無数の猛者たちが覇を競う、大戦闘時代!!!
一対一での戦闘で強い者がなによりも尊ばれ、敬われ、恐れられ、
強者が高笑いし、弱者はただただ踏みにじられるしかない修羅の時代……
ここにそんな時代の申し子ともいうべき男が存在した!
戦闘狂「フハハハッ! オレは三度の飯より戦いが好きなんだ!」
戦闘狂「強い者と戦うことこそがオレの喜び!」
戦闘狂「さぁ、誰でもいい! オレを楽しませてみせろォ!」
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若者「や、やってやるぜ! ア、アンタを倒せば……俺の名も上がる!」
戦闘狂「フフフ……あいにくオレは今、そういう気分じゃなくてな」
戦闘狂「悪いが、またにさせてもらうぞ」ヒュッ
若者(ううう、シカトされたのは悔しいけど、正直助かった……)ドキドキ…
若者(もし、やり合ってたら、俺は10秒ともたず死んでただろう)
若者(あいつに面と向かって挑もうとした……これだけで十分名は上がるしな……)
武術家「君とはぜひ戦いたかったのだよ……」ゴゴゴ…
武術家「最強の武術家として、己の看板を賭けてね……」ゴゴゴ…
戦闘狂「嬉しいねえ。オレとしてもアンタを見てるだけで笑いが止まらねぇ」ニヤニヤ
戦闘狂「だが、アンタとこんなところでやり合うのは余りにももったいない」
戦闘狂「楽しみはとっておかねばな」ヒュッ
武術家「おやおや……フラれてしまったか。残念だ……」ゴゴゴ…
少年「ねーねー、ぼくと勝負しよーよ!」
少年「ぼく、戦いの天才なんだ! こないだも大人100人相手に勝ったんだよ!」
戦闘狂「たしかに……子供のくせになかなか美味そうだ」ジュルリ…
戦闘狂「しかし、まだまだ育つ余地はある。そう焦ることもないだろう」
戦闘狂「お前がより美味に育ち切った時……改めて相手をしてやるよ」クルッ
少年「ちぇっ、残念だなぁ」
女戦士「さあ、かかってらっしゃい! 女だって最強になれるってことを証明してやる!」
戦闘狂「…………」ギロッ
女戦士「うっ!」ゾクッ
戦闘狂「女ごときと戦う趣味はねえ。さらばだ」ヒュッ
女戦士「ハァ、ハァ……睨まれただけで震えが止まらないわ……」
戦闘狂「格闘大会? ……下らん」ポイッ
黒服「なぜです? あなたは戦いをなによりも好んでいるはず!」
戦闘狂「たしかに、オレは三度の飯より戦いが好きだ。今もお前と戦いたくて仕方ない」
戦闘狂「だがな、こういう見世物のような下劣な戦いに参加するつもりはないんだよ」
戦闘狂「オレが求めているのは、なんの汚れもない“純粋な戦闘”だからな」ニヤッ
黒服「!」ゾクゾクッ
戦闘狂「帰って主催者にそう伝えろ」
黒服「かしこまりました……!」
ザコ「ひ、ひいいっ! とんでもない奴に出会っちまった! 助けてくれええっ!」
戦闘狂「フンッ」ギロッ
ザコ「あわわわわ……」ジョボボボ…
戦闘狂「オレが求めるのは強者のみ。弱すぎる相手に興味はねえ。とっとと失せろ」
ザコ「た、助かった……」ホッ…
……
……
……
……
数十年後――
大勢の子や孫に囲まれながら、一人の老人が息を引き取ろうとしていた。
「おじいちゃん! おじいちゃん!」
「死なないでくれよぉ……おじさん……」
「オヤジの威光があったから……俺たちは生き残れたんだ……ありがとう……」
老人「…………」
老人(かつての大戦闘時代――)
老人(幾多の猛者どもが覇権を争い、血と肉を喰らい合ったあの時代)
老人(戦いを望まない弱者でさえ、容赦なく食い散らかされたあの時代)
老人(なんとか戦わずに切り抜ける方法は、あれしかなかった)
老人(己を鍛え上げ、強そうな雰囲気を身にまとえるように特訓し)
老人(あえて戦いたい戦いたいと全力でアピールし……実際には戦わない)
老人(あれしかなかったのだ……)
老人(そして、ワシは一戦もすることなく、あの時代を生き残れた……家族を守り切れた)
老人(誰も傷つけることなく、誰からも傷つけられることもなく……)
老人(おかげで、こうして畳の上で死ぬことができる……ありがたいことだ)
老人(残された我が家族たちよ……どうか、みんな幸せに……)
老人(…………)
三度の飯より家族と平和を好み、誰よりも戦いが嫌いだった男は、安らかにこの世を去った。
― 終 ―
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