男「……やってくれたな」天使「あら、なんのことですの?」 (71)

男「そおいっ!」ブンッ

天使「あらあら、天使を殴ろうとするなんて。どういう神経してますの?」

男「うるせぇ、なんだよ不死の力って」

天使「貴方にはやって貰いたい事がありますので、必要なのですよ」

男「……俺は普通に平凡に生きたいんだ。やめてくれ」

天使「あらあら、私の返答をわかって言っているのですか?」

天使「ならば答えましょう。『拒否します』と」

男「………チッ!」

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男「結局お前に従わないといけないんだろ?さっさとやってくれ」

天使「話が早くて助かりますわ。貴方には数々の世界に行って貰い、それぞれの重要人物を助けて貰いたいんですの」

男「重要人物を助ける?なんじゃそりゃ。そんなんその、なんだ世界?のSPかなんかに守ってもらえよ」

天使「……そう言うわけにはいかないのですわ」

男「?」


天使「その重要人物は貴方みたいな即席の紛い物能力者ではないのですの」

天使「何年もその能力と付き合ってきた人間ですわ」

男「……で?じゃあ俺に助ける理由があるのかよ。不思議なチカラを持ってんだろ」

天使「……神獣、私達の神がやらかしてくれたのですわ」

天使「この前、ちょっとした手違いで神が神獣の檻を開けてしまい」

男「……見事バラバラになってしまった、と」

天使「お恥ずかしい限りですわ」

天使「と言うわけで神獣は殺してしまっても構わないのです。やってもらえませんか?」

男「いや、その神獣はどんなのか教えてもらわないと」

天使「神獣は様々な獣の姿をしておりますわ。そして全ての神獣の食べ物は」

天使「神のチカラが宿った肉」

男「……つまり、能力者はこう、バクっと?」

天使「言ってしまえば。なので貴方にはサポートをして欲しいのですの」

天使「重要人物に神獣の事を伝え、倒してもらえればそれでいいですわ」

男「……拒否は出来ないんだよな」

天使「ええ、やって、くれますわね?」

男「……ああ、面倒だがやってやるよ」

天使「それでは最初の世界の重要人物は、この方です」

天使「名前は雨神美園。能力は時間を操れる事ですわ」

男「美園さん、ねぇ」

天使「……それでは言ってらっしゃいませ……えっと、お名前は」

晃「晃、瀬河晃だよ」

ーーーーーパシュッ


ーーーーーー
晃「……ここか、えっと美園さん美園さんはっと」

晃「………つーか名前しか情報貰ってねえぞくそ天使」

晃「………このまま帰れるかな」

天使「あら、そんな事は許しませんわよ?」

晃「うわおっ!いたのかよ!?」

天使「ええ、今ですけど」


天使「雨神美園さんはこの先の高校生ですわ」

晃「小西高校……聞いた事ねえな」

天使「当たり前ですわ、この世界は貴方のいた世界とはまた別の軸なのですから」

晃「へーへー、そうですかいな。で?俺はその高校を見張っとけばいいのか?」

天使「貴方がそうしたいのでしら別に良いのですが」

天使「私は天使ですので。その高校の生徒にすることだって出来ますわよ?」

晃「出来んのかよ!!」


先生「あーー、急な話だが転校生だ」

晃「どうも、瀬河晃です。趣味は無し、特技も無し。将来の夢は縁側で茶すすることです」

先生「どうも瀬河君は古い夢を持ってるね。じゃあそこの女の子の隣の席ね」

晃「……よろぴく」ピース

女「………なにいってるの?」


先生「おーい、雨神。隣になったんだ後で校内案内でもしなさい」

美園「……チッ!なんで私が」

晃「俺が隣だからだろ」

美園「わかってるわよ!!」

晃「……おーこわ」


美園「んで、ここが保健室で、こっちが職員室」

晃「ん、だいたいわかった」

天使「神獣倒したらいなくなるのであんまり関係ないんですけどね~」

晃「うげっ!?天使!!」

美園「はぁ?いきなりなに言ってんのよあんた。バカじゃない?」

晃「おい!人がいるだろうが!!」ボソボソ

天使「大丈夫ですわ。私の姿は貴方か神様、同種族くらいにしか見えませんわ」

晃「あ、そうなの」

美園「ちょっと!!何独り言言ってんのよ!!」

晃「あーー、今行きまーす」

晃「……で、今日一日神獣は現れなかった訳だが」

天使「当たり前ですわ。三分ででてくる時もれば十年も出てこない時もあるかもしれませんわよ?」

晃「うげ、やめてくれ」

天使「うふふ、嘘ですわ。安心してください、近々現れると思いますので」


翌日

晃「(案の定全く解らん)」

晃「(わからん授業は寝る、これ高校生の鉄則っと)」

美園「(転校生、転校二日目の授業で居眠りなんて……はぁ。面倒い。早送り)」



「………グルルルルル」


ジャーネーバイバーイ

晃「さて天使。俺はこれから美園さんを尾行しようと思うのだが、なにか便利なアイテムとかない?」

天使「そんなものあるわけないですわ。地道に、自分の足で追跡してくださいまし」

晃「ちっ!まあいいか。お前の話じゃ今日あたりなんだろ?」

天使「ええ、恐らく神獣が匂いを嗅ぎつけたかと」

晃「素晴らしい嗅覚だな」

天使「神の獣のですから」

美園「(……なんかつけられてる気がする……)」

美園「(いいや、周りを最大まで遅くし」

神獣「グルルルルル!!ウワァァァァァァァオオオオオオオ!!!!!!」

晃「……あれが神獣……!?」

天使「ええ、完璧に匂いを特定されていますが」

神獣「グルルルルルアアアイアアアッッッ!!!!!」

美園「え?」

晃「ちょっ!!……っらああっっ!!右ストレーート!!」

美園「……て、転校生?」

晃「ふう、天使のチカラで強化しただけあるな」

晃「やあ、美園さん。けがはn」バクッ

美園「」

晃「」ブッシャアアアアアアッ!!!

神獣「」もっちゃもっちゃ

美園「き、きゃああああああ!!!!!」

晃「………………っぷはぁっ!!!死ぬかと思った!!」

美園「………え?」

晃「美園さん!!さっさと時間操って逃げよう!!俺を連れて!!」

美園「え、え?」

晃「はやく!!」

美園「わ、わかった!!」

美園「はぁ、はぁ、はぁ………」

晃「おーす、お疲れ様。ジュース飲む?」

美園「……それより……あんた一体なんなのよ……さっきの化け物は?もう、わけわかんない」

晃「俺は君みたいな変な力を持ってる人間。さっきのは神獣、OK?」

美園「……どこをどう理解すればいいのよ」

晃「取り敢えずは目の前であった事すべて信じろ。んで、あのバケモン倒すぞ」

美園「はぁ!?あんた本気でいってんの!?」

晃「……俺は死なない。だから囮にはなるぜ?」

晃「お前だってこんな若い内に人生終わらせたくはないだろ?」

美園「でも……」

晃「いいんだよ、本人がいいって言ってんなら」

晃「ーー、それが神獣の大まかな説明。俺の事については口止めされてるから言えない」

天使「あんまり別の世界からきたなんて言うものじゃありませんからね」

美園「………わかったわ。あんたが囮になって私が止めを刺す、これでいいのね?」

晃「ああ、よろしくね」

晃「ただいま~」

天使「お帰りなさいませ。もう今日は神獣の気配はしないので大丈夫だと思われますわ」

晃「ふーん、まあなんで俺の家があるんだよって事は言ってもいいかな?」

天使「ええ、しかし返ってくる返答は『天使ですから』ですわよ」

晃「さいですか」

翌日
晃「君の時間を操れる能力で本当に神獣を倒せると?」

美園「いきなり怖い事言わないでよ。そのために今から貴方で試すんじゃない」

晃「ああ、まあどうぞ」


美園「っ!」ダッ!


晃「っ!一瞬」

美園「アアアアッッ!!!」

晃「っぐふぅっ!!!」ピクピク

美園「どうよ!」

晃「と、とりあえず………原理を教えて……」

美園「原理、というか別に難しい事はしてないわ。ただ自分自身の時間を早めてるだけ。走ってる車とぶつかった、みたいな認識で概ね合ってるわ」

晃「……成る程ね、君の能力は自分だけの世界を作り、その中で行動する。だから俺たちが普通に生きてても自分だけ加速する事ができるということか?」

美園「ちょっと違うわね。私は外の世界の時間も操れるわ。さっきのはただの応用」

晃「OK、今のは確かに死ぬかと思った」

天使「晃さん。来ましたわ」

晃「え?」

神獣「グャアアアアアアアア!!!!!!!」

美園「ちょっと!あの神獣、昨日よりも大きくなってるじゃない!!」

晃「……あー、昨日俺が食われたからかも」

美園「責任とって全力で囮になりなさい!!!」

晃「……あーったよ」

晃「天使、神獣って主になにをするんだ」タタタ

天使「ペガサスとかは知ってますわよね。あれも神獣の一つですわ」

天使「あのように自我のない名無しの神獣もいればサラマンダーやペガサスと言った自我を持つ神獣もいますの」

天使「まあ自我のない名無しの神獣と言っても十分の強さを持っていますが」

天使「っと、話が逸れましたわね。主に神獣の仕事は二つ。神によって与えられた使命を全うするか、増えすぎた人間を間引くことですわ」

天使「例えばペガサスの仕事は雷を運ぶことですし、かの有名なノアの大洪水などは神獣によって引き起こされたものですわ」

晃「なるほd」グシャッ


晃「っぷはぁ!!死んだか!!」

天使「ええ、気弾を発射されました」

晃「気弾?」

天使「どんな神獣であってもある程度のチカラは使えますわ」

天使「自分の気を練りこんで発射する弾。それが気弾」

天使「そしてペガサスなど固有の属性を持つ攻撃も全て気弾を元としています」

晃「あの体長三mくらいの神獣だったらどれくらいの威力だ」

天使「……ざっと、本気でやれば核爆くらいではないでしょうか」

晃「………最悪にも程がある」

美園「はああああああっ!!!」ドガッ

神獣「グャアアアアアアアアア!!!!!」グラリ

晃「よしっ!四足歩行が相手なら体勢さえ崩せば」

美園「うらぁっ!このっ!いいかげんっ!転べぇっ!!」トガッ!ゴガッ!ゴゴッ!

神獣「グギャアアアアアア!!!!」ブンッ!


美園「ちっ!反応が速いわね」

晃「時間を操れるって相当便利だよな」

天使「……で、貴方はいつまで不死の男子高校生を演じてるつもりなのです?」

晃「………は?」

晃「何言ってんだ。俺はお前から不死のチカラをもらった、それ以外のチカラなんざ持ち合わせて……」

天使「私達も馬鹿ではありませんわ。本当になんのチカラも持たない者をわざわざ選ぶとお思いで?」

美園「ちょ、ちょっとさっきから何ブツブツ言ってんの?」

晃「………本当、天使には隠し事できねぇな」

天使「当たり前ですわ。天使を何だと思っておりますの」

晃「あー、さいですか」

晃「美園さん。済まないけど俺と神獣だけ時間を操作して普通の時間から隔離してくれないかな」

美園「え!?死んじゃうよ!」

晃「あはは、大丈夫。不死だって」

美園「っ!それでも!!」

晃「安心して、隙があったら全力をぶち込んで欲しい」

美園「でもっ!」

晃「お願いだ」

美園「………っ!どうなっても知らないからね!」



晃「あはは、ありがとう」

晃「よお、神獣。見たとこ狼の形してるって事はフェンリルか何かの類か」

神獣「グルルルルル」

晃「ほら、かかって来いよ」チョイ チョイ

神獣「グャアアアアアアアアア!!!!!!!」バッ!

晃「ーーー『不平等』」

天使「っ!」ゾクッ

神獣「!?!?」

晃「どうした?自慢の牙が片腕で止められるのがそんなに驚いたか?」

神獣「っ!!!」

晃「口を閉じようとしても無駄だぜ。なんたって俺が抑えてるんだから」

天使「晃さん……それは、一体?」

晃「なんだ、俺のチカラを知らなかったのか?」

晃「『不平等(イニクワリティ)』自分に対する不平等なことを抑えつける能力」

晃「この場合俺には持たない圧倒的な強さを抑え込んだ」

晃「そして、俺にはないその防御力」








晃「不平等だぜ?」

美園「………あ」

晃「ふう、ありがとう美園さん」

美園「そ、その首は……」

晃「ああ、神獣の首。ねじ切った」

美園「ど、どうやって……」

晃「あはは、秘密」

晃「じゃあね美園さん。いろいろ、楽しかったよ」

美園「ちょっ!どこに!」

晃「さぁ?俺だってどこに行くのかはわかんないよ。けど、」

晃「……一歩を踏み出しな、世界はきっと美しい」

美園「?」

晃「あはは、俺が好きな言葉だよ。………じゃあね」パシュッ


天使「さて、次の世界はどこでしょう?」



続く

覚えてくれている人は果たしているのだろうか。
三年前のこのssは私にとって非常に心残りの作品だった。だから再開する今、あえて過度な修正は加えなかった。なぜならこれは、あの三年前に止まってしまった世界だから。
そして、この世界をあのまま風化させるのは、私の中の情熱が許さなかった。
止まった針は動き出す。灰色になった世界が色づき始める。
だから私はもう一度この物語を綴ろう。この世界を歩き出そう。

きっと、美しい世界が待っていると信じて。

一クラス七十億人の教室で

私だけが特別時間割

ーー雨神美園

天使「初めての神獣退治、お疲れ様でした。ご感想は?」

天使「と言っても本当に呆気なく倒してしまいましたわね。正直驚きでしたわ」

晃「俺の『不平等(イニクワリティ)』は相手の優位性を抑え込んで自分を優位に立たせる能力だからな。呆気なくて当然だ」

晃「その代わりちゃんと制限がある。一つ、相手に直接触れないといけない。二つ、自分より優位でないものは抑え込めない。そして三つ、自分が不平等だと感じないといけない」

天使「あら、意外と制約が多いんですわね。鋭すぎる刃は己をも傷つける、というわけですわね?」

晃「ま、単純な話そういうこった。さっきみたいに俺にはない身体能力なら完全に抑え込めるが、例えば相手が同じ能力者だった場合俺はその能力を抑える術はない。何故なら俺が既に能力を持っているからだ」

天使「相手の能力を抑えたいなら相手より自分の持つ能力の数が少なくてはならない。しかし普通能力は一つしかないから不可能……ということでよろしいですか?」

晃「That's right」

天使「自分より強ければ強い程勝率が上がり、自分より少し弱い程度の相手が天敵……。なかなか難儀な身の上ですこと」

晃「まっ、今じゃあちゃんと折り合いをつけてるから心配することはねーよ」

天使「心配などしておりませんわ。意外と自惚れがお強いんですのね」

晃「へーへー、さいですか」

天使「……その相手を小馬鹿にした態度はいつか改めた方がよろしくてよ?」

天使「さて、そろそろ時間ですわ。次の世界の重要人物の名前は鳳凰院由那。能力は半径三km以内にいる人間を無差別に不幸にする能力ですわ」

晃「なんじゃそら。歩く不幸製造機じゃねぇか。俺よりよっぽど難儀だぜ?」

天使「それだけではありませんわ。このような強力すぎる能力者の肉。神獣達が黙って見ているはずがありません」

天使「不平等だけでもいいあなたに不死を与えた理由の一つがそこですわ」

天使「能力者の肉には家畜の肉と同じくランクが存在します。その中でもあなたのように非常に強力な能力者の肉はかなりの高ランク。あなたを食べた神獣が1日程度であれだけ成長したのもその所為ですわ」

天使「そして高ランクの肉の共通点、それは能力の純正。そこであなたには不死の能力を与え純度を下げているわけですわ」

晃「成る程な。考えたくないが俺が不死じゃなかった場合あの神獣はどれだけ成長していたと思う?」

天使「恐らく……知能を持ち、属性を自覚する……だけでは止まらなかったでしょうね」

晃「おー、コワ。精々喰われないように頑張ってくるわ」

天使「はい、お気をつけて」

パシュッ

晃「さて、えらい広い敷地だな。豪邸豪邸」

晃「名前からだいぶ予想はしてたけど凄いな、これは」

黒服「貴様!そこでなにをしている!!」

晃「あ、あなたここの人?俺は瀬河晃っていうんだが、何か情報とか入ってない?」

黒服「瀬河……晃……ああ、お嬢様の新しいご友人か」

黒服「こっちだ、ついて来い」

晃「うーーす」

晃「天使、なんだよ新しいご友人って」

天使「広間で待たされて暇なのはわかりますが大声で呼ばないで欲しいですわね。変人に見られますわよ?」

晃「しるかよ、旅の恥はかき捨てって言うだろ」

天使「まあいいですわ。ここのお嬢様の鳳凰院由那は能力のせいで親を亡くし、身の回りに起こる不幸を恐れて友達がいませんの」

天使「それに気を揉んだ執事が高い給料を払って友人になってくれる人を募っているのですが」

天使「不幸のチカラの所為で次々とやめて行く、ということですわ」

晃「……不憫だなぁ」

執事「貴方がご友人の瀬河晃様ですね。先程はこちらの手違いでとんだご無礼をば……」

晃「あー、別に気にしてないです。で、お嬢様はどちらに?」

執事「こちらでございます」



晃「……はー、表から見えた塔はここなのか」

執事「お嬢様たってのご希望で、見晴らしの良い場所に自分の部屋を作れ、と」

晃「それにこの距離だと屋敷は能力の範囲外、ってことなワケか」

執事「はい?どうかなされましたか瀬河様」

晃「ああ、いや。なんでもない。ただここから見る屋敷もオツなものだなーと」

執事「はぁ……左様でございますか……」

執事「お嬢様の部屋はこちらです。……それでは、私めはこれで……」

晃「はいはい、ご苦労様。足元気を付けてね」

執事「……瀬河様」

晃「ん?なんだ?」

執事「お嬢様の事を、どうか宜しくお願い致します」ペコリ

晃「……ああ、任せておいてください」



天使「綺麗なお辞儀でしたわね」

晃「それだけお嬢様を大切に思ってるってことだろ。執事の鏡だよまったく。カッコつけてタメ口きいてた自分が恥ずかしいったらないぜ……」

天使(あなたみたいな人でも後悔や恥はあるんですわね……。いや、この場合は相手に対する敬意不足に対する申し訳なさですか……?)

申し訳ない。今少し立て込んでいて書くのに時間がかかりそうだ。
だが、ちゃんと構想は練ってある。偶に寄って目を通す、そんな所だと割り切って待っていてくれると嬉しい。

晃「そんじゃ入りますか」

天使「お気をつけてくださいまし。保護対象が必ずしも自分に友好的であるとは限りませんので」

晃「ああ、迂闊に機嫌損ねて能力使われたら洒落にならん。相手の出方を見つつ話を合わせていく、って所だな」

晃「よし、行くぞ」ドアガチャ

ガンッ!

「ふぎゃっ!」

天使「……さて、なんでしたっけ?相手の出方を伺って?」

晃「うるせえ!ドアが内開きなのが悪いんだろうが!」

晃「っつーか内開きなのにドアの前でスタンバってるとかわかるか!」

???「っつー……!な、何すんじゃこのアホ!もうちょっとゆっくり開けんか!」

???「しかも一人でぶつくさ言いおって。なんぞ、今度の奴は頭が弱いのか!」

晃「……」

天使「あら、どうしたんですの?まるで口いっぱいの苦虫を噛み潰したような顔ですわね」

晃「いやぁ、思ってたキャラと違うというか……。いや、なんでもねぇ」

晃「……あー、すまなかったな。まさか立ってるとは思ってなかった。こちらの注意不足だった」

???「ふん、わかればいい。わかれば」

???「で?お前が新しい私の『友人』か?」

晃「ああ、どうもそうらしいな。さっき説明があった。これからよろしくな、えっと……鳳凰院、由奈。であってるか?」

鳳凰院「はっ!さぞ楽だろうな!私とこうやって話してるだけで金が貰えるのだからな!!どうせ貴様みたいな頭の弱い奴はこうでもしないと金が手に入らなかったのだろう?」

鳳凰院「だが残念だったな。今まで私の『友人』を文字通り買って出た奴らは全員不幸に見舞われた。ん?どうだ?少しは自分の愚かさを自覚したか?」

天使「……だいぶ性格に難あり、と言ったところですわね」

晃「そうか?親も死んで一人で引きこもってたら大体こんな感じだろ。それで性格に難なしだったら逆に怖いね」

鳳凰院「まーたボソボソ一人でおしゃべりか。なんぞ、そこに見えない何かが居るとでもいうのか?愉快な脳みそじゃな」

天使「人前では小声でも私と喋るのは控えておいた方が良さそうですわね……」

晃「テレパシーとか使えたら便利なんだがな」

鳳凰院「無視すんな!」

晃「さて、鳳凰院。そろそろなんかして遊ぶか。ゲームとかないの?」

鳳凰院「ないな。私の傍に電子機器を置くと遅かれ早かれ故障する。遅かれと言っても一般的には早すぎるがな」

晃「……いつもは何してんの?」

鳳凰院「ここから外の景色を眺めたり、絵を描いたり、本を読んだり、人形で遊んだりだな」

鳳凰院「ああ、そこの鉛筆や筆を置いてるところには迂闊に近寄るなよ。何人かはそこでこけて目に突き刺さったからな」

晃「……」


執事「それでは、ごゆっくり……」

晃「まさか鳳凰院の家に泊まり込みになるとは」

天使「これも天使パワーの為せる技ですわ。感謝してくださいまし」

晃「ああはいはい。ありがとさん」

晃「……さて、一時はどうなることかと思ったがまあ、ファーストコンタクトとしてはまずまずと言ったところか」

天使「未だ神獣の気配はありません。うまく交友関係を築き戦闘のサポートをして貰えたら御の字ですわね」

晃「話を聞く限り確かにあいつの能力は強力だが……。範囲内にいれば無差別だろ?博打が過ぎると思うがね」

天使「まあまだ時間はあります。今日はお疲れのようですしゆっくりとお休みくださいまし」

晃「ああ、おやすみ」

週末には再開する

今日は、新しい『友人』が来た。

なんか

今日は新しい『友人』が来た。

どうせ金目的で来た奴だろう。すぐに辞めるに決まっている。

あと明後日の方を向いてボソボソと喋るのは気味が悪い。なんでこんな奴がのうのうと生き、母様と父様が死ななければなかったのだ。

今までの最長記録は一週間と四日だったが、今回はどれだけ持つだろうな。予想は……三日とみた。

友人生活二日目

鳳凰院「どうやら貴様はこの家に泊まり込みのようじゃな」

晃「ああ、学校も辞めたからな。『ご友人』として精一杯尽くすつもりだ」

鳳凰院「はっ!よく言うわ。どうせその愉快な脳みその所為でうまく馴染めず辞めたのじゃろ?」

晃「ちげぇよ。ちょっとした家庭環境の変化があったんだっての。おら、今日は何する?なんだったら俺の学園生活のお話でもしてやろうか?お前学校行ってねぇだろ」

鳳凰院「ぐ……っ、中退が生意気な……!」

晃「ケッケッケ、中坊のクセに生意気だぜぇ?」

今日は『友人』から学園生活の話を聞いた。

どうやら友人はあまりいなかったらしい。予想通りではあったが。

大勢の人間と一緒に同じ空間で一日の半分近くを過ごすのは私にはできないことだった。小学校の時は次第にいなくなっていったからな。

さて、予想では明後日の朝から奴が来なくなるが……。どうなるか楽しみだ。

友人生活三日目

鳳凰院「……そんなにジロジロ見るな。なんぞ、言いたいことがあるなら言えばいいじゃろ」

晃「いや、綺麗な髪だなと思ってな。真っ白だが、染めてるのか?」

鳳凰院「まさか、地毛じゃ。昔は黒かったがいつからか真っ白になった」

晃「ふぅん……。なんかどっかのギャングスターみたいだな」

鳳凰院「何の話じゃ」

晃「んにゃ、こっちの話だ。気にすんな」

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