勇者「2024年……標的は魔王」 (240)

「居たぞ!」

「ちっ……逃げるぞ!」

「分かってる」

「はぁはぁ……!」ダダダ

「ここなら……!」

「こっちだこっちだ!居たぞ!!!」

「ぐっ……!」スチャ

「それは駄目だ○○!人は殺しちゃ駄目だ!」

「どうしてだ○○!」

「それだけは駄目なんだ!」

「こんな奴等全員殺して、このふざけた運命……私が変えてやる!」

「……逃げよう」グイッ

「くそっ……」ダッ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1393751595

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ーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

ーー



母「えいっ」グイッ

ドテーン!

少年「いたい!」ガバッ

母「少年くーん早く起きなさーい」

少年「ほらね」

俺の夢はいつもあそこで覚めてしまう。

一番気になるのがその先なのに、必ず何かしらの理由で目が覚めてしまう。

母「?」

母「どうしたの?」

少年「なんでもないから大丈夫」

母「変な少年君」

少年「それよりもお母さん、ベッドから無理矢理落とすのはやめてくれ」

母「あはは~」

我ながら掴み所が無い両親を持ったと思う。

チュンチュン

少年「ん~っ」グググッ

春休み真っ只中の早朝。

嫌な夢を見た後でも、身体を伸ばすと清々しい気持ちになれる。

自分は案外単純なのかも知れない。

母「朝ごはん出来てるから早く降りてきてね~お父さんも待ってるよ~」テクテク

少年「は~い」

少年「さて、行くか」スクッ

身を起こして1階のリビングへ向かう、憎い程に窓から入る日差しが眩しい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

少年「おはよう」

父「……おはよう」

母「じゃあ皆が揃った所でーーいただきます」

少年「いただきます」

父「いただきます」

母「どう?この前買ったベーカリーマシンで作って見たんだけど……」

少年「うん。美味しい」

母「わ~い!」

料理の出来を聞いて褒められるとお母さんが喜ぶのも毎度お馴染みの光景だ。

父「……」パクパク

少年「ごちそうさま」

父「ご馳走様」

母「ごちそうさまでした」

『突如謎の城が出現してから10年が経ちました』

『城から現れた侵略行動を繰り返す魔物から世界を防衛する為に世界政府が発表した新プロジェクト』

『学徒……』
ピッ

父「また“魔王”に関してのニュースか」

母「魔王のニュースはもううんざりっ」

少年「……」

少年「魔王……」

10年前から世界は魔王の話題で持ち切りだ。

和平交渉を持ちかけた総理大臣が殺されたりなんかしたから、この国だと更に話題が加速したのかも知れない。

日本以外にもロシア、アメリカ、中国、EU圏、etc……の領土や重要人物が殺されたりしているから、日本だけではなく世界の問題になってしまっている。

中でも国のトップが殺されたのは日本だけだから、とても恐ろしい。

魔王がどんな風貌をしているかの憶測も飛びかっている。

突然と世界各国の不特定な場所から現れる城を拠点として、魔王はその周辺の侵略活動を行う。

日本でも10年前に“静岡自体”が魔王の城となった。

変な話だと思うが、恐ろしい事に本当なのだ。

その城は富士山すらも見えなくしてしまった。

もはや城と言うより、一種の都市なのかも知れない。

東京にも城が出来ているが、それはどう見てもビルなのだが……現代の建築技術からも逸脱した他の城と同様の出現をしたので、世間では“城”と呼ばれている。

少年「魔王かぁ……」

少年「どんな奴なんだろう」

母「きっと口から火を吹くような化物よ!」

父「同じ人間かも知れないぞ」

母「でもでも!魔王の手下の魔物達はとーーーーーーっても!怖い化物だよー!」

少年「どんな奴でも、一度は見てみたいなぁ……」

少年「あ」

少年「女に呼ばれているんだった」

母「あらあら」

少年「行ってきます」タタッ

父「行ってらっしゃい」

母「行ってらっしゃい 」

バタンッ

父「選ばれるなんて……な」

母「少年君が選ばれるなんて……」

父「本人も受け入れてる事だ、仕方ない」

母「周りの子も結構同じ学園に行くから大丈夫だね!」

父「ああ、そうだな」

ーーーーーーーーーーーーーーー

少年「まぁ、お隣さんなんだけど」コンコン

俺には二人の幼馴染が居る。その内の一人が女だ。

ガチャ

女「あはは……いらっしゃい///」

少年「お前……口調変わった?」



女「え……前から変わらないよ?」

少年「あ……ははは。そうだったな、悪い悪い」

女「変な少年ですわ」

女「え?」

女「あれ?」

少年「……」

最近、俺と女の間には良く分からない事が起きる。ほんの少しのズレが沢山。

少年「まぁいいや、上がるよ」

女「いらっしゃーい」

女の子らしい部屋、人形が沢山置いてある。

少年「女、その……前に言ってた話は本当なのか?」

女「うん」

女「今から見せるよ、見てて」カリッ

女は指を噛んで血を出した。

結構強めに噛んだみたいで、ドクドクと血が流れていた。

中々痛々しい光景だ。

なんでも女が言うには、なんでも治せるようになったらしい。

女「……」キィィィン

淡い光が女の指を覆う。

シュイン

女「ほら」

少年「!!!」

少年「治っている……」

女「あはは」

少年「ははは……」

俺は異変に確実に気付いている。

“何か”が変わり始めている。

いや、俺自身はとっくに変わっているけど……周囲も変わり始めた。

幼馴染と女が“同じ事”を出来るようになる……とか。

紹介が遅れて申し訳ありません

このSSは

医術士「東奔西走!!皆を癒しちゃうよ!!」
http://ayamevip.com/archives/33271558.html?p=3#comments



弓使い「勇者……私が?」
http://ayamevip.com/archives/33272257.html?p=4

の続編です。

色々ジャンルが混ざっていますが、是非ご覧ください。

想像より制作に長い時間をかけてしまった……申し訳無いです

それでは中断です

質問などございましたらお気軽にどうぞ

女と幼馴染の驚くべき力?技?……それとも“魔導”か。

少年「この力はいつから?」

女「えっと……一昨日」

少年「!」

幼馴染と同じ!

少年「なぁ……幼馴染を呼ばないか?」

女「え……どうして?」

少年「実は幼馴染から昨日呼ばれてな……見せてもらったんだ」

女「もしかして……」

少年「ああ、幼馴染も一昨日に同じ力が使えるようになっていたらしい」

女「あはは……じゃあ幼馴染を呼ぶね」スッ

少年「あ、最新モデル」

女「えへへ、どう?買ってもらったんだ」

少年「本当に本体とは別に映像が……」

女「本体はリビングに置きっ放しだけど、本当に本体とは別に使えるなんてびっくりだよ」

少年「最新機種の端末は凄いなぁ」

女「あ……もしもし?」

『どうしましたか?』

女「えっと……言っちゃって良いかな?」チラ

少年「……」コクリ

女「うん……私も使えるようになったんだ……幼馴染と同じ……うん」

『ひえぇ!』

少年「ぷっ……聞こえてる」

女「あはは……うん、じゃあ最近見つけた喫茶店で……じゃあね」プツッ

少年「どうして喫茶店で?」

女「あそこのケーキとっても美味しいの!」

少年「大事な話は二の次かい……へいへい」

こいつら……自分が凄い事してるって気づいて無いのか?

それでは中断です

少年「随分と小洒落てるな」

幼馴染と待ち合わせ場所にした喫茶店はとても小洒落ていた。綺麗な音楽と窓に絡まった蔦とオシャレな照明、なにより客の数が少ないのも個人的に気に入った。

女「そう?最近は普通だよ?」

少年「ふーん……」

女「あ、居た」

幼馴染「あ、女と少年!」

女「ごめん~待たせちゃった」

幼馴染「いえいえ~私も今来た所ですから」

少年「……」キョロキョロ

果たしてこんな大事な事を大衆の場で話して良いのかと思ってしまうが……小声で話すようにしたら大丈夫か。

少年「今から話す事は大事な事だからな、小声にしろよ」

女「うん」

幼馴染「店主さ~ん!!紅茶とケーキみっつお願いします!」

少年「……」ガクッ

注文は大声で良いが……幼馴染のそういった間の抜けた行動にはいつも肩を落としてしまう。

少年「あのなぁ」

幼馴染「ほえ?」

女「あはは」

少年「昨日……実は幼馴染にも見せてもらった力」

少年「女も使えるようになっていたのは聞いたな?」

幼馴染「ふぁい」モグモグ

女「幼馴染、口にクリームついてる」フキフキ

幼馴染「ふぁりがとうございます」ゴクッ

幼馴染「ふぅ……」

少年「……」イライラ

幼馴染「それにしても……どうして私と女が同じ力を持ったか不思議ですねぇ……」

少年「俺も不思議でしょうがないよ」

女「だから……私と幼馴染も少年と同じ学園に入学するように決まったのかな?」

少年「そうだ、それは俺も思っていた」

幼馴染「そうなると、政府の人達が私達の事を完璧に把握している事になりますよね?」

少年「それであっても不思議は無いな」

女「……確かにそうだね」

幼馴染「そうですね、なんたって少年は……」

「少年!?」ガタッ

「あんた、今少年って!」

赤髪の正直可愛らしい顔をした女性が隣の席から俺達の目の前へ詰め寄って来た。

普段なら自分が少年と名乗り出るが……格好がコスプレみたいな事が不信感をつのらせた。

三人で顔を寄せて思案した。

少年「おい……どうする?」ヒソヒソ

幼馴染「ヤバそうな人に聞かれてしまいましたねぇ……」ヒソヒソ

女「無視しよう」キッパリ

少年「俺、こういう時の冷めた女は嫌いじゃないぜ」

「そうね、確かに……と…………と………にしか見えない……」

何言ってるか聞こえないが、俺達からしたらあんたが危ない人だ。

少年「よし、分かった。外で話をしよう」

「わかったわ……この時代に飛ばされて一週間……お金の右左も分からなかった私が……ついについに……ついに……」

少年「……」

俺達はお会計を済ませて外に出る。

勿論これからする事は決まっている。

ーー逃げる。

少年「走れ!!」ダッ

女「うん!」ダッ

幼馴染「楽しそうです!」ダダァ

「えっ……ちょっ」ビクッ

「私って少年に嫌われてたっけ?」

「まぁ……すぐに追いつくけど」キィィィン

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

少年「はぁはぁ……!」ザザッ

幼馴染「ここ……まで来たら」ゼェゼェ

女「大丈夫……かな」ハァハァ

「あんた達……忘れてしまったの?」

少年「!!」

糞……簡単に追いつかれた。

やはり……汗一つ流さない所を見ると、魔王の手下か?

「何個か勘違いしてそうね、私は変な格好をしているけどいたって普通」

「もうひとつは、私はあんた達を襲うつもりは無い。むしろ味方よ」

少年「名前は?」

「……」

「ーー魔導使い」

少年「魔導使い……」

何処かで聞いた事があるような、とても懐かしい感覚だ。

魔導使い「思い出した?」

魔導使いは心細そうに俺達を見つめる、一体全体何がどうなっているのか、サッパリ分からない。

確かに分かるのは、皆が不安と言う事だ。

魔導使い「無理に何かをしても怪しまれそうだし……」

女「!」

ウネウネ

幼馴染「魔王の手下……ですか?」

女震えると幼馴染の視線の先には、ウネウネとしたおぞましい化物が立っていた。

少年「あ、あれは……!」

魔物「勇者……殺す」シュゥゥゥ

少年「!」

化物は鋭利な伸びる刃を身体から繰り出して来た……不味い、早く逃げないと。

シュイン

ドゴオォォォン

カランッカラカラ

少年「え?」

激しい爆発音。気付いたら目の前の化物は灰に変わっていた。

魔導使い「この世界にも魔物はいるのね……」キィィィン

魔導使い「疲れてるからこの程度にしてあげるわ」

どうやら魔導使いの仕業らしい。

魔導使い「何はともあれ、皆が無事でよかった……」バタッ

幼馴染「ええ!?倒れましたよ!」

女「大丈夫ですか!?」

少年「魔導使い!!」ユサユサ

倒れてしまった。

命の恩人に死なれると流石に後味が悪いし、トラウマになってしまう。

魔導使い「きゅー」

魔導使い「ご……はん食べたい……この時代に来てから何も食べてないの……」グルルルル

少年「ははっ……なんだ」

命の恩人だからそのくらいはお安い御用だ。

>>21の訂正

女震えると幼馴染の視線の先には、ウネウネとしたおぞましい化物が立っていた。



やけに怯えた声がしたので振り向いたら、震える女と幼馴染の視線の先にウネウネとしたおぞましい化物が立っていた。

一旦終了です

魔導使い「おかわり!」

母「良く食べるね~」ニコニコ

少年「食い過ぎだろ……」ハァ

命を助けて貰った代わりに俺の家で昼食をご馳走しているが……正直食べ過ぎだ。

こいつは遠慮を知らないのか?

まぁ……作るのはお母さんで、俺には一切の負担も無いけど。

幼馴染「私もおかわりお願いします!」キラキラ

少年「おう、食え食え」

こいつを見てたら細かい事がどうでも良くなるのは確かだ

女「あはは……」

少年「おいしいか?」

魔導使い「この時代の食べ物は最高ね、美味しいわ」

幼馴染「少年のお母さんは料理がとっても上手なんですよ~」モグモグ

女「本当……どうやって作ってるのか分からないけど美味しいです」

母「本当?嬉しいな~」

我が母ながら単純である。

少年「女のお母さんも料理上手だろ?普通に豪華で美味しかったぞ」

女「あ、そっか……少年は来客用の料理しか食べてないもんね」

女「私のお母さんはね、豪華な料理以外は大味なの」

少年「ごめん……」

女「気にしないで」

魔導使い「あんた達……本当に何も知らないの?」

魔導使い「魔物とも戦えそうに無かったし……」

少年「ああ、サッパリだ何を言ってるかも分からない」

女「魔導使いさんは一体……何者ですか?」

魔導使い「私も聞きたい事が沢山あるわ」

幼馴染「互いに知ってる情報を教え合う!」

少年「……」

幼馴染「で、どうでしょう?」

幼馴染はこういう非常事態にとても強い。

少年「魔導使いはどこから来たんだ?」

魔導使い「今から1010年前よ」

少年「!!!」

魔導使い「今は2024年でしょ?」

少年「そうだけど……どうやって……」

魔導使い「とある小屋の力」

魔導使い「きっと……何人もの人生を代償にした力ね」

幼馴染「???」

魔導使い「あ……ごめんなさい。本題に戻すわね」

少年「どうしてこの時代に?」

魔導使い「1010年前は逃げ場が無かったのよ」

少年「逃げ場?」

魔導使い「それは後で話すけど……あんた達は」

魔導使い「性格は違えど声も姿も全く一緒だから、1010年前に居た私の仲間の生まれ変わりだと決め付けて話すわよ?」

少年「大丈夫だ、続けてくれ」

女「???」

魔導使い「1010年前に悪事を働いた人間が居た」

魔導使い「私達はそいつを倒した。魔王と名乗っていた人物を」

魔導使い「本当の名前は傭兵」

魔導使い「あんたと一番仲が良かったらしいわね、幼馴染」

幼馴染「私ですか!?」

魔導使い「そうよ、とっても仲が良いって弓使いから聞いたわ」

少年「ああ……よく分からない単語が次々と」

魔導使い「ちなみに弓使いは1010年前の勇者よ」

少年「ええ!?」

女「少年と一緒だね」

少年「無駄に親近感を感じるな」

魔導使い「少年も私の仲間だったんだから親近感を持ってもらわないと困るわ」

少年「そんな事言われても……1010年前だし……」

魔導使い「それに昔はあんた、もっと口数少なかったんだから」

魔導使い「って……ちょっと待って」

少年「?」

魔導使い「あんた勇者になったの?」

少年「受験シーズンに手紙が来て任命された。まだ知ってる人は少ないよ」ピラッ

魔導使いに今でも大事に取ってる手紙を見せた。ちなみにその手紙は幼馴染と女にも届いているが違うのは内容だけ、俺が勇者で女と幼馴染は生徒として、だ。

魔導使い「って事は……魔王も居るって事よね?」

幼馴染「さっき私魔王がなんとかって言ってませんでしたっけ?」

魔導使い「ごめん、言ってたわね」

女「そう言えば……」

魔導使い「そして最近になって実は私にも手紙が……」ピラッ

少年「ええ!?」

流石に驚きが隠せない、俺達と全く同じ手紙が魔導使いにも届いていたのだ……内容は生徒として……だ。

幼馴染「魔導使いも私達と一緒の学園で一年生から通うんですねー!」ギューッ

魔導使い「こらこら、落ち着きなさい」

女「魔導使いが居たらなにが来ても怖くないかも」

少年「次、いいか?」

魔導使い「ええ、勿論」

少年「どうして魔導使いに手紙が?」

魔導使い「私が聞きたいわよ」

少年「受験したのか?」

魔導使い「何それ?」

女「私と幼馴染も受験したのに……」

魔導使い「この時代の常識とかは後で聞くとして……」

魔導使い「あんた達はいつ生まれたの?」

少年「2009年だよ」

魔導使い「そんな物よね……普通」

魔導使い「僧侶も何も覚えて無いの?」

魔導使い「ねぇ女?」

女「わ、私が僧侶?」

魔導使い「そうよ、あんたの魔導で何度も助けてもらったわ」

魔導使い「医術士……幼馴染は私がこっちに来るまでは死んではいなかったけど」

魔導使い「どうやら私がこっちに来た後に死んだみたいね」

少年「そりゃあ1010年もあったら死にたくもなるな」

魔導使い「ふふっ……それもそうね」

女「あはは……」

魔導使い「その……学園とやらで一体何をするの?」

少年「魔王討伐」

幼馴染「戦争に駆り出されます!」

女「志願しないと前線に出る事も無いから大丈夫だけどね」

俺の場合は別だけどな。

勇者……か。

魔導使い「それにしても」

魔導使いが見るからに不機嫌になって行く。

魔導使い「1010年も経ってるのに平和にさせてくれないなんて魔王も面倒臭い奴ね、どんな者であろうと倒して然るべきよ!」

おっしゃる通りです。

少年「どうして1010年前は逃げ場が無かったんだ?」

魔導使い「……それはまだお預けね」

少年「どうしてだ?俺達は全部教えたぞ」

魔導使い「ごめんなさい、まだ心の準備が出来てないの」

少年「何があったんだ?」

魔導使い「とっても酷い事……」

魔導使い「まだ知るべきじゃないわ」

少年「……」

魔導使い「ごめんなさい。然るべき時が来たら必ずおしえるから……」

母「……」

少年「分かった」

女「魔導使いはこれからどうするの?」

幼馴染「確かにどうするか決めないといけませんね」

魔導使い「少年の家に居候させてもらってもいいかしら?」

少年「お母さん、大丈夫?」

母「訳ありみたいだから、大丈夫!」

魔導使い「ありがとうございます」ペコッ

母「今日はご馳走ね!」

これからがご馳走となると、さっきの昼食は一体なんだったんだだろう?昼食も十分豪華だった気がしたが……

魔導使いが真っ先に俺を指名したのはきっと俺が魔物に狙われたのを把握しての事だろう、いざとなってもすぐに助けられるように。

時も回って深夜になった。

春の夜風は意外と冷えるが、今日は不思議と暖かい。

女「来週から高校生かぁ……」

少年「そうだな」

幼馴染「今日は色々な事があって楽しかったですね」

少年「俺が勇者に指名された日もこんな風に話したな」

女「だってあの時はびっくりだもん!話したくもなるよ!」

幼馴染「あはは、女の不安そうな顔は今でも思い出せますよ~」

女「もう!やめてよ」

少年「あはは、お母さんだってケロッとしてたのにな。女は心配性だな」

女「幼馴染が戦争に巻き込まれるって知ったら誰だって不安になる、うん」

少年「おっしゃる通りです」

少年「女と幼馴染だって学園に通う事になるんだから、戦争に巻き込まれるだろ?」

女「私と幼馴染は前線を選ばないからまだ大丈夫だけど……少年は」

少年「大丈夫大丈夫。心配するなって」

女「うん……」

少年「それに……学園が始まるまでの間魔導使いが特訓してくれるらしい」

女「ぷっ……こんな時代に?」

少年「なんでも魔導を使えるようにしてくれるらしい」

幼馴染「誰でも使えるような物なんですかねぇ?」

少年「俺は才能があるらしいよ」

女「最旧式しか適応しなかったのに?」

少年「やめてくれ……今思い出しても恥ずかしい」

女「私でも新型は適応したのにね……最新型は無理だったけど」

女「そんな少年が勇者っておかしいよね」

少年「おっしゃる通りです」

一旦中断です

幼馴染「私でも新型は適合しましたよ?」

少年「やめてくれぇ……恥ずかしい」

女「少年は最旧式でどうやって戦うんだろうね?」

幼馴染「最旧式しか適合しない少年に勇者は荷が重いと思います」

少年「お前達……今に見てろよ」

女「べーっ」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

そして夜が明けて、早朝。

俺……嫌、俺達は無理難題を押し付けられた。

幼馴染「私と女は見学に来ただけなんですけど……」

女「ううっ……恥ずかしいよ」

少年「お母さんとお父さんがたまたま家に居なくて良かった……」

魔導使い「服着てるんだから大丈夫でしょ?」

魔導使い「早くお風呂に入りなさい」

少年「水じゃねーか!」

魔導使い「うるさいわねぇ……そんなんじゃいつ襲われても文句言えないわよ?」

幼馴染「寒い……ですよね?」

魔導使い「それくらい我慢しなさい」

女「恥ずかしいなぁ……」

魔導使い「早く入る!」

少年「……」チャプッ

魔導使い「ううっ……」チャプッ

幼馴染「冷たい!」チャプッ

チャプン

その……中々羨ましいシチュエーションかも知れないがこの状況だと全く楽しめないし、かなり寒い。

>>35

訂正

魔導使い「ううっ……」チャプッ

女「ううっ……」チャプッ

です

少年「……」ガタガタ

水に浸かってから一時間が経った。

そろそろ限界が来た。

女「さ、寒いね」

幼馴染「全てがどうでも良くなってきました~あはは」

少年「幼馴染!気を確かに!」

魔導使い「大袈裟ね……」

このアマぁ……!

女「少年……この時代の人間じゃないなら殺しても証拠は残らないよね?」

少年「そ、それだけは駄目だ!」

魔導使い「はい、おしまーい」

少年「ふぅ……良かった」

魔導使い「次のステップ行きまーす」

魔導使い「次で終わりだから頑張ってねー」

少年「おう、なんでも来い」

魔導使い「そのまま表出ろ」

勿論俺は絶句した。僧侶なんかからはビキビキとした音が聞こえるし、俺の精神衛生上そんな音はすぐにやめていただきたい。

魔導使い「ほら!早く!」パンパンッ

少年「チッ……」スタスタ

幼馴染「苦行過ぎますよ~」スタスタ

女「こんなに辛いなんて思ってもいなかったよ……」

少年「グダグダ言わないで早く行くぞ」

ーーーーーーーーーーーーーーー

少年「これで冬だったら間違いなく風邪引いてそうだな」

玄関前にびしょ濡れの男女三人、早朝から変態扱いされてしまう。

魔導使い「よし……それじゃあ……」

少年「……」ゴクリッ

魔導使い「今から三人であの山までダッシュ!」

魔導使い「そしてこの家までダッシュで戻って来なさい!」

少年「分かったよ!やりゃいいんだろ!?やりゃ!」

魔導使い「安心なさい、着いて行ってあげるから」

幼馴染「お先です!」ダッ

女「お先!」ダッ

少年「あっ!」

二人は先に行ってしまった……それじゃあこの白状者共め……長年付き添った幼馴染とは思えない仕打ちだ。

少年「くそっ!」ダッ

負けじと俺も走り出す。

結局は男の俺の方が速い訳だから幼馴染には追い付いて、なんだかんだ幼馴染のペースに合わせて走ることになってしまった。

少年「……」

少年「女は?」

幼馴染「多分、今頃は山だと思いますよ~」

魔導使い「あ~やっぱり身体能力はずば抜けてるんだ」

少年「昔の女もそうだったの?」

魔導使い「地面を殴ってヒビを入れる程凄かったわよ」

少年「ははは……流石に今の女はそこまで出来ないよ」

魔導使い「そうかしら?素質は昔と変わらないから出来ると思うわよ?」

ゾクっとしてしまった。

これから女に逆らうのはやめておこう。

ーーーーーーーーーーーーーーー

やっと山の頂上に着いた。

少年「よし、後は戻るだけ……って女?」

あいつは何をしているんだ?柵の前に突っ立って……って……なるほどな、学園を見てるのか。

幼馴染「はぁ……はぁ……あれ?女が居ます」

少年「女ー!」

女「あはは……遅いよー」

少年「いやいや、お前が速すぎるんだよ」

幼馴染「ヒョウみたいにピューンっでした!」

女「もう……大袈裟だなぁ……ほら……見て」

少年「びしょ濡れの男女三人で柵の向こうを見つめるって不審者極まり無いよな」

女「もう!見てよ!」

少年「はいはい……どれどれ?」

魔導使い「あの……特訓……」

柵の奥には一体何が見えるのかっ……と。

『はぁ!ぜやっ!』

少年「……これってもしかして」

『もっと動きの精度を上げろ!』

魔導使い「あれってもしかして噂の……」

少年「昨日かなり勉強してたみたいだけど、覚えが早いな」

魔導使い「天才と言われてたもの、当然よ」フフンッ

魔導使い「インターネットの使い方だって10分で覚えたわよ!」

魔導使い「……」ジロジロ

魔導使い「っつ……///」

どうして俺の方を見ては顔を赤く……っ!

もしや、見られたのか?

秘蔵フォルダを見られてしまったのか!?

って、こいつ俺のPCを勝手に使ったな……

魔導使い「え、エアドライバー……///覚えてるわよ///」

幼馴染「顔が赤いですよ?」

魔導使い「なんでもないわ……///」

女「それより……あの人」

少年「ああ……あんまり使いこなせてないな」

俺達ですらエアドライバーはテストの時に使いこなすことが出来た。

使いこなせないあの生徒が普通なのか、使いこなせる俺達が普通なのか良く分からない。

『搭載した武器で自殺したいのか!?このままでは酷い目に合うぞ!』

『くっ……』

魔導使い「あの子……全般的に見たところ運動能力とか凄い優れているのに、あの人間の所為で無茶苦茶ね」

少年「そうだ、忘れてた……本格的にプロジェクトが始動したのは今年から」

少年「俺達の年代からその道のプロや専門家がそれぞれ入って来るって」

女「確か……今教えてる人は……うん……説明書を持った一般人だから駄目なんだ」

少年「あの生徒も出来たばかりの学園に転校させられて可哀想だな」

幼馴染「私達が入る前に1.2年生は主に勉強で、たまにこういった本格的な事をやるって聞きました」

女「実はとっくに訓練も済ませた人も居るって噂だけどね」

『もっと説明書通りに動けないのかぁ!?』

『ちょっとあんた、教え方メチャクチャじゃない?説明書でもそんな事書いて無いわよ』パラパラッ

『な、なんだお前!?勝手にエアドライバーの説明書を!』

少年「あの人も俺達が入学したら2.3年生のどっちかで先輩だもんなー親近感湧いてきた」

女「ちょっと少年!現実逃避しないでよ!」

幼馴染「魔導使いが勝手に学園の中に」

魔導使い『あんた利き足は?』

『えっ……』

『こら!聞いてるのか!?』

魔導使い『うるさいわね!』

魔導使い『ほら……聞いてるんだから答えなさい』

『み、右足……』

魔導使い『それを軸に浮くのをイメージしなさい』

『は、はい……!』フワッ

『浮いた!』

『ぐぬぬ……』

魔導使い『あんたももう少しまともな教え方をしなさい!』バキッ

『ぐはっ』

少年「おい……警備員来る前にずらかるぞ」

女「うん、それが正しいよ」

幼馴染「短い間でしたけど楽しかったです……」

魔導使いのトンデモ行動に付き合いきれなくなった俺達はその場からずらかることにした。

当然ダッシュで。

なんとか誰からも怪しまれる事なく俺の家の前に着いた。

少年「よしっ……」

幼馴染「疲れましたよぉ……」ハァハァ

女「ちゃんと着いて良かった……」

魔導使い「よしっ……ちゃんと着いたわね」

少年「はぁ!?」

魔導使い「何よ、気色悪いわね」

少年「俺達の方が速かった筈だぞ!?」

魔導使い「魔導を使った私の足に勝てると思ってたの?」

少年「恐るべし魔導……」

魔導使い「それに……この時代でも魔導は役に立つから安心なさい」

少年「どうして?」

魔導使い「エアドライバーを触らせてもらった所……少しわかっただけだけど……あの機械、魔導も使うわよ」

魔導使い「現代兵器と魔導の融合……ますます興味深くなってきたわ」

少年「話が大きくなってきたな」

女「私も怖くなってきたよ」

幼馴染「あ、蝶々」

こういう時だけ幼馴染が羨ましくなってくるのはきっと俺だけでは無い筈だ。

魔導使い「さて!」パンッ

魔導使い「大体予想できるけど、才能をチェックさせてもらうわ!」

少年「……?」

予想できる?

あ、そっか……魔導使いは昔の俺達の魔導に関しての才能をチェックしたから予想できるって事か。

魔導使い「ふむふむ」ペタペタ

女「私の才能かぁ……」

女(案外、思わぬ所で開花してたりして……!)

魔導使い「あはは……ふふっ」ニコニコ

少年「?」

どうして笑ってるんだ?変な奴だな。

魔導使い「ぶふぉ……!」ププ

魔導使い「凄い……凄い……」プルプル

魔導使い「全く才能が無いのに……ぷっ……回復だけ無理に覚えてる……!」

魔導使い「これから覚える見込みの技も強化系と攻撃系ばかり……!」

女「……」ウルウル

あーあ、泣きそうになってるよ女の奴。

女「少年……私初めて人を殺したくなっちゃったよ」

少年「やめなさい」

魔導使い「次は少年ね、どれどれ」ペタペタ

魔導使い「あはは……変わらないわね」ニコッ

少年「?」

魔導使い「あー、魔導の才能以外も色々な才能あるわねー」ペタペタ

少年「……」

魔導使い「天から授かったものよ大切にしなさい」

女「エアドライバーてんで駄目な癖に」ボソッ

少年「うるさいそこ!」

魔導使い「次は幼馴染っと……」ペタペタ

幼馴染「どうですかー?」

魔導使い「……」

魔導使い「過去でも私はあんたの才能を確認した事無いんだけどね……予想通りだけどやっぱり別格と言うか……質が違うと言うか……異質と言うか……」

少年「?」

女「難しい……」

魔導使い「多分幼馴染は何も教えずとも勝手に覚えていくわ」

幼馴染「ほえ?」

魔導使い「そんな不思議なタイプ」

幼馴染「はぁ……」

魔導使い「と、言うか……気分次第でどうとでもなるわよ、あんた」

魔導使い「そう、どうとでも」

幼馴染「ふむ」

魔導使い「人を大切に、人の為に生きなさい」

魔導使い「昔の医術士のように……」

幼馴染「かしこまりました!」

少年「お婆ちゃんみたいだな」

魔導使い「あんた達と年齢は一緒よ!失礼ね!」

女「まぁまぁ落ち着いて」

魔導使い「ぐるる」キイイィン

少年「ああ、俺が悪かったからこの掌に収まったおぞましい物を下げてくれ」

魔導使い「今回だけは許してあげるわ」スッ

魔導使い「昔はもっと可愛げがあって大人しかったのに……いや、顔は変わらないけど……」ボソッ

少年「?」

少年「そう言えば服も乾いたな」

魔導使い「もう昼頃ってところかしら」

幼馴染「お腹が空きましたね~」

女「そうだね、私もお腹空いたかも」

少年「そうだな、昼飯でも喰うか」

女「そうだね」

魔導使い「いい考えね」

幼馴染「私が作りますよ~」

少年「あ、出た。料理上手」

女「幼馴染の料理は美味しいよね、今度教えて~」

幼馴染「全部適当ですよ?」

女「嘘!?」

少年「目分量であの味とはたまげたな」

リビングに全員をあげる。

キッチンでは幼馴染が料理を手際良く?作っていた。

幼馴染「女、塩をお願いします」

女「はい」スッ

幼馴染「ありがとうございます」パシッ

魔導使い「手際がいいわね」

少年「ああみえて家事全般は何でもこなしちゃうんだ」

魔導使い「意外ね、皿を何枚も割ってしまいそうな感じなのに」

少年「人は見かけにもよらないのさ」

魔導使い「退屈ね……」

魔導使い「そうね、暇潰しに色々聞いても良いかしら?」

少年「俺から聞きたい事も沢山あるけど……いいよ」

魔導使い「魔物って居るじゃない?」

魔物?魔王じゃなくて?

少年「まぁ俺もこの前初めて見たけど、実際に居るな。それがどうしたんだ?」

魔導使い「魔物が元々は人だったらどうする?」

少年「……っ!」

幼馴染「出来ましたよー!」

魔導使い「あくまで可能性のひとつってだけ、一応考えておきなさい」

女「すごいなぁ幼馴染は」

幼馴染「えっへん」

少年「……!」

魔導使いが言っていた事、可能性のひとつって……過去にも魔物が居てその正体も人間だったって事か!?魔物=人間?理解が追いつかないがもし……もし本当に魔物の正体が人間だとしたら。

とんだ道化じゃないか……!

そして一週間が経った。

少年「ブレザーか」

母「似合ってるね!入学式期待してるよー」

少年「お父さんとお母さんの二人で来るの?」

母「もっちろん!」

少年「あんまりはしゃぎすぎないでね?」

母「うん!分かってる!分かってる!」

魔導使い「行くわよ、少年」

少年「ああ、分かってる」

母「魔導使いちゃん可愛い~似合ってるわ!」

魔導使い「そ、そうかしら?」テレッ

少年「そろそろ行くか、二人が待ってる」

魔導使い「それ私の台詞!」

父「魔導使い。息子を頼んだ」

魔導使い「ええ、分かっています」

少年「?……行くぞ」

ガチャ

ギイィ


ーー入学式

それでは中断です

学園の中で咲き乱れる桜の木々の下には、学生以外にも多彩な人々が集まっていた。

少年「……」

よく見るマスメディアのアナウンサー。

外人。

企業関係者?

日本の軍人。

科学者。

白と水色を基調とした制服を着た世界政府関係者。

政治家らしき人。

他には……

「我が国の為にその命を捧げます」

「そうだ。エアドライバーでの戦闘で戦果をあげ、データを残すのだ……それだけで国の為になる」

「心得ています」

「国はお前一人に投資をした。その投資に応えるのだ」

「はい」

少年「すげっ……」

魔王討伐の為にわざわざ日本語を覚えるのか……

そりゃ日本は魔王との戦争の最前線だけどさ、俺と同じ年齢の子にそこまで強いるなんて……

???「君もそう思うのかい?」

少年「あぁ……って!」

???「ふふっ……どうしたんだい?驚いた顔をして」

少年「いや……いきなり後ろに立たれたから驚いただけだよ」

???「本当にそれだけかい?」

国籍不明の銀髪の女とその保護者?を見ていたら、薄い紫色の髪をした女に俺が気付く間も無く話しかけられてしまったので驚いてしまった。

ただ……気になるのは……

???「どうして俺の気持ちが分かるかのような言い草をしたのか?」

少年「!」

???「ふふっ気になるかな?」

少年「何者だ……?」

???「君が見ていた女の子と一緒だよ」

少年「……?」

???「可哀想な存在だから可愛がって欲しいな」ジリッ

少年「えっ……」

なぜ迫ってくる……

???「僕って結構、男の子が好きそうな身体してると思うんだ」

女は胸元を崩して俺の目の前まで寄ってきた。

いい匂いが鼻腔に蔓延する、このまま嗅いでいるとおかしくなってしまいそうだ。

???「綺麗な顔……女の子みたい」ススッ

俺の顔に手を這わせる。

初対面でこれはかなり積極的だと思う、うん。日本では淫乱とか言われても仕方ない。

そしてもう一つ気になる事が……それは彼女の豊満な胸が俺に当たっている事。中々いい感触だ。

少年「お前の国だとそれが挨拶なのか?」

???「まさか」

???「僕の母国でも今してる事は過度なスキンシップに入るよ」

???「仲良くしようね、少年」サッ

少年「ああ……お手柔らかにな」

俺と密着したまま胸元を直し、それから身体を離した。中々惜しい気持ちもあるがそこは仕方が無い。

少年「名前、どうして知ってる?」

???「ふふっ……今度教えてあげる」スタスタ

可愛らしいミドルぐらいの髪を揺らしながら彼女は去った。

さて、そろそろ体育館での入学式だな。

“彼”の誕生を確認してからできる限りの事をしてきた。

学園長「入学おめでとう」

思いも踏みにじった。

学園長「ご存知の通り、この学園は今の三年生が一年生の時に設立されました」

未来を奪う事もたくさんしてきた。

学園長「そして、才能がある子供に編入してもらう等……来るべき時に向けてこの学園は準備をしてきました」

“僕がかつて尊敬をしていた彼女の幸せ”の為に全てを捧げた。

学園長「強い意志を持ってください。くじけそうになった時、絶対絶命に陥った時には思い出してください」

学園長「志を共にする同級生、先輩、後輩……学園関係者……更に言うと人類……その全てが仲間だと」

一人で。

学園長「それでは、私のお話は終わりです」

学園長「……さんお願いします」

僕の番が来たみたいだ……

舞台に上がろう。

「入学おめでとうございます」

少年「……?」

誰だ?……見た事が無い人だな、壇上に立つって事は偉いって事だろうけど。

……世界政府の制服を着ているし。

「この学園はどうでしょう?気に入って頂けましたか?」

世界政府の制服を着た青髪の女……スラリとしたスタイルの良い高身長、女の憧れって奴かな?

魔導使い「あんた、あの子しってる?」ボソッ

少年「どうしたいきなり」ボソッ

魔導使い「昔……一緒に旅をしていた子にとても似てるの」ボソッ

少年「まさか……俺と同じ」ボソッ

魔導使い「かも知れない……でも私が知ってるあの子はもっと幼かった」ボソッ

魔導使い「今でも外見の若さはあんたと同じぐらいだけどね」ボソッ

「あっ……」

「申し遅れました」チラッ

魔導使い「今……こっちを見たわね」

少年「ああ……」

「私は世界政府の代表……」

ザワザワ

「おい、あんな若い女が世界政府の代表だと?」

「初めて見るぞ、撮れ、撮りまくれ」

「なっ……カメラが使えない?」

「……」

「ついに代表のお目見えか……」

「今まで姿を明かさないで……食えない女だ」

「賢者と申します」

一旦中断です

魔導使い「っっっッッ~!!」

少年「おい、どうした?」ボソッ

魔導使い「賢者……賢者よ」ボソッ

少年「自分で名乗ってたんだからそりゃそうだろ」ボソッ

少年「って……まさか」ボソッ

魔導使い「そのまさかよ。今壇上に立っている賢者は昔の勇者パーティーの一人よ」ボソッ

少年「……」

壇上に立っている女が勇者パーティーの一人であり世界政府の代表でもある……出来過ぎだ、まるで決められていたかのような……

賢者「魔王が現れてから人類は危機に瀕しています」

賢者「魔物にも人類の兵器が少ししか効きません」

賢者「ですが……心配する事はありません」

賢者「なぜなら」

賢者「我々の新兵器で戦況は有利に進むからです」パチンッ

賢者が指を鳴らすと共に映像が話を聞いている一人一人の目の前で流れる。

賢者「ご覧ください」

賢者「世界政府の新たなプロジェクト」

賢者「学生参戦法」

賢者「この学園は世界中に分校が存在します。そこで生徒は教育と訓練を施し、魔物と戦うエキスパートへの成長、そしてこれから発表する世界政府の新たな兵器を扱う切り札に成長してらいます」

賢者「そして……」

賢者「世界の新たなプロジェクト」

>>59
訂正

賢者「この学園は世界中に分校が存在します。そこで生徒は教育と訓練を施し、魔物と戦うエキスパートへの成長、そしてこれから発表する世界政府の新たな兵器を扱う切り札に成長してらいます」




賢者「この学園は世界中に多数の分校が存在します。そこで生徒に教育と訓練を施し、魔物と戦うエキスパートへの成長、そしてこれから発表する世界政府の新たな兵器を扱う切り札に成長してもらいます」

賢者「と言っても……機密と言う名目で全生徒に一度は装着をしてもらっているので、口が軽い生徒によってある程度は噂として広まっていると思います」

ザワザワ

「噂に聞いてはいたが……本当だったとは……」

「メモだ、メモを取れ」

ざわめき立つ見物者を余所に賢者はエアドライバーに関しての説明を始める。

賢者「最大の特徴は空中戦」

エアドライバーを装着した軍人が空を滑空して行く映像が映し出される。

賢者「最新技術によって大気圏でも操縦者の身体には影響が出ません」

映像では操縦者の周りに膜のような物が張られている事を説明している。どうやら肉眼ではその膜を視認する事が出来ないらしい。

魔導使い「あれは……魔導ね」ボソッ

少年「……?それにしても」ボソッ

少年「開発に参加した国と企業を丁寧に写してるな」ボソッ

「人が空を飛ぶ時代になったぞ……!」

「科学の進歩だ!」

大気圏を自由に飛び回る操縦者、金属か何かで出来た外郭をその身に付けたその姿はアニメで見るロボットを連想させる。

賢者「エアドライバー付属の兵器をご覧ください」

賢者「近接用の武器も立派な兵器の内に入ります」

ハンマーの様な物から剣のような物まで、歴史を連想させる兵器が次々と映る。

賢者「武器の周りに高エネルギーのレーザーを纏わせ、敵を叩く」

賢者「とても強力ですね」

「どんな物かと期待したら……レーザーか……結局は効かないのに」

賢者「そこの方、今レーザーが効かないと」

「ええ、実際に確認しています」

賢者「確かに2016年から配備されたレーザーを始めとする重火器等の兵器は魔物には効きません……恐らくは核すら」

賢者「当然、古臭い弓矢や剣も然りです」

魔導使い「奴等に技術の類は通用しない」ボソッ

少年「昔もそうだったのか?」ボソッ

魔導使い「才能がある人間は無意識に魔力を武器に纏わせ魔物を倒してきた」ボソッ

魔導使い(恐らく……進化した兵器と今尚続く魔導の……融合)

賢者「エアドライバーは別物です」

賢者「それでは説明を再開します」

「……兵器に関しての説明が足りないと思いますが」

賢者「エアドライバーは魔物に通用する兵器です。近い内に分かると思います」

「核なら……」

「何故核を使わない……?」

「こんな物……どうせ……」

賢者「……」

まだ魔力の存在に気付いていない。

核に魔力を込めようとした人も居たけど……そんな芸当が出来るなら同程度の破壊力をもった魔導を小規模で使った方がマシだよね。被害も出ないし、環境を破壊する事も少ない。

被害を考えると核はそうそう使えた物じゃない……

核だって効かない事をさっき匂わせてあげたのに……かつて猛威を振るった戦争の抑止力……巨大な力にまだ頼ろうとしている……

まだ過去の栄光にすがっている。

でもね……

賢者「人は常に進化しています」

賢者「エアドライバーに搭載した重火器の映像はご覧になられましたでしょうか?どれも驚くべき威力です」

賢者「戦闘機の時代は終わりました。魔物との戦争には不要かも知れませんが、ステルス機能も搭載しています」

賢者「人間が兵器となり、訓練された人間の卓越した技術……それによってエアドライバーは魔物に対して何倍もの力を発揮します」

「対魔物の戦術兵器……」

まぁ……最も素晴らしい所は操作が簡単に覚えられる事だけどね。

空さえ飛べれば自分の身体と変わらないから。

後は本人の実力に左右されるだけ。

賢者「他にも多々機能がございますが、後程配る資料をご覧ください。エアドライバーについての説明は終わります」

賢者「そして……」

賢者「選考に選考を重ねた結果」

賢者「勇者が誕生しました」

賢者「勇者には生徒の代表として壇上に上がってもらいます」

ここまで……長かったなぁ……

賢者「勇者は壇上へ」

ザワザワ

ザワザワ

魔導使い「……」

少年「……」

俺は壇上へ足を進める。

足が自分の物では無いみたいに重い。自分でも緊張している事が分かる。

賢者「少年……」ボソッ

幼馴染「緊張してますねー」ボソッ

女「カチンコチンで面白いね」ボソボソ

幼馴染と女め、俺を見て笑ってるな……後で覚えてろよ。

賢者(少年は自分が唯一の希望って自覚しているのかな?)

賢者(ねえ?魔導使い、どう思う?)

魔導使い「……」

少年「よし……」

壇上に着いた。かなり広い体育館だ、壇上から見ると分かるけど、生徒以外でもかなりの人数が収まっている。

「彼が人類の希望……」

「年端の行かぬ子供じゃないか……華奢だし」

「ナヨナヨしてて弱そうだな」

好き勝手言ってるな、俺だって選ばれた事に驚いているのに。

賢者「頑張れ」スッ

少年「ありがとう……ございます」パシッ

賢者から渡された小型拡声器を受け取り、襟に着ける。

少年「ーーおはようございます」

少年「勇者に選ばれました。少年と言います」

少年「まだ受験シーズンだった1月に通知が送られた時は驚きを隠せませんでした」

少年「ーー」

少年「ーー」

少年「以上です。ありがとうございました」ペコッ

パチパチ

パチパチ

以外と拍手してもらえた……よかった。

賢者「少年……入学おめでとう」

賢者「君にはこれから沢山の事が待ち受けていると思うけど、大丈夫かな?」

少年「大丈夫です」

賢者「魔王を倒せると誓えるかな?」

少年「はい」

賢者「誰よりも優しい心を持てる?」

少年「自信は無いですが、出来る限りは」

賢者「勇気を誰よりも持ちなさい」

少年「はい」

賢者「それでは勇者の証である剣を渡します」

賢者「はい」スッ

少年「ありがとうございます」パシッ

少年「……」ジーッ

この剣はなんだかとってもしっくり来るな……綺麗だ。

賢者「この日に向けて沢山研いだからね、また大事にしてね」

少年「はい」

賢者「今より、勇者として任命する」

勇者「ーーはい」

入学式も終わり、指定されたクラスに移動した。

勇者「幼馴染と女と魔導使いも同じクラスだな」

幼馴染「勇者就任おめでとうございます!」

勇者「ありがとう」

女「少年、とっても立派だったよ」ウルウル

勇者「何故涙ぐむ」

魔導使い「勇者になるだけでこんなに疲れるなんて、時代って怖いわね」ハァ

勇者「俺は緊張で汗が凄いよ」

魔導使い「まぁ……これからも沢山緊張すると思うけど」チラッ

勇者「え?」

勇者「それってどういうーー」

魔導使い「見たら分かるわよ」

ザワザワ

教室が少しざわついているな、どういう事だ?

勇者「?」チラッ

??「あっ……☆」ピクッ

??「おーい!」

勇者「……」

賢者「少年~!医術士~!僧侶~!魔導使い~!」フリフリ

勇者「!?」ブッ

お父さんお母さん……

この学園……過去から来た人間だけでは飽き足らず……

世界政府の代表がクラスメイトです。

担任「あ~これから君達の担任になります」

担任「エアドライバーの操作とか勉強もか悩み事とか気になる事があったらいつでも先生の所に来なさい」

賢者「は~い!」ニコニコ

少年「……」

皆が賢者に怪訝な目を向けるのも仕方ない。

担任「じゃあまた明日学園で。今日の所は下校する事」

担任「めんどうだから今日は俺が言うぞ、起立ー礼。はい、さようなら」

勇者「なんつー適当な……」

賢者「あれでもとても優秀だからねー」

勇者「うわ!賢者……さん」

賢者「賢者でいいよ、賢者で。それに……この学園では気は抜かない方がいいよ」

賢者は俺の耳元に近付き、ひそりと。

賢者「ほら、クラスの外から何人か君を見てるでしょ?」ボソッ

賢者「とても殺気立ってるね……君を殺そうとしてるよ」ボソボソ

血の気の引いた音がする。

俺を狙っている?見たところ……外人の人に見えるけど……

少年「ど、どうして……?勇者の俺を?」ボソッ

賢者「君が死ねばまた新たな勇者が選考されるからだよ。見た所ドイツ、アメリカ、ロシアだね……生徒にこんな汚れ役をさせようとするなんて……後であいつらを叱らないと」

あいつらって……もしかして……その国のお偉い様?

ははは……恐ろしい。

「ねぇねぇ!!番号教えて!LINE教えて!!Facebookやってる!?Twitterやってる!?」

賢者を押し退けて、女子の軍団が俺の前にやって来た。

勇者「うわぁぁぁ!」

女「……」イライラ

魔導使い「馬鹿みたい」

賢者「勇者だからやっぱりモテるね~」

魔導使い「あの流れで少年が殺されたらどうするの?」

賢者「大丈夫だよ。魔導使いと一緒に危ない人は牽制してるから」キィィィン

魔導使い「賢者……変わったわね」

賢者「色々あったからね」

賢者「そうだ!」パンッ

賢者「後で女と幼馴染も連れて勇者と学園長室に来てね」クルッ

賢者「またね~」タッタッ

キャッキャッ

少年「せめて並んでくれ!」

これも結構悪くないな……ふふふ。

女「最低……」

少年「やっと解放された」グッタリ

女子の軍団から解放された俺は皆と一緒に学園長室に向かっている。賢者が呼んでいるらしい。

女「結構ノリノリだったけど!!」プンプン

少年「?……なんで怒ってるんだ?」

魔導使い「あんた相当馬鹿になったわね……」

少年「?」キョトンッ

魔導使い「訂正……昔と変わらないかも」

幼馴染「この学園は綺麗ですね~!」ルンルン

少年「能天気な奴」

魔導使い「確かここね……着いたわよ」

少年「失礼します」コンコン

ガチャ

賢者「いらっしゃーい」フリフリ

賢者「ほらほら、座って座って!」

少年「あれ?学園長は?」

賢者「あの人は職員会議中だよ」

賢者「どうせ話す事もない癖にね」ニコニコ

魔導使い「ねぇ……賢者は覚えてるでしょ?」

賢者「当然だよ。ずっと生きて来たんだから」

魔導使い「あんた今何歳?」

賢者「ふふっ秘密。でも勇者達と旅をしてた時は間違いなく子供だったよ」

少年「も、もしかして……大変なご長寿ですか?」

賢者「うん!凄いでしょ!」

魔導使い「ど、とうして……そんなに長生きなの?」

賢者「分からないけど……血筋。らしいよ」

賢者「自分を調べた時はそれしか分からなかったよ」

賢者「16歳から歳を取らなくなって、姿形を自由に変えられるようになったよ」

賢者「ちなみに、基本は今の16歳の姿だよ」

魔導使い「不老不死って奴?」

魔導使い「うん、医術士といっしょかな?あ、今は幼馴染か」

幼馴染「私って不老不死だったんですか!?」ビクッ

魔導使い「知らないわよ!」

賢者「色々積もった話も沢山あるよね~」

賢者「魔導使いは記憶が残ってる……のかな?」

賢者「追われる最中突然失踪したらしいけど……」

魔導使い「私は時代を超えて来た……って言ったら信じる?」

賢者「え……本当?」

魔導使い「私だって驚いたわよ」

賢者「もしかして……あの小屋かな?」

魔導使い「ええ、そうよ」

賢者「あの小屋には沢山の因果があるから、起こりえない話ではないけど……ちょっと信じ難いよね」

魔導使い「私だって賢者が年を取らなかったり姿を自由に変えられることに驚いてるわよ」

賢者「あはは……そうだね」

魔導使い「案外、傭兵よりは全然魔王らしいわね」

賢者「……」

賢者「そうだね、自分でもそう思ってるよ」

賢者「他に聞きたいことはあるかな?」

魔導使い「いきなり言われると……」

賢者「あ……」

賢者「疫病」

魔導使い「疫病?」

賢者「疫病っていつ無くなったか知ってる?」

魔導使い「!」

魔導使い「分からないわね……」

幼馴染「……」

女「??」

俺達が知らない話がポンポン飛んで行くな。

賢者「僕が確信したのは少年と弓使いが死んだ後かな」

少年「俺が……?」

少年「良く分からないけど、俺と……その……弓使いって奴が死んだから……?」

賢者「あ~そっか、少年と医術士と僧侶はまだ何も分からないもんね」

少年「??」

賢者「大丈夫。すぐに分かるようになるよ」

魔導使い「で……何が言いたいの?」

賢者「疫病なんだけどね……正体が分かったんだ」

魔導使い「正体も何も……一時的に流行った病でしょ?」

賢者「正体は魔物」

魔導使い「え……」

賢者「疫病は魔物が力を蓄えている間の姿だったんだ」

賢者「疫病によって死んだ人間は魔物として蘇るんだ」

魔導使い「そう言えば弓使いがそんな事を……」

賢者「でもね、それに関しては僕は明らかにおかしいと思う点があるんだ」

賢者「弓使いが魔物を倒すのを切り上げて、“元は全員人間”と言ったのは覚えてる?」

魔導使い「ええ、覚えてるわ」

賢者「どうして僕達は納得したのかな?」

魔導使い「!!」

魔導使い「ねぇ……賢者……もしかして」

魔導使いと賢者の表情が強張る。

賢者「僕達は誰かが作った脚本で踊らされているのかも知れないね……」

魔導使い「もしかしたら弓使いが……」

賢者「その可能性はあるよね」

魔導使い「人口を減らしたくないとも言ってた」

賢者「うん、魔物になったら戻れないのに……」

魔導使い「もしかして、無闇に魔物が減らないように……」

賢者「魔物は自分の戦力になるから殺すのを極力避けた……」

魔導使い「それにも私達は違和感を抱かなかった……」

賢者「本当に誰かの掌の上かも知れないね」

賢者「あと……人と魔物の繋がりで厄介なことが」

魔導使い「お願い」

賢者「魔物は魔力のこもった攻撃以外だと倒せない」

賢者「実は医術士が過去に蘇生させた死人もそう」

賢者「あくまでも王国の資料の記述だけどね……」

魔導使い「無意識に魔力をこめて攻撃できるようになったのは魔導が普及してから」

賢者「うん」

賢者「それとね……医術士が生み出したのは魔物のなり損ないなんだ」

賢者「医術士の魔導が使われた時点で魔物(疫病)は死ぬからね」

賢者「あの状態の魔物を殺せるのは医術士ぐらいだよ」

魔導使い「僧侶の魔導はどうなの?」

賢者「僧侶や一般の人が使う回復魔導は魔物を何処かに逃がして人を治すだけ。まぁ悪魔で病原体だからね」

魔導使い「ちなみに、人と魔物の繋がりについてはまだ教えてもらってないわよ?」

賢者「あ、気づかなかった?」

賢者「魔物は人に姿を変えることが出来る」

賢者「そう、それが厄介な所なんだ。疫病によって魔に落とし、人への擬態もできる。そして……医術士の蘇らせる力を利用して人為的に魔物を作ったのが傭兵」

賢者「何故か大臣が簡単に操ってたけど……傭兵が人為的に作った魔物と僕達は戦ってたんだ」

魔導使い「そういえば傭兵が死んだ後、あいつら姿を消したわね……」

賢者「そこからは疫病に繋がるよ。人為的に作られた魔物は、新たな魔王の誕生を予期して疫病と共に世界に紛れて力を蓄えた」

賢者「人為的に作られた魔物も疫病に近い形で世界に紛れる事が出来たんだ」

魔導使い「なんでもアリね……」

魔導使い「医術士は人を侵す疫病を魔導によって消滅させる事が出来たんでしょ?そして、暴走の結果魔物のなり損ないを作った」

魔導使い「一度死んだ魔物やその類が蘇る事は無いの?」

賢者「無い……多分」

魔導使い「自信が無さそうね」

賢者「うん……」

賢者「確証がないね」

魔導使い「この学園に魔物は潜んでるのかしら?」

賢者「うん、この学園にも魔物が潜んでいると思う」

魔導使い「物騒な世の中ね」

賢者「昔も今も変わらないよ。仮初めの平和が崩れただけさ」

魔導使い「戸籍を洗い出す事は出来ないの?」

賢者「魔物なら家族を形成したりして、人に紛れる事は容易だね」

賢者「魔物は人の文明と共に歩んでいる」

賢者「ーー発展をしているのは人間だけではない」

魔導使い「今回の敵は。厄介ね」

賢者「弓使いが魔王とは決まってないしね」

賢者「それにね、魔王の姿は一度目撃されているんだ」

賢者「2014年にね」

魔導使い「!」

賢者「外見は銀髪のお人形さんみたいな少女」

賢者「ふらふらと恐ろしい魔力を垂れ流しながら、音も立てずに現れた城に入って行ったよ」

賢者「弓使いと断定する要素も無いんだ」

魔導使い「どこの城かしら?」

賢者「一番最初に現れたのが静岡だからね、多分今も静岡に居るよ」

賢者「その数ヶ月後に交通機関を壊されたからね……圧倒的だよ」

賢者「唯一空港だけは守れたけど、それ以外はボロボロ。建て直しで各国の借金が増えたよ」

賢者「ようやく実装された転送魔導陣も跡形も無くされたし、本当に大変だった」

魔導使い「転送魔導が実現されるなんて……」

賢者「要人用だけどね」

賢者「それに……魔王は実際に手を下していないんだ」

賢者「全部魔物にやられたよ、為す術もなかった」

魔導使い「ねぇ……賢者……」

賢者「まぁ今日の所はここまでにしよう」

賢者「気になる事があったらまた聞いてね」

魔導使い「……」

魔導使い「えぇ……分かったわ。皆、行くわよ」

少年「ああ、分かった」

女「分かったよ」

医術士「かしこまりました!」

賢者「……」ニコッ

魔導使い「……」ジロッ

帰り道、魔導使いはとても不機嫌そうだった。

少年「魔導使い?どうしてこんなにも不機嫌なんだ?」

魔導使い「ふん!」

魔導使い「賢者の奴……強かになっちゃって!」

少年「賢者が強か?」

女「私はちょっと変わってるけど優しい女の人だと思ったよ?」

魔導使い「全然!」

魔導使い「一番肝心な事を聞こうとしたのに、うやむやにされたのよ!」

幼馴染「肝心な事ですか?」

魔導使い「どうして賢者は少年と女と幼馴染が生まれ変わったって事を知ってるの?」

しょ

少年「それは……顔を見たら分かるだろ?」

魔導使い「なら、どうしてあんた達三人が同じ学校に?」

少年「……」

魔導使い「生まれ変わりって分かってなかったらそんな事しないわ、普通」

少年「確かにこの広い世の中で一人一人顔を見るなんて無理に等しいし、例え顔が似てたとしても……だし」

魔導使い「あいつ……何か隠してるわね」

魔導使い「私にだって、魔導で入学案内を飛ばして来た」

魔導使い「こうなる事が分かってたみたいに」

少年「魔導使いはどうやって賢者に入学案内を?」

少年「普通は何処にいるのかも分からないのに……」

魔導使い「私みたいに馬鹿でかい魔力を持った人間が時代を越えてきたら簡単に分かるわよ」

少年「そういう物なのか……」

魔導使い「それに関してはいつか教えてあげる」

幼馴染「……」

少年「賢者……か」

魔導使い「絶対まだまだ隠してる事があるわね……一人で抱え込んで……馬鹿っ」ボソッ

コンコンッ

賢者「もういいよ」

ガチャッ

学園長「失礼します」

賢者「被験体は使い物になりそう?」

学園長「ええ、かなりの戦力になるかと」

賢者「医術士におかしな反応があったんだ」

学園長「おかしな反応……とは?」

賢者「疫病の話を切り出した時に体温と脈拍に変化があった」

賢者「目の動きも少し落ち着かなかった」

賢者「やはり医術士は要注意だ」

学園長「話によるとこの世で唯一の力を持っているとか」

賢者「あの女は、本当に危険なんだ」

学園長「純粋な少女にしか見えませんでしたが?」

賢者「監視をお願いしたい」

学園長「私に……ですか?」

賢者「姿形と声を変えて…ね」

学園長「かしこまりました」

賢者「10年前、まだ幼かった君に目を
かけて本当に良かったよ」

学園長「私の代理は?」

賢者「そうだね……丁度アメリカの国務大臣を辞任した男が居るんだ」

学園長「その方は……世界政府とも繋がりが深いですね。むしろ、世界政府の要人と言った方が早い」

賢者「うん、彼はとても信頼できるよ。何より世界平和にかける情熱が凄い」

学園長「何もかも計算尽く……ですか」

賢者「やだな、たまたまだよ」アハハッ

賢者「それじゃあ今から君は一生徒だ」

賢者「そうだね……先輩って名前はどうかな?」

学園長「学年は?」

賢者「二年。手続きはこっちでやっておくよ」

先輩「かしこまりました」

賢者「信頼してるよ」

>>78

訂正

少年「魔導使いはどうやって賢者に入学案内を?」



少年「賢者はどうやって魔導使いに入学案内を?」

学校から家に帰宅をした。今日は色々な事があったから時間がかなり経った物だと思っていたが、今日は入学式だけでおわったので実際の所はまだ昼食時だ。

魔導使い「ねぇ……」ペラッ

魔導使いは俺の部屋で我が家の本全てをを片っ端から読み進めている。

読むペースは速読なんて言う可愛らしい物では無い。

数百冊もあった物があと二冊で読み終わってしまう。

少年「どうした?」

魔導使い「図書館に連れて行ってくれる?」

少年「近場で良いか?」

魔導使い「都心は日本で一番本が多い図書館があるって聞いたわ」

少年「国会図書館か……ここからだと一番早くても二時間はかかるぞ」

魔導使い「私を誰だと思ってるのよ?」

魔導使い「一瞬よ一瞬」

少年「はぁ!?」

流石に驚きを隠せない。電車を使った上での最短の時間なのに……

魔導使い「転送魔道陣の魔翌力の流れを掴んだ私に怖い物は無い!!」ドヤァ

少年「え……あれマジなの?」

勝ち誇った顔をしながら腕を組む魔導使い。

特殊効果で星が周りに浮いていても不思議ではない程その顔は輝いている。中々あざとい。

魔導使い「早く行くわよ!」ワクワク

ワクワクしているのか、両足をジタバタさせている。

制服のスカートが浮いたりと、賢者との会話からは信じられないほど女の子って奴だ。

少年「で、どうやって行くんだ?」

魔導使い「手を貸して」スッ

少年「はい」スッ

ギュッ

魔導使いは手を握って来た。暖かくて触り心地がとても良い手をしている。

魔導使い「行くわよ」キィィィィン

プシュンッ

少年「……」

魔導使い「着いたわ」

少年「はっ!」

少年「……国会議事堂前駅」キョロキョロ

気付いたら既に景色が変わっていた。

国会議事堂前駅の券売機の前。幸い誰も気づいていない様子だ。

魔導使い「国会図書館の一番近くに転送魔道陣が張られている場所だったけど……大丈夫かしら?」

少年「大丈夫だよ。着いて来てくれ」

魔導使い「ええ。分かったわ」

魔導使い「凄い本の量……」

少年「だろ?」

魔導使いは国会図書館の本の量に驚きを隠せない。

魔導使い「知識書、雑誌、歴史書、近代書で役に立ちそうな物を全て読んで来るわ」

魔導使い「そうね……4時間後ににまたここで集合」

むっ……今から4時間か、かなり待たされるけど仕方ないな。

少年「分かったよ。楽しんでってくれ」

ポツーン

少年「ふふふっ……既に居ない」ピクッピクッ

少年「俺は何をしていようかな……本を読むか……折角だし都会を見て回るか」

「こんな所で一人……どうしたのかな?」

少年「お前は……」

「ふふっ……こんにちは」

少年「薄紫ミドルヘアー」

「……」

少年「……」

「……」

少年「……」

「……」

少年「……」

「……」

少年「ごめんなさい」

「うん。許してあげる」

少年「名前を教えてもらっても良いか?」

「おしえてあげる」

「姫……姫って呼んで」

少年「姫って言うのか」

姫「うん。変な名前でしょ?」

少年「そうか?可愛らしい名前だと思うけど」

姫「ふーん?」ジーッ

少年「なんだよジロジロ見て」

姫「少年はたらしだね」

少年「なっ……!そんなつもりは無いぞ」

姫「まぁ良いや、少年はどうしてここに?」

少年「ちょっと友人の観光に付き合ってるだけだよ」

姫「そのご友人さんは?」

少年「一人で本を読み漁ってるよ」

姫「じゃあ君は今一人で暇なんだね」

少年「まぁ……そうなる」

姫「それならこれから一緒に遊ぼうよ」

姫「東京観光」ニコッ

少年「東京が全然分からないからなぁ……」

姫「僕は東京在住だから案内してあげるよ」

少年「でも魔導使いが……」

姫「駄目……かな?」ジッ

少年「うっ……」

そんな目で見られると断れないじゃないか。

少年「まぁ……時間内に帰って来れるなら」

姫「本当?」キラキラ

おお……目が輝いています。

姫「よし、じゃあ行こうか」ルンルン

暇を持て余しているのかな?随分と楽しそうだ。

少年「何処に連れて行ってくれるんだ?」

姫「ふふふ、内緒かな」スッ

姫「ほら、手を握って」

少年「え?」

少年「ど、どどどどうして手を!?」

姫「どうしてって。少年もそうやって来たじゃないか」

少年「ああ、なるほど」スッ

だから東京からこっちの学園まで来たのか。

姫「一応、家が遠い人全員に配られているらしいよ?学生証と一緒」ギュッ

少年「配られる?」

姫「簡易転送魔導陣」

そう言うと姫は学生証の最後のページに付いた魔導陣を見せてくれた。

少年「なるほど、魔導が使えない人はそれを使うのか」

姫「一般人には内密らしいけど、こんなのバレバレだよね」クスクス

少年「そうだな……ってまだ転送しないの?」

姫「あっ……忘れてた」キィィィン

姫「手を握っている時間が楽しくてつい……ね」

プシュンッ

少年「……」

景色が一瞬で変わる。

姫「着いたよ」

少年「ここ、何処?」

空を立ってる気がするのは気のせいか。

姫「スカイツリー」ニコッ

少年「……おおっ」

姫「凄いでしょ?でしょ?」ドヤッ

少年「うん。綺麗だ」

姫「僕の事?」

不敵な笑みを浮かべながら後ろ手を組んで前屈みになった姫に見上げられている。これはからかわれてるな……まぁ率直に返せば良いだろう。

少年「姫も綺麗だけど、景色も綺麗だ」

姫「……」

姫「ありがとう。嬉しいよ」ニコッ

少年「あ、余計な事を言った気がする」

姫「ふふふ、少年はロクな死に方をしないと思うよ」

少年「昔から良く言われるよ」

姫「ふふっ……君が死ぬのは魔王を倒してからだよ、皆それを望んでいる」

少年「おいおい……結局死ねってか?」

姫「行き過ぎた力は破滅をもたらすよ。魔王を倒せる程の人間は淘汰されるかもね」

姫「死ぬのならせめて僕と子作りをしてから……」

少年「……」

行き過ぎた力……か。

何か聞こえたけど無視しよう。

姫「ふふっ冗談だよ冗談」

姫「さて、ここも楽しんだから次に行こう」スッ

少年「分かった」スッ

ギュッ

プシュンッ

姫「着いたよ」

少年「レストラン?」

目の前にはとてもとても高級そうなレストラン。三ツ星とかそういった本の常連といった雰囲気を醸し出している。

姫「うん。ちょっと遅いけど一緒にお昼を食べよう」

少年「なんとも高級そうな……」

姫「こらっ」ピトッ

姫「そういうのは口に出しちゃ駄目だよ?」

俺の唇に人差し指を当て、俺の失言に注意を促す。

少年「ご、ごめん」

姫「大丈夫だよ。ここは世界政府運営のレストランだから」

姫「勇者である君は心配しなくて良い」

少年「色々知ってるんだな」

姫「まぁあの学園に入学する以上、色々な教育も施されたから」

姫「これくらいの情報は訳が無いよ」

少年「努力家なんだな」

姫「ふふふっありがとう」

姫「さぁ入ろう」

姫「~~~」

姫は難しい言葉を使っている。そもそも日本の言葉では無い、ウェイターも……って!

少年「!!」ガタッ

立って辺りを見渡すと外人外人外人外人外人……日本人が一人も居ない。

姫「あれ?少年どうしたの?怖い顔をして」

少年「ここって……」

姫「なるほど。ここはね、イタリアだよ」ニコッ

少年「つかぬ事を伺いますが……姫さんの母国は……イタリアでございますか?」

姫「正解~!」パチパチ

少年「国に返してくれ」ウルウル

姫「拉致された訳じゃあるまいし……」

姫(やっぱり可愛い顔してるな、彼)

姫「まぁまぁ……美味しいから、ね?」キランッ

少年「黙って国境越えたくせにウインクまでしちゃってさ……」プンプン

姫「どうどう」

カチャカチャ

少年「……」パクッ

モグモグ

少年「美味しい」

姫「でしょ?」

食事を食べ終え、図書館の方へ戻る。

そろそろいい時間だ。

姫「はい。駅に到着だよ」

少年「今日はありがとう」

姫「付き合わせてごめんね」

少年「楽しかったから気にしないでくれ」

姫「それなら光栄だよ」

少年「じゃあ魔導使いも待ってるから俺はここで」

姫「うん。また学校で」

少年「おう」

キキキィー

バタンッ

黒服「姫……お時間です」

姫「ん……分かった」

姫「じゃあね。少年」

バタンッ

ブルンッ……ブゥーン

少年「行っちゃった」

姫は黒服の人間に連れられて高級そうな車に乗って行った。

少年「やっぱり相当なお金持ちか……」

俺は魔導使いを迎えに行った。

魔導使い「丁度良い時間に来たわね」

少年「じゃあ帰るか」

魔導使い「現代の一般常識は完璧になったわ」キリッ

少年「そうかそうか、それなら俺の家に居候する行為が如何に一般常識からかけ離れてるか分かったな?」

魔導使い「うぐぐ……そこは大目に……」

少年「でも……簡単に承諾した両親と俺も常識が無いだろ?」

少年「だから気にしないでいいよ」

魔導使い「少年……」

少年「帰るか」

魔導使い「……うん」

魔導使い(今の時代に飛ばされて不安だったけど……)

魔導使い(最初に会えたのが少年で良かったわ)

少年「ただいま~」ガチャ

魔導使い「ただいま」

母「おかえり~!」タタッ

母「ご飯出来てるよっ!」タタッ

少年「右往左往してる……」

魔導使い「あんたのお母さんって落ち着きが無いけど可愛いわね」

少年「若い頃は相当モテたらしい」テクテク

魔導使い「今も相当若いじゃない」

少年「そうか?」

少年「まぁ女のお母さんもかなり若いからな」

魔導使い「もしかして……」

少年「え?」

少年「もしかして……」

魔導使い「あんたのお母さんと幼馴染のお母さんって……姉妹?」

少年「正解……です」

魔導使い(もしかして……あの有名人も?)モグモグ

少年「真剣な顔をしてどうしたんだ?」

魔導使い「ちょっと気になった事があるの」

少年「?」

魔導使い「少年の祖父って今何をしているの?」

魔導使い(やんわりと聞いてみたけど……)

父「……」

母「……」

少年「あ……えっと……」

魔導使い(地雷だった……ごめんなさい!)

母「10年前から行方不明だよ~」

母さんはいつものように返事を返した……声色も表情もいつもの母さんだ。

魔導使い「あ……ごめんなさい……」

母「気にしないでいいよ!」

母「お父さんも勝手に居なくなるから困っちゃうよ!」プンプン

父「元気にやっているだろう……多分」

少年「お爺ちゃん割とくさいから簡単に見つかりそうなんだけどな~」

母「あはは~きっと忘れた頃にひょこっと戻ってくるよね」

父「確かにくさいな」

魔導使い(くさいんだ……)

母「香水使ったら簡単に消える系の我慢出来る弱い匂いなんだけどね、くさいって簡単に分かる嫌らしい匂いなんだっ」

魔導使い「あはは……」

母「それでね~この人ったらお父さんに挨拶する時にお父さんと凄い殴り合いをしたんだよ!」

父「ぐっ……あれはお義父さんが……」

母「ここで会ったが百年目って感じだったよ!」

父「私は拒んだからな」

母「途中から嬉しそうな顔して殴ってた癖に良く言うよ」

父「ぐっ……今回も奴に決闘を申し込まれるとは思ってもいなかったんだ……」ボソッ

母「また一人でブツブツ言ってる」アハハ

少年「ふぅ……よく食べた」テクテク

父「……」

少年「あ……お父さん」

父「学園はどうだった?」

少年「ん……凄かった」

少年「良くわからない施設とか沢山」

父「危ない目には遭ってないか?」

少年「勇者再選考の為に俺を殺そうとしている人が沢山居るらしい」

父「そうか……でも選ばれてしまったものは仕方ない」

父「危ない目に遭ったら直ぐに私に言ってくれ」

少年「あぁ……分かってるよ」

少年「じゃあまた明日」スタスタ

父「時代は今も動いているぞ……置いて行かれるなよ」

父「勇者……か」

「あのーちょっとこれは……」

「似合うねー!可愛いー!」

寝ようと思って自分の部屋に戻ろうとしたものの……

「え……これも……」

「うんうん!早く着て!」

俺の部屋の中で何かが行われている。

少年「……」

少年「入っていいー?」コンコン

「あっ!少年にも見て貰おうよ」ガチャ

「あっ……ちょっ!」

少年「おぉ……」

開いた扉の向こうにはとても機嫌が良い母と恥ずかしがる魔導使いが居た。

母「どう?夕方奮発して魔導使いちゃんの服を買いに行っちゃったんだ♪」

魔導使い「うぅ……///」モジモジ

ワンピースを着せられた魔導使いは足をモジモジさせながら俯いている。

母「似合ってるよねー」

少年「うん。とても似合ってるよ」

魔導使い「……///」カァァァ

きっとそういうのに慣れていないんだな、顔まで赤くしている。

魔導使い「疲れたー」グテー

少年「あの後も着せ替え人形状態だったな」

魔導使い「恥ずかしいわよ……もう」

魔導使い「……」

魔導使い「ベッドまで用意してもらって……ありがとう」

少年「いいよ別に、元あったベッドが二段になっただけだし」

少年「礼ならお母さんに言ってくれ」

魔導使い「ええ……」

少年「色々とありすぎて困る事もあったけど、魔導使いが居なかったら俺は魔導すらまともに使えないただの人間だったんだ」

少年「お礼を言うのは俺の方だよ」

魔導使い「本当は剣とかも教えてあげたいけど……」

少年「それについては大丈夫……かも」

魔導使い「本当?」

少年「お父さんが教えてくれる……かも」

魔導使い「え……?」

少年「子供の頃もお父さんに木の枝持たされて何かやってたから……もしかしたらだけど」

魔導使い「……」

魔導使い「少年のお父さんも生まれ変わったって言ったら信じる?」

少年「え……本当?」

魔導使い「顔も性格も背格好全く一緒だから多分そうだと思うわ」

少年「えっと……昔の事は思い出してるのか?」

魔導使い(……)

魔導使い「分からないわ」

少年「分からない?」

魔導使い「全く分からない、読めないのよ心が」

少年「確かに不思議が多い人だからな……」

魔導使い「でも昔のあんたのお父さんは王様だったわ」

少年「え?マジで?どこらへんの?」

魔導使い「地形が変わる前のヨーロッパ大陸は殆ど支配してたわ」

少年「……マジで?」

魔導使い「大真面目よ、あの時代で航海技術が発展したらあんたのお父さんはきっと世界征服してたわ。それほど凄かったのよ」

少年「王様だったのか……」

魔導使い「色んな逸話があったわね……十代の中頃に大陸の半分を支配」

魔導使い「自分の義理の父である戦士王と三日三晩の一騎打ちの末勝利」

魔導使い「その剣技は見る者を魅了する」

魔導使い「世界最強……当時の勇者である弓使いより実は強いとか……ね」

魔導使い(あとはぼっち説……)

少年「そんな凄い人なのに教科書だと見なかったな……そもそもその時代の細かい事は全く本でも見ないな……」

魔導使い「消されたのよ」

魔導使い「栄華も記録も全て……クーデターによった」

魔導使い「クーデターによって……」

少年「それがもしかして例の“恐ろしい事”なのか?」

魔導使い「ええ……それはまた今度話すわ。賢者や皆も居る時に」

少年「そうだな、それがいい」

魔導使い「それじゃあ……おやすみなさい」

少年「ああおやすみ。いい夢見ろよ」

魔導使い「最近は見れそうに無いわ……いい夢」

少年「奇遇だな、俺もだよ」

魔導使い「本当?」

少年「ああ、本当だよ。おやすみ」

魔導使い「おやすみ……」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

ーー

>>100
訂正です

魔導使い「栄華も記録も全て……クーデターによった」



魔導使い「栄華も記録も全て……クーデターによって……」

です

トントントン

少年「……」スタスタ

父「……おはよう」

少年「おはよう」

父「何時もより起きるのが早い……そして、珍らしく真剣な顔をしているな」

少年「もしかしたら何を言おうとしてるか分かってる?」

父「大体は想像出来てるさ」

少年「ーー俺に剣を教えて欲しい」

父「……」ニヤッ

父「当然そのつもりだ」

少年「!」

父「着替えろ、表にでるぞ」

少年「分かった」

魔導使い「うーん……」ムクッ

魔導使い「そろそろ準備しないと」テクテク

魔導使い「少年は先に起きてるみたい」テクテク

ガチャ

魔導使い「本当に鍛えられてたりして……」クスッ

母「おはよ、ご飯出来てるよー」

魔導使い「あれ……少年は?」

魔導使い(まさか本当に……)

ガチャ

少年「ただいま」ボロッ

母「かなりしごかれたみたいだね、ほらほらご飯ご飯!」

父「久しぶりに動くと身体が言う事を聞かないな」

母「お疲れ様。仕事は休んじゃ駄目だからね?」

父「うっ……」ギクッ

少年「あぁ……身体痛いよぅ……ふえぇ……」テクテク

魔導使い「幼児退行してるわよ気持ち悪い」テクテク

女「おはよー」フリフリ

幼馴染「おはようございまーす!」フリフリ

少年「あぁ……おはよう……」テクテク

魔導使い「通学中なんだからシャキッとしなさい!シャキッと……おはよー」テクテク

少年「酷い……お母さんは心配してくれたのに」テクテク

魔導使い「とんだマザコンねあんた」テクテク

少年「酷い……」テクテク

女「少年元気無いね、朝からどうしたの?」テクテク

少年「お父さんに鍛えられまして……」テクテク

幼馴染「力は使いませんよ?」テクテク

少年「……」ギクッ

女「あはは……」テクテク

幼馴染「女も使ってはいけませんよ?」テクテク

女「う、うん」テクテク

幼馴染「人の手で治せる傷に力は使ってはいけません」テクテク

少年「厳しい……」テクテク

魔導使い「……」フフッ

???「お姉ちゃんはいつも正しいね!」

幼馴染「ふえっ?」

魔導使い「……」

少年「……」

魔導使い「良かったわね、また知り合いが増えるわよ」

少年「これが本当の水滸伝か」

???「あ!お姉ちゃんの友達ですね!おはようございます!」

少年「同じ制服……」

女「幼馴染って妹居たっけ……」

幼馴染「去年亡くなったポチはメスでしたよ……」

少年「また電波さんか……」チラッ

魔導使い「燃やすわよ?」ニコッ

少年「ひっ……」ビクッ

???「皆酷い……」グスッ

幼馴染「えっと……私は貴女が誰か分からないんですよね……悪気は無いんですよ?」オロオロ

???「生き別れの妹です!」

幼馴染「えっ!?本当ですか!?」

少年「ちょろいなオイ!」

???「こうして同じ学園に通えるのはうれしいな~」

少年「……」

嬉しそうに笑う桃色の髪をした少女。

背格好は幼馴染と一緒、髪の長さは幼馴染より更に長く地面に着きそうな程だ。

顔は……能面と言ってはなんだが、幼馴染よりもずっとクールな顔立ちをしている……感情が無い顔。その分彼女の顔には似合わぬはしゃぎ具合に驚かされた。

幼馴染「今までどこに行っていたんですか?」

???「普通にお父さんといたよー」

幼馴染「あ……なるほど……思い出した」ポンッ

???「お母さんから聞かなかったの?」

幼馴染「あはは……忘れてました」

少年「普通に居たのかよ……!」

幼馴染妹以下幼妹「ひどーい!」ムーッ

幼妹「たった一人の双子の妹なのに!」

幼馴染「ご、ごめんなさい~」オロオロ

幼妹「はぁ……もういいよ、これからは皆で幼妹って呼んでね」

幼馴染「分かりましたよ幼妹!皆もそう呼んでくださいよ!」

女「分かってるって」アハハ

魔導使い「頭痛くなってきたわ……」

少年「早く学園行こう……」

幼妹「お姉ちゃ~ん♡」スリスリ

幼馴染「妹が出来るって不思議な感覚ですねぇ」テクテク

少年「ははっ……生き別れなのに随分と仲が良いな」テクテク

幼妹「私とお姉ちゃんは地球が生まれる前から仲良しなのだ~」スリスリ

幼馴染「あはは……」テクテク

少年「まぁ、よろしくな幼妹」

幼妹「……」ピタッ

幼馴染「……名前は?」スッ

少年「?」

能面に戻り幼馴染から身体を離す。

少年「俺は少年だ」

幼妹「そう……貴女が」ジッ

吸い込まれそうな……宇宙の闇を連想させるような瞳。

幼妹「姉を……よろしく」

少年「あ、あぁ……分かった」

幼妹(勇者)

幼妹(踊れ、踊り狂え、魔王と共に)

担任「はいおはよう」

「「「おはようございます」」」

担任「さーて。今日はエアドライバーをぼちぼちやって行くか」

担任「校庭にエアドライバー担当の先生が居るからその人に教わるように」

少年「……」

担任「制服のままで良いぞ」

担任が教えてくれる物だと思ってたが、違うようだ。でも……エアドライバー操縦の先駆者の一人ってパンフレットには書いてたぞ?

賢者「先生は教えてくれないんですか?」

担任「俺は今日体調悪……」

賢者「 先 生 は 教 え て く れ な い ん で す か ? 」

担任「先生頑張っちゃうぞー!」ハハハ

少年「……」

「「「……」」」

魔導使い「なんなのよこの茶番……」ボソッ

正直変な先生だと思った。

担任「はーい!皆集まったなー!?」

体育教師「先生……貴方より全員先に校庭へ集合しています」

賢者「僕……先生の給料がとっても気になるなぁ」ニコニコ

担任「!」ビクッ

担任「うぉほぉんっ!」

担任「真面目に……」体育教師「それぞれに与えられた練習用エアドライバーを準備……」

担任「ちょっ!」

体育教師「そうそう……その山積みになってる薄茶色のエアドライバー」

体育教師「学園の物だから認証無しで起動する……うん」

少年「本当に大丈夫なのかこの学園……」ガサゴソ

担任「俺にも権限って奴が……!」

体育教師「先生は一度黙って……鬱陶しい」

担任「……」イジイジ

少年「おい、校庭の隅でいじけてるぞ」

アハハ~

賢者「彼。あぁ見えてもとても優秀だから大丈夫だよ」

賢者「きっと教わることが沢山あるよ」

担任「俺の給料……給料……」ブツブツ

賢者「減俸はさけられないね」ボソッ

少年「……」ゾクッ

体育教師「装着して」

シュインシュイン

ガチャガチャガチャ

シュインガチャシュイン

担任(まだぎこちないな……当然か)

体育教師「ほぼ全員が平均的な装着時間……一人とても遅い」

体育教師「少年」

少年「はい……」

ザワザワ

ウソデショ……ユウシャナノニ

マジカヨ

うっ……視線が痛い。

体育教師「肩の力……次からは抜いて」カキカキ

少年「あ……はい」

意外と呆気ない……?もっと注意されるかと思ったが、体育教師はそれだけを言い終えるとノートに何かを書き始めた。

賢者(体育教師……近接の天才。何を考えているのか全く分からないんだよねぇ)

賢者(一見どう見ても大人の彼女も眼鏡を外せば可愛らしい女の子だけどね……皆も自分と同い年とは思ってもいないだろう)

賢者(彼女は学徒兼教員にした方がいいかも……出来るだけ一般生徒と接触させたい)

体育教師「次はランニング」

少年「エアドライバーで?それってかなり……」

女「辛い……よね?」

幼馴染「うぅ……」

魔導使い「こんな重い物を着て……ね」

幼妹「へぇ……」

姫「まぁ簡単だよね」

ダッダッタ

女「あれ?やってみると意外に」ダッダッタ

幼馴染「簡単ですねー」ダッダッタ

魔導使い(自分の身体ね、まるで)ダッダッタ

少年「うぐぐ……」ギギギ

難しい、身体が言う事を聞かない。

幼妹「大丈夫?」

少年「んっ……動かないな」

幼妹「はい、手」スッ

少年「?……はい」ギュッ

幼妹「んっ」ニコッ

少年「あれ?身体が軽い」

幼妹「ね、走ろう」

ダッダッタ

賢者「流石幼妹だね、完璧だ」

魔導使い「今……何をしたの?」ボソッ

賢者「……」

賢者「今なんて?」

魔導使い「え?私?」

魔導使い「今何をしたのかって言ったわ」

賢者「確かにそう言ったよね。幼妹は一体少年に何をしたんだろう」

魔導使い「医術士と同じで不思議な力かも」

ダッダッタ

賢者「……思い出した」

賢者「幼妹のデータ」

魔導使い「賢者もど忘れするんだ……」

賢者「僕だって人間だからね、一応」

賢者「幼妹は自分の思う通りに魔翌力を動かせるんだ。幼妹の魔翌力自体は振り幅が大きいから分からない」

魔導使い「自由に動かせるって……魔導を扱う物なら当然じゃない」

賢者「人材がとにかく沢山欲しいんだ。才能が無い子でもとにかく入学させるよ」

魔導使い「単純に少年の手助けをしたたけなのね」

賢者「うん。少年の魔翌力の流れを少し緩やかにしただけ」

魔導使い「それって少年の為になるのかしら?あいつの魔翌力ってそんな代物じゃないでしょ」

賢者「まぁ今ので少年もリラックス出来たから見逃してあげる」

魔導使い「幼妹……ね」

>>117訂正

賢者「……」

賢者「今なんて?」

魔導使い「え?私?」

魔導使い「今何をしたのかって言ったわ」

賢者「確かにそう言ったよね。幼妹は一体少年に何をしたんだろう」

魔導使い「医術士と同じで不思議な力かも」

ダッダッタ

賢者「……思い出した」

賢者「幼妹のデータ」

魔導使い「賢者もど忘れするんだ……」

賢者「僕だって人間だからね、一応」

賢者「幼妹は自分の思う通りに魔翌翌翌力を動かせるんだ。幼妹の魔翌翌翌力自体は振り幅が大きいから分からない」

魔導使い「自由に動かせるって……魔導を扱う物なら当然じゃない」

賢者「人材がとにかく沢山欲しいんだ。才能が無い子でもとにかく入学させるよ」

魔導使い「貪欲ね」

賢者「人を助ける心優しい子が入学してくれて嬉しいよ」

魔導使い「って事は、幼妹は単純に少年の手助けをしたたけなのね」

賢者「うん。少年の魔翌翌翌力の流れを少し緩やかにしただけ」

魔導使い「それって少年の為になるのかしら?あいつの魔翌翌翌力ってそんな代物じゃないでしょ」

賢者「まぁ今ので少年もリラックス出来たから見逃してあげる」

魔導使い「幼妹……ね」

同時刻、学園長室。

先輩「私の学園長としての仕事も終わりですね」バサバサッ

先輩「資料の整理も終わりました。後は貴方に引き継ぐだけですね」

学園長「分かりました……が、貴女は誰ですか?」

学園長「私が知っている学園長は、私と同じぐらいの中肉中背の体型をした中年男性の筈でしたが」

学園長「今私の前に立っているのはクールビューティーな少女。説明をお願いします」

先輩「私は姿形と声を自由に変える事が出来ます」

先輩「ほら」ゴキッゴキッバキャ

学園長「oh……これでは信じるしか無いですね」

学園長「今は顔だけですが、下もまた然りと言うことですね?」

先輩「はい。まぁいつでも変えられますが、今は遠慮します」

学園長「貴女は元々どういった姿を?」

先輩「ミスター……深追いは禁物ですよ」

学園長「元の性別は?」

先輩「……」

学園長「レディですね」

先輩「……」ピクッ

学園長「haha……正解ですね」

学園長「今姿を変えたら裸ですからね、恥じらいは乙女の特権デスヨー」

先輩「たぬき……」

学園長「聞いたら勝手に反応してくれただけです」

先輩「人形を使わず自分で話したらどうだ?」

学園長「why?何の事ですか?」

先輩「貴様の正体は代表から聞いている」

学園長「……」

学園長「……」

「仕方ないデスネ」ガチャ

学園長「大臣」

先輩「随分と可愛らしい姿をしているな」ニヤッ

元大臣「大臣なんて呼ばないでください。今の私はもう一般人で貴方が学園長なのですから、それに……元大臣も貴方でしょう」

先輩「今から代表の命令を告げる」

先輩「学園長は自分の意思と判断で学園の為に勤めること、大臣時代のように元大臣の傀儡にならないように、本来の自分を出す事を命ずる」

学園長「代表の命令とあれば仕方ありません。元大臣、お世話になりました」

元大臣「今まで無茶振りしてゴメンネ~」

先輩「さて、ラスベガス生まれの元貧民かつアメリカ合衆国が当時極秘に打ち出した計画の一つである“A Perfect Human PROJECT ”完璧な人間計画の唯一の成功作かつ生き残りである満15歳の元大臣様」

元大臣(何もかもお見通しデスカ)

先輩「代表は貴女の能力を買っています。生徒として学園に入学する事をお勧めします」

先輩「学園長は最初から世界政府側の人間ですが……貴方はアメリカ政府側の人間です。エアドライバーのデータの持ち帰りも禁じますが、戦闘データの持ち帰りは許可します」

元大臣「エアドライバーを作る事すら出来ないのに戦闘データを持ち帰ってもアメリカでは世界政府の支部でしか役に立ちませんヨ……それにしても学園長……酷いデス」

学園長「私は世界が大事ですから、すいません」

元大臣「企みに気付いた上で生徒として利用しますか……」

先輩「生徒と言う役に囚われず、学園長と共に学園の向上に務めてもらいます」

先輩「」

先輩「戦火に身を投じるだけだ、安心しろ」

先輩「私も代表も貴様の政治能力は全く評価をしていないが、貴様の持った力は高く評価をしている」

元大臣「NO……と言えば?」

先輩「残念ですが、帰ってもらいます」

先輩「タダでは無いですが」

元大臣「そうデスカ……それは好都合デス」

元大臣「貴女にはさっきから腹を立てていましたかラ☆」ズズズズズ

先輩「気が合うな、私もだ」キィィィィィン

元大臣「一通り暴れてからどうするか決める事にしました」

先輩「完璧な人間を作ろうとしたら人格に欠陥が生じるとは、皮肉だな……」

元大臣「ふふっ何事にも犠牲は付き物デス」

先輩「ーー武力の行使は許可されている」

先輩「行くぞ」

ゴゴゴゴゴゴゴ

学園長(この二人の戦い……非常に興味深い)

学園長室隣、書類保管室。

ガチャ

学園長「巻き込まれてはたまらない」

学園長「……」

学園長(正直……元大臣に関してここまで知っている人間が居るのは予想外だった)

学園長「世界政府代表……賢者」

学園長(恐ろしい)

学園長「生徒の書類を整理しますか」パサパサ

ピラッ

学園長「おっと」パシッ

学園長「一つ書類が落ちてしまった」

学園長「どれどれ……幼妹」

学園長「あとは何も書いていない、力量も能力も誰も分からないと言う事か」

学園長「資料である意味が無いですね、これでは」

ドーンッズズズズズ

学園長「危ない危ない……」

学園長「……」

学園長「見てみたいが……」

学園長「また向こうのドアを開けた瞬間には私が消し飛んでしまうな」

ピクンッ

学園長「!」

学園長「前までは確実に逆らえなかった命令も今では絶対的な物では無くなったのか……」

『テツダッテクダサイ!!』

学園長「私はただの一般人ですよ」

『ウソデス!』

学園長「たまにはいい薬になりますよ」

学園長「本気を出すのが怖い癖に」

『ッッッッ~~!!』

『ファック!!!』

学園長「元大臣……私は貴女が一番怖いですよ」

学園長「行動理念に人間としての物が無い化物……か」

元大臣「ハァ……!!ハァ!ハァ!」ゲホゲホッ

先輩「先程の虚勢はどうした?」

元大臣「始めから勝ち目は無いと分かってイマシタヨ……」アハハ

先輩「本気を出せば分からないだろう」

元大臣「ハハハ……貴女にも言われましたね」

先輩「最後に頼りになるのは自分の力だけだ」

元大臣「私の“命令”……いつから封じましタカ?」

先輩「出会った時からだ」

元大臣「本当に何もかもお見通しデスカ……」

先輩「全力で来られたら難しい勝負になっていたさ」

元大臣「ふふっ……」

元大臣「仕方ないデスネ」

元大臣「世界の為に……協力シマス」

先輩「よし、今日から貴様も生徒だ。歓迎しよう」

元大臣「荒っぽい歓迎デスネ」

元大臣「それと私の母国の事で相談が……」

先輩「分かってる。アメリカからも保護する事は決まっている」

元大臣「そこまでも分かっていましタカ……」

先輩「余程、大事な人なのか」

元大臣「えぇ……誰よリモ」

先輩「条件が一つ……わざとらしい片言はやめろ」

元大臣「わざとらしい?」キョトン

先輩「素か……なんでもない」

元大臣「oh……何を言ってるか分からないですケド」

元大臣「これからもよろしくお願いしマース」

学園長「終わりましたか」ガチャ

先輩「学園長」

元大臣「とても怖い人に懲らしめられてしまいましたヨ」アハハ

学園長「そんな事よりも聞きたい事が一つ」

先輩「……」

元大臣「無視でスカー」

学園長「無視ではありません、相手をしていないだけです」

元大臣「NO!随分と偉くなりましタネー!」

先輩「貴様達には調子を狂わされるな……」イラッ

学園長「これです」スッ

先輩「これは……」ピラッ

元大臣「ンー?」チラッ

先輩「幼妹……?」

学園長「この学徒は誰ですか?」

先輩「幼馴染の妹です。姉のような力を隠し持っている可能性もあるので入学させただけです」

学園長「そのわりにはデータが少ないですね……」

先輩「それは私も思っているが、代表が入学を決めたんだ」

先輩「反対する理由も無い」

元大臣「なるほど……深追いはしないでおきましょう」

元大臣「一つ忠告をしておきます」

元大臣「敵を知るなら……まずは味方からですよ」

先輩「……代表に伝えておく」

同時刻、校庭。

賢者「!」

賢者(人造の化物を手懐けるのはとりあえず……成功かな?)

賢者(先輩……うまくやったね)

体育教師「次は飛行」

賢者「頑張れ~」

体育教師「代表……授業受けてくれないと困る」

賢者「僕はエアドライバー苦手なんだけどなぁ……」

体育教師「代表」ジッ

賢者「うっ……分かったよ」タジッ

担任「はい、全員飛んで~」パンパンッ

少年「とか言われてもな……どうやって飛ぶんだ?」

幼馴染「飛べました~」シュイイイイイン

少年「えぇ!?って……飛びすぎ飛びすぎ!」

抑えが効かず飛び過ぎた幼馴染の姿が見えなくなってしまった。

幼馴染「きゃぁぁぁぁ!!!止まりませーん!!!」

女「ちょっ……!」

幼妹「!!!」

賢者「制御が効かないみたいだね……!」ググッ

シュウウウウゥゥゥゥン

賢者「って……担任がいっちゃった……助けようとしたのに」

とても早い物体が幼馴染の後を追う。

担任「ふぅ……」ガシッ

幼馴染「あわわ……」ガクガク

担任「もう少し加減をしろよ、加減を……まぁこれから教えていくから安心してくれ」ハァ

幼馴染「ふぁ……ふぁい」

担任「よし、戻るぞ」ゴォッ

シュウウウウゥゥゥゥ

幼馴染「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

シュウウウウゥゥゥゥ

賢者「あ、戻って来た」

担任「皆もこうならないように気を付ける事だな

幼馴染「」ブクブク

魔導使い「泡吹いてるわよ!」

体育教師「問題無い」スッ

体育「起きて」ドスッ

幼馴染「きゃん!」ビクッ

少年「なんつースパルタ」

女「酷い……」

担任「やりすぎるなよ……」ボソッ

体育教師「昔の癖でつい……すいません」ボソッ

担任「あやまるなら幼馴染に謝れ」ボソッ

体育教師「ごめんなさい……大丈夫?」

幼馴染「ちょっと痛かったですけど大丈夫ですよー」ニコニコ

体育教師「そう……良かった」

担任「皆も自由に飛んでいいぞ、暴走しても俺と体育教師が助けてやる」パンパンッ

体育教師「頑張れー」

賢者(そりゃ……皆も簡単には手の内は明かさないよね)

???「仕方ない……私が行こう」スッ

賢者(あっ……彼女が行くんだ。確か彼女は……ふふっ医術士に触発されたのかな?面白いね)

ザワザワ

イインチョウダ……イインチョウダ……

委員長「騒ぐな……うるさい」

少年「委員長か」

魔導使い「キツそうな女ね……」

少年「鏡見たことある?」

魔導使い「……」ガルル

少年「どうどう」

シュウウウウウウ

女「凄い……自由に扱ってる」

少年「才能あるんだな……」

幼馴染「うわー凄いです」

担任「あいつに至っては教える事無くね?」

体育教師「私もそう思う」

賢者「コラッ」スッ

担任「で、出た!」

賢者「僕は幽霊じゃないよ!もう……」

賢者「委員長が武器の扱い方を分からない場合があるからちゃんと教えてあげないと駄目だよ」ビシッ

担任「分かってまーす」ブーッ

賢者「」イラッ

体育教師「」イラッ

委員長「はぁっ…」

シュウウウウウウ

委員長(本当にこのままで私は目的を達成できるのか……?)

委員長「……」チラッ

幼馴染「凄い飛んでますー」

少年「凄いな……」

女「本当に凄いよ、私には無理だもん」

魔導使い「へぇ……」

賢者(彼女……尋常じゃない使い手かも……それこそ……過去の……)

委員長「医術士……」ボソッ

委員長「嫌……私は……」

委員長(皆を信じよう)

シュウウウウウウゥゥゥゥン

委員長「出来たぞ」スタッ

体育教師「素晴らしい」

担任「そうだな……出来る人間と出来ない人間に分けた方が良いんじゃないか?」

賢者「そうだね……その方が良いね」

担任「はい、ある程度出来る奴は体育教師のに着いて行ってくれ!!!」パンパンッ

担任「出来ない奴は俺に着いて来い!!」

少年「……」

担任の一言によりエアドライバーの扱いが長けた人とそうでない人に別れた。

少年「で……結局この六人か……」

幼馴染「見慣れてますね」

女「皆居て良かった……」

魔導使い「私はもう少しで出来るわよ」

賢者「見学者でーすっ」

幼妹「むむむっ」

担任「まぁ……すぐに追いつけるから頑張ろうな」

魔導使い「私も飛べるようになったら教えてあげるわ」

担任「魔導使いは優秀だから、それぐらい簡単だろう」アハハ

賢者「サボっちゃ駄目だよー」

担任「皆はどうして飛べないんだ?」

幼馴染「どうしてでしょう?」

担任「いや、幼馴染は気にしないでいい。どうせ完璧になる」

幼妹「私は慣れたらいけると思いますよー」

魔導使い「私も後少しでいけるわ」

女「うーん……どうしてもコツが掴めない」

賢者「僕は飛べるよー」

担任「賢者は見学してくれ、邪魔だ」

賢者「へぇ……」

担任「今は教育中だ、口を挟むなら帰るか参加するかのどちらか選べ」

賢者「……」

女「凄い……」ボソッ

魔導使い「意外とやるわね……」ボソッ

賢者「うん。流石だね、参加するよ」

担任は強い一面も持っている。雇い主に対してこの物言い……普段の飄々とした態度からこの我がとても強い一面には驚かされた。

少年「俺は……」

賢者「高所恐怖症」

少年「!」ギクゥッ

担任「あの……賢者さん」

賢者「なんですか?せ・ん・せ・い♡」ニッコリ

担任「少年を空高く飛ばしてください」ニコッ

賢者「かしこまりました♡」キィィィィィン

少年「やめろ!!やめてくれぇ!!」フワッ

魔導使い「意外とスパルタね」

シュウウウウウウ

少年「うわぁぉぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁ!!!!!!」

シュウウウウウウ

飛んでいる。

飛んでいる。

空を飛んでいる。

飛ばされている!!!

怖い怖い怖い!!!!

少年「助けてくれええええぇぇぇぇ!!!!」

『エアドライバー管制システム起動』

少年「!」

耳元で賢者の声が聞こえるが……本人よりも冷静で落ち着いた声が聞こえる。そして目の前には前は勿論後ろと横と下と上も見える全方位を映したホログラムが浮かんでいた。

『パニック状態です、落ち着いて息を吸って吐いてを繰り返してください』

少年「……」スーハースーハースーハー

『次は周りを見渡してください。貴方が見たいと思った方向を最新の技術を駆使し、察知して映します。多少首を動かす必要もありますが、慣れたら自然と動きが身に付くでしょう』

少年「賢者……か?」

『私は賢者の音声データと知能を活用したエアドライバーの管制データ』

『オペレーションエアドライバーです』

『戦闘の効率化、操縦者の補助を目的に作られた人工知能兼世界政府本部のオペレーターです。作戦を伝える時や命令を下す時も私が使われます』

『賢者の脳の一部でもありますので、賢者の考えを私が伝える時も多々ございます』

『私は本来なら練習用のエアドライバーには使われません』

少年「わ、分かった……この、状況はどうしたら良いんた?」

『冷静に空を掴む感覚が重要です』

少年「冷静に空を掴む感覚?」

『故障時の避難飛行のサポートは行いますが、操縦が容易な通常時の飛行サポートは行えません』

『操縦者がパニック状態に陥った時のみのサポートは行います』

少年「分かった……やってやる……!!」

シュウウウウウウ

少年「!!」

シュウウウウウウゥゥゥゥゥ

飛べた!自分の意思で自在に空を飛んでいる!

速さも思いのままだ!

少年「なるほど……簡単だな」

『高所恐怖症は大丈夫かな?』

少年「こっちは……」

『僕だよ!』

少年「本当に脳の一部みたいだな、賢者の思うままか」

『僕主導で開発したからねー』

少年「うん……高所恐怖症は大丈夫だよ。この酷い指導で治ったよ」

『それなら良かった。じゃあ戻って来てね』

少年「分かった」

『練習用エアドライバーのサポートを終了します』

皆の元へ戻るか……

ブーブーブー

『ーー緊急オペレーションを開始します』ブーブーブー

少年「!」

なんだ?警告音と共にオペレーションエアドライバーが再び作動したぞ?

『前方に魔物が接近。全速力で逃げても追いつかれます。迎撃の用意を』

少年「どうしてだ!?」まものが

誤爆訂正

少年「どうしてだ!?魔物はこの学園の空にも地中にも踏み入れられないんじゃないのか!?」

『少年が禁止指定した所を無視して勝手に飛び過ぎるから魔物が勇者を嗅ぎつけて来ちゃったんだよ!』

少年「ええ!?」

『映像に赤い線映ってたでしょ!それだよ!』

少年「」

少年「それか……やってしまった」

『来るよ!!』

キシャァァァァァァ

本当に迫って来てる!!

『付属の剣を射出します。それを使い応戦してください』

右腕の外郭から剣が射出される。

パシュ

少年「これを使えってか……」ガシッ

魔物「キシャァァァァァァ!!!」

少年「やってやるよ!」

毒々しい見た目をした小さな龍が襲いかかって来た。

魔物「キシャァァァァァァ!!!」ゴオオオオオオ

魔物は身を唸らせ火を噴いて来た。とても凄い勢いだ。


少年「ぐっ!」サッ

案外思うままに避ける事が出来た。

この魔物はまだ強くない部類のようだ、今の俺でもいける?

『来るよ!』

魔物「キシャァァァァァァ!!!!」ガッ

爪を振り上げ俺に急接近すると共に振り下げる。

少年「ぐぅぅぅ!」ガキィィン

俺は剣でその攻撃を受ける。

ギリギリ

魔物の強い力に押されてしまいそうになるが、俺も腕の力を精一杯使ってそれに耐える。

『腕の力を使い過ぎです。もっとエアドライバーの力と出力を利用してください』

少年「出力と力……」

『エアドライバーは理想を現実にするよ』

その一言で不安や心配が全て吹っ切れたと思う。

少年「うおおおおお!!!!」ギリギリ

機動出力とパワーを全開して爪など気にせず魔物に対して力を入れる。

魔物「キシャァァァァァァ!!!!」

魔物の爪に剣がついに食い込む。

魔物「キシャァァァァァァキシャァァァァァァ!!!」

少年「くらええええええ!!!!!!」

ブシャァァァァ

ーー両断。

勢い任せに突進を続けた結果、俺は魔物を両断する事に成功した。

両断され意思を無くした魔物の二つに別れた身体は力無く校庭の方へと落ちて行く。

少年「はぁ……はぁ……やっ、やったぞ……!」

初めて魔物を倒す事が出来た。

シュウウウウウウ

少年「……」スタッ

賢者「大丈夫?」ニコッ

担任「どうやら飛行は完璧に出来るようになったみたいだな」

幼馴染「凄いですねー」

少年「あれ?皆は?」

賢者「少年の後に飛行練習をしに行ったんだ」

賢者「多分そろそろ戻ってくるよー」

シュウウウウウウ

賢者「ほら」

女「怖かったよー」スタッ

魔導使い「わざと魔物を当てがったわね……」スタッ

幼妹「他愛もなかったよー」スタッ

担任「魔物……どういう事だ?」

賢者「皆飛び過ぎちゃって迎撃範囲を抜けちゃった」

担任「無事……なのか?」

賢者「オペレーションエアドライバーを使ったから大丈夫」ニコッ

担任「そうか……それから良かった」

賢者……これは絶対ワザとだな。

帰り道

少年「今日は色々疲れたな」

魔導使い「賢者の自由奔放ぶりには驚かされるわよ……」

少年「昔もあんな感じだったのか?」

魔導使い「全然。昔はむしろ振り回される側だったわ」

女・少年「「本当!?」」

魔導使い「えぇ、本当よ」

少年「誰にだ?」

女「あんな凄い人を振り回すなんて、とっても唯我独尊な人が居たんだね」

魔導使い「……」

魔導使い(弓使いと僧侶もとい……女)

魔導使い(その二人がパーティーを引っ掻き回していたわね)

女「くしゅんっ……誰か噂してるかのかな?」

魔導使いの悟った表情……これはまるで自分も振り回されていたと言いたげだな。

少年「……」

どう見ても振り回す側だけどな。

学園長室。

賢者「君が元大臣だね、よろしくー!」

元大臣「oh!貴女が賢者様ですか!よろしくお願いしマス!」

賢者「貴重な戦力として期待してるよ」

学園長「私が学園長です。よろしくお願いします」

賢者「学園長の手腕は素晴らしいって聞いてるよ、よろしくね」

賢者「情報統制もよろしくね」

学園長「はい。任せてください」

賢者「元大臣はこれからは情報兵と名乗ってね」

情報兵「OKデース!」

賢者「君に頼む事は……」

情報兵「……」

賢者「ーーこの学園に魔物が生徒として潜んでいる事を広めて欲しい」

情報兵「その情報は本当デスカ?」

賢者「うん。本当だよ」

賢者「奴等を牽制したい」

賢者「君ならうまくやれるよ」

情報兵「うまくやれなかったら血を見る事は確実デスネー」

情報兵「分かりました。うまくやりましょう」

賢者「頼むよ、大事な人の為に」

情報兵「……嫌な人デス」

先輩「代表」

賢者「なんだい?」

先輩「幼妹に関して聞きたい事が」

賢者「?」

先輩「資料が少な過ぎます」

賢者「あぁ……本当に特筆する事が無いんだよね」

賢者「途中までは幼馴染と同じだし」

先輩「本当に……それだけで大丈夫ですか?」

賢者「うん。僕が言うんだから間違いないよ」

学園長「そうですね、私と元大臣で更に調べても特筆するべき事は一切ありませんでした」

情報兵「ハーイ!そうでスネ!全くありませんデシタ!」

先輩「そう言うなら……私は従います」

賢者(確かに……先輩が疑問を抱くのも仕方がない)

賢者(だが……そんなことよりも僕は推し進めるべき事がある)

賢者「待っててね……弓使い」ボソッ

翌日、学園長室

学園長「……」

賢者「どうしたの?僕を呼び出しちゃって」

学園長「これは……どう言う事だ?」パサッ

賢者「怒ってるね、仕方ないか」

学園長「……これは許される事では無い」

賢者「そうだね、僕もそう思うよ」

学園長「何故だ」

賢者「彼女達は必ず必要なんだ、千年来の計画に」

学園長「貴様……!」スッ
先輩「やめろ、職務に戻れ」ガシッ

賢者「ごめんね……理想の実現の為だよ」

学園長「信じるぞ……その言葉」

賢者「うん。全てが終わったら終わらせるよ」

賢者「それに、君の母国と違って失敗すらしていない」

賢者「ははっ……愚かだね、本当」

学園長「……」

学園長「実践に投下されるのは何時ですか?」

賢者「次の魔物との会談がの後」

賢者「戦争が起きる」

賢者「その開戦から最後の戦争までだよ」

学園長「どちらが魔物かも分かりませんね……これでは」

賢者「良く言われるよ」

教室

「ねえねえ……知ってる?」

「何々?」

「私達……生徒の中に魔物が居る話」

「ええ!?本当ー?」

「怖いねー」

少年「物騒な話が広まっているな」

「ねぇ……あの人……」

「生徒会長様よ……」

「麗しい……」

???「全くだな」

少年「ん?えっと……」

生徒会長「私は生徒会長だ、よろしく勇者」

少年「……」

真っ黒な長髪、銀色の瞳の少女、そして、制服の上からでも分かる綺麗で細い体型をした長身の少女……とても綺麗で、キリッとした顔をしている。

こっちの校舎でもその美貌のおかげで有名人だ。

生徒会長「私は隣の校舎だけど少し用があって来たんだ」

少年「って事は……政治家が多い」

生徒会長「そうだ、俗に言うエリートコースって奴だな」

生徒会長「これから会う機会も増えるだろう」

少年「うん、隣の校舎に遊びに行くよ」

生徒会長「ははっ……嬉しいな」

少年「生徒会長は政治家?」

生徒会長「そうだな、私は政治家を専攻しているよ」

少年「そっか」

生徒会長「そろそろ、行かないと……ではまた」スタスタ

生徒会長は綺麗な髪をたなびかせながらその場を去った。

今日の分は終わりです

少年「そろそろ昼休みも終わりか」

友「ウイースッ」

少年「はぁ!?」ガタッ

友「おいおい、びっくりしちゃって。どうした?」

少年「どうしたも何も……お前、居たっけ?」

友「ああ、今日までサボってたからな」

少年「サボったって……お前」

友「俺ってさ、エリートって奴なんだよな」

少年「ぬかせよ、何やっても普通だっただろ」

友「いやーそれが本当なんだな、エアドライバーなんか目を瞑っても操れるぜ」

友「校舎もあっち」スッ

生徒会長と同じ校舎……正直に言うと何をやっても俺と同じ平均だった友がこの学園の生徒……更にはエリートが多い校舎だとは想像もしていなかった。

友「お前も勇者だもんな、まっ……また会おうぜ」スタッ

少年「友……凄いな」

友「お前が言うなよ、バーカ」ヒラヒラ

少年「そうか…….」

友も同じ学校か……くされ縁はまだまだ続きそうだな。

女「ねえねえ!友君も同じだったよ!しかもあっちの校舎!」ガララッ

幼馴染「凄いですよ!凄いですよ!」タタッ

幼妹「お姉ちゃん待ってよー」タタッ

少年「あはは……分かってるよ」クスクス

賢者「皆元気だねぇ、僕は疲れちゃったよ」

少年「あ、賢者」

賢者「あっちの校舎は家が有名な人が集まるけど、友君はエアドライバーの操縦だけでエリートの方に行ったんだよ」

賢者「少年と友達だったなら話が早いよね」

賢者「あっちの校舎とこっちの校舎に差は無いけどね……」ボソッ

少年「友にも天職があったんだな……」

女「本当に意外だよねー」

ザワザワ

幼馴染「廊下が騒がしいですね」チラッ

少年「見に行ってみるか」

廊下

???「なんや、喧嘩売っとるんか?」

???「下品な発言……」

???「なんやと!?」キッ

???「近づかないで欲しい」

少年「なんだこれ……」

割れた窓ガラスの破片が廊下中に散らばっている。

幼馴染「凄いことになってますねー」

女「あわわ……」

魔導使い「なんなのよあいつら……」

ピンクの髪の関西弁を使う目付きが鋭い女と白色の髪をした人を見下した目をしている背の小さな女。

その二人が争っていた。

???「そもそも貴女が私のパンをつまみ食いしたのが原因」

???「一口ぐらいええやろ!それくらいで窓ガラス割るなや!私は先輩やぞ!」

賢者「はいはい!」パンパンッ

賢者「喧嘩両成敗!」

賢者「窓ガラスぐらい後で直すから喧嘩はやめようね、重火器兵と関西弁」

関西弁「賢者は窓ガラス割られて腹立たんの!?」

重火器兵「パンの恨みは果てしない……」

関西弁「けっ!もうええわ!」

関西弁「教室帰る」ドンドン

不機嫌そうに大きな足音を出して帰って行った……

重火器兵「下品……」

賢者「こらこら」ポンポンッ

少年「あいつは確か……」

同じクラスの重火器兵だったな……常に一人で何を考えてるかすら分からない奴だ。

魔導使い「物騒ね……全く」

少年「魔導使い」

魔導使い「教室に戻ろうとした途端これよ?教育がなってないわね」ハァ

重火器兵「ごめんなさい……」

魔導使い「べ、別に良いわよ!」

重火器兵「関西弁が悪い……」

女「……」

幼馴染「……」

魔導使い「犬猿の仲って奴ね」ボソッ

賢者「彼女も凄い優秀だよ!」

賢者「全てにおいて精密なんだ!」

少年「関西弁は?」

賢者「関西弁も凄いよ、この学園の二年で戦闘技術の首席だもん」

少年「本当に凄いんだな」

賢者「特にね、暗殺が得意なんだ!」ニコニコ

少年「おいおい……」

賢者(それよりも凄いのは狂った時なんだけどね……)

魔導使い「あんたが作った学園って本当……色々な人がいるわね」

賢者「誰でも歓迎だよ!」

少年「俺……やっていけるかな」ブルッ

幼妹「貴様なら大丈夫」

幼馴染「幼妹の言う通りですよ!」

幼妹の奴……たまに色々安定しないんだよなぁ。

今日の分は終わりです

質問はいつでもどうぞ

東京 首都の中心 高層ビル 最上階 会議室

秘書「ただいまより、人と魔物の首脳会議を始めます」

パチパチ

賢者「よろしくー」

闇の衣「よろしく」

神獣「この会議意味あるのか?時間の無駄だろ」

神獣「なんならここで……!」

先輩「口を慎め」

神獣「へぇ……」

ピシッピシピシ

賢者「もう……喧嘩はやめてよ」ハァ

賢者「今回は話し合いに来てるんだよ?」

賢者「ね?」

神獣「喰えねー野郎だ」ケッ

闇の衣「」

訂正

東京 首都の中心 高層ビル 最上階 会議室

秘書「ただいまより、人と魔物の首脳会議を始めます」

パチパチ

賢者「よろしくー」

闇の衣「よろしく」

神獣「この会議意味あるのか?時間の無駄だろ」

神獣「なんならここで……!」

先輩「口を慎め」

神獣「へぇ……」

ピシッピシピシ

賢者「もう……喧嘩はやめてよ」ハァ

賢者「今回は話し合いに来てるんだよ?」

賢者「ね?」

神獣「喰えねー野郎だ」ケッ

闇の衣「落ち着け、神獣」

闇の衣「世界政府代表……こちらとしても条件を譲るつもりはございません」

賢者「そうだね……君達に僕達人間が管理されるぐらいなら」

賢者「ーー全てを壊し尽くしてあげる」

賢者「人一人残さないよ」

闇の衣「……」

闇の衣「はぁ……これで最後の会議ですが……一切話が進展しませんね」

賢者「君達が条件を飲んでくれたら嬉しいなぁ」

闇の衣「……」ピキッ

神獣「お、おい……落ち着けよ」

闇の衣「同志の半分を貴様達の実験台にし、与えられた生活スペースで与えられた仕事とくだらない生活……」

闇の衣「奴隷となれと言うのか?」

賢者「まるで自分達が被害者みたいな口振りだね。過去では人に寄生していたズル賢い細菌もどきの癖に」

闇の衣「っっ!!」ギリギリ

神獣「おいあんた……言っていい事と悪い事が……!」

賢者「先に沈黙を破ったのは君達……でしょ?」

賢者「責任くらい取りなよ」

闇の衣「……」

賢者「隅で細々と生きながらえる事も出来たのに、人を利用して力を蓄えていたんだ」

賢者「最初から血を見るつもりだよね?」

賢者「外交でも十分君達の利益になるようなこともしたよ」

闇の衣「その件に関しては感謝しています」

秘書「魔物側から人間の利益になる事は一切されていません。合理的ではありません」

先輩「姑息な事はやめていただきたい」

神獣「過去にお前等がやって来た事……俺達は忘れねーぞ」

賢者「最初に手を出して来たのは君達らしいじゃないか。それに、前回の魔王がそのまま侵攻を続けていたら人間はほろびていたとか」

闇の衣「あの方が情に流されなかったら……な」

甲冑「過去の指導者の事は忘れろ、終わった話だ」

神獣「新入り」

甲冑「現在の指導者……“魔王様”こそ私達を導いてくれる」

賢者「へぇ……面白い」

賢者「そんな事があったんだね、知らなかったよ」

闇の衣「狸が……」

賢者「一人の下劣な人間にいいように利用されてた時期もあったね」

賢者「あれは皆下っ端だったのかな?」

闇の衣「……」

賢者「ノーコメントか、そうだよね」

賢者「戦争が出来るぐらいの食料も集まったみたいだし」

甲冑「……」

秘書「両者の要求を整理しましょう」

秘書「魔物側はアメリカ、ドイツ、イギリス、中国、ロシア、日本、フランス、南米各国の植民地化を要求」

秘書「人間側は魔物の半分を実験サンプルとしての利用、残った魔物は与えられたスペースで人間の指示に従い与えられた仕事をこなす」

賢者「簡単に言えば奴隷だね」

闇の衣「……南米だけでも良い」

賢者「却下」

闇の衣「何故だ?」

賢者「そもそも君達に領土を与える事自体があり得ない、からね」

闇の衣「最初からそのつもりだったのか……」

賢者「当然」

米「そろそろ……答えも出て来ましたね」

露「外交も断絶だな」

闇の衣「……“魔王様”から命令が下された」

ザザザッジジージッザザザッ

先輩「!」

「聞こえるか?」

賢者「!」

賢者「……うん」

賢者(とても強い魔翌力で声を変えているね、誰かも分からない)

賢者「姿は見せてくれないのかな?」

「近い内に分かるさ」

「どうやら交渉は決裂したようだな」

賢者「うん」

「元より、血を見る以外無いとでも言いたげだな」

賢者「そうだね、貴女も最初から分かっていたと思うけど」

日「……」

中「既に許さない事をした」

情報兵(oh……!各国の首脳が勢揃いデース!)

賢者「互いに小規模な争いを起こせないのは辛いね」

賢者「僕と魔王も陰湿な事が大嫌いだからね」

神獣「……」ゾクッ

「お互いの末端が沢山消える羽目になる」

賢者「ふふっ……分かってるね」

「大規模な戦争だ」

賢者「うん」

「取り返しはつかない」

賢者「うん」

「人間と魔物が次出会うのは、戦場だ」

賢者「各国の土地でも返してもらいたい所が沢山あるんだけどなぁ……」

「それが無ければ争えない、勝って取り返せ」

賢者「人間を侮らない方がいいよ?」

「窮鼠猫を噛む……覚えておけ」

一時間後

秘書「……」

秘書「あの場で魔物を皆殺しにするかと思っていました」

賢者「物騒だなぁ……あくまでも会議の場だったんだから、そんな事はしないよ」

先輩「政治が絡んだ議論も大して無かったですね」

賢者「散々議論したからね」

先輩「……」

秘書「元から和解等は考えていませんでしたね」

賢者「うん。根絶やしだよ」

賢者「もう止まらない」

賢者「滅びるまで、ね」

先輩「戦争……ですか」

秘書「あまり実感が無いですね」

賢者「そうだね~」

賢者「それでも戦わないとね」

秘書「鍵を握るのは……」

先輩「勇者……ですか」

賢者「少年はきっと、正しい方向に導いてくれるよ」ニコッ

先輩「素晴らしい信頼関係ですね」

今日の分は終わりです

翌日、学園。

賢者「休戦規定が解除されます」

少年「……!」

体育館に集められた全校舎の生徒達。

別の県、別の国の学園系列、学園関係者、生徒達もこうやって体育館に集められて戦争に関する説明をした映像が流されるらしい。

賢者「先日。魔物と人間の間で最後の首脳会議が行われました」

賢者「結果。交渉は決裂」

賢者「戦況は互角」

賢者「生徒達に与えられたエアドライバーを含めても戦況は互角です」

少年「……」

賢者の目はとてと真剣だった。

普段からは信じられないような凛とした眼差しで原稿を読み上げる。普段の飄々とした賢者が俺の知っている賢者なのか、今の世界政府代表としての賢者が本当の賢者なのかは分からない。

賢者「隣の席の友達が翌日から居なくなる……当然あり得る事です」

賢者「ですが……生徒達は戦場においては協力し、助け合わなければなりません」

賢者「これから一人一人の特性に合ったエアドライバーを適性検査により配布します」

賢者「選ばれた生徒以外が触ったら……爆発します」

ザワザワ

賢者「気をつけてね~☆」

プツンッ

少年「……」

前言撤回だ。

教室

ガヤガヤ

少年「……本当に戦争が始まるんだってな」

魔導使い「そうね……」

幼馴染「私……争い事なんかしたく無いです」

幼妹「私もあんまり気乗りしないよ」

重火器兵「……でも戦わないといけない」

少年「!」

こいつ……いつの間に?

魔導使い(余りにも気配が無いから気付かなかったわ……)

重火器兵「それが……与えられた仕事」

重火器「皆そう言う」

委員長「ほらっ皆集まれ。適性検査だ」

委員長「男女各自に体育着に着替えて指定された個室に行け」

少年「はーい」

ついに……適性検査の時間か。

幼馴染「ドキドキします~」

学園のB10F

この為だけに各国の偉い科学者が集まって、生徒のエアドライバー適性を調べるらしい。

今回の適性検査は生徒に見合う性能、特性を調べてからその人に合ったエアドライバーを一つ一つ開発するらしい。

少年「てか……どうして俺だ地下10階なんだ」

長い廊下。

黒塗りの空間に赤く光る筋が集まってーー

少年「っ!」

漆黒の剣、そして……赤い筋が枝分かれに光る黒塗りのエアドライバーが立てかけられていた。

少年「はっ……!」

少年「……?」

気付いたら黒とは逆の白の空間になっていた。

赤い筋もエアドライバーも無かった。

少年「気のせい……か?」

賢者「やぁ少年」

賢者「さぁさぁ!こっちこっち!」

少年「あれ?」

賢者「どうしたの?」

少年「背……小さくなったな」

容姿も体型も随分と幼くなった。

それに白衣と眼鏡、うん。中々可愛らしい所もあるではないか、

賢者「ささっ、早く検査しよう」

賢者「はい脱いでー」

少年「……上だけ?」

賢者「うん!」

パサッ

少年「ほらっ」

賢者「中々いい体だね」

賢者「よーっし……」ペタペタ

賢者(……)

賢者(やはりあの頃の力が戻りつつあるね、特に魔翌力に関しては驚くべき早さで取り戻しつつある)

賢者(このままでは少年も……になってしまう)

賢者(枷が必要だね)

少年「……」

結構緊張してしまう。

中身は一応綺麗な女性だからな……いくら今小さくなってるとは言え。

賢者「決まったよ!!」

少年「え?もう?」

賢者「うん!」

少年「でも……再旧式……だろ?」

賢者「もっちろん!」

賢者「それでも少年にピッタリのエアドライバーがあるんだよー」ゴソゴソ

少年「ちょっと……」

ゴソゴソされてますよ、俺にピッタリのエアドライバーさん。

賢者「あった!」スッ

少年「うわっ!」ドテッ

少年「剣だろそれ!」

賢者「昔、君が沢山使ってた剣だよー」

賢者「ほらっ魔翌力……込めてよ」

少年「……」キイイイィィン

外郭を身にまとうーー

少年「随分と普通だな」

練習用と同じ風貌、練習用程茶色く無いだけで後は何も変わらないと思う。

一旦ここまでです

賢者「まぁ……薄々気付いてるよね?」

少年「……うん」

賢者「今の所君に適応するエアドライバーは全部駄目な奴……」

賢者「唯一これがまだ“使える”エアドライバーだって」

少年「……はい」

賢者「このエアドライバーは空を飛べます」

賢者「他のエアドライバーと同様、オペレーションエアドライバーも使えますの」

賢者「フレームが致命傷を防いでくれます」

賢者「以上」

少年「おい」

賢者「え?」

少年「武器は?」

賢者「さっき渡した剣があるよ?」

少年「俺……もしかして一番弱い?」

賢者「うん」

少年「ぐふっ……」ガックシ

それ、中々ショックだぞ賢者。

賢者「もうひとつのエアドライバーはまだ時間がかかるんだ」

少年「もうひとつ?」

賢者「ふふっ……待っててね」

少年「どうして俺が勇者なんかに……」

賢者「少年、それはね」

少年「?」

賢者「君にしか出来ない事があるからだよ」

少年「俺にしか出来ない事?」

賢者「うん」

少年「そんな事があるのか?」

少年「正直……俺は元々普通の学生だし、昔の英雄の1人とか言われても全く実感が無いんだ」

賢者「そうだね、でもね」

賢者「少年は誰よりも綺麗な心の持ち主だって分かったからね」

賢者「だから僕は少年を選んだ」

少年「……」

賢者「期待に……答えてくれるかな?」ニコッ

少年「期待か……」

今までされた事も無かった。

いきなり勇者に選ばれて、魔物と戦え。

でも、それは他の生徒にもあてはまる。

才能のある人間なら尚更。

賢者「世界政府としても君を最大限にバックアップするよ」

賢者「メディアも出来るだけ遠ざけてみせる。君の感覚だとついさっきまでは普通の学生だった」

賢者「ある日突然勇者に指名されて戸惑うのは無理もないよ」

賢者「でもねーーきっと少年も理解してくれると僕は信じているんだ」

少年「分かった……」

賢者「録な説明もしなくて……ごめんね。いつか必ず説明するから」

少年「どうして教えてくれないのか……」

正直疑問だらけだ、どうして俺が勇者なのか生まれ変わりなのか……

賢者「精神衛生上とても良くないからだよ」

少年「多分大丈夫だと思うけど……」

賢者「少年はね、でも……まだ今の少年はとても弱い」

少年「……」

少年「いつか、絶対だぞ」

賢者「うん。約束する」

適性検査を終えた俺は教室に戻った。

既に放課後を迎えた学園は生徒各々が勉強の自習やエアドライバーの自習練習を数百人は居るトレーナーに各自が付き合ってもらう場になる。

少年「あっ……魔導使い」

魔導使い「……」ムスッ

イライラされていらっしゃる。

エアドライバーの適性検査だけなのにどうしたのだろう。

少年「どうした?」

魔導使い「べっつにー」ムスーッ

少年「?」

少年「ところでこの手に持ってる杖は?」

魔導使い「少し……黙った方がいいわよ」ニコッ

少年「うおっ……」ゾクッ

怖い怖い、俺は何もしていないのになぁ。

魔導使い「どうして私だけ……」ブツブツ

少年「怖い怖い、あの様子だと自主練に付き合ってくれそうにもないな」

委員長「むっ?少年か」

少年「あ、委員長」

委員長「練習に付き合ってくれないか?新しいエアドライバーを試したいんだ」

緑髪のロング、端正な顔立ち、高身長。

委員長「……」

ーーー

「輪廻を超える呪いを自分の死で止める」

「その為には三人必要」

「いいだろう、嫌われ者は私が演じる」

ーーー

少年「俺も一緒に練習する人を待ってたんだ」

少年「何処でする?」

委員長「恐らく武道場が一番良いと思う」

少年「よし、そこにするか」

武道場

委員長「これが私のエアドライバーだ」

キィィィン

少年「委員長も魔導とか使える人間なのか」

委員長「まぁそれなりに、だ」

赤い外郭、周囲に浮かぶ近代中世古代を問わぬ武具、そして……頭上に浮かぶブラックホールの様な渦が特徴的だ。

少年「かっこいい……」キラキラ

委員長「男の子って奴だな、私にはそこまで理解できない」

少年「その頭の上の渦は何?」

委員長「私にも分からない。世界政府の代表にも分からないらしい」

少年「?」

委員長「然るべき時が来たら使えると科学者は言っていた」

少年「……」

少年「変なの」

委員長「恐らく……光線射出の類だと思う」

少年「へぇ……それは楽しみだ」

委員長「さぁ……鍛錬をしよう」

少年「上等……!」

結果ーー

ボロボロにやられました。

少年「手加減して欲しいな……」

委員長「バカを言え、それでは少年の為にならない」

少年「可愛い顔をして厳しい奴だなー」

委員長「……可愛い?」

少年「?」

委員長「正気か?」

少年「頭を何度か強打したけど正気だよ」

委員長「……」

委員長「こう……なんだ、頭を撫でたくなるな」

少年「??」

夜 少年の家

魔導使い「やってるわね」

母「やってるねー」

ガキィン

キィン

ドサッ

少年「ぐっ……」

父「踏み込みが甘い」

少年「よしっ」ググッ

父「この剣……ほぅ」

父「今少年が持っている剣……私に預けてくれ」

少年「えっ?これ?」

少年「これは勇者の剣で一応……大事な……」
父「少年にはまだ早い」

少年「はーい」スッ

まぁ……エアドライバーに使う剣では無いし、預けてても大丈夫だろう。

父「よし、行くぞ」チャキ

少年「それ俺の剣!!」

母「お父さーん?」ジロッ

父「!」ビクッ

母「人のもの奪うのは最低だよ?」

父「う、うん。そうだな、お母さんが預かっておいてくれ」

少年「おおー」

魔導使い「強い……」ボソッ

ーーー

少年の部屋

少年「今日もシゴかれたなー」グテー

少年「明日は休みか……そうか」

少年「久しぶりに羽でも伸ばすか」

少年「友の奴でも誘ってやるとしよう」

少年「おやすみー」

翌日 新宿駅

少年「やっべ……待ち合わせに遅れる」タタッ

朝の新宿駅の人混みを掻い潜って走るのは中々骨が折れる。

油断してるとーー

ドンッ

少年「わたたっ……」ドサッ

サラリーマン「おお……大丈夫かい?」

少年「すいません」

サラリーマン「大丈夫だよ」

手を挙げて謝罪の意を示し、俺は友の元へ急いだ。

タタッ

サラリーマン「……」

サラリーマン「まるで魔王だな……禍々しい」

コッ

OL「そうかしら?私には眩しすぎたけど」

サラリーマン「どう思う?」

OL「運命って奴が好きそうな感じね」

サラリーマン「運命か……本当に存在するのか?」

OL「ええ、この世には必ず、ね」

サラリーマン「……」

OL「次は何処に転勤?」

サラリーマン「大湊」

OL「そう……頑張ってね」

サラリーマン「程々にな」

デパートの前

友「おせーよ」

少年「悪い悪い、途中で人とぶつかっちゃってさ」

友「嘘つけよ」ゲシッ

少年「バレたか」

友「おい」

ーーー

ファミレス

少年「お前どうやってあっちの校舎に入ったの?」

友「世界政府の代表に選ばれた」

友「知ってるか?俺達の校舎だとお前の居る校舎は神格化されてるんだぜ?」

少年「え?なんで?」

友「勇者様が居るからな」ビシッ

少年「え?」

友「校舎も隣、ただ単に俺達の校舎とお前達の校舎を競わせる為だろう」

少年「あぁ……なるほど」

友「何人かは優秀な人間をこっちに混ぜて、親のコネで入ったりしてるエリート官僚コースの奴等を刺激してるのさ」

友「お互いにお互いを尊敬してる環境はいいと思うよ」

少年「へぇ……本当にそれだけなのか?」

友「……噂が一つ」

友の声のトーンと大きさが著しく落ちる。

友「実は俺達の校舎には魔物が生徒に身を変えた者が居る」

友「そして、俺達の校舎の大半の生徒が魔物である」

友「お前達の校舎にも俺達の校舎程では無いにせよ魔物が潜んでいる」

友「ってな」

少年「それ……本当ならかなり不味い事だろ」

友「ある人がその噂を広めたおかげで、魔物への牽制になっているらしい」

少年「お前……どうしてそんな話まで?」

友「それも噂だよ」

少年「……」

友「適性検査はあぶり出す意味合いもあったそうだが、意味を成さなかったらしい」

少年「どうしてだ……」

友「元は人も魔物も同じ……だからな」ボソッ

少年「危なくなったら直ぐに教えてくれよ」

友「おうっ……頼らせてもらうぜ?」

少年「なぁ……このファミレス」

友「分かってる」

少年「こんなに殺気立ってたか?」

友「ーー来るぞ」

今日の分は終わりです

質問あったらお願いします

コンクリートの巨大な破片が襲って来た。

少年「!」サッ

友「っっ!」サッ

間一髪で回避、友はまだ余裕を持っている。

パリーンガシャーン

少年「ひぃふぅみぃ……5」

友「5人か……」

少年「あんまり戦いとか慣れないんだよなぁ……」

友「俺も慣れねーわ」

友「でもやるしかねーよな」

醜い翼が生えたおぞましい程に筋骨隆々の化物が五体、ファミレスの出口を塞ぐように立っていた。

少年「店員は……?」

友「店員が、魔物だったんだろ」

少年「だよなぁ……糞っ」

友「さーて……」

少年「エアドライバー使うか」

友「だな」

少年「……」

キィィィン

友「へぇ……魔力で……よしっ俺も」

シュイィィィン

少年「……」

友が身に纏うエアドライバーは灰色、最新鋭と一目で分かる外観をしていた。

少年「性能……どう?」

友「周りと比べても結構いい方だな」

少年「へぇ……」

友「ま、まぁ……元気出せよ。きっといつかお前にも良い事が」ププッ

どう見ても旧式、いや、最旧式の俺のエアドライバーを見て友は笑を堪えている。

無理もないけど腹が立つ。

少年「なんとこのエアドライバーは空を飛べます」

友「うん」

少年「オペレーションエアドライバーも使えます」

友「うん」


少年「以上」

友「ぶふぉ!」ブーッ

少年「死んでくれ」

魔物「ギギギ」カチャ

少年「冗談だろ?」ダラダラ

友「あっれー?おかしーなー魔物になると知能が落ちる筈なのになー」ダラダラ

俺と友の汗が止まらないのも無理は無い。

少年「あれ……ニュースで話題になった奴だよな?」

友「結構批判受けた奴だよな?」

魔物達が俺と友に向けているのは連射式の大きな銃、俗に言うマシンガンと言う奴だ。

ただのマシンガンなら良いものの、そのマシンガンは非人道的な事で世間を騒がせた物だ。

当然、現在では生産禁止となっている。

少年「どうする?」

友「一秒間に5000発同時射出はもう珍しくないけど……」

少年「あの銃の弾に掠った瞬間頭パーだ」

友「そうだな、あれ絶対魔翌力で出来てるだろ」

魔物「ギギギ」カチャ

ーー銃弾が襲う。

一旦ここまでです

ダダダダダダダダダッッッ

パリィンッガシャーン

少年「うわっ!」

友「おおお!」

ファミレスの中で飛び交う弾丸を身を捻り、ブーストを使って避ける。

少年「どうにかならないのか!?」

友「エアドライバーを使っている時は身体能力が上がるだろ!」

少年「へぇ……」

感覚が研ぎ澄まされる。

少年「よしっ」

魔物「ギギギ」カチャ

ダダダダダダダダダッッッ

少年「!」

パラパラパラ

少年「本当に斬り落とす事が出来るとは……」

無我夢中だったと思う。

俺を襲う弾丸を剣で斬り落とす。

処理しきれない弾は避けたが……これは凄い、自分の身体では無いみたいだ。

友「へぇ……こりゃ凄え」

友は銃弾を全て止めていた。

少年「ーーえ?」

銃弾は宙で浮いたまま停止をしている。

少年「これ、お前の仕業だよな?」

友「おう、勿論だ」

少年「どうやってるんだ?」

友「内緒だ」

少年「それぐらい教えろよ」

友「へへっ」

友「ーーこいつらを倒してからな」

友(反転で……いいか)

友「行くぜ」

不思議な手品を見せられているかのように、友の眼前で停止した無数の銃弾は回転をする。

そしてーー魔物達へ向いた。

パァンッパァンッパァンッパァンッダダダダダチュンチュンチュンチュン

跳弾などお構いなしと言わんばかりに銃弾は魔物達を襲う。

友「……よし」

少年「最初からそれやれよ……」

友「まだこの力には慣れていないんだよ」

少年「凄いな……これ」

友「異能って言うらしい。俺のはサイコキネシス……まぁそれなりの力だ」

友が言う事はアテにならない、きっとかなりの力だろう。

少年「お前だけずるい……」

友「バーカ。弱いから異能があるんだよ」

少年「異能無しでもお前の方が強いだろ」

友「それはどうかな?」

少年「……?」

ウィーン

その場を離れようとした矢先に重火器兵が見るも無残な店内へやって来た。

重火器兵「……」

友「悪いな、もう終わったよ」

重火器兵「最近に出来たフードチェーン店……魔物の存在が報告されたと思ったら貴方に先を越された」

友「へへっ」

少年「利用しやがったな……!」

友「えーなんのことー?」

重火器「このフードチェーン自体が魔物の温床となっていると見て良い?」

友「だな……知能が高いし擬態も上手かった」

友「第三者の“支援者”がいると思われる」

衝撃的だった。

魔物に味方をする奴が居るって事だ。

友「一種の武器商人みたいな物かもな?」

重火器「恐らく人間。 調査は継続」

魔物「グルルッ」

魔物「ぐおおおおおお!」

友「しまっ……!」

少年「まだ生きてたのかよ……!」

重火器「……」スッ

重火器兵の懐から大量の重火器が引き出される。

重火器「……」

ダダダダダダダダダダダダダ

ーー沈黙。

重火器「掃討完了」



友「掃討完了って……」

重火器「そういうようになっている」

友「あーそっか」

少年「そういえば……二人は顔見知りなのか?」

重火器「うん」

友「そうだな、ちょっとした知り合いだ」

少年「ふーん」

重火器「少年、代表が呼んでいる」

重火器「至急、世界政府本部へ向かうように」

少年「本部って事は……」

重火器「場所は秘密。はい、私の転送魔導陣を使って」スッ

ペンダントの形。

少年「はいはい」

重火器「貴方の場合は魔力を込める」

少年「……」キィィィン

シュイン

少年「……」

少年「折角友と遊んで居た最中なのになぁ……」

賢者「やっほー」フリフリ

広い執務室、難しそうな本が沢山と置かれた本棚が並べられた白を基調とした部屋だ。

少年「相変わらず非現実的だなぁ……」

賢者「昔は魔導の方が普通だったんだよ?つまりはそう言う事さ」

姫「そう言う事さ」

少年「あ……姫」

賢者「今来て貰ったのは他でも無い。開戦の調印を姫と押してもらう為だよ」

少年「ああ……もう……」

賢者「すぐに戦争が始まるよ」

賢者「魔物側からの調印はもう終わっているから後は人間側の調印だね」

姫「世界各国の首脳の調印はもう終わっています」

少年「口調が……」

姫「私は時と場合により口調も柔軟に変えさせていただいております」

少年「そういう物なのか」

賢者「そういう物だよ、ほらっ」ピラッ

とても高級そうな紙にビッシリとサインが書かれていた。

賢者「後は少年と姫だけ……大丈夫かな?」

賢者「それに、僕も書いたよ」

姫「あまり気乗りはしませんね」

少年「仕方ない……のか?」

賢者「うん」

少年「どうして姫なんだ?」

姫「……」

賢者「どうしてって……彼女はこの世界の王女様だからねぇ……」

少年「え?」

賢者「うん」

少年「もしかして……王女様も選定してたのか?」

賢者「違うよ!」

賢者「家系で言うと……うん」

姫「戦士王……僧侶様系列ですね」

少年「って事は……女の親戚って事?」

姫「はい、そうなります」

少年「マジ……ですか」

賢者「少年の親戚でもあるのは忘れてるのかな?」ボソッ

姫「……」

少年「姫が女と親戚……」

少年「まったく似てないな」ウンッ

賢者「僕もそう思う」ウンッ

姫「……」クスッ

賢者「さっ……この資料によろしく!」

少年「……」カキカキ

姫「……」カキカキ

自分の名前を書いてから捺印。

ふと姫と目が合って――

姫「……」ニコッ

少年「……!」ドキッ

髪をかきあげながら記入をする姿に魅せられたのは言うまでも無かった。

賢者「こらっ」

姫「ふふっ……」クスクス

少年「ほらっ!書いたぞ!」ビシッ

焦りを隠せ無かった。

ここまで魅力的だったのかと。

賢者「うん。ありがとう」

賢者は資料を一目見ると机の上に置いた。

大事な資料をそんな扱いでいいのか?

ガチャ

ツカツカ

「失礼します」

賢者「お待たせ~」ニコニコ

秘書「それではこの書類を魔族側に届けに向かいます」

ミドルぐらいの長さをした金髪で、グラマラスな体をした女性だった。

賢者「無茶はしないでね」

秘書「……お任せください」

ガチャ

姫「初めてお会いする方でした」

少年「綺麗だったな」

姫「むっ」

賢者「……来月」

少年・姫「?」

賢者「来月」

賢者「5月14日に大湊で開戦するよ」

少年「……」ゴクリッ

固唾を呑んだ。

姫「争いは何も生みません……」

賢者「……」

賢者「君達にはやってもらう事が沢山あるよ」

姫「……“唄え”と?」

賢者「忌み地の巫女と……ね」

少年「よく分からないけど無理な事はさせるなよ」

姫「大丈夫ですよ」ニコッ

静岡 某所

秘書「……これが調印です」

秘書「確認を」

甲冑「……私が魔王様に渡そう」

甲冑は霧に隠れるように姿を消した。

闇の衣「任せた」

神獣「なぁ姉ちゃん……ここで食い殺してやっても良いんだぜ?」

3mの巨大な体躯。

牙のように鋭い瞳、人間離れだが人間と瓜二つであった。

神獣「ん~?」

秘書「戦闘は許可されていません。またの機会に」

神獣「関係ねぇよ!」ブォンッ

神獣の巨大な手が鋭く振り下ろされる。

ガシッ

闇の衣「やめろ」

手……なのだろうか?

黒い煙のような物が闇の衣を覆う布から溢れるように神獣の手を止めた。

秘書「……」

コォォォォ

神獣「ケッ……分かってるよ」

カツンッ

甲冑「確かに魔王様が受け取った」

神獣「とうとう……来たぜ」ヘヘッ

甲冑「5月14日だ」

闇の衣「あまり望まないが……」

甲冑「また……戦場で会おう」

秘書「はい」

コンコン

賢者「どうぞ」

秘書「届けました」

少年「……」

姫「……」ムムムッ

賢者「どうだった?」

秘書「甲冑の男が受け取りました」

賢者「――魔王は?」

秘書「……残念ながら」

賢者「そっか、仕方が無いよね」ウンウン

少年「??」キョトン

賢者「ねぇ、魔王は誰だと思う?」

少年「魔王……?」

少年「あの時言ってた……」

賢者「……」ジッ

少年「弓使い……って奴か?」

賢者「……」

秘書「……」

賢者「それはどうかな?」

少年「……」

賢者「僕にとっても皆にとってもそれは望まない事だと思うんだ」

賢者「特に少年にとっては……ね」

姫「……」

秘書「代表……アメリカ合衆国の総理大臣との会談が」

賢者「待って」

秘書「しかし……」

賢者「大丈夫。一言だけ」

賢者「少年、姫」

少年・姫「?」

賢者「これは僕の可愛いお願い」


「――弓使いを許してあげて欲しい」

新宿

少年「友と重火器は居ないか」

姫「遊んでたのにね、残念だね」

少年「口調戻ってるし」

姫「ふふっ……」

少年「……」

姫「!」ピコーン

姫「……もし良かったら」

姫「僕と遊ばないかな?」

少年「そっか……そうだな」

姫「……」ドキドキ

少年「遊ぶか」

姫「ふふっ……嬉しいよ」パァァ

少年「折角の休みだしな」


一旦ここまでになります

姫「見て見て!ゲームセンター!」

少年「ゲームセンターなんかどこにでもあるだろ」オイオイ

姫「誰もそう言った所には行かせてくれないんだ」

少年「ごめん」ポリポリ

姫「ううん、普通は僕みたいな女の子の方が少ないからね」

少年「なら、楽しみ方を教えてしんぜよう」キランッ

姫「え?」

ピポパッ

少年「あーもしもし~?」

少年「ん?早く来てくれ。新しく出来た友達だからさ」

少年「分かった。待ってる」

プツッ

少年「OKだ、楽しみにしてくれ」

姫「???」キョトン

少年「適当な所で時間潰すか」

広場

少年「あいつら遅いなー」

姫「誰を待っているのかな?」

少年「友達だよ」

姫「へ~」ジトー

少年「な……なんだよ」タジッ

姫「二人きりで遊ぼうとしたのに酷い事をしてくれるね」ムスッ

少年「皆で遊んだ方が楽しいだろ?」

怒っていらっしゃる。複数人で遊ぶのは苦手なのか?

姫「皆で……遊ぶ」

少年「そんなに遊んだ事は無いのか?」

姫の家は使用人が迎えに来たりと色々厳しそうではある。

姫「――良く二人で遊んでたよ」

姫「とっても可愛い女の子と」

少年「へぇ……仲が良いのか?」

姫「分からないよ」

少年「え?」

姫「でも、また会う約束が出来たんだ」

姫「少年はどう思うかな?その関係を偽りと思うかな?」

姫「少年の意見を聞かせて欲しい」ジッ

試されている気がした。

少年「さぁ……な」

姫「……」

少年「でもさ、一緒に居たって言う事には変わりないだろ?」

姫「うん」

少年「どれ程かは知らないけどさ、沢山遊んだのならきっとその時点で友達だと俺は思うけどな」

姫「遊ぶだけでは友達とは限らないかもよ?上辺だけかも」

少年「なら、実際に聞いてみれば良いさ」

少年「僕達は友達なの?って」

姫「へぇ……その考えは無かったよ」

姫は目を見開いて驚きを示していた。

俺としてはそこまで変な事を言ったつもりは無いけどな。

姫「少年は面白いね」クスクス

少年「?」キョトン

「あっ!居ましたよー!」

「少年ー!」

少年「おっ……来た来た」

幼馴染達が手を振って俺と姫の元へ向かって来た。

幼馴染「こんにちはー!私は幼馴染です!」

女「はじめまして、でしょ?」アハハ

女「私は女、よろしくね」

魔導使い「はじめまして、私は魔導使い」

姫「うん。はじめまして。僕の名前は姫」

姫「よろしくね」ニコッ

魔導使い(……初めて見る魔力ね)

魔導使い「で、あんたはどうして私達を呼んだのよ」ジッ

少年「皆で遊ぼうと思ってさ」

女「少年ってそういう所あるよね~」

幼馴染「早く遊びましょう!」キャッキャッ

姫「うん!そうだね」ニコニコ

少年「ゲーセンでも行くか」

女「格ゲーやろっ!」

ゲームセンター

少年「……」カチャカチャ

女「……」カチャカチャ

バキッゴッゴッゴッ

KO!!!

少年「……」カチャカチャ

女「はぁ……」カチャカチャ

ゴッゴッゴッドシュドシュ

KO!!!

少年「だぁぁぁ!また負けた!」

女「少年、弱過ぎ」

少年「女さえ居なければ俺が一番強い筈……」ブツブツ

魔導使い「視野狭っ……」ハァ

姫「……」キョドキョド

魔導使い「あー!UFOキャッチャーやりましょう!」

姫「うっ……うん!」

姫「……」

ウィーンウィーン

幼馴染「はわわ……もうやめてくださいよぉ…….」オロオロ

姫「……」チャリーンチャリーン

魔導使い「ひ、姫!?何やってるのよ!?」

少年「ん?どうした……はぁ!?」

女「わー……初めて見たよ」

許すなキャッチャーの台に積み重ねられた五百円の束。

きっとその気になればこのゲームセンターを五百円玉で埋め尽くす事が出来るだろう。

姫「……」

ウィーンウィーン

幼馴染「失敗が積み重なる内に……姫ちゃんが本気に……」オロオロ

少年「即刻止めろぉ!」

魔導使い「ほら、貸してみなさい」

姫「うん」スッ

魔導使い「……」

ウィーンウィーン

スカッ

少年「あ、ミスった」

魔導使い「……」チャリーンチャリーン

少年「それは人の金だぁ!」

女「駄目だよ魔導使い!」

幼馴染「それは駄目ですよ!魔導使い!」

姫「……」クスッ

姫「あははははっ!」ケラケラ

姫「おもしろいよ、最高だよ。うん」アハハッ

魔導使い「?」

プリクラ

少年「……」

友「いえーい!」

重火器「……」

笑顔でピースをする友と無愛想な重火器兵。

少年「……帰ったんじゃないの?」

友「いや、少年が遅いから先に行ってたんだよ」

少年「連絡しろよ!」

友「ごめんごめん」アハハッ

女「はいはい!皆!もう撮るよ!」

幼馴染「はーい!」

魔導使い「なにこれ……?」

姫「……」キョロキョロ

少年「姫、笑ってピースだ」

姫「……」ニコッ

カシャッ

今日はここまで

あとは急いでキャラ紹介パートを終えたら戦争パートです

乙なんだよ
前々作から一気読みでやっと追いついた

>>219
おお、それはとても嬉しいです

翌日 学園 教室 放課後

少年「はぁ……今日の学校も疲れた」

授業という名の訓練を終えた俺は疲れ果てていた。

魔導使い「私は体育教師に教わって来るけど、あんたはどうするの?」

少年「少し休むから先に行っててくれ」

魔導使い「分かったわ」スタスタ

少年「ふぃ~」グテー

???「君が勇者か」

少年「ん?そうだけど」

???「入学式以来だな」

少年「え?」

「私は突撃兵、国籍はドイツだ」

少年「……?」

銀髪……銀髪……あ。

少年「国に投資されてるとかなんとか言われてた人か」

突撃兵「そこまで聞かれていたとはな、盗み聞きは良くない」

少年「ははっ……ごめんごめん」

少年「で、俺に何の用?」

突撃兵「君を守りに来た」キィィィン

少年「え?」

突撃兵が銀と黄色のカラーリングをされたエアドライバーを身に付けた瞬間の事だった。

ズドォォォォォォン

教室の扉が吹き飛んだ。

少年「はぁ!?」ビクッ

キィィィン

自分も慌ててエアドライバーを装着。

突撃兵「君では奴に敵わないから下がっていてくれ」

少年「……」ショボン

少年「しかし……」

現れたのは黒髪の少女。

目が血走っていた。

「あの時は代表に邪魔をされたが……今回は貴様か」

突撃兵「貴様では私の相手にはならない、早く武器を収めろ」

「無能な穏便派の手下め」

突撃兵「貴様達は何と言われているか知っているか?」

「革新派」

突撃兵「過激派だよ」

過激派「――殺す」

突撃兵「来い」

飛び交う弾と光線。

シュドーン

チュドーン

ズズッ

それ以上にこの教室の頑丈さには驚かさられる。

狂室とでも呼ぶべきだろうか。

過激派「っ!」

突撃兵「……」

動きが洗練されている。

だが、より鋭いのは突撃兵の方だった。

一旦ここまでです

パシュンパシュンパシュン

過激派?のエアドライバーの背から何十発もの何かが射出された。

突撃兵は警戒をしてか、過激派から距離を取る。

突撃兵「!」

少年「なんだあれ……?」

過激派は射出したその瞬間に動く事をやめた。

突撃兵「……」

ジリジリ

突撃兵「過激派は相変わらず奇妙な事をする」

過激派「来ないのなら……私から行こう」ダッ

過激派が先に動く。

突撃兵は手に持っている剣を構え、過激派を迎え撃つ。

過激派はナイフで突撃兵の喉を狙う。

ズバァァァァン

居合斬り。

その型は見た事があるものだった。

少年「お父さん……!?」

過激派「……」ニィィッ

ドォォォンッ

少年「!?」

突撃兵は爆発により吹き飛んだ。

どういうことだ?突撃兵は過激派を斬った筈なのに、過激派自体が先程射出された物と入れ替わっていた。

突撃兵「……」

『腹部パーツに致命的なダメージが確認されました』

『これから腹部へのダメージを受けると危険です』

突撃兵「浮遊機雷か……」

過激派「貴様の負けだ。諦めろ」

突撃兵「人と兵器の高速転送……しかも残像を残す物まで開発をしているとはな」

過激派「まだ他にもあるが……それは貴様も同じだろう?」

突撃兵「……」

過激派「沈黙……か」

突撃兵「ならば勇者を殺すまで」キィィィン

少年「おいおい……マジかよ」

過激派の右目に光りが集約される。

突撃兵「似た物どうしだな、本当に」フフッ

パシュンッ

魔導陣らしきものが描かれた過激派の右目から光線が今にも放たれその瞬間。

俺の目の前にも魔導陣が出現していた。

ひとつの違いは過激派の目に描かれたものよりはずっと巨大で、俺の身体が全て隠される程だった。

過激派「っ!」

プシュンンッ

光線は無力にも俺の目の前に現れた魔導陣に掻き消された。

突撃兵「開発者は実質剛健……それを美学にしている」

突撃兵「まだ……堅固な護りしか完成をしていないがな」

無数の魔導陣が突撃兵の前へと現れる。

突撃兵「さぁ……滾るような殺し合いをしよう。過激派」

硬い。

とにかく硬かった。

突撃兵は何度も何度も過激派に斬りかかり、過激派の転送機雷を何度も喰らう。

しかし、護りの魔導陣がダメージを一切通さなかった。

突撃兵「ぬるいぬるい……ぬるいなぁ……」

過激派「くぅ……!」ウルッ

過激派は今にも泣き出しそうだった。

少年「おい……まだやるのか?」

突撃兵「私の役目は君を守る事だ」

少年「なら、襲われなければ良いんだろう?」

少年「今日のところは引いた方が良いかもな」

過激派「っ!」ダッ

過激派は自分で壊した扉から逃げ出した。

突撃兵「君は……甘いな」

少年「良く言われるよ」

突撃兵「……」ピーンッ

突撃兵「ついで、だ一緒に鍛錬をしよう」

少年「え?」

ゴゴゴゴ

突撃兵「その甘ったるい根性を叩き直してやろう」フハハ

少年「これから約束あるんで、じゃっ」

ガシッ

少年「……」

突撃兵「……」ニコッ

キャーッ

帰り道

少年「痛い……」

突撃兵「随分と軟弱だな」

突撃兵「大体男子とは……」クドクド

少年「ドイツの男子はみんな男気に溢れてるんだねー」

突撃兵「実際はそうでもないな」

少年「おい」

それに、一つ聞きたい事があった。

少年「剣の構え……誰から習った?」

突撃兵「……」

突撃兵「我流だ」

少年「それは無いだろ」

突撃兵「……本当だ」

突撃兵「産まれた時から覚えていた」

えっ……?

少年「それって……」

突撃兵「おっと……私はこっちだ」ピタッ

突撃兵「また会おう」スタスタ

少年「行っちゃったよ」

学園 校庭

魔導使い「遅いっ!」イライラ

体育教師「大分教えた」

魔導使い「為になったわ、ありがとう」

体育教師「どういたしまして」

体育教師「もう下校の時間」

体育教師「早く帰った方が良い」

魔導使い「規律って奴ね」

魔導使い「これから倫理観もクソも無くなる訳だけどね」

体育教師「……」

魔導使い「まぁ……私がどうこう言うつもりは無いけど……」

体育教師「死人が沢山出る」

体育教師「でも、私は慣れた」

魔導使い「私が死なせる訳無いじゃない」

体育教師「言葉半分に受け取っておく」

一旦ここまでです

産まれた時から道具だった。

他の道具と違う点は生みの親が居ること。

それだけ、それだけだった。

狙撃兵「勇者パーティー」

賢者「今日からよろしくね」

狙撃兵「俗に言う学徒って奴ねぇ……ふむふむ」

賢者「その呼び方はあまり好まないなぁ」

狙撃兵「へぇ……そういうものなのね」

賢者「うん」

狙撃兵「ふむふむ」

賢者「えっと君の国籍は……」

狙撃兵「ロシアだよん!」

賢者「ああ……“彼”ね」

狙撃兵「ふふん……仲が良いらしいね」

賢者「政治が関わらなければね」

狙撃兵「大統領も同じ事を言ってたよ」アハハ

賢者「……似てるね」

狙撃兵「はて?何の事やら?」キョトン

狙撃兵「さてさて、勇者の顔を拝みに行くかにゃん」スタッ

賢者「そっくりなんだけどね」

翌日 放課後 教室

狙撃兵「やぁ」

少年「……」

少年「誰?」

狙撃兵「明日から君のクラスメイトになる狙撃兵だよ、よろしくねぃ!」

少年「あ、はい」

狙撃兵「連れないなぁ!モテないよ?」

少年「あはは……」

初対面から馴れ馴れしい奴だな。

狙撃兵「じゃっ!私は帰るね!」

少年「それだけかい!」ビシッ

狙撃兵「ふふっ……またねっ!」

こうして黒髪の愛嬌がある少女はどっかへ行ってしまった。

少年「……なんか腑に落ちないなぁ」

一旦ここまでです

登場人物 おさらい

勇者(少年) 女(僧侶) 幼馴染(医術士) 魔導使い 賢者 父(王様) 母 魔王 先輩 学園長 姫 祖父 幼妹 担任 体育教師 委員長 オペレーションエアドライバー 情報兵(元大臣) 生徒会長 友 関西弁 重火器兵 秘書 闇の衣 神獣 甲冑 各国首脳陣 サラリーマン OL 忌み地の巫女 突撃兵 過激派 狙撃兵

翌日 放課後

狙撃兵「ややっ」

少年「久しぶり」

狙撃兵「昨日会ったばかりだよ!?」ガーン

一々リアクションが大きい奴だな。

狙撃兵「あれを見てごらんっ」ボソッ

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

???「……」

少年「……」ビクッ

狙撃兵「凄いでしょっ?」

少年「めっちゃオーラ出てますがな……」

狙撃兵「ひえーっ……怖い怖い」

狙撃兵「あっ……こっち向いて来た」

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