【艦これ】天龍「発動!」木曾「秋の演習戦」 (143)

・珍しく地の文多めで


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1445081301

―秋の日差しがさんさんと海上に照りつける。

穏やかな海を裂いて行くかのように、真一文字に突っ切っていくふたつの影。


天龍「ぃいやっはああああああ!!!!天龍様のお通りだぁ!!!」

木曾「…うるさいよお前」

天龍「お前って奴は…分かってねえな」

天龍「久々の戦闘なんだぜ?なんつーか、燃えるってモンだろ!」

木曾「調子乗ってヘマすんなよ」

天龍「…はん!言われなくても!」ザザッ

木曾「あ、おい!待てっての!」

時は数時間前に遡る


霧島「合同演習、ですか」

提督「そそ、君もよく知ってるだろう。体育の日」

霧島「…はい?」

提督「すなわち!体育の日にかこつけて、というわけ。おわかり?」

霧島「(おわかりになるわけないでしょう)」

提督「あ~霧島クンいま失礼な事考えたでしょ」

霧島「…いえ、そんなことは」

提督「よく言うよ、僕ぐらいになったら目で解る。そういうもんよ」

霧島「………」

提督「んじゃま、そういうわけだから第一、第二艦隊のコ達に連絡しといてね」

霧島「編成はいかがしますか?」

提督「んん?」

霧島「第二艦隊の能代、矢矧は現在特別任務のため第三艦隊におります」

提督「特別任務…あぁ!サンマ漁ねぇ」

霧島「いかがします?」

提督「あ~練度高いコ適当に入れといて」

霧島「よろしいのですか?」

提督「構わんよ、絶対勝てるし」ハハハハハ

~ ~ ~

~鎮守府・ミーティングルーム~


扶桑「…そう、合同演習、ね…」

鈴谷「もー、せっかく最上型のみんなで遊びにいこーって言ってたのにねー」

最上「あはは…、でもしょうがないよ」

日向「こういう重要な事は事前に伝えてもらいたいものだな」

加賀「赤城さんとデートの予定を立てていたのに…許せません」矢パキッ

鈴谷「デートって…どうせいつもの大食い選手権でしょ?」ヤレヤレ

加賀「…なにか?」ギロッ

鈴谷「へへー…いや~なんでもないっす!」

青葉「それでは~駆逐艦のみんなに試合前インタビューしちゃうぞ!」

最上「まったく、青葉ってばまたふざけて…」ハハ...

青葉「まず最初は…浦風さん!どうぞ!」

浦風「え?う、うち?そうやね…うちこういうの初めてじゃけん、なんか緊張するわぁ」

青葉「おお!初々しいコメント頂きました!バッチリ使っちゃいますよ!」

浦風「ええっ?!もう、そんなん恥ずかしい…//」テレテレ

島風「ちょっとちょっとー、浦風にばっかり質問しないで、私にも聞いてよー」

初春「そうじゃそうじゃ!差別じゃぞ!」

青葉「…貴女達のコメントってワンパターンで新鮮味ないんですよ」

初春「な、心外な!」

ガチャ

提督「ふむ、皆集まっているかな」

扶桑「あら、提督。おはようございます」

提督「うん、おはよう」

島風「てーとく!」テッテッテー

提督「ん、なにかな」

島風「てーとくのお腹、相変わらずおっきいですね~」ブヨブヨ

提督「島風くん、脂肪を揺らさないでくれるかな…」

島風「わたしとかけっこしません?きっと痩せますよー」プニプニ

提督「よいよい、肥満で結構」

島風「えー?!」

提督「せっかくの休養、という者も多かったようだが、呼び出してすまない」

提督「それでは皆、先程伝えたとおり急遽ながら他艦隊との演習が決定した」

提督「これより、その作戦説明を行う」

青葉「あ、あの!」ビシ

提督「青葉君、なにかな」

青葉「第二艦隊、能代と矢矧は別任務中と伺っておりますが!」

提督「なにぃ、霧島クン、まだ来とらんらしいぞ」

提督「誰に代わりを頼んだのかな?」

霧島「…全く、あの二人は…」ハァ...

ドタドタドタドタ…

島風「おうっ!?」

鈴谷「何事!?」

提督「…なるほど、そういうことか」

ドン!バンッ!

木曾「申し訳ありません!遅れました!」

天龍「木曾の奴がよ、あーだこーだうるさくって…」

木曾「頭を下げろ、バカ!」ゴン!

天龍「ってっめえ!何もグーで殴る事ねえだろ?!バカになったらどーすんだ!」

木曾「これ以上バカにはならんだろ」クスクス

天龍「言ったなお前!いいじゃねえかテメエの根性叩き直してやる!」ウガー

木曾「お?いいぜ、かかってこいよ」

天龍「上等ッ!」

天龍がかけ声を上げるや否や、血気盛んな獣のように向かい合う天龍と木曾。
実に1ヵ月ぶり29回目の世紀の大勝負、眼帯対決がまさにここで行われようとしていた。
前回の争いではきのこの山かたけのこの里かで揉めに揉めた。結果はたけのこ派木曾の勝利であった。
しかしこのときの尋常ならざる争いによって、鎮守府食堂は大テーブル一つと椅子12脚を喪失し、止めに入った球磨は全治4ヶ月の怪我を負った。那珂は解体された。
天龍はその雪辱を果たさんと、密かにその感情を燃やしその機会を窺っていたのである。

今の二人からはその時ほどの気迫はなかったのだが、以前の惨状の記憶も新しい艦娘達は駆逐艦ならいざ知らず、経験豊富な戦艦3人ですら仲裁に入ることをためらっていた。
そんな危険な空気の中でも、青葉は愛用の一眼レフをけして手放さない。
ジャーナリストとして、今をありのままに伝えたい。シャッターチャンスを逃す事は、青葉の記者魂が譲らないのだ。
全員が恐怖と緊張で身体を固める中、しかし一人だけは例外であった。

「………五月蠅いわね」

いつでも冷静沈着な彼女も、愛すべき想い人との約束を守れなかったせいか、心の内は穏やかではなかった。
―一緒にラーメン店巡りをしよう。どのラーメン屋のラーメンが一番おいしいか、二人で決めようじゃない―。
この一週間、その事だけを考えて過ごした。
いつもはいくらでも食べられるご飯が、ここ最近は4合しか喉を通らなかった。
いつも食べるチ○ンラーメンの味が、どこか物足りなかった。
嬉しさのあまり口角がついつり上がり、その様子を五航戦に見られて恥をかいたりもした。
でも今日のこのためなら構わない。そう思っていたのに。その約束は守られないのである。
彼女の中で、例えようもない、ぶつけようのない(本当は提督にぶつけたい)怒りが、悲しみが、絶望が、劫火の様に渦巻き、暴れる。
その炎が、今この状況を前に、外へ溢れようとしていた。

矢を抜き、弓に番え、構える―その一挙手一投足が、まるでスローモーションのように感じられた。
怒りで沸騰しそうなハズなのに、脳は驚くほど冷静だった―彼女の眼が、これから矢が描いていくであろう軌道を捉える。
一触即発の状況、凍結した空気を引き裂くかのように向かい合う二人の間を矢が通り抜けた!

ザンッ!

天龍「……!?」

木曾「…この矢…!」

加賀「……貴女達、静かにしてくれないかしら」

天龍「お、おぅ…」

木曾「…わかった」

加賀「みんなに謝って頂戴」

天龍・木曾「「すみませんでした」」ペコ

提督「……それじゃあ役者はそろったようだし、皆、席についてもらおうか」

提督「加賀、ありがとう。でも装備一式持ち歩くのはどうかと思うけどね」

加賀「ごめんなさいね」

提督「えーそれでは本題に入ろう、今回の作戦要項を述べる。霧島君」

霧島「はい。今回は特殊な形式での演習戦を行います」

霧島「相手は、柱島基地サーバ所属柱島提督指揮下の連合艦隊です」

霧島「機密上、編成は明らかではありませんが空母機動部隊と思われます…」

天龍「……」

木曾「……」

天龍「…加賀のヤツ機嫌悪いみてーだな」

木曾「まったくだ」

天龍「アレかな、生理かな」

木曾「おいバカやめろ」

加賀「………」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

天龍「うおっ!」

霧島「…天龍さん、どうかしましたか?」

天龍「いやっなんでもないっす」

霧島「作戦会議中ですので、集中して聞いておいて下さい」

天龍「…へいへい」

木曾「怒られてやんの」

天龍「バカにしやがってこの…!」

木曾「静かに話聞こうな」

天龍「……あとで覚えとけよ!」

◇ ◇ ◇

霧島「…と、いうわけで、作戦要項および作戦会議を終了させて頂きます」

提督「コホン。霧島君、ありがとう」

霧島「司令から、何か一言頂けますか?」

提督「え?あぁ、うむ」

提督「えー先程霧島クンが説明したとおり、演習開始はこれより2時間後の正午からとなる」

提督「それまでは各員、演習戦に備えるように努めなさい」

提督「演習といえど、決して手を抜くことの無いように」

提督「各員の健闘を期待する。私からは以上だ」

霧島「司令、ありがとうございました。それでは全員、解散!」

◇ ◇ ◇

天龍「うし、剣も艤装もバッチリだし、電探の調子も悪くねぇ」

龍田「天龍ちゃん、久々の出撃ね~」

天龍「ま、演習だけどな」

龍田「そーだ、天龍ちゃんコレ使うかしら?」

天龍「…これ、お前の槍じゃんか。くれんのか?」

龍田「壊さないって約束してくれるなら、貸してあげてもいいけど?」

天龍「うっ…んな無茶な」

龍田「嘘よぉ、はいっ」

天龍「いや、いいっての」

龍田「お願いだから」

龍田「私はいけないけど、せめて槍だけでも持ってってほしいの」

天龍「……」

龍田「きっと…きっと役に立つわ」

龍田「だから、ね?」

天龍「龍田…」


◇ ◇ ◇

木曾「ふぅ…こんなもんかな」

北上「おぉ、やってるねぇ」

木曾「あぁ…北上姉、大井姉」

大井「北上さんがどうしても、っていうから来てあげたわ」

北上「大井っちは素直じゃないなあ」

木曾「はは…。二人とも、ありがとな」

大井「ハイパートリオの実力、しっかり見せつけてくるのよ」

北上「まーいつも通りやれば勝てるって。楽勝楽勝ぅ」

木曾「やっぱ励みになるな、姉の言葉は」

北上「そりゃー年季が違いますからぁ?」

木曾「ホントは俺より着任遅いけどな」

大井「そういうこと言わないの」

木曾「じゃ、そろそろ行くよ」ガコン

北上「あ、大井っち、あれ渡さなくていいの?」

木曾「ん?」

大井「…しっかり勝ってきなさいよ」スッ

木曾「お守り?」

北上「大井っちがさっきの間に頑張って作ったんだよねえ」

大井「全く急なんだから…困るじゃない」

木曾「…本当に、ありがとな」

大井「早く行きなさい、しっしっ」

北上「あれ?照れ隠し?」

大井「違います!」カァ


~鎮守府母港~


ザワザワ ガヤガヤ

山城「姉様、必ず帰ってきてくださいね!」

扶桑「ええ。頑張るわね」

舞風「浦風っ、来たよ」

浦風「舞風、ありがとうな」

舞風「ほんとは陽炎型みんなで来たかったんだけどね…あ、島風ちゃんもがんばってね!」

島風「うんっ!」


天龍「結構、見送りに来てんだな」

木曾「そーだな」


提督「よし、全員そろったようだな」

霧島「全員整列!」

ビシッ

提督「…ふむ、なかなかの面構え。準備は出来たようだね」

提督「日頃積み重ねた経験が生かされる時が来た」

提督「仮想敵艦隊を迎撃、これを全力をもって排除せよ!」

「「「「「おー!!!!」」」」」


かくして、雌雄を決する苛烈な戦いは幕を開けたのである―

今日はここまで。
ここまでです

天龍木曾成分うっすい…

世界観はこれらと共通です↓

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読んでくれたら嬉しいなって

いいな!

仕方ない読んできてやんよ
おつつ


~~~

指令室では、提督と大淀、そして出撃した霧島の代理として蒼龍が艦隊からの通信を待っていた。

提督「木曾君に天龍君か…」ハァ…

蒼龍「…やっぱ、不安要素ですかねぇ」

提督「そうだね…通常の艦隊に組み込むと…特に天龍クンは…」

蒼龍「二人ともやんちゃっていうか、男の子みたいなところはありますね」

提督「まあ、暴れ回りたいっていうのは分かるよ、私もそうだったから」

蒼龍「え、そのナリで?」

提督「んな!た、確かに今はこーんな体型だけどねえ!昔はすれんだーだったのよ!」デブーン

蒼龍「へ、へー」

提督「まったくデリカシーのない…これだから若い子は困る」プンプン

蒼龍「(狸親父のぷんぷんなんて誰が見たいの…?)」

提督「…あ、そうだ!大淀クン、艦隊に通信まわして」

大淀「は…わかりました」

提督「あー、あー…聞こえるかね、霧島クン」

霧島『はい。なんでしょうか?』

提督「敵の状況と位置は分かっておるのか?」

霧島『…先程加賀の艦載機から連絡があったので、それが正確であれば』

提督「正確に教えなさい」

霧島『は。敵艦隊は護衛の艦隊が前方に、若干距離を置いて後方に空母艦隊が配置されています。位置は………』

提督「ふむ…蒼龍、海図ではどのあたりだ」

蒼龍「えーと…この辺かな」ユビサシ

提督「うむ、よろしい。好都合だ」

提督「…では敵後方の空母部隊に、木曾クンと天龍クンで奇襲をかけさせよ」

霧島『たった二隻でですか?』

提督「無論だ」

霧島『…本当によろしいので?』

提督「あの二人の扱い方など、これで妥当であろう?」

霧島『…鉄砲玉ですか』

提督「なに、演習だからさ。実戦ならばこうはいかん」

霧島『……わかりました、二人に伝えます』

提督「第二艦隊の空いた枠は最上、鈴谷で上手くうめよ」

霧島『…承知しました』

大淀「…大丈夫なのでしょうか、これで?」

提督「んん?」

大淀「これは、正規の艦隊運用とは異なりますが」

提督「なにが悪い?」

大淀「い、いえ…」

提督「…暴れ回りたいのなら、そうさせる方がこちらとしても楽だ」

提督「それに、あの二人が失敗することなどそうあるまい」ニヤ

~鎮守府沖海上~

提督が下した予想外の指令に、艦娘達は動揺していた。

木曾「あのタヌキにしちゃ、随分過激なことを言うな」ハハハ

浦風「本当に、大丈夫なん?」

天龍「大丈夫に決まってんだろ、お前らヒヨっこじゃあるまいし」

木曾「そそ、地獄のスリガオ突入コースに比べりゃあ、なぁ?」

扶桑「……そ、そうね」

最上「(苦笑いしかできないよ)」

木曾「青葉ぁ、あとは頼んだぞ」

青葉「はいはいっ、承りました!」

天龍「早くいこーぜ、木曾ぉ」

木曾「はぁ…分かったよ」

天龍「っしゃあ!飛ばしてくぜ!」


そして冒頭に遡る―

天龍・木曾の両名は本隊から大きくそれ、北側の島嶼部を迂回して敵後方へと全速力で向かう。
連なる島々のおかげで、運よく二人の姿は敵の視界から遮られた。このまま、敵を後方から挟撃する。

加賀が放った艦載機の多くは交戦で失われ、帰還できたのはわずかだった。
すでに制空権は奪われ、相手の艦載機が着々と到着しつつあることは明白だ。
近づいてくるプロペラ音に、全員が空を見上げる。加賀は弓矢を構え、直衛の零戦を発艦させる。

と同時に、海面を抉るような砲撃が艦娘たちを襲った。
敵の前衛艦隊が、すぐそばまで迫っていた。


Bismarck「フフフ…見つけたわ」

潮「いち、にい、さん…な、なんか、少なくありませんか?」

摩耶「関係ないね、一気に叩きのめすだけだ」

川内「夜じゃないけど…燃えてきたよ!」

夕立「さあ、突撃よ!」

時雨「やれやれ…仕方ないね」

潮「えっ、あっ、ちょっと皆さん…待って下さいよぉ!」


初春「なっ、何事じゃ?!」

日向「この火力…タダものではないな」

霧島「こんなにも早く接近されるとはね…全員、砲撃開始!」

日向「瑞雲、発進!」

最上「いっけぇーっ!」

水上機が、カタパルトから空へと放たれる。
この絶え間ない攻撃の中で彼らが任務をやり遂げ、帰還できるかどうかは…全く分からない状況であった。
砲口より大小の砲弾が撃ち出され、弾幕を作り上げる。
上空からは何機もの爆撃機が迫り、爆撃を繰り返す。
あまりの乱戦に、正に『敵も味方もわからない』状態がしばらく続いた。

浦風「ひゃぁっ?!」

初春「大丈夫か!?」

浦風「うち、こんなとこで負けられん…!」

青葉「その調子で行きましょう、さ、レッツゴー!」

浦風「うん、了解!」

青葉を戦闘に、駆逐艦らが一斉に切りこむ。
無数の砲弾と爆撃とを受けながら、それでもなお前進する。
二人が奇襲に成功しさえすれば…。それまでは、耐え続けるしかない。





二人の役目は、後方に控えている敵の空母を奇襲、撹乱させることだ。
先程から通信が途絶え途絶えになっているのを考えれば、本隊はきっと弾幕の嵐にさらされているに違いない。
すでに発艦した艦載機を止めることはできないが、相手の空母を潰すことさえできれば、少なくとも航空攻撃による被害はぐんと抑えられる。
ゆえに一刻も早く、敵空母の元に向かう必要があった。
海の中に連なる小島の横を通り抜けて、敵の後方へと躍り出る。
ちょうど真正面、数百メートルは離れた位置に、波に揺られる6隻分の影が見えた。

木曾「まずは予定通りだな…」

天龍「一気に仕留める!」

二人は目標を確認すると、すさまじい勢いで速力を上げ接近する。

敵が二人に気付いたのは、その直後だった。
空母4人の護衛に控えていた長門と榛名は、突然の奇襲に我が目を疑った。

榛名「電探に反応あり!巡洋艦級2隻です!」

長門「ッバカな!?こんな至近距離まで近づかれるとは!」

榛名「ど、どうしましょう?」

長門「空母が狙いか…だが、キズはつけさせん!」

榛名「ッてーっ!!」

榛名の一声で、縞馬の如く迷彩が塗られた砲塔が動いた。
一発、二発…。いつもなら正確にターゲットを撃ち抜く弾も、動揺のせいかこのときばかりは精彩を欠いていた。
水上を舞うように動き回る二人に一発も当てられず、弾は全て海中に没した。

天龍「どうした?狙いが甘いんじゃねえかァ?!」

木曾「…さ、地獄を楽しみな」

不敵な笑みを浮かべ、木曾が魚雷を放つ。
狙いをつけず、ばら撒くように一斉に発射されたそれは、多くは目標の手前で作動するか、喫水下を通過して炸裂し、ただ水柱を作り上げただけだった。
しかし、それも狙いの一つ。
視界を埋め尽くすほどの水柱が消えた後、長門の表情は凍りついた。

天龍「うおりゃッ!!」

長門「くっ…!」

天龍「上手くかわしたな?」

長門「当然だ…貴様のような三下にやられてたまるか!」

天龍「言ってくれるな…後悔すンなよ!!!」


一方、榛名に攻撃を仕掛けた木曾は、思わぬ反撃をうけていた。
榛名の展開された艤装の巨腕に、手を出す事が出来なかったからだった。

木曾「はっ!たぁっ!!」

榛名「ふっ…やぁ!」

木曾「ッ何?!」

鋼鉄の腕に吹き飛ばされ、軽く数メートルは宙を舞う。
続けざまに放たれた36センチ口径の砲弾が、空中の木曾の横で二発、炸裂した。
マントをつけていたお陰で蜂の巣になってしまう危険は避けられた。
が、浅くはない傷が身体に刻まれた。

木曾「熱ッちぃ…!構ってられねェ!」

榛名「逃がしません!」

木曾「ッあぁ!後で相手してやるから待っとけ」

余計に積んだ分重さは増したが、その甲斐があったぜ―
木曾は榛名が接近してくるギリギリのタイミングで、照明弾を放つ。
太陽の射す昼間では流石に明るさは薄れるが、至近距離ならば充分だった。

榛名「っきゃあああああああっ!?!」

木曾「失明させちまったら…悪ィな」

混乱する榛名をよそに、木曾は相手空母の元へ向かった。


瑞鳳「祥鳳っ、どうしよう!?」

祥鳳「落ち着いて。冷静になりなさい」

翔鶴「ここは一時退避よ!」

瑞鶴「翔鶴姉…」

落ち着かない妹達をなだめる翔鶴、祥鳳だったが、彼女らも決して冷静ではなかった。
まったくの予想外の事態である。艦載機のほとんどは、発艦状態にある。
頼みの綱の戦艦二人すらも、あっさりいなしてしまう様だ。
直衛の戦闘機を出したところで、艦娘相手には意味がない。絶望的な状況だった。
弓を握り締める手が震える。

木曾「おーっと、逃がさないぜ?お嬢さん方」

翔鶴「く…」

瑞鳳「ひぃっ!」

先程受けた攻撃のせいで、木曾の身体にはいくつもの生々しい傷が刻まれていた。
ぼろぼろに焼けたマント。焼けただれた眼帯。すすけたざんばらの前髪の間から覗く、猛獣の眼光。
全身に開いた傷口から滲む血が、制服を赤黒く染めている。まるで死神である。
自衛手段を持たない彼女らのささやかな抵抗とばかりに、空母達が矢を放つ。
艦載機に変化するすんでのところで、木曾はそれを両手につかんだ。

瑞鶴「ち…ッ」

木曾「窮鼠猫を咬む、とはいかないみたいだな…」

木曾「…悪いが俺も役割は果たさなきゃならないんでね」

水面を蹴り、一瞬のうちに間合いを詰める。
弾の回避ならば日頃から鍛錬を積んでいた空母達だが、格闘戦ではそうはいかない。
弓矢を射るには、ある程度の距離を必要とする。しかし間合いを詰めさえすれば木曾に分がある。
振り抜かれた刀の一撃が瑞鶴の甲板に到達する。
研ぎ澄まされた刃の切れ味はすさまじく、まるでベニヤ板のように容易く真っ二つに裂けた。
木曾は反撃を防ぐため、同時に脚を突き上げ、瑞鶴の胸元を強く蹴り上げた。

瑞鶴「うっ!?」

翔鶴「瑞鶴!!」

木曾「余所見している場合かぁ!」

続いて翔鶴の甲板に刃を突き立てる。
が、クラスチェンジした装甲空母の強度は、伊達ではない。
しかたなく力任せに強引に振り下ろすと、甲板に大きく斜めに傷が入った。
破壊とはならなかったが、これでは艦載機の離発着は不可能に違いない。
最後の抵抗と言わんばかりに振りあげられた翔鶴の腕を掴んで引き寄せ、ヘッドバットを腹に叩きこむ。
めりっ、という嫌な音がして、翔鶴の胸当てにひびが入る。
それきり翔鶴は動かず、海面に崩れ落ちた。

畜生過去スレ読んだら飲み物何回も吹いた
天龍木曾スレ以前の過去スレはってください何でも島風

木曾「残り…ふたぁつ!」

瑞鳳「ひ…ぅっ」

祥鳳「…くッ…来るなら来なさい!」

怯える瑞鳳を庇うように、両手を広げて祥鳳が前に出る。
祥鳳の足が震える。五航戦姉妹でも勝てなかった相手だ。敵うはずがない。
目の前の相手は、常日頃相手取っている深海棲艦よりも、恐怖すべき存在感を放っていた。

木曾「いい姉妹愛だな。…かっこいいじゃん」

一瞬。懐に飛び込んだ木曾は祥鳳の襟首をつかんで引き込み、手に握られた弓を奪う。それを片手で二つに折り曲げ、そのままバランスを崩した祥鳳を水面に叩きのめす。
そして茫然としている瑞鳳から弓を取り上げ、バラバラにへし折った。

木曾「任務完了、っと」

瑞鳳「あ…、あっ…!」

意識もなく水面に漂う仲間達。瑞鳳は思わず、膝をついた。


木曾「…天龍が危ない…!」

任務は果たした。瑞鳳には…弓もないし、止めを刺すまでもないか。
木曾は頬についた血を拭うと、再び踵を返し、天龍の助太刀へと向かった。



木曾が空母達相手に大立ち回りをする背後で、天龍と長門は鎬を削り合っていた。
長門の正確かつ高威力の砲撃の前に、天龍の艤装はすぐに使い物にならなくなった。
しかしながら得意の剣術で間合いを詰め、長門の砲塔を潰すことで、互角の争いを演じていた。

長門「!っ、やられた!」

天龍「木曾の奴、決めやがったな!」ガキン

長門「ぐうっ!」

天龍「お前とも終いにしてやるよ!」

長門「そうは…いくかァ!!!」

天龍の顎に、ビッグセブンの必殺アッパーカットがめり込む。
脳天を揺らす一撃に、天龍は一瞬意識を奪われた。

私とて世界列強に名を連ねたビッグセブンだ。このような旧式に、やられてなるものか。
既に長門の身体は天龍との戦いで満身創痍であった。
が、心の底のプライドが、彼女の肉体を動かし続けた。

長門「はっ!やっ、たァッ!!」

天龍「ぐッ…ぐぇ……かふっ…」

長門「どうした…!こんなものか…!」

天龍「るっせぇ…ふざけんじゃねぇぇぇ!!」

長門「はぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

割って入る隙などなかった。砲ではなく、拳と拳の応酬が、ただただ続いた。
互いの身体に拳がめり込むたびに、身体が軋むような悲鳴を上げ、血が滲み、海上に散る。
それでも二人はやめようとはない。
それは自らに課せられた任務以上に、本気の戦いに何かを見出しているようにでもあった。

互角の争いはしかし、次第に天龍の方が押されていく。巡洋艦と戦艦では、パワーがケタ違いだった。
思わず膝をつく天龍。

天龍「ハァ、ハァ…まだ、まだだ…」

長門「貴様だけはァ…倒す!」

天龍「ぅぐはぁ!?グ…」

天龍の首を締めあげつつ、軽々と持ち上げる長門。
護衛目標であった空母4隻は戦闘不能となってしまった。完全に天龍らの作戦勝ちである。
長門は自分自身に憤っていた。
ビッグセブンと呼ばれ、提督からも信頼され、仲間達からも尊敬される存在である自分が、たかが2隻の巡洋艦如きにここまでしてやられるとは
…駆逐艦の前でいいカッコできないではないか。
艦娘として役目を果たしてきた中で、最も耐えがたい屈辱。
その屈辱を晴らすには…、まず目の前の小娘を始末するほかない。
後悔と憤怒の感情が、極限状態にある長門の理性の箍を外してしまった。


長門「負けを認めろ…」ギリギリ

天龍「っぐ…ぁ…ぁっ…」

長門「早く負けを認めるんだ……」ギリギリギリ...

天龍「…ぐふ……か…っ…」

長門「早くしろ!!!」

天龍「…げほ……お断り…だね…」ニヤ

長門「貴様!死にたいか!!」

長門の腕の力が強まる。
意識が朦朧とする中で、それでも天龍は笑みを崩さない。
―いいところで来てくれるじゃねえか。相棒。
彼女の目には、頼れる戦友の姿が映っていた。

木曾「せいっ…たぁぁっ!」ゲシィ

長門「っ何ぃっ?!」

天龍「ぐはっ…はぁっ…はぁっ…!」

木曾「…無事か?」

天龍「はぁっ…はぁ…ったりめぇだろ…」

天龍「俺が…一番強ぇえんだからよ…!」ゼェゼェ

木曾「無茶しやがって……」

天龍「それは…っ、お互い様だろ」ツン

木曾「痛っぁ、傷口をつつくな!」

全速力で駆け抜けてきた木曾は、そのままの勢いで海面を蹴り、長門の背中に飛び蹴りを食らわせた。
目の前の相手に意識を奪われていた長門には、それをかわすことなどできない。
木曾は、緩んだ長門の手から滑り落ちる天龍の身体をうまく抱きかかえる。


長門「やるじゃないか…私の背後を取るなんて」

木曾「…世界のビッグセブンに言ってもらえるとは、光栄だ」

天龍「だが、負けられねえ!」

長門「…その意気や良し!さあ、続けるぞ!」

木曾「…吹っ切れたみてーだな、あんたも」

長門「無論だ。さあ、行くぞ!」

再び、勝負が幕を開ける。
互いに満足な状態ではない。
しかし、これほど清々しい戦いは、長門にとっては久しぶりだった。
ただ砲を撃ち、目の前の敵を焼き払うだけのやり方とは違う、拳と拳のぶつかり合い。
相手の次の手を読み合う心の勝負。それは、深海棲艦との戦いでは得られないものだった。
天龍と木曾、二人を相手取りながらも、長門はその一撃一撃を軽くいなし、逆に二人に強烈な一撃を浴びせる。
フフ、私を楽しませてくれるじゃないか―。
とはいっても二対一であることに変わりはない。
息のあった天龍と木曾のコンビネーションの前に、さすがの長門も押されつつあった。

天龍「決めるぞ木曾!」

木曾「はぁぁっ!!」

振り下ろされる二本の刃―いつもの長門なら容易くかわせる攻撃も、蓄積した疲労のせいかわずかに反応が鈍っていた。
このままでは、やられる。
これまでか、と長門が覚悟を決めた次の瞬間。

天龍「なにっ…?」

木曾「ち…もうお目覚めか」

必殺の攻撃は、目を覆うほどの鋼鉄の塊に阻まれていた。

榛名「なんとか…、間に合いましたね…!」

長門「…榛名か!」

榛名「はい!榛名、参ります!」

天龍「ち、あとちょっとって所で…!」

木曾「…そんなの問題じゃねぇよ」

天龍「あ?」

木曾「俺達はいつも通りやる、そんだけだろ?」

天龍「…その通りだな!いくぜ!」

二人の目に再び、燃えるような闘志が宿る。
ずたずたに傷ついて動けないはずなのに、身体は驚くほどに軽かった。
速力を上げ、抜き放った剣を振りかざして突撃する。

榛名「負けませんッ!」

榛名の一声で、変化した鉄塊の腕がゆっくりと動き出す。
人間の身体程度なら、軽く握り潰せそうな機械の腕。
ただ振り回すだけでも、空を斬る音に身を潰されそうな恐怖を覚える。
その腕が海面に叩きつけられるたびに、激しく水飛沫が巻き上がった。

木曾「ありゃ、まともにぶつかったらシャレになんねえぞ…」

天龍「…こうなりゃ、とっておきだ!」ゴソゴソ

木曾「とっておき?」

天龍「じゃーじゃーん!」

木曾「…なんだそりゃ」

天龍「まあ見てなって、よっ!」ジャララッ

榛名「ちょっ…な、何?!」

振りあげられた榛名の艤装に、数珠のようなものががんじがらめに巻きつけられる。
この前見たアニメにインスピレーションを得た武器。
改造を加えた爆雷を数珠つなぎにした、明石特製の一品だ。
本当はホイホイ使いたくなかったが…ここが使い時か。
天龍が手元の起爆スイッチを押す。
連なった爆雷が一斉に起動。鋼の左腕が激しく燃え上がり、ばらばらに弾け飛ぶ。

榛名「きゃっ…熱っ、いっ、あぁっ!!」

たとえ一発分でも、艦に大穴を開ける威力の爆雷。
それが更に連なっているというのだから、その破壊力たるや尋常ではなかった。
榛名の艤装は紙の様に破れて、破片はことごとく海中に消えた。

榛名「ゃ…そんな…」

予想をはるかに上回る相手のやり方。
今まで現場で戦功を積み重ね、訓練で研鑽を磨いてきた榛名だったが、このような無謀で、野蛮で、乱暴な相手とあいまみえるのは全く初めてであった。
天龍は呆然とする榛名の正面にすぐさま飛び込み、その腹部に容赦ない膝蹴りの一撃を撃ちこんだ。

天龍「ほっ」

榛名「う゛っ……?!」

木曾「…うわ、エグいなー」

天龍「顔はキズつかないようにしてやったから、ま、大丈夫だろ」



長門「…これでついに私一人と言う訳か…」フッ

天龍「まだやるか?いいぜ?」

長門「……いや…降参さ」

両手を上げ、首を横に振る長門。

長門「だが、お前達もここにいていいのか?」

木曾「…どういう意味だ」

長門「ウチの前衛艦隊は生え抜きの精鋭ぞろい」

長門「しかも奴らは手加減と言う物を知らんからな…」

長門「もしかしたらお前達の仲間も…」ニヤ

木曾「…なに?」

長門「まあ、これ以上は言うまい」

天龍「何だよ、教えろよ」

長門「早く行け。艦娘たるもの、任務をこなせよ」

木曾「…言われるまでもないさ」

天龍「ちっ…木曾、早く合流しに行くぞ!」

木曾「ああ…!」









長門「…なかなか、珍しい連中もいるものだな…」

瑞鳳「ぁ…うぅ……」

長門「…おい、しっかりしろ」

瑞鳳「は?!あ、長門、さん」

長門「…全く…ウチの可愛い空母達をよくもいじめ抜いてくれたものだ」


気絶状態で水面に浮き沈みする仲間を抱え上げ、近くの島へと向かう。
完敗を喫したはずの長門の表情は、何故か穏やかだった。

今日はここまで

長文って本当に語彙力が試されるなぁ…

普通にうまいと思うが?
おつつ

再開


◇ ◇ ◇

Bismarck率いる前衛艦隊が空母全滅の報を聞いたのは、それからしばらく後の事だった。
味方の攻撃機の数が明らかに減っている事はわかっていたが、よもやここまでやられるとは…。
幾多の戦いを駆け抜けた彼女らも、思わぬ誤算に冷静さを失いつつあった。

川内「ばっか、そんなことある?!」

摩耶「だから言ったんだよ!アタシがあっちについてさえいりゃあ…!」

Bismarck「…私の判断が間違っていたとでも?」

潮「お二人とも!今はケンカしてる場合じゃ…」

夕立「こうなったら…強行突破しかないっぽい!!」

潮「あ、ちょっと待って夕立ちゃんっ、ちょ、えぇえっ!?」

霧島「天龍、木曾より入電。作戦は成功よ!」

初春「それは…真か!?」

青葉「ここまで…、耐えた甲斐がありましたね…!」

扶桑「みんな、今が攻め時よ!」

日向「よし!全砲門開け!」

鈴谷「いっけぇーっ!」ドーン

最上「たぁぁーっ!」ドーン

敵の圧倒的な勢いにのまれつつあった彼女達も、その一報に喜びの声を上げる。
今までの劣勢を一気に押し返さんと、各々の艦砲が一斉に唸りを上げた。


Bismarck「Admiral…待っていて!」

ここで引き下がるわけにはいかない。
敵の目いっぱいの砲撃にも構わず、Bismarckはその陣形に飛びこむ。
旗艦を務める自分が怖気づいている場合ではない。
生き残っている味方のためにも、自分がやらねば…!
目の前に立ち塞がった最上を捻り倒すように強引に海面に叩き込み、陣形の中心に突っ込む。
気を失う瞬間、近づいてくる水面を見ながら最上は思った。
―また、ドジったかぁ…。―

ざっぱーん。


Bismarckが敵陣に突入したその瞬間、目の前におあつらえ向きの獲物が待っていた。

加賀「!?」

Bismarck「フ、もらったわ…っ!」

加賀「く…!」

鉄が裂ける轟音が響く。この距離で、まず避けられるはずはない。
決まった、とばかりに会心の笑みを浮かべるBismarck。
しかし次の瞬間、彼女は目の前で起こった出来事に慄いた。


ヒュンッ…!!


Bismarck「は……!?」

一本の矢が彼女の頭上をかすめ、自慢の帽子を吹き飛ばしていく。
この矢は、……まさか?

硝煙が晴れ、加賀がその姿を現す。
甲板は跡形もなく砕け散って、これでは艦載機は扱えそうもない。
服は焼け焦げ、白い肌には痛々しい火傷が広がっていた。
それでも…加賀の闘志は消えていない。
手にしかと握られた弓矢が、それを物語っていた。

加賀「………油断ならないわね、全く」

動揺するBismarckの隙をついて、加賀は二本目の矢を放つ。
見事、Bismarckの艤装に命中すると、バチバチと嫌な音がして、そびえる砲塔から黒煙が上がった。

Bismarck「shit...その矢、艦載機じゃない…?」

加賀「ご推測の通り」

加賀が使っているのは、艦載機ではない。
正真正銘、ただの矢である。
艦載機を持たなければ、空母など何の役にも立たない。
艦載機を喪失した場合の次善の策として、加賀はいつもこの矢を矢筒に仕込んでいた。

加賀「…あまり、人が傷つくところは見たくないけど」

…ドスッ…!!

Bismarck「…ッ、くッ…?!」

対艦迷彩があしらわれたBismarckの制服に赤黒い染みができる。
至近距離から放たれた矢は、致命傷こそ避けたものの、彼女の体に深く突き刺さった。
Bismarckはその時初めて、目の前の艦娘が底知れぬ恐ろしさを秘めていることに気づかされた。
―この女、本気で私を殺そうとしている…!

加賀が三つ目の矢を放とうと構えたその時、二人の間合いに一つの影が通り抜けた。
命中していればBismarckを確実に仕留めたであろうその矢は、飛び込んできた曲者に弾かれて、あらぬ方向へと跳んで行った。

川内「川内っ、見参!」

Bismarck「はぁっ…助かるわ、川内」

川内「ちょっと手こずったけど…なんとか間に合ったみたいだね」

しばらく足止めを食らっていた川内だったが、旗艦の窮地と聞いて、初春と鈴谷をやや無理矢理に仕留めた上で大慌てで推参したのである。
初春も鈴谷も、よもや自分の奮戦がたった一行で締め括られるとは思っていなかったろうが…仕方ないですね。(談:青葉)
帝国海軍伝統の身代わり防御を見事に成し遂げた川内は、離脱するBismarckを背に、加賀に対して大見得を切った。

川内「さあさあ、どっからでもかかってきな!」

加賀「気に入らないわね」

川内「冷たいねえ。加賀ってヤツはどこの鎮守府でもこんな調子なのかい?」

加賀「…鈴谷さんを倒して得意の巻きのつもりのようだけど…私はそんなに甘くはないわ」

川内「おぉっと!…へぇ、問答無用ってワケ」

ひゅっ、と飛んできた矢を危うく回避して、加賀の方に向き直る。
もうちょっと楽しみたかったが…まあいいや。
相手は満身創痍の身でこちらに攻撃を仕掛けている。油断さえしなければ…。
勢いづいている川内にとっては、加賀ですら戦果稼ぎの良い的でしかないことは明らかだった。


◇ ◇ ◇


天龍「だあああああ!!!霧島達のとこにはまだ着かねえのかよ!?」

木曾「騒ぐな騒ぐな、怪我に障る」

天龍「でも、さっきから連絡ねぇしよ…ヤベぇんじゃねーか」

木曾「どうだろうなぁ」

天龍「余裕だなお前」

木曾「このマントの礼はお前が勝手に返しちゃったからなー」

木曾「…もうひと暴れしないと気が済まないんだよ」

天龍「4隻も相手したクセによく言う…」

木曾「やっぱ奇襲なんてセコいやり方は俺には合わねーんだよ」

天龍「そーだ!戦いは正面切ってやるもんだよなぁ!」バシバシ

木曾「叩くな叩くな、怪我が痛む」

◇ ◇ ◇


Bismarckが指揮を執り、夕立と潮の駆逐艦二人が跳ね回るように波状攻撃を繰り返す。
土壇場に立たされて逆に士気が高まったのか、それぞれの攻撃の隙を縫うような連携の前に、扶桑、日向、青葉の三人の抵抗もはかなげに映った。
大破した最上、鈴谷、初春の三人を抱えて(曳航ともいう)戦わねばならない扶桑を青葉と日向がなんとかサポートすることで、なんとか現状を凌ぐ。
頼りの霧島は、川内・摩耶という武闘派二人の相手に精一杯でこちらに目を配る余裕はなさそうだったし、加賀の救出には、足の速い島風、浦風に向かってもらった。
こういう厄介事のときに、アテになるのはあの二人…。
全員の脳裏に浮かんだことだが、それを期待していては沈むだけだ。

青葉「しぶといですね、もうっ!」

扶桑「…慣れた戦い方ね、上手だわ」

日向「扶桑、相手を褒めている場合か?」

扶桑「そうね、ごめんなさい」

青葉「大丈夫なんですか?最上さん達…」

扶桑「頭をガツンとやられてるわね…少し、重くなってきたかしら…っ」

夕立「そこっ、甘いよ!!」

日向「!…二人とも、伏せろ!」

後部甲板を盾にして、夕立が放った砲弾を受け止める。
駆逐艦の砲撃といえど、直撃すればタダでは済まない。骨を震わす衝撃が、日向の腕に響く。

日向「クソっ…!」

青葉「日向さんっ!!」

日向「構うな!扶桑、三人を青葉に預けろ」

扶桑「………、わかったわ」

日向「青葉、お前はあの島まで走れ!」

青葉「えっえっ」

扶桑「…今しかないわ、早く」

青葉「えっでも重い(´^ω^`;)」

日向「早くしろ!青葉ァ!!!」

青葉「たったったっ只今参ります!!!」

今までに見たことのない日向の激昂した様子に、青葉は指示の意味をようやく理解したのか(たぶん、してない)、負傷した三人を抱えて全速力をもって離れ小島へと駆け出した。
だが、その大きな隙を相手が見逃すはずはなかった。

潮「い、行かせませんっ!」

青葉「ちょっ、タンマ!?」

日向「青葉!お前は走れ!」

青葉「へっ?は、はいぃ!!」

潮「あぁっ、止まってくれないと…わたしだって撃ちますよ!」

日向「止まるのは…お前の方だ!」

腰の柄に手をかけ、軍刀をさっと引き抜く。
天龍や木曾と違って、日向は訓練以外ではこれを使ったことがない。
銀の刀身が暮れつつある陽光に当てられて、そよぐ海面のようにきらきらと反射する。
上手く扱えるかどうか不安だったが、鍛錬通りの動きが逆に功を奏した。

日向「たぁっ!」

潮「ひゃっ」ザンッ

日向「ふっ!!」

潮「えぁっ」ガンッ

日向「そこだ!!!」

潮「きゃ、ゃぁっ?!///」スルンッ

二回、三回。
正確な太刀筋が、潮の持つ連装砲を、魚雷発射管を、ことごとく破壊していく。
刃物を向けられ怯える潮の体には一ミリも触れずに。
刀を収め素早く振り返った日向は、潮の姿を見て若干後悔した。
―すまんな、スカートのホックまで斬ってしまったか。

◇ ◇ ◇

退いていく青葉の姿を見届けて安堵したのも束の間、扶桑のもとに夕立が追いすがる。
不運なことに、扶桑はそのことに気づくのが僅かに遅れてしまった。
彼女が振り向いた時にはもう既に、夕立の左右の発射管から発射された魚雷が、扶桑の船底を穿たんと標的を捉えていた。

扶桑「ぅ…やられた…!」

夕立「逃がさないんだから!」

扶桑「(私も…ここまでかしら……)」

直下で作動した魚雷は大爆発を起こし、反応するように扶桑の艤装からも火の手が上がる。爆炎があっという間に衣装に燃え移り、扶桑の体が炎に包まれる。
改良型の連装主砲を構え、好機とばかりに突撃する夕立。
身を焦がす炎の勢いに、意識がふらふら遠のいていく。
そのとき、扶桑は不思議な走馬灯を見た。


~ ~ ~

半年ほど前の話。
山城が泣きながらに私にすがっていた。アニメ艦これはクソだと。
なんで私達の出番が無いんですか。欠陥持ちだからですか。艦橋メガ盛りだからですか。だいたい、吹雪ちゃんの憧れは扶桑姉さまって公式プロフィールでも言ってるじゃないですか。なのに。なのに設定を捻じ曲げた挙句、飛行機を飛ばすしか取り柄がない腹ペコ空母に席を譲るなんて。声が似ているくらいで。空母に改装されたってロクなことないじゃない。加賀さんとか。辛いです。不幸です。扶桑型は戦艦なの。主砲が撃てるんです。十分な火力のハズ。そりゃあ他の戦艦と比べたらちょっと打たれ弱いかもしれないけど、改装すれば水上機だって使えるじゃないですか。あの空母と違って改二にだってなれるんですよ。アニメ製作陣は正気ですか。なんなんですか。嫌がらせですか。せめて、私はいいから、せめて姉さまだけでも出してくれたらいいじゃないですか。姉さま、姉さま、わたしはどうしたらいいんですか。どうなんですか。

………。
…山城、ごめんなさいね。あの時は泣いているあなたになにも言えなかったけど、私だって、あなたと同じように思っていたの。山城。あなたも聞いているでしょうけど、アニメ艦これは2期をやるそうよ。それから劇場版も。ふふ、おかしい話よね。多方面作戦なんてロクなことにはならないって、あの歴史が物語っているのにね。製作陣は愚かだわ。山城。もうシナリオに期待してはダメよ。艦これ改、とかいうのも多分ダメな気がするわ。山城、PC版とグッズだけを楽しみなさい。山城、…後は、あなたに全て任せるわ…。

心理描写に泣いた……w

~ ~ ~

そんな所で、扶桑の意識はふっ、と現実に引き戻される。ずいぶん長い時間意識を奪われたように思われたが、まだ勝負が決まっていないのを見ると、どうやら一瞬のうちのことだったようだ。
変な夢ね…。なんでこんな時になって、こんな夢を見るのかしら?
自嘲気味に少し笑ってみせるが、それで現状が打開される訳でもない。

夕立「覚悟っ!!!」

扶桑「三式弾装填!信管零距離!撃てッ!!!」

夕立「!?」

轟音と共に、大きく砲筒が跳ね上がる。
砲から撃ち出された弾はすぐさま破裂し、さながらショットガンのように無数の子弾をばら撒いていく。
勝利を確信して正面突破に踏み切った夕立には、この予想外の反撃は避けられなかった。
小さな弾の一つ一つが旋風の如く走り抜け、艤装を、制服を、容赦なく傷つけ切り裂き、皮膚を裂き、肉を抉り、骨が……

ともかく、ソロモンの凶犬は今回の演習に参加した艦娘のうち最も甚大な被害を被ったことは間違いなかった。

でも扶桑姉さまBDの番宣に出てるじゃん

(∩゜д゜)アーアーキコエナーイ

一ヶ月も放置してもた

青葉は走った。ひたすら走った。最近こんなに急ぐ事があったろうか。…いや、わりとあるか。
それにしても重い。意識の無い人間というのは、思っている以上に重い。しかも三人、艤装のオマケつき。私はなんのトレーニングをしているんだ。ちぎれそうな腕の痛みをぐっとこらえ、力なく垂れ下がる仲間を抱え上げる。体をきっていく潮風が、開きっぱなしの傷口をじんじんと痛めつける。
あと少し。もう少し…。
だが、島の端まで近づきすぎたのはミスだったか。
海底の岩礁に足を取られ、青葉は物凄い勢いでずっこけた。
―しまった……。
青葉の腕を離れ、吹っ飛んでいく三人。ごめんなさい。
でも意識ないし、大丈夫か!
白い砂浜に落下する三人を見届けて、青葉も海辺に沈み込むように倒れ伏す。
青葉はこのとき、サンゴ礁でこけたら痛い、ということを改めて学びました。


摩耶「ち、しぶといな…ッ!」

川内「同時に決めるよ!」

摩耶「アタシに命令すんな!」

川内「ハイハイ、悪うございました」

霧島「(…手練れね…いや、格闘が得意なだけかしら)」

口の悪い摩耶と、どこか飄々として掴めない川内。
仲が良いのか悪いのかわからない二人だが、相手をしている霧島からすれば、会話しながら戦っている余裕がなにより疎ましかった。
二人の挙動は乱暴かつ変則的で、とても評価に値するものではない。だが、こちらの手を尽く読みつくしているかのような立ち回りは、霧島の頭脳から冷静さをじわじわと奪っていった。
二人にすれば、冷静にこちらの攻撃をいなして反撃に転じてくる霧島の実力は厄介だった。
だからこそ二人で挑んでいるのだが、摩耶にしろ川内にしろ、跳ねっ返りの強い二人である。自分達が軽くあしらわれているようで、なんとなく苛立ってしまうのだ。
霧島さえ倒せればあとは手負いか雑魚だけだというのに…。摩耶も川内も、次第に焦り始めていた。

摩耶「こうなりゃとっとと終わらせる!」

霧島「!?」

川内「はぁ!?ちょ、ちょっと!」

痺れを切らした摩耶が、拳を振りかざして霧島に踊りかかる。川内の制止など意にも介さず、策もなくただ勢い任せの攻撃だった。
突出してきた摩耶の姿に、霧島は完全に怯んでいた。確実にいける。彼女はそう思った。ゆえに、注意力は散漫になっていた。
摩耶の足元に向かって伸びてゆく魚雷の影に気づいた川内は、慌てて彼女を制止しようとした。

摩耶「っらああああああ!!!」

川内「!危ない!!」ガッ

摩耶「な、何で止めるんだよ…ッ!?」

川内「いいから!ほっ!!」ドロンッ

爆発。
大きな水柱が真上にのびていく。
眼前で起こった一瞬のうちの慌ただしい出来事に、霧島はしばらく茫然とした。
すると背後から、聞き覚えのある黄色い声が聞こえてきた。

浦風「間に合った…?」

島風「霧島さーん、来ましたよ~!」

連装砲ちゃん「ウッス」

霧島「さっきの魚雷は…」

島風「もっちろん!」

浦風「うちらに決まってるやん!」

連装砲ちゃん「( ・∀・)v」

霧島「加賀さんは?」

浦風「なんとか安全圏に置いてきたけん、もう大丈夫やと思うけど」

霧島「予定通りね。…っと、お喋りはここまでかしらね」

川内「ひゅー、間一髪」

浦風「あ、あれ?!」

島風「なんでやられて無いの!?」

川内「簡単な話。ドロンしたのさ」

島風「なにそれ!むかつくー!」

浦風「まあまあ、落ち着いて」

摩耶「チ…ヒヨッコが、後一歩だってところを!」

川内「まーまー姐さん落ち着いて、カッカしても勝てやしないよ?」

摩耶「そうはいっても…!」

一瞬の隙を突かれ、憤る摩耶を諌める川内。
彼女とて、いつもと変わらない平静を装いつつも、胸中は焦っていた。
本来の作戦想定であれば、航空部隊の攻撃後、自分たち攻撃部隊が一気に畳み掛け勝利する予定だった。

それを考えれば、ハナから足並みは揃っていなかったのだ。
航空隊の攻撃が完了する前に先走って砲戦を始めたのがそもそも間違いだったのかもしれない。
だが、いまさらそんなことを後悔したところで結果が変わるわけもない。
こちらは自分と、摩耶と、Bismarckを含めて残り3隻。
相手は、戦艦2、駆逐艦2、の4隻といったところか。
…思考を巡らせていたそのとき、通信が届いた。
相手は…提督?

柱島提督『…川内、聞こえるか』

川内「なぁに?今それどころじゃないんだけど」

柱島提督『そんなことは知っている』

川内「じゃあ何の用なワケ?」

柱島提督『あんの狸め、変な技を小娘どもに仕込みおってからに』

川内「珍しくキレてるねぇ、提督」アッハハ

柱島提督『私とてあの男にいいようにされるのは気に食わんでな』

川内「へぇ…、それで、私たちにどうしろと?」

柱島提督『…どんな手段を講じてもかまわん、勝て』

川内「ほんとにいいのー?」

柱島提督『けしかけてきたのは向こうだ』

川内「…本当にいいんだね?」

柱島提督『ああ』

川内「承知致しました、っと!」

柱島提督『…健闘を祈る』


摩耶「提督のヤツ、なんだって?」

川内「好きに暴れていいってさ」

摩耶「…!」

摩耶は、川内のその一言の意味を即座に理解した。
…ありゃ、火つけちゃったかな?
まあ、構うまい。責任の所在の追及など、あるハズもない。どちらにせよ摩耶という艦娘は、こちらの指示に従ってはくれない女だ。
Bismarckも、我々に命令を飛ばすほどの余裕はないに決まっている。
そうなれば、この私川内も好きに戦わせてもらおうじゃないか。
むしろその方が、私にとっても面倒が無くていい。味方は誰も、我が侭で身勝手で、話も聞かない連中ばっかり。
…それは自分も同じなんだけど、ね。

声高に突っ込んでいく摩耶の後ろ姿を見送って、すぅと深呼吸をする。
そうして彼女は、声高に叫んだ。

川内「対艦忍法・分け身の術!」

その一言とともに、川内の影がひとつ、ふたつ、、三つ…。
数え切れないほどに、増える、増える、増える、増える。
夕凪に包まれる海を染め上げるように、川内の分身が増えていく。
彼女が如何にしてこのようなジツを会得したのか、誰も知らない。だが少なくとも、演習戦の形式を根本から覆す反則行為であることに変わりはない。

霧島「そんな、増えた…?」

島風「嘘ー?!」

浦風「そ、そんなん卑怯じゃ!」

川内「「「「卑怯?反則?あっはは、そりゃそうだ!」」」」

川内「「「「でも悲しいけどこれ、演習なのよね!」」」」

これで一気に終わらせる。
もはや、手段は択ばない。
この戦いに勝つのは私だ。この身体に流れるニンジャの血が、冷徹に、獰猛になれと叫んでいる。
(※艦娘です)
命令を出すだけの上司でも、正面しか見えていない戦馬鹿でも、ましてや目の前の敵でもない。
この戦いの勝利を得るのは、私だけでいいのだ。
勝利を欲する歪んだ感情は、目に見える砲弾の雨霰となって霧島たちを襲った。

浦風「おどりゃーこのぉー!」

川内「狙いが甘いよ!」

浦風「この、このっ!」

川内「終わりだよ!」

浦風「…くっ…!!」


ガキィン...!

川内「…なに?」

天龍「何やってくれてンだ…テメェ…」

川内「アンタ…、ああ、なるほどね」

天龍「おい浦風、ここは俺が引き受ける」

浦風「…了解じゃ!」

川内「へえ、生きてたんだ」

天龍「変なマネしやがって、なんのつもりだ」

川内「はーい?」

天龍「こんな戦い方が許されると思ってんのかよ」

川内「思ってないけど?」

天龍「だったら今すぐ止めさせろ」

川内「嫌だね。そしたら勝てないじゃん」

天龍「ふざけんな!!」

川内「ちょっと、びっくりさせないでよー」

天龍「……」

川内「……フフ」

川内「…アンタの言いたいことはわかるよ」

川内「でも言っておくけど、これは私が身につけた技術」

川内「私自身の実力の一部」

川内「それを使わないってことは、言うなれば相手に手心加えてるってことなワケ」

川内「アンタも本気じゃない相手とやり合うのはヤでしょ?」

天龍「……」ギリ...

川内「それに、奇襲なんていうセコい手段をいきなり使ってきたのは誰だったかなー」

天龍「それとこれとは別だ!」

川内「あぁもういいよ、これ以上話しても時間のムダじゃない?」

川内「私のやり方に文句があるなら、勝ってから言ってよね」

天龍「…いつからお前がルールになった」

川内「たった今決めた、それじゃダメ?」

天龍「ふざけるなッ…!!!」

川内「ふーん…いいよ、やってみようじゃない!」

追いついたと思ったら、息をつく間もなくコレだ。
苛立つ脳に酸素が行き届いていないのか、籠るような熱と不思議な倦怠感が天龍の意識にまとわりつく。
睨み合いを終え、即座に臨戦態勢を取る二人。
戦いの火蓋は、切られた。


木曾「…ったく、たかだか演習でムキになりすぎなんだよ」

川内(分身)「ほわちゃー!」

木曾「せいっ…やぁぁーッ!!!」

川内(分身)「なんと!」チュドーン

仕掛けてくる分身をいなしつつ、集中砲火を浴びる味方を救出しに向かう。
天龍とは別れてしまったが、あちらはどうだろうか。
厄介なことになっていないと良いが…無理な話か。
包囲を潜り抜け、その中心、味方の艦影―たぶん、日向か?―に向かって速力を上げていく。
海中に放たれた魚雷が、曲線的な軌道を描いて川内の分身を攻撃する。

日向「全く…私に当たっていたらどうするつもりだったのだ」

木曾「まさか、俺が味方に当てるとでも?」

日向「いいや」

木曾「ここは引こう。一旦態勢を立て直してから…」

言い終わらないうちに、鈍い衝撃が木曾を襲った。
意識を飛ばされそうな一撃に耐えながら、攻撃が飛んできた方向に向きを変える。

木曾「ぐ…ふっ…!」

日向「木曾!」

摩耶「川内のヤロー、無茶苦茶なマネしやがって…!」

木曾「…川内だけかと思えば、まだいやがったのか」

摩耶「ンだと、この!」ブン

木曾「っと…、こりゃ面倒になったな…」

摩耶「避けんじゃねえよ!沈め!」

木曾「…仕方ねぇ、相手してやるよ!」

いったん中断
おかしい、話の方向性がわからない
勢いで書くもんじゃないな

乙乙
さすが忍者汚い

川内の分身からの攻撃を振り切りつつ、霧島は提督へ通信を出す。
こんな事態は前代未聞である。救護班も手配してもらう必要があるし、そのためにはなによりもこの状況を一刻も早く止めさせなければ。

霧島「…司令!やめさせることは出来ないのですか?」

提督『んー……そうねぇ』

霧島「どうなんですか?!」

提督『……しかしねぇ』

霧島「司令、中止命令を!」

提督『…はぁ、霧島クン』

提督『私に通信を掛けてくるヒマがあったら、目の前の相手に集中したまえ』

霧島「な…!」

提督『なに、実戦ではないのだから沈みはせん』

提督『もう少し頑張ってくれたまえ、私からはそれだけだ』ブツッ

霧島「ちょっと、司令!?」

霧島「……はぁ」

島風「霧島…さん?」

最後の望みが断たれた。
どうやらこのイカれた試合に、最後まで付き合わなければいけないらしい。
身内への怒りが、熱くなりすぎた頭を逆に冷やしてくれる。
心配げに顔を覗きこんでくる島風に大丈夫よ、と言って、追撃してくる敵の方へ振り向く。
どうせ逃げも隠れも出来ないのなら、最後まで派手にやり合っていた方が性に合う。
レンズの煤汚れた眼鏡をくいっと正位置に直す。
その後ろの鋭い眼光が、同時にギラリと輝いたようにみえた。


天龍「ふっ、はっ!」ブン

川内「ほらほら、こっちこっち!」

川内「下手クソだね、当たらないよ?」

天龍「こ、この……ッ!」ブンッ

川内「こっちだってー、後ろ後ろ!」

天龍「なっ?!」

川内「そりゃっ!」バキッ

天龍「ぐあぁっ!!」

川内「あれ?もうお終い?」

龍の背中に、鋭い蹴りが突き刺さる。
戦いの最中にふと、川内は思った。
私はなにを意固地になってここまでやっているんだ。そんな必要はないはずなのに。
提督に命令されたから?自分のプライドが許せないから?
…まあいいや。それを考えるのは、コイツを海に沈めた後でもいい。

天龍「っるせぇ…ナメてんじゃねえぞ!」バッ

川内「遅いよ、遅い」パシ

天龍「!は、離せ!」ググ

川内「こんなナマクラで私を倒そうなんて思ってたわけだ…」ググ...

天龍「っこのぉ…ッ!」

川内「えい」バキン

天龍「な……!」

折れた。
幾度もの戦いを共に駆け抜け、その刃をすり減らしてきた刀が。
…本当のところを言わせてもらうとそこまで思い入れはないのだが、やっぱり刃物は信頼性が違う。
それをこうもあっさり折られるとなると…心を折られているようなものだ。

1です
以前から度々スレをエタらせてきた自分ですが、今回ばかりは書ききりたい所です…
なるべく年末年始ごろにまとめて投下して収拾つけられるようにしたいと思っています。

おう、あくしろよ

再開するんじゃ

天龍「お、俺の…!」

川内「あっは、ゴメンゴメン、折っちゃった」

天龍「刀が、折れ……」

川内「…なにボーっとしてんのさ」バキッ

天龍「ぐふっ?!」

川内「さぁ…、もっと戦おうよ!」グググ...

天龍「っ、あぐ、ぐッ……!」

川内「…やめてよ、これじゃ私が汚い忍者みたいじゃない?」

天龍「ぎ…、かは…ぅ…」

川内「もう一度立ち上がって見せなよ、ポンコツが!」

天龍「…ぎ…っ…」

ただ足だけはしっかりと海面に着けて、ひたすらに川内の攻撃にさらされるままの天龍。
出血と激痛のために意識はどんどんと遠のき、立っているのもやっとになってしまった。

川内「…ギブアップかな?」

天龍「………」

川内「もしもーし」

天龍「………」

川内「ねえ、生きてる?」

天龍「………」

川内「無理せず言えばいいんだよー、降参だって」

天龍「…」ギリ...

天龍「ふざけんな…」

川内「お」

天龍「まだだ……」

川内「………」

天龍「…まだ…、終わって、ねぇ…!」

川内「…ふーん」

川内「…なんでそんなに必死なの?」

川内「何でそうまでして、戦おうとするの?」

天龍「理由なんて…、…俺の、勝手だろうが…」

川内「…へえ、カッコいいじゃん」

…そういえば、俺にはまだあるじゃないか。
たった一人の妹から託されたとっておきが。

こういう展開を予測してたんだな、龍田。見直した、いや、やっぱりお前が一番信頼できる。
背中の艤装に雑に括りつけた薙刀に手を掛け、やっとの思いで力を込め引き抜く。

天龍「反撃、開始だ…!!」

川内「いい目だね…面白くなってきたよ!」

口の端に滲む血を拭うと、どこか虚ろげだった天龍の眼に強い生気が宿る。
先程までまったくと言っていいほどなかった気迫が、その外側に溢れ出るほどに感じられる。
いったい今のやり取りの間に、なにが彼女を変えるほどのことがあったのだろうか。川内は不思議に思う。
…しかし所詮、無謀な足掻きに過ぎない。
分身を結集させ、攻勢に転じようと構える天龍の前に立ちふさがった。

◇ ◇ ◇


摩耶「だあぁッ!」

木曾「…く、っそが…!」

摩耶「大したことねーな、あぁ?!」

木曾「ちっ……」

頭に血が上っているのかと思えば、摩耶は正確な砲撃を繰り出してくる。
これは、手こずる訳だ…。
間合いを取って得意の酸素魚雷で仕留めたいところだが、その隙さえ見当たらない。
互いに互いの攻撃を相殺し合う攻防が続く。
そのただなかで一刹那、木曾に生じたわずかな隙。
その隙を摩耶は見逃さなかった。

摩耶「これで終いに…してやるよ!!」

木曾「!?」

突き上げられた左脚が、木曾の頭蓋を激しく叩く。
普通の人間であれば頭蓋骨陥没、頸椎損傷で間違いなく即死だが、艦娘なのでそうはいかない。
衝撃で7、8メートル海面にヘッドスライディングを敢行した木曾に、追撃に摩耶は容赦なく20.3cm砲を叩きこむ。

摩耶「沈め、っらぁ!」ドォンドォン

木曾「っ、何っ!?」

バランスを崩した木曾は、それに対して回避行動を取れなかった。
つんざく着弾音と同時に、黒煙が轟々と立ち上る。
装備していた魚雷にでも誘爆したのか、数回、爆発の音が響く。

摩耶「…やったか…?いや…」

まだこの目で確かめない限りは、撃沈とはいえない。
摩耶は不穏な空気を肌に感じつつ、煙の発する元へ歩を進める。
―敵はやはり、沈んでなどいなかった。

木曾「…よぉ…、いい腕だな……!」

摩耶「チ…今度こそ仕留める!」ジャキッ

木曾「さぁて……、そいつは、どうかな?」

満身創痍の木曾。自分の血に濡れた手で、首にかけていたお守りを外す。
そう、出撃前に大井から預かったものだ。
そのぱんぱんに膨らんだ御守りの袋口から、なにかがぴょこんと顔を出した。

摩耶「そいつは……まさか!」

木曾「…そう。いわゆるダメコン、って奴さ」

木曾「さ、頼むぜ!」

応急修理女神「マカセイッ!」ピロリーン

大井姉も粋なことをしてくれるじゃねぇか…
コイツの出所はともかくとして。
無残な有様だった艤装も、全身の生傷も、元の通りに回復していく。

木曾「…ふぅ、そんじゃ、仕切り直しと行こうか?」

摩耶「勝った気になんなよ…!!」

木曾「そっちこそ!」

マントを翻し、臨戦態勢に移る。
ダメコンまで使って負けるとあっては、流石に名が廃るというものだ。
もはや、敗北するわけにはいかない。

今日はここまで
このペースで31日までには終わるといいな…

再開します
多分これで終わると思いまする

◇ ◇ ◇

天龍「おらおらおらおらぁ!さっきの威勢はどうしたぁ!?」

川内(分身)「グワーッ!サラバ!」ズバッ

川内(分身)「オタッシャデー!」ザクッ

―奴は実力を隠していた。鷹が爪を隠すように。
私は侮っていた。奴は所詮、古池でふんぞり返るだけの蛙に過ぎんと。
だがそれは大きな過ちであった。私はその研ぎ澄まされた爪を、そうとは知らずに解き放ってしまった。
いまや相手は水を得た魚、いや龍である。縦横無尽に海面を駆けずる一匹の龍。

分身が束になっても敵わない現状をみれば一目瞭然である。
―もはや我の制するところに非ず。
その顎に収まるまでの時間を稼ぐことしかできない。

川内「…ちょっとちょっと、弾幕薄いよー?何やってんの!」

川内(分身)「んんw無理ですなwいまの拙者達では抑えきれませんぞwコポォ」

川内(分身)「いいよ、(正面からかかって)来いよ!」

川内「あー!口ばっか動かしてないでさっさと行く!」


◇ ◇ ◇

―翻るマントが、海面で踊る。
夕凪の海というステージを彩るかのように、あちらこちらで水柱が上がる。
狙い澄ました軌道は一つとない、文字通りの乱れ撃ち。
絶え間ない轟音と飛沫が摩耶を包み込み、混乱の渦に巻き込んでいく。
さりとて摩耶も歴戦の巡洋艦。魚雷攻撃の間をかいくぐり、隻眼の射手の元へと迫る―がしかし。

摩耶「いない……?!」

木曾「――こっちだよ」

摩耶「ち…っ」

木曾は爆発の水柱を煙幕代わりにして、すでに摩耶の背後を取っていた。

振りかざされたサーベルを反射的に身体を逸らして回避する。
体に傷はなかったが、切っ先が背中の艤装に突き刺さった。
一瞬にして機関部が煙を噴きだす。

摩耶「こんのぉ…あたしの艤装をよくもッ!」

木曾「おっと!?」

全身に配置された25mm機銃を水平発射し、木曾を怯ませる。
さっきまであちらこちらにいた川内の分身がいつの間にか消えている。
―なんだか嫌な予感がする。
機関部をやられた今の摩耶には、十二分に力を出すだけの余裕はなかった。

木曾「打つ手なし、って顔だな」

摩耶「…そーさ、それがどうした?」

木曾「……なあ、見えるか?」

摩耶「なにがさ」

木曾「あっちだよあっち」クイクイ

摩耶「!川内が…!!」

木曾「…おたく、もう勝てんぜ」

摩耶「………」


天龍「うらっ!たあっ!せいぃーッ!!」

川内「これはとんだ大誤算だね…くっ!」

天龍「とどめッ!」

川内「あぶなっ?!」

天龍「っ、後ろか!」

川内「わっバレたか」

天龍「ワンパターンなんだよ!」

川内「それブーメランだから!てい!」

天龍「おりゃああっ!!」

大きく踏み込んだ大上段の一撃を、川内はギリギリのところでかわす。
もはや防戦一方だ。追い打ちをかけるように繰り出される切り払い、横薙ぎ。
反撃らしいことも出来ないまま、水面を転がるように逃げ続けるしかなかった。

川内「はぁっ…っ痛ぅ……」

天龍「ふんっ!」ブンッ

川内「おっと…」

天龍「まだだ!」ザクッ

川内「うあ、っ…!?」

天龍「やっと捕まえたぜ…」

川内「…はぁっ、はぁっ」

川内「ちょっとは加減、してよね…」

天龍「してやりたいのは山々だが…」

天龍「俺は手先が器用じゃないからな」ジャキン

川内「ふふっ…そっかぁ……」

もう抵抗する余力もなかった。

天龍「これで終いにしてやるよ…はあぁっ!」

川内「っ!」

天龍が薙刀を勢い良く振り下ろす。
死を覚悟して目をつむる川内。
しかし、その刃は届いていなかった。

天龍「な…っ」ギリギリ...

木曾「やれやれ、ホントに殺す気かよ」ギギッ...

摩耶「間に合ったみたいだな…」

天龍「木曾?!」

木曾「暴れ龍を止めに来たぜ」

天龍「はぁ、カッコつけてんじゃねえよ」

木曾「勝負はついた、もういいだろ」

天龍「……わぁったよ」

摩耶「こんなボロボロになっちまって…、ほら、肩貸してやる」

川内「…ぁー、悪いね姐さん」

摩耶「ち、感謝しろよ!」

ちょうどその頃。
遅れて到着した長門と、霧島との間で話し合いが終わっていた。
これ以上の戦闘継続が危険を極めることは明らかである。
お互いの判断により、戦闘の中止が決められた。

長門「終わったようだな」

霧島「ええ」

長門「こちらの者が迷惑をかけてすまなかった、私から謝罪しよう」

霧島「いえいえ、それはこちらも同じことです」

長門「…お互い面倒な同僚を持つと苦労するな」

霧島「それから面倒な上司もですね…」

天龍「おーい!霧島ー!」

木曾「…あれ、あんたも来てたのか」

天龍「のんきに立ち話なんてどーしたんだよ?」

霧島「ふふっ、決着はついた、ということですよ」

摩耶「なんだ、もう話はついてるってわけ?」

長門「そういうことだ」

霧島「うちから救護班をすぐに手配します」

長門「ああ、頼む」



こうして、秋のひと波乱は互いになんの成果もない形で幕を閉じた……


◇ ◇ ◇

~鎮守府・入渠ドック~

カポーン...


島風「よぉーし!島風一番乗り!いっきまーす!」

鈴谷「元気だねぇ、…あ゛-疲れたぁ…」

青葉「青葉頑張りました…だからもういいですよね…」

最上「二人とも浸かったまま寝るのはやめよ、ねっ?」

青葉「Zzz...」

鈴谷「くかーっ…ごぽごぽごぽ...」

最上「鈴谷、沈んでるよ!?」

鈴谷「はっ!…あっぶねえ…マジやばかった…」

島風「おうっ?」

夕立「うぅぅ~…痛い痛い痛いっぽい~!」

初春「こ、こら!じっとせんか!」

修理妖精「キズガナオラネエダロウガ」

夕立「だって、傷口にすごくしみるっぽい!」グスン

浦風「妖精さん…、もーちょっと優しく手当てしてあげてくれん?」

修理妖精「...シャーネェナア」


翔鶴「…まさかまともな活躍が無いなんて」ズーン

瑞鶴「出落ちだったね翔鶴姉…」ズーン

祥鳳「私なりに頑張ったのだけれど…」ズーン

加賀「さすがに気分が高揚してます」キラキラ

瑞鶴「翔鶴姉この一航戦潰していいかな」ピキ

翔鶴「許可するわ」

加賀「…返り討ちにされたいのかしら」

ギャーギャー
グワーッ!
ザブンザブン

瑞鳳「怒りの矛先間違ってるからぁ!皆抑えてってばぁ!」


チャプン...

Bismarck「その…悪かったわね」

長門「何がだ?」

Bismarck「だからその…」

長門「…大口を叩いた割にろくに戦果を出せなかったことか?」

Bismarck「はっきり言わないでよ!」

長門「気にするな、今日が風向きの悪い日だった…」

長門「それだけのことさ」

Bismarck「……」


霧島「榛名」

榛名「…霧島、お疲れ様」

霧島「お互いに、ね…隣いいかしら」

榛名「もちろん、どうぞ」

霧島「…はぁ……」チャプ

榛名「…ふう…」

霧島「…どうですか、そちらの姉様は」

榛名「えっ、あぁ…はい」

榛名「金剛お姉様は最近コーヒーに嵌ってらっしゃいますよ」

霧島「…それ大丈夫なんですか」

榛名「…榛名は大丈夫ですよ?」

霧島「いや、貴女にネタ振りしたわけではないのだけれど」


~ ~ ~


天龍「ふうー………」

木曾「……」

天龍「……」

木曾「…天龍」

天龍「……んだよ」

木曾「お疲れさん」

天龍「おめーもよ」

木曾「……はぁ…」

天龍「……」

木曾「……」

天龍「…何時ぶりだろうな、ああして一緒に戦うのは」

木曾「そうだな…いつだったっけなあ…」

天龍「……」

木曾「……」

天龍「…あん時みたいで、なんか楽しかった」

木曾「そーかい」

天龍「…お前は」

木曾「俺も、まあ…な」

天龍「…素直に言えよ!」バシッ

木曾「じゃあ素直に言うけど」

天龍「お」

木曾「今日は久々にお前と一緒に戦えて、良かったと思ってる」

天龍「…ふ~ん……」

木曾「……」

天龍「…なぁんか…、恥ずかしいってか、照れるな」

木曾「…なんだよそれ」ハハ...

天龍「あー忘れろ!この話無し!」

木曾「逃げんなよー」


おしまい

~おまけ~

放送『えー応急修理女神を勝手に持ち出した者、聞こえているなら即刻名乗り出なさい』

大井「!!!」ビクッ!!!

北上「ん?どうしたの大井っち」

大井「な、なんでもありませんよ、ちょっと寒くって」

北上「そうかぁ…それならいいけど」

北上「それにしてもあれを勝手に使うなんて、すごい人もいたもんだねー」

大井「そ、そうですね…あはは…」


おわり

とりあえず、完走…
2ヶ月もスレほっぽりだしてすいませんでした、反省はしてないです
近いうちにまた性懲りもなくスレを立てますので、どうか生温かい目で見守ってください
依頼出してきます

おつ

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