恭介「悪い。もうこれ以上続けてらんねえわ」理樹「…えっ?」 (36)

理樹(そういうとグローブを近くにいた来ヶ谷さんに預けてグラウンドから去ってしまった)

理樹「あ、ちょっと…!」

恭介「もう疲れたんだ。今日は放っておいてくれ」

理樹(ぶっきらぼうに返事をしてそのまま本当に帰ってしまった)

鈴「恭介…いったいどうしたんだ?」

理樹(不審に思った鈴が僕に訳を聞きにきた。当然ながら僕も心当たりがない)

来ヶ谷「恭介氏にも気分が乗らない日はあるさ」

理樹(グローブをベンチに置きに来た来ヶ谷さんもそう言った)

理樹「本当にそんなものなのかな……」

理樹(今の恭介の様子は僕が初めて彼と出会ってから一度も見たことのない落ち込み方だった)

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続く

理樹部屋

理樹(その日の夜。恭介を除いたいつもの面子が集まった)

理樹「やっぱり恭介は来ないんだね…」

真人「あの恭介が練習を途中で抜け出すなんてどうしたもんかねえ。風邪でも引いたか?」

謙吾「確かに前々から様子がおかしいとは思っていたが…一応見に行って来ようか」

理樹「そうだね。みんなで行こう」






理樹(恭介の部屋の前に着いた)

理樹「恭介いる?」

理樹(軽くノックをする)

恭介『理樹か?鍵は開いてるぜ』

理樹(入ってもいいということなんだろう。ドアノブに手をかけた)


恭介部屋

理樹(恭介はそこにいた。椅子に座って無気力に携帯をいじっている)

理樹「恭介…今日はどうしたのさ?」

理樹(僕の言葉にやっと振り向いた)

恭介「なんだ、全員いるのか…心配かけちまったな」

真人「かけてるって分かってんならなんでいきなり帰っちまったんだよ?体調が悪いなら先に言ってくれよっ」

謙吾「その通りだぞ。無理したところで余計ひどくなるのがオチだ」

恭介「いや、悪いが体調とかじゃないんだ」

理樹「えっ?」

恭介「これはそう…俺の心の病だ」

鈴「こいつ真顔で言ったぞ」

恭介「はあ…とにかく俺は今凄く1人でいたい気分なんだ。そうさせてくれないか?」

真人「………」

理樹(真人は黙って肩をすくめた。今日はおとなしく帰っておこう。謙吾や鈴も賛成のようだ)




理樹(再び僕の部屋に集まった)

理樹「体調が悪い訳ではなかったね」

真人「かと言って良さそうにも見えなかったけどな」

謙吾「ああ。必ず何かがある」

鈴「恭介は何も言わなかったな。もうほっといていいんじゃないか?しばらくしたらまたいつもの馬鹿に戻るだろ」

理樹「そんな単純なものかな…」

謙吾「まあしかし様子を見てからでも遅くはない」

理樹(今日はそのまま解散となった)

次の日


恭介「…………」

理樹(朝の食事でもそれが変わることはなかった)

真人「恭介、醤油取ってくれ」

恭介「ほらよ…」

謙吾「恭介、マヨネーズ使うか?」

恭介「もらうよ…」


葉留佳「…うーん…ねえ理樹くん、恭介サンなんか変じゃない?」

理樹(と、耳元で囁く葉留佳さん)

理樹「やっぱり分かる?」

葉留佳「どうしたのかな…まさか恋の病とか!?」

理樹「いや…どうだろう」

理樹(恋……恭介は恋をしているのか…?)

理樹(昼休み。最近バラバラにとりがちだった昼ご飯も今日は作戦会議のためみんなで教室で食べることになった)

真人「…で、なんでお前らもいるんだよ……」

葉留佳「ええーっ!だって面白…恭介さんの力になりたいからに決まってるじゃん。ねえクー公?」

クド「はい!いつも元気な恭介さんが落ち込んでいるところを見ると私もしょぼくれるのです…」

小毬「うん。いつも助けられてるからこういう時くらい力になりたいよね」

西園「3人集まれば文殊の知恵と言います。9人集まればきっと素晴らしい考えが思いつきますよ」

理樹(そんなこんなでリトルバスターズ全員が集まっていた。机もかなり連結している)

謙吾「さっそく話を進めるが、理樹は恭介がああなった理由を一つ思いついたって?」

理樹「思いついたっていうか葉留佳さんが言ったことなんだけどさ…恭介はもしかしたら誰かが好きだからそれに思い悩んでるんじゃないかなー……なんて」

「「「!!」」」

クド「わふーー!?き、恭介さんは誰かが好きなんですかっ!?」

来ヶ谷「そういえば元々女性から人気が高い方だったな」

理樹「い、いや!あくまで一つの意見だからっ」

西園「お相手は直枝さんか宮沢さん……もしくは大穴で井ノ原さん…」

真人「なんで男が前提なんだよっ!!」

小毬「ほ、ほえぇ~!理樹くんと恭介さんが物陰でランデブー!?」

理樹「やんないよっ!」

謙吾「とにかく、その説はかなり説得力があるな。なんせあいつの浮ついた話などそれこそ聞いたことがない」

理樹「だ、だよね」

真人「あいつ人のこととなるとウキウキしてアドバイスするもんだが自分自身となると案外1人で背負いこむタイプかもしれねえしな…」

来ヶ谷「さて、それをどう確かめる?本当に予想通りだった時は置いておいて実際に検証してみないことにはな」

理樹「えっ?」

理樹(恭介のクラスに着いた。この階は全部3年のだから緊張する…)

理樹「あの、すいません、恭……棗恭介はいますか?」

「ああ、棗君ね。ちょっと待ってて」



5分前

理樹『検証って?』

来ヶ谷『簡単なことさ。いつも通りの雰囲気で『恭介って好きな人いるの?』と聞けばいい』

理樹『なんか緊張するなあ』

来ヶ谷『どれ、行く前に恭介氏にメールで君が特別な好意を持っている旨を送っておいてやろう』

理樹『絶対やめてよ!?』



理樹(長年の友人だからってそう簡単に効くようなものでもないと思うんだけど…)

恭介「よう、お前が呼んだのか」

理樹「うわあっ!」

恭介「おっ、どうした?」

理樹「いや、急に現れたからさ…」

恭介「変な奴だな…お前が呼び出したってのに。ま、それより用件を聞こうか」

理樹「あ…うん……」

恭介「どうした。そんなにモジモジして」

理樹「いや……」

理樹(早く言え直枝理樹!尻込みしてるとどんどん言いづらくなるぞ!)

理樹「き、恭介ってさ…」

恭介「ん?」

理樹「すすす好きな人っているの…?」

恭介「はっ?」

理樹(い、言ってしまった…凄く恥ずかしい)

恭介「よく分からんが…来ヶ谷辺りからの差し金か?」

理樹(どんぴしゃり!?)

理樹「あはは…まさにその通りだよ」

恭介「どうしたらそんな話になるんだ…ったく」

理樹(恭介は苦笑いしながら頭をぽりぽり掻いた)

理樹「とにかく聞いて帰らないと怒られるから恭介が良ければ聞かせてくれない?」

恭介「ああ。別にそんな感じで誰かを見たことはないな」

理樹(あっさり答える恭介。その言葉に嘘はなさそうだった)




理樹「という訳なんだけど」

葉留佳「うーんハズレかー…」

来ヶ谷「チッ…」

理樹「今舌打ちしなかった!?」

キーンコーン

理樹(そうこうしているとチャイムがなった。今日はどうやらここまでらしい)

理樹部屋

理樹(再び集まる。しかし一つの部屋に9人は少し窮屈だった。なにしろ小毬さんとクドは僕のベッドで座ることになるくらいだ)

真人「こういう時は妙に鋭い来ヶ谷なんかが役に立つと思ったんだけどなあ…」

来ヶ谷「急になんだ。私はエスパーじゃないぞ」

理樹「でも恭介の落ち込むことって想像つかないよね」

謙吾「ああ…だいたいの逆境はむしろ楽しむたちだからなアイツは」

鈴「最近食堂の飯がまずいとかじゃないか」

理樹「うわ今の案食堂の人たちにかなり失礼だよっ」

葉留佳「人には言えない秘密を隠し持ってるとか…」

理樹「秘密って?」

葉留佳「うーん…たとえば超能力を得て飛べることがができるようになったとか!その名もジェット…」

理樹「他に誰か案ない?」

葉留佳「って無視されたーーっ!?」

理樹(結局ああだこうだ言っても特にそれらしい理由は思いつかなかった。…西園さんの一言が口にされるまでは)

西園「あっ……」

クド「どうしたんですか西園さん?」

西園「いえ…なんでもありません」

謙吾「なんだ、言ってみたらどうだ」

西園「……あまりに不謹慎なので」

真人「んだよ!どうせ誰も思いついてないんだから何もないよりはマシだろ?別に変なこと怒らないって」

西園「では…」

理樹(みんなが西園さんの言葉を聞くために静かになった)

西園「もしかすると恭介さんは…イジメを受けているのではないかと」

理樹「い、いじめ…?」

理樹(僕の心臓が急に脈打つのが分かった)

続く

理樹(最初に真人が口を開いた)

真人「馬鹿言え!よりによって恭介がいじめなんて!」

謙吾「そうだそうだ!あいつには誰もが一目置いているし、たとえそれに遭ったとしてもきっと味のある仕返しを考えるに違いない」

西園「はい。普通ならそうだと思います…しかしそのいじめの理由が直枝さんなら?」

理樹「ぼ、僕…?」

西園「はい。私は以前から女性の話を一つも聞かない恭介さんだからこその噂をちらほら聞きます」

理樹「噂?」

西園「それは恭介さんがこっち系だという事です」

理樹(と、手のひらで口を隠す例の動作をする西園さん)

鈴「恭介はどっち系だったのか!」

来ヶ谷「君はむしろどっち系意味を知っているのか?」

謙吾「なるほど…俺にも話が見えてきたぞ。その恭介の相手の候補がなにかと一番仲の良い…」

西園「そう、直枝さんです」

理樹「だからなんでまたこういう話になるのさっ!?」

西園「そこを突かれては恭介さんも反論は出来ません。否定すれば否定するほどなんかマジっぽい……そこで彼は悩み今日まで過ごしているのではないでしょうか?」

理樹「ないよ!!」

来ヶ谷「うむ。どのみちその可能性が浮上してきた以上検証してみない事にはな」

理樹「来ヶ谷さん絶対楽しんでるだけだよね!?」

来ヶ谷「おら、とっとと行ってこい」

小毬「理樹くん頑張れ~」

真人「是非奴を助けてやってくれっ!」

理樹「酷いよみんな…」

理樹(再び恭介の部屋に着いた)

理樹「はあ…恭介?」

理樹(気乗りしないままノックする)

恭介『なんだまたお前らか?』

理樹「いや、今日は僕だけ」

恭介『そうか。まあ、とりあえず中に入れよ』

理樹(例によって鍵は開いていた)


恭介部屋

理樹(今度の恭介は漫画を山積みにして読みふけっていた。内容は相変わらず少年漫画だ)

恭介「よ。1人で来るなんて珍しいな」

理樹「まあね…恭介はまた漫画なんだね」

恭介「ああ!お前も読んでみるか?この作品は当たりだぜ」

理樹「また今度ね」

恭介「あっと、そうだそうだ…今日はどうして来たんだ?」

理樹「それは……」



5分前

理樹『でも検証ってどうやるの?』

来ヶ谷『簡単だ。ただ恭介氏に告白するだけでいい。『こんな時に場所も選ばずごめんなさい!あなたのことがずっと好きでした!つきあってください!』とな』

理樹『うん!…うん…?』

理樹『………』

理樹『ええぇーーーっ!!!』

来ヶ谷『どうした、なにか問題でもあるのか?』

理樹『ありまくりだよ!なんで僕に偽の告白なんてさせるのさ!?』

来ヶ谷『君は本当にウブだな。どうせ相手は恭介氏だしジョークのつもりでいけばいいじゃないか』

理樹『ウブで悪かったね!僕は告白とかそもそも初めてだし本気の恋しかしたくないんだよっ』

来ヶ谷『うるさい黙れこのファッキン早漏大王』

理樹『ヒッ……』

理樹「それは…ずっと恭介が好きだったんだ!!恋するって方の好きなんだーーっ!!」

恭介「え、なんだって?」

理樹(肝心の恭介は何も聞いていなかった。ていうか人が話してる最中でも読んじゃうなんてそんなにその漫画が好きなの!?なんか僕も読んでみたくなってきたよ!!)

理樹「だから恭介のことが好きなんだよっ」

恭介「お前…それマジかよ…」

理樹(うう…今思ったけどこれで恭介も本当にそっち系だったらどうしよう…もう後戻り出来ないよ…)

恭介「嬉しいぜ理樹。俺もお前のことが好きだ!」

理樹「え……ええーーっ!!」

恭介「もちろん鈴や他のみんなも好きだがお前は特に可愛がっていたからな。そう言ってもらえて凄え嬉しいよ」

理樹(な、なんだ…好きってそっちの意味か。びっくりしたというかなんというか…)






理樹「という訳なんだけど」

葉留佳「ギャァーーッ!!みおちんが鼻血噴いて倒れたぁぁあ!!」

真人「うぉおおお!!俺のノートが真っ赤に染まっちまったじゃねえかっ!!これ誰かに見られたらぜってー危ねぇ奴って思われるだろっ!?」

来ヶ谷「なるほどやっぱり違っていたか。まあ、分かりきってはいたが」

理樹「やっぱり僕を使って楽しんでただけじゃん…」

小毬「ほあ…もう9時になっちゃうねえ」

クド「それでは今日は見回りの寮父さんに見つかる前に帰りましょう!レッツゴーイングマイホーム!なのですっ」

理樹(そんなこんなで結局今日も収穫は無かった)

次の日

食堂

理樹(休日になった。恭介は何をいう訳でもなく黙々と目の前の朝食を片付けている)

恭介「…………」

理樹(恭介は、普段こそ元気な一面も見せるが今のような無気力、絶望感ただようオーラは隠し切れていない)

理樹(いや、もはや隠そうという意思さえないのかもしれない)

理樹「………ねえ恭介。今日も練習行かないの?」

恭介「ああ。でも俺無しでもやれるだろ?それに今は理樹がリーダーだからな…」

理樹「それとこれとは関係ないよっ」

恭介「…それもそうだな」

理樹(そのまま空の食器を戻してふらりとどこかへ行ってしまった)

謙吾「理樹。追いかけろ」

理樹「えっ?」

謙吾「このままでは放置したところで元の恭介に治る見込みはあるまい」

謙吾「もはや残された道は直接聞くこと。これしかないだろう」

理樹「でも僕上手く聞く自信が…っ」

来ヶ谷「君なら大丈夫だ。ダメだったとしてもまた戻って何度も作戦を建てればいい」

来ヶ谷「だから今は思うまま腹を割って話してくるんだ」

理樹「……分かった。そうするよ」

理樹(僕は恭介の行った方へ向かった)

なかなか更新できる暇が無くなってきた(∵)
描けるようになればまた更新する

裏庭

理樹(恭介は裏庭の芝生にいた。身体を大の字にして寝転がっていた)

理樹(でも目はちゃんと開いている。その視線はどこに向けてあるんだろうか)

理樹「恭介…」

恭介「……あ、よう」

理樹(完全に油断していたらしい。珍しく恭介の素で驚いた表情を見ることが出来た)

理樹「気持ち良さそうだね」

恭介「寝てみるかい?」

理樹「そうしようかな」

理樹(靴を脱いで同じ体勢で寝転がってみた。体全体が陽に照らされつつも顔は木の影で守られていて快適だった)

恭介「ふっ…こんなところを誰かに見られたらバカだと思われるんだろうな」

理樹「ここは人もあまり来ないけど確かにそうだろうね」

恭介「…そんなバカなことももう出来なくなっちまうとはなあ」

理樹「あっ……」

理樹(そうか、そういうことだったのか)

理樹「僕らも来年には恭介と同じく忙しい日々を送るのかもね」

恭介「羨ましいな。俺もあと1年くらい……いや、なんでもない」

理樹(今の恭介は視点こそ違うけど以前の僕と同じことを考えていたんだ)

理樹「こんな日がずっと続けばいいのにね?」

恭介「!」

恭介「……ははっ、よく分かったな」

理樹(よく考えると恭介の高校生活は残り数ヶ月を切ってるんだ。恭介は卒業のあとすぐに就職する)

理樹(言ってしまえば彼にとって卒業はこれまでの青春の終わりを意味するんだ)

恭介「もう俺に残された時間は少ない。あまりにも少なすぎる」

恭介「だって考えてもみろよ。俺達は親の腹の中から今に至るまでずっと青春の中で生きてきたんだぜ?」

理樹(それは、凄く恭介らしい考え方だった)

恭介「時にはわざと留年するってことも考えた。だけどそれはなんか違うよな」

理樹(恭介は体を起こして僕を見た)

理樹「でも今の恭介はとても楽しんでるとは言えないよね」

恭介「そりゃそうさ。そんな楽しい日々が終わりを告げるのが分かってるんだからな」

恭介「知ってたか?俺は一度あまりに金がなくて少しだけバイトをやっていた時期があるんだ」

理樹「へえ……って僕らバイト禁止じゃなかったっけ!?」

理樹(旅の道中にちょっとしたことならって聞いたことはあるけどそれは初耳だ)

恭介「そこは流してくれ…まあなんだ、俺はもちろん短期で入ったんだがそれはそれはつまらなかったぜ」

理樹「キツくて疲れるんじゃなくて?」

恭介「確かに物流で割と重い物を運ぶ仕事だったがそんなの関係ねえ。ただ仕事中に物事を考える暇がないのが辛いんだ」

恭介「なんせ単純作業でもミスをすれば叱られるような所だからな。ボヤってしてる時間がない」

理樹「それはすごい所を選んだね…」

恭介「そして帰る頃には空は暗い…アルバイトだったから良かったが就職したら定年までこれだと思うとな」

理樹「いやいやいや……それは考えすぎなんじゃ…」

恭介「一緒さ。お前らといられずに同じ事をやる意味すら考えられずこなしていくなんて心は空っぽのロボットのようじゃないか」

理樹(言いたい気持ちは分かるけど少し飛躍しすぎな気もする)

恭介「くっそー!」

ダキッ

理樹「ええっ!?」

恭介「卒業したくねえよー!こんな楽しい毎日が終わるなんてあんまりだー!!」

ゴロンゴロン

理樹「言ってることが完全に子供のそれだよっ!!」

理樹(恭介は僕を両腕で自分の体にがっしり固定すると左右にゴロゴロと転がりだした)

理樹(恭介は幼いところは本当に幼いからなぁ…というか僕を巻き込まないでほしい)

恭介「ふう…」

理樹(突然動きがピタッと止まりだしたかと思うと恭介は庭に生えている大樹を背にして三角座りの姿勢をとった)

恭介「俺さ…思うんだ。俺と同じく卒業を控えてる3年はなんで俺みたいにならないのかなって」

理樹「流石に駄々こねて暴れはしないと思うよ」

恭介「だって小中高と10年近く過ごしてきた学校生活が終わりを迎えるんだぜ?」

恭介「もちろん大学や専門学校に通う奴だっているんだろう。だけど受験や就活に必死になってる奴らはだいたい口を揃えて『早く卒業しないかな』なんて言ってるんだ。それって滑稽じゃないか?」

理樹「まあ、勉強が嫌になってくると自然とそう言うんじゃない?」

恭介「おいおい、まるで学校が勉強しにいくところみたいに言うなよ」

理樹(恭介にとっては違うんだろう)

恭介「もうすぐ人生の半分が過ぎるってのにそんな考えだときっと後悔するだろう」

理樹「半分?」

恭介「ああ。例えば俺の寿命が100歳だったとしても人生の後半は50からじゃない。今日の給食に一喜一憂していた今までが前半。シミ一つ付いてないネクタイを締めて新しい職場に就くこれからが後半だ!」

理樹「なるほど…それは言えてるかもしれない」

恭介「だろ!?だからこそ、残りの時間がたまらなく貴重なんだ!」

理樹(そう言い終わる頃には恭介は立ち上がっていた)

恭介「ふう…」

理樹(また動きが止まってまたまた大の字で恭介は寝た。忙しそうだ)

恭介「………気持ちいいもんだな。愚痴ってのは」

理樹「散々叫んだ感想がそれなの…」

恭介「まあな」

理樹(でも実のところ嬉しかった。ここまで素直に考えてる事を教えてくれるなんて)

理樹「でも恭介。その話にしては行動が矛盾してるよね」

恭介「え?」

理樹「だってそんな貴重な時間をそんな先のことを考えて過ごしてるんだよ?ちょっと大げさだけど今の恭介はまるで寿命で死ぬ未来を想像して震えて過ごすようなものじゃないか」

恭介「…………そういうもんか……?………うーん……そうかもな…」

理樹(それから恭介は左手で顎を包むようにして何かを考えていると突然立ち上がって芝生を出た)

理樹「どこへ行くの?」

恭介「いや、なに。自分の部屋に戻るだけだ」

理樹(そういう恭介の背中は以前のように頼もしく見えた)



真人「そういえば理樹、恭介はどうだったんだ?夜ご飯にも来ねえしそろそろヤバくなって来たんじゃないか?」

理樹「それはないと思うよ」

真人「どうしてそんな風に言い切れるんだよ…」

理樹「うん…朝になれば分かるよ」




………………………………

………………







食堂

小毬「恭介さん…今日もいないねえ」

クド「わふー……」

ダダダダッ

真人「……ん?なんか走ってきたぞ……」

謙吾「……き、恭介だっ!」

キキーッ!

恭介「ぜぇはぁ…いっけねえ!俺としたことが寝坊しかけたぜ!」

「「恭介(さん)!!」」

理樹「ってすごいクマだね…」

恭介「ああ!実は昨日夜通しでいろんな遊…作戦を思いついたからな!」

理樹(恭介は目を充血させてにこやかに言った)

来ヶ谷「ほう、どうな遊びだ?」

恭介「そいつは飯を食いながら話す!もうすぐでチャイムが鳴っちまうぜっ!!」

鈴「ふんっ、やっと元のバカに戻ったか」

恭介「馬鹿とはなんだ!兄だぞ!?」

葉留佳「やー、恭介さんすっかり元通りになっちゃいましたネ!いったい何言ったんですか理樹くん?」

理樹「特別なことは言ってないよ。ただ普通のこと。恭介は鋭いくせに単純なところで鈍いからね」

葉留佳「ふーん…そっかー」

恭介「さあお前ら!これからはとことん遊び尽くすぜ!!ミッション……スタートだぁぁーーーっ!!」






終わり

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