勇者「用件を聞こうか・・・」 公爵「姫騎士を救い出してくれ!」 (56)


そういうわけでカミソリのような目をした勇者の2回目だよ。


---公爵領 救貧院

姫騎士 「・・・そろそろ炊けたかしら?」

姫騎士 「あなた、救貧院の入り口を開けて、皆さんを入れて差し上げて」

姫騎士 「皆様お待ちでしょう」

騎士団員 「はい。すいませんが司祭様、列を作るように言って下さい」

司祭  「皆さ~ん、走らなくてもいいから一列に並ぶんだ~」

尼僧  「割り込みをした人はお断りしますよ~」

公爵領は王国から独立した国家として承認されている。
どこの国にも社会制度の矛盾というものがある。
富める者と貧しい者、支配する側とされる側・・・ 万人が平等で幸福な世界などありはしない。
だが、秩序からこぼれ落ちた者たちを救い上げようとする善人も、どこの国にもいるのだ・・・


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『花 盗 人 を 追 う 二 人』


困者 「ありがとうございます」

窮者 「お恵みに感謝します」

獣人 「ありがたいことでごじゃいます」

姫騎士 「あの、毎度のことですが、そんなにひれ伏してもらうとこちらが心苦しいのです」

姫騎士 「オートミール一杯で崇めてもらっても困ります」

尼僧  「何を仰います。その一杯を手に入れられないのです。本当に命が助かっているのです!」

尼僧  「彼らの心の底からの感謝を受け取ってやって下さい!」

姫騎士 「え、ええ・・・ その通りかも知れません・・・」

姫騎士 (オートミール一杯なんて、お城や騎士団ではおやつだわ。)

姫騎士 (そんなのが手に入らない人がこんなにいるなんて、ね)

姫騎士 (確かに中には病気でもないのに寝てばかりの困ったさんもいるようですが・・・)

姫騎士 (体の悪い人も、働き口のない人も、多いのよね)

姫騎士 (父様から公爵位を継承した兄様も悩んでらっしゃる)

姫騎士 (開拓が上手く行けばいいのだけれど)

騎士団員 「姫騎士様、みなの食事が終わりました。そろそろ帰りましょう」

姫騎士 「・・・周りの国と比べて税が安いわけでも軍隊が多いわけでもないのにね」

騎士団員 「は?」

姫騎士 「いえ、そろそろ帰りましょうか。」

【PART① 遭難】

---馬車の中

姫騎士 「昔になくなったお母様も心を痛めていたわ」

姫騎士 「お父様も無関心ではなかったけれど、お怠けさんばかり目についちゃったのよね」

姫騎士 「でもお怠けさんがいるからって、本当に困ってる人まで見捨てるわけにはいかないわ」

騎士団員「おっしゃる通りかと。働く意欲はあれどなにをすれば良いのかわからない者もいるとか」

騎士団員「騎士団長の女騎士さんも元はといえば土地を追われた貧しい農家の出身らしいです」

騎士団員「そこから一念発起して剣術を磨き上げ、わが騎士団の団長にまで立身出世なさったとか」

姫騎士 「へえ。女騎士の姉さんもそんな過去があったのね」

騎士団員「あ・・・ えっと・・・ でも団長ほど精神が強くない人も多いでしょうね・・・」

姫騎士 「そうよねぇ」



 ヒュン 

グサリ!

騎士団員「あがっ?」

姫騎士 「ひっ!? 何事です?」 (下車する)

騎士団員「ぐ・・・ 逃げて・・・」

首領  「黙ってろ。余計なこと喋るんじゃねえ」

姫騎士 「何者です? わたくしが姫騎士と知っての狼藉ですの?」 シャキン! (抜剣)

小頭  「ああ、やっぱりそうか」

手下A  「間違いなかったぜ」

手下B~J 「へっへっへ・・・」 「1人で立ち向かおうってか?」 「可愛いお顔に傷がつくぜ~」

姫騎士 「・・・せっ せめて名乗りなさいな!」

首領  「へ。俺は盗賊集団の”首領”、こいつは右腕の”小頭(こがしら)”だ。」

首領  「おい姫騎士さんよぉ、この御者、かなりの重傷だぜ?」


首領  「純潔は守ってやるからおとなしく縛られろ。剣を捨てな。こいつが死んでも知らねえぞ。」

姫騎士 「うぐぐぐ・・・ わ、わかりました・・・ 言うことに従いましょう・・・」 ポイッ

手下A 「縛り上げやしたぜ、そいつは用なしだ!」

小頭 「そんじゃ始末すっかな」 ザン!

姫騎士 「ああ! なんてこと、約束が違うではありませんか」

首領  「死んでも知らねえとは言ったが助けてやるとは言ってないぜぇ、世間知らずのお嬢さんよお?」

姫騎士 「そ、そんな・・・ あああ・・・」

首領  「御者の死体は馬車と一緒においとけ。そのうち誰か見つけるだろ」

【PART② 小さな遣い】

門番A 「何だか今日は姫騎士様のお帰りが遅いなぁ・・・ 貧民の話でも聞いてんのかな」

門番B 「なにも姫様が出向くことはないと思うがなあ・・・ でも良い人だよな」

子供 「ねえ門番のおじさん! ぼく、この手紙をお城に渡せって頼まれたんだけど、おじさんで大丈夫かな?」

門番A 「ん、何だこりゃ、俺は目安箱じゃないぜ・・・ 差出人が書いてないな・・・ 親展でもない・・・」

門番B 「村娘から色男へのラブレターじゃねえのかい? 開けてみろよ」

門番A 「どれどれ・・・ ・・・ ・・・!? こいつはやばい。小隊長を呼べ。それから子供、お前はここにいろ」

門番B 「どうしたんだよ」

門番A 「いいからはやく小隊長を呼んでくれ!」

門番B 「!?」

小隊長 「何事だ、騒々しいぞ・・・ 手紙を読め? 何だと言うんだ・・・ ・・・うおっ!」

小隊長 「なあ坊や、どんな奴が渡したんだ。特徴を言いなさい」

子供 「ええっと・・・ フードをかぶってて・・・ 旅人っぽい服を着てて・・・ リュックサックを背負ってたかな・・・?」

子供 「あとお菓子をくれたけど食べちゃった」

小隊長 (こりゃ手がかりに乏しいな)

【PART③ 一族の思惑】

公爵(長男) 「みんな集まったな。だいたいのことは使いの者から聞いたと思うが、事が事だけに確認するぞ。」

次兄 「大変なことになっちまったな・・・」

三男 「兄さん、お願いします」

執事 「どうか御無事で・・・」

公爵 「俺たちの末妹、姫騎士が何者かに誘拐された」

公爵 「親父が死んでから末妹は慈善活動に注力するようになった。で、今日も救貧院で炊き出しを行い、その帰り道で襲撃されたらしい。」

公爵 「手紙が送りつけられた。それに書いてある通りに矢の刺さった騎士団員(御者)の死体と馬車が発見された。馬はいなかった。」

公爵 「姫騎士は3000万ゴールドで返すが、もし犯人を手配・摘発すれば首飾りだけ返すんだそうだ」

公爵 「それで集まってもらったわけだ。どうすれば良いと思う?」

次兄 「どうするもこうするもねえよ! 憲兵隊と騎士団に命じて犯人を見つけ出しつるしちまえ!」

次兄 「姫騎士の剣術はそれなりだが頑張り屋。妹だからひいき目もあるが、亡くなったかーちゃんに似て顔もいい。」

次兄 「騎士団長の”女騎士”によく懐いたので入団させたらあっというまに国の名物だ」

次兄 「性格も良いし可愛がられる素質がある。その以前に妹が掠われたのにどうすれば良いって何言ってんだよ?」

次兄 「早く女騎士を呼び出して捜索命令を出そうぜ! 姉代わりだ、何としても見つけ出すだろう!」

三男 「次兄の兄さんの言うとおりだと思います」

三男 「妹は騎士団のマスコット呼ばわりされることもありますが民衆の人気も高い」

三男 「それに例の計画・・・ 仕事にありつけない下層民を集めて開拓地に送り込む計画ですが」

三男 「何かと文句をたれる貧民達がよく言うことを聞くようになったのは妹の手柄です」

三男 「妹は可哀想な人を助けている位に思ってますが、貧民からすれば高貴でお偉い公爵家のお嬢様が」

三男 「自分たちのためにあれこれ世話を焼いてくれる・・・ これが彼らの心を動かしました」

三男 「わたしたちの統治に反発する革命主義者達が貧民を焚き付けにくくなったと憲兵隊が分析しています」

三男 「おそらくこの者達の仕業かと。早急に兵を出しましょう」


次兄 「おいおい、決め付けちゃ駄目だ。あるいは魔物かも知れねえぞ」

次兄 「あいつは獣人、モンスター、亜人にも等しく接していたからそいつらにも人気なんだ」

次兄 「この間ぶっつぶされた魔王軍の残党がモンスターどもと俺たち人間の対立をけしかけようってのかも」

次兄 「どっちにしても国家反逆罪だ、叩き潰せ!」

公爵 「お前達の言うとおりだ。だが複数犯というのが問題なのだ」

公爵 「一度に全員を捕縛するなり倒すなりせねば、残りが姫騎士をどうするかわからん」

公爵 「加えて時間だ。日が経てば姫騎士がいなくなったと民衆が騒ぎ出すだろう。病気で伏せてることにしようとは思うが、限度はある。」

公爵 「おまけに手口から見て兵の中にも下手人に通じておる者がいるやもしれん・・・ どうすれば良いというのは、そういう意味なのだ」

公爵 「弟たちよ、案があるのか?」

次兄 「うぐぐぐ・・・ クソッタレ。手がかりはほとんどないんだよな・・・」

三男 「う~ん・・・ 確かにどうすれば・・・ 犯人を捜そうとしてるのがバレてもアウトだろう・・・」

執事 「・・・僭越ながら、わたくしに案がございます。既に私の独断で対処しつつあります」

公爵 「どういうつもりだ、私の許可もなく」

執事 「運良く勇者とコンタクトに成功しました。いつでも依頼が可能です」

公爵&弟達「「「!」」」

公爵 「でかした。すぐに来てもらうのだ」

【PART④ 依頼者の工夫】

勇者 「・・・」

公爵 「・・・・以上が今までに判明していることだ。」

公爵 「何者かが妹・姫騎士をさらった」

公爵 「下層民を煽ってこの公爵家に敵対させてきた連中が、邪魔になる姫騎士の排除を試みた可能性もある」

公爵 「私の領地は大規模な軍隊はなく、治安維持の憲兵隊と公爵家を護衛する騎士団しかない。」

公爵 「そのため辺境の夜盗や山賊の撃滅がなかなか難しい。そこに反動の革命主義者も入り込んでいるとの見方もある」

公爵 「あるいは魔王軍の生き残りかもしれん・・・ はっきりしないのだ」

公爵 「どちらにしてもすぐさま救出していただきたい。憲兵や騎士団は味方ばかりとは限らんので貴方に頼むのだ」

公爵 「姫騎士を救い出してくれ!」

公爵 「まずはどこにいるのかの調査が必要だが・・・」

勇者 「悪いが、俺の仕事じゃないな。」

次兄 「おい? まさか無理って言うのか?」

三男 「あの、依頼金を足しますから。探すのも手伝いますから」

執事 「そういう意味ではございますまい。救出という仕事である故にお断りされているのです」

次兄 「意味分かんねえよ、そんじゃなんで呼んだんだよ?」

執事 「私めが依頼を修正いたします。姫騎士様にこれ以上の危害が加えられないよう、この拐かしに参加・協力したものを残らず斬り捨てていただきたく存じます。これでよろしいですかな」

公爵&弟達「「「!」」」

三男 「そ、そんなことで・・・・」

勇者 「・・・いいだろう。俺の口座に送金され次第、やってみよう。」

執事 「おお! 何卒よろしくお願いいたしますぞ!」

公爵&弟達 (あ、それでいいんだ)

【PART⑤ もう1人の救出者】

勇者 「手がかりを探すために姫騎士の部屋を見たい」

執事 「は、こちらです。どうぞ」

次兄 「兄貴として一応見張るぜ、年頃なんだ!」

勇者 (・・・犬の毛だ。飼っていたな。だが檻がない。家族には秘密で拾ったな)

勇者 (それに鳥かごか。こちらには小鳥がいる。世話も行き届いている)

勇者 (犬は・・・ この箱か)

捨て犬 「キャン、キャン」

執事 「なっ いつの間に?」

三男 「またどっかで拾ってきたな。」

勇者 「この犬と、その小鳥を貰いたい」

執事 「逃がしたら悲しみます。しかし背に腹は代えられませんな」


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---騎士団官舎、女子寮

騎士(♀)A 「団長、何やら公爵様達の様子がおかしいです」

騎士(♀)A 「それに目つきの鋭い男がお城をうろついているとか」

騎士(♀)A 「何があったんでしょうね」

女騎士  「つまらん噂話なんぞ止めなさい。私たちに無関係でしょ」

騎士(♀)B 「あ、あの、団長、お聞きになりましたか、一大事のようです」

騎士(♀)B 「友達の侍女に聞いたのですが姫騎士様が行方知れずとか!」

騎士(♀)B 「誘拐されたって言ってる官女もいます」

女騎士  「何だって? あんまり喋るのはよしなさい。しかし噂にしては突拍子もないし確かに見かけないな」

女騎士  「私が確かめるまで箝口令よ」

A&B  「はい!」


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---夜

公爵 「人の口に戸は立てられぬ、か」

女騎士「なにをのんきな・・・ 姫騎士様が掠われたというのに私たちにお知らせいただけないばかりか」

女騎士「どこの誰とも知れぬ勇者などと言う流れ者に任せるなど、どういうことですか!?」

女騎士「私も脅迫状を読みましたが、奴らめ、3000万ゴールドなどと大それた事を!」

三男 「君たちには教えていないはずなのにどこからか噂を聞いてくる」

三男 「逆に言えば噂を広めてしまうと言うことじゃないのかい。それでは犯人にも知られてしまう」

女騎士「・・・し、しかし士気にも関わります」

女騎士「騎士団が公爵家の一大事から除外されたとあっては、邪魔者・用無し扱いされたと感じる者も出るでしょう」

女騎士「私の信頼できる者と共に解決に動くようご命令下さい!」

次兄 「まあ確かに勇者はイレギュラーな方法ではあるよな」

公爵 「うむー 今回はその騎士団員が側にいたのだがな。とはいえ1人では責任は問えない、か」

公爵 「だが既に行った契約を取り消すというのも信義に関わること・・・ 短慮であったかな・・・」

執事 「それでは・・・ 勇者への依頼はそのままに、女騎士団長による捜索も黙認する、というのはいかがでしょう」

執事 「騎士団を貶めるわけではないが、勇者の技量は折り紙付きです。違法ハンター団を壊滅させた実績もある」

執事 「国の統治者で勇者を知らぬ者はおりますまい」

執事 「一方で勇者に先んじて事を解決すれば、騎士団の実力の証明になります。そのときは勇者は依頼を達成できなくなります。救出すれば危害がおよぶ心配はないのですから」

執事 「依頼に失敗しながらルール違反を問い詰めるなど、勇者もしますまい。自身の無能さを広めることになります」

執事 「それに女騎士が独自に動いたのであれば公爵一家は無関係です。あまり正当な手とは言えませんが・・・」

執事 「止めようとしたのだが勝手に動いて困っていた。勇者に連絡しようにもどうすればいいのかわからなかった。」

公爵 「うーん・・・ 捻ったな・・・ それでよいか女騎士よ?」

女騎士 「はっ、私達の手で裏切り者どもを処断してご覧に入れましょう!」

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テイマー 「いろいろやってみたがどうも無駄だったようだ」

テイマー 「捨て犬に匂いを嗅がせたが、まるで追跡しようとしない。訓練してないとこんなものさ」

テイマー 「小鳥も駄目だ。あっちこっちを飛んでいるだけだ」

テイマー 「尋ね人なら他の方法を考えるべきだな。これ以上は意味がないと思うよ」

勇者  「・・・・」

勇者  「どちらにしても礼金は払う。ご苦労だった」

【PART⑥ 法と秩序に則って】

女騎士 「・・・とまあそういうわけよ。私たちへの信頼が揺らいでいる。護衛に失敗したのはその通りだけどね」

騎士(♀)A 「ううー なんてこと」

騎士(♀)B 「信頼を取り戻しましょう」

騎士(♀)C 「勇者に遅れてはなりません!」

女騎士 「貴女たちは犯人一味ではないから打ち明けたのよ。あとは密偵AとBにも伝えたわ」

女騎士 「それから犯人像だけど・・・ 私は革命主義者でも魔王一派でもないと思う」

女騎士 「金目当ての盗賊よ。まず間違いないわ」

騎士(♀)C 「とおっしゃいますと、何か根拠が?」

女騎士 「政治的な思想が理由なら、すぐに始末してその成功をアピールすれば公爵家にダメージを与えられる」

女騎士 「また3000万ゴールドは無理すれば払えない金額ではない・・・ おまけに要求はこれだけ。政治的なものはない」

女騎士 「以上から金目当てと判断できた。最近問題となっている例の盗賊集団に狙いを絞るべき。」

女騎士 「とにかく、警護部隊である我々騎士団が解決せねばならない問題です!」

女騎士 「部外者の賞金稼ぎや流れ者に任せてはならないし、解決させてもいけません」

女騎士 「”首領”と”小頭”を追うのです!」

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密偵A 「ざっと調べたところ、市街地に一味の者はいません」

密偵A 「また姫騎士様の痕跡もありません」

密偵B 「ただ行方知れずと言うことを伏せながらの聞き込みですので限度があります」

密偵B 「思うような調査とは行かず、一味の行き先は不透明です」

密偵B 「盗賊集団が街にいないとなると、山岳地か森林か荒野か・・・ 」

密偵A 「山岳地や森林では姫騎士を連れての移動はやりにくい。犯行グループの1人は旅人の服を着てたという証言もある。」

密偵A 「荒野が怪しいと思います。」

女騎士 「う~ん、言えてるな。そこいら辺は盗賊集団にとっては慣れた区域だろうし」

騎士(♀)A 「だいぶ絞られたわね。でもまだまだ広い」

騎士(♀)B 「人海戦術ではあちらに悟られる危険もあります。カモフラージュして荒野を探しましょう」

騎士(♀)C 「幸い、近いうちに開拓団が送り込まれます。測量士や下見に化けて一味を探しましょう」

女騎士 「よし、それで行くわ! なんとしてもこの裏切り者どもを我らの手で処断するのだ!」

【PART⑦ 夢の世界の甘い罠】

---夢魔の集落

サキュバス 「あなた、命が惜しくないのぉ?」

エンプーサ 「たま~に君みたいなのが勘違いしてやってくるんだよねぇ」

勇者  「お前達に頼みがあるんだ。報酬は支払う」

勇者  「俺の指定する複数の人物の夢に入り込み、情報を聞き出して欲しいんだ」

勇者  「まだ詳しくは言えないが誘拐事件が発生した」

リリム  「誘拐は知らないけど行方不明ならもうすぐ発生するんじゃないかなぁ」 ニヤニヤ

マールト 「でもお兄さんタフそうだねぇ。だいたいの男はこの辺に来ると蕩けちゃうんだけどぉ。正気を保ってるもんねぇ」

サキュバス「報酬ってお金? それじゃあ駄目だわぁ。お願いを聞いて欲しいなら別の報酬が欲しいわねぇ」

サキュバス「でもお金で命は買えないわよぉ? やっぱり止めたなんてもう遅いけど?」

4体 「へっへっへ~」 ニヨニヨニヨ


『おとなはそのままよ こどもは23に とんでね』



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数え間違えた。 こどもは24に とんでね


エンプーサ 「おおお~~~っ! すごい! 全身の血がマグマになってるよ~~っ!」

マールト  「快楽のっ 海でっ 溺れる~~~っ! この私が人間にっ 沈められちゃうよ~~~っ!」

リリム  「ママが帰ってきたら絶対悔しがるよ! もっと、もっと! 私が女の子になるなんてぇ~」

サキュバス 「ち、ちくしょう! あんたのほうこそ悪魔よ~! こんなにも私のが噛みついてるのに~」

サキュバス 「顔色ひとつ変えないって化け物でしょ~ この人でなしぃ! あおおぉん!」

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勇者  「標的はこのリストに載せた。現在位置がわからなくとも問題ないな?」

リリム  「顔と名前がわかれば夢には入れるよ。そこは大丈夫」

マールト 「姫騎士を誘拐したのはお前らか、いまどこにいるんだって色仕掛けで聞けば良いのね」

リリム 「ママの時代には夢の世界でのハニートラップが一時期はやったって聞いたけど、最近はやらないね」

エンプーサ「王族や高官、軍司令官とか、大商人とか、機密情報を持ってる奴は防御魔法を何重にもかけててやりにくいんだよね」

エンプーサ「だから夢の世界で誑かすのは最近あんまり流行らないけど、このリストの連中なら」

エンプーサ「高額な防御魔法もかけてなさそう。なにより自分にそれだけの価値があるって思ってないよ」

エンプーサ「サキュバスちゃんも夜には回復するでしょ」

【PART⑧ 犯行グループ・下っ端の雑談】

手下E 「そういや先輩よお、なんで俺たちはこんな危ない橋渡ったんすか」

手下E 「首領と小頭がいりゃあなんだって首尾よく行くとは思いますけど、ね」

手下B 「なんだ知らなかったのかよ。この頃は俺たちの商売が前より難しくなってっだろ」

手下E 「はあ、まあそう言われりゃあそうですね」

手下B 「以前はよお、首領のなじみとつるんでいたのよ」

手下B 「ガキのころスラムで助け合ってたんだと。そいつは出世したんだが腐れ縁は切れなかった」

手下B 「だから俺たちがやり過ぎないうちは追っ手を抑えたり、隊商のルートを流したりしてくれた」

手下B 「俺たちのほうは別の山賊どもの居場所を教えたりして手柄を立てさせた。持ちつ持たれつだ」

手下B 「だがよぉ、どうも近頃は疎んじられている様子だ。だから最期に退職金をいただいて」

手下B 「みんなでどっか遠くの国へ行って解散しようってわけだ」

手下E 「うげー? 俺、盗賊以外の商売なんてやったことねえよ~」

手下B 「まあ200万ゴールドくれぇ貰えっからしばらくは身を潜めろや。」

手下B 「それに今まで将来のこと考えたことあったのかよ? ねえだろ? じゃあ一緒じゃねえかよ」

手下E 「へへー 確かにそうっすね。どうせ浮世の根無し草って奴だあ!」

【PART⑨ 現実世界の苦い旅】

---荒野

密偵A 「はあはあ・・・  だいぶ遠くまで来たなぁ」

密偵B 「水も少なくなった・・・ 泉を見つけないとマズいかも」

騎士(♀)A 「弱音を吐くんじゃないの、姫騎士様だってきっと苦しいはずよ」

女騎士 「そ、その通りだ! その怒りを盗賊どもにぶつけるのだ」

女騎士 「ただし見つけても深追いするなよ、この私が斥候をするからな」

女騎士 「全員で近づいたら勘づかれる、まずは私が様子を見てくる!」

騎士(♀)A (団長すごいやる気よね)

騎士(♀)B (無理ないわ。本物の妹みたいに可愛がってたから)


密偵B 「あっ 水が湧いてるよ! 木の実もある、やった!」

騎士(♀)C 「ま、待って、不用意に口にしちゃ駄目よ、周りの草を見て」

騎士(♀)C 「きれいな水ならこんなに枯れるはずがない、たぶん害があるんだわ」

騎士(♀)A 「あああああ・・・・ ちくしょうがああ・・・・ どちくしょう・・・」

女騎士  「有害な水を吸って育った木の実が食べれるわけない、か・・・」

女騎士  「ぬか喜びだったな・・・ ん? これは轍、かな・・・ 」

女騎士  「手がかりが見つかったぞ!」

一同   「「「やった、さすが団長、さえてる!」」」

女騎士  「でもだいぶ古いけど、な」

【PART10 夢のお告げ】

手下H (ううん・・・ 誰かいるのか・・・? おれは寝ているのか・・・・)

   ー ねえ、どうせ夢なんだから私と遊ばなぁい ー

手下H (夢か・・・ さいきん女に飢えてるからって、なかなかのゆめだなあ)

   ー いいことして、そこのウブそうなかわい子ちゃんにも見せつけてやりましょ ー

手下H (ああこいつか おれたちでさらってきたんだよ。もうすぐ大きんが手に入るんだ)

手下H (そうしたら おめえにも だいやモンドくらい かってやるぜ)

   ー あらかわいそうにねえ どこに閉じ込められちゃったの ー

手下H (荒やの いけがある 丘の ほったて小や そこがおれたちの アじトだよ)

手下H (そのなかに おりがあって 見はりもつけて とじこめた)

手下H (もういいだろ いいこと してくれよお)

手下H (なあ いいこと してくれってば)

手下H (なんだあ だれもいねえのか・・・)

手下H 「う・・・ うーん・・・ 朝か。」

手下H 「なんか変な夢見てたような・・・ 見てたのかな・・・ あー」

////////////////////////////////////////////////////////////////

---夢魔の集落

マールト 「収穫ありだよ。革命家や過激派のモンスターは知らないようだった」

マールト 「勇者の言うとおり盗賊集団が犯人だ」

マールト 「そして一味と姫騎士は荒野の近くに池がある丘の掘っ立て小屋にいる。」

マールト 「地図ではこの辺。そんな地形はここしかないよ」

サキュバス「姿を消して偵察してきたけど、親分が1人、中堅が1人、子分が10人ね」

サキュバス「それで 全員よ」

エンプーサ「部屋は2つあって、姫騎士を閉じ込めた檻がおいてある部屋は見張りのオークがいるだけ」

エンプーサ「ほかの人は隣の部屋で寝起きしてる」

リリム 「オークは一番下っ端だね。それから女騎士ってのが勝手に姫騎士の救助に乗り出したみたいだよ」

リリム 「手がかりを求めて荒野をさまよってる。5人ほどの家来を連れてるよ。先を越されないようにしないとね」

リリム 「まあもうしばらくは大丈夫かも。まだ掘っ立て小屋からだいぶ離れてるからね」

勇者 「よくやってくれた。約束の謝礼だ。」 つ「大金」

リリム 「・・・謝礼ならさあ、もっかい、あのすごいの欲しいなあ~」

勇者 「二度三度と寝たい女はまずいないものだ・・・・ 」

リリム 「な、な、何ー! 失敬しちゃうなあ、もう!」

【PART11 初めての話し相手】

オーク 「おい ひめきし ごはんだぞ」

姫騎士「・・・ありがと。そこに置いといて」

オーク 「うん」

オーク 「・・・・・」

オーク 「・・・なんで おまえ ないてたんだ」

姫騎士「なんでって、貴方達に掠われたからよ。兄にも友人にもう会えないかも知れない」

姫騎士「それがどれほど悲しいことか知らないの?」

オーク 「うーん よくわかんねえ だけど おまえ ないてるの いいきぶんじゃない」

オーク 「あえると いいな」

姫騎士「・・・ ・・・」

姫騎士「今度はこちらが聞くけど、どうして貴方はこんな所にいるのよ。」


オーク 「よくおぼえてねえだけど ガキのころ みんな おおさわぎしてた」

オーク 「かーちゃんも とーたんも おじさんも どなったり わめいたりしてた おでは ないてたかな」

オーク 「いえは もえた」

オーク 「おじさんたち しらないひと なぐってた なぐられたりしてた」

オーク 「こわくて ないてた よるになって おなかすいてたかな みんな いなくなってた」

オーク 「そんとき しゅりょうさん おでみつけて ごはんくれた おで おんがえし してる」

オーク 「だからおで みはれって いわれた おまえ みはるんだ」

オーク 「わかったか ひめきし」

姫騎士(・・・おそらく違法なハンター達に村を襲撃されたのでしょうね)

姫騎士(首領は落ち穂拾いに来たってとこかしら。)

姫騎士(あんな奴に育てられて、まともな教育も受けてないのね。そんなのでもこの子にとって親代わり、か)

姫騎士(こともなげに怪我人を殺す冷たさもあれば、コキ使うだけとは言え慕われるだけの情もある)

姫騎士(なんだかこの子に同情しちゃったわね)しんみり

姫騎士(もとはと言えば村を襲った奴らよ! 汚らわしい人非人どもめが! なんだかそっちに腹立ってきたわ!)ムキー

オーク 「ないたり おこったり いそがしいな おまえ」

姫騎士「貴方の家族を殴ったり家に火を放った連中に腹を立てたのです! 同じ目に遭わせてやりたい!」ムキー

オーク (おで そこまで かんがえたこと なかったな)

オーク (ひめきしって いいやつかも)


【PART12 たった1人の偵察者】

女騎士 「古地図を見るとあっちの小山の向こうに掘っ立て小屋があるようだな」

女騎士 「轍から考えるとそこが犯人どものアジトだ。間違いない!」

密偵A (轍ってだいぶ古かったしそっちに行ったかのかどうかわかんないんじゃないか?)

密偵B (間違いないって、そんな言い切っちゃって大丈夫かな?)

女騎士 「松林があるが、5、6人では隠れるのに難があるな」

女騎士 「やはり私1人が斥候となるのが良さそうだ」

女騎士 「お前達は小山のこちら側で待機、私が合図の花火を上げたら一気に押し寄せるんだ」

女騎士 「それまでは絶対に小山のこちら側にいるんだよ。花火が上がるまで遠眼鏡も固く禁止する!」

密偵B (ええ~?)

騎士(♀)A 「あの、意見具申してよろしいでしょうか。小山のこちら側にいてはすぐに小屋まで駆けつけることができません」

騎士(♀)A 「それに花火だと敵にもバレますし、見張りと連絡で斥候は2、3人出すべきかと思うのですが」

女騎士 「犯人達だって馬鹿じゃないんだから周囲を警戒してるはずだ。複数人出せばそれだけ目立ってしまう」

女騎士 「それに私の剣の腕は知ってるでしょ? すぐに駆けつけなくても問題ない。陽動だ。」

騎士(♀)B 「ま、まあ、変わった作戦ではありますが・・・・」

騎士(♀)C 「言われてみればその通りなのかな・・・・?」

女騎士 「貴女たち、疲れているんだな。回復薬があるから飲むといい。遅効性だから今飲んでおきなさい」

5人  「「「は~い、いただきま~す・・・」」」

女騎士 (す、い、み、ん、じゅ、も、ん)

 (う、 あ・・・・  なに・・・・)

  (なにか・・・ された・・・・ ・・・・?)

   (Z Z Z~)

女騎士 「・・・・睡眠薬と睡眠呪文だから数日は寝てるだろ」

女騎士 「起きるころには解決しているよ。急がなきゃ」


【PART13 襲撃者はワンマン・アーミー】


---早朝 池の近くのほったて小屋の周辺


手下A 「ふわあ~ 眠いなあ。早く交代しやがれってんだ」

ヒュン グサリ!

手下A 「げほ」

ドサリ

手下B 「ぬっ?」

手下C 「何だ。何か音がしなかったか。」

ヒュン ヒュン

手下B 「ぎゃ」

手下C 「ぐえっ」

首領 「ん?」

首領 「おまえら起きやがれ! 敵だ! 敵が来やがった!」

小頭 「敵の武器は弓矢だ、だが数はそれほどでもねえようだぜ」

首領 「全員注意しながら配置につけ、ABCがやられた!」


ガサガサ ガサガサッ

小頭 「あっちの茂みが揺れたぜ、あそこに隠れてやがる」

小頭 「散らばって全員で射かけろ!」

D~J 「おおー!」

ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン
 ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

ヒュン ヒュン

手下D 「げぼっ」

手下E 「ぐっ」

小頭 「・・・・違う! あっちの茂みじゃあねえ!」

小頭 「こっちだ、こっちの岩陰だ!」

ヒュン

小頭 「ぐほっ」

首領 「うおっ 小頭ァ! クソが!」

首領 「全員小屋に戻れ! 形勢を立て直せ!」

オーク 「うわああ! しゅりょうさん おでも たたかう」

首領 「危ねえだろうが、姫騎士を見張ってろ! うすのろは足手まといなんだよ!」

オーク 「ふええ ご、ごめんよ ごめんよ」

首領 「ちっ・・・ 引っ込んでやがれ」

首領 「・・・・」

首領 「敵の攻撃がやんだな? 数に任せた感じの攻撃じゃあないな」

首領 「矢は一本ずつ飛んできてる。敵は1人かも知れねえ・・・」

手下F 「ひ、1人!?」

首領 「姫騎士を連れてこい! そいつを盾にして降参させろ!」

手下F 「よっしゃ!」

手下J 「近くに来させりゃあいいぜ、俺はちょいとだけ麻痺魔法が使えるんだ。」

手下J 「どんな凄腕でも動けなきゃあ木偶の坊ってもんだぜ!」

【PART14 盾には隠れず】

手下F 「おら、大人しくしやがれ」

手下G 「暴れるんじゃねえ!」

姫騎士 「なにをなさいますか、それに無駄ですの!」

姫騎士 「これでも騎士団の末席を汚しておりますのよ、騎士を人質にしたところで、惜しまれる命ではありません!」

手下F (んなわけねえだろうが! 世間知らずにもほどがあらぁ!)

手下G 「単なる矢よけだ、黙ってやがれ! さあ偵察に出るぜ!」

勇者 「・・・」 チャキッ

手下F 「うわ?」

ザシュッ ドスッ

手下F 「うっ」

手下G 「がふ」

姫騎士 「きゃあ! う、う~ん・・・」

勇者 (姫騎士・・・ 暴行を受けた様子はない。無事と言っていいだろう)

勇者 (だが依頼は達成されていない!)

手下H 「いつのまに・・・」

手下I 「ロングソードまで」

手下J 「まっ まひじゅも」



バシュッ

ザクッ  グサッ

手下J (じゅ、呪文の途中で、真っ先に俺ののどを切り裂くなん、て・・・・)

手下H 「あ、が、がが・・・」

手下I 「ぎああ~」

勇者 「ん・・・・?」

勇者 (このメモは・・・ それにこちらは盗品か。メモと辻褄が合うな・・・ 俺には無関係だが・・・)

  ひひ~~~ん! 

勇者 「!」

首領 「へへっ 阿呆が! 手下を片付けてるひまに俺は逃げ支度よ!」

首領 「馬に乗っちまえばこっちのもんよ! ロングソードは届かないぜ、弓も構える前におさらばだ」

首領 「なんてったって騎士団の駿馬だ、風より早く走れるんだよ! 護符もあるから魔法も効かねえ!」

勇者 「・・・」

首領 「そんじゃ、あば」

 ヒュオン!

   グサリ!


首領 「あば、あば・・・・」

勇者 「ペラペラ喋っている間に逃げるべきだったな・・・」

   ふら~ ドサッ

首領 「投げナイフまで 隠し持って・・・・? 俺じゃ敵わねえな・・・」

首領 (けっ ろくな人生じゃなかったぜ・・・・ ああ、クソが)

首領 (最期くれえ オキニの娼婦か、なじみの女の顔を思いうかべてえってのに)

首領 (ウスノロがちらつくぜ・・・ おれなんぞになつきやがって・・・ おれなんぞに・・・)

首領 (・・・ ウスノロは・・・ みのがして くんねえ か な・・・ 悪いことした・・・)

姫騎士 「うう~ん・・・ 誰か来てくれましたの? ・・・首領が倒れてる」

姫騎士 「報いですわ・・・ いままで貴方がしてきた事なのよ」

【PART15 願いは届いた!】

勇者 (・・・ ”親分が1人、中堅が1人、子分が10人ね” ”それで 全員よ”)

勇者 「数が合わない!? サキュバスの数え間違いか? オークはどこだ?」

オーク 「う、うわー! うわー!」

 チャキン バシュ!

オーク 「お、おでの うでがーーー!」

姫騎士 「やっ 止めて! 止めるのです! そのオークは違うのです!」

勇者 「うん?」

姫騎士 「そのオークは言われるままにわたくしの世話をしただけです! 処断してはなりません!」

姫騎士 「貴方は憲兵か騎士でしょう、顔を見ましたわよ」

姫騎士 「オークを斬り殺せば、無抵抗の者を切り捨てたと兄公爵に告げますわ!」

姫騎士 「貴方こそ処罰されるのですよ!」

オーク 「か、か、かたきだ かたきだ」

姫騎士 「貴方も降伏なさい、降伏しますね、降伏するというのです!」

姫騎士 「このわたくしがたったいまこの者を捕縛しました、騎士であるわたくしが捕縛しました!」

姫騎士 「従ってわたくしが護送します、これは公爵領のルールに則った処置ですの!」

勇者 「・・・・俺は憲兵でも騎士でもない。」

勇者 「だがそいつがお前の誘拐に参加・協力していないというのなら・・・ 俺にとってはただの通りすがりだ・・・」

勇者 「お前は騎士のルールに従えばいい・・・・ 東のほうから救援隊が来ている」

姫騎士 「・・・・憲兵でも騎士でもないって、それでは貴方は?」

姫騎士 「いや今はオークの連行が先決、さあ行きましょう」

姫騎士 「腕が痛いでしょう。わたくしがついていますの。急げば助かりますからね、そこの馬に乗れますか」

姫騎士 「・・・一応、貴方にもお礼を言っておきましょう。助けてくれてどうもありがとうございました。」



【PART16 腐れ縁】

姫騎士 「さあ早く、医者を呼んであげますから頑張るのです」

オーク 「いてえよう いてえよう」

姫騎士 「応急処置はしましたから死にはしませんのよ。腕は心臓より高く上げなさいな」

姫騎士 「こんなとき女騎士の姉さんがいてくれたら・・・・ いえ弱音を吐いている場合ではないのでした」

女騎士 (うおっと、姫騎士だ! それにオーク? ・・・よくわからんけどオークに気を取られていてこっちに気付いてないな)

女騎士 (・・・ってことは勇者が仕事を終えたって事か。急げ!)

女騎士 「驚いた。ほったて小屋にまだいたとはね」

勇者  「・・・」

女騎士 「・・・・見たのか? 何か書類を見たか?」

勇者  「姫騎士よりも気になる書類か・・・ どうやらいい加減なでっち上げではないようだな」

勇者  「だが俺には関係のないものだ・・・」


女騎士 「そっちにはなくてもこっちにはあるんだよ」

女騎士 「騎士団長の私が盗賊集団と通じているなんて、誰にも知られちゃいけない」

女騎士 「あの野郎、最近はやり過ぎだったんだよ。騎士団長にももみ消せないものはあるんだ」

女騎士 「おまけに姫騎士誘拐・・・ これは私の知らないことだけど、当てつけかな?」

女騎士 「とにかく事情を知る奴が生きてちゃ困るんだ! 私はさっき回復薬を飲んどいたよ」

女騎士 「そっちは一仕事終えて疲れ切ってるだろう? こっちから行くぜ!」

チャキン キィン カキィン

ザクシュッ!

女騎士 「が・・・ ぐ・・・」

女騎士 「格が違った・・・・」

勇者  「俺には関係のないことだと言った。後は自分の好きにしろ」

女騎士 (な、なんとかして証拠を・・・ 小屋全部は探せない・・・)

女騎士 (・・・・ あんなとこにランプが・・・ 油も充分入ってる)

女騎士 「だあっ」  ガッシャーーン!

 パチパチパチ・・・・・

女騎士 「へっへっへ 証拠隠滅罪の追加だ」

女騎士 「へへへ・・・」

女騎士 (考えてみりゃ首領のやつに助けられて生きてきた。ガキのころも、騎士団に入ってからも)

女騎士 (私が入団したとき、あいつ心から喜んでくれてたよなぁ、それくらいわかるよ)

女騎士 (・・・恋人にはなれなかったけ・・・ ど・・・ 私じゃ・・・  たった1人の・・・ 友達・・・・)

女騎士 (友達が・・・ いない・・・ 世界なんて・・・・)

メラメラメラ・・・・・
 ボオオオオ・・・・・  ゴオオオオ・・・・・・!!
  ボオオオオ・・・・・  ゴオオオオ・・・・・・!!!!!

【PART17 救貧院の日常】

司祭 「ほら、並んで並んで~ 」

尼僧 「オークさん、蕎麦粥のお鍋をあちらへ運んで下さい。熱いので気をつけて」

オーク 「こ、こ、これなら かたうででも はこべる」

尼僧 「おおー 流石です! さあ蕎麦粥です。アレルギーはないですね?」

貧者 「ありがとうございます」

病人 「お恵みに感謝します」

獣人 「おいオーク、俺は獣人っていうもんだ」

獣人 「モンスターが少なくてさみしかったじぇ、来てくれてありがとよ。友達ににゃってくれよ」

オーク 「うん」

司祭 「お~ よかったよかった」

獣人 「友達になってしゅぐだけど俺はもうしゅぐ開拓地へ行くんだぞ。開拓地で麦がみにょったら、真っ先にここへ送るぜ」

獣人 「届いたら俺のこと思い出してくれよ」

オーク 「うん、うん」

司祭 (姫騎士さんも開拓地へ行くんだっけ)

司祭 (仲のよかった女騎士さんが戦死したんだから、新しい環境に身を置きたいのかも知れない)

司祭 (いや生来の滅私奉公の精神てものかな。彼女なら開拓地でも上手くやっていけるだろう)

司祭 (ここは本当に病人と老人ばかりになるのだろうか・・・ やっていけるのかな・・・・)

司祭 (・・・)

司祭 (・・・いやいや姫騎士さんのほうが大変なのに何を考えてるんだ。新しい労働力までやってきたのに!)


どこの国でも貧困問題が国家的課題となっている。
その解決に成功した国こそ強国になるというのが、おおかたの統治者の予想である。
様々な解決策が模索され、公共事業はその有力な選択肢の1つとされている・・・

END

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