速水厚志「5121プロの日常」 (32)




二〇〇五年

プロデューサー達の休日は意外な形で終幕を迎えた
「961プロ」の出現。
それに続く、Pの天敵の出現である。

Pの天敵、これをアイドルと言う。
確固たる理由や信念を各々持ち、ファンを魅了する、Pの天敵。
Pは、存続のためにアイドルをプロデュースすることを余儀なくされた。
それから十年、アイマスはまだ続いている。





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……早朝
-駅前


厚志「ふぅ……ついた」

「……お前が速水厚志か」

厚志「? そうだけど、きみは?」

舞「わたしは芝村舞。覚えておくがいい、我らはいずれ、世界を征服する」

厚志「あ、迎えをよこしてくれたのか。征服ってつまり、業界のトップってことだよね」

舞「そうだ。トップアイドル……それを生み出すことこそ、芝村の目的だ」

厚志「きみもアイドルなの?」

舞「たわけ! わたしがアイドルなわけがなかろう。そなたと同じ、プロデューサーだ」

厚志「ふぅん……こんなに可愛いのに、もったいない」

舞「な、な、な、ななななにを」



厚志「あれ? 早く事務所行こうよ」

舞「…………そなたは、残酷な男だっ」





もっと楽しく! もっとエンターテイメント!


みんなのTHE iDOL March 5121プロの日常





……
-味のれん前

厚志「あれ? ……ここ?」

舞「そうだ。我が5121プロの事務所は、この味のれん東京支店ビルの上階を間借りしている」

厚志「そう、なんだ……まぁ、大事なのは事務所の見てくれじゃないよね」

舞「そうだ。立派なアイドルというのは、事務所が立派だから立派なのではない。アイドル自身が立派だから、立派なのだ」

厚志「芝村さんは難しいことを言うね」

舞「難しくはない。気難しくはあるがな。……入るぞ」




……
-5121プロ、事務所内


舞「喜べ、新人プロデューサーを連れてきた」

厚志「速水厚志です。よろしくお願いします」

瀬戸口「ほほぉう、これはまた可愛いぼうやだ。仲良くしようぜ」

厚志「わっ!? な、なんで抱き着くんですか!」

瀬戸口「いーじゃないの、お前さん抱き心地いいぜ?」

壬生屋「不潔です!」

ののみ「ふぇ? みおちゃん、たかちゃんはきれいなのよ」

厚志「確かに綺麗な人だけど……」

瀬戸口「なんだい、俺に惚れたかい?」

壬生屋「やっぱり不潔です!!」

舞「……いい加減、夫婦漫才はやめよ。速水が困惑している」

壬生屋「だ、誰が夫婦ですかっ!」

瀬戸口「俺と、このぼうやだろう?」

舞「違う!!!」
壬生屋「違いますっ!!!」




善行「やれやれ……困ったものだ」

厚志「あなたは……?」

善行「わたしは、善行忠孝。わたしも一応、プロデューサーということになっています」

原「元アイドルの、ね」

善行「やめてください」

厚志「元アイドル?」

舞「善行は八代会場のフェスで、大人数のアイドルグループを引き連れて戦った優秀なアイドルだった」

善行「……グループは解散。わたし自身も引退。……ま、昔の話ですよ。今は、原さん、石津さん、ヨーコさんなどのプロデュースを担当しています」

原「わたしはどちらかと言えば、アイドルより女優志望なんだけど。あぁ、わたし原素子。よろしくね、新人さん」

厚志「あ、はい。よろしくお願いします」

瀬戸口「俺は瀬戸口隆之。この5121プロの事務員をやっている。とはいえ、実質的な事務業務は加藤がやってるからな。俺もプロデューサー業務の、補佐的な立ち位置になる。よろしくな」

壬生屋「わたくし、壬生屋未央と申します。故郷の民のため、壬生屋家のため、日々トップアイドルを目指し精進しております」

ののみ「ののみはね、じゅにああいどる? おうたもおしばいも、ばらえてぃもやるの」

厚志「へぇ、すごいんだね。ののみちゃんは」

ののみ「えへへ、タレントなのよ。しんぱしー? がつかえるの」

厚志「しん、ぱしー?」

瀬戸口「気にするな。人の心に敏感。ただそれだけのことさ」

厚志「は、はぁ……」




……午後


厚志「ええと、これが所属アイドルの資料で……こっちがテレビの……それから」

舞「やりながら覚えていけばいい。それに、まずは実戦の前に訓練……もとい、レッスンだ」

厚志「そっか。それもそうだね」

舞「くんれ……レッスンは、ダンス、ボーカル、ビジュアルと主に三つに分類されるが、まずは体力がなければ話にならん。とりあえず最初は走り込みでもさせるがよかろう」

厚志「……そうなの?」

舞「そうだ。アイドルに必要なのは一に体力、二に体力」

厚志「そうなのかな……。ところで、僕の担当するアイドルって」

ガチャッ

滝川「たっだいまー! 滝川陽平、帰還しましたー」

茜「ふん、全く。ガキの相手は疲れるよ。元気すぎて、こっちまで楽しくなっちゃうじゃないか」

滝川「ヒーローショーもいいけどさー、いつになったらロボットに乗れるんだ?」

舞「たわけ。アイドルはロボットになど乗らん」

滝川「そんなぁ! iDOLつったら巨大ロボだろ!?」

舞「そんな話は知らん」

厚志「えっと……でも、アイドルのお仕事してたら、特撮とかアニメで、ロボットものに出る機会はあるんじゃ」

滝川「そう! それだよそれ! ってあんたは」

舞「新人プロデューサーの速水だ。わたしと共に、お前達の面倒を見る予定だ。仲良くするがいい」

滝川「へぇ……よろしくな!」

厚志「こちらこそ、よろしく」

茜「また社長の気まぐれか。いつまでもつか知らないけど、一応よろしく」

厚志「ははは……お手柔らかに」




厚志「……男性アイドルかぁ」

舞「不満か?」

厚志「僕は、きみをプロデュースしたかったな」

舞「ま、またそんなことをっ……」

厚志「可愛いし、いいと思うんだけどなぁ」

舞「……そこまで言うなら、わたしも言わせてもらう」

厚志「なに?」

舞「速水、お前こそアイドルになれ」

厚志「え……えぇっ!?」

舞「茜、滝川と三人でユニットを組ませる」

厚志「そんないきなり」



舞「全員半ズボンでな」

厚志「」



厚志「待って! 待ってよ!」

舞「待たぬ」

厚志「なんで半ズボンなのさ」

舞「わたしが好きだからだ。ぴちぴちの半ズボンと美少年の生足が」

厚志「…………」

舞「引くな。そなたが好き勝手言うから、反撃したまでだ」

厚志「……だいたい、茜のはかなり短い半ズボンだけど、滝川のはハーフパンツでしょ?」

舞「そなたには茜以上にぴちぴちの半ズボンをはかせる」

厚志「そんなぁ!」


坂上「仲良くやっていますね」

舞「む……坂上社長」

厚志「社長、ひどいんですよ! 芝村が僕に無理矢理半ズボンをはかせようと!」

舞「なっ、なにを言う! わたしはただ」

坂上「半ズボン…………うむ、ティンときた!」

厚志「こないで下さい!!!」



ガチャッ

来須「……今、戻った」

若宮「若宮康光、ただ今戻りました!」

坂上「ご苦労様です」

厚志「この人達は……?」

舞「スカウトだ。ボディーガードなども兼任している」


坂上「それで、成果の方は」

来須「……」

若宮「あー、めぼしい成果はなかったのだが、それが……」


新井木「やっほーー!! あたし、新井木勇美でーすっ! 来須先輩に一目ぼれして、ついてきちゃいました!」

来須「俺は……アイドルでは、ない。……先輩と、呼ぶな」

舞「こんなへちゃむくれをスカウトしてきたのか?」

若宮「本人も言っているだろう。勝手についてきただけだ」


厚志「……いさみちゃん?」

新井木「え? ……あーー!! 厚志くん! どーしてここに!? あ!! そっかそっか、厚志くんもアイドルになるんだね。厚志くんカワイイもんなぁ、昔っから。フリフリのスカートとかドレスとか着せられて」

厚志「わー!! わーー!!」

新井木「どしたの?」

厚志「やめてよ……人の黒歴史を晒すのは」

舞「ふむ……スカートにドレス、か」



舞「それもありだな」

厚志「なしだよ!!!」



……


厚志(疲れた……あいさつが済んで、仕事やレッスンの内容を教えてもらってたら、一日が終わっちゃった)

厚志(なんだか、個性の強い人達だったなぁ……)

厚志(坂上社長に突然ティンとこられてプロデューサーになったけど……ここで大丈夫かなぁ)




……翌日
-5121プロ事務所内


壬生屋「や、やっぱりこんな水着、着れません! 破廉恥すぎます……!」

瀬戸口「なにが破廉恥なもんか。普通のビキニじゃないか。」

壬生屋「それがっ……わたくしにとっては破廉恥だと」

瀬戸口「んなこと言ってるとセーラーミズギ着せるぞ?」

壬生屋「なっ……ひ、卑怯者!」

ののみ「たかちゃん、みおちゃん、けんかはめーなのよ」


善行「セーラーの何がいけないんですかね……海兵の古式ゆかしい制服ですよ」

原「水着と組み合わせたのがマズイんじゃないかしら」

善行「海兵ですよ? 水着でもおかしくはないでしょう」

原「……もしかして善行、セーラーミズギ好きなの? わたしにも着せたいとか?」

善行「もちろんです」

原「……バカ」


壬生屋「わたくし、アイドルやめます!」

ののみ「みおちゃん……それはめーなのよ」



瀬戸口「やれやれ……聞き分けのないお嬢さんだ」ガチャ

壬生屋「どちらに行かれるのです」

瀬戸口「俺はもう上がるよ。ヤボ用でね」

厚志「もう帰るんですか?」

瀬戸口「あぁ、ちゃんと午前いっぱいは仕事したろう?」

厚志(半分は遊んでるようにも見えたけど……)

ののみ「たかちゃん、でーと?」

瀬戸口「ま、そんなところ。じゃーな、お嬢さん方」


厚志「……僕、ちょっと営業かけてきますね」

舞「む、ならばわたしも同行する」

厚志「平気だよ、子供じゃないんだから。それとも、舞も僕とデートしたい?」

舞「なっ、なななな」

厚志「それじゃ、いってきます」ガチャッ

ののみ「いってらっしゃーい」フリフリ

舞「このっ……大たわけめが!!」




……


瀬戸口「それから、殺陣もできるんですよ。今時珍しいでしょう、殺陣のできるアイドル。まぁ、演技の方はこれからですが」

準竜師「ふはは。それは真、面妖な。というやつだな?」

瀬戸口「……というわけで、うちの壬生屋、使ってみませんか。きっと面白くなりますよ」

準竜師「随分と熱心だな。業界でも悪名高い、芝村の元にまで営業に来るとは」

瀬戸口「うちの今最も期待度の高いアイドルですから。もちろん、ののみも最高ですけどね。……それに、悪名高いからこそ、味方につけておきたい」

準竜師「ふ、ふふ、ふはははは! 久しぶりに砂時計の必要ない客だな。いいだろう。5121と言ったか? こき使ってやるから覚悟しておけ」

瀬戸口「有難うございます」

準竜師「覚えておけ…………そなたらはとかげのしっぽだ。そして私は、とかげのしっぽのファンでもあるのだぞ」




……

本田「……この346プロのアイドルと、お前んとこの弱小事務所のアイドルが共演……? はっ! 笑わせるな」

瀬戸口「面白いと思うんですがね……お互い、クセの強いのを抱えてますし、アイドル達にもいい刺激になると」

本田「おい瀬戸口、美しい城には、それにふさわしいお姫様っつーもんがあるんだよ。うちの所属アイドルを色物扱いすんな!」

瀬戸口「……パンクファッションでモデルガン持った常務は、美しい城にふさわしいのか?」

本田「なんか言ったか?」

瀬戸口「いえ、なにも」

本田「だいたい、オレのこれはヘヴィメタだ。うちはロックアイドルも多数所属してっから、いーんだよ! 分かったらとっとと帰れこのナンパ男! うちのアイドルに声かけたらタダじゃ済まねーからな!」

瀬戸口「おーこわ。それじゃ、また来ますよ」



……


瀬戸口「はー……2勝3敗ってとこか。ま、こんなもんだろ」

「マーオ」

瀬戸口「! ヌマ。……おっさんもこっちに来てたのか」

「マーオ」

瀬戸口「ははは、俺はアイドルには向いてないからな。すぐにスキャンダルになっちまう」

「マオナーオ」

瀬戸口「…………いいんだよ、これで。あの人は俺に魔法をかけた。だが……その魔法ももうない。プロデューサーとして、できることをやるさ。……多分、人間でも、一人二人ぐらいはトップアイドルにできるだろ」

「ナーオ……」

瀬戸口「おっさん? どこへ」


厚志「瀬戸口さん……?」

瀬戸口「……速水か」



瀬戸口「ほれ、メロンパン。俺のおごりだ」

厚志「どうも。……瀬戸口さんって、動物としゃべれるんですか?」

瀬戸口「ん? ははは、見られてたか。いやまぁ、愚痴を聞いてもらってただけさ。古馴染みなもんでね」

厚志「……営業、大変ですもんね」

瀬戸口「そっちも見られてたか……いいか、速水。このことは壬生屋の譲さんには、決して言うなよ」

厚志「どうしてですか?」

瀬戸口「そりゃあ、まぁ……俺のイメージに関わるからな」

厚志「はぁ……」

瀬戸口「さて、お前はそろそろ戻れ。芝村の姫さんが心配してるだろう。そうだ、みやげ用にもう一個メロンパンやろう」

厚志「は、はぁ……どうも」




……翌日


舞「今日はまずダンスレッスンから始める。アイドルに最も必要なのは体力だからな」

滝川「任せろ! 体力と運動力は、けっこう身についてきたぜ!」

茜「ま、僕にはもうこんなレッスンなんて必要ないけど……せいぜい僕と一緒にレッスンすることで、天才技能が習得できることを期待するんだね。見て盗め、というやつさ」


厚志「……なんで結局、僕もアイドルになってるんだろう」

舞「そなたを自由にさせておくと、どこかへフラフラと消えていきそうだからな。プロデューサーの務めとして、常時監視させてもらう」

厚志「それって横暴だ! 委員長! この部署替え陳情は陰謀です!」

善行「異議を却下します」

厚志「そんな!」

善行「いいじゃないですか。半ズボンアイドルユニット。ねぇ?」

厚志(…………そういえば、この人もなぜか半ズボンだった……)




舞「というわけで、レッスンを開始する。講師を雇う余裕はないので、わたしがトレーナー代わりだ」

厚志「全部のレッスンがそうなの?」

舞「わたしがかろうじて教えられるのはダンスだけだ。魅力訓練……もといビジュアルレッスンは瀬戸口。軍楽……ボーカルレッスンは瀬戸口に加え、来須、若宮がいる」

厚志「あのスカウトの二人が?」

滝川「来須先輩は昔バンドやってたんだってさ! 本人が歌ってくれたことはないけど、指導は的確だぜ」

厚志「へぇ……」

茜「おしゃべりはそこまでにしろよ。早く始めよう」

厚志「あ、うん」




~♪

舞「右! 左! そこでターン!」

厚志「っ、はっ」
滝川「よっ、ほいっと」
茜「ふっ、楽勝っ」

舞「ステップだ! ワンツースリーフォー! ファイブシックスセブンエイッ……速水! 最後のワンステップが踏めてないぞ!」

厚志「ご、ごめんっ」
滝川「ジャージ脱いで軽装甲になればステップ数増えるぜ」

舞「ジャンプ! ステップ! ミサイル!!」

厚志「ミサイル!?」

舞「ミサイルを撃ったら即ステップで移動しろ!」

厚志「なに言ってるの!?」



……


厚志「ふぅ……疲れた」

来須「……水だ」ポイッ

厚志「わっ、あ、ありがとうございます」

来須「……水分は、……こまめに補給しろ」

厚志「はい。……あの、一つ聞いていいですか?」

来須「…………なんだ」

厚志「……アイドルをスカウトするときに、何を見て決めてるんですか?」

来須「なぜ……聞く」

厚志「なんだか、なし崩しにアイドルにされちゃったけど……僕なんかに、本当にできるのかな……って」

来須「……そうか。……俺が見る、アイドルの条件は…………」



来須「……笑顔だ」

厚志「……」



厚志(……笑顔かぁ)

厚志(確かにそれなら得意かも。……芝村さんには、へらへらするなって怒られそうだけど)

厚志(少しだけ、頑張ってみようかな……!)






……数週間後


厚志(あれから、いろんなことがあった)

厚志(レッスンも、仕事も……そして日常も)

厚志(バックダンサーをして、地方のイベントに出て、みんなで海に行ってくすぐり大王して)

厚志(新井木さんとラーメン二十郎でロケ……うっぷ)

厚志(芸能レポーターの桜沢レイさんに取材されて、家事が得意な草食系ぽややんアイドルとして紹介されたり)

厚志(961プロのカーミラさん、緑子ちゃん、木下さん達と、ライブバトルしたり)

厚志(なぜか舞に胸を揉まれたり。そのあとすぐ「……タッチコミュではこうしろと…………騙したなやつめ!」とか言いながら真っ赤になって走って行っちゃったけど)


厚志(順調に人気を集め、ファンも増え、どうにか、5121プロ全体が盛り上がってきた。……けど僕は、いまだにアイドルとしての自分に戸惑ってる。笑顔……それだけでいいのだろうか。みんなそれぞれ個性を発揮する中、僕は……これから、どうすれば……)




……
-ライブ会場、ステージ袖


原『雨上ーがりのSUNDAY 街はロマンティックなトキメキ♪ めぐりーあいは』


厚志「……はぁー」

舞「どうした。緊張しているのか?」

厚志「舞……」

舞「そんな顔をするな。自信を持て。胸を張れ。しょぼくれていても、ファンは喜ばんぞ」

厚志「うん……分かってるんだけど。……本当に、僕でよかったのかな、って。僕がユニットリーダーで。僕が……アイドルで」

舞「…………厚志よ、聞け。……竜は、あれはただのとかげだが、飛ばねばならぬから飛ぶのだ。火を吹かねばならんから火を吹くのだ。誰にも負けられないから、強いのだ」

厚志「……はじめから、アイドルな人なんていない。ってこと?」

舞「そうだ。我らはただの人だが、ファンのために輝きたいと思った瞬間から、ただの人であることをやめるのだ。……厚志、お前はどうだ」

厚志「……うん。ありがとう、舞」

舞「礼などいらぬ。ただファンの前で、絢爛たる舞踏を舞ってこい。それがこの……5121プロ大絢爛舞踏祭での、お前の役割だ」

厚志「うん。行ってくる……! 舞」

舞「なんだ」

厚志「……きみが僕の最初のファンだ。だから、一番にきみを想って歌い、踊るよ」

舞「……たわけ」


茜「なにやってんだ! 僕らの出番だぞ! 早く来い速水!」

厚志「ごめん! すぐ行く!」

タッタッタッタ……



舞「わたしがお前のファンなら、そなたは……わたしのカダヤだ。その輝き、しっかりと見せてもらうぞ」




……

~♪


滝川『絶望と悲しみの海から、それは生まれ出ーるー』

茜『地に希望を、天に夢を、取り戻すために生まれ出る』

厚志『闇をはらう、銀の剣を、持つ少年ー』


新井木「キャー! 厚志くーん!」

田代「うぉー! 速水ぃー! こっち向けおらぁ!」


善行「芝村さんプロデュースのユニット、なかなかの人気ですね」

瀬戸口「ははは。本当は、茜の代わりに俺が入って「竜宮男児」なんて案もあったんですがね」

善行「……全員水に関係した名前で、竜宮。それと九州男児をかけたわけですか」

瀬戸口「ひどいネーミングでしょう? だから断りましたけどね。結果として、よかったと思ってますよ。あいつら三人、リューンを纏ってやがる」

善行「ただのサイリウムの光ですよ……まぁ、わたしも同意見ですが」


 今ならわたしは信じられる あなたのつくる未来が見える
 あなたの差し出す手をとって わたしも一緒に駆け上がろう
 幾千万の わたしとあなたで あの運命に打ち勝とう

 はるかなる未来への 階段を駆け上がる わたしは今 一人じゃない


三人『アールハンドゥ、ガンパレード。未来のために、マーチを歌おう。ガンパレード・マーチ……!』

『ガンパレード・マーチ……! ガンパレード・マーチ……!』




……翌日


舞「芝村にあいさつはない。事務所へ行くのだろう?」

厚志「業界的には、あいさつは必要だと思うけどなぁ」

舞「む、むむむ……!」


舞「お、おはよう……あ、あつ、し」

厚志「うん、おはよう。それじゃ行こうか」


厚志(大規模なライブイベントを越えて……僕達の日常は続いていく)

厚志(遠い空から歌を聞いてくれた、どこかの誰かの、未来のために…………)



舞「ところで、お前のセーラーミズギの件だが」

厚志「着ないよ」

舞「くっ……!」







END




ここまで読んで下さった方は、本当に有難うございました。


よろしければ
天海春香「0765小隊の日常」
もどうぞ。


速水厚志「ハッピーエンドを取り戻す」
もよろしく。

では。

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