許嫁「18歳のお誕生日、おめでとうございます」 (388)
許嫁「色々とありましたが、もう18歳ですね。男さん」
男「色々あった、というほど長く生きてない気がするけど」
許嫁「そうでしょうか」フム
ってな感じで始めます。
長くは続きませんが、今作もどうぞよろしくお願いいたします。
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許嫁「ですが、18歳というのは一つの区切りです。男さん、18歳になれば何ができるようになるでしょうか?」
男「えっと、選挙権が得られるとか?」
許嫁「確かにそうですね。ですが外れです」
男「正解と不正解があるのか?」
許嫁「いえ、世間一般としては全て正しいのでしょうけど、私としては外れです」
男「ふむ……。じゃあ大手を振って18禁コーナーへと行ける」
許嫁「……」ジーッ
男「う……」
許嫁「私という存在がありながら、男さんはほかの女性の……その……」
男「い、いや悪かったって。だって思い当たるものを挙げろって言うから」
許嫁「言っていいことと悪いことの区別はしっかりとつけてください」
男(あの暖簾の向こう側、割とあこがれていたりするんだけどなあ)
男「あはは、ごめん」
許嫁「仕方ないですね。今回は許しましょう」ハァ
許嫁「って違います! ほら、私たちの関係になると必然的にやることになることがありますよね!」
男「んー……。でも許嫁はどちらかというと、幼馴染ってほうがしっくりくるんだよなあ」
許嫁「そうですか? では私の←の表記も変えてみましょうか」
男「おいこら。あまりメタな発言はよせ」
幼馴染「え? メタってなあに、男―」
男「……更には天然設定を追加ときたか」
幼馴染「話ぶった切られたから戻すよ」
男(このまま続けるんだ)
幼馴染「ね、男って出席番号幾つ?」
男「学校のか? 18だよ」
幼馴染「なんとも味気ない番号だなあ」
>>5
いえ、一応設定上は同年代ということになってます。
説明不足ですみません。
加えて舞台は男の家です。
男「うるせ。で、それがどうかしたか?」
幼馴染「んんっ。今日は11月で、突然浮かんできた7を足します」
男「すると、18という数字が出てきますね」
幼馴染「それでは答えたまえ。偶然浮かんだ数字の番号の人。18になったらできることと言えば!?」
男「んなアバウトな先生見たことねえよ!?」
幼馴染「いいから! はい!」
男「他……ねえ」
幼馴染「は・や・く」ワクワク
男「夜中でも外に出れる」
幼馴染「そんな遅くに出ることなんてある?」
男「あるんじゃない? コンビニに行くとか」
幼馴染「なるほどねー。他は?」
男「運転免許が取れる」
幼馴染「そっか。18からだもんね」
男「そうそう。行動範囲が一気に広がるってもんだ」
幼馴染「次」
男「なんだか雑になってきてるぞ」
幼馴染「いいから。一番重要なことが出てない」
男「どれも重要なことな気がするけどね」
幼馴染「ってか男」
男「なにさ」
幼馴染「ほんとは、とっくにわかってるでしょ」
男「……何のことやら」
幼馴染「あと私もこの口調疲れるな」
男「そう? 俺は砕けた口調の許嫁も好きだけど」
許嫁「!!」
許嫁「これで男さんから『好き』と言われた回数が20回になりました」
男(口調が戻った)
許嫁「……ですが、いくらなんでも少なすぎではないですか? 20って」
男「そう……かな」
許嫁「男さんが口下手なのは知ってます。百も承知です。私以外でも周知の事実です」
男「ひどい言われようだ」
許嫁「ですが、その。もうこの関係になって7年も経つのに、未だそういう言葉を言ってもらえることが少ないというのはやっぱり、その、寂しいというか」
男「……」
許嫁「そのうち、『大好き』は一度しかないんですよっ!?」
男「あ、ああ。それに関しては今でもよーく覚えているから言わなくていいぞ」
許嫁「あれは寒い寒い冬の夜のことでした」
男「俺の記憶違いでなければ季節は真逆。よく晴れた夏の日だと思うんだけど」
許嫁「寒さにより道端で縮こまっている私に対し……」
男「ねえ無視!? あとそんなシーン見たことねえよ!?」
許嫁「男さんは自らの上着を脱ぎ、自分が素っ裸になることを省みずにそれを貸してくれました」
男「ねえちょっと待って。それ俺、真冬にコート一枚羽織って出歩く変態コートマンになってない!?」
許嫁「……そうですね。男さんは変態コートマンでした」
男「……わかったからあられもないことを捏造するのはやめてくれ」
許嫁「いくらなんでもひどすぎましたね」
男「若干止めるにもやめられなくなってたろ」
許嫁「男さんがいけないんです」ボソッ
男「えっ?」
許嫁「男さんがいけないんですよーっ」ツーン
男「ん……悪い。ちょっと、からかいすぎたか?」
許嫁「……私が……何を言いたかったか、わかりますね?」
男「……そりゃあね。だけど、俺が君に答えを出す前に、親父には話しておかないとな」
男「(俺と彼女は許婚という関係にあるとはいえ、当然昔のような政略結婚という類のものではない)」
男「(この関係になったのが小学5年。その時は双方の親も笑って認めていてくれたけれど、ここでもう一度話をつけなければならないと思う)」
男「(まあ、普通よりも気が楽な結婚報告といったところだな)」
許嫁「そうですね……。私も行きましょうか?」
男「いや、俺一人でいいよ。……さて」
扉「バァン!!」
男・許嫁「!?」
男父「話は聞かせてもらった!」
男「親父ぃぃぃぃ!? ってどこから顔出してやがる!」
男父「押入れだ」ドヤ
男「いやわかるよ! わかるけどわかんねえよ!?」
男父「よっこらしょ」
男「ねえ親父! 部屋の入口向こう! 逆! あとそんな屈んで出てこられても格好良くもなんともねーぞ!?」
男父「話は聞かせてもらった!」
男「言い直してんじゃねぇぇぇ!」
男父「何だ男。騒々しい」
男「待て、そりゃ流石に俺の部屋の押入れは下の階に繋がってるわけがねえよな。もしそうなら押入れで寝泊まりしている、かのネコ型ロボットも仰天だよな」
男父「まあ、ずっと隠れていたからな」
男「……意味が分からねえ」
男父「ああ、母さんもいるぞ」
男「もう俺は何を言われようと驚かねえよ」
男母「許嫁ちゃん、固まってるわよ」
男父「まあ、いちゃついてるところを見られてちゃあなあ」
男「見てた張本人が偉そうに言える台詞でもないけどね」
男父「話があるんだろ。言ってみろ」
男「ったく。二度も話は聞かせてもらったと豪語していたくせによく言うよ」
男「でも、ある意味丁度いいのかもな」
男父「タイミングよく出てきた俺らに」
男「感謝の言葉の一つも浮かばねえよ」
男「……」スウ
>>17
ひゃい。男さんのお家の扉はどうやらしゃべるようです。
男「親父、母さん。俺、許嫁と結婚する」
男父「……」
男母「……」
許嫁「……///」
男「や、その許嫁。照れられると俺も恥ずかしい」
許嫁(つ、つい頬が緩んでしまいました)
男「で、どうなんだ、その」
男父「反対するわけがないだろう」
男「親父//////」
男母「男、三点リーダーの変換間違ってるわよ」
男「(許嫁が照れの感情表すから……)」
許嫁「(この家族全体的にメタいですよね)」
男「とにかくだ。ありがとうな、親父。母さん」
男父「今朝、許嫁君のお父さんから電話があってね」
許嫁「あっ……」
男父「是非よろしく頼むと、そう伝えられた」
許嫁「お父さん……」
男父「それで、次に私たちからの頼みなんだが。……男のことをよろしく頼む」
許嫁「……」
男父「見てのとおり、こんな口下手で面白くもない奴だが根はしっかりしているからな」
男「……親父までそう言うんだな。仕方ないけど」
許嫁「言われずとも、です。男さんは私が精一杯の愛を持って幸せにしますから!」
男「……ん」
男父「ま、その様子だと孫の顔を見るのも近いうちになりそうだな」
男・許嫁「なっ……!?」
男父「よし、じゃあ戻るとするか、母さん」
男母「そうね。それじゃあまたね、男、許嫁ちゃん」
男「……帰りはちゃんと部屋の扉からなんだな」
許嫁「はぁ」
許嫁「……相変わらず明るいご両親ですよね」
男「悪いな。あんなの相手にして疲れただろ」
許嫁「いえ。そんなことよりもいいことがありましたから」
男「いいこと?」
許嫁「はい。……その、部屋の電気、少し落としませんか?」
男「へ? いや、ちょっ」
許嫁「……ダメ、ですか?」
男「ダメではないよ……断じて」
許嫁「……では……」カチッ
男「……ごめんな許嫁」
許嫁「……? 何が、でしょうか」
男「さっきさ、親父たちの前で俺のことを幸せにしてくれるって言ってたろ。……あれ、本当は俺が言わなきゃいけないものだよな」
許嫁「ふふ。そんなことですか?」
男「……?」
許嫁「男さんは何だかんだ言って、ずっと私のことを見守っていてくださいましたから。私はそれで十分なんです。……勿論『好き』だと伝えてもらえる回数が少ないのは寂しいですが……」
男「許嫁……」
許嫁「……はい」
男「……愛してます」
許嫁「……」
男「好きだ、って言葉をあまり口にしなかったのは軽い奴だと思われたくなかったから」
男「そして、許嫁と一緒にいられることが何よりも安心できたから。だから、あまり必要ないと思ってたんだ」
男「だけど、それのせいで君が不安になるというのなら。俺はこの先何度でも君に想いを伝えるよ」
許嫁「……ぐすっ」
許嫁「……はい……」
男「まだ、直接は言ってなかったな。……許嫁」
許嫁「……?」
男「今までありがとう。……俺と、結婚してください」
――数分後
許嫁「……ひっく、うう」
男「そろそろ、落ち着かない?」
許嫁「だって……だってえ……。ずっと待ってたんですよーっ……」
男「待ってた、って。いつも一緒にいただろ」
許嫁「でも、学校も違うし、会っても全然手を出してきてくれないし……。確かなものが欲しかったんですよーっ……」
男「……」
男「――――――っ」
男「……許嫁」
許嫁「……? ……!」
男「……ん」
許嫁「……んんっ」
男「……」プハ
男「……これで、少しは伝わったかな」
許嫁「ああああ……あう」
男「……どうですか。俺もファーストキスを奪った感想は」
許嫁「奪ったというより、私が一方的に奪われただけじゃないですか……///」
男「はは。悔しかったら奪い返してみたら……?」
許嫁「い、言いましたね」
許嫁「目を、瞑っていてください」
男「……ああ」
許嫁「(い、いざ自分からするとなると物凄く緊張と恥ずかしさが伴います)」
許嫁「(……首元に手を回して……。ああ、温かいです)」
許嫁「……んちゅ」
男「……ん」
男「(あー……やっばい、これは歯止めが利かなくなる……)」
許嫁「……はぁ。……男さん?」
男「(抑えろ……抑えろ俺……!)」
許嫁「……むう。構って下さいよー……」クイクイ
男「!?」
許嫁「おーとーこーさーん」ギュー
男「(なんか、もう俺ここで死んでもいいと思う)」
男「(……)」
男「(今まで、我慢していた分、一気にあふれ出したといったところかな)」
男「(はあ……)」
男「(こうなっちまうと、俺も……)」
男父「男―! 俺たち空気読んで外で呑んでくるわぁ!」
男「いちいちいらん報告すんな! あともとより空気読んでくれるつもりなら声かけんなっつーの!」
男「ったく」
男「……電気、つけていい?」
許嫁「……チキンめ」
男「……」
男「許嫁の顔をもっとよく見たい、って理由じゃだめか?」
許嫁「……認めましょう」
男「(このままだと俺の理性が持たなかっただろうし……)」
男父「孫の顔―っ」
男「まだ出かけてねえのかよ!? とっとと出てけ!」
男父「避妊はするなよ!」
男「ねえ、それ未成年の男女に言う言葉!? ちょっと黙ってて!?」
許嫁「……///」
男「ね、ちょっと許嫁もそういう反応するのやめようか」
許嫁「ところで男さん」
男「何でしょうか」
許嫁「結局、手を出してこないという点では変わっていないのですが、その……」
男「……ん、いいのか?」
許嫁「ここで質問です。相方をベッドへと誘う文句として、的確なものを答えなさい」
男「……唐突すぎやしないか」
男「ったく……」
男「まず、のんびりと寝転がってみよう」ゴロン
許嫁「あ、いいですね。こういう雰囲気大好きです」
男「ああ。……やっぱり一番落ち着くよね」
許嫁「ふんふふーん♪」
男「随分とご機嫌だな」
許嫁「腕枕って憧れてたんです」
男「……そっか」
許嫁「男さんのいい匂いがします」
男「ん。……許嫁の髪もさらさらで気持ちいい」
許嫁「頭撫でられるのってとても落ち着きます……」
男「そうだったな……。昔は、よくこうしていたっけ」
許嫁「男さん、照れて少ししかしてくれなかったじゃないですか」
男「そうだっけ。……忘れたよ」
許嫁「都合のいい人ですね」
男「……恥ずかしいから極力思い出したくないんだよ」
許嫁「私は嬉しかったのですが……?」
男「……別に俺だって嫌だったわけではないけどね」
許嫁「じゃあもーいっかいです」
男「……ん」ナデナデ
許嫁「……♪」
男「(落ち着く。……落ち着くけど緊張する)」
男「(……ほんの数十センチ先にいる彼女を、今すぐにでも抱きしめたい衝動に駆られる)」
許嫁「……いいですよ?」
男「へ!?」
許嫁「……二度は言いません」
男「……っ! 許嫁っ!」ギュウウウウ
許嫁「ちょ、つ、強すぎますって!」
男「わ、悪い。……痛かったか?」
許嫁「……倍の力で抱きしめ返します」
男「妙に積極的だな……」
許嫁「今夜は寝かさない、ってやつですね」
男「……女性の言葉じゃないと思うけどね」
すみません、続きは明日更新いたします。
にゃぱーฅ(•ω•*ฅ)
ゲロ甘やんけ!ええぞ!
男が選挙権得るのは19歳になるだろうがとりあえず乙
>>36
ありがとうございます。甘々大好きなんです。
……自分もこういった経験がしてみたいです。
>>37
そうですね。施行は来年の六月ですしね。
内容にはあまり関係ないので目をつぶってください、すみませんです。
男「……」
許嫁「……」
男「(気まずい……。今までに女性経験は皆無だし、彼女とこういう状況に陥るのも初めてのことだ)」
男「(そりゃ許婚という関係上、いつかはこういうことにもなるとは覚悟していたんだけど……)」チラ
許嫁「……?」
男「(だめだ、恥ずかしくてまともに顔も見れやしない)」
許嫁「……」
男「(許嫁は許嫁で黙ったままだし。……まるで何かを待っているように)」
男「(いや、確実に待ってるんだよな)」
男「(実際俺はこうやって彼女と共にいられるだけで安らぎを得られるから、今はそれ以上がなくてもかまわない)」
男「(ま、だけど許嫁の子の表情からするに、それは許してくれそうもないのかな)」
男「……」
男「許嫁」
許嫁「はい」
男「俺は、そのこういうの慣れてないし、今君に投げかけるいい言葉も持ち合わせてない」
男「だけど、えっと。君一人くらいはちゃんと幸せにしていきたいと思う」
男「……だから」
許嫁「今夜は俺と一緒に、ですか?」
男「……」
許嫁「……」
男「……なあ許嫁?」
許嫁「……ごめんなさい」
男「……ったく、最後まで君はぶれないんだな」ハア
許嫁「最後なんかじゃありません。まだ、中間にすら届いてませんよ」
男「俺はもう十分なくらい許嫁には満たされてる気がしてるけどね」
許嫁「私は全く足りてません。コップがあったとしたら一滴しか入ってないほどにです」ムウ
男「……そのコップを満タンにするにはどれほどの愛が必要ですか?」
許嫁「今のペースだったら男さんの人生全てをかけても間に合いませんね」
男「あはは、それは頑張らなきゃいけないな」
許嫁「因みにそれが終わったら隣に大きなバケツがあります」
男「……俺が枯れ果てるぞ?」
許嫁「男さんのバケツは常に満タンにできるように、私は頑張りますのでそんなことはありません」
男「……それういう意味で言ったわけではないけど、全部受け止まられるように頑張るよ」
許嫁「ですが今日はわたしが男さんのを受け止める日です。記念すべき初夜ですね」
許嫁「一杯注いでください」
男「……」
許嫁「……いつまで待たせるつもりですか?」
男「流石にさりげなくそっち方向にもっていくのはどうかとおもったけどね」
許嫁「ほらほら男さん。ここに二つの大きなやわらかーいのがありますよー?」
男「(小さい)」
許嫁「……?」ジッ
男「……何も言ってないだろ」
許嫁「そう思うなら触ってみたらどうです? あまりのやわらかさに声が出なくなりますよ。……たぶん」
男「……」
許嫁「いいですか、現実は非情です。漫画とかでよくあるCカップは現実で言うEです」
許嫁「だからこの私のおっぱいだってしっかりCはあるんです。……たぶん」
男「……あはは、少し反応に困るんだけどな」
許嫁「何がともあれ、どうぞ」
男「……わ、わかった」ムニュ
許嫁「(はわわわわっ……///)」
多分僕はここより後を上手く書ける自信がないので各自で脳内補完していただけると助かったり……?笑
一応ここすっ飛ばしていつも通りの甘々を続けるのは可能なのですがどういたしましょうか……
のんびりとですが続けてみることにします。
男「……」ムニムニ
許嫁「~~~~~~~っ///」カァァ
男「(やわらかー……)」
許嫁「(はう……)」
男「許嫁って意外と初だよな」
許嫁「い、いけませんか?」
男「いや、なんか普段はそんな印象ないからなんだか新鮮に感じただけ」
許嫁「(こういうことには慣れてないだけです……)」
男「(それにしてもすごいな、なんつーか……)」
男「(服の上からでも弾力が……)」ポヨン
許嫁「やっ……///」
男「えっ!? わ、悪い。痛かったか?」
許嫁「い、いえ……。何でもありません」
許嫁「(つい変な声が出てしまいました……)
男「……?」
男「……」モミモミ
許嫁「……」
男「(病みつきになりそうだ)」
許嫁「……あのー、男さん?」
男「! っと、ごめん、つい夢中に……」
許嫁「い、いえ。喜んでいただけたのなら私も嬉しいですから」
許嫁「(日々のバストアップの成果ですっ!)」フンス
男「(んーでも本当にCあるのだろうか……)」
許嫁「ところで男さん」
男「はい、なんでしょう」
許嫁「少し、電気を暗くしていただけませんか? やっぱり、明るいところでされるのは恥ずかしいので」
男「あー。そっか、了解」
許嫁「そしてですね男さん」
男「お次はどーした?」
許嫁「私もメスですから、その、こういうことをされるとそういう気分になってしまいます」
男「メスとか言うなよ……」
許嫁「えへへ」
男「ったく……」
男「でも、俺もちょっとやばいかも……」
許嫁「と言いますと?」
男「言わせる気か……。許嫁のそんな姿見てるとやっぱりその、さ」
許嫁「オスになっちゃいます?」
男「うん、だからその言い方やめない? ……まあそういうことなんだけども」
許嫁「じゃあ狼さんですね! あっ、でも今はどちらかというと子犬さん?」
男「どこ見て言ってんだ!」
許嫁「すみません、冗談です。少し場を和ませようかと思いまして」
許嫁「私たちの間柄だとこっちのほうがお似合いな気がしますから」
男「(俺はもう少し大人しくなった許嫁でもいいんだけどなぁ)」
許嫁「で、でも、やっぱり私としてはですね。折角のはじめての日なのですから、その、そういうムードというものがあっても……」カァァ
男「(ああもう可愛いなあもう!)」
自分で雰囲気変えといてその言い草はないだろ、というつっこみは野暮ですよ?
許嫁ちゃんだって緊張してるんです。暖かく見守ってあげてください。
許嫁「ふふ。男さん顔真っ赤ですよ?」
男「うるさいなあ……。誰のせいだと思ってるんだか」
許嫁「そうですね、私も人のこと言えないくらいに物凄くドキドキしていますからお互い様です」
男「手、繋いでみたら脈拍さえも伝わりそうだよ……」
許嫁「……はい」
許嫁「男さんから手を繋ごう、と言われるのも数えられるほどしかありませんね」
男「普段は俺が言い出そうとする前に君が繋いでくるだろ……」
許嫁「……黙ってたら言い出してくれてましたか?」
男「(恥ずかしいから言い出せずにいそうだ)」
男「許嫁の手、温かいな」
許嫁「手が温かい人は心が冷たいと言いますね」
男「……心が冷たい、ねえ」
許嫁「どっ、どこ見てるんですか///」
男「あはは。少なくともそんなことはなさそうだ」
許嫁「……あ、ありがとうございます」
許嫁「その反面、男さんの手は冷たいですよね」
男「単に冷え性なんだよね」
許嫁「そうでしたね。冬場はいつも厚着してましたし」
男「もう11月だし、本格的に冷えてくるからなあ……」
許嫁「寒がりの人は大変ですね」
許嫁「……」
許嫁「えいっ。……こうすれば暖かくないですか?」
男「……だな」
許嫁「苦しくはないですか?」
男「うん、全然。丁度いいよ」ダキシメカエシー
許嫁「……!」
許嫁「……♪」
男「(当たってるんだよな……。さっきあんなことした手前、もう緊張はしないけど……)」
許嫁「? どうしたんですか? 顔なんて逸らして」
男「……わざと当ててる?」
許嫁「温めてるだけです」ギュー
男「(確信犯か)」
許嫁「今はつけてないのでやわらかいでしょー」ムニュー
男「!? じゃあ……さっきのって……」
許嫁「そ、そんなに驚かないで下さい。お風呂はもう済ませているのですから当然です」
男「(そういうものなのか)」
っと、今更ですが>>42の二行目、男の台詞に誤字がありましたね。すみません。
「それういう意味」となっていますが正しくは「そういう意味」です。
大体の流れでわかっていただけてるのかな……?
許嫁「ぎゅーっと」ダキー
男「!? い、許嫁!?」
許嫁「男さんのいい匂いがするー」スンスン
男「またそれか……」
許嫁「ねえ男さん」
男「ん?」
許嫁「もう一度、キスをお願いしてもいいですか?」
男「……別にお願いされなくたって、だよ」
許嫁「……男さんは優しいですね。では……失礼して……」チュ
男「(俺も甘いのかな)」
許嫁「んー……///」
――――五分後
男「ごめん、俺もそろそろ我慢の限界。……許嫁の身体、見てみたいんだけどダメかな」
許嫁「……ダメだなんて言うはずないです。それにもう私は生涯男さんのものですから」
男「ん、ありがと許嫁」ナデナデ
許嫁「はぅ……///」
男「……」
許嫁「……男さん」
男「ん」
許嫁「……一杯、愛してくださいね?」
許嫁「やあっ……/// んっ///」
許嫁「もう……。男さんのどすけべ……」
――――翌日
男「……」
許嫁「……」
男「(一晩明けると途端に恥ずかしくなったな……)」
男「(……暫くは目を見て話せなくなりそうだ)」
許嫁「……むにゃ」
男「(泣き疲れているんだろうし、もう少しこのまま……)」
許嫁「すー……」
男「(よくよく考えれば今日は日曜日で、明日からまた学校なんだよね)」
男「(別に許嫁と学校も同じなら苦ではないんだけど。はあ……。このまま動きたくない)」
許嫁「……んんーっ……?」
男「……あ、起きた? ……えと、おはよう。許嫁」
許嫁「……」
許嫁「!」カァァ
許嫁「っ!」ガバッ
男「お、おい……布団引っ張ってくなってば。俺の分がなくなるだろ……」
許嫁「む、無理です! 今男さんと顔合わせたら私死んじゃいます……!」
男「だからって布団かぶってまでして顔隠さなくても……」
許嫁「随分と余裕そうですね……」
男「そこまで余裕、ってわけでもないけどね。まあ流石に許嫁よりは理性を保ててた気がしてるから幾分かは気が楽かな」
許嫁「……どの口が言いますか。昨日わたしにあんなことしたくせに……」
男「その割にはスイッチ入ってたみたいだけど?」
許嫁「そ、そりゃあ気持ち良かったですから……その……」ゴニョゴニョ
男「……はあ」
許嫁「それでも、ついにしちゃったんですね。私たち」
男「わざわざ口に出さなくてもいいけど……。そう、だな」
許嫁「覚えてますか? 私は正直こんなことになるだなんて思ってもみませんでした」
男「よーく覚えてる。思い返してみれば、すれ違ってばかりだったもんな」
許嫁「そうですよ。私、初めの頃は男さんのことこれっぽっちも好きじゃありませんでした」
男「……前も聞いたけど酷い言い草だよなあ。こっちは一目ぼれだったというのにさ」
許嫁「でも、小学生の頃の『好き』の気持ちなんて大したものじゃありませんよ。勿論、その気持ち自体はとても大切なものですが」
許嫁「私にとっての始まりは、誰が何と言おうと中学三年の夏です」
男「俺が、君に告白したとき……か」
許嫁「許婚という関係になったのは小学生五年の時でしたが、正式に恋人同士になったのはほんの三年前ですからね」
男「あはは。思えばよく口約束だけの婚約……しかも遊びの延長のものだけで許嫁を名乗ってきたよな」
許嫁「仕方がありません、許嫁という存在は貴重ですから。それだけで希少価値があるというものです」
男「(少しグレーゾーンの発言だ……)」
男「でも、『許婚』という関係があったからこそお互いがより意識しあえた、ってのもあったのかもね」
許嫁「……そうですね。もし、たかが口だけで交わされた約束であっても、この約束がなく私たちがただの幼馴染という関係でしたら」
許嫁「また、未来は変わっていたと思いますか?」
男「……」
男「ちょっと格好つけて言うけど、それでも俺は君を選んでいたと思う」
男「そもそも一目ぼれした時点ではただの幼馴染入門だったしな!」
許嫁「私が越してきて、初めて会ったのは近所の公園でしたからね……」
男「……正直言って、あんまり小さい頃のことは覚えてないんだけどな」
許嫁「私はやけに後をついてくる男の子がいるなー、程度にしか考えていなかった気がします」
許嫁「今では私が男さんの後を追う側ですが」
男「なーに言ってんだ」クシャ
許嫁「んっ」
男「前とか後とかじゃなくてさ。これからは……ってかこれからも隣にいてくれなきゃ」
許嫁「はい……♪」
男「……わかったらそろそろ顔出さないか……?」
許嫁「今はちょっと……無理です」
男「……?」
許嫁「……あの、私は欲張りでしょうか」
許嫁「自分が好きな人に好きでいてもらえる。それこそが一番の幸せなのだと、わかっているのにまだ何かを望もうとしてます」
許嫁「これでもかってくらい幸せなのにです」
男「……幸せだからこそ不安だ、ってこともあると思うんだ」
男「俺はさ、こんなにもかわいい婚約者に一途に想われていてすごく幸せだ。だけど、不意にこれは夢なんじゃないかって不安になるときもあった」
許嫁「……」グス
男「上手く言い表せないんだけど、結局俺も欲張りなんだよ」
男「それこそ、君と同じくらいに」
男「……ってえっ? 泣いてる?」
許嫁「えぐっ……。デリカシーないんですか男さん……」
男「よく言われる」
許嫁「……昨日から男さんには泣かされてばかりです」
男「……悪い」
許嫁「幸せでも涙って出てくるんですね……。迷信だと思ってました」
男「ったく……落ち着くまで頭撫でてやるから早く泣き止んでくれ」ポン
許嫁「……ありがとうございます」
許嫁「(ほんと、優しいです、この人は……)」
ほんと、思いつくままに打ち込んでいるので起承転結というか、話の流れと言いますか……が滅茶苦茶ですみません。
読み返してあららー、ってなりますね。笑
とりあえず今日のぶんはここまでです。(宿題やらないといけませんが故にです)
こうしてほしい等の要望には極力お答えしていくつもりですので、色々と感想なりいただけたら嬉しいですฅ(•ω•*ฅ)
乙です
誤字の訂正や、注釈?補足?はなんか水を差された気分になるから後でまとめてでいいと思う
甘々で面白いからそのままの勢いでOKよ
>>76
ほい!ありがとうございます。こんな内容でも面白いと言っていただけて嬉しい限りです。
少しでも多くの方に砂糖を吐いていただくために頑張ります。
男「……」
男「(布団の中に手を入れて撫でるのやりづらい……)」
許嫁「……ぐす」
男「……はぁ」
男「(もう十時になるのか。……結構ぐっすり眠ってたんだな)」
男「……18歳、か」
男「(高校生活もあと僅か。あっという間だな……)」
男「(大学入試もそろそろだし、許嫁とのこともあるから色々と忙しくなりそうだ)」
男「(結婚、するんだよな……)」
扉「バァン!!」
男「!?」
男父「砂糖吐くわ!」
男「いきなり何なんだよ!?」
男父「部屋の前で暫く立ち聞きしようかと思っていたんだが、耐えきれなくなった。何だよこの甘々しいムードは」
男「じゃあ覗くなよ! あと、甘々しいって響きからして甘ったるいな……」
男父「下手な恋愛ドラマよりもいちゃついてたろう。見ていて恥ずかしい」
男「ねえ、実の父親に覗かれてた俺の方がよっぽど恥ずかしい思いをしてるんだけど、それについては何もなし?」
男父「恋とは様々な障害を乗り越えるものだろう」
男「あんたのは邪魔でしかないよ!?」
男父「急展開にもほどがあるってか? まあ、別に今回のは悪意あってのことじゃあないんだ」
男「だったらノックの一つくらいしような!? 今日はしっかり入口から入ってきてくれたのが幸いだけど」
男父「別に下の階と押入れ繋がってるわけじゃないからな。……んで、少し様子見にとな」
男「様子見?」
男父「お前のことだから許嫁ちゃんを沢山困らせてやいないかってな」
男「……あながち、間違ってはいないかな。沢山、泣かせちゃったし」
男父「え? 沢山鳴かせた?」
男「……」
男父「……」
男「すまん、俺の発言と親父の解釈との間に大きな差があるように感じたんだけど」
男父「冗談だ。まあ、嬉し涙ならいいんじゃねーの」
男「……わかってんなら野暮ったいこと言わないでくれ」
男父「んで、本題だ」
男「はあ!? 今までの何だったんだよほんと!」
男父「そうカッカするな。早く着替えて降りてこい」
男「……?」
男父「もうこんな時間になるからな。お前らが腹すかせてるだろうと、母さんが飯の用意をしてくれてる」
男「……わかった」
男父「ってわけだ。それを伝えに来た」
男父「じゃな」
男「……」フウ
男「(素直に感謝を伝えられないってのは俺もまだ子供だって証拠だよな……)」
男父「おっせきーはんー♪」
男「るせえ! 陽気に歌ってんな親父ぃ!」
男「(でもまあ、あんな父親だからなぁ……)」
男「(……てか赤飯なのね)」
男「おーい……」
男「……聞いてた、よね?」
男「……」
男「てりゃ」ガバッ
許嫁「ひゃ!?」
男「おはよ。……どうかした? さっきとは打って変わって不機嫌そうだけど」
許嫁「無理やり布団引きはがすのはどうかと思います」
男「(目の下少し腫れてるな)」
男「……とりあえず、顔洗ってきたら?」
許嫁「はい。そうします」ツーン
男「……さて、俺も上だけ着替えるかな……」
男「んしょ……っと」ヌギヌギ
許嫁「はあ……。人の寝顔を眺めるのはいい趣味とは言えませんからね?」
男「……あ、あれ。ばれてた?」
許嫁「男さんのしそうなことくらい、簡単に想像できますから」
男「それは弱るな」
男「(つんつんしてたのもばれてるのかな)」
許嫁「では、私も着替えるとしましょう。いくら許婚のみ身とはいえ、人様の家ですしきちんとしておかなければなりませんからね」
男「了解。終わるまで待ってるよ」
許嫁「……あの、男さん」
許嫁「そんなに見ないでください……。恥ずかしいです」キュ
男「っと、そうか。後ろ向いてた方がいいかな?」
許嫁「い、いえ。そんなにまじまじとでなければ構わないのですが……」
男「あ、あはは」
男「(いいんだ)」
許嫁「……んっ」ヌギッ
男「……」
男「(許嫁ってスタイルいいよな)」
男「(肌もきれいだし、細身だし)」
許嫁「……もーっ、何考えてるんですか?」
男「昨日も思ったんだけど、許嫁ってスタイルいいなって。何か頑張ってるのか?」
許嫁「きっ、昨日って……///」カァ
男「そ、そういう意味で言ったわけじゃないからな……」
許嫁「特別何かしているというわけではないのですが、お肉はつきませんね」フニフニ
男「(それでBカップか)」
許嫁「むっ」
男「(鋭い)」
――――数分後
男「さてと。親父たちを待たせすぎるのも悪いしな。行こうか」
許嫁「あのー……男さん」モジモジ
男「ん? どうかした?」
許嫁「えーっとですね。最後にもう一度だけちゅーをおねだりしてもよろしいでしょうか」
男「(甘えん坊だよね、意外と。……って口に出したらまた不機嫌になりそうだけど)」
男「……仕方ないな。ほら、目ぇ瞑って」
許嫁「はい……♪」
許嫁「んっ……」
男「はよーっす」ガチャ
許嫁「おはようございます」
男父「お、来たか」
男母「今ご飯よそうから座ってて」
男「了解」
男母「はい、男のと……許嫁ちゃんの」
許嫁「ありがとうございます」
男「めっちゃうまそう」
男母「後はお漬物くらいしかないけど……まあいいよね?」
男「ん。全然へーき。いただきます」
男「ところで母さん」モグモグ
男「赤飯なんていつの間に用意してたんだ? 少し手間かかるだろ、小豆とかもち米とか必要だし」
男母「こんな時のために、って下準備は昨日のうちにしておいたのよ。今は炊飯器で楽に炊けちゃうし」
男「……それはそれは用意のいいことで」ハァ
男母「これからは食べる機会が幾度なく訪れるわよ」
男「そんなにあるか?」
男母「まず、今日のは初夜祝いでしょう?」
男「ん? ちょっと待ってくれ。何かおかしくない? 俺の誕生日祝いとかじゃなくて?」
男母「それで、結婚祝い。子供が生まれるのと、成人するのとどっちが早いかしら」
男母「頑張ってね、許嫁ちゃん」
許嫁「は、はい!」
男「(さらりとスルーした挙句、遠回しに子作りに励めって言うあたりうちの母さんすげーよな……)」
男「(許嫁もちゃっかり返事してくれてるし……)」
男父「何がともあだ男」
男「ん、次はなにさ親父」
男父「誕生日おめでとうだ」
男「……ん、サンキュ」モグモグ
男父「それで、籍を入れる時期に目途はついているのか?」
男「ああ……。一応、高校を卒業したらって考えてるよ」
許嫁「うぇ!?」
男「な、なんだよ」
許嫁「昨日の流れからして今日じゃないんですか!?」
男「あ、あのなあ……」
許嫁「何のために18歳になればできること、の話をしたと思ってるんですか!」
男「いや、わかってるさ。俺だって晴れて結婚できる身となったわけだし、今すぐにでもしたいとは思ってる」
許嫁「……! では……」
男「だけど、こんな軽いノリで結婚するのはなんだか違う気がするんだ」
男「そりゃ俺の親だって、後でもう一度話をしに行く許嫁の両親だって快く認めてくれるんだと思う」
男「だけどほら、一生に一度しかないんだしさ? もう少しだけ待ってからでもいいと思うんだ。……だめかな」
許嫁「むぅ……。折角楽しみにしていたのにー」
男「あはは、拗ねるなって。それにさ、口約束だけだった許嫁が正式なものになったんだ。今はそれで許してくれ」
正式な許嫁「なるほど。こういうことですね」
男「(どういうことだ)」
正式な許嫁「まだ腑に落ちない点はありますが、男さんの考えはもっともだと思います」
正式な許嫁「ですので仕方ないですが、もう暫くだけ待ってあげます」
男「ああ。悪いな、おれのわがままで。……ありがと、許嫁」
正式な許嫁「愛する男さんの頼みですから」
男「……軽々とそんな恥ずかしいこと口にすんなって」
正式な許嫁「あれ? 照れてますー?」
男「か、勝手に言ってろ!」
男父「…………母さん、コーヒーをブラックで一杯」
男母「はいはい、ただいま」
正式な許嫁「ところで、男さんの表記は変わりませんね」
男「←(ここ)のこと言ってるんだったら変わること自体がおかしいからな?」
正式な許嫁「この際ですし、変えてみてはいかがですか?」
正式な許嫁「そうですね。変態コートマンとかはどうでしょう」
男「順を置いてつっこみたい次第だよ」
正式な許嫁「冗談です。えーっと、脱童貞男あたりが妥当ですか?」
男「冗談って最初からじゃなくて? その名前に妥当も何もないよね!? 加えてなんだよその恥ずかしいネーミング……」
正式な許嫁「恥ずかしいでしょうか? 確かに童貞であるのでしたらそれは恥じるべきかもしれませんが、男さんの場合違いますし……」
男「(俺はそういうことを言いたいんじゃないんだけどなぁ)」
正式な許嫁「あ、このお漬物美味しいです」モグモグ
男「……はあ」
男「これは、先週ばあちゃんが送ってきてくれたんだよね。少し辛くて俺も好きだな」
正式な許嫁「うまうま♪」
男「ごちそーさま。……許嫁、今日は暇?」
許嫁「はい。男さんと過ごすために、塾にもお休みの電話をしてあります」
男「そっか。少し悪いことしちゃったな」
男「……それじゃあさ、少し散歩に行かない?」
許嫁「デートですか!?」
男「ま、そうだね。いかがなさいますか? お嬢さん」
許嫁「こちらからもお願いします」
男「……ってなわけで、少し行ってくるよ。昼飯は大丈夫」
男母「はーい。いってらっしゃい」
許嫁「男さん100です!」
男「え? 何が?」
正直50くらいで終わる予定だったのですが……笑
みなさんありがとうございます。
――――十分後
男「ううう……さっぶいなぁ」
許嫁「……」ジー
男「ん? ……っと、そっか。はい」
許嫁「正解です」ギュ
男「(手ぇ繋ぎたいなら素直にそう言えばいいのに)」
許嫁「ところで、どこへ向かってるんですか?」
男「んー……特に考えてはいないんだけど、とりあえず公園かな」
許嫁「公園ですか」
男「不満?」
許嫁「いえ。……ただ少し、昔のことを思い出していただけです」
男「……思い出すほど、公園に思い入れなんてあったっけ」
許嫁「冗談なら刺します。冗談じゃなかったら切り落とします」
男「……物騒なこと言うのはやめてくれ」
許嫁「私はあの日のことを覚えている範囲で口にする準備はできていますよ?」
男「勘弁してくれよ。あの時は相当滅入ってたんだから」
許嫁「そんな状態でよく私に告白してきましたよね」
男「……それだけ縋りたいものがあったんだよ。……きっと」
許嫁「煮え切らない返答ですね。それでは……。あれは暑い夏の夕暮れのことでした……」
男「(寒い寒い冬の夜のことでした)」
許嫁「男さんは部活の最後の試合に負けて、大変落ち込んだ様子でした」
男「(寒さにより道端で……って極寒地でもあるまいし……)」
許嫁「別に男さんのせいでの敗退でもありませんし、誰一人男さんのことを責めていたわけでもなかったのにです」
男「……いやー、ほんとに悔しかったんだよ……」
許嫁「本当にあの時は声をかけるべきか迷いました」
男「一人にしてくれオーラ出してブランコ漕いでたからね」
許嫁「でも、声をかけて正解だった気がします」
男「……あの状況で不意に優しい言葉かけられたら誰だってひとたまりもなかったと思うよ」
許嫁「男さんが涙を見せるなんて滅多にありませんでしたからね」
男「……恥ずかしいから余計なことは言わなくてもいいって昨日も言っただろー」
許嫁「ほらー泣け泣けー」グイグイ
男「やめろって」
男「そういえば、許嫁が敬語使うようになったのも、そのあたりからだよな」
許嫁「そうでしたね。これに慣れてしまっていたので、すっかり忘れていました」
男「未だにどうしてなのか知らないんだけど」
許嫁「敬語を使うお嫁さんはモテるという話を聞いたことがありましたから……」
男「……それだけ?」
許嫁「はい」
男「(確かに敬語で話しかけてくれるお嫁さんは理想的だと思う)」
男「(なんていうか、常に自分を信頼してくれているというか、しっかり者だとかいう印象があるからなのか)」
男「でも、年の差があるわけでもないしなー……」
許嫁「私のほうがお姉ちゃんなんだぞ?」
男「ほんの三か月だけだろ」
男「ってあれ?」
許嫁「えと、こっちのほうがいいのかな」テレテレ
男「昨日は幼馴染モードだったからノーカウントだとして、やっぱりこっちの方が好きかも」
許嫁「そうなん……そうなの?」
男「いや、な。許嫁との間柄だから敬語使われていようがもはや距離とかは感じなかったんだけど、」
男「自分たちと同年代のカップルはみんな仲良さげにタメ語だから少しだけ羨ましく感じたことも……ってさ」
許嫁「なんだか敬語に慣れすぎててむず痒いなー」
男「まあ、無理に変えてくれなくてもいいからね。許嫁の話しやすいので」
許嫁「じゃあ、気が向いたときに入れ替えます」
男「あはは、了解」
許嫁「公園とーちゃく!」
男「ご機嫌だなぁ。高校生にもなって遊具ではしゃぐなよ」
許嫁「私、鉄棒得意だったんですよ!」
男「俺は逆上がり苦手だったなあ」
許嫁「よーし、男さん見ててくださいねーっ」クルン
男「(子供だ)」
許嫁「えへへ。どうでした?」
男「綺麗なもんだな。……あと、あんまりスカートで逆上がりなんてするなよ?」
許嫁「! ど、どこ見てるんですか!」
男「(離れて全体像見てたら仕方ないだろ……)」
許嫁「ブランコが使用禁止になってます……」
男「……錆びちゃって危ない、ってことなのかな」ギィ
許嫁「平気そうですけどね。乗りたいです」
男「もしものことがあったらあれだろ。ダメだ」
許嫁「じゃあ男さんに乗ります」
男「……へ?」
許嫁「しゃがんでください。肩車です」
男「町の外れとはいえ、こんな公共の場でそんな恥ずかしいことできるか!」
許嫁「ほらほーらっ」グイッ
男「せかしてもダメだっつの……」
許嫁「ちょっとだけ! ね? お願いします」
男「……ったく。反則技は今後使用禁止な」
許嫁「男さん優しいですね」
男「君がずるいだけだ」
許嫁「わぁ……。世界が違います」
男「少し視点が高くなったくらいで大袈裟だなぁ」
許嫁「えいっ! 太もも攻撃!」ムギュ
男「!?(やわらかい)」
許嫁「ふふ。男さん、声が上ずってますよ?」
男「……あのなあ」
許嫁「スカートの裾を前に持っていって目隠し攻撃もできますね」
男「そんなことをしたら、俺は全力で許嫁の足をくすぐるよ」チョン
許嫁「ひゃっ」
男「相変わらず、くすぐりには弱いもんなー」ニヤニヤ
許嫁「男さんのいじわるー」
男「ま、危ないからお互いそれはやめにしよう」
許嫁「ふう。景色が綺麗でした」
男「首元だけがやけに温かいままだ」
許嫁「それは私のぬくもりです」
男「まあ、その通りだね」
許嫁「それで、この後はどうするんですか? 私はだらだらと駄弁るのも好きですが」
男「んー……。これまでに行きたいところは殆ど行ったしなあ。何かご要望は?」
許嫁「そうですね、少し考えさせてください」
……っと、本当に行く当てがないのでどこかいい案ないですか?
何でも言って下さい。
高台?展望台?みたいなとことか
二人の通った小学校
モデルハウスでも見にいけ
>>116
コメありです!えと、作中の時間が足りませんのでまた次の機会に使わせていただきます。
モデルハウスかぁ。本格的な夫婦、って感じがして気に入りました。
許嫁「久々に、私たちの通った小学校へ行くのはどうですか?」
許嫁「なんだかこの懐かしいような雰囲気を残しておきたいので」
男「なるほど、賛成。……卒業以来一度も行ってないもんなー」
許嫁「前を通ることはあっても、ですよね」
男「ここからだと少し歩くな。逆方向だし」
許嫁「まあ、いいじゃないですか」ミギテサシダシー
男「うん」ギュ
許嫁「久しぶりの男さんとの登校です」
男「昔は小学校に向かって毎日一緒に、だったもんな」
許嫁「幼稚なクラスメイトにはよく冷やかされたものです」
男「結婚しろ―、なんて囃し立てられたけどまさか本当になるなんてね」
許嫁「……」ムッ
男「え? 何か悪いこと言ったか?」
許嫁「まさか、ってどういう意味ですかー?」
男「……その当時は考えてもみなかっただろ」
許嫁「ですが許婚関係になったのは小学生の時です」
男「今思えばあんなのふざけてたよな……。言い出しっぺは俺だったけど」
許嫁「いきなり辞書に夢中になりだした男さんが新しい言葉を調べてきたと思えば、それが『許婚』だっただなんて笑っちゃいます」
男「あ行からぱらぱらと見ていたら、丁度目に留まったんだよ」
許嫁「それで、いきなり許婚になろう、だなんて……。あの頃の男さんはかわいかったです」
男「二つ返事で頷いた君も君だったよ」
許嫁「あれは半ば男さんの勢いに押されただけです」
男「(そんなにがっついてたっけか)」
許嫁「私たちのやりとりを聞いて、両親たちも笑っていましたよね」
男「そういえば許嫁の家族と合同の夕食時の出来事だったもんな」
許嫁「ご飯ができるまで少し遊んでて、と言われて辞書をめくる小学生には驚きました」
男「褒められているのか貶されているのかわからないな」
許嫁「男さんのお父さんなんて、盛大に吹き出していたではありませんか」
男「……よく覚えてるな」
許嫁「ふふ。流石に忘れはしませんって」
男「そこで、親父たちに変に祝福されめでたく今に至る、か」
許嫁「男さんも覚えてるじゃないですか」
許嫁「男さん、高校はついに部活へ入らず仕舞いでしたね」
男「……別にいいだろ」
許嫁「はい、構いません。それに毎週金曜日の帰りには学校まで迎えに来てもらって嬉しい限りです」
男「あはは、それくらい別に何ともないよ」
男「許嫁の学校は俺の通ってるところと全然離れていないんだしさ」
許嫁「ですが、よかったんですか? あんなにサッカー好きだったのに……」
男「ああ。中三の夏に全力を尽くせたら俺は満足だよ」
許嫁「(もう一度男さんがボールを追っている姿を見たかったりします……)」
男「ん? なんか言った?」
許嫁「い、いえ、何でもありません!」
――――三十分後
男「(学校に着いたけど、どうしたものか)」
男「……っと流石に日曜日だから生徒はいないか」
許嫁「そうですね。……ってあれ? あの遊具替わってます」
男「……ほんとだ、前は大きな滑り台だったのに」
許嫁「……勝手に入っちゃダメでしょうか」
男「んー。卒業生だ、っていうのも通じなくはないんだろうけど証明するものもないしね」
許嫁「誰か知ってる先生は……」
男「もう六年も経つんだから厳しいんじゃないかな……」
男「……って、あれ?」
許嫁「どうしたんですか?」
男「ほら、あそこ。用務員のじいちゃんが」
許嫁「! ……呼んでみましょう!」
男「えっ?」
許嫁「おーいっ! おじいちゃーんっ!」
男「(恥ずかしい……)」
許嫁「あ! 手招きしてますよ。行きましょう」
男「はいはい」
あ、補足として校門を入って左側にすぐ校庭があるので外からでも遊具が見える仕組みになってます。
用務員のおじいちゃんがいるのはその真逆、右側の下駄箱の近くです。
許嫁「おじいちゃん! 私のこと覚えてるー?」
男「……いくらなんでも馴れ馴れしすぎるだろ、許嫁」
爺「おお、やっぱり許嫁ちゃんじゃったか。すっかり綺麗になちゃって」
許嫁「えへへー」
爺「ということは、隣にいるのは男君かな?」
男「! 覚えていてくれてたんですか。……ご無沙汰してます」
爺「君らはよく用務員室に入り浸っていたからの。……来なさい、お茶くらいだそう」
許嫁「やったぁ!」
男「(昔の許嫁を見ているようだ)」
男「……うわ、変わってないなー」
許嫁「見て見て男! この折り鶴たちまだあるよーっ」
男「ほんとだ。確か、卒業前にじいちゃんにあげたやつだっけ」
許嫁「ちゃんと残しててくれたんだ。嬉しいなっ」ピョン
爺「ははは。まあ、座ってなさい」
許嫁「ここ私の特等席―。って、流石に座布団は新しいのになってるかぁ」
男「よいしょ、っと。そうだね、たしか落ち葉の模様のだったもんな」
爺「はい、許嫁ちゃん。男君」トン
男「すみません、わざわざありがとうございます」
許嫁「はーっ。温まるなぁ」
男「……くつろぎすぎだろ君は」
爺「はっは。昔は男君も似たようなものだったろう」
許嫁「ほんとだよ。むしろ私がくつろぎすぎって注意する側だったよ?」
男「昔は昔。俺も子供だったの」
爺「わしから見ればまだまだ子供だ。……ええと」
男「あ、高校三年です。来年からはもう大学生ですよ」
爺「早いものだ……。もうそんなに時間が経つのか」
許嫁「でも、おじいちゃんが元気そうで安心したよ」
爺「嬉しいことを言ってくれる」
許嫁「えへへ。あの頃はいーっぱい迷惑かけちゃったから」
男「もう、辞めちゃってるかと思ってたんで会えてよかったです」
爺「いい生徒たちに恵まれてわしも幸せだよ」
男「あはは。こんな騒がしかったり、邪魔しに来てた生徒でしたけどね」
爺「子供は元気なくらいがちょうどいい。今の生徒たちはそういう馬鹿なこともしなくなってきとるから」
許嫁「男、馬鹿だったって」
男「……そこ違くない?」
許嫁「でもそっかー。私たちみたいにここに入り浸ろうとする人はいないんだね?」
男「真面目というか、つまらないというか。どちらと取るか、だよね」
爺「ところで、二人はどうしたまたここに」
許嫁「散歩ついでに、ちょっと寄ろうかってことに」
爺「そうか。……二人はまだ一緒にいるんじゃな」
男「っと。はい……」
許嫁「男、私に言わせて」
男「あ、ああ」
許嫁「おじいちゃん、今日は少し大事な報告があったりします」
許嫁「私たち、来年の春に結婚することになりました」
許嫁「やっぱり、こういうことは昔お世話になった人に伝えたいなーって思って……」
爺「……」
爺「そうか、おめでとう。許嫁ちゃん、男君」
許嫁「うん!」
爺「そうかそうか。めでたいのう……」
許嫁「あはは、照れるよー」
爺「本当に、我が子のように嬉しいものだ」
許嫁「おじいちゃん……」
爺「はっは。許嫁ちゃんは少し泣き虫になったか」
許嫁「な、泣いてないもん!」グス
男「(その後俺たちは少しの間雑談をして小学校を後にした)」
許嫁「いやー。用務員室もだけどおじいちゃんも変わってなかったねー」
男「そうだな。……ねえ許嫁」
許嫁「ん? なあに?」
男「君さ、ほんとは……じいちゃんに報告するためにここ来たんだよね」
許嫁「あは、ばれてた?」
男「気づいたのは君が俺を制した時だけどね」
許嫁「……うん。おじいちゃんにはほんと、よくしてもらったから」
男「……優しいな、許嫁は」ポンポン
許嫁「んー♪」
男「でも、よくじいちゃんが学校に残ってるって知ってたな」
許嫁「近所の情報収集能力はすごいから」
男「ああ、そっか許嫁友(以下女)ちゃんの弟さんが通ってたもんね」
許嫁「ん、正解。女ちゃんにも最近会ってないなぁ」
男「……俺も、男友(以下友)には半年近く会ってないかな。たまに連絡は取るけど、お互い受験生だし」
許嫁「っていうと出てくるのが見事なフラグ回収なる創作のいいところだけど、そうはいかないもんね」
男「また危ない発言を……」
男「さて、お茶菓子ももらったから本格的にお腹がすいてないな」
許嫁「そうですね」
男「あれ、敬語に戻っちゃったか」
許嫁「さっきのはおじいちゃんの前だったから昔に戻っただけです」
男「なるほど。……じゃあ、少し景色のいい場所へと行こう」
許嫁「いつもの高台ですか?」
男「そうそう。最近時間なくて行ってなかっただろ? のんびりしにどうかな?」
許嫁「高いところは風が強いので苦手ですが賛成です。私もあの景色は好きなので」
男「季節によって印象ががらりと変わる場所だもんね。……さ、行こうぜ」
高台というとアマガミを思い出す
>>135
高台だとか、屋上だとか。そう言った類の場所にハズレはないですよね。
個人的にノベルゲーはスマホアプリのFragment's noteシリーズが好きです。
許嫁「んーっ! 風が気持ちいです!」
男「さっき、風が強い云々言っていたけど大丈夫か?」
許嫁「風が強いのと景色の良さが互いに打ち消しあって、平気なんです」
男「(肝心の景色の良さも消えたら元も子もない)」
許嫁「……少し歩き疲れたんでベンチに腰掛けましょう」
男「あはは、賛成。暫く上り坂だったもんな」
許嫁「はー……。空も晴れてて絶好のお散歩日和です」
男「ん……。若干冷え込むけど、俺としては絶好のお昼寝日和だよ」
許嫁「休日の昼間に寝るなんてもったいないですよ?」
男「ずっと受験勉強だったんだから、少しくらいの休養は必要さ」
許嫁「大して勉強していないくせによく言いますね」
男「それを言われるとあれだな、言い返せない」
許嫁「……ふふ」
男「な、なんだよ」
許嫁「眠いですか? 男さん」
男「え? そりゃ、まあ。こうやってのんびりとしてると少しは」
許嫁「膝枕いかがですか?」
男「え!? まじで!?」
許嫁「……好きなんですか? 膝枕」
男「ほんのすこーしだけ、ほんとに少しだけ。憧れてた」
許嫁「……」ジトー
男「……む」
許嫁「はぁ、わかりやすい人ですね。……どうぞです」
男「……!」パァァ
男「……それじゃ、おじゃまします。……なのかな?」
許嫁「ばっちこいです」
男「お淑やかさ成分が抜け落ちてるぞ」
許嫁「はたして許嫁にお淑やかさは必要か否か」
男「世の女性には例えどんな人であろうとも少なからず備わっていて欲しいものだよ」
許嫁「馬鹿笑い女子とかモテませんものね」
男「男性陣ってよく笑う女性が好きだ、とか言うけど笑い方には厳しかったりと勝手だよな」
許嫁「それは私たち女性陣の台詞ですよ」
許嫁「ですが、上品な雰囲気というのは意識してもなかなか出せるものではありませんよね」
男「……普段敬語で外面のいい君がよく言うね」
許嫁「外面いい、ってなんですか。真面目だって言ってもらいたいです」
男「へーへー、真面目真面目」
許嫁「むっ」ベシ
男「あだっ! そこ、みぞおち……」
男「ま、別に許嫁は元から大人しい性格……なんだからそのままでいいと思うよ。俺はさ」
許嫁「間があったのが気になりますね」
男「(膝枕をされているとき、自分はどこを向くのが一番良いのだろうか)」
男「(一般的には、そのまま上を向いて、膝の主との会話を楽しむというものがあげられる)」
男「(だけれど、横を向いて彼女のやわらかな腹部へと顔をうずめるのも捨てがたい)」
男「その他の選択肢……つまりうつ伏せになるというのは流石に論外であるけれど」
男「そして結局、外向き……。候補にすら挙がらなかった方向を向いたチキンな俺がいる」
許嫁「いかにも膝枕初心者が考えていそうな発想ですね」
男「!? な、何で!?」
許嫁「後半二つ。括弧がなくなってます」
男「……作者の意図と俺の不注意が偶然にも重なったわけね」
男「はふ……こうしてると本当に眠気が増してくるよ」
許嫁「いいですよ、少しばかりおやすみになってください」
許嫁「決してくすぐりはしませんから」
男「(……さっきのこと根に持ってやがる)」
許嫁「……そんな顔されなくても、何もしませんって」
男「人の睡眠を妨げるものは、本当になくなればいいと思うんだ」
許嫁「では朝の目覚まし時計のセットもいりませんね」
男「いや、それは困る」
男「……」スー
許嫁「(五分とかからず、本当に眠ってしまいました)」
許嫁「(なんだか可愛らしいです)」
許嫁「……」
許嫁「ふんふふーん♪」ナデナデ
許嫁「……」
許嫁「えへへ」
許嫁「(って私は何を)」
許嫁「(時の流れって早いものですよね)」
許嫁「(……もう大人、ですか)」
許嫁「(将来男さんと二人暮らしをするようになって、働いて。私はこの人の帰りを待つ側でしょうか)」
許嫁「(もしかしたらその頃にはすでに子供がいるかもしれません)」
許嫁「(その、未来の私は幸せでしょうか)」
許嫁「(幸せ以外の何物でもありませんよね……)」
許嫁「(……こんなに愛せる人と共にいられて)」
許嫁「むむ……」キョロキョロ
許嫁「……」
許嫁「……」チュ
許嫁「……んー」
男「……?」
男「……ん?」パチ
許嫁「……え?」
男「……えっ?」
許嫁「……」パチクリ
男「……あのー、許嫁さん?」
許嫁「……な、ななな何で目を覚ますんですか!?」ヒ
男「逆に驚かされたのは俺だっつの……。いきなり許嫁の顔が目の前にありゃ……まあ、その嬉しかったは嬉しかったんだけど……」
許嫁「……ふつう、こういうシーンでは私がこっそりとちゅーする場面なんですけどね」
許嫁「何を考えてるんでしょう」
男「俺に訴えかけるな」
男「えっと、どれくらい寝てた?」
許嫁「ほんの三十分ほどです。もう少し寝顔を堪能したい感はありますが」
男「あのなあ。……ってあれ、メールが来てる」
許嫁「誰からですか?」
男「親父。……えっと、六時ごろに帰ってこい。それまでは家には入れず。覚悟しろ。……何だこれ」
許嫁「……どういうことでしょうか?」
男「俺も今一つ理解できてないけど。……なんかあるのかな、今日は」
許嫁「男さんの誕生日会の準備とか?」
男「君のならまだしも、あの両親そんなキャラじゃないからなあ。……ほら、今朝の赤飯のくだりもそうだったし」
許嫁「そうですか……。なんだか残念です。もう少ししっかりとお祝いしたかったのですが……」
男「あはは、もう十分祝ってもらったから満足してる。昨日の夜だって、一時間前からそわそわしてたもんな」
許嫁「……いやはや、お恥ずかしい限りです。世界中の誰よりも早く祝いたかったんです」
男「そんなことしてもらわなくても、君が一番だったと思うけど」
許嫁「いえいえ。男さんのお父さまがたも侮れませんから」
男「(誰よりも早く心の中で祝ってた、ってか)」
許嫁「何がともあれ、買い物に行きませんか? 男さん」
男「買い物?」
許嫁「はい。折角の誕生日なのですから、何かプレゼントを贈りたいんです」
許嫁「本当は用意する予定だったんですけど、毎年私好みのものをあげていたので今年は男さんの欲しいものを、と」
男「……んー、ああ。そうだな。いただいておくよ」
許嫁「そうと決まれば行きましょう! 目標はあのデパートです! さあ!」
男「(ご機嫌だなぁ)」
男「(ま、たまには引っ張られるのも悪くないか)」
っと、ここまで付き合ってくれた皆さんにお知らせです。
申し訳ありません! ちょいと定期テストが近いので暫く更新が止まってしまいます。
勉強もせず頭ん中は色々な妄想でいっぱいなんですけど、まあ頑張らねばなりませんし……
ってなわけで待っていてくれたり、コメントを残しといてくれてたりすると嬉しいですฅ(•ω•*ฅ)
そうか、もう定期テストの時期なのか…
もうちょいしたらセンターの時期だしなぁ
待機
エタらなきゃ文句はないさね
リアルお大事に
待つぞ
ただいまです! お待たせしました多重の意味で終わらせてきましたてすと。
>>152
冬場ですからねー…… 先輩方には頑張って欲しいものです
>>153
ありです! 最後までよろしくお願いします!
>>154
完結してない作品を読増されるのは僕も嫌ですから頑張ります。ありがとうございます。青春したいです。
>>155
ばりばりの学生です。元気出してください、変わろうと思えば人は何とやらです。生言ってすみません。
ってなわけで書き溜め少しだけですが投下していきます。
男「ハロウィンが終わったと思えば、一気にクリスマスだよね。街の雰囲気は」
許嫁「そうですよね。もう少し惜しんでも良い気がします」
男「なー。一瞬でハロウィングッズは片付けられちゃうから……」
許嫁「所詮商売目的としてしか考えていないんでしょう。大人の方々は」
男「まあ、それもその立場になればわかるのかもしれないけど……。物悲しさのかけらもない、っていうのも考えようだよね」
許嫁「はい。本当にです。日本人は忙しいですね」
男「なんか、見ていて気が詰まりそうだよね。今の世の中は」
許嫁「全くです。変なところにばかり拘っていないで、もっと自由に生きるべきですよ
」
男「これからの世の中を担っていくのは俺たちだけど、君は頼もしい限りだな」
許嫁「男さんは頼りない人ですよね」
男「ちょくちょく俺と君との会話には隔たりがあるよね!?」
許嫁「冗談ですよ。怒らないでください」
男「はあ……。怒ってない怒ってない」
許嫁「そんなことよりほら! デパートに着きました!」
許嫁「いろいろ見て回りましょう! 男さん、欲しいものがあればすぐに言ってくださいね?」
男「俺は、許嫁が選んでくれるものだったら何でもいいんだけどね」
許嫁「十年近く色々なものを渡しているのですからそろそろネタに走りますよ?」
男「(彼氏の誕生日にネタ要素豊富のプレゼントを贈る彼女もいかがなものかだな……)」
男「とりあえず、参考までにそのネタとやらを教えてもらえるかな」
許嫁「そうですね、まずは刺抜き?」
男「疑問形で答えるな疑問形で。しかも随分と安物だ! せめて将来役に立つかもしれない髭剃りとかさ? まあ、それも高校生らしさを全く感じないけど!」
許嫁「でしたら梳きカミソリなんかはいかがです? 適度にすね毛等を梳くことができるこの商品は割と好評らしいですよ」
男「ねえねえ許嫁? とにかく毛を抜くことから離れよう?」
許嫁「あ、育毛剤ですか? 毛は生やすものですものね」
男「いや違うよ!? 生やすものという点においては間違ってないけどさ! 最初から思い直して、お願いだから」
許嫁「梳きカミソリで思い出しましたけど、昔これ流行りませんでした?」カチャ
男「ん? なんだよケータイなんか出して」
許嫁「ねえ男―っ、これ何て読むの? →『鍬』」
男「ああ。……えっと、これ……は『すき』だよ」
許嫁「うぇ!? い、今なんて?」
男「ん? だから『すき』だって」
許嫁「え、ちょ、ちょっと落ち着かせて。……うん、それで?」
男「ああもう……。だから『すき』だって言ってるだろ!」
許嫁「はわわわ」カァァ
男「(なんだろうこの寒々しい茶番)」
許嫁「もう。男さんったらこんな街中で「すき」だなんて大胆すぎます……」
男「よくよく考えたらさ、ケータイの画面に文字表示させた時点で読み方知ってるよね」
男「でもこれはつい乗ってしまった俺も悪いから何も言い返せないのか」ハァ
許嫁「流行ったのは小学生の時でしたっけ?」
男「一部の間でだけだったけどね」
男「っと。……とりあえず周りの目が痛いから店の中入ろう」
許嫁「はい、そうですね。……昔の慌てふためく男さんの姿を少しだけ思い出しました」
男「そんなこと思い出さなくていいから」
男「あったかいなー。流石は屋内」
許嫁「暖房は素晴らしいですよね。どちらかというと私はこたつの方が好きですが」
男「俺はふわふわの布団に包まるのも好きだな」
許嫁「わかります。美味しいですよね、餃子」
男「どこまで君のボケにつっこめばいいのかな、俺は」
許嫁「飽きるまで?」
男「言うと思ったけど」
許嫁「当たるまで?」
男「やめようよそのパチンコで当たるまで打つ、みたいな言い方!」
許嫁「ギャンブルはいけませんよ? 男さん」
男「しないよ!? 第一してないよ!? あとパチンコはギャンブルの一種って言うのかな」
許嫁「どうでしょうか。ですが、あまり良いものではありませんよねパチンコ」
男「うん、言い直さなくてもいいから。なんか違う言葉に聞こえてきちゃうから」
許嫁「男さんのエッチング液」
男「それは腐食液の名称だな」
許嫁「男さんのエッチガニ」
男「彼らも模様が『H』に見えるって理由だけでそんな名前にされちゃってかわいそうだよね」
許嫁「男さんのえっちらおっちらどーんどん」
男「意味が分からないよもう……」
許嫁「んんっ。気を取り直して若い男女らしいムードに戻しますか」
男「今更過ぎるけどね!? あと最初と比べてキャラが変わりすぎてるよ許嫁は」
許嫁「仕方がないじゃないですか。その場の思い付きのみで成り立ってるんですから」
許嫁「それに、過去に縛られていたらつまらないですよ?」
男「この件に関しては過去とも統一しておいて欲しかったよね」
許嫁「許嫁はほぼ勝ち確定ですから。少々羽目を外そうとも構わないのです」
男「確かに幼馴染との比率を考えれば圧倒的に勝率高いよね。立場的にも諸々」
許嫁「幼馴染ちゃんが報われるお話がもっともっと増えるといいですよね」
男「同感。何にも気兼ねなく読むことのできる一対一も、沢山増えてくれると嬉しいよ」
許嫁「ネット等でも様々な体験談を見かけますよね」
許嫁「許嫁との馴れ初めだとか、許嫁が好きすぎて辛いだとか」
男「対象が許嫁であることにはあえて何も言わないでおくよ」
男「俺は他人の話を聞くときは片思いのお話の方が好きだな。その書き手が報われると尚良しで」
許嫁「片思いですか?」
男「うん。なんか、恋のことで悶々としてる人見るとなんだか幸せになる」
許嫁「乙女ですか男さん」
許嫁「ですがそれって一歩違う見方をすると自分はリア充だから、そうでない人を見て嘲笑うんだっていうやな人になりますね」
男「他人の不幸は蜜の味、ってか」
許嫁「いぇす、メープルです」
男「……」
許嫁「メープルなのです」
男「(かわいい。……よくわかんないけど)」
――――1時間半後
許嫁「……はあ。話しながら一通り見て回ってしまいましたね」
男「だな。許嫁はどう? 久々のショッピング楽しめた?」
許嫁「はい! 新しいものとか、かわいいものとか沢山あって! ……って! 肝心の男さんへのプレゼントっ」バンッ
男「あはは、気にしないでって。許嫁の楽しそうな姿が見れて俺は満足だよ」
許嫁「いえ! そんなわけにはいきません! ……暫く待っていてください。やっぱり今年も私が選んできます!」
男「え? あ、まあいいけど。……じゃあ30分くらいでいいか?」
許嫁「それだけいただければ十分です!」ダッ
さてと、次回までに男さんへのプレゼント考えて来ます。
因みにこの作品は、僕の誕生日が近かったことから友人……友人?に「誕生日テーマで一つ」と頼まれたの+現代社会の授業で丁度法律云々のことを習ったからという端的な発想から始まりました。
何が言いたいかというと迷走してます。
それではおやすみなさい💤
乙
掛け合いもいいけどもっと甘々でいいのよ?
>>170
甘々って難しいじゃないですかー……
がんばりますありです!
許嫁「はあ、はあ。……お待たせしました!」
男「……急がなくてもよかったのに」
許嫁「男さんを一人で待たせるわけにはいきませんから。……それで、はい。中身は、お家に帰ってから見てくださいね?」
男「え、ああ。了解」
男「(それにしても、ここまで気を使ってもらわなくてもいいのに。とは思うけど嬉しいのも事実だしなあ)」
男「(……何て言うか、人に好かれている、っていいよな)」
男「(俺も、精一杯彼女には恩返ししないとな。それこそ、一生をかけて)」
男「……」チラ
許嫁「?」
男「(っと、あぶね。つい抱きしめたい衝動が……)」ブンブン
男「(今すぐにでも、彼女の温かい体を、柔らかさを感じていたくなる)」
男「(……我ながら随分と惚れ込んだものだよ)」
許嫁「どうかしましたか? 私の顔に何かついてます?」
男「ん、そうじゃないよ。……ただ」
許嫁「ただ?」
男「……っ。やっぱり何でもない」
許嫁「ちょっと、そこまで言ったら言いましょうよー。きーにーなーりーまーすー」グイ
男「た、ただ……愛おしく感じただけです。はい」
許嫁「!」パァァ
男「ほ、ほらさっさと行くぞ」
許嫁「もう。照れ隠しなんてしなくてもいいですから!」ダキッ
男「ばっ! そんなんじゃないっつの。あ、あとさりげなく腕組んでくるなって!」
許嫁「んふふーっ♪」スリスリ
男「……ったく」
許嫁「男さんは昔から恥ずかしがり屋さんですからね」
男「君は少しだけ大胆になったな」
許嫁「積極的な女の子は嫌いですか?」
男「いや、そんなことはないさ。……って今更好みのタイプを言うのもおかしな話だろ」
許嫁「私は男さんみたいな人、好きですよ?」
男「ありがとな。ま、俺も相変わらずキャラぶれぶれだけどさ」
許嫁「うんうんそれで?」
男「え?」
許嫁「私には?」
男「あ、ああ。……俺も、許嫁みたいな女の子は嫌いじゃないよ」
許嫁「三十点ですね」ツーン
許嫁「『鍬』と『好き』に大きな違いがあるように、『好きだ』と『嫌いじゃない』にも差があると思うんです」
許嫁「もちろん、男さんの性格上素直に『好き』と言ってくれる確率は低いとわかっていましたが……」
男「……毎日のように言うような奴は節操がないだろ?」
許嫁「いかにも男さんらしい理由ですね。確かに、毎日のように言い合っているカップルの『好き』は軽すぎるように思えます」
男「そういうこと。『好き』って感情はさ、とにかく特別なものなんだから俺は本当に伝えたい時にしか言わないよ」
許嫁「……」ムゥ
男「……浮かない顔するなって。本当は今すぐ抱きしめたいくらいにはやばいんだから」
許嫁「え、そ、そうなんですか?」
男「……普段平日に会える機会が少ない分さ、こうやって手を繋いで歩いているだけでもドキドキしてる」
男「あと昨日も言った通り、軽い男だとは思われたくないんだよ俺は」
許嫁「今更思いませんよ、そんなこと」
男「それでもさ。自分から制御しないとその、ほんとに理性がもたなくなるから」
許嫁「なんだかじれったいですね」
男「まあね。でも、俺はこうして一緒にいるだけで幸せだぞ?」
許嫁「……」
許嫁「私もおんなじ気持ちです」
男「……」
許嫁「……」
男「(許嫁の手の温度が一段階高くなった気がする……)」
男「(俺も、なんだろうけど)」
男「(どうしてまた、こんなに許嫁相手にどぎまぎするようになっちゃったんだろうか)」
男「(……これじゃあまるで付き合いたてのカップルみたいだ)」
男「(一応二年以上続いてるんだけどな……)」
許嫁「いま、何考えていますか?」
男「……」
許嫁「よくわからないけど、私はドキドキしてます」
許嫁「いつもは男さんといると落ち着くのに、今は全くその逆です」
許嫁「そわそわして、おかしいです」
男「……俺もだよ。変に許嫁のこと意識しちゃってダメだ」
許嫁「あの……。……あとで、ぎゅーってしてください」
男「……言われなくても」
許嫁「……もーっ、恥ずかしくてたまりませんね」ハァ
男「あはは。俺も胸の奥がきゅーってなってたり」
許嫁「もう暫く時間がありますし、昼間に行った公園行きましょ。公園」
男「時間つぶすにはいいかもね。騒がしくないし」
男「……はあ」
男「(昨日の夜から許嫁が一層可愛く見えちゃって本格的にやばいな……)」
許嫁「男さんは段々とやれやれ系が板についてきましたね」
男「何の話さ……」
――――二十分後
許嫁「公園到着です」
男「随分と暗くなってきたな」
許嫁「……」キョロキョロ
許嫁「よし、誰もいませんね」
男「?」
許嫁「おとこさーんっ!」ダキーッ
男「っと、いきなりだな……」
許嫁「ぎゅー」ギュー
男「……はぁ」
許嫁「ね、男さん」
男「ん?」
許嫁「男さん、温かいです」スリスリ
男「……体温がいつもよりも増し増しだよ」
許嫁「いままでぎゅーってしてくれることも少なかったですよね」
男「いや、こんなの恥ずかしすぎてできないもん」
許嫁「一番相手を感じられるいい方法だと思うんですけど、どうでしょう?」
男「否定なんてできないな、これは」ナデナデ
許嫁「それにしても私はすっぽりと収まりますね」
男「背丈の問題だな」
許嫁「抱きしめやすい身長差、とかってあるらしいですね」
男「へえ。初耳だな。因みにそれはいくつなんだ?」
許嫁「たしか……20センチほどだった気がします」
男「俺と許嫁の身長差は大体15センチくらいか?」
許嫁「そうですね。カップルの理想の身長差らしいですよ」
男「詳しいんだな」
許嫁「クラスの友達が話していたんです」
男「っと、そうだ。許嫁は今日この後どうするんだ? 明日はまた学校あるだろ?」
許嫁「あ。すっかり忘れていました。今夜も男さんの家にお泊まりさせていただきます」
男「え……?」
許嫁「嫌ですか? 同じベッドでもう一晩過ごせますよ。私は嬉しいです」
男「ああ、いや。そうじゃなくて、どうして?」
許嫁「先ほど……ちょうど私が男さんへのプレゼントを買いに行っている途中にお母さんからメールがあったんです。『男君の家に向かいなさい』って」
男「……許嫁の母さんの真意はわからないけど、了解。晩飯も一緒なんだな」
許嫁「案外男さんの家に私の両親もいるかもしれませんよ?」
男「ああ、その可能性が一番高そうだ」
男「大人だけで呑みたい、っていうなら俺らに六時になるまで帰ってくるなって言ったわけも頷けるし」
許嫁「私のお父さんが昨日、男さんのお父さまに連絡していたらしいですからね」
男「あー……。言ってたなぁ。『娘をよろしく頼む』だっけ? いい親父さんだよな」
許嫁「昔じゃないんだから、そんな台詞は気恥ずかしくなりますよ」
男「俺の親父の一連の行動の方が見ていて痛々しいから……」
許嫁「理想の明るい良い方じゃないですか」
男「はたして押入れの中に隠れて俺らの行動を見る人間を理想と言えるかだな」
男「……そうこうしているうちに、こんな時間か。そろそろ帰ろう?」
許嫁「そうですね、十分温まりましたし」
男「……」
許嫁「……」
男「……」ジー
許嫁「……どうしました? その手をほどいてください」
男「い、許嫁こそ」
許嫁「男さんが離れてくれないと、離れられません」
男「……」
許嫁「……いいじゃないですか、今日はずっと一緒にいられるんですから」
男「まあ、そうなんだけどさ」
許嫁「……ふふ、甘えんぼさんですね」
男「……ぃ、よいしょっと」
許嫁「その掛け声必要ですか?」
男「気持ちの問題だよ」
許嫁「じゃあ男さんの家まで競争です」
男「え? 走るの?」
許嫁「ほら、いちについてー……」
男「自由奔放すぎるだろ……」
許嫁「高校生はこれくらいが丁度いいんです。JKです」
男「女子高生ってのと、常識的に考えて。どちらの意味も兼ね備えていそうだな、その口ぶりだと」
許嫁「いえ、事実婚の略でJKです」
男「おおう……。話がかみ合っていない挙句今の俺達には不穏極まりない言葉だなぁ」
許嫁「冗談きついよー」
男「いや、どう考えても俺は悪く……。ってああ、それもJKなのね。危うく聞き逃すところだった」
許嫁「弱酸性固形石鹸?」
男「またも疑問形っ!?」
許嫁「慈悲活動」
男「あ、いい言葉が出た。……でもさ。実際、利他的行動ができる人ってすごいよな」
許嫁「100%他人のために動ける人には滅多に出会えませんからね」
男「誰もがみな、結局は自分のためになることばかり……。自分が一番かわいいから仕方ないとは思うけどさ」
許嫁「口ではそう言っても、難しいでしょうからね」
男「だね。俺もきっと窮地に立たされたら自分優先にしちゃうんだろうから。……だからそういう人たちは尊敬したい」
許嫁「一日ひとつでも、何か始めたら変わると思いますよ?」
男「そうだね。形だけ……形から入っても何にも悪いことじゃないもんな」
許嫁「そうですよ。例えば茶道だって、最初から澄んだ心で始められる方はいないでしょう。それと同じです」
男「あはは、さんきゅ。よし、何か自分にできること、探していくよ」
許嫁「あ、当分は私のために色々と尽くしてくださいね?」
男「決心した手前それかよ。……欲張りだなぁ」
許嫁「男さんは私のものですから♪」
――――数分後
男「やっと帰ってきた。……少しお腹すいたな」
許嫁「そうですね。ちょっと歩き疲れちゃいました」
男「いろんなとこ、行ったからな。……ってあれ? 鍵かかってる?」
許嫁「明かりが見えるってことは中にいますよね。インターフォン鳴らしてみましょうか」
男「……」ピンポーン
扉「ガチャっ」
男「ったく……なんで鍵なんてかけ……って友!?」
友「おーっす男! 半年ぶりくらいだなっ!」
男「いや!? なんで? どうして友が俺の家にいるんだよ!」
友「俺だけじゃないぜ、ほら」
女「やっほーっ、許嫁ちゃん、男君元気してたー?」
許嫁「女ちゃん!? あれ、髪伸びたんだねえ」
友「な。俺も会って驚いたわ。中学時代はずっと短かったから」
男「俺は今日一番驚いてるよお前らに」
女「や、でもね。私たちも驚かされたんだ。男君のお父さんに」
男「親父が? なんだ? またあのおっさん何かやらかしたのか?」
女「違う違う。昼過ぎに男君のお父さんから電話があってさ、『男と許嫁ちゃんのお祝い会するからぜひ来てくれ』って」
男「違くねえ……。十分やらかしてるよ……。どうせ、ろくなお祝い事じゃないんだろ?」
友「えー、でも親父さん普通に男の誕生祝と許嫁ちゃんとの婚姻確定祝いだって言ってたぞ。なあ女」
女「うん、そうだね。……ね、男君耳貸して?」
男「ん、どうした?」
女「許嫁ちゃんと卒業しちゃったんでしょ? おめでただねっ」
男「女さんほんとに俺の母さんと仲良くなれるよ君は」
許嫁「……なんのはなし?」
男「い、いや! 大したことじゃないから!」
女「お祝いの理由ってそれなの? 初夜祝い?」
男「変なこと言うなよ……。ま、相変わらずなんだな、女さんも」
女「もちろん! 報道部部長の名は伊達じゃないよ!」
男「そっか、高校でも報道部続けてたんだな。流石だ」
友「いいんすか? 許嫁ちゃん。旦那が他の女と仲良く話してるぜ?」
許嫁「……女ちゃんは大丈夫だよ。昔から友君も含めた四人で仲良くやってたじゃん」
女「やー。中学卒業したと思ったらあっという間に高校卒業が近づいてるんだもんねー」
許嫁「うんうん。あっという間だったなよ。高校は」
友「ま、とりあえず外で立ち話もなんだ。入れよ」
男「ねえ友? さらっと自分の家みたく言ってるけども俺の家だよ!?」
女「二人に高校生活のこととかもいろいろ聞かせてね。近況報告みたいな」
男「そんな面白いものが話せるかはわかんないけどね」
許嫁「いいじゃん、私も女ちゃんたちの話、聞きたいもん。ほら、恋愛話とか?」
友「へえ、女ってば意中のい相手が? 気になるね」
女「あーもうっ、許嫁ちゃんてば余計なこと言わなくていいから!」
男「あはは。賑やかなのはいいこった。……久々に語り明かそうぜ」
ノリで友君と女ちゃんを登場させてしまった…
最後にはイチャラブに戻す予定ですが、暫くは甘々ゾーンはおやすみになります。
明日以降は高校生らしい、青春ぽい会話をお楽しみください。
それではノシ
男父「おう、帰ってきたか二人とも」ガチャ
男「帰宅時間指定してきた親父が言ったら世話ねえな」
男「んで、どーゆーこった?」
男父「許嫁ちゃんのご両親が来てな、一緒に男をお祝いしたいんだと」
許嫁「随分とまた唐突なお話ですね……」
男父「唐突じゃあないさ。なぜならこの俺が全て伝えたからさ!」
男「威張れることじゃないからな!? って、伝えたってもしかして……」
男父「婚約云々のことか? 初夜のことか? それなら……」
男「わかった、もう黙ってくれ」
女「いつ来ても賑やかだよねえ。男君とそのお父さんが揃うと」
男「俺は好きでつっこみ役をかってるわけじゃないからな……?」
友「中二の時の授業参観は爆笑ものだったぜ」
男「やめろ、思い出したくもない」
許嫁「私はその時違うクラスでしたからあまり詳しくは知りませんね」
女「あとで話してあげるよ。授業妨害にもほどがあるあの時の二人」
男父「男も相当馬鹿だったよなあ。はっはっは」
男「笑いごとである以前にあんたのせいだからね!?」
許嫁父「騒がしいと思ったらやっぱり男君か。久しぶりだね」
男「! あ、どうも。半年ぶりくらいですね」
男「(つかやっぱりってなんだよ……)」
許嫁母「あらあら、また背が伸びたんじゃないしら」
男「んー、あんまり変わってない気がするっすけど……」
男「っと、そうじゃねえ。許嫁父さん、許嫁母さん」
許嫁父「あーあー。そういう畏まったのはいいから。娘をよろしく頼むよ、男君」
男「は、はい! 任せてください」
友「こーゆー時だけ威勢いいよな、男ってさ」
女「まあまあ。黙っててやんなよ」
男「……あのさ、聞こえてるからな?」
許嫁さん「普段口下手なのは皆知ってるって昨日も言ったじゃないですか」
男「あれって単に話を盛ったんじゃなかったの……」
女「いやー。男君の奥手っぷりは見事なものだと思うんよ」
友「じれったかったよね、本当に」
男「うるさいなー。中学生なんてそんなもんだろ?」
友「許嫁ちゃんと付き合い始めたのはいつだっけ?」
許嫁「寒いさm……」
男「中三の夏休み前だな」
友「ん? 許嫁ちゃん何か言いかけた?」
男「いつものボケだから見逃してくれ。それで、それがどうかしたのか?」
友「いやな。それまでずっと男は許嫁ちゃんのこと好きだったんだろ?」
男「まぁ、そうなる。かな」
友「それまでに許婚関係であったり、小学生の頃は登下校を共にする仲であったりしたのに色恋沙汰一つなかったってのはどうかと思うんすよ」
男「……あー、まあ」
女「ほーらそうやって言葉を濁す」
男「……百歩譲って奥手なのは認めます。だけどさ、そーゆーことこの場で言うなよー……」
女「許嫁ちゃんも大変だったでしょ」
許嫁「え、えへへ」
友「そういえば許嫁ちゃんはいつから男のこと好きだったんだっけ?」
許嫁「好きになったのは中学に入ってから、かな。小学生の頃は変に無邪気な男さんのアプローチに正直うんざりしていましたから」
友「だってさ男」
男母「いつまで玄関先で話し込んでるのよ。こっち来なさいって」
男「っと、了解」
――――inこたつ
友「あー、こういう配置なのね……」
男父「俺と許嫁ちゃんの親父さんが隣で」
許嫁母「その左隣に私たち母親」
女「その隣、つまりお父さんグループの対面に私と友」
男「んで、俺と許嫁。……俺も友と二人でよかったんじゃないか?」
女「いやいや、ここは許嫁ちゃんと二人で隣同士になるべきでしょ」
男母「こたつ少し小さくてごめんなさいね」
女「あ、いえ。全然平気です。……ほら! 友あんたくっつくな! もっとあっち行って!」グイグイ
友「ある程度は仕方ないだろ! ったく……だから俺はこいつの隣嫌だったんだよ」
女「言ってくれるね、友」
男「(なんだかんだ言ってこの二人も仲いいよな)」
許嫁「(そうですね)」クス
男「んでさ親父、この二人を呼んだ理由は何なんだ? あ、いや別に迷惑だったとかじゃなくてさ」
許嫁「私も気になります。驚かされましたから」
男父「まあ大した理由じゃないんだが、お前が昔っからよくしてもらった友達っていったらこの二人だろう?」
男「……」
友「へへっ」
女「うんうん」
男父「で、少し大掛かりな食事会開くからついでにどうだ、って」
男「二人とも予定とかは大丈夫だったのか?」
友「その点に関しては問題ないぜ」
許嫁父「友君と女ちゃんは、しばらくぶりだったな」
女「そうですね。三年近く会ってなかった気がします」
許嫁父「二人も娘と仲良くしてくれてありがとう、これからもよろしく頼むよ」
女「あはは、そういうのは照れますね」
許嫁「もー、やめてよお父さんってば」
男「(平和だなぁ)」
男母「さ、とりあえず料理を持ってきましょうか」
許嫁「あ、私も手伝います!」
男「わお……随分と豪華だな」
男父「料理上手の母さんでよかったな、男」
男「確かにそうだな。……ってあれ?」
許嫁「……」
男「どうした許嫁」
許嫁「そういえば私、料理が苦手です! どうしましょう、これでは男さんの妻として失格でしょうか……?」
男「んー、たまに作ってくれてた弁当とかも決して悪い出来ではなかったと思うんだけど」
女「でも毎日疲れた夫を労わるための料理としては見劣りするかもねー」
許嫁「女ちゃんまで……」
友「女は何気に料理上手だもんな」
男「だな。いいお嫁さんになれるよ、きっと」
女「はあ……。男君、そういうことは許嫁ちゃんにいってあげなよ」
男「いや、このセリフをそのまま言うのは内容的にどうかと思うんだけどさ」
友「でも将来的にまだまだ許嫁ちゃんも苦労しそうなことが見て取れるな」
女「同感だね」
許嫁「わかってくれるよね、二人とも。ほんと男さんってばノリが悪くて……」
男「うるせ。……そっか、二人相手の時は敬語じゃなかったもんな」
許嫁「そりゃ、まあ」
男「随分と返しが淡白だ」
許嫁「すみません、間違えました」
友「許嫁ちゃんも別にため口になってもいい気がするんだけどな」
女「そうだよね。いつの間にか敬語になってて、それが定着してたけど」
友「いや、だけど敬語嫁っていうのには夢があるじゃん?」
男「……お前みたいなやつのせいで許嫁はこの口調になったんだよ」ハァ
許嫁「わわ、別に言わなくてもいいじゃないですか」
女「私もそれについては言及したことないから聞きたいな」
男「や、なんかさ? そっちのほうg……」
許嫁「わーわーわっ! 必要ないこと言わないでくださいー!」バッ
男「うわっと……! お、おい。狭いとこで暴れんなって……!?」
許嫁「男さんが悪いんじゃないですか! ……ってわわわっ!?」ガタッ
床「いてっ」ドン
女「あら」
友「ひゅう」
男母・許嫁母「ふふふ」
男父・許嫁父「……」
男「……」
男「(なんだこのベタな展開は……。てか……近い。あと少しいい匂いがする)」
許嫁「……」
男「……えーっと、許嫁? そろそろどいてもらえると嬉しいかなー、なんて」
許嫁「え!? あ、は、はい! すみません」
男「……」
許嫁「……ふう」
女「なんだろうこのむず痒いの」
友「お前らいっつもこんなノリしてんの?」
男「普段は、まあ普段通りだよ。俺もある程度自重というか、我慢というか」
女「自重って? 我慢って?」
男「……ノーコメントで」
許嫁「え? 男さん全然そういう素振り見せないじゃないですか」
男「どういうこと?」
許嫁「我慢云々のことです」
女「あ、ほんとは我慢なんてしてなくて時も場合も考えずに求めちゃってる感じ?」
男「ややこしくなるから君は黙ろうか」
男「えー……っとなあ。許嫁が言いたいのはあれだろ? 我慢してる素振りすら、ってこっとだよな」
許嫁「はい。いっつも余裕そうに構えてるので……」
友「くくく……。許嫁ちゃん、それは杞憂ってもんよ」
許嫁「杞憂?」
友「割と最近まで俺に惚気なりの連絡してきてたからな、こいつ。んで、その中に手ぇ出す云々の相談とかもあってさあ」
許嫁「そんなこと話してたんだ……」
男「……友、あとで話がある」
友「やあなこった。いいじゃんこの際だし今までため込んでた隠し事さらけ出しちゃおうぜ」
女「あはは。一応男君たちのご両親いらっしゃるからね……」
男父「あー。俺らのことは気にしないで構わないから。続けて続けて」
友「大方、若い者の青春話をつまみにして酒を飲もうって魂胆っすかね」
男「ああ。それで間違ってないと思うぞ。この人たちそういうの好きだから」
許嫁母「娘の成長を見るのは親の務めだものねえ」
許嫁「恥ずかしいからいいってばぁ」
男父「俺も男の性長を目の当たりにするのは感慨深く思えるな」
男「親父。わざと誤字ってるのなら間違ってるからな? 色々と」
友「すげえな男。ニュアンスで誤字だとかわかるのか」
男「え? だって……っと、ああ。まあなんとなくかな」
許嫁「少しメタりましたね」
男「なはは」
友「ま、でもこんな下らない日常風景でも誰かしらの心に関与できるっつーんなら喜ばしいことだし、これでもいいと思うな。俺は」
男「いや、せっかく笑ってごまかしたのにさ……」
女「あ、このお漬物美味しい」モグモグ
男「ん? ああ、それは……」
――――数十分後
許嫁「ごちそーさまでした」
女「はー。私も満足♪」
男母「一応デザートとしてケーキもあるけどどうしようか?」
男「もう少し後でもいいかな。俺もお腹いっぱいだし」
男母「そう。ならとりあえず食器片付けちゃおうかな」
女「あ、じゃあ今度は私が手伝います」
男母「あ、全然平気よ。女ちゃんものんびり話に花を咲かせてなさい」
女「あはは、なんかすみません」
友「そうだ、女のことで思い出したけどさ。そっちの話も聞かせてよ」
男「お、そうだな。俺もジャーナリストさんの貴重な恋愛話は知りたい」
女「許嫁ちゃん……。あんたが変なこと言うからぁ」
許嫁「んふふー」
女「と、とりあえず自分から話すのもあれだから質問形式で私が答える形でいいかな?」
男「了解、友は?」
友「俺もいいぜ。いっつも質問攻めしてきた報道部さんに逆に質問返しできるのは滅多にないしな」
許嫁「じゃあ質問者に私も参加しちゃおうかな」
男「まず一つ目。今付き合ってる人は?」
女「んー、いないよ?」
男「ふむ。じゃあ高校生活を通してでは?」
女「あー、まあ、一応?」
許嫁「女ちゃんはぐらかさないでー」
女「くぅ……。あんたに話したのが間違いだったかなぁ」
友「あ、もう許嫁ちゃんは知ってるの?」
許嫁「大体はね。って言っても半年以上前のことだから今のことはわからないよ」
女「はぁ」
男父「気を落とすなよ。高校生なんて恋バナしてなんぼだろ?」
女「男君、悪いけどお父さん黙らせてもらえる?」
男「厳しいかな。ほら、完全に酔っ払いが出来上がってるし」
女「でも少し聞かれるのは恥ずかしいんだけど……」
許嫁「私たちも昨夜から今朝にかけて散々恥ずかしい思いしたから、諦めなさい?」
女「恥ずかしい思いって、その、夜の体験?」
許嫁「なっ……!? ち、違うって。男さんのお父さま方にからかわれたからだよ!」
女「まぎらわしいなぁ」
友「真っ先にそう捉えた女もどうかと思うけど」
許嫁「あれ? っていうか何で知ってるの? その……」
男「許嫁、無理して言わなくていいからな? 恥ずかしいだけだから」
女「それなら男君のお母さんに聞いたからだよ」
男「ですよねー……。玄関先で女さんに言われたときは背筋が凍るかと思ったぜ」
女「まあまあ。おめでただね、ってお祝いもしたでしょ?」
男「……そらどーも。素直に感謝しづらいんだけど」
友「っと、話がそれたな。女の方の話ももう少し詳しく知りたい」
女「友、そんなに気になるの……?」
友「なんとなく、な」
許嫁「(あ、いい雰囲気です)」
友「まあ単純に俺が他人の恋愛事情聞くことが好きなだけだけど」
女「はぁ……」
許嫁「はぁ……」
男「……」ポン
友「な、なんだよ」
許嫁「女ちゃん、ここで話しづらいなら男さんの部屋行く?」
女「あー。そうしよっかな」
友「トランプしながらとかでも悪くないな」
男「だから俺の家だからね?」
男父「はあ? 俺の家に決まってるだろうがぁ!」
男「いやいや、わかってるよ! 流れから察してよ!?」
許嫁「よーし、れっつごー」ドタドタ
男「……」
男「(許嫁のテンションが高い。なんだかんだ言って二人に会えたことが嬉しかったんだな……)」
――――男の部屋
女「うわー……。久しぶりだぁ」
男「俺の部屋こそもう何年も来てなかったもんな」
許嫁「友君はいつぶり?」
友「俺は夏休みに遊びに来た以来だから、割と最近だよ」
女「あら」
男「どうした? いきなり変な声出して」
女「ねえねえ男くーん。ベッドの上に枕が二つあるんだけど、なんでかなぁ?」
男「……つくづく嫌味な人だな、女さんは」
許嫁「出かける前にしっかりと敷きなおしておいたのが凶と出ましたね」
男「だな……。ある程度ぐちゃぐちゃなら気づかれなかっただろうし」
女「いっそのこと枕も一つでいいじゃん」
男「何を言い出すかと思えば」
女「ぐぐぐーんと距離が狭まるよ? それこそ密着率10割で」
許嫁「こんな普通のサイズの枕を二人で使ったら、それこそ……」
女「それこそ?」
許嫁「ドキドキして止まないじゃん!」
女「(意外なところで初なのよねこの子……)」
女「じゃあ腕枕は?」
許嫁「あれは腕が圧迫されて痛いから、って断られました」
女「えー、なんでさ。男君、腕枕は女性のあこがれだよ?」
男「そうは言ってもな、長時間の腕枕はほんと危険なんだぞ? 男性側からすりゃ、当然腕に負担がかかるし、女性だって首を痛める可能性だってある」
友「やけに詳しいな、男」
男「余計なことは言わなくていい」
女「でもさ、腕枕に生理学的に癒しの効果があるってのもほんとだよ?」
男「……まあ、お互い安心しやすいってのはあると思うけどさ……」
女「でしょ? ほら、今夜あたりやってあげな!」
男「あ、あはは……」
許嫁「丁度今夜も私は泊まっていきますね。……どうですか?」
男「ど、どうってなにさ」
友「なーんか、二人のやり取り見てるとほっこりするわ」
男「そうかな……? 俺は少しこのノリに疲れてきてるんだけど」
女「昔は男君のほうが情熱的だったのに、今は真逆だもんね」
男「情熱的ってなんだよ……」
女「あ、間違えた。積極的って言おうとしたんだよ」
ああああああ
クリスマスが近いいいい……
独り身ですよどうしましょう:;(∩´﹏`∩);
クリスマス?知らんがな
クリスマスって本当になんなんやろな
こんな慕ってくれる許嫁ほしいわ
>>228
そうですね。ただの平日に過ぎませんよね
>>229
んー。許嫁はともかくとして、いつかあなたにもいい人が見つかりますよきっと。
自分から動かんと何にもならん、っつー話はしょっちゅう友人とかわしますが。
男「(普通間違えるか……?)」
許嫁「それはさておき、女ちゃんの暴露タイムじゃないかな?」
女「全く……。こっちに振らなくていいってのに」
女「でも、別にみんなが期待してるような面白い話はないんだよね」
友「甘々な展開ならこの後男たちが繰り広げる予定らしいから、その前菜も兼ねてってことで聞かせてもらうよ」
男「……おい。何勝手なこと言ってんだよお前」
友「ん? 嘘は言わない主義なんだ」
男「はぁ」
友「でも、あ、いや。この場で言うのはおかしいかもしれないんだが避妊はしとけよ?」
許嫁「……」
女「何てこと口走ってんのよ……」
男「そうだよな……。実際俺もそれに関しては薄々感じてた」
許嫁「どういうことですか?」
男「いやな、その、つけないでするってことは必ずではないけど子供ができるってことだろ? 俺たちはまだ高校生だし、来年は大学生として勉学に励むことになる」
男「それなのにもし子供ができたら許嫁は休学……もしくは退学しないといけないし、その後の子育てだとかそういうことも考えなきゃいけなくなるんだよ」
許嫁「あっ……」
友「だから、もう少し大人になって今後の生活できるだけの目途がついてからでもいいと思うわけよ」
男「……そうだな。ありがとう、友」
女「へえ……。友にしては珍しくいいこと言うじゃん」
友「テンプレ通りだと、ここで『俺にしてはってなんだよ!』ってキレるところだよね」
男「お前がそういう騒がしい奴じゃなくてよかったよ」
許嫁「(友くんって意外とそういうキャラとして立っていた気がしますが……)」
友「ってなわけで男への誕生日プレゼントだ。今出すから少し待ってろ」ガサガサ
男「まて。何が『ってなわけ』だ。どういうわけだよ、まさか今の話と関係してるんじゃないだろうな……」
友「お、流石は察しがいいな。……って冗談だよ。んな怪訝な表情するな」
男「悪い。素直に信用できなくてな。てへぺろ」
友「悪びれてる様子もねえな……。それに俺からだけじゃなくて、俺と女で二人で買ったもんだからそんな変なものは入ってねーよ」
男「あ、そうなのか。ありがとな、女さん」
女「あはは。どういたしまして」
友「俺の時と反応全然違くない!?」
男「だってお前だけじゃなく、わざわざ女さんにも気ぃ使ってもらってたとすると話が別だし」
女「そんなそんな。私と男君の仲なんだから、今更他人行儀はよしてよ」
友「とにかくほら。おめでとさん。俺らの中じゃ一番遅い18歳だな」
男「ああ。ありがとな、二人とも」
女「そうだねー。もう18かあ」
許嫁「女ちゃんが一番早くおばあさんになるね~」ニヤニヤ
女「……」←四月生まれ
男「一年離れてなきゃ、みんな同い年みたいなもんだろ」
女「でも少生まれたのが早いのは事実だし……。あ、ならさ! 年上は敬うものだよね! 私の方が皆よりお姉ちゃんなんだぞ?」
友「たった数か月だけだろ……」
許嫁「(昼間にも似たような光景を見た気がします)」
友「男、なんかゲームない? みんなでできるやつ」
男「トランプやUNOみたいなカードゲームと、あとは人生ゲームがあるな」
許嫁「あ、いいですね。人生ゲームやりたいです」
女「じゃあ負けた人には罰ゲームつけなきゃね。何がいいかなぁ」フム
友「女に罰ゲーム決めさせたら何になるかわからないな……」
許嫁「王道どころをとれば一発芸や物真似かな? あとは変顔あたりも」
男「まあでもそれらは読者側に伝わりづらいしな」
友「初恋のエピソードってのもみんな知ってるしなー……。色恋沙汰は恥ずかしくなるいい話題だと思うけどさ」
女「わさび入りシュークリームってのもいいよね」
男「早速えげつないの提案するな……」
許嫁「食べ物関連なら色々ありますよね。青汁とゴーヤをミキサーにかけたものを一気飲みとか鼻から炭酸ジュースとか……」
友「想像しただけで恐ろしいぜ」
女「コスプレしてコンビニに行くってのもありだよね。ほら、昔文化祭で使った馬の被り物残ってるでしょ男君」
男「よく覚えてるな。うん、確かに残ってるわ」
男「だけどさ女さん、もし自分が負けたらのこと考えてからでもいいと思うけど……」
友「言い出しっぺメソッドってやつか。酷いものに設定して自分で受けることになったら元も子もないもんな」
女「そっかー……。じゃあこの場でできてみんなが笑えるものにしよう」
友「罰ゲーム受理者も笑えるものか? それならくすぐりくらいしか思い浮かばないけど……」
許嫁「ひっ!?」ビクッ
女「(そういえばこの子弱かったわね)」
男「でもそれだと俺ら男性陣は女性陣くすぐることできないだろ。その、流石に」
女「んー。割と難しいんだねー……」
許嫁「終わってから考えてもいいんじゃない? 今は純粋にゲームを楽しんでもいいと思うし」
男「俺も許嫁に賛成。っし……今持ってくるよ」
――――数分後
友「さて準備完了な。俺が緑の車」トン
女「私はオレンジ色の」トン
許嫁「じゃあ赤いのもらいます」カチャ
男「俺はこの青いので」スチャ
女「順番決めはじゃんけんでいいよね?」
男「おう。さーいしょはグー……」
友「ん、俺か。じゃあ俺から時計回り……俺、女、許嫁、男って順番で」
許嫁「了解。さ、友君ルーレットを」
友「っと」
ルーレット「しゅるるるるるる」
友「5ね。ま、まずまずの出だしだろ。……えっと、職業は勇者。……勇者!?」
女「……どうして若干ファンタジー系入ってるのよこの人生ゲーム」
男「親父がどっかで買ってきたやつだから仕方ない。ま、基本のルールは普通だから気にしないでくれ」
友「職業カードもらって給料日のマスへ。……勇者にも給料日なるものが存在するのね」
女「じゃあ私ね。……ん、7か。えーっと……私の職業はあ、泡姫っ!? ね、ねえ男君ほんとにこれ全年齢対象!?」
男「んー……実は俺も怪しんでる。ほんとどこで買ってきたんだよ親父」
女「職業変えられないのかなぁ……。泡姫ってあれだよね、その……」
男「だから言わなくていいって! どうしても言いたいのならコンパニオンとでも言っとけ。確かそれが公での名称らしいから」
女「わぁ、給料は毎月三万も入るって。これはこれでいいかも……なんて思えないよ、いくらゲームだとしても」
許嫁「あ、あはは……」
許嫁「私のターン! ……って2です」
男「えっと、2マス目の職業はー……男性なら男優、女性なら女優か。えらく大きく出たもんだな」
友「許嫁ちゃんが表の女優なら、さしずめ女は裏の女優ってか」
女「……最下位になったら罰ゲーム、覚えててね?」
男「勇者が今のところ一番の安月給だ。頑張れよ」
友「まだ男はわからないだろ? ほら、この駄菓子屋になるかもしれないし」
男「それだけは避けたいな……さて」
ルーレット「しゅららららららら」
男「うん、8だから駄菓子屋じゃないな。なんだろ」
許嫁「悪の大魔王ですって」
男「……」
女「どうやら男君と友も対になる存在っぽいね」
男「今思うとまともな職業ないじゃねえか……。何だよ悪の大魔王って」
友「給料は……はぁ!? 泡姫と同じじゃねえか!」
女「あ、泡姫言うな!」カァァ
許嫁「何がともあれ、これで始められますね。億万長者目指して頑張っていきましょう♪」
友「(迷走する気しかしないけど大丈夫かなほんとに)」ハァ
――――三十分経過
許嫁「案外早いものだね。あと三分の一くらいしか残ってないよ」
男「ほんとだ。じゃあ一応今のところのお互いの状況の確認でもしておこうか」
女「親切設計だね♪」
友「じゃあ俺から。結婚して子供が一人。金は全部で三十万弱ってところか」
許嫁「勇者と結婚する人は女勇者なのかな?」
男「いや、俺の娘とだ。要するに勇者友は俺の策略によって悪魔の娘と結ばれたのよ!」
男「これで生まれた悪魔の血を引いた我が孫によって勇者の一族は滅ぼされるであろう……」
女「話をややこしくするな!」
許嫁「男さん意外とノリノリですね。それでは私の現状です。えーっと、結婚はしましたが子供はいません。あ! 男さん誤解しないでくださいね! 私の心には男さんただ一人ですから!」ドヤ
男「わかってるって。……ってかこんなゲームの設定にも現実を持ってくるなよ」
女「うわぁなんだか見ていて恥ずかしいなあこの二人。それで所持金は?」
許嫁「んーっと、ざっと五十万くらいかな。モテる女優は違うね!」
男「その女優の旦那はさぞかし幸せ者だろうな」
女「あれ? 男君ゲームのキャラに嫉妬?」フフーン
男「……いや、違うから」
女「じゃあ私だね。職業は言いません。私も既婚で子供は二人」
友「だけど誰の子供かはわからないと。今ならDNA鑑定できるし受けてきたらどうだ?」
女「ちゃんと旦那との子だよ!」
男「でも、風俗嬢の人と本気で付き合うとなると大変だろうな。まず、その職業自体に偏見を持たないこと。そして嫉妬だとか嫌な感情を抱かない必要もあるわけだし」
女「男君もどうしてそんな真剣になっちゃってるの……」
許嫁「女ちゃんもつっこみと言い、若干乗り気だったよね」
友「そんで、いくらくらいあるんだ? 泡姫さん」
女「……あんたの倍よ、勇者様?」
男「ラストは俺だな。相変わらず魔王やってます。俺も妻子ありだ」
女「さっきの流れで行くと魔王の奥さんってどんな人……まず人なのかな?」
男「まあ、俺がまず禍々しい存在じゃなくて人型の魔王だからな。普通の人間の奥さんだよ」
友「色々と設定が増えてるなあ……」ハァ
許嫁「人間の奥さん……? 男さんの浮気者っ!」
女「だから許嫁ちゃん現実を持ってこないの……」
友「魔王のくせにいい人間に手ぇ出すなんていい身分じゃねえの」
男「へえ。俺にたてつくのか。勇者のくせに生意気だな」ドヤァ
友「そんな名前のゲームあったよね。あれ好きだったわ」
男「俺の所持金は許婚と同じくらいだな。勇者よりも全然収入はいいぜ」
友「魔王のくせに生意気だ」
男「ほう。そんなことを言っていると貴様の服の一部が焦げ付くことになるが……」
女「しょぼいな魔王の炎!」
許嫁「女ちゃんそんなノリで疲れない?」
男「俺はいつも許嫁にそういう念を抱いてるんだからな……」
ネタがなくて罰ゲームありの人生ゲーム始まりました。
誰が最下位でどんな罰ゲームが欲しい、とかあれば言ってください。
この後は二人の友人がかえって少し甘々に戻して終わらせたいと思います。
乙
女の恋バナは?
罰ゲームは猫耳つけて語尾にワン
>>250
ありです!それは誰がやればいいですかね?
女ちゃんの恋バナは人生ゲームにひと段落着いた後を予定してます。
>>251
決めていいなら女
恋バナもそのままで
>>252
りょーかいです!
友「何がともあれ進めていこうぜ」
男「そんな急かさなくてもいいじゃないか」
友「いや、俺は何としてでも逆転勝利を狙いたいから」
女「焦っても何もいいことないよ?」
男「女さんの言う通りだぜ。……ま、ルーレットなんて完全なる運だけどな」
許嫁「運を制すものが何とやら、とも言いますしね」
友「お前ら見とけよな! このターンで俺は変わる!」
ルーレット「しゃらららららら」
友「7ね。まあ悪くない出だね」
男「着順ボーナスとかもあるしな。友はマスの進み具合では二位だしまだ勝機はあるかもね」
友「ああ。よし、いちにーさんしー……」
許嫁「なんて書いてある?」
女「あ、アイリッシュウルフハウンドに襲われた。二マス戻る……? ねえ男君、これって犬の名前だっけ?」
男「うん。世界で一番だかに大きい超大型犬だね。このチョイスは理解しかねるけどさ」
友「いやいや! それ以前につっこむ点があるでしょ!?」
友「人生ゲームだよ!? マス戻っていいの!? 人生やり直しちゃっていいの!?」
女「騒がしいなぁ」
女「でも確かに色々とおかしいね、この人生ゲーム」
許嫁「パッケージには一味違って楽しめます、ってあるよ?」
男「人生なんて何億、何十億通りとあるんだからこんなこともあるんじゃないか? きっと」
女「そうだね……。何が起こるかわからないんだし、職業の面でもうん、自分よ勇者だとか魔王だとか勘違いしてる痛い人だっているだろうしね」
男・友「「どうしてこっちを見て言うんだよ!」」
許嫁「泡姫なのも一つの職業だもんね」
女「そ、そうだね。……ほんと、まともな職業なかったのかな」
許嫁「私は女優ですよ?」
女「まあ、そうだけど。もっと普通の会社員とかでもよかったからさ」
女「あ、私の番か。……んしょ」カラカラ・・・
許嫁「1ですね」
男「逆から読んでも1だな」
許嫁「すうじのいちはーなーぁにっ♪」
男「こうばのえーんとつ」
許嫁「もくもく♪」
友「……懐かしすぎて一瞬何だかわからなかったぜ」
女「それにしても男君よく覚えてたね、そんな歌」
男「うーん。俺も今自然と回答してたから自分でも驚いてる」
女「一マス進んで……ん、三千円かぁ。しょっぱいなぁ」
許嫁「なんだか賭け事であまり儲からなかったおじさんみたいだよ? 女ちゃん」
女「例えがとてつもなく嫌なんだけど……」
許嫁「じゃあ私の番です」
友「どれどれ……。あ、強制ストップのマスに捕まったな。家が買えるってさ」
男「人生の三分の二を過ごしてようやく家が建てられるのか。……苦労してんだな」
許嫁「そ、そんな憐れむように見ないでくださいよ! あとで男さんだって同じマスには止まるんですから」
友「でもやっと家買えた、っつーことは今まで寝泊まりどうしてたんだ?」
男「車ん中かな」
女「やめようよそうやって設定の内側探ろうとするの!」
男「で、俺も回して……。うん、6だから許嫁と同じだな」
友「じゃあ家を選んじゃってくれ」
許嫁「男さん! 私と同じところに住みましょう!」ドンッ
男「システム的に無理だからね!?」
許嫁「大丈夫です。旦那様は追い出しますから」
男「ひどい! ここに鬼嫁がいるよ!」
女「はいはい。そういうのは後でやってねー」ハァ
男「冷たい視線が痛いね」
女「すぐ二人の世界入ろうとするんだから止めて当然でしょ……」
友「んじゃ俺の番ね。さっきなんで二マス戻されたんだろ……っと」
ルーレット「からからkrkr」
許嫁「8ですね。友君引きいいなぁ」
友「勇者に天が味方してくれてるんだ」
男「言ってることは腹立つが、どうやらその勇者に関係あるマスらしいぞ」
友「へえ。何だって……。『職業・勇者がこのマスに止まった場合に発動。勇者が魔王を倒した。周囲に崇められる。プレイヤー全員から10万を受け取る』」
男・許嫁・女「「「ふぁ!?」」」
女「なんなのその勇者のためだけのマス!」
男「あー……思い出したけど、それぞれの職業別に逆転できるマスが用意されてるんだわ」
許嫁「でもピンポイントで止まらないとダメなんですよね?」
男「まあね。その分報酬はすげえってことさ。……例えば今言った勇者のほかだと泡姫は『大企業のお偉いさんを悦ばすことができた』ってんで30万入ったりする」
友「まあまあお三方。俺に十万ずつ払いたまえ」
許嫁「祓いたまえーっ!」バババ
男「あ、すげえ。某ゲームの違う声で再生されたわ」
女「ってこれ一気に友が一位に駆け上がってるんだけど!」
友「へへへ。あ、あと男。『職業・悪の大魔王を持つ者は職を失う』だとよ」
男「ふぁ!?」
許嫁「ニートですか、男さん」
男「働く意思はある。フリーターだ」
友「じゃあ職業カード没収な~。現実見ようぜ、魔王なんていねーよ」
女「(盛大なブーメランかましてるのは黙っておくべきなのかな)」
女「とにかく、友が一位なのは今一つ納得いかないから逆転させてもらうよ?」
ルーレット「(さらさら)」
女「なっ……」
許嫁「どうしたの?」
男「っと、四マス先だな? えー……大破産……」
友「『部下の不手際の始末を追う羽目に。全財産の半分を失う』……えげつねえな」
女「この仕事での部下の不手際ってなに!?」
男「まあ……なんかやらかしてお客様に不快な思いをさせちまったんだろうな」
許嫁「骨は拾ってあげるから」
女「うう……」
男「50万弱あったのにもう見る影がないね」
女「もーやだーっ……」
――――数十分後
友「ふいー。終わった終わった」
許嫁「全員ゴールしましたね。それじゃ所持金数えていこっか」
男「最下位が分かり切ってるようで申し訳ないな」
女「あ、あはは……」
友「俺は72万と3000」
許嫁「くっ」
男「圧倒的だな。勇者のくせに」
男「俺は43万と2000。女さんいくらだった?」
女「……」
許嫁「罰ゲーム、おめでとう女ちゃん」
友「言い出しっぺの法則って本当にあるんだな……」
男「罰ゲームの内容はどうする? 一番考えるの得意そうな女さんが案を出すのに参加しないとなると俺らで考えるしかないけど」
許嫁「その点なら大丈夫です。誰かの声が私の脳内でいい案を囁いてくれました」
男「よくわからないけど、じゃあそれにしようか。どんな内容なんだ?」
許嫁「男さん猫耳のカチューシャとか持ってませんか?」
男「男子高校生の家にそれを求めるのはどうかと思うけど……」
男「あ、でも親父に聞けばあるかもしれないな。……少し待ってt」
扉「バァン!!」
男・友・許嫁「「「!?」」」
男父「話は聞かせてもらった!」
男「無理がありすぎるだろこのクソ展開ぃ!」
男父「猫耳カチューシャだろ? 今持ってきてやる」
女「男君のお父さんって何者なの……?」
男「……変態と変質者を足して二で割らない人かな」
友「ま、なんだかんだで用意できたなカチューシャ」
許嫁「うん。それで、女ちゃんはまずそれを装着」
女「えっ」
許嫁「ほーらっ。動かない動かないー」
女「ちょ、ちょっと……」
許嫁「……よしっと。うん、可愛い可愛い♪」
女「……///」カァァ
男「これつけて過ごせってことか?」
許嫁「これに、話すときの語尾を『ワン』で」
男「……いい罰ゲームだな」
友「……いい罰ゲームだと思うわ」
女「ぜーったい喋らないよ私……」
許嫁「ワンは?」
女「……」
男「だけどな、女さん。この部屋に来た目的を忘れたわけじゃないだろ?」
女・友・許嫁「「「あっ」」」
男「お前ら三人忘れてたのかよ」
友「そういえば女の恋バナ聞かせてもらえるんだったな」
許嫁「そうそう。高校で青春した女ちゃんのお話だ」
男「語尾にワンでよろしく頼むぜ、女さん」
女「はあ……。さっきも言ったけど期待されてるほど面白い話でもないからね……?」
許嫁「語尾!」
女「……面白い話じゃないから期待しないで欲しい……わん」
許嫁「それでよろしい」
とりあえず本日はここまでです。
許嫁「あれ? 今日は聖なる日なのにどうして人がいるのでしょう?」
男「それ以上はやめておけ」
許嫁「こんな日くらいこんなところにいないで、お相手の方と愛を確かめた方がいいと思うのですが……」
めりくりです!
ただいまです、お久しぶりです。
すみません、正月ですので更新止まってました。
まあ祖父母の家でずっとパソコンスマホやってるわけにもいきませんし、大目に見てください。
女「とりあえず端的に言うと、高校二年生になって暫くしてから一年くらい付き合ってる人がいたんだワン」
男「まあ女さん美人だしな。……正確に少し難ありだけど」
許嫁「わんわん」
女「えっと、どんな人かも言った方がいい?」
許嫁「わんわん」
女「むむ……。わかったワン」
友「猫耳でワン、ってシュールだな」
男「(こいつ……! 誰もあえてつっこまずにいたことを……)」
女「その、彼はバスケ部だったんだワン」
男「ん? 女さんは報道部だろ? あんまり関りなかったんじゃないか……? それにあまり強豪のとこでもなかったから記事のネタになりそうなことも……」
女「ま、落ち着いてほしいワン。私は報道部で、彼は放送委員だったんだワン」
友「なるほど。その組み合わせは割とあるもんな」
男「んで、馴れ初めはどんな感じなのさ」
女「随分とぐいぐい来るね……。まあ私らの仲に隠し事はなし、って言ったのは自分なんだけどさ……」
女「新しいクラスになって少し経つと体育祭があるでしょ?」
許嫁「私のところは秋だけど、そっか、女ちゃんのとこは夏前だったね」
女「うん。……ちょっと話しづらいし、おちゃらけた雰囲気になりそうだから口調戻させてもらっていい?」
男「俺はいいよ、ま、猫耳は引き続きつけててくれな。家に帰るまで」
女「うえっ!? 夜だとはいえかなり辛いよ!?」
男「女さんならいけるさ。頑張って」
女「うっわー他人事感半端ないなぁ……」
許嫁「……ごほん!」
友「あれ、許嫁ちゃん嫉妬?」
許嫁「違うってば」
友「ほら、男。構ってほしいってさ」
許嫁「だ、だから!」
男「あはは……」ナデナデ
許嫁「んん~っ/// ……はっ」
女「へえ……。許嫁ちゃんでも男君の前だとそんな顔するんだね」
男「なんだかおっさん臭いぞそのセリフ」
女「おっさん臭い、って女の子に絶対言っちゃだめだからね……?」
男「いくら俺でもそのあたりは弁えてるよ……」
女「男君割と危ない発言するからなあ。……んまいいか。えっと体育祭ってとこまで話したよね」
友「そうだな。それが何か関係あるのか?」
女「あったんだよね。体育祭ってさ、当然放送係がいるでしょ? 小学校だったら『赤組、すごいです。黄色組、がんばってください』みたいな」
許嫁「また懐かしい例えを出してきたね。……で、彼氏君はその役に抜擢されていたというわけだね」
女「つまるところそうなんだ」
男「でもそれだと女さんは完全に部外者としての位置づけじゃないか?」
女「まあここまでの話ならそうだね。それで、ひょんなことから報道部の人も参加、ってのは少しおかしいけど、協力することになったんだ」
許嫁「ここから漸く甘酸っぱく?」
女「ならないから! その時に、実は初めて話したんだよね。彼とは」
男「実際そうだよなー。高校入っても、一度も話したことない奴まだまだいるもん」
女「でしょ? ま、それで何だかよくわからないけど私と彼が代表者を任されちゃったんだよ」
許嫁「流石、できる女なだけあったんだね」
女「まーね」フフン
女「実際のところ、報道部の目的としてはアナウンス座席……つまり競技の結果とかが一早く入ってくるところにいたかっただけらしいんだけどね」
友「別にそんなに焦る必要もなかったんじゃないか……?」
女「まあね。でもさほら、細かい点数とかは運営側しか知らないからそこんとこのデータも欲しかったらしいのよ」
男「ちゃっかりしてるんだな。そこまでとなると、相当やり手な部長さんだったみたいだね」
女「そうなのよ。なんかその先輩は今も大学で報道関連のこと学んでで将来はアナウンサーになる、とか言っててね」
女「だから本当は部長が責任者やったほうがよかったんじゃないかって思うくらいに。……ま、まあ私としてはこれでよかったんだけど」ゴニョゴニョ
許嫁「ん? でもその時にはまだ惚れ込んでなかったんでしょ?」
女「人がボソッと言ったことは普通『え? 何か言った?』程度に聞き流すものだからね!?」
女「ん、まあその通りなんだけどさ……」
女「責任者ともなると放送委員と報道部、二つの組織をまとめなきゃいけなくなるから当然忙しくなるわけで」
友「そうだな、単純計算で人数も倍になってるんだもんね」
女「加えて報道部としての活動……主に新聞作りもあるから校内走り回って。これでもか、ってくらい時間が足りなかったよ」
男「なんだか活き活きとしてるね」
女「まあ、好きでやってる仕事だからね」
許嫁「肝心の彼の登場はまだですか?」
女「ちょっと待ってよ……」
女「彼はそんな私を陰ながら支えてくれてたんだよね」
女「さりげない優しさって大事だと思うんだよ」
許嫁「そう……ですね」チラッ
男「なんで俺の方見て言うんだよ」
許嫁「最近男さんがそっけないからですよ」
男「これでも俺は十分許嫁には甘い方だけどな」
友・女「「そんなこと言ってて恥ずかしくないの??」」
男「……口裏合わせてたみたいな反応はやめてくれ」
許嫁「さ、女ちゃん続けてどうぞ」
女「もー……どうしてそんな聞きたがってるのさぁ」
女「まあいいわ。そんなこんなで話す機会が増えたまま体育祭に突入したわけよ」
男「委員会を経て色恋発展するってのは定番とはいえ、憧れるよな」
友「だな。定番だからこそ憧れるってのかもしれないけど、イベント効果ってのは想像以上のものだし」
許嫁「そして女ちゃんもコロッとそのイベント効果の虜にされちゃったわけだねー」
女「なんか私が悪いみたいな口ぶりだね……」
女「でもやっぱり当日も仕事は忙しいし、自分の種目もあるしで全然話すことができないまま、午前の部が終わっちゃったんだよね」
許嫁「あー。期待していた分、ショックも大きかったのね。乙女だなぁ女ちゃんは♪」
女「い、一々説明しないでよ」
男「それでその愁傷の念を抱いた女さんはどうしたんだ?」
女「愁傷ってさぁ……。そんな大袈裟な悲しみじゃなかったからね?」
男「ふうん、本当は?」
女「はあ、男君もたちが悪いね。……って言わないよ!?」
男「そういうわかりやすいところは女さんの美点だよね」
女「物は言いようだね……。ま、ありがと男君」
友「話せないまま終わるのが午前の部だけ、ってことは午後になにかあったって解釈でいいのか?」
女「察しがいいね。ま、そんなところ。昼食も一緒に食べれればよかったんだけど、やっぱろそれぞれクラスメイトとの交流もあるからね」
許嫁「誘えばよかったじゃないですか」
男「随分と軽々しく言うな……。考えてもみたらどうかな、なかなか勇気がいると思うけど」
友「ま、許嫁ちゃんはそこの感性少しずれてるからな。ほら、中三の最後の方は恥ずかしげもなくお前んとこに飯食いに行ってたし」
男「あ、はは……。おかげでクラスではバカップル認定だもんな。勘弁してほしかったぜ」
女「そうやって文句言いながらも毎日許嫁ちゃんに付き合ってあげてたのも、男君の美点だったね」
男「……そらどーも」
女「さて、話を進めるね。さっき友が午後にって言った通り、午後は午後なんだけど、放課後にまで話は飛ぶんだよ」
許嫁「放課後……っていうと体育祭自体が終わった後ってこと?」
女「うん。いや、午後の部では午前よりも時間に余裕があって何度か話せたんだけどそこはカットしてもいいでしょ?」
許嫁「そうだね。了解」
女「それで、放課後……片付けも終わって大半の生徒が教室に戻っていく時間帯かな。私も帰ろうとしてたんだけど……」
男「ちょっといいか?」
女「ん?」
男「女さんはいつ頃からその彼にホの字だったんだ?」
女「言い回しが少し古臭いよ? んーっとね……段々惹かれていって、体育祭の当日にははっきり恋だと意識してたって感じ」
男「なるほど、ありがと」
女「うん。……それで、廊下を歩いて戻ってる私のケータイに二つの着信がありました」
友「二つ?」
女「そう。一つはお母さんから。『お疲れさま』って」
男・友「「いや、それいるか!?」」
許嫁「一つの着信が、って言った方がかっこいい気がしたよ私も」
女「嘘偽りなく話すとそうなるんだもん。……それでもう一つ、彼から」
許嫁「ごくり」
男「……」ペシ
許嫁「あたっ。な、何するんですかぁ」
男「……なんとなく」
女「そこ……いちゃついてるけど部屋出ていこうか?」
男「いや、余計な気ぃ使わなくていいから!」
女「はあ。彼からのメールには『この後少し時間ありますか?』ってあったんだ」
許嫁「きゃああーっ」バンバンバンバン
男「壁……もとい床を殴りたくなる気持ちはわかるから落ち着け!?」
許嫁「これが殴らずにいられますか? きゅんきゅんしてやってられませんよ!」
男「だから俺、無言の圧力としてどついたよね!? 伝わらなかった!?」
許嫁「あ、そういう意味だったんですか。てっきり男さんがじゃれてきたのかと……」
男「あのなぁ」
友「でも、そういう思わせぶりってか文面だけで緊張するメールってなんかいいな」
許嫁「女ちゃんのことだからそれ見ただけであれこれ想像を膨らませちゃったんでしょ?」
女「まあね。……『あります』って返事はとっくに決まっていたのに返信するのに十分もかかっちゃった」
男「もうその話聞いてるだけでお腹いっぱいだぜ」
友「ああ。いかにも青春、って感じがする」
女「続けるね。指定された時間、六時に後夜祭を抜け出して約束の教室に向かったんだ」
男「高まる鼓動を抑えきれずに早足になる女さんの姿が目に浮かぶようだね」
女「うーん。否定できないほどには緊張していたかも……」
許嫁「そして教室の前で立ち止まって深呼吸?」
女「そうしたかったんだけど生憎、教室の扉には窓ガラスがついてて一瞬で気づかれちゃった」
女「それで、最初はお互いにお疲れさまー、みたいに話したかな。彼は机に座って自然体でいたけど、私はしばらく立ったまま動けずにいたり……」
友「こうやって聞いてると、俺らは普段のテンション高い女ばっかり見てるから新鮮だな」
許嫁「私は過去にも恋バナとかしてるから何度かは見てるけど、滅多にこんな顔しないもんね、女ちゃん」
男「なるほど、女の子同士ならそうか。そういう面も知れるよな」
女「暫く経って、不意に彼の表情が変わったんだよ」
許嫁「でも、おおよその内容は予想ができてたんだから気が楽だったんじゃない?」
女「恥ずかしながらそんな余裕なんてありませんでした」
友「俺はそいつがどんな奴なのかはわからないけど、そいつだって相当緊張していたと思うぜ」
女「うん、後で聞いてみたらそうだってさ」
友「あ、そうなのか。……っともう別れたんだっけ、不躾で悪かったな」
女「ううん。気にしないで」
男「へえ。友お前、そういう気遣いできるようになったのか」
友「へへ。昔の儘の俺じゃねーからな。ってしみじみ言うなよ!」
男「なはは、悪い悪い。……話の腰折って悪かったな、続きいいぜ」
女「あ、うん」
女「っと、まあ私はそこで想いを告げられるわけなんですが……」
許嫁「ん? なんだか歯切れが悪くない?」
女「あーいや、恥ずかしいだけだから」
許嫁「余程印象に残ってる告白だったとみた」
女「あはは、実際は私が物凄く取り乱して、なんだかうるっときたりで大変だったんだから」
男「それ女さんが一人であたふたしてただけじゃん……」
女「ま、まあね」
友「ほんとに想像に容易いわ……」
女「それで私もしどろもどろになりながら了承して、めでたくー―みたいな感じでした。はい」
男「ん? それで終わりか?」
女「ん、そうだけど?」
許嫁「え!? ここまでは私も聞いてるんだけど? その後の惚気話は!?」
女「はっ……話すわけないじゃん!」
許嫁「罰ゲームっ♪」
女「そ、その話はもう終わりでしょ?」
友「じゃあ聞きたいか、聞きたくないかで多数決してもいいぜ?」
女「ひどい!」
女「……はぁ。一つだけねー……」
男「待ってました」
女「……って言ってもそんな面白がられるようなネタ、ないんだけどなあ……」
許嫁「じゃあ、初チューのときのお話でいいよー」
女「でいい、ってなにさ!?」
友「許嫁ちゃんなかなかえげつないお題要求するね」
許嫁「まあまあ、楽しんだもの勝ちだもん」
男「あからさまに楽しむ、って言うなよ……」
女「冬のことだっけなー……。二人で久々にデートしたんだよ」
男「ちょっと待て……。付き合って約半年、キスもしてなかったのか!?」
女「うーん。それを言われると弱いんだけど、まあ」
許嫁「お互いに恥ずかしがり屋だったんですね」
女「それで、前々から次にデートした時はき、キスしてみようって話してて……。あ! 勿論メールでね?」
友「メールの補足必要だったかはあれだけど、それって話し合って決めることだったんだな」
男「初々しさがにじみ出てくるようだね、ほんと」
女「でも、いざ当日となって、最後にのんびり歩くときになってもまだできなくてさ」
許嫁「タイミング伺いすぎじゃないかな……」
女「ううん。ただ純粋にその一歩が踏み出せなかっただけー」
男「あはは……」
女「で、着々と時間が経って、やばい! 時間なくなる! って焦ったときに不意に彼が立ち止まって……その、『いい?』って……」
友「へえ、一世一代の決断だ。それで女は?」
女「そ、それ聞いちゃう……?」
男「それよりも俺はその友の上から目線が気になるよ……」
女「ほんとその時はちょーっと触れるだけ。そんなのだったんだけど、逆にそれだったからこそ頭から離れなくって……」
女「家に帰ってベッドの上で発狂してたりだったのもいい思い出かなー」
男「そっか……。女さんらしいな」
女「らしいって……ねぇ」
許嫁「でも、そんなに仲睦まじいカップルだったなら、尚更どうして別れちゃったのかが不思議だなー」
女「んー。まあ、ね。若いうちはいろいろあるよね~」
男「……深くは訊かない方が女さんのためかな。でも確かに、沢山経験を積んだ方がいいっていうもんね」
友「別れから学ぶってこともあるんだろうな……きっと」
許嫁「ふふ、じゃあ一度別れも体験してみますか? 男さん。そしたらより一層相手の存在を強く認識できるかもしれませんし」
男「いや、それは困る。……ってかもう十分認識してるから。俺は、もう許嫁中心で動いてるんだなって」
許嫁「男さん……」
女「あーはいはいごちそうさまあー」
男「……そんな明らかに呆れたように言わなくても……」
友「なあ男―。喉が渇いた」
男「え? あ、ああ。わかった、何か持ってくるよ。何がいい?」
友「俺はあるもので構わないぜ。なるたけ甘ったるいのは避けてくれると助かるけど」
女「私もー」
許嫁「私もです。……あ、私も手伝いましょうか?」
男「ん、俺一人でいいよ。……っとお前ら、勝手に部屋漁るなよ?」
友・女「「それは振りですか!?」」
男「……断じて違うからな!?」
男「……ったく」
男「(ん、紅茶でいいか。パック沢山余ってたし。……んじゃお湯沸かして、っと)」
男母「男」
男「母さんか……。どうかした?」
男母「どう? 久々に会った二人は」
男「変わってなくて安心したよ。……ありがとな、母さん」
男母「ん?」
男「親父があの二人に電話して呼んだ、って言ってたけどどうせ提案者は母さんなんだろ?」
男母「さあ、どうでしょう。……考えすぎよ」
男「(少し時間かかりすぎたか……。……ん?)」
友「~~~~~~~~」
男「(……何話してんだ? 上手く聞きとれねえ……)」
友「ってなわけだ。許嫁ちゃん、面倒くさい性格してるけど男のことよろしく頼むな」
女「私からもお願いするね。許嫁ちゃん、男君と二人で幸せになって……」
許嫁「ちょ、ちょっとそんなに改められても……」
男「……ふぅ」トッ
男「(なんだよ……ベタなことしてくれてんじゃねーぞ二人とも……)」
男「……ただいま。温かいやつだから少し手間取った、悪かったな」
許嫁「あ、お帰りなさい」
友「おっ、パイのみもあるじゃん! さっすがぁ、気が利くね!」
男「……」
女「……」
許嫁「……?」
男「お前それわざと言ったんならはっ倒すからな……」
女「んーっ、このさくさく感たまんないねー♪」
許嫁「だねー。チョコもしつこすぎずに丁度いいし」モグモグ
男「おいおい、女二人でどんどん食ってくなよ……」
許嫁「お菓子は女の子の命ですから」
友「やっすい命だなぁ……」
男「なはは。……ん、でも久々に食べたけどおいしいな」
――――10分後
女「うわー……もうこんな時間かー。そろそろ帰らないとだね」
友「はー。帰りたくねえ……」
許嫁「なんだか冬休みに入ったような感覚だけど、明日から又学校だと思うと憂鬱だなぁ」
友「うわっ! やべ! 宿題やってねえ!?」
男「そういうところも相変わらずだな、友は」
友「んだよ……。そういうお前は、って言いたいけど終わらせてるんだよな毎回」
男「そう言いたいところなんだけど、今回は珍しく手つかずなんだ」
――――10分後
女「うわー……もうこんな時間かー。そろそろ帰らないとだね」
友「はー。帰りたくねえ……」
許嫁「なんだか冬休みに入ったような感覚だけど、明日から又学校だと思うと憂鬱だなぁ」
友「うわっ! やべ! 宿題やってねえ!?」
男「そういうところも相変わらずだな、友は」
友「んだよ……。そういうお前は、って言いたいけど終わらせてるんだよな毎回」
男「そう言いたいところなんだけど、今回は珍しく手つかずなんだ」
女「へえ、意外」
男「いや、単純にこの二日間色々とあって時間がなかったんだよ」
許嫁「私は終わらせてますけどね」
男「まじで!? 裏切者!?」
許嫁「酷い言われようです。……私は土曜日の午前中に終わらせてありますから」
友「ここに本物と形だけの優等生の差が表れたね」
男「形だけとかいうなよ……」
友・女「「おじゃましましたー!」」
男父「今日はありがとうな。男も喜んでた」
男「お、親父……。はずいこと言うなって」
許嫁母「女ちゃん」
女「は、はい」
許嫁母「いつもありがとうね。これからもこの子と仲良くしてあげて」
女「言われなくてもですよ」
男「どうする? 途中まで送っていこうか?」
女「うんにゃ、友が送ってくれるようだから大丈夫だよ。ありがと男君」
男「(へえ……友の奴、言うようになったもんだなぁ)」
友「はぁ!? 俺聞いてねーぞそんなの!」
男・許嫁「「……」」
許嫁「ま、そんな事だろうと思ってましたよ」
男「……俺もだ」
許嫁「ちょっと、か弱い女の子を夜道一人で帰らせる気?」
男・友「「か弱い、ねえ……」」
許嫁「ううん……」
女「あ、そこは三人そろって微妙な顔するんだ……」
男「そこは可愛いとかのほうがまだ信憑性を帯びてた気がするよ」
女「……男君さぁ」
男「? なんだよ女さ……あぃだだだだだだだだだだだだだっ!?」
許嫁「……」ギュウウウウ
男「い、いたい! 痛いって許嫁!」
男父「いいぞ! もっとやれ!」
男「親父ぃ!?」
女「最後まで変わらないんだね、この親子。……それに」
友「きっと将来、男が尻に敷かれるんだろうな、こっちは」
女「あはは。そうだね」
男「わ、笑ってないでたふけてくれよ……ってて」
――――帰り道(友&女)
友「いやー、楽しかったなあ」
女「……何だかんだ送ってくれるんだね、友は。この道、あんたには遠回りでしょ?」
友「……バレてたか。まあな」
女「……こうやってまた集まれるといいね」
友「そうだな。次は受験後になるかな。……そん時は旅行でも行きたいぜ」
女「お金が飛ぶなぁ……。でも、いいね」
友「だろ? ……あいつらにはこれからも笑っててほしいからな。……勿論お前も例外じゃないけど」
女「……ん」
友「……ふぅ」
女「私さ、少し誤解してたよ……友のこと。今だって気を遣ってくれたんでしょ?」
友「……さあ、どうだか。俺は本心しか言ってないよ」
女「ふふっ。だから……見直した」
友「前はどれだけひどく見られていたんだろうか」
女「単なる空気読めない馬鹿、が一番近いかも……ってそんな顔しないでよ、冗談だよ!」
友「へーへー」
女「信じてないな? ……ん、とりあえずありがとうね、友」
友「俺に言うのは見当違いだよ」
女「ううん間違ってないよ」
友「……そっか」
女「なに立ち止まってるの? 行こ?」
友「ああ……そうだな」
ワン付け直さなくても猫耳のままではあるんだよな
はよ(ノシ 'ω')ノシ バンバン
――――玄関先(男&許嫁)
許嫁「行っちゃいましたね」
男「……寂しくなったか?」
許嫁「……そうですね。でも楽しかったです」
男「同感。かなり気が休まったよ」
許嫁「大して受験勉強に身を入れてないじゃないですか」
男「う、うるせ! 人並みにはやってるんだよ、多分」
許嫁「わかりましたわかりました。今度時間があるときに私が色々教えてあげますから、拗ねないでください」
男「(色々という言い方が気になるな……)」
許嫁「それはそうと、友君たちのプレゼント、空けてみたらどうですか?」
男「単に許嫁が気になってるだけじゃないか……」
許嫁「えへへ、ばれちゃいましたか」
男「(いやでも本当に避妊具とか入ってたら笑えないぞこれ)」
男「とりあえず部屋に戻ろうか。……あと、痛かったんだからな、これ」
許嫁「それは自業自得です」
男「(そこまで悪いこと言ってない気がするんだけどなぁ)」
男「さて、と」トン
許嫁「何が入ってるんでしょうか」
男「二人で選んでくれた、っつーなら友の滅茶苦茶なセンスの物もないだろうしな」
許嫁「わくわく」
男「……わざわざ口に出さなくてもいいぞ。……ん?」
許嫁「どうしました? ……ってわぁ、おっきいですね」
男「(その惚れ惚れしたような表情で「おっきい」とか言うのやめてもらえないかな……)」
男「これは、どこからどう見ても帽子、だよな」フム
許嫁「面白い帽子ですね。頭に羽が付いていて」
男「こんなんどこで被れっていうんだよ……」
許嫁「似合う気がしますよ。男さんなら」
男「本当か?」
許嫁「はい♪ 折角ですし被ってみたらどうです?」
男「ああ、そうするよ……っと、どうだ?」ポス
許嫁「あはは、やっぱり男さんにはおっきいです、その帽子」
男「俺に限らず誰にでも大きいぞこのサイズは」
男「でもまあ、折角というのなら……」
許嫁「……?」
男「どうしたものか、ここに猫耳のカチューシャがありますね」
許嫁「ど、どうしてでしょうね……ひゃっ!?」ガバッ
男「暴れるなって、付けられないだろ?」グイグイ
許嫁「そ、そんなことされようとしてるのに暴れるなって言う方が無理ありますよ!」
男「こうしちゃえば……っ!」・・・トン
許嫁「……床ドンなんてベタですね」
男「……ベタだな」
男「許嫁~」
許嫁「そ、そんなに甘えた声出されても付けませんよ!?」
男「知ってるか? 猫耳は付けようによっちゃ痛い人になるけど、似合う人は本当に似合うんだからな」
許嫁「知りたくもない情報です……」
男「ま、焦る許嫁も見れたことだし良しとするよ」
許嫁「……じゃあそこからどいてください」
男「……いいの?」
許嫁「……」
男「……」スッ
許嫁「……んちゅ……」チュ
男「……んっ……ちゅばっ……」
許嫁「……んーっ。……ぷはぁ」
男「……あはは、すっげえ。唾液が糸引いてる」
許嫁「い、言わないでいいですからそんなこと!///」カァァ
男「……っと。とりあえず許嫁からのプレゼントも空けなきゃな」
許嫁「!? じゃ、じゃあ私はお風呂にでも……ってきゃん!?」
男「許嫁も一緒に、だぜ?」
許嫁「に、逃げますよ? 恥ずかしいですから」
男「……んじゃ、ここに座って?」ポンポン
許嫁「ベッドの上、ですか?」
男「うん。それを俺が後ろから……」ギュウウ
許嫁「(はわわ……///)」
男「これで許嫁は逃げられないよな」
許嫁「油断しました。……まさかこんなに強引な手で来るだなんて」
男「ちょっといじめてみたくなっちゃってね。……あ、これ空けづらいな」
許嫁「そうでしょうね。やっぱり離すべきなんです」
男「んじゃいいや、許嫁空けてよ。俺はこのまま許嫁の背中を堪能するから」
許嫁「そ、それは二つとも却下です!」
男「早めに頼むぜー」ギュウ
許嫁「(昨夜を経て男さんが積極的になりました……)」
許嫁「……あ、あのー」
男「……いい匂いするな、許嫁って」スン
許嫁「はう……。じゃなくて!」
男「ん? どうかした?」
許嫁「い、一応空けました」
男「ん、サンキュな。……へえ、お洒落な手袋だな。嬉しいよ。……って、じゃあなんで恥ずかしがってるんだ? 全然恥ずかしがる要素ないのに……」
許嫁「……さ、さあ?」サッ
男「……ん」
男「五つ数える間にその前に隠したものを出しなさい」
許嫁「嫌です。企業秘密です」
男「企業なのか」
許嫁「はい。株式会社許嫁の地位は絶隊です」
男「なにそのかっこいいけど何をするのかわからない会社名!?」
許嫁「みなまで言うな、男さんが言いたいことはわかる」
男「……いつものボケに走って話題逸らそうとしてる……よね?」
許嫁「こういう時だけ乗ってくれないのはひどいです……」ハァ
男「場合が場合なんだよ……。さ、見してごらんって」
許嫁「い、嫌です! 黙秘権を行使します!」
男「ギルティ。有罪判決を下す」
許嫁「一瞬で裁かれた!?」
男「この裁判に於いての裁判長は俺と旧知の仲でね」
許嫁「私情で罪を決めたらそれこそ違法じゃないですか!」
男「……ってそうじゃなくてだな……」
許嫁「んん~~~~~っ///」グイグイ
男「流石に抜け出すのは無理だと思うぞ?」
許嫁「いーやーでーすー! 男さんに一人で見てもらう予定で書いたんですから―!」
男「ん? 書いた?」
許嫁「はっ」
男「いいn……」
許嫁「黙秘権バージョンツーを行使します!!」
男「いや、ねえよそんなもの」
――――数分後
男「なるほど。事情はよーくわかった」
許嫁「……はぁ」
男「この手紙が許嫁の隠していたもので、この場で読まれると恥ずかしいものだってわけだ」
許嫁「……」
男「読んでも、いい?」
許嫁「……もう。勝手にしてください」
男「……いや、その前に風呂に入ろう」
許嫁「……? どうしてですか?」
男「……」
許嫁「……」
男「……多分、俺。これ読んだら我慢できなくなって、その、シたくなると思う。だから……」
許嫁「……はぁ。わかりました。……そう、しましょうか」
男「許嫁、ちょっと赤くなってる」
許嫁「!? な、なってないっ!」バッ
男「その前に親父たちのうち誰かが入ってないのか見てくるか」
許嫁「そうですね。もしかしたらという可能性もありますし」
男「……親父―? 風呂って空いてるー?」
男「……」
男「……あれ?」
男「(聞こえなかったのか? 向こうまでちゃんと行くか)」
男「……」ガチャ
男「誰も……いねぇ」
許嫁「どうかしましたか?」
男「親父たちがいないんだけど。……まあ居酒屋にでも行ってるんだとは思うけど」
男「昨日は曲がりなりにも一言あったから気になるな」
電話「ぷるるるるるるるるるるるるr」
男「!? ……わっと……驚かすなよ」
許嫁「出ましょうか?」
男「いや、この時間となれば百パー親父だ。俺が出るよ」ガチャ
男「もしもし」
男父『俺だ』
男「知ってる」
男「随分とタイミングがいいな。まるで俺たちが下に降りてくるのを見ていたようじゃないか」
男父『まあ見てるからな』
男「どこで!?」
男父『細かいことは気にすんな。っとまあ、俺らは少し夜道歩いてくるからよ。うまいことやれよ? 我が息子』
男「外は冷え込むからな。体には気ぃつけろよ、親父。……母さんたちも一緒なのか?」
男父『いんや、母さんと許嫁父たちは先に店に行ってる。あの焼き鳥屋美味いんだよなぁ』
男「楽しそうで何よりだよ……。うん、そんじゃあ」
男「……」
許嫁「何て言ってました?」
男「焼き鳥屋にもう一飲みしに行くってさ」
許嫁「あはは。また、気を遣われちゃったんでしょうか?」
男「……ま、そうなる……のかな」
許嫁「二人っきりですね……この家に。さっきまであんなに騒がしかったのに」
男「そう……だな」
許嫁「ふふ。男さん、声が渇いてますよ?」
男「……許嫁こそ」
許嫁「……」
男「……」
許嫁「変に緊張しちゃいますね」
男「昨日は緊張とか感じる余裕すらなかったもんな」
許嫁「き、昨日のことはもう忘れてください」
男「あはは……。えーっと……」
許嫁「と、当初の予定だとこの後お風呂なわけですが」
許嫁「せっかく二人きりなので……その。一緒に入りませんか……?///」
今日はここまでで。
また次いつかお出せるかはわかりませんが、何らかのコメント残しておいてくれてると嬉しいです。
~-v(A` )
| ̄ ̄「 ̄ ̄|
風呂入ってくるよ1人で
乙
え、猫耳は女友につけたまま帰らせたんじゃないんか
まだか
>>337
ごめんなさい!一か月も長風呂させてしまって……お久しぶりです!
>>338
乙ありです!あー……っと指摘されるまで忘れてました猫耳。一応皆違和感を感じなくなって忘れてた、ってことで(
>>339
わお、ほんの数日前。待っててくださってありがとうございました!
男「……マジですか」
許嫁「二度は言いませんけど」
男「……えと」
男「……その、よろしければ同行させていただきたい次第なわけなんだけど……」
許嫁「随分と下手に出てきますね。何かあったんですか?」
男「その質問は俺の方なんだけど……。普段の許嫁ならそんなお誘い文句言わないだろ?」
許嫁「あー……はい、そうかもです」
許嫁「……ちょっと私も欲情しちゃってるのかもしれません」
許嫁「浴場だけに」
男「それが言いたかったんだな」
許嫁「……まあ一応嘘ではないんですけど」
男「それにしてももう少しオブラートに包んだような言い回し無かったのか?」
許嫁「肉欲?」
男「どう考えてもさっきより生々しいよな」
許嫁「淫慾?」
男「……その字だと下心丸見えだぞ」ハァ
許嫁「若干メタいです、会話してるだけじゃその内側なんて伝わりませんよ」
男「慾は単なる自分のエゴとかに基づいた奴だからな、雰囲気から伝わってくるんだよ」
許嫁「まあいいです、とりあえず温まりませんか?」
男「そうだな」
許嫁「知ってますか? 一緒にお風呂に入れるカップルは長続きするらしいですよ」
男「へえ、その訳は?」
許嫁「邪魔するもの……というか二人の間に隔たりがなくなるので本心からのコミュニケーションがとりやすいらしいです」
男「なる、ほど……な」
許嫁「それに精神的な面でなくとも肌と肌の触れ合いで距離の近さを感じられるわけですから」
男「やけに詳しいんだな」
許嫁「べっ、別に男と長続きさせたいがために調べたとかじゃないんだからねっ!」
男「……」
許嫁「ちょ、無言にならないでほしいんですけど……」
男「や、許嫁にツンデレは似合わねーな」
許嫁「そうですね、女ちゃんの方が適役です」
男「どちらかというと許嫁はクーデレの方がしっくりくるかな」ウン
許嫁「敬語がそういった印象を与えるのかもしれませんね」
――――脱衣所
扉「がらがら」
男「なあ、毎回扉に祇園喋らせるのどうにかならないか?」
許嫁「出番を持てる存在が増えるのはいいことじゃないですか」
男「(いや全然わからん)」
許嫁「あ、男さん一つ前の台詞に誤字がありますよ?」
男「あ、『祇園』は『擬音』に訂正だな。まあニュアンスで伝わるだろ、この流れだし」
許嫁「誤字といえばですね、この前面白いことがあったんです」
男「テレビで笑える誤植でも見つけたのか? 例えば某漫画作品が『ゆるなり』表記をされてたといった類の」
許嫁「……それ、かなり前のお話じゃないですか」
男「そうか? ……ってもう三年以上も前なんだな。でもまああれは作者さんの懐の深さを垣間見れてよかったよ」
許嫁「……私はそこまで詳しくないので知りませんけど」
男「悪い、話がそれたな」
許嫁「私のは誤字というには少し違うのかもしれないんですけどね」
許嫁「……」カキカキ
許嫁「ふう。男さん、これで何て読むと思いますか?」
男「どっから持ってきたそのホワイトボード」
許嫁「白黒しましま?」
男「ホワイトタイガー」
許嫁「普通はシマウマじゃあないですか?」
男「俺がそう答えるように焚き付けたの許嫁だよね!?」
白板「……」
ホワイトBには「呪い」と書かれている。
男「ナレーションできるじゃねーか。あとなんだこの中途半端なの」
許嫁「打ち込むの面倒なんですよ」
男「わかったから代弁するな」
許嫁「では男さんこれ、読んでみてください」
男「……普通に『のろい』でいいんじゃないか?」
許嫁「そうですよね……はぁ」
男「なんだよため息なんかついて」
許嫁「先週の現代文の授業で私が朗読をする番になって、丁度この文字の含まれている個所を読むことになったんです」
男「うん、でもまあ許嫁はそういうの好きだったし何ら苦ではなかったろ?」
許嫁「そうなんですけど、どうしてだか知らないんですけど先ほどの男さんが答えたもの以外の読み方が出てきて、そちらを読んでしまったんです」
男「『のろい』以外にも読み方があるのか。送り仮名まで合ってるのに」
許嫁「『まじない』です。聞いたことありませんか?」
男「ないわ……。てか知ってすらいないぞ、それ」
許嫁「うー……恥ずかしかったんだよ……」
男「あはは……」
まあ要するに僕がこの前の授業で「のろい」を「まじない」って読んじゃったってことです。
誰も共有する相手がいなかったのでこの場をお借りしました……恥っずw
男「さて、お湯も焚きなおしたし入るとしようか」
許嫁「そうですね。……あの、でもやっぱり恥ずかしいので男さん先に入っててください」
男「あ、ああ」
男「……んしょ、っと」ヌギッ
男「許嫁も冬場だしいつまでもここにいると冷え込むから早めにな」
許嫁「わ、わかってますって!」
――――かぽーん
男「(大浴場でもあるまいしそんな風呂桶の効果音ありえないだろ……)」
許嫁「……んっ」
許嫁「……すーはーすーはー」
許嫁「は、入りますよー」
男「ん。どうぞ」
許嫁「……」ガチャ
男「……」
許嫁「どきどき」
男「わざわざ口に出さなくてもいいぞ」
許嫁「あれ、なんだか思ったより緊張しませんね」
男「んー……言われてみれば。流石はリラックス効果を兼ね備えてるだけあるな、お風呂は」
許嫁「ついでなので入浴剤も入れましょう。そうすれば見えませんし。……どこにありますか?」
男「ちびタオルの入ってる引き出しの右隣にあるよ」
許嫁「了解です。何色にしましょうか……」
男「色で変わるものか?」
許嫁「これもメンタル的なことだと思います。黄色っぽいのは脳の活性化に、緑は気持ちを穏やかに……って感じに」
男「なるほど。ま、許嫁の好きな色でいいよ」
許嫁「わかりました。青とピンクを混ぜて紫にしましょう」
男「やめろ」
男「ってか普通に紫があるはずだぜ?」
許嫁「わかってないなぁ。混ぜることこそが醍醐味なのに」
男「わかりたくもないよ」
許嫁「仕方ないから紫の、持っていくかなー」
男「ああ、そうしてくれると俺としても助かる」
許嫁「でも混ぜて新しいものを生み出すってことはいいことだと思うんだ?」
男「まあな。……小さい頃はファミレスのドリンクバーで二種類くらい混ぜたっけ」
許嫁「あっ、懐かしいね。カルピスとメロンソーダは合うけどコーラとメロンソーダは悲惨だったよ……」
男「あれは色合いからしても混ぜてはいけないと思うんだ」
男「よし、じゃあ入れちゃってくれ」
許嫁「さらさら~」
男「ほら、許嫁も入りなよ」
許嫁「そうする~」
男「(いつの間にか口調が。……そういえば気が向いたらとか言ってたしな)」
男「(やっぱり俺はこっちの自然体な許嫁も好きだな)」
許嫁「はーっ……。温まるねえ」
男「あ、あんまりくっつくなよ」
許嫁「なんでーっ?」
男「(うっわああざとい)」
許嫁「……今日は色々あったね」
男「……どうしたんだ急に」
許嫁「……んーん、ちょっと一日を振り返ってみただけ」
男「そっか……」
許嫁「男君と色々して、結婚の約束もしてもらって」
男「うん」
許嫁「おじいちゃんにも会えて、高台でお昼寝もして」
男「うん」
許嫁「買い物もして、友君や女ちゃんとも遊んで」
男「うん」
許嫁「楽しかったですか?」
男「……ああ」
許嫁「……」
男「すっげー幸せな誕生日だった。許嫁のおかげだよ、ありがとう」
許嫁「……もう」
男「な、なんだよ」
許嫁「よくもまあそんな気恥ずかしくなるような台詞を言えるね、ってこと」
男「伊達にやれやれ系気取ってないよ」
許嫁「……私の前では本当の男君でいなきゃダメだからね?」
男「わかってる。……ってか俺は許嫁の前だと隠し事はできないかな」
許嫁「……?」
男「何だろ、昔から許嫁に対して嘘は付けないんだ、俺」
許嫁「どうして?」
男「いるだろ? この人には嘘をつきたくない、って思える人」
許嫁「……多分」
男「ん? 俺か?」
許嫁「男君なんて嫌いです」
男「……つけんじゃねーか、嘘」
許嫁「本心かもしれないよ?」
男「あはは、それだったら悲しいな」
許嫁「……大丈夫、ありえないから――」
男「……」
許嫁「……」
男「……んっ」チュ
許嫁「……んんー///」ンチュ
男「……ぷはっ。結局こうなるんだな」
許嫁「……みたいだね。男君はその……イヤ?」
男「……まさか、な」ギュウ
許嫁「……っ。……うん」
男「あ、あのさ許嫁……」
許嫁「こっ、ここじゃダメだからね!?」
男「あー。だよなぁ」
許嫁「……」
男「……」
許嫁「……むぅ」
許嫁「そ、その代わりに口でなら……その、上手くできるかはわからないんだけど……」
男「えっ、あ、えとっ……!?」
男「……って思ったんだけどさ」
許嫁「ん?」
男「スレタイに『R18』入れてないし正直これ以上はダメだと思うんだよね」
許嫁「……」
男「昨日の夜の描写もとりあえず様子見で直接的な事は書かれなかったわけなんだけど」
許嫁「言われてみればボーダーラインがわからないね、どうしよっか」
男「……」
許嫁「まあいっか。とりあえずそこんところは詳しい人たちに訊くとして、この場はそうだね……」
許嫁「うん、決めた。男君、お背中流してあげる! 今はこれで我慢して……ね?」
実際にssではエロ描写書いたことないからわかんないんですけど、ここってどの程度までならセーフなんですかね……w
僕もあと数か月で男君のように大手を振って18禁コーナーにいけるようになります
って話を幼馴染の奴にしたら「もう行ってる奴が何を」って返されて言い返せなかったお話と共に落ちます。
とりあえず今月中には完成させたいと思いますので、最後までお付き合いお願いいたします♪
乙
別にスレタイに入ってなくても好きに書けばいい
個人的には示唆するくらいで直接描写いらないけど
幼馴染は男だよね?
おちんぽ
>>362
了解です、感謝です!
>>363
僕の幼馴染っすか?そりゃまあ男です。先日エロゲを一作譲り受けたほどには仲がいいです。
>>364
おいお前誰だ。
春休みだわっしょい!すみません更新遅くなりまして。
男「……」
許嫁「……」ゴシゴシ
男「(なんだろう、物凄くむずかゆい気分だ……)」
許嫁「……」
男「(思えば、許嫁と風呂に入るのって初めてだな……)」
男「(っといかん、つい思考回路が迷走を始めそうだった)」
許嫁「いつの間にか男君もおっきくなったんだねえ」シミジミ
男「……何の話だよ」
許嫁「何の話だと思った?」
男「ナニの話だとは思ってないけどな」
許嫁「……あはは。うん、単純に体の話だよ」
男「今の流れから言うと下ネタにしか聞こえないんだけど」
許嫁「もう、男君のえっち」
男「……予め釘を刺しておくけれど、エッチング液だとかエッチガニのボケはいらないからな」
許嫁「察しがいいね。だけど新ネタ、エッチスケッチワンタッチで返してみるよ?」ドヤァ
男「いや、別に違うネタを求めていたわけじゃあないんだけど……。それに、随分古い言い回しじゃないか?」
許嫁「私たちのお母さんくらいの代からだよね、きっと流行ったのは」
男「俺らの子供時代にも少しだけ流行った気もしなくないけどな」
許嫁「エッチ?」
男「……スケッチ」
許嫁「サンドイッチ!」グッ
男「ごめん意味が分からない」
許嫁「ぎゅーっ」
男「!?」
許嫁「おっぱいとお背中のサンドイッチ~」
男「お前酔っぱらってないか」
許嫁「若干のサービスだよ?」
男「……どこの風俗嬢ですかあんたは」
許嫁「覚えてない? エッチスケッチワンタッチ、あなたのおっぱい何センチ。って」
男「ごめん、まず俺はそれを聞いたことすらない」
許嫁「え? そうなの? 男君のお父さんに教えてもらったんだけど」
男「なにあいつ人の許嫁にセクハラ働いてるの」
許嫁「男君を誘惑するときに使えってさ」
男「それ、俺が胸のサイズ訊かれることにならないかな?」
許嫁「あはは、何センチくらいあるのかなー?」
男「ばかばか……! 腕回すな、抱き着くなって!」
許嫁「さながらラノベやエロゲにありそうな展開ですね」
男「それ言っちゃあ元も子もないな。……さて、代わるか?」
許嫁「えっ……あ、いいよ別に」
男「そうか? んじゃ俺は温まっとくよ」
男「……」ザブン
許嫁「……ふんふふーん」
男「(さて……どうしたものかね)」
――――男部屋
許嫁「ふう、いいお湯でした」
男「(出るタイミング見つからなくてすっかり上せかけた)」
男「何か飲むか?」
許嫁「練乳……かな?」テレテレ
男「……唐突なボケやめてくれ」
許嫁「醤油?」
男「控えめに言って腹ん中壊滅的になると思うんだけど」
許嫁「昨晩私の中をかき回した人が今更何を///」
男「……ハードな下ネタは控えてくれないかな」
許嫁「とりあえずはいいかな」
男「ん、それじゃあ早速手紙とやらを拝見させてもらうとしよう」
許嫁「あ、覚えてたんだ」ハァ
男「そりゃな……。さて」
許嫁「ね、やっぱりここにいるの恥ずかしいんだけど」
男「……そうでもないだろ?ほら」
許嫁「ポンポンされてもイヤ。……話の進行の都合上読み上げるじゃん……」
男「読み上げずにやってみるか?」
許嫁「はぁ」
男「……」
許嫁「……」
男「……」
許嫁「……」ソワソワ
男「……」
許嫁「……」ジー
男「……ふむふむ」
許嫁「……はぁ」
許嫁「(……単に手紙の内容考えてなかったからこうしたって思われそうだよね)」
男「許嫁、こっちおいで」
許嫁「?」
男「さっきみたく俺の間に許嫁がすっぽりはまってくれる体勢が好ましい」
許嫁「……わーかーりーまーしーたーよーっ」グイ
男「ん、さんきゅ」
許嫁「その代わり私は置物と化しますのでご了承を」
男「こんなに温かく柔らかい置物があったら雪国の人たちも安泰だろうな」
許嫁「……」
男「……」チョン
許嫁「ひにゃ!?」ビクッ
男「あれー置物が喋ったぞー」
許嫁「……」ジトー
男「……悪かったよ」
許嫁「くすぐりに弱い人をくすぐるなんて鬼の所業だよ?」
男「くすぐりに強い人くすぐったとしても面白くないだろう」
許嫁「まあ正論だね」
男「『拝啓、男君』……相変わらず達筆だな」
許嫁「あ、結局読み上げちゃうんだ……」
男「『昨日も話したけれど、男君との思い出はいっぱいです』」
男「『毎日一緒に学校に行きました。夏にはプールに、冬にはスキーに行きました』……文章が素っ気ないのは気のせいか?」
許嫁「……どうだろうね?」
男「『私が悲しい時には話を聞いてくれて、一緒に泣いてくれました。男君が悲しんでるときは一緒に泣いてあげました』……なはは、随分と恩着せがましい言い回しだ」
許嫁「……」
男「許嫁がこういう時は照れ屋で素直な言い方できないのは知ってるよ」
許嫁「……私は何にも知ってないもん」
男「『端的に言うと、気が付かなかっただけで男君はずっと傍にいてくれました。ストーカーですか?』……悪かったな」
男「『でもありがとう、って面と向かって言うのは恥ずかしいのでこの場をお借りします』」
許嫁「ああああっ! だから読まれたくなかったのにっっ!!!」ジタバタ
男「えっと……。いや、ここから先は許嫁に直接言ってもらったほうがいいな」
許嫁「ええっ!?」
男「……そんなに驚くことか。ほら」
許嫁「意地悪だぁ……」
男「いつも許嫁にはいいようにあしらわれている仕返しってことで」
許嫁「うう……」
許嫁「……仕方ないね、感謝は本物だし」
許嫁「男君」
男「ん」
許嫁「えと、その……今までありがとう。いつもありがとう……そして、その……大好き……です」
男「……」
許嫁「ちょっと、黙らないでよもう!」
男「……ああ」
許嫁「……ここまで言ったら最後の一文も読みます、貸してください」
男「え? あ、ああ」
許嫁「こほん」
男「わざとらしい咳払いはなんだよ」
許嫁「これから真剣なことを言うって演出効果を持ち合わせています」
男「わかったよ……」
許嫁「男君」
男「はい」
許嫁「18歳のお誕生日おめでとうございます♪」
ふう、
許嫁「……終わりかと思いました?」
男「終わりじゃないのかよ……。タイトル回収っていう一番いい形を執ったんじゃないのか……?」
許嫁「今一つ盛り上がりに欠けたんですよね」
許嫁「……知ってますか男君。デキる男はキスだけに一時間を使うんですよ……?」
男「……へえ、そいつは相当な手練れなんだな」
許嫁「今から特訓すればデキる大人に早変わりできますよ……?」
男「……別に俺はもう許嫁相手でしかやらないんだし、見栄えなんて気にする必要もないとは思うけど」
男「……そっか、要するにやってほしいんだな」
許嫁「……」コクリ
男「だが一時間って相当長いぜ?」
許嫁「……たかだか3600秒ですよ」
男「そう考えると短いように思えるのは不思議だよな」
許嫁「一日を秒換算すると86400秒なんですよ」
男「へえ……なんだかあっという間だな、一日って」
許嫁「実際そうじゃないですか。……ほら、もうここから一時間で男君の誕生日の日も終わりです」
許嫁「作品としては何か月もかかりましたが」
男「……そういうの省いていいからな」
許嫁「このレスはそのお詫びも兼ての個所ということで。ほんとは初夜の部分で終わらせる予定だったみたいですから」
男「……じゃあ改めまして……?」
許嫁「……電気一つ落とそ?」
男「……ん、そうだな」
許嫁「……」
男「……」
許嫁「ひゃん!」
許嫁「ま、まだ早いよぅ……」
――――
小鳥「ちゅんちゅん」
許嫁「……見てください、明るくなってきちゃいました……」
男「……ん、そうだな。俺も若干眠いぜ……」
許嫁「まさか本番に入るまでたっぷり三時間も焦らされるとは思わなかったよ……」
男「最後のほうの、おねだり最高だったなあ」
許嫁「……!/// ……変態め」
男「……あはは」
許嫁「ところで男君、知ってますか?」
許嫁「今日……学校ありますよ」
おしまい!♪
お疲れ様です。ここまでお付き合いくださった方がいらっしゃいましたら大感謝です。
ありがとうよりもありがとうです。
とりあえず高3になるのでここから一年は新しいのも何も手を出せないのですが、妄想は溜まってくのでいつかまたお会いできればうれしいなーって思います。
それではまた……
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