少女「ねえ、家に帰りたい」 誘拐犯「…」 (189)

家に帰ると、誰もいなかった。

少女「…」

いつもはリビングで寝転がりながらテレビを見ている母が、いなかった。

少女「…ただいまー?」

部屋の空気は冷えており、しんとしていた。

少女「…お母さん、いないの?」

変だなあ。

少女「…」フゥ

少女(買い物にでも行ってるのかなあ。でも、もう夕方なのに)

仕事をしていない母は、普段昼間に全ての家事を済ませて、後はぐうたらするのだ。

少女「…」

首をひねりながらも部屋に入ると、

少女「…え」

「…」



知らない人が、私のベッドの上に座っていた。

10月1日 午後6時30分

ゴオオ…

少女「…」

誘拐犯「…」

少女(え、何この状況)

少女(ちょっと待ってこの人マジでどこ行ってるの?え?ヤバくない?ドッキリ?え?)


「…シー」

奴の第一声は、それだった。

「静かにして」

少女「…」

叫ぼうにも、声が出ない。

私のベッドに腰掛けている男は、確実に私の知り合いではない。

少女「…ど、どち」

「…」

男が立ち上がり、一歩私に近づく。

あ。逃げなきゃ。

「…動かないで」

何でだ。

少女「え、え、」

「動いたら殺す」


あ、これヤバいやつなんじゃ。

少女「え、あ」

男の手には何か光るものが握られていた。

「動かないでね」

男は再度静かにそう言うと、私のほうに近づいた。

「…両手を出して」

私は素直に出した。

男の手に握られているものが、かなり鋭い出刃包丁だと今更気づいたからだ。

男は私の手に手錠をかけた。

少女「…え、あの。」

「ついてきて」

少女「…」

私が動かないでいるのを見て、男は手錠を引っ張った。

「…」

小首をかしげて

「刺すよ」

勿論従った。

男はすいすいと玄関を出て、すぐ近くにある駐車場へと私を連れて行った。

叫ぶ、逃げる、色々方法はあっただろう。何でしなかったのか?

人々は私をそう追及するだろう。

逃げる。 私の50メートル走のタイムは10秒だ。

叫ぶ。 多分、助けが来るより早く刺されて死ぬ。

「乗って」

少女「…」

「乗って」

私は、男のものであろう車の助手席に乗るより他がなかった。

少女「…」

誘拐犯「…」

そして、現在に至る。

少女(…車に乗ってから、5分くらいか?)

少女(この人怖すぎだろ…。このムラだらけの犯行といい態度といい完全にキチガ●…)

誘拐犯「…」チラ

少女「…」

誘拐犯「寒くない?」

少女「あ、いえ」

誘拐犯「そう」

ブロロ…

少女(いやいやいやいやいや怖い怖い怖い絶対ヤバいよこの人身代金とかじゃないな殺される絶対)バクバクバク

誘拐犯は私に目隠しも猿轡もなにもしない。

しいて言えばこの手錠だけが私を拘束するモノだ。

逃げれそうな気はする。

誘拐犯「…」

でもきっと、捕まった時のリスクは想像を絶する。

少女「…」

何か、何かしなくちゃ。

私は咄嗟に、こう口に出していた。

少女「…>>12

クチュン

少女「…くちゅん」

そういえばさっきから鼻がムズムズしていた。

くしゃみが出てしまった。

誘拐犯「…」チラ

少女「…」

誘拐犯「…」カチ

男が、暖房をつけた。

少女(寒かったわけじゃないんだけどなあ…)

私は、殺されるんだろうか。

というかこいつは誰なんだろうか。

しかし今から殺す相手がクシャミしたからといって、暖房をつけるだろうか。

この人のおつむの構造、大丈夫だろうか。

誘拐犯「…まだ夏服なんだ」

少女「え?」

誘拐犯「いや、10月なのにまだ中間服に変えてないから。寒くない?」

少女「あ、…はぁ」

確かに私の制服は、夏服のセーラーのままだ。

誘拐犯「…」

少女(こ…こわああああああああああああぁあああああああ)

やばい絶対やばいこの人。

何で若干フランクなんだマジで怖いよ助けてお母さん。

少女「…」

死にたくない。

マジで。

生きてることが特別楽しいわけでもないが、死ぬのはごめんだ。

少女「…」

なにか、犯人のスキをつかなければいけない。

私はまた口を開いた。

少女「>>17

あの…私喘息持ちで、吸入器家に置きっぱなしで…

少女「…あのう」

誘拐犯「んー?」

少女「私、喘息持ちで…吸入器家に置きっぱなしなんです…」

誘拐犯「…」

少女「あれないと最悪、発作で死ぬ場合もあるんですけど…」

嘘だ。

私の持病といえば、軽い偏頭痛くらいだ。

誘拐犯「嘘つけ」

男はふっと笑った。

誘拐犯「君にそんな持病は無い」

少女「あ、あり、ます」

誘拐犯「嘘だよ。君は両親ともに健康だから、そんな疾患無いよ」

少女「…」

誘拐犯「でも、どうしても吸入器が欲しいっていうなら、…薬局とかで買ってあげてもいいよ?」

誘拐犯「絶対使わないだろうけど」

男がハンドルを切った。

少女「…」

私は背中に汗をかきはじめていた。

少女「…」

誘拐犯「吸入器って、薬局に売ってるものなの?」

知らない。

少女「…」

誘拐犯「知らないんだ。じゃあ、喘息なんて嘘だよね」

少女「…」

怖い。

なんかずっと微笑んでるし、口調が優しげなのが余計怖い。

誘拐犯「帰さないよ」

男は笑った。

少女(…何で、私がこんなめに)

そうだ。理由、聞かなきゃ。

…でも、どういえばいいんだろう。

少女「>>22

How are you?

少女「…は、はうあーゆー?」

誘拐犯「俺が外人に見える?」

少女「…」

誘拐犯「混乱してるね」

違う、違う。

私はこいつに誘拐する理由を聞きたいんだ。

冷静になれ、本当。一挙一動に私の未来かかってるんだから。

少女「…あ、…」

少女「あ、あなた、誰?」

誘拐犯「…」

少女「何で、私を誘拐…するの?」

誘拐犯「…」

ちら、と男がこっちを見た。

少し長めの黒髪と、白い顔の男だった。

割と端正な顔立ちをしていた。 最近流行の、なんとかっていう俳優に目元が似ている。

誘拐犯「…」

誘拐犯「名前は、言えない」

だろうな。

誘拐犯「君を誘拐した理由は、」

誘拐犯「…>>26

処女膜から声が出てるから

誘拐犯「処女膜から声が出でるから」

あ、こいつ本当にガチな奴だ。

誘拐犯「…」

少女「…」

そろそろ泣くぞ。

誘拐犯「ごめん、冗談」

少女「はあ?」

誘拐犯「君が怖がってるかと思って。和ませるために面白いこと言おうと思った」

誘拐犯「でも女性に処女膜とか失礼だよね。ごめん」

少女「……」

それはそれで怖いよ。

誘拐犯「君、猥談とか好きなタイプかと思ってたよ」

少女「は、い?」

誘拐犯「だって友達とよくそういう、色気のある話してるからさ」

少女「…」

誘拐犯「でも年頃だし、耳年増になるのは当たり前か」

少女「わ、私のこと、…何で知ってるの」

誘拐犯「さあ、何ででしょう」

ハンドルを切る。

いつしか、暗い山道に入っていた。

少女「…」

少女「わ、私…殺されるの?」

誘拐犯「は?」

男が目を丸くした。

誘拐犯「何?」

少女「私を、殺したい、…から。こういうこと、するの」

少女「それか、…レイプ、とか」

心臓が破裂しそうだった。目が段々熱くなってくる。

誘拐犯「何言ってんの」

誘拐犯「そんなおっかないこと、しないよー」

爽やかな笑顔で男は言う。

少女「じゃあ、じゃあ何でこんなことするの!怖い、帰りたい!あんた誰なのマジで」

誘拐犯「危ない。座って」

少女「お願い、家に帰してよ!怖いんだってば!」

誘拐犯「ちょっと落ち着こうか」

少女「無理!ほんとう、無、…」

誘拐犯「絶対殺さないし、君を傷つけたりはしない」

誘拐犯「…んー。まあでも場合による。君の態度次第で」

少女「だから、だから何で私にこんなことするの!?」

誘拐犯「…」

男が私を、じっと見た。


誘拐犯「君を助けたいんだ」

男はそういった。

少女「はあ…?」

助けるって何だ。

この状況から助けてくれよ、何言ってるんだこのキチガイ。

誘拐犯「色々理由はあるよ。でも、俺がこうしてるのは犯罪目的じゃない」

誘拐犯「身代金とか、殺害とか、レイプとか…。そんな目的じゃないんだよ、少女」

少女「…」

誘拐犯「君も理由が今に分かるよ。それまで、少し落ち着いて考えてみるといい」

少女「なん、で」

誘拐犯「んー?」

少女「何で私の名前、知ってるの」

あれ、目が霞む。

「さぁ」

なんか、すごく眠い。

「なんででしょう」

ふらふらする。

「あれ、だいじょうぶ?」

少女「…」


急に目の前が暗くなった。

「ねえ少女ー」

「今日さ、駅前に新しくできたケーキ屋さんいかない?」

あー、今日は無理

「なんで?」

いや、宿題多いし予習しないと

「…真面目すぎー。そんなの写せばいいじゃん?ねえ?」

「そうだよー。行こう」

いやー、ごめん、門限もあるし帰る。

「…そっかー。じゃあ、また今度」

「残念ー」

うん、ごめんね。また明日。

「ばいばいー」

「気をつけて帰れよー」

はいはーい。


少女「…」モゾ

少女「…ん」

目を開けると、そこには

少女「…う、ん?」

>>39があった。

ポケモン

ポケ●ンがあった。

少女「…」

ピカチ●ウのぬいぐるみだ。

少女「…」

ボタンがあったので押してみる。

ピカチュウ「ピカピカー」

少女「…」

というか、どこだここ。

少女「…ん」

ジャラ

少女「…え、マジ?」

私はベッドの上に寝ていた。

…左手に嵌められた手錠の一方は、ベッドに繋がっている。

少女「…」

勿論、動かない。

「あ、おはよ」

少女「!!!」ビクッ

誘拐犯「結構早く起きたね」

少女「え、どこですかここ」

誘拐犯「ホテル」

少女「……」

誘拐犯「あ、ちゃんとした方の。やらしい方じゃないよ」

少女「帰りたい」

誘拐犯「何度も言うけど、それは無理」

少女「…」

誘拐犯「あ、そのヌイグルミ気に入ってくれた?」

少女「全然」

自由な右手でピカチュウを叩くと、下から「ピピカチュウ」と悲鳴があがった。

誘拐犯「そっかー…。妖●ウォッチのほうがよかったかな」

少女「そういう問題じゃない」

誘拐犯「おお、君なんか素になってるね。いつもどおりの君だ」

少女「だから何で知ってるのよ、あんた誰」

誘拐犯「…うーん、ひみつ」

少女「…」

段々恐怖を通り越してイライラしてきた。

それに、なんとなく分かる。こいつは恐らく絶対に私を傷つけないし、必要以上に触れもしない。

今だって3歩ほど下がったところから話しかけているんだ。

少女「今、何時ですか」

誘拐犯「8時くらいかな」

少女「…」

誘拐犯「おなか空いてない?君、何も食べてないだろ」

少女「いりません」

誘拐犯「そう言わずに。君はお昼にお弁当食べてから、学校近くのコンビニで買ったジュースを飲んだよね」

少女「…」

誘拐犯「それだけじゃ、すぐおなか空くよ。君、結構食べるほうだし」

少女「あんた、私のストーカーなのね」

誘拐犯「その呼び方はかなり傷つくけど、一般的な観点から言ったらそうかもしれない」

少女「キモい。…死んで」

誘拐犯「ひどい…」

少女「…気分悪い」

誘拐犯「ああ、ごめんね。あの薬ちょっと効きすぎたのかな」

くすり。

そういえば私は、バス停近くのコンビニでジュースを買ったあと、

…トイレに行きたくなって、ボトルをベンチに置いたままコンビニに戻った。

少女「ああああああああ!!」

誘拐犯「カルピスって味が濃いから、気づきにくいよね。大成功だ」

少女「何を飲ませたの、ヤバいやつじゃないでしょうね!?」

誘拐犯「極めて一般的な睡眠導入剤だよ」

少女「きっしょ…。ふざけんなよ!!」

誘拐犯「いいね、君も女子高生らしい罵倒ができるんだ」

少女「…っ」

誘拐犯「とにかく何か口に入れたほうがいいよ」

男は、白いビニール袋を掲げてみせた。

誘拐犯「君の好きなもの、色々買ってる。何が食べたい?」

少女「いらない」

誘拐犯「…何も盛ってない。ほら、パッケージ開けた形跡ないでしょ?」

少女「いらない」

誘拐犯「こう言ったほうがいいかな?食べなさい」

少女「…」

ぞくりとした。

一瞬空気が確実に冷えた気がした。

少女「…」

誘拐犯「食べるよね?」

無言で頷く。

少女「…」

男は微笑んで、ビニールの中身を並べ始めた。

その食べ物全てが私の好物で、ますます胃の中が寒くなる。

少女(本当に、…ストーカーが?)

そんな兆候なかったのに。

嫌がらせも、電話も、手紙も貰ったこと無い。

初めてのアプローチがこれって、早急すぎやしないか。

誘拐犯「はい、何が良い?」

にこやかに言う男。

少女「…」

選ばなきゃ不味いことになりそうだ。

少女「じゃあ、…>>49

ドリアン

少女「ドリアンで」

誘拐犯「…」クス

少女「猛烈にドリアンが食べたい。買ってきて」

誘拐犯「ドリアンなんか食べたことないくせに」

少女「好物なのよ。ドリアン食べた過ぎて死にそう」

誘拐犯「こんな密室で食べたら、本当に死ぬよ」

少女「ドリアンはやく」

誘拐犯「いい加減にしなさい」

少女「…」

こんなのに引っかかるわけないか。

誘拐犯「サンドイッチでいいね?はい」

少女「…」

誘拐犯「何憮然としてんの。俺、馬鹿じゃないよ。買いに行くわけないじゃん」

少女「うるさい」

誘拐犯「食べれる?手伝おうか?」

少女「いらない触らないで近づかないで」

誘拐犯「…はいはい」クス

少女「…」モグ

少女「…こんなことして、許されると思ってるの」

誘拐犯「何が?」

男は暢気に私が選ばなかったプリンを頬張っている。

少女「すぐ警察に捕まる」

誘拐犯「…そうかな?俺、頭良いし大丈夫だよ」

少女「お母さんが通報してるもん、きっと」

誘拐犯「そう?確かめてみよっか」

男は据え置きのテレビをつけた。

誘拐犯「そろそろニュースの時間だしね。臨時テロップとか出てるといいね」

少女「…」

キャスターは、真面目な声で首都でおこった交通事故のニュースを読み上げている。



私のニュースなんて、一個もなかった。

少女「…」

誘拐犯「なかったね」

少女「あ、…んた。お母さん、どこにやったの」

そうだ。

お母さんが通報しないわけがない。

それに何で家にいなかったの。いつもはいるのに、どうして。

誘拐犯「…」

スプーンを口に咥えたまま、男は笑った。

誘拐犯「>>55

カムチャッカ半島を左に

誘拐犯「カムチャッカ半島を左に」

少女「私は真面目に聞いてるのよ!!」

足を振り上げてぼふん、とベッドに戻すと、男は肩をすくめた。

誘拐犯「冗談だって」

少女「お母さんをどこにやったの!殺したの!?」

誘拐犯「そんなことしないよ。あの人が死んだら、君が悲しむだろ?」

少女「じゃあ、じゃあ」

誘拐犯「…お母さんは、それこそカムチャッカ半島…じゃあないけど、遠くに行ってもらってる」

少女「な、」

誘拐犯「分かってるだろ?あの男のとこだよ」

少女「…」

男はスプーンを吐き出した。歪みない、白い歯列が見えた。

誘拐犯「君の家族構成」

誘拐犯「××県××市、××町の借家にお母さんと二人暮らし」

誘拐犯「お母さんは元々ホステスをしていたけど、今は無職だね。貯金を切り崩して…」

誘拐犯「あと、週末に来る男の援助を得て生活してる。そうだろ?」

透明なプラスチックスプーンで、私をさす。

誘拐犯「あの男に君のお母さんは入れあげてる。若いし、それにウィットに富んだハンサムだから。君も奴が嫌いじゃなかった、最初は…」

少女「やめて」

誘拐犯「…」

誘拐犯は微笑んだ。

誘拐犯「奴とお母さんが出会ったのは丁度5年前だね。君が、…12歳のときだ。まだ小学生のころ」

少女「…」

誘拐犯「君は父親の顔を見たことがないね?だからずっと周りが羨ましかった。父親が欲しかったんだよね」

誘拐犯「だから初めて奴を見て、“ママの恋人よ”なんて言われたときには胸が躍った」

少女「すごいね」

はん、と鼻で笑った。

少女「何でそんなことまで知ってるの」

誘拐犯「君のことなら、大体のことは知ってる。全てってわけじゃないけど…」

誘拐犯「でも君の知らないことだって知ってるよ。教えたら悲しむようなことも」

少女「…」

こいつの言っていることは全て事実だ。

お母さんは5年前からある男性と付き合ってて、生活費を貰ってる。

少女「…お母さんは、あの人のとこにいるわけ?」

誘拐犯「そうだよ」

少女「何で」

誘拐犯「俺が行けって言ったから。ううん、正確には“行ってもいいですよ”かな」

少女「…話が見えない。何でお母さんがあんたの言うこと聞くの」

誘拐犯「そりゃ、君」

男の釣りあがった唇は、悔しいくらいに整っていた。

誘拐犯「利益があるからでしょ」

少女「…」

誘拐犯「端的に言うと、お母さんは君を俺に売ったんだよ」

少女「売った?」

誘拐犯「金銭のやり取りがあった、ってこと。あと、お母さんはあの家を出て奴のところに行きたいって思ってたから」

少女「ちょ、え」

誘拐犯「俺は君のお母さんに、結構な大金を渡した。そんで、“お嬢さんを少しの間引き取りたいんです”って言った」

誘拐犯「最初はめちゃくちゃ怪しまれたけど、最終的に納得してくれたよ。額が額だったし、デメリットないし」

少女「…」

何言ってるんだ、こいつ

誘拐犯「君は悲しむかな?けど今はっきり言っておいたほうが良い気がする」

誘拐犯「あのアバズレは、君を疎ましく思ってた。理由は、…君のほうがよく理解してるんじゃない?」

誘拐犯「だから俺に売った。今朝、君を学校に送り出したあと、あの女は恋人のところに行った」

誘拐犯「そんで、二人で飛行機に乗ってどこか遠い所へ愛の逃避行をした。お荷物を捨てて」

少女「…」

誘拐犯「ちなみにあいつらがどこに行ったかは、知らない」

少女「え、」

誘拐犯「ん?」

少女「マジで?」

誘拐犯「うん」

少女「…」

誘拐犯「ごめんね」

少女「…」

誘拐犯「あら、…泣いちゃったかな。ごめん」

少女「泣いてないんで、近づかないでください」

誘拐犯「でも悲しいでしょ?俺もっと謝った方がいいよね」

少女「悲しくないです、特に」

誘拐犯「えー、マジで」

少女「はい」

誘拐犯「お母さんに売られるって、中国の寒村みたいな扱い受けたのに?」

少女「例えがムカつくけど、はい」

誘拐犯「すごいね君。流石の俺でも唖然だよ」

少女「めっちゃ笑ってるじゃない」

誘拐犯「面白いよね、君」

少女「悲しくは無いけど不愉快には思ってる。だから話しかけんな」

誘拐犯「えー」

少女「…」ハァ

嘘かもしれない。

いや、もうこの際どうでもいいや。とりあえずお母さんが死んでなければ。

少女「…その話が本当だったら、どうしてくれんの。私家族いなくなったし、帰る場所ないじゃん」

誘拐犯「だから俺の出番だよ」

死ねよこいつ

誘拐犯「俺が君を預かってあげる。大丈夫、嫌なことはないよ」

微笑んで言うこいつは、狂ってる。結構前から分かってたけど。

少女「全然嬉しくない」

誘拐犯「えー…。でも、まだ最初だし」

少女「私の家庭、もとに戻してよ」

誘拐犯「それはできない」

男は大真面目に頷いた。

誘拐犯「俺は君の置かれている家庭が、良いものだとは思えない」

誘拐犯「…最低だ。それ、自分でもよく分かってるでしょ?」

少女「…」

誘拐犯「言っただろ。俺は君を助けたいんだって」

少女「何で?」

誘拐犯「何でって、」

男がゆっくり口角をあげて、微笑む。

誘拐犯「…」

誘拐犯「まあ、秘密」

少女「死ね」

誘拐犯「俺が死んだら君が路頭に迷うから、死なない」

男とくだらない攻防をしていたら、いつのまにか10時になっていた。

急激な疲れと眠気が襲ってくる。

少女「…おい」

誘拐犯「んー?」

男はバラエティ番組を流すテレビから、目を離さない。

少女「…」

体が自由だったらぶん殴ってやるのに。

誘拐犯「何?」

少女「…」

えーと、えーと

あ、そうだ。

少女「…お風呂入りたいんだけど」

男がこっちを見た。目が少し意外そうに見開かれている。

誘拐犯「お風呂。…うーん」

誘拐犯「…>>65

脱いでいいよ

誘拐犯「じゃあ俺が体拭いてあげる。脱いでいいよ」

少女「あんたアスペ?シャワー浴びたいって言ってるの」

誘拐犯「無理無理。君、俺に何のためらいも無く暴力ふるってきそうだし」

少女「気持ち悪い。体がべたべたする。入りたい」

誘拐犯「ごめん、今日は我慢して」

少女「無理」

誘拐犯「だから俺が拭いてあげるって」

少女「絶対に嫌。そんなことされるくらいなら、死んでやる」

誘拐犯「うわあ」

少女「…もういい。分かった」ボフン

誘拐犯「いいの?拭かなくて」

少女「黙れ」

誘拐犯「…寝るの?」

少女「黙れ」

誘拐犯「じゃあテレビ消すね。電気も…ええと、真っ暗じゃないと寝れないタイプだよね君。よいしょ」

パチ

少女「…」

「おやすみ、少女。神に誓って何もしないから、安心して寝ていいよ」

少女「あっそ」

「おやすみ」

寝返りは、手錠のせいで打てなかった。

心細くなって傍らのぬいぐるみを抱きしめる。

顔をうずめると、私の好きな消臭剤のにおいがした。


…キモいな、と思った。

10月2日 午前7時

少女「…」

「ピッカッチュウ!」

少女「……」

「ピカピカピーカー!!」

少女「…チッ」

「ピピピピピピピpカー!!」

少女「うっぜえ!」ボフン

「ビカヂュッ」ビタン

誘拐犯「ダメだよ!小動物には優しくしなきゃ」

少女「…っ」バッ

誘拐犯「おはよう。よく眠れた?」

少女「寝返りうてないから腰が痛くて最悪。あとお前の顔見て気分が地に落ちた」

誘拐犯「うーん、朝から饒舌。体調はいいみたいだね」

少女「…」

夢じゃないのか。現実なのか。

誘拐犯「とりあえず顔洗って身支度しないとね。ホテル、チェックアウトしたいし」

少女「…」

誘拐犯「服も着替えないと。朝ごはんはそのあと」

朝の光で、男の姿が改めてよく見えた。

…顔はやっぱり、どこぞの俳優かというほど上品で整っていた。

肌も白くて若いから、20代くらい。

背はまあまあ高く、どちらかと言うと細身。

しかし私に差し伸べた手には筋が浮き、男特有の力強さを感じさせる。

多分運動神経皆無の私が攻撃しても、大してダメージにはならないだろう。

誘拐犯「これ、外すよ」

男がベッドに膝をつき、手錠をにぎった。

誘拐犯「ただ、変なことはしないでね。お願いだから」

かちゃりと小さい音がして、私の手首が軽くなった。

誘拐犯「…じゃあゆっくり立って、洗面台へ」

少女「…」

もしやこれはチャンスなのでは。

ダッシュで扉まで向かって、誰かに助けを求めれば…。

誘拐犯「あ、俺もあんまり乱暴はしたくないから」

…男の手に握られているスタンガンを見て、考えは萎えた。

誘拐犯「顔洗って、髪整えて、服を着替えて。そのカゴに入ってるから」

男がぴったり後ろに付いた状態で洗面台に入り、顔を洗って髪を梳った。

…アメニティのカミソリは、どこを探しても無かった。

頭の良い男だな、と思った。

少女「…服って、これ?」

誘拐犯「うん」

>>70

くまモンの着ぐるみを広げる。

少女「イカれてる」

誘拐犯「アメリカンな反応どうも」

少女「こんな服着て歩いたら、否応がなしに職務質問されるわね?」

誘拐犯「君にとっては万々歳だろうなー」

少女「マジで着なきゃだめ?」

誘拐犯「うん」

誘拐犯「…というのは勿論冗談で。それはパジャマにでも使ってよ」

男はカゴの下から、ブラウスとジャンパースカートを出した。

少女「…」

私が欲しかった、ブランドの新作だった。

高すぎて手が出なくて、勿論見るだけだったけど。

誘拐犯「あんまり君に似合うとは思えないけどね、こういう甘いの」

少女「…」

誘拐犯「俺はやっぱり、シンプルで清楚な恰好している君が好きだな」

少女「き、っしょ…」

誘拐犯「そんなこと言わないで。これ高かったんだよ?一人で買うのも恥ずかしかったし」

少女「着るけど」

誘拐犯「だよね。くまモンはどうする?」

少女「捨てて」

誘拐犯「熊本に謝ってよ…」

誘拐犯「靴も、高校指定のローファーじゃ合わないから新しく買ってるよ」

服と靴のサイズが全て私にぴったりなことに悪寒をかんじつつ、制服のボタンを外す。

少女「…」

少女「あ」

誘拐犯「ん?」

少女「どっか行ってよ」

誘拐犯「リスキーだね。目を離したら何かするでしょ?」

少女「しない」

誘拐犯「嘘だ」

少女「私を信用してないの?…」

誘拐犯「あー、まだ色仕掛けをする段階までは行ってないよ、少女。勿論信用してない」

少女「見られたくないんだけど」

誘拐犯「大丈夫、俺は気にしないよ」

少女「私が嫌なんだよ、ボケ」

誘拐犯「我儘だなー…。分かった。ブラウスを着替える40秒だけあげる。それ以外は俺が見とく」

つまりブラウスで体の大体は隠れるから、手短に済ませろと。

誘拐犯「はい、いーち、にー、さーん」

私は急いで洗面台のものに目を通した。

武器になりそうなものは、ものは…

歯ブラシくらいしかなかった。

誘拐犯「にーじゅ、にじゅいーち」

少女「…くそ」

諦めて、ブラウスを着た。

誘拐犯「うん、じゃあスカートも着てね。お利巧さん」

ここまで人に殺意を抱いたのも久しぶりだ。

絶対に下着を見せたくないので、わざわざしゃがんでスカートを履いた。

誘拐犯「女の子ってそうやって着替えるんだ」

セクハラも甚だしいが、黙っていた。

誘拐犯「靴も履いたね?よし、いいよ。…リボンつけないの?」

男が赤いボウタイを手に取る。

誘拐犯「動かないでね」

しゅる、と首元で音がした。

少女「…」

息が止まる。近くに男の顔があった。

長い睫毛に覆われた目が、私の胸元を見つめていた。

軽やかな手つきで私にリボンを結び、ぽんと襟を叩く。

誘拐犯「はいおしまい。おー、可愛いよ」

少女「…」

誘拐犯「それじゃ、行こうか。ピカチュー持って」

男は私にぬいぐるみを押し付けると、私の背中を軽く押した。

男は必ず、私の一歩後ろか横を歩く。

誘拐犯「エレベーターに乗って、一階のフロントまで行ってね」

少女「…」

エレベーターの中には、先客のカップルがいた。

少女(あ、…)

「何階ですか?」

誘拐犯「一階です」

こんなに近く、…助けがいる。

どうする?>>76

ぴかちゅうううううう

もう耐えられない。早く助けてもらわないと。

少女「あ、…あのっ」

誘拐犯「…」

ポチ

「ピッカッチュウウwwwwwwwww」

「!」ビク

「な、なに?」

誘拐犯「こらー。だから荷物に仕舞っておけって言っただろー」

少女「…」バクバクバク

誘拐犯「すみません、こいつの持ってるぬいぐるみです。驚かせてしまって」

「あ、大丈夫ですよ~」

「あはは、びっくりした」

誘拐犯「…」

男が私の耳に口を寄せて

誘拐犯「…」クス

ふ、っと息を吐きかけた。

誘拐犯「悪い子」

秋も半ばの、少し底冷えのする日だ。

汗をかいているのは、私だけだった。

4階でカップルは降り、そのままエレベーターは私達を一階へ吐き出した。

誘拐犯「あの人たちに、助けてって言おうとしたでしょ」

付くなり、男は言った。

少女「う、…ううん」

誘拐犯「嘘つけ。がっつり“チャンス!”みたいな顔してたよ」

少女「……」

誘拐犯「あんまり…こういうことしないでね?困るから」

少女「…」

誘拐犯「少女、返事は?」

少女「うん」

誘拐犯「よし、良い子」

男が手を伸ばして頭に触ろうとしたが、避けた。気色悪い。

誘拐犯「チェックアトするから。おいで」

男は私を横に携えたまま、ごく円滑に手続きを済ませた。

「タナカケイさまですね。ご利用ありがとうございました。良い一日を」

お姉さんこいつ誘拐犯なんすよ、私意味分かんない理由でつれまわされてるんすよ、助けて。

誘拐犯「はー、良いホテルだったね。夜景綺麗だったし」

少女「見てねーよ…」

誘拐犯「あれ、そうだっけ。まあ今夜もあるし、いいじゃん」

少女「…これからどうするつもり?」

誘拐犯「…」

車にキーを刺しこんだ男が、ちらりとこちらを見た。

誘拐犯「…助手席、乗って」

逃げてー。なんで地下駐車場にはこんなに人がいないんだろう。

朝のバイキング取ってないで、私を助けに来いよ。

少女「大体ここ、どこなの?」

誘拐犯「隣県」

少女「はあ!?ちょっとマジかよ死んでくれよ」

家から大分離れてしまっている。

誘拐犯「死ねとか女の子が簡単に言わないでよ」

少女「あんたさあ、もう本当いい加減にしない?こんなこと絶対よくない、」

カチャ

誘拐犯「…手錠だけじゃなくて、足も縛ろうか?」

誘拐犯「それか猿轡と目隠しして、トランクに放り込む?」

少女「…」

誘拐犯「どう?」

少女「そんなこと、…しないよね?」

誘拐犯「君の態度次第かな。せざるを得ないなら、しょうがない」

少女「…分かった。抵抗はしない、けどこれだけは聞かせて」

誘拐犯「ん?」

少女「…今からどこ行くの?」

誘拐犯「>>84

ドバイ

誘拐犯「ドバイ」

少女「冗談よね?」

誘拐犯「そう見える?」

少女「見える。あんたいつもくっだらない嘘つくし」

誘拐犯「残念ながらガチ。ドバイ行きます」

ぶろん、と音がして車が動き出す。

少女「私、海外は嫌。英語喋れないもん」

誘拐犯「知ってる。君は英語ニガテだもんね。1年生の学期末なんか、赤点ぎりぎりだったし」

少女「…」

誘拐犯「俺は結構語学イケるよ。得意なんだ」

少女「誘拐を英語で?」

誘拐犯「キッドナップ」

少女「へー」

少女「いや、へーじゃない。やだ。ドバイやだ。別の場所行きたい。警察署とか家とか」

誘拐犯「レッツゴー」

少女「お願い助けて!!!」

少女「ねえ、ドバイの警察って優秀?犯人を射殺とかしてくれる?」

誘拐犯「FBIじゃないんだから。多分ショボいよ。知らないけど」

少女「よく考えてよ。お金かかるしさ、第一私パスポートないもん!」

誘拐犯「偽造という手があってだな」

少女「絶対税関で全部バラしてやる。絶対!」

誘拐犯「あー、はいはい」

少女「やだよぅ…。日本がいいよぅ…」

誘拐犯「あ、泣く?ちょっと待って写真撮りたい」

少女「ふざけんな変態が…。こうやってあんたと小気味良い会話してんのも吐き気がすんのに…」

誘拐犯「君の泣く顔なんてレアなんだから。SSレア」

少女「勘弁してよ…」

男は飄々とハンドルを切り、道路を走る。

見慣れないこの道は、やっぱり隣県だ。道路標示を見て愕然とする。

そういえば、空港も近い市だ。ここ。

少女「…本当に行くの?」

誘拐犯「イエス、オフコース」

少女「日本語で喋れよダボ!!死ね!!」

誘拐犯「まーた死ねって言った。もうそろそろ猿轡かな」

少女「…っ」

どうしよう、どうしよう。

車から飛び降りるか?

いや多分全身打撲で死ぬし、ロックかかってるし、手錠で動かない。

ドバイってどんな所だっけ?

地歴公民の授業は日本史を取っているから、よく分からない。

でもなんか肌の浅黒い人が住む、貧困国家ってかんじがする(偏見だからやめよう。今のなし)

少女「おい、マジ…。あんた」

誘拐犯「そのあんたっての、やめない?」

少女「は?」

誘拐犯「これから長く、異国の地で共依存な生活を送るんだしさ」

少女「…名前言えないって言ってた」

誘拐犯「そうだね。本名は。…でも仮名なら呼んでもいいよ」

少女「呼びたくも無い」

誘拐犯「そうだな、じゃあ。…俺のことこれから、>>91って呼んで」

少女「聞け!!」

お兄ちゃん

あとドバイ
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ドバイ

誘拐犯「俺のことお兄ちゃんって呼んで」

少女「やだ」

誘拐犯「年齢的にも丁度いいでしょ?」

少女「変態。絶対にやだ」

誘拐犯「…理にかなってると思うんだけどなあ。兄と旅行する妹」

少女「…」

誘拐犯「じゃあ、あなたとか。…ご主人様っていうのは?」

少女「もっとやだ」

誘拐犯「だよねー。ほら、呼んで。お兄ちゃん」

少女「…」

誘拐犯「口、無くなったのかな?」

少女「あんたいくつ」

誘拐犯「あんたじゃなくって、お兄ちゃん」

少女「…お兄ちゃん、いくつ」

誘拐犯「…うわ、良いねこれ。シスコンのオタクの気持ちが分かる」

気色悪いことを、さらりと爽やかな笑顔で言う。

少女「何歳だって聞いてるんだけど」

誘拐犯「俺?俺は24だよ」

少女「おっさんじゃん」

誘拐犯「あー、最近の女子高生ってすぐ年上をオッサン扱いするよね」

少女「24、…」

7歳違いだ。学生でもないだろう。

少女「…」

誘拐犯「まさか俺、ふけて見える?」

少女「別に」

誘拐犯「冷たい…。まあ、いいや」

少女「お兄ちゃん、ドバイ行きたくない」

誘拐犯「…」

男の頬が少し緩んだ。

少女「やだ。お兄ちゃんやめて」

誘拐犯「君、…末恐ろしいね。将来楽しみだ」

少女「お兄ちゃん」

誘拐犯「いやもう慣れた。効きません」

少女「チッ…」

空港まで、あと少しだ。

少女(…あー)

いや、案外希望なのかもしれない。

空港でなんとかこう、挙動不審にして職員に質問されて

そんでそのまま保護してもらう。…完璧だ。

誘拐犯「…」

ん?

あれ、空港通り過ぎたよ?

少女「おい」

誘拐犯「おいじゃなくて、お兄ちゃん」

少女「空港過ぎてるんだけど?」

誘拐犯「え?うん、だから何」

少女「…どうやってドバイ行くの?飛行機じゃないの?」

誘拐犯「ドバイ行くよ?」

少女「だから、空港」

誘拐犯「はあ?」

少女「はあ?」

誘拐犯「…ドバイ市」

少女「は?」

誘拐犯「だから、この県にある土梅(どばい)市に行こうとしてるんだけど」


グッバイ私の完璧な逃亡計画。


誘拐犯「あ、まさか海外のドバイだと思ってた?だよね?パスポートが何たらって言ってたもんね」

死ね

少女「んだよドバイ市って…。ふざけんな…」

誘拐犯「海外逃亡なんて簡単にはできないでしょー。俺もお米と味噌汁食べれない生活なんて耐えられない」

少女「…」ハァ

誘拐犯「まあまあ、そんな落胆しないで」

誘拐犯「ドバイみたいな綺麗な海なら、いくらでも連れてってあげるよ?あんまり行ったことないでしょ」

少女「…」

誘拐犯「お母さんとかと外出するの、ほとんどないもんね」

少女「うっさい」

誘拐犯「色んな所、行こうよ。二人でさ。…君の行きたいとこ、どこでも連れてくよ」

少女「じゃあ」

誘拐犯「警察と家以外でね」

少女「…」

誘拐犯「君、思ってたよね。どこか遠くに行きたいなーって」

少女「はあ?」

誘拐犯「全部捨てて、自由にどこか行けたらって」

緩やかなカーブを曲がる。

男の体が近づき、甘いような香りがした。

誘拐犯「だから、俺がそれ叶えてあげる」

少女「…」

本当に、こいつは何者なんだろうか。

誘拐犯「ドバイまであと少し」

少女「不快」

誘拐犯「ドバイへの風評被害だね」

少女「…で、ドバイ市とやらに行って何するの。出頭?」

誘拐犯「君、土梅市に何があるのか知らないの?」

少女「知るか」

誘拐犯「えー。閉鎖的」

少女「…旅行とか、あんましないし」

修学旅行くらいしか、したことない。

誘拐犯「実は、是非連れて行きたいところがあるんだよね」

少女「どこ?」

誘拐犯「土梅市にある、>>102だよ」

表向きは居酒屋だが実態は女性の人身売買を目的とした店

誘拐犯「表向きは居酒屋だが実態は女性の人身売買を目的とした店だよ」

少女「は?」

誘拐犯「だから表向きは居酒屋だが実態は女性の人身売買を目的とした店だよ」

少女「…」

誘拐犯「是非君を連れていきたくて」

少女「ごめんもう一回言ってくれる」

誘拐犯「また?だから、表向きは居酒屋だが実態は女性の人身ばっ……噛んだ」

少女「またくっだらないジョークね」

誘拐犯「そうかな?」

少女「私をそこに連れて行ってどうする気よ」

誘拐犯「>>106

見て帰る

誘拐犯「決まってるだろ、見学して帰るんだよ」

少女「何で」

誘拐犯「世の中にはこんなにかわいそうな女性がいる。好きでもない男と、金のため体を重ねる女性が」

少女「…」

誘拐犯「そんな女性たちを見て、君はきっとこう思うだろうね“私はなんて恵まれてるんだろう”って」

少女「…」

誘拐犯「私には金銭援助をし、愛を注いでくれる男性がいるというのに、誘拐されたくらいでグチるなんて」

少女「…」

誘拐犯「そして、きっと俺を良い人だと思っ」

少女「もうそろそろ突っ込んでいい?」

誘拐犯「お手柔らかに」

少女「あんた最低。クズ」

誘拐犯「お兄ちゃんでしょ、…あーもういいや」

少女「そんな店、今日び21世紀の日本にはないから」

誘拐犯「あるんだな、それが」

少女「嘘つけ」

誘拐犯「はい、ドバイ市到着」

少女「えっ」

“ようこそ!豊かな台地と梅の花が咲き乱れる、土梅市に!”

少女「…あー」

誘拐犯「感想は?」

少女「安直」

誘拐犯「厳しいな」

誘拐犯「よ、っと」ギッ

少女「…田舎だ」

誘拐犯「確かに。何か肥料っぽい匂いするもんね」

少女「マジで行くの?その…ええと」

誘拐犯「表向きは居酒屋だが実態は女性の人身売買を目的とした店?」

少女「そうそれ。…って、略せよ」

誘拐犯「実は店名があるんだ」

少女「興味ない」

誘拐犯「ジュテーム・セルライトっていう店」

少女「居酒屋ってか…。スナックくさい」

誘拐犯「さ、行こう」

少女「嫌」

誘拐犯「…」

スタンガンを出した。

少女「最低」

誘拐犯「君に罵られるの、嫌いじゃないよ。さ、行こうか」

かくして私は、男に連れられて田舎町の寂れた商店街を歩いた。

“ジュテーム・セルライト”

少女「マジか」

誘拐犯「何度も言ってるよね」

少女「…入りたくない」

背中に冷たいものが当てられた。振り返ると、満面の笑みの顔があった。

少女「…」

渋々、扉に手をかける。

ギイ、と軋んだ音がして開いた。

少女「…暗いよ?」

誘拐犯「いいから入って」

一歩、店に足を踏み入れる。冷えた空気が私を取り囲んだ。

誘拐犯「おーい」

少女「ちょっ」

誘拐犯「俺だよー。来たんだけど」

少女「え、え」

店の奥から、人の気配がした。

現れた人物>>112(性別、容姿詳しく)

時間ないから加速

男、スネーク

性別 男(おねえ) 40代後半くらい
顔立ちは漢、まさしく漢。
容姿 意外にもはでではなく、黒いリクルートスーツを履いている

ちょっと苦しいとこあるんで>>113のアイデアもらい

オネエ「あら、あらあらああらー?」ドタドタ

少女「ひあっ!?」ビクッ

誘拐犯「いきなり暗がりから飛び出さないでよ。化け物かと思った」

オネエ「ぬわぁーによう!久々に顔出したと思ったらそんな…」

少女「…」ビクビク

オネエ「あら?」

オネエ「…ユウ。この子」

誘拐犯「ミッション成功」

なんだこの室伏と平井堅と蛭子よしかずを足して3で割ったようなオカマは。

というか、ユウって誰だ。

誘拐犯「少女、こいつはオネエ。俺の友人」

少女「あ、え」

オネエ「どうも~!噂には聞いてるわよ、少女ちゃんね!あえて嬉しいっ」

少女「あ、ちょ。触らないで」

オネエ「えっ」

少女「…」

誘拐犯「ほら、お前がゴリラに似てるから…」

オネエ「うっさいんじゃロリコン殺すぞ」

少女「…えっと、」

オネエ「あんた、マジでやっちゃったのねぇ」

誘拐犯「やっちゃった」

オネエ「ついにか…。いやまあ、良かったわね。上手くいって」

少女「あ、あのっ。こいつ私を」

オネエ「知ってるー。誘拐してるんでしょお」


ファッ?

少女「そ、そうなんですけど。あの、通報」

誘拐犯「残念、ゴリラは俺の味方です」

オネエ「そうなのー…。ごめんねぇ…」

少女「」

共犯者、が…。

オネエ「ほら泣きそうじゃない、あんた何もしてないでしょうね?」

誘拐犯「うーん、何とか」

オネエ「やあね、ケダモノよ男なんかみんな…」

ちょっと頭が混乱しているので整理したい。

この目の前のオカマはゴリラで男の協力者らしい。

ええと、だからつまり。

少女「…私に何する気」

誘拐犯「とりあえずウーロン茶ふたつ」

オネエ「酒飲みなさいよ」

誘拐犯「まだ運転しないとだし。あ、少女はサイダーがいいかな。ある?」

オネエ「キンキンよ。待ってて」

少女「…」

誘拐犯「座りなよ」

少女「質問していい?」

誘拐犯「いいよ」

少女「全てが分かんないからちゃんと説明して」

誘拐犯「え?至極分かりやすい説明だったと思うけど…」

少女「やれ」

誘拐犯「…オネエは、俺が>>118歳のときから付き合いがある友人」

誘拐犯「>>120っていう理由で、俺の計画を唯一知ってる男なんだ」

オネエ「女って言いなさいよ」

誘拐犯「…メス」

オネエ「おらぁ!!!」ガシャアン

5歳

俺がロリコン

誘拐犯「オネエは5歳の時から親交がある」

少女「あの人いくつ」

誘拐犯「えー、と。今年で46,7だったかな」

少女「…あんたは24だったっけ?」

誘拐犯「うん」

少女「ちょっとヤバくないですか、その関係」

誘拐犯「大丈夫大丈夫!何もされてないから」

少女「明るく言われても何も信じられないわ。闇深すぎでしょ」

誘拐犯「そして俺らは長い付き合いの中で、互いにロリコン…というか年下がタイプという共通点を見出した」

オネエ「私の場合はショタコンになるのかしらね」コト

少女「ひゃ」ビク

オネエ「いちいちビクつかれると泣くわよ…?」

誘拐犯「まあそんなこんなで、俺の気持ちをよく分かってる友人。だから計画にも協力してくれる」

少女「…」ポカン

オネエ「そういうこと」

少女「つまりあんたも私の敵ってわけね。オーケー」ゴク

誘拐犯「厳しいなあ」

オネエ「んふ、話に聞いていたとおり」

少女「お前ら友人にはじめて彼女ができた、みたいなテンションだけど犯罪だからなこれ」

誘拐犯「…」

オネエ「wwww」

少女「ぶっ殺すぞ…」ギリ

誘拐犯「ま、安心してよ。悪い奴じゃないからさ。俺の親友だから」

オネエ「そうよそうよ」

少女「だから余計印象最悪なんですけどね?」

誘拐犯「…ほんで、電話して頼んだもの、手に入れてくれた?」

オネエ「もちのろん」ブイ

少女「無視っすか…」ブクブク

誘拐犯「少女。サイダーをストローでぶくぶくさせない。君はストローの噛み癖あるし、行儀が良くないね」

少女「放っとて」

誘拐犯「…はあ。まあこの通りなんだ」

オネエ「ふふふ、ユウが入れあげてる理由分かる気がする」

少女「ついてけねえ」

誘拐犯「少女、ちょっと奥行って話してくるから大人しく待っててね」

男は例の如く私に手錠をかけ、傍らの食器棚に繋げた。

少女「…」

オネエ「わお、私が用意したやつそんな風に活用してたんだ」

少女「てめぇか!!!!!!」

バタン

誘拐犯「…」

オネエ「疲れてるわね」

誘拐犯「そう見えるか?」

オネエ「まあね」

誘拐犯「…いいや、俺は今結構満たされてるよ。人生のピークって言っても過言ではないくらい」

オネエ「まあめちゃくちゃ高い崖っぷちだけどね」

誘拐犯「ヘマはしないよ。大丈夫だって。…それにあんたには絶対迷惑かけない」

オネエ「…」フウ

誘拐犯「で、アレ」

オネエ「あ、そうだったわね。はい」

オネエは小さな箱を誘拐犯に手渡した。

誘拐犯「…本物?」

オネエ「裏ルートで手に入れたの。大変だったのよお。まずゲイの外人を盛り場で捕まえて…」

誘拐犯「うん大丈夫、聞きたくない。…開けていい?」

オネエ「どうぞ?」

箱の中身>>129

吉田さおり

モノでお願いしますよ!

再安価>>134

ダイヤの指輪 はいどうぞ

誘拐犯「おお、綺麗」

オネエ「お望みどおりのカラットと色。ピンクダイヤがいいんでしょ?」

誘拐犯「うん。透明なほうが高いらしいけど、少女はピンクが好きだから」

オネエ「ふうん。台座もそれでいいよね?」

誘拐犯「完璧だ。お前は本当にできる奴だ」バンバン

オネエ「うふふふ」

誘拐犯「…少女の指は細くて綺麗だから、きっと似合うよ」

オネエ「あの子、16歳以上だったっけ」

誘拐犯「うん、もう17。合法合法」

オネエ「そっかー…。いやまあ、彼女の気持ちも尊重しつつやりなさいよ」

誘拐犯「分かってる」

オネエ「…ユウ」

誘拐犯「ん?」

オネエ「あんたがこんなに活き活きしてんの、初めて見た」

オネエ「なんだ、その。頑張りなさいよ。いつでも言って」

誘拐犯「ありがとう」

オネエ「いいってことよ」ドン

オネエ「ところで、この後どうすんの」

誘拐犯「連れまわして遊ぶ」

オネエ「あら、いいわね」

誘拐犯「デートだからお前はついて来るなよ」

オネエ「仕事だから行けないわよ」

ピー、ピー

誘拐犯「ん」

オネエ「なに、その音」

誘拐犯「少女が手錠を抜こうと奮闘している音」

オネエ「呆れた、センサーまで付けてんの」

誘拐犯「だって強度とか色々不安あったし。改造した」

オネエ「ふーん…」

誘拐犯「戻るか」

オネエ「ええ」

バタン

少女「…」ギギギギ

誘拐犯「手に傷がついちゃうよ」

少女「あ、げっ」

誘拐犯「本気で抜きたいなら、手首落とすくらいの努力しなきゃね」

少女「ハン●バル・レクターじゃない?それ」

オネエ「女子高生のくせにコアな作品知ってるのね…」

少女「もう帰りたいんだけど」

誘拐犯「はいはい何度も聞いたし何度も言うよ、無理」

少女「外してよ」

誘拐犯「只今、おひめさま」カチャ

少女「キモ…」

オネエ「ユウって案外ロマンチストだから」

少女「…」ハァ

誘拐犯「もう用事終わったから、出ようか」

少女「何。…用事って」

誘拐犯「ないしょ」

少女「最後のチャンスだよ、オネエさん。今すぐこいつを殴り倒して警察に行こう。そしたら共犯のことは言わないであげる」

オネエ「ごめんねー」

少女「いつかブタ小屋ぶちこんでやる、お前ら。大嫌いだ死ね」ジタバタ

誘拐犯「それじゃ、またねゴリラ」

オネエ「はーい。またねユウ、少女」

少女「嫌だぁあああああ…」

誘拐犯「はい静かに」


グッバイ土梅市。

10月2日 午前11時20分

少女「人身売買がウンヌンって、何だったの?」

誘拐犯「キッドナップジョーク」

少女「信じた私が馬鹿だったわ」

誘拐犯「それじゃ、今度はどこ行こうかな」

少女「まだどこか行くの…」

誘拐犯「当たり前だよ。折角のデートなんだよ?君も何でも我儘言いなよ」

少女「でーと?頭沸いてるの?」

誘拐犯「沸いてはないし、むしろ冴え冴えしてるよ。何処行く?」

少女「民家」

誘拐犯「通報されちゃうからだめ」

少女「…そういえばさ」

誘拐犯「ん?」

少女「あんた、ユウって言うの?」

誘拐犯「何が」

少女「あのオカマが言ってたよ。ユウって」

誘拐犯「ああ、あれはあだ名だよ」

少女「…」

誘拐犯「…」

少女「ゆうかいはん、のユウ?」

誘拐犯「何で分かったの?エスパー?」

少女「馬鹿でしょ」

誘拐犯「君のこと誘拐したい誘拐したいって言ってたら、いつの間にかユウって呼ばれてた」

少女「やべーな…」

誘拐犯「俺は気に入ってるよ」

少女「あ、っそう」

誘拐犯「それで、何処行こうか?」

少女「…」

誘拐犯「決められないなら、俺の考えたプランでいく?」

少女「プラン?…」

男、もういいやユウって呼ぼう。蔑称だし。

ユウに従うか、希望を言うか…。

随分放し飼いな誘拐犯な気がするが、これはチャンスかもしれない。

誘拐犯「どうする?」

少女「1、ユウのプランでいい 2、自分の行きたいところを言う」

どっち?>>146

あ、しまった。じゃあ行きたいところを書いて>>149

西鉄天神高速バス
少女「ねえ、家に帰りたい」 誘拐犯「…」 - SSまとめ速報
(http://open2ch.net/p/news4vip-1444619545-149-270x220.png)

少女「…西鉄天神高速バス」

誘拐犯「…」

困ったように眉根を寄せるユウ。

少女「行きたい」

誘拐犯「それ、どこ?」

少女「…ふくおか?」

誘拐犯「遠い。却下」

少女「どこでも行きたいところ言えって言ったじゃん!!」

誘拐犯「補足が足りなかったかなー。県内でお願いします」

少女「早く言えよ」

誘拐犯「今日はとりあえずここで宿をとるから。ほら、るるぶ」ポイ

少女「るるぶ…」

誘拐犯「この中から選んで」

少女「はいはい」

遊園地

フラワーガーデン

海浜公園

ショッピングモール

どれを選ぶ?>>156

安価遠かったかな

ksk

>>156
がミスったから下にするね

少女「…あ、海」

誘拐犯「海行きたいの?」

少女「…いや、別に行きたい訳じゃないけど」

誘拐犯「レッツゴー」

少女「聞け!!!」

ブロロ…

……


=海浜公園

誘拐犯「はい到着」キッ

少女「海だ」

誘拐犯「少女の住んでる県って海無いもんね」

少女「久々に見た気がする」

誘拐犯「出不精なんだから。ほら、行こう」

少女「……」

誘拐犯「あ、観光客とかに声かけたらバチっといくから」

少女「ピカチュウ…」

誘拐犯「手でも繋ぐ?」

少女「嫌どす」

誘拐犯「そっか…」

ミュー ミュー

少女「…」

コンクリートに打ち寄せては返す波をぼんやりと眺める。

誘拐犯「海風ってベタベタするから嫌いだな」

少女「海ってこんな匂いだったんだね。忘れてた」

誘拐犯「最後に来たの、いつくらい?」

少女「…小学校…低学年くらいかなあ」

誘拐犯「えー。可哀相」

少女「海、別に好きじゃないし」

誘拐犯「…」

少女「ていうか、外に出ること自体そんなに好きじゃないし」

誘拐犯「お母さんがそう思わせたんじゃない?」

欄干に背中を預けながら、ユウが呟いた。

誘拐犯「全然遊んでもらえなかったでしょ」

少女「そんなことないけど」

誘拐犯「ふーん」

少女「…」

誘拐犯「そういえばさ、友達とも遊びにいかないよね」

少女「…」

誘拐犯「いつも理由つけて断ってたよね。それってさ」

少女「あの鳥、何ていう鳥?」

誘拐犯「ウミネコ。ねえ、君のお母さんってさ、君を」

少女「うるさい」

少女「あんたにお母さんの何が分かるの」

誘拐犯「結構分かるよ」

少女「は?」

誘拐犯「君の周りの環境、調べつくしてるよ。交流のあるクラスメイトのことまで」

少女「うわ…」

誘拐犯「君の交友関係って狭いし浅いよね。ミカちゃんなんて、影で君の悪口ばっか言ってた」

誘拐犯「何でだと思う?…あのね、君が一人でいても堂々としてて、それに綺麗な子だからだよ」

少女「あんたのその、私に関するウンチクは何なのよ」

誘拐犯「そういえば、君のクラスにいるドウジマ君は君のことが好きだったんだよ」

少女「え?」

サッカー部の副キャプテンをやっている男子だ。人気もある。

誘拐犯「2年生の頃、同じグループ活動したでしょ。そのときに好きになったんだって」

少女「へー」

誘拐犯「でもかわいそうに、ドウジマくん怪我して大会出られなかったでしょ?」

誘拐犯「そのときから君のこと、チラチラ見るのやめたんだよね」

少女「…」

誘拐犯「…」

少女「ドウジマくん可哀相」

誘拐犯「俺を疑ってる?」

少女「あんた、クズね。あの人勉強もできないし、サッカーと顔くらいしか取り柄ないのに」

誘拐犯「君も酷いこと言ってるよ」

誘拐犯「まあちょっとドウジマくんのマンションの階段に細工しただけだから」

少女「ドウジマくんの人生返して」

誘拐犯「俺にとっては君の人生のほうが大事だよ」

少女「まさか、ミカが保健室登校になったのって」

誘拐犯「…」

少女「私をイビった数学教師が変な時期に転任したのは?」

誘拐犯「…」

少女「お前…マジかよ…」

誘拐犯「重ねて言うけど、俺にとって君以外の人間なんてゴミクズに等しいよ」

少女「私生まれてこなきゃ良かった」

誘拐犯「何でそんなこと言うんだ!!もうしないからそんなこと言わないで!」ガッ

少女「触るなキチガイ!!!」バシッ

誘拐犯「命を大事にしないやつなんて大嫌いだ!」

少女「その言葉お前にそっくりそのまま返すわ!!人をなんだと思ってんだ!」

誘拐犯「人はゴミのようだ」

少女「もういい、スタジオジブリの方向に土下座しろ」

誘拐犯「40秒で?」

少女「…」ゴスッ

誘拐犯「あいた。ついに手が出た」

少女「なんか、…どっと疲れた」

誘拐犯「ごめんね俺のせい?」

少女「勿論全てがお前のせいだ」

誘拐犯「ごめんね、それ以上に君を幸せにする」

少女「大分イっちゃってるなこれ…」

グウウ…

少女「…」

誘拐犯「あれっ」

少女「…」

誘拐犯「お腹空いちゃった?」

少女「まあ」

誘拐犯「そういえば朝ごはん食べさせてなかった…。俺朝抜く癖あるから…」

少女「どうでもいいよ」

誘拐犯「じゃあ、ご飯でも食べる?この公園いっぱい屋台あるから何か買おうよ」

少女「いらない」

誘拐犯「そんなこと言わずに。ほら、どれがいい?」

少女「…」

少女「じゃあ、>>167で」

こんがり肉G

少女「こんがり肉Gで」

誘拐犯「君さあ、ちょいちょい無いものを要求しないでよ」

少女「肉」

誘拐犯「肉ね。分かった」

少女「…あれ、何処行くの」

誘拐犯「ん?だから買ってくるんだよ」

少女「…」

あれ?こいつ馬鹿になっちゃった?

誘拐犯「すぐ戻ってくるから、動かないでよ」

手錠も、何もつけられていない。

少女「…」

ユウの背中が人ごみにまぎれて消えていった。

少女(急展開)

少女(あいつまじで、脳みそ空っぽなんじゃ…)

逃げれる。絶対、確実に逃げれる。


どうする少女>>171

その場でストリートダンス始めて待つ

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