男「俺は絶対に歩きスマホをやめねえ!」 (18)
男「いてて……」ズキズキ…
友「どうした?」
男「あれ? お前、さっき会わなかったっけ? なんでここに?」
友「それより、そのケガどうしたんだよ」
男「ああ、これか? 電柱に頭ぶつけちゃってさ」
友「そりゃまたずいぶん古典的なドジをやらかしたな。考えごとでもしてたのか?」
男「実は歩きスマホをしてたんだよ」
友「ああ、そういうことか」
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友「歩きスマホはやめた方がいいぞ。事件や事故もちょくちょく起きてるしさ」
友「次はタンコブじゃ済まないかもしれないぞ」
男「いや、俺は絶対に歩きスマホをやめねえ!」
男「なにしろ、この世に歩きスマホほど楽しいもんはねえからな!」
男「歩きながら知り合いとやり取りしたり、掲示板や動画を見たりするのは最高さ!」
男「スマホどころかガラケーすら持ったことないお前には分からないだろうけどな」
友「……分からないな。たしかに」
男「とにかく、俺は安全に歩きスマホできる方法を探してみせる!」
男「そして、誰にも文句をいわさず、堂々と歩きスマホしてやるんだ!」
それからしばらくして――
男「よう!」
友「おう」
男「お前は俺が用がある時、たいてい近くを歩いてるからありがたいよ」
友「用? オレになんの用だ?」
男「実はさ俺、安全に歩きスマホできるよう、体を改造したんだよ」
友「体を……改造……?」
男「たとえばほら、体内にセンサーを内蔵したんだ」
男「これにより、近くに障害物があればすぐにアラームがなって知らせてくれるんだ」
男「もちろん、俺にだけ聞こえる音でな」
友「へぇ~」
男「これなら、歩きスマホをしてても電柱や他の通行人とぶつかる心配はないだろ?」
友「だけど、それでもよけられないってケースはあるかもしれないぞ」
男「もちろん、そういう場合のこともちゃんと考えてある!」
男「どうぶつかってもいいように、体中に最新鋭の衝撃吸収材を埋め込んだんだ」
男「だから万が一ぶつかっても、俺にも相手にもケガはなくて済むって寸法だ」
友「おお、たしかに弾力がちがう。これならぶつかっても平気そうだ」ツンツン
友「でもさ、歩きスマホで事故が起こる原因ってのは」
友「結局スマホの内容に目がいっちゃってるからだろ?」
友「そこをどうにかしないと、根本的な解決とはいかないんじゃないか?」
男「ふっふっふ、目か……。それについてもちゃんと考えてあるさ」
男「ジャーン!」ギョロッ
友「うわっ! 額に……第三の目……!?」
男「そう! この目があれば、スマホを見ると同時に前を見ることができるんだ!」パチパチ
友「めっちゃまばたきしてる……」
男「これなら、スマホを見てたせいで前を見てなかったなんてことはなくなる」
友「はぁ~、なるほど」
友「……しかし、まだ問題は残ってるぞ」
友「いくら前方とスマホを同時に見ることができたって」
友「人間には“集中力”っていう問題がある」
友「集中力が二方向に分散してたら、結局危ないことに変わりはないんじゃないか?」
男「ご心配なく。それについてもすでに俺の体は解決済みだ」
男「実は……今、俺の頭ん中には二つの脳みそがある」トントン
男「今までの脳みそと、スマホを見る用の脳みそがな」
友「え!?」
男「これに関しては、結構苦労したけどな。けど、なんとかなったよ」
男「おかげで俺はスマホと前を見る、両方に集中できるようになったってわけだ!」
友「すっげえなぁ……」
男「つまり俺は、たとえよそ見してても障害物にはいち早く気づくことができ」
男「人とぶつかってもケガをすることもさせることもなく」
男「なおかつ前とスマホを同時に見て、しかもそれをちゃんと情報処理できる……」
男「完全無欠の『歩きスマホ対応人間』になったわけだ!」
友「ううん、すごい……たしかに完全無欠だよ」
男「これを伝えたかったんだ」
男「それじゃな! 俺はこの体で、歩きスマホを楽しんでくるぜ!」スタスタ
友(センサーと衝撃吸収材と第三の目ともう一つの脳みそ、か……)
友(歩きスマホってのは、あそこまで自分を改造してでもやりたいものなのかねえ)
友(うーん、やっぱり理解しがたいものがあるな)
友(……だけどオレも似たようなもんか)
友(オレはオレでスマホやケータイの類を持ちたくなく、かつ不便もしたくないからって)
友(記憶や経験を共有できるクローンを何百体も作って)
友(オレという存在をあちこちに同時に存在させてるからな……)
友(ちなみにオレはクローンNo.251だ)
おわり
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