聖來「星と車とバーニングハート」 (166)
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アイドルマスターシンデレラガールズのSSです。
アイドルのプロダクション加入時期はモバマスに忠実ではないです(先輩、後輩関係)
また、アニメの世界線ともずれています。
肌に合わないと思われたらそっと画面を閉じてください……
書き溜めてありますのでガンガン投下していきます。
ちなみに前作はこちら
(1話)モバP「花と旅行とそばかすと」
モバP「花と旅行とそばかすと」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1413296228/)
(2話)芽衣子「犬と笑顔とダンシング!」
芽衣子「犬と笑顔とダンシング!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1429438165/)
(2.5話)凛「ハナコ・メイコ・わんこ」
凛「ハナコ・メイコ・わんこ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1433764608/)
内容として繋がってますが、
・主人公は芽衣子。誰が何と言おうと芽衣子。
・芽衣子のプロデューサーはモバP。
・他にCu、Co、Paの各Pがいる。
くらいを押さえておいてもらえれば問題なく読んでいただけるかと。
では、しばしの間、お付き合いいただければ幸いです。
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SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1447502988
前回までのあらすじ
モバPと芽衣子のもとへ、聖來が仲間に加わった!
石川県で行われる、レースサーキット開設記念イベントに参加するぞ!
石川県 県道
芽衣子「んーっ、いい天気!」ノビー
聖來「ほんとだねー、雲ひとつない青空で……あっつー……」パタパタ
未央「まだ6月なのにねー」
茜「熱いです! 燃えますね!」
モバP「ほんとになぁ……」
PaP「車さえ故障して立ち往生してなきゃあ、ピクニック日和なんじゃがのう……」
モバP(芽衣子と聖來、二人でユニットを組み、挑んだイベントのオーディション)
モバP(場馴れした聖來はともかくとして、初めてのオーディションでも堂々と……というか、ふてぶてしく? 笑顔のパフォーマンスで見事役を勝ち取った芽衣子)
モバP(イベントを明後日に控え、車で現地まで向かっていた訳なんだけれど)
PaP「こんなことになりよるんなら、新幹線でも使ったほうがよかったかいのう」
モバP「車の故障で立ち往生とは、ついてないというか、なんというか……」
モバP「正直、列車移動の方が楽だろうと思ったんですけど……」
ちひろ『どうせ衣装は車で送ることになりますし、一緒に乗って行った方がいいんじゃないですか?』
モバP「……経費節減って、便利な言葉ですよね……」
PaP「ちひろも、あの強欲をどうにかせんと、嫁の貰い手も――」
ちひろ(貰い手も、なんですか?)ニッコリ
PaP(天使、女神、ちひろ!)
モバP(ちひろさん!? 東京にいるのに!?)
PaP「ごほん。まあ、言ってても仕方ないしのう。未央、茜も、きちんと帽子被っとけ」
モバP「芽衣子と聖來もな。この炎天下、車の中にいたんじゃ熱中症も怖いし」
芽衣子「わかってるって、車の外で風浴びてた方がいくらか涼しいもんね」
聖來「でも、立ち往生は正直勘弁だけど、いい季節になってきたよね」
未央「おっ、セラセラ、話がわかるー♪」
芽衣子「あ、未央ちゃんも夏が好き? なんか凄くわかるかも!」
未央「ふっふっふ、わかるかね芽衣子隊員。まぶしい太陽、輝く日差し、白い砂浜に弾ける水滴! 夏こそは、この本田未央ちゃんのナイスバディーが一番に輝く季節なのですよ!」
芽衣子「よっ! 流石未央隊長!」
芽衣子(今さらだけど、未央ちゃんは私と同じくパッショングループの大人気アイドル)
芽衣子(凛ちゃん、卯月ちゃんとニュージェネレーションを結成していて、今ではグラビアにバラエティーに演劇にと大活躍中!)
聖來(ちなみに、隊長ごっこはなんでなの?)
芽衣子(パッションのノリ!)
聖來(うん、納得)
茜「いいですよね、夏! 汗をかいて、燃えて、燃えて、燃えていきましょう! ファイヤー!」
聖來「あ、茜ちゃんはもう少しクールダウンした方がいいんじゃないかな? ほら、ランニングするにはあまり向かない季節だし」
芽衣子「脱水症状には気をつけないといけないから、ね?」
未央「茜ちんが燃えると、体感温度が5度くらいあがるよねー」
PaP「茜は相変わらずじゃのう……熱血だけでのうて、もっと幅を広げさせてやりたいんじゃが」
モバP「それは……なかなか難しそうですねぇ……」
PaP「そういやぁ、芽衣子、聖來、お前さんがた、ユニット名は決まったんか?」
聖來「あー……」
芽衣子「それが……」
PaP「なんじゃ、まだ決まっとらんのか」
茜「ユニット名! どういうことですか!?」
モバP「ああ、実は……」
三日前 CGプロ事務室
芽衣子「ユニット名?」
聖來「アタシと芽衣子の?」
モバP「そう。今回のイベント、主催者側が好意的なんだ。盛り上げてくれるなら、どんどん宣伝してくれて構わないって」
モバP「地方のイベントではあるが、せっかくの機会だ。まだデビューってわけじゃないが、二人の名前を知ってもらういい機会だろ?」
芽衣子「そのために、私達で組むユニットの名前を決めたいんだね!」
モバP「そういうことだ。俺の方でもいくつか考えておくけど、二人がこれがいいっていうのがあれば、そのほうがいいだろうしな」
聖來「オッケー、二人で考えとくよ」
芽衣子「うん!」
未央「へー、なるほどー。私もニュージェネのユニット名決めるときは苦労したなー」
芽衣子「そうなんだ、ちなみにどうやって決めたの?」
未央「私と、しぶりんとしまむーと、皆でホワイトボードが一杯になるくらい意見を出し合って……でも結局、プロデューサーの案に乗ったんだよね、しっくりきたし」
聖來「プロデューサーって、PaPさんの? 卯月ちゃんはCuPさんだし、凛ちゃんはCoPさんだし」
PaP「いや、まあ、こっちも三人で意見を出し合っての……」メソラシ
モバP(全然話がまとまらず、とりあえずこれでその場を凌ごうと苦肉の策で提案した名前が望外に気にいられたって裏話は黙っておこう)
未央「それでそれで? 二人も、何か案はあるんでしょ?」
芽衣子「うーん、最初は、聖來と芽衣子で頭文字をとって、SMダンサーズとかどうかなって提案したんだけど、」
モバP「却下だ却下! 確かに頭文字つなげるとそうだけど、色々誤解されるから!」
茜「誤解!? なにがですか!?」
聖來「あ、茜ちゃんは知らなくていい事だから……」
未央「あ、あはは……」
茜「モバPさんはどうなんですか!?」
モバP「こういうのって、ほんとセンスがいる仕事でな……」トオイメ
芽衣子「えーっと、プロデューサーの案だと、ツインダンシン、水と木の踊り子、それから……」
未央「うわぁ……」
モバP「止めてくれ芽衣子、センスないのはわかってるんだ」
聖來「とどめを刺すわけじゃないけど、センスうんぬん以前の問題だと思う」
未央「あんまり悩み過ぎない方がいいんじゃない? 安直って思えるくらい、ストレートな方がいいかもよ?」
聖來「うーん、ストレートにか……」
モバP「ぬぬぬぬぬ……」
PaP「それはそれとして、まだJAFは着かんのか?」アツイ……
モバP「なんか、タイミング悪く、どこも手一杯みたいで。もうしばらく時間がかかるそうですよ」
PaP「しゃあないのう……いつまでもこいつら、炎天下に放り出しておくわけにもいかん。モバP、車はわしが見とるから、タクシーでも呼んで送って行って……ん?」
ガタゴト、ガタゴト、ガタゴトと。
県道を下ってやってきたのは、工具を積んだ一台のトラック。
道路脇に車を止めて降りてきたのは、ごついトラックの印象とはかけ離れた――
「こんにちわっ!」
ポニーテールの、明るく元気な女の子。
「みっつぼし、ぱってはーじけて、とーびのって、りゅーせー♪」
会社のトラックに備え付けのオーディオプレイヤー。
最近、ここに入っているのは大体この曲。
おもに、あたしがいれているせいだけど。
「きみと、ゆめと、あいを、めざしゆーくよ、いまーすぐー……ん?」
ふと目に留まったのは、立ち往生している一台のバン。
「何なに? 車の故障かな?」
にゅっと持ちあがった好奇心のまま、トラックを止めて、声をかけた。
それはきっと、素敵な偶然だったのだと思う。
女「どうかしました? もしかして故障ですか?」バタン
モバP「え、ええ。はい」
女「ふーん……」スタスタ
モバP「あの、ちょっと?」
女「あの、よければあたしが見ましょうか?」
PaP「ん? 修理できるんか、お嬢さん?」
女「これでも車の修理工場に勤めてますから。流石に、部品の交換が必要だと手が打てないですけどね」
モバP「えーと……いや、JAFもなかなか来ないし、助かりますけど……」
女「じゃ、ちょっと失礼してっ!」ガチャッ!
未央「……プロデューサー?」
PaP「いや、まあ……助けてくれるといっとるんじゃし。お言葉に甘えるとしようや」
茜「いい人ですね!」
モバP「私ら、運転は出来ますけど、整備はからっきしですしね……ん? 芽衣子に聖來?」
芽衣子・聖來「……」トコトコ
女「んー、バッテリー関係じゃないみたいだねー。エンジンもおかしなところはなしっと」
芽衣子「あのー」
女「ん? なんですか?」
芽衣子「車、詳しいんですか?」
女「あ、はい! 好きなんですよ、車やバイクをいじるの。仕事ですけど、趣味みたいなもので」ニコニコ
聖來「へー……」
女「ちょっと運転席失礼しますね。エンジンは……かからないっと。メーターが調子おかしいのかな?」
芽衣子「よくわかるねー、すごーい。私、機械は全然駄目だよー。聖來は?」
聖來「アタシも苦手かなー。DVDデッキの配線とかも訳分からなくて」
女「あー、でもそれわかるかも! あたしも部屋のテレビの配線とかはお兄ちゃん任せだし」
芽衣子「そうなの? でも、最近はカーナビでもテレビ見れたりしない?」
女「カーナビのワンセグ設定ならお任せだよっ!」エヘン!
聖來「ふふ、それでも部屋のテレビは駄目なんだ」
女「あはは、そう言われれば変かも。でも、好きなものは何とでもなるっていうのかな」
キャイキャイ
モバP「……あいつらなにやってんだ?」
PaP「相変わらず、芽衣子の初見の相手とのコミュニケーションの上手さは目を見張るものがあるのう」
未央「んー……それにしても、すんなりいきすぎのような……」
モバP「それはそれとして、せっかく見てもらっているのに、邪魔しちゃ駄目だろ……」ハァ
モバP「おーい、二人とも! 邪魔しちゃ悪いだろ! せっかく見てもらってるのに」
聖來「あ、そうだね、ごめん、邪魔しちゃって」
女「ああ、大丈夫ですよ、原因分かりましたし」
芽衣子「えっ、もう!? すっごーい!」
女「えへへ、それほどでも……あるかな!」エッヘン!
モバP(あれ、ほんとに何でこんなに打ち解けてるんだ?)
モバP「それはそうと、原因って?」
女「ああ、ガス欠です」
PaP「ガス欠ぅ!? じゃが、メーターはまだ半分以上残っとるじゃろ?」
女「メーターが壊れちゃってるみたいなんです。だから、無くなりかけてるのに気がつかないまま走り続けて、ガス欠に」
モバP「参ったな……」
茜「ガス欠ですか!? それは一体……!?」
未央「お腹がすいて力が出ない~ってことでしょ」
茜「なんと! それは一大事! 私のお昼のおにぎりをどうぞ!」
未央「……ええっと、さすがに茜ちんなりのボケだよね?」
女「あはは……携行のガソリンとかあります? 他には問題ないみたいだし、給油すればとりあえずは走れますよ」
PaP「積んどったか? そんなもん」
モバP「いや、ないです」
芽衣子「もー、モバPさん、常にいざって時の事は考えとかなきゃ! 旅の心構えがなってないよ!」
モバP「……その通りかもしれないけど、芽衣子に言われると釈然としないなぁ……」
芽衣子「ええっ、なにそれ!?」
聖來「ふふふ、芽衣子、大まかな計画しか立てないで旅行行くイメージだしね」
芽衣子「そ、そんなことないヨー?」クチブエー
モバP(図星か)
聖來(図星ね)
女「ふふふっ」
女「あ、それなら、あたしの車に積んであるガソリン使ってください」
モバP「え、いや、それは――」
芽衣子「いいの!? ありがとー!」
聖來「助かるよ。足止め食らって、ほんと、この暑さで参ってたし」
女「困った時はお互い様、でしょ? それにあたしも、こんなところで車が立ち往生しているの、放っておけないしね!」フンス!
芽衣子「えへへー」
聖來「ふふふ」
女「え? どうしたの?」
芽衣子「んーん、ほんとに車が好きなんだなって! ええっと――」
女「あ、あたし? あたしは――」
美世「原田美世っていいます。美世って呼んでください」
芽衣子「私、並木芽衣子! で、こっちにいるのがモバPさんで、」
聖來「水木聖來。聖來でいいよ、よろしく」
美世「うん、よろしく!」
モバP「……」ポカーン
PaP「……あー、ほんとにええんか? いや、そりゃ助かるが」
美世「ええ、もちろんですよ! そうだ、よければ、車もうちの整備工場に預けていきませんか? もちろん代金は頂きますけど、数日もらえれば直せると思いますよ」
モバP「ええ? あーいやまあ……」
未央「断る理由は無いんじゃない? 数日だったら、こっちにいる間に直るだろうし、渡りに船じゃん」
PaP「まあ、そうじゃのう……そうしたら、そっちもお願いできるかの」
美世「はい! じゃ、ガソリン入れたら、あたしの車の後についてきて下さい。整備工場まで案内しますから!」
ということで、原田美世ちゃんの登場です。
はい、彼女もまた、主人公です。
画像張ったりもしたいのですが、準備が間に合わず……今日中に最後まで投稿したいので、このまま続けます。
10分後 ワゴン車内
PaP「いやー、しかし、いいところにいい人が通りかかったのお」ブロロン ブロロン
モバP「ほんとですね。それにしても……」
未央「めーちゃんもセラセラも、ほんと完璧に美世ちーに意気投合してたね」ヒョイ
茜「はい! 長年の友人みたいでした!」
モバP「だなぁ。今もあっちの車に乗せてもらってるし」
PaP「楽しそうに話しとるが……運転中に余所見はしとらんじゃろうの?」
同時刻 トラック内
美世「じゃ、芽衣子は旅行であっちこっちいってるんだ?」
芽衣子「うん、でも石川県は初めてで……ねー、美世のお勧め観光スポットってどこかある?」
美世「あたしのお勧め? じゃあ、まずは自動車博物館かな! 国内外のクラシックカーが時代を超えて勢揃いしてるんだけど、一番いいのはどれもちゃんとエンジンがかかるところでね! 単なる展示品じゃなくて、きちんと整備されてるところが好感度大なんだよ!」
美世「あとは、車で走るなら千里浜のなぎさドライブウェイがお勧め! 日本海を眺めながら海岸沿いをドライブできて、ほんとに気持ちいいんだから!」
芽衣子「へぇぇぇぇ、いいなぁ、楽しそう……!」ワクワク
聖來「……でも、石川県なら、有名どころで金沢城とか無かったっけ?」
美世「えっ? あー、えっと、うんほら、有名どころなら芽衣子は抑えてそうだったから、あえて、ね?」
聖來「ふふふふふ、ほんと車好きなんだね」
芽衣子「うんうん、さっきは目がきらきらしてたよ!」
美世「あ、あはは……やっぱり、珍しいよね、女の子でこういう趣味って」
芽衣子「そうかもしれないけど、でも凄く素敵だと思う!」
美世「えっ?」
聖來「うん。さっき車を見ていたときも、凄くいい笑顔してた」
美世「そ、そうかな?」
芽衣子「うんうん、まさに引き込まれちゃうような笑顔だったよ!」
美世「そ、そんなことないって……もうっ」ハニカミー
芽衣子(照れてる美世可愛い)ニコニコ
聖來(はにかみ笑顔可愛い)ニコニコ
美世「そ、それより、二人はいつまでこっちにいるの?」
芽衣子「えーと、明後日までは泊り予定だったよね?」
聖來「そうだよ、芽衣子が一番はしゃいでたじゃない。覚えてるでしょ?」
美世「じゃあさ、もし予定が無くてよかったらなんだけど、明後日、一緒にイベント行かない?」
芽衣子「え?」
聖來「ん?」
美世「……あれ?」
美世「えーと、明後日、新しく建設されたレースサーキットのお披露目イベントがあって、私もそこに行くつもりだったの。二人さえよければ、一緒に行ければ楽しいなって思ったんっだけど……何か予定とかはいってる?」
芽衣子「予定というか……聖來。言ってなかったっけ?」
聖來「そう言われると……言ってなかったね」
美世「え? なにが?」
聖來「アタシたち、そのイベントの出演者なの」
美世「えっ?」
芽衣子「一応、私達アイドルの駆け出しなんだ。それで、イベント中のステージに出ることになってるの」
美世「……そ、そうなの? てっきり、旅行に来ただけかと思ってた……確かに、なんか変な取り合わせだったもんね」
聖來「まあ確かに、家族連れって面子じゃないよね」
芽衣子「えへへ、私と聖來、二人の初舞台なんだ! 今から楽しみで楽しみで……!」ワクワク
美世「そっか、そうなんだ……じゃあ、私も応援に行くね!」
聖來「うん、ありがと!」
美世「そっかー、アイドルかー……」
芽衣子「美世はあまり興味ないの?」
美世「ううん、そんなことないよ? そこまで詳しいわけじゃないけど……ほら、これ」
カーオーディオ ピッ!
~♪ 燃やせ! 友情パッションは ~
芽衣子「あ、ミツボシ☆☆★!」
美世「わかる!? これ、凄く好きなんだ。気分が高揚してくるでしょ、高速でこれをかけながら熱唱しつつ、飛ばして走るのが爽快で!」
美世「実は明後日のイベントも、本田未央ちゃんが来るっていうから、半分以上そっちが目当てなんだよね。整備工場のみんなには、あたしが車よりもアイドル目当てなんて、雪どころかスパナが降るとか言われたけど」
聖來「……あれ?」
芽衣子「……えーと……」
美世「……い、意外かな。まあその、最初に未央ちゃんに興味を持ったきっかけも、整備工場の若い人が――」
~回想~
工場、お昼休み中
工員『でよ~、どうよ最近、いいのある?』
事務員『俺は断然、本田! 本田未央のミツボシ☆☆★がお勧め!』
美世『なになに? 車の話かな?』ニュッ!
工員『えっ?』
美世『車買うの? ホンダ? 三菱?』
事務員『えっ??』
美世『……あれ?』チガッタ……
美世「――ていうのがきっかけだから、あまり正統派じゃないかもしれないけど……でもほんとに好きなんだよ!」
聖來「いや、意外とかそういうんじゃないんだけどね?」
芽衣子「美世、もしかして気付いてない?」
美世「え? いやその……何に?」
聖來「……まあ、ずっと車見てたしね」
芽衣子「そっちに意識が集中してたもんね」
美世「え? 何、ほんとに何の話?」
聖來「まあ、大した話じゃないよ、工場に着いたら話すって」
芽衣子「そうそう、サプライズだからお楽しみにね!」
美世「ええ~……? もう、気になるなぁ~」
キキッ
美世「よーし、ついた! 原田モーターズへようこそ!」
聖來「へぇ、広いガレージだね。ま、工場だから当然か」
芽衣子「原田モーターズ……ってことは、ここ、美世の実家なの?」
美世「うん。あ、おとうさーん!」
「どうした、美世。遅かったじゃないか……ん? お客さんか?」
美世「うん、帰ってくる途中、ガス欠で立ち往生してたから、うちで修理できそうだったんで案内して来たんだ。ああ、この人、あたしのお父さんで、ここの工場長」
原田父「はじめまして。で、立ち往生していたって車は? レッカーしてきたんじゃないのか」
美世「ガソリンの携行缶持ってたから。ガソリンタンクのメーターの故障だけだったから、ここまで乗ってきてもらって……あ、きたきた」
美世「こっちでーす、オーライ、オーライ!」
ピー ピー ピー キキッ
モバP「おお、結構しっかりしてますね」
PaP「そうじゃのう、きちんとしとるところのようじゃ」
未央「おおー、広い! それになんか不思議な匂いがするねー」
PaP「機械油の匂いじゃの」
モバP「女の子にはあまりなじみ無い場所ですかね」
茜「はい!」
美世「運転お疲れ様です、こちらへどうぞ!」
モバP「わざわざ案内ありがとうございました。ええと……」
原田父「ここの工場長の、原田と申します」
芽衣子「美世のお父さんなんだって」
モバP「ああ、それはそれは。シンデレラガールズプロダクションのモバPと申します。娘さんには大変お世話になりまして」
原田父「いえ、まだまだ半人前ですよ。行きあったのは、幸運だったかもしれませんが」
原田父「で、車はそれですか……うちで預かっても?」
PaP「お願い出来りゃあ、ありがたいんですが」
原田父「そういうことでしたら、お預かりしましょう。日取りはちょっと見てみないとはっきり言えませんが……と、ここで待たせるのもなんですね。お連れさんは事務室へどうぞ」
モバP「では……」
芽衣子「あ、プロデューサー! だったら私達、工場の中見学しててもいい!?」
モバP「はあ?」
聖來「車の中で美世に話聞いてたら、おもしろそうだったからさ。せっかくの機会だし」
PaP「あんなぁ。真面目に仕事しとる人の職場に興味本位で首突っ込むんじゃ」
美世「ホント!? 嬉しいなぁ、興味持ってくれる女の人、少ないんだもん! いくらでも案内しちゃうよ!」
未央「あ、じゃあ私も! 探検するみたいで楽しそうだし!」
茜「私もご一緒していいですか!?」
美世「もっちろん!」
モバP「……ええと……」
原田父「……まあ、構いませんが。美世、安全管理には気をつけるんだぞ」
美世「大丈夫、まかせといて! じゃ、みんな、そこにあるヘルメットかぶってね!」
芽衣子「はーい!」
キャッキャ キャッキャ
PaP「……なんか、こう……申し訳ない」
原田父「いえ、構いませんよ。こんな町工場、好んで見学する人もいませんから、驚いただけです」
モバP「はあ……」
原田父「まあ、美世に任せておいてもらえれば大丈夫ですよ。ここはあいつにとって、庭みたいなもんですから」
美世「それじゃあ、こちらへどうぞ! 丁度、今度のレースで走る車を預かってるんだ♪」
未央「およ? それってもしかして今度のイベントに出る車?」
美世「そうそう、今度のイベントレースは、サーキットの開設記念レースだから。グランプリシリーズに出るような人も出てくれるけど、親善試合みたいなものなんだよね」
美世「そこで、地元代表ってことで、有志チームが出場するんだ。これがその車、レッドバロン号! 今、最終調整中なんだよ」
芽衣子「へええ、凄い……!」
茜「この車、速いんですか!?」
美世「うん、公道を走ることは考えてないから、完全にレース仕様だよ。時速130kmは余裕で出るね」
聖來「それは凄いね……ドライバーも大変そう」
工員「お、美世ちゃん、戻ってたのかい! おや、そちらは?」
美世「お疲れ様です! 見学したいっていうので、案内してて。今度のレースでイベントに出るアイドルの……」
工員「……え? うそ、本田未央ちゃん!?」
美世「いやそうじゃなくて……え?」
未央「いやー、流石にばれちゃうかー、未央ちゃんのオーラは隠しきれないなー」メットバサー
美世「……、あれえっ!?!?」
美世「…………穴があったら入りたい…………」
芽衣子「ごめん! びっくりするかなと思って……」
聖來「ちゃんと紹介するつもりだったんだよ? ちょっと遅かったけど……」
芽衣子「日射病予防に帽子もかぶってたしさ、気付かなくても仕方ないって!」
美世「……二人とも!」クワッ!
芽衣子「う、うん」
聖來「な、なに?」
美世「車の中で話した、私がファンになった経緯、未央ちゃんは秘密だからね!?」
芽衣子「あー、うん、もちろん! ええっと、でも、その……」
工員「いやぁ、本物の未央ちゃんに会えるなんて! そうだ、美世ちゃんもファンだって聞いたかい? 経緯が傑作でさ、車のメーカーのホンダのことだと思ってたらしくて――」
聖來「……他の人が積極的にばらしにいっちゃってるんだけど……」
美世「こ、こらーーーーー!!!」
未央「あ、美世ちー! やー。私のファンならそう言ってくれればいいのにー」アハハ
美世「いやそのえっと、あたし、ちゃんと未央ちゃんのファンだからね!」
未央「もー、わかってるって! 気にしない気にしない」
美世「……あれ、その……呆れたりしてない?」
未央「あはは、まあ斬新なきっかけだなーっとは思ったけどね!」
美世「ううう、やっぱり恥ずかしい……」カオマッカ
茜「美世さん! ここに飾ってある写真はどうしたんですか!?」
芽衣子「写真? あ、美世が写ってるね」
聖來「これ、預かっている車と一緒に撮ったの?」
美世「ちょ、ちょっと恥ずかしいな……こんなスーパーカーに間近で触れられる機会なんて滅多にないから、その、記念に一枚、ね?」
芽衣子「へー、ほんとにいい笑顔!」
聖來「スタイルもいいし、見栄えするよね」
美世「もー、さっきからむずむずすることばかり言わないでよー」
茜「……!」
茜「美世さん!!!!!」
美世「きゃっ!? えっ、な、なに?」キーン
芽衣子「ど、どうしたの、茜ちゃん」キーン
聖來「茜ちゃんの大声、耳に響く……」キーン
茜「私に車の事を教えてください!!!」
美世「えっ……え? どういうこと?」
茜「実は、レースクイーンをやるんですが、プロデューサーに、もう少しレースクイーンらしくなれたらいいとアドバイスされまして!」
茜「美世さんみたいに車の事を好きになれば、もっとレースクイーンになれるかと!」
美世「え? そ、そういうものなの?」
聖來「う、うーん……どうなんだろ?」
芽衣子「ま、まあ、何事にも体当たりが茜ちゃんの持ち味だし……」
芽衣子「……ん? っていうか、それなら……!」ピコーン!
聖來「どうかしたの、芽衣子」
芽衣子「ふっふっふー、いいこと思いついちゃった!」
聖來「……! さては、芽衣子……またやるつもりだね?」
芽衣子「聖來はどう思う!?」
聖來「まったく……相変わらず、芽衣子はほんとパッションだと思うよ。でも……」
聖來「大賛成!」グッ!
芽衣子「よし、決まり!」グッ!
未央・茜「……?」
美世「ええと……」
ザッザッ
モバP「おーい、芽衣子、聖來、そろそろ行くぞー!」
PaP「代車も貸してもらえることになったけぇ、そろそろ出発じゃ」
未央「りょーかい! じゃ、皆、またねー!」
ウオオオオ! ミオチャーン!
PaP「なにミニイベント開いとるんじゃ、お前は」
未央「えへへ、いやー、そんなつもりは無かったんだけどねー」
モバP「ほら、芽衣子、聖來、宿の予約に遅れてもあれだし、いくぞ」
芽衣子「あ、プロデューサー! その前に、ちょっといい!?」
モバP「……、えーと……何だ?」ヤナヨカン……
聖來「美世ー! ちょっとこっち来て!」
美世「え、うん、なにか?」
聖來「ねえ、美世」
芽衣子「明後日のイベント、私達と一緒に出ようよ!」
未央「えっ?」
茜「おおっ!」
聖來「ていうより、もうせっかくだからさ!」
芽衣子「この際だからアイドルになっちゃおうよ!」
モバP「ファッ!?」
PaP「ハァ!?」
美世「……。……、はいっ!?」
芽衣子「どうどう!? 茜ちゃんも美世が一緒なら心強いだろうし!」グイグイ
茜「なるほど!」
美世「えっ、いや、その、ちょっと待って! そんなこといきなり言われても、」
モバP「芽衣子! お前またか!?」
PaP「そんなこと言われたところで、原田さんかて困って……」
聖來「美世も、レースクイーンとして、間近でスポーツカーに触れられるんだよ?」
美世「……、……、……」
美世「やる!」グッ!
モバP「ちょっとぉぉぉぉ!!」
PaP「なんじゃそりゃぁぁぁぁあ!!」
美世「え、っていうか、本当にいいの!? ビッグネームが集まるんだけど!」
芽衣子「美世ならどんな車にでも映えるから大丈夫だって!」
美世「あ、でもあたし衣装とかどうしたら……」
聖來「ちひろさんに頼めば追加の一着くらいどうにかなるから大丈夫!」
美世「……うそ、夢みたい……! ポルシェ……フェラーリ……!!」キラキラ
モバP「だから、ちょっとストォーーッップ!」
モバP「何勝手に話を進めてるの!?」
芽衣子「大丈夫だって、プロデューサー! ほら、私と聖來の第六感にティンと来てるから!」
モバP「そういう問題じゃないから!」
聖來「あれだけいい笑顔を魅せる女の子をスカウトしないとか、プロデューサーとしてありえないじゃない?」
PaP「おまあさんがたはプロデューサーじゃのうて、アイドルじゃろうが!」
未央「あ、あはは……いやー、セラセラがスカウトされた経緯はしまむーから聞いてたけども」
茜「芽衣子さんも聖來さんも、プロデューサーと同じ目をしてました!」
PaP「待て茜。わしらはあんな非常識なスカウトはしとらんぞ?」
未央「非常識なスカウト、ねえ……」
櫂「ハックション!」
沙紀「わっ! 櫂、でかいくしゃみなんかして、どうしたっすか?」
渚「風邪でもひいた?」
櫂「いやー、誰か私の噂でもしてるんでしょ」ハハハ
芽衣子「ということでプロデューサー、衣装選びと採寸の為に、店を回ってくるから!」
聖來「あとでちひろさんにメールで衣装のイメージを送るから、一番合う衣装をこっちに送ってもらうよう、手はず進めといてね!」
モバP「さりげなく一番の鬼門を押し付けるなぁっ!!」
ちひろ(あら、だれが一番の鬼門なんです?)
モバP(天使! 女神! ちひろぉぉぉ!!)
芽衣子「それじゃ、いってきまーす♪」
繁華街 洋服店
イラッシャイマセー
バサッ バサッ
美世「フェラーリに合わせるならやっぱり赤かな……ううん、白をベースにしてもいいよね。差し色に黒を入れると映えるかな……」
芽衣子「うんうん、その辺のセンスは美世が一番いいかも!」
美世「え、そう? あまり服とか選んだことないから、あまり自信ないんだけど……」
聖來「車を見てて、美的センスが磨かれたりしたのかな?」
美世「そんなこと……あるかも! 最近の車、フォルムもどんどんおしゃれになってるし!」
アハハハハ
美世「……なんか、楽しいね、こんなのも」
芽衣子「そうでしょ、そうでしょ! こうやって新しいこと始めるとうきうきするじゃない! 楽しい旅の醍醐味は、新しい出会いと発見ってね!」
聖來「確かに、そうかもね。たまには芽衣子の旅のたとえも的確じゃない」
芽衣子「たまにはってなにー!?」
美世「あははははは!」
美世「あたし、今まで車一筋だったからさ。同年代の女友だちとか、あんまりいなくって」
美世「車を整備して、磨いて、最高の一台に仕上げるのが一番楽しかったけど……」
美世「二人と一緒だと、こうしてあたし自身を着飾るのも楽しいかな!」エヘッ
芽衣子「……」
聖來「……」
美世「…………え、えーっと…………は、恥ずかしいから今のなしで!」カーッ
芽衣子「なしにするのナシ!」ダキッ!
聖來「思いっきり可愛すぎるぞー、このこのー!」ツキッ!
美世「キャーッ!」
芽衣子「もー、美世はキュートで決定だね!」
聖來「間違いないね、CuPさんにさっきの笑顔写メ送っとくんだったよ」
美世「ええ? キュートって……もう、褒めすぎだよっ、二人とも! あたしも本気にしちゃうよ?」
芽衣子「だから本気だって! ね、聖來!」
聖來「そうそう、流石に明後日は無理としても、美世とユニット組めるのが今から楽しみなんだから」
美世「……あれ、ええと……」
芽衣子「どうかした?」
美世「明後日のイベントに出るとこだけじゃなくて……アイドルにっていうのも、ほんとに本気?」
聖來「もちろん!」
美世「……、う、そ、そっか……」
芽衣子「あれ……乗り気じゃない?」
美世「ううん、なんていうか……」
芽衣子「絶対楽しいよ、私と聖來と一緒に、歌って踊って綺麗に着飾ってさ!」
聖來「そうそう! 一歩踏み出す価値はあるって!」
美世「あはは、うん、二人と一緒なら、多分アイドルでも何でも、きっと楽しいなって思うよ、あたしも。それは本当」
芽衣子「だったら決まりだよ!」
美世「うん、でもさ……」
美世「あたし、ダンスなんてやったことないし、おしゃれにも縁が遠かったし」
美世「歌うのは嫌いじゃないけど、車の中でカラオケするくらいで素人だしさ」
美世「誘ってくれるの、凄く嬉しい。でも、やっていけるのか、正直不安、かな」
聖來「……ま、そうかもね」
芽衣子「ええ、聖來まで!」
聖來「世の中誰もかれも、芽衣子みたいに超プラス思考で考えられるわけないじゃない」
聖來「言葉も通じない、まったく見知らぬ外国に旅するようなものでしょ? 尻ごみくらいしても普通だよ」
芽衣子「ええっ!? それこそ旅の一番の楽しみでしょ!? 身振り手振りでも意思疎通してさ、新しい世界に飛び込めるんだよ! 見知らぬ景色が目の前に広がるときの感動と言ったら……!」キラキラ
美世「……」ポー
聖來「……まったく、芽衣子は」ニガワライ
芽衣子「あー、また旅行行きたくなってきちゃった! ね!?」
聖來「ごめん、旅キチの芽衣子にこの例え出したのが間違いだった」
芽衣子「ちょっとー! なんか聖來の私に対する扱い、日に日に雑になってきてない!?」
聖來「自覚あるなら少しは自重しようよ……」
美世「ふふ、ふふふふふ……!」
芽衣子「ええー、美世まで……」
美世「ごめんごめん、そうじゃないの」
美世「うん、まずはアクセル踏んでみないと始まらないよね。アイドルをやれるかはまだわからないけど、とりあえずは明後日のイベント、楽しもっか!」
芽衣子「? まあ、確かにそれが一番だよね! よーし、まずは衣装の候補決めちゃおう! あとはどれがいいかな……」
聖來「……あれで無自覚だから、パッションて怖い」
美世「あはは、確かにね……あ、これいいかも……!」
翌々日 イベント当日 レースサーキット
美世「おはようございます、PaPさん!」
PaP「おう、美世、おはようさん」
未央「おっはよー、美世ちー! 昨日はよく眠れた?」
美世「うん、いつも通り過ごした方がいいってアドバイスのおかげかな。車いじってエンジンオイルの匂いに包まれてたら、落ち着いて寝つけたよ」
PaP「……、いやまあ、いいんじゃが……」アロマセラピー?
未央「釈然としないって顔してるね?」
美世「あ、芽衣子と聖來はまだ準備中ですか?」
PaP「ああ、控室におるよ。衣装に着替えとるはず……そうそう、おまえさんの衣装も届いとったけえ、あわせてきてくれんか」
未央「先に見せてもらったけど、良いセンスだと思うよ!」
美世「えへへ、未央ちゃんに言われると嬉しいな。じゃあ、いってきます!」
タッタッタ……
未央「ふふふ、美世ちー、気にいるといいな」
PaP「なんじゃ、肩入れしとるのか? ……おまえさんまでティンときたなどといいださんでくれよ?」
未央「流石にそれはめーちゃんとセラセラにお任せだよ。でも、美世ちーを待ってる二人を見てると、ちょっとくらい背中を押しても罰は当たらないかなって」
PaP「……おまえさんかて、一歩踏み出したじゃろ」
未央「だからこそ! あの時立ち止まってたら、今の私は、ここにいない、でしょ?」
PaP「ふっ、そうかもしれんの」
未央「まあでも、説教なんて私のキャラじゃないしね。だから、今日の曲なんだけどさ」ニヤリ
PaP「ふむ、一曲目でええな?」ニヤリ
未央「さっすがプロデューサー、話がわかるー!」
PaP「そういうことなら、進行役のところにいっとかんとの。未央、おまえは先にステージ裏で待機しとけ」
未央「了解! よろしくね、プロデューサー!」
控室
モバP「……まさか本当に一晩で仕上げて届けるとは……ちひろさんパネェ……」
ガチャ
芽衣子「プロデューサー、準備オッケーだよ!」
聖來「着こなしはこんな感じでいいかな?」
モバP「おう、よく似合ってるぞ。初舞台だ、思いっきりいってこい。ただし、協賛のとこだけは下手踏むなよ」
芽衣子「……プロデューサー、激励がなんか雑じゃない?」
モバP「お前たちに緊張するななんて、言うだけ無駄だからな……」ハァ
聖來「ふふ、確かに」クス
芽衣子「なんで聖來までプロデューサー側なの!?」
芽衣子「それより、プロデューサーが持ってるの、美世の衣装?」
聖來「どれどれ……おー、さすがちひろさん、イメージ通り」
芽衣子「仕上がり丁寧だし、急ごしらえとは思えないね!」
モバP「まあ、ちひろさんだから……」
ガチャ
美世「おはようございます、ええっと……」
芽衣子「あ、美世! おはよ、待ってたよ!」
美世「芽衣子、聖來! うわぁ……二人とも決まってるね……」
聖來「何言ってんの、これから美世も着るんだから。はいこれ」
美世「え、これ、あたしの衣装? ……すごい、本当に一晩で届いちゃうんだ……」
モバP「まあ、ちひろさんだから……」
芽衣子「ほらほら、そっちの更衣室で着替えてきて!」
美世「う、うん。やってみる!」
バタン
モバP「……はあ……」
芽衣子「どうしたの、プロデューサー。ため息なんてついてると、幸せが逃げてっちゃうよ?」
聖來「そうそう、これからライブなんだし、元気出していかなきゃ!」
モバP「出会って二日の女の子をアイドルとしてステージに立たせると思ったらため息の一つも出るわ!」
モバP「ていうか。ほんとにお前たち、よくちひろさんにオッケーもらえたな……レッスンもしてない子をいきなりステージにだぞ?」
芽衣子「えへへ、聖來を連れてきたときの功績に免じて、今回は特別よって言われちゃったけどね」
モバP「それをやらかしでなく、実績と数えますか、ちひろさん……いやまあそうだけどなぁ……」トオイメ
聖來「ね、そういえば茜ちゃんは?」
モバP「ん? まだ着替えてるんじゃないのか?」
芽衣子「そういえば……いつもなら、着替え終わったので走ってきます! って飛び出していきそうなものだけど」
モバP「……否定できない」
聖來「走るのは着替える前だけにしときぃ、ってPaPさんからツッコミがはいるんだよね」
モバP「着替える前にも走ってたのか!?」
更衣室
美世「うーん、着れたけど……これでいいのかな?」
茜「美世さん! おはようございます!」
美世「ひゃっ! あ、おはよう、茜ちゃん……相変わらず、声が大き……じゃない、元気だね」
茜「はい! 元気はつらつです!」
美世(……あれ?)
茜「それよりも、美世さん、衣装お似合いですね!」
美世「そ、そうかな? あたしもこんなにしっかりしたの作ってもらえると思ってなかったから、びっくりしたよ」
茜「その衣装、美世さんが選んだんですか!?」
美世「うん、芽衣子と聖來と一緒に、洋品店回って、こんな感じのーって、要望送っただけだけどね。衣装に仕上げるのは、ちひろさんって人がやってくれたらしいけど」
茜「なるほど! 凄く素敵だと思います!」
美世「ふふ、ありがと♪」
美世「茜ちゃんも、セクシーな衣装で素敵だよ?」
茜「そっ、そうです、か……?」
美世(……あれ?)
美世「茜ちゃん、もしかして……衣装、恥ずかしい?」
茜「!!!」
茜「そのっ、ですね!?」
美世「うん」
茜「この衣装、思ったより布が少なくてですね!?」
美世「うん」
茜「そ、その、少し、すーすーします!」
美世「……恥ずかしいの?」
茜「……はい!」
美世「あはは、そっか、そうだよね、レースクイーンなんて初めてだもんね」
美世「でも、大丈夫? このあと、お客さんの前に出るんだけど……」
茜「そ、それは……きっと、大丈夫です! 多分!」カーッ
美世(あ、多分駄目だこれ)
美世(茜ちゃんにぴったりの、赤い炎のマークをあしらったレースクイーン……ちょっと際どいけど)
美世(PaPさんも、茜ちゃんの元気の良さを引き出したくて用意したんだろうけど、茜ちゃんが恥ずかしがるとは予想外だったんだろうなぁ)
美世「んー」
茜「どうかしましたか?」
美世(小型ながら馬力は抜群、アクセルを踏み込めば加速は一級品)
茜「……美世さん?」
美世(なら魅せるべきは、フォルムじゃなくて走りだよね)
美世「……よし!」
コンコン
モバP『美世さん、茜ちゃん、まだそこにいるかい?』
美世「あ、はーい、今行きます! 茜ちゃん、行こ!」
茜「は、はい!」
ガチャ
美世「お待たせしました!」
モバP「おー……これは、また……驚いた」
芽衣子「ぴったりじゃない! 髪型も変えたんだ!」
聖來「イメージ通りというか……イメージ以上だね」
美世「えへへ、ありがと!」
芽衣子「あれ? 茜ちゃんはどうして小さくなってるの?」
茜「え、ええとその……」
美世「モバPさん、ちょっと」
モバP「どうしたの?」
美世「実は……」カクカクシカジカ
モバP「え? 恥ずかしい……でも、衣装合わせした時はそんなことは……って」
モバP(よく見たら……衣装合わせの時より際どいデザインの衣装にかわってるじゃねーか!)
ちひろ(セクシーで恥ずかしがる茜ちゃん……これは売れる!)グッ!
モバP「やらかしやがったな、あのあ……あの人は……!」
聖來「いま、なんでいい直したの?」
モバP「ゴホン! ……気にするな。しかし、どうしたもんか……」
芽衣子「茜ちゃん、イベント大丈夫?」
茜「はい! 大丈夫です!」
モバP(ファイヤー! も、ボンバー! もない……だと……!?)
聖來(駄目みたいだね……)
芽衣子「うーん……モバPさん、代わりの衣装ってあったっけ?」
モバP「用意してないな……」
美世「そのことなんだけど……モバPさん、この後、少し茜ちゃん借りてもいい?」
芽衣子「美世?」
モバP「ん? ああ、芽衣子と聖來が前座で出て、未央ちゃんのライブステージ、そのあと茜ちゃんと美世さんの出番だから、時間はあるにはあるけど」
モバP「ただ、俺も芽衣子たちについてないといけないし、PaPさんもステージの準備にいっているしな……」
美世「茜ちゃんに、見せたいものがあるんだ。任せてくれないかな?」
モバP「……見せたいもの?」
モバP「しかし、一応俺かPaPさんがついていないと……」
芽衣子「プロデューサー、大丈夫だよ、美世に任せてみよう?」
モバP「おまえな……何か根拠でもあるのか?」
芽衣子「入りては郷に従えっていうでしょ? サーキットなんて美世のホームなんだし、旅先で穴場の観光スポットを見つけるには、地元の人に聞くのが一番なんだから!」エヘン!
聖來「芽衣子……またそれ?」
モバP「ほんとに芽衣子の例えは、的を得ているんだかいないんだかよくわからん」ハァ
モバP「……だがまあ、それもいいかもしれないな。PaPさんには連絡を入れておくよ」
モバP「ただ、事故や不審者には十分注意してね。出番の10分前にはステージ脇へくるように」
美世「はい! じゃ、茜ちゃん、このスタッフコートを羽織っていこ。これならすーすーしないでしょ」バサッ
茜「なるほど! ありがとうございます!」バサッ
美世「じゃ、いってくるね! 芽衣子、聖來、ステージ頑張って!」
聖來「うん、こっちは任せといて!」
芽衣子「みーんな盛り上げて、待ってるからね!」
サーキット脇 原田モーターズ ピット
美世「おとうさーん!」
原田父「ん? 美世、どうした? イベントに出るんじゃなかったか?」
工員「緊張して落ち着かないなら、車いじっていくかい?」
美世「う、それは魅力的だけど……ちょっとそこから、サーキット覗かせて欲しいんだ」
原田父「? 構わないが……まだレースも始まってないぞ?」
美世「わかってるって。茜ちゃん、こっちこっち!」
茜「凄いですね! 機械が一杯です!」
美世「ここは、レース中にレーシングマシンが補給するためのピットなんだ。ほら、コースがすぐ近くでしょ?」
茜「確かに! ここなら車がよく見え――」
ぶわっ
“ブォォォォォォォォンン!!!!”
茜「!?!?!?」
美世「おー、凄い凄い! やっぱり本場ものの迫力は違うなぁ……!」
茜「み、美世さん、さっきのは!?」
美世「ふふ、今はレース前の、各チームの車の試走中なの。一台ずつコースを走って、路面や車の状態を確かめてるんだ」
茜「で、でも! 見えませんでした! 音と風だけがぼおおおおおって!」
美世「あはは、そう、凄いでしょ!?」
美世「レーシングカーってね、見た目ももちろんかっこいいんだけど、一番の魅力は、暴力的なまでのこのスピード! 風と音をひきつれて、全速で突き抜ける!」
美世「思わず耳を塞いじゃうくらいの轟音に、街中じゃ危なくて走れないスピード、サーキットでしか見れない迫力! すっごく魅力的でしょ? あ、ほら、一周回ってまた来た!」
茜「……!」
ゴォッ!
“ブォォォォォォォォォォォンン!”
美世「どう、茜ちゃん。かっこいいでしょ!」
茜「……」
美世「あれ? 茜ちゃ……」
茜「ボンバーーーーーーッ!!!!!」ドカーーーーン!!
美世「ひやっ!」
原田父「うおわっ!?」
工員「なんだっ!? クラッシュ!? 爆発!?」
茜「美世さん! サーキットってスゴイです! すごく! ホットで、ヒートで、エキサイティングです!!!」ボオオオオオオッ!!!
美世「う、うん……」
原田父「……あの子、燃えてないか?」
工員「や、やだなぁ、工場長、なに俺と同じ幻覚見てるんですか……」
茜「速さで目が回りそうです! うおおおおお、私も燃えてきました! 負けてられません! 美世さん、私、走ってきます! コートお願いします! ウォォォォォォ!!!!」
ダダダダダダダダッ!
原田父「……」
工員「……」
美世「……あ、あはは、緊張していたみたいだから、エンジンに火を入れてあげようと思ったんだけど……」
原田父「……まあ、なんだ。アイドルってえのは、こじゃれた外国車みたいなのばかりかと思ったが……」
原田父「ありゃ完全に、ニトロ積んだドラッグスターだな」
美世「あは、あはははは……うん……」
(注意:ドラッグは薬じゃないよ、車のレースの一種だよ!)
ステージ裏
芽衣子「!? いま、何か爆発した!?」
モバP「……いや、異常は無いみたいだ」
聖來「じゃ、イベント続行だね。芽衣子、集中してくよ」
芽衣子「うん、頑張ろう!」
モバP「よし。今日のところは、主役はお前たちじゃないが……思いっきり盛り上げてきてくれよ」
聖來「任せといてよ」
芽衣子「いってくるね!」
パチパチパチパチ……
芽衣子「みんなーっ! こんにちわーっ!」
聖來「今日は、石川レーシングサーキット、開設イベントへようこそ! 本日の案内役を務めます、水木聖來と!」
芽衣子「並木芽衣子です! よろしくおねがいしまーす!」
パチパチパチパチパチパチ……
聖來「それにしても、すごいですね! レースサーキットなんて初めてなんですが、音と迫力にびっくり!」
芽衣子「あれでも試走なんでしょ? 本番はどれだけ迫力あるんだろうね! この後のレースが、凄く楽しみになってきました!」
オー、ワカッテルジャーン
聖來「でも、その前に!」
芽衣子「私達、シンデレラガールズプロダクションのアイドルが織りなす、魅惑のステージへご招待です!」
バイクの方しか思い浮かばなかった
>>109
バイクもあるんですね……車の方しか知らなくて
ステージ袖
未央「うんうん、さすが芽衣子隊員。しっかり盛り上げてますなぁ」
美世「……二人とも、全然物おじしてない……」
モバP「まあ、あの二人だからな……美世さん、大丈夫そうかい?」
美世「あはは、やっぱり、ちょっと緊張しちゃいます。二人が凄いから、余計かな」
未央「……」
茜「遅くなりました!」
PaP「全く……走るなら、イベントの日の、朝までに、しとけと、いっとるじゃろ……」ゼェゼェ
美世「茜ちゃん! すいません、PaPさん」
PaP「いや、なに、茜が、走るのは、好調の、バロメーター、みたいな、もんじゃけえ」ゼェハァ
茜「はい!! 今の私は、猛烈に絶好調です! レーシングカーにも負けませんよー! ボンバー!!!」
未央「あ、茜ちん、ステージ袖では騒ぎ具合を押さえて、ね?」
あれ、トリップが消えてる……
>>112
は私です、間違えてないです
芽衣子『さあ、では本日のステージメインイベント!』
聖來『元気印のパッションスターと言えば!?』
ミーオチャーーーン!!
未央「おっ、出番出番! あ、美世ちー!」
美世「えっ、なに、未央ちゃん」
未央「このライブ……しっかり、心に刻みつけてね!」ウインク
美世「えっ?」
芽衣子『一曲目は――おっと?』
聖來『予定変更だね? ふふ、サプライズ好きは未央ちゃんらしいね』
芽衣子『では、いくよー! 「ミツボシ☆☆★」!』
♪~
未央「燃っやせ! 友情!パッションは、」
ミッツボシ!!
未央「ありがとー! みんな、盛り上がって行くよー!」
ワァァァァァ!!
♪~
悩み事尽きない時代だ そばにいてくれる友だちに感謝
どんなときも 仲間がいるから!
なんて照れちゃう事 真顔で言えちゃう!
茜「おおっ! 未央ちゃん、今日は凄く気合入ってます!」
美世「……あ……」
♪~
夢に夢見た大フライト
手をつないだら 大気圏突入も 怖くない!
美世(……そっか)
♪~
ミツボシ☆☆★ そろって光って まぶしい! ってYou Say?
美世(この歌の三ツ星って――)
美世「……そっか。そうだよね。あたしも、もう……!」
♪~
君がくれた勇気にありがとう!
隣に並ぶ みんなの笑顔に感謝
未央「あーりがとー!!!」
ワァァァ!
美世「……!!」
♪~
ミツボシ☆☆★ 願って頑張って 叶えちゃえ!って CAN SAY!
上を目指し チャージ アンド ハイジャーンプ!
翔けるミツボシ☆☆★
芽衣子「美世、そろそろ出番だよ! 準備はいい?」
聖來「美世なら大丈夫……って」
美世「ふたりともっ!」ガバッ!
芽衣子「えっ!?」
聖來「ちょっと、美世?」
美世「私を誘ってくれてありがとう!」
芽衣子「えっ、ど、どうしたの?」
美世「私も星に――キラキラに輝いてくる! だから――、一緒にいこう! 三人揃って!」
聖來「美世?」
茜「美世さん! スタンバイです!」
美世「オッケー! 今のあたしはフルスロットル! 茜ちゃん、エンジン全開で行こう!」
茜「おお! よくわかりませんが、燃えてますね! 私も燃えてます! バーニングです! ボンバー!」
芽衣子「ええと……」キョトン
聖來「と、とりあえず、二人が出るときのコール、何かあるー?」
茜「美世さん!」
美世「うん、じゃあ、あたしと茜ちゃんの出るときのコールは――」
未央『みんな、ライブ楽しんでくれたー?』
サイコー!!
未央『ありがとー! さーて、次はいよいよ、メモリアルレース! めーちゃん、セラセラ、あとはお願い!』
芽衣子『はーい! ここから先は、めーこにおまかせ!』
タタッ!
未央「ただいま、プロデューサー!」
PaP「おう、最高のライブじゃったぞ、未央!」
未央「ありがと! ……あれ、美世ちゃんは?」
PaP「なに?」
芽衣子『では、これからレーシングマシンの入場です!』
聖來『レースクイーンと一緒に写真を撮るチャンス! 撮影ポイントの準備はいいかなー?』
オッケー!
芽衣子『それでは、まずはレースクイーンの入場です! 日野茜ちゃん、原田美世ちゃん、二人は――』
聖來『バーニングサーキット!』
……
……
芽衣子『……あれ?』
聖來『えっと……』
芽衣子(どうしたんだろ、出てこないよ?)
聖來(怖気づいたとかじゃないと思うけど……ん?)
ブロロン! ブロロン!
少し前 原田モーターズ ピット内
美世「というわけで!」
茜「お願いします!」
原田父「……まったく、急にねじ込む事じゃないぞ、こんなのは……」
美世「お願い、お父さん! せっかくの雄姿を輝かせる、またとないチャンスだよ!?」
原田父「あとで、モバPさんらに怒られても責任とらんからな」ニヤリ
茜「! ありがとうございます!」
美世「よし、茜ちゃん、急いでのって! 安全第一、シートベルトは確実にね!」
ドンッ!
聖來(車が一台、サーキットに飛び出してきた!?)
芽衣子(あの車……美世のところの工場にあった! ってことは……!)ピコーン!
芽衣子『おーっと、これはどうした!? 原田モーターズのブースから、真っ赤なスポーツカーが飛び出して来たぞー!』
聖來(芽衣子!?)
芽衣子(多分あれに二人が乗ってる! 聖來、紹介!)
聖來『えっと……スペシャルターボ搭載、エンジンはホンダ! 地元有志が作り上げた、特別参加枠のレッドバロン号!』
芽衣子『コーナリングも鮮やかに、さあ、撮影ポイントの前へ入ってくる!』
キキキキキ!!
芽衣子『こ、これはーっ! 見事なドリフトテクを披露し、白煙を巻きあげ、華麗に撮影ブースへ滑り込んだー!』
聖來『これは凄腕! そのドライバーは……えっ!?』
ガチャッ!
美世「みんなー、こんにちわっ!」
芽衣子『!?』
聖來『!?』
ザワザワザワ……
「え、運転席から、女の子……っていうかレースクイーンが降りてきたけど」
「マジ? あの子が運転してたの? あのドリフト?」
「いや、流石にそれは無いでしょ? アイドルでしょ?」
モバP「……」アタマイタイ……
PaP「……事故ったらどうするつもりだったんじゃ……」ミテラレン……
未央「そりゃ、背中は押したけどさ……まさかここまでするとは……」タハハハハ
モバP「ええい、こうなりゃやけだ!」カキカキ
モバP(芽衣子!)
芽衣子(あ、カンペ……んん?)
『好きなように盛り上げろ!』
聖來(……わざわざカンペに書く事かなぁ……)クス
聖來(で、芽衣子、どうする?)ニコ!
芽衣子(……! 決まってるじゃない!)キラキラ!
芽衣子『なんと! 運転席から降りてきたのは、整備から運転まで、車の事ならなんでもござれ! 美貌のレースクイーン、原田美世!』
聖來『そしてそして! 助手席からももう一人! 小さな体にニトロとガソリン詰め込んで、積んだエンジンは百人力! バーニングハート、日野茜!』
美世「私達!」
茜「バーニングサーキットが!」
美世「このレース、アクセル全開で盛り上げまーす!」
茜「燃えていきましょう! ボンバー!!!」
ザワッ――
ワァァァァァァァァ!!!!
「華麗なドリフトテク披露するレースクイーンとかマジパネェ!」
「可愛い!」「かっこいい!」「写真撮らせて!」「目線こっちにー!」
ワァァァァァ!!
茜「!!」
美世「茜ちゃん!」
茜「はい!」
美世「大成功!」ハイタッチ!
茜「やりましたー!」ハイタッチ!
その日の夜 原田モーターズ事務所
ザワザワザワ……
原田父「えー、では、地元有志のレッドバロン号の特別賞受賞と、CGプロイベントの成功を祝しまして――乾杯!」
「「「かんぱーい!」」」
ワハハハハハハ
芽衣子「おつかれさまー! 大成功だったね!」
聖來「まあ、流石にがっつり怒られたけどね、全員正座で」
美世「あはははは、いやー、完全にブレーキが抜けてたね」
茜「でも、凄く楽しかったです!」
美世「だよね! そうだ、明日にでももう一度サーキットで記念走行を……!」
モバP「ほんとに反省してるのかお前らは!?」
芽衣子「あっ、プロデューサー!?」
聖來「ちゃ、ちゃんとわかってるって」
美世「すみません、反省してます」
PaP「茜も、本当に、ほんとうに、反省したんじゃろうな?」
茜「はい! 今度からは、ちゃんとプロデューサーに相談します!」
未央「茜ちんの素直さに涙が出そうだよ……良くも悪くも」
モバP「はぁ……まあ、ともかく、あの状況で良くMCをつなげたよ、芽衣子も聖來も」
芽衣子「えへへ、実況って楽しいかも♪」
聖來「二人が出てこなかったときはどうしようかと思ったけどね……」
PaP「芽衣子は逆境で輝くのう……いや、こっちの心の臓に悪いからもう二度とやるんじゃないぞ?」
モバP「美世さんは、結果事故を起こさなかったからよかったようなものの! ああいうことをするなら事前に報告して!」
美世「はーい、気をつけます」
モバP「……そのあとの撮影や表彰式は、立ち振舞いといい、対応といい、お見事でした。それでもチャラになるものじゃないからね!」
美世「……! はいっ!」ニコー
未央(やらかしてるだけに褒めづらいんだね……)
原田父「ああ、モバPさん、PaPさん、こちらでしたか」
モバP「原田さん、この度はどうも、ご心配をおかけしまして……」
原田父「いえいえ、こちらこそ、こんな娘で申し訳ない。車の事となると、見境がなくなってね……」
PaP「……ええ、そうでしたのう……」
原田父「この子の運転技術は間違いないのは知ってましたから、少々無茶でもやらせてしまったんですよ。本当に申し訳ない」
モバP「ああいえ、まあ、結果事故も怪我もなかった訳ですから……」
原田父「よろしければ、あちらで飲みませんか? 娘がお世話になるところです、プロダクションのお話も、色々聞いておきたい」
モバP「はあ……ん?」
芽衣子「! じゃあ、美世!?」
聖來「もしかしても、しなくても……!?」
美世「うん、あたし、決めた! 芽衣子と聖來と一緒に、アイドル目指すよ!」
芽衣子・聖來「……!」
芽衣子「やったー! 美世も一緒にユニットデビューだ!」
聖來「決まりだね!」
モバP「お、おまえらな、ちょっと……!」
PaP「実は反省しとらんな、まったくしとらんな!?」
原田父「? どうしました?」
モバP「うっ……いえ、その……!」
モバP(プロデューサー側に話が通ってないとか言えない……!)
芽衣子「大丈夫! ちひろさんには、美世さえやる気ならオッケーって承諾貰ってるから!」
聖來「アタシ達と同じく、モバPさん直属が良いだろうけど、所属グループとしてはうちがいいだろうって、CuPさんがオッケー出してくれてるよ」
モバP「だーかーらー!!! CuPさんも何やってるの!?」
PaP「……もういい、わしは飲む。やけ酒じゃ、やけ酒!」
原田父「よくわかりませんが……いい職場のようですね」ニコニコ
未央「……ふう。また、騒がしくなりそうな予感だね」
美世「あ、未央ちゃん! ちょっといい?」
未央「あ、美世ちー。ようこそ、CGプロへ!」
美世「へへ、ありがと! あと、未央ちゃんの歌もね!」
未央「あ、気がついてくれた?」
美世「うん、しっかり背中押されたよ!」
未央「ああ、でも……それは、ミツボシ☆☆★の、歌の力だと思うな」
美世「え?」
未央「んー……ちょっと、外で話さない?」
美世「外?」
未央「あー、ちょっと……みんながいるところだと、恥ずかしい話だからさ」
未央「あー、良い空気。都会とはやっぱり違うね」
美世「そうかな、あまり意識したことないけど」
未央「……あ、ほら、星空。満点の星空だよ」
美世「うん、綺麗だね」
未央「……」
未央「私さ、ニュージェネレーションの中でも、シングルデビュー、一番遅かったでしょ?」
美世「……うん」
未央「総選挙でもさ、圏内にすら入れない状況が続いて……しぶりんとしまむーばっか先に進んで行っちゃったんだ」
美世「……」
未央「正直、何で私だけって思ってたし、ひねくれもしたよ。でも、しぶりんもしまむーも、嫌な顔一つしないで。余計にそういうのがつらかった訳ですよ」タハハ
未央「アイドルやめよっかなって、思ったのはそんな頃でさ」
美世「本気で?」
未央「いやー、改めて聞かれると……若気の至りで、色々反発したかっただけかもしれないけど。でも、当時は本気だったな」
美世「そうなんだ……」
未央「そんなときですよ、プロデューサーが、ミツボシ☆☆★のデモテープと歌詞を持ってきたのは」
未央「待たせて悪かった、けど、これを聞いて、もう一度どうするか、決めて欲しいって」
未央「ずるいよねー、あんな歌詞見せられて、曲を聞かされてさ。前に進む以外の道、あるわけないじゃん」
未央「しぶりんも、しまむーも。待っててくれたわけじゃないけど……二人がいるから、私は前に進む事が出来るって」
未央「三人揃って、ミツボシが輝くんだって――それを、ミツボシ☆☆★が教えてくれたんだ」
美世「……」
未央「あの時の、しぶりんとしまむーがさ、ちょっと、めーちゃんとセラセラに被って見えたから。美世ちーに、簡単にあきらめて欲しくなかったんだよね」
美世「……うん、ありがとう、未央ちゃん」
未央「ま、まあ、そんな訳だからさ! 未央ちゃんに感謝されても、ちょっと困るっていうか……」
美世「そんなことないよ! あたしが聞いて、あたしが勇気づけられたのは、未央ちゃんのミツボシ☆☆★だったからなんだから!」
未央「え……そう、かな」
美世「うん! きっと、PaPさん、未央ちゃんの為に用意してくれた歌だと思うの。でなきゃ、そう簡単に人の心は動かないと思う」
未央「……」
美世「でも、それを未央ちゃんは自分の経験を糧にして、“未央ちゃんへの”歌から、“未央ちゃんの”歌にしたんだと思う。だから、あたしにもきちんと届いたんだって……そう思う!」
未央「……!」
未央「……そっか、私の、『ミツボシ☆☆★』か……うん、いいね、それ!」
未央「私、この歌に救われたと思ってた。だから、大好きな歌だと思ってたけど……」
未央「これからは、本当に私の歌だって、胸を張って歌える気がする!」
美世「うん!」
芽衣子「美世ー! 未央ちゃーん、いつまで外にいるのー?」
聖來「はいってきなよ、モバPさんが酔っぱらって、一発芸やるって!」
未央「おー、それはそれは、是非見させていただこうじゃあないですか! いこ、美世ちー!」
美世「うん!」
翌日
モバP「……昨日はどうも、お見苦しいところを……」フツカヨイー
原田父「いえいえ、こちらこそ無理に呑ませてしまい、申し訳ない」
PaP「そちらさんのせいじゃあないんで、気にせんといてください……」フツカヨイー
芽衣子「もー、プロデューサーもPaPさんもなにやってるの?」
聖來「車も直って、今日は長距離の運転になるってわかってたでしょ?」
美世「二日酔いで運転なんて、絶対駄目ですよ!」
モバP・PaP「「もとはと言えばお前たちがなぁッ!!」」
美世「まあまあ、運転はあたしが引き受けるから♪」
茜「美世さん、楽しそうですね!」
美世「うん! アイドルになったとしても、車が大好きなのは変わらないから!」
原田父「そうだな……大変な事もあるだろうが、頑張るんだぞ」
美世「はい! いってきます!」
モバP「そういや確認だけど、芽衣子と聖來のユニットに美世を加えて、三人でユニットを組むってことでいいのか?」
芽衣子「もっちろん!」
聖來「当然」
美世「それが嬉しいかな」
モバP「芽衣子に聖來、美世が入って、三人ユニット……それで、ユニット名、どうするんだ? まだ決まってないだろ」
芽衣子「あ、それかぁ」
聖來「まあ、それはおいおい……」
美世「そうなの? ……んー」
美世「だったら、『UP TUNE』なんてどうかな?」
モバP「アップ……」
芽衣子「チューン?」
聖來「直訳だと……調子を上げる、って感じ?」
美世「そ!」
美世「あたし、未央ちゃんや芽衣子や聖來に、いっぱいの輝きを見せてもらって、勇気をもらって、アイドルになろうって思えたんだ」
美世「そういう風に、今度はアイドルとして、ファンに輝きを魅せて、勇気を分けて、元気にさせられればって思って……それって、車のチューンアップと同じじゃない?」
美世「整備士が車をチューンアップしてより良い車に仕上げるみたいに、アイドルとして、ファンを元気づけて背中を押せるアイドルになれたら――ってさ」
芽衣子「みんなを元気づけられる……」
聖來「勇気づけられる……」
芽衣子・聖來「……!!」
芽衣子「それいい!」
聖來「うん、凄く!」
モバP「なるほど……いいんじゃないかな。芽衣子にしても、聖來にしても、美世にしても……うん、元気づけるアイドル、イメージにもぴったりだ」
茜「私も元気づけてもらいました! ぴったりです!」
未央「うんうん、いいんじゃない!」
芽衣子「じゃ、決まり!」
芽衣子「聖來! 美世!」
聖來「私たち三人!」
美世「UP TUNEの結成だね!」
芽衣子「ファンのみんなを元気にするために!」
聖來「アイドルとして、これがアタシ達の第一歩!」
美世「三人で一緒に、頑張ろう!」
三人「いくぞーっ、オーッ!!!」
おわり
ということでようやく担当三人のユニットを組むところまで行けたよ……
未央→聖來の呼び名は、ニコニコにアップされている平蜘蛛Pの動画をリスペクトさせていただきました。すみません、そして、いつも素敵な話をありがとうございます。
この後も続きや外伝(奥山さん、待たせて御免よ……)書きたいのです、書きたいのですが、時間かかってしまう……いつか、いつかは……
あと、私と同じく、芽衣子、聖來、美世の三人のPをやってるプロデューサーには、勝手にユニット名つけて申し訳ない。このSSの中では……ということで御容赦を
とにかく、時間ぎりぎりだけど、美世、お誕生日おめでとう!
あとでHTML化依頼だしてきますー
忘れてました、最後に
こんな半年に一回しか更新できていないSSシリーズでも、新作を待ってくださっている方がいて、本当にありがたいです、ありがとうございます!
少しでも早く書けるよう、励みます!
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