舞「寂しいの」小鳥「はぁ」 (26)
舞「愛ったら家にいない時間が多くて……」
小鳥「アイドルですからね」
舞「売れてもないくせに時間取りすぎよ」
小鳥「これからどんどん売れていくでしょうし、更に時間がなくなりますね」
舞「寂しいわー。マジ寂しいわー」
小鳥「舞さんだって、愛ちゃんぐらいの時には多忙だったでしょう?」
舞「あの時の親の気持ちが今よーーーーーく分かるわー。子供に構ってもらえないってマジ寂しいわー」
小鳥「うわめんどい。珍しく人の家に来たと思ったらこの人めんどい」
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舞「愛がね、ママーって駆け寄ってきてくれた頃にはね……」
小鳥「昔話は長くなるので遠慮したいのですが」
舞「もう、この世の何よりも可愛かったわ」
小鳥「話聞いてないですね」
舞「あんたもとっとといいの捕まえなさいよ。子供がいるって最高よ?」
小鳥「できるんならやってます」
舞「想像してごらんなさいよ。愛が自分の娘だと」
小鳥「得意分野です」
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愛『ママー!』
愛『ママ、今日ね、学校でねー』
愛『ママー! 誕生日おめでとー!』
愛『ママはとっても若くて可愛いよね!』
愛『ママ、買い物行くの? 一緒に行こ!』
愛『オーディション合格したよー!』
愛『ママ大好きー!』
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小鳥「こんなに可愛い子が舞さんの娘なわk」
舞「今あんたが思ったようなことばかり起きませーん。面倒の方が多いでーす。つーか何言おうとした? あ?」
小鳥「ぐっ」
舞「あんたさー、何? 愛をどう思ってるワケ?」
小鳥「元気っ子。うちのやよいちゃんみたいなイメージ」
舞「あの子は同年代だし、確かにキャラ近いわねぇ」
小鳥「――に見せかけて」
舞「見せかけて」
小鳥「豆腐メンタル」
舞「正解。分かってるわね」
小鳥「やっぱり愛ちゃんが舞さんの娘とか嘘ですよね?」
舞「十代の身で頑張って出産した正真正銘私の子だっつーの」
小鳥「それにしては繊細で純粋ないい子に育ってますよね」
舞「これは遠回しに喧嘩売られてるようでそうではない。なぜなら小鳥の言う通りだから。私もビックリしてるぐらいだし」
小鳥「自覚あったんですね」
舞「あそこまで脆くなるとは思ってなかったなぁ」
小鳥「すぐ落ち込む、と思ったら次の日にはもう立ち上がってる。よく言えば切り替えが早い、悪く言えばアンバランスな子ですからね」
舞「弱い子には育ってもらいたくなかったけど、別に強くならなくてもよかった、なーんて思ってたからなのかなぁ」
小鳥「舞さんの育て方に問題はなかったと思いますよ」
舞「他人に言ってもらえるって、安心よね」
小鳥「舞さん自身に問題がないとは言っていません」
舞「今日はやけに突っかかるわね」
小鳥「ホームでは強気、負けられませんからね」
舞「さて、この完全無欠の元スーパーアイドル日高舞ちゃんに問題があるとは?」
小鳥「まさにそこです」
舞「分かっちゃいたけどバッサリね」
小鳥「愛ちゃんにはずっとついて回る問題でしょうね。母親が大きすぎると娘は大変なんです。自信なくしちゃうんですよ」
舞「そうね」
小鳥「自信はすぐには生まれませんからね。環境次第ってのもあります」
舞「がむしゃらなだけの愛にはそれだけが頼りなのよね」
小鳥「……876プロ、どうなんです?」
舞「それはあんたの方が知ってるんじゃないの?」
小鳥「悪い所じゃな……悪い所じゃないですよ!」
舞「あんた凄いわ。一瞬で母親を不安にさせるとかパネェわ」
小鳥「正直、あまり力のある事務所じゃありませんし、余裕もないからアイドルへの負担は大きい所ではあるんです」
舞「天海春香ちゃんだっけ? 愛にそこを紹介してくれちゃったのは。今度会わせてよ」
小鳥「だけど、765プロよりもアイドルが自由に活動できる点もまた大きいと思うんです」
舞「ほう」
小鳥「ほけきょ」
舞「続けて」
小鳥「失敗しようが成功しようが、それはもう愛ちゃんの責任ですから。日高愛の責任」
舞「ふむ」
小鳥「愛ちゃん、今はとっても楽しいと思いますよ。大好きな母親と同じ仕事を、憧れ続けたアイドルを、自分の責任でやれるんですから」
舞「自信に繋がる、ってわけね」
小鳥「不器用な子ですから、当分苦労は多いでしょうけどね」
小鳥「愛ちゃん、レッスンとかでうちのアイドルと一緒になることもあるんですよ」
舞「えっ? マジで?」
小鳥「安心してください。みんな好意的ですから」
舞「そこは心配してない。愛からそんな話を聞いていないのがショックなの」
小鳥「みんな、共通して言うことがあるんですよね」
舞「なになに?」
小鳥「とっても楽しそうな子がいる、って」
舞「……」
小鳥「……」
舞「見たい」
小鳥「レッスン場に出没しないでくださいよ。大騒ぎになりますから」
小鳥「まっ、今は大変だけど、いずれはアンバランスさも消えていいアイドルになると思いますよ」
舞「あんた偉そうね」
小鳥「経験者だから語ってもいいじゃないですか」
舞「なるほど」
小鳥「……」
舞「……」
小鳥「いい事を思いつきました」
舞「よし、言ってみなさい」
小鳥「旦那さんに頼んでもう一人つくるというのは――」
舞「そこまで。ストップ」
小鳥「だって舞さん、愛ちゃんに構ってもらえなくて寂しいんでしょ?」
舞「勿論寂しいわ」
小鳥「あたしが話し相手になってあげても寂しそうじゃないですか」
舞「そりゃあ、あんたが私の知らない愛を知ってたから」
小鳥「どのみち寂しいなら、もう一回子育てをおすすめします」
舞「そういう無責任な行為はどうかと思う」
小鳥「舞さんからそんな言葉を聞くとは」
舞「はぁ……寂しい」
小鳥「もう少しすれば、お腹を空かせた愛ちゃんが帰って来るんじゃないんですか?」
舞「え? もうそんな時間?」
小鳥「ええ、お母さんの時間です」
舞「長居しちゃったわね。ごめん」
小鳥「どういたしまして」
舞「またお茶しましょ」
小鳥「ええ」
舞「あっ、そうだ」
小鳥「まだなにか?」
舞「んー……」
小鳥「?」
舞「……やっぱいいわ」
小鳥「気になるんですけど」
舞「いや、本当にいいから」
小鳥「ちょっと待ってください、言ってから帰ってください」
舞「本当にいいの」
小鳥「よくありません。いきなり来て娘自慢と嫉妬の挙句に意味深に帰らないでください」
舞「……お礼言っておいて」
小鳥「お礼?」
舞「愛と仲良くしてくれてありがとうって。そのうち自分で言おうと思ったんだけどね、もういいわ。先に言っておいて」
小鳥「……」
舞「どうしたの?」
小鳥「普通すぎてビックリしました」
舞「あらそう、あんた私を何だと思ってんの?」
小鳥「……」
小鳥「帰ってった」
小鳥「……」
小鳥「……舞さんでも、こういう日ってあるのねぇ」
小鳥「母親、日高舞……」
小鳥「……」
小鳥「母親、音無小鳥……」
小鳥「……無理じゃない、まだ、無理じゃない」
――――
―――
――
―
舞「ただいまー」
愛「おかえりー!」
舞「あら、もう帰ってたの?」
愛「うん! 今日は早めにお仕事終わっちゃったから」
舞「そう……そうなんだ……うんうん、おかえり!」
愛「ただいま!」
舞「ご飯ちょっと待っててね。すぐ作るから、愛は食器用意」
愛「はーい!」
舞「今日はパパも早いって言ってたから、パパの分も出しておきなさいよ」
愛「うん!」
愛「ところでママ、どこ行ってたの? 買い物、じゃないよね?」
舞「友達のところー」
愛「へー……」
舞「ママだって、たまには友達とお話ししたくなるのよねー」
愛「そうなんだ!」
舞「そうなのよー」
舞「だけど――あいつには悪いけど、愛と話してる方が楽しいわー。だから愛、もっと家にいなさい」
愛「これからもっと忙しくなるから、ちょっと無理かも」
舞「忙しくなれるかしら?」
愛「ムー! なるもん! 目指すはトップアイドルだからね!」
舞「大きく出たわねー」
舞(あー……娘最高だわ)
おわり
本当は愛ちゃんと小鳥さんが話してるものを書きたかったです。
終わりです。
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