男の子 「わからないのに泣いてるの?」
少女 「……あれ、そも私今泣いてた?」
男の子 「目赤いし、絶対泣いてた!」
少女 「そっか、泣いてたのかぁ」
男の子 「気づかなかったんだ」
少女 「気づかなかった」
男の子 「……気付かず泣いちゃうことなんてあるんだ」
少女 「あるんだねー」
少女 「……わ、ちっさいね、君」
少女 「なんというか……、女の子みたいで可愛い」
男の子 「ちびじゃないし!」
少女 「小学生ぐらい?」
男の子 「そうだよ、これからのびるから!」
少女 「あはは、そんなムキにならなくても」
男の子 「……ちびじゃないもん」
少女 「ごめんごめん」
少女 (……なんでだろ、話しやすい)
男の子 (誰なんだろ、このお姉さん)
少女 「でも、君みたいな子がこんな夜中に公園にいていいの?」
男の子 「簡単に学校を休む根性を叩き直してこいって」
男の子 「親に追い出された」
少女 「……へ、へぇ」
男の子 「……お姉さんだって、僕とそんなに変わらないように見えるよ?」
少女 「変わるから、頭二つ三つ分ぐらいは君より大きいから」
男の子 「でもお母さんや先生よりちっさい」
少女 「そりゃあまあ、君と同じでこれから成長するから当然だよ」
男の子 「僕と同じ……、小学生には見えないよ?」
少女 「中学生だからこんなものだよ」
男の子 「公園、誰もいないね」
少女 「都会の方の夜って、いろいろ危ないらしいよ」
男の子 「薬とか……全部ひっくるめて非行、だっけ」
少女 「難しい言葉知ってるねー、どこで覚えたの?」
男の子 「馬鹿にしてー、学校で習う」
少女 「耳にタコができるぐらい聞かされるって?」
男の子 「……お姉さんも知ってるの?」
少女 「あれだけ聞かされるとむしろしてみたくなる」
男の子 「ひねくれ者だー」
少女 「寒くない?」
男の子 「もう帰ろうかな、頭も冷えたし」
少女 「帰れるんだ」
男の子 「反省してこい、だから」
少女 「反省したんだ」
男の子 「多分」
少女 「多分?」
男の子 「寒くてなんでもよくなってきた」
少女 「温まりたいんだ」
男の子 「うん」
少女 「それにしてもさ、君」
男の子 「うん……?」
少女 「頭冷やすなら玄関前でもいいでしょーに」
少女 「なんでまた、公園まで来たの?」
男の子 「ん……、家から近いし」
少女 「近くって言っても夜だよ? 危ないったらない」
男の子 「……ずっと立ってるの疲れるし」
少女 「地面に座ればいいじゃん」
男の子 「なんか嫌」
少女 「綺麗好き?」
男の子 「そういうわけじゃないと思うけど」
男の子 「なんか嫌だった」
少女 「なんか嫌、ねー」
の子 「……公園に行ったことバレたら、怒られるかな」
少女 「怒られたらどうする?」
男の子 「どうするって……」
男の子 「……」
男の子 「帰りたくなくなってきた」
少女 「……もうちょっと一緒にいる?」
男の子 「それも……うーん」
少女 「寧ろ一緒に居ようよ、寒いし」
男の子 「……いてほしい?」
少女 「ん、もうちょっとだけ……」
少女 「しかし今日は本当に冷えるね、秋って感じ」
男の子 「そうだ、お姉さんは帰らないの?」
少少女 「私はまだ帰れないんだよね、悲しいかな」 フフン
男の子 「言ってないで帰ればいいのに」
少女 「今帰ったらただの深夜徘徊だって」
男の子 「それじゃダメなの?」
少女 「家出のほうがいい響きだと思わない?」
男の子 「どっちでもいい」
少女 「ふふ、私悪い子だから襲っちゃうぞー!」 ガオー
男の子 「……別に怖くなんか」
少女 「隙あり!」 ギュー
男の子 「!!」
少女 「こうすると温かい……と思うんだけど、どうだろ?」
男の子 「……ないよりマシ、だと思う」
少女 「素肌同士ならもっと暖かいかもだよ?」
男の子 「風邪引いちゃう」
少女 「ま、そこのベンチでまったりしようよ」
男の子 「……いいけど」
少女 「ありがと」
少女 「私が言うのもなんだけどさ」
少女 「良いの? 知らないお姉さんにくっついて」
男の子 「……先にくっついてきたのそっちだし」
少女 「振りほどいてもいいし叫んでもいいよ? 別に」
男の子 「……ほんとに?」
少女 「……やめてほしいなら遠慮なく」
男の子 「……このままでいい」
少女 「いいんだ?」
男の子 「寒さ凌げるから」
男の子 「あ……、お姉さん」
少女 「んー?」
男の子 「その傷……」
少女 「あーこれ? ちょっと切っちゃってね」
男の子 「手首のあたりって、切れたらたくさん血が出るって聞いたよ?」
少女 「実際大変だったかなー」
男の子 「お姉さんのドジ」
少女 「……君も気を付けないとね?」
男の子 「僕そんなドジ踏まないし」
少女 「頼りなさそうだし、踏みそうだよ?」
男の子 「……どうやったら、頼れる人に見えるのさ」
少女 「私が聞きたい」
少女 「思うんだけどさ」
男の子 「何を?」
少女 「もし君が頼れそうな雰囲気なら」
少女 「多分、私は君に話しかけなかったと思うんだよね」
男の子 「こうやって捕まえたりもしなかった?」
少女 「しなかったね」
男の子 「……頼れないほうがいいなんて、わかんないや」
少女 「……変わっちゃうんだろうな、君も」
男の子 「うん変わりたい、頼れない人は何となくいやだ」
少女 「……そっか」
少女 「今頃私を探してるのかなぁ、お母さんたち」
男の子 「見つかったら怒られるよ?」
少女 「怒られる……のかな」
男の子 「怒られるよ」
少女 「……んー」
男の子 「お姉さんって、ふりょー?」
少女 「そうなるかな、家出だし」
男の子 「でもお姉さん、ふりょーっぽくない」
少女 「髪染めて、派手に生きてるのだけが不良ってわけじゃないんだよね」
男の子 「あ、髪の毛黒色だ」
少女 「染めるとはげるんだって、ほんとかどうか知らないけど」
男の子 「へー」
少女 「ちゃんと手入れしたら、黒髪だっていいと思うんだけどなー」
男の子 「……手入れ?」
少女 「お母さんだってしてるでしょ?」
男の子 「……どうでもいいし」
少女 「そっかー、君みたいな子はそんなことに興味持たないか」
少女 「まあでも、もうちょっと大きくなったら考えてもいいかもだよ?」
男の子 「?」
少女 「……いい匂いするでしょ、髪」
男の子 「……ほんとだ、家出してるのに」
少女 「家出したの今日だし、する前にちゃんとお風呂入ってきたからね」
男の子 「……綺麗好き?」
少女 「癖だよ、ただの」
少女 「……私くっついてるけど、大丈夫?」
男の子 「何が?」
少女 「いろいろ」
男の子 「……もうちょっと力緩めてよ、痛い」
少女 「あ、ごめん」
男の子 「中学生なんだよね、お姉さんって」
少女 「そだよ」
男の子 「……大変?」
少女 「……それはもう」
少女 「クラスメイトは増えるし、勉強は難しくなるし」
少女 「進路も選ばないといけないしで」
少女 「小学生のようにはいかないね、あれもこれも」
男の子 「……大変なんだ」
少女 「うん」
少女 「あーあ、こんなこと話したら余計帰るのが嫌になったうp」
男の子 「家出だし、帰らなくてもいいんじゃ?」
少女 「お金そんな持ってないし」
男の子 「……いくらぐらい?」
少女 「手持ちは一万円ぐらい」
男の子 「……いっぱい持ってる」
少女 「そう見えるかー」 クスッ
男の子 「何で笑うのさ」 ムッ
少女 「たったの一万円じゃ諸々寒い生活しかできないんだよね、実際」
男の子 「……そうなの?」
少女 「親にも聞いてみなよ」
少女 「バイトするにも中学生じゃあね……」
少女 「……まあ、ないこともないんだろうけどさ」
男の子 「あるならそれでいいじゃん」
少女 「……こんなバイトしかないからやだ」
男の子 「こんなってどんな……」
チュッ
男の子 「……お、お姉さん?」 ドキッ
少女 「へへっ、可愛いからつい……」
男の子 「……これ、バイトになるんだ」
少女 「しかも結構もらえるみたいだよ?」
男の子「……いろんなバイトがあるんだ」
少女 「そ、だから選びたいんだよ」
男の子 「……何でもいいなんて言ってごめん」
少女 「どうして君が謝るうp、うp」
男の子 「……お、お姉さん?」
少女 「あ、あれ……うp」
男の子 「……しゃっくり?」
少女 「っぽいねうp、うp!」
男の子 「息止めたら?」
少女 「あっうp! 」
スゥー……
少女 「……」
男の子 「……」
少女 「はぁーー」
男の子 「……大丈夫?」
少女 「……ん、止まったみたい」
男の子 「そっか……」
少女 「しゃっくりって突然しちゃうから嫌だよね」
男の子 「でもしゃっくりって、ヒックじゃないの?」
少女 「人によるんだよきっと」
少女 「……はぁ、もうやだよ本当」
男の子 「急に何?」
少女 「いやぁほんとね、考えることがたくさんでたくさんで……」
少女 「君とこうしてるほうが楽しいのにさ……」 スリスリ
男の子 「やめてよ、くすぐったいー」
少女 「うりうりー」
男の子 「あはははっ、 や、やめ、お返しに!」
少女 「あははははっ、脇腹は反則だよ!」
少女 「あはは……ふぅ」
男の子 「……あれ、やめるんだ」
少女 「ん……まあね」
少女 「もうさ、このまま二人でどこかへ行っちゃう?」
男の子 「僕お姉さんよりお金ない」
少女 「私のおごりで」
男の子 「……寒い生活しかできないんだよね?」
少女 「ん……、君がいるならあんなバイトも悪くは」
男の子 「僕行かない」
少女 「きっぱり!?」
少女 「なら、君は家に帰るんだ」
男の子 「まあ……、外寒いし」
少女 「頭冷やしてこいって、追い出されたのに?」
男の子 「いつものことだし」
少女 「学校に行かないぐらいで追い出されるんだ」
男の子 「……ぐらい、なのかな」
少女 「……どうなんだろ」
男の子 「……お姉さんはどうなの?」
少女 「何が?」
男の子 「学校休んだりしたら……、家からたたきだされる?」
少女 「ないんだなこれが」
男の子 「……不公平」 ムッ
少女 「……だから、いくらでも休めるんだよね」
少女 「甘えちゃうんだよね……」
男の子 「……甘えたらダメなの?」
少女 「時と場合による……かな」
少女 「……今日は久しぶりにたくさん喋ってる気がするなぁ」
男の子 「……嘘だぁ」
少女 「ほんとだってば、だって私嫌われ者だし」
男の子 「嘘っぽい、全然そう見えないんだもん」
少女 「……ほんと?」
男の子 「うん、お姉さんってすっごく面白いし」
男の子 「みんなから好かれてそう」
少女 「面白い、面白いか……」
少女 「……多分それはさ、君と話してるからだよ」
男の子 「ぼ、僕だから……?」
少女 「そ、今日初めて会った君とだからだよ」
少女 「……居たと言えば居たんだけどね、友達」
男の子 「やっぱり」
少女 「昔の話だよ……、裏切られたんだけどね」
男の子 「う、裏切られた?」
少女 「……君も気をつけなよ」
男の子 「そう言われても……」
男の子 「裏切られた……」
少女 「……」
男の子 「……酷い人もいるんだ」
少女 「ほんとにね、お陰で私はどれだけ……」
男の子 「でも、僕は絶対そんなことしない」
少女 「そっか、友達は大切にね」
男の子 「……お姉さんだって僕の」
少女 「……」 ナデナデ
男の子 「友……って何するのさ!」
少女 「友達のこと、ちゃんと考えてあげるんだよ?」
男の子 「……」
少女 「頼むから、ね?」 ニコッ
男の子 「……う、うん」
少女 「……さ、そろそろ帰りなよ」ポン
男の子 「……一人だと寒いんじゃ?」
少女 「かもね」
男の子 「……もう少しだけ」
少女 「気遣わないで、大丈夫だから」 ニコッ
男の子 「……」
少女 「……」 ニコッ
―――――
男の子 「じゃーね、お姉さん」
少女 「ん、君は真面目に生きるんだぞー」 フリフリ
男の子 「……」
タッタッタ
少女 「……」
少女 「……」 ウルウル
少女 「……こんなところで何やってるんだろう、私」
少女 「あー、寒い寒い」
少女 「……」
少女 「……どこで間違えたんだっけ、本当に」
-男の子の家・玄関前-
男の子 「……」
ピンポーン
スタスタ、ガチャ
母 「……反省したの?」
男の子 「うん」
母 「ちゃんと学校行く?」
男の子 「うん」
母 「……さっさと上がって」
男の子 「……」 スタスタ
男の子 「……お母さん」
母 「なに?」
男の子 「どうすれば、頼れる人になれるのかな?」
母 「お金を稼げるようになれば、そういう人になるんじゃない?」
母 「そのためにちゃんと学校へ行って勉強するの、わかった?」
男の子 「……」 コクリ
母 「でもどうしたの急に」
男の子 「……」
男の子 (公園にいたことは……黙っとこ)
母 「……恋でもしたの?」
男の子 「……わかんないけど、うーん、どうなんだろ」
母 「まあ頑張りなさいな、悪目立ちしない程度にね」
男の子 「悪目立ち?」
母 「例えば……そうね」
母 「いつも遅刻して中学校に登校する女の子みたいになったらダメ」
男の子 「……中学、女の子」
母 「学校はもうとっくに始まってるはずの時間にね」
母 「よく一人で制服着て通学路を歩いてるのよ、その子」
母 「ほんと目立つったらないわ」
母 「あれは不良だわ、あんた以上のサボり魔よ」
男の子 「…………」
母 「ほんとダメよあんなのになったら、恥ずかしいわ」
男の子 「……お姉さんを悪く言うな」
母 「……え?」
男の子 「お姉さんは髪黒いし、派手な格好をしてないよ?」
母 「確かにそうだったけど、態度が不良そのものじゃない」
男の子 「笑ってると思ったら急に悲しそうな顔したりして、それがちょっぴり面白いんだよ」
母 「……まさか、あんた」
男の子 「うん、お姉さんはいろいろ知ってて、話してて楽しい」
男の子 「そんな僕の友達だから、悪く言わないで」
母 「と、友達って……」
母 「……あんた、あんな不良と関わったの!?」
男の子 「いけないこと?」
母 「……もう一度頭を冷やしてらっしゃい!」
男の子 「どうしてダメなのさ!」
母 「不良なんかと関わったら不良が移るわ!」
男の子 「お姉さんはウイルスじゃない!」
母 「いいえウイルスよ!」
少女 「……寒いなぁ」
少女 「ほんと寒い」
少女 「……」 ポロポロ
少女 「……考えるのも疲れた」
「……お姉さん、また泣いてる」
少女 「……泣きたくもなるよぅ」
「……どうして泣いてるの?」
少女 「わかんないよ、ごちゃごちゃしてわかんないよ!」
「……」
ギュゥ
少女 「……な、何してるの」
男の子 「ぎゅーってしたら、暖かいよ」
少女 「……なんでまた来たの」
男の子 「また頭を冷やせだって」
少女 「……反省してないのバレたんだ」 クスッ
男の子 「違うよ」
少女 「じゃあなんで……」
少女 「……あ、わかった、君も非行がしたくて」
男の子 「お姉さんのことを友達って言ったらこうなった」
少女 「……!」
少女 「……ちっさいくせに」 クスッ
男の子 「ちっさい言うな!」 ムッ
少女 「あはは……」 グスッ
男の子 「……」
少女 「誰かから友達だって言われたの、初めてでさ……」
男の子 「……いつもは言う側なんだ」
少女 「ん、今の君みたいな感じでね、友達だと思い込んでね」
男の子 「……」
少女 「……私はやめときなよ」
男の子 「……迷惑?」
少女 「嬉しさ半分迷惑半分」
男の子 「……中途半端」
少女 「自分でもそう思う」
少女 「……私を友達って言っちゃったのは、不味かったかもね」
男の子 「友達を友達って言って、何が悪いのさ」
少女 「君弱そうだし、そんなこと外で言ってたらすぐ潰れちゃうよ」
男の子 「弱くなんてないし」
少女 「……暴言吐かれても、苛められても」
少女 「潰れない自信はある? 私を売らない自信はある?」
男の子 「……努力する」
少女 「ほんと頼りないなぁ」 ハァ
男の子 「……うぅ」
少女 「ま……、だから接しやすいんだけど」 ギュゥゥ
男の子 「い、痛いってば、お姉さん」
少女 「……」 グスッ
男の子 「……今度はどうして泣いてるの?」
少女 「いやほんと、なんでだろ……」
end
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