【咲SS】慕「みんな持ってるんだ」【シノハユ】 (31)

 ——中一初夏、湯町中学校

はやり「私はアイドル始めたときかな。いずれ必要になるからって、マネージャーさんが色々教えてくれた」

杏果「私は……本格的なのは小五かな。ほら、みんなで海行ったとき。いい機会だからってお母さんが」

閑無「私は卒業式のあとだな。中学生になるし、無敵感を上げておこうと思って」

慕「そっか……みんな持ってるんだ」

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 ——耕介宅

慕「ねえ、おじさん。来月のお小遣いなんだけど……前借り、とか、できたりしないかな?」

耕介「なんだ? ほしいものでもあるのか?」

慕「あっ……えっと、うん」

耕介(うーん……いつぞやの自転車のこともあったしな。慕が何かをほしいと自分から言うなんて珍しい。よし、ここは一つ!)

耕介「わかった。前借りなんかじゃなくて、俺が出すよ。一緒に買いに行こう!」

慕「えっ!?」

耕介「お金のことなら、気にしなくていいぞ。ボーナスが入ったからな」

慕「……あぅ、えっと」

耕介「それで、何がほしいんだ? 新しい携帯電話か? ゲーム機か?」

慕「……そ、それは、その」

耕介「遠慮しなくていいんだぞ」

慕「……いや、遠慮というか……///」

耕介(あ、さてはアクセサリーや化粧品の類いか! お洒落に気を遣う年頃になったんだなあ……)

耕介「……そっか、うん、中学生になったんだもんなあ。そりゃそうか」シミジミ

慕「! おじさん……私のほしいもの、わかったの……?」

耕介「ああ、無理に聞き出そうとして、悪かったな」

慕「む、無理になんて、そんな……」

耕介「言いにくかった理由も、なんとなくわかるよ。けど、大丈夫だ、慕。そういうのは、大人になるための大切な準備なんだって、俺は思ってるから」

慕「大人になるための……」

耕介「姉貴の買い物に付き合わされたこともあるしな」

慕「おかーさんに付き合——ええっ!?」

耕介「ことあるごとに連れて行かれて、最初は恥ずかしかったんだが、だんだん慣れたよ」

慕「そ、そうだったんだ……」

耕介「慕も、最初から一人で買うのは大変じゃないか? なんなら俺が慕に似合うのを選んでやろうか?」

慕「選……っ!? ほ、ほんとに!?」

耕介「ああ。自慢じゃないが、姉貴に『あんた見る目あるよ』って言われたことだってあるんだぞ」

慕「おかーさんのもおじさんが選んでたの!?」

耕介「ああ。ある程度だが、どんな種類があるのかもわかるし、使い方も教わった」

慕「使い方までわかるの!?」

耕介「いや、姉貴がさ、『そっちのセンスがあるかも』って強引に」

慕「そっちってどっち!? え!? それに強引にって、その」

耕介「お試しみたいな感じでな。何度かしたこともある」

慕「したことあるんだ!!?」

耕介「当時はまだ顔立ちも幼かったし線も華奢だったからな。鏡で見たら案外似合ってて、どうしようかと思った」

慕「それはどどどどどうしたの!!!?」

耕介「どうしたってほどでもないが、その時のことがあったからか、今でもたまにすることあるぞ」

慕「今でもたまにするの!!?!?!」

耕介「……って、あ、そっか。俺はよくても、慕が恥ずかしいか……ごめんな」

慕「あっ、いや、私は……」

耕介「友達と選びたいっていうなら、それでも構わないよ。いや、そっちのほうがいいのか、普通」

慕「わ、私は……///」

耕介「ん?」

慕「私は……おじさんと行きたい、かな……って///」

耕介「慕……」

慕「閑無ちゃんたちと行くことも……あると、思うけど。初めて……は、おじさんとがいいな……」

耕介「……ありがとう、慕。ははっ、頼られるって、やっぱ嬉しいな」

慕「ふふっ……/// あ、その代わり、ちゃんと可愛いの選んでね?」

耕介「ああ、その点は任せろ」

慕「あと……実は、使い方もよくわからないから、教えてほしいなって」

耕介「大丈夫。なんならその場で教えてやるよ」

慕「その場……!? ほ、ほんとにいいの!?」

耕介「俺はいいぞ。姉貴がだるがりで、俺がそういうの面倒見てた時期もあるし」

慕「おかーさんとおじさんってどういう関係なの!?」

耕介「どういうってそりゃ……お互い相手のことを大切に思ってる、仲のいい家族だよ。おまえと俺もそうじゃないのか?」

慕「そ、それは…………うん……////」

耕介「なら、決まりだな」

慕「う、うん。不束者ですが……当日はよろしくお願いします」フカブカ

耕介「おう。じゃあ、今週の日曜日でいいな。せっかくだから、色んな種類がある大きなお店に行こう」

慕「ありがとう。お店選びも、おじさんに任せるよ」

耕介「ははっ、じゃあきっちり予習しないとな」

慕「予習……」

耕介「慕は、俺がしてるとこ、見たいか?」

慕「い、いや!! そういうのはレベルが高いというか!! まだ早いんじゃないかな、うん!!」

耕介「それもそうか。まずは、自分のを手に入れてからだよな」

慕「う、うん……。というか、おじさん、その……持ってるの?」

耕介「ん? もちろん持ってるぞ。気付かなかったのか?」

慕「全然気付かなかった……」

耕介「特に隠してたつもりはなかったんだが……まあ、いいか」

慕「私はびっくりだよ……長い間一緒に住んでたのに」

耕介「そういうこともあるよな」

慕「ちょっとまだ心の準備ができてないから……買い物が終わった後で、見せて」

耕介「うん、わかった」

慕「じゃあ、日曜日ね。楽しみにしてるから」

耕介「おう!」

 ——日曜日・大きなデパート・アクセサリー売り場

慕「えっ?」

耕介「えっ?」

耕介(あれ……!? やばい、何か間違えたか!?)アタフタ

慕(………………あっ)サッシ

耕介「あ、ごめんな、こっちだったか……?」テトテト

 ——化粧品売り場

慕「えっ?」

耕介「えっ?」

耕介(あっれ!? うそ、こっちでもないのか!?)アタフタ

慕(…………やっぱり……)

耕介「す、すまん、慕! もしかして、思ってたのと、違ったか……?」

慕「……うん」

耕介「——!? ご、ごめん! 俺はてっきり」

慕「ううん、大丈夫。私がほしいものも、近くにあるから」

耕介「そ、そうだったか……っ!」

慕「来る途中に見かけたの。こっち」トテトテ

耕介(よ、よかった……一時はどうなることかと——)ホッ

 ——○○○売り場

耕介(………………どうしよう……)ダラダラ

慕「…………ねえ、おじさん?」

耕介「…………な、なんだ、慕?」

慕「選んでくれる、って言ったよね」

耕介「お、おう」

慕「使い方も、その場で、教えてくれるって」

耕介「あ、ああ」

慕「嘘じゃない、よね?」

耕介「それは、その、えっと……」

慕「私、あの時から、ついさっきまで……ずぅーっと恥ずかしいの我慢してたんだよ?」

耕介「す、すまん!」

慕「…………でも、それ以上に、嬉しかったの」

耕介「慕……?」

慕「おじさんが、私のこと……大切な家族だ、って言ってくれたから」

耕介「慕……」

慕「その気持ちに嘘がないなら……勘違いだったとしても、約束は守ってほしいなって」

耕介「…………」

慕「…………ダメ、かな?」シュン

耕介「…………いや、ダメじゃない」

慕「!」バッ

耕介「だから、そんな寂しそうな顔すんな」ポム

慕「おじさんっ!」

耕介「約束は守るよ。おまえは俺の大切な家族だからなっ!」

慕「ありがとう、おじさんっ!」ギュ

耕介「どういたしまして」ニコッ

慕「それで……その、ちゃんと、可愛いの、選んでね?」ウワメヅカイ

耕介「っ……任せろ///!」

慕「おじさん、大好きっ!!」

<かわいいは無敵・完>

短いけどおしまいです。ご覧いただきありがとうございました。

実際避けて通れないイベントだと思うけどリチャはどうするつもりなんだろう。

赤飯の件とかもどうしたんだろうな……。

以下、本編とは一切関係のない、R指定ルート。

 ——○○○売り場

耕介「こ、この白くて花柄のやつとか、似合うんじゃないか!?」

慕「えっ?」

耕介「えっ?」

慕「あっ、ごめん、ここはちょっと立ち寄っただけで、私のほしいものが売ってるのはデパートの外の……」

耕介「???」

慕「と、とにかく、ついてくればわかるからっ///!!」

 ——○○の○○屋さん

慕「ここっ!!」

耕介「あかん!!」

慕「そんなっ!? だってみんな持ってるんだよ!?」

耕介「余所は余所!! うちはうちですっ!!」

慕「おじさんの嘘つきっ!!」

耕介「ダメなものはダメ!!」

慕「っ……!! じゃあ、閑無ちゃんたちに言うよ!?」

耕介「な、なにを!?」

慕「おじさんが持ってるって!! あとたまにしてるって!!」

耕介「俺はいいんだ!! 大人だから!!」

慕「えっ?」

耕介「ん?」

慕「…………えっ?」

耕介「…………んぅ」

<このあと滅茶苦茶した>

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