ですから詰めの一手を打たせていただきますわね。磁力スイッチ」ポチッ

P「躊躇なく飛んできやがったな! 舌で時間を稼ごうとしたのに! 櫻井家の英才教育が憎い!」

桃華「見ましたか、琴歌さん。わたくし飛びましたわ! 晶葉さんの説明によれば、このスイッチはお互いの好意の強さに応じて磁力が高まるとのこと。つまり身体が浮き上がるほどの情熱の証明にほかなりません。ああ、プロデューサーちゃま……すでに心でつながっている以上、あとは肉体で結ばれるだけですわね……///」

琴歌「お待ちください、桃華さん。私も今すぐプロデューサー様の元へ飛び立ってみせますので」ポチッ

P「人間ミサイルを受け止める俺のことも、少しは慮ってくれませんかねぇ!」

琴歌「まあ、なんと力強い腕なのでしょう……どうですか、プロデューサー様。私の身体を受け止めたご感想は」

P「言葉にできない極上の柔らかさ……! だが俺は屈したりなんか……!」

桃華「あら、よそ見はイヤですわ、プロデューサーちゃま。確かに琴歌さんと比べたらわたくしのは小さいですけど……さあ、ベッドに横になって、桃香を抱きしめて、たっぷりと吸い込んでくださいまし。……ほら、とってもよい香りがしますでしょう?」

P「心がダメになる匂いがするぅ……! でも俺は負けないぞ……いいようにされてたまるか!」

琴歌「素直になってください、プロデューサー様。さあ、私たちに身も心も委ねて……気持ちイイことをしましょう?」

P「ぐっ! ぐううう! ふぐううううううう!」

P(嗚呼、なんということだ! 俺の意思とは無関係にY染色体がチンピクするっ! ベッドに横たわったまま動けない! 鼻が桃華の膨らみかけの白桃の香りを勝手に吸い込んで! 皮膚が背中に押し付けられた琴歌山のたわわをエンジョイハイキング! このままでも辛抱たまらないのに! シャツの裾から忍び込んだ琴歌の指が俺の腹筋を撫でさすり! ハイソックスに包まれた桃華のちんまいつま先が! 俺の息子に家庭訪問しようと太股の上でクニクニしてる! このままじゃだめだ……このままじゃ負けるぞ俺! 守ったら負ける! 攻撃こそ最大の防御だ! 攻めることで死中に活を見出すしかない……アイドルの栄光! この俺のプライド! ヤらせはせん! ヤらせはせん! ヤらせはせんぞぉ!)

P「アイドルの性感がマシマシになるスイッチ!」ポチッ

桃華「ひあっ♡」

琴歌「んんっ♡」

P「磁力スイッチが効果を失う条件は三つ! スイッチをオフにした時とスイッチの電池が切れた時! そしてスイッチの効果対象が失神した時だ! つまり! お前たちが今から気を失うまでずっと俺のターン! まずは俺のベルトをカチャカチャさせてるお前からだ、琴歌ァ!」

琴歌「ああっ、そんな……♡ 乱暴はやめてください……♡」

P「上目遣いで怯えるふりをして! 視線に込められた期待を隠せていないぞお前! 俺をからかうとどうなるのか、その恵まれたボディにじっくり教え込んでやるからな! 桃香も俺の背中におんぶされたままとくと見るがいい! オラ琴歌! そんなにベルトが好きならな、お前のベルトでこうしてやるよ!」

琴歌「あっ、私のベルトが……! きゃっ!」

桃華「磁力スイッチが効いているのに、琴歌さんをむりやり引き剥がして……! ああっ、ひどい! ベルトで後手に拘束するなんて……! い、一体何をするつもりですの、プロデューサーちゃま……///」ドキドキ

P「膝を付いてケツを上げろ琴歌ァ!」

琴歌「そ、そんな! 私を縛って、お尻を高く上げさせて……どうなさるおつもりなのです!? 乱暴はやめてください! この制服は借り物ですし、それに私はまだズボンを履いたままですわ!」

P「やめろといいつつ! 85センチのワガママヒップをバッチリ見せつけやがって! あとコスの心配をしつつ、期待に胸を高鳴らせてんじゃねえ! このはりきりドスケベお嬢様がっ!」

琴歌「やめてください! プロデューサー様の力強い腕でズボンを引き裂かれ、しとどに濡れそぼった花びらを強引に押し広げられて、そそり立つ暴れん棒でムリヤリ凸凹×されたいなどと、そんなことは爪の甘皮ほどにも妄想しておりませんわ!」

P「余裕綽々じゃねーか! どうせここで嘘だと追求すれば、実際に見てみろとか言って、俺にズボンを脱がせる腹づもりなんだろう! そして濡れまんじゅうを見せつけて、濡れていると指摘すればそれは汗だと否定し、俺が奥まで広げてこれは汗じゃないといえば、奥まで入れて確かめてみては? あなたのモノが届くかは知りませんけど、とかいって! 言葉巧みに俺を挑発して、まんまとおセッセするつもりなんだろう! これだから女は! あー! これだから女はッ!」

琴歌「なるほど、そういうのもあるのですね」

桃華「勉強になりますわ、プロデューサーちゃま」

P「二人して馬鹿にしやがって! 俺が琴歌の手を縛ってケツを突き出させたのはなぁ、こうするためだッ!」スパァンッ

琴歌「ああっ♡」

P「ケツ叩かれて悦んでんじゃねえぞ! お仕置きしてんだよこっちは! オラ! 反省しろッ! 神に愛された恵体で抱きついて、ドキドキさせてしまって申し訳ありませんって言え!」

桃華「な、なんて激しいスパンキングですの……///」

琴歌「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ ごめんなさいっ、ごめんなさいっ♡ 反省してます! だから、だから……もっと強く叩いてくださいッ♡」

P「お前がッ、気絶するまで! 叩くのをやめないッ!」


 ――数十分後


P「……磁力スイッチの効果が消えたな。やっと堕ちたか」

桃華「……そ、そんな……本当にこんなことが……? 道具を使わずに、手だけで……ベントオーバーでのスパンキングだけで、相手を失神させてしまうなんて……!」ゾクゾク

P「さあ桃華、これでわかったろう。男は怖い生き物なんだ。ほら、わかったら磁力スイッチを解除して、背中から降りなさい」賢者タイム

桃華「……嫌ですわ。琴歌さんとだけ楽しんで、私はおあずけなんて……そんなの絶対に嫌ですわ」

P「いや、これはお仕置きだからね? 楽しんでないからね?」

桃華「プロデューサーちゃま、わたくしのお尻はダメなんですの? 小さすぎて叩く価値もないと?」

P「やめようか、桃華。おぶさった状態で、耳に息を吹きかけるようにささやくのをやめようか」

桃華「叩いてくださいませんの? プロデューサーちゃまの力強い手のひらを、わたくしに感じさせてはくださいませんの?」

P「……桃華。それは、アレかな? 大人を誘惑しているのかな?」

桃華「いいえ、お願いしているだけですわ。でも、そうですわね。わたくしの声が誘惑しているように聞こえるのだとしたら……それはきっと、プロデューサーちゃまが本当は、わたくしのお尻を叩きたいと思っている心の現れかもしれませんわね」

P「ははっ、よせよ……よせって。俺が、俺が桃華に、そんなひどいことするわけ……ないだろ」冷や汗

桃華「したくありませんの? わたくしの身体を脇に抱えあげて、力任せに下着ごとスカートをずりおろして、この小さなおしりを、プロデューサーちゃまの手で、真っ赤になるまで染め上げてみたくありませんの? 泣き叫ぶわたくしの顔を枕に押し付けて、暴れようとする身体を膝で押さえつけて、うつ伏せにしたわたくしのお尻を、わたくしの声が枯れるまで、叩き続けたいとは思いませんの? ねえ、プロデューサーちゃま……?」

P「囁くなッ! ……お、俺は……違う、俺はそんなこと……考えてなんか……」滝汗

桃華「……本当に? 琴歌さんのお尻を叩いているときはどうでしたの? まだその手に感触が残っていますわよね? でしたら、こうも思うのではなくて? 桃華のお尻はどんな感触がするんだろうって……どんな音がするんだろうって……ねえ、どうですの、プロデューサーちゃま……?」

P「ほ、本当だ……本当なんだ……俺は、桃華にそんなひどいことを……」顔面蒼白

桃華「ひどいことではありませんわ。だってお仕置きですもの。大人を誘惑する悪い子供に、ちょっとキツイしつけをするだけ。悪いことをした子供を叱るのは、大人の義務ではありませんこと? ところでプロデューサーちゃま、汗がひどいですわ。どうぞ、わたくしのハンカチを使ってくださいませ」

P「あ、ありがとう……すまない……ははっ、ハンカチがぐっしょりだ……俺、どんだけ汗かい、て……」

桃華「どうかなさいましたか、プロデューサーちゃま」

P「桃華、これ……違う……ハンカチじゃない……これ、違うやつ……」


桃華「……あら! ごめんなさい、プロデューサーちゃま。ハンカチを渡したつもりが、うっかり間違えてしまいましたわ」

P「ふつう間違えないよね? どう考えても間違えないよね? なにをどうしたらハンカチとヒモパンをうっかり間違えるの?」

桃華「ごめんなさい、プロデューサーちゃま。プロデューサーちゃまが夢中で琴歌さんにお仕置きをしている最中、パンツが濡れてしまったので……脱いだパンツをハンカチにくるんでおいたのを忘れておりましたわ」

P「じゃあ、俺の背中におぶさって、さっきから吐息で首筋をくすぐってくる桃華は、いま――」

桃華「ええ、はいてませんわ」満開スマイル

P「ふざけるな……ふざけるなッ! 馬鹿野郎ッ!!」CV小山力也

桃華「あっ、あっ、あっ♡ いけませんわプロデューサーちゃま! そんなに強くつかんでは……んっ! そこはいけませんわっ♡」

P「うるせぇ! けしからんノーパン桃尻をぷるぷるさせやがって! たまらんち! だめだと言いながら俺の頭をかき抱くとはどういう了見だ! そんなことをするいけない子はこうだ!」

桃華「いやっ、口で服をたくし上げるなんて野性的すぎますわ! あっ、いひゃっ♡ そんなに強く吸われては! 桃華はダメになってしまいますのっ♡」

P「はしたない声をあげやがって! キスマークでお腹をお花畑にされるのがそんなに嬉しいのかっ!? 悪い子め! 悪い子め!」

桃華「ああっ、ごめんなさいっ! ごめんなさいッ! 桃華はお尻をこねくり回されながら、お腹にキスをされて気持ちよくなってしまう悪い子ですのっ! ああ、ですから……ですからどうか! お尻をぶってください! 乱暴にスカートをずりおろして! 剥き出しの桃華のお尻に! プロデューサーちゃまの猛りを! 早くっ! 思い切り、桃華をお仕置きしてくださいませっ!」


 ――このあと滅茶苦茶お仕置きした。

 ――元の世界に戻ったあと、晶葉にも滅茶苦茶お仕置きした。





 桃華と杏と紗南でMHWしたいだけの人生だった。終わります。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年05月16日 (水) 06:23:36   ID: UhtAgsVU

一行目の唐突な 下品です。 に笑った

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