女騎士「ボジョレー・オーク解禁」(20)

11月――

毎年この時期、オークの畜産農家は大忙しとなる。
「ボジョレー・オーク」の出荷・販売が解禁されるためである。



ボジョレー・オークとはオーク売買法によって定められた
「最低売買年齢」である15歳を迎えたばかりの若いオークを指す。



通常、市場に出回るオークは18歳以上のものがほとんどなのだが、
年に一度、その年のオークの仕上がりを見るための試金石のような役割で、
まだ若いボジョレー・オークの出荷が行われるのだ。

オーク農家の手によって、全裸の若いオークたちが次々にトラックに積まれていく。

トラックの荷台で正座をする若いオークたちは皆、緊張の面持ちである。



――今のお気持ちはいかがですか?

ボジョレー・オーク「ドキドキしてます。どんな人に買ってもらえるのか楽しみです」



こうして各地に運ばれた若いオーク「ボジョレー・オーク」は店先に並び、
11月の第三木曜日に販売が解禁されるのだ。

そして、解禁当日の午前0時。

店主「ボジョレー・オーク、解禁です!」



ワァッ……!



大勢の女性客、特に女騎士がボジョレー・オークに群がる。

若いオークが次々に女騎士によって購入される。

ボジョレー・オークを購入した女騎士たち。



――毎年購入されているのですか?

女騎士A「もちろんだ。オークはボジョレーに始まり、ボジョレーに終わるからな」



――今年のボジョレー・オークはいかがですか?

女騎士B「肉質、肌のツヤ、あふれる野性、どれをとっても素晴らしい」



――あなたにとって、ボジョレー・オークとは?

女騎士C「私の生活の一部……いや、人生の一部といっても過言ではなかろう」

ちなみに今年のキャッチコピーは、ずばり――





『ここ50年で最高の出来』

過去10年間は以下の通り。

「ここ数年で一番の仕上がり」

「豊富な精力と性欲は、30年に一度の出来といってよい」

「昨年以上の仕上がり」

「脂肪と筋肉を程よく兼ね備えている」

「10年ぶりの当たり年」

「100年に一度の凶暴性」

「過去10年間のいずれをも凌駕する、最高のオーク」

「野性と気品を併せ持つ、エレガントな仕上がり」

「一昨年、昨年と比べても遜色ない出来栄え」

「ここ20年はなかった、最上級のクオリティ」

しかし中には、過熱する「ボジョレー・オークブーム」に批判的な意見もある。



「ボジョレー・オークなんて、ただの未成熟なオークじゃない」

「あんなのありがたるのは、女騎士ぐらいのものだわ」

「畜産農家やマスコミの宣伝に乗せられてるのよ」

こうした意見に対し、“オークソムリエ”の異名を持つある女騎士はこう反論する。



女騎士「たしかに、ボジョレー・オークは一般的なオークに比べて未成熟だ」

女騎士「しかし、だからこそ自分の手で育て、調教するという楽しみがある」

女騎士「自分の手によって育て上げたボジョレー・オークによって追い詰められ」

女騎士「“くっ、殺せ!”と言わせられることこそが、私にとっては最上の幸福なのだ」



ちなみに彼女は今年、30頭ものボジョレー・オークを購入したという。

かつて、ボジョレー・オークとして出荷された経験を持つオークはこう語る。



オーク「まだ15歳だった私を買って下さったのは、ベテランの女騎士さんでした」

オーク「厳しく、そしてなまめかしく調教されました」

オーク「おかげで今はこんなに立派になり、独立することができました」



彼は多くの著作を発表しており、いずれもオークはもちろん、
オーク以外の種族にも高い人気を誇っている。

『女騎士に「くっ、殺せ!」と言わせる100の方法』

『オークよ、ブヒるな、ブヒらせろ』

『襲う時は容赦なく、抱きしめる時は甘く優しく』

――ところで今、なんの行列に並んでいるのですか?

オーク「ああ、これは商品購入のために並んでいるのです」

オーク「今年の“ボジョレー・女騎士”が今日解禁なのでね」



彼の並ぶ行列の先では、鎧をぎこちなく身に付けた若い女騎士たちが、
不安そうな、そしてどこか期待したような表情で陳列されていた。







おわり

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